JP5777596B2 - 静電荷像現像用トナー - Google Patents
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Description
少なくとも結着樹脂を含むトナーコア粒子と、前記トナーコア粒子を被覆するシェル層と、からなり、
前記シェル層が、内層と、外層とからなり、
前記結着樹脂のSP値(SPc)と、前記内層の材質のSP値(SPt)との差であるΔSP1(SPc−SPt)が、0.3以上1.4以下であり、
前記内層の材料SP値(SPt)と、前記外層の材質のSP値(SPs)との差であるΔSP2(SPt−SPs)が、0.5以上1.6以下であり、
前記ΔSP1が、前記ΔSP2未満である、静電荷像現像用トナーに関する。
本発明で規定するSP値とは、分子凝集エネルギーの平方根で表される値であり、R.F.Fedors,Polymer Engineering Science,14,p147(1974)に記載の方法で計算することができる。単位は(MPa)1/2であり、25℃における値を指す。
0.3≦SPc−SPt(ΔSP1)≦1.4、
0.5≦SPt−SPs(ΔSP2)≦1.6、及び
SPc−SPt(ΔSP1)<SPt−SPs(ΔSP2)、
を満たす。
本発明のトナーは、トナーコア粒子と、トナーコア粒子を被覆するシェル層とからなる。本発明のトナーは、必要に応じ、その表面に外添剤が付着されたものであってもよい。本発明のトナーは、所望のキャリアと混合して2成分現像剤として使用することもできる。以下、本発明のトナーを構成するトナーコア粒子、及びシェル層と、任意の成分である外添剤と、本発明のトナーを2成分現像剤として使用する場合に用いるキャリアと、本発明のトナーの製造方法とについて順に説明する。
本発明のトナーを構成するトナーコア粒子は、少なくとも結着樹脂を含む。トナーコア粒子は結着樹脂に加え、所望により、着色剤、離型剤、及び電荷制御剤のような成分を含有してもよい。以下、トナーコア粒子について、必須、又は任意の成分である、結着樹脂、離型剤、着色剤、及び電荷制御剤について順に説明する。
本発明のトナーのトナーコア粒子に含まれる結着樹脂は、SPcと、SPtと、SPsとが、前述の所定の関係を満たす限り、特に制限されない。
本出願の明細書では、ポリエステル樹脂中に含まれるオリゴマーの少なくとも一部を除去する処理、又は、合成段階でオリゴマーの生成量を低減させる処理が施されたポリエステル樹脂を「低オリゴマーポリエステル樹脂」と称する。
トナー中の結着樹脂に由来する分子量1000以下のオリゴマーの含有量A(質量ppm)は、
以下の工程(1)〜(3):
(1)静電潜像現像用トナーの試料100gを、メタノール500g中で、60℃、8時間撹拌して、結着樹脂由来のオリゴマーを含むメタノール抽出液を取得する工程、
(2)メタノール抽出液に含まれるオリゴマーのうち、分子量1000以下のオリゴマーの、メタノール抽出液中の含有量を測定し、メタノール抽出液全量に含まれる、分子量1000以下のオリゴマーの質量B(g)を測定する工程、及び
(3)下式:
A=(B/100)×1000000、
に従って、トナーの質量を基準とする、トナー中の分子量1000以下のオリゴマーの含有量A(質量ppm)を算出する工程、
からなる方法に従って測定できる。
テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とし、測定する試料を好ましくは0.1mg/ml以上5mg/ml以内、より好ましくは0.5mg/ml以上2mg/ml以内の濃度でTHFに溶解させる。試料をTHFへ溶解させる方法としては、THF中の試料を撹拌する方法や、THF中の試料を超音波浴に浸漬させる方法がある。その後、得られたTHF溶液をサンプル処理フィルターで濾過して、GPCの測定に用いる測定用試料を得る。GPCの測定は、40℃でカラムを安定化させ、その温度条件下、THF溶液を0.35ml/minの流速で流すことで測定される。試料の分子量分布は単分散ポリスチレンを数種類使用して調製した検量線を用いて、スチレン換算分子量として測定する。少なくとも10点以上測定することが検量線の精度を高くするために好ましい。検出器としてはRI(屈折率)検出器、又はUV(紫外線)検出器が使用できるが、試料の組成によらず検出が可能である点でRI検出器を用いるのが好ましい。カラムとしては標準的なポリスチレンジェルカラムを組み合わせて使用することができる。
