JP2014048341A - 静電潜像現像用トナー - Google Patents

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Abstract

【課題】耐熱保存性、及び低温定着性に優れ、トナーを良好に帯電させることができ、逆帯電トナーの発生を抑制することによりトナー飛散の発生を抑制できる、静電潜像現像用トナーを提供すること。
【解決手段】少なくとも、結着樹脂を含むトナーコア粒子と、トナーコア粒子を被覆するシェル層と、からなる静電潜像現像用トナーについて、水酸基及びカルボキシル基から選択される基を有する樹脂を含む結着樹脂を用い、シェル層の材質としてメラミン樹脂及び尿素樹脂から選択される樹脂を用い、水を用いて測定される露出部存在比が0.20以上であるトナー粒子の割合と、メタノールを用いて測定される露出部存在比が0.20以上であるトナー粒子の割合と、エタノールを用いて測定される露出部存在比が0.20以上であるトナー粒子の割合とが、何れもトナー粒子100個に対して、20個数%以下となるようにシェル層を形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、静電潜像現像用トナーに関する。
一般に電子写真法では、感光体ドラムの表面をコロナ放電等により帯電させた後、レーザー等により露光して静電潜像を形成する。形成した静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する。さらに、形成したトナー像を記録媒体に転写して高品質な画像を得ている。通常トナー像の形成に使用するトナーには、熱可塑性樹脂等の結着樹脂に、着色剤、電荷制御剤、離型剤等を混合した後、混練、粉砕、分級工程を経て得られる、平均粒径5〜10μmのトナー粒子(トナー母粒子)が用いられる。そしてトナーに流動性を付与したり、トナーに好適な帯電性能を付与したり、感光体ドラムからのトナーのクリーニング性を向上させたりする目的で、シリカや酸化チタンのような無機微粉末がトナー母粒子に外添されている。
このようなトナーに関して、省エネルギー化、装置の小型化等の観点から、定着ローラーを極力加熱することなく良好に定着可能な、低温定着性に優れるトナーが望まれている。しかし、低温定着性に優れるトナーは、融点やガラス転移点の低い結着樹脂や、低融点の離型剤を使用していることが多く、一般的に、高温で保存する場合に凝集しやすい。トナーに凝集が生じる場合、凝集しているトナー粒子の帯電量が、他の凝集していないトナー粒子と比較して低下しやすく、さらに、逆極性の電荷を有するトナー(逆帯電トナー)が発生しやすい。逆帯電トナーが発生すると、トナーの現像部からの飛散が起こりやすくなる。
そこで、従来より低い温度域においても定着性に優れるトナーを得る目的、高温でのトナーの保存安定性の向上の目的、及びトナーの耐ブロッキング性の向上の目的で、低融点の結着樹脂を含むトナーコア粒子が、トナーコア粒子に含まれる結着樹脂のガラス転移点(Tg)よりも高いTgを有する樹脂からなるシェル層により被覆されている、コア−シェル構造のトナーが使用されている。
このようなコア−シェル構造のトナーとして、熱硬化性樹脂を含む薄膜により、トナーコア粒子の表面が被覆されたトナーであって、被覆前のトナーコア粒子の軟化温度が40℃以上150℃以下であるトナーが提案されている(特許文献1参照)。
特開2004−138985号公報
特許文献1に記載のトナーは、トナーコア粒子を、ポリアクリル酸系分散剤が溶解する水性媒体中に分散させた後、熱硬化性樹脂の前駆体の水性媒体中にさらに投入して、トナーコア粒子の表面に熱硬化性樹脂を含む薄膜を被覆する工程により製造されている。しかし、このような工程によりトナーコア粒子を熱硬化性樹脂の薄膜により被覆する場合、トナーコア粒子と薄膜との間に分散剤が残留しやすい。トナーコア粒子と薄膜との間に分散剤が残留すると、トナーコア粒子からトナーコア粒子を被覆する薄膜が剥がれやすくなるため、高温高湿環境下でトナーに凝集が生じ、凝集したトナー粒子の帯電量が低下しやすい。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、耐熱保存性及び低温定着性に優れ、トナーを良好に帯電させることができ、逆帯電トナーの発生を抑制することによりトナーの現像部からの飛散を抑制できる、静電潜像現像用トナーを提供することを目的とする。
本発明者らは、少なくとも、結着樹脂を含むトナーコア粒子と、トナーコア粒子を被覆するシェル層と、からなる静電潜像現像用トナーについて、水酸基、及びカルボキシル基から選択される基を有する樹脂を含む結着樹脂を用い、シェル層の材質として、メラミン樹脂、及び尿素樹脂から選択される樹脂を用い、水を用いて測定される露出部存在比が0.20以上であるトナー粒子の割合と、メタノールを用いて測定される露出部存在比が0.20以上であるトナー粒子の割合と、エタノールを用いて測定される露出部存在比が0.20以上であるトナー粒子の割合とを、何れもトナー粒子100個に対して20個数%以下となるようにシェル層を形成することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
本発明は、少なくとも結着樹脂を含むトナーコア粒子と、
前記トナーコア粒子を被覆するシェル層と、からなる静電潜像現像用トナーであって、
結着樹脂が、水酸基、及びカルボキシル基から選択される基を有する樹脂からなり、
シェル層が、メラミン樹脂、及び尿素樹脂から選択される樹脂からなり、
下記1)〜8)の工程により測定される、
水を用いて測定される露出部存在比が0.20以上であるトナー粒子の割合R(個数%)、
メタノールを用いて測定される露出部存在比が0.20以上であるトナー粒子の割合R(個数%)、及び、
エタノールを用いて測定される露出部存在比が0.20以上であるトナー粒子の割合R(個数%)、
が、何れも、トナー粒子100個に対して、20個数%以下である、静電潜像現像用トナーに関する。
1)光硬化性樹脂1.0g中にトナー0.3gを分散させたトナー含有樹脂組成物に紫外線を照射して、前記トナー含有樹脂組成物を硬化させて硬化樹脂組成物を得る工程、
2)得られた前記硬化樹脂組成物の表面を研磨して、前記硬化樹脂組成物の表面にトナー粒子の断面を露出させる工程、
3)研磨された前記硬化樹脂組成物を58℃まで昇温させ、同温度で12時間加熱する工程、
4)加熱後の前記硬化樹脂組成物を、水、メタノール、又はエタノールに浸漬し、前記硬化樹脂組成物が浸漬された水、メタノール、又はエタノールに、周波数35kHz、出力80Wという条件で5分間超音波を照射する工程、
5)超音波照射後に、水、メタノール、又はエタノールから取り出した硬化樹脂組成物を乾燥する工程、
6)乾燥後の硬化樹脂組成物の研磨された表面を、走査型電子顕微鏡により倍率10,000倍で観察し、100個のトナー粒子の断面の電子顕微鏡画像を得る工程、
7)得られた電子顕微鏡画像から、100個のトナー粒子それぞれについて、トナー粒子の断面の周囲の長さである周囲長(X)と、トナー粒子の断面の周囲のうち、シェル層により被覆されていない部分の長さである露出部長(Y)とを測定し、下式:
露出部存在比=(Y/X)・・・・(I)
により、トナー粒子の露出部存在比を算出する工程、及び
8)トナー粒子100個に対する、露出部存在比が0.20以上であるトナー粒子数の割合を算出する工程。
本発明によれば、耐熱保存性、及び低温定着性に優れ、トナーを良好に帯電させることができ、逆帯電トナーの発生を抑制することにより現像部からトナーが飛散することを抑制できる、静電潜像現像用トナーを提供できる。
トナー粒子の断面の電子顕微鏡画像である。 高化式フローテスターによる融点の測定方法を説明する図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
本発明の静電潜像現像用トナー(以下単にトナーともいう)は、少なくとも結着樹脂を含むトナーコア粒子と、トナーコア粒子を被覆するシェル層と、からなる。トナーコア粒子に含まれる結着樹脂は、水酸基、及びカルボキシル基から選択される基を有する樹脂からなる。トナーコア粒子を被覆するシェル層は、メラミン樹脂、及び尿素樹脂から選択される樹脂からなる。
また、本発明のトナーは、後述する所定の工程により測定される、
水を用いて測定される露出部存在比が0.20以上であるトナー粒子の割合R(個数%)、
メタノールを用いて測定される露出部存在比が0.20以上であるトナー粒子の割合R(個数%)、及び、
エタノールを用いて測定される露出部存在比が0.20以上であるトナー粒子の割合R(個数%)、
が、何れも、トナー粒子100個に対して、20個数%以下である。
