本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、粉体(より具体的には、トナーコア、トナー母粒子、外添剤、又はトナー等)に関する評価結果(形状又は物性などを示す値)は、何ら規定していなければ、粉体から平均的な粒子を相当数選び取って、それら平均的な粒子の各々について測定した値の個数平均である。
粉体の個数平均粒子径は、何ら規定していなければ、顕微鏡を用いて測定された1次粒子の円相当径(粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。また、粉体の体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA−750」)を用いて測定した値である。また、Tg(ガラス転移点)及びTm(軟化点)の測定方法はそれぞれ、何ら規定していなければ、後述する実施例と同じ方法又はその代替方法である。また、酸価及び水酸基価の各々の測定値は、何ら規定していなければ、「JIS(日本工業規格)K0070−1992」に従って測定した値である。また、数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw)の各々の測定値は、何ら規定していなければ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した値である。
帯電性の強さは、何ら規定していなければ、摩擦帯電し易さに相当する。例えばトナーは、日本画像学会から提供される標準キャリア(アニオン性:N−01、カチオン性:P−01)と混ぜて攪拌することで、摩擦帯電させることができる。摩擦帯電させる前と後とでそれぞれ、例えばKFM(ケルビンプローブフォース顕微鏡)でトナー粒子の表面電位を測定し、摩擦帯電の前後での電位の変化が大きい部位ほど帯電性が強いことになる。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。また、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを包括的に「(メタ)アクリロニトリル」と総称する場合がある。また、アクリロイル(CH2=CH−CO−)及びメタクリロイル(CH2=C(CH3)−CO−)を包括的に「(メタ)アクリロイル」と総称する場合がある。また、イオン化して塩を形成し得る官能基及びその塩を包括的に「親水性官能基」と総称する場合がある。親水性官能基の例としては、酸基(より具体的には、カルボキシル基又はスルホ基等)、水酸基、又はこれらの塩(より具体的には、−COONa、−SO3Na、又は−ONa等)が挙げられる。各化学式中の繰返し単位の添え字「n」は、各々独立して、その繰返し単位の繰返し数(モル数)を示している。何ら規定していなければ、n(繰返し数)は任意である。
本実施形態に係るトナーは、静電潜像の現像に好適に用いることができる。本実施形態のトナーは、複数のトナー粒子(それぞれ後述する構成を有する粒子)を含む粉体である。トナーは、1成分現像剤として使用してもよい。また、混合装置(例えば、ボールミル)を用いてトナーとキャリアとを混合して2成分現像剤を調製してもよい。高画質の画像を形成するためには、キャリアとしてフェライトキャリアを使用することが好ましい。また、長期にわたって高画質の画像を形成するためには、キャリアコアと、キャリアコアを被覆する樹脂層とを備える磁性キャリア粒子を使用することが好ましい。キャリア粒子に磁性を付与するためには、磁性材料(例えば、フェライト)でキャリアコアを形成してもよいし、磁性粒子を分散させた樹脂でキャリアコアを形成してもよい。また、キャリアコアを被覆する樹脂層中に磁性粒子を分散させてもよい。高画質の画像を形成するためには、2成分現像剤におけるトナーの量は、キャリア100質量部に対して、5質量部以上15質量部以下であることが好ましい。なお、正帯電性トナーは、キャリアとの摩擦により正に帯電する。また、負帯電性トナーは、キャリアとの摩擦により負に帯電する。
本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、コア(以下、トナーコアと記載する)と、トナーコアの表面を覆うシェル層(カプセル層)とを備える。例えば、低温で溶融するトナーコアを、耐熱性に優れるシェル層で覆うことで、トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図ることが可能になる。シェル層の表面(又は、シェル層で覆われていないトナーコアの表面領域)に外添剤が付着していてもよい。シェル層は、実質的に樹脂から構成される。シェル層を構成する樹脂中に添加剤が分散していてもよい。なお、必要がなければ外添剤を割愛してもよい。以下、外添剤が付着する前のトナー粒子を、トナー母粒子と記載する。また、トナーコアを形成するための材料を、トナーコア材料と記載する。また、シェル層を形成するための材料を、シェル材料と記載する。
本実施形態に係るトナーは、例えば電子写真装置(画像形成装置)において画像の形成に用いることができる。以下、電子写真装置による画像形成方法の一例について説明する。
まず、画像データに基づいて感光体(例えば、アモルファスシリコン(a−Si)感光体ドラムの表層部)に静電潜像を形成する。次に、形成された静電潜像を、トナーを含む現像剤を用いて現像する。現像工程では、感光体の近傍に配置された現像スリーブ(例えば、現像装置内の現像ローラーの表層部)上のトナー(例えば、キャリア又はブレードとの摩擦により帯電したトナー)を感光体の静電潜像に付着させて、感光体上にトナー像を形成する。そして、続く転写工程では、感光体上のトナー像を中間転写体(例えば、転写ベルト)に転写した後、さらに中間転写体上のトナー像を記録媒体(例えば、紙)に転写する。その後、定着装置(定着方式:加熱ローラー及び加圧ローラーによるニップ定着)によりトナーを加熱及び加圧して、記録媒体にトナーを定着させる。その結果、記録媒体に画像が形成される。例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの4色のトナー像を重ね合わせることで、フルカラー画像を形成することができる。
本実施形態に係るトナーは、次に示す構成(以下、基本構成と記載する)を有する静電潜像現像用トナーである。
(トナーの基本構成)
静電潜像現像用トナーに含まれるトナー粒子が、トナーコアとシェル層とを備えるトナー母粒子を含む。トナーコアは、結着樹脂及び離型剤を含有する。結着樹脂のSP値(SPC)と、離型剤のSP値(SPW)と、シェル層のSP値(SPS)とが、関係式「|SPC−SPW|>|SPS−SPW|」及び関係式「SPC>SPS」の両方を満たす。シェル層の厚さは、1nm以上23nm以下である。シェル層の被覆率が面積割合で30%以上90%未満であるトナー母粒子の個数割合は60個数%以上である。シェル層の被覆率が面積割合で90%以上であるトナー母粒子の個数割合は5個数%以下である。以下、トナーコアの表面領域のうちシェル層が覆う領域の面積割合を、シェル被覆率と記載する。
十分なトナーの耐熱保存性を確保しつつ、トナーを用いて高画質の画像(詳しくは、光沢値の高い画像)を形成するためには、上記基本構成に規定されるような条件(すなわち、材料のSP値に関する要件、及びシェル層の被覆態様に関する要件)を満たすことが好ましい。
<材料のSP値に関する要件>
上記基本構成を有するトナーでは、トナーコア中の結着樹脂のSP値(SPC)と、トナーコア中の離型剤のSP値(SPW)と、シェル層のSP値(SPS)とが、下記条件(A)及び(B)を満たす。
(A)|SPC−SPW|>|SPS−SPW|
(B)SPC>SPS
なお、上記基本構成において、SP値(溶解度パラメーター)は、Fedors法により算出された値(温度:25℃)である。Fedors法により算出されるSP値は、式「SP値=(E/V)1/2」(E:分子凝集エネルギー[cal/mol]、V:溶媒のモル分子容[cm3/mol])で表される。Fedors法の詳細は、下記文献に記載されている。
文献:R.F.Fedors,「Polymer Engineering and Science」,1974年,第14巻,第2号,p147−154
<シェル層の被覆態様に関する要件>
上記基本構成を有するトナーは、下記条件(C)〜(E)を満たす。
(C)シェル層の厚さが、1nm以上23nm以下である。シェル層の厚さは、市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いてトナー粒子の断面のTEM(透過型電子顕微鏡)撮影像を解析することによって計測できる。なお、1つのトナー粒子においてシェル層の厚さが均一でない場合には、均等に離間した4箇所(詳しくは、トナー粒子の断面の略中心で直交する2本の直線を引き、それら2本の直線がシェル層と交差する4箇所)の各々でシェル層の厚さを測定し、得られた4つの測定値の算術平均を、そのトナー粒子の評価値(シェル層の厚さ)とする。トナーコアとシェル層との境界は、例えば、トナーコア及びシェル層のうち、シェル層のみを選択的に染色することで、確認できる。TEM撮影像においてトナーコアとシェル層との境界が不明瞭である場合には、TEMと電子エネルギー損失分光法(EELS)とを組み合わせて、TEM撮影像中で、シェル層に含まれる特徴的な元素のマッピングを行うことで、トナーコアとシェル層との境界を明確にすることができる。
(D)シェル被覆率が30%以上90%未満であるトナー母粒子(以下、適正被覆粒子と記載する)の個数割合が60個数%以上である。適正被覆粒子の個数割合は100個数%であってもよい。すなわち、トナーに含まれる全てのトナー母粒子が適正被覆粒子であってもよい。
