JP2019191359A - トナー - Google Patents

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Abstract

【課題】低温定着性、耐熱保存性及び耐かぶり性に優れるトナーを提供する。【解決手段】トナーは、トナー粒子10を含む。トナー粒子10は、結着樹脂を含むトナーコア11と、トナーコア11の表面を覆う第1シェル層12と、第1シェル層12の表面を部分的に覆う第2シェル層13とを備える。第1シェル層12は、第1熱可塑性樹脂から構成される第1ドメイン12Aと、第2熱可塑性樹脂から構成される第2ドメイン12Bとを含む。第1熱可塑性樹脂のガラス転移点は、35℃以上66℃以下である。第2熱可塑性樹脂のガラス転移点は、71℃以上105℃以下である。第2シェル層13は、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂よりも強い疎水性を有する第3熱可塑性樹脂を含む。第3熱可塑性樹脂のガラス転移点は、第1熱可塑性樹脂のガラス転移点よりも高い。【選択図】図1

Description

本発明は、トナーに関する。
トナーコアと、トナーコアの表面を覆うシェル層とを備えるトナー粒子を含むトナーが知られている(例えば、特許文献1参照)。トナーコアをシェル層で覆うことで、耐熱保存性に優れるトナーを得ることができる。
特開2004−294469号公報
しかしながら、特許文献1に開示される技術だけでは、低温定着性、耐熱保存性及び耐かぶり性に優れるトナーを得ることは難しい。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、低温定着性、耐熱保存性及び耐かぶり性に優れるトナーを提供することである。
本発明に係るトナーは、トナー粒子を含む。前記トナー粒子は、結着樹脂を含むトナーコアと、前記トナーコアの表面を覆う第1シェル層と、前記第1シェル層の表面を部分的に覆う第2シェル層とを備える。前記第1シェル層は、第1熱可塑性樹脂から構成される第1ドメインと、第2熱可塑性樹脂から構成される第2ドメインとを含む。前記第1熱可塑性樹脂のガラス転移点は、35℃以上66℃以下である。前記第2熱可塑性樹脂のガラス転移点は、71℃以上105℃以下である。前記第2シェル層は、前記第1熱可塑性樹脂及び前記第2熱可塑性樹脂よりも強い疎水性を有する第3熱可塑性樹脂を含む。前記第3熱可塑性樹脂のガラス転移点は、前記第1熱可塑性樹脂のガラス転移点よりも高い。
本発明によれば、低温定着性、耐熱保存性及び耐かぶり性に優れるトナーを提供することができる。
本発明に係るトナーに含まれるトナー粒子の断面構造の一例を示す図である。 実施例に係るトナーを高速液体クロマトグラフィーで分析した結果の一例を示すチャートである。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、トナーは、トナー粒子の集合体(例えば粉体)である。外添剤は、外添剤粒子の集合体(例えば粉体)である。粉体(より具体的には、トナー粒子の粉体等)に関する評価結果(形状、物性等を示す値)は、何ら規定していなければ、粉体から粒子を相当数選び取って、それら粒子の各々について測定した値の個数平均である。
粉体の体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA−950」)を用いて測定されたメディアン径である。粉体の個数平均一次粒子径は、何ら規定していなければ、走査型電子顕微鏡を用いて測定した一次粒子の円相当径(ヘイウッド径:一次粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。粉体の個数平均一次粒子径は、例えば100個の一次粒子の円相当径の個数平均値である。
帯電性は、何ら規定していなければ、摩擦帯電における帯電性を意味する。摩擦帯電における正帯電性の強さ(又は負帯電性の強さ)は、周知の帯電列などで確認できる。例えばトナーは、日本画像学会から提供される標準キャリア(負帯電性トナー用標準キャリア:N−01、正帯電性トナー用標準キャリア:P−01)と混ぜて攪拌することで、測定対象を摩擦帯電させる。摩擦帯電させる前と後とでそれぞれ、例えば帯電量測定装置(Q/mメーター)で測定対象の帯電量を測定し、摩擦帯電の前後での帯電量の変化が大きい測定対象ほど帯電性が強いことを示す。
軟化点(Tm)は、何ら規定していなければ、高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)を用いて測定した値である。高化式フローテスターで測定されたS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)において、「(ベースラインストローク値+最大ストローク値)/2」となる温度が、Tm(軟化点)に相当する。融点(Mp)の測定値は、何ら規定していなければ、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて測定される吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)中の最大吸熱ピークの温度である。この吸熱ピークは、結晶化部位の融解に起因して現れる。ガラス転移点(Tg)は、何ら規定していなければ、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて「JIS(日本工業規格)K7121−2012」に従って測定した値である。示差走査熱量計で測定された吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)において、ガラス転移に起因する変曲点の温度(詳しくは、ベースラインの外挿線と立ち下がりラインの外挿線との交点の温度)が、Tg(ガラス転移点)に相当する。
酸価の測定値は、何ら規定していなければ、「JIS(日本工業規格)K0070−1992」に従い測定した値である。
疎水性の強さ(又は親水性の強さ)は、例えば水滴の接触角(水の濡れ易さ)で表すことができる。水滴の接触角が大きいほど疎水性が強い。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを包括的に「(メタ)アクリロニトリル」と総称する場合がある。「置換基で置換されていてもよい」とは、有機基の水素原子の一部又は全部が置換基で置換されていてもよいことを意味する。
<トナー>
本実施形態に係るトナーは、例えば正帯電性トナーとして、静電潜像の現像に好適に用いることができる。本実施形態に係るトナーは、トナー粒子(それぞれ後述する構成を有する粒子)を含有する集合体(例えば粉体)である。トナーは、1成分現像剤として使用してもよい。また、混合装置(例えば、ボールミル)を用いてトナーとキャリアとを混合して2成分現像剤として使用してもよい。
本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、結着樹脂を含むトナーコアと、トナーコアの表面を覆う第1シェル層と、第1シェル層の表面を部分的に覆う第2シェル層とを備える。第1シェル層は、第1熱可塑性樹脂から構成される第1ドメインと、第2熱可塑性樹脂から構成される第2ドメインとを含む。第1熱可塑性樹脂のガラス転移点は、35℃以上66℃以下である。第2熱可塑性樹脂のガラス転移点は、71℃以上105℃以下である。第2シェル層は、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂よりも強い疎水性を有する第3熱可塑性樹脂(以下、疎水性樹脂と記載することがある。)を含む。第3熱可塑性樹脂のガラス転移点は、第1熱可塑性樹脂のガラス転移点よりも高い。
本実施形態に係るトナーは、上述の構成を備えるため、低温定着性、耐熱保存性及び耐かぶり性に優れる。その理由は、以下のように推測される。
本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、ガラス転移点35℃以上66℃以下の第1熱可塑性樹脂(低Tg樹脂)から構成される第1ドメインを第1シェル層に含む。そして、第2シェル層が第1シェル層の表面を部分的に覆っている。よって、本実施形態に係るトナーでは、トナー像を記録媒体に定着させる際、第1シェル層中の第1ドメイン(例えば第2シェル層で覆われていない第1ドメイン)の溶融又は軟化により、トナーコアの成分がトナー粒子の外側に溶出し易くなる傾向がある。よって、本実施形態に係るトナーは、低温定着性に優れる。
上述のように、本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子では、第1シェル層が第1熱可塑性樹脂(低Tg樹脂)から構成される第1ドメインを含み、第2シェル層が第1シェル層の表面を部分的に覆っている。よって、本実施形態に係るトナーは、トナー粒子間において、低Tg樹脂から構成される第1ドメイン同士の接触を抑制できる。また、本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、ガラス転移点71℃以上105℃以下の第2熱可塑性樹脂(高Tg樹脂)から構成される第2ドメインを第1シェル層に含む。更に、本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子では、第2シェル層が、第1シェル層中の第1ドメインを構成する第1熱可塑性樹脂(低Tg樹脂)よりもガラス転移点が高い第3熱可塑性樹脂を含む。従って、本実施形態に係るトナーは、第1シェル層の一部が低Tg樹脂から構成されていても耐熱保存性に優れる。
また、本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子では、第1シェル層の外側に形成された第2シェル層が疎水性樹脂である第3熱可塑性樹脂を含む。よって、本実施形態に係るトナーは、例えば湿気に起因するトナー粒子の電荷減衰を抑制できるため、耐かぶり性に優れる。
第1シェル層は、トナーコアの表面全域を完全に覆っている(100%の面積割合で覆っている)必要はなく、トナーコア中の結着樹脂のブリードアウト(特に、結着樹脂の低分子量成分のブリードアウト)を抑制できる程度に、トナーコアの表面を覆っていればよい。トナーコアの表面において、第1シェル層で覆われた領域の面積割合(以下、「第1シェル層の被覆率」と記載することがある。)は、90%以上100%以下であることが好ましく、95%以上100%以下であることがより好ましい。第1シェル層の被覆率が90%以上である場合、耐熱保存性により優れるトナーを得ることができる。
第1シェル層の表面において、第2シェル層で覆われた領域の面積割合(以下、「第2シェル層の被覆率」と記載することがある。)は、30%以上70%以下であることが好ましい。第2シェル層の被覆率が30%以上である場合、耐熱保存性により優れるトナーを得ることができる。また、第2シェル層の被覆率が70%以下である場合、低温定着性により優れるトナーを得ることができる。なお、第1シェル層の被覆率が100%未満の場合、第2シェル層は、トナーコアの表面領域のうち第1シェル層で覆われていない箇所を覆っていてもよい。
第1シェル層の被覆率、及び第2シェル層の被覆率は、何れも市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いてトナー粒子の断面のTEM(透過電子顕微鏡)撮影像を解析することによって測定できる。例えば、第1シェル層の被覆率は、染色したトナー粒子の断面のTEM撮影像において、トナーコアの表面領域(外縁を示す輪郭線)のうち第1シェル層で覆われた領域の割合を測定することにより得られる。また、第2シェル層の被覆率は、染色したトナー粒子の断面のTEM撮影像において、第1シェル層の表面領域(外縁を示す輪郭線)のうち第2シェル層で覆われた領域の割合を測定することにより得られる。
トナーコアは、結着樹脂以外の成分として、必要に応じて、内添剤(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉の少なくとも1つ)を含有してもよい。
本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、外添剤を備えていてもよい。トナー粒子が外添剤を備える場合には、トナー粒子は、トナーコア、第1シェル層及び第2シェル層を有するトナー母粒子と、外添剤とを備える。外添剤はトナー母粒子の表面に付着する。なお、必要がなければ外添剤を割愛してもよい。外添剤を割愛する場合には、トナー母粒子がトナー粒子に相当する。