<GPC測定条件>
装置 :HLC−8320(東ソー株式会社製)
溶離液 :THF(テトラヒドロフラン)
カラム :TSKgel SuperMultiporeHZ−M(東ソー株式会社製)
カラム本数:3本
検出器 :RI
溶出液流速:0.35ミリリットル/分
試料濃度 :2.0g/リットル
カラム温度:40℃
試料量 :10マイクロリットル
試料調製 :溶離液にて調製する。シェーカーを用いて1時間振とう後、フィルター(孔径5ミクロン)を用いてろ過。
検量線 :標準ポリスチレンを用いて作製
トナーコア粒子は、必要に応じて着色剤を含んでいてもよい。着色剤は、トナー粒子の色に合わせて、公知の顔料や染料を用いることができる。トナーに添加することができる好適な着色剤の具体例としては以下のような着色剤が挙げられる。
本発明のトナーのトナーコア粒子は、トナーの定着性や耐オフセット性を向上させる目的で、離型剤を含んでいてもよい。離型剤の種類は、従来からトナー用の離型剤として使用されているものであれば特に限定されない。
本発明のトナーのトナーコア粒子は、必要に応じ、電荷制御剤を含んでいてもよい。電荷制御剤は、トナーの帯電レベルの安定性や、所定の帯電レベルに短時間でトナーを帯電可能か否かの指標となる帯電立ち上がり特性を向上させ、耐久性や安定性に優れたトナーを得る目的で使用される。トナーを正帯電させて現像を行う場合、正帯電性の電荷制御剤が使用され、トナーを負帯電させて現像を行う場合、負帯電性の電荷制御剤が使用される。
本発明のトナーを構成するシェル層は、内層と、外層とからなる。シェル層の材質は、内層と外層とを形成でき、第1ΔSP値差(SPc−SPt)が0.3以上1.4以下であり、第2SP値差(SPt−SPs)が0.5以上1.6以下であり、SPc−SPt<SPt−SPsの関係を満たす限り、特に限定されない。シェル層の材質としては通常、内層の材質のSP値(SPt)と、外層の材質のSP値(SPs)とを調整しやすい点から、樹脂を使用するのが好ましい。以下、内層と、外層とについて説明する。
内層の材質は、SPcと、SPtと、SPsとが、前述の所定の関係を満たす限り、特に制限されない。内層の材質としては、SPtを調整しやすいことから、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂が好ましい。そして、ΔSP1や、ΔSP2を所定の範囲内の値に調整しやすいことから、内層を構成する樹脂はポリエステル樹脂がより好ましい。内層を構成する樹脂として好適に用いられるポリエステル樹脂は、結着樹脂と同様の種類の樹脂を用いることができる。
内層を構成する樹脂として、(メタ)アクリル系樹脂を用いる場合、(メタ)アクリル系樹脂は、少なくとも(メタ)アクリル系モノマーを含むモノマーを重合して得られる樹脂である。(メタ)アクリル系樹脂の調製に使用される(メタ)アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、及びプロピル(メタ)アクリレートのようなアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N−アリール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、及びN,N−ジアリール(メタ)アクリルアミドのような(メタ)アクリルアミド化合物が挙げられる。
内層を構成する樹脂として、スチレン−(メタ)アクリル系樹脂を用いる場合、スチレン−(メタ)アクリル系樹脂は、少なくとも、スチレン系モノマーと、(メタ)アクリル系モノマーとを含むモノマーを共重合して得られる樹脂である。