(E)シェル被覆率が90%以上であるトナー母粒子(以下、過剰被覆粒子と記載する)の個数割合が5個数%以下である。過剰被覆粒子の個数割合は0個数%であってもよい。すなわち、トナー中に過剰被覆粒子が含まれていなくてもよい。
以下、図1A及び図1Bを参照して、上記基本構成を有するトナーに含まれるトナー粒子の一例について説明する。なお、図1Aは、上記基本構成を有するトナーに含まれるトナー粒子(特に、トナー母粒子)の断面構造の一例を示す図である。
図1Aに示されるトナー母粒子10は、トナーコア11と、トナーコア11の表面に形成されたシェル層12とを備える。トナーコア11は、結着樹脂及び離型剤を含有する。シェル層12は、トナーコア11の表面を部分的に覆っている。シェル層12の厚さは1nm以上23nm以下である。また、シェル被覆率は、例えば30%以上90%未満である。シェル材料として樹脂粒子を使用してトナーコア11の表面にシェル層12を形成した場合、シェル被覆率30%以上90%未満のトナー母粒子10が得られ易い。この場合、シェル層12が、粒状感のある膜(例えば、樹脂粒子が2次元的に連なった形態を有する膜)になり易い。トナー母粒子10の表面領域は、トナーコア11上にシェル層12が存在しない領域(以下、露出領域と記載する)とトナーコア11上にシェル層12が存在する領域(以下、被覆領域と記載する)とを含む。トナー母粒子10の表面に外添剤を付着させてもよい。
上記基本構成を有するトナーを使用して、前述の現像工程、転写工程、及び定着工程を経て記録媒体P(例えば、紙)上にトナーを定着させた場合には、例えば図1Bに示すように、トナー粒子が概ね定着前の形態を維持したまま定着する傾向がある。シェル層12がトナーコア11を覆った状態で、トナー粒子が定着することで、高い光沢値を有する画像が形成され易くなる。しかも、トナーが上記「材料のSP値に関する要件:条件(A)及び(B)」を満たすことで、トナーコア11中の離型剤が適度に染み出してトナー粒子の表面に存在し易くなり、トナー粒子の表面における露出領域と被覆領域との両方で、離型剤が画像の光沢値を向上させる働きをすると考えられる。なお、シェル層12の厚さが大き過ぎる場合には、画像の光沢値が不十分になる傾向がある。この理由は、離型剤が画像の光沢値を向上させる上述の効果が小さくなるからであると考えられる。定着後のトナーのグロスを向上させるためには、シェル層12の厚さが5nm以上15nm以下であることが好ましい。定着後のトナーのグロスを向上させるためには、トナーコア中の離型剤のSP値(SPW)とシェル層のSP値(SPS)との差(絶対値:|SPS−SPW|)が、0.3以下であることが好ましく、0.1以下であることが特に好ましい。シェル層のグロスを向上させるためには、シェル層が、熱可塑性樹脂を含有し、かつ、顔料を含有しないことが好ましい。こうした構成を有するシェル層は、無色透明になって、優れたグロスを示す傾向がある。
一方、例えば図2Aに示すようなシェル被覆率が100%であるトナー母粒子100(完全被覆のトナー母粒子)を使用して、前述の現像工程、転写工程、及び定着工程を経て記録媒体P(例えば、紙)上にトナーを定着させた場合には、定着時の加熱及び加圧によりシェル層102に穴が開き、その穴からトナーコア101の成分が噴出する可能性が高くなる。こうした噴出が生じると、例えば図2Bに示すように、トナーコア101がシェル層102よりも上(例えば、画像の表面)に位置し、画像の光沢値を低下させる原因になり得る。
上記のようなトナーコア成分の噴出を抑制するためには、シェル被覆率が30%以上90%未満であることが好ましい。また、定着後のトナーのグロスを向上させるためには、トナー母粒子の表面領域が、露出領域で囲まれている被覆領域(以下、シェル島と記載する)と、被覆領域で囲まれている露出領域(以下、コア島と記載する)とを含んでいることが好ましい。トナー母粒子の表面領域に存在するコア島及びシェル島はそれぞれ、トナー母粒子の表面を顕微鏡で観察することによって確認できる。
トナー粒子が外添剤を備える場合でも、トナー母粒子の表面を観察することは可能である。外添処理後にトナー母粒子の表面を観察する場合には、外添剤がある領域を避けてトナー母粒子の表面を観察してもよいし、トナー母粒子に付着した外添剤を除去してからトナー母粒子の表面を観察してもよい。外添剤を除去する場合には、溶剤(例えば、アルカリ溶液)を用いて外添剤を溶解させて除去してもよいし、超音波洗浄機を用いてトナー粒子から外添剤を取り除いてもよい。
定着後のトナーのグロスを向上させるためには、トナーに含まれるトナー母粒子の表面領域を顕微鏡で撮影した像において、下記条件(F)及び(G)の少なくとも一方を満たすことが好ましく、条件(F)及び(G)の両方を満たすことが特に好ましい。
(F)トナーに含まれるトナー母粒子のうち、表面領域にシェル島が存在するトナー母粒子の個数割合が20%以上である。
(G)トナー母粒子1個あたりコア島の数が12個以上であり、かつ、それらコア島の平均円形度が0.40以上0.85以下である。
ただし、条件(F)及び(G)の測定では、トナーに含まれるトナー母粒子のうち、トナーの体積中位径の70%以上の粒子径を有するトナー母粒子のみを対象とする。例えば、トナーの体積中位径(D50)が10μmであれば、そのトナーに含まれる粒子径7μm以上のトナー母粒子のみを測定対象とする。
定着後のトナーのグロスを向上させるためには、トナーに含まれるトナー母粒子の表面領域を顕微鏡で観察した場合に、条件(H)を満たすことが好ましい。
(H)トナーに含まれるトナー母粒子のうち、トナーの体積中位径の60%以上140%以下の粒子径を有するトナー母粒子は実質的に全て、その表面領域に、コア島とシェル島とを含んでいる。
上記条件(H)の成否(特に、「実質的に全て」の成否)は、次のように判定する。まず、トナーから、トナーの体積中位径の60%以上140%以下の粒子径を有するトナー母粒子(測定対象のトナー母粒子)のみを抽出する。例えば、トナーの体積中位径(D50)が10μmであれば、そのトナーに含まれる粒子径6μm以上14μm以下のトナー母粒子のみを測定対象とする。次に、測定対象のトナー母粒子(粉体)から、さらに無作為に25個のトナー母粒子を抜き取り、それらトナー母粒子の各々の表面領域を顕微鏡で観察して、コア島及びシェル島の各々の有無を確認する。25個のトナー母粒子の抜き取りから各トナー母粒子の表面観察までを1回の測定として、5回の測定を行う。5回の測定で、合計125個(=25個×5)のトナー母粒子の表面観察を行う。5回の測定のうち少なくとも1回の観察で、25個のトナー母粒子の全てが、その表面領域にコア島とシェル島との両方を含むことを確認できれば、条件(H)を満たすと判定する。他方、5回のいずれの観察でも、25個のトナー母粒子の全てが、その表面領域にコア島とシェル島との両方を含むことを確認できなければ、条件(H)を満たさないと判定する。
トナー母粒子の表面領域におけるコア島及びシェル島の各々の有無は、例えば次に示す手順で確認できる。
<トナー母粒子の表面領域におけるコア島及びシェル島の確認方法>
例えば電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、トナー母粒子の表面の反射電子像を得る。図3に、反射電子像の一例を示す。図3は、加速電圧10.0kV、倍率5000倍、WD(作動距離)7.9mmの条件で撮影されたSEM写真である。図3中、破線の枠で示す領域にコア島を確認できる。ただし、トナー母粒子の表面領域におけるコア島及びシェル島の各々の有無を明確に確認するためには、下記手順で得られる2値化画像(白黒画像)に基づいてコア島及びシェル島の各々の有無を確認することが好ましい。
上記反射電子像の所定の領域(例えば、トナー母粒子の中央付近の表面領域)を所定の画像形式の画像データに変換する。これにより、例えば図4Aに示すような画像データが得られる。
続けて、得られた画像データに対して輝度値に基づく2値化を行う。これにより、例えば図4Bに示すような2値化画像(白黒画像)が得られる。得られた2値化画像から、トナー母粒子の表面領域におけるコア島及びシェル島の各々の有無を明確に確認することができる。図4B中、領域R1はシェル島を示し、領域R2はコア島を示している。なお、図4Bの左側には、領域R1(シェル島)を囲む露出領域(黒色領域)が、さらに外側の被覆領域(白色領域)で囲まれている。こうした部分については、シェル島とコア島とが1つずつ存在するとみなす。
常温常湿環境下でも高温高湿環境下でも十分なトナーの帯電性を確保するためには、前述の基本構成を有するトナーが、次に示す構成(以下、好適なシェル構成と記載する)をさらに有することが好ましい。
(好適なシェル構成)
シェル層が、第1樹脂と、第1樹脂よりも強い帯電性を有する第2樹脂とを含有する。第1樹脂は、第2樹脂よりも強い疎水性を有する。第2樹脂は、海状の第1樹脂に対して島状に分布する。
上記「好適なシェル構成」を有するトナーは、常温常湿環境下でも高温高湿環境下でも、十分な帯電量まで帯電させ易い。詳しくは、上記「好適なシェル構成」を有するトナーでは、シェル層が、強い帯電性を有する島状の第2樹脂を含むことで、トナーに十分な帯電性を付与することが可能になる。また、シェル層が、第2樹脂よりも強い疎水性を有する海状の第1樹脂を含むことで、高温高湿環境下でのトナー粒子の表面に対する水分子の吸着を抑制することが可能になる。トナー粒子の表面に水分子が吸着しにくくなることで、高温高湿環境下でのトナー粒子の帯電量の減衰が抑制されると考えられる。また、トナーを高温高湿環境下に長時間放置した後でも、十分なトナーの帯電性を確保し易くなる。十分な帯電性を有するトナーを用いて画像を形成することで、高画質の画像(例えば、かぶり濃度の低い画像)を形成することが可能になる。
