JP6192748B2 - トナー - Google Patents

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Description

本発明は、トナーに関する。
トナーに関して、カプセルトナーが知られている。カプセルトナーは、トナーコアと、トナーコアの表面に形成されたシェル層(カプセル層)とを含有する。例えば、特許文献1には、シェル層が熱硬化性樹脂を含むカプセルトナーが記載されている。
特開2004−138985号公報
特許文献1に記載の技術では、耐熱保存性及び低温定着性の何れにも優れるトナーを得ることは難しい。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、耐熱保存性及び低温定着性の何れにも優れるトナーを提供することを目的とする。
本発明のトナーは、トナーコアと、前記トナーコアの表面に形成されたシェル層とを含むトナー粒子を複数含有する。前記シェル層は熱硬化性樹脂を含む。前記トナーの120℃における複素弾性率G* 2に対する、前記トナーを用いて成形したペレット状成形物の120℃における複素弾性率G* 1の比率G* 1/G* 2が、2.0以上3.0以下である。前記ペレット状成形物は、前記トナーを25℃かつ50kg・f/cm2の成形条件で厚さ0.5mmかつ直径10mmのサイズに成形したものである。
本発明によれば、耐熱保存性及び低温定着性の何れにも優れるトナーを提供できる。
調製例(A−1)のトナーの複素弾性率G* 1及びG* 2と温度との関係を示す図である。 調製例(A−1)のトナーの損失正接tanδ1及びtanδ2と温度との関係を示す図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
本実施形態に係るトナーは、静電潜像現像用のカプセルトナーである。本実施形態のトナーは、複数の粒子(以下、トナー粒子という)から構成される粉体である。本実施形態に係るトナーは、例えば、画像形成装置で用いることができる。
以下、電子写真装置による画像形成方法の一例について説明する。まず、画像データに基づいて感光体に静電潜像を形成する。次に、形成された静電潜像を、キャリアとトナーとを含む2成分現像剤を用いて現像する。現像工程では、帯電したトナーを静電荷像に付着させる。そして、付着したトナーを転写ベルトに転写した後、更に転写ベルト上のトナー像を被記録媒体(例えば、紙)に転写する。その後、トナーを加熱して被記録媒体に定着させる。これにより、被記録媒体に画像が形成される。例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの4色のトナーを用いて形成したそれぞれのトナー像を重ね合わせれば、フルカラー画像を得ることができる。
以下、本実施形態に係るトナー(特にトナー粒子)の構成について説明する。
トナー粒子は、トナーコアと、トナーコアの表面に形成されたシェル層(カプセル層)と、外添剤とを有することが好ましい。以下、外添剤が付着する前のトナー粒子を、トナー母粒子と記載する。
トナーコアは、結着樹脂と、内添剤(例えば、着色剤及び離型剤)とを有することが好ましい。トナーコアはシェル層によって被覆されている。シェル層の表面には外添剤が付着していることが好ましい。なお、トナーの用途に応じて、内添剤又は外添剤を割愛してもよい。また、トナーコアの表面に複数のシェル層が積層されてもよい。
本実施形態に係るトナーは、トナーの120℃における複素弾性率G* 2に対する、ペレット状に形成されたトナー(トナーを錠剤成形して得られたペレット状成形物)の120℃における複素弾性率G* 1の比率(G* 1/G* 2)が、2.0以上3.0以下(好ましくは、2.1以上2.6以下である)である。トナーをペレット状成形物とするための条件(錠剤成形の条件)は、温度25℃でかつ50kg・f/cm2の圧力を付与することであり、これにより厚さ0.5mmかつ直径10mmのサイズのペレット状成形物(錠剤)を得る。本明細書及び特許請求の範囲においては、トナーをペレット状に形成しペレット状成形物を得ることを「錠剤成形」という場合がある。なお、複素弾性率G* 1及びG* 2の単位はPa(パスカル)である。
なお、G* 1/G* 2の値が2.0以上であるトナーは、シェル層の耐熱性が向上するため、耐熱保存性に優れる。一方、G* 1/G* 2が3.0以下であるトナーは低温定着性に優れる。
また、本実施形態に係るトナーの120℃における損失正接tanδ2に対する、ペレット状成形物の120℃における損失正接tanδ1の比率(tanδ1/tanδ2)が、0.30以上0.50以下であることが好ましく、0.33以上0.49以下であることがより好ましい。なお、tanδ1の測定に関し、トナーからペレット状成形物を得るための錠剤成形条件及びペレット状成形物のサイズは複素弾性率G* 1の測定方法と同様である。
* 1/G* 2又はtanδ1/tanδ2を上記の範囲とするためには、シェル層の厚さとシェル層を構成する樹脂に含まれる熱硬化性樹脂とを、適宜に選択又は調整すればよい。
なお、本実施形態のトナーは、80個数%以上の割合で本実施形態のトナー粒子を含むことが好ましく、90個数%以上の割合で本実施形態のトナー粒子を含むことがより好ましく、100個数%の割合で本実施形態のトナー粒子を含むことが更に好ましい。