、R、及びRは、トナーコア粒子を被覆する、シェル層の、トナーコア粒子からの剥離しにくさの指標である。本発明のトナーは、R、R、及びRが、何れも、トナー粒子100個に対して、20個数%以下であって、シェル層が、トナーコア粒子から剥離しにくい。このため、本発明のトナーは、長期間にわたり連続して画像形成を行う際のトナーに加わる機械的ストレスにより、トナーコア粒子からのシェル層の剥がれが抑制され、トナーを良好に帯電させることができ、逆極性の電荷を有するトナー(逆帯電トナー)の発生を抑制することにより現像部からトナーが飛散することを抑制できる。
一方、R、R及びRの何れかが20個数%超であるトナーでは、長期間にわたり連続して画像形成を行う際にトナーに加わる機械的ストレスにより、トナーコア粒子からシェル層が剥離しやすい。このようなトナーの場合、長期間にわたり連続して画像形成を行う場合に、トナーの帯電量が低下したり、逆帯電トナーが発生したりしやすい。
前述のR、R、及びRは、以下の1)〜8)の工程を含む方法により測定することができる。
<R、R、及びRの測定方法>
1)光硬化性樹脂1.0g中にトナー0.3gを分散させたトナー含有樹脂組成物に紫外線を照射して、トナー含有樹脂組成物を硬化させて硬化樹脂組成物を得る工程、
2)得られた硬化樹脂組成物の表面を研磨して、硬化樹脂組成物の表面にトナー粒子の断面を露出させる工程、
3)研磨された硬化樹脂組成物を58℃まで昇温させ、同温度で12時間加熱する工程、
4)加熱後の硬化樹脂組成物を、水、メタノール、又はエタノールに浸漬し、硬化樹脂組成物が浸漬された水、メタノール、又はエタノールに、周波数35kHz、出力80Wという条件で5分間超音波を照射する工程、
5)超音波照射後に、水、メタノール、又はエタノールから取り出した硬化樹脂組成物を乾燥する工程、
6)乾燥後の硬化樹脂組成物の研磨された表面を、走査型電子顕微鏡により倍率10,000倍で観察し、100個のトナー粒子の断面の電子顕微鏡画像を得る工程、
7)得られた電子顕微鏡画像から、100個のトナー粒子それぞれについて、トナー粒子の断面の周囲の長さである周囲長(X)と、トナー粒子の断面の周囲のうち、シェル層により被覆されていない部分の長さである露出部長(Y)とを測定し、下式:
露出部存在比=(Y/X)・・・・(I)
により、トナー粒子の露出部存在比を算出する工程、及び
8)トナー粒子100個に対する、露出部存在比が0.20以上であるトナー粒子数の割合を算出する工程。
図1(a)に示す電子顕微鏡画像から、周囲長(X)と、露出部長(Y)とを測定する方法としては、画像解析ソフトウェア(WinROOF(三谷商事株式会社製))を用いて電子顕微鏡画像を解析する方法が挙げられる。解析手順は、まず、トナー粒子の断面の電子顕微鏡画像のガサツキを除去した後、ソーベルフィルタ処理を行う。このとき、露出部(シェル層により被覆されていない部分)が強調して表示された画像が得られる。得られた画像に対し、単一しきい値による2値化処理(自動2値化(モード:Pタイル))を実行する。さらに、2値化処理後の画像について、トナー粒子の周囲以外の部分と、トナー粒子の周囲に存在し、且つ、トナー粒子の周囲長(X)の1/10以下の長さの部分とを削除することで、露出部だけが強調された2値化処理後の画像を得る。その後、得られた画像から露出部長(Y)の長さを測定する。
画像解析ソフトウェアを用いて、図1(a)に示される電子顕微鏡画像中のトナー粒子の断面の周囲長(X)と露出部長(Y)とをそれぞれ測定すると、周囲長(X)が19.6μmと測定され、図1(b)に黒色の実線で示す露出部Lの露出部長(Y)が8.6μmと測定ができる。この周囲長(X)と露出部長(Y)との測定結果から、図1の電子顕微鏡画像中のトナー粒子については、トナー粒子の露出部存在比(X/Y)が0.44(8.6/19.6)と算出される。このような測定により、図1に示されるトナー粒子の露出部存在比は0.20以上であると確認できる。このようにして、トナー粒子の露出部存在比を、水に浸漬させた100個のトナー粒子、メタノールに浸漬させた100個のトナー粒子、及びエタノールに浸漬させた100個のトナー粒子ついてそれぞれ算出する。そして、各トナー粒子の露出部存在比の測定結果に基づいて、R、R、及びRを求めることができる。
≪トナー≫
本発明のトナーは、結着樹脂中に、必要に応じて着色剤、電荷制御剤、離型剤、及び磁性粉のような成分が配合されたトナーコア粒子の表面が、シェル層により被覆されている。また、本発明のトナーは、その表面に、さらに外添剤を付着させることもできる。また、本発明のトナーは、所望により、キャリアと混合して2成分現像剤として使用することもできる。以下、本発明のトナーについて、トナーコア粒子と、シェル層と、外添剤と、本発明のトナーを2成分現像剤として使用する場合に用いるキャリアと、本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法とについて順に説明する。
[トナーコア粒子]
本発明のトナーは、トナーコア粒子とトナーコア粒子を被覆するシェル層とから構成される。トナーコア粒子は、結着樹脂を必須に含む。また、トナーコア粒子は、必要に応じて、結着樹脂中に、着色剤、電荷制御剤、離型剤、及び磁性粉のような成分を含んでいてもよい。以下、本発明のトナーコア粒子について、必須、又は任意の成分である、結着樹脂、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉について順に説明する。
〔結着樹脂〕
トナーコア粒子は、水酸基及びカルボキシル基から選択される基を有する樹脂を含有する結着樹脂を必須に含み、シェル層はメラミン樹脂、及び尿素樹脂から選択される樹脂からなる。そして、メラミン樹脂、及び尿素樹脂の中間体は、メラミン又は尿素にホルムアルデヒドが付加して生成するメチロール基を有する。トナーコア粒子及びシェル層がこのような材料からなり、例えば、後述する、好適な方法によりトナーコア粒子を被覆するシェル層を形成する場合、トナーコア粒子の表面に露出する水酸基又はカルボキシル基と、シェル層の材料の中間体が有するメチロール基との反応によって、トナーコア粒子を構成する水酸基及びカルボキシル基から選択される基を有する樹脂と、シェル層を構成するメラミン樹脂、及び尿素樹脂から選択される樹脂との間に共有結合が形成される。このため、本発明のトナーは、シェル層がトナーコア粒子に対して強固に結合している。
本発明のトナーに含まれる結着樹脂の種類は、従来からトナー用の結着樹脂として用いられ、水酸基、及びカルボキシル基から選択される基を有する樹脂であれば特に制限されない。結着樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル酸を含むモノマーを用いて調製されたアクリル系樹脂やスチレンアクリル系樹脂のようなカルボキシル基を有する樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂のような水酸基を有する樹脂;ポリエステル樹脂のような、水酸基、及びカルボキシル基を有する樹脂が挙げられる。これらの樹脂の中でも、トナーの帯電性、用紙に対する定着性の面から、ポリエステル樹脂が好ましい。以下、ポリエステル樹脂について説明する。
ポリエステル樹脂は、2価又は3価以上のアルコール成分と2価又は3価以上のカルボン酸成分との縮重合ないし共縮重合によって得られるものを使用することができる。ポリエステル樹脂を合成する際に用いられる成分としては、以下の2価又は3価以上のアルコール成分や2価又は3価以上のカルボン酸成分が挙げられる。
2価又は3価以上のアルコール成分の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールのようなジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールAのようなビスフェノール類;ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンのような3価以上のアルコール類が挙げられる。
2価又は3価以上のカルボン酸成分の具体例としては、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、又はn−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸のようなアルキル又はアルケニルコハク酸のような2価カルボン酸;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸のような3価以上のカルボン酸が挙げられる。これらの2価又は3価以上のカルボン酸成分は、酸ハライド、酸無水物、低級アルキルエステルのようなエステル形成性の誘導体として用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1から6のアルキル基を意味する。
