以下、本発明の実施形態について説明する。以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。更に、アクリルとメタクリルとを包括して「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。
以下、平均値は、何ら規定していなければ、数平均値を意味する。また、粉体(例えばトナー又はトナー粒子)に関する評価値(形状又は物性などを示す値)も、何ら規定していなければ、数平均値を意味する。数平均値は、相当数の測定対象について測定した値の和を、測定した個数で除算した値である。更に、粉体の粒子径は、何ら規定していなければ、電子顕微鏡により測定された一次粒子の円相当径である。円相当径は、粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径である。体積中位径D50は、コールターカウンター法を用いて、体積基準で算出されたメディアン径である。
<1.トナー>
本実施形態はトナーに関する。トナーは、有色トナーと透明トナーとを含有する。トナーは、多数の有色トナー粒子と多数の透明トナー粒子とから構成される粉体である。有色トナーは、有色トナー粒子を複数含む。有色トナーは、多数の有色トナー粒子から構成される粉体である。透明トナーは、透明トナー粒子を複数含む。透明トナーは、多数の透明トナー粒子から構成される粉体である。以下、有色トナー粒子と透明トナー粒子とを合わせてトナー粒子と記載することがある。なお、トナー粒子は、非カプセルトナー粒子であってもよい。また、トナー粒子は、トナーコアとトナーコアの表面に形成されるシェル層とを含むカプセルトナー粒子であってもよい。
本実施形態に係るトナーは非磁性トナーであることが好ましい。トナーが非磁性トナーである場合、トナー粒子は磁性粉を含有しない。磁性粉を含有するトナーは黒色となる傾向がある。トナー粒子に磁性粉を含有させないことにより、黒色以外の有色トナー粒子にも適用し易い。また、透明トナー粒子の透明性を保持し易くなる。なお、本実施形態に係るトナーは磁性粉を含有する磁性トナーであってもよい。
本実施形態に係るトナーは、1成分現像剤として使用することができる。なお、トナーを所望のキャリアと混合してトナーを2成分現像剤において使用してもよい。
本実施形態に係るトナーは、次に示す構成(1)〜(6)を有する。
構成(1):有色トナー粒子を複数含む有色トナーと、透明トナー粒子を複数含む透明トナーとを含有する。
構成(2):有色トナー粒子及び透明トナー粒子のうちの透明トナー粒子のみが、離型剤を含有し、且つ結着樹脂として少なくとも結晶性ポリエステル樹脂を含有する。
構成(3):透明トナー粒子に含有される結晶性ポリエステル樹脂の含有率は、透明トナー粒子に含有される結着樹脂の合計質量に対して10質量%以上30質量%以下である。
構成(4):透明トナー粒子の体積中位径(D50t)は有色トナー粒子の体積中位径(D50c)よりも大きく、透明トナー粒子の体積中位径(D50t)と有色トナー粒子の体積中位径(D50c)との差は0.0μmより大きく0.2μm以下である。
構成(5):3.0μm以下の粒子径を有する有色トナー粒子の個数割合(Rcs)は、有色トナー粒子の全個数に対して、5.0個数%以下である。
構成(6):有色トナー粒子の全個数に対する有色トナー粒子の体積中位径よりも1.0μm以上小さい粒子径を有する有色トナー粒子の個数割合(Rc1)は、透明トナー粒子の全個数に対する透明トナー粒子の体積中位径よりも1.0μm以上小さい粒子径を有する透明トナー粒子の個数割合(Rt1)よりも大きい。
構成(1)において、有色トナーと透明トナーとは例えば混合されている。そのため、トナーが構成(1)を有することにより、画像形成装置は透明トナー用のトナーホッパーを備えていなくてもよい。そのため、画像形成プロセスが増えることなく、画像形成装置の小型化を図ることができる。
