JP7234772B2 - 磁性トナー - Google Patents

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本発明は、正帯電性の磁性トナーに関する。
電子写真現像剤用の磁性トナーには、磁性粉が使用されている。磁性粉としては、磁気特性等を容易に調整し易いマグネタイト粒子の粉体が広く使用されている。マグネタイト粒子は、磁性トナーの磁気特性を調整すると共に、黒色の着色剤としての役割を果たす。
例えば、特許文献1では、黒の発色性に優れる磁性トナーを得るために、マグネタイト粒子の表面にカーボンブラックの被膜が形成された磁性粒子の粉体を、磁性粉として用いることが提案されている。
特開平5-66609号公報
しかしながら、特許文献1に開示される技術だけでは、正帯電性を安定して維持しつつ、黒の発色性に優れる磁性トナーを得ることは難しい。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、正帯電性を安定して維持しつつ、黒の発色性に優れる磁性トナーを提供することである。
本発明に係る磁性トナーは、トナー粒子を含む、正帯電性の磁性トナーである。前記トナー粒子は、複合コアと、前記複合コアの表面を覆うシェル層とを備える。前記複合コアは、トナーコアと、前記トナーコアの表面に配置された磁性粉層との複合体である。前記シェル層は、未開環のオキサゾリン基を有する繰返し単位を含む。前記トナーコアは、結着樹脂と第1磁性粉とを含む。前記磁性粉層は、第2磁性粉を含む。前記第1磁性粉及び前記第2磁性粉は、いずれもマグネタイト粒子を含む。前記第2磁性粉に含まれる前記マグネタイト粒子の表面は、カルボキシ基及び酸無水物基の少なくとも一方を有する。
本発明によれば、正帯電性を安定して維持しつつ、黒の発色性に優れる磁性トナーを提供できる。
本発明の実施形態に係る磁性トナーに含まれるトナー粒子の断面構造の一例を示す図である。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。まず、本明細書中で使用される用語について説明する。トナーは、トナー粒子の集合体(例えば粉体)である。外添剤は、外添剤粒子の集合体(例えば粉体)である。磁性粉は、磁性粒子の集合体(例えば粉体)である。粉体(より具体的には、トナー粒子の粉体、外添剤粒子の粉体、磁性粒子の粉体等)に関する評価結果(形状、物性等を示す値)は、何ら規定していなければ、粉体から粒子を相当数選び取って、それら粒子の各々について測定した値の個数平均である。
粉体の体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA-950」)を用いて測定されたメディアン径である。粉体の個数平均一次粒子径は、何ら規定していなければ、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製「JSM-7401F」)を用いて測定した一次粒子の円相当径(ヘイウッド径:一次粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。粉体の個数平均一次粒子径は、例えば100個の一次粒子の円相当径の個数平均値である。なお、粒子の個数平均一次粒子径は、特に断りがない限り、粉体中の粒子の個数平均一次粒子径(粉体の個数平均一次粒子径)を指す。
帯電性の強さは、何ら規定していなければ、摩擦帯電のし易さである。例えば、日本画像学会から提供される標準キャリア(負帯電極性トナー用標準キャリア:N-01、正帯電極性トナー用標準キャリア:P-01)と測定対象(例えばトナー)とを混ぜて攪拌することで、測定対象を摩擦帯電させる。摩擦帯電させる前と後とでそれぞれ、例えば吸引式小型帯電量測定装置(トレック社製「MODEL 212HS」)で測定対象の帯電量を測定する。摩擦帯電の前後での帯電量の変化が大きい測定対象ほど帯電性が強いことを示す。
軟化点(Tm)の測定値は、何ら規定していなければ、高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT-500D」)を用いて測定した値である。高化式フローテスターで測定されたS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)において、「(ベースラインストローク値+最大ストローク値)/2」となる温度が、Tm(軟化点)に相当する。ガラス転移点(Tg)の測定値は、何ら規定していなければ、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC-6220」)を用いて「JIS(日本工業規格)K7121-2012」に従って測定した値である。示差走査熱量計で測定された吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)において、ガラス転移に起因する変曲点の温度(詳しくは、ベースラインの外挿線と立ち下がりラインの外挿線との交点の温度)が、Tg(ガラス転移点)に相当する。
材料の「主成分」は、何ら規定していなければ、質量基準で、その材料に最も多く含まれる成分を意味する。
酸価の測定値は、何ら規定していなければ、「JIS(日本工業規格)K0070-1992」に従い測定した値である。
疎水性の強さは、例えば水滴の接触角(水の濡れ易さ)で表すことができる。水滴の接触角が大きいほど疎水性が強い。疎水化処理とは、疎水性を強める処理を指す。
本明細書中では、未処理のマグネタイト粒子(以下、「マグネタイト基体」と記載することがある)も、マグネタイト基体に表面処理を施して得たマグネタイト粒子(すなわち、表面処理されたマグネタイト粒子)も、「マグネタイト粒子」と記載することがある。
「置換基で置換されていてもよい」とは、有機基の水素原子の一部又は全部が置換基で置換されていてもよいことを意味する。「フェニル基で置換されていてもよい」とは、有機基の水素原子の一部又は全部がフェニル基で置換されていてもよいことを意味する。「酸無水物基」とは、カルボン酸無水物基を指す。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを包括的に「(メタ)アクリロニトリル」と総称する場合がある。
<磁性トナー>
本実施形態に係る正帯電性の磁性トナー(以下、単にトナーと記載することがある)は、例えば静電潜像の現像に好適に用いることができる。本実施形態に係るトナーは、1成分現像剤として使用できる。本実施形態に係るトナーは、例えば現像装置内における現像スリーブ、又はブレードとの摩擦により正に帯電する。
本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、複合コアと、複合コアの表面を覆うシェル層とを備える。複合コアは、トナーコアと、トナーコアの表面に配置された磁性粉層との複合体である。シェル層は、未開環のオキサゾリン基を有する繰返し単位を含む。トナーコアは、結着樹脂と第1磁性粉とを含む。磁性粉層は、第2磁性粉を含む。第1磁性粉及び第2磁性粉は、いずれもマグネタイト粒子を含む。第2磁性粉に含まれるマグネタイト粒子の表面は、カルボキシ基及び酸無水物基の少なくとも一方を有する。
以下、カルボキシ基及び酸無水物基の少なくとも一方を、「特定反応性基」と記載することがある。マグネタイト粒子の表面の特定反応性基の有無は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いてマグネタイト粒子の表面を分析することにより確認できる。また、以下において、特に断りがない限り、「オキサゾリン基」は未開環のオキサゾリン基を指す。
本実施形態に係るトナーは、上述の構成を備えることにより、正帯電性を安定して維持しつつ、黒の発色性に優れる。その理由は、以下のように推測される。
本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、トナーコアと、トナーコアの表面に配置された磁性粉層との複合体である複合コアを含有する。また、磁性粉層は、黒色を呈するマグネタイト粒子を含む。このように、本実施形態に係るトナーでは、磁性粉層がトナーコアの外側に配置され、かつ磁性粉層が黒色を呈するマグネタイト粒子を含む。よって、本実施形態に係るトナーは、黒の発色性に優れる。
また、本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、複合コアの表面を覆うシェル層として、未開環のオキサゾリン基を有する繰返し単位を含むシェル層を備える。未開環のオキサゾリン基は、強い正帯電性を示す。また、本実施形態に係るトナーでは、磁性粉層中に含まれるマグネタイト粒子の表面が特定反応性基を有する。特定反応性基は、シェル層の形成時において、未開環のオキサゾリン基と反応し易い。このため、例えば、シェル層の形成時において、磁性粉層の表面に存在する一部の特定反応性基と、一部の未開環のオキサゾリン基とが反応して化学結合を形成することにより、複合コアとシェル層との結合が強固になる。これにより、本実施形態に係るトナーでは、シェル層の複合コアからの脱離が抑制される。よって、本実施形態に係るトナーは、磁性粉層の外側に正帯電性の強いシェル層を備え、かつ複合コアからのシェル層の脱離が抑制されているため、電気抵抗が比較的低い磁性粉を含む層をトナーコアの外側に備えていても、正帯電性を安定して維持できる。
本実施形態において、正帯電性をより安定して維持するためには、ガスクロマトグラフィー質量分析法により測定される、トナー1gに含まれる未開環のオキサゾリン基の量(以下、未開環オキサゾリン基含有量と記載することがある)は、200μmol以上であることが好ましい。未開環オキサゾリン基含有量の測定方法は、後述する実施例と同じ方法又はそれに準ずる方法である。なお、未開環オキサゾリン基含有量が多くなるほど、トナー粒子中のシェル層の含有量が多くなる傾向がある。よって、本実施形態において、低温定着性に優れるトナーを得るためには、未開環オキサゾリン基含有量は800μmol以下であることが好ましい。
