以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
本発明は、以下の工程(I)、及び(II)を含む、少なくとも、結着樹脂、着色剤、及び離型剤を含む静電潜像現像用トナー(以下トナーともいう)の製造方法に関する。
(I)少なくとも、結着樹脂、着色剤、及び離型剤から選択される1種以上の成分を含む1種以上の微粒子を水性媒体中で凝集させて、結着樹脂、着色剤、及び離型剤を含む微粒子凝集体の水性媒体分散液を得る凝集工程、及び
(II)前記微粒子凝集体の水性媒体分散液に、水溶性セルロースエーテルを添加した後に、前記微粒子凝集体の水性媒体分散液を加熱処理する工程。
以下、本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法において使用されるトナー材料、及び静電潜像現像用トナーの製造方法について順に説明する。
≪トナー材料≫
本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法により得られるトナーは、結着樹脂と、着色剤と、離型剤とを必須に含み、必要に応じ、電荷制御剤、磁性粉等を含んでいてもよい。また、本発明のトナーの製造方法により得られるトナーは、必要に応じ、その表面に外添剤が付されたものであってもよい。また、本発明のトナーの製造方法により得られるトナーは、所望のキャリアと混合して2成分現像剤として使用することもできる。以下、トナーの製造に用いる、必須、又は任意の材料である、結着樹脂、着色剤、離型剤、電荷制御剤、磁性粉と、外添剤と、トナーを2成分現像剤として用いる場合に使用するキャリアとについて順に説明する。
[結着樹脂]
結着樹脂は、後述の工程(I)での微粒子の凝集、及び工程(II)での微粒子凝集体の合一化によるトナーの形状制御が良好に進行する限り特に制限されず、従来からトナー用の結着樹脂として用いられている樹脂から適宜選択される。結着樹脂の具体例としては、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
また、結着樹脂としては、工程(I)での微粒子の凝集性から、分子鎖の一部(末端、側鎖等)に、カルボキシル基、又はスルホン酸基等の酸性基を有する樹脂が好ましい。上記の樹脂の中で、かかる酸性基を有するものとしては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系樹脂、及びポリエステル樹脂が挙げられる。これらの酸性基を有する樹脂の中では、融点やガラス転移点の調整が容易であり、低温定着性に優れたトナーを調製しやすいことや、トナー中で着色剤が良好に分散しやすいことから、ポリエステル樹脂が好ましい。
結着樹脂が酸性基を有する樹脂である場合、結着樹脂の酸価は、5〜40mgKOH/gが好ましい。酸価が低すぎる場合、後述の工程(I)の処方によっては、微粒子の凝集が良好に進行しにくく、酸価が高すぎる場合、高湿条件下で、湿度の影響によってトナーの種々の性能が損なわれやすくなる。
以下、酸性基を有する樹脂について、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系樹脂、及びポリエステル樹脂について順に説明する。
〔(メタ)アクリル系樹脂〕
(メタ)アクリル系樹脂は、少なくとも(メタ)アクリル系モノマーを含むモノマーを共重合して得られる樹脂である。(メタ)アクリル系樹脂に含まれる、(メタ)アクリル系モノマーに由来する単位の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%であるのが最も好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂の調製に使用される(メタ)アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、及びプロピル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N−アリール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、及びN,N−ジアリール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド化合物が挙げられる。また、(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸に由来する単位に含まれるカルボキシル基を酸性基として含むのが好ましい。この場合、(メタ)アクリル系樹脂を調製する際に(メタ)アクリル酸の使用量を増減させることによって、(メタ)アクリル系樹脂の酸価を調整できる。
(メタ)アクリル系樹脂が、(メタ)アクリル系モノマー以外の他のモノマーを共重合した樹脂である場合、他のモノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、及びオクテン−1等のオレフィン類;酢酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、及び乳酸アリル等のアリルエステル類;ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロルフェニルエーテル、ビニル−2,4−ジクロルフェニルエーテル、及びビニルナフチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルジエチルアセテート、ビニルクロルアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルフエニルアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロル安息香酸ビニル、及びナフトエ酸ビニル等のビニルエステルが挙げられる。
〔スチレン−(メタ)アクリル系樹脂〕
スチレン−(メタ)アクリル系樹脂は、少なくともスチレン系モノマーと、(メタ)アクリル系モノマーとを含むモノマーを共重合して得られる樹脂である。スチレン−(メタ)アクリル系樹脂に含まれる、スチレン系モノマーに由来する単位と(メタ)アクリル系モノマーとに由来する単位の含有量の合計は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%であるのが最も好ましい。
スチレン−(メタ)アクリル系樹脂の調製に使用される、スチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、及びp−クロロスチレン等が挙げられる。
スチレン−(メタ)アクリル系樹脂の調製に使用される(メタ)アクリル系モノマーは、(メタ)アクリル系樹脂の調製に使用される(メタ)アクリル系モノマーと同様である。
また、スチレン−(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸に由来する単位に含まれるカルボキシル基を酸性基として含むのが好ましい。この場合、スチレン−(メタ)アクリル系樹脂の調製する際に(メタ)アクリル酸の使用量を増減させることによって、スチレン−(メタ)アクリル系樹脂の酸価を調整できる。
スチレン−(メタ)アクリル系樹脂が、スチレン系モノマー、及び(メタ)アクリル系モノマー以外の他のモノマーを共重合した樹脂である場合、他のモノマーの例は、(メタ)アクリル系樹脂での、(メタ)アクリル系モノマー以外の他のモノマーと同様である。
〔ポリエステル樹脂〕
ポリエステル樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合や共縮重合によって得られるものを使用できる。ポリエステル樹脂を合成する際に用いられる成分としては、以下のアルコール成分やカルボン酸成分が挙げられる。
2価又は3価以上のアルコール成分の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノール類;ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の3価以上のアルコール類が挙げられる。
2価又は3価以上のカルボン酸成分の具体例としては、
マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、1,10−デカンジカルボン酸、マロン酸、あるいはn−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等のアルキル又はアルケニルコハク酸等の2価カルボン酸;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等の3価以上のカルボン酸等が挙げられる。これらの2価又は3価以上のカルボン酸成分は、酸ハライド、酸無水物、低級アルキルエステル等のエステル形成性の誘導体として用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1から6のアルキル基を意味する。
ポリエステル樹脂の酸価は、ポリエステル樹脂の合成に使用されるアルコール成分が有する水酸基と、カルボン酸成分が有するカルボキシル基との、官能基のバランスを調整することによって調整できる。
