JP2015045669A - トナー及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】広い温度範囲において良好な定着性を示し、且つ、ブロッキング性(保存安定性)にも優れるトナー及びその製造方法を提供する。【解決手段】トナーが、アニオン性のコア11と、コア11の表面に形成されたカチオン性のシェル層12とを有する。シェル層12は熱硬化性樹脂から構成される。120℃における損失正接は1よりも小さく、且つ、200℃における損失正接は1よりも大きい。120℃〜200℃の範囲における損失正接の最小値に対する損失正接の最大値の比率は2.5以上である。【選択図】図1
Description
本発明は、トナー及びその製造方法に関する。
特許文献1には、温度100℃〜200℃の範囲における粘弾性(tanδ)の値が0.1〜2.0の範囲にあるトナーが開示されている。また、特許文献1には、粘弾性(tanδ)の最高値と粘弾性(tanδ)の最低値との差が0.7以下であることが望ましい旨記載されている。
しかしながら、温度100℃〜200℃の範囲における粘弾性(tanδ)の値を0.1〜2.0の範囲にし、且つ、粘弾性(tanδ)の最高値と粘弾性(tanδ)の最低値との差を0.7以下にしても、広い温度範囲において良好な定着性を示し、且つ、ブロッキング性(保存安定性)にも優れるトナーを得ることは難しい。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、広い温度範囲において良好な定着性を示し、且つ、ブロッキング性(保存安定性)にも優れるトナー及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、オフセット性(最高定着温度)に優れるトナー及びその製造方法を提供することを他の目的とする。
本発明に係るトナーは、アニオン性のコアと、前記コアの表面に形成されたカチオン性のシェル層とを有する。前記シェル層は熱硬化性樹脂から構成される。120℃における損失正接は1よりも小さく、且つ、200℃における損失正接は1よりも大きい。120℃〜200℃の範囲における損失正接の最小値に対する損失正接の最大値の比率(損失正接の最大値/損失正接の最小値)は2.5以上である。
本発明に係るトナーの製造方法は、コアを形成するステップと、前記コアの表面にシェル層を形成するステップとを含む。前記シェル層の形成では、120℃における損失正接が1よりも小さく、且つ、200℃における損失正接が1よりも大きく、120℃〜200℃の範囲における損失正接の最小値に対する損失正接の最大値の比率(損失正接の最大値/損失正接の最小値)が2.5以上になるように、前記シェル層の材料の添加量を決める。
本発明によれば、広い温度範囲において良好な定着性を示し、且つ、ブロッキング性(保存安定性)にも優れるトナー及びその製造方法を提供することが可能になる。また、本発明によれば、この効果に加えて又はこの効果に代えて、オフセット性(最高定着温度)に優れるトナー及びその製造方法を提供することが可能になるという効果が奏される場合がある。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係るトナーは、静電荷像現像用のカプセルトナーである。本実施形態のトナーは、多数の粒子(以下、トナー粒子という)から構成される。以下、図1を参照して、本実施形態に係るトナー(特にトナー粒子)の構成について説明する。図1は、本実施形態に係るトナーを構成するトナー粒子10の構造を示す図である。
図1に示すように、トナー粒子10は、アニオン性のコア11と、コア11の表面に形成されたカチオン性のシェル層12(カプセル層)と、外添剤13とから構成される。
コア11は、結着樹脂11aと、内添剤11b(着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉等)とから構成される。コア11は、シェル層12によって被覆されている。シェル層12の表面には外添剤13が付着している。
ただし、トナー粒子の構成は上記に限られない。例えば、必要がなければ内添剤11b又は外添剤13を割愛してもよい。また、トナー粒子は、コア11の表面に複数のシェル層12を有していてもよい。積層された複数のシェル層12をトナー粒子が有する場合は、複数のシェル層12のうち最外のシェル層12がカチオン性を有することが好ましい。
コア11がアニオン性を有し、シェル層12がカチオン性を有することが好ましい。コア11がアニオン性を有することで、シェル層12の形成時にカチオン性のシェル層12の材料をコア11表面に引き付けることが可能になる。詳しくは、例えば水性媒体中で負に帯電するコア11と水性媒体中で正に帯電するシェル層12の材料とが相互に電気的に引き寄せられ、例えばin−situ重合によりコア11の表面にシェル層12が形成される。これにより、分散剤を用いて水性媒体中にコア11を高度に分散させずとも、コア11の表面に均一なシェル層12を形成し易くなる。
コア11においては、コア成分の大部分(例えば、85質量%以上)を結着樹脂11aが占める。このため、結着樹脂11aの極性がコア11全体の極性に大きな影響を与える。例えば、結着樹脂11aがエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、又はメチル基等を有している場合には、コア11はアニオン性になる傾向が強くなり、結着樹脂11aがアミノ基、アミン、又はアミド基等を有している場合には、コア11はカチオン性になる傾向が強くなる。
本実施形態においてコア11がアニオン性であることの指標は、pHが4に調整された水性媒体中で測定されるコア11のゼータ電位が負極性を示すことである。コア11とシェル層12との結合を強めるためには、コア11のpH4におけるゼータ電位が0Vよりも小さく、トナー粒子10のpH4におけるゼータ電位が0Vよりも大きいことが好ましい。なお、本実施形態においてpH4はシェル層12形成時のpHに相当する。
ゼータ電位の測定方法としては、電気泳動法、超音波法、又はESA(電気音響)法等が挙げられる。
電気泳動法は、粒子分散液に電場を印加して分散液中の帯電粒子を電気泳動させ、電気泳動速度に基づきゼータ電位を算出する方法である。電気泳動法としては、レーザードップラー法(電気泳動している粒子にレーザー光を照射し、得られた散乱光のドップラーシフト量から電気泳動速度を求める方法)等が挙げられる。レーザードップラー法は、分散液中の粒子濃度を高濃度とする必要がなく、ゼータ電位の算出に必要なパラメーターの数が少なく、加えて電気泳動速度を感度よく検出できるという利点を有する。
超音波法は、粒子分散液に超音波を照射して分散液中の帯電粒子を振動させ、この振動によって生じる電位差に基づきゼータ電位を算出する方法である。
ESA法では、粒子分散液に高周波電圧を印加して分散液中の帯電粒子を振動させて超音波を発生させる。そして、その超音波の大きさ(強さ)からゼータ電位を算出する。
超音波法及びESA法は、粒子濃度が高い(例えば、20質量%を超える)粒子分散液であっても、ゼータ電位を感度よく測定することができるという利点を有する。
本実施形態ではコア11もシェル層12も分散剤(界面活性剤)を有しない。一般に、分散剤は排水負荷が高い。分散剤を用いなければ、トナー粒子10を製造する際に排出される排水を希釈することなく、排水の全有機炭素(TOC)濃度を15mg/L以下の低いレベルにすることが可能となる。