結着樹脂としては、定着性が良好であることから熱可塑性樹脂を用いることが好ましいが、熱可塑性樹脂単独で使用するだけでなく、熱可塑性樹脂に架橋剤や熱硬化性樹脂を添加することができる。結着樹脂内に一部架橋構造を導入することにより、定着性を低下させることなく、保存安定性、形態保持性、及び耐久性のようなトナー特性を向上させることができる。
熱可塑性樹脂と共に使用できる熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂やシアネート系樹脂が好ましい。好適な熱硬化性樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリアルキレンエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、シアネート樹脂が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、2種以上を組み合わせて使用できる。
結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。典型的には、結着樹脂のTgは、30℃以上60℃以下が好ましく、35℃以上55℃以下がより好ましい。結着樹脂のTgが低すぎると、トナーコア粒子を用いて得られるトナー粒子の強度が低下しやすく、高温多湿環境下でトナー粒子の凝集が生じる場合がある。また、結着樹脂のTgが高すぎると、トナーコア粒子を用いて得られるトナーを低温で良好に定着させにくくなる場合がある。結着樹脂のガラス転移点は、以下の方法に従って測定することができる。
<ガラス転移点測定方法>
結着樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、結着樹脂の比熱の変化点から求めることができる。より具体的には、測定装置としてセイコーインスツルメンツ株式会社製示差走査熱量計DSC−6200を用い、結着樹脂の吸熱曲線を測定することで求めることができる。測定試料10mgをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを使用し、測定温度範囲25℃以上200℃以下、昇温速度10℃/minという条件で常温常湿下にて測定して得られる結着樹脂の吸熱曲線より結着樹脂のガラス転移点を求めることができる。
結着樹脂の融点(Tm)は特に限定されず、典型的には、60℃以上120℃以下が好ましく、70℃以上110℃以下がより好ましい。結着樹脂の融点が高すぎると、トナーの耐熱保存性は良好であるが、トナーを低温で良好に定着させにくくなる場合がある。結着樹脂の融点が低すぎると、トナーの耐熱保存性が損なわれる場合がある。結着樹脂の融点は、以下の方法に従って測定することができる。
<融点測定方法>
高化式フローテスター(CFT−500D(株式会社島津製作所製))により結着樹脂の融点(Tm)の測定を行う。測定試料を高化式フローテスターにセットし、ダイス細孔経1mm、プランジャー荷重20kg/cm、昇温速度6℃/分の条件で、1cmの試料を溶融流出させて融点(Tm)を測定する。高化式フローテスターの測定により得られる、温度(℃)/ストローク(mm)に関するS字カーブより、結着樹脂の融点(Tm)を読み取る。
融点(Tm)の読み取り方を、図2により説明する。ストロークの最大値をSとし、低温側のベースラインのストローク値をSとする。S字カーブ中の、ストロークの値が(S+S)/2となる温度を、測定試料の融点(Tm)とする。
〔着色剤〕
トナーコア粒子は必要に応じて、着色剤を含んでいてもよい。トナーコア粒子に含有させる着色剤は、トナー粒子の色に合わせて、公知の顔料や染料を用いることができる。トナーコア粒子に含有させることができる好適な着色剤の具体例としては以下の着色剤が挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤としては後述するイエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤のような着色剤を用いて黒色に調色された着色剤も利用することができる。
トナーがカラートナーである場合に、トナーコア粒子に配合される着色剤としては、例えば、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤のような着色剤が挙げられる。
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリルアミド化合物のような着色剤が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、194;ネフトールイエローS、ハンザイエローG、及びC.I.バットイエローが挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物のような着色剤が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、及び254が挙げられる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物、銅フタロシアニン誘導体、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物のような着色剤が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66;フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、及びC.I.アシッドブルーが挙げられる。
トナーコア粒子に配合する着色剤の量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的には、着色剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下が好ましく、3質量部以上10質量部以下がより好ましい。
〔電荷制御剤〕
トナーコア粒子は必要に応じて、電荷制御剤を含んでいてもよい。電荷制御剤は、トナーの帯電レベルの安定性や、所定の帯電レベルに短時間でトナーを帯電可能か否かの指標となる帯電立ち上がり特性を向上させ、耐久性や安定性に優れるトナーを得る目的で使用される。トナーを正帯電させて現像を行う場合、正帯電性の電荷制御剤が使用され、トナーを負帯電させて現像を行う場合、負帯電性の電荷制御剤が使用される。
好適に使用できる電荷制御剤としては、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来からトナーに使用されている電荷制御剤から適宜選択できる。正帯電性の電荷制御剤の具体例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリンのようなアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ−ンBH/C、アジンディ−プブラックEW、及びアジンディープブラック3RLのようなアジン化合物からなる直接染料;ニグロシン、ニグロシン塩、ニグロシン誘導体のようなニグロシン化合物;ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZのようなニグロシン化合物からなる酸性染料;ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルメチルヘキシルデシルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウムクロライドのような4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの正帯電性の電荷制御剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