以上、結着樹脂として使用されるポリエステル樹脂について説明したが、本発明のトナーでは、低温定着性に優れるトナーを得やすいことから、結晶性ポリエステル樹脂と非晶質ポリエステル樹脂とを混合して用いるのが好ましい。この場合、結晶性ポリエステル樹脂と非晶質ポリエステル樹脂との質量比(結晶性ポリエステル樹脂:非晶質ポリエステル樹脂)は5:95〜50:50が好ましい。以下、結晶性ポリエステル樹脂と非晶質ポリエステル樹脂について説明する。
(結晶性ポリエステル樹脂)
結晶性ポリエステル樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合や共縮重合によって得られるものを使用できる。ポリエステル樹脂を合成する際に用いられる成分としては、上記のアルコール成分やカルボン酸成分を使用できる。本出願の明細書、及び特許請求の範囲において、結晶性ポリエステル樹脂は結晶性指数が0.90以上1.20未満、好ましくは0.98〜1.05であるポリエステル樹脂である。ポリエステル樹脂の結晶性指数は、単量体であるアルコール成分やカルボン酸成分の、種類、及び使用量を適宜調整することにより、調整できる。結晶性ポリエステル樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を組合わせて使用してもよい。
結晶性ポリエステル樹脂の結晶性指数は、結晶性ポリエステル樹脂の軟化点と融解熱の最大ピーク温度との比(軟化点/融解熱の最大ピーク温度)により求めることができる。結晶性ポリエステルの軟化点は後述するフローテスターによって測定され、融解熱の最大ピーク温度は上述する示差走査熱量計(DSC)によって測定される。
アルコール成分としては2価又は3価以上のアルコールを使用できる。2価又は3価以上のアルコール成分の具体例としては、ポリエステル樹脂を合成する際に用いられる前述のアルコール成分と同じものを用いることができるが、ポリエステル樹脂の結晶化を促進しやすいことから、炭素原子数2〜8の脂肪族ジオールが好ましい。脂肪族ジオールの中では、ポリエステルの結晶化をより促進しやすいことから炭素原子数2〜8のα,ω−アルカンジオールがより好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂を得るためには、アルコール成分中の炭素原子数2〜8の脂肪族ジオールが80モル%以上であるのが好ましく、90モル%以上であるのがより好ましい。また、結晶性ポリエステルを得るためには、アルコール成分に最も多量に含まれる成分(単一の化合物)の含有量が70モル%以上であるのが好ましく、90モル%以上であるのがより好ましく、100モル%であるのが最も好ましい。
カルボン酸成分としては2価又は3価以上のカルボン酸を使用できる。2価又は3価以上のカルボン酸成分の具体例としては、ポリエステル樹脂を合成する際に用いられるカルボン酸成分と同じものを用いることができるが、ポリエステルの結晶化を促進しやすいことから、炭素原子数2〜16の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、炭素原子数2〜16のα,ω−アルカンジカルボン酸がより好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂を得るためには、カルボン酸成分中の炭素原子数2〜16の脂肪族ジカルボン酸が70モル%以上であるのが好ましく、90モル%以上であるのがより好ましい。また、結晶性ポリエステル樹脂を得るためには、カルボン成分に最も多量に含まれる成分(単一の化合物)の含有量が70モル%以上であるのが好ましく、90モル%以上であるのがより好ましく、100モル%であるのが最も好ましい。
(非晶質ポリエステル樹脂)
非晶質ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂と、同様の単量体、及び方法により製造することができる。本出願の明細書、及び特許請求の範囲において、非晶質ポリエステル樹脂は結晶性指数が1.20以上、好ましくは1.50〜3.00となるようなポリエステル樹脂である。ポリエステル樹脂の結晶性指数は、単量体であるアルコール成分やカルボン酸成分の、種類、及び使用量を適宜調整することにより調整できる。
非晶質ポリエステル樹脂を調製する場合、得られるポリエステル樹脂の結晶化を抑制する必要がある。ポリエステル樹脂の結晶化の抑制方法は特に限定されないが、好適な結晶化抑制方法として、例えば、以下の1)〜3)の方法が挙げられる。
1)結晶化を促進するアルコール成分、及びカルボン酸成分を少量しか使用しないか、使用しない方法。
2)アルコール成分、及びカルボン酸成分として、それぞれ2種以上の化合物を使用する方法。
3)ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物や、アルキル置換コハク酸等を使用して結晶化を抑制する方法。
上述した結晶化抑制方法の中では、単量体の種類が少なく非晶質ポリエステル樹脂の調製が容易であることから、3)の方法がより好ましい。3)の方法では、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、及びアルキル置換コハク酸の使用量を増やすほど結晶化を抑制しやすいが、これらの単量体の使用量は、得られるポリエステルの結晶化度と、他の物性とを考慮して適宜調整される。
非晶質ポリエステル樹脂は単独で使用してもよく、2種以上を組合わせて使用してもよい。
以上説明した結着樹脂としては、定着性が良好であることから熱可塑性樹脂を用いることが好ましいが、熱可塑性樹脂単独で使用するだけでなく、熱可塑性樹脂に架橋剤や熱硬化性樹脂を添加することができる。結着樹脂内に一部架橋構造を導入することにより、定着性を低下させることなく、トナーの保存安定性、形態保持性、耐久性等を向上させることができる。
熱可塑性樹脂と共に使用できる熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂やシアネート系樹脂が好ましい。好適な熱硬化性樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリアルキレンエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、シアネート樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、2種以上を組合わせて使用できる。
結着樹脂について、軟化点は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。典型的には、結着樹脂の軟化点は、80〜140℃が好ましく、90〜120℃がより好ましい。結着樹脂の軟化点が高すぎる場合、トナーを低温で良好に定着しにくくなる場合がある。結着樹脂の軟化点が低すぎる場合、高温での保存時にトナーが凝集してしまう場合が有り、トナーの耐熱保存性が損なわれる場合がある。結着樹脂の軟化点は、以下の方法に従って測定することができる。
<軟化点測定方法>
高化式フローテスター(CFT−500D(株式会社島津製作所製))により結着樹脂(トナー)の軟化点の測定を行う。トナー1.5gを試料として用い、高さが1.0mmで直径1.0mmのダイを使用し、昇温速度4℃/min、予熱時間300秒、荷重5kg、測定温度範囲60〜200℃の条件で測定を行う。フローテスターの測定により得られた、温度(℃)とストローク(mm)とに関するS字カーブより、軟化点を読み取る。
軟化点の読み取り方を、図1により説明する。ストロークの最大値をS1とし、低温側のベースラインのストローク値をS2とする。S字カーブにおいて、ストロークの値が(S1+S2)/2となる温度を、測定試料の軟化点とする。
結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。典型的には、結着樹脂のTgは、50〜70℃が好ましい。結着樹脂のTgが低すぎる場合、トナー粒子全体の強度が低下しやすく、高温多湿環境下でトナー粒子の凝集が生じる場合がある。結着樹脂のTgが高すぎる場合、トナーを低温で良好に定着しにくくなる場合がある。
結着樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、比熱の変化点から求めることができる。より具体的には、測定装置としてセイコーインスツルメンツ株式会社製示差走査熱量計DSC−6200を用い、吸熱曲線を測定することで求めることができる。測定試料10mgをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを使用し、測定温度範囲25〜200℃、昇温速度10℃/minで常温常湿下にて測定して得られた吸熱曲線よりガラス転移点を求めることができる。