トナーコアがアニオン性を有し、シェル層がカチオン性を有することが好ましい。トナーコアがアニオン性を有することで、シェル層の形成時にカチオン性のシェル層の材料をトナーコアの表面に引き付けることが可能になる。詳しくは、例えば、水性媒体中で負に帯電するトナーコアに、水性媒体中で正に帯電するシェル材料が電気的に引き寄せられ、in−situ重合によりトナーコアの表面にシェル層が形成される。これにより、分散剤を用いて水性媒体中にトナーコアを過度に分散させなくても、トナーコアの表面に均一なシェル層を形成し易くなる。
トナーコアにおいては、一般的に、トナーコア成分の大部分(例えば、85質量%以上)を結着樹脂が占める。このため、結着樹脂の極性がトナーコア全体の極性に大きな影響を与える。例えば、結着樹脂がエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、又はメチル基を有している場合には、トナーコアはアニオン性になる傾向が強くなり、例えば結着樹脂がアミノ基、アミン、又はアミド基を有している場合には、トナーコアはカチオン性になる傾向が強くなる。
本実施形態においてトナーコアがアニオン性であることの指標は、pHが4に調整された水性媒体中で測定されるトナーコアのゼータ電位が負極性を示すことである。トナーコアとシェル層との結合を強めるためには、トナーコアのpH4におけるゼータ電位が0Vよりも小さく、トナー粒子のpH4におけるゼータ電位が0Vよりも大きいことが好ましい。なお、本実施形態におけるpH4は、シェル層を形成する時の水性媒体のpHに相当する。
ゼータ電位の測定方法としては、例えば電気泳動法、超音波法、又はESA(電気音響)法が挙げられる。
電気泳動法は、粒子分散液に電場を印加して分散液中の帯電粒子を電気泳動させ、電気泳動速度に基づきゼータ電位を算出する方法である。電気泳動法の例としては、レーザードップラー法(電気泳動している粒子にレーザー光を照射し、得られた散乱光のドップラーシフト量から電気泳動速度を求める方法)が挙げられる。レーザードップラー法は、分散液中の粒子濃度を高濃度とする必要がなく、ゼータ電位の算出に必要なパラメーターの数が少なく、加えて電気泳動速度を感度よく検出できるという利点を有する。
超音波法は、粒子分散液に超音波を照射して分散液中の帯電粒子を振動させ、この振動によって生じる電位差に基づきゼータ電位を算出する方法である。
ESA法では、粒子分散液に高周波電圧を印加して分散液中の帯電粒子を振動させて超音波を発生させる。そして、その超音波の大きさ(強さ)からゼータ電位を算出する。
超音波法及びESA法は、粒子濃度が高い(例えば、20質量%を超える)粒子分散液であっても、ゼータ電位を感度よく測定することができるという利点を有する。
本実施形態ではトナーコアもシェル層も分散剤(界面活性剤)を含まないことが好ましい。一般に、分散剤の排水負荷は高い。分散剤を用いなければ、トナーの洗浄工程での水の使用量を削減できる。また、分散剤を用いなければ、トナー粒子を製造する際に排出される排水を希釈することなく、排水の全有機炭素濃度を15mg/L以下の低いレベルにすることが可能となる。
なお、生物化学的酸素要求量(BOD)、化学的酸素要求量(COD)、又は全有機炭素(TOC)濃度を測定することによって、排水中の有機物成分(例えば、未反応のモノマー、プレポリマー、又は分散剤)を測定することができる。中でも、TOC濃度に基づけば、有機物全般を安定的に測定することができる。また、TOC濃度を測定することで、排水(反応後のろ過液及び洗浄液の合計)中のカプセル化(シェル層の形成)に寄与しなかった有機成分の量を特定することができる。
以下、トナーコア(結着樹脂及び内添剤)、シェル層、及び外添剤について、順に説明する。
[トナーコア]
トナーコアは、結着樹脂及び内添剤(着色剤、離型剤、電荷制御剤、又は磁性粉)を含む。ただし、トナーの用途に応じて、各種成分(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、又は磁性粉)を割愛してもよい。
(結着樹脂)
以下、結着樹脂について説明する。
結着樹脂が強いアニオン性を得るためには、結着樹脂の水酸基価(OHV値)及び酸価(AV値)がそれぞれ10mgKOH/g以上であることが好ましく、それぞれ20mgKOH/g以上であることがより好ましい。
結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、シェル層の材料の硬化開始温度以下であることが好ましい。こうした結着樹脂を用いれば、トナーの高速定着時においても十分な定着性を得やすい。また、熱硬化性樹脂(特にメラミン系の樹脂)の硬化開始温度は55℃程度であることが多い。結着樹脂のTgは、20℃以上であることが好ましく、30℃以上55℃以下であることがより好ましく、30℃以上50℃以下であることが更に好ましい。結着樹脂のTgが20℃以上であるとシェル層の形成時にトナーコアが凝集しにくくなる。
結着樹脂の軟化点(Tm)は100℃以下であることが好ましく、95℃以下であることがより好ましい。結着樹脂のTmが100℃以下(より好ましくは95℃以下)であることで、トナーの高速定着時においても十分な定着性を得ることが可能になる。また、結着樹脂のTmが100℃以下(より好ましくは95℃以下)であれば、水性媒体中でトナーコアの表面にシェル層を形成する際に、シェル層の硬化反応中にトナーコアが部分的に軟化し易くなるため、トナーコアが表面張力により丸みを帯び易くなる。なお、異なるTmを有する複数種の樹脂を組み合わせることで、結着樹脂のTmを調整することができる。
以下、吸熱曲線から結着樹脂のTgを読み取る方法について説明する。
結着樹脂のTgの測定に際しては、示差走査熱量計(例えば、セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて結着樹脂の吸熱曲線を得る。結着樹脂のTgは、結着樹脂の吸熱曲線における比熱の変化点から求めることができる。
