以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態に係る2成分現像剤は、トナーとキャリアとを含む。トナー及びキャリアはそれぞれ、多数の粒子から構成される粉体である。トナーは、後述の構成を有するトナー粒子を、複数含む。キャリアは、後述の構成を有するキャリア粒子を、複数含む。本実施形態に係る2成分現像剤に含まれるトナーは、例えば正帯電性トナーとして用いることができる。
トナーは、複数のトナー粒子を含む。トナー粒子は、外添剤を有していてもよい。トナー粒子が外添剤を有する場合には、トナー粒子はトナー母粒子と外添剤とを有する。外添剤はトナー母粒子の表面に付着している。トナー母粒子は、結着樹脂を含む。必要に応じて、トナー母粒子の結着樹脂中に内添剤(例えば、離型剤、着色剤、電荷制御剤、及び磁性粉の少なくとも1つ)を分散させてもよい。なお、必要がなければ外添剤を割愛してもよい。外添剤を割愛する場合には、トナー母粒子がトナー粒子に相当する。本実施形態に係るトナーは、カプセルトナーであってもよい。トナー母粒子の表面にシェル層を形成することで、カプセルトナーを製造することができる。シェル層は、実質的に熱硬化性樹脂(例えば、メラミン樹脂)のみからなってもよいし、実質的に熱可塑性樹脂(例えば、アクリル系樹脂又はスチレン−アクリル系樹脂)のみからなってもよいし、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との両方を含有してもよい。
キャリアは、複数のキャリア粒子を含む。キャリア粒子は、結着樹脂を含むキャリアコアと、キャリアコアの表面に形成された樹脂層とを有する。キャリアコアの結着樹脂中には、複数の磁性粒子が分散している。キャリアコアの表面に樹脂層が形成されていることで、2成分現像剤の流動度を向上させ易くなる。
本実施形態に係る2成分現像剤は、トナーと、次に示す構成(1)及び(2)を有するキャリアとを含む。
(1)キャリアに含まれるキャリア粒子のうち、粒子径20μm未満のキャリア粒子は70emu/g以上の磁力を有し、粒子径20μm以上のキャリア粒子は40emu/g以上60emu/g以下の磁力を有する。
(2)キャリアが、粒子径20μm未満のキャリア粒子を7質量%以上15質量%以下の割合で含む。
構成(1)における所定の粒子径を有するキャリア粒子の磁力は、下記方法又はその代替方法によって測定される。
<磁力の測定方法>
目開き20μmの試験用篩を用いてキャリアを篩別して、キャリア中の、粒子径20μm未満のキャリア粒子と、粒子径20μm以上のキャリア粒子とを分ける。粒子径20μm未満のキャリア粒子の磁力を測定する場合には、篩別により篩を通過したキャリア粒子(それぞれ粒子径20μm未満のキャリア粒子)を、測定対象とする。粒子径20μm以上のキャリア粒子の磁力を測定する場合には、篩別後に篩上に残留したキャリア粒子(それぞれ粒子径20μm以上のキャリア粒子)を、測定対象とする。
続けて、振動試料型磁力計(例えば、東英工業株式会社製「VSM−3S−15」)を用いて、測定対象の磁力(emu/g)を測定する。詳しくは、均一磁界中におかれた測定対象を一定振動数及び一定振幅で単振動させて、測定対象の近傍に配置されたコイルに誘起する誘導起電力に基づいて測定対象の磁力(飽和磁化)を測定する。
キャリア粒子の磁力は、例えば、キャリアコアの結着樹脂に含まれる磁性粒子の種類又は量を変えることで、調整できる。構成(1)を有するキャリアの製造方法としては、粒子径(例えば、体積平均粒子径(MV:Mean Volume diameter))の異なる複数種のキャリア(例えば、第1キャリア及び第2キャリア)を準備して、第1キャリア及び第2キャリアの各々について磁力を調整した後、異なる磁力に調整された第1キャリア及び第2キャリアを混合する方法が好ましい。
構成(1)は、2成分現像剤の優れた現像性を維持しながらキャリア現像(感光体ドラムに対するキャリア付着)を抑制するために有益である。詳しくは、キャリア粒子1個あたりの磁力を低くすると、現像ローラーと感光体ドラムとの間に、より密な磁気ブラシを形成することが可能になり、高画質の画像を形成できるようになる傾向がある。しかし、キャリア粒子1個あたりの磁力を低くすると、キャリア現像が起き易くなる傾向がある。発明者は、粒子径の小さいキャリア粒子(詳しくは、粒子径20μm未満のキャリア粒子)が特にキャリア現像を起こし易いことに着眼し、粒子径20μm未満のキャリア粒子の磁力を70emu/g以上にすることで、キャリア現像を抑制できることを見出した。また、発明者は、粒子径20μm以上のキャリア粒子の磁力を40emu/g以上60emu/g以下にすることで、キャリア現像を抑制しながら高画質の画像を形成できるようになることを見出した。粒子径20μm以上のキャリア粒子の磁力を高くし過ぎないことで、現像ローラーと感光体ドラムとの間に、より密な磁気ブラシを形成することが可能になり、高画質の画像を形成できるようになると考えられる。
構成(2)は、2成分現像剤の耐ストレス性及び耐久性を向上させるために有益である。詳しくは、発明者は、キャリアにおける粒子径20μm未満のキャリア粒子の割合(含有量)を7質量%以上15質量%以下にすることで、2成分現像剤の高い流動性を保ちつつトナーに安定した帯電量を与えることが可能になることを見出した。キャリアにおける粒子径20μm未満のキャリア粒子の含有量を15質量%以下にすることで、2成分現像剤の流動性を向上できると考えられる。2成分現像剤の流動性が高くなると、2成分現像剤の耐ストレス性が向上する傾向がある。キャリアにおける粒子径20μm未満のキャリア粒子の含有量を7質量%以上にすることで、キャリア粒子の比表面積が大きくなり、トナーに安定した帯電量を与えることが可能になると考えられる。トナーに安定した帯電量を与えることで、高画質の画像を形成することが可能になると考えられる。
