JP6055388B2 - トナーの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、トナーの製造方法に関し、特にカプセルトナーの製造方法に関する。
カプセルトナーは、コアと、コアの表面に形成されたシェル層(カプセル層)とから構成される。また、必要に応じて、シェル層の表面に外添剤を付着させてもよい。
特許文献1には、分散剤が溶解している液(水性媒体)にコアを固体状態で分散し、液中でコア表面をシェル層で被覆するトナーの製造方法が開示されている。
特開2004−294469号公報
しかしながら、特許文献1に開示される技術だけでは定着性と保存性との両方に優れたトナーを得ることは難しい。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、定着性と保存性との両方に優れたトナー及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係るトナーの製造方法は、粉砕により円形度0.90以上0.94以下のコアを形成するステップと、前記コアの表面にシェル層を形成することで、前記コアと前記シェル層とが円形度0.96以上0.99以下のトナー粒子を構成するステップとを含む。
本発明に係るトナーは、円形度0.90以上0.94以下のコアと前記コアの表面に形成されたシェル層とから構成される円形度0.96以上0.99以下のトナー粒子を含む。
本発明によれば、定着性と保存性との両方に優れたトナー及びその製造方法を提供することが可能になる。
本発明の実施形態に係るトナーを構成するトナー粒子を示す図である。 吸熱曲線からガラス転移点を読み取る方法を説明するための図である。 S字カーブから軟化点を読み取る方法を説明するための図である。 本発明の実施例に係る実施例3の評価結果を示すグラフである。 本発明の実施例に係る実施例4の評価結果を示すグラフである。 本発明の実施例に係る実施例5の評価結果を示すグラフである。 本発明の実施例に係る実施例6の評価結果を示すグラフである。 本発明の実施例に係る実施例7の評価結果を示すグラフである。 本発明の実施例に係る実施例8の評価結果を示すグラフである。 本発明の実施例に係る実施例9の評価結果を示すグラフである。 本発明の実施例に係る実施例10の評価結果を示すグラフである。 本発明の実施例に係る実施例11の評価結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係るトナーは、静電荷像現像用のカプセルトナーである。本実施形態のトナーは、多数の粒子(以下、トナー粒子という)から構成される。本実施形態に係るトナーは、例えば電子写真装置で用いることができる。
電子写真装置では、トナーを含む現像剤を用いて静電荷像を現像する。これにより、感光体上に形成された静電潜像に、帯電したトナーが付着する。そして、付着したトナーを転写ベルトに転写した後、さらに転写ベルト上のトナー像を例えば紙に転写し、熱によりトナーを紙に定着させる。これにより、紙に画像が形成される。例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナーを用いてそれぞれのトナー像を重ね合わせれば、フルカラー画像を得ることができる。
以下、図1を参照して、本実施形態に係るトナー(特にトナー粒子)の構成について説明する。図1は、本実施形態に係るトナーを構成するトナー粒子10を示す図である。
図1に示すように、トナー粒子10は、アニオン性のコア11と、コア11の表面に形成されたカチオン性のシェル層12(カプセル層)と、外添剤13とから構成される。
本実施形態では、コア11が粉砕により形成される。コア11の円形度は0.90以上0.94以下である。シェル層12は、コア11の表面に形成される。トナー粒子10の円形度は0.96以上0.99以下である。定着性と保存性との両方を向上させるためには、トナー粒子10の圧縮強度が8MPa以上13MPa以下であることが好ましい。
コア11は、結着樹脂11aと、内添剤11b(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉)とから構成される。コア11は、シェル層12によって被覆されている。シェル層12の表面には外添剤13が付着している。
ただし、トナー粒子の構成は上記に限られない。例えば、必要がなければ内添剤11b又は外添剤13を割愛してもよい。また、トナー粒子は、コア11の表面に複数のシェル層12を有していてもよい。積層された複数のシェル層12をトナー粒子が有する場合には、複数のシェル層12のうち最外のシェル層12がカチオン性を有することが好ましい。
コア11がアニオン性を有し、シェル層12がカチオン性を有することが好ましい。コア11がアニオン性を有することで、シェル層12の形成時にカチオン性のシェル層12の材料をコア11の表面に引き付けることが可能になる。詳しくは、例えば水性媒体中で負に帯電するコア11と水性媒体中で正に帯電するシェル層12の材料とが相互に電気的に引き寄せられ、例えばin−situ重合によりコア11の表面にシェル層12が形成される。これにより、分散剤を用いて水性媒体中にコア11を高度に分散させずとも、コア11の表面に均一なシェル層12を形成し易くなる。
コア11においては、コア成分の大部分(例えば、85質量%以上)を結着樹脂11aが占める。このため、結着樹脂11aの極性がコア11全体の極性に大きな影響を与える。例えば結着樹脂11aがエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、又はメチル基を有している場合には、コア11はアニオン性になる傾向が強くなり、例えば結着樹脂11aがアミノ基、アミン、又はアミド基を有している場合には、コア11はカチオン性になる傾向が強くなる。
本実施形態においてコア11がアニオン性であることの指標は、pHが4に調整された水性媒体中で測定されるコア11のゼータ電位が負極性を示すことである。コア11とシェル層12との結合を強めるためには、コア11のpH4におけるゼータ電位が0Vよりも小さく、トナー粒子10のpH4におけるゼータ電位が0Vよりも大きいことが好ましい。なお、本実施形態においてpH4はシェル層12を形成する時のpHに相当する。
ゼータ電位の測定方法としては、電気泳動法、超音波法、又はESA(電気音響)法等が挙げられる。
電気泳動法は、粒子分散液に電場を印加して分散液中の帯電粒子を電気泳動させ、電気泳動速度に基づきゼータ電位を算出する方法である。電気泳動法としては、レーザードップラー法(電気泳動している粒子にレーザー光を照射し、得られた散乱光のドップラーシフト量から電気泳動速度を求める方法)等が挙げられる。レーザードップラー法は、分散液中の粒子濃度を高濃度とする必要がなく、ゼータ電位の算出に必要なパラメーターの数が少なく、加えて電気泳動速度を感度よく検出できるという利点を有する。
超音波法は、粒子分散液に超音波を照射して分散液中の帯電粒子を振動させ、この振動によって生じる電位差に基づきゼータ電位を算出する方法である。
ESA法では、粒子分散液に高周波電圧を印加して分散液中の帯電粒子を振動させて超音波を発生させる。そして、その超音波の大きさ(強さ)からゼータ電位を算出する。
超音波法及びESA法は、粒子濃度が高い(例えば、20質量%を超える)粒子分散液であっても、ゼータ電位を感度よく測定することができるという利点を有する。
本実施形態ではコア11もシェル層12も分散剤(界面活性剤)を有しない。一般に、分散剤は排水負荷が高い。分散剤を用いなければ、洗浄工程での水の使用量を削減できる。また、分散剤を用いなければ、トナー粒子10を製造する際に排出される排水を希釈することなく、排水の全有機炭素(TOC)濃度を15mg/L以下の低いレベルにすることが可能となる。
なお、生物化学的酸素要求量(BOD)、化学的酸素要求量(COD)、又は全有機炭素(TOC)濃度を測定することによって、廃水中の有機物成分(未反応のモノマー、プレポリマー、又は分散剤等)を測定することができる。中でも、TOC濃度に基づけば、有機物全般を安定的に測定することができる。また、TOC濃度を測定することで、廃水(反応後のろ過液及び洗浄液の全体)中のカプセル化に寄与しなかった有機成分の量を特定することができる。
以下、トナー粒子10を構成するコア11の全体構成、コア11の成分(結着樹脂11a及び内添剤11b)、シェル層12の全体構成、シェル層12の成分(電荷制御剤)、及び外添剤13について、順に説明する。
[コア]