次に、S字カーブから結着樹脂のTmを読み取る方法について説明する。
高化式フローテスター(例えば、株式会社島津製作所製「CFT−500D」)を用いて、結着樹脂のTmを測定することができる。具体的には、測定試料を高化式フローテスターにセットし、所定の条件で試料を溶融させ、流出させる。これにより、S字カーブ(温度(℃)/ストローク(mm)に関するS字カーブ)を得る。得られたS字カーブから結着樹脂のTmを読み取ることができる。S字カーブにおいて、S1をストロークの最大値とし、S2は低温側のベースラインのストローク値とする。S字カーブ中のストロークの値が(S1+S2)/2となる温度を測定試料のTmとする。
結着樹脂は、例えば官能基としてエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、メチル基、又はカルボキシル基を有する樹脂であることが好ましい。結着樹脂としては、分子中に水酸基、カルボキシル基のような官能基を有する樹脂が好ましく、分子中に水酸基及び/又はカルボキシル基を有する樹脂がより好ましい。このような官能基を有するトナーコア(結着樹脂)は、シェル層の材料(例えば、メチロールメラミン)と反応して化学的に結合し易くなる。こうした化学的な結合が生じると、トナーコアとシェル層との結合が強固になる。
結着樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂の好適な例としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、又はスチレン−ブタジエン系樹脂が挙げられる。中でも、スチレンアクリル系樹脂及びポリエステル樹脂はそれぞれ、トナー中の着色剤の分散性、トナーの帯電性、及び被記録媒体に対する定着性に優れる。
以下、結着樹脂としてのスチレンアクリル系樹脂について説明する。スチレンアクリル系樹脂は、スチレン系モノマーとアクリル系モノマーとの共重合体である。
スチレン系モノマーの好適な例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、又はp−エチルスチレンが挙げられる。
アクリル系モノマーの好適な例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、又は(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが好ましい。なお、アクリル酸及びメタクリル酸を包括的に「(メタ)アクリル酸」と総称する場合がある。
スチレンアクリル系樹脂を調製する際に、水酸基を有するモノマー(例えば、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル)を用いることで、スチレンアクリル系樹脂に水酸基を導入できる。また、水酸基を有するモノマーの使用量を調整することで、得られるスチレンアクリル系樹脂の水酸基価を調整することができる。
スチレンアクリル系樹脂を調製する際に、(メタ)アクリル酸をモノマーとして用いることで、スチレンアクリル系樹脂にカルボキシル基を導入できる。また、(メタ)アクリル酸の使用量を調整することで、得られるスチレンアクリル系樹脂の酸価を調整することができる。
トナーコアの強度及びトナーの定着性を向上させるためには、結着樹脂としてのスチレンアクリル系樹脂の数平均分子量(Mn)が2000以上3000以下であることが好ましい。スチレンアクリル系樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率Mw/Mn)は10以上20以下であることが好ましい。結着樹脂のMnとMwの測定には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いることができる。
以下、結着樹脂としてのポリエステル樹脂について説明する。ポリエステル樹脂は、2価又は3価以上のアルコールと2価又は3価以上のカルボン酸とを重合させることで得られる。
ポリエステル樹脂の製造に用いることができる2価又は3価以上のアルコールの好適な例としては、ジオール類、ビスフェノール類、又は3価以上のアルコール類が挙げられる。
ジオール類としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールが好ましい。
ビスフェノール類としては、例えばビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、又はポリオキシプロピレン化ビスフェノールAが好ましい。
3価以上のアルコール類としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが好ましい。
2価カルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸(より具体的には、n−ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、又はイソドデシルコハク酸)、又はアルケニルコハク酸(より具体的には、n−ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、又はイソドデセニルコハク酸)が挙げられる。
3価以上のカルボン酸としては、例えば1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、又はエンポール三量体酸が好ましい。
