以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
本発明の静電荷像現像用トナー(以降、単に「トナー」と記す場合がある)は、結着樹脂を含む微粒子と、離型剤を含む微粒子と、を水性媒体中で凝集させて微粒子凝集体を形成するか、又は、結着樹脂と離型剤とを含む微粒子を水性媒体中で凝集させて微粒子凝集体を得、得られる微粒子凝集体を水性媒体中で加熱して、微粒子凝集体に含まれる成分を合一化させて形成される、静電荷像現像用トナーである。また、本発明の静電荷像現像用トナーは、エステル基濃度と、軟化点と、質量平均分子量とが、それぞれ特定の範囲の値である、ポリエステル樹脂を含有する結着樹脂を含む。
本発明のトナーは、結着樹脂、及び離型剤の他に、着色剤、電荷制御剤、及び磁性粉のような成分を含んでいてもよい。また、トナーは、必要に応じ、その表面に外添剤を付着されたものであってもよい。さらに、トナーは、所望のキャリアと混合して2成分現像剤として使用することもできる。以下、本発明のトナーについて、必須、又は任意の成分である、結着樹脂、離型剤、着色剤、電荷制御剤、磁性粉、及び外添剤と、本発明のトナーを2成分現像剤として使用する場合に用いるキャリアと、本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法とについて順に説明する。
〔結着樹脂〕
本発明のトナーは、結着樹脂としてポリエステル樹脂を含む。結着樹脂としてポリエスエテル樹脂を用いることにより、発色性に優れるトナーを調製しやすい。
また、ポリエステル樹脂は、
(i)ポリエステル樹脂中のエステル基濃度が30質量%以上40質量%以下であり、
(ii)軟化点が75℃以上100℃以下であり、
(iii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される質量平均分子量(Mw)が3,000以上16,000以下である。
ポリエステル樹脂中のエステル基濃度と、軟化点と、質量平均分子量とが、上記の範囲の値であるポリエスエテル樹脂を含む結着樹脂を用いることにより、幅広い温度範囲で良好に定着されるトナーを調製しやすい。
ポリエステル樹脂は、上記(i)〜(iii)の物性を有する限り特に限定されず、従来トナー用の結着樹脂として使用されているポリエステル樹脂から適宜選択できる。ポリエステル樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合ないし共縮重合によって得られるものを使用することができる。ポリエステル樹脂は、以下の2価又は3価以上のアルコール成分や2価又は3価以上のカルボン酸成分から選択される単量体を、得られるポリエスエテル樹脂中のエステル基濃度が所定の範囲の値となるように、種類及び使用量を考慮した上で組み合わせて、公知の方法により重合することにより得られる。
2価又は3価以上のアルコール成分の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールのようなジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールAのようなビスフェノール類;ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンのような3価以上のアルコール類が挙げられる。
2価又は3価以上のカルボン酸成分の具体例としては、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、あるいはn−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸のようなアルキル又はアルケニルコハク酸のような2価カルボン酸;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸のような3価以上のカルボン酸が挙げられる。これらの2価又は3価以上のカルボン酸成分は、酸ハライド、酸無水物、低級アルキルエステルのようなエステル形成性の誘導体として用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を意味する。
(i)ポリエステル樹脂中のエステル基濃度が30質量%以上40質量%以下であり、32質量%以上40質量%以下が好ましく、32質量%以上38質量%以下がより好ましい。ポリエステル樹脂中のエステル基濃度(質量%)は、ポリエステル樹脂の合成に用いられる単量体が完全に反応した場合のポリエステル樹脂の質量(y)と、得られたポリエステル樹脂中のエステル基(−CO−O−)の質量(x)と、から、下式により算出される。
ポリエステル樹脂中のエステル基濃度(質量%)=x/y×100
例えば、エチレングリコール1.00モル(62.07g)と、ジメチルテレフタレート1.05モル(203.89g)とを反応させる場合、脱メタノール反応により、2.00モル(64.08g)のメタノールが失われ、質量(y)が201.88gであるポリエステルが得られる。
そして得られるポリエステルには、水酸基と、CH3−O−CO−で表される基との縮合反応で生成するエステル基2.00モル(64.00g)と、ジメチルテレフタレート由来の未反応のCH3−O−CO−で表される基に含まれるエステル基0.10モル(3.20g)と、が含まれる。従って、上記の場合では、エステル基濃度は33.3質量%((67.2/201.88)×100)となる。
(i)ポリエステル樹脂中のエステル基濃度は、単量体中の、水酸基やカルボキシル基のようなエステル形成性の官能基の、単量体の単位質量当たりの含有量を調整することにより調整できる。単量体中の、単量体の単位質量当たりのエステル形成性の官能基の含有量が多いほど、ポリエステル樹脂中のエステル基濃度が高くなる。
ポリエステル樹脂中のエステル基濃度が低すぎる場合、トナーが低温で良好に定着しにくい。また、ポリエステル樹脂中のエステル基濃度が高すぎる場合も、トナーが低温で良好に定着しにくい。
ポリエステル樹脂の酸価は、10mgKOH/g以上40mgKOH/g以下が好ましい。ポリエステル樹脂の酸価が低すぎる場合、後述するトナーの製造方法に含まれる工程(I)の処方によっては、微粒子の凝集が良好に進行しにくくなりやすい。ポリエステル樹脂の酸価が高すぎる場合、高湿条件下で、トナーの種々の性能が湿度による悪影響を受けやすい。また、ポリエステル樹脂の酸価は、ポリエステル樹脂の合成に使用されるアルコール成分が有する水酸基と、カルボン酸成分が有するカルボキシル基とのバランスを調整することによって調整できる。
ポリエステル樹脂の(ii)軟化点は、75℃以上100℃以下であり、75℃以上90℃以下が好ましく、75℃以上80℃以下がより好ましい。ポリエステル樹脂の軟化点が高すぎる場合、トナーが低温で良好に定着しにくい。一方、ポリエステル樹脂の軟化点が低すぎる場合、トナーが高温で良好に定着しにくい。また、ポリエステル樹脂の軟化点が低すぎる場合、高温での保存時にトナーが凝集してしまう場合が有り、トナーの耐熱保存性が損なわれやすい。ポリエステル樹脂の軟化点は、以下の方法に従って測定することができる。
<軟化点測定方法>
高化式フローテスター(CFT−500D(株式会社島津製作所製))を用いてポリエステル樹脂の軟化点の測定を行う。具体的には、以下のようにしてポリエステル樹脂の軟化点を測定する。トナー1.5gを試料として用い、高さが1.0mmで直径1.0mmのダイを使用する。そして、昇温速度4℃/min、予熱時間300秒、荷重5kg、測定温度範囲60℃以上200℃以下の条件で測定を行う。ポリエステル樹脂のフローテスターの測定により得られる、温度(℃)とストローク(mm)とに関するS字カーブより、軟化点を読み取る。
