JP3567023B2 - トナー用ポリエステル樹脂およびトナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法などにおいて、静電荷像または磁気潜像の現像に用いられる乾式トナーとして有用なポリエステル樹脂に関する。さらに詳しくは、耐ブロッキング性、溶融流動性および非オフセット性に優れ、高い溶融流動性が要求されるフルカラートナー、低温定着性が要求される高速複写機や高速プリンター用トナーに適したトナー用ポリエステル樹脂に関する。
【0002】
【従来の技術】
静電荷像より恒久的な顕像を得る方法においては、光導電性感光体または静電記録体上に形成された静電荷像をあらかじめ摩擦により帯電させたトナーによって現像した後、定着される。磁気潜像の場合は、磁気ドラム上の潜像を磁性体を含むトナーによって現像した後、定着される。定着は、光導電性感光体または静電記録体上に現像によって得られたトナー像を直接融着させるか、紙やフィルム上にトナー像を転写した後、これを転写シート上に融着させることによって行われる。トナー像の融着は、溶剤蒸気との接触、加圧および加熱によって行われ、加熱方式には、電気オーブンにより無接触加熱方式と加圧ローラーによる圧着加熱方式があるが、定着工程の高速化が要請される最近では主として後者が用いられている。
【0003】
乾式現像方式で使用されるトナーには、1成分系トナーと2成分系トナーがある。2成分系トナーは、まずバインダー樹脂、着色剤、荷電制御剤およびその他必要な添加剤を溶融混練して十分に分散させた後、粗粉砕し、次いで微粉砕して、所定の粒度範囲に分級して製造される。1成分系トナーは、上記の2成分系のトナーの各成分の他に磁性粉を添加して同様に製造される。
【0004】
バインダー樹脂は、トナー配合中の主成分であるため、トナーに要求される性能の大部分を支配する。このためトナー用バインダー樹脂には、トナー製造においては溶融混練工程での着色剤の分散性、粉砕工程での粉砕性の良い事などが要求され、またトナーの使用においては定着性、オフセット性、ブロッキング性および電気的性質が良いことなど多用な性能が要求される。トナーの製造に用いられるバインダー樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、メタクリル系樹脂などが公知であるが、圧着加熱定着方式用は主にスチレンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体が用いられてきた。
【0005】
一方、フルカラー画像を得るためには、上述の現像工程において、3〜4色のトナーを転写紙に付着させ、次いで定着工程において、各色のトナーを溶融混合しながら発色させ、定着させなければならない。このため、定着工程での混合性、発色性、発色性をより効率的に行うための溶融流動性に優れたバインダー樹脂が要求される。しかし、溶融流動性の良好なバインダー樹脂を使用すると、定着工程でのオフセット現象が発生しやすくなるという問題点を有していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、バインダー樹脂として架橋構造を有するものを使用したり、分子量の高いものを使用してオフセット現象を防止する方法が提案されているが、いずれも溶融流動性が低下するためにフルカラートナー用のバインダー樹脂としては十分に満足できるものではなかった。このため、フルカラー用複写機やプリンターにおいては、通常、定着ローラーの表面にシリコーンオイル等を塗布することによって、オフセット現象の発生を防止している。近年、複写機やプリンターの高速化や省エネルギー化が要求され、フルカラー以外の一般の複写機やプリンターにおいても、定着ローラーの表面にシリコーンオイル等を塗布しオフセット現象の発生を防止する方法が使用されてきている。
【0007】
しかしながら、このように定着ローラーの表面にシリコーンオイル等を塗布することによって、シリコーンオイル等が紙やOHPシートに付着する等の問題点を有するとともに、シリコーンオイル等の塗布装置が必要となり複写機やプリンターの小型化の障害ともなっている。