外層の材質は、SPcと、SPtと、SPsとが、前述の所定の関係を満たす限り、特に制限されない。外層の材質は、SPsを調整しやすいことから、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂が好ましい。そして、耐熱保存性に優れるトナーを得やすいことから、外層の材質は(メタ)アクリル系樹脂、及びスチレン−(メタ)アクリル系樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂がより好ましい。外層を構成する樹脂として好適に用いられるポリエステル樹脂は、結着樹脂と同様の種類の樹脂を用いることができる。また、外層を構成する樹脂として好適に用いられる、(メタ)アクリル系樹脂、及びスチレン−(メタ)アクリル系樹脂は、内層を構成する樹脂と同様の樹脂を用いることができる。
本発明のトナーは、所望によりその表面を、外添剤を用いて処理されていてもよい。本出願の明細書では、外添剤により処理される粒子を、「トナー母粒子」と称する。外添剤の種類は従来からトナー用に使用されている外添剤から適宜選択できる。好適な外添剤の具体例としては、シリカや、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムのような金属酸化物が挙げられる。これらの外添剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。また、これらの外添剤は、アミノシランカップリング剤やシリコーンオイルのような疎水化剤を用いて疎水化して使用することもできる。疎水化された外添剤を用いる場合、高温高湿下でのトナーの帯電量の低下を抑制しやすく、また、流動性に優れるトナーを得やすい。
本発明のトナーは、所望のキャリアと混合して2成分現像剤として使用することもできる。2成分現像剤を調製する場合、磁性キャリアを用いるのが好ましい。
本発明のトナーの製造方法としては、形状の均一なトナー粒子を得やすいこと、トナーコア粒子表面に均一な厚さのシェル層を形成しやすいこととから、凝集法が好ましい。以下、凝集法を用いる静電荷像現像用トナーの製造方法について説明する。
工程(I):結着樹脂を含む微粒子の水性媒体分散液(A)を得た後に、凝集剤の存在下で、微粒子を凝集させて、トナーコア粒子を含む水性媒体分散液(B)を得る工程、
工程(II):水性媒体分散液(B)と、シェル層の内層を構成する樹脂を含む微粒子の水性媒体分散液(C)とを混合して、前記トナーコア粒子と、シェル層の内層を構成する樹脂を含む微粒子とを含む水性媒体分散液(D)を得る工程、
工程(III):水性媒体分散液(D)を加熱して、シェル層の内層を構成する樹脂を含む微粒子からなる被覆層Iをその表面に備えるトナーコア粒子を含む水性媒体分散液(E)を得る工程、
工程(IV):水性媒体分散液(E)と、シェル層の外層を構成する樹脂を含む微粒子の水性媒体分散液(F)とを混合して、表面に被覆層Iを備えるトナーコア粒子と、シェル層の外層を構成する樹脂を含む微粒子とを含む水性媒体分散液(G)を得る工程、
工程(V):水性媒体分散液(G)を加熱して、被覆層Iと、シェル層の外層を構成する樹脂を含む微粒子からなり、被覆層Iの外表面を被覆する被覆層IIと、をその表面に備えるトナーコア粒子を含む水性媒体分散液(H)を得る工程、
工程(VI):水性媒体分散液(H)を加熱して、トナーコア粒子の表面に内層と外層とからなるシェル層を形成する工程、
を含む。
(VII):トナーを洗浄する、洗浄工程。
(VIII):トナーを乾燥する、乾燥工程。
(IX):トナー母粒子の表面に外添剤を付着させる、外添工程。
工程(I)では、結着樹脂を含む微粒子の水性媒体分散液(A)を得た後に、凝集剤の存在下で、微粒子を凝集させて、トナーコア粒子を含む水性媒体分散液(B)を得る。以下、結着樹脂を含む微粒子の水性媒体分散液(A)の調製方法と、微粒子の凝集方法とについて説明する。
