JP2017026669A - 静電潜像現像用トナー - Google Patents
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Abstract
【解決手段】静電潜像現像用トナーは、トナー粒子を複数含む。トナー粒子は、結着樹脂と着色剤とを少なくとも含有するトナーコアと、トナーコアの表面に備えられた複数の無機酸化物粒子と、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアを被覆するシェル層とを有する。シェル層は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含有する。シェル層の厚さは、5nm以上20nm以下である。結着樹脂は、非結晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを含有する。結晶性ポリエステル樹脂の融点は、20℃以上50℃未満である。無機酸化物粒子によるトナーコアの被覆率は、30%以上80%以下である。
【選択図】なし
Description
トナーコアは、結着樹脂と着色剤とを少なくとも含有する。トナーコアは、必要に応じて、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉のうちの1種以上を更に含有してもよい。ただし、トナーの用途に応じて必要のない成分(例えば、離型剤、電荷制御剤、又は磁性粉)を割愛してもよい。
結着樹脂は、非結晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを含有する。トナーコアが非結晶性ポリエステル樹脂に加えて、結晶性ポリエステル樹脂を含有することにより、トナーの低温定着性が向上する傾向にある。
ポリエステル樹脂の融点(Mp)は、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて測定される。アルミ皿に10mg以上15mg以下の測定試料(ポリエステル樹脂)を入れる。続いてDSCの測定部にアルミ皿をセットする。リファレンスには空のアルミ皿を用いる。続けて、下記のRUN1、2及び3の温度プログラムを実行する。RUN3の温度プログラムを実行した際に測定されたデータを用いる。詳しくは、10℃を測定開始温度とし、10℃/分の速度で150℃まで昇温させた際に観測される融解熱の最大ピーク温度を、測定試料の融点(Mp)とする。
RUN1:10℃から150℃まで10℃/分の速度で昇温
RUN2:150℃から10℃まで10℃/分の速度で降温
RUN3:10℃から150℃まで10℃/分の速度で昇温
ポリエステル樹脂の軟化点(Tm)は、高化式フローテスター(例えば、株式会社島津製作所製「CFT−500D」)を用いて測定される。測定試料(ポリエステル樹脂)を高化式フローテスターにセットする。ダイス細孔径1mm、プランジャー荷重20kg/cm2、昇温速度6℃/分の条件で、1cm3の測定試料を溶融し流出させる。これにより、軟化点(Tm)を測定する。高化式フローテスターの測定により得られる、温度(℃)/ストローク(mm)に関するS字カーブから、測定試料の軟化点(Tm)を読み取る。具体的には、ストロークの最大値をS1とし、低温側のベースラインのストローク値をS2とする。S字カーブ中の、ストロークの値が(S1+S2)/2となる温度を、測定試料の軟化点(Tm)とする。なお、測定試料の軟化点(Tm)は、測定試料の1/2流出温度(T1/2)に相当する。
ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、ポリエステル樹脂の比熱の変化点から求められる。より具体的には、測定装置として示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いる。測定試料(ポリエステル樹脂)10mgを測定装置のアルミパン中に入れる。リファレンスとして空のアルミパンを使用する。測定温度範囲25℃以上200℃以下、及び昇温速度10℃/分の条件で測定することにより、測定試料の吸熱曲線を得る。得られた測定試料の吸熱曲線から、測定試料のガラス転移点(Tg)を求める。
測定にはテトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いる。測定試料(ポリエステル樹脂)を、3.0mg/mLの濃度となるようにTHFに投入し、1時間静置させてTHF中に溶解させる。得られるTHF溶液を前処理用フィルター(例えば、倉敷紡績株式会社製「クロマトディスク 25N」、非水系、膜孔径0.45μm)で濾過して、測定試料の溶液を得る。GPCの測定は、以下のような装置及び条件で行われる。具体的には、40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定させる。続けて、40℃になったカラムに、流速1mL/分でTHFを流し、50μL以上200μL以下の測定試料の溶液をカラムに導入する。そして、カラムに導入された測定試料の分子量分布を測定する。
