JP6460041B2 - 静電潜像現像用トナーの製造方法 - Google Patents
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Description
次に、本実施形態の製造方法により製造されるトナーについて説明する。本実施形態の製造方法により製造されるトナーは、トナー粒子を複数含む。トナーは、複数のトナー粒子の集合体(粉体)である。
後述する曝露工程後のトナー粒子を容積絶対湿度が10.27g/m3である環境に24時間置いたときのトナー粒子のBET比表面積(AN)は、1.30m2/g以上3.00m2/g以下である。トナー粒子のBET比表面積(AN)が1.30m2/g以上であると、形成される画像の画像濃度が向上する傾向がある。BET比表面積(AN)が3.00m2/g以下であると、トナーの帯電安定性が向上する傾向がある。
r=6.11×10^((7.5×p)/(237.3+p)) ・・・(2)
s=r×(q/100) ・・・(3)
y=s×100×18/(8.314×(273.15+p)) ・・・(4)
y:トナー粒子が置かれる環境の容積絶対湿度(単位:g/m3)
p:トナー粒子が置かれる環境の温度(単位:℃)
q:トナー粒子が置かれる環境の相対湿度(単位:%RH)
r:トナー粒子が置かれる環境の飽和水蒸気圧(単位:hPa)
s:トナー粒子が置かれる環境の水蒸気圧(単位:hPa)
トナー母粒子は、トナーコアと、トナーコアの表面に備えられるシェル層とを有する。まず、トナーコアに含有される樹脂及びシェル層に含有される樹脂の好適な例を説明する。
トナーコアに含有される樹脂及びシェル層に含有される樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂(より具体的には、アクリル酸エステル重合体又はメタクリル酸エステル重合体等)、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂等)、ビニル樹脂(より具体的には、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂又はN−ビニル樹脂等)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン−アクリル酸系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂又はウレタン樹脂が挙げられる。
トナーコアは、例えば、結着樹脂、着色剤、離型剤、電荷制御剤及び磁性粉のうちの1種以上を含有してもよい。ただし、トナーの用途に応じて必要のない成分を割愛してもよい。
トナーコアは結着樹脂を含有してもよい。着色剤の分散性及び記録媒体(例えば、紙)に対するトナーの低温定着性を向上させるためには、結着樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂がより好ましい。
トナーコアは着色剤を含有してもよい。着色剤には、トナーの色に合わせて、公知の顔料又は染料が用いられる。着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
トナーコアは離型剤を含有してもよい。離型剤は、例えばトナーの定着性及び耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーの定着性及び耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
トナーコアは、電荷制御剤を含有していてもよい。電荷制御剤は、例えば、トナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。トナーコアに負帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナーコアのアニオン性を強めることができる。また、トナーコアに正帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナーコアのカチオン性を強めることができる。ただし、トナーにおいて十分な帯電性が確保される場合には、トナーコアに電荷制御剤を含有させる必要はない。
トナーコアは、磁性粉を含有していてもよい。磁性粉としては、例えば、鉄(より具体的には、フェライト又はマグネタイト等)、強磁性金属(より具体的には、コバルト又はニッケル等)、鉄及び/又は強磁性金属を含む合金、強磁性化処理(より具体的には、熱処理等)が施された強磁性合金又は二酸化クロムを好適に使用できる。1種類の磁性粉を単独で使用してもよいし、複数種の磁性粉を併用してもよい。