以下、本実施形態に係るトナーの詳細について、適宜図面を参照しながら説明する。
[トナー粒子の構成]
以下、図1を参照して、本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子の構成について説明する。図1は、本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子の断面構造の一例を示す図である。なお、説明の容易化のため、図1に示すトナー粒子10が外添剤を備えないトナー粒子である場合について説明する。また、図1において、理解を容易にするため、構成の一部の寸法を誇張して描いている。
図1に示すトナー粒子10は、結着樹脂を含むトナーコア11と、トナーコア11の表面を覆う第1シェル層12と、第1シェル層12の表面を部分的に覆う第2シェル層13とを備える。第1シェル層12は、第1熱可塑性樹脂から構成される第1ドメイン12Aと、第2熱可塑性樹脂から構成される第2ドメイン12Bとを含む。第1熱可塑性樹脂のガラス転移点は、35℃以上66℃以下である。第2熱可塑性樹脂のガラス転移点は、71℃以上105℃以下である。第2シェル層13は、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂よりも強い疎水性を有する第3熱可塑性樹脂を含む。第3熱可塑性樹脂のガラス転移点は、第1熱可塑性樹脂のガラス転移点よりも高い。
低温定着性により優れるトナーを得るためには、図1に示すように、第1ドメイン12Aの表面の少なくとも一部が第2シェル層13で覆われていないことが好ましい。
第1シェル層12は、例えば第1ドメイン12A及び第2ドメイン12Bの海島構造を有する。この場合、第1シェル層12は、島状に分布した第1ドメイン12Aと海状に分布した第2ドメイン12Bとを有してもよく、海状に分布した第1ドメイン12Aと島状に分布した第2ドメイン12Bとを有してもよい。
耐熱保存性により優れるトナーを得るためには、第1熱可塑性樹脂のガラス転移点は、36℃以上であることが好ましい。また、低温定着性により優れるトナーを得るためには、第2熱可塑性樹脂のガラス転移点は、101℃以下であることが好ましい。
耐熱保存性により優れるトナーを得るためには、第3熱可塑性樹脂のガラス転移点は、第1熱可塑性樹脂のガラス転移点よりも10℃以上高いことが好ましく、12℃以上高いことがより好ましい。また、低温定着性により優れるトナーを得るためには、第3熱可塑性樹脂のガラス転移点は、第1熱可塑性樹脂のガラス転移点+45℃以下であることが好ましい。
耐熱保存性により優れ、かつ低温定着性により優れるトナーを得るためには、第3熱可塑性樹脂のガラス転移点は、45℃以上100℃以下であることが好ましく、48℃以上81℃以下であることがより好ましい。
第1シェル層12には、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂以外の成分(例えば他の樹脂)が含まれていてもよい。ただし、耐熱保存性により優れ、かつ低温定着性により優れるトナーを得るためには、第1シェル層12を構成する全成分中の第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂の合計含有量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
第2シェル層13には、第3熱可塑性樹脂以外の成分(例えば他の樹脂)が含まれていてもよい。ただし、耐熱保存性により優れ、かつ耐かぶり性により優れるトナーを得るためには、第2シェル層13を構成する全成分中の第3熱可塑性樹脂の含有量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
耐熱保存性により優れ、かつ低温定着性により優れるトナーを得るためには、第1シェル層12の厚さが1nm以上400nm以下であることが好ましい。第1シェル層12の厚さは、市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて、染色したトナー粒子10の断面のTEM(透過電子顕微鏡)撮影像を解析することによって計測できる。なお、1つのトナー粒子10において第1シェル層12の厚さが均一でない場合には、均等に離間した4箇所(詳しくは、トナー粒子10の断面の略中心で直交する2本の直線を引き、それら2本の直線が第1シェル層12と交差する4箇所)の各々で第1シェル層12の厚さを測定し、得られた4つの測定値の算術平均を、そのトナー粒子10の評価値(第1シェル層12の厚さ)とする。
耐熱保存性により優れ、かつ耐かぶり性により優れるトナーを得るためには、第2シェル層13の厚さが1nm以上400nm以下であることが好ましい。第2シェル層13の厚さの測定方法は、上述した第1シェル層12の厚さの測定方法と同様である。
画像形成に適したトナーを得るためには、トナーコア11の体積中位径(D50)は、4μm以上9μm以下であることが好ましい。
以上、図1を参照しながら、本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子の一例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明に係るトナーに含まれるトナー粒子は、外添剤(図示せず)を備えてもよい。例えば図1に示すトナー粒子10をトナー母粒子とし、このトナー母粒子の表面に外添剤が付着したトナー粒子を、本発明に係るトナーに含まれるトナー粒子としてもよい。
[トナー粒子の要素]
次に、本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子の要素について説明する。
(結着樹脂)
低温定着性により優れるトナーを得るためには、トナーコアは、結着樹脂として熱可塑性樹脂を含有することが好ましく、結着樹脂全体の85質量%以上の割合で熱可塑性樹脂を含有することがより好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)、ビニル樹脂(より具体的には、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、N−ビニル樹脂等)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、及びウレタン樹脂が挙げられる。また、これら各樹脂の共重合体、すなわち上記樹脂中に任意の繰返し単位が導入された共重合体(より具体的には、スチレン−アクリル酸エステル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂等)も、結着樹脂として使用できる。
熱可塑性樹脂は、一種以上の熱可塑性単量体を、付加重合、共重合、又は縮重合させることで得られる。なお、熱可塑性単量体は、単独重合により熱可塑性樹脂になる単量体(より具体的には、アクリル酸エステル系単量体、スチレン系単量体等)、又は縮重合により熱可塑性樹脂になる単量体(例えば、縮重合によりポリエステル樹脂になる多価アルコール及び多価カルボン酸の組合せ)である。
低温定着性により優れるトナーを得るためには、トナーコアが、結着樹脂としてポリエステル樹脂を含有することが好ましい。この場合、後述する繰返し単位(1−1)中のオキサゾリン基との反応性を高めるためには、結着樹脂として含有されるポリエステル樹脂の酸価が、2mgKOH/g以上であることが好ましく、2mgKOH/g以上25mgKOH/g以下であることがより好ましい。
また、ポリエステル樹脂としては、結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂の混合樹脂が好ましい。トナーコアが、結着樹脂として結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂を含むと、内添剤の分散性を高めつつ低温定着性により優れるトナーを得ることができる。この場合、結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂の混合比は、特に限定されず、例えば非結晶性ポリエステル樹脂100質量部に対して結晶性ポリエステル樹脂を1質量部以上30質量部以下の範囲で混合すればよい。
トナーが適度なシャープメルト性を有するためには、トナーコアが、結着樹脂として結晶性指数0.90以上1.20以下の結晶性ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の結晶性指数は、結晶性ポリエステル樹脂を合成するための材料の種類又は使用量(配合比)を変更することで調整できる。なお、樹脂の結晶性指数は、樹脂の融点(Mp:単位℃)に対する樹脂の軟化点(Tm:単位℃)の比率(Tm/Mp)に相当する。非結晶性樹脂については、明確なMpを測定できないことが多い。よって、示差走査熱量計を用いて測定される吸熱曲線において明確に吸熱ピークを判断できない樹脂は、非結晶性樹脂と判断して差し支えない。
ポリエステル樹脂は、一種以上の多価アルコールと一種以上の多価カルボン酸とを縮重合させることで得られる。ポリエステル樹脂を合成するためのアルコールとしては、例えば以下に示すような、2価アルコール(より具体的には、脂肪族ジオール、ビスフェノール等)、及び3価以上のアルコールが挙げられる。ポリエステル樹脂を合成するためのカルボン酸としては、例えば以下に示すような、2価カルボン酸、及び3価以上のカルボン酸が挙げられる。なお、多価カルボン酸の代わりに、多価カルボン酸の無水物、多価カルボン酸ハライド等の縮重合によりエステル結合を形成できる多価カルボン酸誘導体を使用してもよい。
脂肪族ジオールの好適な例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、α,ω−アルカンジオール(より具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,12−ドデカンジオール等)、2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
ビスフェノールの好適な例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、及びビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
3価以上のアルコールの好適な例としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及び1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
2価カルボン酸の好適な例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸(より具体的には、n−ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸等)、及びアルケニルコハク酸(より具体的には、n−ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等)が挙げられる。
3価以上のカルボン酸の好適な例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、及びエンポール三量体酸が挙げられる。
結着樹脂がポリエステル樹脂を含む場合、結着樹脂は、ポリエステル樹脂のみから構成されていてもよく、ポリエステル樹脂と他の樹脂とを含んでいてもよい。また、結着樹脂が結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂を含む場合は、更に結着樹脂がスチレン−アクリル酸系樹脂を含むことが好ましい。スチレン−アクリル酸系樹脂は、一種以上のスチレン系単量体と一種以上のアクリル酸系単量体との共重合体である。結着樹脂がスチレン−アクリル酸系樹脂を含むと、帯電安定性に優れるトナーを得ることができる。
スチレン−アクリル酸系樹脂を合成するためのスチレン系単量体としては、例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、及びp−n−ドデシルスチレンが挙げられる。
