JP2017116568A - 静電潜像現像用トナー - Google Patents

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Abstract

【課題】常温常湿環境下でも高温高湿環境下でも十分な正帯電性を有する静電潜像現像用トナーを提供する。
【解決手段】静電潜像現像用トナーが、トナーコア11と、トナーコア11の表面を覆うシェル層12とを備えるトナー粒子を、複数含む。シェル層12の表面は、海状領域と、海状領域に対して島状に分布し、それぞれ海状領域よりも強い正帯電性を有する複数の島状領域とを有する。海状領域は、島状領域よりも強い疎水性を有する。トナーコア11とシェル層12との境界には、トナーコア11に外添された複数の境界粒子21が存在する。シェル層12の表面は、境界粒子21に対応する複数の凸部Pを有する。シェル層12は第1樹脂及び第2樹脂を含有する。境界粒子21は第3樹脂を含有する。第1樹脂はポリエステル樹脂である。第2樹脂のガラス転移点は60℃以上80℃以下である。第3樹脂のガラス転移点は90℃以上130℃以下である。
【選択図】図2

Description

本発明は、静電潜像現像用トナーに関し、特にカプセルトナーに関する。
例えば特許文献1に、カプセルトナーが記載されている。カプセルトナーに含まれるトナー粒子は、コアと、コアの表面に形成されたシェル層(カプセル層)とを有する。
特開昭59−187351号公報
特許文献1に記載されるカプセルトナーでは、シェル層が、アミノスチレンとスチレンとの共重合体を含む。アミノスチレンは、カチオン性官能基(より具体的には、アミノ基)を有する。シェル層におけるカチオン性官能基の密度を高めることで、常温常湿環境下でのトナーの正帯電性を強めることができると考えられる。しかし、シェル層におけるカチオン性官能基の密度が高くなると、トナー粒子の表面の親水性が強まり、トナー粒子の表面に水分子が吸着し易くなる。また、トナー粒子の表面に水分子が吸着すると、トナー粒子の正帯電量が減衰する傾向がある。このため、シェル層におけるカチオン性官能基の密度を高めすぎると、高温高湿環境下でのトナーの正帯電性が不十分になるおそれがある。そして、正帯電性が十分でないトナーを用いて画像を形成した場合には、形成した画像にかぶりが生じ易くなる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、常温常湿環境下でも高温高湿環境下でも十分な正帯電性を有する静電潜像現像用トナーを提供することを目的とする。また、本発明は、電荷減衰特性、低温定着性、クリーニング性、及び現像性に優れる静電潜像現像用トナーを提供することを他の目的とする。
本発明に係る静電潜像現像用トナーは、コアと、前記コアの表面を覆うシェル層とを備えるトナー粒子を、複数含む。前記シェル層の表面は、海状領域と、前記海状領域に対して島状に分布し、それぞれ前記海状領域よりも強い正帯電性を有する複数の島状領域とを有する。前記海状領域は、前記島状領域よりも強い疎水性を有する。前記コアと前記シェル層との境界に、前記コアに外添された複数の境界粒子が存在する。前記シェル層の表面は、前記境界粒子に対応する複数の凸部を有する。前記シェル層は第1樹脂及び第2樹脂を含有する。前記境界粒子は第3樹脂を含有する。前記第1樹脂はポリエステル樹脂である。前記第2樹脂のガラス転移点は60℃以上80℃以下である。前記第3樹脂のガラス転移点は90℃以上130℃以下である。
本発明によれば、常温常湿環境下でも高温高湿環境下でも十分な正帯電性を有する静電潜像現像用トナーを提供することが可能になる。また、本発明によれば、この効果に加えて又はこの効果に代えて、電荷減衰特性、低温定着性、クリーニング性、及び現像性に優れる静電潜像現像用トナーを提供することが可能になるという効果が奏される場合がある。
本発明の実施形態に係る静電潜像現像用トナーに含まれるトナー粒子(特に、トナー母粒子)の断面構造の一例を示す図である。 図1に示されるトナーコアとシェル層との境界部を拡大して示す図である。 本発明の実施形態に係る静電潜像現像用トナーに含まれるトナー粒子(特に、トナー母粒子)の表面(平面構造)の一例を示す図である。 本発明の実施形態に係る静電潜像現像用トナーの製造方法(特に、トナーコアの外添処理)を説明するための図である。 本発明の実施形態に係る静電潜像現像用トナーの製造方法(特に、昇温開始時の状態)を説明するための図である。 本発明の実施形態に係る静電潜像現像用トナーの製造方法(特に、昇温終了後の状態)を説明するための図である。
本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、粉体(より具体的には、トナーコア、トナー母粒子、外添剤、又はトナー等)に関する評価結果(形状又は物性などを示す値)は、何ら規定していなければ、粉体から平均的な粒子を相当数選び取って、それら平均的な粒子の各々について測定した値の個数平均である。また、粉体の個数平均粒子径は、何ら規定していなければ、顕微鏡を用いて測定された1次粒子の円相当径(粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。また、粉体の体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA−750」)を用いて測定した値である。また、酸価及び水酸基価の各々の測定値は、何ら規定していなければ、「JIS(日本工業規格)K0070−1992」に従って測定した値である。また、数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw)の各々の測定値は、何ら規定していなければ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した値である。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。また、アクリロイル(CH2=CH−CO−)及びメタクリロイル(CH2=C(CH3)−CO−)を包括的に「(メタ)アクリロイル」と総称する場合がある。
本実施形態に係るトナーは、例えば正帯電性トナーとして、静電潜像の現像に好適に用いることができる。本実施形態のトナーは、複数のトナー粒子(それぞれ後述する構成を有する粒子)を含む粉体である。トナーは、1成分現像剤として使用してもよい。また、混合装置(例えば、ボールミル)を用いてトナーとキャリアとを混合して2成分現像剤を調製してもよい。高画質の画像を形成するためには、キャリアとしてフェライトキャリアを使用することが好ましい。また、長期にわたって高画質の画像を形成するためには、キャリアコアと、キャリアコアを被覆する樹脂層とを有する磁性キャリア粒子を使用することが好ましい。磁性キャリア粒子を作製するためには、磁性材料(例えば、フェライト)でキャリアコアを形成してもよいし、磁性粒子を分散させた樹脂でキャリアコアを形成してもよい。また、キャリアコアを被覆する樹脂層中に磁性粒子を分散させてもよい。高画質の画像を形成するためには、2成分現像剤におけるトナーの量は、キャリア100質量部に対して、5質量部以上15質量部以下であることが好ましい。なお、正帯電性トナーは、キャリアとの摩擦により正に帯電する。
本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、コア(以下、トナーコアと記載する)と、トナーコアの表面に形成されたシェル層(カプセル層)とを備える。シェル層は、実質的に樹脂から構成される。例えば、低温で溶融するトナーコアを、耐熱性に優れるシェル層で覆うことで、トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図ることが可能になる。シェル層を構成する樹脂中に添加剤が分散していてもよい。シェル層は、トナーコアの表面全域を覆っていてもよいし、トナーコアの表面を部分的に覆っていてもよい。シェル層の表面(又は、シェル層で覆われていないトナーコアの表面領域)に外添剤が付着していてもよい。なお、必要がなければ外添剤を割愛してもよい。シェル層を備えるトナー粒子を主に含むトナー中に、シェル層を備えないトナー粒子が混じっていてもよい。以下、外添剤が付着する前のトナー粒子を、トナー母粒子と記載する。また、トナーコアを形成するための材料を、トナーコア材料と記載する。また、シェル層を形成するための材料を、シェル材料と記載する。
本実施形態に係るトナーは、例えば電子写真装置(画像形成装置)において画像の形成に用いることができる。以下、電子写真装置による画像形成方法の一例について説明する。
まず、画像データに基づいて感光体(例えば、感光体ドラムの表層部)に静電潜像を形成する。次に、形成された静電潜像を、トナーを含む現像剤を用いて現像する。現像工程では、感光体の近傍に配置された現像スリーブ(例えば、現像器内の現像ローラーの表層部)上のトナー(例えば、キャリア又はブレードとの摩擦により帯電したトナー)を静電潜像に付着させて、感光体上にトナー像を形成する。そして、続く転写工程では、感光体上のトナー像を中間転写体(例えば、転写ベルト)に転写した後、さらに中間転写体上のトナー像を記録媒体(例えば、紙)に転写する。その後、トナーを加熱して、記録媒体にトナーを定着させる。その結果、記録媒体に画像が形成される。例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの4色のトナー像を重ね合わせることで、フルカラー画像を形成することができる。
本実施形態に係るトナーは、次に示す構成(以下、基本構成と記載する)を有する静電潜像現像用トナーである。
(トナーの基本構成)