次に、トナーが構成(2)を有することにより、トナーは以下の利点を有すると考えられる。トナーが構成(2)を有する第一の利点は次の通りである。透明トナー粒子が離型剤を含有することで、定着ローラーからトナーが離れ易くなる。これにより、記録媒体にトナー像を定着する際に、トナー像の一部が定着ローラーの表面に付着し難くなる。これにより、トナーの耐ホットオフセット性を向上させることができる。
トナーが構成(2)を有する第二の利点は次の通りである。有色トナー粒子が離型剤を含有しないことで、トナー粒子に含まれる着色剤及び結着樹脂のような成分の分散不良を抑制できると考えられる。これにより、形成される画像の色再現性が低下すること抑制でき、画像不良の発生を抑制できると考えられる。
トナーが構成(2)を有する第三の利点は次の通りである。透明トナー粒子が結着樹脂として少なくとも結晶性ポリエステル樹脂を含有し、有色トナー粒子が結着樹脂として結晶性ポリエステル樹脂を含有しないことで、トナーの耐熱保存性を向上できると考えられる。結晶性ポリエステル樹脂は、非結晶性樹脂と比較して低温で溶融し易い。そのため、通常、トナー粒子が結晶性ポリエステル樹脂を含有すると、トナー粒子同士が凝集し、トナーの耐熱保存性が低下する傾向がある。凝集し易いトナー粒子同士が接触することにより、トナー粒子の凝集が進行するためである。しかし、本実施形態のトナーにおいては、結晶性ポリエステル樹脂を含有する透明トナー粒子と、結晶性ポリエステル樹脂を含有しない有色トナー粒子とが混合されている。そのため、例えばトナーを保存する際に、結晶性ポリエステル樹脂を含有する透明トナー粒子が、結晶性ポリエステル樹脂を含有しない有色トナー粒子によって覆われていると考えられる。このように凝集し易い透明トナー粒子が凝集し難い有色トナー粒子によって覆われることで、有色トナー粒子及び透明トナー粒子の全体の凝集を抑制できると考えられる。その結果、トナーの耐熱保存性を向上できると考えられる。
次に、トナーが構成(3)を有することにより、トナーの定着性が向上すると考えられる。結晶性ポリエステル樹脂は非結晶性樹脂と比較して低温で溶融する傾向がある。そのため、結晶性ポリエステル樹脂の含有率が構成(3)の範囲内であると、定着温度が低い場合であってもトナーを記録媒体に定着させ易くなる。通常のトナーでは結晶性ポリエステル樹脂の含有率がこのような範囲内であると、結晶性ポリエステル樹脂の含有率が高いためにトナー粒子が凝集する傾向がある。しかし、本実施形態のトナーは、既に述べたように構成(2)を有することから、結晶性ポリエステル樹脂の含有率がこのような範囲内であっても、有色トナー粒子及び透明トナー粒子の全体の凝集を抑制することができる。その結果、トナーの定着性と耐熱保存性とを両立させることができる。
次に構成(4)について説明する。既に述べたように、透明トナー粒子の体積中位径(D50t)は有色トナー粒子の体積中位径(D50c)よりも大きく、透明トナー粒子の体積中位径(D50t)と有色トナー粒子の体積中位径(D50c)との差は0.0μmより大きく0.2μm以下である。つまり、D50t(単位μm)及びD50c(単位μm)は、下記数式(Ia)を満たす。
0.0<D50t−D50c≦0.2・・・(Ia)
トナーが構成(4)を有することにより、トナーは以下の利点を有すると考えられる。理解を容易にするため、1成分ジャンピング現像方式及び直接転写方式を採用する画像形成装置を用いて画像を形成する場合を例に挙げて説明する。しかし、本実施形態のトナーが使用される画像形成装置の現像方式及び転写方式は、1成分ジャンピング現像方式及び直接転写方式に限定されない。
以下、図1を参照して、トナーが構成(4)を有する利点を説明する。図1は、本実施形態に係るトナー1を像担持体10から用紙Pに転写することを説明するための図である。トナー1は、複数の透明トナー粒子1tと、複数の有色トナー粒子1cとを含む。トナー1を用いた画像形成プロセスでは、例えば帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程及び定着工程が行われる。