軟化点の読み取り方を、図1により説明する。ストロークの最大値をS1とし、低温側のベースラインのストローク値をS2とする。S字カーブにおいて、ストロークの値が(S1+S2)/2となる温度を、ポリエステル樹脂の軟化点とする。
ポリエステル樹脂の軟化点は、分子量の調整や、単量体の選択によって、調整することができる。通常、ポリエステル樹脂の分子量が高いほど、軟化点も高い傾向がある。また、ポリエステル樹脂が芳香族単量体に由来する単位を含むものである場合、芳香族単量体に由来する単位の一部又は全部を、脂肪族単量体に由来する単位に置換することにより、ポリエステル樹脂の軟化点を下げることができる。
ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)は、50℃以上70℃以下が好ましい。ポリエステル樹脂のガラス転移点が低すぎる場合、画像形成装置の現像部の内部でトナー同士が融着したり、トナーの保存安定性の低下により、トナー容器の輸送時や倉庫等での保管時にトナー同士が一部融着したりする場合がある。また、ポリエステル樹脂のガラス転移点が低すぎる場合、ポリエステル樹脂の強度が低下し、潜像担持部にトナーが付着しやすい。結着樹脂のガラス転移点が高すぎる場合、トナーが低温で良好に定着しにくい傾向がある。
なお、ポリエステル樹脂のガラス転移点は、JIS K7121に準拠し、示差走査熱量計(DSC)を用いて、ポリエステル樹脂の比熱の変化点から求めることができる。より具体的な測定方法は以下の通りである。測定装置としてセイコーインスツルメンツ株式会社製示差走査熱量計DSC−6200を用い、ポリエステル樹脂の吸熱曲線を測定することで求めることができる。測定試料10mgをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを使用する。測定温度範囲25℃以上200℃以下、昇温速度10℃/分で常温常湿下にて測定して得られるポリエステル樹脂の吸熱曲線よりポリエステル樹脂のガラス転移点を求めることができる。
ポリエステル樹脂の(iii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される質量平均分子量(Mw)は、3,000以上16,000以下であり、3,500以上14,000以下が好ましく、4,000以上12,000以下がより好ましい。ポリエステル樹脂の質量平均分子量(Mw)がこのような範囲であると、幅広い温度範囲で用紙に良好に定着されるトナーを得ることができる。質量平均分子量(Mw)が低すぎる場合、トナーが高温で良好に定着しにくい。質量平均分子量(Mw)が高すぎる場合、トナーが低温で良好に定着しにくい。ポリエステル樹脂の質量平均分子量(Mw)は以下のようにして測定される。
<GPC測定方法>
室温でポリエステル樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、濾過してサンプル溶液を得る。サンプル溶液を、THFに可溶な成分の濃度が約0.5質量%となるように調製する。得られたサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
<測定条件>
装置:HLC−8220GPC(東ソー株式会社製)
カラム:TSK−GEL Super HZM−H(東ソー株式会社製) 2本
TSK gurdcolumn Super HZ−H(東ソー株式会社製) 1本
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:0.200ml/分
サンプル注入量:10μl
測定温度:40℃
検出器:IR検出器
検量線:標準試料(TSK standard POLYSTYREN(東ソー株式会社製))から、F−380、F−128、F−40、F−10、F−4、F−1、及びA−2500を選択して作成した。
また、数平均分子量(Mn)と質量平均分子量(Mw)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、2以上10以下が好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布がこのような範囲であると、低温定着性に優れるトナーを得やすい。ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)も、質量平均分子量(Mw)と同様にゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
結着樹脂は、本発明の目的を阻害しない範囲で、ポリエステル樹脂の他の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。結着樹脂が、ポリエスエテル樹脂と、ポリエステル樹脂の他の熱可塑性樹脂を組み合わせて含む場合、ポリエステル樹脂の他の熱可塑性樹脂は、従来からトナー用の結着樹脂として使用される熱可塑性樹脂から適宜選択して使用することができる。
結着樹脂中のポリエステル樹脂の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。結着樹脂中のポリエステル樹脂の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100%が最も好ましい。
〔離型剤〕
本発明の静電荷像現像用トナーは、定着性や耐オフセット性を向上させる目的で、離型剤を含む。離型剤の種類は、従来からトナー用の離型剤として使用されているものであれば特に限定されない。
好適な離型剤としては、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、及びフィッシャートロプシュワックスのような脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックス、及び酸化ポリエチレンワックスのブロック共重合体のような脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、及びライスワックスのような植物系ワックス;みつろう、ラノリン、及び鯨ろうのような動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、及びベトロラクタムのような鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス、及びカスターワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような脂肪酸エステルを一部、又は全部を脱酸化したワックスが挙げられる。
好適に使用できる離型剤としては、さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、及びさらに長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸類のような飽和直鎖脂肪酸;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、及びバリナリン酸のような不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、及びさらに長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコールのような飽和アルコール;ソルビトールのような多価アルコール;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、及びラウリン酸アミドのような脂肪酸アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、及びヘキサメチレンビスステアリン酸アミドのような飽和脂肪酸ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドのような不飽和脂肪酸アミド類、m−キシレンビスステアリン酸アミド、及びN,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドのような芳香族系ビスアミド;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、及びステアリン酸マグネシウムのような脂肪酸金属塩;脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸のようなビニル系モノマーをグラフト化させたワックス;ベヘニン酸モノグリセリドのような脂肪酸と多価アルコールとの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