静電潜像現像用トナーが、トナーコア及びシェル層を備えるトナー粒子を、複数含む。シェル層の表面は、海状領域と、海状領域に対して島状に分布する複数の島状領域とを有する。海状領域は、島状領域よりも強い疎水性を有する。島状領域は、海状領域よりも強い正帯電性を有する。また、トナーコアとシェル層との境界には、トナーコアに外添された複数の粒子(以下、境界粒子と記載する)が存在する。シェル層の表面は、境界粒子に対応する複数の凸部を有する。シェル層は第1樹脂及び第2樹脂を含有する。境界粒子は第3樹脂を含有する。第1樹脂はポリエステル樹脂である。第2樹脂のガラス転移点は60℃以上80℃以下である。第3樹脂のガラス転移点は90℃以上130℃以下である。
上記基本構成を有するトナーでは、シェル層の表面が海島構造を有する(後述する図3参照)。詳しくは、シェル層の表面が海状領域(以下、疎水性領域と記載する場合がある)を有する。また、海状領域よりも疎水性が弱くて(親水性が強くて)、かつ、海状領域よりも正帯電性が強い島状領域(以下、正帯電性領域と記載する場合がある)を、シェル層の表面が複数有する。なお、樹脂のガラス転移点(Tg)の測定方法は、後述する実施例と同じ方法又はその代替方法である。樹脂のTgは、樹脂の成分(モノマー)の種類又は量(配合比)を変えることで調整できる。例えば、スチレン−アクリル酸系樹脂のTgは、スチレン系モノマーとアクリル酸系モノマーとの配合比を変えることで調整できる。2種以上のアクリル酸系モノマーを使用することで、スチレン−アクリル酸系樹脂のTgを調整し易くなる。
上記基本構成を有するトナーは、常温常湿環境下でも高温高湿環境下でも、十分な正帯電性を有すると考えられる。また、上記基本構成を有するトナーは、常温常湿環境下でも高温高湿環境下でも、高画質の画像(例えば、かぶり濃度の低い画像)を形成することができると考えられる。詳しくは、上記基本構成を有するトナーでは、シェル層の表面に正帯電性領域が複数存在することで、トナーに十分な正帯電性を付与することが可能になる。また、上記基本構成を有するトナーでは、シェル層の表面に正帯電性領域(島状領域)よりも強い疎水性を有する疎水性領域(海状領域)が存在することで、高温高湿環境下でのトナー粒子の表面に対する水分子の吸着を抑制することが可能になる。トナー粒子の表面に水分子が吸着しにくくなることで、高温高湿環境下でのトナー粒子の正帯電量の減衰が抑制されると考えられる。また、トナーを高温高湿環境下に長時間放置した後でも、十分なトナーの正帯電性を確保し易くなる。十分な正帯電性を有するトナーを用いて画像を形成することで、高画質の画像(例えば、かぶり濃度の低い画像)を形成することが可能になる。
また、ポリエステル樹脂は、電気抵抗値が高く、電荷減衰しにくい傾向がある。このため、シェル層がポリエステル樹脂を含有することで、トナーの電荷減衰特性が向上すると考えられる。シェル層に含有されるポリエステル樹脂に関しては、ガラス転移点(Tg)が60℃以上80℃以下であることが好ましく、軟化点(Tm)が95℃以上120℃以下であることが好ましい。また、トナーコアがポリエステル樹脂を含有する場合、シェル層もポリエステル樹脂を含有することで、トナーコアとシェル層との親和性が高くなる。そして、トナーコアとシェル層との親和性が高くなることで、シェル層の脱離が抑制されると考えられる。
常温常湿環境下でも高温高湿環境下でもトナーが十分な正帯電性を有するためには、正帯電性領域(島状領域)が疎水性領域(海状領域)に囲まれていることが好ましい。疎水性の弱い(比較的親水性の強い)正帯電性領域の周囲に、疎水性の強い疎水性領域が存在することで、水分子の吸着を効果的に抑制することが可能になる。
常温常湿環境下でも高温高湿環境下でもトナーが十分な正帯電性を有するためには、正帯電性領域(島状領域)がシェル層の表面に散在していることが好ましい。正帯電性領域が一箇所に集中せずに散在していることで、トナー粒子の表面の正帯電性を全体的に向上させることが可能になる。
上記基本構成を有するトナーでは、シェル層の表面が、境界粒子に対応する複数の凸部を有する。シェル層の表面が複数の凸部を有することで、トナーのクリーニング性(例えば、感光体ドラムに対する耐付着性)及び現像性(例えば、転写効率)が向上する傾向がある。凸部がスペーサーとして機能し、感光体ドラム等に対するトナー付着が生じにくくなると考えられる。また、上記基本構成を有するトナーでは、トナーコアとシェル層との境界に境界粒子が存在する。そして、境界粒子は、比較的高いガラス転移点(詳しくは、90℃以上130℃以下のガラス転移点)を有する第3樹脂を含有する。こうした境界粒子がトナーコアとシェル層との境界に存在することで、長期にわたってシェル層の表面形態が維持され、ひいては長期にわたってシェル層表面の凸部の機能が維持されるようになる。
シェル層の表面において、正帯電性領域が凸部に位置することが好ましい。上記基本構成を有するトナーを含む2成分現像剤において、シェル層の凸部はキャリアと接触し易い。このため、正帯電性領域が凸部にあればトナーが摩擦帯電し易くなると考えられる。
上記基本構成において、第2樹脂及び第3樹脂がそれぞれ、1種以上のスチレン系モノマーと1種以上のアクリル酸系モノマーとの共重合体(スチレン−アクリル酸系樹脂)であることが好ましい。スチレン−アクリル酸系樹脂は、強い疎水性を有する傾向がある。また、第2樹脂及び第3樹脂が共にスチレン−アクリル酸系樹脂であることで、第2樹脂と第3樹脂との親和性が高くなり、凸部におけるシェル層の脱離が抑制されると考えられる。また、凸部におけるシェル層の脱離が抑制されることで、長期にわたってシェル層の表面形態が維持され、ひいては長期にわたってシェル層表面の凸部の機能が維持されるようになる。なお、第2樹脂と第3樹脂とが全く同じ組成のスチレン−アクリル酸系樹脂でなくても(すなわち、スチレン系モノマーの種類及び/又はアクリル酸系モノマーの種類が異なっていても)、第2樹脂及び第3樹脂が共にスチレン−アクリル酸系樹脂であれば、上記効果は得られると考えられる。
常温常湿環境下でも高温高湿環境下でもトナーが十分な正帯電性を有するためには、シェル層の表面において、全ての海状領域(詳しくは、疎水性領域)の合計面積SAに対する、全ての島状領域(詳しくは、正帯電性領域)の合計面積SBの比率(=SB/SA)が、0.01以上0.43以下であることが好ましく、0.05以上0.17以下であることがより好ましい。
トナーの体積中位径(D50)が3μm以上10μm以下である場合、常温常湿環境下でも高温高湿環境下でもトナーが十分な正帯電性を有するためには、島状領域の半数以上(より好ましくは、80個数%以上)が、50nm以上300nm以下の円相当径(島状領域と同じ面積を有する円の直径)を有することが好ましい。
常温常湿環境下でも高温高湿環境下でもトナーが十分な正帯電性を有するためには、前述の基本構成を有するトナーが、次に示す構成(以下、好適なシェル構成と記載する)をさらに有することがより好ましい。
(好適なシェル構成)
シェル層が、樹脂膜と複数の樹脂粒子とを有する。複数の樹脂粒子はそれぞれ、ポリエステル樹脂(第1樹脂)と含窒素樹脂とを含有する。樹脂膜は、第2樹脂(ガラス転移点60℃以上80℃以下の樹脂)を含有する。樹脂膜のうちシェル層の表面に露出する部分が、海状領域に相当する。樹脂粒子のうち樹脂膜から露出する部分が、島状領域に相当する。樹脂膜は、粒状感のない膜であってもよいし、粒状感のある膜であってもよい。樹脂膜を形成するための材料として樹脂粒子を使用した場合、材料(樹脂粒子)が完全に溶けて膜状の形態で硬化すれば、樹脂膜として、粒状感のない膜が形成されると考えられる。他方、材料(樹脂粒子)が完全に溶けずに膜状の形態で硬化すれば、樹脂膜として、樹脂粒子が2次元的に連なった形態を有する膜(粒状感のある膜)が形成されると考えられる。シェル層を構成する樹脂粒子の形状は、球形状であってもよいし、球形状の樹脂粒子が膜化の過程で扁平状に変形していてもよい。シェル層全体が一体的に形成されるとは限らない。シェル層は、単一の膜であってもよいし、互いに離間して存在する複数の膜(島)の集合体であってもよい。
シェル層が上記好適なシェル構成を有するためには、樹脂粒子のガラス転移点が60℃以上80℃以下であることが好ましい。
トナーの正帯電性及び帯電安定性の両立を図るためには、樹脂粒子に含有される樹脂のうち、70質量%以上の樹脂がポリエステル樹脂であることが好ましい。
好適なシェル構成を有するトナーに関して、トナーの帯電安定性及び耐熱保存性の両立を図るためには、シェル層がさらに熱硬化性樹脂を含有することが好ましい。シェル層が、樹脂膜及び樹脂粒子に加えて、さらに熱硬化性樹脂(例えば、親水性熱硬化性樹脂)を含むことで、シェル層の強度を向上させることが可能になる。トナーの帯電安定性及び耐熱保存性の両立を図るためには、シェル層に含まれる樹脂のうち、0.01質量%以上20質量%以下の樹脂が熱硬化性樹脂であることが好ましい。
トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図るためには、シェル層が、トナーコアの表面領域のうち50%以上99%以下の面積を覆っていることが好ましい。
以下、図1〜図3を参照して、上記基本構成を有するトナーに含まれるトナー粒子の一例について説明する。なお、図1は、上記基本構成を有するトナーに含まれるトナー粒子(特に、トナー母粒子)の断面構造の一例を示す図である。図2は、図1に示されるトナーコアとシェル層との境界部を拡大して示す図である。図3は、上記基本構成を有するトナーに含まれるトナー粒子(特に、トナー母粒子)の表面(平面構造)の一例を示す図である。