トナーコアの表面にはシェル層が備えられる。後述するトナー粒子形成工程で外添剤粒子を付着させる前のトナー母粒子において、トナーコアの表面全域のうちシェル層が備えられるトナーコアの表面領域の面積割合(以下、シェル被覆率と記載することがある)は、60%以上80%以下である。シェル被覆率が60%以上であると、トナーの帯電量が低くなり過ぎず、トナーの帯電量を所望の値に調整し易くなる。シェル被覆率が60%以上であると、トナーの耐熱保存性を向上させることもできる。シェル被覆率が80%以下であると、トナーの帯電量が高くなり過ぎず、トナーの帯電量を所望の値に調整し易くなる。シェル被覆率が80%以下であると、トナーの帯電量分布が狭くなる傾向もある。
外添剤粒子の例としては、シリカ粒子又は金属酸化物(より具体的には、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム又はチタン酸バリウム)の粒子が挙げられる。外添剤粒子は1種を単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。外添剤粒子の数平均粒子径は、1nm以上1μm以下であることが好ましく、1nm以上50nm以下であることがより好ましい。
トナーは、所望のキャリアと混合して二成分現像剤として使用されてもよい。二成分現像剤を調製する場合、磁性キャリアを用いることが好ましい。キャリアとして、樹脂により被覆されたキャリアコアを使用してもよい。また、キャリアとして、樹脂中にキャリアコアを分散させた樹脂キャリアを用いてもよい。
本実施形態の製造方法は、トナー粒子形成工程(外添工程)と曝露工程とを含む。本実施形態の製造方法は、必要に応じて、トナーコア形成工程及びシェル層形成工程を更に含んでいてもよい。
トナーコアの製造方法の例としては、凝集法又は粉砕法が挙げられる。凝集法は、粉砕法よりも、円形度の高いトナー母粒子を製造し易い。また、凝集法は、均一な形状及び粒子径を有するトナー母粒子を製造し易い。一方、粉砕法は、凝集法よりも簡単にトナー母粒子を製造できる。
以下、粉砕法の一例を説明する。先ず、結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、離型剤及び磁性粉の1種以上を混合する。続けて、得られた混合物を溶融し混練する。続けて、得られた混練物を粉砕し分級する。その結果、所望の粒子径を有するトナーコアが得られる。
以下、凝集法の一例を説明する。先ず、結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、離型剤及び磁性粉の各々の微粒子を水性媒体中で凝集させて、凝集粒子を得る。続けて、得られた凝集粒子を加熱して、凝集粒子に含まれる成分を合一化させる。その結果、トナー母粒子を含む水性分散液が得られる。その後、トナーコアの分散液から、不要な物質(界面活性剤等)を除去することで、トナーコアが得られる。
シェル層形成工程では、液中でトナーコアとシェル層を形成するための材料(以下、シェル材料と記載することがある)とを混合して、トナーコアの表面にシェル層を形成する。
トナー粒子形成工程では、外添剤粒子の複数をトナー母粒子の表面に付着させてトナー粒子を形成する。トナー粒子形成工程は、いわゆる外添工程に相当する。外添剤を付着させる方法の例としては、外添剤がトナー母粒子の表面に埋没しないような条件で、混合機(例えば、FMミキサー又はナウターミキサー(登録商標))を用いて、トナー母粒子と外添剤とを混合する方法が挙げられる。
曝露工程では、トナー粒子を温度30℃以上且つ相対湿度55%RH以上の環境に曝露する。曝露工程は、トナー粒子形成工程と同時に又はトナー粒子形成工程の後に行われる。曝露工程で所定の高温高湿環境に曝露することにより、トナーコアの未被覆領域からトナーコア成分の一部が溶出すると考えられる。これにより、既に述べたように、環境が変動した場合であってもトナー粒子の表面形状の変化を小さくすることができる。その結果、環境が変動した場合であっても、耐熱保存性及び帯電安定性に優れ、高品質な画像を形成可能なトナーを製造することができると考えられる。また、曝露工程で所定の高温高湿環境に曝露することにより、トナー母粒子と外添剤とが強固に結合すると考えられる。曝露される環境が高温高湿であると、空気中の水分子の影響により、トナー母粒子が有する水酸基と外添剤粒子が有する基(例えばシラノール基)との間に水素結合が多く形成されると考えられる。その結果、トナー母粒子からの外添剤粒子の脱離を抑制できる傾向がある。