離型剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的な離型剤の使用量はトナーの質量に対して、5質量%以上20質量%以下が好ましく、8質量%以上15質量%以下がより好ましい。離型剤の使用量が過少である場合、形成画像におけるオフセットや像スミアリングの発生の抑制について所望の効果が得られない場合がある。離型剤の使用量が過多である場合、トナー同士の融着によってトナーの保存安定性が低下する場合がある。
〔着色剤〕
本発明の静電荷像現像用トナーは着色剤を含んでいてもよい。トナーに配合される着色剤は、トナー粒子の色に合わせて、公知の顔料や染料を用いることができる。トナーに添加することができる好適な着色剤の具体例としては以下のような着色剤が挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラックが挙げられる。具体的には、コロンビアン・カーボン社製のRaven1060、1080、1170、1200、1250、1255、1500、2000、3500、5250、5750、7000、5000 ULTRAII、1190 ULTRAII;キャボット社製のBlack PearlsL、Mogul−L、Regal400R、660R、330R、Monarch800、880、900、1000、1300、1400;デグッサ社製のColor Black FW1、FW2、FW200、18、S160、S170、Special Black 4、4A、6、Printex35、U、140U、V、140V;三菱化学株式会社製のNo.25、33、40、47、52、900、2300、MCF−88、MA600、7、8、100が挙げられる。また、黒色着色剤としては後述するイエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤のような着色剤を用いて黒色に調色された着色剤も利用することができる。
カラートナー用着色剤としては、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤のような着色剤が挙げられる。
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリルアミド化合物のような着色剤が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、194が挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物のような着色剤が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、及び254が挙げられる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物、銅フタロシアニン誘導体、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物のような着色剤が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が挙げられる。
これらの着色剤は、単独で、又は混合して用いることができる。着色剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的には、着色剤の使用量は、トナー全量を100質量部とする場合に、3質量部以上15質量部以下が好ましい。
〔電荷制御剤〕
本発明の静電荷像現像用トナーは、必要に応じ、電荷制御剤を含んでいてもよい。電荷制御剤は、トナーの帯電レベルの安定性や、所定の帯電レベルに短時間でトナーを帯電可能か否かの指標となる帯電立ち上がり特性を向上させ、耐久性や安定性に優れるトナーを得る目的で使用される。トナーを正帯電させて現像を行う場合、正帯電性の電荷制御剤が使用され、トナーを負帯電させて現像を行う場合、負帯電性の電荷制御剤が使用される。
電荷制御剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来よりトナーに使用されている電荷制御剤から適宜選択できる。正帯電性の電荷制御剤の具体例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリンのようなアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ−ンBH/C、アジンディ−プブラックEW、及びアジンディープブラック3RLのようなアジン化合物からなる直接染料;ニグロシン、ニグロシン塩、ニグロシン誘導体のようなニグロシン化合物;ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZのようなニグロシン化合物からなる酸性染料;ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルメチルヘキシルデシルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウムクロライドのような4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの正帯電性の電荷制御剤の中では、より迅速な立ち上がり性が得られる点で、ニグロシン化合物が特に好ましい。これらの正帯電性の電荷制御剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
官能基として4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、又はカルボキシル基を有する樹脂も正帯電性の電荷制御剤として使用できる。より具体的には、4級アンモニウム塩を有するスチレン系樹脂、4級アンモニウム塩を有するアクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するポリエステル樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン系樹脂、カルボン酸塩を有するアクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するポリエステル樹脂、カルボキシル基を有するスチレン系樹脂、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂、カルボキシル基を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂が挙げられる。これらの樹脂の分子量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、オリゴマーであってもポリマーであってもよい。