トナーの耐熱保存性を向上させるためには、上記「好適なシェル構成」において、第1樹脂と第2樹脂とが、共通の繰返し単位を含むことが好ましい。共通の繰返し単位は、第1樹脂と第2樹脂とに共通して含まれる同種の繰返し単位に相当する。同種の繰返し単位は、同一の化学式で表すことができる。以下、第1樹脂と第2樹脂とに共通して含まれる繰返し単位を、共通単位と記載する。
共通単位としては、(メタ)アクリル酸メチルに由来する繰返し単位、(メタ)アクリル酸エチルに由来する繰返し単位、(メタ)アクリル酸プロピルに由来する繰返し単位、及び(メタ)アクリル酸ブチルに由来する繰返し単位からなる群より選択される1種以上の繰返し単位が好ましい。
海島構造を有する第1樹脂と第2樹脂とはそれぞれ、部分的に特定モノマーのモル分率が高くなるなど、不均一に形成されることが多い。この理由は、モノマーの組合せによって反応性及び相溶性が異なるためであると考えられる。特に、ラジカル重合により合成された樹脂は不均一な構造を有し易い。しかしながら、第1樹脂と第2樹脂とが共通単位を含む場合、第1樹脂の共通単位と第2樹脂の共通単位とは、互いに近い性質を有する(SP値等が略等しい)。このため、共通単位同士は、強く結合すると考えられる。共通単位同士が強く結合することで、十分なトナーの耐熱保存性を確保し易くなると考えられる。
上記「好適なシェル構成」を有するトナーが十分な正帯電性を有するためには、第2樹脂が、窒素を含有しない1種以上のビニル化合物と、1種以上の窒素含有ビニル化合物とを含む単量体の重合体であることが好ましい。ビニル化合物は、ビニル基(CH2=CH−)、又はビニル基中の水素が置換された基を有する化合物(より具体的には、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、アクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、又はスチレン等)である。ビニル化合物は、上記ビニル基等に含まれる炭素二重結合「C=C」により付加重合して、高分子(樹脂)になり得る。
上記「好適なシェル構成」を有するトナーが正帯電性トナーである場合に、トナーを正に帯電し易くするためには、第2樹脂が、例えば、窒素含有ビニル化合物(より具体的には、4級アンモニウム化合物等)に由来する繰返し単位を含むことが好ましく、下記式(1)で表される繰返し単位又はその塩を含むことが特に好ましい。
式(1)中、R11及びR12は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有してもよいアルキル基を表す。また、R21、R22、及びR23は、各々独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアルコキシ基を表す。また、R2は、置換基を有してもよいアルキレン基を表す。R11及びR12としては、各々独立して、水素原子又はメチル基が好ましく、R11が水素原子を表し、かつ、R12が水素原子又はメチル基を表す組合せが特に好ましい。また、R21、R22、及びR23としては、各々独立して、炭素数1以上8以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、又はiso−ブチル基が特に好ましい。R2としては、炭素数1以上6以下のアルキレン基が好ましく、メチレン基又はエチレン基が特に好ましい。なお、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライドに由来する繰返し単位では、R11が水素原子を、R12がメチル基を、R2がエチレン基を、R21〜R23の各々がメチル基を、それぞれ表し、4級アンモニウムカチオン(N+)が塩素(Cl)とイオン結合して塩を形成している。
上記「好適なシェル構成」を有するトナーが負帯電性トナーである場合に、トナーを負に帯電し易くするためには、第2樹脂が、スルホ基(−SO3H)及び/又はその塩を有する繰返し単位を含むことが好ましく、下記式(2)で表される繰返し単位を含むことが特に好ましい。
式(2)中、R31〜R37のうち、少なくとも1つが、スルホ基又はその塩を表し、それ以外は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアルコキシアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。なお、p−スチレンスルホン酸ナトリウムに由来する繰返し単位では、R33がスルホ基のナトリウム塩(−SO3Na)を表し、それ以外(R31、R32、及びR34〜R37)はそれぞれ、水素原子を表す。
シェル層が十分強い帯電性と適度な強度とを有するためには、シェル層中の第2樹脂が、上記窒素含有ビニル化合物に由来する繰返し単位、又は上記スルホ基(−SO3H)もしくはその塩を有する繰返し単位に加えて、(メタ)アクリル酸エステル(より具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、又は(メタ)アクリル酸ブチル等)に由来する繰返し単位を含むことが好ましい。
シェル層中の第2樹脂は、酸基、水酸基、及びこれらの塩の少なくとも1つを有する繰返し単位を含んでもよい。こうした繰返し単位を含む樹脂は、比較的強い親水性を有し易い。トナーが前述の「好適なシェル構成」を有する場合、シェル層中の第2樹脂が比較的強い親水性を有していても、トナーの電荷減衰を十分抑制することができる。第1樹脂が、第2樹脂よりも強い疎水性を有するからである。
シェル層中の第1樹脂は、例えば、スチレン系モノマーに由来する繰返し単位を含むことが好ましく、下記式(3)で表される繰返し単位を含むことが特に好ましい。
式(3)中、R41〜R45は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアルコキシアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。また、R46及びR47は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有してもよいアルキル基を表す。R41〜R45としては、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又は炭素数(詳しくは、アルコキシとアルキルとの合計炭素数)2以上6以下のアルコキシアルキル基が好ましい。R46及びR47としては、各々独立して、水素原子又はメチル基が好ましく、R47が水素原子を表し、かつ、R46が水素原子又はメチル基を表す組合せが特に好ましい。なお、スチレンに由来する繰返し単位では、R41〜R47の各々が水素原子を表す。
シェル層中の第1樹脂が十分強い疎水性と適度な強度とを有するためには、第1樹脂に含まれる繰返し単位のうち最も高いモル分率を有する繰返し単位が、スチレン系モノマーに由来する繰返し単位(より好ましくは、式(3)で表される繰返し単位)であることが好ましい。
空気中の水分がシェル層の表面に吸着することを十分抑制するためには、シェル層中の第1樹脂に含まれる全ての繰返し単位のうち、親水性官能基を有する繰返し単位の割合が、10質量%以下であることが好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
トナーの耐熱保存性を向上させるためには、前述の「好適なシェル構成」において、第1樹脂及び第2樹脂の少なくとも一方が60℃以上のガラス転移点(Tg)を有することが好ましく、第1樹脂及び第2樹脂の両方が60℃以上のガラス転移点(Tg)を有することがより好ましい。高Tgの樹脂を含有するシェル層をトナーコアの表面に均一に形成するためには、シェル層が湿式法により形成されることが好ましい。
トナーの耐久性を向上させるためには、トナーコアが粉砕法(乾式法の一種)により作製された粉砕法コアであることが好ましい。粉砕法は、複数種の材料(樹脂等)を溶融混練して混練物を得る工程と、得られた混練物を粉砕する工程とを経て、粉体(例えば、トナーコア)を得る方法である。
トナーコア材料及びシェル材料として適した樹脂は、以下のとおりである。
<好適な熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂の好適な例としては、スチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂(より具体的には、アクリル酸エステル重合体又はメタクリル酸エステル重合体等)、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂等)、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、N−ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、又はウレタン樹脂が挙げられる。また、これら各樹脂の共重合体、すなわち上記樹脂中に任意の繰返し単位が導入された共重合体(より具体的には、スチレン−アクリル酸系樹脂又はスチレン−ブタジエン系樹脂等)を使用してもよい。