結着樹脂の数平均分子量(Mn)は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。典型的には、結着樹脂の数平均分子量(Mn)は、3000〜20000が好ましく、5000〜15000がより好ましい。また、数平均分子量(Mn)と質量平均分子量(Mw)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、2〜10が好ましい。結着樹脂の分子量分布をかかる範囲とすることで、オフセットの発生を抑制しやすくなり、また、オフセットが生じない温度範囲の広いトナーを得やすくなる。結着樹脂の数平均分子量(Mn)と質量平均分子量(Mw)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
[着色剤]
静電潜像現像用トナーに含まれる着色剤は、トナー粒子の色に合わせて、公知の顔料や染料を用いることができる。トナーに添加することができる好適な着色剤の具体例としては以下の着色剤が挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤としてしては後述するイエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤等の着色剤を用いて黒色に調色された著悪食材も利用することができる。カラートナー用着色剤としては、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、シアン着色剤等が挙げられる。
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリルアミド化合物等が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、194;ネフトールイエローS、ハンザイエローG、及びC.I.バットイエロー等が挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物等が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、及び254等が挙げられる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物、銅フタロシアニン誘導体、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物等が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66等;フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、及びC.I.アシッドブルー等が挙げられる。
着色剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的には、結着樹脂100質量部に対して、1〜30質量部が好ましい。
[離型剤]
静電潜像現像用トナーは、定着性や耐オフセット性を向上させる目的で、離型剤を含む。離型剤の種類は、従来からトナー用の離型剤として使用されているものであれば特に限定されない。
好適な離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、及びフィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックス、及び酸化ポリエチレンワックスのブロック共重合体等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、及びライスワックス等の植物系ワックス;みつろう、ラノリン、及び鯨ろう等の動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、及びベトロラクタム等の鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス、及びカスターワックス等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックス等の脂肪酸エステルを一部、又は全部を脱酸化したワックスがあげられる。
好適に使用できる離型剤としては、さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、及びさらに長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸類等の飽和直鎖脂肪酸;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、及びバリナリン酸等の不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、及びさらに長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコール等の飽和アルコール;ソルビトール等の多価アルコール;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、及びラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、及びヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド類、m−キシレンビスステアリン酸アミド、及びN,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、及びステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩;脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸等のビニル系モノマーをグラフト化させたワックス;ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールとの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
離型剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的な離型剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、1〜20質量部が好ましく、5〜15質量がより好ましい。離型剤の使用量が過少である場合、形成画像におけるオフセットや像スミアリングの発生の抑制について所望の効果が得られない場合があり、離型剤の使用量が過多である場合、トナー同士の融着によって保存安定性が低下する場合がある。後述する本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法によれば、多量の離型剤を用いる場合であっても、トナー表面からの離型剤の脱落や、トナー内部からの離型剤の染み出しが抑制されるため、低温定着性と、耐熱保存性とが両立されたトナーを得やすい。
[電荷制御剤]
静電潜像現像用トナーは、必要に応じ、電荷制御剤を含んでいてもよい。電荷制御剤は、トナーの帯電レベルの安定性や、所定の帯電レベルに短時間でトナーを帯電可能か否かの指標となる帯電立ち上がり特性を向上させ、耐久性や安定性に優れたトナーを得る目的で使用される。トナーを正帯電させて現像を行う場合、正帯電性の電荷制御剤が使用され、トナーを負帯電させて現像を行う場合、負帯電性の電荷制御剤が使用される。
電荷制御剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来よりトナーに使用されている電荷制御剤から適宜選択できる。正帯電性の電荷制御剤の具体例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等のアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ−ンBH/C、アジンディ−プブラックEW、及びアジンディーブブラック3RL等のアジン化合物からなる直接染料;ニグロシン、ニグロシン塩、ニグロシン誘導体等のニグロシン化合物;ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZ等のニグロシン化合物からなる酸性染料;ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルメチルヘキシルデシルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの正帯電性の電荷制御剤の中では、より迅速な立ち上がり性が得られる点で、ニグロシン化合物が特に好ましい。これらの正帯電性の電荷制御剤は、2種以上を組合わせて使用できる。
4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、又はカルボキシル基を官能基として有する樹脂も正帯電性の電荷制御剤として使用できる。より具体的には、4級アンモニウム塩を有するスチレン系樹脂、4級アンモニウム塩を有するアクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するポリエステル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン系樹脂、カルボン酸塩を有するアクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するポリエステル系樹脂、カルボキシル基を有するスチレン系樹脂、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂、カルボキシル基を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボキシル基を有するポリエステル系樹脂等の1種又は2種以上が挙げられる。これらの樹脂の分子量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、オリゴマーであってもポリマーであってもよい。