構成(1)及び(2)を有するキャリアの製造を容易にするためには、粒子径20μm未満のキャリア粒子の磁力を80emu/g以下にすることが好ましい。
以下、トナー母粒子(結着樹脂及び内添剤)及び外添剤について、順に説明する。トナーの用途に応じて必要のない成分(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、又は磁性粉)を割愛してもよい。なお、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。
[トナー母粒子]
(結着樹脂)
トナー母粒子においては、全成分の大部分(例えば、85質量%以上)を結着樹脂が占めることが多い。このため、結着樹脂の性質がトナー母粒子全体の性質に大きな影響を与えると考えられる。
優れたトナーの低温定着性を維持しながらトナーの保存安定性又は耐久性を向上させるためには、トナー母粒子に含まれる結着樹脂のガラス転移点(Tg)が、45℃以上65℃以下であることが好ましく、50℃以上60℃以下であることがより好ましい。
ガラス転移点(Tg)は、例えば示差走査熱量計を用いて測定できる。より具体的には、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて試料(例えば、結着樹脂)の吸熱曲線を測定することで、得られた吸熱曲線における比熱の変化点から結着樹脂のTgを求めることができる。
優れたトナーの低温定着性を維持しながらトナーの保存安定性又は耐久性を向上させるためには、トナー母粒子に含まれる結着樹脂の軟化点(Tm)が、80℃以上150℃以下であることが好ましく、90℃以上140℃以下であることがより好ましい。異なるTmを有する複数の樹脂を組み合わせることで、結着樹脂のTmを調整することができる。
軟化点(Tm)は、例えば高化式フローテスターを用いて測定できる。より具体的には、高化式フローテスター(例えば、株式会社島津製作所製「CFT−500D」)に試料(例えば、結着樹脂)をセットし、所定の条件で試料を溶融流出させる。そして、試料のS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)を測定する。得られたS字カーブから試料のTmを読み取ることができる。得られたS字カーブにおいて、ストロークの最大値(mm)をS1とし、低温側のベースラインのストローク値(mm)をS2とすると、S字カーブ中のストロークの値が「(S1+S2)/2」となる温度(℃)が、試料のTmに相当する。
トナーの定着性を向上させるためには、トナー母粒子に含まれる結着樹脂として熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。トナー母粒子に含まれる結着樹脂が熱可塑性樹脂である場合、熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂(より具体的には、アクリル酸エステル重合体又はメタクリル酸エステル重合体等)、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂等)、ビニル系樹脂(より具体的には、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、又はN−ビニル樹脂等)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、もしくはウレタン樹脂のような単独重合体、又はこれらの単独重合体と同一のモノマーを含む共重合体(より具体的には、スチレン−アクリル系樹脂又はスチレン−ブタジエン系樹脂等)が好ましい。トナーコア中の着色剤の分散性、トナーの帯電性、及び記録媒体に対するトナーの定着性を向上させるためには、スチレン−アクリル系樹脂又はポリエステル樹脂が特に好ましい。
以下、トナー母粒子の結着樹脂として用いることのできるスチレン−アクリル系樹脂について説明する。スチレン−アクリル系樹脂は、スチレン系モノマーとアクリル系モノマーとの共重合体である。
スチレン−アクリル系樹脂を調製するためのスチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、又はp−エチルスチレンが好ましい。
スチレン−アクリル系樹脂を調製するためのアクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、又は(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが好ましい。
スチレン−アクリル系樹脂を調製する際に、ヒドロキシル基を有するモノマー(より具体的には、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等)を用いることで、スチレン−アクリル系樹脂にヒドロキシル基を導入できる。また、ヒドロキシル基を有するモノマーの使用量を調整することで、得られるスチレン−アクリル系樹脂の水酸基価を調整できる。
スチレン−アクリル系樹脂を調製する際に、(メタ)アクリル酸(モノマー)を用いることで、スチレン−アクリル系樹脂にカルボキシル基を導入できる。また、(メタ)アクリル酸の使用量を調整することで、得られるスチレン−アクリル系樹脂の酸価を調整することができる。
結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂である場合、トナー母粒子の強度及びトナーの定着性を向上させるためには、スチレン−アクリル系樹脂の数平均分子量(Mn)が2000以上3000以下であることが好ましい。スチレン−アクリル系樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率Mw/Mn)は10以上20以下であることが好ましい。スチレン−アクリル系樹脂のMn及びMwの測定には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いることができる。