従って、本発明の目的とするところは、溶融流動性および耐ブロッキング性に優れ、定着ローラーへのシリコーンオイル等の塗布量が少量であっても、あるいは塗布をしないものであっても非オフセット性が維持できるトナーおよびトナー用ポリエステル樹脂を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明のトナー用ポリエステル樹脂は、(a)芳香族ジカルボン酸を主成分とする酸成分、(b)下記の一般式(1)で表わされる芳香族ジオールの少なくとも1種、(c)脂肪族ジオールを含むジオール成分および(d)下記の一般式(2)で表わされるポリカプロラクトンの少なくとも1種から構成され、上記(b)成分が全酸成分に対して10〜80モル%、上記(c)成分が全酸成分に対して20〜90モル%、上記(d)成分が全酸成分に対して0.01〜0.3モル%である重縮合体であって、ガラス転移温度が40〜70℃、軟化温度が70〜130℃、重量平均分子量が3,000〜20,000、数平均分子量が1,500〜10,000であることを特徴とするものである。
【0009】
【化3】
【0010】
【化4】
【0011】
(式中、R1 、R2 は炭素数3以下のアルキレン基、mおよびnは2≦m+n≦7を満足する自然数、pは70≦p≦500を満足する自然数である。)
また、本発明のトナーは、上記のポリエステル樹脂を主成分とするバインダー樹脂および着色剤を含有することを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明において用いられる芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸およびその低級アルキルエステルから選ばれるものである。テレフタル酸およびイソフタル酸の低級アルキルエステルの例としては、ジメチルテレフタル酸、ジメチルイソフタル酸、ジエチルテレフタル酸、ジエチルイソフタル酸、ジブチルテレフタル酸、ジブチルイソフタル酸などが挙げられるが、コストおよびハンドリングの点でジメチルテレフタル酸やジメチルイソフタル酸が好ましい。
【0013】
上記の芳香族ジカルボン酸は、ガラス転移温度を上げて耐ブロッキング性の向上に寄与し、それの持つ疎水性のため耐湿性にも効果がある。したがって、芳香族ジカルボン酸は、全酸成分に対して40モル%以上の範囲で含有することが好ましく、さらに好ましくは60モル%以上の範囲である。芳香族ジカルボン酸の中でもイソフタル酸系は反応性を高める効果があるが、コストの面より、全酸成分中55モル%以下の範囲で含有することが好ましく、またテレフタル酸は、樹脂のガラス転移温度をアップさせるのに効果があり、全酸成分中45モル%以上の範囲で含有することが好ましい。これら芳香族ジカルボン酸は1種または2種以上を併用して使用される。
【0014】
本発明においては、必要に応じて、上記の芳香族ジカルボン酸と併用して、例えば、フタル酸、セバシン酸、イソデシル琥珀酸、フマル酸、アジピン酸およびこれらのモノメチル、モノエチル、ジメチル、ジエチルエステル等、ならびにこれらの酸無水物等の他のジカルボン酸を使用することもできる。これらのジカルボン酸はトナーの定着性や耐ブロッキング性に大きく影響を与えるので、これらの特性を考慮して使用する必要があり、全酸成分に対して30モル%以下の範囲で含有することが好ましい。
【0015】
本発明において用いられる芳香族ジオール(b)は、上記の一般式(1)で表わされる芳香族ジオールの少なくとも1種が使用される。上記の一般式(1)で表される芳香族ジオールの例として、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2,4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどが挙げられ、1種または2種以上を併用して使用される。これらの中でも、2.0≦n≦3.0であるポリオキシエチレン−(n)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび2.1≦n≦4.0であるポリオキシプロピレン−(n)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの使用が特に好ましい。
【0016】
このような芳香族ジオール(b)は、バインダー樹脂のガラス転移温度を上げる効果がありトナーといしての耐ブロッキング性を向上させるとともに、耐湿性を向上させることができる。しかし、これら芳香族ジオール(b)は、反応性が乏しいとともに、高温で熱分解を起こしやすく、高い反応温度を必要とする芳香族ジカルボン酸と併用する場合には、その使用量が制限される。このため、芳香族ジオール(b)の含有量は、全酸成分に対して10〜80モル%であり、好ましくは20〜70モル%以下の範囲である。
【0017】