正帯電性の電荷制御剤として使用できる樹脂の中では、帯電量を所望の範囲内の値に容易に調節することができる点から、4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系樹脂がより好ましい。4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系樹脂において、スチレン単位と共重合させる好ましいアクリル系コモノマーの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸iso−ブチルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
また、4級アンモニウム塩としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノ(メタ)アクリルアミド、又はジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドから第4級化の工程を経て誘導される単位が用いられる。ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。ジアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としてはジメチルメタクリルアミドが挙げられる。ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としては、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドが挙げられる。また、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミドのようなヒドロキシ基含有重合性モノマーを重合時に併用することもできる。
負帯電性の電荷制御剤の具体例としては、有機金属錯体、及びキレート化合物が挙げられる。有機金属錯体、及びキレート化合物としては、アルミニウムアセチルアセトナートや鉄(II)アセチルアセトナートのようなアセチルアセトン金属錯体、及び、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸クロムのようなサリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩が好ましく、サリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩がより好ましい。これらの負帯電性の電荷制御剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
正帯電性又は負帯電性の電荷制御剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。正帯電性又は負帯電性の電荷制御剤の使用量は、典型的には、トナー全量を100質量部とする場合に、1.5質量部以上15質量部以下が好ましく、2.0質量部以上8.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以上7.0質量部以下が特に好ましい。電荷制御剤の使用量が過少である場合、所定の極性にトナーを安定して帯電させ難いため、形成画像の画像濃度が所望する値を下回ったり、画像濃度の長期にわたる維持が困難になったりすることがある。また、このような場合、電荷制御剤が均一に分散し難く、形成画像にかぶりが生じやすくなったり、トナー成分による潜像担持部の汚染が起こりやすくなったりする。電荷制御剤の使用量が過多である場合、耐環境性の悪化による、高温高湿下での帯電不良に起因する形成画像における画像不良や、潜像担持部のトナー成分による汚染のような問題が起こりやすくなる。
〔磁性粉〕
静電荷像現像用トナーは、所望により、磁性粉を含んでいてもよい。磁性粉の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。好適な磁性粉の例としては、フェライト、マグネタイトのような鉄;コバルト、ニッケルのような強磁性金属;鉄、及び/又は強磁性金属を含む合金;鉄、及び/又は強磁性金属を含む化合物;熱処理のような強磁性化処理を施された強磁性合金;二酸化クロムが挙げられる。
磁性粉の粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されない。具体的な磁性粉の粒子径は、0.1μm以上1.0μm以下が好ましく、0.1μm以上0.5μm以下がより好ましい。このような範囲の粒子径の磁性粉を用いる場合、結着樹脂中に磁性粉を均一に分散させやすい。
磁性粉は、結着樹脂中での磁性粉の分散性を改良する目的で、チタン系カップリング剤やシラン系カップリング剤のような表面処理剤により表面処理されたものを使用できる。
磁性粉の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的な磁性粉の使用量は、トナーを1成分現像剤として使用する場合、トナー全量を100質量部とする場合に、35質量部以上60質量部以下が好ましく、40質量部以上60質量部以下がより好ましい。磁性粉の使用量が過多である場合、長期間にわたって画像濃度を所望する値に維持することが困難になったり、トナーの用紙に対する定着性が極度に低下したりする場合がある。磁性粉の使用量が過少である場合、形成画像にかぶりが発生しやすくなったり、長期間にわたって画像濃度を所望する値に維持することが困難になったりする場合がある。また、トナーを2成分現像剤として使用する場合、磁性粉の使用量は、トナー全量を100質量部とする場合に、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
〔外添剤〕
静電荷像現像用トナーは、所望によりその表面を外添剤により処理されていてもよい。本願明細書では、外添剤により処理される粒子を、トナー母粒子とも記す。外添剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来からトナー用に使用されている外添剤から適宜選択できる。好適な外添剤の具体例としては、シリカや、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムのような金属酸化物が挙げられる。これらの外添剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。また、これらの外添剤は、アミノシランカップリング剤やシリコーンオイルのような疎水化剤により疎水化して使用することもできる。疎水化された外添剤を用いる場合、高温高湿下でのトナーの帯電量の低下を抑制しやすく、また、流動性に優れるトナーを得やすい。
外添剤の粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、典型的には0.01μm以上1.0μm以下が好ましい。
外添剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。外添剤の使用量は、典型的には、トナー母粒子100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、0.2質量部以上5質量部以下がより好ましい。
〔キャリア〕
本発明の方法により得られる静電荷像現像用トナーは、所望のキャリアと混合して2成分現像剤として使用することもできる。2成分現像剤を調製する場合、磁性キャリアを用いるのが好ましい。
好適なキャリアとしては、キャリア芯材が樹脂により被覆されたものが挙げられる。キャリア芯材の具体例としては、鉄、酸化処理鉄、還元鉄、マグネタイト、銅、ケイ素鋼、フェライト、ニッケル、及びコバルトのような金属の粒子や、これらの材料と、マンガン、亜鉛、及びアルミニウムのような金属との合金の粒子、鉄−ニッケル合金、鉄−コバルト合金のような鉄合金の粒子、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、及びニオブ酸リチウムのようなセラミックスの粒子、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、及びロッシェル塩のような高誘電率物質の粒子、並びに樹脂中に上記磁性粒子を分散させた樹脂キャリアが挙げられる。