図1に示されるトナー母粒子10は、トナーコア11と、トナーコア11の表面に形成されたシェル層12とを有する。シェル層12は、例えばトナーコア11の表面を部分的に覆っている。ただしこれに限られず、シェル層12は、トナーコア11の表面全域を覆っていてもよい。
トナーが前述の基本構成を有するためには、シェル層12が、例えば図2に示すような構造を有することが好ましい。図2に示すシェル層12では、トナーコア11とシェル層12との境界に、トナーコア11に外添された複数の境界粒子21が存在する。各境界粒子21は、トナーコア11の表面に付着している。境界粒子21の一部(底部)がトナーコア11に埋まっていてもよい。また、シェル層12の表面は、境界粒子21に対応する複数の凸部Pを有する。
シェル層12は、樹脂膜22と、複数の樹脂粒子23とを有する。また、トナーコア11の表面は、境界粒子21が付着している領域(以下、外添領域と記載する)と、境界粒子21が付着していない領域(以下、非外添領域と記載する)とを有する。非外添領域では、樹脂膜22がトナーコア11上に直接的に形成されている。これに対し、外添領域では、樹脂膜22が境界粒子21上に形成されている。外添領域では、樹脂膜22が境界粒子21上に形成されることで、非外添領域と比べて、シェル層12の表面の位置が高くなる傾向がある。図2に示すシェル層12では、外添領域に凸部Pが形成されている。図2において、斜線ハッチングで示される領域が樹脂膜22に相当する。
境界粒子21は、例えばガラス転移点90℃以上130℃以下の樹脂(第3樹脂)を含有する。樹脂膜22は、例えばガラス転移点60℃以上80℃以下の樹脂(第2樹脂)を含有する。第2樹脂としては、少なくともスチレン系モノマーとアクリル酸系モノマーとを含む単量体の共重合体が好ましい。樹脂粒子23は、例えば、ポリエステル樹脂(第1樹脂)と、含窒素樹脂(より具体的には、1種以上の4級アンモニウム塩と1種以上の(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体等)とを含有する。含窒素樹脂は、強い正帯電性を有する傾向がある。
図3に示すように、シェル層12の表面は海島構造を有する。詳しくは、シェル層の表面が、海状領域R2(疎水性領域)と、海状領域R2に対して島状に分布する複数の島状領域R1(正帯電性領域)とを有する。海状領域R2の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。図3の例では、島状領域R1がシェル層12の表面に散在している。各島状領域R1は、海状領域R2に囲まれている。
図2及び図3に示すように、樹脂膜22のうちシェル層12の表面に露出する部分は、疎水性領域(海状領域R2)に相当する。樹脂膜22に含有される第2樹脂(ガラス転移点60℃以上80℃以下の樹脂)の表面は、海状領域R2の少なくとも一部に相当する。また、樹脂粒子23のうち樹脂膜22から露出する部分は、正帯電性領域(島状領域R1)に相当する。樹脂粒子23に含有されるポリエステル樹脂(第1樹脂)の表面は、島状領域R1の少なくとも一部に相当する。なお、樹脂膜22の内部に存在して樹脂膜22から全く露出しない樹脂粒子23は、正帯電性領域(島状領域R1)を形成しない。図2に示すシェル層12では、正帯電性領域(島状領域R1)が、凸部Pにも凸部P以外にも存在する。樹脂粒子23は、樹脂膜22の表面から突出していてもよい。
次に、トナーコアを形成するための材料(以下、トナーコア材料と記載する)と、シェル層を形成するための材料(以下、シェル材料と記載する)とについて説明する。トナーコア材料及びシェル材料として適した樹脂は、以下のとおりである。
<好適な熱可塑性樹脂>
トナー粒子(特に、トナーコア及びシェル層)を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂(より具体的には、アクリル酸エステル重合体又はメタクリル酸エステル重合体等)、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂等)、ビニル樹脂(より具体的には、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、又はN−ビニル樹脂等)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、又はウレタン樹脂が好ましい。また、これら各樹脂の共重合体、すなわち上記樹脂中に任意の繰返し単位が導入された共重合体(より具体的には、スチレン−アクリル酸系樹脂又はスチレン−ブタジエン系樹脂等)も、トナー粒子を構成する熱可塑性樹脂として好ましい。
熱可塑性樹脂は、1種以上の熱可塑性モノマーを、付加重合、共重合、又は縮重合させることで得られる。なお、熱可塑性モノマーは、単独重合により熱可塑性樹脂になるモノマー(より具体的には、アクリル酸系モノマー又はスチレン系モノマー等)、又は縮重合により熱可塑性樹脂になるモノマー(例えば、縮重合によりポリエステル樹脂になるアルコール及びカルボン酸)である。
スチレン−アクリル酸系樹脂は、1種以上のスチレン系モノマーと1種以上のアクリル酸系モノマーとの共重合体である。スチレン−アクリル酸系樹脂を合成するためには、例えば以下に示すような、スチレン系モノマー及びアクリル酸系モノマーを好適に使用できる。アクリル酸系モノマーを用いることで、スチレン−アクリル酸系樹脂にカルボキシル基を導入できる。また、水酸基を有するモノマー(より具体的には、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等)を用いることで、スチレン−アクリル酸系樹脂に水酸基を導入できる。
スチレン系モノマーの好適な例としては、スチレン、アルキルスチレン(より具体的には、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、又は4−tert−ブチルスチレン等)、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、又はp−クロロスチレンが挙げられる。
アクリル酸系モノマーの好適な例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの好適な例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、又は(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの好適な例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが挙げられる。
ポリエステル樹脂は、1種以上のアルコールと1種以上のカルボン酸とを縮重合させることで得られる。ポリエステル樹脂を合成するためのアルコールとしては、例えば以下に示すような、2価アルコール(より具体的には、ジオール類又はビスフェノール類等)又は3価以上のアルコールを好適に使用できる。ポリエステル樹脂を合成するためのカルボン酸としては、例えば以下に示すような、2価カルボン酸又は3価以上のカルボン酸を好適に使用できる。
ジオール類の好適な例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジ1,2−プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリ1,2−プロパンジオール、又はポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
ビスフェノール類の好適な例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、又はビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
3価以上のアルコールの好適な例としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
2価カルボン酸の好適な例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸(より具体的には、n−ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、又はイソドデシルコハク酸等)、又はアルケニルコハク酸(より具体的には、n−ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、又はイソドデセニルコハク酸等)が挙げられる。
3価以上のカルボン酸の好適な例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、又はエンポール三量体酸が挙げられる。
<好適な熱硬化性樹脂>
トナー粒子(特に、シェル層)を構成する熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、スルホンアミド系樹脂、グリオキザール系樹脂、グアナミン系樹脂、アニリン系樹脂、ポリイミド樹脂(より具体的には、マレイミド重合体又はビスマレイミド重合体等)、又はキシレン系樹脂が好ましい。
熱硬化性樹脂は、1種以上の熱硬化性モノマーを架橋反応(重合)させることで得られる。また、架橋剤を用いることで、熱可塑性モノマーにより熱硬化性樹脂を合成することもできる。なお、熱硬化性モノマーは、架橋性を有するモノマーである。例えば、同種のモノマー同士が「−CH2−」を介して3次元的につながって熱硬化性樹脂になる場合、そのモノマーは「熱硬化性モノマー」に相当する。