(GPC測定条件)
装置:HLC−8220(東ソー株式会社製)
溶離液:THF(テトラヒドロフラン)
カラム:TSKgel GMHXL(東ソー株式会社製)
カラム本数:2本
検出器:RI
溶出液流速:1mL/分
試料溶液濃度:3.0mg/mL
カラム温度:40℃
試料溶液量:100μL
検量線:標準ポリスチレンを用いて作製された検量線
着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料が用いられる。着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、3質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
トナーコアは離型剤を含有してもよい。トナーコアが離型剤を含有することにより、トナーの定着性及び耐オフセット性が向上すると考えられる。トナーの定着性及び耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、3質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
電荷制御剤は、例えば、帯電レベル、及び帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。また、耐久性及び安定性に優れたトナーを得る目的で使用される。帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルに帯電可能か否かの指標である。
磁性粉の例としては、鉄、強磁性金属、鉄及び/又は強磁性金属を含む合金、鉄及び/又は強磁性金属を含む化合物、強磁性化処理を施された強磁性合金、あるいは二酸化クロムが挙げられる。鉄の例としては、フェライト、又はマグネタイトが挙げられる。強磁性金属の例としては、コバルト、又はニッケルが挙げられる。強磁性化処理の例としては、熱処理が挙げられる。
トナーコアの表面には、複数の無機酸化物粒子が備えられる。トナーコアの表面に無機酸化物粒子が備えられることにより、以下のような利点があると推測される。
被覆率F=100×Fi/Ft・・・(1)
無機酸化物粒子の平均粒子径は、例えば、以下のように測定される。具体的には、無機酸化物粒子を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察倍率10000倍で観察する。測定対象として、100個の無機酸化物粒子を無作為に選択する。選択された100個の無機酸化物粒子の各々について、一次粒子の円相当径を測定する。測定された100個の無機酸化物粒子の一次粒子の円相当径の和を、測定対象の個数(100個)で除算する。これにより、無機酸化物粒子の平均粒子径が算出される。
シェル層は、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアを被覆する。本実施形態のトナー粒子では、トナーコアの表面に複数の無機酸化物粒子が付着する、これにより、トナーコアを被覆する無機酸化物粒子の層が形成されると考えられる。そして、形成された無機酸化物粒子の層を更に被覆するように、シェル層が形成される。
熱硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂のモノマーの1種以上を重縮合させることにより形成される。熱硬化性樹脂のモノマーは、トナーコア中のポリエステル樹脂が有する官能基(例えば、水酸基、及びカルボキシル基)と反応し得る官能基を有することが好ましい。また、熱硬化性樹脂のモノマーは、無機酸化物粒子が有する官能基(例えば、水酸基)と反応し得る官能基を有することが好ましい。無機酸化物粒子が備えられたトナーコアの表面には、ポリエステル樹脂が有する官能基(例えば、水酸基、及びカルボキシル基)、及び無機酸化物粒子が有する官能基(例えば、水酸基)が露出している。そのため、トナーコアの表面にシェル層を形成する際に、熱硬化性樹脂のモノマー(例えば、メチロールメラミン)と、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアの表面に露出する官能基(例えば、水酸基、及びカルボキシル基)とが反応し易くなる。これにより、トナーコアとシェル層との間、及び無機酸化物粒子とシェル層との間に、共有結合が形成され易くなる。その結果、シェル層と無機酸化物粒子を備えたトナーコアとが強固に結合し易くなる。
熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂の原料(例えば、熱硬化性樹脂のモノマー及びプレポリマーの一方又は両方)が有する官能基(例えば、メチロール基、及びアミノ基)と反応性を有する官能基を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂の原料が有する官能基(例えば、メチロール基、及びアミノ基)と反応性を有する官能基としては、活性水素原子を含む官能基(例えば、水酸基、カルボキシル基、又はアミノ基)が挙げられる。アミノ基は、カルバモイル基(−CONH2)として熱可塑性樹脂中に含まれてもよい。
シェル層の厚さは、例えば以下の方法で測定される。トナー粒子を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、倍率30000倍及び100000倍で観察する。これにより、トナー粒子の断面のTEM写真を撮影し、TEM撮影像を得る。続けて、トナー粒子の断面のTEM撮影像を、市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて解析する。トナー粒子の断面の略中心点で直交する2本の直線を引き、2本の直線上のシェル層と交差する4箇所の長さを測定する。このようにして測定される4箇所の長さの平均値を、測定対象の1個のトナー粒子が備えるシェル層の厚さとする。このようなシェル層の厚さの測定を、10個のトナー粒子に対して行う。測定対象の10個のトナー粒子それぞれが備えるシェル層の厚さの平均値を求める。求められた平均値の和を測定対象の個数(10個)で除算する。得られた値を、トナーが備えるシェル層の厚さとする。
シェル層の厚さ=(熱硬化性樹脂の量+熱可塑性樹脂の量)/トナーコアの比表面積・・・(3)
シェル層で被覆されたトナーコアの表面には、必要に応じて外添剤を付着させてもよい。なお、外添剤を付着させる前の粒子(シェル層で被覆されたトナーコア)を、トナー母粒子と記載する場合がある。
トナーは、所望のキャリアと混合して2成分現像剤として使用してもよい。2成分現像剤を調製する場合、磁性キャリアを用いることが好ましい。
トナーの製造方法は、トナーコアをシェル層で被覆できる方法である限り、特に限定されない。以下、トナーの製造方法の一例を説明する。
トナーコアの形成工程では、結着樹脂中に、着色剤、及び任意成分(例えば、電荷制御剤、離型剤、及び磁性粉のうちの1種以上)を分散させることにより、トナーコアを形成する。トナーコアの製造方法は、結着樹脂中に、着色剤、及び任意成分(例えば、電荷制御剤、離型剤、及び磁性粉のうちの1種以上)を良好に分散させることができる限り特に限定されない。トナーコアの製造方法は、公知の方法から適宜選択される。トナーコアの製造方法としては、例えば、粉砕法、又は凝集法が挙げられる。
粉砕法では、まず、結着樹脂、着色剤、及び任意成分(例えば、電荷制御剤、離型剤、及び磁性粉のうちの1種以上)を混合する。得られた混合物を、溶融し混練する。得られた溶融混練物を、粉砕した後、分級して、所望の粒子径のトナーコアを得る。粉砕法は、後述の凝集法と比較して、トナーコアの調製が容易であるという利点を有する。一方、粉砕法は、粉砕工程を経てトナーコアを得るため、平均円形度の高いトナーコアが得られ難い。しかし、後述するシェル層の形成工程で、シェル層の原料を加熱することによりシェル層の硬化反応が進行する。その際に、やや軟化したトナーコアが表面張力によって収縮することで、トナーコアが球形化される傾向にある。従って、トナーコアを粉砕法で製造する場合であっても、トナー粒子の平均円形度を向上させ易い。そのため、トナーコアの製造方法としては粉砕法が好ましい。
凝集法では、まず、結着樹脂の微粒子、着色剤の微粒子、及び任意成分(例えば、電荷制御剤、離型剤、及び磁性粉のうちの1種以上)の微粒子を、水性媒体中で凝集させて凝集粒子を得る。得られた凝集粒子を加熱して、凝集粒子に含まれる成分を合一化させる。その結果、トナーコアを含む水性分散液が得られる。得られた水性分散液から分散剤等を除去して洗浄する。その結果、トナーコアが得られる。
無機酸化物粒子の付着工程では、トナーコアの表面に無機酸化物微粒子を付着させる。トナーコアの表面に無機酸化物微粒子を付着させる方法としては、混合機(例えば、FMミキサー、及びナウターミキサー(登録商標))を用いて、トナーコアと無機酸化物微粒子とを混合する方法が挙げられる。トナーコアと無機酸化物微粒子との混合においては、無機酸化物微粒子がトナーコアの表面に完全に埋没しないように、混合条件(例えば、混合機の回転数、及び混合時間)を設定することが好ましい。また、後述のシェル層の形成工程において無機酸化物粒子がトナーコアから脱離しないように、混合条件(例えば、混合機の回転数、及び混合時間)を設定することが好ましい。