コア11は、結着樹脂11a及び内添剤11b(着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉)を含む。ただし、トナーの用途等に応じて必要のない成分(着色剤、離型剤、電荷制御剤、又は磁性粉等)を割愛してもよい。
[結着樹脂(コア)]
以下、結着樹脂11aについて説明する。
結着樹脂11aが強いアニオン性を得るためには、結着樹脂11aの水酸基価(OHV値)及び酸価(AV値)がそれぞれ10mgKOH/g以上であることが好ましく、20mgKOH/g以上であることがより好ましい。
結着樹脂11aのガラス転移点(Tg)は、シェル層12に含まれる熱硬化性樹脂の硬化開始温度以下であることが好ましい。こうした結着樹脂11aを用いれば、高速定着時においても十分な定着性を得やすい。また、熱硬化性樹脂(特にメラミン系の樹脂)の硬化開始温度は55℃程度であることが多い。結着樹脂11aのTgは、20℃以上であることが好ましく、30℃以上55℃以下であることがより好ましく、30℃以上50℃以下であることがさらに好ましい。結着樹脂11aのTgが20℃以上であるとシェル層12の形成時にコア11が凝集しにくくなる。
結着樹脂11aの軟化点(Tm)は100℃以下が好ましく、95℃以下がより好ましい。結着樹脂11aのTmが100℃以下(より好ましくは95℃以下)であることで、高速定着時においても十分な定着性を得ることが可能になる。また、結着樹脂11aのTmが100℃以下(より好ましくは95℃以下)であれば、水性媒体中でコア11の表面にシェル層12を形成する際に、シェル層12の硬化反応中にコア11が部分的に軟化し易くなるため、コア11が表面張力により丸みを帯び易くなる。なお、異なるTmを有する複数の結着樹脂を組み合わせることで、結着樹脂11aのTmを調整することができる。
以下、図2を参照して、吸熱曲線から結着樹脂11aのTgを読み取る方法について説明する。図2は吸熱曲線の一例を示すグラフである。
Tgの測定に際しては、示差走査熱量計を用いて吸熱曲線を測定する。例えば図2に示すような吸熱曲線が得られる。結着樹脂11aのTgは、結着樹脂11aの吸熱曲線における比熱の変化点から求めることができる。
次に、図3を参照して、S字カーブから結着樹脂11aのTmを読み取る方法について説明する。図3はS字カーブの一例を示すグラフである。
高架式フローテスターを用いて、結着樹脂11aのTmを測定することができる。具体的には、測定試料を高架式フローテスターにセットし、所定の条件で試料を溶融流出させる。これにより、S字カーブ(温度(℃)/ストローク(mm)に関するS字カーブ)が得られる。得られたS字カーブから結着樹脂11aのTmを読み取ることができる。図3において、S1はストロークの最大値を示し、S2は低温側のベースラインのストローク値を示す。S字カーブ中のストロークの値が(S1+S2)/2となる温度を測定試料のTmとする。
図1を参照して説明を続ける。
結着樹脂11aは、例えば官能基としてエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、メチル基、カルボキシル基、又はアミノ基を有する樹脂から構成されることが好ましい。結着樹脂11aとしては、分子中に水酸基、カルボキシル基、又はアミノ基のような官能基を有する樹脂が好ましく、分子中に水酸基及び/又はカルボキシル基を有する樹脂がより好ましい。このような官能基を有するコア11(結着樹脂11a)は、シェル層12の材料(例えば、メチロールメラミン)と反応して化学的に結合し易くなる。こうした化学的な結合が生じると、コア11とシェル層12との結合が強固になる。
結着樹脂11aとしては、熱可塑性樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂の好適な例としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、又はスチレン−ブタジエン系樹脂が挙げられる。中でも、スチレンアクリル系樹脂及びポリエステル樹脂はそれぞれ、トナー中の着色剤の分散性、トナーの帯電性、及び被記録媒体に対する定着性に優れる。
(スチレンアクリル系樹脂)
以下、結着樹脂11aとしてのスチレンアクリル系樹脂について説明する。
スチレンアクリル系樹脂は、例えばスチレン系単量体とアクリル系単量体との共重合体である。
スチレン系単量体の好適な例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、又はp−エチルスチレンが挙げられる。
アクリル系単量体の好適な例としては、(メタ)アクリル酸、特に(メタ)アクリル酸アルキルエステル又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)メタアクリル酸メチル、(メタ)メタアクリル酸エチル、(メタ)メタアクリル酸n−ブチル、又は(メタ)メタアクリル酸iso−ブチルが好ましい。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシプロピルが好ましい。
スチレンアクリル系樹脂を調製する際に、水酸基を有する単量体(p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル等)を用いることで、スチレンアクリル系樹脂に水酸基を導入できる。例えば、水酸基を有する単量体の使用量を適宜調整することで、得られるスチレンアクリル系樹脂の水酸基価を調整することができる。
スチレンアクリル系樹脂を調製する際に、(メタ)アクリル酸を単量体として用いることで、スチレンアクリル系樹脂にカルボキシル基を導入できる。例えば、(メタ)アクリル酸の使用量を適宜調整することで、得られるスチレンアクリル系樹脂の酸価を調整することができる。
コア11の強度又は定着性を向上させるためには、結着樹脂11aとしてのスチレンアクリル系樹脂の数平均分子量(Mn)が2000以上3000以下であることが好ましい。スチレンアクリル系樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率Mw/Mn)は10以上20以下であることが好ましい。結着樹脂11aのMnとMwの測定には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いることができる。
(ポリエステル樹脂)
以下、結着樹脂11aとしてのポリエステル樹脂について説明する。
ポリエステル樹脂は、例えば2価又は3価以上のアルコール成分と2価又は3価以上のカルボン酸成分とを縮重合や共縮重合することで得られる。
ポリエステル樹脂の2価又は3価以上のアルコール成分の好適な例としては、ジオール類、ビスフェノール類、又は3価以上のアルコール類が挙げられる。
ジオール類としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールが好ましい。
ビスフェノール類としては、例えばビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、又はポリオキシプロピレン化ビスフェノールAが好ましい。
3価以上のアルコール類としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが好ましい。
ポリエステル樹脂の2価又は3価以上のカルボン酸成分としては、例えばエステル形成性の誘導体(酸ハライド、酸無水物、又は低級アルキルエステル等)を用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1〜6のアルキル基を意味する。
2価カルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、又はアルキルもしくはアルケニルコハク酸が好ましい。さらに、アルケニルコハク酸としては、例えばn−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、又はイソドデセニルコハク酸が好ましい。
3価以上のカルボン酸としては、例えば1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、又はエンポール三量体酸が好ましい。
ポリエステル樹脂を製造する際に、2価又は3価以上のアルコール成分の使用量と2価又は3価以上のカルボン酸成分の使用量とをそれぞれ適宜変更することで、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価を調整することができる。また、ポリエステル樹脂の分子量を上げると、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価は低下する傾向がある。