官能基として、4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、又はカルボキシル基を有する樹脂も正帯電性の電荷制御剤として使用できる。より具体的には、例えば、4級アンモニウム塩を有するスチレン系樹脂、4級アンモニウム塩を有するアクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するポリエステル樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン系樹脂、カルボン酸塩を有するアクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するポリエステル樹脂、カルボキシル基を有するスチレン系樹脂、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂、カルボキシル基を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂が挙げられる。これらの樹脂の分子量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、オリゴマーであってもポリマーであってもよい。
正帯電性の電荷制御剤として使用できる樹脂の中では、帯電量を所望の範囲内の値に容易に調節することができる点から、4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系樹脂がより好ましい。4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系樹脂について、スチレン単位と共重合させる好ましいアクリル系コモノマーの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸iso−ブチルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
また、4級アンモニウム塩としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノ(メタ)アクリルアミド、又はジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドから第4級化の工程を経て誘導される単位が用いられる。ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレートが挙げられ、ジアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としてはジメチルメタクリルアミドが挙げられ、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としては、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドが挙げられる。また、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミドのようなヒドロキシ基含有重合性モノマーを重合時に併用することもできる。
負帯電性の電荷制御剤の具体例としては、有機金属錯体、キレート化合物が挙げられる。有機金属錯体、及びキレート化合物としては、アルミニウムアセチルアセトナートや鉄(II)アセチルアセトナートのようなアセチルアセトン金属錯体、及び、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸クロムのようなサリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩が好ましく、サリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩がより好ましい。これらの負帯電性の電荷制御剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
正帯電性又は負帯電性の電荷制御剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。正帯電性又は負帯電性の電荷制御剤の使用量は、典型的には、トナー全量を100質量部とする場合に、0.5質量部以上20.0質量部以下が好ましく、1.0質量部以上15.0質量部以下がより好ましい。電荷制御剤の使用量が過少である場合、所定の極性にトナーを安定して帯電させにくいため、形成画像の画像濃度が所望する値を下回ったり、画像濃度を長期にわたって維持することが困難になったりすることがある。また、この場合、電荷制御剤が結着樹脂中に均一に分散し難く、形成画像にかぶりが生じやすくなったり、トナー成分による潜像担持部の汚染が起こりやすくなったりする。電荷制御剤の使用量が過多である場合、例えば、耐環境性の悪化による、高温高湿下での帯電不良に起因する形成画像での画像不良や、トナー成分による潜像担持部の汚染が起こりやすくなる。
〔離型剤〕
トナーコア粒子は必要に応じて、離型剤を含んでいてもよい。離型剤は、通常、トナーの定着性や耐オフセット性を向上させる目的で使用される。離型剤の種類は、従来からトナー用の離型剤として使用されているものであれば特に限定されない。
好適な離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、及びフィッシャートロプシュワックスのような脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックス、及び酸化ポリエチレンワックスのブロック共重合体のような脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、及びライスワックスのような植物系ワックス;みつろう、ラノリン、及び鯨ろうのような動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、及びベトロラクタムのような鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス、及びカスターワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような脂肪酸エステルを一部、又は全部を脱酸化したワックスがあげられる。
好適に使用できる離型剤としては、さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、及びさらに長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸類のような飽和直鎖脂肪酸;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、及びバリナリン酸のような不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、及びさらに長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコールのような飽和アルコール;ソルビトールのような多価アルコール;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、及びラウリン酸アミドのような脂肪酸アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、及びヘキサメチレンビスステアリン酸アミドのような飽和脂肪酸ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドのような不飽和脂肪酸アミド類、m−キシレンビスステアリン酸アミド、及びN,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドのような芳香族系ビスアミド;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、及びステアリン酸マグネシウムのような脂肪酸金属塩;脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸のようなビニル系モノマーをグラフト化させたワックス;ベヘニン酸モノグリセリドのような脂肪酸と多価アルコールとの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
離型剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的な離型剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下が好ましく、5質量部以上20質量部以下がより好ましい。離型剤の使用量が過少である場合、形成画像でのオフセットや像スミアリングの発生の抑制について所望の効果が得られない場合がある。離型剤の使用量が過多である場合、トナー同士の融着によって、トナーの保存安定性が低下する場合がある。
〔磁性粉〕