測定試料(無機酸化物粒子が備えられたトナーコア)0.2g、イオン交換水80mL、及びノニオン界面活性剤(例えば、株式会社日本触媒製「ポリビニルピロリドンK−85」、水分濃度5質量%、固形分濃度95%)20gを、マグネットスターラーを用いて混合する。これにより、測定試料をイオン交換水に均一に分散させて分散液を得る。得られた測定試料の分散液に希塩酸を加えて、測定試料の分散液のpHを4に調整する。これにより、pH4の測定試料の分散液を得る。pH4の測定試料の分散液について、分散液中の測定試料のゼータ電位を測定する。ゼータ電位は、ゼータ電位・粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター株式会社製「Delsa Nano HC」)を用いて測定される。
日本画像学会から提供される標準キャリアN−01(負帯電極性トナー用標準キャリア)と、標準キャリアの質量に対して7質量%の測定試料(無機酸化物粒子が備えられたトナーコア)とを、混合装置(例えば、WAB社製「ターブラ(登録商標)ミキサー」)を用いて30分間混合する。得られた混合物中の測定試料の摩擦帯電量をQ/mメーター(例えば、トレック社製「MODEL 210HS−2A」)を用いて測定する。このようにして測定される測定試料の摩擦帯電量は、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアの帯電され易さの指標となる。また、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアが、正負何れの極性に帯電され易いかの指標となる。
シェル層の形成工程では、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアをシェル層で被覆することにより、シェル層を形成する。これにより、トナー母粒子が得られる。
トナー母粒子は、必要に応じて、水を用いて洗浄される。洗浄方法の例としては、トナー母粒子を含む水性分散液から、固液分離によりトナー母粒子のウェットケーキを回収し、得られるウェットケーキを、水を用いて洗浄する方法が挙げられる。洗浄方法の別の例としては、分散液中のトナー母粒子を沈降させ、上澄み液を水と置換し、置換後にトナー母粒子を水に再分散させる方法が挙げられる。
トナー母粒子は、必要に応じて乾燥されてもよい。トナー母粒子を乾燥させる方法としては、乾燥機を用いる方法が挙げられる。乾燥機の例としては、スプレードライヤー、流動層乾燥機、真空凍結乾燥器、又は減圧乾燥機が挙げられる。乾燥中のトナー母粒子の凝集を抑制するためには、スプレードライヤーを用いる方法が好ましい。スプレードライヤーを用いる場合、トナー母粒子の分散液と共に、シリカのような外添剤の分散液を噴霧することによって、トナー母粒子の乾燥と同時に、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させてもよい。
トナー母粒子の表面には、必要に応じて外添剤を付着させてもよい。トナー母粒子の表面に外添剤を付着させる方法としては、例えば、外添剤がトナー母粒子表面に埋没しないように条件で、混合機(例えば、FMミキサー及びナウターミキサー(登録商標))を用いて、トナー母粒子と外添剤とを混合する方法が挙げられる。
ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)、軟化点(Tm)、融点(Mp)は、実施形態で述べたガラス転移点の測定方法、軟化点の測定方法、融点の測定方法と同様の方法で測定した。熱可塑性樹脂のガラス転移点(Tg)は、測定試料をポリエステル樹脂から熱可塑性樹脂に変更した以外は、実施形態で述べたガラス転移点の測定方法と同様の方法で測定した。
ポリエステル樹脂の結晶性指数は、ポリエステル樹脂の軟化点(Tm)と、ポリエステル樹脂の融点(DSC曲線中の最大吸熱ピークの温度、Mp)との比率(Tm/Mp)から求めた。
トナーコア、及びトナー母粒子の体積中位径D50は、精密粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製「コールターカウンターマルチサイザー3」)を用いて測定した。
熱可塑性樹脂の質量平均分子量(Mw)は、測定試料をポリエステル樹脂から熱可塑性樹脂に変更した以外は、実施形態で述べたGPCを用いる分子量の測定方法と同様の方法で測定した。
無機酸化物微粒子によるトナーコアの被覆率は以下のように測定した。まず、無機酸化物粒子を備えたトナーコアを、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製「JSM−7600F」)を用いて観察し、無機酸化物粒子を備えたトナーコアのTEM撮影像を得た。エネルギー分散X線分光分析(EDX)により、TEM撮影像中に、無機酸化物に特徴的な構成元素(Si、又はTiの何れか)をマッピングした。TEM撮影像を解析することにより、トナーコアの表面の総面積Ftと、トナーコアの表面のうちの無機酸化物粒子が備えられた領域の面積(マッピングされた領域の面積)Fiとを算出した。算出したFiとFtとから、数式(1)に従って被覆率を算出した。