正帯電性の電荷制御剤として使用できる樹脂の中では、帯電量を所望の範囲内の値に容易に調節することができる点から、4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系樹脂がより好ましい。4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系樹脂において、スチレン単位と共重合させる好ましいアクリル系コモノマーの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸iso−ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
また、4級アンモニウム塩としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノ(メタ)アクリルアミド、又はジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドから第4級化の工程を経て誘導される単位が用いられる。ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、ジアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としてはジメチルメタクリルアミドが挙げられ、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としては、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドが挙げられる。また、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基含有重合性モノマーを重合時に併用することもできる。
負帯電性の電荷制御剤の具体例としては、例えば、有機金属錯体、キレート化合物等が挙げられる。有機金属錯体、及びキレート化合物としては、アルミニウムアセチルアセトナートや鉄(II)アセチルアセトナート等のアセチルアセトン金属錯体、及び、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸クロム等のサリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩が好ましく、サリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩がより好ましい。これらの負帯電性の電荷制御剤は、2種以上を組合わせて使用できる。
正帯電性又は負帯電性の電荷制御剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。正帯電性又は負帯電性の電荷制御剤の使用量は、典型的には、トナー全量を100質量部とした場合に、1.5〜15質量部が好ましく、2.0〜8.0質量部がより好ましく、3.0〜7.0質量部が特に好ましい。電荷制御剤の使用量が過少である場合、所定の極性にトナーを安定して帯電させ難いため、形成画像の画像濃度が所望する値を下回ったり、画像濃度を長期にわたって維持することが困難になることがある。また、かかる場合、電荷制御剤が均一に分散し難く、形成画像にかぶりが生じやすくなったり、潜像担持部の汚染が起こりやすくなったりする。電荷制御剤の使用量が過多である場合、耐環境性の悪化による、高温高湿下での帯電不良に起因する形成画像における画像不良や、潜像担持部の汚染等が起こりやすくなる。
[磁性粉]
静電潜像現像用トナーには、所望により、磁性粉を配合することができる。磁性粉の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。好適な磁性粉の例としては、フェライト、マグネタイト等の鉄;コバルト、ニッケル等の強磁性金属;鉄、及び/又は強磁性金属を含む合金;鉄、及び/又は強磁性金属を含む化合物;熱処理等の強磁性化処理を施された強磁性合金;二酸化クロムが挙げられる。
磁性粉の粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されない。具体的な磁性粉の粒子径は、0.1〜1.0μmが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。かかる範囲の粒子径の磁性粉を用いる場合、結着樹脂中に磁性粉を均一に分散させやすい。
磁性粉は、トナー中での分散性を改良する目的等で、チタン系カップリング剤やシラン系カップリング剤等の表面処理剤により表面処理されたものを使用できる。
磁性粉の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的な磁性粉の使用量は、トナーを1成分現像剤として使用する場合、トナー全量を100質量部とした場合に、35〜60質量部が好ましく、40〜60質量部がより好ましい。磁性粉の使用量が過多である場合、画像濃度の耐久性が低下したり、定着性が極度に低下したりする場合があり、磁性粉の使用量が過少である場合、形成画像にカブリが発生しやすくなることにより画像濃度の耐久性が低下する場合がある。また、トナーを2成分現像剤として使用する場合、磁性粉の使用量は、トナー全量を100質量部とした場合に、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
[外添剤]
本発明の方法により得られる静電潜像現像用トナーは、所望によりその表面を外添剤により処理されていてもよい。外添剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来からトナー用に使用されている外添剤から適宜選択できる。好適な外添剤の具体例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の金属酸化物が挙げられる。これらの外添剤は、2種以上を組合わせて使用できる。また、これらの外添剤は、アミノシランカップリング剤やシリコーンオイル等の疎水化剤により疎水化して使用することもできる。疎水化された外添剤を用いる場合、高温高湿下でのトナーの帯電量の低下を抑制しやすく、流動性に優れるトナーを得やすい。
外添剤の粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、典型的には0.01〜1.0μmが好ましい。
外添剤の体積固有の抵抗値は、外添剤の表面に酸化スズ及び酸化アンチモンからなる被覆層を形成し、被覆層の厚さや、酸化スズと酸化アンチモンとの比率を変えることにより調整できる。
外添剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。外添剤の使用量は、典型的には、外添処理前のトナー粒子100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。
[キャリア]
本発明の方法により得られる静電潜像現像用トナーは、所望のキャリアと混合して2成分現像剤として使用することもできる。2成分現像剤を調製する場合、磁性キャリアを用いるのが好ましい。
静電潜像現像用トナーを2成分現像剤とする場合の好適なキャリアとしては、キャリア芯材が樹脂により被覆されたものが挙げられる。キャリア芯材の具体例としては、鉄、酸化処理鉄、還元鉄、マグネタイト、銅、ケイ素鋼、フェライト、ニッケル、コバルト等の粒子や、これらの材料とマンガン、亜鉛、アルミニウム等との合金の粒子、鉄−ニッケル合金、鉄−コバルト合金等の粒子、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、ニオブ酸リチウム等のセラミックスの粒子、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、ロッシェル塩等の高誘電率物質の粒子、樹脂中に上記磁性粒子を分散させた樹脂キャリア等が挙げられる。
キャリア芯材を被覆する樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体、オレフィン系重合体(ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等)、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、アミノ樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は2種以上を組合わせて使用できる。
キャリアの粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、電子顕微鏡により測定される粒子径で、20〜120μmが好ましく、25〜80μmがより好ましい。