以下、トナー母粒子の結着樹脂として用いることのできるポリエステル樹脂について説明する。ポリエステル樹脂は、2価又は3価以上のアルコールと2価又は3価以上のカルボン酸とを縮重合又は共縮重合させることで得られる。
ポリエステル樹脂の調製には、例えば、ジオール類又はビスフェノール類のような2価アルコールを使用できる。
ポリエステル樹脂の調製には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールのようなジオール類を好適に使用できる。
ポリエステル樹脂の調製には、例えば、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル、又はポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテルのようなビスフェノール類を好適に使用できる。
ポリエステル樹脂の調製には、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンのような3価以上のアルコールを好適に使用できる。
ポリエステル樹脂の調製には、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸(より具体的には、n−ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、又はイソドデシルコハク酸)、又はアルケニルコハク酸(より具体的には、n−ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、又はイソドデセニルコハク酸)のような2価カルボン酸を好適に使用できる。
ポリエステル樹脂の調製には、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、又はエンポール三量体酸のような3価以上のカルボン酸を好適に使用できる。
上記2価又は3価以上のカルボン酸は、エステル形成性の誘導体(より具体的には、酸ハライド、酸無水物、又は低級アルキルエステル等)に変形して用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素数1以上6以下のアルキル基を意味する。
ポリエステル樹脂を調製する際に、アルコールの使用量とカルボン酸の使用量とをそれぞれ変更することで、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価を調整することができる。ポリエステル樹脂の分子量を上げると、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価は低下する傾向がある。
結着樹脂がポリエステル樹脂である場合、トナー母粒子の強度及びトナーの定着性を向上させるためには、ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)が1000以上2000以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率Mw/Mn)は9以上21以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂のMn及びMwの測定には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いることができる。
(着色剤)
トナー母粒子は、着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。着色剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、3質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
トナー母粒子は、黒色着色剤を含んでいてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
トナー母粒子は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、又はシアン着色剤のようなカラー着色剤を含んでいてもよい。
イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリールアミド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。イエロー着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、又は194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、又はC.I.バットイエローを好適に使用できる。
マゼンタ着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。マゼンタ着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、又は254)を好適に使用できる。
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、銅フタロシアニン誘導体、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。シアン着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、又は66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、又はC.I.アシッドブルーを好適に使用できる。
(離型剤)
