JP2019159089A - 正帯電性トナー - Google Patents

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Abstract

【課題】低温定着性を維持しつつ、正帯電性及び黒の発色性を向上させることができる正帯電性トナーを提供する。【解決手段】正帯電性トナーは、トナー粒子1を含む。トナー粒子1は、複合コア2と、複合コア2の表面を覆うシェル層3とを備える。複合コア2は、結着樹脂を含むトナーコア4と、トナーコア4の表面に配置された着色剤層5との複合体である。着色剤層5は、カーボンブラックを含む。着色剤層5の厚さは、200nm以上500nm以下である。シェル層3は、未開環のオキサゾリン基を有する繰返し単位を含む。ガスクロマトグラフィー質量分析法により測定される、正帯電性トナー1gに含まれる未開環のオキサゾリン基の量は、500μmol以上1000μmol以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、正帯電性トナーに関する。
トナーコアと、トナーコアの表面を覆うシェル層とを備えるトナー粒子を含むトナーが知られている(例えば、特許文献1参照)。トナーコアをシェル層で覆うことで、トナーの耐熱保存性を向上させることができる。
特開2004−294469号公報
しかしながら、特許文献1に開示される技術だけでは、正帯電量を画像形成に適した範囲に維持できる(正帯電性に優れる)トナーを得ることは難しい。また、特許文献1に開示される技術だけでは、低温定着性を維持しつつ、黒の発色性に優れる正帯電性トナーを得ることは難しい。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、低温定着性を維持しつつ、正帯電性及び黒の発色性を向上させることができる正帯電性トナーを提供することである。
本発明に係る正帯電性トナーは、トナー粒子を含む。前記トナー粒子は、複合コアと、前記複合コアの表面を覆うシェル層とを備える。前記複合コアは、結着樹脂を含むトナーコアと、前記トナーコアの表面に配置された着色剤層との複合体である。前記着色剤層は、カーボンブラックを含む。前記着色剤層の厚さは、200nm以上500nm以下である。前記シェル層は、未開環のオキサゾリン基を有する繰返し単位を含む。ガスクロマトグラフィー質量分析法により測定される、前記正帯電性トナー1gに含まれる前記未開環のオキサゾリン基の量は、500μmol以上1000μmol以下である。
本発明に係る正帯電性トナーによれば、低温定着性を維持しつつ、正帯電性及び黒の発色性を向上させることができる。
本発明に係るトナーに含まれるトナー粒子の断面構造の一例を示す図である。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、トナーは、トナー粒子の集合体(例えば粉体)である。外添剤は、外添剤粒子の集合体(例えば粉体)である。粉体(より具体的には、トナー粒子の粉体等)に関する評価結果(形状、物性等を示す値)は、何ら規定していなければ、粉体から粒子を相当数選び取って、それら粒子の各々について測定した値の個数平均である。
粉体の体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA−950」)を用いて測定されたメディアン径である。粉体の個数平均一次粒子径は、何ら規定していなければ、走査型電子顕微鏡を用いて測定した一次粒子の円相当径(ヘイウッド径:一次粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。粉体の個数平均一次粒子径は、例えば100個の一次粒子の円相当径の個数平均値である。
帯電性は、何ら規定していなければ、摩擦帯電における帯電性を意味する。摩擦帯電における正帯電性の強さ(又は負帯電性の強さ)は、周知の帯電列などで確認できる。例えばトナーは、日本画像学会から提供される標準キャリア(負帯電性トナー用標準キャリア:N−01、正帯電性トナー用標準キャリア:P−01)と混ぜて攪拌することで、測定対象を摩擦帯電させる。摩擦帯電させる前と後とでそれぞれ、例えば帯電量測定装置(Q/mメーター)で測定対象の帯電量を測定し、摩擦帯電の前後での帯電量の変化が大きい測定対象ほど帯電性が強いことを示す。
軟化点(Tm)は、何ら規定していなければ、高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)を用いて測定した値である。高化式フローテスターで測定されたS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)において、「(ベースラインストローク値+最大ストローク値)/2」となる温度が、Tm(軟化点)に相当する。融点(Mp)の測定値は、何ら規定していなければ、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて測定される吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)中の最大吸熱ピークの温度である。この吸熱ピークは、結晶化部位の融解に起因して現れる。ガラス転移点(Tg)は、何ら規定していなければ、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて「JIS(日本工業規格)K7121−2012」に従って測定した値である。示差走査熱量計で測定された吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)において、ガラス転移に起因する変曲点の温度(詳しくは、ベースラインの外挿線と立ち下がりラインの外挿線との交点の温度)が、Tg(ガラス転移点)に相当する。
材料の「主成分」は、何ら規定していなければ、質量基準で、その材料に最も多く含まれる成分を意味する。
酸価の測定値は、何ら規定していなければ、「JIS(日本工業規格)K0070−1992」に従い測定した値である。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを包括的に「(メタ)アクリロニトリル」と総称する場合がある。「置換基で置換されていてもよい」とは、有機基の水素原子の一部又は全部が置換基で置換されていてもよいことを意味する。
<正帯電性トナー>
本実施形態に係る正帯電性トナー(以下、単にトナーと記載することがある。)は、例えば、静電潜像の現像に好適に用いることができる。本実施形態に係るトナーは、トナー粒子(それぞれ後述する構成を有する粒子)を含有する集合体(例えば粉体)である。トナーは、1成分現像剤として使用してもよい。また、混合装置(例えば、ボールミル)を用いてトナーとキャリアとを混合して2成分現像剤として使用してもよい。
本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、複合コアと、複合コアの表面を覆うシェル層とを備える。複合コアは、結着樹脂を含むトナーコアと、トナーコアの表面に配置された着色剤層との複合体である。着色剤層は、カーボンブラックを含む。着色剤層の厚さは、200nm以上500nm以下である。シェル層は、未開環のオキサゾリン基を有する繰返し単位を含む。ガスクロマトグラフィー質量分析法により測定される、正帯電性トナー1gに含まれる未開環のオキサゾリン基の量(以下、未開環オキサゾリン基含有量と記載することがある。)は、500μmol以上1000μmol以下である。着色剤層の厚さ及び未開環オキサゾリン基含有量の各々の測定方法は、後述する実施例と同じ方法又はその代替方法である。なお、以下において、特に断りがない限り、「オキサゾリン基」は未開環のオキサゾリン基を指す。
本実施形態に係るトナーは、上述の構成を備えることにより、低温定着性を維持しつつ、正帯電性及び黒の発色性を向上させることができる。その理由は、以下のように推測される。