コア11の強度又は定着性を向上させるためには、結着樹脂11aとしてのポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)が1200以上2000以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率Mw/Mn)は9以上20以下であることが好ましい。結着樹脂11aのMnとMwの測定には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いることができる。
[着色剤(コア)]
以下、コア11(内添剤11b)に含まれる着色剤について説明する。
着色剤としては、例えばトナー粒子10の色に合わせて公知の顔料や染料を用いることができる。着色剤の使用量は、100質量部の結着樹脂11aに対して1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、3質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
(黒色着色剤)
本実施形態に係るトナー粒子10のコア11は、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤は、例えばカーボンブラックから構成される。また、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤のような着色剤を用いて黒色に調色された着色剤も利用できる。
(カラー着色剤)
本実施形態に係るトナー粒子10のコア11は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、又はシアン着色剤のようなカラー着色剤を含有していてもよい。
イエロー着色剤は、例えば縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、又はアリルアミド化合物から構成されることが好ましい。イエロー着色剤としては、例えばC.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、又は194)、ネフトールイエローS、ハンザイエローG、又はC.I.バットイエローが好ましい。
マゼンタ着色剤は、例えば縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、又はペリレン化合物から構成されることが好ましい。マゼンタ着色剤としては、例えばC.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、又は254)が好ましい。
シアン着色剤は、例えば銅フタロシアニン化合物、銅フタロシアニン誘導体、アントラキノン化合物、又は塩基染料レーキ化合物から構成されることが好ましい。シアン着色剤としては、例えばC.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、又は66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、又はC.I.アシッドブルーが好ましい。
[離型剤(コア)]
以下、コア11(内添剤11b)に含まれる離型剤について説明する。
離型剤は、トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の使用量は100質量部の結着樹脂11aに対して1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、5質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
一例では、離型剤が、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、又はフィッシャートロプシュワックスのような脂肪族炭化水素系ワックスから構成されることが好ましい。別の一例では、離型剤が、酸化ポリエチレンワックス、又は酸化ポリエチレンワックスのブロック共重合体のような脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物から構成されることが好ましい。別の一例では、離型剤が、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、又はライスワックスのような植物系ワックスから構成されることが好ましい。別の一例では、離型剤が、みつろう、ラノリン、又は鯨ろうのような動物系ワックスから構成されることが好ましい。別の一例では、離型剤が、オゾケライト、セレシン、又はベトロラクタムのような鉱物系ワックスから構成されることが好ましい。別の一例では、離型剤が、モンタン酸エステルワックス又はカスターワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類から構成されることが好ましい。別の一例では、離型剤が、脱酸カルナバワックスのような脂肪酸エステルの一部又は全部を脱酸化したワックスから構成されることが好ましい。
[電荷制御剤(コア)]
以下、コア11(内添剤11b)に含まれる電荷制御剤について説明する。
本実施形態ではコア11がアニオン性(負帯電性)を有するため、コア11では負帯電性の電荷制御剤が使用される。電荷制御剤は、帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させ、耐久性又は安定性に優れたトナーを得る目的で使用される。帯電立ち上がり特性は、所定の帯電レベルに短時間で帯電可能か否かの指標になる。
[磁性粉(コア)]
以下、コア11(内添剤11b)に含まれる磁性粉について説明する。
トナーを1成分現像剤として使用する場合、磁性粉の使用量は、トナー全量100質量部に対して35質量部以上60質量部以下であることが好ましく、40質量部以上60質量部以下であることがより好ましい。また、トナーを2成分現像剤として使用する場合、磁性粉の使用量は、トナー全量100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましい。
磁性粉は、例えば鉄(フェライト又はマグネタイト)、強磁性金属(コバルト又はニッケル)、鉄及び/又は強磁性金属を含む合金、鉄及び/又は強磁性金属を含む化合物、熱処理のような強磁性化処理を施された強磁性合金、又は二酸化クロムから構成されることが好ましい。
磁性粉の粒子径は、0.1μm以上1.0μm以下であることが好ましく、0.1μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。こうした範囲に磁性粉の粒子径がある場合には、結着樹脂11a中に磁性粉を均一に分散させ易くなる。
[シェル層]
シェル層12の材料としては、水に分散する材料が好ましい。
シェル層12は熱硬化性樹脂から構成されることが好ましく、強度、硬度、又はカチオン性を向上させるためには、窒素原子を含む樹脂又はその誘導体から構成されることがより好ましい。シェル層12が窒素原子を含む場合には、シェル層12が正帯電し易くなる。カチオン性を強くするためには、シェル層12中の窒素原子の含有量が10質量%以上であることが好ましい。
シェル層12を構成する熱硬化性樹脂としては、例えばメラミン樹脂、尿素(ユリア)樹脂、スルホアミド樹脂、グリオキザール樹脂、グアナミン樹脂、アニリン樹脂、又はこれら各樹脂の誘導体が好ましい。メラミン樹脂の誘導体では、例えばメチロールメラミンが好ましい。グアナミン樹脂の誘導体では、例えばベンゾグアナミン、アセトグアナミン、又はスピログアナミンが好ましい。
シェル層12を構成する熱硬化性樹脂としては、例えば窒素元素を分子骨格に有するポリイミド樹脂、マレイド系重合体、ビスマスイミド、アミノビスマスイミド、又はビスマスイミドトリアジンが好ましい。
シェル層12を構成する熱硬化性樹脂としては、アミノ基を含む化合物とアルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド)との重縮合によって生成される樹脂(以下、アミノアルデヒド樹脂という)、又はアミノアルデヒド樹脂の誘導体が特に好ましい。なお、メラミン樹脂は、例えばメラミンとホルムアルデヒドとの重縮合物である。尿素樹脂は、例えば尿素とホルムアルデヒドとの重縮合物である。グリオキザール樹脂は、例えばグリオキザールと尿素との反応物とホルムアルデヒドとの重縮合物である。
シェル層12の厚さは、1nm以上20nm以下であることが好ましく、1nm以上10nm以下であることがより好ましい。