トナー母粒子は、離型剤を含有していてもよい。離型剤は、例えばトナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、5質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、又はフィッシャートロプシュワックスのような脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックス又はそのブロック共重合体のような脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、又はライスワックスのような植物系ワックス;みつろう、ラノリン、又は鯨ろうのような動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、又はペトロラタムのような鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス又はカスターワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような、脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスを好適に使用できる。一種の離型剤を単独で使用してもよいし、複数種の離型剤を併用してもよい。
なお、結着樹脂と離型剤との相溶性を改善するために、相溶化剤をトナー母粒子に添加してもよい。
(電荷制御剤)
トナー母粒子は、電荷制御剤を含んでいてもよい。電荷制御剤は、例えばトナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。
正帯電性の電荷制御剤としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、又はキノキサリンのようなアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ−ンBH/C、アジンディ−プブラックEW、又はアジンディープブラック3RLのようなアジン化合物からなる直接染料;ニグロシン、ニグロシン塩、又はニグロシン誘導体のようなニグロシン化合物;ニグロシンBK、ニグロシンNB、又はニグロシンZのようなニグロシン化合物からなる酸性染料;ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルデシルヘキシルメチルアンモニウムクロライド又はデシルトリメチルアンモニウムクロライドのような4級アンモニウム塩が好ましい。また、4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、又はカルボキシル基を有する樹脂も、正帯電性の電荷制御剤として使用できる。迅速な立ち上がり性を得るためには、ニグロシン化合物が特に好ましい。一種の電荷制御剤を単独で使用してもよいし、複数種の電荷制御剤を併用してもよい。
(磁性粉)
トナー母粒子は、磁性粉を含んでいてもよい。磁性粉の材料としては、例えば、鉄(より具体的には、フェライト又はマグネタイト)、強磁性金属(より具体的には、コバルト又はニッケル)、鉄及び/又は強磁性金属を含む合金、強磁性化処理(より具体的には、熱処理等)が施された強磁性合金、又は二酸化クロムを好適に使用できる。一種の磁性粉を単独で使用してもよいし、複数種の磁性粉を併用してもよい。
[外添剤]
トナー母粒子の表面に外添剤を付着させてもよい。外添剤は、例えば2成分現像剤の流動性、トナーの取扱性、又はトナーの帯電性を向上させるために使用される。2成分現像剤の流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の使用量は、トナー母粒子100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
2成分現像剤の流動性を向上させるためには、トナー粒子の外添剤として、樹脂粒子(例えば、樹脂ビーズ)を用いることが好ましい。樹脂粒子は、スペーサーとして機能し、2成分現像剤の流動性を向上させると考えられる。また、樹脂粒子は、トナー母粒子に対する付着性が高いため、トナー粒子から遊離しにくいと考えられる。また、樹脂粒子は、キャリアを汚染しにくい。このため、樹脂粒子を使用することで、トナー粒子に安定した帯電量を付与できるようになると考えられる。
トナー粒子が外添剤として樹脂粒子を含む場合、2成分現像剤の耐ストレス性及び耐久性を向上させるためには、樹脂粒子の体積平均粒子径(MV)が40nm以上150nm以下であることが好ましい。樹脂粒子の体積平均粒子径(MV)を40nm以上にすることで、トナー母粒子に対する樹脂粒子の埋没が抑制され、2成分現像剤の耐ストレス性を向上させることができると考えられる。また、樹脂粒子の体積平均粒子径(MV)を150nm以下にすることで、2成分現像剤の流動性を向上させることができると考えられる。体積平均粒子径(MV)は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(例えば、株式会社堀場製作所製「LA−750」)を用いて測定できる。
トナー粒子が外添剤として樹脂粒子を含む場合、樹脂粒子の材料としては、アクリル系樹脂(より具体的には、ポリメチルメタクリレート等)、又はスチレン−アクリル系樹脂を好適に使用できる。
2成分現像剤の流動性、及びトナーの帯電性を向上させるためには、外添剤として、無機粒子を使用することが好ましい。外添剤が無機粒子である場合、無機粒子としては、シリカ粒子、又は金属酸化物(より具体的には、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、又はチタン酸バリウム等)の粒子を好適に使用できる。