トナーコア粒子は必要に応じて、磁性粉を含んでいてもよい。磁性粉の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。好適な磁性粉の例としては、フェライト、マグネタイトのような鉄;コバルト、ニッケルのような強磁性金属;鉄、及び/又は強磁性金属を含む合金;鉄、及び/又は強磁性金属を含む化合物;熱処理のような強磁性化処理を施された強磁性合金;二酸化クロムが挙げられる。
磁性粉の粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されない。具体的な磁性粉の粒子径は、0.1μm以上1.0μm以下が好ましく、0.1μm以上0.5μm以下がより好ましい。このような範囲の粒子径の磁性粉を用いる場合、結着樹脂中に磁性粉を均一に分散させやすい。
磁性粉の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的な磁性粉の使用量は、トナーを1成分現像剤として使用する場合、トナー全量を100質量部とする場合に、35質量部以上60質量部以下が好ましく、40質量部以上60質量部以下がより好ましい。磁性粉の使用量が過多である場合、長期間にわたり画像を形成する際に所望の画像濃度を維持しにくかったり、定着性が極度に低下したりする場合がある。磁性粉の使用量が過少である場合、形成画像にかぶりが発生しやすくなることにより所望の画像濃度の維持できなくなる場合がある。また、トナーを2成分現像剤として使用する場合、磁性粉の使用量は、トナー全量を100質量部とする場合に、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
[シェル層]
本発明のトナーは、トナーコア粒子の表面が、シェル層により被覆されている。また、トナーコア粒子に含まれる結着樹脂は、水酸基及びカルボキシル基から選択される基を有する樹脂を含み、シェル層は、メラミン樹脂、及び尿素樹脂から選択される樹脂からなる。トナーコア粒子及びシェル層がこのような材料からなり、例えば、後述する、好適な方法によりトナーコア粒子を被覆するシェル層を形成することによって、トナーコア粒子に対して強固に結合するシェル層が形成される。
メラミン樹脂としては、メラミンとホルムアルデヒドの重縮合物が挙げられ、尿素樹脂としては、尿素とホルムアルデヒドの重縮合物が挙げられる。メラミン樹脂の製造方法は、まず、メラミンとホルムアルデヒドとが付加反応して、メラミン樹脂の前駆体(メチロール化メラミン)を得る。次いで、メチロール化メラミン同士の縮合、すなわちメラミンが有するアミノ基がメチレン基を介して相互に結合されることによる、メラミンの架橋反応によって、メラミン樹脂が得られる。尿素樹脂は、メラミンに変えて尿素を用いる他はメラミン樹脂と同様の製造方法により得られる。
シェル層の質量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的には、トナーコア粒子100質量部に対して、0.5質量部以上20質量部以下が好ましく、0.7質量部以上15質量部以下がより好ましい。
[外添剤]
本発明のトナーは、必要に応じてその表面に外添剤を付着させてもよい。なお、本出願の明細書、及び特許請求の範囲では、外添剤により処理される前の粒子を、トナー母粒子と記載する場合がある。
外添剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来からトナー用に使用されている外添剤から適宜選択できる。好適な外添剤の具体例としては、シリカや、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムのような金属酸化物が挙げられる。これらの外添剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。また、これらの外添剤は、アミノシランカップリング剤やシリコーンオイルのような疎水化剤により疎水化して使用することもできる。疎水化された外添剤を用いる場合、高温高湿下でのトナーの帯電量の低下を抑制しやすく、流動性に優れるトナーを得やすい。
外添剤の粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、典型的には0.01μm以上1.0μm以下が好ましい。
外添剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。外添剤の使用量は、典型的には、トナー母粒子100質量部に対して1質量部以上10質量部以下が好ましく、2質量部以上5質量部以下がより好ましい。
[キャリア]
本発明の方法により得られる静電潜像現像用トナーは、所望のキャリアと混合して2成分現像剤として使用することもできる。2成分現像剤を調製する場合、磁性キャリアを用いるのが好ましい。
好適なキャリアとしては、キャリア芯材が樹脂により被覆されたものが挙げられる。キャリア芯材としては、具体的に、例えば、鉄、酸化処理鉄、還元鉄、マグネタイト、銅、ケイ素鋼、フェライト、ニッケル、及びコバルトのような金属の粒子や、これらの材料と、マンガン、亜鉛、及びアルミニウムのような金属との合金の粒子、鉄−ニッケル合金、鉄−コバルト合金のような鉄合金の粒子、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、及びニオブ酸リチウムのようなセラミックスの粒子、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、及びロッシェル塩のような高誘電率物質の粒子、並びに樹脂中に上記磁性粒子を分散させた樹脂キャリアが挙げられる。
キャリア芯材を被覆する樹脂としては、具体的に、例えば、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体、オレフィン系重合体(例えば、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン)、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、アミノ樹脂が挙げられる。これらの樹脂は2種以上を組み合わせて使用できる。
キャリアの粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、電子顕微鏡により測定される粒子径で、20μm以上120μm以下が好ましく、25μm以上80μm以下がより好ましい。
本発明の静電潜像現像用トナーを2成分現像剤として用いる場合、トナーの含有量は、2成分現像剤の質量に対して、3質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下が好ましい。2成分現像剤中のトナーの含有量をこのような範囲とすることにより、形成画像の画像濃度を適度な水準に維持しやすく、現像部からのトナー飛散の抑制によって画像形成装置内部の汚染や転写紙のような被記録媒体へのトナーの付着を抑制できる。
[静電潜像現像用トナーの製造方法]
本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法は、特に限定されない。以下、本発明の静電潜像現像用トナーの好適な製造方法に関して、トナーコア粒子の製造方法と、シェル層の形成方法とについて順に説明する。
〔トナーコア粒子の製造方法〕
本発明のトナーのトナーコア粒子の製造方法としては、結着樹脂中に、着色剤、電荷制御剤、離型剤、磁性粉のような成分を良好に分散させることができれば特に限定されず、公知の方法から適宜選択できる。
トナーコア粒子の好適な製造方法としては、トナーコア粒子の必須成分である結着樹脂と、着色剤、電荷制御剤、離型剤、磁性粉のような任意成分とを混合機により混合した後、溶融混練し、得られた混練物を粉砕・分級する方法が挙げられる。トナーコア粒子の製造に用いる溶融混練装置は特に限定されず、熱可塑性樹脂の溶融混練に使用される装置から適宜選択できる。溶融混練装置の具体例としては、一軸又は二軸の押出機が挙げられる。
〔シェル層の形成方法〕
トナーコア粒子を被覆するシェル層を形成する方法は、メラミン樹脂、及び尿素樹脂から選択される樹脂によりトナーコア粒子が被覆され、R、R、及びRが、何れも、トナー粒子100個に対して、20個数%以下であるトナーが得られる限り特に限定されない。
シェル層によるトナーコア粒子の被覆は、水、メタノール、又はエタノールのように、メラミン、又は尿素や、これらとホルムアルデヒドとの付加反応によって生成される前駆体(メチロール化物)を溶解することができる溶媒中で行うのが好ましい。