示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて、試料(例えば樹脂)の吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)を求めた。続けて、得られた吸熱曲線から試料のTg(ガラス転移点)を読み取った。得られた吸熱曲線中の比熱の変化点(ベースラインの外挿線と立ち下がりラインの外挿線との交点)の温度が、試料のTg(ガラス転移点)に相当する。
高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)に試料(例えば樹脂)をセットし、ダイス細孔径1mm、プランジャー荷重20kg/cm2、昇温速度6℃/分の条件で、1cm3の試料を溶融流出させて、試料のS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)を求めた。続けて、得られたS字カーブから試料のTmを読み取った。S字カーブにおいて、ストロークの最大値をS1とし、低温側のベースラインのストローク値をS2とすると、S字カーブ中のストロークの値が「(S1+S2)/2」となる温度が、試料のTm(軟化点)に相当する。
試料(例えば樹脂)のAV及びOHVは、JIS(日本工業規格)K0070−1992に準拠する方法で測定した。
試料(例えばトナーコア)の円形度は、フロー式粒子像分析装置(マルバーン社製「FPIA(登録商標)−3000」)を用いて測定した。
試料(例えばトナーコア)のD50は、精密粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製「コールターカウンターマルチサイザー3」)を用いて測定した。
透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製「JEM−2100F」)を用いて、試料(例えば樹脂粒子)を倍率30000倍で撮影した。そして、無作為に選択した100個の試料の画像を得た。続けて、得られた画像を、画像解析ソフトウェアを用いて解析して、100個の試料の各々について、粒子径を測定した。続けて、測定された全ての粒子径の和を、測定された試料の個数(100個)で除算した。これにより、試料の個数平均粒子径を得た。
以下の方法で、トナー(T1)〜(T8)を製造した。
(トナーコア形成工程)
まず、トナーコアの結着樹脂として使用するポリエステル樹脂を準備した。ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(詳しくは、ビスフェノールAを骨格にしてエチレンオキサイドを付加したアルコール)に、多官能基を有する酸(詳しくは、テレフタル酸)を反応させることにより、ポリエステル樹脂を合成した。得られたポリエステル樹脂の軟化点(Tm)は100℃であり、ガラス転移点(Tg)は48℃であり、水酸基価(OHV)20mgKOH/gであり、酸価(AV)は40mgKOH/gであった。
試料(トナーコア)0.2gと、イオン交換水80gと、濃度1質量%のノニオン界面活性剤(日本触媒株式会社製「K−85」、ポリビニルピロリドン)20gとを、マグネットスターラーを用いて混合した。続けて、液中に試料(トナーコア)を均一に分散させて、分散液を得た。続けて、得られた分散液に希塩酸を加えて、分散液のpHを4に調整し、pH4の分散液を得た。そして、ゼータ電位・粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製「Delsa Nano HC」)を用いて、電気泳動法(より詳しくは、レーザードップラー方式の電気泳動法)により、温度25℃かつpH4の分散液中の試料(トナーコア)のゼータ電位を測定した。
日本画像学会から提供される標準キャリアN−01(負帯電極性トナー用標準キャリア)100質量部と、試料(トナーコア)7質量部とを、混合機(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製「ターブラー(登録商標)ミキサーT2F」)を用いて、回転速度96rpmの条件で30分間混合した。続けて、得られた混合物における試料の摩擦帯電量を、Q/mメーター(トレック社製「MODEL 210HS−2A」)を用いて測定した。詳しくは、Q/mメーターの測定セルに混合物(標準キャリア及び試料)0.10gを投入し、投入された混合物のうち試料(トナーコア)のみを篩(金網)を介して10秒間吸引した。そして、式「吸引された試料の総電気量(単位:μC)/吸引された試料の質量(単位:g)」に基づいて、試料の帯電量(単位:μC/g)を算出した。