熱可塑性樹脂は、1種以上の熱可塑性モノマーを、付加重合、共重合、又は縮重合させることで得られる。なお、熱可塑性モノマーは、単独重合により熱可塑性樹脂になるモノマー(より具体的には、アクリル酸系モノマー又はスチレン系モノマー等)、又は縮重合により熱可塑性樹脂になるモノマー(例えば、縮重合によりポリエステル樹脂になる多価アルコール及び多価カルボン酸の組合せ)である。
スチレン−アクリル酸系樹脂は、1種以上のスチレン系モノマーと1種以上のアクリル酸系モノマーとの共重合体である。スチレン−アクリル酸系樹脂を合成するためには、例えば以下に示すような、スチレン系モノマー及びアクリル酸系モノマーを好適に使用できる。
スチレン系モノマーの好適な例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、又はp−エチルスチレンが挙げられる。
アクリル酸系モノマーの好適な例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの好適な例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、又は(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの好適な例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが挙げられる。
ポリエステル樹脂は、1種以上の多価アルコール(より具体的には、以下に示すような、ジオール類、ビスフェノール類、又は3価以上のアルコール等)と1種以上の多価カルボン酸(より具体的には、以下に示すような、2価カルボン酸又は3価以上のカルボン酸等)とを縮重合させることで得られる。
ジオール類の好適な例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
ビスフェノール類の好適な例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、又はビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
3価以上のアルコールの好適な例としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
2価カルボン酸の好適な例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸(より具体的には、n−ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、又はイソドデシルコハク酸等)、又はアルケニルコハク酸(より具体的には、n−ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、又はイソドデセニルコハク酸等)が挙げられる。
3価以上のカルボン酸の好適な例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、又はエンポール三量体酸が挙げられる。
次に、トナーコア(結着樹脂及び内添剤)、シェル層、及び外添剤について、順に説明する。トナーの用途に応じて必要のない成分を割愛してもよい。
[トナーコア]
トナーコアは、結着樹脂を含有する。また、トナーコアは、内添剤(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉)を含有してもよい。
(結着樹脂)
トナーコアでは、一般的に、成分の大部分(例えば、85質量%以上)を結着樹脂が占める。このため、結着樹脂の性質がトナーコア全体の性質に大きな影響を与えると考えられる。結着樹脂として複数種の樹脂を組み合わせて使用することで、結着樹脂の性質(より具体的には、水酸基価、酸価、Tg、又はTm等)を調整することができる。結着樹脂がエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、又はメチル基を有する場合には、トナーコアはアニオン性になる傾向が強くなり、結着樹脂がアミノ基又はアミド基を有する場合には、トナーコアはカチオン性になる傾向が強くなる。トナーコアとシェル層との結合性(反応性)を高めるためには、結着樹脂の水酸基価及び酸価の少なくとも一方が10mgKOH/g以上であることが好ましい。
トナーの低温定着性を向上させるためには、結着樹脂のTgが、シェル層を構成する樹脂(シェル層が複数種の樹脂を含有する場合には、最も多い樹脂)のTgよりも低いことが好ましい。高速定着に耐え得る十分なトナーの定着性を確保するためには、結着樹脂のTgが20℃以上55℃以下であることが好ましい。また、高速定着に耐え得る十分なトナーの定着性を確保するためには、結着樹脂の軟化点(Tm)が105℃以下であることが好ましい。
トナーコアの結着樹脂としては、熱可塑性樹脂(より具体的には、前述の「好適な熱可塑性樹脂」等)が好ましい。トナーコア中の着色剤の分散性、トナーの帯電性、及び記録媒体に対するトナーの定着性を向上させるためには、結着樹脂としてスチレン−アクリル酸系樹脂又はポリエステル樹脂を用いることが特に好ましい。
トナーコアの結着樹脂がスチレン−アクリル酸系樹脂である場合、トナーコアの強度及びトナーの定着性を向上させるためには、スチレン−アクリル酸系樹脂の数平均分子量(Mn)が2000以上3000以下であることが好ましい。スチレン−アクリル酸系樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率Mw/Mn)は10以上20以下であることが好ましい。スチレン−アクリル酸系樹脂のMnとMwの測定には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いることができる。
トナーコアの結着樹脂がポリエステル樹脂である場合、トナーコアの強度及びトナーの定着性を向上させるためには、ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)が1000以上2000以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率Mw/Mn)は9以上21以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂のMnとMwの測定には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いることができる。
(着色剤)
トナーコアは、着色剤を含有してもよい。着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。着色剤の量は、結着樹脂100質量部に対して1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
トナーコアは、黒色着色剤を含有してもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
トナーコアは、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、又はシアン着色剤のようなカラー着色剤を含有してもよい。
イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリールアミド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。イエロー着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、又は194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、又はC.I.バットイエローを好適に使用できる。
マゼンタ着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。マゼンタ着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、又は254)を好適に使用できる。
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。シアン着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、又は66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、又はC.I.アシッドブルーを好適に使用できる。
(離型剤)
トナーコアは、離型剤を含有してもよい。離型剤は、例えば、トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーコアのアニオン性を強めるためには、アニオン性を有するワックスを用いてトナーコアを作製することが好ましい。トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の量は、結着樹脂100質量部に対して1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、又はフィッシャートロプシュワックスのような脂肪族炭化水素ワックス;酸化ポリエチレンワックス又はそのブロック共重合体のような脂肪族炭化水素ワックスの酸化物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、又はライスワックスのような植物性ワックス;みつろう、ラノリン、又は鯨ろうのような動物性ワックス;オゾケライト、セレシン、又はペトロラタムのような鉱物ワックス;モンタン酸エステルワックス又はカスターワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような、脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスを好適に使用できる。1種類の離型剤を単独で使用してもよいし、複数種の離型剤を併用してもよい。