本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、トナーコアと、トナーコアの表面に配置された着色剤層(カーボンブラックを含む着色剤層)との複合体である複合コアを含む。そして、着色剤層の厚さが200nm以上である。このように、トナー粒子に含まれる複合コアは、トナーコアの外側にカーボンブラックを含む着色剤層を備え、かつ着色剤層の厚さが200nm以上である。よって、本実施形態に係るトナーによれば、黒の発色性を向上させることができると考えられる。
また、本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、複合コアの表面を覆うシェル層として、未開環のオキサゾリン基を有する繰返し単位を含むシェル層を備える。未開環のオキサゾリン基は、強い正帯電性を示す。そして、未開環オキサゾリン基含有量が500μmol以上1000μmol以下である。このように、トナー粒子に含まれる複合コアの表面を覆うシェル層は、正帯電性の強いオキサゾリン基を画像形成に適した範囲内の含有量で含むシェル層である。よって、本実施形態に係るトナーによれば、トナー粒子が、トナーコアの外側に比較的導電性の高いカーボンブラックを含む着色剤層を備えていても、着色剤層の外側に正帯電性の強いシェル層を備えているため、正帯電性を向上させることができると考えられる。
また、本実施形態に係るトナーでは、着色剤層の厚さが500nm以下である。更に、本実施形態に係るトナーでは、未開環オキサゾリン基含有量が1000μmol以下である。未開環オキサゾリン基含有量が多くなるほど、トナー粒子中のシェル層の含有量が多くなる傾向がある。本実施形態に係るトナーでは、低温定着性を阻害しない程度に、着色剤層の厚さ及び未開環オキサゾリン基含有量の上限が設定されている。よって、本実施形態に係るトナーによれば、低温定着性を維持できると考えられる。
黒の発色性をより向上させるためには、着色剤層がトナーコアの表面領域のうち70%以上100%以下の面積を覆っていることが好ましい。また、正帯電性をより向上させるためには、シェル層が複合コアの表面領域のうち70%以上100%以下の面積を覆っていることが好ましい。
トナーコアは、結着樹脂以外の成分として、必要に応じて、内添剤(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉の少なくとも1つ)を含有してもよい。
本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、外添剤を備えていてもよい。トナー粒子が外添剤を備える場合には、トナー粒子は、複合コア及びシェル層を有するトナー母粒子と、外添剤とを備える。外添剤はトナー母粒子の表面に付着する。なお、必要がなければ外添剤を割愛してもよい。外添剤を割愛する場合には、トナー母粒子がトナー粒子に相当する。
以下、本実施形態に係るトナーの詳細について、適宜図面を参照しながら説明する。
[トナー粒子の構成]
以下、図1を参照して、本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子の構成について説明する。図1は、本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子の断面構造の一例を示す図である。なお、説明の容易化のため、図1に示すトナー粒子1が外添剤を備えないトナー粒子である場合について説明する。
図1に示すトナー粒子1は、複合コア2と、複合コア2の表面を覆うシェル層3とを備える。複合コア2は、結着樹脂を含むトナーコア4と、トナーコア4の表面に配置された着色剤層5との複合体である。着色剤層5は、カーボンブラックを含む。着色剤層5の厚さは、200nm以上500nm以下である。図1に示すトナー粒子1では、着色剤層5がトナーコア4の表面全域を覆っている。また、図1に示すトナー粒子1では、シェル層3が着色剤層5の表面全域を覆っている。黒の発色性をより向上させるためには、着色剤層5の厚さは、350nm以上であることが好ましい。
画像形成に適したトナーを得るためには、トナーコア4の体積中位径(D50)は、4μm以上9μm以下であることが好ましい。
シェル層3は、未開環のオキサゾリン基を有する繰返し単位を含む。未開環オキサゾリン基含有量は、500μmol以上1000μmol以下である。正帯電性をより向上させるためには、未開環オキサゾリン基含有量は、700μmol以上であることが好ましい。
画像形成に適したトナーを得るためには、シェル層3の厚さが1nm以上400nm以下であることが好ましい。シェル層3の厚さは、市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いてトナー粒子1の断面のTEM(透過型電子顕微鏡)撮影像を解析することによって計測できる。なお、1つのトナー粒子1においてシェル層3の厚さが均一でない場合には、均等に離間した4箇所(詳しくは、トナー粒子1の断面の略中心で直交する2本の直線を引き、それら2本の直線がシェル層3と交差する4箇所)の各々でシェル層3の厚さを測定し、得られた4つの測定値の算術平均を、そのトナー粒子1の評価値(シェル層3の厚さ)とする。
以上、図1を参照しながら、本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子の一例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明に係るトナーに含まれるトナー粒子は、外添剤(図示せず)を備えても良い。例えば図1に示すトナー粒子1をトナー母粒子とし、このトナー母粒子の表面に外添剤が付着したトナー粒子を、本発明に係るトナーに含まれるトナー粒子としてもよい。
[トナー粒子の要素]
次に、本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子の要素について説明する。
〔複合コア〕
複合コアは、トナーコアと、トナーコアの表面に配置された着色剤層との複合体である。以下、トナーコアに含まれる成分について説明する。
(結着樹脂)
トナーの低温定着性を向上させるためには、トナーコアは、結着樹脂として熱可塑性樹脂を含有することが好ましく、結着樹脂全体の85質量%以上の割合で熱可塑性樹脂を含有することがより好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)、ビニル樹脂(より具体的には、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、N−ビニル樹脂等)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、及びウレタン樹脂が挙げられる。また、これら各樹脂の共重合体、すなわち上記樹脂中に任意の繰返し単位が導入された共重合体(より具体的には、スチレン−アクリル酸エステル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂等)も、結着樹脂として使用できる。
熱可塑性樹脂は、一種以上の熱可塑性単量体を、付加重合、共重合、又は縮重合させることで得られる。なお、熱可塑性単量体は、単独重合により熱可塑性樹脂になる単量体(より具体的には、アクリル酸エステル系単量体、スチレン系単量体等)、又は縮重合により熱可塑性樹脂になる単量体(例えば、縮重合によりポリエステル樹脂になる多価アルコール及び多価カルボン酸の組合せ)である。
トナーの低温定着性を向上させるためには、トナーコアが、結着樹脂としてポリエステル樹脂を含有することが好ましい。また、着色剤層がトナーコアの表面全域を覆っていない場合において複合コアからのシェル層の脱離を抑制するためには、トナーコアが、結着樹脂として酸価5mgKOH/g以上のポリエステル樹脂を含有することが好ましく、酸価5mgKOH/g以上8mgKOH/g以下のポリエステル樹脂を含有することがより好ましい。酸価5mgKOH/g以上のポリエステル樹脂は、未開環のオキサゾリン基と反応することによりシェル層との間で後述する結合を形成し易い。