外添剤として、一種の粒子を単独で使用してもよいし、複数種の粒子を併用してもよい。2成分現像剤の流動性、及びトナーの帯電性を向上させるためには、外添剤として樹脂粒子及び無機粒子の両方を使用することが好ましい。外添剤として樹脂粒子及び無機粒子の両方を使用する場合、各粒子の粒子径は、互いに同一でもよいし異なっていてもよい。
[キャリア粒子]
キャリア粒子は、キャリアコアと、キャリアコアの表面に形成された樹脂層とを有する。
現像器内でのストレスを軽減するためには、キャリアに含まれるキャリア粒子の円形度(個数平均値)が0.95以上0.99以下であることが好ましい。キャリア粒子の円形度は、例えば、フロー式粒子像分析装置(シスメックス株式会社製「FPIA(登録商標)−3000」)を用いて測定できる。
現像器内でのストレスを軽減するためには、キャリアの真比重が3.0g/cm3以上4.0g/cm3以下であることが好ましい。真比重は、例えば、乾式自動密度計(マイクロメリティックス社製「アキュピックII 1340シリーズ」、付属品:マルチボリウムキット)を用いて測定できる。
2成分現像剤の現像性を向上させるためには、キャリアの比抵抗(5000V/cm2印加時)を1.0×1013Ω・cm未満にすることが好ましい。
2成分現像剤の耐ストレス性及び耐久性を向上させるためには、下記方法又はその代替方法によって測定される2成分現像剤の流動度が40秒/25cc以下であることが好ましい。
<流動度の測定方法>
25ccの円筒状容器に試料(2成分現像剤)を溢れる程度に入れ、容器の表面においてスライドガラスを往復移動させることによって、容器から溢れた試料を除去する。そして、試料を消磁した状態で、「JIS Z 2502」に従って試料の流動度を測定する。
(キャリアコア)
キャリアコアは、結着樹脂を含む。キャリアコアに含まれる結着樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、又はエポキシ樹脂が好ましく、フェノール樹脂又はメラミン樹脂が特に好ましい。
なお、フェノール樹脂は、フェノールとアルデヒド類とを重合反応させることで合成できる。尿素樹脂は、尿素とアルデヒド類とを重合反応させることで合成できる。メラミン樹脂は、メラミンとアルデヒド類とを重合反応させることで合成できる。エポキシ樹脂の出発原料としては、ビスフェノール類及びエピクロロヒドリンを使用できる。
キャリアコアの結着樹脂中には、複数の磁性粒子が分散している。磁性粒子の材料としては、例えば、マグネタイト、ヘマタイト、γ酸化鉄、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Mn−Mg系フェライト、Ca−Mg系フェライト、Li系フェライト、又はCu−Zn系フェライトのような鉄系酸化物が好ましく、マグネタイトが特に好ましい。個々の磁性粒子の材料として、1種類の磁性材料を単独で使用してもよいし、2種類以上の磁性材料を併用してもよい。また、キャリアにおいて、1種類の磁性粒子を単独で使用してもよいし、2種類以上の磁性粒子を併用してもよい。
(樹脂層)
樹脂層は、キャリアコアを被覆するように、キャリアコアの表面に形成される。樹脂層を構成する樹脂は、絶縁性樹脂であることが好ましい。樹脂層を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂を使用してもよいし、熱硬化性樹脂を使用してもよい。また、熱可塑性樹脂と硬化剤とを混合することにより、熱可塑性樹脂に架橋性を付与してもよい。樹脂層を構成する樹脂として、1種類の樹脂を単独で使用してもよいし、2種類以上の樹脂を併用してもよい。
樹脂層を構成する樹脂が熱可塑性樹脂である場合、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、アクリル樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデン樹脂、フルオロカーボン樹脂、パーフルオロカーボン樹脂、溶剤可溶性パーフルオロカーボン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、石油樹脂、セルロースもしくはその誘導体(より具体的には、酢酸セルロース、硝酸セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、又はヒドロキシプロピルセルロース等)、ノボラック樹脂、低分子量ポリエチレン、飽和アルキルポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、芳香族ポリエステル樹脂(より具体的には、ポリアリレート等)、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、又はポリエーテルケトン樹脂を好適に使用できる。
樹脂層を構成する樹脂が熱硬化性樹脂である場合、熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、マレイン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、無水マレイン酸とテレフタル酸と多価アルコールとの重縮合によって得られる不飽和ポリエステル、尿素樹脂、メラミン樹脂、尿素−メラミン樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン樹脂、アセトグアナミン樹脂、グリプタール樹脂、フラン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、又はウレタン樹脂が好ましく、シリコーン樹脂が特に好ましい。
[2成分現像剤の製造方法]
次に、本実施形態に係る2成分現像剤に含まれるトナーの製造方法について説明する。
トナー母粒子は、例えば粉砕法又は凝集法により作製できる。これらの方法は、トナー母粒子の結着樹脂中に内添剤を良好に分散させ易い。