キャリア芯材を被覆する樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体、オレフィン系重合体(ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン)、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、アミノ樹脂が挙げられる。これらの樹脂は2種以上を組み合わせて使用できる。
キャリアの粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、電子顕微鏡を用いて測定される粒子径で、20μm以上120μm以下が好ましく、25μm以上80μm以下がより好ましい。
本発明の方法により製造されるトナーを2成分現像剤として用いる場合、2成分現像剤中のトナーの含有量は、2成分現像剤の質量に対して、3質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下が好ましい。2成分現像剤におけるトナーの含有量をこのような範囲とすることにより、形成画像の画像濃度を適度な水準に維持しやすく、現像装置からのトナー飛散の抑制によって画像形成装置内部のトナーによる汚染や転写紙のような被記録媒体へのトナーの付着を抑制できる。
〔静電荷像現像用トナーの製造方法〕
以上説明した、本発明の静電荷像現像用トナーは、結着樹脂を含む微粒子と、離型剤を含む微粒子と、を水性媒体中で凝集させて微粒子凝集体を形成するか、又は、結着樹脂と離型剤とを含む微粒子を水性媒体中で凝集させて微粒子凝集体を得、得られる微粒子凝集体を水性媒体中で加熱して、微粒子凝集体に含まれる成分を合一化させて形成される。つまり、本発明のトナーの製造方法は、以下の工程(I)及び(II):
(I)結着樹脂を含む微粒子と、離型剤を含む微粒子と、を水性媒体中で凝集させて微粒子凝集体を形成するか、又は結着樹脂と離型剤とを含む微粒子を水性媒体中で凝集させて微粒子凝集体を形成する、微粒子凝集体形成工程;及び
(II)微粒子凝集体を水性媒体中で加熱して、微粒子凝集体に含まれる成分を合一化させる、合一化工程、
を含む。
また、本発明のトナーの製造方法は、上記工程(I)及び(II)に加え、必要に応じ、以下の工程(III)〜(V)を含んでいてもよい。
工程(III):トナーを洗浄する、洗浄工程。
工程(IV):トナーを乾燥する、乾燥工程。
工程(V):トナー母粒子の表面に外添剤を付着させる、外添工程。
以下、工程(I)〜(V)について順に説明する。
(工程(I):微粒子凝集体形成工程)
工程(I)では、結着樹脂を含む微粒子と、離型剤を含む微粒子と、を水性媒体中で凝集させて微粒子凝集体を形成するか、又は、結着樹脂と離型剤とを含む微粒子、を水性媒体中で凝集させて微粒子凝集体を形成する。
微粒子凝集体を形成させる方法は、特に限定されず、従来知られる方法から適宜選択できる。結着樹脂を含む微粒子、離型剤を含む微粒子、及び結着樹脂と離型剤とを含む微粒子は、これらの成分又はこれらの成分を含む組成物が、所望のサイズに微粒子化された微粒子の水性媒体分散液として調製されるのが好ましい。また、微粒子を凝集させる際には、必要に応じて、前述の、結着樹脂を含む微粒子、離型剤を含む微粒子と共に、又は結着樹脂と離型剤とを含む微粒子と共に、着色剤の微粒子を用いることも好ましい。
以下、結着樹脂を含む微粒子の調製方法、離型剤を含む微粒子の調製方法、結着樹脂と離型剤とを含む微粒子の調製方法、着色剤の微粒子の調製方法、及び微粒子の凝集方法について順に説明する。
<結着樹脂を含む微粒子の調製方法>
以下、結着樹脂を含む微粒子を調製する方法の好適な例について説明する。結着樹脂を含む微粒子を調製する方法は、以下に説明する方法に限定されない。
まず、結着樹脂と、必要に応じ、着色剤、電荷制御剤、及び磁性粉のような成分とを、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)のような混合装置を用いて混合する。次いで、得られる混合物を、二軸押出機、三本ロール混練機、又は二本ロール混練機のような混練装置を用いて溶融混練して、結着樹脂組成物を得る。得られる結着樹脂組成物を冷却し、次いで、ターボミル、カッターミル、フェザーミル、ジェットミルのような粉砕装置を用いて、結着樹脂組成物を粗粉砕する。粗粉砕時点での結着樹脂組成物の粒子径は400μm程度が好ましい。なお、結着樹脂と上記任意の成分とを混練しない場合、結着樹脂を、粉砕装置を用いて粗粉砕して、粒子径400μm程度の結着樹脂の粗粉砕物を得ればよい。
結着樹脂組成物、又は結着樹脂の粗粉砕品を、水性媒体に分散している状態で、フローテスターで測定される結着樹脂の軟化点より10℃以上高い温度に加熱し、加熱された結着樹脂組成物の分散液に、ナノマイザー(吉田機械興業株式会製)や圧力吐出型分散機を用いて強い剪断力を与えることにより、結着樹脂を含む微粒子の水性媒体中の分散液が得られる。
分散液に強い剪断力を与える装置としては、NANO3000(株式会社美粒製)、ホモジナイザー(IKA社製)、マイクロフルダイザー(MFI社製)、ゴーリンホモジナイザー(マントンゴーリン社製)、及びクレアミックスWモーション(エム・テクニック株式会社製)のような装置が挙げられる。
水性媒体は、水を主成分とする液状の媒体であれば、本発明の目的を阻害しない範囲で特に制限されない。水性媒体に含まれる水は、上水、工業用水、蒸留水、及びイオン交換水のような種々の水から適宜選択できる。
本発明のトナーは、ポリエステル樹脂を含有する結着樹脂を含む。このため、ポリエステル樹脂に含まれる酸基を中和するために、結着樹脂を含む微粒子の水性媒体中に塩基性物質を含有させてもよい。塩基性物質は、ポリエステル樹脂に含まれる酸基を中和することができれば、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。好適な塩基性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムのようなアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウムのようなアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸水素カリウムのようなアルカリ金属炭酸水素塩、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、イソプロピルアミン、モノメタノールアミン、モルホリン、メトキシプロピルアミン、ピリジン、及びビニルピリジンのような含窒素有機塩基が挙げられる。これらの塩基性化合物は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
塩基性化合物の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下が好ましく、3質量部以上15質量部以下がより好ましい。
また、水性媒体は、本発明の目的を阻害しない範囲で、有機溶媒を含んでいてもよい。水性媒体が有機溶媒を含む場合の有機溶媒の量は、水性媒体の質量に対して、20質量%以下が好ましく、10質量%以下が好ましく、5質量%以下が好ましい。水性媒体が含んでいてもよい有機溶媒としては、メタノール、エタノールのようなアルコール類、テトラヒドフランのようなエーテル類、アセトンのようなケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチル−2−ピロリドンのような含窒素極性有機溶媒が挙げられる。