シェル層12の厚さが20nm以下であると、トナーを被記録媒体へ定着させる際の加熱加圧等によって、シェル層12が容易に破壊されるようになる。その結果、コア11に含まれる結着樹脂11a及び離型剤の軟化又は溶融が速やかに進行し、低温域でトナーを被記録媒体に定着することが可能になる。さらに、シェル層12の厚さが20nm以下であるとシェル層12の帯電性が強くなり過ぎないため、画像が適正に形成される。
一方、シェル層12の厚さが1nm以上であると、十分な強度を有するものとなり輸送時の衝撃等によってシェル層12の破壊を抑制することができる。
シェル層12の厚さは、市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事社製「WinROOF」)等を用いてトナー粒子10の断面のTEM撮影像を解析することによって計測できる。
[電荷制御剤(シェル層)]
以下、シェル層12を構成する電荷制御剤について説明する。
本実施形態ではシェル層12がカチオン性(正帯電性)を有するため、シェル層12では正帯電性の電荷制御剤を使用できる。
[外添剤]
以下、外添剤13について説明する。以下、外添剤13により処理される前の粒子を「トナー母粒子」と記載する。
外添剤13は、トナー粒子10の流動性又は取扱性を向上させるために使用され、シェル層12の表面に付着する。流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤13の使用量は、トナー母粒子100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましく、2質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
外添剤13は、例えばシリカ又は金属酸化物(例えば、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、もしくはチタン酸バリウム)から構成されることが好ましい。
流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤13の粒子径は0.01μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。
本実施形態に係るトナーの製造方法では、粉砕により円形度0.90以上0.94以下のコア11を形成する。続けて、コア11の表面にシェル層12を形成する。その結果、コア11とシェル層12とが、円形度0.96以上0.99以下のトナー粒子10を構成する。
本実施形態に係るトナーの製造方法では、粉砕により比較的低い円形度(0.90以上0.94以下の円形度)を有するコア11が形成される。シェル層12を形成する時にコア11の表面が軟化するため、表面張力によってコア11の形状がより球形に近くなる。そして、得られたコア11の表面にシェル層12が形成される。これにより、シェル層12の強度が適度に不均一になる。こうしたシェル層12は、緻密に形成されて均一な強度を有するシェル層12よりも破壊され易い。このため、本実施形態に係るトナーの製造方法によれば、低温定着性を有するトナー(低い温度でシェル層が破壊されるトナー)を製造することが可能になる。
また、本実施形態に係るトナーの製造方法では、コア11とシェル層12とが、高い円形度(0.96以上0.99以下の円形度)を有するトナー粒子10を構成する。こうしたトナー粒子10は凝集しにくい。このため、本実施形態に係るトナーの製造方法によれば、高い保存性を有するトナーを製造することが可能になる。
このように、本実施形態に係るトナーの製造方法によれば、定着性と保存性との両方に優れたトナーを製造することが可能になる。
以下、本発明の実施例1〜11について説明する。実施例1〜11では、所定の条件で調製されたトナー又は現像剤を評価した。
[実施例1]
以下、実施例1について説明する。実施例1では、異なる方法で調製された各試料(第1トナー、第2トナー)について、主に形状指数(円形度)を評価した。
<第1トナーの調製方法>
(コアの作製)
以下、第1トナーの調製方法においてコア11を作製する手順について説明する。
第1トナーの調製方法では、粉砕分級法を用いてコア11を作製した。結着樹脂11aとして、ポリエステル樹脂を用いた。
ポリエステル樹脂は、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(詳しくは、ビスフェノールAを骨格にしてエチレンオキサイドを付加したアルコール)に多官能基を有する酸(詳しくは、パラフタル酸)を反応させることにより作製した。得られたポリエステル樹脂においては、酸価(AV値)が20mgKOH/g、Tmが100℃、Tgが48℃であった。このポリエステル樹脂のTg(48℃)は、後述する熱硬化性樹脂(シェル層12の材料)の硬化開始温度以下である。
着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3(フタロシアニン顔料)を用いた。離型剤としては、融点73℃のエステルワックス(日油社製「WEP−3」)を用いた。
混合機(日本コークス工業株式会社製「ヘンシェルミキサー」)を用いて、上記ポリエステル樹脂100質量部に対して上記着色剤5質量部及び上記離型剤5質量部を混合した。続けて、混合物を2軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)で混練した。続けて、混練物を機械式粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミル」)で粉砕し、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェット」)により分級した。これにより、中位径(体積分布基準)6.0μmのコア11が得られた。
得られたコア11の形状指数(円形度)は、0.93であった。この測定には、フロー式粒子像分析装置(シスメックス社製「FPIA(登録商標)−3000」)を用いた。なお、測定方法の詳細は、後述するトナー粒子10の測定方法と同じである。
得られたコア11の摩擦帯電量は−20μC/gであった。この測定には、標準キャリア及びQMメーター(TREK社製「MODEL 210HS−2A」)を用いた。なお、測定方法の詳細は、後述するトナー粒子10の測定方法と同じである。
また、ゼータ電位・粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製「Delsa Nano HC」)により、pH4に調整された分散液中のコア11のゼータ電位を測定した。コア11のpH4におけるゼータ電位は−30mVであった。摩擦帯電量及びゼータ電位のデータから、コア11がアニオン性を有することは明らかであった。
(シェル層の形成)
以下、第1トナーの調製方法においてシェル層12を形成する手順について説明する。
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコを準備し、ウォーターバスを用いてフラスコ内温を30℃に保った。そして、フラスコ内にイオン交換水300mLを入れ、さらに希塩酸を加えて、フラスコ内の水性媒体のpHを4に調整した。
続けて、フラスコ内にシェル層12の材料であるヘキサメチロールメラミン初期重合体(昭和電工社製「ミルベン607(濃度80質量%)」)2mLを添加し、フラスコ内容物を攪拌してヘキサメチロールメラミン初期重合体を水性媒体に溶解させた。
続けて、フラスコ内に前述の手順で作製した300gのコア11を添加し、フラスコ内容物を十分攪拌した。
続けて、フラスコ内にイオン交換水300mLを追加し、フラスコの内容物を攪拌しながら2分/℃の速度でフラスコ内の温度を70℃まで上げて70℃の状態を2時間保った。この際、フラスコ内の液は分散剤を含んでいなかった。
上記のように温度70℃で2時間放置した結果、コア11表面に熱硬化性樹脂(メラミン樹脂)から構成されるカチオン性のシェル層12が形成された。その後、水酸化ナトリウムを加えてフラスコ内容物のpHを7に調整(中和)した。これにより、熱硬化性樹脂の硬化反応が止まった。続けて、フラスコ内容物を常温(25℃)まで冷却し、トナー母粒子を含む分散液を得た。
(洗浄及び乾燥)
トナー母粒子(コア11及びシェル層12)の形成後、分散液をろ過(固液分離)してトナー母粒子を得た。また、イオン交換水による洗浄とろ過とを繰り返して、トナー母粒子を洗浄した。その後、真空(減圧)環境でトナー母粒子を乾燥した。
(外添)
上記乾燥工程により得られたトナー母粒子に対して0.5質量%の割合で外添剤13としての乾式シリカ微粒子を混合した。これにより、トナー粒子10を多数有するトナーが得られた。
<第2トナーの調製方法>