本実施形態において、正帯電性をより安定して維持しつつ、黒の発色性により優れるトナーを得るためには、第2磁性粉に含まれるマグネタイト粒子の量は、複合コアの全質量に対して5質量%以上15質量%以下であることが好ましく、7質量%以上12質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態において、低温定着性に優れつつ、画像形成に適したトナーを得るためには、第1磁性粉に含まれるマグネタイト粒子と第2磁性粉に含まれるマグネタイト粒子との合計量は、複合コアの全質量に対して25質量%以上35質量%以下であることが好ましく、25質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。なお、本実施形態に係るトナーは、磁性粉層がトナーコアの外側に配置されているため、低温定着性を阻害する原因となり得る磁性粉の量を低減しても、磁気応答性に優れる。
本実施形態において、黒の発色性により優れるトナーを得るためには、磁性粉層がトナーコアの表面領域のうち70%以上100%以下の面積を覆っていることが好ましい。また、本実施形態において、正帯電性をより安定して維持できるトナーを得るためには、シェル層が複合コアの表面領域のうち70%以上100%以下の面積を覆っていることが好ましい。
本実施形態において、トナーコアは、結着樹脂及び第1磁性粉に加え、必要に応じて、第1磁性粉以外の内添剤(例えば、着色剤、離型剤、及び電荷制御剤の少なくとも1つ)を含有してもよい。
本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、外添剤を備えていてもよい。トナー粒子が外添剤を備える場合には、トナー粒子は、複合コア及びシェル層を有するトナー母粒子と、外添剤とを備える。外添剤はトナー母粒子の表面に付着する。なお、必要がなければ外添剤を割愛してもよい。外添剤を割愛する場合には、トナー母粒子がトナー粒子に相当する。
以下、本実施形態に係るトナーの詳細について、適宜図面を参照しながら説明する。なお、参照する図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の大きさ、個数、形状等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合がある。
[トナー粒子の構成]
以下、図1を参照して、本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子の構成について説明する。図1は、本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子の断面構造の一例を示す図である。なお、説明の容易化のため、図1に示すトナー粒子10が外添剤を備えないトナー粒子である場合について説明する。
図1に示すトナー粒子10は、複合コア11と、複合コア11の表面を覆うシェル層12とを備える。複合コア11は、トナーコア13と、トナーコア13の表面に配置された磁性粉層14との複合体である。シェル層12は、未開環のオキサゾリン基を有する繰返し単位を含む。図1に示すトナー粒子10では、磁性粉層14がトナーコア13の表面全域を覆っている。また、図1に示すトナー粒子10では、シェル層12が磁性粉層14の表面全域を覆っている。
トナーコア13は、結着樹脂と第1磁性粉とを含む。磁性粉層14は、第2磁性粉を含む。第1磁性粉及び第2磁性粉は、いずれもマグネタイト粒子を含む。第2磁性粉に含まれるマグネタイト粒子の表面は、特定反応性基を有する。
正帯電性をより安定して維持しつつ、黒の発色性により優れるトナーを得るためには、磁性粉層14の厚さは、200nm以上500nm以下であることが好ましく、200nm以上350nm以下であることがより好ましい。なお、複合コア11とシェル層12との結合が強固になる程、磁性粉層14の厚さが薄くなる傾向がある。磁性粉層14の厚さの測定方法は、後述する実施例と同じ方法又はそれに準ずる方法である。
画像形成に適したトナーを得るためには、トナーコア13の体積中位径(D50)は、4μm以上9μm以下であることが好ましい。
画像形成に適したトナーを得るためには、シェル層12の厚さが1nm以上400nm以下であることが好ましい。シェル層12の厚さは、市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いてトナー粒子10の断面のTEM(透過電子顕微鏡)撮影像を解析することによって計測できる。なお、1つのトナー粒子10においてシェル層12の厚さが均一でない場合には、均等に離間した4箇所(詳しくは、トナー粒子10の断面の略中心で直交する2本の直線を引き、それら2本の直線がシェル層12と交差する4箇所)の各々でシェル層12の厚さを測定し、得られた4つの測定値の算術平均を、そのトナー粒子10の評価値(シェル層12の厚さ)とする。
以上、図1を参照しながら、本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子の一例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明に係るトナーに含まれるトナー粒子は、外添剤(図示せず)を備えてもよい。例えば図1に示すトナー粒子10をトナー母粒子とし、このトナー母粒子の表面に外添剤が付着したトナー粒子を、本発明に係るトナーに含まれるトナー粒子としてもよい。
[トナー粒子の要素]
次に、本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子の要素について説明する。
{複合コア}
複合コアは、トナーコアと、トナーコアの表面に配置された磁性粉層との複合体である。以下、トナーコアに含まれる成分について説明する。
(結着樹脂)
トナーコアは、例えば全成分の60質量%以上を結着樹脂が占める。このため、結着樹脂の性質がトナーコア全体の性質に大きな影響を与えると考えられる。結着樹脂として複数種の樹脂を組み合わせて使用することで、結着樹脂の性質(より具体的には、酸価等)を調整することができる。
低温定着性に優れるトナーを得るためには、トナーコアは、結着樹脂として熱可塑性樹脂を含有することが好ましく、結着樹脂全体の85質量%以上の割合で熱可塑性樹脂を含有することがより好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)、ビニル樹脂(より具体的には、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、N-ビニル樹脂等)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、及びウレタン樹脂が挙げられる。また、これら各樹脂の共重合体、すなわち上記樹脂中に任意の繰返し単位が導入された共重合体(より具体的には、スチレン-アクリル酸エステル系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂等)も、結着樹脂として使用できる。
熱可塑性樹脂は、一種以上の熱可塑性単量体を、付加重合、共重合、又は縮重合させることで得られる。なお、熱可塑性単量体は、単独重合により熱可塑性樹脂になる単量体(より具体的には、アクリル酸エステル系単量体、スチレン系単量体等)、又は縮重合により熱可塑性樹脂になる単量体(例えば、縮重合によりポリエステル樹脂になる多価アルコール及び多価カルボン酸の組合せ)である。
低温定着性に優れるトナーを得るためには、結着樹脂としては、ポリエステル樹脂が好ましい。また、磁性粉層がトナーコアの表面全域を覆っていない場合において複合コアからのシェル層の脱離を抑制するためには、トナーコアが、結着樹脂として酸価4mgKOH/g以上のポリエステル樹脂を含有することが好ましく、酸価5mgKOH/g以上10mgKOH/g以下のポリエステル樹脂を含有することがより好ましい。酸価4mgKOH/g以上のポリエステル樹脂は、未開環のオキサゾリン基と反応することによりシェル層との間で後述する結合を形成し易い。
ポリエステル樹脂は、一種以上の多価アルコールと一種以上の多価カルボン酸とを縮重合させることで得られる。ポリエステル樹脂を合成するためのアルコールとしては、例えば以下に示すような、2価アルコール(より具体的には、脂肪族ジオール、ビスフェノール等)、及び3価以上のアルコールが挙げられる。ポリエステル樹脂を合成するためのカルボン酸としては、例えば以下に示すような、2価カルボン酸、及び3価以上のカルボン酸が挙げられる。なお、多価カルボン酸の代わりに、多価カルボン酸の無水物、多価カルボン酸ハライド等の縮重合によりエステル結合を形成できる多価カルボン酸誘導体を使用してもよい。
脂肪族ジオールの好適な例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2-プロパンジオール、α,ω-アルカンジオール(より具体的には、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,12-ドデカンジオール等)、2-ブテン-1,4-ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
ビスフェノールの好適な例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、及びビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
3価以上のアルコールの好適な例としては、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及び1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