まず、現像工程を説明する。画像形成装置が1成分ジャンピング現像方式を採用する場合、現像工程において、体積中位径(D50c)が小さい有色トナー粒子1cに鏡像力及びファンデルワールス力が作用し易い。そのため、有色トナー粒子1cは現像スリーブ(不図示)から像担持体10(例えば、感光体ドラム)へ現像され難い。このため、体積中位径(D50c)が小さい有色トナー粒子1cよりも、体積中位径(D50t)が大きい透明トナー粒子1tが、現像スリーブから像担持体10へ現像され易い。そのため、本実施形態のトナー1を現像する際には、体積中位径(D50t)が大きい透明トナー粒子1tが先に像担持体10へ現像され、体積中位径(D50c)が小さい有色トナー粒子1cが後から像担持体10へ現像されると考えられる。
像担持体10へ現像された透明トナー粒子1t及び有色トナー粒子1cは、像担持体10上で積層構造を形成すると考えられる。詳しくは、体積中位径(D50t)が大きい透明トナー粒子1tは、像担持体10側に透明トナー粒子1tの層を形成し易い。また、体積中位径(D50c)が小さい有色トナー粒子1cは、現像スリーブ側に有色トナー粒子1cの層を形成し易い。つまり、トナー1の現像時に、像担持体10上に透明トナー粒子1tの層が配置され、透明トナー粒子1tの層上に有色トナー粒子1cの層が配置される位置関係が形成されると考えられる。
次に転写工程を説明する。画像形成装置が直接転写方式を採用する場合、現像工程で形成された位置関係を維持しながら、トナー1が像担持体10から用紙Pに転写される。そのため、トナー1の転写時に、用紙P上に有色トナー粒子1cの層が配置され、有色トナー粒子1cの層上に透明トナー粒子1tの層が配置される位置関係が形成されると考えられる。有色トナー粒子1cの層上に透明トナー粒子1tの層が配置されることで、光沢性に優れた画像を形成することができる。
次に定着工程を説明する。現像工程で有色トナー粒子1cの層上に透明トナー粒子1tの層が配置されることで、定着工程では定着ローラー(不図示)の近くに結晶性ポリエステル樹脂を含有する透明トナー粒子1tの層が位置することになる。そのため、トナー1の定着性を向上させることができる。
また、有色トナー粒子1cの層上に透明トナー粒子1tの層が配置されることで、トナー1の定着時に、定着ローラーの近くに離型剤を含有する透明トナー粒子1tの層が位置することになる。そのため、トナー1の定着時に、トナー像の一部が定着ローラーの表面に付着し難くなる。これにより、トナー1の耐ホットオフセット性を向上させることができる。
既に述べたように、透明トナー粒子の体積中位径(D50t)と有色トナー粒子の体積中位径(D50c)との差は0.0μmより大きく0.2μm以下である。差(D50t−D50c)が0.2μmを超えると、透明トナーの帯電量と有色トナーの帯電量との間に差が生じ易くなる。そのため、形成される画像の色再現性が低下し易くなり、現像スリーブ層ムラのような画像不良が発生し易くなる。その結果、連続して画像を形成した場合に、画像不良が発生し易くなる。また、形成される画像にカブリが発生し易くもなる。更に、差(D50t−D50c)が0.2μm以下であると、有色トナー粒子及び透明トナー粒子の一方が他方に埋没することを抑制できると考えられる。
以上、図1を参照して、トナーが構成(4)を有する利点を説明した。
構成(4)の好適な例では、透明トナー粒子の体積中位径(D50t)と有色トナー粒子の体積中位径(D50c)との差が0.1μm以上0.2μm以下である。つまり、D50t(単位μm)及びD50c(単位μm)は、下記数式(Ib)を満たすことが好ましい。数式(Ib)を満たすことにより、トナーの現像時に、像担持体上に透明トナー粒子層が配置され、透明トナー粒子層上に有色トナー粒子層が配置される位置関係を形成し易くなる。
0.1≦D50t−D50c≦0.2・・・(Ib)
透明トナー粒子の体積中位径(D50t)と有色トナー粒子の体積中位径(D50c)とは、例えば以下の方法で測定される。精密粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター株式会社製「コールターカウンターマルチサイザー3」)を用いて、測定試料(透明トナー)の粒子径の体積分布を得る。得られた透明トナーの粒子径の体積分布から、透明トナー粒子の体積中位径(D50t)を得る。有色トナー粒子の体積中位径(D50c)は、測定試料を透明トナーから有色トナーに変更する以外は、透明トナー粒子の体積中位径(D50t)の測定と同様の方法で測定される。