第2トナーの調製方法は、下記の点を変更した以外は、概ね第1トナーの調製方法と同じである。
第2トナーの調製方法では、形状指数(円形度)0.87のコア11を用いた。
また、シェル層12を形成する際の昇温速度を2分/℃から5分/℃に変更した。
<評価方法>
実施例1に係る評価の方法は、以下の通りである。
(形状指数)
フロー式粒子像分析装置(シスメックス社製「FPIA(登録商標)−3000」)を用いて、試料(トナー)の形状指数を測定した。詳しくは、3000個のトナー粒子10の円形度を測定し、測定値の平均を評価値とした。「FPIA(登録商標)−3000」は、粒子の画像に基づき、粒度分布、形状分布、凝集状態、粗大粒子の数、及び異物などを評価できる装置である。
(摩擦帯電量)
粉体混合機(愛知電機株式会社製「ロッキングミキサー(登録商標)」)を用いて、回転速度80rpmで、標準キャリアN−01(日本画像学会から提供される負帯電極性トナー用標準キャリア)と、この標準キャリアに対して7質量%の試料(トナー)とを30分間混合した。そして、得られた混合物(現像剤)を測定試料として標準キャリアと摩擦させた場合のトナー粒子10の摩擦帯電量をQMメーター(TREK社製「MODEL 210HS−2A」)で測定した。
(Tg)
試料(トナー)10mg〜12mgをアルミパン中に入れて、示差走査熱量計(例えば、セイコーインスツルメンツ社製「DSC−6220」)を用いて試料の吸熱曲線を測定した。リファレンスとして空のアルミパンを使用した。測定条件は、温度範囲30℃〜170℃かつ昇温速度10℃/分とした。得られた吸熱曲線に基づいて各試料のTgを求めた(図2参照)。
(Tm)
ペレット成形機を用いて試料(トナー)1.8gに圧力4MPaをかけ、直径1cm、長さ2cmのペレットを作製した。得られたペレットを高架式フローテスター(例えば、島津製作所社製「CFT−500D」)にセットし、試料のS字カーブを測定した。測定条件は、温度範囲70℃〜160℃かつ昇温速度4℃/分とした。得られたS字カーブに基づいて各試料のTmを求めた(図3参照)。
(シェル層の厚さ)
トナー粒子10を常温硬化性のエポキシ樹脂中に分散し、40℃の雰囲気で2日間硬化させて硬化物を得た。この硬化物を四酸化オスミウムにて染色した後、ダイヤモンドナイフを備えたミクロトーム(ライカ社製「EM UC6」)を用いて切り出し、厚さ200nmの薄片試料を得た。そして、この試料の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子社製「JSM−6700 F」)を用いて撮影した。
画像解析ソフトウェア(三谷商事社製「WinROOF」)を用いてTEM撮影像を解析することで、シェル層12の厚さを計測した。具体的には、トナー粒子10の断面の略中心で直交する2本の直線を引き、この2本の直線上の、シェル層12と交差する4箇所の長さを測定した。そして、測定された4箇所の長さの平均値を測定対象である1個のトナー粒子10のシェル層12の厚さとした。トナーに含まれる10個以上のトナー粒子10についてシェル層12の厚さを測定し、得られた10個以上の測定値の平均を評価値とした。
なお、シェル層12の厚さが小さい場合には、TEM画像上でのコア11とシェル層12との境界が不明瞭になるため、シェル層12の厚さの測定が困難な場合がある。このような場合には、TEM撮影と電子エネルギー損失分光法(EELS)とを組み合わせてコア11とシェル層12との境界を明確にすることにより、シェル層12の厚さを測定した。具体的には、TEM画像中で、EELSを用いてシェル層12に含まれる元素(例えば、窒素元素)のマッピングを行った。
<評価結果>
以下に、第1トナー及び第2トナーの評価結果を示す。
(第1トナー)
・形状指数(円形度):0.98
・摩擦帯電量:30μC/g
・Tg:49℃
・Tm:90℃
・シェル層の厚さ:3nm
(第2トナー)
・形状指数(円形度):0.94
・摩擦帯電量:30μC/g
・Tg:49℃
・Tm:90℃
・シェル層の厚さ:3nm
上記評価結果から、コア11の形状指数(円形度)、又はシェル層12を形成する際の昇温速度に応じて、トナー粒子10の形状指数(円形度)が変わることが推察される。
[実施例2]
以下、実施例2について説明する。実施例2では、現像剤A〜F(それぞれ2成分現像剤)について、形状指数(円形度)、圧縮強度、耐オフセット性、及び耐熱保存性を評価した(後述の表1〜表3参照)。以下、現像剤A〜Fの調製方法、評価方法、及び評価結果について、順に説明する。
<現像剤Aの調製方法>
現像剤Aの調製にはトナーAを用いた。以下、トナーAの調製方法について説明する。
(トナーAの調製方法)
トナーAの調製方法は、シェル層12を形成する際の昇温速度(温度制御)及び外添剤13の割合を下記のように変更した以外は、概ね実施例1に係る第1トナーの調製方法と同じである。
・30℃から50℃への昇温速度:1分/℃
・50℃から70℃(最終昇温値)への昇温速度:2分/℃
なお、「分/℃」は、温度を1℃上げるためにかかった時間を示す単位である。例えば2分/℃は、温度を1℃上げるために2分かかったことを示している。
外添工程において、外添剤13(乾式シリカ微粒子)の割合を0.5質量%から1.0質量%に変更した。
(トナー及びキャリアの混合)
上記方法で得たトナーA及びフェライトキャリア(パウダーテック株式会社製「F−50」)を混合して現像剤A(2成分現像剤)を調製した。この際、現像剤A中のトナー濃度が10質量%になるように調整した。
<現像剤Bの調製方法>
現像剤Bの調製方法は、トナーAに代えてトナーBを用いたこと以外は、概ね現像剤Aの調製方法と同じである。以下、トナーBの調製方法について説明する。
トナーBの調製方法は、シェル層12を形成する際の昇温速度(温度制御)を下記のように変更した以外は、概ねトナーAの調製方法と同じである。
・30℃から50℃への昇温速度:1分/℃
・50℃から70℃(最終昇温値)への昇温速度:3分/℃
<現像剤Cの調製方法>
現像剤Cの調製方法は、トナーAに代えてトナーCを用いたこと以外は、概ね現像剤Aの調製方法と同じである。以下、トナーCの調製方法について説明する。
トナーCの調製方法は、シェル層12を形成する際の温度制御における昇温速度及び目標温度(最終昇温値)を下記のように変更した以外は、概ねトナーAの調製方法と同じである。
・30℃から50℃への昇温速度:1分/℃
・50℃から70℃への昇温速度:2分/℃
・70℃から71℃(最終昇温値)への昇温速度:2分/℃
<現像剤Dの調製方法>
現像剤Dの調製方法は、トナーAに代えてトナーDを用いたこと以外は、概ね現像剤Aの調製方法と同じである。以下、トナーDの調製方法について説明する。
トナーDの調製方法は、シェル層12を形成する際の温度制御における昇温速度及び目標温度(最終昇温値)を下記のように変更した以外は、概ねトナーAの調製方法と同じである。
・30℃から50℃への昇温速度:1分/℃
・50℃から70℃への昇温速度:3分/℃
・70℃から71℃(最終昇温値)への昇温速度:2分/℃
<現像剤Eの調製方法>
現像剤Eの調製方法は、トナーAに代えてトナーEを用いたこと以外は、概ね現像剤Aの調製方法と同じである。以下、トナーEの調製方法について説明する。
トナーEの調製方法は、シェル層12を形成する際の温度制御における昇温速度及び目標温度(最終昇温値)を下記のように変更した以外は、概ねトナーAの調製方法と同じである。
・30℃から50℃への昇温速度:1分/℃
・50℃から70℃への昇温速度:3分/℃
・70℃から90℃(最終昇温値)への昇温速度:5分/℃
<現像剤Fの調製方法>
現像剤Fの調製方法は、トナーAに代えてトナーFを用いたこと以外は、概ね現像剤Aの調製方法と同じである。以下、トナーFの調製方法について説明する。
トナーFの調製方法は、シェル層12を形成する際の温度制御における昇温速度及び目標温度(最終昇温値)を下記のように変更した以外は、概ねトナーAの調製方法と同じである。
・30℃から50℃への昇温速度:1分/℃
・50℃から70℃への昇温速度:3分/℃
・70℃から86℃(最終昇温値)への昇温速度:6分/℃
<現像剤Gの調製方法>
現像剤Gの調製方法は、トナーAに代えてトナーGを用いたこと以外は、概ね現像剤Aの調製方法と同じである。以下、トナーGの調製方法について説明する。
トナーGの調製方法は、シェル層12を形成する際の温度制御における昇温速度及び目標温度(最終昇温値)を下記のように変更した以外は、概ねトナーAの調製方法と同じである。
・30℃から50℃への昇温速度:1分/℃
・50℃から70℃への昇温速度:3分/℃
・70℃から80℃(最終昇温値)への昇温速度:4分/℃
<現像剤Hの調製方法>