2価カルボン酸の好適な例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、1,10-デカンジカルボン酸、コハク酸、アルキルコハク酸(より具体的には、n-ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n-オクチルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸等)、及びアルケニルコハク酸(より具体的には、n-ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n-オクテニルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等)が挙げられる。
3価以上のカルボン酸の好適な例としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、及びエンポール三量体酸が挙げられる。
(第1磁性粉)
トナーコアは、第1磁性粉を含有する。第1磁性粉は、磁性粒子としてマグネタイト粒子を含む。第1磁性粉に含まれるマグネタイト粒子は、マグネタイト基体であってもよく、マグネタイト基体に表面処理(例えば、疎水化処理)を施して得たマグネタイト粒子であってもよい。トナーの磁気特性を容易に調整するためには、第1磁性粉に含まれるマグネタイト粒子の個数平均一次粒子径は、100nm以上500nm以下であることが好ましく、200nm以上350nm以下であることがより好ましい。
第1磁性粉は、マグネタイト粒子以外の磁性粒子(他の磁性粒子)を更に含んでもよいが、高画質の画像を形成するためには、第1磁性粉は、磁性粒子としてマグネタイト粒子のみを含むことが好ましい。
他の磁性粒子を構成する磁性材料としては、例えば、強磁性金属(より具体的には、鉄、コバルト、ニッケル等)及びその合金、マグネタイト以外の強磁性金属酸化物(より具体的には、Mn-Mg-Srフェライト、二酸化クロム等)、並びに強磁性化処理が施された材料(より具体的には、熱処理により強磁性が付与された炭素材料等)が挙げられる。
第1磁性粉に含まれるマグネタイト粒子の製造方法は、特に限定されない。また、本実施形態に係るトナーでは、第1磁性粉に含まれるマグネタイト粒子として、市販のマグネタイト粒子を使用することもできる。
(着色剤)
トナーコアは、マグネタイト粒子以外に、着色剤として黒色着色剤を含有していてもよい。マグネタイト粒子以外の黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。なお、本実施形態に係るトナーは、磁性粉層がトナーコアの外側に配置されているため、トナーコアがマグネタイト粒子以外の黒色着色剤を含有していなくても、黒の発色性に優れる。
(離型剤)
トナーコアは、離型剤を含有していてもよい。離型剤は、例えば、耐オフセット性に優れるトナーを得る目的で使用される。耐オフセット性に優れるトナーを得るためには、離型剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
離型剤としては、例えば、エステルワックス、ポリオレフィンワックス(より具体的には、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等)、マイクロクリスタリンワックス、フッ素樹脂ワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、及びカスターワックスが挙げられる。エステルワックスとしては、天然エステルワックス(より具体的には、カルナバワックス、ライスワックス等)、及び合成エステルワックスが挙げられる。本実施形態では、一種の離型剤を単独で使用してもよいし、複数種の離型剤を併用してもよい。
(電荷制御剤)
トナーコアは、電荷制御剤を含有していてもよい。電荷制御剤は、例えば、帯電安定性又は帯電立ち上がり特性に優れるトナーを得るために使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電させることができるか否かの指標になる。
トナーコアに正帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナーコアのカチオン性(正帯電性)を強めることができる。正帯電性の電荷制御剤の例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2-オキサジン、1,3-オキサジン、1,4-オキサジン、1,2-チアジン、1,3-チアジン、1,4-チアジン、1,2,3-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン、1,2,4-オキサジアジン、1,3,4-オキサジアジン、1,2,6-オキサジアジン、1,3,4-チアジアジン、1,3,5-チアジアジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、1,2,4,6-オキサトリアジン、1,3,4,5-オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等のアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ-ンBH/C、アジンディープブラックEW、アジンディープブラック3RL等の直接染料;ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZ等の酸性染料;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルデシルヘキシルメチルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルアンモニウムクロライド、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩等の4級アンモニウム塩;4級アンモニウムカチオン基を含む樹脂が挙げられる。これらの電荷制御剤の一種のみを使用してもよく、二種以上の電荷制御剤を組み合わせて使用してもよい。
帯電安定性に優れるトナーを得るためには、電荷制御剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
(磁性粉層)
次に、磁性粉層について説明する。磁性粉層は、例えば、第2磁性粉を主成分として含む。第2磁性粉は、磁性粒子としてマグネタイト粒子を含む。黒の発色性により優れるトナーを得るためには、磁性粉層中のマグネタイト粒子の含有量は、磁性粉層の全質量に対して、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが特に好ましい。トナーの磁気特性を容易に調整するためには、第2磁性粉に含まれるマグネタイト粒子の個数平均一次粒子径は、100nm以上500nm以下であることが好ましく、200nm以上350nm以下であることがより好ましい。なお、磁性粉層に第2磁性粉以外の成分(他の成分)が含まれる場合、他の成分としては、例えば樹脂が挙げられる。
第2磁性粉に含まれるマグネタイト粒子の表面は、特定反応性基を有する。マグネタイト粒子の表面に特定反応性基を付与する方法としては、特に限定されないが、マグネタイト粒子の表面に特定反応性基を容易に付与するためには、マグネタイト粒子(例えば、マグネタイト基体)の表面を、特定反応性基を有するシランカップリング剤で処理する方法が好ましい。つまり、第2磁性粉に含まれるマグネタイト粒子の表面は、特定反応性基を有するシランカップリング剤で処理されていることが好ましく、酸無水物基を有するシランカップリング剤(以下、酸無水物基含有シランカップリング剤と記載することがある)で処理されていることがより好ましい。
特定反応性基を有するシランカップリング剤でマグネタイト粒子の表面を処理する場合、処理対象のマグネタイト粒子は、特に限定されず、例えば公知の方法で調製したマグネタイト粒子であってもよく、市販のマグネタイト粒子であってもよい。
なお、第2磁性粉に含まれるマグネタイト粒子の表面が有する特定反応性基には、マグネタイト粒子の表面を、酸無水物基含有シランカップリング剤で処理する際又は酸無水物基含有シランカップリング剤で処理した後、マグネタイト粒子の表面に付与された酸無水物基が水分により加水分解されて生じたカルボキシ基も含まれる。
酸無水物基含有シランカップリング剤の例としては、酸無水物基と、アルコキシ基(加水分解性基)とを含むシランカップリング剤が挙げられる。酸無水物基含有シランカップリング剤における酸無水物基としては、例えば、コハク酸の無水物、及びエチレン性不飽和ジカルボン酸(より具体的には、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フタル酸等)の無水物が挙げられる。マグネタイト粒子の表面に容易に特定反応性基を付与するためには、酸無水物基含有シランカップリング剤としては、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物が好ましい。
酸無水物基含有シランカップリング剤を用いてマグネタイト粒子を表面処理する場合、例えば、酸無水物基含有シランカップリング剤のアルコキシ基が水分により加水分解されて生成したヒドロキシ基が、マグネタイト粒子の表面に存在するヒドロキシ基と脱水縮合反応する。こうした反応により、マグネタイト粒子の表面に酸無水物基(詳しくは、酸無水物基含有シランカップリング剤に由来する酸無水物基)が付与される。
高温高湿下において正帯電性を安定して維持できるトナーを得るためには、第2磁性粉に含まれるマグネタイト粒子の表面は、疎水化剤で疎水化処理されていることが好ましい。第2磁性粉に含まれるマグネタイト粒子の表面を容易に疎水化処理するためには、疎水化剤としては、アルキルアルコキシシラン及びチタネートカップリング剤からなる群より選ばれる一種以上が好ましい。なお、アルキルアルコキシシランとは、少なくとも1個のアルキル基(疎水性基)と、少なくとも2個のアルコキシ基(加水分解性基)とが、ケイ素原子に直接結合している化合物を指す。マグネタイト粒子の表面をより容易に疎水化処理するためには、アルキルアルコキシシランとしては、1個のアルキル基と、3個のアルコキシ基とがケイ素原子に直接結合しているモノアルキルトリアルコキシシランが好ましい。
モノアルキルトリアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、及びエチルトリエトキシシランが挙げられる。マグネタイト粒子の表面を更に容易に疎水化処理するためには、モノアルキルトリアルコキシシランとしては、エチルトリエトキシシランが好ましい。
アルキルアルコキシシランを用いてマグネタイト粒子を表面処理する場合、例えば、アルキルアルコキシシランのアルコキシ基が水分により加水分解されて生成したヒドロキシ基が、マグネタイト粒子の表面に存在するヒドロキシ基と脱水縮合反応する。こうした反応により、マグネタイト粒子の表面に疎水性基(詳しくは、アルキルアルコキシシランに由来するアルキル基)が付与される。
チタネートカップリング剤としては、例えば、アルキル基(疎水性基)を含む有機基と、アルコキシ基(加水分解性基)とを有するチタネートカップリング剤が挙げられる。なお、上記アルキル基を含む有機基には、アルコキシ基は含まれない。
アルキル基を含む有機基と、アルコキシ基とを有するチタネートカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、及びチタニウムジ-2-エチルヘキソキシビス(2-エチル-3-ヒドロキシヘキソキシド)が挙げられる。マグネタイト粒子の表面を容易に疎水化処理するためには、チタネートカップリング剤としては、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、及びチタニウムジ-2-エチルヘキソキシビス(2-エチル-3-ヒドロキシヘキソキシド)から選ばれる一種以上が好ましい。
チタネートカップリング剤を用いてマグネタイト粒子を表面処理する場合、例えば、チタネートカップリング剤のアルコキシ基が水分により加水分解されて生成したヒドロキシ基が、マグネタイト粒子の表面に存在するヒドロキシ基と脱水縮合反応する。こうした反応により、マグネタイト粒子の表面に疎水性基(詳しくは、チタネートカップリング剤に由来するアルキル基)が付与される。
第2磁性粉に含まれるマグネタイト粒子は、酸無水物基含有シランカップリング剤を用いた表面処理(酸無水物基付与処理)、及び疎水化剤を用いた表面処理(疎水化処理)の双方が施されていてもよい。酸無水物基付与処理と疎水化処理とを併用する場合、それらの処理の順序については限定されない。また、酸無水物基付与処理と疎水化処理とを併用する場合、それらの処理を同時に行ってもよい。また、疎水化処理として、アルキルアルコキシシランによる処理とチタネートカップリング剤による処理とを併用してもよい。アルキルアルコキシシランによる処理とチタネートカップリング剤による処理とを併用する場合、それらの処理の順序については限定されない。また、アルキルアルコキシシランによる処理とチタネートカップリング剤による処理とを併用する場合、それらの処理を同時に行ってもよい。以下、酸無水物基含有シランカップリング剤及び疎水化剤の少なくとも一方を、「特定表面処理剤」と記載することがある。
第2磁性粉に含まれるマグネタイト粒子を特定表面処理剤で処理する方法は、特に限定されない。特定表面処理剤で処理する方法の一例としては、マグネタイト粒子と特定表面処理剤とを含む混合物を、攪拌しながら加熱する方法が挙げられる。特定表面処理剤は、有機溶剤に溶解させてもよい。また、市販の特定表面処理剤を有機溶剤で希釈して使用してもよい。
第2磁性粉は、マグネタイト粒子以外の磁性粒子(例えば、第1磁性粉の任意成分として挙げた上記他の磁性粒子と同じ磁性粒子)を更に含んでもよいが、高画質の画像を形成するためには、第2磁性粉は、磁性粒子としてマグネタイト粒子のみを含むことが好ましい。
{シェル層}
次に、シェル層について説明する。シェル層は、未開環のオキサゾリン基を有する繰返し単位を含む。このような繰返し単位としては、例えば下記式(1-1)で表される繰返し単位(以下、繰返し単位(1-1)と記載する)が挙げられる。
Figure 0007234772000001
式(1-1)中、R1は、フェニル基で置換されていてもよいアルキル基、又は水素原子を表す。シェル層を容易に形成するためには、R1としては、水素原子、メチル基、エチル基、又はイソプロピル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
繰返し単位(1-1)は、未開環のオキサゾリン基を有する。未開環のオキサゾリン基は、環状構造を有し、強い正帯電性を示す。未開環のオキサゾリン基は、特定反応性基、芳香族性スルファニル基、及び芳香族性ヒドロキシ基と反応し易い。本実施形態では、磁性粉層中に含まれるマグネタイト粒子の表面が特定反応性基を有しているため、シェル層の形成中に、繰返し単位(1-1)と、磁性粉層の表面の特定反応性基(詳しくは、マグネタイト粒子の表面が有する特定反応性基)との反応(以下、反応RAと記載することがある)が生じ易い。また、トナーコアが結着樹脂としてポリエステル樹脂を含有し、かつ磁性粉層がトナーコアの表面全域を覆っていない場合は、シェル層の形成中に、繰返し単位(1-1)と、磁性粉層から露出したトナーコアの表面のカルボキシ基(詳しくは、ポリエステル樹脂が有するカルボキシ基)との反応(以下、反応RBと記載することがある)が生じ易い。反応RA及び反応RBの双方が生じる場合、磁性粉層の表面と、磁性粉層から露出したトナーコアの表面とがシェル層で覆われる。
シェル層の形成中に、繰返し単位(1-1)と、磁性粉層の表面又はトナーコアの表面のカルボキシ基とが反応すると、下記式(1-2)に示すようにオキサゾリン基が開環し、複合コアとシェル層との間にアミド結合及びエステル結合が形成される。こうした結合が形成されることで、複合コアとシェル層との結合が強固になり、複合コアからのシェル層の脱離が抑制されることになる。なお、下記式(1-2)中のR1は、式(1-1)中のR1と同義である。また、下記式(1-2)中の*は、複合コア中の原子に結合する部位を表す。
Figure 0007234772000002
トナーの正帯電性をより安定して維持しつつ、複合コアからのシェル層の脱離を抑制するためには、シェル層は、繰返し単位(1-1)と、式(1-2)で表される繰返し単位(以下、繰返し単位(1-2)と記載する)とを有するビニル樹脂を含むことが好ましい。以下、繰返し単位(1-1)と繰返し単位(1-2)とを有するビニル樹脂を、特定ビニル樹脂と記載することがある。特定ビニル樹脂中の繰返し単位(1-1)の割合(モル比)が高くなるほど、特定ビニル樹脂の正帯電性(ひいてはトナーの正帯電性)が高くなる傾向がある。一方、特定ビニル樹脂中の繰返し単位(1-2)の割合(モル比)が高くなるほど、複合コアとシェル層との結合が強固になる傾向がある。トナーの正帯電性を更に安定して維持しつつ、複合コアからのシェル層の脱離を更に抑制するためには、シェル層が特定ビニル樹脂から構成されている(シェル層を構成する樹脂が特定ビニル樹脂のみである)ことが好ましい。特定ビニル樹脂中の繰返し単位(1-1)と繰返し単位(1-2)とのモル比は、例えば、磁性粉層の表面の特定反応性基の量を変更することにより調整できる。磁性粉層の表面の特定反応性基の量は、例えば、特定反応性基を有するシランカップリング剤でマグネタイト粒子の表面を処理する際、マグネタイト粒子の量に対する特定反応性基を有するシランカップリング剤の量を変更することにより調整できる。
シェル層の形成中にオキサゾリン基が開環して繰返し単位(1-2)が形成されたことを確認する方法としては、例えば、以下に示す方法が挙げられる。詳しくは、所定量のトナー粒子(試料)を溶剤に溶解させる。得られた溶液をNMR(核磁気共鳴)測定用試験管に入れ、NMR装置を用いて1H-NMRスペクトルを測定する。1H-NMRスペクトルでは、化学シフトδ6.5付近に、第2級アミドに由来する三重線(トリプレット)のシグナルが出現する。よって、得られた1H-NMRスペクトルにおいて、化学シフトδ6.5付近に三重線のシグナルが確認されれば、シェル層の形成中にオキサゾリン基が開環して繰返し単位(1-2)が形成されたと推定される。1H-NMRスペクトルの測定条件の一例としては、以下に示す条件が挙げられる。
1H-NMRスペクトルの測定条件の一例)
NMR装置:フーリエ変換核磁気共鳴装置(FT-NMR)(日本電子株式会社製「JNM-AL400」)
NMR測定用試験管:5mm試験管
溶剤:重水素化クロロホルム(1mL)
試料温度:20℃
試料質量:20mg
積算回数:128回
化学シフトの内部基準物質:テトラメチルシラン(TMS)
特定ビニル樹脂を形成するための単量体としては、例えば下記式(1)で表される化合物(以下、化合物(1)と記載することがある)が挙げられる。化合物(1)は、付加重合により繰返し単位(1-1)を形成する。なお、下記式(1)中のR1は、式(1-1)中のR1と同義である。
Figure 0007234772000003
特定ビニル樹脂は、化合物(1)と、他のビニル化合物とを共重合させた重合物であってもよい。なお、ビニル化合物は、ビニル基(CH2=CH-)、又はビニル基中の水素が置換された基を有する化合物(より具体的には、エチレン、プロピレン、ブタジエン、塩化ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリロニトリル、スチレン等)である。ビニル化合物は、上記ビニル基等に含まれる炭素-炭素二重結合(C=C)により付加重合して、高分子(樹脂)になり得る。
他のビニル化合物としては、アクリル酸アルキルエステル系単量体、及びスチレン系単量体からなる群より選択される一種以上のビニル化合物が好ましい。
アクリル酸アルキルエステル系単量体としては、例えば下記式(2)で表される化合物(以下、化合物(2)と記載することがある)、及び下記式(3)で表される化合物(以下、化合物(3)と記載することがある)が挙げられる。