なお、生物化学的酸素要求量(BOD)、化学的酸素要求量(COD)、又は全有機炭素(TOC)濃度を測定することによって、廃水中の有機物成分(未反応のモノマー、プレポリマー、又は分散剤等)を測定することができる。中でも、TOC濃度によれば、有機物全般を安定的に測定することができる。また、TOC濃度を測定することで、廃水(反応後のろ過液及び洗浄液の全体)中のカプセル化に働かなかった有機成分の量を特定することができる。
以下、トナー粒子10を構成するコア11の全体構成、結着樹脂11a、内添剤11b(着色剤、離型剤、電荷制御剤、磁性粉)、シェル層12の全体構成、シェル層12の成分(電荷制御剤)、外添剤13について、順に説明する。
[コア]
本実施形態のトナー粒子10を構成するコア11は、結着樹脂11a及び内添剤11b(着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉)を含む。ただし、トナーの用途等に応じて必要のない成分(着色剤、離型剤、電荷制御剤、又は磁性粉等)を割愛してもよい。
本実施形態のトナー粒子10を構成するコア11は、結着樹脂11a及び内添剤11b(着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉)を含む。ただし、トナーの用途等に応じて必要のない成分(着色剤、離型剤、電荷制御剤、又は磁性粉等)を割愛してもよい。
[結着樹脂(コア)]
以下、本実施形態に係るトナー粒子10のコア11を構成する結着樹脂11aについて説明する。
以下、本実施形態に係るトナー粒子10のコア11を構成する結着樹脂11aについて説明する。
結着樹脂11aが強いアニオン性を得るためには、結着樹脂11aの水酸基価(OHV値)及び酸価(AV値)がそれぞれ10mgKOH/g以上であることが好ましく、20mgKOH/g以上であることがより好ましい。
結着樹脂11aのガラス転移点(Tg)は、シェル層12に含まれる熱硬化性樹脂の硬化開始温度以下であることが好ましい。こうした結着樹脂11aにを用いれば、高速定着時においても十分な定着性が得られる。熱硬化性樹脂(特にメラミン系の樹脂)の硬化開始温度は55℃程度であることが多い。結着樹脂11aのTgは、20℃以上であることが好ましく、30℃以上55℃以下であることがより好ましく、30℃以上50℃以下であることがさらに好ましい。結着樹脂11aのTgが20℃以上であるとシェル層12の形成時にコア11が凝集しにくくなる。
結着樹脂11aのTgは、示差走査熱量計(例えば、セイコーインスツルメンツ社製「DSC−6200」)を用いて結着樹脂11aの吸熱曲線を測定することにより、吸熱曲線における比熱の変化点から求めることができる。詳細には、測定試料10mgをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを使用し、測定温度範囲25℃〜200℃かつ昇温速度10℃/分の条件で結着樹脂11aの吸熱曲線を求め、得られた吸熱曲線に基づいてTgを求める方法が挙げられる。
結着樹脂11aの軟化点(Tm)は100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。結着樹脂11aのTmが100℃以下(より好ましくは80℃以下)であることで、高速定着時においても十分な定着性を得ることが可能になる。また、異なるTmを有する複数の結着樹脂を組み合わせることで、結着樹脂11aのTmを調整することができる。
結着樹脂11aのTmの測定には、高架式フローテスター(例えば、島津製作所社製「CFT−500D」)を用いることができる。例えば、測定試料を高架式フローテスターにセットし、所定の条件で試料を溶融流出させてS字カーブ(温度(℃)/ストローク(mm)に関するS字カーブ)を求め、得られたS字カーブから結着樹脂11aのTmを読み取る。
ここで、図2を参照して、S字カーブから結着樹脂11aのTmを読み取る方法について説明する。図2はS字カーブの一例を示すグラフである。
図2において、S1はストロークの最大値を示し、S2は低温側のベースラインのストローク値を示す。S字カーブ中のストロークの値が(S1+S2)/2となる温度を測定試料のTmとする。
図1を参照して説明を続ける。
結着樹脂11aは、例えば官能基としてエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、メチル基、カルボキシル基、又はアミノ基を有する樹脂から構成されることが好ましい。結着樹脂11aを構成する樹脂としては、分子中に水酸基、カルボキシル基、又はアミノ基のような官能基を有する樹脂が好ましく、分子中に水酸基及び/又はカルボキシル基を有する樹脂がより好ましい。このような官能基を有するコア11(結着樹脂11a)は、シェル層12の材料(例えば、メチロールメラミン)と反応して化学的に結合し易くなる。こうした化学的な結合が生じると、コア11とシェル層12との結合が強固になる。
結着樹脂11aを構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂の好適な例としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、又はスチレン−ブタジエン系樹脂が挙げられる。中でも、スチレンアクリル系樹脂及びポリエステル樹脂はそれぞれ、トナー中の着色剤の分散性、トナーの帯電性、及び被記録媒体に対する定着性に優れる。
(スチレンアクリル系樹脂から構成される結着樹脂)
以下、スチレンアクリル系樹脂から構成される結着樹脂11aについて説明する。
以下、スチレンアクリル系樹脂から構成される結着樹脂11aについて説明する。
結着樹脂11aを構成するスチレンアクリル系樹脂は、例えばスチレン系単量体とアクリル系単量体との共重合体である。
スチレン系単量体の好適な例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、又はp−エチルスチレンが挙げられる。
アクリル系単量体の好適な例としては、(メタ)アクリル酸、特に(メタ)アクリル酸アルキルエステル又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)メタアクリル酸メチル、(メタ)メタアクリル酸エチル、(メタ)メタアクリル酸n−ブチル、又は(メタ)メタアクリル酸iso−ブチルが好ましい。
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシプロピルが好ましい。
スチレンアクリル系樹脂を調製する際に、水酸基を有する単量体(p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル等)を用いることで、スチレンアクリル系樹脂に水酸基を導入できる。例えば、水酸基を有する単量体の使用量を適宜調整することで、得られるスチレンアクリル系樹脂の水酸基価を調整することができる。
スチレンアクリル系樹脂を調製する際に、(メタ)アクリル酸を単量体として用いることで、スチレンアクリル系樹脂にカルボキシル基を導入できる。例えば、(メタ)アクリル酸の使用量を適宜調整することで、得られるスチレンアクリル系樹脂の酸価を調整することができる。
コア11の強度及び定着性を向上させるためには、結着樹脂11aを構成するスチレンアクリル系樹脂の数平均分子量(Mn)が2000以上3000以下であることが好ましい。スチレンアクリル系樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率Mw/Mn)は10以上20以下であることが好ましい。結着樹脂11aのMnとMwの測定には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いることができる。