本発明の静電潜像現像用トナーを2成分現像剤として用いる場合、トナーの含有量は、2成分現像剤の質量に対して、3〜20質量%が好ましく、5〜15質量%が好ましい。2成分現像剤におけるトナーの含有量をかかる範囲とすることにより、形成画像において適度な画像濃度を維持し、現像装置からのトナー飛散の抑制によって画像形成装置内部の汚染や転写紙等へのトナーの付着を抑制できる。
以上説明した材料を用いて、以下説明する方法によって、静電潜像現像用トナーが調製される。
≪静電潜像現像用トナーの製造方法≫
本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法は、以下の工程(I)、及び(II)を少なくとも含む。
(I)少なくとも、結着樹脂、着色剤、及び離型剤から選択される1種以上の成分を含む1種以上の微粒子を水性媒体中で凝集させて、結着樹脂、着色剤、及び離型剤を含む微粒子凝集体を含む微粒子凝集体の水性媒体分散液を得る凝集工程、及び
(II)微粒子凝集体の水性媒体分散液中に、水溶性セルロースエーテルを添加した後に、微粒子凝集体の水性媒体分散液を加熱して、形状制御されたトナーを得る、形状制御工程。
本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法は、かかる工程(I)、及び(II)を含むため、離型剤をトナーに多量に含有させた場合であっても、離型剤のトナーからの滲み出しや、離型剤のトナー表面からの脱離を抑制することができる。このため、本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法によれば、低温定着性、及び保存安定性、共に優れる静電潜像現像用トナーを製造できる。
また、本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法は、上記工程(I)、及び(II)に加え、必要に応じ、以下の工程(III)〜(V)を含んでいてもよい。
(III)形状制御されたトナーを洗浄する、洗浄工程。
(IV)形状制御されたトナーを乾燥する、乾燥工程。
(V)形状制御されたトナーの表面に外添剤を付着させる、外添工程。
以下、(I)〜(V)の工程について順に説明する。
[(I)凝集工程]
(I)凝集工程では、少なくとも、結着樹脂、着色剤、及び離型剤から選択される1種以上の成分を含む1種以上の微粒子を水性媒体中で凝集させる方法であれば、特に限定されない。以下、微粒子の調製、及び微粒子の凝集について順に説明する。
〔微粒子の調製〕
(I)凝集工程では、少なくとも、結着樹脂、着色剤、及び離型剤から選択される1種以上の成分を含む1種以上の微粒子を水性媒体中で凝集させる。凝集工程で用いる微粒子、又は微粒子の組合せは、特に限定されないが、例えば以下の(a)〜(h)が挙げられる。なお、以下記載の微粒子について、各微粒子は、含有成分として記載された、結着樹脂、着色剤、及び離型剤から選択される成分以外に、結着樹脂、着色剤、及び離型剤から選択される成分であって、含有成分として記載されていない成分を含まない。例えば、結着樹脂を含む微粒子は着色剤と離型剤とを含まず、結着樹脂と着色剤とを含む微粒子は、離型剤を含まない。
(a)結着樹脂と、着色剤と、離型剤とを少なくとも含む微粒子
(b)結着樹脂と着色剤とを含む微粒子と、離型剤を含む微粒子との組合せ
(c)着色剤を含む微粒子と、結着樹脂と離型剤とを含む微粒子との組合せ
(d)結着樹脂と着色剤とを含む微粒子と、結着樹脂と離型剤とを含む微粒子との組合せ
(e)結着樹脂を含む微粒子と、着色剤を含む微粒子と、離型剤を含む微粒子との組合せ
(f)結着樹脂を含む微粒子と、結着樹脂と着色剤とを含む微粒子と、離型剤を含む微粒子との組合せ
(g)結着樹脂を含む微粒子と、着色剤を含む微粒子と、結着樹脂と離型剤を含む微粒子との組合せ
(h)結着樹脂を含む微粒子と、結着樹脂と着色剤とを含む微粒子と、結着樹脂と離型剤を含む微粒子との組合せ
工程(I)で使用される、所定の成分を含む微粒子の調製方法は特に限定されない。通常、所定の成分を含む微粒子は、水性媒体中で、所定の成分を含む組成物が所望のサイズに微粒子化された、微粒子の水性媒体分散液として調製される。以下、微粒子に含まれる成分毎に、微粒子の調製方法を説明する。
(結着樹脂と着色剤とを含む微粒子の調製)
以下、結着樹脂と着色剤とを含む微粒子の調製方法について説明する。
まず、結着樹脂と、着色剤と、必要に応じ、電荷制御剤、磁性粉等の成分とを、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)等により混合する。次いで、得られる混合物を、二軸押出機、三本ロール混練機、又は二本ロール混練機等の混練装置により溶融混練して、着色樹脂組成物を得る。得られた着色樹脂組成物を冷却した後、カッターミル、フェザーミル、ジェットミル等の粉砕装置により、着色樹脂組成物を粗粉砕する。着色樹脂組成物の粗粉砕品を、水性媒体に分散させた状態で、フローテスターで測定される結着樹脂の軟化点より10℃以上高い温度に加熱し、加熱された着色樹脂組成物の分散液に、ホモジナイザーや圧力吐出型分散機によって強い剪断力を与えることにより、結着樹脂と着色剤とを含む微粒子の水性媒体中の分散液が得られる。
分散液に強い剪断力を与える装置としては、NANO3000(株式会社美粒製)、ナノマイザー(吉田機械興業株式会製)、マイクロフルダイザー(MFI社製)、ゴーリンホモジナイザー(マントンゴーリン社製)、及びクレアミックスWモーション(エム・テクニック株式会社製)等が挙げられる。
水性媒体は、水を主成分とする液状の媒体であれば、本発明の目的を阻害しない範囲で特に制限されない。水性媒体に含まれる水は、上水、工業用水、蒸留水、イオン交換水等から適宜選択できる。
また、水性媒体は、本発明の目的を阻害しない範囲で、有機溶媒を含んでいてもよい。水性媒体が有機溶媒を含む場合の溶媒の量は、水性媒体の質量に対して、20質量%以下が好ましく、10質量%以下が好ましく、5質量%以下が好ましい。水性媒体が含んでいてもよい有機溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール類、テトラヒドフラン等のエーテル類、アセトン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン含窒素極性有機溶媒等が挙げられる。
水性媒体には、界面活性剤を加えるのが好ましい。水性媒体に界面活性剤を加えることにより、着色樹脂組成物の微粒子化を良好に進行させ、分散安定性に優れる微粒子の分散液を得やすくなる。
着色樹脂組成物に対する、水性媒体の使用量は、着色樹脂組成物の微粒子化が良好に進行する限り特に限定されない。着色樹脂組成物に対する水性媒体の使用量は、微粒子の調製に用いる装置によっても異なるが、典型的には、着色樹脂組成物の質量の、1〜5質量倍が好ましく、2〜4質量倍がより好ましい。
水性媒体中での微粒子の調製に使用できる界面活性剤は特に限定されず、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、及びノニオン界面活性剤からなる群より適宜選択できる。アニオン系界面活性剤の例としては、硫酸エステル塩型活性剤、スルホン酸塩型活性剤、及び石鹸等が挙げられる。カチオン系界面活性剤の例としては、アミン塩型活性剤、及び4級アンモニウム塩型活性剤等が挙げられる。ノニオン界面活性剤の例としては、ポリエチレングリコール型活性剤、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物型活性剤、及び高アルコール型活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤の中では、アニオン系界面活性剤、及びノニオン界面活性剤の少なくとも一方を用いるのが好ましい。これらの界面活性剤は、1種を用いても、2種以上を組合わせて使用してもよい。
アニオン系界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩の中では、下記式(1)で表わされるものが好ましい。
R1−O−(CH2CH2O)p−SO3M・・・(1)
(式(1)中、R1はアルキル基であり、Mは1価のカチオンであり、pは1〜50の整数である。)
R1は、直鎖アルキル基でもよく、分岐鎖アルキル基でもよく、直鎖アルキル基が好ましい。また、R1は、不飽和結合を有していてもよい。R1の炭素原子数は、10〜20が好ましく、12〜18がより好ましい。pは1〜50の整数である。微粒子の粒子径を好適な範囲に制御しやすいことから、pは1〜30の整数が好ましく、2〜20の整数がより好ましい。Mは1価のカチオンである。微粒子の粒子径を好適な範囲に制御しやすいことから、Mはナトリウムイオン、カリウムイオン、又はアンモニウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、又はアンモニウムイオンがより好ましく、ナトリウムイオンが特に好ましい。