Figure 0007234772000004
式(2)中、R2は、置換基で置換されていてもよいアルキル基を表す。R2が表わすアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及び2-エチルヘキシル基が挙げられる。R2が置換基で置換されたアルキル基を表す場合、このような置換基の例としては、ヒドロキシ基が挙げられる。シェル層を容易に形成するためには、R2としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、2-エチルヘキシル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、又はヒドロキシブチル基が好ましい。
Figure 0007234772000005
式(3)中、R3は、置換基で置換されていてもよいアルキル基を表す。R3が表わすアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及び2-エチルヘキシル基が挙げられる。R3が置換基で置換されたアルキル基を表す場合、このような置換基の例としては、ヒドロキシ基が挙げられる。シェル層を容易に形成するためには、R3としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、2-エチルヘキシル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、又はヒドロキシブチル基が好ましい。
均一なシェル層を形成するためには、特定ビニル樹脂は、化合物(2)に由来する繰返し単位及び化合物(3)に由来する繰返し単位の少なくとも一方(以下、これらをまとめて特定アクリル単位と記載する)を更に含むことが好ましい。より均一なシェル層を形成するためには、特定ビニル樹脂は、繰返し単位(1-1)、繰返し単位(1-2)及び特定アクリル単位のみを繰返し単位として含むことが好ましい。
特定ビニル樹脂を含むシェル層を形成するための原料(以下、シェル原料と記載することがある)としては、例えばオキサゾリン基含有高分子水溶液(株式会社日本触媒製「エポクロス(登録商標)WSシリーズ」)を使用できる。このうち、「エポクロスWS-300」は、2-ビニル-2-オキサゾリン(化合物(1)の一種)と、メタクリル酸メチル(化合物(3)の一種)との共重合体を含む。また、「エポクロスWS-700」は、2-ビニル-2-オキサゾリンと、メタクリル酸メチルと、アクリル酸ブチル(化合物(2)の一種)との共重合体を含む。
{磁性粉層とシェル層の好適な組合せ}
正帯電性を更に安定して維持しつつ、黒の発色性に更に優れるトナーを得るためには、トナー粒子が、厚さ200nm以上350nm以下の磁性粉層、及び未開環オキサゾリン基含有量200μmol以上800μmol以下のシェル層を備えることが好ましい。
{外添剤}
トナー粒子は、外添剤を更に備えてもよい。外添剤の外添方法としては、例えば、上述した図1に示すトナー粒子10をトナー母粒子として用い、このトナー母粒子(粉体)と外添剤粒子(粉体)とを一緒に攪拌することで、トナー母粒子の表面に外添剤粒子を付着させる方法が挙げられる。
外添剤粒子としては、無機粒子が好ましく、シリカ粒子、及び金属酸化物(より具体的には、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等)の粒子が特に好ましい。本実施形態では、一種類の外添剤粒子を単独で使用してもよいし、複数種の外添剤粒子を併用してもよい。
トナー母粒子からの外添剤粒子の脱離を抑制しながら外添剤の機能を十分に発揮させるためには、外添剤の量(複数種の外添剤粒子を使用する場合には、それら外添剤粒子の合計量)が、トナー母粒子100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
外添剤粒子は、表面処理されていてもよい。例えば、外添剤粒子としてシリカ粒子を使用する場合、表面処理剤によりシリカ粒子の表面に疎水性及び/又は正帯電性が付与されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、カップリング剤(より具体的には、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等)、シラザン化合物(より具体的には、鎖状シラザン化合物、環状シラザン化合物等)、及びシリコーンオイル(より具体的には、ジメチルシリコーンオイル等)が挙げられる。表面処理剤としては、シランカップリング剤及びシラザン化合物から選ばれる一種以上が特に好ましい。シランカップリング剤の好適な例としては、シラン化合物(より具体的には、メチルトリメトキシシラン、アミノシラン等)が挙げられる。シラザン化合物の好適な例としては、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)が挙げられる。シリカ基体(未処理のシリカ粒子)の表面が表面処理剤で処理されると、シリカ基体の表面に存在する多数のヒドロキシ基(-OH)が部分的に又は全体的に、表面処理剤に由来する官能基に置換される。その結果、表面処理剤に由来する官能基(詳しくは、ヒドロキシ基よりも疎水性及び/又は正帯電性の強い官能基)を表面に有するシリカ粒子が得られる。
<トナーの製造方法>
次に、上述した実施形態に係るトナーの好適な製造方法について説明する。以下、上述した実施形態に係るトナーと重複する構成要素については説明を省略する。
[複合コアの調製工程]
(トナーコアの調製工程)
まず、凝集法又は粉砕法によりトナーコアを調製する。
凝集法は、例えば、凝集工程及び合一化工程を含む。凝集工程では、トナーコアを構成する成分を含む微粒子を水性媒体中で凝集させて、凝集粒子を形成する。合一化工程では、凝集粒子に含まれる成分を水性媒体中で合一化させてトナーコアを形成する。
次に粉砕法を説明する。粉砕法によれば、比較的容易にトナーコアを調製できる上、製造コストの低減が可能である。粉砕法でトナーコアを調製する場合、トナーコアの調製工程は、例えば溶融混練工程と、粉砕工程とを備える。トナーコアの調製工程は、溶融混練工程の前に混合工程を更に備えてもよい。また、トナーコアの調製工程は、粉砕工程後に、微粉砕工程及び分級工程の少なくとも一方を更に備えてもよい。
混合工程では、例えば、結着樹脂と、第1磁性粉(マグネタイト粒子を含む磁性粉)と、必要に応じて添加する他の内添剤とを混合して、混合物を得る。溶融混練工程では、トナー材料を溶融し混練して、溶融混練物を得る。トナー材料としては、例えば混合工程で得られる混合物が用いられる。粉砕工程では、得られた溶融混練物を、例えば室温(25℃)まで冷却した後、粉砕して粉砕物を得る。粉砕工程で得られた粉砕物の小径化が必要な場合は、粉砕物を更に粉砕する工程(微粉砕工程)を実施してもよい。また、粉砕物の粒径を揃える場合は、得られた粉砕物を分級する工程(分級工程)を実施してもよい。以上の工程により、粉砕物であるトナーコアが得られる。
(磁性粉層の形成工程)
続いて、混合機(例えば、日本コークス工業株式会社製のFMミキサー)を用いて、得られたトナーコアと、第2磁性粉(マグネタイト粒子を含む磁性粉)とを混合して、トナーコアの表面に第2磁性粉を付着させる。これにより、トナーコアと、トナーコアの表面に配置された磁性粉層(マグネタイト粒子を含む層)とを備える複合コアが得られる。複合コアの全質量に対する、第2磁性粉中のマグネタイト粒子の量は、例えば、トナーコアの量に対するマグネタイト粒子の添加量(混合機に投入するマグネタイト粒子の量)を変更することにより調整できる。
[シェル層の形成工程]
次いで、容器に、得られた複合コアと、シェル原料としてのオキサゾリン基含有高分子水溶液と、水(例えばイオン交換水)とを入れる。次いで、容器内容物を攪拌しながら、容器内温が設定温度(例えば50℃以上70℃以下の温度)になるまで昇温させる。この際の昇温速度は、例えば0.2℃/分以上0.4℃/分以下である。容器内温を昇温させる際、容器内容物のpHを5以上7以下に維持するために、容器にアンモニア水溶液を随時入れてもよい。また、昇温中に、シェル原料のオキサゾリン基を開環させる開環剤(例えば、酢酸水溶液)及び/又はシェル原料(例えば、オキサゾリン基含有高分子水溶液)を添加してもよい。
容器内温が設定温度に到達するまでの間に、オキサゾリン基含有高分子のオキサゾリン基の一部が、例えば複合コアの表面に存在する特定反応性基の一部と反応することで開環する。このオキサゾリン基の開環と共に、複合コアと、オキサゾリン基含有高分子を含むシェル層との間にアミド結合及びエステル結合が形成される。そして、容器内温が設定温度に到達した直後、容器内温を室温(例えば25℃)まで下げる。次いで、容器内容物を、例えばフィルタープレス等を用いて濾過(固液分離)する。この際、濾物をイオン交換水等で洗浄してもよい。次いで、得られた濾物を乾燥させることにより、複合コアと、複合コアの表面を覆うシェル層(詳しくは、未開環のオキサゾリン基を有する繰返し単位を含むシェル層)とを備えたトナー母粒子が得られる。
未開環オキサゾリン基含有量は、例えば、複合コアの量に対するシェル原料の使用量を変更することにより調整できる。また、複合コアの量に対するシェル原料の使用量を変更することにより、磁性粉層の厚さも調整できる。
また、未開環オキサゾリン基含有量は、例えば、上述した開環剤を用いて、シェル層に含まれる未開環のオキサゾリン基のうち、一部のオキサゾリン基を開環させることにより、調整することもできる。
[外添工程]
その後、必要に応じて、混合機(例えば、日本コークス工業株式会社製のFMミキサー)を用いて、得られたトナー母粒子と外添剤とを混合して、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させてもよい。なお、トナー母粒子に外添剤を付着させずに、トナー母粒子をトナー粒子として使用してもよい。こうして、上述した実施形態に係るトナー(トナー粒子の粉体)が得られる。