結着樹脂を含む微粒子の水性媒体分散液(A)の調製方法は特に限定されない。結着樹脂を含む微粒子は、結着樹脂の微粒子、又は、結着樹脂と、着色剤、離型剤、及び電荷制御剤のような任意成分とを含む結着樹脂組成物の微粒子の何れであってもよい。通常、結着樹脂を含む微粒子は、水性媒体中で、結着樹脂又は結着樹脂と着色剤、離型剤、及び電荷制御剤のような任意成分とを含む組成物を所望のサイズに微粒子化することで、微粒子の水性媒体分散液として調製される。
以下、結着樹脂の微粒子を調製する方法の好適な例について説明する。
以下、離型剤の微粒子を調製する方法の好適な例について説明する。離型剤の微粒子を調製する方法は、以下に説明する方法に限定されない。
以下、着色剤の微粒子を調製する方法の好適な例について説明する。着色剤の微粒子を調製する方法は、以下に説明する方法に限定されない。
以下、結着樹脂と離型剤とを含む微粒子を調製する方法の好適な例について説明する。
上記方法を用いて調製された微粒子は、トナーに所定の成分が含まれるように、適宜組み合わせて、微粒子凝集体であるトナーコア粒子とされる。微粒子を凝集させる好適な方法としては、微粒子の水性媒体分散液に、凝集剤を添加する方法が挙げられる。
工程(II)では、工程(I)で得られた水性媒体分散液(B)と、シェル層の内層を構成する樹脂を含む微粒子を含む水性媒体分散液(C)とを混合して、トナーコア粒子と、シェル層の内層を構成する樹脂を含む微粒子とを含む水性媒体分散液(D)を得る。水性媒体分散液(B)と、水性媒体分散液(C)とを混合する方法は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。以下、シェル層の内層を構成する樹脂を含む微粒子の水性媒体分散液(C)の好適な調製方法について説明する。
シェル層の内層を構成する樹脂を含む微粒子の水性媒体分散液(C)は、シェル層の内層を構成する樹脂の種類に応じた好適な方法で調製される。シェル層の内層を構成する樹脂として、ポリエステル樹脂が用いられる場合、シェル層の内層を構成する樹脂を含む微粒子は、上述の結着樹脂を含む微粒子の調製方法と同様の方法で調製されるのが好ましい。また、シェル層の内層を構成する樹脂として、(メタ)アクリル酸に由来する単位を含む(メタ)アクリル系樹脂、及びスチレン−(メタ)アクリル系樹脂のような、カルボキシル基含有ビニル系ポリマーも好適に使用される。なお、本出願の明細書では、エチレン、プロピレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、スチレンのようなビニル基を有する化合物の単独重合体又は共重合体をビニル系ポリマーと称する。以下、シェル層の内層を構成する樹脂としてカルボキシル基含有ビニル系ポリマーを用いる場合の水性媒体分散液(C)の調製方法について説明する。
シェル層の内層を構成する樹脂として、(メタ)アクリル系樹脂、及びスチレン−(メタ)アクリル系樹脂のようなカルボキシル基含有ビニル系ポリマーが用いられる場合、シェル層の内層を構成する樹脂を含む微粒子の水性媒体分散液(C)は、撹拌装置、温度計及びヒーターを備える密閉可能な反応容器中で、水性媒体と、カルボキシル基含有ビニル系ポリマーの粉砕品と、中和剤と、有機溶剤とを、加熱下で撹拌・混合して得られる。
工程(III)では、工程(II)で得られる水性媒体分散液(D)を加熱して、シェル層の内層を構成する樹脂を含む微粒子からなる被覆層Iをその表面に備えるトナーコア粒子を含む水性媒体分散液(E)を得る。水性媒体分散液(D)を加熱する温度は、50℃以上65℃以下が好ましい。このような範囲内の温度で水性媒体分散液(D)を加熱することで、シェル層の内層を構成する樹脂を含む微粒子からなる被覆層Iをトナーコア粒子の表面に均一に形成させることができる。