ポリエステル樹脂は、一種以上の多価アルコールと一種以上の多価カルボン酸とを縮重合させることで得られる。ポリエステル樹脂を合成するためのアルコールとしては、例えば以下に示すような、2価アルコール(より具体的には、ジオール類、ビスフェノール類等)、及び3価以上のアルコールが挙げられる。ポリエステル樹脂を合成するためのカルボン酸としては、例えば以下に示すような、2価カルボン酸、及び3価以上のカルボン酸が挙げられる。なお、多価カルボン酸の代わりに、多価カルボン酸の無水物、多価カルボン酸ハライド等の縮重合によりエステル結合を形成できる多価カルボン酸誘導体を使用してもよい。
ジオール類の好適な例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ペンテン−1,5−ジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、1,4−ベンゼンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
ビスフェノール類の好適な例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、及びビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
3価以上のアルコールの好適な例としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及び1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
2価カルボン酸の好適な例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸(より具体的には、n−ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸等)、及びアルケニルコハク酸(より具体的には、n−ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等)が挙げられる。
3価以上のカルボン酸の好適な例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、及びエンポール三量体酸が挙げられる。
(着色剤)
トナーコアは、着色剤として黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。トナーコアがカーボンブラックを含有する場合、トナーコアに含有されるカーボンブラックは、後述する着色剤層に含まれるカーボンブラックと同じ種類のカーボンブラックであってもよく、後述する着色剤層に含まれるカーボンブラックとは異なる種類のカーボンブラックであってもよい。トナーを用いて高画質の画像を形成するためには、着色剤の量が、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。なお、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
(離型剤)
トナーコアは、離型剤を含有していてもよい。離型剤は、例えば、トナーの耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーの耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックスのブロック共重合体等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、ライスワックス等の植物系ワックス;みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラタム等の鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス、カスターワックス等の脂肪酸エステルを主成分とするエステルワックス;脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックス(例えば、脱酸カルナバワックス)を好適に使用できる。本実施形態では、一種の離型剤を単独で使用してもよいし、複数種の離型剤を併用してもよい。
結着樹脂と離型剤との相溶性を改善するために、相溶化剤をトナーコアに添加してもよい。
(電荷制御剤)
トナーコアは、電荷制御剤を含有していてもよい。電荷制御剤は、例えば、トナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電させることができるか否かの指標になる。トナーコアに正帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナーコアのカチオン性を強めることができる。
正帯電性の電荷制御剤の例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2−オキサジン、1,3−オキサジン、1,4−オキサジン、1,2−チアジン、1,3−チアジン、1,4−チアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等のアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ−ンBH/C、アジンディープブラックEW、アジンディープブラック3RL等の直接染料;ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZ等の酸性染料;ナフテン酸の金属塩類;高級有機カルボン酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルデシルヘキシルメチルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルアンモニウムクロライド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩等の4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの電荷制御剤の一種のみを使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
電荷制御剤の含有量は、帯電安定性を向上させるためには、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
(磁性粉)
トナーコアは、磁性粉を含有していてもよい。磁性粉の材料としては、例えば、強磁性金属(より具体的には、鉄、コバルト、ニッケル等)及びその合金、強磁性金属酸化物(より具体的には、フェライト、マグネタイト、二酸化クロム等)、並びに強磁性化処理が施された材料(より具体的には、熱処理により強磁性が付与された炭素材料等)が挙げられる。本実施形態では、一種の磁性粉を単独で使用してもよいし、複数種の磁性粉を併用してもよい。
(着色剤層)
次に、着色剤層について説明する。着色剤層は、例えば、カーボンブラックを主成分として含む。黒の発色性をより向上させるためには、着色剤層中のカーボンブラックの含有量は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが特に好ましい。なお、着色剤層にカーボンブラック以外の成分(他の成分)が含まれる場合、他の成分としては、例えば樹脂が挙げられる。