現像剤Hの調製方法は、トナーAに代えてトナーHを用いたこと以外は、概ね現像剤Aの調製方法と同じである。以下、トナーHの調製方法について説明する。
トナーHの調製方法は、形状指数(円形度)0.98のコア11を用いて、シェル層12を形成する際の温度制御における昇温速度を下記のように変更した以外は、概ねトナーAの調製方法と同じである。
・30℃から50℃への昇温速度:3分/℃
・50℃から70℃(最終昇温値)への昇温速度:1分/℃
<現像剤Iの調製方法>
現像剤Iの調製方法は、トナーAに代えてトナーIを用いたこと以外は、概ね現像剤Aの調製方法と同じである。以下、トナーIの調製方法について説明する。
トナーIの調製方法は、形状指数(円形度)0.89のコア11を用いて、シェル層12を形成する際の温度制御における昇温速度を下記のように変更した以外は、概ねトナーAの調製方法と同じである。
・30℃から50℃への昇温速度:1分/℃
・50℃から70℃(最終昇温値)への昇温速度:3分/℃
<評価方法>
(形状指数)
実施例2に係る形状指数(円形度)の評価方法は、実施例1における評価方法と同じである。
(シェル層の厚さ)
実施例2に係るシェル層の厚さの評価方法は、実施例1における評価方法と同じである。
(圧縮強度)
微小圧縮試験機(例えば、島津製作所社製「MCT−511」)を用いて各試料の圧縮強度を測定した。試料(トナー)から任意に選んだ1粒のトナー粒子10を径20μmの圧子(平面圧子)の先端にセットし、圧子によりトナー粒子10に1.0mNの荷重を加えて圧縮強度を測定した。5粒のトナー粒子10の各々について圧縮強度を測定し、得られた5つの測定値の平均を評価値とした。
(低温定着性)
評価機として、カラー複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa 5550ci」)の定着ユニットを外部に取り出し、温度を調節できるようにした改造機を用いた。
試料(トナー)を評価機のシアン色用のトナーコンテナに投入し、試料(現像剤)を評価機のシアン色用の現像装置に投入した。そして、評価機により記録紙(富士ゼロックス株式会社製「Color Copy 90g/m2」)を搬送し、搬送しながら記録紙に1.5mg/cm2のトナー像(シアン単色)を形成した。続けて、所定の温度でトナー像の定着を行った。その後、定着部(定着された画像部)を二つ折りにして、布帛で包まれた質量1kgの真鍮製の錘を用いて折り目上を5回擦った。そして、擦った折り目を観察し、1mm以上の画像剥がれがある場合を定着不良(定着不能)と判断し、画像剥がれが1mm未満である場合を定着良好(定着可能)と判断した。定着温度を130℃から5℃ずつ温度を上げ、各温度について定着可能か否かを判断することによって、定着可能な最低温度(最低定着温度)を測定した。
(耐オフセット性)
評価機として、カラー複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa 5550ci」)の定着ユニットを外部に取り出し、定着温度と定着ローラーの周速とをそれぞれ調節できるようにした改造機を用いた。
試料(トナー)を評価機のシアン色用のトナーコンテナに投入し、試料(現像剤)を評価機のシアン色用の現像装置に投入した。そして、評価機により記録紙(上質PPC用紙)を搬送し、搬送しながら記録紙に1.5mg/cm2のトナー像(シアン単色)を形成した。続けて、所定の温度でトナー像の定着を行った。この際、定着ローラーの周速を105mm/秒に固定した。また、目視により定着ローラーにトナーが付着していると確認された場合にホットオフセットが生じたと判断した。定着温度を180℃から5℃ずつ温度を上げ、各温度についてホットオフセットが生じたか否かを判断することによって、ホットオフセットの生じない最高の温度(最高定着温度)を測定した。
(耐熱保存性)
試料(トナー)10gを入れたガラス瓶を密閉状態にして55℃に設定された恒温槽内に置いた。そして、そのままの状態で100時間が経過した後、ガラス瓶から試料を取り出した。この試料を140メッシュの篩上にセットし、ホソカワミクロン社製のパウダーテスターを用いて振動篩試験を行った。詳しくは、振動レベル2m/mで篩を振動させた後、篩上に残った試料(トナー)の割合(トナー残率)に基づいて各試料の耐熱保存性を評価した。
<評価結果>
表1に、トナーA〜Gの評価結果をまとめて示す。
Figure 0006055388
円形度は、トナーAで0.95、トナーBで0.96、トナーC及びDの各々で0.97、トナーEで0.99、トナーFで0.98、トナーGで0.98であった。
圧縮強度は、トナーA及びCの各々で7MPa、トナーB及びDの各々で8MPa、トナーEで13MPa、トナーFで14MPa、トナーGで10MPaであった。トナーB、D、及びEでは、それぞれ圧縮強度が8MPa以上13MPa以下であった。
シェル層の厚さは、トナーA及びBの各々で5nm、トナーC〜Gの各々で6nmであった。
表2に、トナーH及びIの評価結果をまとめて示す。
Figure 0006055388
円形度は、トナーHで0.98、トナーIで0.96であった。
圧縮強度は、トナーH及びIの各々で8MPaであった。
シェル層の厚さは、トナーH及びIの各々で5nmであった。
表3に、現像剤A〜Fの評価結果をまとめて示す。
Figure 0006055388
低温定着性に関して、現像剤A〜E、G、及びIでは、それぞれ最低定着温度が140℃以下であった。現像剤Fでは最低定着温度が140℃超145℃未満であった。現像剤Hでは最低定着温度が145℃以上であった。
耐オフセット性に関して、現像剤C〜Gでは、それぞれ最高定着温度が190℃以上であった。現像剤A及びBでは、それぞれ最高定着温度が185℃以上190℃未満であった。現像剤H及びIでは、それぞれ最高定着温度が185℃未満であった。
耐熱保存性に関して、現像剤D〜Gでは、それぞれトナー残率が20質量%以下であった。現像剤B及びCでは、それぞれトナー残率が20質量%超30質量%以下であった。現像剤A、H、及びIではトナー残率が30質量%よりも大きかった。
以上説明したように、現像剤B〜Gの調製方法では、粉砕により円形度0.90以上0.94以下のコア11を形成した。続けて、コア11の表面にシェル層12を形成した。その結果、コア11とシェル層12とが、円形度0.96以上0.99以下のトナー粒子10を構成した。
現像剤B〜Gの調製方法では、比較的低い円形度(0.93)を有するコア11の表面にシェル層12が形成されるため、シェル層12の強度が適度に不均一になる。これにより、低温定着性(最低定着温度145℃未満)を有するトナーを製造することが可能になる。
また、現像剤B〜Gの調製方法では、高い円形度(0.96〜0.99)を有するトナー粒子10が得られるため、トナー粒子10が凝集しにくい。これにより、高い保存性(トナー残率30質量%以下)を有するトナーを製造することが可能になる。
また、現像剤B〜Gは、高い耐オフセット性(最高定着温度189℃以上)を示した。
上記円形度の条件を満たす現像剤B〜Gのうち、現像剤B、D、E、及びGでは、トナー粒子10の圧縮強度が8MPa以上13MPa以下であった。そして、現像剤B、D、E、及びGは、より優れた保存性(トナー残率25質量%以下)及び低温定着性(最低定着温度140℃以下)を示した。
上記圧縮強度の条件を満たすB、D、E、及びGのうち、現像剤D、E、及びGでは、トナー粒子10の円形度が0.97以上0.99以下であった。そして、現像剤D、E、及びGは、特に高い保存性(トナー残率19質量%以下)及び特に高い耐オフセット性(最高定着温度192℃以上)を示した。
[実施例3]
以下、実施例3について説明する。実施例3では、異なる条件で調製された各試料(トナー)について、形状指数(円形度)を評価した。
<試料の調製方法>
実施例3に係る各試料(トナー)の調製方法は、シェル層12を形成する際の温度制御を下記のように変更した以外は、概ね実施例2に係るトナーAの調製方法と同じである。
実施例3に係る各試料(トナー)の調製では、シェル層12を形成する際の温度制御における目標温度(最終昇温値)を試料ごとに変えた。
各試料の昇温速度は、下記のとおりである。
・30℃〜50℃の範囲における昇温速度:1分/℃
・50℃〜70℃の範囲における昇温速度:3分/℃
・70℃〜100℃の範囲における昇温速度:5分/℃
最終昇温値での放置時間は0時間(無し)とした。
<評価方法>
実施例3に係る形状指数(円形度)の評価方法は、実施例1における評価方法と同じである。
<評価結果>
図4に、実施例3の評価結果を示す。図4において、縦軸は円形度を示し、横軸は、シェル層12を形成する際の温度制御における目標温度(最終昇温値)を示す。