(ポリエステル樹脂から構成される結着樹脂)
以下、ポリエステル樹脂から構成される結着樹脂11aについて説明する。
以下、ポリエステル樹脂から構成される結着樹脂11aについて説明する。
結着樹脂11aを構成するポリエステル樹脂は、例えば2価又は3価以上のアルコール成分と2価又は3価以上のカルボン酸成分とを縮重合や共縮重合することで得られる。
結着樹脂11aを構成するポリエステル樹脂の2価又は3価以上のアルコール成分の好適な例としては、ジオール類、ビスフェノール類、又は3価以上のアルコール類が挙げられる。
ジオール類としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールが好ましい。
ビスフェノール類としては、例えばビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、又はポリオキシプロピレン化ビスフェノールAが好ましい。
3価以上のアルコール類としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが好ましい。
結着樹脂11aを構成するポリエステル樹脂の2価又は3価以上のカルボン酸成分としては、例えばエステル形成性の誘導体(酸ハライド、酸無水物、又は低級アルキルエステル等)を用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1〜6のアルキル基を意味する。
2価カルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、又はアルキルもしくはアルケニルコハク酸が好ましい。さらに、アルケニルコハク酸としては、例えばn−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、又はイソドデセニルコハク酸が好ましい。
3価以上のカルボン酸としては、例えば1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、又はエンポール三量体酸が好ましい。
ポリエステル樹脂を製造する際に、2価又は3価以上のアルコール成分の使用量と2価又は3価以上のカルボン酸成分の使用量とをそれぞれ適宜変更することで、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価を調整することができる。また、ポリエステル樹脂の分子量を上げると、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価は低下する傾向がある。
コア11の強度及び定着性を向上させるためには、結着樹脂11aを構成するポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)が1200以上2000以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率Mw/Mn)は9以上20以下であることが好ましい。結着樹脂11aのMnとMwの測定には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いることができる。
[着色剤(コア)]
以下、本実施形態に係るトナー粒子10のコア11(内添剤11b)を構成する着色剤について説明する。
以下、本実施形態に係るトナー粒子10のコア11(内添剤11b)を構成する着色剤について説明する。
着色剤としては、例えばトナー粒子10の色に合わせて公知の顔料や染料を用いることができる。着色剤の使用量は、100質量部の結着樹脂11aに対して1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、3質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
(黒色着色剤)
本実施形態に係るトナー粒子10のコア11は、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤は、例えばカーボンブラックから構成される。また、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤のような着色剤を用いて黒色に調色された着色剤も利用できる。
本実施形態に係るトナー粒子10のコア11は、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤は、例えばカーボンブラックから構成される。また、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤のような着色剤を用いて黒色に調色された着色剤も利用できる。
(カラー着色剤)
本実施形態に係るトナー粒子10のコア11は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、又はシアン着色剤のようなカラー着色剤を含有していてもよい。
本実施形態に係るトナー粒子10のコア11は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、又はシアン着色剤のようなカラー着色剤を含有していてもよい。
イエロー着色剤は、例えば縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、又はアリルアミド化合物から構成されることが好ましい。イエロー着色剤としては、例えばC.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、又は194等)、ネフトールイエローS、ハンザイエローG、又はC.I.バットイエローが好ましい。
マゼンタ着色剤は、例えば縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、又はペリレン化合物から構成されることが好ましい。マゼンタ着色剤としては、例えばC.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、又は254等)が好ましい。
シアン着色剤は、例えば銅フタロシアニン化合物、銅フタロシアニン誘導体、アントラキノン化合物、又は塩基染料レーキ化合物から構成されることが好ましい。シアン着色剤としては、例えばC.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、又は66等)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、又はC.I.アシッドブルーが好ましい。
[離型剤(コア)]
以下、本実施形態に係るトナー粒子10のコア11(内添剤11b)を構成する離型剤について説明する。
以下、本実施形態に係るトナー粒子10のコア11(内添剤11b)を構成する離型剤について説明する。
離型剤は、トナーの定着性及び耐オフセット性を向上させる目的で使用される。定着性及び耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の使用量は100質量部の結着樹脂11aに対して1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、5質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