被覆率F=100×Fi/Ft・・・(1)
シェル層の厚さは、以下のように測定した。まず、測定試料を調製した。トナーを常温硬化性のエポキシ樹脂中に分散させ、40℃の雰囲気に2日間静置し、硬化物を得た。得られた硬化物を、四酸化オスミウムを用いて染色した。その後、ダイヤモンドナイフをセットしたミクロトーム(ライカ株式会社製「EM UC6」)を用いて、得られた硬化物から、厚さ200nmのトナー粒子の断面観察用の薄片試料を切り出した。得られた薄片試料を、測定試料とした。測定試料を用いて、シェル層の厚さを、実施形態で述べたシェル層の厚さの測定方法と同様の方法で測定した。
次に、実施例及び比較例のトナーを調製するために用いた原料を説明する。
トナーコアに含有させる結着樹脂として、非結晶性ポリエステル樹脂AP−1を準備した。詳しくは、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物1575g、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物163g、フマル酸377g、及び触媒(酸化ジブチル錫)4gを反応容器に仕込んだ。反応容器内の空気を窒素雰囲気で置換した。反応容器の内容物を攪拌しながら反応容器内部の温度を220℃まで上昇させた。反応容器の内容物を220℃で8時間反応させた後、反応容器内を60mmHgに減圧した。続けて、反応容器の内容物を更に1時間反応させた。その後、反応容器内の内容物を210℃に冷却した。反応容器内の内容物に、トリメリット酸無水物336gを添加した。反応終了後、反応容器の内容物を取り出して冷却した。これにより、非結晶性ポリエステル樹脂AP−1を得た。表1に、非結晶性ポリエステル樹脂AP−1のガラス転移点(Tg)、軟化点(Tm)、及び結晶性指数を示す。
トナーコアに含有させる結着樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂CP−A〜CP−Eを準備した。詳しくは、1,6−ヘキサンジオール132g、1,10−デカンジカルボン酸230g、触媒としての酸化ジブチル錫1g、及びハイドロキノン0.3gを反応容器に仕込んだ。次に、反応容器内の空気を窒素雰囲気で置換した。反応容器の内容物を攪拌しながら、反応容器内部の温度を200℃まで上昇させた。反応容器内部の温度を200℃に保持し、副生水を留去しながら、反応容器の内容物を5時間重合させた。次いで、反応容器内を5mmHg以上20mmHg以下に減圧した。減圧下200℃で、反応容器の内容物が表2に示す物性になるまで重合反応を継続した。重合反応が終了した後、反応容器の内容物を取り出して冷却した。これにより結晶性ポリエステル樹脂CP−A〜CP−Eが各々得られた。表2に、得られた結晶性ポリエステル樹脂CP−A〜CP−Eの各々の融点(Mp)、及び結晶性指数を示す。
トナーコアの表面に付着させる無機酸化物粒子として、以下の無機酸化物粒子α、β及びγを準備した。
無機酸化物粒子α:親水性フュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)130」)
無機酸化物粒子β:酸化チタン粒子(テイカ株式会社製「MT−150A」、親水処理されていない湿式酸化チタン微粒子)
無機酸化物粒子γ:酸化チタン粒子(テイカ株式会社製「MT−100WP」、親水処理された湿式酸化チタン微粒子)
シェル層に含有させる熱硬化性樹脂の原料として、以下の熱硬化性樹脂の原料R−A及びR−Bを準備した。
熱硬化性樹脂の原料R−A:ヘキサメチロールメラミン初期重合体の水溶液(昭和電工株式会社製「ミルベン(登録商標)レジンSM−607」、固形分濃度80質量%)
熱硬化性樹脂の原料R−B:メチロール化尿素の水溶液(DIC株式会社製「BECKAMINE(登録商標)J−300S」、固形分濃度70質量%)
シェル層に含有させる熱可塑性樹脂として、以下の熱可塑性樹脂R−a及びR−bを準備した。
熱可塑性樹脂R−a:アクリルアミド樹脂の水溶液(DIC株式会社製「BECKAMINE(登録商標)A−1」、固形分濃度11質量%)
熱可塑性樹脂R−b:アクリルアミド系共重合体の水溶液(モノマー組成:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル/アクリルアミド/メタクリル酸−メトキシポリエチレングリコール=30/50/20(モル比率)、固形分濃度5質量%、ガラス転移点(Tg)110℃、質量平均分子量(Mw)55,000)
以下のようにしてトナー1を調製した。