結着樹脂組成物又は結着樹脂に対する、水性媒体の使用量は、結着樹脂組成物又は結着樹脂の微粒子化が良好に進行する限り特に限定されない。結着樹脂に対する水性媒体の使用量は、微粒子の調製に用いる装置によっても異なるが、典型的には、結着樹脂の質量の、1質量倍以上12質量倍以下が好ましく、2質量倍以上10質量倍以下がより好ましい。
また、結着樹脂を含む微粒子の水性媒体分散液には、界面活性剤を含有させることができる。結着樹脂を含む微粒子の水性媒体分散液に、界面活性剤を含有させる場合、結着樹脂を含む微粒子を、水性媒体中で、安定して分散させることができる。
結着樹脂を含む微粒子の水性媒体分散液に含有させることができる界面活性剤は特に限定されず、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、及びノニオン系界面活性剤からなる群より適宜選択できる。アニオン系界面活性剤の例としては、硫酸エステル塩型活性剤、スルホン酸塩型活性剤、リン酸エステル塩型界面活性剤、及び石鹸が挙げられる。カチオン系界面活性剤の例としては、アミン塩型活性剤、及び4級アンモニウム塩型活性剤が挙げられる。ノニオン系界面活性剤の例としては、ポリエチレングリコール型活性剤、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物型活性剤、及びグリセリン、ソルビトール、ソルビタンのような多価アルコールの誘導体である多価アルコール型活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤の中では、アニオン系界面活性剤、及びノニオン系界面活性剤の少なくとも一方を用いるのが好ましい。これらの界面活性剤は、1種を用いても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
アニオン系界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩の中では、下記式(1)で表わされるものが好ましい。
R1−O−(CH2CH2O)p−SO3M・・・(1)
(式(1)中、R1はアルキル基であり、Mは1価のカチオンであり、pは1以上50以下の整数である。)
R1は、直鎖アルキル基でもよく、分岐鎖アルキル基でもよく、直鎖アルキル基が好ましい。また、R1は、不飽和結合を有していてもよい。R1の炭素原子数は、10以上20以下が好ましく、12以上18以下がより好ましい。pは1以上50以下の整数である。微粒子の粒子径を好適な範囲に制御しやすいことから、pは1以上30以下の整数が好ましく、2以上20以下の整数がより好ましい。Mは1価のカチオンである。微粒子の粒子径を好適な範囲に制御しやすいことから、Mはナトリウムイオン、カリウムイオン、又はアンモニウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、又はアンモニウムイオンがより好ましく、ナトリウムイオンが特に好ましい。
界面活性剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。典型的には、界面活性剤の使用量は、結着樹脂組成物又は結着樹脂の質量に対して、1質量%以上10質量%以下が好ましい。
結着樹脂を含む微粒子の分散液における、微粒子の体積平均粒子径(D50)は1μm以下が好ましく、0.1μm以上0.3μm以下がより好ましい。微粒子の体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定できる。
<離型剤を含む微粒子の調製方法>
以下、離型剤を含む微粒子を調製する方法の好適な例について説明する。離型剤を含む微粒子を調製する方法は、以下に説明する方法に限定されない。
まず、離型剤を予め400μm程度に粉砕し、離型剤の粉体を得る。離型剤の粉体を、界面活性剤を含む水性媒体中に添加してスラリーを調製する。次いで、得られるスラリーを離型剤の融点以上の温度に加熱する。加熱されたスラリーに、ナノマイザー(吉田機械興業株式会製)や圧力吐出型分散機を用いて強い剪断力を付与し、離型剤微粒子の水性分散液を調製する。
分散液に強い剪断力を与える装置としては、結着樹脂を含む微粒子の調製に用いる装置と同様の装置が挙げられる。また、離型剤を含む微粒子の調製に用いることができる、水性媒体、有機溶媒、界面活性剤は、結着樹脂を含む微粒子の調製に用いる水性媒体、有機溶媒、界面活性剤と同様のものを用いることができる。
離型剤を含む微粒子の分散液における、微粒子の体積平均粒子径(D50)は1μm以下が好ましく、0.1μm以上0.3μm以下がより好ましい。微粒子の体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定できる。
<結着樹脂と離型剤とを含む微粒子の調製方法>
以下、結着樹脂と離型剤とを含む微粒子を調製する方法の好適な例について説明する。結着樹脂と離型剤とを含む微粒子を調製する方法は、以下に説明する方法に限定されない。
まず、結着樹脂と、離型剤と、必要に応じ、着色剤、電荷制御剤、磁性粉のような成分とを、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)のような混合装置を用いて混合する。次いで、得られる混合物を、二軸押出機、三本ロール混練機、又は二本ロール混練機のような混練装置を用いて溶融混練して、結着樹脂組成物を得る。得られる結着樹脂組成物を冷却した後、ターボミル、カッターミル、フェザーミル、ジェットミルのような粉砕装置を用いて、結着樹脂組成物を粗粉砕する。粗粉砕時点での結着樹脂組成物の粒子径は400μm程度が好ましい。
結着樹脂組成物の粗粉砕品を、水性媒体に分散している状態で、フローテスターで測定される結着樹脂の軟化点より10℃以上高い温度に加熱し、加熱された結着樹脂組成物の分散液に、ナノマイザー(吉田機械興業株式会製)や圧力吐出型分散機によって強い剪断力を与えることにより、結着樹脂と離型剤とを含む微粒子の水性媒体中の分散液が得られる。
分散液に強い剪断力を与える装置としては、結着樹脂を含む微粒子の調製に用いる装置と同様の装置が挙げられる。また、結着樹脂と離型剤とを含む微粒子の調製に用いることができる、水性媒体、塩基性物質、有機溶媒、界面活性剤は、結着樹脂を含む微粒子の調製に用いる水性媒体、塩基性物質、有機溶媒、界面活性剤と同様のものを用いることができる。
結着樹脂と離型剤とを含む微粒子の分散液における、微粒子の体積平均粒子径(D50)は1μm以下が好ましく、0.1μm以上0.3μm以下がより好ましい。微粒子の体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定できる。
<着色剤の微粒子の調製方法>
以下、着色剤の微粒子を調製する方法の好適な例について説明する。着色剤の微粒子を調製する方法は、以下に説明する方法に限定されない。
界面活性剤を含む水性媒体中で、着色剤と、必要に応じて着色剤の分散剤のような成分とを、公知の分散機によって分散処理することによって、着色剤を含む微粒子が得られる。界面活性剤の種類は特に限定されず、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、及びノニオン系界面活性剤の何れも使用できる。界面活性剤の使用量は特に限定されないが、臨界ミセル濃度(CMC)以上であるのが好ましい。
分散液に強い剪断力を与える装置としては、結着樹脂を含む微粒子の調製に用いる装置と同様の装置が挙げられる。また、着色剤の微粒子の調製に用いることができる、水性媒体、有機溶媒、界面活性剤は、結着樹脂を含む微粒子の調製に用いる水性媒体、有機溶媒、界面活性剤と同様のものを用いることができる。