工程(IV)では、工程(III)で得られる水性媒体分散液(E)と、シェル層の外層を構成する樹脂を含む微粒子の水性媒体分散液(F)とを混合して、表面に被覆層Iを備えるトナーコア粒子と、シェル層の外層を構成する樹脂を含む微粒子とを含む水性媒体分散液(G)を得る。水性媒体分散液(E)と、水性媒体分散液(F)とを混合する方法は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。また、シェル層の外層を構成する樹脂を含む微粒子の水性媒体分散液(F)の調製方法としては、上述のシェル層の内層を構成する樹脂を含む微粒子の水性媒体分散液(C)の好適な調製方法と同様の方法が挙げられる。
工程(V)では、工程(IV)で得られる水性媒体分散液(G)を加熱して、被覆層Iと、シェル層の外層を構成する樹脂を含む微粒子からなり、被覆層Iの外表面を被覆する被覆層IIと、を備えるトナーコア粒子を含む水性媒体分散液(H)を得る。水性媒体分散液(G)を加熱する温度は、50℃以上85℃以下が好ましい。このような範囲内の温度で水性媒体分散液(G)を加熱することで、シェル層の外層を構成する樹脂の微粒子からなる被覆層IIを被覆層Iの外表面に均一に形成させることができる。
工程(VI)では、工程(V)で得られる水性媒体分散液(H)を加熱して、トナーコア粒子の表面に内層と外層とを備えるシェル層を形成し、トナー粒子又はトナー母粒子の水性媒体分散液を得る。水性媒体分散液(H)を加熱する前に、被覆層IIの形成が所望の程度進行した後、上述の凝集停止剤を水性媒体分散液(H)に添加するのが好ましい。凝集停止剤の例としては、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウムが挙げられる。
工程(VI)で得られるトナー粒子又はトナー母粒子は、必要に応じて、(VII)洗浄工程において、水を用いて洗浄される。洗浄方法は特に限定されず、トナー粒子又はトナー母粒子を含む水性媒体分散液から、固液分離してトナー粒子又はトナー母粒子をウエットケーキとして回収し、得られたウエットケーキを、水を用いて洗浄する方法や、トナー粒子又はトナー母粒子を含む水性媒体分散液中の粒子を沈降させ、上澄み液を水と置換し、置換後にトナー粒子又はトナー母粒子を水に再分散させる方法が挙げられる。
工程(VI)で得られるトナー粒子又はトナー母粒子は、必要に応じて、(VIII)乾燥工程を経て乾燥される。トナー粒子又はトナー母粒子を乾燥する方法は特に限定されない。好適な乾燥方法としては、スプレードライヤー、流動層乾燥機、真空凍結乾燥器、減圧乾燥機のような乾燥機を用いる方法が挙げられる。これらの方法の中では、乾燥中のトナー粒子の凝集を抑制しやすいことからスプレードライヤーを用いる方法がより好ましい。工程(VI)で回収される粒子をトナー母粒子とする場合、スプレードライヤーを用いて、トナー母粒子を含む水性媒体分散液と共に、シリカのような外添剤の分散液をトナー母粒子に対して噴霧することで、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させることができる。
本発明の方法を用いて製造される静電潜像現像用トナーは、必要に応じてその表面に外添剤が付着したものであってもよい。工程(IX)では、上記方法工程を経て回収される粒子を、トナー母粒子として用い、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させる。外添剤をトナー母粒子の表面に付着させる方法は特に限定されない。好適な方法としては、ヘンシェルミキサーやナウターミキサーのような混合機を用いて、外添剤がトナー母粒子の表面に埋没しないように条件を調整して混合する方法が挙げられる。
(ポリエステル樹脂微粒子分散液の調製)
以下の方法に従って、ポリエステル樹脂微粒子分散液を調製した。
ポリエステル樹脂微粒子分散液の調製に用いるポリエステル樹脂として、下記単量体a〜bの配合比を適宜変更して調製された、表1に記載の物性値を有するポリエステル樹脂を用いた。
単量体a:ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