また、本発明において用いられる脂肪族ジオール(c)としては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどが挙げられ、定着性の点からエチレングリコール、ネオペンチルグリコールが好ましい。特にエチレングリコールは反応性を高めることができる。このため、脂肪族ジオールの含有量は、全酸成分に対し20モル%以上であることが好ましく、さらに好ましくは30モル%以上の範囲である。これら脂肪族ジオール(c)は、1種または2種以上を併用して用いられる。
【0018】
本発明において用いられる上記の一般式(2)で表わされるポリカプロラクトン(d)は、バインダー樹脂のガラス転移温度をある程度維持したまま、非オフセット性を向上させる効果をもたらすものであり、定着ローラーへのシリコーンオイル等の塗布量を少なくした場合、あるいは塗布を行わなかった場合でも、トナーとしての非オフセット性が損なわれることがない。上記一般式(2)で表わされるポリカプロラクトン(d)としては、例えば、ダイセル化学工業(株)製のプラクセルHIP、プラクセルH4、プラクセルH5などが挙げられ、1種または2種以上を併用して使用される。
【0019】
上記の一般式(2)で表わされるポリカプロラクトン(d)の含有量は、全酸成分に対して0.01〜0.3モル%の範囲であり、好ましくは0.02〜0.2モル%、より好ましくは0.02〜0.1モル%の範囲である。これは、ポリカプロラクトン(d)が0.3モル%を超えると、ポリカプロラクトン構造のブロック共重合量が高くなるため、ポリエステル樹脂のガラス転移温度の低下が大きくなり、定着性能および耐ブロッキング性のバランスが崩れるためであり、逆に0.01モル%未満では非オフッセット性の向上効果が得られなくなるためである。
【0020】
また、本発明に用いられるポリカプロラクトン(d)は、反応系中でブロック構造の長さが短くなる傾向にあるため、その繰り返し単位(p)が上記の一般式(2)において70〜500であることが好ましい。これは、繰り返し単位(p)が70より少ない場合には、ポリカプロラクトン(d)をブロック共重合させる効果が少なく、樹脂のガラス転移温度を低下させる傾向にあるためであり、逆に、繰り返し単位(p)が500を超える場合には、ポリカプロラクトン(d)の分子量が高すぎて、反応する末端が少なく単に混合されている状態となり、ブロック共重合体にすることが困難となる傾向にあるためである。ポリカプロラクトン(d)は、エステル交換反応および重縮合反応のいずれの段階で添加してもよいが、ポリカプロラクトン(d)をポリマー主鎖に組み込む必要性から、重縮合段階の後半で添加するのは望ましくない。
【0021】
以上の構造からなる本発明のトナー用ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度が40〜70℃、好ましくは50〜70℃、軟化温度が70〜130℃、好ましくは80〜125℃である。これは、ガラス転移温度が40℃未満ではトナーとしての耐ブロッキング性に劣り、逆に80℃を超えると耐ブロッキング性は良好であるが、トナーとしての定着性能が著しく低下するためである。また、軟化温度が70℃未満では、トナーとしての定着性能は向上するが、ポリエステル樹脂の凝集力が極端に低下し十分な非オフセット性が得られなくなるためであり、逆に170℃を超えると非オフセット性は向上するが、トナーとしての定着性能が極端に低下するためである。
【0022】
さらに、本発明のトナー用ポリエステル樹脂は、重量平均分子量が3,000〜20,000、好ましくは4,000〜16,000、数平均分子量が1,500〜10,000、好ましくは2,000〜8,000である。これは、重量平均分子量が3,000未満であると、ガラス転移温度が著しく低下してトナーの耐ブロッキング性が損なわれるためであり、逆に20,000を超えると溶融流動性および低温定着性が低下するためである。また、数平均分子量が1,500未満であると、ガラス転移温度が著しく低下してトナーの耐ブロッキング性が損なわれるためであり、逆に10,000を超えると溶融流動性および低温定着性が低下するためである。
【0023】
本発明のトナー用ポリエステル樹脂の製造においては、上記の重合成分(a)〜(d)を反応釜に仕込み、加熱昇温して、エステル化反応、またはエステル交換反応を行う。この時、必要に応じて硫酸、チタンブトキサイド、ジブチルスズオキシド、酢酸マグネシウム、酢酸マンガンなどの通常のエステル化反応またはエステル交換反応で使用されるエステル化触媒またはエステル交換触媒を使用することができる。次いで、常法に従って該反応で生じた水またはアルコールを除去する。その後引き続き重合反応を実施するが、このとき150mmHg以下の真空下でジオール成分を留出除去させながら重合を行う。