着色剤の微粒子の体積平均粒子径(D50)は0.05μm以上0.2μm以下であることが好ましい。
<微粒子の凝集方法>
以上説明したような方法により調製される種々の微粒子を用いて、結着樹脂を含む微粒子と、離型剤を含む微粒子とを含む微粒子の水性媒体分散液か、又は、結着樹脂と離型剤とを含む微粒子の水性媒体分散液を調製した後、微粒子の水性媒体分散液に含まれる微粒子を凝集させて、微粒子凝集体を形成させる。なお、上記の水性媒体分散液は、必要に応じ、さらに着色剤の微粒子を含んでいてもよい。
微粒子を凝集させる方法は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に制限されない。微粒子を凝集させる好適な方法としては、水性媒体中の微粒子の分散液に、凝集剤を添加する方法が挙げられる。
凝集剤の例としては、無機金属塩、無機アンモニウム塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。無機金属塩としては、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムのような金属塩、及びポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウムのような無機金属塩重合体が挙げられる。無機アンモニウム塩としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムが挙げられる。また、4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、ポリエチレンイミンも凝集剤として使用できる。
凝集剤としては、2価の金属の塩、及び1価の金属の塩が好ましく用いられる。2価の金属の塩と1価の金属の塩とは併用されるのが好ましい。2価の金属の塩を用いる場合の微粒子の凝集速度に対して、1価の金属の塩を用いる場合の微粒子の凝集速度は遅い。このため、凝集剤として2価の金属の塩を添加した後に、1価の金属の塩を添加することにより微粒子の凝集速度を調整することができる。このように、2価の金属の塩と1価の金属の塩とでは、微粒子の凝集速度が異なるため、これらを併用することにより、得られる微粒子凝集体の粒子径を制御しつつ、微粒子凝集体の粒度分布をシャープなものとしやすい。
凝集剤の添加量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、微粒子分散液の固形分に対して、0.1mmol/g以上10mmol/g以下が好ましい。また、凝集剤の添加量は、微粒子分散液中に含まれる界面活性剤の種類、及び量に応じて、適宜調整するのが好ましい。
本発明のトナーはポリエステル樹脂を含有する結着樹脂を含むため、凝集剤の添加は、微粒子分散液のpHをアルカリ側、好ましくはpH10以上に調整した後に、凝集剤を添加するのがよい。これにより均一な粒子径の微粒子の凝集体を得ることができ、微粒子凝集体の粒子径分布をシャープにすることができる。凝集剤は一時に添加してもよく、逐次的に添加することもできる。
微粒子凝集体が所望の粒子径となるまで凝集が進行した後には、凝集停止剤を添加するのが好ましい。凝集停止剤の例としては、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウムが挙げられる。このようにして微粒子凝集体を得ることができる。
(工程(II):合一化工程)
合一化工程では、工程(I)で得られる微粒子凝集体を水性媒体中で加熱して、微粒子凝集体に含まれる成分を合一化させて、トナー粒子を形成する。また、合一化工程では、微粒子凝集体を加熱することにより、微粒子凝集体の形状が次第に球形に近づいていく。温度上昇により結着樹脂の溶融粘度が低下し、表面張力によって球形化の方向に微粒子凝集体の形状変化が起こるためである。加熱時の温度と時間を制御することで、得られるトナー粒子の球形化度を所望の値に制御可能である。
合一化工程で、微粒子凝集体を加熱する温度は、微粒子凝集体に含まれる成分の合一化が良好に進行する限り特に限定されない。微粒子凝集体を加熱する温度は、結着樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも10℃以上高く、結着樹脂の融点(Tm)よりも低い温度が好ましい。凝集粒子をこのような範囲の温度に加熱することによって、凝集粒子に含まれる成分の合一化を良好に進行させることができ、好適な球形化度のトナーを調製しやすい。
(工程(III):洗浄工程)
トナー粒子は、必要に応じて、水により洗浄される。洗浄方法は特に限定されず、例えば、トナー粒子を含む水性媒体分散液から、固液分離によりトナー粒子をウエットケーキとして回収し、得られるウエットケーキを水により洗浄する方法や、トナー粒子を含む水性媒体分散液中のトナー粒子を沈降させ、上澄み液を水と置換し、置換後にトナー粒子を水に再分散させる方法が挙げられる。
(工程(IV):乾燥工程)
トナー粒子は、必要に応じて乾燥されてもよい。トナー粒子を乾燥する方法は特に限定されない。好適な乾燥方法としては、スプレードライヤー、流動層乾燥機、真空凍結乾燥器、及び減圧乾燥機のような乾燥機を用いる方法が挙げられる。これらの方法の中では、乾燥中のトナー粒子の凝集を抑制しやすいことからスプレードライヤーを用いる方法がより好ましい。スプレードライヤーを用いる場合、トナー粒子の分散液と共に、シリカのような外添剤の分散液を噴霧することによって、トナー粒子の表面に外添剤を付着させることができる。
(工程(V):外添工程)
本発明の静電荷像現像用トナーは、必要に応じてその表面に外添剤が付着したものであってもよい。工程(I)及び(II)と、工程(III)及び/又は工程(IV)とを、組み合わせて得られるトナー母粒子の表面に、外添剤を付着させる。外添剤をトナー母粒子の表面に付着させる方法は特に限定されない。好適な方法としては、外添剤がトナー母粒子表面に埋没しないように条件を調整して、ヘンシェルミキサーやナウターミキサーのような混合機を用いて、トナー母粒子と外添剤とを混合する方法が挙げられる。
以上説明した、本発明の静電荷像現像用トナーは、幅広い温度で、オフセットを発生させることなく被記録媒体に良好に定着される。このため、本発明の静電荷像現像用トナーは、種々の画像形成装置において、好適に使用される。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
結着樹脂として、下表1に示すポリエステル樹脂a〜jを用いた。ポリエステル樹脂の軟化点は、高化式フローテスター(CFT−500D(株式会社島津製作所製))を用いて測定した。ポリエステル樹脂の質量平均分子量(Mw)は、上述したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定方法により測定した。
[調製例1]
〔着色剤微粒子分散液の調製〕
シアン着色剤(銅フタロシアニン、C.I.Pigment Blue 15:3)10質量部と、アニオン性界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)2質量部と、イオン交換水88質量部とを羽根つきの撹拌装置(RW20 digital(IKA社製))に投入し、500rpm、30分間分散処理を行い、固形分濃度10質量%の着色剤微粒子分散液を調製した。
[調製例2]
〔離型剤微粒子分散液の調製〕
離型剤(WEP−3(日油株式会社製))を、ターボミル(ターボ工業株式会社製)を用いて粗粉砕して平均粒子径400μm程度の粗粉砕物を得た。得られた離型剤の粗粉砕物10質量部と、アニオン性界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)2質量部と、イオン交換水88質量部とを羽根つきの撹拌装置(RW20 digital(IKA社製))を用いて混合してスラリーを調製した。得られたスラリーを、ナノマイザー(NV−200(吉田機械興業株式会社製)、加熱システムを追加)を用いて、加熱システム温度160℃、処理圧力100MPaの条件下で、処理を3回繰り返してスラリーの剪断分散を行い、固形分濃度10質量%の離型剤微粒子分散液を得た。