スチレン−アクリル酸系樹脂を合成するためのアクリル酸系単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、及び(メタ)アクリル酸フェニルが挙げられる。
(着色剤)
トナーコアは、着色剤を含有していてもよい。着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。トナーを用いて高画質の画像を形成するためには、着色剤の量が、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
トナーコアは、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
トナーコアは、カラー着色剤を含有していてもよい。カラー着色剤としては、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤が挙げられる。
イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリールアミド化合物からなる群より選択される一種以上の化合物を使用できる。イエロー着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、及び194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、並びにC.I.バットイエローが挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物からなる群より選択される一種以上の化合物を使用できる。マゼンタ着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、及び254)が挙げられる。
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物からなる群より選択される一種以上の化合物を使用できる。シアン着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、及び66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、並びにC.I.アシッドブルーが挙げられる。
(離型剤)
トナーコアは、離型剤を含有していてもよい。離型剤は、例えば、耐オフセット性に優れるトナーを得るために使用される。耐オフセット性に優れるトナーを得るためには、離型剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
離型剤としては、例えば、エステルワックス、ポリオレフィンワックス(より具体的には、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等)、マイクロクリスタリンワックス、フッ素樹脂ワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、及びカスターワックスが挙げられる。エステルワックスとしては、天然エステルワックス(より具体的には、カルナバワックス、ライスワックス等)、及び合成エステルワックスが挙げられる。本実施形態では、一種の離型剤を単独で使用してもよいし、複数種の離型剤を併用してもよい。
結着樹脂と離型剤との相溶性を改善するために、相溶化剤をトナーコアに添加してもよい。
(電荷制御剤)
トナーコアは、電荷制御剤を含有していてもよい。電荷制御剤は、例えば、帯電安定性又は帯電立ち上がり特性に優れるトナーを得るために使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電させることができるか否かの指標になる。
トナーコアに正帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナーコアのカチオン性を強めることができる。また、トナーコアに負帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナーコアのアニオン性を強めることができる。
正帯電性の電荷制御剤の例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2−オキサジン、1,3−オキサジン、1,4−オキサジン、1,2−チアジン、1,3−チアジン、1,4−チアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等のアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ−ンBH/C、アジンディープブラックEW、アジンディープブラック3RL等の直接染料;ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZ等の酸性染料;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルデシルヘキシルメチルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルアンモニウムクロライド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩等の4級アンモニウム塩;4級アンモニウムカチオン基を含む樹脂が挙げられる。これらの電荷制御剤の一種のみを使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
負帯電性の電荷制御剤の例としては、キレート化合物である有機金属錯体が挙げられる。有機金属錯体としては、アセチルアセトン金属錯体、サリチル酸系金属錯体、及びこれらの塩が好ましい。
電荷制御剤の含有量は、帯電安定性に優れるトナーを得るためには、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
(磁性粉)
トナーコアは、磁性粉を含有していてもよい。磁性粉の材料としては、例えば、強磁性金属(より具体的には、鉄、コバルト、ニッケル等)及びその合金、強磁性金属酸化物(より具体的には、フェライト、マグネタイト、二酸化クロム等)、並びに強磁性化処理が施された材料(より具体的には、熱処理により強磁性が付与された炭素材料等)が挙げられる。本実施形態では、一種の磁性粉を単独で使用してもよいし、複数種の磁性粉を併用してもよい。
(第1シェル層)
第1シェル層は、ガラス転移点35℃以上66℃以下の第1熱可塑性樹脂から構成される第1ドメインと、ガラス転移点71℃以上105℃以下の第2熱可塑性樹脂から構成される第2ドメインとを含む。耐熱保存性により優れ、かつ低温定着性により優れるトナーを得るためには、第1ドメインに対する第2ドメインの質量比(第2ドメイン/第1ドメイン)は、0.5以上2.5以下であることが好ましい。
トナーコアの結着樹脂がポリエステル樹脂を含む場合、第1シェル層をトナーコアの表面に均一に形成するためには、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂は、何れも下記式(1)で表される化合物(以下、化合物(1)と記載することがある。)を少なくとも含む単量体の重合物であることが好ましい。
Figure 2019191359
式(1)中、R1は、水素原子、又は置換基で置換されていてもよいアルキル基を表す。R1が表わすアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、及びイソプロピル基が挙げられる。R1が置換基で置換されたアルキル基を表す場合、このような置換基の例としては、フェニル基が挙げられる。R1の好適な例としては、水素原子、メチル基、エチル基、及びイソプロピル基が挙げられる。
化合物(1)を少なくとも含む単量体の重合物は、化合物(1)と、他のビニル化合物とを共重合させた重合物であってもよい。他のビニル化合物の種類、及び共重合させる際の化合物(1)に対する他のビニル化合物のモル比の少なくとも一方を変更することにより、得られる共重合物(熱可塑性樹脂)のTgを調整することができる。なお、ビニル化合物は、ビニル基(CH2=CH−)、又はビニル基中の水素が置換された基を有する化合物(より具体的には、エチレン、プロピレン、ブタジエン、塩化ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリロニトリル、スチレン等)である。ビニル化合物は、上記ビニル基等に含まれる炭素−炭素二重結合(C=C)により付加重合して、高分子(樹脂)になり得る。
他のビニル化合物としては、アクリル酸アルキルエステル系単量体、及びスチレン系単量体からなる群より選択される一種以上のビニル化合物が好ましい。
アクリル酸アルキルエステル系単量体としては、例えば下記式(2)で表される化合物(以下、化合物(2)と記載することがある。)、及び下記式(3)で表される化合物(以下、化合物(3)と記載することがある。)が挙げられる。
Figure 2019191359
式(2)中、R2は、置換基で置換されていてもよいアルキル基を表す。R2が表わすアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及び2−エチルヘキシル基が挙げられる。R2が置換基で置換されたアルキル基を表す場合、このような置換基の例としては、ヒドロキシル基が挙げられる。R2の好適な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、2−エチルヘキシル基、ヒドロキシエチル基(例えば2−ヒドロキシエチル基)、ヒドロキシプロピル基、及びヒドロキシブチル基が挙げられる。
Figure 2019191359
式(3)中、R3は、置換基で置換されていてもよいアルキル基を表す。R3が表わすアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及び2−エチルヘキシル基が挙げられる。R3が置換基で置換されたアルキル基を表す場合、このような置換基の例としては、ヒドロキシル基が挙げられる。R3の好適な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、2−エチルヘキシル基、ヒドロキシエチル基(例えば2−ヒドロキシエチル基)、ヒドロキシプロピル基、及びヒドロキシブチル基が挙げられる。
化合物(1)は、付加重合により下記式(1−1)で表される繰返し単位(以下、繰返し単位(1−1)と記載する。)を形成する。下記式(1−1)中のR1は、式(1)中のR1と同義である。
Figure 2019191359
繰返し単位(1−1)は、未開環のオキサゾリン基を有する。未開環のオキサゾリン基は、環状構造を有し、強い正帯電性を示す。未開環のオキサゾリン基は、カルボキシル基、芳香族性スルファニル基、及び芳香族性ヒドロキシル基と反応し易い。例えば、第1シェル層中の繰返し単位(1−1)がトナーコア中のポリエステル樹脂のカルボキシル基と反応すると、オキサゾリン基が開環し、下記式(1−2)に示すようにアミド結合及びエステル結合が形成される。こうした結合が形成されることで、トナーコアと第1シェル層との結合が強固になり、トナーコアからの第1シェル層の脱離が抑制されることになる。なお、下記式(1−2)中のR1は、式(1)中のR1と同義である。下記式(1−2)中の*は、トナーコアに含まれるポリエステル樹脂中の原子に結合する部位を表す。
Figure 2019191359
トナーの正帯電性を高めつつ、トナーコアからの第1シェル層の脱離を抑制するためには、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂は、何れも繰返し単位(1−1)と、式(1−2)で表される繰返し単位(以下、繰返し単位(1−2)と記載する。)とを有するビニル樹脂であることが好ましい。以下、繰返し単位(1−1)と繰返し単位(1−2)とを有するビニル樹脂を、特定ビニル樹脂と記載することがある。特定ビニル樹脂中の繰返し単位(1−1)の割合(モル比)が高くなるほど、特定ビニル樹脂の正帯電性(ひいてはトナーの正帯電性)が高くなる傾向がある。一方、特定ビニル樹脂中の繰返し単位(1−2)の割合(モル比)が高くなるほど、トナーコアと第1シェル層との結合が強固になる傾向がある。正帯電性を高めつつ、トナーコアからの第1シェル層の脱離をより抑制するためには、第1シェル層が特定ビニル樹脂のみから構成されていることが好ましい。特定ビニル樹脂中の繰返し単位(1−1)と繰返し単位(1−2)とのモル比は、例えば、結着樹脂の酸価、及び第1シェル層を形成する際の開環剤(例えば酢酸水溶液)の使用量の少なくとも一方を変更することにより調整できる。