水、メタノール、又はエタノールのような溶媒中でシェル層を形成する場合、トナーコア粒子表面をシェル層により均一に被覆するために、トナーコア粒子をシェル層の形成に用いる溶媒中に分散させるのが好ましい。トナーコア粒子を、シェル層の形成に用いる溶媒中に分散させる方法は、トナーコア粒子をシェル層の形成に用いる溶媒中に高度に分散させることができる限り特に限定されない。トナーコア粒子の分散液を得る際には、シェル層の形成に用いる溶媒中に、トナーコア粒子を高度に分散させやすいことから、ハイビスミックス(プライミックス株式会製)のような、分散液を強力に撹拌できる装置を用いるのが好ましい。
また、シェル層の形成に用いる溶媒には、トナーコア粒子を分散させるための分散剤を含有させることができる。シェル層の形成に用いる溶媒に分散剤を含有させる場合、トナーコア粒子を、シェル層の形成に用いる溶媒中に、安定して分散させることができる。
分散剤の種類は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリパラビニルフェノール、部分鹸化ポリ酢酸ビニル、イソプレンスルホン酸、ポリエーテル、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリアスパラギン酸ナトリウム、デンプン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン及びリグニンスルホン酸ナトリウムのような化合物を用いることができる。これらの分散剤は、1種を用いても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
分散剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。典型的には、分散剤の使用量は、トナーコア粒子100質量部に対して75質量部以下が好ましい。
上記の通り、シェル層を形成する際に分散剤を用いてトナーコア粒子を分散させる場合、トナーコア粒子がシェル層の形成に用いる溶媒中で高度に分散されるため、トナーコア粒子をシェル層により均一に被覆しやすい。その一方で、分散剤を用いてトナーコア粒子を分散させると、トナーコア粒子の表面に分散剤が付着するため、トナーコア粒子とシェル層との界面に分散剤が存在する状態でシェル層が形成される。そうすると、シェル層とトナーコア粒子との界面に存在する分散剤の影響により、シェル層のトナーコア粒子への付着力が弱くなり、トナーに加わる機械的ストレスにより、トナーコア粒子からシェル層が剥がれやすくなる。
このため、分散剤を用いてシェル層の形成に用いる溶媒中にトナーコア粒子を分散させる場合には、シェル層を形成する前に、トナーコア粒子の表面に付着する分散剤を除去する必要がある。トナーコア粒子の表面に付着する分散剤を除去する方法は、特に限定されない。好適な方法としては、シェル層の形成に使用できる溶媒により、分散剤が表面に付着しているトナーコア粒子を洗浄する方法が挙げられる。トナーコア粒子の洗浄は、トナーコア粒子の凝集を防ぐために、トナーコア粒子が乾燥しないような条件で行うのが好ましい。
トナーコア粒子に付着する分散剤を除去する際の洗浄回数は、所望の特性を備えるトナーが得られる限り特に限定されない。得られるトナーのR、R、及びRを測定し、これらの何れかが20個数%を超える場合、トナーコア粒子の洗浄回数を増やすか、トナーコア粒子の洗浄に用いる溶媒の量を増やせばよい。
トナーコア粒子をシェル層の形成に用いる溶媒に分散させた分散液は、シェル層の形成前に酸性物質によりpHを4程度に調整されるのが好ましい。分散液のpHを酸性側に調整することで、後述するシェル層を形成させるために用いられる材料の重縮合反応が促進される。
必要に応じてpH調整されたトナーコア粒子の分散液に、シェル層を形成させるための材料を溶解させた後、分散液中の、シェル層を形成させるための材料を反応させて、トナーコア粒子の表面を被覆するシェル層を形成する。シェル層を形成するための材料としては、メラミン及びホルムアルデヒド、尿素及びホルムアルデヒド、メラミンとホルムアルデヒドとの付加反応によって生成される前駆体(メチロール化物)、及び尿素とホルムアルデヒドとの付加反応によって生成される前駆体(メチロール化物)が挙げられる。
メラミン樹脂又は尿素樹脂からなるシェル層を形成する際の温度は、特に限定されないが、40℃以上80℃以下が好ましく、55℃以上70℃以下がより好ましい。このような範囲の温度下でシェル層を形成することにより、トナーコア粒子表面を被覆するシェル層の形成が良好に進行する。また、このような範囲の温度下でシェル層を形成することにより、トナーコア粒子の表面に露出する水酸基又はカルボキシル基と、シェル層を形成するための材料に含まれるメチロール基との反応により、トナーコア粒子を構成する水酸基及びカルボキシル基から選択される基を有する樹脂とシェル層を構成するメラミン樹脂、及び尿素樹脂から選択される樹脂との間に共有結合が形成されやすい。トナーコア粒子とシェル層とが共有結合することで、トナーコア粒子にシェル層を強固に付着させることができる。
加熱により、分散液中のメラミン又は尿素のメチロール化物が全て反応した後、分散液を常温まで冷却してトナー粒子の分散液を得ることができる。その後、必要に応じて、トナーを洗浄する洗浄工程、トナーを乾燥する乾燥工程、及び、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させる外添工程から選択される1以上の工程を経て、トナー粒子の分散液からトナーが回収される。以下、洗浄工程、乾燥工程、及び外添工程について説明する。
(洗浄工程)
トナー粒子は、必要に応じて、水により洗浄される。洗浄方法は特に限定されず、例えば、トナー粒子を含む分散液から、固液分離によりトナー粒子をウエットケーキとして回収し、得られるウエットケーキを水により洗浄する方法や、トナー粒子を含む分散液中のトナー粒子を沈降させ、上澄み液を水と置換し、置換後にトナー粒子を水に再分散させる方法が挙げられる。
(乾燥工程)
トナー粒子は、必要に応じて乾燥されてもよい。トナー粒子を乾燥する方法は特に限定されない。好適な乾燥方法としては、スプレードライヤー、流動層乾燥機、真空凍結乾燥器、及び減圧乾燥機のような乾燥機を用いる方法が挙げられる。これらの方法の中では、乾燥中のトナー粒子の凝集を抑制しやすいことからスプレードライヤーを用いる方法がより好ましい。スプレードライヤーを用いる場合、トナー粒子の分散液と共に、シリカのような外添剤の分散液を噴霧することによって、トナー粒子の表面に外添剤を付着させることができる。
(外添工程)
本発明の方法により製造される静電潜像現像用トナーは、必要に応じてその表面に外添剤が付着したものであってもよい。上記方法により得られたトナー粒子をトナー母粒子として用いて、トナー母粒子の表面に、外添剤を付着させる。外添剤をトナー母粒子の表面に付着させる方法は特に限定されない。好適な方法としては、外添剤がトナー母粒子表面に埋没しないように条件を調整して、ヘンシェルミキサーやナウターミキサーのような混合機により、トナー母粒子と外添剤とを混合する方法が挙げられる。
以上説明した本発明の静電潜像現像用トナーは、耐熱保存性、及び低温定着性に優れ、トナーを良好に帯電させることができ、逆帯電トナーの発生を抑制することにより現像部からトナーが飛散することを抑制できる。このため、本発明の静電潜像現像用トナーは、種々の画像形成装置で好適に使用できる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
[調製例1]
(結着樹脂Aの調製)
結着樹脂Aの調製に用いた、低粘度ポリエステル樹脂、中粘度ポリエステル樹脂、及び高粘度ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)及び融点(Tm)を表1に記す。
表1に記載の量の低粘度ポリエステル樹脂と、中粘度ポリエステル樹脂と、高粘度ポリエステル樹脂とを、二軸押出機(PCM−30(株式会社池貝製))により溶融混練した後に粗粉砕して、結着樹脂Aを得た。結着樹脂Aのガラス転移点(Tg)及び融点(Tm)を表1に記す。結着樹脂Aのガラス転移点(Tg)及び融点(Tm)は、前述の結着樹脂のガラス転移点測定方法及び融点測定方法により測定した。
Figure 2014048341
[調製例2]
(トナーコア粒子A〜Cの調製)
結着樹脂として、調製例1で得た混合ポリエステル樹脂である結着樹脂Aと、スチレンアクリル樹脂(Tg:43℃、Tm:103℃、アクリル酸モノマー5モル%共重合品)である結着樹脂Bとを用いた。