粉砕法の一例では、まず、結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、及び離型剤を混合する。続けて、得られた混合物を、溶融混練装置(例えば、1軸又は2軸の押出機)を用いて溶融混練する。続けて、得られた溶融混練物を粉砕及び分級する。これにより、トナー母粒子が得られる。粉砕法を用いた場合には、凝集法を用いた場合よりも容易にトナー母粒子を作製できることが多い。
凝集法の一例では、まず、結着樹脂、離型剤、及び着色剤の各々の微粒子を含む水系媒体中で、これらの微粒子を所望の粒子径になるまで凝集させる。これにより、結着樹脂、離型剤、及び着色剤を含む凝集粒子が形成される。続けて、得られた凝集粒子を加熱して、凝集粒子に含まれる成分を合一化させる。これにより、所望の粒子径を有するトナー母粒子が得られる。
混合装置(例えば、日本コークス工業株式会社製「FMミキサー」)を用いてトナー母粒子と外添剤とを混合することで、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させることができる。トナー母粒子の表面に外添剤が付着することで、トナー粒子が得られる。
前述の構成(1)を有するキャリア(ひいては、こうしたキャリアを含む2成分現像剤)は、次のような手順で製造することが好ましい。まず、粒子径の異なる複数種のキャリアを準備する。続けて、複数種のキャリアの各々について磁力を調整する。続けて、磁力が調整された複数種のキャリアを混合することにより、これら複数種のキャリアを含むキャリアのうち、粒子径20μm未満のキャリア粒子の磁力を70emu/g以上にし、粒子径20μm以上のキャリア粒子の磁力を40emu/g以上60emu/g以下にする。こうした方法によれば、前述の構成(1)を有するキャリアを含む2成分現像剤を容易かつ的確に製造することが可能になる。複数種のキャリアとしては、2種類のキャリアを使用してもよいし、3種類以上のキャリアを使用してもよい。複数種のキャリア粒子の各々の磁力は、例えば、キャリアコアの結着樹脂に含まれる磁性粒子の種類又は量を変えることで、調整できる。
混合装置(例えば、愛知電機株式会社製「ロッキングミキサー(登録商標)」)を用いてトナーとキャリアとを混合することで、本実施形態に係る2成分現像剤を製造することができる。2成分現像剤に含まれるトナーの量は、キャリア100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、3質量部以上15質量部以下であることがより好ましい。
本発明の実施例について説明する。表1に、実施例又は比較例に係る現像剤A〜P(それぞれ静電潜像現像用の2成分現像剤)を示す。また、表2及び表3にそれぞれ、現像剤A〜Pで用いられるキャリアA〜Lを示す。
以下、現像剤A〜Pの製造方法、評価方法、及び評価結果について、順に説明する。なお、複数の粒子を含む粉体(例えば、トナー母粒子、外添剤、トナー、又はキャリア)に関する評価結果(形状又は物性などを示す値)は、何ら規定していなければ、相当数の粒子について測定した値の個数平均である。誤差が生じる評価においては、誤差が十分小さくなる相当数の測定値を得て、得られた測定値の算術平均を評価値とした。また、粉体の粒子径は、何ら規定していなければ、一次粒子の円相当径(粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)である。また、体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、ベックマン・コールター株式会社製の「コールターカウンターマルチサイザー3」を用いて測定した値である。また、体積平均粒子径(MV:Mean Volume diameter)の測定値は、何ら規定していなければ、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA−750」)を用いて測定した値である。また、円形度の測定値は、何ら規定していなければ、フロー式粒子像分析装置(シスメックス株式会社製「FPIA−3000」)を用いて、3000個の粒子について測定した値の個数平均である。
[トナーの準備]
混合機(日本コークス工業株式会社製「FMミキサー」)を用いて、結着樹脂100質量部と、着色剤4質量部と、電荷制御剤1質量部と、離型剤5質量部とを混合した。結着樹脂としては、酸価5.6mgKOH/g、融点100℃のポリエステル樹脂を用いた。着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3(銅フタロシアニンブルー顔料)を用いた。電荷制御剤としては、クラリアント社製の「P51」を用いた。離型剤としては、ワックス(株式会社加藤洋行製「カルナウバワックス1号」)を用いた。
続けて、得られた混合物を、2軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて混練した。続けて、得られた混練物を、機械式粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミル」)を用いて粉砕した。続けて、得られた粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)を用いて分級した。その結果、体積中位径(D50)6.8μmのトナー母粒子が得られた。
続けて、混合機(日本コークス工業株式会社製「FMミキサー」)を用いて、トナー母粒子100質量部と、疎水性シリカ微粒子(日本アエロジル株式会社製「RA−200H」)1質量部と、表1に示される体積平均粒子径(MV)(現像剤A〜Pの各々に定められた粒子径)を有する樹脂ビーズ1質量部とを混合することにより、トナー母粒子の表面に外添剤(シリカ粒子及び樹脂ビーズ)を付着させた。樹脂ビーズとしては、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)の粒子を用いた。