第1シェル層中のオキサゾリン基が開環して繰返し単位(1−2)が形成されたことを確認する方法としては、例えば、以下に示す方法が挙げられる。詳しくは、所定量のトナー粒子(試料)を溶剤に溶解させる。得られた溶液をNMR(核磁気共鳴)測定用試験管に入れ、NMR装置を用いて1H−NMRスペクトルを測定する。1H−NMRスペクトルでは、化学シフトδ6.5付近に、第2級アミドに由来する三重線(トリプレット)のシグナルが出現する。よって、得られた1H−NMRスペクトルにおいて、化学シフトδ6.5付近に三重線のシグナルが確認されれば、第1シェル層中のオキサゾリン基が開環して繰返し単位(1−2)が形成されたと推定される。1H−NMRスペクトルの測定条件の一例としては、以下に示す条件が挙げられる。
1H−NMRスペクトルの測定条件の一例)
NMR装置:フーリエ変換核磁気共鳴装置(FT−NMR)(日本電子株式会社製「JNM−AL400」)
NMR測定用試験管:5mm試験管
溶剤:重水素化クロロホルム(1mL)
試料温度:20℃
試料質量:20mg
積算回数:128回
化学シフトの内部基準物質:テトラメチルシラン(TMS)
特定ビニル樹脂は、繰返し単位(1−1)及び繰返し単位(1−2)以外に、例えば化合物(2)に由来する繰返し単位及び化合物(3)に由来する繰返し単位の少なくとも一方を更に含んでいてもよい。
なお、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂の少なくとも一方が特定ビニル樹脂である場合、特定ビニル樹脂のTgは、トナーコアとの反応でアミド結合及びエステル結合が形成される前のビニル樹脂(繰返し単位(1−2)を含まないビニル樹脂)を測定対象として得られた値である。
トナーコアの結着樹脂が、テレフタル酸由来の繰返し単位を有するポリエステル樹脂を含み、かつ第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂が、何れも化合物(1)を少なくとも含む単量体の重合物である場合、以下に示す条件で測定されたテレフタル酸の含有量が100質量ppm以下であることが好ましい。すなわち、本実施形態に係るトナー2gと、温度50℃の蒸留水50gとを攪拌しながら混合した後、遠心分離して得られる上澄み液中のテレフタル酸の含有量(以下、テレフタル酸含有量と記載することがある。)が、100質量ppm以下であることが好ましい。上澄み液中のテレフタル酸は、ポリエステル樹脂を合成した際に反応しなかった成分(残留した単量体)である。テレフタル酸含有量が100質量ppm以下である場合、トナーコア中の結着樹脂のブリードアウト(特に、結着樹脂の低分子量成分のブリードアウト)を抑制できるため、耐熱保存性により優れるトナーを得ることができる。トナーの製造コストを低減させるためには、テレフタル酸含有量は、10質量ppm以上であることが好ましい。なお、トナーコアの結着樹脂が複数種のポリエステル樹脂を含む場合、上記「テレフタル酸由来の繰返し単位を有するポリエステル樹脂」は、複数種のポリエステル樹脂のうちの少なくとも一種である。
テレフタル酸含有量は、高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと記載することがある。)により測定して得ることが好ましい。テレフタル酸含有量をHPLCにより測定する際は、カラムの目詰まりを防ぐために、上澄み液をフィルター(例えば孔径0.45μmのフィルター)で濾過した後、得られた濾液中のテレフタル酸の含有量をHPLCにより測定することが好ましい。以下、テレフタル酸含有量は、上澄み液をフィルターで濾過して得られた濾液を測定する場合、「濾液中のテレフタル酸の含有量」に相当する。また、テレフタル酸含有量は、上澄み液を濾過せずにそのまま測定する場合、「上澄み液中のテレフタル酸の含有量」に相当する。HPLCによりテレフタル酸含有量を測定する方法は、後述する実施例と同じ方法又はその代替方法である。
(第2シェル層)
第2シェル層は、第1熱可塑性樹脂よりも強い疎水性を有し、かつ第2熱可塑性樹脂よりも強い疎水性を有する第3熱可塑性樹脂(疎水性樹脂)を含む。また、第3熱可塑性樹脂のガラス転移点は、第1熱可塑性樹脂のガラス転移点よりも高い。第3熱可塑性樹脂としては、上記条件を備えている限り、特に限定されないが、疎水性を強めるためには、親水性基(より具体的には、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、オキサゾリン基等)を有する繰返し単位を含まない熱可塑性樹脂が好ましい。
耐かぶり性により優れるトナーを得るためには、第3熱可塑性樹脂は、スチレン−アクリル酸アルキルエステル系樹脂であることが好ましい。スチレン−アクリル酸アルキルエステル系樹脂は、一種以上のスチレン系単量体と一種以上のアクリル酸アルキルエステル系単量体との共重合体である。スチレン系単量体の種類、アクリル酸アルキルエステル系単量体の種類、及び共重合させる際のスチレン系単量体に対するアクリル酸アルキルエステル系単量体のモル比の少なくとも1つを変更することにより、得られる共重合物(熱可塑性樹脂)のTgを調整することができる。スチレン−アクリル酸アルキルエステル系樹脂を合成するための単量体としては、例えば以下に示すような、スチレン系単量体及びアクリル酸アルキルエステル系単量体を好適に使用できる。
スチレン系単量体の好適な例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、及びp−エチルスチレンが挙げられる。
アクリル酸アルキルエステル系単量体の好適な例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。
(材料の組合せ)
低温定着性、耐熱保存性及び耐かぶり性により優れるトナーを得るためには、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂が、何れも化合物(1)を少なくとも含む単量体の重合物であり、第3熱可塑性樹脂がスチレン−アクリル酸アルキルエステル系樹脂であることが好ましい。同様の理由から、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂が、何れも化合物(1)を少なくとも含む単量体の重合物であり、第3熱可塑性樹脂がスチレン−アクリル酸アルキルエステル系樹脂であり、第3熱可塑性樹脂のガラス転移点が第1熱可塑性樹脂のガラス転移点よりも10℃以上高いことがより好ましい。
(外添剤)
トナー粒子は、外添剤を更に備えてもよい。外添剤の外添方法としては、例えば、図1に示すトナー粒子10をトナー母粒子として用い、このトナー母粒子(粉体)と外添剤粒子(粉体)とを一緒に攪拌することで、トナー母粒子の表面に外添剤粒子を付着させる方法が挙げられる。
外添剤粒子としては、樹脂粒子及び無機粒子が好ましい。無機粒子としては、シリカ粒子、及び金属酸化物(より具体的には、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等)の粒子が好ましい。本実施形態では、一種類の外添剤粒子を単独で使用してもよいし、複数種の外添剤粒子を併用してもよい。
トナー母粒子からの外添剤粒子の脱離を抑制しながら外添剤の機能を十分に発揮させるためには、外添剤の量(複数種の外添剤粒子を使用する場合には、それら外添剤粒子の合計量)が、トナー母粒子100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
流動性に優れるトナーを得るためには、外添剤粒子として、個数平均一次粒子径5nm以上500nm以下の無機粒子(粉体)を使用することが好ましい。
外添剤粒子は、表面処理されていてもよい。例えば、外添剤粒子としてシリカ粒子を使用する場合、表面処理剤によりシリカ粒子の表面に疎水性及び/又は正帯電性が付与されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、カップリング剤(より具体的には、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等)、シラザン化合物(より具体的には、鎖状シラザン化合物、環状シラザン化合物等)、及びシリコーンオイル(より具体的には、ジメチルシリコーンオイル等)が挙げられる。表面処理剤としては、シランカップリング剤及びシラザン化合物が特に好ましい。シランカップリング剤の好適な例としては、シラン化合物(より具体的には、メチルトリメトキシシラン、アミノシラン等)が挙げられる。シラザン化合物の好適な例としては、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)が挙げられる。シリカ基体(未処理のシリカ粒子)の表面が表面処理剤で処理されると、シリカ基体の表面に存在する多数のヒドロキシル基(−OH)が部分的に又は全体的に、表面処理剤に由来する官能基に置換される。その結果、表面処理剤に由来する官能基(詳しくは、ヒドロキシル基よりも疎水性及び/又は正帯電性の強い官能基)を表面に有するシリカ粒子が得られる。
<トナーの製造方法>
次に、上述した実施形態に係るトナーの好適な製造方法について説明する。以下、上述した実施形態に係るトナーと重複する構成要素については説明を省略する。
[トナーコアの調製工程]
まず、凝集法又は粉砕法によりトナーコアを調製する。
凝集法は、例えば、凝集工程及び合一化工程を含む。凝集工程では、トナーコアを構成する成分を含む微粒子を水性媒体中で凝集させて、凝集粒子を形成する。合一化工程では、凝集粒子に含まれる成分を水性媒体中で合一化させてトナーコアを形成する。
次に粉砕法を説明する。粉砕法によれば、比較的容易にトナーコアを調製できる上、製造コストの低減が可能である。粉砕法でトナーコアを調製する場合、トナーコアの調製工程は、例えば溶融混練工程と、粉砕工程とを備える。トナーコアの調製工程は、溶融混練工程の前に混合工程を更に備えてもよい。また、トナーコアの調製工程は、粉砕工程後に、微粉砕工程及び分級工程の少なくとも一方を更に備えてもよい。
混合工程では、例えば、結着樹脂と、必要に応じて添加する内添剤とを混合して、混合物を得る。溶融混練工程では、トナー材料を溶融し混練して、溶融混練物を得る。トナー材料としては、例えば混合工程で得られる混合物が用いられる。粉砕工程では、得られた溶融混練物を、例えば室温(25℃)まで冷却した後、粉砕して粉砕物を得る。粉砕工程で得られた粉砕物の小径化が必要な場合は、粉砕物を更に粉砕する工程(微粉砕工程)を実施してもよい。また、粉砕物の粒径を揃える場合は、得られた粉砕物を分級する工程(分級工程)を実施してもよい。以上の工程により、粉砕物であるトナーコアが得られる。
[第1シェル層の形成工程]
続いて、容器に、得られたトナーコアと、第1シェル層を形成するための原料(シェル原料)と、水(例えばイオン交換水)とを入れた後、容器内容物を攪拌しながら、容器内温を、設定温度(例えば60℃以上70℃以下の温度)になるまで昇温させる。シェル原料としては、例えば、化合物(1)を少なくとも含む単量体の重合物の水溶液(以下、オキサゾリン基含有高分子水溶液と記載することがある。)が挙げられる。オキサゾリン基含有高分子水溶液は、例えば、Tgが相違する二種のオキサゾリン基含有高分子を含む。以下、トナーコアが結着樹脂としてポリエステル樹脂を含み、かつ第1シェル層を形成するためのシェル原料として、オキサゾリン基含有高分子水溶液を用いる場合について説明する。
容器内温を昇温させる際の昇温速度は、例えば0.4℃/分以上0.6℃/分以下である。昇温中に、シェル原料のオキサゾリン基を開環させる開環剤(例えば、酢酸水溶液)及び/又はシェル原料を添加してもよい。
容器内温が設定温度に到達した後、設定温度を所定時間(例えば30分以上90分以下)保ちつつ、容器内容物を攪拌することにより、オキサゾリン基含有高分子のオキサゾリン基の一部が、トナーコアの表面に存在するカルボキシル基(ポリエステル樹脂が有するカルボキシル基)と反応する。この反応により、オキサゾリン基が開環すると共に、アミド結合及びエステル結合が形成される。これにより、トナーコアの表面を覆う第1シェル層が形成されると共に、第1シェル層がトナーコアの表面に固定される。第1シェル層の被覆率は、オキサゾリン基含有高分子水溶液中のオキサゾリン基含有高分子の濃度(固形分濃度)、及びオキサゾリン基含有高分子水溶液の使用量の少なくとも一方を変更することで調整できる。また、トナーコアの結着樹脂がテレフタル酸由来の繰返し単位を有するポリエステル樹脂を含む場合、第1シェル層の被覆率が高くなるほど上述したテレフタル酸含有量が少なくなる。また、上述した第1ドメインに対する第2ドメインの質量比(第2ドメイン/第1ドメイン)は、例えば、シェル原料であるオキサゾリン基含有高分子水溶液中の二種のオキサゾリン基含有高分子の質量比を変更することで調整できる。