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は実施例の範囲に何ら限定されるものではない。
<マグネタイト基体MAの調製>
濃度1.8mol/LでFe2+を含む硫酸第1鉄水溶液と、濃度3.6mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液とを反応容器に加えて混合した。反応容器に加える水酸化ナトリウム水溶液の量は、反応容器に加える硫酸第1鉄水溶液中のFe2+に対して0.85当量に相当する量であった。続けて、容器内容物を温度80℃まで昇温させることにより、水酸化第1鉄(Fe(OH)2)コロイドを含む懸濁液を調製した。
続けて、容器内容物(上記懸濁液)の温度を80℃に維持し、速度100L/分で90分間、容器内に空気を吹き込んで、容器内の第1鉄イオンの酸化反応を、反応率が50%になるまで進行させた。なお、反応率は、化学反応の進行度を示し、具体的には、反応開始時に存在する未反応物質のうち、反応した物質の質量割合に相当する。
続けて、水酸化ナトリウム水溶液を容器内に添加して、容器内容物のpHを10に調整した。そして、容器内容物の温度を90℃に保って、速度100L/分で30分間、容器内に空気を吹き込んだ。その結果、液中でマグネタイト粒子が生成し、マグネタイト粒子を含む懸濁液が得られた。その後、得られた懸濁液からマグネタイト粒子(粉体)を濾別した。
続けて、得られたマグネタイト粒子(粉体)を水洗及び乾燥して、マグネタイト粒子の凝集物を得た。続けて、得られた凝集物を粉砕して、粒子形状が八面体であるマグネタイト基体MAの粉体を得た。マグネタイト基体MAの個数平均一次粒子径は、200nmであった。
<マグネタイト粒子MA-1~MA-6及びMB-1~MB-5の調製>
以下、マグネタイト粒子MA-1~MA-6及びMB-1~MB-5の調製方法について説明する。
[マグネタイト粒子MA-1の調製]
(酸無水物基付与処理)
900質量部の塩酸(温度:70℃、pH:6)と、100質量部のマグネタイト基体MAとを反応容器に加えた後、分散機(プライミクス株式会社製「ホモミクサーMARKII 2.5型」)を用いて、回転速度4000rpmで容器内容物を5分間攪拌した。次いで、反応容器に、10質量部の3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物(信越化学工業株式会社製「X-12-967C」、以下、X-12-967Cと記載することがある)を加えた後、容器内容物を温度70℃に保ちながら、分散機(プライミクス株式会社製「ホモミクサーMARKII 2.5型」)を用いて、回転速度4000rpmで容器内容物を1時間攪拌した。その結果、マグネタイト基体MAと、マグネタイト基体MAの表面に付与された酸無水物基(詳しくは、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物に由来する酸無水物基)とを有するマグネタイト粒子MA-1の懸濁液が得られた。
次いで、得られた懸濁液からマグネタイト粒子MA-1を濾別した。次いで、濾別したマグネタイト粒子MA-1を、水洗した後、オーブンを用いて温度90℃で6時間乾燥させて、マグネタイト粒子MA-1の粉体を得た。
[マグネタイト粒子MA-2の調製]
(疎水化処理)
900質量部のイオン交換水(温度:80℃)と、100質量部のマグネタイト基体MAとを反応容器に加えた後、分散機(プライミクス株式会社製「ホモミクサーMARKII 2.5型」)を用いて、回転速度5000rpmで容器内容物を5分間攪拌した。次いで、反応容器に、2質量部のエチルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製「LS-2410」、以下、LS-2410と記載することがある)を加えた後、容器内容物を温度80℃に保ちながら、分散機(プライミクス株式会社製「ホモミクサーMARKII 2.5型」)を用いて、回転速度5000rpmで容器内容物を1時間攪拌した。その結果、マグネタイト基体MAと、マグネタイト基体MAの表面に付与された疎水性基(詳しくは、エチルトリエトキシシランに由来する疎水性基)とを有するマグネタイト粒子の懸濁液が得られた。
次いで、得られた懸濁液からマグネタイト粒子を濾別した。次いで、濾別したマグネタイト粒子を、水洗した後、オーブンを用いて温度100℃で6時間乾燥させて、疎水化処理されたマグネタイト粒子(以下、疎水化マグネタイト粒子と記載することがある)の粉体を得た。
(酸無水物基付与処理)
次いで、900質量部の塩酸(温度:70℃、pH:6)と、100質量部の疎水化マグネタイト粒子(上述の手順で得られた疎水化マグネタイト粒子)とを反応容器に加えた後、分散機(プライミクス株式会社製「ホモミクサーMARKII 2.5型」)を用いて、回転速度4000rpmで容器内容物を5分間攪拌した。次いで、反応容器に、10質量部のX-12-967Cを加えた後、容器内容物を温度70℃に保ちながら、分散機(プライミクス株式会社製「ホモミクサーMARKII 2.5型」)を用いて、回転速度4000rpmで容器内容物を1時間攪拌した。その結果、疎水化マグネタイト粒子と、疎水化マグネタイト粒子の表面に付与された酸無水物基(詳しくは、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物に由来する酸無水物基)とを有するマグネタイト粒子MA-2の懸濁液が得られた。
次いで、得られた懸濁液からマグネタイト粒子MA-2を濾別した。次いで、濾別したマグネタイト粒子MA-2を、水洗した後、オーブンを用いて温度90℃で6時間乾燥させて、マグネタイト粒子MA-2の粉体を得た。
[マグネタイト粒子MA-3の調製]
疎水化処理の際、2質量部のLS-2410の代わりに、2質量部のチタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)(マツモトファインケミカル株式会社製「オルガチックス(登録商標)TC-100」、以下、TC-100と記載することがある)を用いたこと以外は、マグネタイト粒子MA-2の調製と同じ方法で、マグネタイト粒子MA-3の粉体を得た。
[マグネタイト粒子MA-4の調製]
疎水化処理の際、2質量部のLS-2410の代わりに、2質量部のチタニウムジ-2-エチルヘキソキシビス(2-エチル-3-ヒドロキシヘキソキシド)(マツモトファインケミカル株式会社製「オルガチックス(登録商標)TC-201」、以下、TC-201と記載することがある)を用いたこと以外は、マグネタイト粒子MA-2の調製と同じ方法で、マグネタイト粒子MA-4の粉体を得た。
[マグネタイト粒子MA-5の調製]
疎水化処理の際、2質量部のLS-2410の代わりに、2質量部のTC-100及び2質量部のLS-2410を用いたこと以外は、マグネタイト粒子MA-2の調製と同じ方法で、マグネタイト粒子MA-5の粉体を得た。
[マグネタイト粒子MA-6の調製]
疎水化処理の際、2質量部のLS-2410の代わりに、2質量部のTC-201及び2質量部のLS-2410を用いたこと以外は、マグネタイト粒子MA-2の調製と同じ方法で、マグネタイト粒子MA-6の粉体を得た。
[マグネタイト粒子MB-1の調製]
酸無水物基付与処理、並びにその後の濾別、水洗及び乾燥を行わなかったこと以外は、マグネタイト粒子MA-2の調製と同じ方法で、マグネタイト粒子MB-1(マグネタイト粒子MA-2を調製する際の疎水化処理で得られた疎水化マグネタイト粒子と同じ粒子)の粉体を得た。
[マグネタイト粒子MB-2の調製]
以下に示す変更点以外は、マグネタイト粒子MA-2の調製と同じ方法で、マグネタイト粒子MB-2の粉体を得た。
(変更点)
マグネタイト粒子MB-2の調製では、疎水化処理の際、2質量部のLS-2410の代わりに、2質量部のTC-100を用いた。マグネタイト粒子MB-2の調製では、酸無水物基付与処理、並びにその後の濾別、水洗及び乾燥を行わなかった。
[マグネタイト粒子MB-3の調製]
以下に示す変更点以外は、マグネタイト粒子MA-2の調製と同じ方法で、マグネタイト粒子MB-3の粉体を得た。
(変更点)
マグネタイト粒子MB-3の調製では、疎水化処理の際、2質量部のLS-2410の代わりに、2質量部のTC-201を用いた。マグネタイト粒子MB-3の調製では、酸無水物基付与処理、並びにその後の濾別、水洗及び乾燥を行わなかった。
[マグネタイト粒子MB-4の調製]
以下に示す変更点以外は、マグネタイト粒子MA-2の調製と同じ方法で、マグネタイト粒子MB-4の粉体を得た。
(変更点)
マグネタイト粒子MB-4の調製では、疎水化処理の際、2質量部のLS-2410の代わりに、2質量部のTC-100及び2質量部のLS-2410を用いた。マグネタイト粒子MB-4の調製では、酸無水物基付与処理、並びにその後の濾別、水洗及び乾燥を行わなかった。
[マグネタイト粒子MB-5の調製]
以下に示す変更点以外は、マグネタイト粒子MA-2の調製と同じ方法で、マグネタイト粒子MB-5の粉体を得た。
(変更点)
マグネタイト粒子MB-5の調製では、疎水化処理の際、2質量部のLS-2410の代わりに、2質量部のTC-201及び2質量部のLS-2410を用いた。マグネタイト粒子MB-5の調製では、酸無水物基付与処理、並びにその後の濾別、水洗及び乾燥を行わなかった。
<トナーTA-1の作製>
[結着樹脂の合成工程]
温度計(熱電対)、脱水管、窒素導入管、精留塔及び攪拌装置を備えた容量5Lの4つ口フラスコを温調槽に載置し、このフラスコ内に、1,2-プロパンジオール1220gと、テレフタル酸1720gと、ジオクタン酸錫(II)3.3gとを投入した。続けて、窒素雰囲気下、温度210℃の条件でフラスコ内容物を12時間反応(詳しくは、縮合反応)させた。続けて、フラスコ内を減圧し、減圧雰囲気(圧力8.0kPa)かつ温度200℃の条件で、反応生成物(ポリエステル樹脂)のTmが所定の温度(90℃)になるまで、フラスコ内容物を反応させた。その結果、結着樹脂としてのポリエステル樹脂が得られた。得られたポリエステル樹脂は、Tgが43℃であり、Tmが90℃であり、酸価が5mgKOH/gであった。