また、重合に際しては通常公知の重合触媒、例えばチタンブトキサイド、ジブチルスズオキシド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウムなどを用いることができる。また、重合温度、触媒量については特に限定されるものではなく、必要に応じて任意に設定すれば良い。
【0024】
本発明のトナー用ポリエステル樹脂においては、必要によりシリカなどの無機粉末を加えて耐ブロッキング性を改良することができる。このシリカ粉末の添加はバインダー樹脂のガラス転移温度が低い場合、その効果は特に顕著である。
本発明のトナーは、上記のようなポリエステル樹脂をバインダー樹脂の主成分として含有するものであり、スチレン系重合体、スチレン−アクリル系共重合体、スチレン−ブタジエン系共重合体、エポキシ系樹脂等の他の樹脂と併用してバインダー樹脂とすることもできる。また、本発明のトナーは、上記のようなバインダー樹脂を60重量%以上含有するとともに、無機顔料、有彩色の染料および有機顔料等の着色剤、ポリオレフィンワックス等のワックス類、テフロン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデン等の滑剤、負帯電性または正帯電性の荷電制御剤等を必要に応じて配合し、得られた配合物を、例えば、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等を用いて溶融混練した後に、ジェットミル、風力分級機等を用いて粉砕・分級し所定の平均粒径とすることによって製造することができる。
【0025】
本発明のトナーに使用できる着色剤としては、公知の着色剤を使用することができ、例えば、カーボンブラック、鉄黒、ニグロシン、ベンジンイエロー、キナクドリン、ローダミンB、フタロシアニンブルー等が挙げられる。荷電制御剤としては、公知の負帯電性または正帯電性の荷電制御剤を使用することができ、例えば、Al、Ba、Ca、Cd、Co、Cu、Fe、Hg、Mg、Mn、Ni、Pb、Sn、Sr、Zn等の2価以上の金属を含む有機性の塩類や錯体類等の有機金属化合物が挙げられる。有機金属化合物としては、上記金属のカルボン酸塩、アルコキシレート、有機金属錯体、キレート化合物等が挙げられる。これら荷電制御剤は、バインダー樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部程度の範囲で使用することができる。
【0026】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
なお、実施例および比較例における性能評価は以下の方法を用いて行った。
ガラス転移温度(℃)
島津製作所社製示差走査熱量計を用い、昇温速度5℃/分で測定した時のガラス転移温度近傍の吸熱曲線の接線と、ベースラインとの接点をガラス転移温度とした。
軟化温度(℃)
島津製作所社製フローテスター(CFT−500)を用いて、ノズル1.0mmφ×10mmL、荷重30kgf、昇温速度3℃/分の等速昇温下で測定し、サンプル量1.0g中の半分が流出した時の温度を軟化温度(℃)とした。
組成分析
樹脂をヒドラジンで加水分解し、液体クロマトグラフィーで定量した。
重量平均分子量、数平均分子量
東ソー社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(HCL−8200)を用いて測定した。
【0027】
溶融流動性
塩化ビニル製シート上に、100cm2 当たり250mgとなるように樹脂粉末を均一に散布し、シリコーンオイルを塗布した定着ローラーを160℃に設定し、300mm/秒の速度で塩化ビニルシートを通過させた。散布された樹脂粉末が溶融したシートを、プロジェクターを用いてスクリーンに投影した際の光の透過の度合いを観察して、以下の基準で評価した。評価AおよびBであれば、溶融流動性が良好であるとした。
A:光が容易に透過する。
B:少し光の散乱が起こる。
C:光が散乱して影ができる。
【0028】
非オフセット性
塩化ビニル製シート上に、100cm2 当たり250mgとなるように樹脂粉末を均一に散布し、シリコーンオイルを塗布しない定着ローラーを160℃に設定し、300mm/秒の速度で塩化ビニルシートを通過させた。樹脂の定着ローラーへの移行が発生するまでの通過シートの枚数で評価した。3枚以上であれば、非オフセット性が良好であるとした。
耐ブロッキング性