一例では、離型剤が、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、又はフィッシャートロプシュワックスのような脂肪族炭化水素系ワックスから構成されることが好ましい。別の一例では、離型剤が、酸化ポリエチレンワックス、又は酸化ポリエチレンワックスのブロック共重合体のような脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物から構成されることが好ましい。別の一例では、離型剤が、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、又はライスワックスのような植物系ワックスから構成されることが好ましい。別の一例では、離型剤が、みつろう、ラノリン、又は鯨ろうのような動物系ワックスから構成されることが好ましい。別の一例では、離型剤が、オゾケライト、セレシン、又はベトロラクタムのような鉱物系ワックスから構成されることが好ましい。別の一例では、離型剤が、モンタン酸エステルワックス又はカスターワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類から構成されることが好ましい。別の一例では、離型剤が、脱酸カルナバワックスのような脂肪酸エステルの一部又は全部を脱酸化したワックスから構成されることが好ましい。
[電荷制御剤(コア)]
以下、本実施形態に係るトナー粒子10のコア11(内添剤11b)を構成する電荷制御剤について説明する。
以下、本実施形態に係るトナー粒子10のコア11(内添剤11b)を構成する電荷制御剤について説明する。
本実施形態ではコア11がアニオン性(負帯電性)を有するため、コア11では負帯電性の電荷制御剤が使用される。電荷制御剤は、帯電安定性及び帯電立ち上がり特性を向上させ、耐久性や安定性に優れたトナーを得る目的で使用される。帯電立ち上がり特性は、所定の帯電レベルに短時間で帯電可能か否かの指標になる。
帯電安定性、帯電立ち上がり特性、耐久性、安定性、及びコストメリット等を向上させるためには、負帯電性の電荷制御剤の使用量は100質量部の結着樹脂11aに対して0.5質量部以上20.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上15.0質量部以下であることがより好ましい。
負帯電性の電荷制御剤は、例えば有機金属錯体又はキレート化合物から構成されることが好ましい。
電荷制御剤を構成する有機金属錯体又はキレート化合物としては、アセチルアセトン金属錯体(例えば、アルミニウムアセチルアセトナート又は鉄(II)アセチルアセトナート)、サリチル酸系金属錯体、又はサリチル酸系金属塩(例えば、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸クロム)等が好ましく、中でもサリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩がより好ましい。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
[磁性粉(コア)]
以下、本実施形態に係るトナー粒子10のコア11(内添剤11b)を構成する磁性粉について説明する。
以下、本実施形態に係るトナー粒子10のコア11(内添剤11b)を構成する磁性粉について説明する。
トナーを1成分現像剤として使用する場合、磁性粉の使用量は、トナー全量100質量部に対して35質量部以上60質量部以下であることが好ましく、40質量部以上60質量部以下であることがより好ましい。また、トナーを2成分現像剤として使用する場合、磁性粉の使用量は、トナー全量100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましい。
磁性粉は、例えば鉄(フェライト又はマグネタイト等)、強磁性金属(コバルト又はニッケル等)、鉄及び/又は強磁性金属を含む合金、鉄及び/又は強磁性金属を含む化合物、熱処理のような強磁性化処理を施された強磁性合金、又は二酸化クロムから構成されることが好ましい。
磁性粉の粒子径は、0.1μm以上1.0μm以下であることが好ましく、0.1μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。こうした範囲に磁性粉の粒子径がある場合は、結着樹脂11a中に磁性粉を均一に分散させ易くなる。
[シェル層]
シェル層12は熱硬化性樹脂から構成されることが好ましく、強度、硬度、及びカチオン性を向上させるためには、窒素原子を含む樹脂又はその誘導体から構成されることがより好ましい。窒素原子を含むシェル層12は正帯電し易くなる。カチオン性を強くするためには、シェル層12中の窒素原子の含有量は10質量%以上であることが好ましい。
シェル層12は熱硬化性樹脂から構成されることが好ましく、強度、硬度、及びカチオン性を向上させるためには、窒素原子を含む樹脂又はその誘導体から構成されることがより好ましい。窒素原子を含むシェル層12は正帯電し易くなる。カチオン性を強くするためには、シェル層12中の窒素原子の含有量は10質量%以上であることが好ましい。
シェル層12を構成する熱硬化性樹脂としては、例えばメラミン樹脂、尿素(ユリア)樹脂、スルホアミド樹脂、グリオキザール樹脂、グアナミン樹脂、アニリン樹脂、又はこれら各樹脂の誘導体が好ましい。メラミン樹脂の誘導体では、例えばメチロールメラミンが好ましい。グアナミン樹脂の誘導体では、例えばベンゾグアナミン、アセトグアナミン、又はスピログアナミンが好ましい。
シェル層12を構成する熱硬化性樹脂としては、例えば窒素元素を分子骨格に有するポリイミド樹脂、マレイド系重合体、ビスマスイミド、アミノビスマスイミド、又はビスマスイミドトリアジンが好ましい。
シェル層12を構成する熱硬化性樹脂としては、アミノ基を含む化合物とアルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド)との重縮合によって生成される樹脂(以下、アミノアルデヒド樹脂という)、又はアミノアルデヒド樹脂の誘導体が特に好ましい。なお、メラミン樹脂は、例えばメラミンとホルムアルデヒドとの重縮合物である。尿素樹脂は、例えば尿素とホルムアルデヒドとの重縮合物である。グリオキザール樹脂は、例えばグリオキザールと尿素との反応物とホルムアルデヒドとの重縮合物である。
シェル層12の厚さは、1nm以上20nm以下であることが好ましく、1nm以上10nm以下であることがより好ましい。
シェル層12の厚さが20nm以下であると、トナーを被記録媒体へ定着させる際の加熱加圧等よりシェル層12が容易に破壊されるようになる。その結果、コア11に含まれる結着樹脂11a及び離型剤の軟化又は溶融が速やかに進行し、低温域でトナーを被記録媒体に定着することが可能になる。さらに、シェル層12の厚さが20nm以下であるとシェル層12の帯電性が強くなり過ぎないため、画像形成が適正に行われるようになる。
一方、シェル層12の厚さが1nm以上であると、十分な強度を有するものとなり輸送時の衝撃等によってシェル層12が破壊されることを抑制することができる。
シェル層12の厚さは、市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事社製「WinROOF」)等を用いてトナー粒子10の断面のTEM撮影像を解析することによって計測できる。
シェル層12は、破壊箇所(機械的強度の弱い部位)を有することが好ましい。破壊箇所はシェル層12に局所的に欠陥等を生じさせることにより形成することができる。シェル層12に破壊箇所を設けることで、トナーを被記録媒体へ定着させる際の加熱加圧等よりシェル層12が容易に破壊されるようになる。その結果、シェル層12が熱硬化性樹脂から構成される場合でも、低温で定着させることが可能になる。破壊箇所の数は任意である。