単量体b:ポリオキシエチレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
単量体c:フマル酸
単量体d:トリメリット酸
(アクリル系樹脂微粒子分散液の調製)
以下の方法に従い、重合開始剤の使用量、単量体の配合比、及び連鎖移動剤の使用量を適宜変更して、表2記載の物性値を有するアクリル系樹脂微粒子分散液A〜Iを調製した。
撹拌装置、冷却管、窒素導入管、温度センサーを備えた1000ml四つ口フラスコに、イオン交換水550ml、界面活性剤として表2に記載の量のドデシル硫酸ナトリウム0.35gを仕込み、窒素気流下で撹拌しながら80℃に昇温した後、重合開始剤として過硫酸カリウム水溶液(2.5質量%濃度)を添加した。滴下ロートにて、スチレン、アクリル酸n−ブチル、及びメタクリル酸と、連鎖移動剤としてn−オクチルメルカプタンと、を含むモノマー混合液を1.5時間かけて滴下した。滴下後、同温度にて反応液を2時間撹拌して重合反応を完結させた。重合反応終了後、内容物を室温まで冷却した後、固形分濃度が25質量%となるように反応液にイオン交換水を加えて、表2に記載の物性値を有するアクリル系樹脂微粒子分散液を得た。分散液中のアクリル樹脂微粒子の平均粒子径は約90nmであった。アクリル系樹脂微粒子の平均粒子径は、ポリエステル樹脂微粒子の粒子径と同様の方法を用いて測定した。
(離型剤微粒子分散液の調製方法)
離型剤(エステルワックス、WEP−3(日油株式会社製))200gと、アニオン系界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム、エマール 0(花王株式会社製))20gと、イオン交換水780gとを混合し、90℃に加熱した後、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50(IKA社製))を用いて、5分間、撹拌速度2,000rpmで乳化を行った。さらに、高圧式ホモジナイザー(NV−200(吉田機械興業株式会社製)、加熱システムを追加)を用いて、100℃、吐出圧力100MPaの処理条件で乳化処理を行い、固形分濃度10質量%の離型剤微粒子分散液を得た。離型剤微粒子分散液に含まれる離型剤の微粒子の平均粒子径は120nmであった。離型剤微粒子の粒子径は、ポリエステル樹脂微粒子の粒子径と同様の方法を用いて測定した。
(顔料微粒子分散液の調製方法)
顔料(シアン顔料、C.I.ピグメントブルー15:3(銅フタロシアニン))100gと、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム(エマール E27C(花王株式会社製))20gと、イオン交換水380gとを混合し、撹拌容器内にビーズ(ジルコニア製、φ0.1)を400ml投入したウルトラアペックスミル(寿工業株式会社製)を用いて、ローター周速10m/秒、所持時間2時間の処理条件で分散処理を行い、顔料の濃度が20質量%であり、総固形分濃度が21質量%の顔料微粒子分散液を得た。顔料微粒子分散液に含まれる顔料微粒子の平均粒子径は113nmであった。顔料微粒子の粒子径は、ポリエステル樹脂微粒子の粒子径と同様の方法を用いて測定した。
〔トナー母粒子調製工程〕
ステンレス製の容量2Lの丸底フラスコに、結着樹脂として表3〜5に記載の種類のポリエステル樹脂微粒子分散液340gと、離型剤微粒子分散液100gと、顔料分散液25gと、イオン交換水500gとを投入し、これらを25℃で混合した。次いで、フラスコ内の混合物を、撹拌羽根を用いて、回転数200rpmで10分撹拌した。フラスコ内の混合物のpHを、水酸化ナトリウム水溶液を用いて10に調整した後、混合物を10分撹拌した。その後、濃度50質量%の塩化マグネシウム六水和物水溶液(凝集剤)10gを5分かけてフラスコ内に滴下した。次いで、フラスコ内の混合物を、0.2℃/分の速度で昇温させて、微粒子の凝集を開始させた、50℃で昇温を停止した後、フラスコ内の混合物を、300rpmで撹拌しながら、30分間、50℃に保持し、微粒子の凝集を進行させた。その後、フラスコ内の混合物に濃度20質量%の塩化ナトリウム水溶液を50g添加して、微粒子の凝集の進行を停止させ、微粒子凝集体を含む微粒子凝集体分散液を得た。