[第2シェル層の形成工程]
続けて、容器内に、第2シェル層を形成するためのシェル原料として、疎水性樹脂粒子の懸濁液(以下、疎水性樹脂粒子懸濁液と記載することがある。)を加えた後、容器内温を例えば60℃以上70℃以下の温度に保ちつつ、容器内容物を所定時間(例えば30分以上90分以下)攪拌する。これにより、疎水性樹脂粒子懸濁液に含まれる疎水性樹脂粒子が第1シェル層の表面の一部に付着する。その結果、第1シェル層の表面を部分的に覆う第2シェル層が形成される。次いで、容器内容物を室温(25℃)まで冷却して、トナー母粒子を含む分散液を得る。疎水性樹脂粒子懸濁液中の疎水性樹脂粒子の個数平均一次粒子径は、例えば40nm以上80nm以下である。第2シェル層の被覆率は、疎水性樹脂粒子懸濁液中の疎水性樹脂粒子の濃度(固形分濃度)、疎水性樹脂粒子懸濁液中の疎水性樹脂粒子の個数平均一次粒子径、及び疎水性樹脂粒子懸濁液の使用量の少なくとも1つを変更することで調整できる。
[洗浄工程及び乾燥工程]
得られたトナー母粒子の分散液をイオン交換水で洗浄した後、例えば連続式表面改質装置を用いてトナー母粒子を乾燥させる。これにより、トナー母粒子の粉体が得られる。
[外添工程]
その後、必要に応じて、混合機(例えば、日本コークス工業株式会社製のFMミキサー)を用いて、得られたトナー母粒子と外添剤とを混合して、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させてもよい。なお、トナー母粒子に外添剤を付着させずに、トナー母粒子をトナー粒子として使用してもよい。こうして、上述した実施形態に係るトナー(トナー粒子の粉体)が得られる。
以下、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。まず、軟化点(Tm)、ガラス転移点(Tg)及び融点(Mp)の測定方法について説明する。
<Tmの測定>
高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)に、試料(詳しくは、樹脂、樹脂粒子、及びトナーコアの何れか)を充填した。続いて、ダイス細孔径1mm、プランジャー荷重20kg/cm2、昇温速度6℃/分の条件で、1cm3の試料を溶融流出させて、試料のS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)を得た。得られたS字カーブから試料の軟化点を読み取った。S字カーブにおいて、ストロークの最大値をS1とし、低温側のベースラインのストローク値をS2としたときに、S字カーブ中のストロークの値が「(S1+S2)/2」となる温度が、試料の軟化点(Tm)に相当する。
<Tg及びMpの測定>
測定装置として、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いた。試料(詳しくは、樹脂、樹脂粒子、及びトナーコアの何れか)55mgをアルミ皿(アルミニウム製の容器)に入れて、そのアルミ皿を測定装置の測定部にセットした。また、リファレンスとして空のアルミ皿を使用した。次いで、測定部の温度を、測定開始温度である−20℃から170℃まで10℃/分の速度で昇温させた(第1回目の昇温:RUN1)。その後、測定部の温度を170℃から−20℃まで10℃/分の速度で降温させた。続けて、測定部の温度を再び−20℃から170℃まで10℃/分の速度で昇温させた(第2回目の昇温:RUN2)。RUN2により、試料の吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)を得た。得られた吸熱曲線から、試料のTg及びMpを読み取った。吸熱曲線中、ガラス転移に起因する変曲点(詳しくは、ベースラインの外挿線と立ち下がりラインの外挿線との交点)の温度が試料のTg(ガラス転移点)に相当し、融解熱による吸熱ピークの温度(すなわち、吸熱量が最大になる温度)が試料のMp(融点)に相当する。
<結着樹脂の合成>
[非結晶性ポリエステル樹脂R−1の合成]
温度計(熱電対)、脱水管、窒素導入管、及び攪拌装置を備えた容量10Lの4つ口フラスコ内に、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(プロピレンオキサイドの平均付加モル数:2モル)370gと、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(エチレンオキサイドの平均付加モル数:2モル)3059gと、テレフタル酸1194gと、フマル酸286gと、2−エチルヘキサン酸錫(II)10gと、没食子酸2gとを入れた。続けて、窒素雰囲気かつ温度230℃の条件で、反応率が90質量%に達するまで、フラスコ内容物を反応させた。反応率は、式「反応率=100×実際の反応生成水量/理論生成水量」に従って計算した。続けて、減圧雰囲気(圧力8.3kPa)かつ温度230℃の条件で、反応生成物(樹脂)のTmが89℃になるまでフラスコ内容物を反応させて、非結晶性ポリエステル樹脂R−1(酸価:5.3mgKOH/g)を得た。非結晶性ポリエステル樹脂R−1のTgは、50℃であった。
[非結晶性ポリエステル樹脂R−2の合成]
温度計(熱電対)、脱水管、窒素導入管、及び攪拌装置を備えた容量10Lの4つ口フラスコ内に、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(プロピレンオキサイドの平均付加モル数:2モル)1286gと、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(エチレンオキサイドの平均付加モル数:2モル)2218gと、テレフタル酸1603gと、2−エチルヘキサン酸錫(II)10gと、没食子酸2gとを入れた。続けて、窒素雰囲気かつ温度230℃の条件で、反応率が90質量%に達するまで、フラスコ内容物を反応させた。続けて、減圧雰囲気(圧力8.3kPa)かつ温度230℃の条件で、反応生成物(樹脂)のTmが111℃になるまでフラスコ内容物を反応させて、非結晶性ポリエステル樹脂R−2(酸価:25.0mgKOH/g)を得た。非結晶性ポリエステル樹脂R−2のTgは、69℃であった。
[非結晶性ポリエステル樹脂R−3の合成]
温度計(熱電対)、脱水管、窒素導入管、及び攪拌装置を備えた容量10Lの4つ口フラスコ内に、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(プロピレンオキサイドの平均付加モル数:2モル)4907gと、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(エチレンオキサイドの平均付加モル数:2モル)1942gと、フマル酸757gと、n−ドデシルコハク酸無水物2078gと、2−エチルヘキサン酸錫(II)30gと、没食子酸2gとを入れた。続けて、窒素雰囲気かつ温度230℃の条件で、反応率が90質量%に達するまで、フラスコ内容物を反応させた。続けて、減圧雰囲気(圧力8.3kPa)かつ温度230℃の条件で1時間反応させた。続けて、フラスコ内に無水トリメリット酸548gを入れて、減圧雰囲気(圧力8.3kPa)かつ温度220℃の条件で、反応生成物(樹脂)のTmが135℃になるまでフラスコ内容物を反応させて、非結晶性ポリエステル樹脂R−3(酸価:13.0mgKOH/g)を得た。非結晶性ポリエステル樹脂R−3のTgは、58℃であった。
[結晶性ポリエステル樹脂とスチレン−アクリル酸共重合体との複合樹脂の合成]
温度計(熱電対)、脱水管、窒素導入管、及び攪拌装置を備えた容量10Lの4つ口フラスコ内に、1,6−ヘキサンジオール2643gと、1,4−ブタンジオール864gと、コハク酸2945gとを入れた後、フラスコ内温を160℃に上げてフラスコ内容物を溶解させた。次いで、フラスコ内に、スチレン1831gとアクリル酸161gとジクミルパーオキサイド110gとの混合溶液を、滴下漏斗により1時間かけて滴下した。次いで、窒素雰囲気かつ温度170℃の条件で1時間反応させた後、減圧雰囲気(圧力8.3kPa)かつ温度120℃の条件で、1時間かけて未反応のスチレン及びアクリル酸を除去した。その後、フラスコ内の圧力を大気圧に戻し、フラスコ内に、2−エチルヘキサン酸錫(II)40gと、没食子酸3gとを入れた後、窒素雰囲気かつ温度210℃の条件で、フラスコ内容物を8時間反応させた。次いで、減圧雰囲気(圧力8.3kPa)かつ温度210℃の条件で1時間反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂とスチレン−アクリル酸共重合体との複合樹脂(以下、複合樹脂R−4と記載する。)を得た。複合樹脂R−4は、酸価が2.2mgKOH/gであり、Tmが92℃であり、Mpが96℃であり、結晶性指数(Tm/Mp)が0.96であった。
<オキサゾリン基含有高分子水溶液の調製>
[オキサゾリン基含有高分子水溶液OAの調製]
温度計(熱電対)、還流冷却器、窒素導入管、及び攪拌装置を備えた4つ口フラスコ内に、イオン交換水1350gと、過硫酸ナトリウム5gと、単量体としての2−ビニル−2−オキサゾリン120gと、単量体としてのアクリル酸2−ヒドロキシエチル3gとを入れた。次いで、窒素気流下、フラスコ内温を50℃まで昇温させた後、フラスコ内温を50℃±1℃に保ち、回転速度250rpmでフラスコ内容物を10時間攪拌することにより、単量体の重合反応を行った。次いで、フラスコ内容物を温度25℃まで冷却し、オキサゾリン基含有高分子水溶液OA(固形分濃度10.0質量%)を得た。オキサゾリン基含有高分子水溶液OA中のオキサゾリン基含有高分子(熱可塑性樹脂)は、Tgが108℃であった。オキサゾリン基含有高分子水溶液OA中のオキサゾリン基含有高分子のTgは、オキサゾリン基含有高分子水溶液OAを100℃に設定したオーブン中で乾燥させた後、得られた樹脂(固形分)を測定対象として得られた値である。以下で説明する各オキサゾリン基含有高分子水溶液中のオキサゾリン基含有高分子のTgについても同様である。
[オキサゾリン基含有高分子水溶液OBの調製]
単量体として、2−ビニル−2−オキサゾリン120gのみを用いたこと以外は、オキサゾリン基含有高分子水溶液OAの調製と同様の方法でオキサゾリン基含有高分子水溶液OB(固形分濃度10.0質量%)を得た。オキサゾリン基含有高分子水溶液OB中のオキサゾリン基含有高分子(熱可塑性樹脂)は、Tgが101℃であった。
[オキサゾリン基含有高分子水溶液OCの調製]
反応させる単量体を、2−ビニル−2−オキサゾリン30g及びアクリル酸メチル35gに変更したこと以外は、オキサゾリン基含有高分子水溶液OAの調製と同様の方法でオキサゾリン基含有高分子水溶液OC(固形分濃度5.0質量%)を得た。オキサゾリン基含有高分子水溶液OC中のオキサゾリン基含有高分子(熱可塑性樹脂)は、Tgが71℃であった。
[オキサゾリン基含有高分子水溶液ODの調製]
反応させる単量体を、2−ビニル−2−オキサゾリン30g及びアクリル酸メチル45gに変更したこと以外は、オキサゾリン基含有高分子水溶液OAの調製と同様の方法でオキサゾリン基含有高分子水溶液OD(固形分濃度6.0質量%)を得た。オキサゾリン基含有高分子水溶液OD中のオキサゾリン基含有高分子(熱可塑性樹脂)は、Tgが66℃であった。
[オキサゾリン基含有高分子水溶液OEの調製]
反応させる単量体を、2−ビニル−2−オキサゾリン30g、アクリル酸メチル25g及びアクリル酸n−ブチル10gに変更したこと以外は、オキサゾリン基含有高分子水溶液OAの調製と同様の方法でオキサゾリン基含有高分子水溶液OE(固形分濃度5.0質量%)を得た。オキサゾリン基含有高分子水溶液OE中のオキサゾリン基含有高分子(熱可塑性樹脂)は、Tgが36℃であった。
[オキサゾリン基含有高分子水溶液OFの調製]