熱硬化性モノマーの好適な例としては、メチロールメラミン、メラミン、メチロール化尿素(より具体的には、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素等)、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、又はスピログアナミンが挙げられる。
[トナーコア]
トナーコアは、結着樹脂を含有する。また、トナーコアは、内添剤(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉)を含有してもよい。
(結着樹脂)
トナーコアでは、一般的に、成分の大部分(例えば、85質量%以上)を結着樹脂が占める。このため、結着樹脂の性質がトナーコア全体の性質に大きな影響を与えると考えられる。結着樹脂として複数種の樹脂を組み合わせて使用することで、結着樹脂の性質(より具体的には、水酸基価、酸価、Tg、又はTm等)を調整することができる。例えば、結着樹脂がエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、又はメチル基を有する場合には、トナーコアはアニオン性になる傾向が強くなり、結着樹脂がアミノ基又はアミド基を有する場合には、トナーコアはカチオン性になる傾向が強くなる。結着樹脂が強いアニオン性を有するためには、結着樹脂の水酸基価及び酸価の少なくとも一方が10mgKOH/g以上であることが好ましい。
高速定着時におけるトナーの定着性を向上させるためには、結着樹脂のガラス転移点(Tg)が、20℃以上55℃以下であることが好ましい。高速定着時におけるトナーの定着性を向上させるためには、結着樹脂の軟化点(Tm)が、100℃以下であることが好ましい。なお、Tg及びTmの各々の測定方法は、後述する実施例と同じ方法又はその代替方法である。
トナーの定着性を向上させるためには、トナーコアが、結着樹脂として、熱可塑性樹脂(より具体的には、前述の「好適な熱可塑性樹脂」等)を含有することが好ましく、ポリエステル樹脂を含有することが特に好ましい。トナーの定着性を向上させるためには、トナーコアに含有される結着樹脂のうち、80質量%以上の樹脂がポリエステル樹脂であることが好ましく、90質量%以上の樹脂がポリエステル樹脂であることがより好ましく、100質量%の樹脂がポリエステル樹脂であることがさらに好ましい。
トナーコアの結着樹脂としてポリエステル樹脂を使用する場合、トナーコアの強度及びトナーの定着性を向上させるためには、ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)が1000以上2000以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率Mw/Mn)は9以上21以下であることが好ましい。
(着色剤)
トナーコアは、着色剤を含有してもよい。着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。トナーを用いて高画質の画像を形成するためには、着色剤の量が、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
トナーコアは、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
トナーコアは、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、又はシアン着色剤のようなカラー着色剤を含有していてもよい。
イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリールアミド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。イエロー着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、又は194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、又はC.I.バットイエローを好適に使用できる。
マゼンタ着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。マゼンタ着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、又は254)を好適に使用できる。
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。シアン着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、又は66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、又はC.I.アシッドブルーを好適に使用できる。
(離型剤)
トナーコアは、離型剤を含有していてもよい。離型剤は、例えば、トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーコアのアニオン性を強めるためには、アニオン性を有するワックスを用いてトナーコアを作製することが好ましい。トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、又はフィッシャートロプシュワックスのような脂肪族炭化水素ワックス;酸化ポリエチレンワックス又はそのブロック共重合体のような脂肪族炭化水素ワックスの酸化物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、又はライスワックスのような植物性ワックス;みつろう、ラノリン、又は鯨ろうのような動物性ワックス;オゾケライト、セレシン、又はペトロラタムのような鉱物ワックス;モンタン酸エステルワックス又はカスターワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような、脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスを好適に使用できる。1種類の離型剤を単独で使用してもよいし、複数種の離型剤を併用してもよい。
結着樹脂と離型剤との相溶性を改善するために、相溶化剤をトナーコアに添加してもよい。
(電荷制御剤)
トナーコアは、電荷制御剤を含有していてもよい。電荷制御剤は、例えば、トナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。
トナーコアに負帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナーコアのアニオン性を強めることができる。また、トナーコアに正帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナーコアのカチオン性を強めることができる。ただし、トナーにおいて十分な帯電性が確保される場合には、トナーコアに電荷制御剤を含有させる必要はない。
(磁性粉)
トナーコアは、磁性粉を含有していてもよい。磁性粉の材料としては、例えば、強磁性金属(より具体的には、鉄、コバルト、又はニッケル等)もしくはその合金、強磁性金属酸化物(より具体的には、フェライト、マグネタイト、又は二酸化クロム等)、又は強磁性化処理(より具体的には、熱処理等)が施された材料を好適に使用できる。1種類の磁性粉を単独で使用してもよいし、複数種の磁性粉を併用してもよい。また、磁性粉からの金属イオン(例えば、鉄イオン)の溶出を抑制するためには、磁性粉を表面処理することが好ましい。
[境界粒子]
前述の基本構成において、境界粒子の材料は、トナーコア及びシェル層の両方との親和性を考慮して決めることが好ましい。境界粒子を構成する樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂(より具体的には、前述の「好適な熱可塑性樹脂」等)が好ましく、1種以上のスチレン系モノマー(例えば、スチレンモノマー)と1種以上のアクリル酸系モノマー(例えば、アクリル酸エステルモノマー)との共重合体が特に好ましい。
[シェル層]
前述の「好適なシェル構成」では、シェル層が、樹脂膜と複数の樹脂粒子とを有する。また、シェル層は、樹脂膜及び樹脂粒子に加えて、さらに熱硬化性樹脂(より具体的には、前述の「好適な熱硬化性樹脂」等)を含有してもよい。トナーの帯電安定性及び耐熱保存性の両立を図るためには、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、及びグリオキザール系樹脂からなる群より選択される1種以上の熱硬化性樹脂をシェル層に含有させることが好ましい。
(樹脂膜)
前述の「好適なシェル構成」において、樹脂膜を構成する樹脂としては、疎水性熱可塑性樹脂(より具体的には、前述の「好適な熱可塑性樹脂」等)が好ましく、1種以上のスチレン系モノマー(例えば、スチレンモノマー)と1種以上のアクリル酸系モノマー(例えば、アクリル酸エステルモノマー)との共重合体が特に好ましい。スチレン−アクリル酸系樹脂は、ポリエステル樹脂と比べて、疎水性が強く、正帯電し易い傾向がある。
(樹脂粒子)
前述の「好適なシェル構成」においては、複数の樹脂粒子がそれぞれ、ポリエステル樹脂(第1樹脂)に加えて、含窒素樹脂をさらに含有する。樹脂粒子に含有される含窒素樹脂としては、少なくとも4級アンモニウム化合物モノマーとアクリル酸系モノマーとを含む単量体の共重合体が特に好ましい。また、上記4級アンモニウム化合物モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基含有4級アンモニウム化合物モノマーが好ましく、(メタ)アクリルアミドアルキルトリメチルアンモニウム塩(より具体的には、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド等)、又は(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリメチルアンモニウム塩(より具体的には、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド等)が特に好ましい。