複合コアからのシェル層の脱離を抑制するためには、着色剤層に含まれるカーボンブラックとしては、酸性カーボンブラックが好ましく、pH2.5以上5.0以下の酸性カーボンブラックがより好ましく、pH3.0以上4.0以下の酸性カーボンブラックが更に好ましい。酸性カーボンブラックは、表面にカルボキシル基等の酸性基を有するため、未開環のオキサゾリン基と反応することによりシェル層との間で後述する結合を形成し易い。なお、酸性カーボンブラックのpHは、JIS(日本工業規格)Z8802−2011に規定されるpH測定方法によって測定された値である。
酸性カーボンブラックは、例えば市販品を使用することができる。酸性カーボンブラックの市販品としては、例えば、三菱化学株式会社製「MA100」(pH3.5)、三菱化学株式会社製「MA14」(pH3.0)、三菱化学株式会社製「MA77」(pH2.5)、デグサ社製「スペシャルブラック350」(pH3.5)、デグサ社製「スペシャルブラック100」(pH3.3)、デグサ社製「スペシャルブラック250」(pH3.1)、デグサ社製「スペシャルブラック5」(pH3.0)、デグサ社製「スペシャルブラック550」(pH2.8)、デグサ社製「スペシャルブラック6」(pH2.5)、及びキャボット社製「REGAL(登録商標)400R」(pH4.0)が挙げられる。
着色剤層の厚さを200nm以上500nm以下の範囲内に容易に調整するためには、カーボンブラックの量は、トナーコア100質量部に対して1.0質量部以上2.0質量部以下であることが好ましい。
〔シェル層〕
次に、シェル層について説明する。シェル層は、未開環のオキサゾリン基を有する繰返し単位を含む。このような繰返し単位としては、例えば下記式(1−1)で表される繰返し単位(以下、繰返し単位(1−1)と記載する。)が挙げられる。
Figure 2019159089
式(1−1)中、R1は、水素原子、又は置換基で置換されていてもよいアルキル基を表す。R1が表わすアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、及びイソプロピル基が挙げられる。R1が置換基で置換されたアルキル基を表す場合、このような置換基の例としては、フェニル基が挙げられる。R1の好適な例としては、水素原子、メチル基、エチル基、及びイソプロピル基が挙げられる。
繰返し単位(1−1)は、未開環のオキサゾリン基を有する。未開環のオキサゾリン基は、環状構造を有し、強い正帯電性を示す。未開環のオキサゾリン基は、カルボキシル基、芳香族性スルファニル基、及び芳香族性ヒドロキシル基と反応し易い。例えば、着色剤層が酸性カーボンブラックを含有する場合は、シェル層中の繰返し単位(1−1)と、着色剤層の表面のカルボキシル基(詳しくは、酸性カーボンブラックが有するカルボキシル基)との反応(以下、反応RAと記載することがある。)が生じ易い。また、トナーコアが結着樹脂としてポリエステル樹脂を含有し、かつ着色剤層がトナーコアの表面全域を覆っていない場合は、シェル層中の繰返し単位(1−1)と、着色剤層から露出したトナーコアの表面のカルボキシル基(詳しくは、ポリエステル樹脂が有するカルボキシル基)との反応(以下、反応RBと記載することがある。)が生じ易い。反応RA及び反応RBの双方が生じる場合、着色剤層の表面と、着色剤層から露出したトナーコアの表面とがシェル層で覆われる。
シェル層中の繰返し単位(1−1)と、着色剤層の表面又はトナーコアの表面のカルボキシル基とが反応すると、下記式(1−2)に示すようにオキサゾリン基が開環し、複合コアとシェル層との間にアミド結合及びエステル結合が形成される。こうした結合が形成されることで、複合コアとシェル層との結合が強固になり、複合コアからのシェル層の脱離が抑制されることになる。なお、下記式(1−2)中のR1は、式(1−1)中のR1と同義である。また、下記式(1−2)中の*は、複合コア中の原子に結合する部位を表す。
Figure 2019159089
トナーの正帯電性をより向上させつつ、複合コアからのシェル層の脱離を抑制するためには、シェル層は、繰返し単位(1−1)と、式(1−2)で表される繰返し単位(以下、繰返し単位(1−2)と記載する。)とを有するビニル樹脂を含むことが好ましい。以下、繰返し単位(1−1)と繰返し単位(1−2)とを有するビニル樹脂を、特定ビニル樹脂と記載することがある。特定ビニル樹脂中の繰返し単位(1−1)の割合(モル比)が高くなるほど、特定ビニル樹脂の正帯電性(ひいてはトナーの正帯電性)が向上する傾向がある。一方、特定ビニル樹脂中の繰返し単位(1−2)の割合(モル比)が高くなるほど、複合コアとシェル層との結合が強固になる傾向がある。正帯電性を更に向上させつつ、複合コアからのシェル層の脱離を更に抑制するためには、シェル層が特定ビニル樹脂のみから構成されていることが好ましい。特定ビニル樹脂中の繰返し単位(1−1)と繰返し単位(1−2)とのモル比は、例えば着色剤層中のカーボンブラックのpH、トナーコア中の結着樹脂の酸価、及びシェル層を形成する際の開環剤(例えば酢酸水溶液)の使用量の少なくとも1つを変更することにより調整できる。
シェル層中のオキサゾリン基が開環して繰返し単位(1−2)が形成されたことを確認する方法としては、例えば、以下に示す方法が挙げられる。詳しくは、所定量のトナー粒子(試料)を溶剤に溶解させる。得られた溶液をNMR(核磁気共鳴)測定用試験管に入れ、NMR装置を用いて1H−NMRスペクトルを測定する。1H−NMRスペクトルでは、化学シフトδ6.5付近に、第二級アミドに由来する三重線(トリプレット)のシグナルが出現する。よって、得られた1H−NMRスペクトルにおいて、化学シフトδ6.5付近に三重線のシグナルが確認されれば、シェル層中のオキサゾリン基が開環して繰返し単位(1−2)が形成されたと推定される。1H−NMRスペクトルの測定条件の一例としては、以下に示す条件が挙げられる。
1H−NMRスペクトルの測定条件の一例)
NMR装置:フーリエ変換核磁気共鳴装置(FT−NMR)(日本電子株式会社製「JNM−AL400」)
NMR測定用試験管:5mm試験管
溶剤:重水素化クロロホルム(1mL)
試料温度:20℃
試料質量:20mg
積算回数:128回
化学シフトの内部基準物質:テトラメチルシラン(TMS)
特定ビニル樹脂を形成するための単量体としては、例えば下記式(1)で表される化合物(以下、化合物(1)と記載することがある。)が挙げられる。化合物(1)は、付加重合により繰返し単位(1−1)を形成する。なお、下記式(1)中のR1は、式(1−1)中のR1と同義である。
Figure 2019159089
特定ビニル樹脂は、化合物(1)と、他のビニル化合物とを共重合させた重合物であってもよい。なお、ビニル化合物は、ビニル基(CH2=CH−)、又はビニル基中の水素が置換された基を有する化合物(より具体的には、エチレン、プロピレン、ブタジエン、塩化ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリロニトリル、スチレン等)である。ビニル化合物は、上記ビニル基等に含まれる炭素−炭素二重結合(C=C)により付加重合して、高分子(樹脂)になり得る。
他のビニル化合物としては、アクリル酸アルキルエステル系単量体、及びスチレン系単量体からなる群より選択される一種以上のビニル化合物が好ましい。
アクリル酸アルキルエステル系単量体としては、例えば下記式(2)で表される化合物(以下、化合物(2)と記載することがある。)、及び下記式(3)で表される化合物(以下、化合物(3)と記載することがある。)が挙げられる。
Figure 2019159089
式(2)中、R2は、置換基で置換されていてもよいアルキル基を表す。R2が表わすアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及び2−エチルヘキシル基が挙げられる。R2が置換基で置換されたアルキル基を表す場合、このような置換基の例としては、ヒドロキシル基が挙げられる。R2の好適な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、2−エチルヘキシル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、及びヒドロキシブチル基が挙げられる。