上記2価又は3価以上のカルボン酸を、エステル形成性の誘導体(例えば、酸ハライド、酸無水物、又は低級アルキルエステル)に変形して用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を意味する。
ポリエステル樹脂を製造する際に、2価又は3価以上のアルコールの使用量と2価又は3価以上のカルボン酸の使用量とをそれぞれ変更することで、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価を調整することができる。ポリエステル樹脂の分子量を上げると、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価は低下する傾向がある。
トナーコアの強度及びトナーの定着性を向上させるためには、結着樹脂としてのポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)が1200以上2000以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率Mw/Mn)は9以上20以下であることが好ましい。
(着色剤)
トナーコアは、内添剤として着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、例えばトナー粒子の色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。着色剤の使用量は、100質量部の結着樹脂に対して1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、3質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
本実施形態に係るトナー粒子のトナーコアは、黒色着色剤を含有してもよい。黒色着色剤は、例えばカーボンブラックから構成される。また、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤のような着色剤を用いて黒色に調色された着色剤も黒色着色剤として利用できる。
本実施形態に係るトナー粒子のトナーコアは、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、又はシアン着色剤のようなカラー着色剤を含有していてもよい。
イエロー着色剤は、例えば縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、又はアリールアミド化合物から構成されることが好ましい。イエロー着色剤としては、例えばC.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、又は194)、ネフトールイエローS、ハンザイエローG、又はC.I.バットイエローが好ましい。
マゼンタ着色剤は、例えば縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、又はペリレン化合物から構成されることが好ましい。マゼンタ着色剤としては、例えばC.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、又は254)が好ましい。
シアン着色剤は、例えば銅フタロシアニン化合物、銅フタロシアニン誘導体、アントラキノン化合物、又は塩基染料レーキ化合物から構成されることが好ましい。シアン着色剤としては、例えばC.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、又は66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、又はC.I.アシッドブルーが好ましい。
(離型剤)
トナーコアは、内添剤として離型剤を含んでいてもよい。離型剤は、トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の使用量は100質量部の結着樹脂に対して1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、5質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
離型剤は、例えば低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、又はフィッシャートロプシュワックスのような脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックス又は酸化ポリエチレンワックスのブロック共重合体のような脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;キャンデリラワックス、カルナウバワックス、木ろう、ホホバろう、又はライスワックスのような植物系ワックス;みつろう、ラノリン、又は鯨ろうのような動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、又はペトロラタムのような鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス又はカスターワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナウバワックスのような脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスから構成されることが好ましい。
(電荷制御剤)