次に、サスペンションAを調製した。詳しくは、温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコをウォーターバスにセットした。フラスコ内に、イオン交換水875mLと、アニオン界面活性剤(花王株式会社製「ラテムル(登録商標)WX」、成分:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、固形分濃度:26質量%)75mLとを入れた。その後、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を80℃に昇温させた。続けて、80℃のフラスコ内容物に2種類の液(第1の液及び第2の液)をそれぞれ7時間かけて滴下した。第1の液は、スチレン14mLと、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)4mLと、アクリル酸ブチル2mLとの混合液であった。第2の液は、過硫酸カリウム0.5gをイオン交換水30mLに溶かした溶液であった。続けて、フラスコ内の温度を80℃に更に2時間保って、フラスコ内容物を重合させた。その結果、熱可塑性樹脂(詳しくは、スチレン−アクリル酸系樹脂)のサスペンションAが得られた。サスペンションAに含まれる樹脂粒子の個数平均粒子径は42nmであった。また、サスペンションAをテトラヒドロフラン(THF)に入れる試験を行った。この試験の結果、サスペンションAに含まれる樹脂粒子は膨潤したが溶解しなかった。このことから、サスペンションAに含まれる樹脂粒子は疎水性であることが確認された。
次に、サスペンションBを調製した。温度計、冷却管、窒素導入管及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコ内に、イソブタノール90gと、メタクリル酸メチル100gと、アクリル酸ブチル35gと、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド(Alfa Aesar社製)30gと、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロパンアミド)(重合開始剤、和光純薬工業株式会社製「VA−086」)6gとを入れた。続けて、窒素雰囲気、温度80℃の条件で、フラスコ内容物を3時間反応させた。その後、フラスコ内に2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロパンアミド)(和光純薬工業株式会社製「VA−086」)3gを加えて、窒素雰囲気、温度80℃の条件で、フラスコ内容物を更に3時間反応させて、重合体溶液を得た。続けて、得られた重合体溶液を、温度150℃の条件で減圧乾燥した。続けて、減圧乾燥した重合体を解砕し、樹脂Bを得た。
温度計及び攪拌羽根を備えた3つ口フラスコを準備した。フラスコ内に、イオン交換水2500mLと、ポリアクリル酸ナトリウム(東亞合成株式会社製「ジュリマー(登録商標)AC−103」)250gとを添加した。これにより、ポリアクリル酸ナトリウム水溶液を得た。ポリアクリル酸ナトリウム水溶液に、トナーコア(粉体)1000gを添加した。フラスコ内容物を室温(約25℃)で十分に攪拌した。これにより、トナーコアの分散液を得た。トナーコアの分散液を目開き3μmの濾紙を用いて濾過して、トナーコアを取り出した。続けて、取り出されたトナーコアを、イオン交換水に再分散させた。その後、濾過と再分散とを5回繰り返すことにより、トナーコアを洗浄した。そして、イオン交換水2500mLに対してトナーコア500gが分散した懸濁液をフラスコ内で調製した。
得られたトナー母粒子の分散液をろ過(固液分離)して、トナー母粒子を取り出した。その後、取り出された母粒子をイオン交換水に再分散させた。更に、分散とろ過とを繰り返して、トナー母粒子を洗浄した。続けて、真空攪拌乾燥機(大平洋機工株式会社製「アペックスミキサWB−5」)を用いて、減圧雰囲気(圧力3.5kPa)でトナー母粒子を乾燥した。
乾燥させたトナー母粒子100.0質量部と、外添剤粒子(疎水性シリカ粒子、日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)RA−200H」)1.2質量部とを、温度32℃且つ相対湿度80%RHの環境下で10分間、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて混合した。これにより、トナー粒子形成工程と、トナー粒子を温度32℃且つ相対湿度80%RHの環境に曝露する曝露工程とを同時に行った。その結果、トナー母粒子の表面に外添剤が付着(外添)した粉体が得られた。得られた粉体を、300メッシュ(目開き48μm)の篩を用いて篩別した。その結果、多数のトナー粒子を含むトナー(T1)が得られた。