Figure 2019159089
式(3)中、R3は、置換基で置換されていてもよいアルキル基を表す。R3が表わすアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及び2−エチルヘキシル基が挙げられる。R3が置換基で置換されたアルキル基を表す場合、このような置換基の例としては、ヒドロキシル基が挙げられる。R3の好適な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、2−エチルヘキシル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、及びヒドロキシブチル基が挙げられる。
特定ビニル樹脂を含むシェル層を形成するための原料(以下、シェル原料と記載することがある。)としては、例えばオキサゾリン基含有高分子水溶液(株式会社日本触媒製「エポクロス(登録商標)WSシリーズ」)を使用できる。このうち、「エポクロスWS−300」は、2−ビニル−2−オキサゾリン(化合物(1)の一種)と、メタクリル酸メチル(化合物(3)の一種)との共重合体を含む。また、「エポクロスWS−700」は、2−ビニル−2−オキサゾリンと、メタクリル酸メチルと、アクリル酸ブチル(化合物(2)の一種)との共重合体を含む。
〔着色剤層とシェル層の好適な組合せ〕
低温定着性を維持しつつ、正帯電性及び黒の発色性をより向上させるためには、トナー粒子が、厚さ350nm以上500nm以下の着色剤層、及び未開環オキサゾリン基含有量700μmol以上1000μmol以下のシェル層を備えることが好ましい。同様の理由から、トナー粒子が、厚さ350nm以上500nm以下の着色剤層、及び未開環オキサゾリン基含有量700μmol以上1000μmol以下のシェル層を備え、着色剤層がpH3.0以上4.0以下の酸性カーボンブラックを含むことがより好ましい。
〔外添剤〕
トナー粒子は、外添剤を更に備えてもよい。外添剤の外添方法としては、例えば、図1に示すトナー粒子1をトナー母粒子として用い、このトナー母粒子(粉体)と外添剤粒子(粉体)とを一緒に攪拌することで、トナー母粒子の表面に外添剤粒子を付着させる方法が挙げられる。
外添剤粒子としては、無機粒子が好ましく、シリカ粒子、及び金属酸化物(より具体的には、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等)の粒子が特に好ましい。本実施形態では、一種類の外添剤粒子を単独で使用してもよいし、複数種の外添剤粒子を併用してもよい。
トナー母粒子からの外添剤粒子の脱離を抑制しながら外添剤の機能を十分に発揮させるためには、外添剤の量(複数種の外添剤粒子を使用する場合には、それら外添剤粒子の合計量)が、トナー母粒子100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
トナーの流動性を向上させるためには、外添剤粒子として、個数平均一次粒子径5nm以上500nm以下の無機粒子(粉体)を使用することが好ましい。
外添剤粒子は、表面処理されていてもよい。例えば、外添剤粒子としてシリカ粒子を使用する場合、表面処理剤によりシリカ粒子の表面に疎水性及び/又は正帯電性が付与されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、カップリング剤(より具体的には、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等)、シラザン化合物(より具体的には、鎖状シラザン化合物、環状シラザン化合物等)、及びシリコーンオイル(より具体的には、ジメチルシリコーンオイル等)が挙げられる。表面処理剤としては、シランカップリング剤及びシラザン化合物が特に好ましい。シランカップリング剤の好適な例としては、シラン化合物(より具体的には、メチルトリメトキシシラン、アミノシラン等)が挙げられる。シラザン化合物の好適な例としては、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)が挙げられる。シリカ基体(未処理のシリカ粒子)の表面が表面処理剤で処理されると、シリカ基体の表面に存在する多数のヒドロキシル基(−OH)が部分的に又は全体的に、表面処理剤に由来する官能基に置換される。その結果、表面処理剤に由来する官能基(詳しくは、ヒドロキシル基よりも疎水性及び/又は正帯電性の強い官能基)を表面に有するシリカ粒子が得られる。
<トナーの製造方法>
次に、上述した実施形態に係るトナーの好適な製造方法について説明する。以下、上述した実施形態に係るトナーと重複する構成要素については説明を省略する。
[トナーコアの調製工程]
まず、凝集法又は粉砕法によりトナーコアを調製する。
凝集法は、例えば、凝集工程及び合一化工程を含む。凝集工程では、トナーコアを構成する成分を含む微粒子を水性媒体中で凝集させて、凝集粒子を形成する。合一化工程では、凝集粒子に含まれる成分を水性媒体中で合一化させてトナーコアを形成する。
次に粉砕法を説明する。粉砕法によれば、比較的容易にトナーコアを調製できる上、製造コストの低減が可能である。粉砕法でトナーコアを調製する場合、トナーコアの調製工程は、例えば溶融混練工程と、粉砕工程とを備える。トナーコアの調製工程は、溶融混練工程の前に混合工程を更に備えてもよい。また、トナーコアの調製工程は、粉砕工程後に、微粉砕工程及び分級工程の少なくとも一方を更に備えてもよい。
混合工程では、例えば、結着樹脂と、必要に応じて添加する内添剤とを混合して、混合物を得る。溶融混練工程では、トナー材料を溶融し混練して、溶融混練物を得る。トナー材料としては、例えば混合工程で得られる混合物が用いられる。粉砕工程では、得られた溶融混練物を、例えば室温(25℃)まで冷却した後、粉砕して粉砕物を得る。粉砕工程で得られた粉砕物の小径化が必要な場合は、粉砕物を更に粉砕する工程(微粉砕工程)を実施してもよい。また、粉砕物の粒径を揃える場合は、得られた粉砕物を分級する工程(分級工程)を実施してもよい。以上の工程により、粉砕物であるトナーコアが得られる。
[複合コアの調製工程]
続いて、混合機(例えば、日本コークス工業株式会社製のFMミキサー)を用いて、得られたトナーコアとカーボンブラックとを混合して、トナーコアの表面にカーボンブラックを付着させる。これにより、トナーコアと、トナーコアの表面に配置された着色剤層(カーボンブラックを含む層)とを備える複合コアが得られる。着色剤層の厚さは、例えば、トナーコアの質量に対するカーボンブラックの添加量を変更することにより調整できる。
[シェル層形成工程]
次いで、容器に、得られた複合コアと、シェル原料としてのオキサゾリン基含有高分子水溶液と、水(例えばイオン交換水)とを入れる。次いで、容器内容物を攪拌しながら、容器内温が設定温度(例えば50℃以上65℃以下の温度)になるまで昇温させる。この際の昇温速度は、例えば0.4℃/分以上0.6℃/分以下である。容器内温を昇温させる際、容器内容物のpHを5以上7以下に維持するために、容器にアンモニア水溶液を随時入れてもよい。また、昇温中に、シェル原料のオキサゾリン基を開環させる開環剤(例えば、酢酸水溶液)及び/又はシェル原料(例えば、オキサゾリン基含有高分子水溶液)を添加してもよい。