50mlのガラス性サンプル瓶中にトナー5gを入れ、40℃の恒温槽中に24時間放置した後、室温まで冷却し、その凝集度を観察し、次の基準で評価した。評価A、Bであれば、耐ブロッキング性が良好であるとした。
A:サンプル瓶を逆さにしただけで樹脂粉末が落ちる。
B:サンプル瓶を逆さにし、軽く振っただけで樹脂粉末が落ちる。
C:サンプル瓶を逆さにし、軽くたたくと樹脂粉末が落ちる。
D:サンプル瓶を逆さにし、強い振動を与えてやると樹脂粉末が落ちる。
E:サンプル瓶を逆さにし、強い振動を与えても樹脂粉末は落ちない。
【0029】
実施例1〜8
表1に示す仕込み組成の各原料を蒸留塔を備えた反応容器に投入した。さらに、触媒であるジブチルスズオキシドを全酸成分に対して0.03重量部添加し、内温を260℃、撹拌回転数200rpmに保ち、常圧下で5時間エステル化反応させた。その後、反応系内を30分かけて1.0mmHgまで減圧し、内温を230℃に保持して、エチレングリコールを留出させながら縮合反応を2時間行って、淡黄色透明のポリエステル樹脂を得た。得られた樹脂の組成分析の結果、ガラス転移温度、軟化温度、重量平均分子量および数平均分子量の測定結果を表1に示した。
得られたポリエステル樹脂を粗粉砕した後、ジェットミル(日本ニューマチック社製)を用いて20μm以下まで粉砕した。次いで、風力分級機(日本ニューマチック社製)を用いて、粒径5〜20μmの樹脂粉末とした。得られた樹脂粉末を用いて、溶融流動性、耐ブロッキング性および非オフセット性の評価を行い、その結果を表1に示した。
【0030】
比較例1〜7
表2に示す仕込み組成で、上記実施例と同様にしてポリエステル樹脂を得た。得られた樹脂の組成分析の結果、ガラス転移温度、軟化温度、重量平均分子量および数平均分子量の測定結果を表2に示した。また、得られたポリエステル樹脂を実施例と同様にして樹脂粉末とし、得られた樹脂粉末の溶融流動性、耐ブロッキング性および非オフセット性の評価を行い、その結果を表2に示した。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
表中で用いた化合物は次のものを表わす。
【0034】
表1から明らかなように、本発明のポリエステル樹脂である実施例1〜7は、いずれも溶融流動性、耐ブロッキング性および非オフセット性に優れたトナーを提供できるものである。これに対して、比較例1では、ポリカプロラクトンが共重合されていないために、非オフセット性に劣るものである。比較例2では、ポリカプロラクトンの共重合量が過剰であり、ガラス転移温度が低く、耐ブロッキング性に劣るものである。比較例3では、芳香族ジオールの共重合量が過剰であり、分子量およびガラス転移温度が低く、耐ブロッキング性および非オフセット性に劣るものである。比較例4では、樹脂の分子量が低いために、耐ブロッキング性および非オフセット性に劣るものである。比較例5では、芳香族ジオールの共重合量が少なく、分子量が高く、溶融流動性に劣るものである。比較例6では、繰り返し単位の小さいポリカピロラクトンを共重合しているため、耐ブロッキング性および非オフセット性に劣るものである。比較例7では、繰り返し単位の大きいポリカプロラクトンを使用しているため、溶融流動性および非オフセット性に劣るものである。
【0035】
【発明の効果】
本発明のトナー用ポリエステル樹脂は、特定のポリカプロラクトンを共重合させることによって、溶融流動性および耐ブロッキング性にも優れ、定着ローラーへのシリコーンオイル等の塗布量が少量であっても、あるいは塗布をしないものであっても非オフセット性が維持でき、高い溶融流動性が要求されるフルカラートナー、低温定着性が要求される高速複写機や高速プリンター用トナーのバインダー樹脂として有用である。
Claims (2)
- (a)芳香族ジカルボン酸を主成分とする酸成分、(b)下記の一般式(1)で表わされる芳香族ジオールの少なくとも1種、(c)脂肪族ジオールを含むジオール成分および(d)下記の一般式(2)で表わされるポリカプロラクトンの少なくとも1種から構成され、上記(b)成分が全酸成分に対して10〜80モル%、上記(c)成分が全酸成分に対して20〜90モル%、上記(d)成分が全酸成分に対して0.01〜0.3モル%である重縮合体であって、ガラス転移温度が40〜70℃、軟化温度が70〜130℃、重量平均分子量が3,000〜20,000、数平均分子量が1,500〜10,000であることを特徴とするトナー用ポリエステル樹脂。
- 請求項1記載のポリエステル樹脂を主成分とするバインダー樹脂および着色剤を含有することを特徴とするトナー。
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