以下の点を変更した以外は、トナー(T1)の製造方法と同様にして、トナー(T2)〜(T4)を製造した。トナー粒子形成及び曝露工程における外添剤粒子の添加量(含有量)を、トナー(T1)の製造における1.2質量部から、表1に示す添加量(1.8質量部、1.0質量部又は2.0質量部)に変更した。
以下の点を変更した以外は、トナー(T1)の製造方法と同様にして、トナー(T5)を製造した。トナー粒子形成及び曝露工程における環境を、トナー(T1)の製造における温度32℃且つ相対湿度80%RHの環境から、温度23℃且つ相対湿度50%RHの環境に変更した。
以下の点を変更した以外は、トナー(T1)の製造方法と同様にして、トナー(T6)を製造した。シェル層形成工程におけるサスペンションA及びBの添加量を、トナー(T1)の製造におけるサスペンションA(32.5g)及びサスペンションB(3.0g)から、サスペンションA(25.2g)及びサスペンションB(2.3g)に変更した。これによりシェル被覆率を、トナー(T1)の62%から、54%に変更した。
以下の点を変更した以外は、トナー(T1)の製造方法と同様にして、トナー(T7)を製造した。シェル層形成工程に関し、トナー(T1)の製造で添加したサスペンションA(32.5g)を、後述するサスペンションC(32.5g)に変更した。これによりシェル被覆率を、トナー(T1)の62%から、87%に変更した。
サスペンションCを調製した。詳しくは、温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコをウォーターバスにセットした。フラスコ内に、イオン交換水875mLと、アニオン界面活性剤(花王株式会社製「ラテムル(登録商標)WX」、成分:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、固形分濃度:26質量%)75mLとを入れた。その後、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を80℃に昇温させた。続けて、80℃のフラスコ内容物に2種類の液(第1の液及び第2の液)をそれぞれ5時間かけて滴下した。第1の液は、スチレン14mLと、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)4mLと、アクリル酸ブチル2mLとの混合液であった。第2の液は、過硫酸カリウム0.5gをイオン交換水30mLに溶かした溶液であった。続けて、フラスコ内の温度を80℃に更に2時間保って、フラスコ内容物を重合させた。その結果、熱可塑性樹脂(詳しくは、スチレン−アクリル酸系樹脂)のサスペンションCが得られた。サスペンションCに含まれる樹脂粒子の個数平均粒子径は35nmであった。また、サスペンションCをテトラヒドロフラン(THF)に入れる試験を行った。この試験の結果、サスペンションAに含まれる樹脂粒子は膨潤したが溶解しなかった。このことから、サスペンションCに含まれる樹脂粒子は疎水性であることが確認された。
トナー粒子形成及び曝露工程を以下のように変更した以外は、トナー(T1)の製造方法と同様にして、トナー(T8)を製造した。
乾燥させたトナー母粒子100.0質量部と、外添剤粒子(疎水性シリカ粒子、日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)RA−200H」)1.2質量部とを、温度23℃且つ相対湿度50%RHの環境下で10分間、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて混合した。これにより、トナー粒子形成工程(外添工程)を行った。その結果、トナー母粒子の表面に外添剤が付着(外添)した粉体が得られた。得られた粉体を、300メッシュ(目開き48μm)の篩を用いて篩別した。トナー粒子形成工程の後に曝露工程を行った。詳しくは、得られた粉体(トナー粒子)を、温度32℃且つ相対湿度80%RHの環境に24時間静置した。その結果、多数のトナー粒子を含むトナー(T8)が得られた。