反応させる単量体を、2−ビニル−2−オキサゾリン30g、アクリル酸メチル20g及びアクリル酸n−ブチル15gに変更したこと以外は、オキサゾリン基含有高分子水溶液OAの調製と同様の方法でオキサゾリン基含有高分子水溶液OF(固形分濃度5.0質量%)を得た。オキサゾリン基含有高分子水溶液OF中のオキサゾリン基含有高分子(熱可塑性樹脂)は、Tgが32℃であった。
<疎水性樹脂粒子懸濁液の調製>
[疎水性樹脂粒子懸濁液RP−1の調製]
温度計及び攪拌羽根を備えた容量2Lの3つ口フラスコに、イオン交換水875mLと、カチオン界面活性剤(日本乳化剤株式会社製「テクスノール(登録商標)R5」、成分:アルキルベンジルアンモニウム塩)5mLとを入れた。次いで、ウォーターバスを用いてフラスコの内温を80℃に昇温させた後、フラスコ内に二種類の液(第1の液及び第2の液)をそれぞれ5時間かけて滴下した。第1の液は、スチレン12mLとメタクリル酸エチル5mLとアクリル酸メチル3mLとの混合液であった。第2の液は、過硫酸カリウム0.5gをイオン交換水30mLに溶かした溶液であった。続けて、フラスコ内の温度を80℃に保ち、回転速度250rpmでフラスコ内容物を2時間攪拌することにより、フラスコ内容物を重合させた。その結果、疎水性樹脂粒子懸濁液RP−1(固形分濃度5.0質量%)が得られた。疎水性樹脂粒子懸濁液RP−1中の疎水性樹脂粒子(スチレン−アクリル酸アルキルエステル系樹脂の粒子)は、個数平均一次粒子径が48nmであり、Tgが81℃であった。疎水性樹脂粒子懸濁液RP−1中の疎水性樹脂粒子の個数平均一次粒子径及びTgは、疎水性樹脂粒子懸濁液RP−1を100℃に設定したオーブン中で乾燥させた後、得られた疎水性樹脂(熱可塑性樹脂)の粒子(固形分)を測定対象として、それぞれ得られた値である。以下で説明する各疎水性樹脂粒子懸濁液中の疎水性樹脂粒子の個数平均一次粒子径及びTgについても同様である。
[疎水性樹脂粒子懸濁液RP−2の調製]
カチオン界面活性剤(日本乳化剤株式会社製「テクスノール(登録商標)R5」)の添加量を75mLに変更したこと、及び第1の液をスチレン12mLとメタクリル酸n−ブチル3mLとアクリル酸n−ブチル4mLとの混合液に変更したこと以外は、疎水性樹脂粒子懸濁液RP−1の調製と同様の方法で、疎水性樹脂粒子懸濁液RP−2(固形分濃度4.5質量%)を得た。疎水性樹脂粒子懸濁液RP−2中の疎水性樹脂粒子(スチレン−アクリル酸アルキルエステル系樹脂の粒子)は、個数平均一次粒子径が75nmであり、Tgが35℃であった。
[疎水性樹脂粒子懸濁液RP−3の調製]
第1の液をスチレン12mLとメタクリル酸エチル2mLとアクリル酸エチル5mLとの混合液に変更したこと以外は、疎水性樹脂粒子懸濁液RP−1の調製と同様の方法で、疎水性樹脂粒子懸濁液RP−3(固形分濃度4.5質量%)を得た。疎水性樹脂粒子懸濁液RP−3中の疎水性樹脂粒子(スチレン−アクリル酸アルキルエステル系樹脂の粒子)は、個数平均一次粒子径が67nmであり、Tgが48℃であった。
<トナーTA−1〜TA−7及びTB−1〜TB−6の作製>
次に、トナーTA−1〜TA−7及びTB−1〜TB−6の作製方法について説明する。なお、以下において、トナーコアの表面を覆う第1シェル層を構成する二種の熱可塑性樹脂のうち、比較的Tgが低い熱可塑性樹脂を第1熱可塑性樹脂とし、比較的Tgが高い熱可塑性樹脂を第2熱可塑性樹脂として説明する。また、第1シェル層の表面を部分的に覆う第2シェル層を構成する樹脂を、第3熱可塑性樹脂として説明する。
[トナーTA−1の作製]
(トナーコアの調製工程)
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−20B」)を用いて、300gの非結晶性ポリエステル樹脂R−1と、100gの非結晶性ポリエステル樹脂R−2と、600gの非結晶性ポリエステル樹脂R−3と、100gの複合樹脂R−4と、12gの第1離型剤(株式会社加藤洋行製「カルナウバワックス1号」、成分:カルナバワックス)と、48gの第2離型剤(日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP−3」、成分:合成エステルワックス)と、144gの着色剤(山陽色素株式会社製「カラーテックス(登録商標)ブルーB1021」、成分:フタロシアニンブルー)とを、回転速度2400rpmで混合した。
続けて、得られた混合物を、2軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて、材料供給速度5kg/時、軸回転速度160rpm、設定温度(シリンダー温度)100℃の条件で溶融混練した。その後、得られた混練物を冷却した。続けて、冷却された混練物を、粉砕機(旧東亜機械製作所製「ロートプレックス16/8型」)を用いて粗粉砕した。続けて、得られた粗粉砕物を、ジェットミル(日本ニューマチック工業株式会社製「超音波ジェットミルI型」)を用いて微粉砕した。続けて、得られた微粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)を用いて分級した。その結果、Tm90℃、Tg49℃、体積中位径(D50)6.7μmのトナーコアが得られた。
(第1シェル層の形成工程)
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコをウォーターバスにセットし、フラスコ内にイオン交換水300mLを入れた。そして、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を30℃に保った。続けて、フラスコ内に、12.0gのオキサゾリン基含有高分子水溶液OEと、28.0gのオキサゾリン基含有高分子水溶液OCとを加えた後、フラスコ内容物を攪拌した。続けて、フラスコ内に、上述の手順で得られたトナーコア300gを添加し、回転速度200rpmでフラスコ内容物を1時間攪拌した。その後、フラスコ内にイオン交換水300mLを添加した。続けて、回転速度250rpmでフラスコ内容物を攪拌しながら、フラスコ内の温度を0.5℃/分の速度で68℃まで昇温させた。続けて、回転速度100rpmでフラスコ内容物を攪拌しながら、その温度(68℃)に1時間保った。フラスコ内容物の温度を68℃に保っている間に、トナーコアの表面を覆う第1シェル層が形成された。第1シェル層は、第1熱可塑性樹脂(オキサゾリン基含有高分子水溶液OE中のオキサゾリン基含有高分子)により形成された第1ドメイン、及び第2熱可塑性樹脂(オキサゾリン基含有高分子水溶液OC中のオキサゾリン基含有高分子)により形成された第2ドメインのみを含んでいた。第1シェル層において、第1ドメインに対する第2ドメインの質量比(第2ドメイン/第1ドメイン)は、2.5であった。
(第2シェル層の形成工程)
続けて、フラスコ内に、10gの疎水性樹脂粒子懸濁液RP−1を加えた後、回転速度100rpmでフラスコ内容物を攪拌しながら、フラスコ内容物の温度を68℃に1時間保った。フラスコ内容物の温度を68℃に保っている間に、第1シェル層の表面を部分的に覆う第2シェル層が形成された。第2シェル層は、第1シェル層の表面のうち、第1ドメインを選択的に覆っていた。第2シェル層は、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂よりも強い疎水性を有する第3熱可塑性樹脂(疎水性樹脂粒子懸濁液RP−1中の疎水性樹脂粒子を構成する疎水性樹脂)により形成されていた。次いで、フラスコ内容物を室温(25℃)まで冷却して、トナー母粒子を含む分散液を得た。
(洗浄工程)
得られたトナー母粒子の分散液を、ブフナー漏斗を用いて濾過(固液分離)して、ウェットケーキ状のトナー母粒子を得た。このウェットケーキ状のトナー母粒子をイオン交換水に再分散させた後、ブフナー漏斗を用いて濾過した。更に、再分散と濾過とを5回繰り返して、トナー母粒子を洗浄した。
(乾燥工程)
次いで、洗浄したトナー母粒子を、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させた。これにより、トナー母粒子のスラリーが得られた。続けて、連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)を用いて、熱風温度45℃かつブロアー風量2m3/分の条件で、スラリー中のトナー母粒子を乾燥させた。
(外添工程)
乾燥させたトナー母粒子100質量部と、疎水性フュームドシリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)R972」、疎水化剤:ジメチルジクロロシラン(DDS)、個数平均一次粒子径:16nm)1.50質量部と、導電性酸化チタン粒子(チタン工業株式会社製「EC−100」、基体:TiO2粒子、被覆層:SbドープSnO2膜、個数平均一次粒子径:0.35μm)1.00質量部と、架橋樹脂粒子(樹脂:架橋スチレン−アクリル酸系樹脂、個数平均一次粒子径:0.08μm)1.25質量部とを、容量10LのFMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて10分間混合することにより、トナー母粒子の表面に外添剤(疎水性フュームドシリカ粒子、導電性酸化チタン粒子、及び架橋樹脂粒子)を付着させた。なお、疎水性フュームドシリカ粒子については、ジェットミル(日本ニューマチック工業株式会社製「超音波ジェットミルI型」)を用いて解砕処理したものを用いた。得られた粉体(外添剤が付着したトナー母粒子の粉体)を、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別した。その結果、正帯電性のトナーTA−1が得られた。
[トナーTA−2の作製]
第1シェル層の形成工程のオキサゾリン基含有高分子水溶液を、12.0gのオキサゾリン基含有高分子水溶液OE及び7.0gのオキサゾリン基含有高分子水溶液OBに変更したこと以外は、トナーTA−1の作製と同様の方法で、正帯電性のトナーTA−2を得た。トナーTA−2では、第1シェル層が、第1熱可塑性樹脂(オキサゾリン基含有高分子水溶液OE中のオキサゾリン基含有高分子)により形成された第1ドメイン、及び第2熱可塑性樹脂(オキサゾリン基含有高分子水溶液OB中のオキサゾリン基含有高分子)により形成された第2ドメインのみを含んでいた。トナーTA−2の第1シェル層において、第1ドメインに対する第2ドメインの質量比(第2ドメイン/第1ドメイン)は、0.5であった。また、トナーTA−2では、第2シェル層が、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂よりも強い疎水性を有する第3熱可塑性樹脂(疎水性樹脂粒子懸濁液RP−1中の疎水性樹脂粒子を構成する疎水性樹脂)により形成されていた。
[トナーTA−3の作製]
第1シェル層の形成工程のオキサゾリン基含有高分子水溶液を、12.0gのオキサゾリン基含有高分子水溶液OD及び7.0gのオキサゾリン基含有高分子水溶液OBに変更したこと以外は、トナーTA−1の作製と同様の方法で、正帯電性のトナーTA−3を得た。トナーTA−3では、第1シェル層が、第1熱可塑性樹脂(オキサゾリン基含有高分子水溶液OD中のオキサゾリン基含有高分子)により形成された第1ドメイン、及び第2熱可塑性樹脂(オキサゾリン基含有高分子水溶液OB中のオキサゾリン基含有高分子)により形成された第2ドメインのみを含んでいた。トナーTA−3の第1シェル層において、第1ドメインに対する第2ドメインの質量比(第2ドメイン/第1ドメイン)は、0.6であった。また、トナーTA−3では、第2シェル層が、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂よりも強い疎水性を有する第3熱可塑性樹脂(疎水性樹脂粒子懸濁液RP−1中の疎水性樹脂粒子を構成する疎水性樹脂)により形成されていた。
[トナーTA−4の作製]
第1シェル層の形成工程のオキサゾリン基含有高分子水溶液を、12.0gのオキサゾリン基含有高分子水溶液OD及び28.0gのオキサゾリン基含有高分子水溶液OCに変更したこと以外は、トナーTA−1の作製と同様の方法で、正帯電性のトナーTA−4を得た。トナーTA−4では、第1シェル層が、第1熱可塑性樹脂(オキサゾリン基含有高分子水溶液OD中のオキサゾリン基含有高分子)により形成された第1ドメイン、及び第2熱可塑性樹脂(オキサゾリン基含有高分子水溶液OC中のオキサゾリン基含有高分子)により形成された第2ドメインのみを含んでいた。トナーTA−4の第1シェル層において、第1ドメインに対する第2ドメインの質量比(第2ドメイン/第1ドメイン)は、2.4であった。また、トナーTA−4では、第2シェル層が、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂よりも強い疎水性を有する第3熱可塑性樹脂(疎水性樹脂粒子懸濁液RP−1中の疎水性樹脂粒子を構成する疎水性樹脂)により形成されていた。