その後、得られたトナーを、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別した。その結果、トナー粒子を多数有するトナーが得られた。
[キャリアの準備]
体積平均粒子径(MV)20μmの第1キャリア(粉体)と体積平均粒子径(MV)40μmの第2キャリア(粉体)とを、表2に示される割合(質量比)で混合することで、キャリアA〜Iを調製した。
第1キャリアとしては、以下に示す第1キャリアA及びBを使用し、第2キャリアとしては、以下に示す第2キャリアA〜Dを使用した。第1キャリア及び第2キャリアはそれぞれ、キャリアコア及び樹脂層を有するキャリア粒子を複数含んでいた。キャリアコアを作製する際には、結着樹脂中に複数の磁性粒子を分散させた。キャリアコアの結着樹脂としては、フェノール樹脂を使用した。磁性粒子としては、体積平均粒子径(MV)0.25μmのマグネタイト粒子を使用した。また、キャリアコアの表面を、熱硬化性シリコーン樹脂の膜(樹脂層)で被覆した。第1キャリアA、Bはそれぞれ、75emu/g、65emu/gの磁力を有していた。また、第2キャリアA、B、C、Dはそれぞれ、40emu/g、56emu/g、35emu/g、60emu/gの磁力を有していた。各キャリアの磁力は、結着樹脂中の磁性粒子の量(含有率)を変更することによって調整した。
キャリアAは、第1キャリアAと第2キャリアAとを、質量比20:80(第1キャリアA:第2キャリアA)の割合で混合して調製した。
キャリアBは、第1キャリアAと第2キャリアBとを、質量比20:80(第1キャリアA:第2キャリアB)の割合で混合して調製した。
キャリアCは、第1キャリアAと第2キャリアAとを、質量比14:86(第1キャリアA:第2キャリアA)の割合で混合して調製した。
キャリアDは、第1キャリアAと第2キャリアAとを、質量比28:72(第1キャリアA:第2キャリアA)の割合で混合して調製した。
キャリアEは、第1キャリアBと第2キャリアAとを、質量比20:80(第1キャリアB:第2キャリアA)の割合で混合して調製した。
キャリアFは、第1キャリアAと第2キャリアCとを、質量比20:80(第1キャリアA:第2キャリアC)の割合で混合して調製した。
キャリアGは、第1キャリアAと第2キャリアDとを、質量比20:80(第1キャリアA:第2キャリアD)の割合で混合して調製した。
キャリアHは、第1キャリアAと第2キャリアAとを、質量比35:65(第1キャリアA:第2キャリアA)の割合で混合して調製した。
キャリアIは、第1キャリアAと第2キャリアAとを、質量比10:90(第1キャリアA:第2キャリアA)の割合で混合して調製した。
キャリアJ及びKはそれぞれ、キャリアコア及び樹脂層を有するキャリア粒子を複数含んでいた。キャリアJ及びKの各々のキャリアコアを作製する際には、結着樹脂中に複数の磁性粒子を分散させた。キャリアコアの結着樹脂としては、フェノール樹脂を使用した。磁性粒子としては、体積平均粒子径(MV)0.25μmのマグネタイト粒子を使用した。また、キャリアコアの表面を、熱硬化性シリコーン樹脂の膜(樹脂層)で被覆した。キャリアJ、Kはそれぞれ、70emu/g、60emu/gの磁力を有していた。各キャリアの磁力は、結着樹脂中の磁性粒子の量(含有率)を変更することによって調整した。
キャリアLとしては、Mn−Mg−Sr系フェライトキャリア(パウダーテック株式会社製「EF−35」)を用いた。
キャリアA〜Lの各々の、体積平均粒子径(MV)、粒子径20μm未満のキャリア粒子の含有量、粒子径20μm未満のキャリア粒子の磁力、粒子径20μm以上のキャリア粒子の磁力、真比重、及び円形度は、表3に示すとおりであった。なお、真比重は、乾式自動密度計(マイクロメリティックス社製「アキュピックII 1340シリーズ」、付属品:マルチボリウムキット)を用いて測定した。また、粒子径20μm未満のキャリア粒子の磁力と粒子径20μm以上のキャリア粒子の磁力との各々の測定方法は、以下のとおりであった。
<磁力の測定方法>
目開き20μmの試験用篩を用いてキャリアを篩別して、キャリア中の、粒子径20μm未満のキャリア粒子と、粒子径20μm以上のキャリア粒子とを分けた。粒子径20μm未満のキャリア粒子の磁力を測定する場合には、篩別により篩を通過したキャリア粒子(それぞれ粒子径20μm未満のキャリア粒子)を、測定対象とした。粒子径20μm以上のキャリア粒子の磁力を測定する場合には、篩別後に篩上に残留したキャリア粒子(それぞれ粒子径20μm以上のキャリア粒子)を、測定対象とした。
続けて、振動試料型磁力計(東英工業株式会社製「VSM−3S−15」)を用いて、測定対象の磁力(emu/g)を測定した。詳しくは、外部磁場10kOeの条件で、均一磁界中におかれた測定対象を一定振動数及び一定振幅で単振動させて、測定対象の近傍に配置されたコイルに誘起する誘導起電力に基づいて測定対象の磁力(飽和磁化)を測定した。
[2成分現像剤の製造]
表1に示されるキャリア(現像剤A〜Pの各々に定められたキャリア)100質量部と、表1に示されるトナー(現像剤A〜Pの各々に定められたトナー)10質量部とを、粉体混合機(愛知電機株式会社製「ロッキングミキサー」)を用いて30分間攪拌した。その結果、現像剤A〜P(2成分現像剤)が得られた。
現像剤A〜Pの各々の流動度は、表1に示すとおりであった。なお、流動度は、前述のとおり「JIS Z 2502」に従って測定した。
[評価方法]
各試料(現像剤A〜P)の評価方法は、以下の通りである。試料(現像剤)を用いて画像を形成して、画像濃度(ID)、かぶり濃度(FD)、帯電量、画像バサツキ、キャリア付着性、及び凝集度を評価した。評価機としては、カラー複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa 5550ci」)を用いた。試料(現像剤)を評価機の現像器に投入し、試料(現像剤)に対応するトナー(補充用トナー)を評価機のトナーコンテナに投入した。