容器内温が設定温度に到達するまでの間に、オキサゾリン基含有高分子のオキサゾリン基の一部が、複合コアの表面に存在するカルボキシル基と反応することで開環する。このオキサゾリン基の開環と共に、複合コアと、オキサゾリン基含有高分子を含むシェル層との間にアミド結合及びエステル結合が形成される。そして、容器内温が設定温度に到達した直後、容器内温を室温(例えば25℃)まで下げる。次いで、容器内容物を、例えばフィルタープレス等を用いてろ過(固液分離)する。この際、ろ物をイオン交換水等で洗浄してもよい。次いで、得られたろ物を乾燥させることにより、複合コアと、複合コアの表面を覆うシェル層(詳しくは、未開環のオキサゾリン基を有する繰返し単位を含むシェル層)とを備えたトナー母粒子が得られる。
未開環オキサゾリン基含有量は、例えば、複合コアの質量に対するシェル原料の添加量を変更することにより調整することができる。また、複合コアの質量に対するシェル原料の添加量を変更することにより、着色剤層の厚さも調整することができる。複合コアの質量に対するシェル原料の添加量が多いほど、複合コアの表面を覆うシェル層の質量が増えるため、シェル層形成工程においてトナーコアからのカーボンブラックの脱離が抑制される傾向がある。
また、未開環オキサゾリン基含有量は、例えば、上述した開環剤を用いて、シェル層に含まれる未開環のオキサゾリン基のうち、一部のオキサゾリン基を開環させることにより、調整することもできる。開環剤を用いて未開環オキサゾリン基含有量を調整する場合は、例えば上述した繰返し単位(1−1)と繰返し単位(1−2)とのモル比も調整することができる。
[外添工程]
その後、必要に応じて、混合機(例えば、日本コークス工業株式会社製のFMミキサー)を用いて、得られたトナー母粒子と外添剤とを混合して、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させてもよい。なお、トナー母粒子に外添剤を付着させずに、トナー母粒子をトナー粒子として使用してもよい。こうして、上述した実施形態に係るトナー(トナー粒子の粉体)が得られる。
以下、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。
<トナーコアTCの調製>
温度計(熱電対)、脱水管、窒素導入管、精留塔及び攪拌装置を備えた容量5Lの4つ口フラスコを温調槽に載置し、このフラスコ内に、1,2−プロパンジオール1270gと、テレフタル酸1750gと、ジオクタン酸錫(II)3.2gとを投入した。続けて、窒素雰囲気下、温度200℃の条件でフラスコ内容物を14時間反応(詳しくは、縮合反応)させた。続けて、容器内を減圧し、減圧雰囲気(圧力8.0kPa)かつ温度200℃の条件で、反応生成物(ポリエステル樹脂)のTmが所定の温度(90℃)になるまで、容器内容物を反応させた。その結果、ポリエステル樹脂が得られた。得られたポリエステル樹脂は、Tgが40℃であり、Tmが90℃であり、酸価が7mgKOH/gであった。
上記のようにして得られたポリエステル樹脂87質量部と、離型剤(日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP−3」、融点73℃のエステルワックス)5質量部と、酸性カーボンブラック(三菱化学株式会社製「MA100」、pH3.5)8質量部とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−20B」)を用いて回転速度1200rpmで3分間混合した。
続けて、得られた混合物を、2軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて、材料供給速度6kg/時、軸回転速度180rpm、シリンダー温度130℃の条件で溶融混練した。その後、得られた溶融混練物を冷却した。続けて、冷却された溶融混練物を、粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製「ロートプレックス(登録商標)」)を用いて、設定粒子径1.5mmの条件で粗粉砕した。得られた粗粉砕物を、粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミル RS型」)を用いて微粉砕した。続けて、得られた微粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)を用いて分級した。その結果、体積中位径(D50)7.0μm、Tg43℃のトナーコアTCが得られた。
<複合コアCC−1の調製>
100質量部のトナーコアTCと、0.5質量部の酸性カーボンブラック(三菱化学株式会社製「MA100」)とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−20B」)を用いて回転速度500rpmで3分間混合し、複合コアCC−1の粉体を得た。複合コアCC−1は、トナーコアTCと、トナーコアTCの表面に配置された着色剤層(酸性カーボンブラックから構成された層)とを含んでいた。
<複合コアCC−2の調製>
酸性カーボンブラック(三菱化学株式会社製「MA100」)の使用量を1.0質量部に変更したこと以外は、複合コアCC−1の調製と同様の方法で複合コアCC−2の粉体を得た。複合コアCC−2は、トナーコアTCと、トナーコアTCの表面に配置された着色剤層(酸性カーボンブラックから構成された層)とを含んでいた。
<複合コアCC−3の調製>
酸性カーボンブラック(三菱化学株式会社製「MA100」)の使用量を1.5質量部に変更したこと以外は、複合コアCC−1の調製と同様の方法で複合コアCC−3の粉体を得た。複合コアCC−3は、トナーコアTCと、トナーコアTCの表面に配置された着色剤層(酸性カーボンブラックから構成された層)とを含んでいた。
<複合コアCC−4の調製>
酸性カーボンブラック(三菱化学株式会社製「MA100」)の使用量を2.0質量部に変更したこと以外は、複合コアCC−1の調製と同様の方法で複合コアCC−4の粉体を得た。複合コアCC−4は、トナーコアTCと、トナーコアTCの表面に配置された着色剤層(酸性カーボンブラックから構成された層)とを含んでいた。
<複合コアCC−5の調製>
酸性カーボンブラック(三菱化学株式会社製「MA100」)0.5質量部の代わりに、酸性カーボンブラック(三菱化学株式会社製「MA14」、pH3.0)1.0質量部を用いたこと以外は、複合コアCC−1の調製と同様の方法で複合コアCC−5の粉体を得た。複合コアCC−5は、トナーコアTCと、トナーコアTCの表面に配置された着色剤層(酸性カーボンブラックから構成された層)とを含んでいた。
<トナーTA−1の作製>
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコに、200gの複合コアCC−2と、5gのオキサゾリン基含有高分子水溶液(株式会社日本触媒製「エポクロス(登録商標)WS−300」、固形分濃度:10質量%)と、600mLのイオン交換水とを入れた。次いで、フラスコを温調槽に載置し、フラスコ内容物を200rpmの回転速度で攪拌しながら、フラスコ内温を25℃から63℃まで0.5℃/分の昇温速度で昇温させた。この際、フラスコ内容物のpHを6に維持するために、フラスコにアンモニア水溶液(濃度1質量%)を随時入れた。フラスコ内温が63℃に到達した直後、2℃/分の降温速度でフラスコ内温を25℃まで冷却した。冷却後、フラスコ内容物をフィルタープレス(日立造船株式会社製「TFP310−3MKII」)によりろ過(固液分離)した。この際、ろ液の導電率が2μS/cm以下になるまでイオン交換水で洗浄した。得られたろ物を、真空乾燥機により圧力0.09MPa、温度40℃の条件で乾燥させた。乾燥は、ろ物の水分量が0.5質量%になるまで行った。その結果、複合コアCC−2がシェル層(未開環のオキサゾリン基を有する繰返し単位を含むシェル層)で覆われたトナー母粒子の粉体を得た。