[トナーTA−5の作製]
第1シェル層の形成工程のオキサゾリン基含有高分子水溶液を、7.0gのオキサゾリン基含有高分子水溶液OE及び4.0gのオキサゾリン基含有高分子水溶液OBに変更したこと以外は、トナーTA−1の作製と同様の方法で、正帯電性のトナーTA−5を得た。トナーTA−5では、第1シェル層が、第1熱可塑性樹脂(オキサゾリン基含有高分子水溶液OE中のオキサゾリン基含有高分子)により形成された第1ドメイン、及び第2熱可塑性樹脂(オキサゾリン基含有高分子水溶液OB中のオキサゾリン基含有高分子)により形成された第2ドメインのみを含んでいた。トナーTA−5の第1シェル層において、第1ドメインに対する第2ドメインの質量比(第2ドメイン/第1ドメイン)は、0.5であった。また、トナーTA−5では、第2シェル層が、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂よりも強い疎水性を有する第3熱可塑性樹脂(疎水性樹脂粒子懸濁液RP−1中の疎水性樹脂粒子を構成する疎水性樹脂)により形成されていた。
[トナーTA−6の作製]
第2シェル層の形成工程の疎水性樹脂粒子懸濁液を、10gの疎水性樹脂粒子懸濁液RP−3に変更したこと以外は、トナーTA−1の作製と同様の方法で、正帯電性のトナーTA−6を得た。トナーTA−6では、第1シェル層が、第1熱可塑性樹脂(オキサゾリン基含有高分子水溶液OE中のオキサゾリン基含有高分子)により形成された第1ドメイン、及び第2熱可塑性樹脂(オキサゾリン基含有高分子水溶液OC中のオキサゾリン基含有高分子)により形成された第2ドメインのみを含んでいた。トナーTA−6の第1シェル層において、第1ドメインに対する第2ドメインの質量比(第2ドメイン/第1ドメイン)は、2.5であった。また、トナーTA−6では、第2シェル層が、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂よりも強い疎水性を有する第3熱可塑性樹脂(疎水性樹脂粒子懸濁液RP−3中の疎水性樹脂粒子を構成する疎水性樹脂)により形成されていた。
[トナーTA−7の作製]
第1シェル層の形成工程のオキサゾリン基含有高分子水溶液を、5.0gのオキサゾリン基含有高分子水溶液OE及び2.5gのオキサゾリン基含有高分子水溶液OBに変更したこと以外は、トナーTA−1の作製と同様の方法で、正帯電性のトナーTA−7を得た。トナーTA−7では、第1シェル層が、第1熱可塑性樹脂(オキサゾリン基含有高分子水溶液OE中のオキサゾリン基含有高分子)により形成された第1ドメイン、及び第2熱可塑性樹脂(オキサゾリン基含有高分子水溶液OB中のオキサゾリン基含有高分子)により形成された第2ドメインのみを含んでいた。トナーTA−7の第1シェル層において、第1ドメインに対する第2ドメインの質量比(第2ドメイン/第1ドメイン)は、0.5であった。また、トナーTA−7では、第2シェル層が、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂よりも強い疎水性を有する第3熱可塑性樹脂(疎水性樹脂粒子懸濁液RP−1中の疎水性樹脂粒子を構成する疎水性樹脂)により形成されていた。
[トナーTB−1の作製]
第1シェル層の形成工程のオキサゾリン基含有高分子水溶液を、12.0gのオキサゾリン基含有高分子水溶液OE及び28.0gのオキサゾリン基含有高分子水溶液ODに変更したこと以外は、トナーTA−1の作製と同様の方法で、正帯電性のトナーTB−1を得た。トナーTB−1では、第1シェル層が、第1熱可塑性樹脂(オキサゾリン基含有高分子水溶液OE中のオキサゾリン基含有高分子)により形成された第1ドメイン、及び第2熱可塑性樹脂(オキサゾリン基含有高分子水溶液OD中のオキサゾリン基含有高分子)により形成された第2ドメインのみを含んでいた。トナーTB−1の第1シェル層において、第1ドメインに対する第2ドメインの質量比(第2ドメイン/第1ドメイン)は、2.6であった。また、トナーTB−1では、第2シェル層が、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂よりも強い疎水性を有する第3熱可塑性樹脂(疎水性樹脂粒子懸濁液RP−1中の疎水性樹脂粒子を構成する疎水性樹脂)により形成されていた。
[トナーTB−2の作製]
第1シェル層の形成工程のオキサゾリン基含有高分子水溶液を、12.0gのオキサゾリン基含有高分子水溶液OC及び7.0gのオキサゾリン基含有高分子水溶液OBに変更したこと以外は、トナーTA−1の作製と同様の方法で、正帯電性のトナーTB−2を得た。トナーTB−2では、第1シェル層が、第1熱可塑性樹脂(オキサゾリン基含有高分子水溶液OC中のオキサゾリン基含有高分子)により形成された第1ドメイン、及び第2熱可塑性樹脂(オキサゾリン基含有高分子水溶液OB中のオキサゾリン基含有高分子)により形成された第2ドメインのみを含んでいた。トナーTB−2の第1シェル層において、第1ドメインに対する第2ドメインの質量比(第2ドメイン/第1ドメイン)は、0.6であった。また、トナーTB−2では、第2シェル層が、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂よりも強い疎水性を有する第3熱可塑性樹脂(疎水性樹脂粒子懸濁液RP−1中の疎水性樹脂粒子を構成する疎水性樹脂)により形成されていた。
[トナーTB−3の作製]
第1シェル層の形成工程のオキサゾリン基含有高分子水溶液を、12.0gのオキサゾリン基含有高分子水溶液OF及び28.0gのオキサゾリン基含有高分子水溶液OCに変更したこと以外は、トナーTA−1の作製と同様の方法で、正帯電性のトナーTB−3を得た。トナーTB−3では、第1シェル層が、第1熱可塑性樹脂(オキサゾリン基含有高分子水溶液OF中のオキサゾリン基含有高分子)により形成された第1ドメイン、及び第2熱可塑性樹脂(オキサゾリン基含有高分子水溶液OC中のオキサゾリン基含有高分子)により形成された第2ドメインのみを含んでいた。トナーTB−3の第1シェル層において、第1ドメインに対する第2ドメインの質量比(第2ドメイン/第1ドメイン)は、2.6であった。また、トナーTB−3では、第2シェル層が、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂よりも強い疎水性を有する第3熱可塑性樹脂(疎水性樹脂粒子懸濁液RP−1中の疎水性樹脂粒子を構成する疎水性樹脂)により形成されていた。
[トナーTB−4の作製]
第1シェル層の形成工程のオキサゾリン基含有高分子水溶液を、12.0gのオキサゾリン基含有高分子水溶液OD及び7.0gのオキサゾリン基含有高分子水溶液OAに変更したこと以外は、トナーTA−1の作製と同様の方法で、正帯電性のトナーTB−4を得た。トナーTB−4では、第1シェル層が、第1熱可塑性樹脂(オキサゾリン基含有高分子水溶液OD中のオキサゾリン基含有高分子)により形成された第1ドメイン、及び第2熱可塑性樹脂(オキサゾリン基含有高分子水溶液OA中のオキサゾリン基含有高分子)により形成された第2ドメインのみを含んでいた。トナーTB−4の第1シェル層において、第1ドメインに対する第2ドメインの質量比(第2ドメイン/第1ドメイン)は、0.5であった。また、トナーTB−4では、第2シェル層が、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂よりも強い疎水性を有する第3熱可塑性樹脂(疎水性樹脂粒子懸濁液RP−1中の疎水性樹脂粒子を構成する疎水性樹脂)により形成されていた。
[トナーTB−5の作製]
第2シェル層の形成工程の疎水性樹脂粒子懸濁液を、10gの疎水性樹脂粒子懸濁液RP−2に変更したこと以外は、トナーTA−1の作製と同様の方法で、正帯電性のトナーTB−5を得た。トナーTB−5では、第1シェル層が、第1熱可塑性樹脂(オキサゾリン基含有高分子水溶液OE中のオキサゾリン基含有高分子)により形成された第1ドメイン、及び第2熱可塑性樹脂(オキサゾリン基含有高分子水溶液OC中のオキサゾリン基含有高分子)により形成された第2ドメインのみを含んでいた。トナーTB−5の第1シェル層において、第1ドメインに対する第2ドメインの質量比(第2ドメイン/第1ドメイン)は、2.6であった。また、トナーTB−5では、第2シェル層が、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂よりも強い疎水性を有する第3熱可塑性樹脂(疎水性樹脂粒子懸濁液RP−2中の疎水性樹脂粒子を構成する疎水性樹脂)により形成されていた。
[トナーTB−6の作製]
第1シェル層を形成した後、第2シェル層を形成しないで、フラスコ内容物を室温(25℃)まで冷却し、トナー母粒子を含む分散液を得たこと以外は、トナーTA−1の作製と同様の方法で、トナーTB−6を得た。トナーTB−6では、第1シェル層が、第1熱可塑性樹脂(オキサゾリン基含有高分子水溶液OE中のオキサゾリン基含有高分子)により形成された第1ドメイン、及び第2熱可塑性樹脂(オキサゾリン基含有高分子水溶液OC中のオキサゾリン基含有高分子)により形成された第2ドメインのみを含んでいた。トナーTB−6の第1シェル層において、第1ドメインに対する第2ドメインの質量比(第2ドメイン/第1ドメイン)は、2.6であった。
トナーTA−1〜TA−7及びTB−1〜TB−6のそれぞれについて、第1熱可塑性樹脂、第2熱可塑性樹脂及び第3熱可塑性樹脂の詳細を表1に示す。ただし、トナーTB−6については、第2シェル層を形成しなかったため、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂の詳細のみを示す。なお、表1において、「O水溶液」とは、オキサゾリン基含有高分子水溶液をさす。また、表1において、「RP懸濁液」とは、疎水性樹脂粒子懸濁液をさす。
Figure 2019191359
<被覆率の測定>
トナーTA−1〜TA−7について、以下に示す方法により、第1シェル層の被覆率、及び第2シェル層の被覆率を測定した。まず、試料(トナーTA−1〜TA−7の何れか)を可視光硬化性樹脂(東亞合成株式会社製「アロニックス(登録商標)D−800」)中に分散させた後、可視光照射により樹脂を硬化させて、硬化物を得た。その後、超薄切片作製用ナイフ(住友電気工業株式会社製「スミナイフ(登録商標)」:刃幅2mm、刃先角度45°のダイヤモンドナイフ)及びウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ株式会社製「EM UC6」)を用いて、切削速度0.3mm/秒で硬化物を切削することで、150nmの薄片を作製した。得られた薄片を、銅メッシュ上で四酸化ルテニウム水溶液の蒸気中に10分間暴露して、Ru染色した。続けて、染色された薄片試料の断面を、透過電子顕微鏡(TEM)(株式会社日立ハイテクノロジーズ製「H−7100FA」)を用いて撮影した。
上記のようにして得たTEM撮影像(トナー粒子の断面撮影像)を、画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて解析した。詳しくは、トナー粒子のTEM撮影像において、トナーコアの表面領域(外縁を示す輪郭線)のうち第1シェル層で覆われた領域の割合を測定し、第1シェル層の被覆率を得た。そして、試料(トナー)に含まれる10個のトナー粒子について、それぞれ第1シェル層の被覆率を測定し、得られた10個の測定値の算術平均を、試料(トナー)の評価値(第1シェル層の被覆率)とした。また、上記トナー粒子のTEM撮影像において、第1シェル層の表面領域(外縁を示す輪郭線)のうち第2シェル層で覆われた領域の割合を測定し、第2シェル層の被覆率を得た。そして、試料(トナー)に含まれる10個のトナー粒子について、それぞれ第2シェル層の被覆率を測定し、得られた10個の測定値の算術平均を、試料(トナー)の評価値(第2シェル層の被覆率)とした。
トナーTA−1〜TA−7では、何れも第1シェル層の被覆率が90%以上100%以下であった。また、トナーTA−1〜TA−7では、何れも第2シェル層の被覆率が30%以上70%以下であった。
<テレフタル酸含有量の測定>