表2に記載の種類の結着樹脂1000gと、離型剤(カルナバワックス、カルナバ1号(株式会社加藤洋行社製))55gと、着色剤(フタロシアニンブルー、KET BLUE 111(大日本インキ株式会社製))40gと、表2に記載の量の電化制御剤(P−51(オリヱント化学工業株式会社製))とをヘンシェルミキサー(日本コークス株式会社製)を用いて2400rpmで混合した。得られた混合物を、二軸押出機(PCM−30(株式会社池貝製))を用いて、材料投入量5kg/h、軸回転数160rpm、設定温度範囲100℃以上130℃以下で溶融混練した。得られた溶融混練物を冷却した後、溶融混練物をロートプレックスミル(8/16型(株式会社東亜器械製作所製))で粗粉砕した。次いで、粗粉砕品をジェットミル(超音波ジェットミルI型(日本ニューマチック工業株式会社製))で微粉砕し、得られた微粉砕品をエルボージェット(EJ−LABO型(日鉄工業株式会社製))で分級してトナーコア粒子を得た。
Figure 2014048341
[実施例1、2、4、5、及び7、並びに比較例1及び比較例3〜5]
〔分散工程〕
イオン交換水500mlと、表3〜5に記載の種類、及び量の分散剤とを混合装置(マグネチックスターラーRS−1DN(アズワン株式会社製))を用いて混合して、分散剤の水溶液を得た。分散剤の水溶液に、表3〜5に記載の種類のトナーコア粒子100gを加え、分散剤の水溶液中のトナーコア粒子を、常温にて20分間撹拌して、トナーコア粒子の分散液(I)を調製した。
なお、下記の市販品を表3〜5に記載の分散剤として用いた。
ポリアクリル酸ナトリウム:ジュリマーAC−103(東亜合成株式会社製)
部分鹸化ポリ酢酸ビニル:ゴーセノールGM−14L(日本合成化学工業株式会社製)
ポリパラビニルフェノール:マルカリンカーM S−2(丸善石油化学株式会社製)
〔第1洗浄工程〕
目開き3μmのろ紙を用いて、分散液(I)からトナーコア粒子をろ取した。次いで、ろ取されたトナーコア粒子が乾燥する前に、再度、トナーコア粒子をイオン交換水500mlに投入し、混合装置を用いて、トナーコア粒子をイオン交換水中に再分散させた。このトナーコア粒子のろ取と、最分散との工程を、表3〜5に記載の回数繰り返して、イオン交換水500mlに分散されたトナーコア粒子の分散液(II)を調製した。
〔シェル形成工程〕
分散液(II)に、表3〜5に記載の種類、及び量のシェル材の原料を加えた後、分散液(II)を、混合装置を用いて撹拌して、シェル材の原料をイオン交換水に溶解させた次いで、0.05N−希塩酸を用いて分散液のpHを4に調整した後、分散液(II)を、温度計及び撹拌羽根を備えた1リットルのセパラブルフラスコに移した。フラスコの内容物を70℃まで昇温した後、同温度にて、フラスコの内容物を撹拌羽根により、回転数120rpmで1時間撹拌して、トナーコア粒子表面にシェル層を形成させた。その後、フラスコの内容物を、常温まで冷却して、トナー粒子の分散液を得た。
なお、下記の市販品を表3〜5に記載のシェル材の原料として用いた。
メチロール化尿素:ミルベンSUM−100(昭和電工株式会社製)
メチロールメラミン:ニカレジンS−260(日本カーバイド工業株式会社製)
〔第2洗浄工程〕
ブフナーロートを用いて、トナー分散液からトナーのウエットケーキをろ取した。トナーのウエットケーキを再度イオン交換水に分散させてトナーを洗浄した。トナーのイオン交換水による同様の洗浄を6回繰り返した。
〔乾燥工程〕
トナーのウエットケーキを、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させてスラリーを調製した。得られたスラリーを連続式表面改質装置(コートマイザー(フロイント産業株式会社製))に供給することにより、スラリー中のトナー粒子を乾燥させて、トナーを得た。コートマイザーによる乾燥条件は、熱風温度45℃、ブロアー風量2m/分であった。
〔外添工程〕
乾燥工程にて得られたトナーをトナー母粒子として用いた。トナー母粒子100質量部と、シリカ(REA90(日本アエロジル株式会社製))1.5質量部とを、5Lヘンシェルミキサー(三井三池工業株式会社製)を用いて、5分間混合して外添剤を付着させた。その後、300メッシュ(目開き48μm)の篩によりトナーを篩別した。
[実施例3]
エタノール100gと、0.05N−希塩酸50gと、表3〜5に記載の種類のトナーコア粒子100gとを、撹拌装置、温度計、及び還流装置を備えた容量1リットルのセパラブルフラスコに投入した。フラスコの内容物を撹拌した後、フラスコ内に、シェル材の原料であるメチロールメラミン(ニカレジンS−260(日本カーバイド工業株式会社製))1gを加えた。フラスコの内容物を撹拌してシェル材の原料をエタノール中に溶解させた。次いで、フラスコ内容物の温度を60℃まで上げ、同温度にて、フラスコ内容物を4時間撹拌して、トナーコア粒子表面にシェル層を形成させた。フラスコの内容物を、常温まで冷却して、トナー粒子の分散液を得た。
その後は、実施例1と同様にして、第2洗浄工程、乾燥工程、及び外添工程を行い、実施例3のトナーを得た。
[実施例6]
表4に記載の種類のトナーコア粒子100gと、シェル材の原料であるメチロールメラミン(ミルベンKAM−7(昭和電工株式会社製))10gと、0.05N−希塩酸でpHを4に調整されたイオン交換水200gとを、ハイビスミックス(2P−03型(プライミックス株式会社製))に投入し、公転30rpm、自転100rpmの混合条件にて2時間撹拌して混合物を得た。得られた混合物を、温度計及び撹拌羽根を備えた1リットルのセパラブルフラスコに移した。次いで、フラスコ内容物の温度を70℃まで上げ、同温度にて、フラスコ内容物を回転数120rpmで1時間撹拌して、コア粒子表面にシェル層を形成させた。フラスコの内容物を、常温まで冷却して、トナー粒子の分散液を得た。
その後は、実施例1と同様にして、第2洗浄工程、乾燥工程、及び外添工程を行い、実施例6のトナーを得た。
[比較例2]
トナーコア粒子Bをトナー母粒子として用い、実施例1と同様にして、外添工程を行い、比較例2のトナーを得た。なお、比較例2のトナーについて、外添工程でトナー粒子同士の凝集が確認されたため、下記の露出部存在比R、R、及びRが0.20以上であるトナー粒子の割合の測定、及び評価1、2は行わなかった。
Figure 2014048341
Figure 2014048341
Figure 2014048341
実施例1〜7、及び比較例1、3〜5で得られたトナーについて、以下の方法に従って、R、R、及びRを測定した。実施例1〜7、及び比較例1〜6のトナーの耐熱保存性の評価結果を、表6及び7に記す。なお、比較例2、及び3については、トナーにシェル層が形成されていないため、R、R、及びRの測定は行わなかった。
<R、R、及びRの測定方法>
1)光硬化性樹脂1.0g中にトナー0.3gを分散させたトナー含有樹脂組成物に紫外線を照射して、トナー含有樹脂組成物を硬化させて硬化樹脂組成物を得た。
2)得られた硬化樹脂組成物を、研磨機(ドクターラップML−180SL(株式会社マルトー製))に装着して、#220、#800、#2000の研磨紙をこの順番で用いて硬化樹脂組成物の表面を研磨し、硬化樹脂組成物の表面にトナー粒子の断面を露出させた。
3)研磨された硬化樹脂組成物を58℃まで昇温させ、同温度で12時間加熱した。
4)加熱後の硬化樹脂組成物を、水、メタノール、又はエタノールにそれぞれ浸漬し、硬化樹脂組成物が浸漬された水、メタノール、又はエタノールに、超音波洗浄機(UT−105S(シャープ株式会社製)を用いて、周波数30kHz、出力80Wという条件で5分間超音波を、それぞれ照射した。
5)超音波照射後に、水、メタノール、又はエタノールから取り出した硬化樹脂組成物を乾燥させた。
6)乾燥後の硬化樹脂組成物の研磨された表面を、走査型電子顕微鏡(JSM−7600F(日本電子株式会社製))により倍率10,000倍で観察し、100個のトナー粒子の断面の電子顕微鏡画像を得た。
7)画像解析ソフトフェア(WinROOF(三谷商事株式会社製))を用いて、得られた電子顕微鏡画像から、100個のトナー粒子それぞれについて、トナー粒子の断面の周囲の長さである周囲長(X)と、トナー粒子の断面の周囲のうち、シェル層により被覆されていない部分の長さである露出部長(Y)とを測定し、下式:
露出部存在比=(Y/X)・・・・(I)
により、トナー粒子の露出部存在比を算出した。
8)トナー粒子100個に対する、露出部存在比が0.20以上であるトナー粒子数の割合を算出した。
上記測定方法によって、実施例1、2、4、5、7、及び比較例1、3〜5のトナーについて、図1(a)に示すようなトナーの断面の電子顕微鏡画像を確認することができた。また、実施例3、及び6のトナーについては、図1(c)に示すようなトナーの断面の電子顕微鏡画像を確認することができた。
≪評価1≫
実施例1〜7、比較例1、及び比較例3〜5で得られたトナーについて、以下の方法に従って、耐熱保存性を評価した。実施例1〜7、比較例1、及び比較例3〜5のトナーの耐熱保存性の評価結果を、表6及び7に記す。
<耐熱保存性評価>