なお、上記のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩は、ノニオン界面活性剤と共に用いるのが好ましい。この場合に使用されるノニオン界面活性剤としては、着色樹脂組成物の微粒子化が良好に進行し、分散安定性に優れる微粒子の分散液を得やすいことから、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましく用いられる。
界面活性剤を用いる場合、水性媒体における界面活性剤の濃度は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。典型的には、水性媒体における界面活性剤の濃度は、0.5〜5.0質量%が好ましい。
結着樹脂が酸性基を有する樹脂である場合、結着樹脂をそのまま水性媒体中で微粒子化させることにより、結着樹脂の比表面積が増大するため、微粒子表面に露出した酸性基の影響により、水性媒体のpHが3〜4程度まで低下する場合がある。この場合、結着樹脂であるポリエステル樹脂の加水分解が生じたり、得られる微粒子の粒子径を所望の粒子径まで微粒子化しにくかったりする場合がある。
かかる問題を抑制するために、結着樹脂と着色剤とを含む微粒子を調製する際に、水性媒体中に塩基性物質を加えるのが好ましい。塩基性物質は、上記問題を抑制できるものであれば特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、イソプロピルアミン、モノメタノールアミン、モルホリン、メトキシプロピルアミン、ピリジン、ビニルピリジン等の含窒素有機塩基が挙げられる。
また、別法として、上記方法により調製された着色樹脂組成物を適当な溶剤に溶解させた後、着色樹脂組成物の溶液を、界面活性剤を添加した水性媒体中でホモジナイザー等を用いて分散乳化後、脱溶媒処理を行うことにより、水性媒体中の結着樹脂と着色剤とを含む微粒子の分散液を調製できる。
さらに、いわゆる転相乳化法と呼ばれる方法により、結着樹脂と着色剤とを含む微粒子を調製することも出来る。具体的には、以下の方法により、結着樹脂と着色剤とを含む微粒子が得られる。
まず、上記方法により得られる着色樹脂組成物を適当な溶剤に溶解させた後、得られた溶液に塩基性物質を添加して中和処理を行う。中和された溶液に水を添加して転相させた後、加熱撹拌しながら脱溶剤を行うことで、水性媒体中の結着樹脂と着色剤とを含む微粒子の分散液を調製できる。
上記方法により調製される、結着樹脂と着色剤とを含む微粒子の体積平均粒子径(D50)は、1μm以下が好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。体積平均粒子径(D50)をかかる範囲とすることにより、形状が均一で、粒子径分布のシャープな静電潜像現像用トナーを調製しやすい。そうすることにより、トナーの性能や生産性を安定化させることもできる。微粒子の体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定できる。
なお、結着樹脂と着色剤とを含む微粒子の調製方法について上記の通り説明したが、結着樹脂を含む微粒子、結着樹脂と離型剤とを含む微粒子、及び結着樹脂と着色剤と離型剤とを含む微粒子も、結着樹脂に配合する成分を変更することの他は、上記の方法と同様にして調製することができる。
(離型剤を含む微粒子の調製)
離型剤を予め100μm以下程度に粗粉砕しておく。離型剤の粗粉砕品を界面活性剤を含む水性媒体中に添加し、そのスラリーを離型剤の融点以上の温度に加熱する。加熱したスラリーに、ホモジナイザーや圧力吐出型分散機を用いて強い剪断力を付与し、離型剤を含む微粒子の分散液を調製する。
分散液に強い剪断力を与える装置としては、NANO3000(株式会社美粒製)、ナノマイザー(吉田機械興業株式会製)、マイクロフルダイザー(MFI社製)、ゴーリンホモジナイザー(マントンゴーリン社製)、及びクレアミックスWモーション(エム・テクニック株式会社製)等が挙げられる。
離型剤の融点は通常100℃以下の場合が多く、この場合は大気圧下で融点以上に加熱し、通常のホモジナイザーを用いて微粒子化が可能である。離型剤の融点が100℃を超える場合、耐圧型の装置を用いて微粒子化を行うことにより、離型剤の微粒子化が可能である。
離型剤を含む微粒子の分散液における、微粒子の体積平均粒子径(D50)は1μm以下が好ましく、0.1〜0.3μmがより好ましい。微粒子の体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定できる。
(着色剤を含む微粒子の調製)
界面活性剤を含む水性媒体中で、着色剤と、必要に応じて着色剤の分散剤等の成分とを、公知の分散機によって分散処理することによって、着色剤を含む微粒子が得られる。界面活性剤の種類は特に限定されず、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、及びノニオン界面活性剤の何れも使用できる。界面活性剤の使用量は特に限定されないが、臨界ミセル濃度(CMC)以上であるのが好ましい。
分散処理に使用する分散機は特に限定されず、例えば、超音波分散機、機械式ホモジナイザー、マントンゴーリン、及び圧力式ホモジナイザー等の加圧式分散機や、サンドグラインダー、ゲッツマンミル、ダイヤモンドファインミル等の媒体型分散機等を使用できる。
微粒子が着色剤を含む微粒子である場合、その体積平均粒子径(D50)は0.05〜0.2μmであることが好ましい。
(結着樹脂が付加重合型の樹脂である場合の、結着樹脂を含む微粒子の調製)
結着樹脂が(メタ)アクリル系樹脂、スチレン(メタ)アクリル系樹脂等の付加重合型の樹脂である場合、これらの樹脂を乳化重合法により調製することにより、結着樹脂を含む微粒子を、水性媒体中の分散液として調製することができる。
〔微粒子の凝集〕
上記方法により調製された微粒子は、トナーに所定の成分が含まれるように、適宜組合わせて、微粒子凝集体とされる。微粒子を凝集させる方法は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に制限されない。微粒子を凝集させる好適な方法としては、水性媒体中の微粒子の分散液に、凝集剤を添加する方法が挙げられる。
凝集剤の例としては、無機金属塩、無機アンモニウム塩、2価以上の金属錯体等が挙げられる。無機金属塩としては、例えば、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩、及びポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム等の無機金属塩重合体が挙げられる。無機アンモニウム塩としては、例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等が挙げられる。また、4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、ポリエチレンイミン等も凝集剤として使用できる。
凝集剤としては、2価の金属の塩、及び1価の金属の塩が好ましく用いられる。2価の金属の塩と1価の金属の塩とは併用されるのが好ましい。2価の金属の塩と1価の金属の塩とでは、微粒子の凝集速度が異なるため、これらを併用することにより、得られる微粒子凝集体の粒子径を制御しつつ、粒度分布をシャープなものとしやすい。
凝集剤の添加量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、微粒子分散液の固形分に対して、0.1〜10mmol/gが好ましい。また、凝集剤の添加量は、微粒子分散液中に含まれる界面活性剤の種類、及び量に応じて、適宜調整するのが好ましい。
凝集剤の添加は、微粒子分散液のpHを調整した後で、結着樹脂のガラス転移点以下の温度で行う。特に結着樹脂がポリエステル樹脂である場合に、微粒子分散液のpHをアルカリ側、好ましくはpH10以上に調整した後に、凝集剤を添加するのがよい。これにより均一な凝集を行うことができ、微粒子凝集体の粒子径分布をシャープにすることが出来る。凝集剤は一時に添加してもよく、逐次的に添加することもできる。
微粒子凝集体が所望の粒子径となるまで凝集が進行した後には、凝集停止剤を添加するのが好ましい。凝集停止剤の例としては、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。このようにして微粒子凝集体を得ることが出来る。
[(II)形状制御工程]
(II)形状制御工程では、(I)凝集工程により得られた微粒子凝集体の水性媒体中の分散液に対して、水溶性セルロースエーテルを添加した後に、分散液を加熱し、微粒子凝集体に含まれる成分を合一化し、得られるトナーの形状を制御する。
微粒子凝集体の分散液に、水溶性セルロースエーテルを添加することで、(II)形状制御工程での加熱処理時の、微粒子凝集体からの離型剤の脱落や、離型剤の染み出しを抑制できる。分子内に有する水酸基によって、水溶性セルロースエーテルが水分子を抱き込んだ状態で微粒子凝集体の表面に吸着し、立体障害効果によって、微粒子凝集体からの離型剤の脱離や、微粒子凝集体表面への離型剤の染み出しが抑制されるためと思われる。
また、水溶性セルロースエーテルは非イオン性であるため、微粒子凝集体の分散液に含まれる金属塩(イオン)や電解質の存在に関わらず比較的安定である。このため、水溶性セルロールエーテルを用いることにより、上記の効果を安定して得ることができる。