トナーコアは、内添剤として負帯電性の電荷制御剤を含んでいてもよい。電荷制御剤は、トナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させ、耐久性又は安定性に優れたトナーを得る目的で使用される。帯電立ち上がり特性は、所定の帯電レベルに短時間でトナーを帯電可能か否かの指標になる。
(磁性粉)
トナーコアは、内添剤として磁性粉を含んでいてもよい。磁性粉は、例えば鉄(例えば、フェライト又はマグネタイト)、強磁性金属(例えば、コバルト又はニッケル)、鉄及び/又は強磁性金属を含む合金、鉄及び/又は強磁性金属を含む化合物、熱処理のような強磁性化処理を施された強磁性合金、又は二酸化クロムから構成されることが好ましい。
[シェル層]
シェル層は、熱硬化性樹脂を含む。シェル層を有するトナー粒子から構成されるトナーは、耐熱保存性及び低温定着性に優れる。詳しくは、シェル層は保管時又は輸送時に容易に破壊されない。一方、トナーの定着時には、温度及び圧力が付与されることで容易に破壊され、トナーコア(例えば、結着樹脂)の軟化又は溶融が速やかに進行する。このため、低い温度でトナーを被記録媒体に定着させることが可能になる。
シェル層は、例えば正帯電性の電荷制御剤を含んでいてもよい。
シェル層の形成時における結着樹脂の溶解又は離型剤の溶出を抑制するためには、シェル層の形成は水性媒体中で行われることが好ましい。このため、シェル層の材料は、水溶性を有していることが好ましい。
熱硬化性樹脂としては、例えばメラミン樹脂、尿素(ユリア)樹脂、スルホンアミド樹脂、グリオキザール樹脂、グアナミン樹脂、アニリン樹脂、又はこれら各樹脂の誘導体が好ましい。
熱硬化性樹脂は、例えば、窒素元素を分子骨格に有する。熱硬化性樹脂としては、例えばポリイミド樹脂、マレイミド系重合体、ビスマレイミド、アミノビスマレイミド、又はビスマレイミドトリアジンが好ましい。
熱硬化性樹脂としては、アミノ基を含む化合物とアルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド)との重縮合によって生成される樹脂(以下、アミノアルデヒド樹脂という)、又はアミノアルデヒド樹脂の誘導体が特に好ましい。なお、メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドとの重縮合物である。尿素樹脂は、尿素とホルムアルデヒドとの重縮合物である。グリオキザール樹脂は、グリオキザールと尿素との反応生成物と、ホルムアルデヒドとの重縮合物である。グリオキザール樹脂としては、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素(DMDHEU)が好ましい。
熱硬化性樹脂に窒素元素を含有させることで、熱硬化性樹脂の架橋硬化機能を向上させることができる。熱硬化性樹脂の反応性を高めるためには、メラミン樹脂では40質量%以上55質量%以下に、尿素樹脂では40質量%程度に、グリオキザール樹脂では15質量%程度に、窒素元素の含有量を調整することが好ましい。
シェル層に含まれる熱硬化性樹脂の調製には、メチロールメラミン、メラミン、メチロール化尿素、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、及びスピログアナミンからなる群から選択される1種以上の熱硬化性モノマーが好適に使用できる。
シェル層の形成に、硬化剤又は反応促進剤を用いてもよいし、複数の官能基を組み合わせたポリマーを用いてもよい。また、アクリルシリコーン樹脂(グラフトポリマー)を用いてシェル層の耐水性を向上させてもよい。
シェル層の厚さは、上述のG* 1/G* 2の値又はtanδ1/tanδ2の値を好適な範囲に制御するために、20nm以下であることが好ましく、3nm以上20nm以下であることがより好ましい。
シェル層を構成する樹脂に含まれる熱硬化性樹脂がメラミン樹脂である場合、上述のG* 1/G* 2又はtanδ1/tanδ2の値を好適な範囲に制御するために、シェル層の厚さは3nm以上20nm以下であることが好ましい。
また、シェル層の厚さが20nmを超えると、トナーを被記録媒体へ定着させる際に圧力が加えられても、シェル層が破壊されにくい。この場合、トナーコアに含まれる結着樹脂若しくは離型剤の軟化、又は溶融が速やかに進行せず、低温域でトナーを被記録媒体上に定着させにくい。一方、薄過ぎる(3nm未満である)シェル層は強度が低く、輸送時のような状況での衝撃によってシェル層が破壊される場合がある。ここで、高温でトナーを保存する場合、シェル層の少なくとも一部が破壊されたトナー粒子は凝集しやすい。なぜなら、高温下ではシェル層における破壊された箇所を通じて、離型剤のような成分がトナー粒子の表面に染み出しやすいからである。
シェル層の厚さは、トナー粒子の断面のTEM撮影像を市販の画像解析ソフトウェアを用いて解析することによって計測できる。市販の画像解析ソフトウェアとしては、WinROOF(三谷商事株式会社製)のようなソフトウェアを用いることができる。具体的には、トナーの断面の略中心で直交する2本の直線を引き、この2本の直線上の、シェル層と交差する4箇所の長さを測定する。このようにして測定される4箇所の長さの平均値を、測定対象である1個のトナー粒子が備えるシェル層の厚さとする。このようなシェル層の厚さの測定を、10個以上のトナー粒子に対して行い、測定対象の複数のトナー粒子それぞれが備えるシェル層の膜厚の平均値を求める。求められる平均値を、トナー粒子が備えるシェル層の膜厚とする。
シェル層が薄過ぎる場合、TEM撮影像上でシェル層とトナーコアとの界面が不明瞭であるため、シェル層の厚さの測定が困難である場合がある。このような場合、TEM撮影とエネルギー分散X線分光分析(EDX)とを組み合わせて、TEM撮影像中で、シェル層の材料に特徴的な元素(例えば、窒素)のマッピングを行い、シェル層とトナーコアとの界面を明確化して、シェル層の厚さを計測する。