トナー(T1)〜(T8)のシェル被覆率の測定結果を、表1に示す。シェル被覆率の測定は、トナー母粒子形成後、トナー粒子形成(外添)前に行った。シェル被覆率の測定対象は、トナー母粒子であった。シェル被覆率の測定方法は、以下に示すとおりである。測定装置として、走査型プローブ顕微鏡(SPM)(株式会社日立ハイテクサイエンス製「多機能型ユニットAFM5200S」)を備えたSPMプローブステーション(株式会社日立ハイテクサイエンス製「NanoNaviReal」)を使用した。測定に先立ち、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製「JSM−6700F」)を用いて、トナーに含まれるトナー粒子のうち平均的なトナー粒子を選び、選ばれたトナー粒子を測定対象とした。測定対象のトナー粒子を切断せずにそのまま測定装置(SPM)の測定台にセットした。そして、測定対象のトナー粒子の表面のうち外添剤がない領域が測定範囲に含まれるように視野(測定部位)を設定した。以下の測定モード(DFM)により、カンチレバー(先端部:探針)を共振させた状態で、振動するカンチレバーの振幅が一定になるように探針とトナー粒子との間の距離を制御しながらトナー粒子の形状像(表面形状を示す画像)を得た。
・測定探針:低バネ定数シリコンカンチレバー(オリンパス株式会社製「OMCL−AC240TS−C3」、バネ定数2N/m、共振周波数70kHz、アルミニウムの背面反射コート材)
・測定モード:DFM(ダイナミック・フォース・モード)
・測定範囲(1つの視野):1μm×1μm
・解像度(Xデータ/Yデータ):256/256
・Qゲイン:1倍
・走査周波数:1Hz
トナー(T1)〜(T8)について、評価前処理を行った。評価前処理を行った各トナーについて、BET比表面積及び耐熱保存性を評価した。次に、評価前処理を行った各トナーを用いて二成分現像剤を製造した。製造した二成分現像剤について、帯電安定性及び画像品質を評価した。
トナー(T1)〜(T8)の各々を、常温常湿環境(温度23℃、相対湿度50%RH且つ容積絶対湿度10.27g/m3の環境)に24時間放置した後、温度23℃且つ相対湿度50%RHの環境で24時間調湿した。これとは別に、トナー(T1)、(T2)、(T5)及び(T8)の各々を、低温低湿環境(温度10℃、相対湿度10%RH且つ容積絶対湿度0.94g/m3の環境)に24時間放置した後、温度23℃且つ相対湿度50%RHの環境で24時間調湿した。これとは別に、トナー(T1)、(T2)、(T5)及び(T8)の各々を、高温高湿環境(温度32℃、相対湿度80%RH且つ容積絶対湿度26.99g/m3の環境)に24時間放置した後、温度23℃且つ相対湿度50%RHの環境で24時間調湿した。
常温常湿環境で評価前処理を行ったトナー(T1)〜(T8)について、BET比表面積を測定した。また、低温低湿環境及び高温高湿環境で評価前処理を行ったトナー(T1)、(T2)、(T5)及び(T8)について、BET比表面積を測定した。BET比表面積は、試料(トナー)をBET比表面積測定装置(株式会社マウンテック製「全自動比表面積測定装置 Macsorb(登録商標)HM MODEL−1208」)を用いて測定することにより行った。測定されたトナーのBET比表面積を表2及び表3に示す。
常温常湿環境で評価前処理を行ったトナー(T1)〜(T8)、並びに低温低湿環境及び高温高湿環境で評価前処理を行ったトナー(T1)、(T2)、(T5)及び(T8)について、耐熱保存性を評価した。詳しくは、試料(トナー)3gを、容量20mLのポリエチレン製容器に入れた。容器内の試料を、恒温器(オーブン)を用いて60℃で3時間静置した。その後、恒温器から取り出した容器を、温度25℃且つ相対湿度65%RHの環境で30分間静置した。これにより、容器内に評価用トナーが調製された。
割合A=100×(篩A上の残留トナーの質量)/MT[質量%]・・・(5)
割合B=100×(篩B上の残留トナーの質量)/MT[質量%]・・・(6)
割合C=100×(篩C上の残留トナーの質量)/MT[質量%]・・・(7)
凝集度[質量%]=割合A+割合B×(3/5)+割合C×(1/5)・・・(8)
まず、キャリアコアを製造した。詳しくは、酸化鉄(III)(Fe2O3)、酸化銅(II)(CuO)及び酸化亜鉛(ZnO)の混合物を、湿式ボールミルを用いて、混合物の粒子径が1μm以下になるまで粉砕した。得られた粉砕物にポリビニルアルコールを添加して液を得た。得られた液を、スプレードライヤーを用いて造粒し、造粒物を得た。造粒物を電気炉で焼成し、焼成物を得た。焼成物を、解砕した。得られた解砕物を、目開き20μmの篩を用いて篩別した。篩上に残った粉体(粒子径20μm以上の粉体)をキャリアコアとして使用した。
トナーの帯電安定性は、温度23℃且つ相対湿度50%RHの環境で評価した。帯電安定性の評価では、評価機として、カラー複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa5550ci」)を使用した。用紙として、モンディ社製「ColorCopy(登録商標)」(A4サイズ、90g/m2)を使用した。二成分現像剤を、評価機のシアン用現像装置に投入した。投入した二成分現像剤に対応するトナーを、評価機のシアン用トナーコンテナに投入した。