非結晶性ポリエステル樹脂AP−1の100質量部、結晶性ポリエステル樹脂CP−Aの25質量部、フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)の5質量部、離型剤(エステルワックス、日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP−3」)の5質量部を、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10B」)を用いて、2400rpmの速度で混合した。これにより、混合物を得た。
トナーコア(100質量部)と、無機酸化物粒子α(1質量部)とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10B」)を用いて、3200rpmの速度で10分間混合した。これにより、トナーコアの表面に無機酸化物粒子を付着させた。その結果、無機酸化物粒子が備えられたトナーコアが得られた。
日本画像学会から提供される標準キャリアN−01(負帯電極性トナー用標準キャリア)と、標準キャリアの質量に対して7質量%の測定試料(無機酸化物粒子が備えられたトナーコア)とを、混合装置(WAB社製「ターブラ(登録商標)ミキサー」)を用いて30分間混合した。得られた混合物を標準キャリアと摩擦させ、混合物中の測定試料の摩擦帯電量を、Q/mメーター(トレック社製「MODEL 210HS−2A」)を用いて測定した。
測定試料(無機酸化物粒子が備えられたトナーコア)0.2gと、イオン交換水80mLと、ノニオン界面活性剤(株式会社日本触媒製「ポリビニルピロリドンK−85」、水分濃度5質量%、固形分濃度95質量%)20gとを、マグネットスターラーを用いて混合した。これにより、測定試料をイオン交換水に均一に分散させて、測定試料の分散液を得た。その後、測定試料の分散液に希塩酸を加えて、測定試料の分散液のpHを4に調整した。pH4の測定試料の分散液について、分散液中の測定試料のゼータ電位を、ゼータ電位・粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製「Delsa Nano HC」)を用いて測定した。
温度計、及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコに、イオン交換水300mLを入れた。ウォーターバスを用いてフラスコの内温を30℃に保持した。次いで、フラスコ内に希塩酸を加えて、フラスコ内の液のpHを4に調整した。pH調整後、フラスコ内に、シェル層の原料を添加した。詳しくは、フラスコ内に、熱硬化性樹脂の原料R−A(ヘキサメチロールメラミン初期重合体の水溶液、昭和電工株式会社製「ミルベン(登録商標)レジンSM−607」、固形分濃度80質量%)2mLと、熱可塑性樹脂R−a(アクリルアミド樹脂の水溶液、DIC株式会社製「BECKAMINE(登録商標)A−1」、固形分濃度11質量%)2mLとを添加した。次いで、フラスコの内容物を攪拌し、シェル層の原料をイオン交換水に溶解させた。これにより、シェル層の原料の水溶液を得た。
得られたトナー母粒子の分散液をブフナー漏斗で濾過し、トナー母粒子のウェットケーキを得た。次いで、トナー母粒子のウェットケーキをイオン交換水に分散させて、分散液に含まれるトナー母粒子を濾過した。これにより、トナー母粒子を洗浄した。トナー母粒子のイオン交換水による洗浄操作を、同様の方法で5回繰り返した。これにより、洗浄後のトナー母粒子のウェットケーキを得た。
洗浄後のトナー母粒子のウェットケーキを、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させてスラリーを調製した。得られたスラリーを、連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)に供給することにより、スラリー中のトナー母粒子を乾燥させた。コートマイザー(登録商標)による乾燥は、熱風温度45℃、ブロアー風量2m3/分の条件で行った。
乾燥工程後、外添工程前のトナー母粒子に対して、シェル層の形成性を評価した。詳しくは、トナー母粒子0.1gと、界面活性剤(花王株式会社製「エマルゲン(登録商標)120」)0.4gと、イオン交換水40mLとを混合して、トナー母粒子の分散液を得た。得られたトナー母粒子の分散液を、精密粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製「コールターカウンターマルチサイザー3」)を用いて測定した。これにより、トナー母粒子の体積中位径D50を求めた。求めたトナー母粒子の体積中位径D50から、下記基準に基づき、シェル層の形成性を評価した。なお、シェル層を形成する際に、トナーコア同士の凝集、及びトナー母粒子同士の凝集が引き起こされ難く、シェル層の形成が安定的に進行すると、体積中位径D50が6.2μm以下であるトナー母粒子が得られる傾向にある。