[外添剤]
以下、外添剤について説明する。外添剤は、例えばトナーの流動性又は取扱性を向上させるために使用される。トナーの流動性又は取扱性を向上させるために、外添剤の使用量は、トナー母粒子100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましく、2質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
外添剤は、例えばシリカ又は金属酸化物(例えば、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、又はチタン酸バリウム)から構成されることが好ましい。
流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の粒子径は0.01μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
本実施形態のトナーの製造方法について以下に述べる。本実施形態のトナーの製造方法では、まず、トナーコアを形成する。続けて、液に、少なくとも、熱硬化性材料と、トナーコアとを入れる。続けて、液中で、熱硬化性材料を含有するシェル層をトナーコアの表面に形成する。そして、熱硬化性材料の添加量に基づいて、トナーコアの表面に形成されたシェル層の厚さを制御することで、G* 1/G* 2の値を調整することができる。
より具体的には、上記液としてイオン交換水を準備する。続けて、酸(例えば塩酸、又は硝酸)を用いて液のpHを調整する。続けて、液中に、シェル層の材料(熱硬化性樹脂を得るための材料)を添加する。これにより、液中でシェル層の材料が溶けて、溶液が得られる。シェル層の材料の適切な添加量は、トナーコアの比表面積に基づいて算出できる。シェル層の材料の添加は、例えば常温で行われる。
続けて、得られた溶液にトナーコアを添加して、溶液を攪拌しながら溶液の温度を上昇させる。例えば、本発明においては1℃/分の速度で30分かけて70℃まで溶液の温度を上昇させる。これにより、トナーコアの表面にシェル層の材料が付着し、付着した材料が重合反応して硬化する。
溶液の温度がトナーコアのガラス転移点(Tg)以上になると、トナーコアが変形する。例えば、トナーコアの結着樹脂のTgが45℃であり、シェル層に含まれる熱硬化性材料がメラミン樹脂のモノマー又はプレポリマーである場合には、溶液の温度が50℃付近まで上昇すると、急速にシェル層の材料の硬化反応が促進され、トナーコアが変形する。高温でシェル層の材料を反応させると、シェル層が硬く仕上がる傾向がある。また、液の温度を高くすると、トナーコアの変形が促進され、トナー母粒子の形状が真球に近づく傾向がある。このため、トナー母粒子が所望の形状になるように反応温度を決定することが望ましい。
続けて、溶液を中和し、冷却した後ろ過する。これにより、トナー母粒子が液から分離(固液分離)される。続けて、得られたトナー母粒子を乾燥させる。その後、トナー母粒子の表面に外添剤を公知の方法で付着させる。これにより、複数のトナー粒子を含むトナーが完成する。
なお、溶液をろ過した後のろ過液の導電率は、トナーの帯電性に影響を与えないために、10μS/cm以下であることが好ましい。ろ過液の導電率は、例えば、Horiba COND METER ES−51(株式会社堀場製作所製)を用いて測定する。
以上説明した本発明のトナーは、耐熱保存性及び低温定着性の何れにも優れるため、種々の画像形成装置で好適に使用できる。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は実施例の範囲に何ら限定されるものではない。
調製例(A−1)
トナーコアの調製
100質量部のポリエステル樹脂(酸価:40mgKOH/g、水酸基価:20mgKOH/g、Tm:100℃、Tg:48℃)に対し、5質量部の着色剤(C.I.ピグメントブルー15:3、銅フタロシアニン)、及び5質量部のエステルワックス(日油株式会社製「WEP−3」、ガラス転移点70℃)を、混合機(FMミキサー)を用いて混合し混合物を得た。Tmは、上述のように、高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500」)を用いて得られたS字カーブに基づいて測定した。なお、Tgは、上述のように、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて得られた吸熱曲線から測定した。酸価及び水酸基価は、測定溶媒としてアセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1、容量比)を用い、JIS規格(JIS K0070)に従って測定した。
次いで、得られた混合物を、2軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて溶融し、混練して混練物を得た。混練物を機械式粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミル」)を用いて粉砕し、粉砕物を得た。粉砕物を分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェット」)を用いて分級し、体積中位径(D50)が6.0μmのトナーコアを得た。トナーコアの体積中位径は、コールターカウンターマルチサイザー3(ベックマン・コールター株式会社製)を用いて測定した。このトナーコアの一部を取り出し、標準キャリアとの摩擦帯電量の測定とpH4の分散液中のゼータ電位の測定とに用いた。トナーコアに関し、標準キャリア(N−01)との摩擦帯電量は−20μC/gであり、pH4の分散液中のゼータ電位は−15mVであり、明らかなアニオン性を示していた。