得られたトナー母粒子100質量部と、シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA90」、表面処理剤により正帯電性が付与されたシリカ粒子)1.5質量部と、導電性酸化チタン粒子(チタン工業株式会社製「EC−100」)1.5質量部とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10B」)を用いて、回転速度3000rpmかつジャケット温度20℃の条件で2分間混合した。これにより、トナー母粒子の表面に外添剤(シリカ粒子の粉体及び導電性酸化チタン粒子の粉体)を付着させた。続けて、得られた粉体を、300メッシュ(目開き48μm)の篩を用いて篩別した。その結果、正帯電性のトナーTA−1が得られた。
<トナーTA−2〜TA−8及びTB−1〜TB−12の作製>
複合コアの種類、及びオキサゾリン基含有高分子水溶液(株式会社日本触媒製「エポクロス(登録商標)WS−300」、固形分濃度:10質量%)の使用量を、それぞれ表1に示す通りとしたこと以外は、トナーTA−1の作製と同様の方法で、トナーTA−2〜TA−8及びTB−1〜TB−12を得た。トナーTA−2〜TA−8及びTB−1〜TB−12は、何れも正帯電性のトナーであった。
<着色剤層の厚さの測定>
測定対象のトナー(トナーTA−1〜TA−8及びTB−1〜TB−12の何れか)を可視光硬化性樹脂(東亞合成株式会社製「アロニックス(登録商標)LCR D−800」)中に分散させた後、可視光照射により樹脂を硬化させて、硬化物を得た。続けて、ダイヤモンドナイフを備えたウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ株式会社製「EM UC6」)を用いて、硬化物を切り出し、厚さ150nmの薄片試料を得た。続けて、得られた薄片試料の断面を、透過電子顕微鏡(TEM)(株式会社日立ハイテクノロジーズ製「H−7100FA」)を用いて、倍率10万倍で撮影した。そして、画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いてTEM撮影像を解析することで、着色剤層の厚さを測定した。具体的には、TEM撮影像中の1個のトナー粒子の断面において、着色剤層の厚さの測定箇所を無作為に10箇所選択し、選択した測定箇所の各々で着色剤層の厚さを測定した。測定された10箇所の厚さの算術平均値を、そのトナー粒子の着色剤層の厚さとした。そして、測定対象のトナーに含まれる5個のトナー粒子について、それぞれ着色剤層の厚さを測定し、測定された厚さの個数平均値を測定対象のトナーの評価値(着色剤層の厚さ)とした。結果を表1に示す。なお、トナーTA−1〜TA−8のそれぞれのTEM撮影像中のトナー粒子では、着色剤層がトナーコアの表面領域(外縁を示す輪郭線)のうち70%以上100%以下の領域を覆っていた。また、トナーTA−1〜TA−8のそれぞれのTEM撮影像中のトナー粒子では、シェル層が複合コアの表面領域(外縁を示す輪郭線)のうち70%以上100%以下の領域を覆っていた。
<未開環オキサゾリン基含有量の測定>
トナーTA−1〜TA−8及びTB−1〜TB−12の各々の未開環オキサゾリン基含有量は、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS法)により測定した。GC/MS法では、測定装置として、ガスクロマトグラフ質量分析計(株式会社島津製作所製「GCMS−QP2010 Ultra」)及びマルチショット・パイロライザー(フロンティア・ラボ株式会社製「FRONTIER LAB Multi−functional Pyrolyzer(登録商標)PY−3030D」)を用いた。カラムとしては、GCカラム(アジレント・テクノロジー社製「Agilent(登録商標)J&W ウルトライナートキャピラリGCカラム DB−5ms」、相:シロキサンポリマーにアリレンを入れてポリマーの主鎖を強化したアリレン相、内径:0.25mm、膜厚:0.25μm、長さ:30m)を用いた。ガスクロマトグラフ測定条件及び質量分析測定条件を、それぞれ以下に示す。
[ガスクロマトグラフ測定条件]
キャリアガス:ヘリウム(He)ガス
キャリア流量:1mL/分
気化室温度:210℃
熱分解温度:加熱炉「600℃」、インターフェイス部「320℃」
昇温条件:40℃で3分間保持した後、40℃から速度10℃/分で300℃まで昇温し、300℃で15分間保持した。
[質量分析測定条件]
イオン化法:EI(Electron Impact)法
イオン源温度:200℃
インターフェイス部の温度:320℃
検出モード:スキャン(測定範囲:45m/z〜500m/z)
上記条件で測定されたマススペクトルを解析することにより未開環オキサゾリン基に由来するピークを特定し、測定されたクロマトグラムのピーク面積に基づいて、測定対象(トナー)に含まれる未開環オキサゾリン基含有量(トナー1gに含まれる未開環のオキサゾリン基の量)を求めた。未開環オキサゾリン基含有量の定量には、検量線を用いた。結果を表1に示す。
Figure 2019159089
<評価方法>
[2成分現像剤の調製]
現像剤用キャリア(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の「TASKalfa7551ci」用キャリア)100質量部と、評価に用いるトナー8質量部とを、ボールミルを用いて30分間混合して、評価に用いる2成分現像剤を調製した。
[正帯電性の評価]
評価機として、複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa7551ci」)を用いた。前述の方法で調製した2成分現像剤を評価機のブラック用現像装置に投入し、補給用トナー(評価に用いるトナー)を評価機のブラック用トナーコンテナに投入した。次いで、温度25℃かつ湿度50%RHの環境下、上記評価機を用いて、印字率8%の画像を印刷用紙(A4サイズ)に10万枚連続で印刷した。
次いで、評価機のブラック用現像装置から2成分現像剤を取り出した後、温度25℃かつ湿度50%RHの環境下、2成分現像剤に含まれるトナーの帯電量(単位:μC/g)を、Q/mメーター(トレック社製「MODEL 210HS」)を用いて測定した。詳しくは、Q/mメーターの測定セルに2成分現像剤0.10gを投入し、投入された2成分現像剤のうちトナーのみを篩(金網)を介して10秒間吸引した。そして、式「吸引されたトナーの総電気量(単位:μC)/吸引されたトナーの質量(単位:g)」に基づいて、トナーの帯電量(単位:μC/g)を算出した。結果を表2に示す。帯電量が20μC/g以上30μC/g以下であれば、「正帯電性に優れている」と評価した。一方、帯電量が20μC/g未満の場合、及び帯電量が30μC/gを超える場合は、「正帯電性に優れていない」と評価した。
[電荷減衰定数の測定]
評価対象のトナーの電荷減衰定数を、静電気拡散率測定装置(株式会社ナノシーズ製「NS−D100」)を用いて、JIS(日本工業規格) C 61340−2−1に規定される方法で測定した。詳しくは、測定セルに試料(トナーTA−1〜TA−8及びTB−1〜TB−12の何れか)を充填した後、試料が充填された測定セルを、温度32.5℃、湿度80%RHの環境下で12時間静置した。続けて、静置後の測定セルを静電気拡散率測定装置にセットし、静電気拡散率測定装置の表面電位計のゼロ調整を行った後、電圧10kV、帯電時間0.5秒間の条件で、コロナ放電によって試料を正帯電させた。そして、コロナ放電終了後0.7秒経過した後から、サンプリング周波数10Hz、測定時間300秒間の条件で、試料の表面電位を連続的に測定した。測定は、温度32.5℃、湿度80%RHの環境下で行った。測定された表面電位のデータと、式「V=V0exp(−α√t)」とに基づいて、減衰時間2秒間(測定開始から2秒後までの時間)における電荷減衰定数αを算出した。結果を表2に示す。なお、上記式中、Vは表面電位[単位:V]、V0は初期表面電位[単位:V]、tは減衰時間[単位:秒]をそれぞれ示す。
電荷減衰定数αが0.030未満であれば「良い」と評価し、電荷減衰定数αが0.030以上であれば「良くない」と評価した。なお、トナーの電荷減衰定数αが小さい程、トナーの電荷減衰速度が遅くなる。