結着樹脂と離型剤との相溶性を改善するために、相溶化剤をトナーコアに添加してもよい。
(電荷制御剤)
トナーコアは、電荷制御剤を含有してもよい。電荷制御剤は、例えば、トナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。
トナーコアに負帯電性の電荷制御剤(より具体的には、有機金属錯体又はキレート化合物等)を含有させることで、トナーコアのアニオン性を強めることができる。また、トナーコアに正帯電性の電荷制御剤(より具体的には、ピリジン、ニグロシン、又は4級アンモニウム塩等)を含有させることで、トナーコアのカチオン性を強めることができる。ただし、トナーにおいて十分な帯電性が確保される場合には、トナーコアに電荷制御剤を含有させる必要はない。
(磁性粉)
トナーコアは、磁性粉を含有してもよい。磁性粉の材料としては、例えば、強磁性金属(より具体的には、鉄、コバルト、ニッケル、又はこれら金属の1種以上を含む合金等)、強磁性金属酸化物(より具体的には、フェライト、マグネタイト、又は二酸化クロム等)、又は強磁性化処理が施された材料(より具体的には、熱処理により強磁性が付与された炭素材料等)を好適に使用できる。1種類の磁性粉を単独で使用してもよいし、複数種の磁性粉を併用してもよい。また、磁性粉からの金属イオン(例えば、鉄イオン)の溶出を抑制するためには、磁性粉を表面処理することが好ましい。
[シェル層]
前述の「好適なシェル構成」を有するトナーでは、シェル層が、複数の島状の第2樹脂と、海状の第1樹脂とを含有する。島状の第2樹脂はそれぞれ、海状の第1樹脂よりも強い帯電性を有する。また、第1樹脂の疎水性は、第2樹脂の疎水性よりも強い。
シェル層中の第1樹脂としては、熱可塑性樹脂(より具体的には、前述の「好適な熱可塑性樹脂」等)が好ましく、1種以上のスチレン系モノマーと1種以上のアクリル酸系モノマーとの共重合体が特に好ましい。スチレン−アクリル酸系樹脂は、ポリエステル樹脂と比べて、疎水性が強い傾向がある。第1樹脂の好適な例としては、スチレンと(メタ)アクリル酸ブチルとの共重合体が挙げられる。
シェル層中の第2樹脂としては、樹脂に帯電性を付与するための繰返し単位(例えば、窒素含有ビニル化合物に由来する繰返し単位、又はスルホ基(−SO3H)もしくはその塩を有する繰返し単位)を組み込んだ熱可塑性樹脂(より具体的には、前述の「好適な熱可塑性樹脂」等)が好ましい。以下、樹脂に帯電性を付与するための繰返し単位を、帯電性単位と記載する。
帯電性単位が組み込まれる熱可塑性樹脂の好適な例としては、アクリル酸系樹脂(より具体的には、メタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルとの共重合体等)が挙げられる。
樹脂中に帯電性単位を導入するためのモノマー(窒素含有ビニル化合物及びスルホン酸化合物)の好適な例を以下に示す。なお、必要に応じて、以下に示される各化合物の誘導体を使用してもよい。
樹脂中に帯電性単位を導入するための窒素含有ビニル化合物としては、例えば、ベンジルデシルヘキシルメチルアンモニウム塩、デシルトリメチルアンモニウム塩、又は(メタ)アクリロイル基含有4級アンモニウム塩のような4級アンモニウム化合物が好ましい。(メタ)アクリロイル基含有4級アンモニウム塩の例としては、(メタ)アクリルアミドアルキルトリメチルアンモニウム塩(より具体的には、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド等)、又は(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリメチルアンモニウム塩(より具体的には、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド等)が挙げられる。
樹脂中に帯電性単位を導入するためのスルホン酸化合物としては、例えば、スチレンスルホン酸又はその塩が好ましい。
[外添剤]
トナー母粒子の表面に外添剤(詳しくは、複数の外添剤粒子を含む粉体)を付着させてもよい。例えば、トナー母粒子(粉体)と外添剤(粉体)とを一緒に攪拌することで、物理的な力でトナー母粒子の表面に外添剤が付着(物理的結合)する。外添剤は、例えばトナーの流動性又は取扱性を向上させるために使用される。トナーの流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の量は、トナー母粒子100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。また、トナーの流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の粒子径は0.01μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
外添剤粒子としては、無機粒子が好ましく、シリカ粒子、又は金属酸化物(より具体的には、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、又はチタン酸バリウム等)の粒子が特に好ましい。1種類の外添剤を単独で使用してもよいし、複数種の外添剤を併用してもよい。
[トナーの製造方法]
以下、前述の基本構成を有するトナーを製造する方法の一例について説明する。まず、トナーコアを準備する。続けて、液に、トナーコアと、シェル材料とを入れる。続けて、液中でシェル材料を反応させて、トナーコアの表面にシェル層を形成する。
均質なシェル層を形成するためには、シェル材料を含む液を攪拌するなどして、シェル材料を液に溶解又は分散させることが好ましい。また、シェル層形成時におけるトナーコア成分(特に、結着樹脂及び離型剤)の溶解又は溶出を抑制するためには、水性媒体中でシェル層を形成することが好ましい。水性媒体は、水を主成分とする媒体(より具体的には、純水、又は水と極性媒体との混合液等)である。水性媒体は溶媒として機能してもよい。水性媒体中に溶質が溶けていてもよい。水性媒体は分散媒として機能してもよい。水性媒体中に分散質が分散していてもよい。水性媒体中の極性媒体としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール又はエタノール等)を使用できる。水性媒体の沸点は約100℃である。
以下、より具体的な例に基づいて、トナーの製造方法についてさらに説明する。
(トナーコアの準備)
好適なトナーコアを容易に得るためには、凝集法又は粉砕法によりトナーコアを製造することが好ましく、粉砕法によりトナーコアを製造することがより好ましい。
以下、粉砕法の一例について説明する。まず、結着樹脂と、内添剤(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉の少なくとも1つ)とを混合する。続けて、得られた混合物を溶融混練する。続けて、得られた溶融混練物を粉砕及び分級する。その結果、所望の粒子径を有するトナーコアが得られる。
以下、凝集法の一例について説明する。まず、結着樹脂、離型剤、及び着色剤の各々の微粒子を水性媒体中で凝集させて、結着樹脂、離型剤、及び着色剤を含む凝集粒子を得る。続けて、得られた凝集粒子を加熱して、凝集粒子に含まれる成分を合一化させる。その結果、トナーコアの分散液が得られる。その後、トナーコアの分散液から、不要な物質(界面活性剤等)を除去することで、トナーコアが得られる。
(シェル層の形成)
イオン交換水に酸性物質(例えば、パラトルエンスルホン酸)を加えて、弱酸性(例えば、3以上5以下から選ばれるpH)の水性媒体を調製する。続けて、pHが調整された水性媒体に、トナーコアと、第1樹脂粒子(実質的に第1樹脂からなる樹脂粒子)のサスペンションと、第2樹脂粒子(実質的に第2樹脂からなる樹脂粒子)のサスペンションとを添加する。第2樹脂粒子は第1樹脂粒子よりも強い帯電性を有する。また、第1樹脂粒子の疎水性は、第2樹脂粒子の疎水性よりも強い。第1樹脂粒子と第2樹脂粒子とは、同時に添加してもよいし、別々に添加してもよい。
シェル材料としてモノマー又はプレポリマーを水性媒体に添加して、トナーコアの表面でシェル材料を重合させた場合、トナーコアの表面にシェル被覆率100%(完全被覆)のシェル層が形成され易い。これに対し、予め樹脂化した粒子(樹脂粒子)をシェル材料として使用した場合には、トナーコアの表面にシェル被覆率30%以上90%未満のシェル層を形成し易くなる。
シェル材料(第1樹脂粒子及び第2樹脂粒子)は、液中でトナーコアの表面に付着する。トナーコアの表面に均一にシェル材料を付着させるためには、シェル材料を含む液中にトナーコアを高度に分散させることが好ましい。液中にトナーコアを高度に分散させるために、液中に界面活性剤を含ませてもよいし、強力な攪拌装置(例えば、プライミクス株式会社製「ハイビスディスパーミックス」)を用いて液を攪拌してもよい。
続けて、上記シェル材料等を含む液を攪拌しながら液の温度を所定の速度(例えば、0.1℃/分以上3℃/分以下から選ばれる速度)で所定の保持温度(例えば、50℃以上85℃以下から選ばれる温度)まで上昇させる。さらに、液を攪拌しながら液の温度を上記保持温度に所定の時間(例えば、30分間以上4時間以下から選ばれる時間)保つ。液の温度を高温に保っている間(又は、昇温中)に、トナーコアとシェル材料との間で反応(シェル層の固定化)が進行すると考えられる。シェル材料がトナーコアと化学的に結合することで、シェル層が形成される。液中でトナーコアの表面にシェル層が形成されることで、トナー母粒子の分散液が得られる。