トナーコアのTgは49℃であり、トナーコアのTmは90℃であった。トナーコアの円形度は0.93であった。
シェル層の形成
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコに、イオン交換水300mLを入れた後、ウォーターバスを用いてフラスコ内部の温度を30℃に保持した。次いで、フラスコ内に希塩酸を加えて、フラスコ内の水性媒体のpHを4に調整した。pH調整後、フラスコ内に、シェル層の原料として、ヘキサメチロールメラミン初期重合体の水溶液(昭和電工株式会社製「ミルベン(登録商標)レジンSM−607」、固形分濃度80質量%)2mLを添加した。次いで、フラスコの内容物を攪拌し、シェル層の原料を水性媒体に溶解させ、シェル層の原料の水溶液(A)を得た。
水溶液(A)が入った3つ口フラスコに、トナーコア300gを添加し、フラスコの内容物を、200rpmの速度で1時間攪拌した。次いで、イオン交換水300mLを追加し、100rpmで攪拌しながら、1℃/分の速度でフラスコ内部の温度を70℃まで上げた。昇温後、70℃かつ100rpmで、フラスコの内容物を2時間攪拌し続けた。その後、水酸化ナトリウムを加えて、フラスコの内容物のpHを7に調整した。次いで、フラスコの内容物を常温まで冷却してトナー母粒子を含む分散液を得た。
ブフナーロートを用いて、トナー母粒子を含む分散液からウエットケーキ状のトナー母粒子をろ取した。ろ過後のろ過液の導電率は4μS/cmであった。このウエットケーキ状のトナー母粒子をイオン交換水に分散させてトナー母粒子を洗浄した。ろ過液と洗浄液との全有機炭素(TOC)の濃度は8mg/L以下であった。なお、この程度のTOC濃度であれば、一般的な逆浸透(RO)での処理により水道水レベル(TOC濃度:3mg/L)まで浄化できる。
次いで、熱風乾燥によりトナー母粒子を乾燥させた。トナー母粒子のシェル層の厚さは6nmであった。
外添工程
乾燥後のトナー母粒子100質量部と、外添剤としてのシリカ(日本アエロジル株式会社製「REA90」)0.5質量部とを、容量10LのFMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて5分間混合し、トナー母粒子表面にシリカを付着させた。その後、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別し、調製例(A−1)のトナーを得た。
調製例(A−2)〜(A−5)
ヘキサメチロールメラミン初期重合体の水溶液の添加量をそれぞれ変更することにより、シェル層の厚さを表1に記載したように変更した以外は、調製例(A−1)と同様の手法で、調製例(A−2)〜(A−5)のトナーを得た。
調製例(A−6)
シェル層を形成する際に、2mLのヘキサメチロールメラミン初期重合体の水溶液に代えて、2mLのメチロール化尿素の水溶液(昭和電工株式会社製「ミルベン(登録商標)レジンSU−100」、固形分濃度80質量%)を用いた以外は、調製例(A−1)と同様の手法で、調製例(A−6)のトナーを得た。
調製例(B−1)
ヘキサメチロールメラミン初期重合体の水溶液の添加量を減らして、シェル層の厚さを2nmとした以外は、調製例(A−1)と同様の手法で、調製例(B−1)のトナーを得た。
調製例(B−2)
ヘキサメチロールメラミン初期重合体の水溶液の添加量を増やして、シェル層の厚さを25nmとした以外は、調製例(A−1)と同様の手法で、調製例(B−2)のトナーを得た。
得られたトナーの評価方法又は測定方法は以下の通りである。
(1)錠剤成形されたトナー(ペレット状成形物)の動的粘弾性(複素弾性率G* 1、貯蔵弾性率G1、損失弾性率G2、及び損失正接tanδ1)の測定方法
粘弾性測定装置(レオメーター、Anton Paar社製「MCR−301」)を用いて錠剤成形されたトナー(ペレット状成形物)の動的粘弾性を測定した。測定容器(内径2.8cmの円筒形)の底部に、何れかの調製例で得られたトナー0.5gを厚さが均一になるように充填した。直径10cmのパラレルプレートを、温度25℃、圧力50kg・f/cm2で測定容器底部に充填されたトナーに圧接させて、厚さ0.5mm±0.02mm、かつ直径10mmであるペレット状成形物を成形した。このペレット状成形物に関し、周波数を1Hzとし、印加歪を測定温度範囲内で対数的に0.01%から5%へ上昇させてプレートを稼動させ、測定温度120℃でのトルクを測定した。なお、調製例(A−1)については、ペレット状成形物の温度を4℃/分で200℃まで昇温させて、20℃刻みで動的粘弾性を測定した。損失正接tanδは下記式により算出した。
損失正接tanδ=損失弾性率G2/貯蔵弾性率G1
(2)トナーの動的粘弾性(複素弾性率G* 2、貯蔵弾性率G1、損失弾性率G2、及び損失正接tanδ2)の測定
上記の粘弾性測定装置を用いて、次のような手法でトナーの動的粘弾性を測定した。測定プレート中に、何れかの調製例で得られたトナーを投入し、数回タッピングして最密となるように充填させた。次いで、測定プレートを120℃に加熱して、トナーを測定プレートに融着させた。プレートギャップを5mmの高さになるように降下させ、測定プレートからはみ出たトナーを掻き出した。測定プレート内に残留するトナーについて、周波数を1Hzとし、印加歪を測定温度範囲内で対数的に0.01%から5%へ上昇させてプレートを稼動させ、測定温度120℃でのトルクを測定した。なお、調製例(A−1)については、トナーの温度を4℃/分で200℃まで昇温させて、20℃刻みで動的粘弾性を測定した。