トナー3gを、容量20mlのポリ容器に秤量し、60℃に設定された恒温器内に3時間静置することで、耐熱保存性評価用のトナーを得た。その後、耐熱保存性評価用のトナーを、篩(目開き106μm)を用いて篩別した。下式によりトナー残留割合(%)を求めた。
(トナー残留割合算出式)
トナー残留割合(%)=篩上に残留したトナーの質量/篩別前のトナーの質量×100
耐熱保存性を、下記基準により評価した。
○:トナー残留割合50質量%以下
×:トナー残留割合50質量%超
≪評価2≫
実施例1〜7、比較例1、及び比較例3〜5で得られたトナーを用いて、以下の方法に従って、帯電量、及び低温定着性を評価した。また、下記方法に従って、印字率5%にて1万枚の被記録媒体に画像形成する耐久性試験を行い、耐久性試験後の、耐久試験中に現像部から飛散した飛散トナー量と、トナーの帯電量、及び逆帯電トナー量とを評価した。なお、帯電量、及び低温定着性の評価と、耐久性試験後の、飛散トナー量、トナーの帯電量、及び逆帯電トナー量の評価とは、以下の方法に従って調製した2成分現像剤を用いて行った。実施例1〜7、比較例1、及び比較例3〜5のトナーの評価結果を、表6及び7に記す。
[調製例3]
(2成分現像剤の調製)
現像剤用キャリア(TASKalfa5550用キャリア)と、キャリアの質量に対して10質量%のトナーとを、ボールミルにて30分間混合して2成分現像剤を調製した。
<トナーの帯電量評価>
20℃60%RHにて、調製例3で調製した2成分現像剤のトナーの帯電量を測定した。次いで、調製例3で調製した2成分現像剤を、28℃80%RHにて、24時間静置した後にトナーの帯電量を測定した。帯電量の測定はQMメーター(MODEL 210HS−1(TREK社製))を用いて行った。帯電量を、下記基準により評価した。
○:帯電量が20.0μC/g以上。
×:帯電量が20.0μC/g未満。
<低温定着性評価>
評価機として、定着温度を調節できるように改造したプリンター(FDC−5250DN(京セラドキュメントショリューションズ株式会社製))を用いた。調製例3で調製した2成分現像剤を評価機の現像部に投入し、トナーを評価機のトナーコンテナに投入して、評価機により、線速158mm/秒、トナー載り量1.5mg/cmに設定して、被記録媒体に未定着のベタ画像を形成した。定着温度を80℃以上160℃以下の範囲で、評価機の定着装置の定着温度を80℃から5℃ずつ上昇させて、未定着のベタ画像を定着させて、ベタ画像がオフセットすることなく被記録媒体に定着できる最低温度である最低定着温度を測定した。低温定着性を、下記基準により評価した。
○:最低定着温度が120℃以下。
×:最低定着温度が120℃超。
<耐久性試験>
評価機として、複合機(TASKalfa5550(京セラドキュメントショリューションズ株式会社製))を用いた。被記録媒体には、普通紙を用いた。調製例3で調製した2成分現像剤を評価機の現像部に投入し、トナーを評価機のトナーコンテナに投入し、28℃80%RH環境下にて、評価機を用いて印字率5%で、連続して1万枚の被記録媒体に画像形成を行った。なお、比較例1のトナーについては、800枚の画像形成後に、非記録媒体の形成画像中に白筋が確認され、現像部内ではトナー同士の凝集が確認されたため、耐久試験を中断した。
(飛散トナー量評価)
耐久性試験後に、評価機内部に落下しているトナーを回収し、その質量を測定した。飛散トナー量を、下記基準により評価した。
○:飛散トナー量が200mg以下。
×:飛散トナー量が200mg超。
(トナーの帯電量評価)
耐久性試験後に現像スリーブ表面から採取したトナーの帯電量を、QMメータ(TREK社製、MODEL 210HS−1)を用いて測定した。帯電量を、下記基準により評価した。
○:帯電量が8μC/g以上、25μC/g以下。
×:帯電量が8μC/g未満、又は25μC/g超。
(逆帯電トナー量評価)
耐久性試験後に現像ローラー表面から採取したトナーをイースパートアナライザ(EST−III型(ホソカワミクロン株式会社製))に投入して、トナー中の逆帯電トナー量(質量%)を測定した。
○:逆帯電トナー量が2質量%以下。
×:逆帯電トナー量が2質量%超。
Figure 2014048341
Figure 2014048341
実施例1〜7によれば、少なくとも、結着樹脂を含むトナーコア粒子と、トナーコア粒子を被覆するシェル層と、からなる静電潜像現像用トナーについて、水酸基及びカルボキシル基から選択される基を有する樹脂を含む結着樹脂を用い、シェル層の材質として、メラミン樹脂及び尿素樹脂から選択される樹脂を用い、R、R、及びRが、何れもトナー粒子100個に対して、20個数%以下となるようにシェル層を形成すれば、耐熱保存性、及び低温定着性に優れ、トナーを良好に帯電させることができ、逆帯電トナーの発生を抑制することにより現像部からトナーが飛散することを抑制できるトナーが得られることが分かる。
実施例1と実施例2との比較によれば、分散剤を用いて分散されたトナーコア粒子の洗浄回数が多い実施例1のトナーは、実施例2のトナーよりも、R、R、及びRの値が、何れも小さいことが分かる。これは、トナーコア粒子の表面に残存する分散剤の残存量が少ないために、実施例1のトナーのほうが、トナーコア粒子とシェル層との間に共有結合が形成されやすいためと考えられる。
比較例1によれば、R、R、及びRが、何れもトナー粒子100個に対して、20個数%を超える場合、トナーを良好に帯電させることができ、逆帯電トナーの発生を抑制することによりトナー飛散の発生を抑制できるトナーを得にくいことが分かる。
比較例3によれば、Rが、トナー粒子100個に対して、20個数%を超える場合、耐熱保存性に優れ、トナーを良好に帯電させることができ、逆帯電トナーの発生を抑制することによりトナー飛散の発生を抑制できるトナーを得にくいことが分かる。
比較例4及び5によれば、R又はRが、トナー粒子100個に対して、20個数%を超える場合、トナーを良好に帯電させることができ、逆帯電トナーの発生を抑制することによりトナー飛散の発生を抑制できるトナーを得にくいことが分かる。

Claims (2)

  1. 少なくとも結着樹脂を含むトナーコア粒子と、
    前記トナーコア粒子を被覆するシェル層と、からなる静電潜像現像用トナーであって、
    前記結着樹脂が、水酸基、及びカルボキシル基から選択される基を有する樹脂からなり、
    前記シェル層が、メラミン樹脂、及び尿素樹脂から選択される樹脂からなり、
    下記1)〜8)の工程により測定される、
    水を用いて測定される露出部存在比が0.20以上であるトナー粒子の割合R(個数%)、
    メタノールを用いて測定される露出部存在比が0.20以上であるトナー粒子の割合R(個数%)、及び、
    エタノールを用いて測定される露出部存在比が0.20以上であるトナー粒子の割合R(個数%)、
    が、何れも、トナー粒子100個に対して、20個数%以下である、静電潜像現像用トナー。
    1)光硬化性樹脂1.0g中にトナー0.3gを分散させたトナー含有樹脂組成物に紫外線を照射して、前記トナー含有樹脂組成物を硬化させて硬化樹脂組成物を得る工程、
    2)得られた前記硬化樹脂組成物の表面を研磨して、前記硬化樹脂組成物の表面にトナー粒子の断面を露出させる工程、
    3)研磨された前記硬化樹脂組成物を58℃まで昇温させ、同温度で12時間加熱する工程、
    4)加熱後の前記硬化樹脂組成物を、水、メタノール、又はエタノールに浸漬し、前記硬化樹脂組成物が浸漬された水、メタノール、又はエタノールに、周波数35kHz、出力80Wで5分間超音波を照射する工程、
    5)超音波照射後に、水、メタノール、又はエタノールから取り出した硬化樹脂組成物を乾燥する工程、
    6)乾燥後の硬化樹脂組成物の研磨された表面を、走査型電子顕微鏡により倍率10,000倍で観察し、100個のトナー粒子の断面の電子顕微鏡画像を得る工程、
    7)得られた電子顕微鏡画像から、100個のトナー粒子それぞれについて、前記トナー粒子の断面の周囲の長さである周囲長(X)と、前記トナー粒子の断面の周囲のうち、シェル層により被覆されていない部分の長さである露出部長(Y)とを測定し、下式:
    露出部存在比=(Y/X)・・・・(I)
    により、前記トナー粒子の露出部存在比を算出する工程、及び
    8)前記トナー粒子100個に対する、露出部存在比が0.20以上であるトナー粒子数の割合を算出する工程。
  2. 正帯電性である、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
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