[電荷制御剤(シェル層)]
以下、本実施形態に係るトナー粒子10のシェル層12を構成する電荷制御剤について説明する。
以下、本実施形態に係るトナー粒子10のシェル層12を構成する電荷制御剤について説明する。
本実施形態ではシェル層12がカチオン性(正帯電性)を有するため、シェル層12では正帯電性の電荷制御剤が使用される。帯電立ち上がり特性、耐久性、安定性、及びコストメリット等を向上させるためには、正帯電性の電荷制御剤の使用量は、シェル層12を形成する樹脂100質量部に対して0.5質量部以上20.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上15.0質量部以下であることがより好ましい。
正帯電性の電荷制御剤は、例えばアジン化合物(例えば、アジン化合物からなる直接染料)、ニグロシン化合物(例えば、ニグロシン化合物からなる酸性染料)、ナフテン酸もしくは高級脂肪酸の金属塩類、アルコキシル化アミン、アルキルアミド、又は4級アンモニウム塩から構成されることが好ましい。中でも、迅速な立ち上がり性が得られる点でニグロシン化合物が特に好ましい。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
アジン化合物としては、例えばピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、又はキノキサリンが好ましい。アジン化合物からなる直接染料としては、例えばアジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ−ンBH/C、アジンディ−プブラックEW、又はアジンディープブラック3RLが好ましい。ニグロシン化合物としては、例えばニグロシン、ニグロシン塩、又はニグロシン誘導体が好ましい。ニグロシン化合物からなる酸性染料としては、例えばニグロシンBK、ニグロシンNB、又はニグロシンZが好ましい。4級アンモニウム塩としては、例えばベンジルメチルヘキシルデシルアンモニウム、又はデシルトリメチルアンモニウムクロライドが好ましい。
正帯電性の電荷制御剤は、官能基としての4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、又はカルボキシル基を有する樹脂から構成されてもよい。正帯電性の電荷制御剤は、例えば4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、及びカルボキシル基のいずれかを有するスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、又はポリエステル樹脂から構成されてもよい。これらの樹脂は、オリゴマーであってもポリマーであってもよい。
[外添剤]
以下、本実施形態に係るトナー粒子10を構成する外添剤13について説明する。以下、外添剤13により処理される前の粒子を「トナー母粒子」と記載する。
以下、本実施形態に係るトナー粒子10を構成する外添剤13について説明する。以下、外添剤13により処理される前の粒子を「トナー母粒子」と記載する。
外添剤13は、トナー粒子10の流動性及び取扱性を向上させるために使用され、シェル層12の表面に付着する。流動性及び取扱性を向上させるためには、外添剤13の使用量は、トナー母粒子100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましく、2質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
外添剤13は、例えばシリカ、又はアルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、もしくはチタン酸バリウムのような金属酸化物から構成されることが好ましい。
流動性及び取扱性を向上させるためには、外添剤13の粒子径は0.01μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
以下、本実施例に係るトナーの調製方法の概要、評価方法、及び本実施例に係る調製方法により得られた各試料の評価結果について、順に説明する。
[調製方法]
本実施例に係る調製方法では、コアの形成、シェル層の形成、洗浄、乾燥、及び外添を順に行ってトナーを製造(調製)した。以下、本実施例に係る調製方法について説明する。
本実施例に係る調製方法では、コアの形成、シェル層の形成、洗浄、乾燥、及び外添を順に行ってトナーを製造(調製)した。以下、本実施例に係る調製方法について説明する。
<コア形成>
コア11は粉砕分級法により形成した。以下、本実施例の調製方法におけるコア11の形成について説明する。
コア11は粉砕分級法により形成した。以下、本実施例の調製方法におけるコア11の形成について説明する。
まず、結着樹脂11a(ポリエステル樹脂)と内添剤11b(詳しくは、着色剤及び離型剤)とを混合した。
ポリエステル樹脂(結着樹脂)は、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(詳しくは、ビスフェノールAを骨格にしてエチレンオキサイドを付加したアルコール)に多官能基を有する酸(詳しくは、パラフタル酸)を反応させることにより作製した。これにより、水酸基価(OHV値)「20mgKOH/g」、酸価(AV値)「40mgKOH/g」、Tm「100℃」、Tg「48℃」のポリエステル樹脂が得られた。
着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3(フタロシアニン顔料)を用いた。
離型剤としては、エステルワックス(日油社製「WEP−3」)を用いた。
上記材料の混合では、混合機(ヘンシェルミキサー)を用いて、ポリエステル樹脂100質量部に対して着色剤5質量部及び離型剤5質量部を混合した。
続けて、混合物を2軸押出機(池貝社製「PCM−30」)で混練した。
続けて、混練物を機械式粉砕機(ターボ工業社製「ターボミル」)で粉砕し、分級機(日鉄鉱業社製「エルボージェット」)により分級した。これにより、アニオン性のコア11が得られた。
<シェル層形成>
以下、本実施例に係る調製方法において、シェル層12を形成する場合の手順について説明する。
以下、本実施例に係る調製方法において、シェル層12を形成する場合の手順について説明する。
まず、温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコを準備し、ウォーターバスを用いてフラスコ内温を30℃に保持した。そして、フラスコ内にイオン交換水300mLを入れ、さらに希塩酸を加えて、フラスコ内の水性媒体のpHを4に調整した。
続けて、フラスコ内にシェル層12の材料であるヘキサメチロールメラミン初期重合体(昭和電工社製「ミルベン607」)を添加し、フラスコの内容物を攪拌してヘキサメチロールメラミン初期重合体を水性媒体に溶解させた。シェル層12の材料(昭和電工社製「ミルベン607」)の添加量は、調製すべき試料のシェル層12の厚さに応じて変えるようにした。例えば、厚さ6nmのシェル層12を形成する場合にはシェル層12の材料(昭和電工社製「ミルベン607」)の添加量を2mLとした。
続けて、フラスコ内(シェル層12の材料が溶解した液中)に前述の手順で作製した300gのコア11を添加し、フラスコの内容物を十分攪拌した。
続けて、フラスコ内にイオン交換水300mLを追加し、フラスコの内容物を攪拌しながら1℃/分の速度でフラスコ内の温度を70℃まで上げて70℃のまま2時間保持した。これにより、コア11表面に熱硬化性樹脂(メラミン樹脂)から構成されるカチオン性のシェル層12が形成された。