図4に示されるように、最終昇温値を高くするほどトナー粒子10の円形度が高くなった。こうした結果が得られた理由は、最終昇温値を高くすることでコア11が溶融し易くなったためであると考えられる。また、コア11のTgを低くすることによってもコア11が溶融し易くなると考えられる。このため、コア11のTgが低いほどトナー粒子10の円形度が高くなると考えられる。高い円形度のトナー粒子10を得るためには、コア11のTgを45℃以下にすることが好ましい。
[実施例4]
以下、実施例4について説明する。実施例4では、異なる条件で調製された各試料(トナー)について、圧縮強度を評価した。
<試料の調製方法>
実施例4に係る各試料(トナー)の調製方法は、シェル層12を形成する際の温度制御を下記のように変更した以外は、概ね実施例2に係るトナーAの調製方法と同じである。
実施例4に係る各試料(トナー)の調製では、シェル層12を形成する際の温度制御における目標温度(最終昇温値)を試料ごとに変えた。
各試料の昇温速度は、下記のとおりである。
・30℃〜50℃の範囲における昇温速度:1分/℃
・50℃〜70℃の範囲における昇温速度:3分/℃
・70℃〜100℃の範囲における昇温速度:5分/℃
最終昇温値での放置時間は0時間(無し)とした。
<評価方法>
実施例4に係る圧縮強度の評価方法は、実施例2における評価方法と同じである。
<評価結果>
図5に、実施例4の評価結果を示す。図5において、縦軸は圧縮強度を示し、横軸は、シェル層12を形成する際の温度制御における目標温度(最終昇温値)を示す。
図5に示されるように、最終昇温値を高くするほどトナー粒子10の圧縮強度が高くなった。こうした結果が得られた理由は、最終昇温値を高くすることで、シェル層12を形成するための反応が促進されるからであると考えられる。また、シェル層12の材料(例えば、昭和電工社製「ミルベン607」)の添加量を増やすことによっても、シェル層12を形成するための反応が促進されると考えられる。このため、シェル層12の材料の添加量を増やすほどトナー粒子10の圧縮強度が高くなると考えられる。
[実施例5]
以下、実施例5について説明する。実施例5では、異なる条件で調製された各試料(トナー)について、形状指数(円形度)を評価した。
<試料の調製方法>
実施例5に係る各試料(トナー)の調製方法は、シェル層12を形成する際の温度制御を下記のように変更した以外は、概ね実施例2に係るトナーAの調製方法と同じである。
実施例5に係る各試料(トナー)の調製では、シェル層12を形成する際の温度制御における最終昇温値での放置時間を試料ごとに変えた。
各試料の昇温速度は、下記のとおりである。
・30℃〜50℃の範囲における昇温速度:1分/℃
・50℃〜70℃の範囲における昇温速度:3分/℃
・70℃〜100℃の範囲における昇温速度:5分/℃
<評価方法>
実施例5に係る形状指数(円形度)の評価方法は、実施例1における評価方法と同じである。
<評価結果>
図6に、実施例5の評価結果を示す。図6において、縦軸は円形度を示し、横軸は、最終昇温値での放置時間(0時間〜7時間)を示す。図6においては、最終昇温値を50℃、60℃、70℃、80℃、90℃にした場合のデータをそれぞれ線L1、L2、L3、L4、L5で示している。
図6に示されるように、最終昇温値を50℃〜90℃のいずれにした場合でも、円形度は、最終昇温値での放置時間によらず略一定であった。
[実施例6]
以下、実施例6について説明する。実施例6では、異なる条件で調製された各試料(トナー)について、圧縮強度を評価した。
<試料の調製方法>
実施例6に係る各試料(トナー)の調製方法は、シェル層12を形成する際の温度制御を下記のように変更した以外は、概ね実施例2に係るトナーAの調製方法と同じである。
実施例6に係る各試料(トナー)の調製では、シェル層12を形成する際の温度制御における最終昇温値での放置時間を試料ごとに変えた。
各試料の最終昇温値及び昇温速度は、下記のとおりである。
・最終昇温値:50℃
・30℃から50℃への昇温速度:1分/℃
<評価方法>
実施例6に係る圧縮強度の評価方法は、実施例2における評価方法と同じである。
<評価結果>
図7に、実施例6の評価結果を示す。図7において、縦軸は圧縮強度を示し、横軸は、最終昇温値(50℃)での放置時間(0時間〜5時間)を示す。
図7に示されるように、最終昇温値での放置時間を長くするほどトナー粒子10の圧縮強度が高くなった。こうした結果が得られた理由は、最終昇温値での放置時間を長くすることで、シェル層12を形成するための反応が促進されるからであると考えられる。
[実施例7]
以下、実施例7について説明する。実施例7では、異なる条件で調製された各試料(トナー)について、圧縮強度を評価した。
<試料の調製方法>
実施例7に係る各試料(トナー)の調製方法は、シェル層12を形成する際の温度制御を下記のように変更した以外は、概ね実施例2に係るトナーAの調製方法と同じである。
実施例7に係る各試料(トナー)の調製では、シェル層12を形成する際の温度制御における最終昇温値での放置時間を試料ごとに変えた。
各試料の最終昇温値及び昇温速度は、下記のとおりである。
・最終昇温値:60℃
・30℃から50℃への昇温速度:1分/℃
・50℃から60℃への昇温速度:3分/℃
<評価方法>
実施例7に係る圧縮強度の評価方法は、実施例2における評価方法と同じである。
<評価結果>
図8に、実施例7の評価結果を示す。図8において、縦軸は圧縮強度を示し、横軸は、最終昇温値(60℃)での放置時間(0時間〜5時間)を示す。
図8に示されるように、最終昇温値での放置時間を長くするほどトナー粒子10の圧縮強度が高くなった。こうした結果が得られた理由は、最終昇温値での放置時間を長くすることで、シェル層12を形成するための反応が促進されるからであると考えられる。
[実施例8]
以下、実施例8について説明する。実施例8では、異なる条件で調製された各試料(トナー)について、圧縮強度を評価した。
<試料の調製方法>
実施例8に係る各試料(トナー)の調製方法は、シェル層12を形成する際の温度制御を下記のように変更した以外は、概ね実施例2に係るトナーAの調製方法と同じである。
実施例8に係る各試料(トナー)の調製では、シェル層12を形成する際の温度制御における最終昇温値での放置時間を試料ごとに変えた。
各試料の最終昇温値及び昇温速度は、下記のとおりである。
・最終昇温値:70℃
・30℃から50℃への昇温速度:1分/℃
・50℃から70℃への昇温速度:3分/℃
<評価方法>
実施例8に係る圧縮強度の評価方法は、実施例2における評価方法と同じである。
<評価結果>
図9に、実施例8の評価結果を示す。図9において、縦軸は圧縮強度を示し、横軸は、最終昇温値(70℃)での放置時間(0時間〜5時間)を示す。
図9に示されるように、最終昇温値での放置時間を長くするほどトナー粒子10の圧縮強度が高くなった。こうした結果が得られた理由は、最終昇温値での放置時間を長くすることで、シェル層12を形成するための反応が促進されるからであると考えられる。
[実施例9]
以下、実施例9について説明する。実施例9では、異なる条件で調製された各試料(トナー)について、圧縮強度を評価した。
<試料の調製方法>
実施例9に係る各試料(トナー)の調製方法は、シェル層12を形成する際の温度制御を下記のように変更した以外は、概ね実施例2に係るトナーAの調製方法と同じである。
実施例9に係る各試料(トナー)の調製では、シェル層12を形成する際の温度制御における最終昇温値での放置時間を試料ごとに変えた。
各試料の最終昇温値及び昇温速度は、下記のとおりである。
・最終昇温値:80℃
・30℃から50℃への昇温速度:1分/℃
・50℃から70℃への昇温速度:3分/℃
・70℃から80℃への昇温速度:5分/℃
<評価方法>
実施例9に係る圧縮強度の評価方法は、実施例2における評価方法と同じである。
<評価結果>
図10に、実施例9の評価結果を示す。図10において、縦軸は圧縮強度を示し、横軸は、最終昇温値(80℃)での放置時間(0時間〜5時間)を示す。
図10に示されるように、最終昇温値での放置時間を長くするほどトナー粒子10の圧縮強度が高くなった。こうした結果が得られた理由は、最終昇温値での放置時間を長くすることで、シェル層12を形成するための反応が促進されるからであると考えられる。
[実施例10]
以下、実施例10について説明する。実施例10では、異なる条件で調製された各試料(トナー)について、圧縮強度を評価した。
<試料の調製方法>
実施例10に係る各試料(トナー)の調製方法は、シェル層12を形成する際の温度制御を下記のように変更した以外は、概ね実施例2に係るトナーAの調製方法と同じである。