(3)シェル層の厚さ
トナーに含まれるトナー粒子の断面のTEM写真を、以下の方法に従って撮影した。トナー粒子の断面のTEM写真から、シェル層の厚さを測定した。
<トナー粒子断面のTEM写真撮影方法>
まず、トナーを常温硬化性のエポキシ樹脂中に分散させ、40℃の雰囲気に2日間静置し硬化物を得た。得られた硬化物を四酸化オスミウムを用いて染色した。その後、得られた硬化物から、ミクロトーム(ライカ株式会社製「EM UC6」)を用いて、厚さ200nmのトナー粒子の断面観察用薄片試料を切り出した。得られた薄片試料を、透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子株式会社製「JSM−6700F」)を用いて倍率3000倍及び10000倍で観察し、トナー粒子の断面のTEM写真を撮影した。
(4)耐熱保存性
トナー3gを容量30mLのポリ容器に秤量し、60℃に設定された恒温器内に3時間静置して耐熱保存性評価用のトナーを得た。その後、耐熱保存性評価用のトナーを、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)のマニュアルに従い、レオスタッド目盛り5、時間30秒の条件で、325メッシュ(目開き45μm)の篩を用いて篩別した。篩別後に、篩上に残留したトナーの質量を測定した。篩別前のトナーの質量と、篩別後に篩上に残留したトナーの質量とから、下記式に従って凝集度(%)を求めた。
凝集度(%)=(篩上に残留したトナーの質量/篩別前のトナーの質量)×100
(5)低温定着性
評価機として、Roller−Roller方式の加熱加圧型の定着器(ニップ幅8mm)を装備し、定着温度を調節できるように改造したプリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5250DN」)を用いた。現像剤用キャリア(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製のTASKalfa5550用キャリア)と、キャリアの質量に対して10質量%のトナーとを、ボールミル(日陶科学株式会社製、「BALL MILL、ANZ−51S」)を用いて30分間混合し、低温定着性評価用の2成分現像剤を調製した。
トナーを評価機のシアン色用のトナーコンテナに投入し、2成分現像剤をシアン色用の現像装置に投入して、評価機により線速200mm/秒で90g/m2の記録紙を搬送し、記録紙に1.0mg/cm2のトナー像(シアン単色)を形成した。続けて、トナー像を形成した後の記録紙に定着器を通過させた。ニップ通過時間は40m秒とした。また、定着温度の設定範囲は100℃以上200℃以下とした。詳しくは、定着器の定着温度を100℃から5℃ずつ上昇させて、未定着のソリッド画像を定着させた。そして、ソリッド画像がオフセットすることなく紙に定着できる最低温度(最低定着温度)を測定した。
トナーの測定結果及び評価結果を、表1に示す。
Figure 0006192748
また、調製例(A−1)のトナーに関し、図1にトナー(錠剤成形していないトナー)の複素弾性率G* 2及びペレット状成形物の複素弾性率G* 1と温度との関係を示す。図1の縦軸は複素弾性率を示し、横軸は温度を示す。更に調製例(A−1)のトナーに関し、図2にトナー(錠剤成形していないトナー)の損失正接tanδ2及びペレット状成形物の損失正接tanδ1と温度との関係を示す。図2の縦軸は損失正接を示し、横軸は温度を示す。
表1から明らかなように、調製例(A−1)〜(A−6)のトナー(本実施形態のトナー)は、耐熱保存性と低温定着性とを両立していた。
調製例(B−1)のトナーは、G* 1/G* 2の値が2.0より小さかったため、耐熱保存性に劣っていたと考えられる。
調製例(B−2)のトナーは、G* 1/G* 2の値が3.0より大きかったため、低温定着性に劣っていたと考えられる。
本発明に係るトナーは、例えば複写機又はプリンターにおいて画像を形成するために用いることができる。

Claims (4)

  1. トナーコアと、前記トナーコアの表面に形成されたシェル層とを含むトナー粒子を複数含有するトナーであって、
    前記シェル層は熱硬化性樹脂を含み、
    前記トナーの120℃における複素弾性率G に対する、前記トナーを用いて成形したペレット状成形物の120℃における複素弾性率G の比率G /G が、2.0以上3.0以下であり、
    前記G が、2.76×10以上2.98×10以下であり、
    前記G が、1.03×10以上1.38×10以下であり、
    前記ペレット状成形物は、前記トナーを25℃かつ50kg・f/cmの成形条件で厚さ0.5mmかつ直径10mmのサイズに成形したものであり、
    前記シェル層の厚さが3nm以上20nm以下である、トナー。
  2. 前記トナーコアがアニオン性を示し、前記シェル層がカチオン性を示す、請求項1に記載のトナー。
  3. 前記熱硬化性樹脂がメラミン樹脂である、請求項1に記載のトナー。
  4. 前記トナーの120℃における損失正接tanδに対する、前記ペレット状成形物の120℃における損失正接tanδの比率tanδ/tanδが、0.30以上0.50以下であり、
    前記tanδが0.56以上0.71以下であり、
    前記tanδが1.45以上1.71以下である、請求項1に記載のトナー。
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