70℃に保持して2時間経過した後、水酸化ナトリウムを加えてフラスコの内容物のpHを7に調整(中和)した。続けて、フラスコの内容物を常温まで冷却し、トナー母粒子を含む分散液を得た。
<洗浄>
トナー母粒子(コア11及びシェル層12)の形成後、トナー母粒子の洗浄を行った。本実施例に係る調製方法では、ブフナーロートを用いて分散液からトナー母粒子のウェットケーキをろ取し、トナー母粒子のウェットケーキを再度イオン交換水に分散させてトナー母粒子を洗浄した。そして、イオン交換水による同様の洗浄を5回繰り返した。ろ液及び洗浄液は排液として回収した。
トナー母粒子(コア11及びシェル層12)の形成後、トナー母粒子の洗浄を行った。本実施例に係る調製方法では、ブフナーロートを用いて分散液からトナー母粒子のウェットケーキをろ取し、トナー母粒子のウェットケーキを再度イオン交換水に分散させてトナー母粒子を洗浄した。そして、イオン交換水による同様の洗浄を5回繰り返した。ろ液及び洗浄液は排液として回収した。
ろ過後のろ液の導電率は、シェル層12の材料(昭和電工社製「ミルベン607」)の添加量によらず4μS/cmであった。導電率の測定には、堀場製作所社製の電気伝導率計「HORIBA ES−51」を用いた。
洗浄後のろ液及び洗浄液のTOC濃度はそれぞれ8mg/L以下であった。その後、一般的な逆浸透(RO)によりろ液及び洗浄液のTOC濃度をそれぞれ3mg/L以下(水道水レベル)まで浄化できた。TOC濃度の測定には、島津製作所社製のTOC−4200を用いた。
<乾燥>
上記洗浄後、トナー母粒子の乾燥を行った。本実施例に係る調製方法では、分散液から回収したトナー母粒子を40℃雰囲気中に48時間放置して乾燥させた。
上記洗浄後、トナー母粒子の乾燥を行った。本実施例に係る調製方法では、分散液から回収したトナー母粒子を40℃雰囲気中に48時間放置して乾燥させた。
<外添>
上記乾燥後、トナー母粒子に外添を行った。本実施例に係る調製方法では、外添剤13としてBET比表面積130m2/gの疎水性シリカ微粒子(日本アエロジル社製「REA−200」)をトナー母粒子の表面に付着させた。詳しくは、トナー母粒子100質量部に対して0.5質量部の外添剤13をトナー母粒子の表面に付着させた。以上の工程により、トナー(多数のトナー粒子10)を製造した。
上記乾燥後、トナー母粒子に外添を行った。本実施例に係る調製方法では、外添剤13としてBET比表面積130m2/gの疎水性シリカ微粒子(日本アエロジル社製「REA−200」)をトナー母粒子の表面に付着させた。詳しくは、トナー母粒子100質量部に対して0.5質量部の外添剤13をトナー母粒子の表面に付着させた。以上の工程により、トナー(多数のトナー粒子10)を製造した。
[評価方法]
各試料の評価方法は、以下の通りである。
各試料の評価方法は、以下の通りである。
(粒子径)
ベックマンコールター社製のコールターカウンターマルチサイザー3を用いて、粒子径(D50)を測定した。
ベックマンコールター社製のコールターカウンターマルチサイザー3を用いて、粒子径(D50)を測定した。
(形状指数)
フロー式粒子像分析装置(シスメックス社製「FPIA 3000」)を用いて、形状指数としての円形度を測定した。詳しくは、各試料に関して3000個の粒子の円形度を測定し、その平均値を円形度とした。
フロー式粒子像分析装置(シスメックス社製「FPIA 3000」)を用いて、形状指数としての円形度を測定した。詳しくは、各試料に関して3000個の粒子の円形度を測定し、その平均値を円形度とした。
(摩擦帯電量)
ターブラミキサーを用いて、標準キャリアN−01(日本画像学会から提供される負帯電極性トナー用標準キャリア)と、この標準キャリアに対して7質量%の粒子とを30分間混合した。そして、得られた混合物を測定試料として標準キャリアと摩擦させた場合の粒子の摩擦帯電量をQMメーター(TREK社製「MODEL 210HS−2A」)で測定した。
ターブラミキサーを用いて、標準キャリアN−01(日本画像学会から提供される負帯電極性トナー用標準キャリア)と、この標準キャリアに対して7質量%の粒子とを30分間混合した。そして、得られた混合物を測定試料として標準キャリアと摩擦させた場合の粒子の摩擦帯電量をQMメーター(TREK社製「MODEL 210HS−2A」)で測定した。
(コアのTg)
示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ社製「DSC−6200」)を用いて吸熱曲線を測定した。そして、測定した吸熱曲線における比熱の変化点からコア11のTgを求めた。
示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ社製「DSC−6200」)を用いて吸熱曲線を測定した。そして、測定した吸熱曲線における比熱の変化点からコア11のTgを求めた。
(コアのTm)
試料を高化式フローテスター(島津製作所社製「CFT−500D」)にセットし、ダイス細孔経1mm、プランジャー荷重20kg/cm2、昇温速度6℃/分で、1cm3の試料を溶融流出させてS字カーブ(図2参照)を求め、得られたS字カーブからコア11のTmを読み取った。
試料を高化式フローテスター(島津製作所社製「CFT−500D」)にセットし、ダイス細孔経1mm、プランジャー荷重20kg/cm2、昇温速度6℃/分で、1cm3の試料を溶融流出させてS字カーブ(図2参照)を求め、得られたS字カーブからコア11のTmを読み取った。
(コアのゼータ電位)
コア11「0.2g」、イオン交換水「80g」、及び1%濃度のノニオン性界面活性剤(ポリビニルピロリドン、日本触媒社製「K−85」)「20g」をマグネットスターラーで混合し、コア11を均一に分散させて分散液を得た。この分散液に希塩酸を加えて分散液のpHを4に調整した。そして、この分散液を測定試料として、ゼータ電位・粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製「Delsa Nano HC」)により、pH4に調整された分散液中のコア11のゼータ電位を測定した。
コア11「0.2g」、イオン交換水「80g」、及び1%濃度のノニオン性界面活性剤(ポリビニルピロリドン、日本触媒社製「K−85」)「20g」をマグネットスターラーで混合し、コア11を均一に分散させて分散液を得た。この分散液に希塩酸を加えて分散液のpHを4に調整した。そして、この分散液を測定試料として、ゼータ電位・粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製「Delsa Nano HC」)により、pH4に調整された分散液中のコア11のゼータ電位を測定した。
(トナー粒子の動的粘弾性)
トナーの動的粘弾性(複素弾性率G*、貯蔵弾性率G1、及び損失弾性率G2など)は、粘弾性測定装置(レオメーター、Anton Paar社製「MCR−301」)を用いて、次の条件で測定した。
・測定プレート:直径10mmのパラレルプレート
・周波数:1Hz
・測定温度:60℃〜200℃
・昇温速度:4℃/min
・印加歪:0.01%〜5%(測定温度範囲内で対数的に上昇)
・ペレット:厚み0.5mm±0.02mm、直径10mm
・ペレット作製条件:温度25℃、圧力20kg・f/cm2で加圧成形
なお、損失正接tanδは「損失正接tanδ=損失弾性率G2/貯蔵弾性率G1」の式から算出した。
トナーの動的粘弾性(複素弾性率G*、貯蔵弾性率G1、及び損失弾性率G2など)は、粘弾性測定装置(レオメーター、Anton Paar社製「MCR−301」)を用いて、次の条件で測定した。