実施例10に係る各試料(トナー)の調製では、シェル層12を形成する際の温度制御における最終昇温値での放置時間を試料ごとに変えた。
各試料の最終昇温値及び昇温速度は、下記のとおりである。
・最終昇温値:90℃
・30℃から50℃への昇温速度:1分/℃
・50℃から70℃への昇温速度:3分/℃
・70℃から90℃への昇温速度:5分/℃
<評価方法>
実施例10に係る圧縮強度の評価方法は、実施例2における評価方法と同じである。
<評価結果>
図11に、実施例10の評価結果を示す。図11において、縦軸は圧縮強度を示し、横軸は、最終昇温値(90℃)での放置時間(0時間〜5時間)を示す。
図11に示されるように、最終昇温値での放置時間を長くするほどトナー粒子10の圧縮強度が高くなった。こうした結果が得られた理由は、最終昇温値での放置時間を長くすることで、シェル層12を形成するための反応が促進されるからであると考えられる。
[実施例11]
以下、実施例11について説明する。実施例11では、異なる条件で調製された各試料(トナー)について、圧縮強度を評価した。
<試料の調製方法>
実施例11に係る各試料(トナー)の調製方法は、シェル層12を形成する際の温度制御を下記のように変更した以外は、概ね実施例2に係るトナーAの調製方法と同じである。
実施例11に係る各試料(トナー)の調製では、シェル層12を形成する際の温度制御における最終昇温値での放置時間を試料ごとに変えた。
各試料の最終昇温値及び昇温速度は、下記のとおりである。
・最終昇温値:100℃
・30℃から50℃への昇温速度:1分/℃
・50℃から70℃への昇温速度:3分/℃
・70℃から90℃への昇温速度:5分/℃
<評価方法>
実施例11に係る圧縮強度の評価方法は、実施例2における評価方法と同じである。
<評価結果>
図12に、実施例11の評価結果を示す。図12において、縦軸は圧縮強度を示し、横軸は、最終昇温値(100℃)での放置時間(0時間〜5時間)を示す。
図12に示されるように、最終昇温値を100℃にした場合には、最終昇温値での放置時間が変化しても、トナー粒子10の圧縮強度はほとんど変化しなかった。
以上説明したように、実施例1〜11に係る各試料(トナー又は現像剤)の調製方法では、シェル層12の形成が液(水性媒体)中で行われる。そして、シェル層12の形成では、液の温度を所定の温度(最終昇温値)まで昇温し、熱硬化性樹脂のプレポリマーを硬化させる。これにより、コア11の表面に、熱硬化性樹脂から構成されるシェル層12を容易且つ適切に形成することが可能になる。なお、シェル層12の形成において熱硬化性樹脂のモノマーを硬化させるようにしてもよい。
実施例3〜11に係る各試料(トナー)の調製方法では、シェル層12の形成に際して、1分/℃以上3分/℃以下の速度で液の温度を昇温した後、3分/℃よりも遅い速度(5分/℃)で液の温度を昇温させた。こうした方法によれば、トナー粒子10の円形度を0.96以上0.99以下に、トナー粒子10の圧縮強度を8MPa以上13MPa以下にそれぞれ調整し易くなる(図4〜図12参照)。なお、昇温速度が大きすぎると、コア11が表面張力で丸くなる前にシェル層12の硬化が始まり、コア11の円形度が十分高くならないことがある。また、昇温速度が小さすぎると、シェル層12の硬化前にコア11が軟化して凝集することがある。
シェル層12を形成する際の温度制御における最終昇温値が70℃以上90℃以下である場合においては、最終昇温値に到達後1時間を経過する前に熱硬化性樹脂のプレポリマー(又はモノマー)の硬化(硬化反応)を止めることが好ましい。最終昇温値での放置時間(最終昇温値での反応時間)が1時間未満である場合には、図4及び図5に示されるように、最終昇温値に基づいて、トナー粒子10の円形度を0.96以上0.99以下に、トナー粒子10の圧縮強度を8MPa以上13MPa以下にそれぞれ調整することが可能になる。また、図4及び図5に示されるように、最終昇温値を70℃以上90℃以下の範囲で変化させることで、トナー粒子10の円形度及び圧縮強度が大きく変化する(グラフの傾きが大きい)。このため、シェル層12を形成する際の温度制御における最終昇温値を70℃以上90℃以下にすることにより、トナー粒子10の円形度又は圧縮強度を容易に所望の値に調整することができる。
なお、実施例3及び4に係る各試料(トナー)の調製方法では、最終昇温値での放置時間が0時間(無し)である。しかし、最終昇温値での放置時間が0時間(無し)でなくても1時間未満であれば、円形度と最終昇温値との関係又はトナー粒子10の圧縮強度と最終昇温値との関係は、図4又は図5に示されるデータと概ね同様の傾向を示す。
シェル層12を形成する際の温度制御における最終昇温値は60℃以上80℃以下であることが好ましい。最終昇温値が60℃以上80℃以下であれば、図8〜図10に示されるように、最終昇温値での放置時間に基づいてトナー粒子10の圧縮強度を8MPa以上13MPa以下に調整することが可能になる。
また、最終昇温値が60℃以上80℃以下である場合には、図8〜図10に示されるように、最終昇温値での放置時間を1時間以上5時間以下の範囲で変化させることで、トナー粒子10の圧縮強度が大きく変化する(グラフの傾きが大きい)。このため、シェル層12の形成時に最終昇温値で1時間以上5時間以下保つことにより、トナー粒子10の圧縮強度を容易に所望の値に調整することができる。
実施例1〜11に係る各試料(トナー)の調製方法では、シェル層12の材料が添加された液(水性媒体)中に分散剤が存在しない。分散剤を用いないことで、環境負荷を低減することができる。なお、必要に応じて、分散剤を用いてもよい。
実施例1〜11に係る各試料(トナー)の調製方法では、コア11が結着樹脂11aを含み、シェル層12が熱硬化性樹脂(メラミン樹脂)を含む。そして、結着樹脂11aのガラス転移点(Tg)は熱硬化性樹脂の硬化開始温度以下である。こうした結着樹脂11aを用いれば、高速定着時においても十分な定着性を得やすい。
実施例1〜11に係る各試料(トナー)の調製方法では、コア11が結着樹脂11aを含む。そして、結着樹脂11aの軟化点(Tm)は100℃以下(100℃)である。こうした方法では、シェル層12の硬化反応中にコア11が部分的に軟化し易くなる。このため、コア11が表面張力により丸みを帯び易くなる。
以上、本発明の実施例について説明した。しかし、本発明は上記実施例には限定されない。トナーの製造方法が、少なくとも、粉砕により円形度0.90以上0.94以下のコア11を形成するステップと、コア11の表面にシェル層12を形成することで、コア11とシェル層12とが円形度0.96以上0.99以下のトナー粒子10を構成するステップとを含む場合には、定着性と保存性との両方に優れたトナーを製造することが可能になる。
本発明に係るトナーは、複写機又はプリンター等において画像を形成するために用いることができる。
10 トナー粒子
11 コア
11a 結着樹脂
11b 内添剤
12 シェル層
13 外添剤

Claims (5)

  1. 粉砕により円形度0.90以上0.94以下のコアを形成するステップと、
    前記コアの表面にシェル層を形成することで、前記コアと前記シェル層とが円形度0.96以上0.99以下のトナー粒子を構成するステップと、
    を含み、
    前記トナー粒子の圧縮強度が8MPa以上13MPa以下であり、
    前記シェル層の形成は液中で行われ、
    前記シェル層の形成では、前記液の温度を所定の温度まで昇温し、熱硬化性樹脂のモノマー又は熱硬化性樹脂のプレポリマーを硬化させ、
    前記所定の温度は70℃以上90℃以下であり、
    前記シェル層の形成では、前記所定の温度に到達後1時間を経過する前に前記硬化を止める、トナーの製造方法。
  2. 前記シェル層の形成では、1分/℃以上3分/℃以下の速度で前記液の温度を昇温した後、3分/℃よりも遅い速度で前記液の温度を昇温する、請求項に記載のトナーの製造方法。
  3. 前記シェル層の形成時において前記液は分散剤を含まない、請求項1又は2に記載のトナーの製造方法。
  4. 前記コアは結着樹脂を含み、前記シェル層は熱硬化性樹脂を含み、
    前記結着樹脂のガラス転移点は、前記熱硬化性樹脂の硬化開始温度以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載のトナーの製造方法。
  5. 前記コアは結着樹脂を含み、
    前記結着樹脂の軟化点は100℃以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載のトナーの製造方法。
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