[複合コアの調製工程]
(トナーコアの調製工程)
上記のようにして得られたポリエステル樹脂70質量部と、離型剤(日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP-3」、成分:エステルワックス)9質量部と、正帯電性の電荷制御剤(オリヱント化学工業株式会社製「BONTRON(登録商標)N-21」)1質量部と、20質量部のマグネタイト基体MAとを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM-20B」)を用いて回転速度1200rpmで3分間混合した。
続けて、得られた混合物を、2軸押出機(株式会社池貝製「PCM-30」)を用いて、材料供給速度5kg/時、軸回転速度150rpm、シリンダー温度100℃の条件で溶融混練した。その後、得られた溶融混練物を冷却した。続けて、冷却された溶融混練物を、粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製「ロートプレックス(登録商標)」)を用いて、設定粒子径1.5mmの条件で粗粉砕した。続けて、得られた粗粉砕物を、粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミル RS型」)を用いて微粉砕した。続けて、得られた微粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ-LABO型」)を用いて分級した。その結果、体積中位径(D50)8.0μm、Tg45℃のトナーコアが得られた。
(磁性粉層の形成工程)
上記のようにして得られたトナーコア100質量部と、10質量部のマグネタイト粒子MA-1とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM-20B」)に投入し、上記FMミキサーを用いて回転速度700rpmで3分間混合し、複合コアを得た。得られた複合コアは、トナーコアと、トナーコアの表面に配置された磁性粉層とを含んでいた。
[シェル層の形成工程]
温度計及び攪拌羽根を備えた容量2Lの3つ口フラスコに、上記のようにして得られた複合コア200gと、オキサゾリン基含有高分子水溶液(株式会社日本触媒製「エポクロス(登録商標)WS-300」、固形分濃度:10質量%)10gと、イオン交換水800mLとを入れた。次いで、フラスコを温調槽に載置し、フラスコ内容物を150rpmの回転速度で攪拌しながら、フラスコ内温を25℃から60℃まで0.3℃/分の昇温速度で昇温させた。この際、フラスコ内容物のpHを7に維持するために、フラスコにアンモニア水溶液(濃度1質量%)を随時入れた。フラスコ内温が60℃に到達した直後、2℃/分の降温速度でフラスコ内を25℃まで冷却した。冷却後、フラスコ内容物をフィルタープレス(日立造船株式会社製「TFP310-3MKII」)により濾過(固液分離)した。この際、濾液の導電率が6μS/cmになるまで濾物をイオン交換水で洗浄した。得られた濾物を、真空乾燥機により圧力0.09MPa、温度40℃の条件で乾燥させた。乾燥は、濾物の水分量が1.0質量%になるまで行った。その結果、複合コアがシェル層(未開環のオキサゾリン基を有する繰返し単位を含むシェル層)で覆われたトナー母粒子の粉体を得た。
[外添工程]
得られたトナー母粒子100質量部と、シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA90」、表面処理剤により正帯電性が付与されたシリカ粒子)1.5質量部と、導電性酸化チタン粒子(チタン工業株式会社製「EC-100」)1.5質量部とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM-10B」)を用いて、回転速度3000rpmかつジャケット温度20℃の条件で2分間混合した。これにより、トナー母粒子の表面に外添剤(シリカ粒子の粉体及び導電性酸化チタン粒子の粉体)の全量を付着させた。
続けて、得られた粉体を、300メッシュ(目開き48μm)の篩を用いて篩別した。その結果、正帯電性の磁性トナーであるトナーTA-1が得られた。得られたトナーTA-1では、磁性粉層を構成する磁性粉(第2磁性粉)に含まれるマグネタイト粒子(マグネタイト粒子MA-1)の量は、複合コアの全質量に対して9質量%であった。また、得られたトナーTA-1では、トナーコア中の磁性粉(第1磁性粉)に含まれるマグネタイト粒子(マグネタイト基体MA)と、第2磁性粉に含まれるマグネタイト粒子MA-1との合計量は、複合コアの全質量に対して27質量%であった。
<トナーTA-2~TA-6及びTB-1~TB-5の作製>
磁性粉層の形成工程において、マグネタイト粒子MA-1の代わりに、表1に示す種類のマグネタイト粒子(FMミキサーへの投入量:いずれも10質量部)を用いたこと以外は、トナーTA-1の作製と同じ方法で、トナーTA-2~TA-6及びTB-1~TB-5を得た。トナーTA-2~TA-6及びTB-1~TB-5は、いずれも正帯電性の磁性トナーであった。なお、トナーTA-2~TA-6では、磁性粉層を構成する磁性粉(第2磁性粉)に含まれるマグネタイト粒子の量は、いずれも複合コアの全質量に対して9質量%であった。また、トナーTA-2~TA-6では、トナーコア中の磁性粉(第1磁性粉)に含まれるマグネタイト粒子と、第2磁性粉に含まれるマグネタイト粒子との合計量は、いずれも複合コアの全質量に対して27質量%であった。
<トナーTB-6の作製>
磁性粉層の形成工程において、10質量部のマグネタイト粒子MA-1の代わりに、10質量部のマグネタイト粒子MA-5を用いたこと、及びシェル層を形成せずに、複合コアをトナー母粒子として用いたこと以外は、トナーTA-1の作製と同じ方法で、正帯電性の磁性トナーであるトナーTB-6を得た。
<トナーTB-7の作製>
トナーコアの調製工程において、マグネタイト基体MAの使用量を30質量部に変更したことと、磁性粉層を形成せずに、トナーコアの表面にシェル層を形成したこと以外は、トナーTA-1の作製と同じ方法で、正帯電性の磁性トナーであるトナーTB-7を得た。
<磁性粉層の厚さの測定>
測定対象のトナー(トナーTA-1~TA-6及びTB-1~TB-7のいずれか)を可視光硬化性樹脂(東亞合成株式会社製「アロニックス(登録商標)LCR D-800」)中に分散させた後、可視光照射により樹脂を硬化させて、硬化物を得た。続けて、ダイヤモンドナイフを備えたウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ株式会社製「EM UC6」)を用いて、硬化物を切り出し、厚さ150nmの薄片試料を得た。続けて、得られた薄片試料の断面を、透過電子顕微鏡(TEM)(株式会社日立ハイテクノロジーズ製「H-7100FA」)を用いて、倍率10万倍で撮影した。そして、画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いてTEM撮影像を解析することで、磁性粉層の厚さを測定した。
測定の手順については、まず、得られたTEM撮影像において、測定対象(トナー)に含まれる5個のトナー粒子を無作為に選択した。そして、選択した5個のトナー粒子について、それぞれ磁性粉層の厚さを測定し、測定対象のトナーの評価値(磁性粉層の厚さ)を求めた。より詳しくは、トナー粒子1つにつき、磁性粉層の厚さの測定箇所を無作為に10箇所選択し、選択した測定箇所の各々で磁性粉層の厚さを測定した。測定された10箇所の厚さの算術平均値を、そのトナー粒子の磁性粉層の厚さとした。選択した5個のトナー粒子について、それぞれ磁性粉層の厚さを測定し、測定された厚さの個数平均値を測定対象のトナーの評価値(磁性粉層の厚さ)とした。なお、トナーTA-1~TA-6のそれぞれのTEM撮影像中のトナー粒子では、磁性粉層がトナーコアの表面領域(外縁を示す輪郭線)のうち70%以上100%以下の領域を覆っていた。また、トナーTA-1~TA-6のそれぞれのTEM撮影像中のトナー粒子では、シェル層が複合コアの表面領域(外縁を示す輪郭線)のうち70%以上100%以下の領域を覆っていた。
<未開環オキサゾリン基含有量の測定>
トナーTA-1~TA-6及びTB-1~TB-7の各々の未開環オキサゾリン基含有量は、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS法)により測定した。GC/MS法では、測定装置として、ガスクロマトグラフ質量分析計(株式会社島津製作所製「GCMS-QP2010 Ultra」)及びマルチショット・パイロライザー(フロンティア・ラボ株式会社製「FRONTIER LAB Multi-functional Pyrolyzer(登録商標)PY-3030D」)を用いた。カラムとしては、GCカラム(アジレント・テクノロジー社製「Agilent(登録商標)J&W ウルトライナートキャピラリGCカラム DB-5ms」、相:シロキサンポリマーにアリレンを入れてポリマーの主鎖を強化したアリレン相、内径:0.25mm、膜厚:0.25μm、長さ:30m)を用いた。ガスクロマトグラフ測定条件及び質量分析測定条件を、それぞれ以下に示す。
[ガスクロマトグラフ測定条件]
キャリアガス:ヘリウム(He)ガス
キャリア流量:1mL/分
気化室温度:210℃
熱分解温度:加熱炉「600℃」、インターフェイス部「320℃」
昇温条件:40℃で3分間保持した後、40℃から速度10℃/分で300℃まで昇温し、300℃で15分間保持した。
[質量分析測定条件]
イオン化法:EI(Electron Impact)法
イオン源温度:200℃
インターフェイス部の温度:320℃
検出モード:スキャン(測定範囲:45m/z~500m/z)