[外添剤]
トナー母粒子の表面に、外添剤として無機粒子を付着させてもよい。外添剤は、例えばトナーの流動性又は取扱性を向上させるために使用される。トナーの流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の量が、トナー母粒子100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。また、トナーの流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の粒子径は0.01μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
外添剤(無機粒子)としては、シリカ粒子、又は金属酸化物(より具体的には、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、又はチタン酸バリウム等)の粒子を好適に使用できる。1種類の外添剤を単独で使用してもよいし、複数種の外添剤を併用してもよい。
[トナーの製造方法]
以下、前述の基本構成を有するトナーを製造する方法の一例について説明する。境界粒子を用いてトナーコアを外添処理して、表面に境界粒子が付着したトナーコア(以下、外添コアと記載する)を得る。続けて、液に、外添コアと、第1シェル材料(例えば、疎水性樹脂)と、第2シェル材料(例えば、正帯電性樹脂)とを入れる。続けて、液中で、外添コアの表面に付着したシェル材料を反応させることにより、外添コアの表面に、実質的に樹脂から構成されるシェル層を形成する。トナーが前述の基本構成を有するためには、正帯電性樹脂のガラス転移点(Tg)が、疎水性樹脂のガラス転移点(Tg)よりも5℃以上高いことが好ましい。なお、ガラス転移点(Tg)の測定方法は、後述する実施例と同じ方法又はその代替方法である。
均質なシェル層を形成するためには、シェル材料を含む液を攪拌するなどして、シェル材料を液に溶解又は分散させることが好ましい。また、シェル層形成時におけるトナーコア成分(特に、結着樹脂及び離型剤)の溶解又は溶出を抑制するためには、水性媒体中でシェル層を形成することが好ましい。水性媒体は溶媒として機能してもよい。水性媒体中に溶質が溶けていてもよい。水性媒体は分散媒として機能してもよい。水性媒体中に分散質が分散していてもよい。水性媒体中の極性媒体としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール又はエタノール等)を使用できる。水性媒体の沸点は約100℃である。
以下、より具体的な例に基づいて、本実施形態に係るトナーの製造方法についてさらに説明する。
(トナーコアの準備)
好適なトナーコアを容易に得るためには、凝集法又は粉砕法によりトナーコアを製造することが好ましく、粉砕法によりトナーコアを製造することがより好ましい。
以下、粉砕法の一例について説明する。まず、結着樹脂と、内添剤(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉の少なくとも1つ)とを混合する。続けて、得られた混合物を溶融混練する。続けて、得られた溶融混練物を粉砕及び分級する。その結果、所望の粒子径を有するトナーコアが得られる。
以下、凝集法の一例について説明する。まず、結着樹脂、離型剤、及び着色剤の各々の微粒子を水性媒体中で凝集させて、結着樹脂、離型剤、及び着色剤を含む凝集粒子を得る。続けて、得られた凝集粒子を加熱して、凝集粒子に含まれる成分を合一化させる。その結果、トナーコアの分散液が得られる。その後、トナーコアの分散液から、不要な物質(分散剤等)を除去することで、トナーコアが得られる。
(トナーコアの外添処理)
混合機(例えば、日本コークス工業株式会社製のFMミキサー)を用いてトナーコアと境界粒子とを混合する。これにより、トナーコアの表面に境界粒子が付着して、外添コアが得られる。図4は、形成された外添コアの断面の一例を示している。図4に示すように、例えば物理的な衝撃力によって境界粒子21の一部(底部)をトナーコア11に埋め込むことで、トナーコア11の表面に境界粒子21を強固に付着させることができる。
(シェル層の形成)
イオン交換水に塩酸を加えて、弱酸性(例えば、3以上5以下から選ばれるpH)の水性媒体を調製する。続けて、pHが調整された水性媒体に、外添コアと、正帯電性樹脂のサスペンション(正帯電性樹脂粒子を含む液)と、疎水性樹脂のサスペンション(疎水性樹脂粒子を含む液)とを添加する。正帯電性樹脂粒子は、ポリエステル樹脂(第1樹脂)と含窒素樹脂(例えば、1種以上の4級アンモニウム化合物モノマーと1種以上のアクリル酸系モノマーとの共重合体)とを含有する。疎水性樹脂粒子は、第2樹脂(ガラス転移点60℃以上80℃以下の樹脂)を含有する。疎水性樹脂は、常温の水に溶けない。シェル層の表面が前述の海島構造(図3参照)を有するためには、正帯電性樹脂が、ある程度強い親水性を有することが好ましい。また、疎水性樹脂の量と正帯電性樹脂の量とを適切な比率にすることが好ましい。また、必要に応じて、熱硬化性樹脂を合成するための材料を、液中に添加してもよい。
図5に示すように、疎水性樹脂粒子22aと正帯電性樹脂粒子23aとは、液中でトナーコア11の表面に付着する。トナーコア11の表面に均一にシェル材料を付着させるためには、シェル材料を含む液中にトナーコアを高度に分散させることが好ましい。液中にトナーコアを高度に分散させるために、液中に分散剤を含ませてもよいし、強力な攪拌装置(例えば、プライミクス株式会社製「ハイビスディスパーミックス」)を用いて液を攪拌してもよい。
続けて、上記シェル材料等を含む液を攪拌しながら液の温度を所定の速度(例えば、0.1℃/分以上3℃/分以下から選ばれる速度)で所定の保持温度(例えば、50℃以上90℃以下から選ばれる温度)まで上昇させる。さらに、液を攪拌しながら液の温度を上記保持温度に所定の時間(例えば、30分間以上4時間以下から選ばれる時間)保つ。液の温度を高温に保っている間に、トナーコアとシェル材料との間で反応(シェル層の固定化)が進行すると考えられる。シェル材料がトナーコアと結合することで、シェル層が形成される。図6は、形成されたシェル層の表面の一例を示している。図6に示されるように、シェル層の表面は、海島構造を有する。詳しくは、シェル層の表面は、樹脂膜22(疎水性領域)と、複数の樹脂粒子23(正帯電性領域)とを有する。また、シェル層の表面は、境界粒子21(図5参照)に対応する複数の凸部Pを有する。樹脂膜22は、第2樹脂(ガラス転移点60℃以上80℃以下の樹脂)を含有する。複数の樹脂粒子23はそれぞれ、ポリエステル樹脂(第1樹脂)と含窒素樹脂(例えば、1種以上の4級アンモニウム化合物モノマーと1種以上のアクリル酸系モノマーとの共重合体)との混合樹脂を含有する。液中でトナーコアの表面にシェル層が形成されることで、トナー母粒子の分散液が得られる。
上記のように、液中でトナーコアの表面に疎水性樹脂粒子を付着させて、液を加熱することで、疎水性樹脂粒子を溶かして膜化することができる。ただし、乾燥工程で加熱されて、又は外添工程で物理的な衝撃力を受けて、疎水性樹脂粒子の膜化が進行してもよい。
上記のようにしてシェル層を形成した後、例えば水酸化ナトリウムを用いてトナー母粒子の分散液を中和する。続けて、トナー母粒子の分散液を、例えば常温(約25℃)まで冷却する。続けて、例えばブフナー漏斗を用いて、トナー母粒子の分散液をろ過する。これにより、トナー母粒子が液から分離(固液分離)され、ウェットケーキ状のトナー母粒子が得られる。続けて、得られたウェットケーキ状のトナー母粒子を洗浄する。続けて、洗浄されたトナー母粒子を乾燥する。その後、必要に応じて、混合機(例えば、日本コークス工業株式会社製のFMミキサー)を用いてトナー母粒子と外添剤とを混合して、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させてもよい。なお、乾燥工程でスプレードライヤーを用いる場合には、外添剤(例えば、シリカ粒子)の分散液をトナー母粒子に噴霧することで、乾燥工程と外添工程とを同時に行うことができる。こうして、トナー粒子を多数含むトナーが製造される。
なお、上記トナーの製造方法の内容及び順序はそれぞれ、要求されるトナーの構成又は特性等に応じて任意に変更することができる。また、外添工程の後で、トナーを篩別してもよい。また、必要のない工程は割愛してもよい。例えば、市販品をそのまま材料として用いることができる場合には、市販品を用いることで、その材料を調製する工程を割愛できる。また、液のpHを調整しなくてもシェル層を形成するための反応が良好に進行する場合には、pH調整工程を割愛してもよい。トナー母粒子の表面に外添剤を付着させない(外添工程を割愛する)場合には、トナー母粒子がトナー粒子に相当する。効率的にトナーを製造するためには、多数のトナー粒子を同時に形成することが好ましい。同時に製造されたトナー粒子は、互いに略同一の構成を有すると考えられる。
本発明の実施例について説明する。表1に、実施例又は比較例に係るトナーT−1〜T−11(それぞれ静電潜像現像用トナー)を示す。また、表2には、表1に示される各トナーの製造に用いられる材料(サスペンションA−1〜A−3、サスペンションB−1及びB−2、並びに境界粒子C−1〜C−5)を示す。表2において、「粒子径」は個数平均粒子径を意味する。個数平均粒子径の測定には、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた。例えば、サスペンションA−1に含まれる樹脂粒子に関しては、個数平均粒子径が32nmであり、Tg(ガラス転移点)が71℃であった。