100mLのサンプル管に、評価対象のトナー2gと、温度50℃の蒸留水50gとを入れた後、スターラーを用いてサンプル管の内容物を回転速度800rpmで攪拌しながら30分間混合した。混合する際は、サンプル管の内容物の温度を50℃に維持した。次いで、サンプル管の内容物を、その温度が30℃になるまで冷却した。次いで、遠心法付着力測定装置(株式会社ナノシーズ製「NS−C100」)を用いて、サンプル管の内容物を、回転速度9000rpmで15分間遠心分離した。遠心分離後の上澄み液を孔径0.45μmのフィルターで濾過し、得られた濾液を試料として、HPLCにより分析した。詳しくは、下記に示す分析装置及び分析条件で試料を分析し、HPLCチャートを得た。図2に、HPLCチャートの一例を示す。図2は、トナーTA−1をHPLCで分析した結果を示すチャートである。
[分析装置]
分析装置としては、HPLC装置(株式会社島津製作所製「LC−2010A HT」)を用いた。カラムとしては、HPLCカラム(株式会社島津製作所製「Shim−pack GWS C18」)を用いた。
[分析条件]
測定波長:207nm
カラム温度:40℃
試料の注入量:10μL
A液:リン酸水溶液(濃度0.1質量%)
B液:アセトニトリル
A液及びB液の合計の流量:1.0mL/分
濃度勾配条件:表2に示す条件
Figure 2019191359
HPLCチャートにおいて、保持時間が8分から9分までの間に存在するピークP1(図2参照)のピーク面積から試料中のテレフタル酸の含有量(テレフタル酸含有量)を求めた。なお、テレフタル酸含有量を求める際は、標準物質に基づく検量線を用いた。また、図2に示すHPLCチャートのピークP1の画分を分取し、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS法)による定性分析を行い、ピークP1の画分がテレフタル酸であることを確認した。
<低温定着性の評価>
[2成分現像剤の調製]
京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の「TASKalfa8052ci」用キャリア(パウダーテック株式会社製キャリア、体積中位径(D50):35μm、体積固有抵抗値:1.0×107Ω・cm、3000(103/4π・A/m)の印加磁場での飽和磁化:70Am2/kg)100質量部と、評価に用いるトナー8質量部とを、シェーカーミキサー(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製「ターブラー(登録商標)ミキサーT2F」)を用いて30分間混合して、評価に用いる2成分現像剤を調製した。
[最低定着温度の測定]
評価機としては、複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa8052ci」を改造して定着温度を変更可能にした評価機)を用いた。上述のようにして調製した2成分現像剤を評価機のシアン用現像装置に投入し、補給用トナー(評価対象のトナー)を評価機のシアン用トナーコンテナに投入した。
温度23℃かつ湿度50%RHの環境下、上記評価機を用いて、評価用紙(モンディ社製「ColorCopy(登録商標)」、A4サイズ、坪量90g/m2)に、トナー載り量1.0mg/cm2の条件で、大きさ25mm×25mmのソリッド画像(詳しくは、未定着のトナー像)を形成した。続けて、画像が形成された評価用紙を評価機の定着装置に通した。この際、定着装置の定着温度を100℃から2℃ずつ上げながら各定着温度について定着の可否を判定し、ソリッド画像(トナー像)を評価用紙に定着できる最低温度(最低定着温度)を測定した。トナーを定着させることができたか否かは、以下に示すような折擦り試験で確認した。詳しくは、定着装置に通した評価用紙を、画像を形成した面が内側となり、且つ画像の中央が折り目となるように半分に折り曲げ、布帛で被覆した1kgの真鍮製の分銅を用いて、折り目上を5往復摩擦した。続けて、評価用紙を広げ、評価用紙の折り曲げ部(ソリッド画像が形成された部分)を観察した。そして、折り曲げ部のトナーの剥がれの長さ(剥がれ長)を測定した。剥がれ長が1mm以下となる定着温度のうちの最低温度を、最低定着温度とした。最低定着温度が140℃以下であれば、「低温定着性に優れている」と評価し、最低定着温度が140℃を超える場合、「低温定着性に優れていない」と評価した。
<耐熱保存性の評価>
ポリエチレン製容器(容量20mL)に2gのトナー(評価に用いるトナー)を入れて、ポリエチレン製容器を密閉した。次いで、密閉された容器を58℃に設定された恒温槽内に3時間静置した。その後、容器から取り出したトナーを室温(25℃)まで冷却して、評価対象を得た。
得られた評価対象を、質量既知の100メッシュ(目開き150μm)の篩に載せた。そして、評価対象を含む篩の質量を測定し、篩別前のトナーの質量を求めた。続けて、粉体特性評価装置(ホソカワミクロン株式会社製「パウダテスタ(登録商標)PT−X」)に上記篩をセットし、粉体特性評価装置のマニュアルに従い、振幅1.0mmの条件で30秒間、篩を振動させ、評価対象を篩別した。篩別後、篩を通過しなかったトナーの質量を測定した。そして、篩別前のトナーの質量と、篩別後のトナーの質量とに基づいて、下記式に従って凝集度(単位:質量%)を求めた。凝集度が10質量%以下の場合、「耐熱保存性に特に優れている」と評価した。凝集度が10質量%を超えて15質量%以下の場合、「耐熱保存性に優れている」と評価した。凝集度が15質量%を超える場合、「耐熱保存性に優れていない」と評価した。なお、下記式における「篩別後のトナーの質量」は、篩を通過しなかったトナーの質量であり、篩別後に篩上に残留したトナーの質量である。
凝集度=100×篩別後のトナーの質量/篩別前のトナーの質量
<耐かぶり性の評価>
[2成分現像剤の調製]
京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の「TASKalfa8052ci」用キャリア(パウダーテック株式会社製キャリア、体積中位径(D50):35μm、体積固有抵抗値:1.0×107Ω・cm、3000(103/4π・A/m)の印加磁場での飽和磁化:70Am2/kg)100質量部と、評価に用いるトナー7質量部とを、シェーカーミキサー(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製「ターブラー(登録商標)ミキサーT2F」)を用いて30分間混合した。得られた混合物107質量部に対して、更に、評価に用いるトナー1質量部を添加し、評価に用いる2成分現像剤を調製した。
[かぶり濃度の測定]
評価機としては、複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa8052ci」)を用いた。上述のようにして調製した2成分現像剤を評価機のシアン用現像装置に投入し、補給用トナー(評価対象のトナー)を評価機のシアン用トナーコンテナに投入した。また、反射濃度計(X−Rite社製「SpectroEye(登録商標)」)によるソリッド画像の画像濃度が1.0以上1.2以下になるように、評価機の現像スリーブとマグネットロールとの間の電圧を200V以上300V以下の範囲で調整した。
温度23℃かつ湿度50%RHの環境下、上記評価機を用いて、1枚の印刷用紙(A4サイズ)に大きさ20mm×30mmのソリッド画像を印刷した。次いで、印刷された紙における空白部の反射濃度を、反射濃度計(X−Rite社製「SpectroEye(登録商標)」)により測定した。そして、下記式に基づいて、かぶり濃度(FD)を求めた。かぶり濃度が0.005以下の場合、「耐かぶり性に優れている」と評価し、かぶり濃度が0.005を超える場合、「耐かぶり性に優れていない」と評価した。
かぶり濃度=空白部の反射濃度−未印刷紙の反射濃度
トナーTA−1〜TA−7及びTB−1〜TB−6のそれぞれについて、テレフタル酸含有量、最低定着温度、凝集度及びかぶり濃度を表3に示す。
Figure 2019191359
表1に示すように、トナーTA−1〜TA−7に含まれるトナー粒子では、第1熱可塑性樹脂のTgが35℃以上66℃以下であった。トナーTA−1〜TA−7に含まれるトナー粒子では、第2熱可塑性樹脂のTgが71℃以上105℃以下であった。トナーTA−1〜TA−7に含まれるトナー粒子では、第3熱可塑性樹脂(疎水性樹脂)のTgが第1熱可塑性樹脂のTgよりも高かった。
表3に示すように、トナーTA−1〜TA−7では、最低定着温度が140℃以下であった。よって、トナーTA−1〜TA−7は、低温定着性に優れていた。トナーTA−1〜TA−6では、凝集度が10質量%以下であった。よって、トナーTA−1〜TA−6は、耐熱保存性に特に優れていた。トナーTA−7では、凝集度が15質量%であった。よって、トナーTA−7は、耐熱保存性に優れていた。トナーTA−1〜TA−7では、かぶり濃度が0.005以下であった。よって、トナーTA−1〜TA−7は、耐かぶり性に優れていた。
表1に示すように、トナーTB−1に含まれるトナー粒子では、第2熱可塑性樹脂のTgが71℃未満であった。トナーTB−2に含まれるトナー粒子では、第1熱可塑性樹脂のTgが66℃を超えていた。トナーTB−3に含まれるトナー粒子では、第1熱可塑性樹脂のTgが35℃未満であった。トナーTB−4に含まれるトナー粒子では、第2熱可塑性樹脂のTgが105℃を超えていた。トナーTB−5に含まれるトナー粒子では、第3熱可塑性樹脂(疎水性樹脂)のTgが第1熱可塑性樹脂のTgよりも低かった。トナーTB−6に含まれるトナー粒子では、第2シェル層が形成されていなかった。
表3に示すように、トナーTB−2及びTB−4では、最低定着温度が140℃を超えていた。よって、トナーTB−2及びTB−4は、低温定着性に優れていなかった。トナーTB−1、TB−3及びTB−5では、凝集度が15質量%を超えていた。よって、トナーTB−1、TB−3及びTB−5は、耐熱保存性に優れていなかった。トナーTB−6では、かぶり濃度が0.005を超えていた。よって、トナーTB−6は、耐かぶり性に優れていなかった。
以上の結果から、本発明によれば、低温定着性、耐熱保存性及び耐かぶり性に優れるトナーが得られることが示された。
本発明に係るトナーは、例えば複合機又はプリンターにおいて画像を形成するために利用することができる。
10 トナー粒子
11 トナーコア
12 第1シェル層
12A 第1ドメイン
12B 第2ドメイン
13 第2シェル層

Claims (6)

  1. トナー粒子を含むトナーであって、
    前記トナー粒子は、結着樹脂を含むトナーコアと、前記トナーコアの表面を覆う第1シェル層と、前記第1シェル層の表面を部分的に覆う第2シェル層とを備え、
    前記第1シェル層は、第1熱可塑性樹脂から構成される第1ドメインと、第2熱可塑性樹脂から構成される第2ドメインとを含み、
    前記第1熱可塑性樹脂のガラス転移点は、35℃以上66℃以下であり、
    前記第2熱可塑性樹脂のガラス転移点は、71℃以上105℃以下であり、
    前記第2シェル層は、前記第1熱可塑性樹脂及び前記第2熱可塑性樹脂よりも強い疎水性を有する第3熱可塑性樹脂を含み、
    前記第3熱可塑性樹脂のガラス転移点は、前記第1熱可塑性樹脂のガラス転移点よりも高い、トナー。
  2. 前記第3熱可塑性樹脂のガラス転移点は、前記第1熱可塑性樹脂のガラス転移点よりも10℃以上高い、請求項1に記載のトナー。
  3. 前記第3熱可塑性樹脂のガラス転移点は、45℃以上100℃以下である、請求項1又は2に記載のトナー。
  4. 前記結着樹脂は、ポリエステル樹脂を含み、
    前記第1熱可塑性樹脂及び前記第2熱可塑性樹脂は、何れも下記式(1)で表される化合物を少なくとも含む単量体の重合物である、請求項1〜3の何れか一項に記載のトナー。
    Figure 2019191359
    (前記式(1)中、R1は、水素原子、又は置換基で置換されていてもよいアルキル基を表す。)
  5. 前記ポリエステル樹脂は、テレフタル酸由来の繰返し単位を有し、
    前記トナー2gと、温度50℃の蒸留水50gとを攪拌しながら混合した後、遠心分離して得られる上澄み液中のテレフタル酸の含有量が、100質量ppm以下である、請求項4に記載のトナー。
  6. 前記第3熱可塑性樹脂は、スチレン−アクリル酸アルキルエステル系樹脂である、請求項1〜5の何れか一項に記載のトナー。
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