・測定プレート:直径10mmのパラレルプレート
・周波数:1Hz
・測定温度:60℃〜200℃
・昇温速度:4℃/min
・印加歪:0.01%〜5%(測定温度範囲内で対数的に上昇)
・ペレット:厚み0.5mm±0.02mm、直径10mm
・ペレット作製条件:温度25℃、圧力20kg・f/cm2で加圧成形
なお、損失正接tanδは「損失正接tanδ=損失弾性率G2/貯蔵弾性率G1」の式から算出した。
(トナー粒子におけるシェル層の厚さ)
トナー粒子10を常温硬化性のエポキシ樹脂中に分散し、40℃の雰囲気にて2日間硬化させて硬化物を得た。この硬化物を四酸化オスミウムを用いて染色した後、ダイヤモンドナイフをセットしたミクロトーム(ライカ社製「EM UC6」)を用いて切り出し、厚さ200nmの薄片試料を得た。そして、この試料の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子社製「JSM−6700 F」)を用いて撮影した。
トナー粒子10を常温硬化性のエポキシ樹脂中に分散し、40℃の雰囲気にて2日間硬化させて硬化物を得た。この硬化物を四酸化オスミウムを用いて染色した後、ダイヤモンドナイフをセットしたミクロトーム(ライカ社製「EM UC6」)を用いて切り出し、厚さ200nmの薄片試料を得た。そして、この試料の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子社製「JSM−6700 F」)を用いて撮影した。
画像解析ソフトウェア(三谷商事社製「WinROOF」)を用いてTEM撮影像を解析することで、シェル層12の厚さを計測した。具体的には、トナー粒子10の断面の略中心で直交する2本の直線を引き、この2本の直線上の、シェル層12と交差する4箇所の長さを測定した。そして、測定された4箇所の長さの平均値を測定対象である1個のトナー粒子10のシェル層12の厚さとした。トナーに含まれる10個以上のトナー粒子10についてシェル層12の厚さを測定し、得られた10個以上の測定値の平均値をそのトナーのシェル層12の厚さ(膜厚)とした。
なお、シェル層12の厚さが小さい場合は、TEM画像上でのコア11とシェル層12との界面が不明瞭になるため、シェル層12の厚さの測定が困難な場合がある。このような場合は、TEM撮影と電子エネルギー損失分光法(EELS)とを組み合わせてコア11とシェル層12との界面を明確にすることによりシェル層12の厚さを測定した。具体的には、TEM画像中で、EELSを用いてシェル層12の材質(窒素元素)に特徴的な元素のマッピングを行った。
(トナー粒子のブロッキング性)
トナー3gを容量30mLのポリ容器(瓶)に入れて、60℃に設定された恒温器内に3時間静置することで、評価用トナーを得た。そして、パウダーテスターに積置された325メッシュ(目開き45μm)の振動篩を用いて評価用トナーを30秒間篩別し、篩別後に篩上に残留したトナーの割合(質量%)を算出した。
トナー3gを容量30mLのポリ容器(瓶)に入れて、60℃に設定された恒温器内に3時間静置することで、評価用トナーを得た。そして、パウダーテスターに積置された325メッシュ(目開き45μm)の振動篩を用いて評価用トナーを30秒間篩別し、篩別後に篩上に残留したトナーの割合(質量%)を算出した。
(トナー粒子の最低定着温度及び最高定着温度)
評価機として、Roller−Roller方式の加熱加圧型の定着器(ニップ幅8mm)を装備し、定着温度を調節できるように改造したプリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FSC−5250DN」)を用いた。また、現像剤用キャリア(TASKalfa5550用キャリア)と、キャリアの質量に対して10質量%のトナーとを、ボールミルを用いて30分間混合して2成分現像剤を調製した。
評価機として、Roller−Roller方式の加熱加圧型の定着器(ニップ幅8mm)を装備し、定着温度を調節できるように改造したプリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FSC−5250DN」)を用いた。また、現像剤用キャリア(TASKalfa5550用キャリア)と、キャリアの質量に対して10質量%のトナーとを、ボールミルを用いて30分間混合して2成分現像剤を調製した。
トナーを評価機のシアン色用のトナーコンテナに投入し、現像剤をシアン色用の現像装置に投入して、評価機により線速200mm/秒で90g/m2の記録紙を搬送し、搬送しながら記録紙に1.0mg/cm2のトナー像(シアン単色)を形成した。続けて、トナー像形成後の記録紙に定着器を通過させた。ニップ通過時間は40m秒とした。また、定着温度の設定範囲は100℃〜200℃とした。詳しくは、定着器の定着温度を100℃から5℃ずつ上昇させて、未定着のベタ画像を定着させた。そして、ベタ画像がオフセットすることなく紙に定着できる最低温度(最低定着温度)を測定した。また、上記試験においてホットオフセットの生じない最高の温度を最高定着温度とした。具体的には、目視により評価機の定着ローラーにトナーが付着していると確認された場合にホットオフセットが生じたと判断した。
[評価結果]
表1に、本実施例に係る調製方法により得たトナー(試料1〜5)の評価結果をまとめて示す。
表1に、本実施例に係る調製方法により得たトナー(試料1〜5)の評価結果をまとめて示す。
図3、図4、図5はそれぞれ、試料1、4、5の損失正接tanδと温度との関係を示すグラフである。以下、主に表1及び図3〜図5を参照して、試料1〜5の評価結果について説明する。
なお、試料1〜5の調製方法は、シェル層12の材料(昭和電工社製「ミルベン607」)の添加量のみが異なり、他の条件は同じである。シェル層12の材料の添加量を変えることによって、シェル層12の厚さが異なる試料1〜5を調製した。
(コア)
試料1〜5のいずれにおいても、体積平均粒子径(D50)が6.0μm、円形度(形状指数)が0.93、Tmが90℃、Tgが49℃、標準キャリアとの摩擦帯電量が−20μC/gであるコア11が得られた。pH4におけるコア11のゼータ電位は、試料1〜5のいずれにおいても−15mVであった。
試料1〜5のいずれにおいても、体積平均粒子径(D50)が6.0μm、円形度(形状指数)が0.93、Tmが90℃、Tgが49℃、標準キャリアとの摩擦帯電量が−20μC/gであるコア11が得られた。pH4におけるコア11のゼータ電位は、試料1〜5のいずれにおいても−15mVであった。
(シェル層)
表1に示されるように、シェル層12の厚さ(膜厚)は、試料1で6nm、試料2で3nm、試料3で20nm、試料4で2nm、試料5で25nmであった。
表1に示されるように、シェル層12の厚さ(膜厚)は、試料1で6nm、試料2で3nm、試料3で20nm、試料4で2nm、試料5で25nmであった。
(トナー)
表1及び図3に示されるように、試料1〜3では、120℃における損失正接tanδが1よりも小さくて(詳しくは0.67、0.90、0.60)、且つ、200℃における損失正接tanδが2よりも大きかった(詳しくは2.2、3.2、2.1)。なお、120℃〜200℃はトナーを定着する際のトナーの性質がよく現れる温度範囲に相当する。試料1〜3では、120℃〜200℃の温度範囲において損失正接tanδが1となる温度が一点のみ存在した。
表1及び図3に示されるように、試料1〜3では、120℃における損失正接tanδが1よりも小さくて(詳しくは0.67、0.90、0.60)、且つ、200℃における損失正接tanδが2よりも大きかった(詳しくは2.2、3.2、2.1)。なお、120℃〜200℃はトナーを定着する際のトナーの性質がよく現れる温度範囲に相当する。試料1〜3では、120℃〜200℃の温度範囲において損失正接tanδが1となる温度が一点のみ存在した。