○(良好):トナー母粒子の体積中位径D50が6.2μm以下であった。
×(不良):トナー母粒子の体積中位径D50が6.2μm超であった。
乾燥工程で得られたトナー母粒子100質量部と、シリカ(乾式シリカ微粒子、日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA90」)1質量部とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10B」、容量10L)を用いて5分間混合した。これにより、トナー母粒子に外添剤を付着させた。外添剤を付着させたトナー母粒子を、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別した。これにより、複数のトナー粒子を含むトナー1を得た。
以下の方法で、トナー2〜24を調製した。
以下を変更した以外は、トナー1の調製と同様の方法で、トナー2、3、4、及び5を得た。トナーコアに含有させる結晶性ポリエステル樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂CP−Aの代わりに、表3及び表4に示す種類の結晶性ポリエステル樹脂を使用した。
以下を変更した以外は、トナー1の調製と同様の方法で、トナー6、及び7を得た。非結晶性ポリエステル樹脂の質量(Wa)に対する結晶性ポリエステル樹脂の質量(Wc)の比率(Wc/Wa)を、25/100から、表3に示す比率に変更した。なお、結着樹脂の質量(非結晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂との合計質量)は、トナー1の調製における125質量部から変更せず、結着樹脂中の比率(Wc/Wa)のみ変更した。
以下を変更した以外は、トナー1の調製と同様の方法で、トナー9を得た。無機酸化物粒子αの代わりに、無機酸化物粒子βを使用した。
以下を変更した以外は、トナー1の調製と同様の方法で、トナー10を得た。無機酸化物粒子αの代わりに、無機酸化物粒子γを使用した。また、熱可塑性樹脂R−aと熱硬化性樹脂の原料R−Aとの合計使用量をトナー1の調製における4mLから変更することにより、シェル層の厚さを9nmから10nmに変更した。なお、熱可塑性樹脂R−aの使用量(Vp、単位:mL)に対する熱硬化性樹脂の原料R−Aの使用量(Vs、単位:mL)の比率(Vs/Vp)は、トナー1の調製における5.0/5.0から変更しなかった。
以下を変更した以外は、トナー1の調製と同様の方法で、トナー11、12、13、及び14を得た。トナーコアの質量に対する無機酸化物粒子の質量を変更することにより、無機酸化物粒子によるトナーコアの被覆率を、51%から、表3及び表4に示す被覆率に変更した。
以下を変更した以外は、トナー1の調製と同様の方法で、トナー15を得た。シェル層を形成するための熱硬化性樹脂の原料として、熱硬化性樹脂の原料R−Aの代わりに、熱硬化性樹脂の原料R−Bを使用した。また、熱硬化性樹脂の原料R−Bを添加する際に、有機アミン触媒の水溶液(DIC株式会社製「キャタリスト 376」)0.2質量部も添加した。更に、熱可塑性樹脂の使用量(Vp、単位:mL)に対する熱硬化性樹脂の原料の使用量(Vs、単位:mL)の比率(Vs/Vp)を、5.0/5.0から、6.7/3.3に変更した。なお、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の原料との合計使用量は、トナー1の調製における4mLから3.8mLに変更した。
以下を変更した以外は、トナー1の調製と同様の方法で、トナー16を得た。シェル層を形成するための熱可塑性樹脂として、熱可塑性樹脂R−aの代わりに、熱可塑性樹脂R−bを使用した。
以下を変更した以外は、トナー1の調製と同様の方法で、トナー17、18、及び20を得た。熱可塑性樹脂の使用量(Vp、単位:mL)に対する熱硬化性樹脂の原料の使用量(Vs、単位:mL)の比率(Vs/Vp)を、5.0/5.0から、表3に示す比率に変更した。なお、トナー17、18、及び20の熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の原料との合計使用量は、トナー1の調製における4mLから、3.6mL、4.4mL、及び4.6mLにそれぞれ変更した。
以下を変更した以外は、トナー1の調製と同様の方法で、トナー21、22、及び23を得た。熱可塑性樹脂R−aと熱硬化性樹脂の原料R−Aとの合計使用量をトナー1の調製における4mLから変更することにより、シェル層の厚さを9nmから表3及び表4に示す厚さに変更した。なお、熱可塑性樹脂R−aの使用量(Vp、単位:mL)に対する熱硬化性樹脂の原料R−Aの使用量(Vs、単位:mL)の比率(Vs/Vp)は、トナー1の調製における5.0/5.0から変更しなかった。