上記のように、液中でトナーコアの表面に第1樹脂粒子を付着させて、液を加熱することで、第1樹脂粒子を溶かして(又は、変形させて)膜化することができる。この際、第2樹脂粒子(第2樹脂)のTgが第1樹脂粒子(第1樹脂)のTgよりも高ければ、海状の第1樹脂に対して第2樹脂を島状に分布させ易い。なお、第1樹脂粒子の膜化は、乾燥工程で加熱されて、又は外添工程で物理的な衝撃力を受けて、進行してもよい。
上記シェル層の形成後、例えば水酸化ナトリウムを用いてトナー母粒子の分散液を中和する。続けて、トナー母粒子の分散液を、例えば常温(約25℃)まで冷却する。続けて、例えばブフナー漏斗を用いて、トナー母粒子の分散液をろ過する。これにより、トナー母粒子が液から分離(固液分離)され、ウェットケーキ状のトナー母粒子が得られる。
続けて、例えば、水中へのトナー母粒子の分散と、得られた分散液のろ過とを繰り返して、トナー母粒子を洗浄する。続けて、洗浄されたトナー母粒子を乾燥する。その後、必要に応じて、混合機(例えば、日本コークス工業株式会社製のFMミキサー)を用いてトナー母粒子と外添剤とを混合して、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させてもよい。なお、乾燥工程でスプレードライヤーを用いる場合には、外添剤(例えば、シリカ粒子)の分散液をトナー母粒子に噴霧することで、乾燥工程と外添工程とを同時に行うことができる。こうして、トナー粒子を多数含むトナーが製造される。
上記トナーの製造方法の内容及び順序はそれぞれ、要求されるトナーの構成又は特性等に応じて任意に変更することができる。例えば、液中で材料(例えば、シェル材料)を反応させる場合、液に材料を添加した後、所定の時間、液中で材料を反応させてもよいし、長時間かけて液に材料を添加して、液に材料を添加しながら液中で材料を反応させてもよい。また、シェル材料を、一度に液に添加してもよいし、複数回に分けて液に添加してもよい。外添工程の後で、トナーを篩別してもよい。また、必要のない工程は割愛してもよい。例えば、市販品をそのまま材料として用いることができる場合には、市販品を用いることで、その材料を調製する工程を割愛できる。また、液のpHを調整しなくても、シェル層を形成するための反応が良好に進行する場合には、pH調整工程を割愛してもよい。また、外添剤が不要であれば、外添工程を割愛してもよい。トナー母粒子の表面に外添剤を付着させない(外添工程を割愛する)場合には、トナー母粒子がトナー粒子に相当する。トナーコア材料及びシェル材料としては、必要に応じて、モノマーに代えてプレポリマーを使用してもよい。また、所定の化合物を得るために、原料として、その化合物の塩、エステル、水和物、又は無水物を使用してもよい。効率的にトナーを製造するためには、多数のトナー粒子を同時に形成することが好ましい。同時に製造されたトナー粒子は、互いに略同一の構成を有すると考えられる。
本発明の実施例について説明する。表1に、実施例又は比較例に係るトナーTA−1〜TA−7及びTB−1〜TB−9(それぞれ静電潜像現像用トナー)を示す。
以下、実施例又は比較例に係るトナーTA−1〜TA−7及びTB−1〜TB−9(それぞれ静電潜像現像用トナー)の製造方法、評価方法、及び評価結果について、順に説明する。なお、誤差が生じる評価においては、誤差が十分小さくなる相当数の測定値を得て、得られた測定値の算術平均を評価値とした。また、粉体の個数平均粒子径の測定には、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた。また、Tg(ガラス転移点)及びTm(軟化点)の測定方法はそれぞれ、何ら規定していなければ、次に示すとおりである。
<Tgの測定方法>
示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて、試料(例えば、樹脂)の吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)を求めた。続けて、得られた吸熱曲線から試料のTg(ガラス転移点)を読み取った。得られた吸熱曲線中の比熱の変化点(ベースラインの外挿線と立ち下がりラインの外挿線との交点)の温度が、試料のTg(ガラス転移点)に相当する。
<Tmの測定方法>
高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)に試料(例えば、樹脂)をセットし、ダイス細孔径1mm、プランジャー荷重20kg/cm2、昇温速度6℃/分の条件で、1cm3の試料を溶融流出させて、試料のS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)を求めた。続けて、得られたS字カーブから試料のTm(軟化点)を読み取った。得られたS字カーブにおいて、ストロークの最大値をS1とし、低温側のベースラインのストローク値をS2とすると、S字カーブ中のストロークの値が「(S1+S2)/2」となる温度が、試料のTm(軟化点)に相当する。
[トナーコアの作製]
ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(詳しくは、ビスフェノールAを骨格にしてエチレンオキサイドを付加したアルコール)に、多官能基を有する酸(詳しくは、テレフタル酸)を反応させることにより、ポリエステル樹脂を合成した。得られたポリエステル樹脂に関して、ガラス転移点(Tg)は48℃、軟化点(Tm)は100℃、酸価(AV)は10mgKOH/g、水酸基価(OHV)は20mgKOH/g、SP値は10.9(cal/cm3)1/2であった。
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−20B」)を用いて、ポリエステル樹脂(前述の手順で合成したポリエステル樹脂)100質量部と、SP値8.7(cal/cm3)1/2のエステルワックス(日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP−3」)5質量部と、着色剤(DIC株式会社製「KET Blue111」、成分:フタロシアニンブルー)5質量部とを、回転速度2400rpmで混合した。
続けて、得られた混合物を、2軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて溶融混練した。その後、得られた溶融混練物を冷却した。続けて、機械式粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミル」)を用いて溶融混練物を粉砕した。続けて、得られた粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)を用いて分級した。その結果、体積中位径(D50)6μmのトナーコアが得られた。
[シェル材料の準備]
(サスペンションA−1の調製)
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコをウォーターバスにセットし、フラスコ内に、30℃のイオン交換水875mLと、アニオン界面活性剤(花王株式会社製「ラテムル(登録商標)WX」、成分:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、固形分濃度:26質量%)75mLとを入れた。その後、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を80℃に昇温させた後、その温度(80℃)に保った。続けて、80℃のフラスコ内容物に2種類の液(第1の液及び第2の液)をそれぞれ5時間かけて滴下した。第1の液は、スチレン17gと、アクリル酸n−ブチル3gとの混合液であった。第2の液は、過硫酸カリウム0.5gをイオン交換水30gに溶かした溶液であった。続けて、フラスコ内の温度を80℃にさらに2時間保って、フラスコ内容物を重合させた。その結果、樹脂粒子のサスペンションA−1(固形分濃度:2質量%、個数平均粒子径:32nm)が得られた。得られたサスペンションA−1に含まれる樹脂粒子に関して、ガラス転移点(Tg)は71℃であった。
(サスペンションA−2の調製)
サスペンションA−2の調製方法は、第1の液として、スチレン17g及びアクリル酸n−ブチル3gの混合液の代わりに、スチレン3gとメタクリル酸メチル5gとアクリロニトリル(東京化成工業株式会社製)12gとの混合液を使用した以外は、サスペンションA−1の調製方法と同じであった。こうした方法により、固形分濃度2質量%、個数平均粒子径30nmのサスペンションA−2が得られた。得られたサスペンションA−2に含まれる樹脂粒子に関して、ガラス転移点(Tg)は163℃であった。
(サスペンションBの調製)
温度計、冷却管、窒素導入管、及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコ内に、イソブタノール90gと、メタクリル酸メチル105gと、アクリル酸n−ブチル37gと、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド(Alfa Aesar社製)30gと、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)(和光純薬工業株式会社製「VA−086」)6gとを入れた。続けて、窒素雰囲気かつ温度80℃の条件で、フラスコ内容物を3時間反応させた。その後、フラスコ内に2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)(和光純薬工業株式会社製「VA−086」)3gを加えて、窒素雰囲気かつ温度80℃の条件で、フラスコ内容物をさらに3時間反応させて、重合体を含む液を得た。続けて、得られた重合体を含む液を、減圧雰囲気かつ温度150℃の条件で乾燥した。続けて、乾燥した重合体を解砕し、正帯電性樹脂を得た。