また、試料1〜3では、120℃〜200℃の範囲における損失正接tanδの最小値(以下、βと記載する)に対する損失正接tanδの最大値(以下、αと記載する)の比率(α/β)が3以上(詳しくは3.3、3.6、3.5)であった。
また、試料1〜3では、120℃における複素弾性率G*が2.0×104Pa〜1.0×105Paの範囲にあった(詳しくは4.4×104Pa、4.0×104Pa、9.0×104Pa)。
こうした試料1〜3に対し、試料4、5では、表1、図4、及び図5に示されるような損失正接tanδが得られた。詳しくは、試料4では、120℃における損失正接tanδが1よりも大きかった(詳しくは1.2)。試料5では、α/βが2.5よりも小さかった(詳しくは2.3)。また、試料4では120℃における複素弾性率G*が2.0×104Paよりも小さく(詳しくは1.4×104Pa)、試料5では120℃における複素弾性率G*が1.0×105Paよりも大きかった(詳しくは1.2×105Pa)。
以下、試料1〜5の評価結果について考察する。
複素弾性率G*が同じである状態においては、損失正接tanδが1よりも小さい場合はトナーの流動性が低くなり紙への浸透性が低下し、損失正接tanδが1よりも大きい場合はトナーの流動性が高くなり紙への浸透性が高くなる。
高温領域(例えば、200℃)では、トナーの粘度及び内部凝集力が低下するため、紙への浸透性が低くなる。そのため、溶融トナーが定着ローラーに残り易くなり、ホットオフセットが発生し易くなる。
こうした課題に対し、試料1〜3では、200℃における損失正接tanδが1よりも大きい(より詳しくは2よりも大きい)ことで、紙への浸透性が高くなる。このため、定着時にホットオフセットの発生を抑制することが可能になる。詳しくは、試料1〜3のいずれにおいても195℃以上の最高定着温度を得ることができた。
一方、低温領域(例えば、120℃)では、トナーの粘度及び内部凝集力がある程度保たれた状態になるため、ホットオフセットは発生しにくい。試料1〜3では、120℃における損失正接tanδが1よりも小さいため、高グロスを維持した良好な定着性が得られた。
また、試料1〜3では、篩別後の残留トナーを30質量%以下に抑えながら150℃以下の最低定着温度を得ることができた。これは、試料1〜3の各々のα/βが2.5以上(詳しくは3以上)であるためであると考えられる。
特に、試料1、3では、篩別後の残留トナーを10質量%以下に抑えながら150℃以下の最低定着温度を得ることができた。これは、試料1、3の各々の200℃における損失正接tanδが2.5よりも小さいためであると考えられる。
特に、試料1では、篩別後の残留トナーを10質量%以下に抑えながら140℃以下の最低定着温度を得ることができた。これは、試料1の120℃における複素弾性率G*が3.0×104Pa〜5.0×104Paの範囲にあるためであると考えられる。
こうした試料1〜3に対し、試料4、5では、篩別後の残留トナーを30質量%以下に抑えながら150℃以下の最低定着温度を得ることはできなかった。
以上説明したように、試料1〜3に係るトナーは、アニオン性のコア11と、コア11の表面に形成されたカチオン性のシェル層12とを有する。試料1〜3の各々のシェル層12は熱硬化性樹脂から構成される。また、試料1〜3では、120℃における損失正接tanδが1よりも小さく、且つ、200℃における損失正接tanδが1よりも大きい。さらに、試料1〜3では、120℃〜200℃の範囲における損失正接tanδの最小値に対する損失正接tanδの最大値の比率(α/β)が2.5以上である。
試料1〜3は、上記構成により、広い温度範囲において良好な定着性(最低定着温度)を示す。しかも、試料1〜3は、優れたブロッキング性(保存安定性)を有する。さらに、試料1〜3は、優れたオフセット性(最高定着温度)を有する。
本実施例に係る調製方法では、シェル層12の形成において、120℃における損失正接tanδが1よりも小さく、且つ、200℃における損失正接tanδが1よりも大きく、120℃〜200℃の範囲における損失正接tanδの最小値に対する損失正接tanδの最大値の比率(α/β)が2.5以上になるように、シェル層12の材料の添加量を決めている。こうしたトナーの製造方法によれば、上記構成を有する試料1〜3を容易且つ適切に調製することが可能になる。
なお、本発明は上記実施例には限定されない。例えば、コア11の形成方法は任意である。コア11の形成方法は、湿式製造法(例えば、懸濁重合法、乳化凝集法、非水分散重合法、乳化分散造粒法、又はシード重合法)であってもよいし、乾式製造法(例えば、噴霧乾燥法又は粉砕法)であってもよい。コア11の樹脂成分、粒径、形状等に応じて、適切な方法を選ぶことが好ましい。
コア11の結着樹脂は、ポリエステル樹脂に限られず任意であり、例えばエポキシ樹脂又はスチレンアクリル樹脂であってもよい。
シェル層12の材料はヘキサメチロールメラミン初期重合体(昭和電工社製「ミルベン607」)に限られず任意である。シェル層12の材料としては、窒素元素を含むアミノアルデヒド樹脂(例えば、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、又は尿素樹脂)のモノマー又はプレポリマーが好ましい。また、水性システムで用いるためには、水に分散するタイプの材料が好ましい。
コア11の形成又はシェル層12の形成において分散剤(界面活性剤)を使用してもよい。例えば、コア11の材料を分散させるためにノニオン性の活性剤を用いてもよい。
本発明に係るトナーは、複写機又はプリンター等において画像を形成するために用いることができる。
10 トナー粒子
11 コア
11a 結着樹脂
11b 内添剤
12 シェル層
13 外添剤
11 コア
11a 結着樹脂
11b 内添剤
12 シェル層
13 外添剤
Claims (6)
- アニオン性のコアと、前記コアの表面に形成されたカチオン性のシェル層とを有するトナーであって、
前記シェル層は熱硬化性樹脂から構成され、
120℃における損失正接は1よりも小さく、且つ、200℃における損失正接は1よりも大きく、
120℃〜200℃の範囲における損失正接の最小値に対する損失正接の最大値の比率は2.5以上である、トナー。 - 200℃における損失正接は2よりも大きい、請求項1に記載のトナー。
- 200℃における損失正接は2.5よりも小さい、請求項1又は2に記載のトナー。
- 120℃〜200℃の範囲における損失正接の最小値に対する損失正接の最大値の比率は3以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のトナー。
- 前記シェル層はアミノアルデヒド樹脂又はアミノアルデヒド樹脂の誘導体から構成される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のトナー。
- コアを形成するステップと、
前記コアの表面にシェル層を形成するステップと、
を含むトナーの製造方法であって、
前記シェル層の形成では、120℃における損失正接が1よりも小さく、且つ、200℃における損失正接が1よりも大きく、120℃〜200℃の範囲における損失正接の最小値に対する損失正接の最大値の比率が2.5以上になるように、前記シェル層の材料の添加量を決める、トナーの製造方法。
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