トナーの画像品質は、温度23℃且つ相対湿度50%RHの環境で評価した。画像品質の評価では、帯電安定性の評価で使用した評価機及び用紙を使用した。二成分現像剤を、評価機のシアン用現像装置に投入した。投入した二成分現像剤に対応するトナーを、評価機のシアン用トナーコンテナに投入した。
トナー(T1)〜(T8)の各々について、BET比表面積、耐熱保存性、帯電安定性及び画像品質を評価した結果を表2及び表3に示す。なお、表3中、常温常湿環境で評価前処理を行ったトナー(T3)ついて、画像濃度の評価が不良であったため、帯電安定性を評価しなかった。常温常湿環境で評価前処理を行ったトナー(T6)ついては、耐熱保存性の評価が不良であったため、帯電安定性及び画像濃度を評価しなかった。常温常湿環境で評価前処理を行ったトナー(T7)ついては、帯電安定性の評価が不良であったため、画像濃度を評価しなかった。トナー(T3)、(T4)、(T6)及び(T7)ついては、常温常湿環境で評価前処理を行ったトナーの耐熱保存性、帯電安定性及び画像濃度の何れかの評価が不良であった。そのため、低温低湿環境で評価前処理を行ったトナー及び高温高湿環境で評価前処理を行ったトナーについて、評価しなかった。その結果、BET比表面積(AL)及び(AH)と座標点PL及びPHとが測定されなかったため、BET比表面積の差(AL−AN)及び(AH−AN)と色差(ΔEL-N)及び(ΔEH-N)とを評価しなかった。
11 トナーコア
12 シェル層
13 トナー母粒子
14 外添剤粒子
Claims (5)
- トナー粒子を複数含む、静電潜像現像用トナーの製造方法であって、
前記トナー粒子は、トナー母粒子と、前記トナー母粒子の表面に備えられる複数の外添剤粒子とを有し、
前記トナー母粒子は、トナーコアと、前記トナーコアの表面に備えられるシェル層とを有し、
液中で、前記トナーコアと、正帯電性を有しない第1樹脂粒子と、正帯電性を有する第2樹脂粒子とを混合して、前記トナーコアの前記表面に前記シェル層を形成するシェル層形成工程と、
前記トナー母粒子の前記表面に複数の前記外添剤粒子を付着させて、前記トナー粒子を形成するトナー粒子形成工程と、
前記トナー粒子を温度30℃以上且つ相対湿度55%RH以上の環境に曝露する曝露工程と
を含み、
前記曝露工程は、前記トナー粒子形成工程と同時に又は前記トナー粒子形成工程の後に行われ、
前記トナー粒子形成工程で前記外添剤粒子を付着させる前の前記トナー母粒子における、前記トナーコアの表面全域のうちの前記シェル層が備えられる前記トナーコアの表面領域の面積割合は、60%以上80%以下であり、
前記曝露工程後の前記トナー粒子を容積絶対湿度が10.27g/m3である環境に24時間置いたときの前記トナー粒子のBET比表面積は、1.30m2/g以上3.00m2/g以下である、静電潜像現像用トナーの製造方法。 - 前記曝露工程後の前記トナー粒子を容積絶対湿度が10.27g/m3である環境に24時間置いたときの前記トナー粒子の前記BET比表面積と、前記曝露工程後の前記トナー粒子を容積絶対湿度が26.99g/m3である環境に24時間置いたときの前記トナー粒子のBET比表面積との差の絶対値は、0.00m2/g以上0.30m2/g以下である、請求項1に記載の静電潜像現像用トナーの製造方法。
- 前記曝露工程後の前記トナー粒子を容積絶対湿度が10.27g/m3である環境に24時間置いたときの前記トナー粒子の前記BET比表面積と、前記曝露工程後の前記トナー粒子を容積絶対湿度が0.94g/m3である環境に24時間置いたときの前記トナー粒子のBET比表面積との差の絶対値は、0.00m2/g以上0.30m2/g以下である、請求項1又は2に記載の静電潜像現像用トナーの製造方法。
- 前記第1樹脂粒子を構成する樹脂は、スチレンに由来する繰返し単位と、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルに由来する繰返し単位と、アクリル酸ブチルに由来する繰返し単位とを有し、
前記第2樹脂粒子を構成する樹脂は、メタクリル酸メチルに由来する繰返し単位と、アクリル酸ブチルに由来する繰返し単位と、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライドに由来する繰返し単位とを有する、請求項1〜3の何れか一項に記載の静電潜像現像用トナーの製造方法。 - 前記曝露工程は、前記トナー粒子形成工程と同時に行われる、請求項1〜4の何れか一項に記載の静電潜像現像用トナーの製造方法。
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