上記条件で測定されたマススペクトルを解析することにより未開環オキサゾリン基に由来するピークを特定し、測定されたクロマトグラムのピーク面積に基づいて、測定対象(トナー)に含まれる未開環オキサゾリン基含有量(トナー1gに含まれる未開環のオキサゾリン基の量)を求めた。未開環オキサゾリン基含有量の定量には、検量線を用いた。
トナーTA-1~TA-6及びTB-1~TB-7について、磁性粉層の形成工程で使用したマグネタイト粒子の種類、シェル層の有無、磁性粉層の厚さ及び未開環オキサゾリン基含有量を、それぞれ表1に示す。なお、表1において、「マグネタイト粒子の種類」は、磁性粉層の形成工程で使用したマグネタイト粒子の種類を意味する。また、「マグネタイト粒子の種類」の欄の「-」は、磁性粉層を形成しなかったことを意味する。
Figure 0007234772000006
<評価方法>
[低温定着性(最低定着温度)]
評価機としては、モノクロプリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「ECOSYS(登録商標)LS-4020DN」を改造して定着温度を変更可能にした評価機)を用いた。トナー(評価対象:トナーTA-1~TA-6及びTB-1~TB-7のいずれか)を、評価機の現像装置及びトナーコンテナに投入した。次いで、温度23℃かつ湿度50%RHの環境下、上記評価機を用いて、評価用紙(モンディ社製「ColorCopy(登録商標)」、A4サイズ、坪量90g/m2)に、トナー載り量0.5mg/cm2の条件で、大きさ20mm×30mmのソリッド画像(詳しくは、未定着のトナー像)を形成した。続けて、画像が形成された評価用紙を評価機の定着装置に通した。この際、定着装置の定着温度を100℃から1℃ずつ上げながら各定着温度について定着の可否を判定し、ソリッド画像(トナー像)を評価用紙に定着できる最低温度(最低定着温度)を測定した。トナーを定着させることができたか否かは、以下に示すような折擦り試験で確認した。詳しくは、定着装置に通した評価用紙を、画像を形成した面が内側となり、且つ画像の中央が折り目となるように半分に折り曲げ、布帛で被覆した1kgの真鍮製の分銅を用いて、折り目上を5往復摩擦した。続けて、評価用紙を広げ、評価用紙の折り曲げ部(ソリッド画像が形成された部分)を観察した。そして、折り曲げ部のトナーの剥がれの長さ(剥がれ長)を測定した。剥がれ長が1mm以下となる定着温度のうちの最低温度を、最低定着温度とした。最低定着温度が120℃以下であれば「低温定着性に優れている」と評価した。一方、最低定着温度が120℃を超える場合、「低温定着性に優れていない」と評価した。
[黒の発色性(L*値)]
評価機としては、モノクロプリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「ECOSYS(登録商標)LS-4020DN」を改造して定着温度を変更可能にした評価機)を用いた。トナー(評価対象:トナーTA-1~TA-6及びTB-1~TB-7のいずれか)を、評価機の現像装置及びトナーコンテナに投入した。次いで、温度23℃かつ湿度50%RHの環境下、上記評価機を用いて、評価用紙(モンディ社製「ColorCopy(登録商標)」、A4サイズ、坪量90g/m2)に、下記の印刷条件で、評価パターンを印刷した。これにより、評価に使用する画像を得た。
(印刷条件)
トナー載り量:0.5mg/cm2
加熱ローラーの表面温度(定着温度):150℃
加圧ローラーの表面温度:130℃
定着装置のニップ幅:6.2mm
定着圧力(ニップ圧):150N
評価パターン:大きさ20mm×30mmのソリッド画像
得られたソリッド画像においてL*値の測定箇所を無作為に5箇所選択し、選択した測定箇所の各々で、下記測定条件に基づいてL*値を測定した。そして、測定された5箇所のL*値の算術平均値を、評価対象のトナーの評価値(L*値)とした。
(L*値の測定条件)
測定装置:反射濃度計(X-Rite社製「SpectroEye(登録商標)」)
観測光源:D50(色温度:5000K)
観測視野角:2°
濃度基準:DIN16536(1995)
白色基準:絶対白色基準(Abs)
フィルター:偏光フィルター(POL)
*値が18以下であれば「黒の発色性に優れている」と評価した。一方、L*値が18を超える場合、「黒の発色性に優れていない」と評価した。
[駆動後の帯電量]
評価機としては、モノクロプリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「ECOSYS(登録商標)LS-4020DN」)を用いた。トナー(評価対象:トナーTA-1~TA-6及びTB-1~TB-7のいずれか)を、評価機の現像装置に投入した。次いで、温度23℃かつ湿度50%RHの環境下、上記評価機を用いて、30分間にわたって白紙画像を印刷用紙(A4サイズ)に出力し続けることにより、評価機の現像装置を駆動させた。次いで、評価機の現像装置からトナーを取り出した後、温度23℃かつ湿度50%RHの環境下、取り出されたトナーの帯電量(単位:μC/g)を、吸引式小型帯電量測定装置(トレック社製「MODEL 212HS」)を用いて測定した。以下、ここで測定された帯電量を、「駆動後の帯電量」と記載する。
駆動後の帯電量が20μC/g以上であれば、「正帯電性を安定して維持できている」と評価した。一方、駆動後の帯電量が20μC/g未満である場合、「正帯電性を安定して維持できていない」と評価した。
[評価結果]
トナーTA-1~TA-6及びTB-1~TB-7について、最低定着温度、L*値、及び駆動後の帯電量の各々の結果を、表2に示す。
Figure 0007234772000007
トナーTA-1~TA-6では、トナー粒子が、複合コアと、複合コアの表面を覆うシェル層とを備えていた。トナーTA-1~TA-6では、複合コアが、トナーコアと、トナーコアの表面に配置された磁性粉層との複合体であった。トナーTA-1~TA-6では、シェル層が、未開環のオキサゾリン基を有する繰返し単位を含んでいた。トナーTA-1~TA-6では、トナーコア中の磁性粉(第1磁性粉)、及び磁性粉層を構成する磁性粉(第2磁性粉)のいずれもがマグネタイト粒子を含んでいた。トナーTA-1~TA-6では、第2磁性粉に含まれるマグネタイト粒子の表面が特定反応性基を有していた。
表2に示すように、トナーTA-1~TA-6では、L*値が18以下であった。よって、トナーTA-1~TA-6は、黒の発色性に優れていた。トナーTA-1~TA-6では、駆動後の帯電量が20μC/g以上であった。よって、トナーTA-1~TA-6は、正帯電性を安定して維持できていた。
トナーTB-1~TB-5では、磁性粉層を構成する磁性粉に含まれるマグネタイト粒子の表面が特定反応性基を有していなかった。トナーTB-6では、シェル層が形成されていなかった。トナーTB-7では、磁性粉層が形成されていなかった。
表2に示すように、トナーTB-1~TB-6では、駆動後の帯電量が20μC/g未満であった。よって、トナーTB-1~TB-6は、正帯電性を安定して維持できていなかった。トナーTB-7では、L*値が18を超えていた。よって、トナーTB-7は、黒の発色性に優れていなかった。
以上の結果から、本発明によれば、正帯電性を安定して維持しつつ、黒の発色性に優れる磁性トナーを提供できることが示された。
本発明に係る磁性トナーは、例えば複合機又はプリンターにおいて画像を形成するために利用することができる。
10 :トナー粒子
11 :複合コア
12 :シェル層
13 :トナーコア
14 :磁性粉層

Claims (7)

  1. トナー粒子を含む、正帯電性の磁性トナーであって、
    前記トナー粒子は、複合コアと、前記複合コアの表面を覆うシェル層とを備え、
    前記複合コアは、トナーコアと、前記トナーコアの表面に配置された磁性粉層との複合体であり、
    前記シェル層は、未開環のオキサゾリン基を有する繰返し単位を含み、
    前記トナーコアは、結着樹脂と第1磁性粉とを含み、
    前記磁性粉層は、第2磁性粉を含み、
    前記第1磁性粉及び前記第2磁性粉は、いずれもマグネタイト粒子を含み、
    前記第2磁性粉に含まれる前記マグネタイト粒子の表面は、カルボキシ基及び酸無水物基の少なくとも一方を有する、磁性トナー。
  2. 前記未開環のオキサゾリン基を有する繰返し単位は、下記式(1-1)で表される繰返し単位である、請求項1に記載の磁性トナー。
    Figure 0007234772000008
    (前記式(1-1)中、R1は、フェニル基で置換されていてもよいアルキル基、又は水素原子を表す。)
  3. 前記第2磁性粉に含まれる前記マグネタイト粒子の表面は、酸無水物基を有するシランカップリング剤で処理されている、請求項1又は2に記載の磁性トナー。
  4. 前記第2磁性粉に含まれる前記マグネタイト粒子の表面は、アルキルアルコキシシラン及びチタネートカップリング剤からなる群より選ばれる一種以上の疎水化剤で疎水化処理されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の磁性トナー。
  5. ガスクロマトグラフィー質量分析法により測定される、前記磁性トナー1gに含まれる前記未開環のオキサゾリン基の量は、200μmol以上800μmol以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の磁性トナー。
  6. 前記第2磁性粉に含まれる前記マグネタイト粒子の量は、前記複合コアの全質量に対して5質量%以上15質量%以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の磁性トナー。
  7. 前記第1磁性粉に含まれる前記マグネタイト粒子と前記第2磁性粉に含まれる前記マグネタイト粒子との合計量は、前記複合コアの全質量に対して25質量%以上35質量%以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の磁性トナー。
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