ブフナーロートを用いて、トナー母粒子分散液からトナー母粒子のウエットケーキをろ取した。トナー母粒子のウエットケーキを再度イオン交換水に分散させてトナーを洗浄した。トナー母粒子のイオン交換水を用いる同様の洗浄を6回繰り返した。
トナー母粒子のウエットケーキを、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させてスラリーを調製した。得られたスラリーを連続式表面改質装置(コートマイザー(フロイント産業株式会社製))に供給して、スラリー中のトナー母粒子を乾燥させて、トナー母粒子を得た。コートマイザーを用いる乾燥の条件は、熱風温度45℃、ブロアー風量2m3/分であった。
各実施例及び比較例で得られたトナー母粒子について外添処理を行った。
具体的には、トナー母粒子100質量部と、正帯電性シリカ(シリカ90G(日本アエロジル株式会社製):シリカの表面をシリコーンオイル、及びアミノシランで処理したもの)0.4質量部とを、5Lヘンシェルミキサー(三井三池工業株式会社製)を用いて、5分間、撹拌速度30m/秒の条件で混合して外添剤を付着させた。その後、300メッシュ(目開き48μm)の篩を用いてトナーを篩別した。
実施例1〜4、及び比較例1〜8のトナーについて、以下の方法に従って、定着性、耐熱性、及び強度を評価した。実施例1〜4、及び比較例1〜8のトナーの、定着性、耐熱性、及び強度の評価結果を表3〜5に記す。
〔2成分現像剤の調製〕
(キャリアの調製)
MnO換算で39.7mol%、MgO換算で9.9mol%、Fe2O3換算で49.6mol%、SrO換算で0.8mol%になるように各原材料を配合し、水を加え、湿式ボールミルで10時間かけて粉砕・混合した。得られた混合物を乾燥した後、950℃で4時間保持した。次いで、混合物を湿式ボールミルで24時間かけて粉砕してスラリーを調製した。スラリーを造粒乾燥した後、造粒物を、酸素濃度2%の雰囲気中、1270℃で6時間保持した後、解砕、粒度調整を行い、マンガン系フェライト粒子(キャリア芯材)を得た。得られたマンガン系フェライト粒子は、平均粒子径が35μmであり、印加磁場が3000(103/4π・A/m)の時の飽和磁化が70Am2/kgであった。
2成分現像剤の質量に対するトナーの質量が8.0質量%となるように、各実施例、及び比較例で得られたトナーとキャリアとを、ナウターミキサーを用いて、常温常湿条件下において、回転数78rpmで30分間混合して、2成分現像剤を得た。
得られた2成分現像剤とトナーを用いて、膜厚が30μm±10μm、面粗度(Ra)が5μmのPFA樹脂でコートされたアルミニウム製の定着ローラーを有し、定着温度を調節可能に改造した複写機(TASKalfa 5550ci(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製))を用いて、線速266mm/秒、トナー載り量1.5mgに設定して、被記録媒体に未定着のベタ画像を形成した。定着温度を80℃以上200℃以下の範囲で、複合機の定着装置の定着温度を100℃から10℃ずつ上昇させて、未定着のベタ画像を定着させた。得られた定着画像を用いて、下記測定方法に基づいて定着下限温度と定着上限温度とを測定した。定着性は、下記の基準に従って評価した。
○(合格):定着下限温度が100℃超、且つ定着上限温度が200℃以上。
×(不合格):定着下限温度が100℃超、又は定着上限温度が200℃未満。