高分子系界面活性剤や高分子系ノニオン界面活性剤は、電解質の影響を受けやすく、また微粒子凝集体への吸着性や立体障害性が不十分である。このため、(II)形状制御工程において、これらの活性剤を水溶性セルロースエーテルの代わりに用いても、離型剤の脱落や染み出しの抑制に関して所望の効果を得にくい。
水溶性セルロースエーテルはセルロースの水酸基の水素原子の一部を2−ヒドロキシプロピル基(−CH2CHOHCH3)、メチル基(−CH3)、又は2−ヒドロキシエチル基(−CH2CH2OH)等で置換されており、このような置換基を有する水溶性セルロースエーテルを加熱すると、置換度の高い部分で、分子間に架橋点が形成されやすくなり、ゲル化しやすい。このため、(II)形状制御工程では、微粒子凝集体の表面に、水溶性セルロースエーテルが良好に付着しやすく、微粒子凝集体からの離型剤の脱落や染み出しを効果的に抑制でき、低融点の離型剤を使用しても、低温定着性と耐熱保存性が両立されたトナーを調製しやすい。
水溶性セルロースエーテルの中では、メトキシ基の置換度が1.4〜1.8であり、2−ヒドロキシプロポキシ基、又は2−ヒドロキシエトキシ基の置換モル数が0.2以上のヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はヒドロキシエチルメチルセルロースが好ましい。なお、メトキシ基の置換度とは、水溶性セルロースエーテルに含まれるグルコース環単位、1単位当たりに結合する、メトキシ基の平均個数を意味する。また、2−ヒドロキシプロポキシ基、又は2−ヒドロキシエトキシ基の置換モル数とは、水溶性セルロースエーテルに含まれるグルコース環単位、1モル当たりに結合する、2−ヒドロキシプロポキシ基、又は2−ヒドロキシエトキシ基の平均モル数を意味する。
水溶性セルロースエーテルの添加量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。典型的には、水溶性セルロースエーテルの添加量は、微粒子凝集体100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、0.5〜3質量部がより好ましい。
(II)形状制御工程において、微粒子凝集体の水性媒中の分散液を加熱する際の温度は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。典型的には、微粒子凝集体の水性媒中の分散液は、結着樹脂のガラス転移点以上、結着樹脂の融点以下に加熱されるのが好ましく、結着樹脂のガラス転移点+10℃以上、結着樹脂の融点以下に加熱されるのがより好ましい。微粒子凝集体の水性媒中の分散液をかかる範囲の温度に加熱することによって、微粒子凝集体に含まれる成分の合一化を良好に進行させることができ、好適な球形化度のトナーを調製しやすい。
微粒子凝集体の水性媒中の分散液を加熱することにより、微粒子凝集体の形状が次第に球形に近づいていく。加熱時の温度と時間を制御することで、粒子の球形化度を所望の値に制御することが可能である。温度上昇により結着樹脂の溶融粘度が低下し表面張力によって球形化の方向に形状変化が起こるためである。球形化度の好ましい範囲は、0.965〜0.985である。球形化度は、例えば、「FPIA3000」(シスメック株式会社製)により測定できる。このようにして所望の粒子径、形状のトナー粒子の分散液を得ることが出来る。
(II)形状制御工程により得られたトナー粒子は、任意の方法により、回収され、種々の画像形成装置においてトナーとして好適に使用される。
[(III)洗浄工程]
(II)形状制御工程で得られたトナー粒子は、必要に応じて、(III)洗浄工程にて、水により洗浄される。洗浄方法は特に限定されず、例えば、トナー粒子の分散液から、固液分離によりトナー粒子をウエットケーキとして回収し、得られたウエットケーキを水により洗浄する方法や、トナー粒子の分散液中のトナー粒子を沈降させ、上澄み液を水と置換し、置換後にトナー粒子を水に再分散させる方法等が挙げられる。
[(IV)乾燥工程]
(II)形状制御工程で得られたトナー粒子は、必要に応じて、(IV)乾燥工程において乾燥される。トナー粒子を乾燥する方法は特に限定されない。好適な乾燥方法としては、スプレードライヤー、流動層乾燥機、真空凍結乾燥器、減圧乾燥機等の乾燥機等を用いる方法が挙げられる。これらの方法の中では、乾燥中のトナー粒子の凝集を抑制しやすいことからスプレードライヤーを用いる方法がより好ましい。スプレードライヤーを用いる場合、トナー粒子の分散液と共に、シリカ等の外添剤の分散液を噴霧することによって、トナー粒子の表面に外添剤を付着させることができる。
[(V)外添工程]
本発明の方法により製造された静電潜像現像用トナーは、必要に応じてその表面に外添剤が付着したものであってもよい。外添剤をトナー粒子の表面に付着させる方法は特に限定されない。好適な方法としては、例えば、ヘンシェルミキサーやナウターミキサー等の混合機により、外添剤がトナー表面に埋没しないように条件を調整して混合する方法が挙げられる。
以上説明した本発明の方法によれば、低温定着性、及び高温での保存安定性に優れるトナーの製造方法、及び当該製造方法により得られるトナーを提供することができる。このため、本発明の方法により製造された静電潜像現像用トナーは、種々の画像形成装置において好適に使用される。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
〔調製例1〕
(着色樹脂微粒子分散液の調製)
以下の方法に従って、結着樹脂と着色剤とを含む着色樹脂微粒子の水性媒体中の分散液を調製した。
結着樹脂として以下の非晶質ポリエステル樹脂を用いた。
単量体組成:ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン/ポリオキシエチレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン/フマル酸/トリメリット酸=25/25/46/4(モル比率)
数平均分子量(Mn):2500
質量平均分子量(Mw):6500
分子量分布(Mw/Mn):2.6
軟化点:91℃
ガラス転移点(Tg):51℃
酸価:15.5mgKOH/g
結着樹脂1000質量部、及び着色剤(シアン顔料(銅フタロシアニン)、C.I.Pig.Blue 15−3、(大日精化工業株式会社製))50質量部を流動混合装置FMミキサ(FM20C/I型(日本コークス工業株式会社製))に仕込み、45℃以下の温度で5分間混合した。次に、得られた混合物をオープンロール型2本ロール連続混練機(ニーデックスMOS−160型(日本コークス工業株式会社製))に投入して混練を行なった。得られた混練物を冷却後、粉砕して顔料濃度5質量%の着色樹脂組成物を得た。
得られた着色樹脂組成物をターボミルT250(ターボ工業株式会社製)により粗粉砕した平均粒子径10μm程度の粗粉砕物100質量部と、アニオン界面活性剤(エマールE27C(花王株式会社製))2質量部と、0.1N−水酸化ナトリウム水溶液(塩基性物質)50質量部とを混合し、さらに水性媒体としてイオン交換水を加えて全量500質量部のスラリーを調製した。得られたスラリーを、耐圧丸底ステンレス容器に投入し、高速剪断乳化装置クレアミックス(CLM−2.2S(エム・テクニック社製))を用いて、スラリーを145℃、圧力0.5MPa(G)に加温加圧した状態で、ローター回転数を20000r/minで30分間剪断分散を行った。その後、ステンレス容器内温が50℃になるまでローター回転数15000r/minで撹拌を続け、5℃/分の速度で、スラリーを冷却して着色樹脂微粒子分散液(P−1)を得た。
〔調製例2〕
(離型剤微粒子分散液の調製)
以下の方法に従って、離型剤微粒子の水性媒体中の分散液を調製した。
離型剤(WEP−5、ペンタエリスリトールベヘン酸エステルワックス、溶融温度84℃、(日本油脂株式会社製))200質量部、アニオン界面活性剤(エマールE27C(花王株式会社製))2質量部、及びイオン交換水800質量部を混合し、100℃に加熱し離型剤を融解させた後、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50(IKA社製))で5分間乳化した。次いで、高圧式ホモジナイザー(ナノマイザーNV−200(吉田機械興業株式会社製))を用いて120℃にて吐出圧100MPaにて、2回乳化処理を行った。なお、高圧式ホモジナイザーでは、圧力ヘッドのプランジャー径をφ10mmとし、ジェネレータとして120ミクロンの貫通型ノズルを使用した。このようにして、平均粒子径が250nm、融点が83℃、固形分濃度が20質量%の離型剤微粒子の分散液(W−1)を得た。
〔実施例1〕
(凝集工程)
ステンレス製の容量2Lの丸底フラスコ容器に、着色樹脂微粒子分散液(P−1)500gと、離型剤微粒子分散液(W−1)68gとを入れ、これらを25℃で混合した。次いで、フラスコ内を、撹拌羽根により速度100rpmで撹拌した状態で、1N−水酸化ナトリウム水溶液1gをフラスコ内に加えた。その後、フラスコの内容物を25℃で10分間撹拌した後、凝集剤(濃度23.4質量%の塩化マグネシウム水溶液)17gを5分間かけて、フラスコ内に添加した。凝集剤添加後、フラスコ内温を、0.2℃/分の昇温速度で40℃まで上げ、同温度で、30分間、フラスコの内容物を撹拌して、着色剤樹脂微粒子と離型剤微粒子とを凝集させた。その後、濃度20質量%の塩化ナトリウム水容液50gを、フラスコ内に一度に添加して、微粒子の凝集を停止させて、微粒子凝集体の分散液を得た。