上記評価機を用いて、常温常湿環境(温度23℃、湿度50%RH)下において、印字率50%で1000枚連続印刷する第1耐刷試験を行った。さらに、第1耐刷試験を行った後、上記評価機を用いて、常温常湿環境(温度23℃、湿度50%RH)下において、印字率0.1%で5000枚連続印刷する第2耐刷試験を行った。
第1耐刷試験前(以下、初期と記載する)と、第1耐刷試験後かつ第2耐刷試験前(以下、第1耐刷試験後と記載する)と、第2耐刷試験後との各々のタイミングにおいて、上記評価機を用いて、ソリッド部と空白部とを含むサンプル画像を記録媒体(評価用紙)に形成した。その後、試料(現像剤)中のトナーの帯電量を測定した。詳しくは、Q/mメーター(トレック社製「MODEL 210HS」)の吸引部を用いて試料(現像剤)0.10g(±0.01g)中のトナーを吸引し、吸引されたトナーの量とQ/mメーターの表示(電荷量)とに基づいて、トナーの帯電量(μC/g)を算出した。また、記録媒体に形成された画像のソリッド部の画像濃度(ID)を、反射濃度計(サカタインクスエンジニアリング株式会社製「RD914」)を用いて測定した。また、記録媒体に形成された画像の空白部の画像濃度(ID)を、反射濃度計(サカタインクスエンジニアリング株式会社製「RD914」)を用いて測定し、かぶり濃度(FD)を算出した。なお、かぶり濃度(FD)は、印刷後の記録媒体の空白部の画像濃度(ID)からベースペーパーの画像濃度(ID)を引いた値に相当する。
測定された画像濃度(ID)は、下記基準に従って評価した。
◎(非常に良い):画像濃度が1.4以上であった。
○(良い):画像濃度が1.3以上1.4未満であった。
△(普通):画像濃度が1.2以上1.3未満であった。
×(悪い):画像濃度が1.2未満であった。
測定されたかぶり濃度(FD)は、下記基準に従って評価した。
◎(非常に良い):かぶり濃度(FD)が0.004未満であった。
○(良い):かぶり濃度(FD)が0.004以上0.006未満であった。
△(普通):かぶり濃度(FD)が0.006以上0.010未満であった。
×(悪い):かぶり濃度(FD)が0.010以上であった。
画像バサツキを評価する場合には、初期において、上記評価機を用いて、ソリッド部と空白部とを含むサンプル画像を記録媒体(評価用紙)に形成した。その後、記録媒体に形成された画像のソリッド部の画像バサツキを、ハンディ型画像評価システム(QEA(Quality Engineering Associates)社製「MODEL PIAS−II」)を用いて、「ISO13660」に定められた方法により測定した。なお、画像バサツキは、ソリッド画像内の濃度むら等に起因する粒状度(mottle)を示す。
測定された画像バサツキ(mottle)は、下記基準に従って評価した。
◎(非常に良い):画像バサツキが0.80以下であった。
○(良い):画像バサツキが0.80超0.90以下であった。
×(悪い):画像バサツキが0.90超であった。
キャリア付着性を評価する場合には、初期において、ソリッド部と空白部とを含むサンプル画像の印刷を上記評価機に指示し、印刷の途中で評価機の印刷動作を止めた。その後、評価機から感光体ドラムを取り出して、感光体ドラムに付着したキャリア粒子の数を求めた。詳しくは、感光体ドラムに付着したキャリア粒子をテープを使って採取し、感光体ドラムの表面の単位面積(2cm×2cm)あたりに幾つのキャリア粒子が付着したかを求めた。そして、感光体ドラムに付着したキャリア粒子(以下、付着キャリア粒子と記載する)の数に基づいて、キャリア付着性を評価した。
キャリア付着性の評価基準は、以下のとおりである。
◎(非常に良い):付着キャリア粒子の数が5個未満であった。
○(良い):付着キャリア粒子の数が5個以上10個未満であった。
×(悪い):付着キャリア粒子の数が10個以上であった。
凝集度を評価する場合には、第1耐刷試験後、評価機から現像器を取り出して、現像器から試料(現像剤)5gを採取した。そして、採取した試料5gを、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別した。そして、篩別前の試料の質量(=5g)と、篩別後の試料の質量(篩別後に篩上に残留した試料の質量)とから、次の式に基づいて凝集度(質量%)を求めた。
凝集度=100×篩別後の試料の質量/篩別前の試料の質量
測定された凝集度は、下記基準に従って評価した。
○(良い):凝集度が1.0質量%以下であった。
×(良くない):凝集度が1.0質量%超であった。
[評価結果]
表4及び表5に、現像剤A〜Pの各々についての評価結果を示す。
現像剤A、B、C、D、M、N、O、及びP(実施例1〜8に係る2成分現像剤)の各々のキャリアは、前述の構成(1)及び(2)を有していた。詳しくは、実施例1〜8に係る2成分現像剤ではそれぞれ、キャリアに含まれるキャリア粒子のうち、粒子径20μm未満のキャリア粒子が70emu/g以上の磁力を有し、粒子径20μm以上のキャリア粒子が40emu/g以上60emu/g以下の磁力を有していた。また、実施例1〜8に係る2成分現像剤のキャリアはそれぞれ、粒子径20μm未満のキャリア粒子を7質量%以上15質量%以下の割合で含んでいた。表4及び表5に示されるように、実施例1〜8に係る2成分現像剤ではそれぞれ、トナーに安定した帯電量を与えることができ、初期においても耐刷試験後においても優れた現像性が維持された。また、実施例1〜8に係る2成分現像剤ではそれぞれ、初期においても耐刷試験後においても、キャリア現像(感光体ドラムに対するキャリア付着)を抑制できた。また、実施例1〜8に係る2成分現像剤ではそれぞれ、低温溶融トナー(詳しくは、融点100℃の結着樹脂を有するトナー)を使用しているにもかかわらず、耐ストレス性及び耐久性の両方に優れていた。