以下を変更した以外は、トナー1の調製と同様の方法で、トナー24を得た。トナー24の調製では、シェル層の形成工程を行わなかった。無機酸化物粒子の付着工程で得られた無機酸化物粒子を備えたトナーコアを、トナー母粒子として用いて、外添工程を行った。
以下を変更した以外は、トナー1の調製と同様の方法で、トナー19を得た。トナー19の調製では、無機酸化物粒子を使用しなかった。つまり、無機酸化物粒子の付着工程を行わなかった。トナーコアの形成工程で得られたトナーコアに対して、シェル層の形成工程、及び外添工程を行った。
以下を変更した以外は、トナー1の調製と同様の方法で、トナー8を得た。トナー8の調製では、熱可塑性樹脂を使用しなかった。つまり、熱可塑性樹脂の使用量(Vp、単位:mL)に対する熱硬化性樹脂の原料の使用量(Vs、単位:mL)の比率(Vs/Vp)を、5.0/5.0から、10.0/0.0に変更した。また、熱硬化性樹脂の原料R−Aの使用量を、トナー1の調製における2mLから4mLに変更した。
得られたトナー1〜24の各々について、低温定着性、耐高温オフセット性、及び耐熱保存性を評価した。
現像剤用キャリア(FS−C5250DN用キャリア)100質量部と、トナー5質量部とを、ボールミルを用いて30分間混合して、2成分現像剤を調製した。
調製した2成分現像剤により、低温定着性の評価と同様の評価機及び用紙を用い、用紙に未定着のソリッド画像を形成した。耐高温オフセット性の評価では、定着温度を180℃以上230℃以下の範囲に設定した。定着温度以外の条件は、低温定着性の評価における条件と同様に設定した。定着器のヒートローラーの2周目において、トナーが用紙に転移した温度を、オフセット発生温度とした。なお、オフセット発生温度が200℃以上であるトナーを、トナーの耐高温オフセット性が良好であると評価した。
トナー3gを、容量20mLのポリ容器に秤量し、60℃に設定された恒温器内に3時間静置した。これにより、耐熱保存性評価用のトナーが得られた。その後、耐熱保存性評価用のトナーを、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製「TYPE PT−E 84810」)を用いて篩別した。具体的には、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)のマニュアルに従い、レオスタッド目盛り5、時間30秒の条件で、200メッシュの篩を用いて、耐熱保存性評価用のトナーを篩別した。篩別後に、篩上に残留したトナーの質量を測定した。篩別前のトナーの質量と、篩別後に篩上に残留したトナーの質量とから、下記数式(4)に従って凝集度[質量%]を求めた。なお、凝集度が30質量%以下であるトナーを、トナーの耐熱保存性が良好であると評価した。
凝集度[質量%]=100×篩上に残留したトナーの質量/篩別前のトナーの質量・・・(4)
Claims (4)
- トナー粒子を複数含む、静電潜像現像用トナーであって、
前記トナー粒子は、
結着樹脂と着色剤とを少なくとも含有するトナーコアと、
前記トナーコアの表面に備えられた複数の無機酸化物粒子と、
前記無機酸化物粒子が備えられた前記トナーコアを被覆するシェル層と
を有し、
前記シェル層は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含有し、
前記シェル層の厚さは、5nm以上20nm以下であり、
前記結着樹脂は、非結晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを含有し、
前記結晶性ポリエステル樹脂の融点は、20℃以上50℃未満であり、
前記無機酸化物粒子による前記トナーコアの被覆率は、30%以上80%以下である、静電潜像現像用トナー。 - 前記無機酸化物粒子による前記トナーコアの前記被覆率は、下記数式(1)で示される、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
被覆率F=100×Fi/Ft・・・(1)
(前記数式(1)中、Fiは前記トナーコアの前記表面のうちの前記無機酸化物粒子が備えられた領域の面積を示し、Ftは前記トナーコアの前記表面の総面積を示す。) - 前記非結晶性ポリエステル樹脂の質量(Wa)に対する前記結晶性ポリエステル樹脂の質量(Wc)の比率(Wc/Wa)は、1/100以上100/100以下である、請求項1又は2に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記トナーコアは、離型剤を更に含有する、請求項1〜3の何れか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
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