Figure 2017116568
Figure 2017116568
以下、トナーT−1〜T−11(それぞれ静電潜像現像用トナー)の製造方法、評価方法、及び評価結果について、順に説明する。なお、誤差が生じる評価においては、誤差が十分小さくなる相当数の測定値を得て、得られた測定値の算術平均を評価値とした。また、Tg(ガラス転移点)及びTm(軟化点)の測定方法はそれぞれ、何ら規定していなければ、次に示すとおりである。
<Tgの測定方法>
示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて、試料(例えば、樹脂)の吸熱曲線を求めた。続けて、得られた吸熱曲線から試料のTg(ガラス転移点)を読み取った。得られた吸熱曲線中の比熱の変化点(ベースラインの外挿線と立ち下がりラインの外挿線との交点)の温度が、試料のTg(ガラス転移点)に相当する。
<Tmの測定方法>
高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)に試料(例えば、樹脂)をセットし、ダイス細孔径1mm、プランジャー荷重20kg/cm2、昇温速度6℃/分の条件で、1cm3の試料を溶融流出させて、試料のS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)を求めた。続けて、得られたS字カーブから試料のTm(軟化点)を読み取った。得られたS字カーブにおいて、ストロークの最大値をS1とし、低温側のベースラインのストローク値をS2とすると、S字カーブ中のストロークの値が「(S1+S2)/2」となる温度が、試料のTm(軟化点)に相当する。
[トナーの製造方法]
(トナーコアの作製)
低粘度ポリエステル樹脂(Tg=38℃、Tm=65℃)750gと、中粘度ポリエステル樹脂(Tg=53℃、Tm=84℃)100gと、高粘度ポリエステル樹脂(Tg=71℃、Tm=120℃)150gと、カルナバワックス(株式会社加藤洋行製「カルナウバワックス1号」)55gと、着色剤(DIC株式会社製「KET BLUE 111」、フタロシアニンブルー)40gとを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて回転速度2400rpmで混合した。
続けて、得られた混合物を、二軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて、材料供給速度5kg/時、軸回転速度160rpm、設定温度範囲(シリンダー温度)100℃以上130℃以下の条件で、溶融混練した。続けて、得られた溶融混練物を冷却し、冷却された溶融混練物を粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製「ロートプレックス(登録商標)16/8型」)を用いて粗粉砕した。続けて、得られた粗粉砕物を、ジェットミル(日本ニューマチック工業株式会社製「超音波ジェットミルI型」)を用いて微粉砕した。続けて、得られた微粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)を用いて分級した。その結果、体積中位径(D50)6μmのトナーコアが得られた。
(サスペンションA−1の調製)
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコをウォーターバスにセットし、フラスコ内に、30℃のイオン交換水875gと、アニオン界面活性剤(花王株式会社製「ラテムル(登録商標)WX」、成分:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、固形分濃度:26質量%)75gとを入れた。その後、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を80℃に昇温させた後、その温度(80℃)に保った。続けて、80℃のフラスコ内容物に2種類の液(第1の液及び第2の液)をそれぞれ5時間かけて滴下した。第1の液は、スチレン18gと、アクリル酸ブチル2gとの混合液であった。第2の液は、過硫酸カリウム0.5gをイオン交換水30gに溶かした溶液であった。続けて、フラスコ内の温度を80℃にさらに2時間保って、フラスコ内容物を重合させた。その結果、固形分濃度5質量%の疎水性樹脂のサスペンション(以下、サスペンションA−1と記載する)が得られた。
(サスペンションA−2の調製)
サスペンションA−2の調製方法は、第1の液として、スチレン18gとアクリル酸ブチル2gとの混合液の代わりに、スチレン17gとアクリル酸ブチル3gとの混合液を使用した以外は、サスペンションA−1の調製方法と同じであった。サスペンションA−2の固形分濃度は5質量%であった。
(サスペンションA−3の調製)
サスペンションA−3の調製方法は、第1の液として、スチレン18gとアクリル酸ブチル2gとの混合液の代わりに、スチレン19.5gとアクリル酸ブチル0.5gとの混合液を使用した以外は、サスペンションA−1の調製方法と同じであった。サスペンションA−3の固形分濃度は5質量%であった。
(サスペンションB−1の調製)
温度計、冷却管、窒素導入管、及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコ内に、イソブタノール90gと、メタクリル酸メチル100gと、アクリル酸ブチル35gと、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド(Alfa Aesar社製)30gと、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)(和光純薬工業株式会社製「VA−086」)6gとを入れた。続けて、窒素雰囲気、温度80℃の条件で、フラスコ内容物を3時間反応させた。その後、フラスコ内に2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)(和光純薬工業株式会社製「VA−086」)3gを加えて、窒素雰囲気、温度80℃の条件で、フラスコ内容物をさらに3時間反応させて、重合体を含む液を得た。続けて、得られた重合体を含む液を、減圧雰囲気、温度150℃の条件で乾燥した。続けて、乾燥した重合体を解砕し、正帯電性樹脂を得た。
続けて、混合装置(プライミクス株式会社製「ハイビスミックス(登録商標)2P−1型」)の容器に、上記のようにして得た正帯電性樹脂10gと、ポリエステル樹脂(Tg=65℃、Tm=100℃)200gとを入れた。続けて、オイルバスを用いて容器内の温度を100℃に保ち、容器内の樹脂を溶融させた。続けて、回転速度30rpmで容器内容物を30分間攪拌して、樹脂混合物の溶液を得た。その後、得られた樹脂混合物の溶液に、トリエタノールアミン(和光純薬工業株式会社製)5gと、アニオン界面活性剤(花王株式会社製「エマール(登録商標)0」、成分:ラウリル硫酸ナトリウム)2gとを加えた。続けて、容器内容物を混合しながら、温度75℃のイオン交換水500gを容器内に加えた。その結果、固形分濃度10質量%の正帯電性樹脂(含窒素樹脂含有樹脂)のサスペンション(以下、サスペンションB−1と記載する)が得られた。
(サスペンションB−2の調製)
サスペンションB−2の調製では、サスペンションB−1の調製方法と同様にして、正帯電性樹脂を得た。続けて、混合装置(プライミクス株式会社製「ハイビスミックス2P−1型」)の容器に、正帯電性樹脂200gと、酢酸エチル(和光純薬工業株式会社製「酢酸エチル特級」)184gとを入れた。続けて、回転速度20rpmで容器内容物を1時間攪拌して、高粘度の溶液を得た。その後、得られた高粘度の溶液に、酢酸エチル等の水溶液(詳しくは、1N−塩酸18gとアニオン界面活性剤(花王株式会社製「エマール0」、成分:ラウリル硫酸ナトリウム)20gと酢酸エチル(和光純薬工業株式会社製「酢酸エチル特級」)16gとをイオン交換水562gに溶かした水溶液)を加えた。その結果、固形分濃度10質量%のサスペンションB−2(正帯電性樹脂のサスペンション)が得られた。
(境界粒子C−1の作製)
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコをウォーターバスにセットした。続けて、フラスコ内に、30℃のイオン交換水875gと、アニオン界面活性剤(花王株式会社製「ラテムルWX」、成分:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、固形分濃度:26質量%)75gとを入れた。その後、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を80℃に昇温させた。続けて、80℃のフラスコ内容物に2種類の液(第1の液及び第2の液)をそれぞれ5時間かけて滴下した。第1の液は、スチレン19gとアクリル酸ブチル1gとの混合液であった。第2の液は、過硫酸カリウム0.5gをイオン交換水30gに溶かした溶液であった。
続けて、温度80℃、回転速度100rpmの条件で、フラスコ内容物を2時間攪拌し、フラスコ内容物を重合させて、樹脂粒子のサスペンションを得た。続けて、得られたサスペンションをフリーズドライ処理することにより、境界粒子C−1の粉体(樹脂粉体)を得た。
(境界粒子C−2の作製)