続けて、混合装置(プライミクス株式会社製「ハイビスミックス(登録商標)2P−1型」)の容器に、上記のようにして得られた正帯電性樹脂200gと、酢酸エチル(和光純薬工業株式会社製「酢酸エチル特級」)184mLとを入れた。続けて、上記混合装置を用いて、回転速度20rpmで容器内容物を1時間攪拌して、高粘度の溶液を得た。その後、得られた高粘度の溶液に、酢酸エチル等の水溶液(詳しくは、1N−塩酸18mLとアニオン界面活性剤(花王株式会社製「エマール(登録商標)0」、成分:ラウリル硫酸ナトリウム)20gと酢酸エチル(和光純薬工業株式会社製「酢酸エチル特級」)16gとをイオン交換水562gに溶かした水溶液)を加えた。その結果、樹脂粒子のサスペンションB(固形分濃度:20質量%、個数平均粒子径:35nm)が得られた。得られたサスペンションBに含まれる樹脂粒子に関して、ガラス転移点(Tg)は90℃であった。また、樹脂粒子を構成する樹脂に含まれる全ての繰返し単位のうちメタクリル酸メチル由来の繰返し単位が占める割合(詳しくは、GC/MS法による測定値)は61質量%であった。
[トナーTA−1〜TA−5、TB−3、TB−4、TB−8の製造方法]
(シェル層の形成)
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコを準備し、フラスコをウォーターバスにセットした。続けて、フラスコ内にイオン交換水300mLを入れて、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を30℃に保った。続けて、フラスコ内にパラトルエンスルホン酸を加えて、フラスコ内の水性媒体のpHを4に調整した。
続けて、表1に示される量の第1シェル材料(各トナーに定められた、表1に示されるサスペンションA−1又はA−2)と、表1に示される量の第2シェル材料(サスペンションB)とを、フラスコ内に添加した。例えばトナーTA−1の製造では、サスペンションA−1を104g、サスペンションBを1g、それぞれフラスコ内に添加した。続けて、フラスコ内にトナーコア(前述の手順で作製したトナーコア)300gと1−デカンスルホン酸ナトリウム1gとを添加し、フラスコ内容物を回転速度200rpmで十分攪拌した。その後、第1シェル材料の添加量と合わせて530gになるような量のイオン交換水をフラスコ内に添加した。例えばトナーTA−1の製造では、第1シェル材料(サスペンションA−1)の添加量が104gであるため、イオン交換水426g(=530g−104g)をフラスコ内に添加した。
続けて、フラスコ内容物を回転速度100rpmで攪拌しながら、ウォーターバスを用いて昇温速度1℃/分でフラスコ内の温度を65℃まで上げて、フラスコ内容物を回転速度100rpmで攪拌しながらフラスコ内の温度を65℃に1時間保った。フラスコ内の温度を高温(65℃)に保つことで、トナーコアの表面にシェル層が形成された。その結果、トナー母粒子を含む分散液が得られた。その後、水酸化ナトリウムを用いてトナー母粒子の分散液のpHを7に調整(中和)し、トナー母粒子の分散液を常温(約25℃)まで冷却した。
(洗浄)
上記のようにして得られたトナー母粒子の分散液を、ブフナー漏斗を用いてろ過(固液分離)した。その結果、ウェットケーキ状のトナー母粒子が得られた。その後、得られたウェットケーキ状のトナー母粒子をイオン交換水に再分散させた。さらに、分散とろ過とを5回繰り返して、トナー母粒子を洗浄した。
(乾燥)
続けて、得られたトナー母粒子を、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させた。これにより、トナー母粒子のスラリーが得られた。続けて、連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)を用いて、熱風温度45℃かつブロアー風量2m3/分の条件で、スラリー中のトナー母粒子を乾燥させた。その結果、トナー母粒子(粉体)が得られた。
(外添)
上記乾燥後、トナー母粒子に外添処理を行った。詳しくは、容量10LのFMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて、トナー母粒子100質量部と乾式シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA90」)1質量部とを5分間混合することにより、トナー母粒子の表面に外添剤(シリカ粒子)を付着させた。その後、得られた粉体を、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別した。その結果、多数のトナー粒子を含むトナー(表1に示されるトナーTA−1〜TA−5、TB−3、TB−4、及びTB−8)が得られた。
[トナーTB−1の製造方法]
トナーTB−1の製造方法では、前述の手順で作製したトナーコアをそのまま、トナー母粒子として使用した。トナーTB−1の製造方法では、シェル層の形成を行わなかった。
[トナーTB−2の製造方法]
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコをウォーターバスにセットし、フラスコ内に、30℃のイオン交換水700mLと、アニオン界面活性剤(花王株式会社製「ラテムルWX」)75mLと、トナーコア(前述の手順で作製したトナーコア)300gとを入れて、トナーコアの分散液を得た。
続けて、フラスコ内にスチレン12gを添加した後、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を昇温速度1℃/分で70℃まで昇温させた。続けて、過硫酸カリウム0.5gをイオン交換水30gに溶かした溶液を5時間かけてフラスコ内に滴下した。続けて、フラスコ内の温度を70℃にさらに30分間保って、トナー母粒子の分散液を得た。続けて、得られたトナー母粒子の分散液を、濾過、解砕、及び分級し、体積中位径(D50)6μmのトナー母粒子を得た。その後、トナーTA−1の製造方法と同様の外添工程を経て、トナーTB−2を得た。
[トナーTA−6、TA−7、TB−5〜TB−7、TB−9の製造方法]
表1に示す2種類のトナー(第1トナー:トナーTA−3又はTA−5、第2トナー:トナーTB−1、TB−2、及びTB−4のいずれか)を、表1に示す質量比で混合して、混合トナー(表1に示されるトナーTA−6、TA−7、TB−5〜TB−7、及びTB−9)を得た。例えばトナーTA−6の製造では、90質量部のトナーTA−3と、10質量部のトナーTB−4とを混合した。
上記のようにして得られたトナーTA−1〜TA−7及びTB−1〜TB−9に関して、それぞれ結着樹脂、離型剤、及びシェル層の各々のSP値を、表2に示す。表2に示されるSP値は、前述のFedors法により算出された値(温度:25℃)である。
また、トナーTA−1〜TA−7及びTB−1〜TB−9に関して、所定の物性値を測定した結果は、表3に示すとおりであった。例えば、トナーTA−1に関しては、シェル被覆率(個数平均)が26%であり、シェル層の厚さが7nmであり、コア島の数(トナー母粒子1個あたり)が24個であり、コア島の平均円形度が0.41であり、シェル島を有するトナー母粒子の個数割合が84個数%であり、適正被覆粒子の個数割合が60個数%であり、過剰被覆粒子の個数割合が0個数%であった。トナーTA−1〜TA−7及びTB−1〜TB−9に関しては、それぞれトナーの体積中位径(D50)が約6μmであった。
表3に示される物性の測定方法は、次に示すとおりであった。なお、トナーの体積中位径(D50)の70%以上の粒子径(円相当径)を有するトナー粒子のみを測定対象とした。
<輝度値ヒストグラムの測定方法>
試料(トナー)のトナー母粒子(外添剤がない状態のトナー)を、測定対象とした。
常温(約25℃)の大気雰囲気下で、濃度5質量%RuO4水溶液2mLの蒸気中に20分間暴露することで、トナー母粒子をRu(ルテニウム)で染色した。トナー母粒子の表面領域のうち、トナーコアがシェル層で覆われている領域は、トナーコアがシェル層で覆われていない領域(トナーコアが表面に露出している領域)よりもRuで染色され易かった。
続けて、染色されたトナー母粒子を、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)(日本電子株式会社製「JSM−7600F」)で撮影して、トナー母粒子の反射電子像(表面撮影像)を得た。トナー母粒子の表面領域のうち、Ruで染色された領域(染色領域)は、Ruで染色されなかった領域(非染色領域)よりも明るく表示された。FE−SEMの撮影条件は、加速電圧10.0kV、照射電流95μA、倍率5000倍、コントラスト4800、明るさ(ブライトネス)550であった。
続けて、画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて、反射電子像の画像解析を行った。詳しくは、反射電子像のうちトナー母粒子の中央付近の表面領域(2μm×2μm)を切り取って、得られた画像データに5×5ガウシアンフィルタ処理を行った。なお、トナー母粒子の中央付近の表面領域は、反射電子像におけるトナー母粒子の重心を基点(矩形の重心)として描かれた縦2μm×横2μmの矩形領域であった。続けて、フィルタ処理した画像データ(領域:2μm×2μm、画素数:1280×1024)の輝度値ヒストグラム(縦軸:頻度(画素の個数)、横軸:輝度)を得た。輝度値ヒストグラムは、トナー母粒子の表面領域(染色領域及び非染色領域)の輝度値の分布を示していた。