[実施例1〜4、及び比較例1〜6]
〔ポリエステル樹脂微粒子分散液の調製〕
表2、及び表3に記載の種類のポリエステル樹脂を、ターボミル(ターボ工業株式会社製)を用いて粗粉砕して得た平均粒子径400μm程度の粗粉砕物10質量部と、アニオン性界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)2質量部と、トリエチルアミン4質量部と、イオン交換水84質量部とを羽根つきの撹拌装置(RW20 digital(IKA社製))を用いて混合してスラリーを調製した。得られたスラリーを、ナノマイザー(NV−200(吉田機械興業株式会社製)、加熱システムを追加)を用いて、加熱システム温度160℃、処理圧力100MPaの条件下で、処理を3回繰り返してスラリーの剪断分散を行い、固形分濃度10質量%のポリエステル樹脂微粒子分散液を得た。
〔工程(I):微粒子凝集体形成工程〕
温度計及び撹拌羽根を備えたフラスコに、ポリエステル樹脂微粒子85質量部を含むポリエステル樹脂微粒子分散液と、着色剤微粒子5質量部を含む、調製例1で得た着色剤微粒子分散液と、離型剤微粒子10質量部を含む、調製例2で得た離型剤微粒子分散液とを投入した。フラスコの内容物を、撹拌羽根を用いて、回転数200rpmで撹拌しながら、濃度50質量%の塩化マグネシウム六水和物水溶液(凝集剤)3.8質量部をフラスコ内に滴下した。引き続き、フラスコの内容物を撹拌しながら、ウォーターバスを用いて、フラスコ内温を、昇温速度0.1℃/分の速度で上げて、微粒子の凝集を開始させた。フラスコ内温を60℃まで上げた後、昇温を停止し、撹拌羽根の回転数を350rpmに変えた。次いで、濃度20質量%の塩化ナトリウム水溶液23質量部をフラスコ内に加えて、微粒子の凝集の進行を停止させ、微粒子凝集体の水性媒体分散液を得た。
〔工程(II):合一化工程〕
微粒子凝集体の水性媒体分散液を得た後、分散液を、撹拌羽根を用いて回転数350rpmで撹拌しながら、フラスコ内温を表2、及び3に記載の合一化温度(微粒子凝集体の調製に用いたポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)+10℃)まで上げた。フラスコ内温を合一化温度まで上げた後、同温度で微粒子凝集体の水性分散液を2時間撹拌することにより、微粒子凝集体に含まれるトナー成分を合一化させると共に、微粒子凝集体の形状を球状に制御した。その後、フラスコの内容物を、常温まで冷却して、トナー母粒子の水性媒体分散液を得た。
〔工程(III):洗浄工程〕
トナー母粒子の水性媒体分散液から、吸引ろ過により、トナー母粒子のウエットケーキをろ取した。次いで、ウエットケーキを再度イオン交換水に分散させてトナー母粒子を洗浄した。トナー母粒子10質量部をイオン交換水100質量部に分散させた時の、分散液の電気伝導率が5.0μS/cm以下になるまで、トナー母粒子のイオン交換水による同様の洗浄を繰り返した。分散液の電気伝導率が5.0μS/cm以下になった後、吸引ろ過により回収したトナー母粒子のウエットケーキを、次工程で乾燥させた。なお、分散液の電気伝導率の測定は、電気伝導率計(ES−51(株式会社堀場製作所製))を用いた。
〔工程(IV):乾燥工程〕
トナー母粒子のウエットケーキを、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させてスラリーを調製した。得られたスラリーを連続式表面改質装置(コートマイザー(フロイント産業株式会社製))に供給することにより、スラリー中のトナー母粒子を乾燥させて、トナー母粒子を得た。コートマイザーによる乾燥条件は、熱風温度45℃、ブロアー風量2m3/分であった。
〔工程(V):外添工程〕
工程(I)〜(IV)の方法に従って得られたトナー母粒子100質量部と、シリカ(RA−200HS(日本アエロジル株式会社製))0.5質量部とを、ヘンシェルミキサー(三井三池工業株式会社製)を用いて、回転速度3000m/sで、10分間混合してトナー母粒子に外添剤を付着させた。
≪評価≫
実施例1〜4、及び比較例1〜6で得られたトナーの定着性を、以下の方法に従って評価した。評価結果を表2に記す。なお、トナーの定着性は、以下の調製例3に従って調製された2成分現像剤を用いて評価した。
[調製例3]
〔2成分現像剤の調製〕
2成分現像剤中のトナーの含有量が10質量%となるように、トナーと、京セラドキュメントソリューションズ株式会社製のMFP(TASKalfa250ci)用の現像剤に用いられているキャリアと、をボールミルにて30分間混合し、2成分現像剤を得た。
<定着性の評価方法>
MFP(TASKalfa250ci(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製)の改造機(定着装置を取り外したもの))を評価機として用いた。当該評価機のシアン用現像装置に作成した2成分現像剤を充填し、さらに評価機のシアン用トナーコンテナに作成したトナーを充填した。そして、当該評価機を用いて被記録媒体に未定着のシアン色のベタ画像を形成させた。その後、評価用定着装置(定着温度を調節でき、さらに独立駆動が可能なように改造されたプリンター(LS−3140MFP(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製))用の定着装置)を用いて、基準の定着温度170℃で、ベタ画像を被記録媒体に定着させた。その後、基準の定着温度から40℃下げたとき、20℃下げたとき、20℃上げたとき、及び40℃上げたときのそれぞれの温度で、ベタ画像を被記録媒体に形成した。被記録媒体として、C2(ゼロックス社製)を用いた。
そして、以下の(1)〜(4):
(1)基準の定着温度−40℃、
(2)基準の定着温度−20℃、
(3)基準の定着温度+20℃、及び
(4)基準の定着温度+40℃
の定着温度で定着を行なった場合のトナーの定着性を、定着温度毎に、下記基準により評価し、何れの温度でも合格の評価である場合、定着性の総合評価を合格(○)とした。
(各定着温度での定着性評価基準)
○:オフセットがなくトナーが良好に被記録媒体に定着された。
×:オフセットが発生した。
実施例1〜4によれば、結着樹の微粒子と、離型剤の微粒子と、着色剤の微粒子とを、所定の方法により凝集させて得られた微粒子凝集体を得、得られた微粒子凝集体に含まれる成分を加熱により合一化させて形成される静電荷像現像用トナーを形成する際に、エステル基濃度、軟化点、及び質量平均分子量がそれぞれ所定の範囲内であるポリエステル樹脂を含む結着樹脂を用いることにより、幅広い温度で、オフセットを発生させることなく被記録媒体に良好に定着できるトナーが得られることが分かる。
比較例1、2、4、及び6によれば、(i)ポリエステル樹脂中のエステル基濃度が所定の範囲外である場合、ポリエステル樹脂の(ii)軟化点が100℃超である場合、又はポリエステル樹脂の(iii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される質量平均分子量が16,000超である場合、低温で良好に定着されるトナーを得にくいことが分かる。
比較例3、及び5によれば、ポリエステル樹脂の(ii)軟化点が75℃未満である場合、又はポリエステル樹脂の(iii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される質量平均分子量(Mw)が3,000未満である場合、高温で良好に定着されるトナーを得にくいことが分かる。