境界粒子C−2の作製方法は、第1の液として、スチレン19gとアクリル酸ブチル1gとの混合液の代わりに、スチレン19.5gとアクリル酸ブチル0.5gとの混合液を使用した以外は、境界粒子C−1の作製方法と同じであった。
(境界粒子C−3の作製)
境界粒子C−3の作製方法は、アニオン界面活性剤(ラテムルWX)の量を75gから50gに変更した以外は、境界粒子C−1の作製方法と同じであった。
(境界粒子C−4の作製)
前述の手順で調製したサスペンションA−1をフリーズドライ処理することにより、境界粒子C−4の粉体(樹脂粉体)を得た。
(境界粒子C−5の作製)
境界粒子C−5の作製方法は、第1の液として、スチレン19gとアクリル酸ブチル1gとの混合液の代わりに、スチレン6gとアクリル酸メチル2gとメタクリル酸12gとの混合液を使用した以外は、境界粒子C−1の作製方法と同じであった。
(トナーコアの外添処理)
前述の手順でトナーコアを作製した後、得られたトナーコアを外添処理した。詳しくは、トナーコア100質量部と境界粒子(各トナーに定められた、表1に示される境界粒子C−1〜C−5のいずれか)1.0質量部とを、容量10LのFMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて5分間混合することにより、トナーコアの表面に境界粒子を付着させた。その結果、表面に境界粒子が付着したトナーコア(外添コア)が得られた。なお、トナーT−6の製造では、境界粒子によるトナーコアの外添処理を行わなかった。
(シェル層形成工程)
続けて、温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコをウォーターバスにセットし、フラスコ内にイオン交換水100gを入れた。その後、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を30℃に保った。続けて、フラスコ内に希塩酸を加えて、フラスコ内容物のpHを4に調整した。続けて、フラスコ内に、ヘキサメチロールメラミン初期重合体の水溶液(昭和電工株式会社製「ミルベン(登録商標)レジンSM−607」、固形分濃度80質量%)0.35gと、疎水性樹脂のサスペンション(各トナーに定められた、表1に示されるサスペンションA−1〜A−3のいずれか)220gと、正帯電性樹脂のサスペンション(各トナーに定められた、表1に示されるサスペンションB−1又はB−2)1.2gとを添加した。ただし、トナーT−5の製造では、ヘキサメチロールメラミン初期重合体の水溶液(ミルベンレジンSM−607)を添加しなかった。また、トナーT−10の製造では、正帯電性樹脂のサスペンションを添加しなかった。
続けて、フラスコ内に、前述の手順で作製した外添コア(ただし、トナーT−6の製造ではトナーコア)300gを添加し、回転速度200rpmでフラスコ内容物を1時間攪拌した。その後、フラスコ内に、イオン交換水300gを添加した。続けて、フラスコ内容物を回転速度100rpmで攪拌しながら、フラスコ内の温度を1℃/分の速度で70℃まで上げた。続けて、温度70℃、回転速度100rpmの条件でフラスコ内容物を2時間攪拌した。
続けて、フラスコ内に水酸化ナトリウムを加えて、フラスコ内容物のpHを7に調整した。続けて、フラスコ内容物をその温度が常温(約25℃)になるまで冷却して、トナー母粒子を含む分散液を得た。
(洗浄工程)
上記のようにして得られたトナー母粒子の分散液を、ブフナー漏斗を用いてろ過(固液分離)して、ウェットケーキ状のトナー母粒子を得た。その後、得られたウェットケーキ状のトナー母粒子をイオン交換水に再分散させた。さらに、分散とろ過とを5回繰り返して、トナー母粒子を洗浄した。
(乾燥工程)
続けて、得られたトナー母粒子を、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させた。これにより、トナー母粒子のスラリーが得られた。続けて、連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)を用いて、熱風温度45℃かつブロアー風量2m3/分の条件で、スラリー中のトナー母粒子を乾燥させた。その結果、トナー母粒子の粉体が得られた。トナーT−1〜T−5の各々に関して、乾燥したトナー母粒子を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果、シェル層に粒状感が見られたが、シェル層を構成する粒子同士は分離していなかった。
(外添工程)
続けて、得られたトナー母粒子を外添処理した。詳しくは、トナー母粒子100質量部と乾式シリカ微粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA90」)1.0質量部とを、容量10LのFMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて5分間混合することにより、トナー母粒子の表面に外添剤(シリカ粒子)を付着させた。その後、得られたトナーを、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別した。その結果、多数のトナー粒子を含むトナー(トナーT−1〜T−11)が得られた。
[評価方法]
各試料(トナーT−1〜T−11)の評価方法は、以下の通りである。
(電荷減衰)
試料(トナー)の電荷減衰定数αは、静電気拡散率測定装置(株式会社ナノシーズ製「NS−D100」)を用いて、JIS(日本工業規格)C 61340−2−1−2006に準拠した方法で測定した。以下、トナーの電荷減衰定数の測定方法について詳述する。
測定セルに試料を入れた。測定セルは、内径10mm、深さ1mmの凹部が形成された金属製のセルであった。スライドガラスを用いて試料を上から押し込み、セルの凹部に試料を充填した。セルの表面においてスライドガラスを往復移動させることによって、セルから溢れた試料を除去した。試料の充填量は0.04g以上0.06g以下であった。
続けて、試料が充填された測定セルを、温度32℃、湿度80%RHの環境下で12時間静置した。続けて、接地させた測定セルを静電気拡散率測定装置内に置き、コロナ放電によって試料にイオンを供給して、試料を帯電させた。帯電時間は0.5秒間であった。そして、コロナ放電終了後0.7秒間経過した後から、試料の表面電位を連続的に測定した。測定された表面電位と、式「V=V0exp(−α√t)」とに基づいて、電荷減衰定数(電荷減衰速度)αを算出した。式中、Vは表面電位[V]、V0は初期表面電位[V]、tは減衰時間[秒]をそれぞれ示す。
電荷減衰定数が0.015以下であれば○(良い)と評価し、電荷減衰定数が0.015を超えれば×(良くない)と評価した。
(帯電安定性)
現像剤用キャリア(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の「TASKalfa5550ci」用キャリア)100質量部と、試料(トナー)10質量部とを、ボールミルを用いて30分間混合して、評価用現像剤(2成分現像剤)を得た。
続けて、常温常湿環境(N/N環境:温度23℃、湿度50%RH)下で24時間静置した評価用現像剤と、高温高湿環境(H/H環境:温度32.5℃、湿度80%RH)下で24時間静置した評価用現像剤とについて、それぞれ現像剤中のトナーの帯電量を測定した。現像剤中のトナーの帯電量は、Q/mメーター(トレック社製「MODEL 210HS−1」)を用いて次に示す条件で測定した。
<現像剤中のトナーの帯電量の測定方法>
Q/mメーターの測定セルに現像剤(キャリア及びトナー)0.10gを投入し、投入された現像剤のうちトナーのみを篩(金網)を介して10秒間吸引した。そして、式「吸引されたトナーの総電気量(単位:μC)/吸引されたトナーの質量(単位:g)」に基づいて、現像剤中のトナーの帯電量(単位:μC/g)を算出した。
N/N環境下に静置した評価用現像剤の帯電量(以下、N/N−帯電量と記載する)が、30μC/g以上であれば「○(良い)」と評価し、30μC/g未満であれば「×(良くない)」と評価した。
H/H環境下に静置した評価用現像剤の帯電量(以下、H/H−帯電量と記載する)が、10μC/g以上であれば「○(良い)」と評価し、10μC/g未満であれば「×(良くない)」と評価した。
(帯電耐久性)
帯電安定性の評価と同様の手法により、評価用現像剤(2成分現像剤)を調製した。評価機としては、カラー複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa5550ci」)を用いた。評価用現像剤を評価機の現像器に投入し、評価機のトナーコンテナに試料(補給用トナー)を投入した。
続けて、上記評価機を用いて、常温常湿環境(N/N環境:温度23℃、湿度50%RH)下において、印字率5%で300000枚連続印刷する耐刷試験を行った。その後、現像剤中のトナーの帯電量を測定した。現像剤中のトナーの帯電量は、帯電安定性の評価と同様の手法により測定した。
耐刷試験後の評価用現像剤の帯電量(以下、耐刷−帯電量と記載する)が、N/N−帯電量に対して75%以上であれば「○(良い)」と評価し、N/N−帯電量に対して75%未満であれば「×(良くない)」と評価した。
(転写効率及び耐ドラム付着性)
帯電安定性の評価と同様の手法により、評価用現像剤(2成分現像剤)を調製した。評価機としては、カラー複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa5550ci」)を用いた。評価用現像剤を評価機の現像器に投入し、試料(補給用トナー)を評価機のトナーコンテナに投入した。
上記評価機を用いて、常温常湿環境(温度23℃、湿度50%RH)下において、印字率5%で100000枚連続印刷する耐刷試験を行った。