[低温定着性の評価]
評価機としては、Roller−Roller方式の加熱加圧型の定着装置を備えるプリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5250DN」を改造して定着温度を変更可能にした評価機)を用いた。上述のようにして調製した2成分現像剤を評価機のブラック用現像装置に投入し、補給用トナー(評価対象のトナー)を評価機のブラック用トナーコンテナに投入した。
温度23℃かつ湿度50%RHの環境下、上記評価機を用いて、評価用紙(モンディ社製「ColorCopy(登録商標)」、A4サイズ、坪量90g/m2)に、トナー載り量1.0mg/cm2の条件で、大きさ25mm×25mmのソリッド画像(詳しくは、未定着のトナー像)を形成した。続けて、画像が形成された評価用紙を評価機の定着装置に通した。この際、定着装置の定着温度を100℃から1℃ずつ上げながら各定着温度について定着の可否を判定し、ソリッド画像(トナー像)を評価用紙に定着できる最低温度(最低定着温度)を測定した。トナーを定着させることができたか否かは、以下に示すような折擦り試験で確認した。詳しくは、定着装置に通した評価用紙を、画像を形成した面が内側となり、且つ画像の中央が折り目となるように半分に折り曲げ、布帛で被覆した1kgの真鍮製の分銅を用いて、折り目上を5往復摩擦した。続けて、評価用紙を広げ、評価用紙の折り曲げ部(ソリッド画像が形成された部分)を観察した。そして、折り曲げ部のトナーの剥がれの長さ(剥がれ長)を測定した。剥がれ長が1mm以下となる定着温度のうちの最低温度を、最低定着温度とした。結果を表2に示す。最低定着温度が130℃未満であれば「低温定着性を維持できている」と評価し、最低定着温度が130℃以上であれば「低温定着性を維持できていない」と評価した。
[黒の発色性の評価]
評価機としては、Roller−Roller方式の加熱加圧型の定着装置を備えるプリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5250DN」を改造して定着温度を変更可能にした評価機)を用いた。上述のようにして調製した2成分現像剤を評価機のブラック用現像装置に投入し、補給用トナー(評価対象のトナー)を評価機のブラック用トナーコンテナに投入した。
温度23℃かつ湿度50%RHの環境下、上記評価機を用いて、評価用紙(モンディ社製「ColorCopy(登録商標)」、A4サイズ、坪量90g/m2)に、下記の印刷条件で、評価パターンを印刷した。これにより、評価に使用する画像を得た。
(印刷条件)
トナーの載り量:0.5mg/cm2
加熱ローラーの表面温度:150℃
加圧ローラーの表面温度:130℃
定着装置のニップ幅:6.2mm
定着圧力(ニップ圧):150N
評価パターン:大きさ20mm×30mmのソリッド画像
得られたソリッド画像においてL*値の測定箇所を無作為に5箇所選択し、選択した測定箇所の各々で、下記測定条件に基づいてL*値を測定した。そして、測定された5箇所のL*値の算術平均値を、評価対象のトナーの評価値(L*値)とした。結果を表2に示す。
(L*値の測定条件)
測定装置:反射濃度計(X−Rite社製「SpectroEye(登録商標)」)
観測光源:D50(色温度:5000K)
観測視野角:2°
濃度基準:DIN16536(1995)
白色基準:絶対白色基準(Abs)
フィルター:偏光フィルター(POL)
*値が18.0以下であれば「黒の発色性に優れている」と評価した。一方、L*値が18.0を超える場合、「黒の発色性に優れていない」と評価した。
Figure 2019159089
トナーTA−1〜TA−8に含まれるトナー粒子では、シェル層が未開環のオキサゾリン基を有する繰返し単位を含んでいた。表1に示すように、トナーTA−1〜TA−8に含まれるトナー粒子では、着色剤層(酸性カーボンブラックから構成された層)の厚さが200nm以上500nm以下であった。トナーTA−1〜TA−8に含まれるトナー粒子では、未開環オキサゾリン基含有量が500μmol以上1000μmol以下であった。
表2に示すように、トナーTA−1〜TA−8では、帯電量が20μC/g以上30μC/g以下であった。よって、トナーTA−1〜TA−8は、正帯電性に優れていた。トナーTA−1〜TA−8では、最低定着温度が130℃未満であった。よって、トナーTA−1〜TA−8は、低温定着性を維持できていた。トナーTA−1〜TA−8では、L*値が18.0以下であった。よって、トナーTA−1〜TA−8は、黒の発色性に優れていた。
表1に示すように、トナーTB−1〜TB−4及びTB−11では、着色剤層(酸性カーボンブラックから構成された層)の厚さが200nm未満であった。トナーTB−8〜TB−10では、着色剤層(酸性カーボンブラックから構成された層)の厚さが500nmを超えていた。トナーTB−1及びTB−5では、未開環オキサゾリン基含有量が500μmol未満であった。トナーTB−4、TB−6、TB−7、TB−9、TB−10及びTB−12では、未開環オキサゾリン基含有量が1000μmolを超えていた。
表2に示すように、トナーTB−1及びTB−5では、帯電量が20μC/g未満であった。よって、トナーTB−1及びTB−5は、正帯電性に優れていなかった。トナーTB−4、TB−6、TB−7、TB−10及びTB−12では、帯電量が30μC/gを超えていた。よって、トナーTB−4、TB−6、TB−7、TB−10及びTB−12は、正帯電性に優れていなかった。トナーTB−4、TB−6〜TB−10及びTB−12では、最低定着温度が130℃以上であった。よって、トナーTB−4、TB−6〜TB−10及びTB−12は、低温定着性を維持できていなかった。トナーTB−1〜TB−4及びTB−11では、L*値が18.0を超えていた。よって、トナーTB−1〜TB−4及びTB−11は、黒の発色性に優れていなかった。
以上の結果から、本発明に係るトナーによれば、低温定着性を維持しつつ、正帯電性及び黒の発色性を向上できることが示された。
本発明に係るトナーは、例えば複合機又はプリンターにおいて画像を形成するために利用することができる。
1 トナー粒子
2 複合コア
3 シェル層
4 トナーコア
5 着色剤層

Claims (5)

  1. トナー粒子を含む正帯電性トナーであって、
    前記トナー粒子は、複合コアと、前記複合コアの表面を覆うシェル層とを備え、
    前記複合コアは、結着樹脂を含むトナーコアと、前記トナーコアの表面に配置された着色剤層との複合体であり、
    前記着色剤層は、カーボンブラックを含み、
    前記着色剤層の厚さは、200nm以上500nm以下であり、
    前記シェル層は、未開環のオキサゾリン基を有する繰返し単位を含み、
    ガスクロマトグラフィー質量分析法により測定される、前記正帯電性トナー1gに含まれる前記未開環のオキサゾリン基の量は、500μmol以上1000μmol以下である、正帯電性トナー。
  2. 前記未開環のオキサゾリン基を有する繰返し単位は、下記式(1−1)で表される繰返し単位である、請求項1に記載の正帯電性トナー。
    Figure 2019159089
    (前記式(1−1)中、R1は、水素原子、又は置換基で置換されていてもよいアルキル基を表す。)
  3. 前記着色剤層に含まれる前記カーボンブラックは、酸性カーボンブラックである、請求項1又は2に記載の正帯電性トナー。
  4. 前記酸性カーボンブラックのpHは、2.5以上5.0以下である、請求項3に記載の正帯電性トナー。
  5. 前記結着樹脂は、ポリエステル樹脂を含み、
    前記ポリエステル樹脂の酸価は、5mgKOH/g以上である、請求項1〜4の何れか一項に記載の正帯電性トナー。
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