(形状制御工程)
40℃に保温された得られた微粒子凝集体の分散液に、水溶性セルロースエーテル(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メトローズ90SH−06)の濃度5質量%の水溶液100g加えた。水溶性セルロースエーテルが加えられた、微粒子凝集体の分散液を、40℃から0.2℃/分の昇温速度で65℃まで昇温し、同温度で、微粒子凝集体の分散液を1時間撹拌して、微粒子凝集体を合一化させることによって、トナーの形状を球状に制御した。その後、フラスコ内温を10℃/分の速度で低下させ、フラスコ内温を25℃とした。この時、フラスコ内のトナー分散液に含まれるトナー粒子の体積平均粒子径は5.5μmであり、球形化度は0.978であった。
(洗浄工程)
トナー分散液から、吸引ろ過により、トナーのウエットケーキをろ取した後、ウエットケーキを再度イオン交換水に分散させてトナーを洗浄した。同様の操作を繰り返し、トナーを5回洗浄したのちに回収したトナーのウエットケーキを、次工程で乾燥させた。
(乾燥工程)
トナーのウエットケーキを、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させてスラリーを調製した。得られたスラリーを連続式表面改質装置(コートマイザー(フロイント産業株式会社製))により乾燥させて、トナーを得た。なお、乾燥時には、トナーの質量に対して0.2質量%のシリカを含む、シリカのエタノール分散液を、トナーの分散液と共に噴霧して、トナーの表面に外添剤としてシリカを付着させた。コートマイザーによる乾燥条件は、熱風温度45℃、ブロアー風量2m3/分であった。
(外添工程)
乾燥工程で得られた、乾燥後の粉体100質量部と、シリカ微粒子(RA200H(日本アエロジル株式会社製))1.5質量部とを、ヘンシェルミキサー(三井三池工業株式会社製)にて混合し、トナーを得た。
このようにして得られた実施例1のトナーは体積平均粒子径が5.5μmであり、球形化度は0.978であった。
実施例1で得られたトナーを用いて、以下の方法に従って、低温定着性と、定着強度と、ブロッキング性とを評価した。実施例1のトナーの評価結果を、表1に記す。
<低温定着性評価方法>
(キャリアの調製)
MnO換算で39.7mol%、MgO換算で9.9mol%、Fe2O3換算で49.6mol%、SrO換算で0.8mol%になるように各原材料を適量配合し、水を加え、湿式ボールミルで10時間かけて粉砕・混合した。得られた混合物を乾燥した後、950℃で4時間保持した。次いで、混合物を湿式ボールミルで24時間かけて粉砕してスラリーを調製した。スラリーを造粒乾燥した後、造粒物を、酸素濃度2%の雰囲気中で1270℃にて6時間保持した後、解砕、粒度調整を行い、マンガン系フェライト粒子(キャリア芯材)を得た。得られたマンガン系フェライト粒子は、平均粒子径が35μmであり、印加磁場が3000(103/4π・A/m)の時の飽和磁化が70Am2/kgであった。
次に、ポリアミドイミド樹脂(無水トリメリット酸と4,4’−ジアミノジフェニルメタンとの共重合体)をメチルエチルケトンで希釈して樹脂溶液を調製し、次いで4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合体(FEP)と、酸化ケイ素(樹脂全体量の2質量%)とを樹脂溶液に分散させて、固形分換算で150gとなる量のキャリアコート液を得た。ポリアミドイミド樹脂とFEPとの質量比はポリアミドイミド樹脂/FEPとして、2/8であり、樹脂溶液の固形分比率は10質量%であった。
得られたキャリアコート液を用い、流動層被覆装置(スピラコータSP−25(岡田精工株式会社製))にて、マンガン系フェライト粒子10kgを被覆した。その後、樹脂により被覆されマンガン系フェライト粒子を220℃で1時間焼成して、樹脂被覆量3質量%の樹脂被覆フェライトキャリアを得た。
(2成分現像剤の調製)
得られた樹脂被覆フェライトキャリアと、実施例1のトナーとを、2成分現像剤中のトナー濃度が10質量%となるように混合して、2成分現像剤を調製した。
(評価操作)
カラープリンター(FS−C5400DN(京セラミタ株式会社製))を用いて、低温定着性の評価を行った。カラープリンターの黒色用現像部に2成分現像剤をインストールし、黒色トナー用のトナーカートリッジに実施例1のトナーを充填した後に、紙上のトナー付着量が0.8mg/cm2である未定着画像を形成した。次いで、定着温度80〜180℃の範囲で変化させて定着を行ない、オフセットが発生しない最低定着温度を測定した。最低定着温度が120℃未満である場合を「○」と判定し、最低定着温度が120℃以上であるものを「×」と判定した。
<定着強度評価>
定着温度を120℃に固定して、30mm×30mmの形状の画像濃度(ID)1.0のソリッドトナー画像を形成した。形成された画像の中央部を折り曲げ、その折り曲げ部分で、トナーが剥がれずに残った割合を定着強度として示す。折り曲げて開く作業を3回繰り返し、次いで折り目部分をJKワイパー(クレシア社製)で3回ふき取った。反射濃度測定器により、折り目部分のトナー画像の濃度を折り曲げる前後で測定し、測定された折り曲げる前後の濃度を用いて下記式により定着強度を算出した。
定着強度(%)=(折り曲げた後の濃度)/(折り曲げる前の濃度)×100
定着強度が90%以上である場合を「◎」と判定し、80%以上90%未満である場合を「○」と判定し、80%未満である場合を「×」と判定した。
<ブロッキング性評価>
トナー10gを60℃に設定された恒温槽中に8時間静置した。恒温槽中のトナーを取り出し、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)を用いて、42メッシュのJIS標準篩(目開き355μm)にて10秒間、トナーを篩い分け、メッシュを通過しなかったトナーの残量によりブロッキング性を評価した。メッシュ上に残存したトナーが10質量%未満であった場合を「○」と判定し、メッシュ上に残存したトナーが10質量%以上であった場合を×と判定した。
〔比較例1〕
水溶性セルロースエーテル(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メトローズ90SH−06)の濃度5質量%の水溶液100gに変えて、ポリビニルアルコール(ケン化度88モル%)の濃度3質量%の水溶液100gを用いることの他は、実施例1と同様にして静電潜像現像用トナーを得た。得られたトナーの体積平均粒子径は、5.0μmであり、球形化度は0.926であった。比較例1のトナーを、実施例1と同様に評価した。比較例2のトナーの評価結果を表1に記す。
〔比較例2〕
水溶性セルロースエーテル(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メトローズ90SH−06)の濃度5質量%の水溶液100gを、凝集工程の開始時に、着色樹脂微粒子分散液(P−1)500gと、離型剤微粒子分散液(W−1)68gとの混合液に対して加えることの他は、実施例1と同様にして静電潜像現像用トナーを得た。得られたトナーの体積平均粒子径は、4.5μmであり、球形化度は0.868であった。水溶性セルロースエーテルが微粒子の凝集を阻害し、微粒子が均一に凝集していないため、トナーの粒子径が実施例1のトナーよりも小さくなり、球形化度が0.9未満に低下していると思われる。比較例2のトナーを、実施例1と同様に評価した。比較例2のトナーの評価結果を表1に記す。
実施例1によれば、水性媒体中の微粒子凝集体の分散液に対して、水溶性セルロースエーテルを添加した後に、微粒子凝集体の分散液を加熱してトナー粒子の形状を制御した場合、低温定着性と耐熱保存性(ブロッキング性)とを両立できるトナーが得られることが分かる。実施例1のトナーの製造方法によれば、水溶性セルロースエステルが微粒子凝集体の表面に付着して、トナー粒子の形状制御を行う際の、離型剤粒子の脱落や、トナー粒子表面への離型剤の染み出しが抑制されているためと思われる。
一方、比較例1によれば、水溶性セルロースエーテルに変えて、ポリビニルアルコールを用いた場合、低温定着性には優れていても、耐熱保存性に劣るトナーしか得られないことが分かる。比較例1のトナーの製造方法では、水溶性セルロースエーテルと同様の効果は得られず、形状制御工程での、離型剤粒子の脱落や、トナー粒子表面への離型剤の染み出しが生じているためと思われる。
さらに、微粒子凝集体を調製するための微粒子を混合した段階で、水溶性セルロースエーテルを添加した場合、低温定着性には優れていても、耐熱保存性に著しく劣るトナーしか得られないことが分かる。比較例2のトナーの製造方法では、凝集する前の微粒子に水溶性セルロースエステルが付着し、微粒子凝集体の内部に水溶性セルロースエーテルが取り込まれてしまうため、形状制御工程での、離型剤粒子の脱落や、トナー粒子表面への離型剤の染み出しを殆ど抑制できていないためと思われる。