(シェル被覆率の測定方法)
上記のようにして得た輝度値ヒストグラムに関して、表計算ソフトウェア(マイクロソフト社製「MICROSOFT EXCEL(登録商標)」)のソルバーを用いて、最小二乗法による正規分布へのフィッティング及び波形分離を行い、非染色領域の輝度値の分布(低輝度側の正規分布)を示す非染色波形と、染色領域の輝度値の分布(高輝度側の正規分布)を示す染色波形とを得た。続けて、得られた2つの波形の面積(RC:非染色波形の面積、RS:染色波形の面積)から、下記式に基づいてシェル被覆率(単位:%)を求めた。なお、上記画像データにおいて、非染色波形に属する画素は、トナーコアを表していると考えられる。また、上記画像データにおいて、染色波形に属する画素は、シェル層を表していると考えられる。このため、下記式により、トナーコアの表面領域のうちシェル層が覆う領域の面積割合(シェル被覆率)を求めることができる。
シェル被覆率=100×RS/(RC+RS)
試料(トナー)に含まれる100個のトナー母粒子の各々についてシェル被覆率を求めた。そして、100個のトナー母粒子のうち、シェル被覆率30%以上90%未満のトナー母粒子(適正被覆のトナー母粒子)の数と、シェル被覆率90%以上のトナー母粒子(過剰被覆のトナー母粒子)の数とを、それぞれカウントした。この測定結果は、表3中の「トナー粒子」の「個数割合」に示されている。また、測定された100個のシェル被覆率の算術平均値(すなわち、100個のトナー母粒子のシェル被覆率の個数平均値)を求めた。この測定結果は、表3中の「シェル層」の「シェル被覆率」に示されている。
(シェル層の形態の測定方法)
前述のように、トナー母粒子の反射電子像(FE−SEMによる表面撮影像)の所定の領域(トナー母粒子の中央付近の表面領域:2μm×2μm)に5×5ガウシアンフィルタ処理を施して、画像データ(領域:2μm×2μm、画素数:1280×1024)を得た。
続けて、前述のようにして画像データの輝度値ヒストグラム(縦軸:頻度(画素の個数)、横軸:輝度)を得た。また、得られた輝度値ヒストグラムに基づいて、画像データにおける輝度値の平均値(XA)及び標準偏差(XB)を求めた。
上記画像データに対して輝度値に基づく2値化(黒:基準値未満の輝度値を有する画素、白:基準値以上の輝度値を有する画素)を行った。これにより、画像データ中の各画素が黒及び白のいずれかに変換され、2値化画像(白黒画像)が得られた。2値化の基準値は、輝度値の平均値(XA)から輝度値の標準偏差(XB)を引いた値(=XA−XB)とした。
得られた2値化画像に基づいて、コア島(トナー母粒子の表面領域において、シェル層に囲まれているトナーコア露出領域)の数及び円形度を求めた。画像解析には、画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いた。
コア島の数の測定においては、上記2値化画像(トナー母粒子の中央付近の表面領域:2μm×2μm)中に存在するコア島の数を求めた。試料(トナー)に含まれる20個のトナー母粒子の各々についてコア島の数を求めて、得られた20個の測定値の算術平均を、その試料(トナー)の評価値(トナー母粒子1個あたりのコア島の数)とした。この測定結果は、表3中の「コア島」の「数」に示されている。
コア島の円形度の測定においては、上記コア島の数の測定でカウントされた全てのコア島の各々の円形度(=コア島の投影面積と等しい円の周囲長/コア島の周囲長)を求めて、得られた測定値の算術平均を、その試料(トナー)の評価値(コア島の円形度)とした。この測定結果は、表3中の「コア島」の「円形度」に示されている。
また、上記2値化画像(トナー母粒子の中央付近の表面領域:2μm×2μm)中にシェル島(トナー母粒子の表面領域において、トナーコア露出領域に囲まれているシェル層被覆領域)が存在するか否かを、目視及び画像解析により判定した。そして、試料(トナー)に含まれる25個のトナー母粒子のうち、表面にシェル島を有するトナー母粒子の数をカウントした。この測定結果は、表3中の「トナー粒子」の「シェル島有り(対象:25個)」に示されている。
<シェル層の厚さの測定方法>
試料(トナー)を常温硬化性のエポキシ樹脂中に分散させ、温度40℃の雰囲気で2日間硬化させて硬化物を得た。得られた硬化物を、四酸化ルテニウムを用いて染色した後、ダイヤモンドナイフを備えたウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ株式会社製「EM UC6」)を用いて切り出し、薄片試料を得た。続けて、得られた薄片試料の断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子株式会社製「JSM−6700F」)を用いて撮影した。
画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いてTEM撮影像を解析することで、シェル層の厚さを計測した。具体的には、トナー粒子の断面の略中心で直交する2本の直線を引き、それら2本の直線上の、シェル層と交差する4箇所の長さを測定した。続けて、測定された4箇所の長さの算術平均値を、測定対象である1個のトナー粒子のシェル層の厚さとした。試料(トナー)に含まれる20個のトナー粒子についてそれぞれシェル層の厚さを測定し、20個の個数平均値を試料(トナー)の評価値(シェル層の厚さ)とした。
[評価方法]
各試料(トナーTA−1〜TA−7及びTB−1〜TB−9)の評価方法は、以下の通りである。
(耐熱保存性)
試料(トナー)2gを容量20mLのポリエチレン製容器に入れて、その容器を、60℃に設定された恒温器内に3時間静置した。その後、恒温器から取り出したトナーを20℃で3時間冷却して、評価用トナーを得た。
続けて、得られた評価用トナーを質量既知の100メッシュ(目開き150μm)の篩に載せた。そして、評価用トナーを含む篩の質量を測定し、篩別前のトナーの質量を求めた。続けて、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)に上記篩をセットし、パウダーテスターのマニュアルに従い、レオスタッド目盛り5の条件で30秒間、篩を振動させ、評価用トナーを篩別した。そして、篩別後に、トナーを含む篩の質量を測定することで、篩上に残留したトナー(篩を通過しなかったトナー)の質量を求めた。篩別前のトナーの質量と、篩別後のトナーの質量(篩別後に篩上に残留したトナーの質量)とから、次の式に基づいて凝集率(単位:%)を求めた。
凝集率=100×篩別後のトナーの質量/篩別前のトナーの質量
凝集率が20%以下であれば○(良い)と評価し、凝集率が20%超であれば×(良くない)と評価した。
(グロス)
現像剤用キャリア(TASKalfa5550ci用キャリア)100質量部と、試料(トナー)10質量部とを、ボールミルを用いて30分間混合して、2成分現像剤を調製した。
評価機としては、カラー複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa5550ci」)を用いた。上述のようにして調製した2成分現像剤を評価機の現像装置に投入し、評価機のトナーコンテナに試料(補給用トナー)を投入した。
試料(トナー)のグロスを評価する場合には、上記評価機を用いて、常温常湿(20℃、65%RH)環境で、線速170mm/秒、トナー載り量0.5mg/cm2の条件で、70g/m2のカラー/モノクロ兼用紙(富士ゼロックス株式会社製「C2」)に、大きさ30mm×30mm、印字率100%のソリッド画像を形成した。続けて、画像が形成された紙を定着装置に通して、定着温度190℃で定着させた。そして、ハンディ光沢計(株式会社堀場製作所製「グロスチェッカーIG−331」)を用いて、測定角度60°の条件で、定着後の画像の光沢値を測定した。光沢値が23以上であれば○(良い)と評価し、光沢値が23未満であれば×(悪い)と評価した。
[評価結果]
トナーTA−1〜TA−7及びTB−1〜TB−9の各々について、耐熱保存性(凝集度)及びグロス(光沢値)を評価した結果を、表4に示す。
トナーTA−1〜TA−7(実施例1〜7に係るトナー)はそれぞれ、前述の基本構成を有していた。詳しくは、トナーTA−1〜TA−7ではそれぞれ、トナー粒子が、トナーコアとシェル層とを備えるトナー母粒子を含んでいた。トナーコアは、結着樹脂及び離型剤を含有していた。結着樹脂のSP値(SPC)と、離型剤のSP値(SPW)と、シェル層のSP値(SPS)とが、関係式「|SPC−SPW|>|SPS−SPW|」及び関係式「SPC>SPS」の両方を満たしていた(表2参照)。シェル層の厚さは、1nm以上23nm以下であった(表3参照)。適正被覆粒子(シェル被覆率が30%以上90%未満であるトナー母粒子)の個数割合は60個数%以上であった(表3参照)。過剰被覆粒子(シェル被覆率が90%以上であるトナー母粒子)の個数割合は5個数%以下であった(表3参照)。なお、トナーTA−1〜TA−7はそれぞれ、条件(A)〜(G)の全てを満たしていた。条件(H)は、トナーTA−1のみが満たしていた。
表4に示されるように、トナーTA−1〜TA−7はそれぞれ、耐熱保存性及びグロスに優れていた。トナーTA−1〜TA−7のいずれを用いた場合でも、高画質の画像(詳しくは、光沢値の高い画像)を形成することができた。