10℃ずつ定着温度を変えて形成したベタ画像について、堅牢度試験前後の定着ベタ画像の画像濃度を測定し、下式に従って、堅牢度試験前後の画像濃度から濃度比率を算出した。濃度比率が80%以上であるベタ画像を定着させることができた温度を定着可能温度とした。定着可能温度の下限値を定着下限温度とした。また、定着可能温度の上限値を定着上限温度とした。なお、堅牢度試験は、学振型摩擦堅牢度試験機(JIS L 0849II型(株式会社安田精機製作所製))を用い、荷重200g、擦り操作を20ストロークの条件で行った。また画像濃度は、反射濃度計(RD−918(グレタグマクベス社製))を用いて測定した。
濃度比率(%)=(摩擦後画像濃度/摩擦前画像濃度)×100
トナー3gを、容量20mlのポリ容器に秤量し、5分間ポリ容器をタッピング処理した後、55℃に設定された恒温器内に8時間静置し、耐熱保存性評価用のトナーを得た。その後、300メッシュ(目開き48μm)の篩に耐熱保存性評価用のトナーを載せて、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)のマニュアルに従い、レオスタッド目盛り5、時間30秒の条件で、篩別を行った。篩別後、篩に残ったトナーの質量を測定し、下式を用いて凝集度[%]を求めた。
(凝集度算出式)
凝集度[%]=(篩上に残留したトナー質量/篩別前のトナーの質量)×100
また、恒温器内の温度条件を60℃に変える他は、温度条件が55℃の場合と同様にして耐熱保存性評価用のトナーを得た後、凝集度[%]を求めた。
耐熱保存性は、下記の基準に従って評価し、○、及び△の評価を合格、×の評価を不合格とした。
○:トナーの凝集度が20%未満。
△:トナーの凝集度が20%以上、50%未満。
×:トナーの凝集度が50%以上。
トナー0.1gと、平均粒子径1mmのジルコニア製ビーズ20gと、イオン交換水40mlと、を容量50ccのガラス瓶に入れた。撹拌混合機(TURBULA T2F型(Willy A. Bachofen AG社製))を用いて、ガラス瓶の内容物を、90rpmの撹拌条件で5分間撹拌混合して、トナーの強度試験を行った。トナーの強度試験後、混合物からジルコニア製ビーズを分離して、トナー粒子を含む水性媒体分散液を得た。得られた水性媒体分散液について、FPIA−3000(シスメック株式会社製)を用いて、水性媒体中に含まれるトナー粒子の粒子径と、輝度値とを測定した。測定結果から、FPIA−3000(シスメック株式会社製)を用いる測定用の試料中の、粒子径が3μm以上のトナー粒子の数(X)と、粒子径が3μm以上であって輝度値が100以上であるトナー粒子の数(Y)とを得た。Yの値は、強度試験により潰れたトナーの粒子数に相当する。下式を用いて潰れ率[%]を求めた。
潰れ率[%]=(Y/X)×100
強度は、下記の基準に従って評価した。
○:潰れ率が1.0%未満。
×:潰れ率が1.0%以上。
Claims (4)
- 少なくとも結着樹脂を含むトナーコア粒子と、前記トナーコア粒子を被覆するシェル層と、からなり、
前記シェル層が、内層と、外層とからなり、
前記結着樹脂のSP値(SPc)と、前記内層の材質のSP値(SPt)との差であるΔSP1(SPc−SPt)が、0.3以上1.4以下であり、
前記内層のSP値(SPt)と、前記外層の材質のSP値(SPs)との差であるΔSP2(SPt−SPs)が、0.5以上1.6以下であり、
前記ΔSP1が、前記ΔSP2未満である、静電荷像現像用トナー。 - 前記結着樹脂がポリエステル樹脂を含む、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記外層が(メタ)アクリル系樹脂、及びスチレン−(メタ)アクリル系樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂を含む、請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記内層が、ポリエステル樹脂からなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
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