上記耐刷試験前(以下、初期と記載する)と上記耐刷試験後との各々のタイミングにおいて、上記評価機を用いて、試料(トナー)を補給しながら、印字率5%の画像を、温度32℃、湿度80%RHの環境下で1万枚の記録媒体(A4サイズの印刷用紙)に連続印刷した。連続印刷中、定期的に目視で感光体ドラムの表面にトナーによる着色が生じたか否かを確認した。また、連続印刷後、消費トナーの質量及び回収トナーの質量を測定して、下記式から転写効率(単位:質量%)を算出した。
転写効率=100×(消費トナーの質量−回収トナーの質量)/(消費トナーの質量)
なお、消費トナーは、トナーコンテナにセットされた試料(トナー)のうち、トナーコンテナから排出されたトナーである。また、回収トナーとは、消費トナーのうち、記録媒体に転写されなかったトナーである。
初期の転写効率に関しては、90質量%以上であれば○(良い)と評価し、90質量%未満であれば×(良くない)と評価した。また、耐刷試験後の転写効率に関しては、85質量%以上であれば○(良い)と評価し、85質量%未満であれば×(良くない)と評価した。
(低温定着性)
帯電安定性の評価と同様の手法により、評価用現像剤(2成分現像剤)を調製した。評価機としては、Roller−Roller方式の加熱加圧型の定着器(ニップ幅8mm)を有するカラープリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5250DN」を改造して定着温度を変更可能にした評価機)を用いた。評価用現像剤を評価機の現像器に投入し、試料(補給用トナー)を評価機のトナーコンテナに投入した。
上記評価機を用いて、常温常湿環境(温度23℃、湿度50%RH)下、坪量90g/m2の紙(A4サイズの普通紙)に、線速200mm/秒、トナー載り量1.0mg/cm2の条件で、大きさ25mm×25mmのソリッド画像を形成した。続けて、画像が形成された紙を評価機の定着器に通した。ニップ通過時間は40m秒であった。
定着温度100℃以上200℃以下の範囲で最低定着温度を測定した。詳しくは、定着器の定着温度を100℃から5℃ずつ上昇させて、ソリッド画像(トナー像)を紙に定着できる最低温度(最低定着温度)を測定した。トナーを定着させることができたか否かは、折擦り試験で確認した。詳しくは、定着器に通した評価用紙を、画像を形成した面が内側となるように折り曲げ、布帛で被覆した1kgの分銅を用いて、折り目上の画像を5往復摩擦した。続けて、紙を広げ、紙の折り曲げ部(ソリッド画像が形成された部分)を観察した。そして、折り曲げ部のトナーの剥がれの長さ(剥がれ長)を測定した。剥がれ長が1mm以下となる定着温度のうちの最低温度を、最低定着温度とした。最低定着温度が140℃以下であれば◎(非常に良い)と評価し、最低定着温度が140℃超150℃以下であれば○(良い)と評価し、最低定着温度が150℃を超えれば×(悪い)と評価した。
[評価結果]
トナーT−1〜T−11の各々についての評価結果を、表3及び表4に示す。表3には、電荷減衰(電荷減衰定数)、帯電安定性(N/N−帯電量及びH/H−帯電量)、及び帯電耐久性(耐刷−帯電量)の評価結果を示す。表4には、初期及び耐刷試験後の各々の耐ドラム付着性(トナー付着の有無)、初期及び耐刷試験後の各々の転写効率、並びに低温定着性(最低定着温度)の評価結果を示す。
表3において、項目「耐刷−帯電量」の括弧内の数値(単位:%)は、「N/N−帯電量」に対する「耐刷−帯電量」の比率(=100×「耐刷−帯電量」/「N/N−帯電量」)を示している。なお、トナーT−10(比較例5に係るトナー)の評価では、耐刷試験後のトナーの帯電量の値が小さすぎて耐刷−帯電量を測定できなかった。
表4中の項目「ドラム付着」において、「○」は、感光体ドラムに対するトナー付着が生じなかったことを示し、「×」は、感光体ドラムに対するトナー付着が生じたことを示している。
Figure 2017116568
Figure 2017116568
トナーT−1〜T−5(実施例1〜5に係るトナー)はそれぞれ、前述の基本構成を有していた。詳しくは、実施例1〜5に係るトナーではそれぞれ、シェル層の表面が、海状領域(疎水性領域)と、海状領域に対して島状に分布する複数の島状領域(正帯電性領域)とを有していた。海状領域は、島状領域よりも強い疎水性を有していた。島状領域は、海状領域よりも強い正帯電性を有していた。また、トナーコアとシェル層との境界には、トナーコアに外添された複数の粒子(境界粒子)が存在していた。シェル層の表面は、境界粒子に対応する複数の凸部を有していた。シェル層は、第1樹脂(ポリエステル樹脂)、第2樹脂(ガラス転移点60℃以上80℃以下の樹脂:スチレンとアクリル酸ブチルとの共重合体)、及び含窒素樹脂(メタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルと2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライドとの共重合体)を含有していた。境界粒子は第3樹脂(ガラス転移点90℃以上130℃以下の樹脂:スチレンとアクリル酸ブチルとの共重合体)を含有していた。
表3及び表4に示されるように、実施例1〜5に係るトナーはそれぞれ、常温常湿環境下でも高温高湿環境下でも、十分な正帯電性を有していた。また、実施例1〜5に係るトナーはそれぞれ、帯電耐久性(詳しくは、耐刷試験後の帯電性)に優れていた。また、実施例1〜5に係るトナーはそれぞれ、電荷減衰特性、低温定着性、クリーニング性(特に、感光体ドラムに対する耐付着性)、及び現像性(特に、転写効率)に優れていた。
表3及び表4に示されるように、トナーT−7(比較例2に係るトナー)は、トナーT−1〜T−5(実施例1〜5に係るトナー)と比較して、電荷減衰特性及び耐久性に劣っていた。この理由は、シェル層がポリエステル樹脂を含有していなかった(「サスペンションB−2の調製」参照)ためであると推察される。
表4に示されるように、トナーT−8(比較例3に係るトナー)は、トナーT−1〜T−5(実施例1〜5に係るトナー)と比較して、低温定着性に劣っていた。この理由は、第2樹脂(サスペンションA−3)のガラス転移点が高過ぎた(表1及び表2参照)ためであると推察される。
表4に示されるように、トナーT−9(比較例4に係るトナー)は、トナーT−1〜T−5(実施例1〜5に係るトナー)と比較して、クリーニング性(特に、感光体ドラムに対する耐付着性)、及び現像性(特に、転写効率)に劣っていた。この理由は、第3樹脂(境界粒子C−4)のガラス転移点が低過ぎた(表1及び表2参照)ためであると推察される。
本発明に係る静電潜像現像用トナーは、例えば複写機、プリンター、又は複合機において画像を形成するために用いることができる。
10 トナー母粒子
11 トナーコア
12 シェル層
21 境界粒子
22 樹脂膜
22a 疎水性樹脂粒子
23 樹脂粒子
23a 正帯電性樹脂粒子
P 凸部
R1 島状領域
R2 海状領域

Claims (8)

  1. コアと、前記コアの表面を覆うシェル層とを備えるトナー粒子を、複数含み、
    前記シェル層の表面は、海状領域と、前記海状領域に対して島状に分布し、それぞれ前記海状領域よりも強い正帯電性を有する複数の島状領域とを有し、
    前記海状領域は、前記島状領域よりも強い疎水性を有し、
    前記コアと前記シェル層との境界に、前記コアに外添された複数の境界粒子が存在し、
    前記シェル層の表面は、前記境界粒子に対応する複数の凸部を有し、
    前記シェル層は第1樹脂及び第2樹脂を含有し、前記境界粒子は第3樹脂を含有し、
    前記第1樹脂はポリエステル樹脂であり、
    前記第2樹脂のガラス転移点は60℃以上80℃以下であり、
    前記第3樹脂のガラス転移点は90℃以上130℃以下である、静電潜像現像用トナー。
  2. 前記コアは、ポリエステル樹脂を含有する、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
  3. 前記シェル層は、それぞれ前記第1樹脂を含有する複数の樹脂粒子と、前記第2樹脂を含有する樹脂膜とを有し、
    前記樹脂粒子は、含窒素樹脂をさらに含有し、
    前記樹脂膜のうち前記シェル層の表面に露出する部分が前記海状領域に相当し、
    前記樹脂粒子のうち前記樹脂膜から露出する部分が前記島状領域に相当する、請求項1又は2に記載の静電潜像現像用トナー。
  4. 前記含窒素樹脂は、少なくとも4級アンモニウム化合物モノマーとアクリル酸系モノマーとを含む単量体の共重合体である、請求項3に記載の静電潜像現像用トナー。
  5. 前記第2樹脂及び前記第3樹脂はそれぞれ、1種以上のスチレン系モノマーと1種以上のアクリル酸系モノマーとの共重合体である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
  6. 前記シェル層は、熱硬化性樹脂をさらに含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
  7. 前記シェル層は、前記熱硬化性樹脂として、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、及びグリオキザール系樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂を含有する、請求項6に記載の静電潜像現像用トナー。
  8. 前記トナー粒子は、外添剤として無機粒子をさらに備える、請求項1〜7のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
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