次に構成(5)について説明する。既に述べたように、3.0μm以下の粒子径を有する有色トナー粒子の個数割合(Rcs)は、有色トナー粒子の全個数に対して、5.0個数%以下である。つまり、Rcsは、下記数式(II)及び(IIIa)を満たす。
Rcs(個数%)=100×3.0μm以下の粒子径を有する有色トナー粒子の個数/有色トナー粒子の全個数・・・(II)
Rcs≦5.0・・・(IIIa)
通常、小さい粒子径を有するトナー粒子は現像スリーブへの付着力が強く、現像スリーブに残存し易い。そのため、形成される画像が乱れることがある。本実施形態のトナーでは、構成(4)で述べたように、有色トナー粒子の体積中位径(D50c)が透明トナー粒子の体積中位径(D50t)よりも小さい。そのため、小さい粒子径を有する有色トナー粒子の個数割合が、透明トナー粒子と比較して高くなり易い。しかし、本実施形態のトナーは構成(5)を有する。そのため、有色トナー粒子が現像スリーブに残存し難くなり、画像不良の発生を抑制することができる。
構成(5)の好適な例では、3.0μm以下の粒子径を有する有色トナー粒子の個数割合(Rcs)は、有色トナー粒子の全個数に対して、3.5個数%以上4.0個数%以下である。つまり、Rcsは、下記数式(IIIb)を満たすことが好ましい。
3.5≦Rcs≦4.0・・・(IIIb)
以下、有色トナー粒子の全個数に対する3.0μm以下の粒子径を有する有色トナー粒子の個数割合(Rcs)の測定方法の一例を説明する。まず、走査型電子顕微鏡を用いて、観察倍率2000倍で、測定試料(有色トナー)の写真を撮影する。測定試料が外添剤を含む場合には、測定試料を元素分析し、外添剤に特徴的な原子(例えばチタン原子、ケイ素原子、又は亜鉛原子)をマッピングする。これにより、外添剤に特徴的な原子がマッピングされた観察倍率2000倍で観察された測定試料の写真を撮影する。これらの写真を対照し、1視野に観察される、有色トナー粒子の全個数及び3.0μm以下の粒子径を有する有色トナー粒子の個数を測定する。3.0μm以下の粒子径を有する有色トナー粒子の個数を測定する際には、外添剤粒子をカウントしないように留意する。例えば、外添剤に特徴的な原子がマッピングされた粒子は、外添剤粒子であるためカウントしない。測定される有色トナー粒子の全個数及び3.0μm以下の粒子径を有する有色トナー粒子の個数から、有色トナー粒子の全個数に対する、3.0μm以下の粒子径を有する有色トナー粒子の個数の百分率(個数割合Rcs)を算出する。
以下、図2(a)、(b)及び(c)を参照して、顕微鏡の1視野に観察される粒子が有色トナー粒子であるか外添剤粒子であるかの判断方法の一例を説明する。なお、理解を容易にするために、図2(a)、(b)及び(c)は上述の個数割合(Rcs)の測定方法の観察倍率よりも高い倍率で示されている。図2(a)は、走査型電子顕微鏡を用いて本実施形態に係るトナーに含有される有色トナーを観察した写真図である。図2(a)は、観察倍率5000倍及び加速電圧20kVの条件で観察された写真図である。図2(a)中のスケールバーは5μmを示す。図2(b)は、図2(a)で示す写真図中の丸で示す部分を拡大した写真図である。図2(c)は、図2(b)で示す写真図に対して外添剤に特徴的な原子(図2(c)ではチタン原子)をマッピングした写真図である。図2(c)中、外添剤に特徴的な原子がマッピングされた部分は、白色で示される。図2(a)で示す写真図中の丸で示す部分に含まれる対象粒子が、図2(c)で示すようにマッピングされた場合には、対象粒子は外添剤粒子であると判断される。
次に構成(6)について説明する。既に述べたように、有色トナー粒子の全個数に対する有色トナー粒子の体積中位径(D50c)よりも1.0μm以上小さい粒子径を有する有色トナー粒子の個数割合(Rc1)は、透明トナー粒子の全個数に対する透明トナー粒子の体積中位径(D50t)よりも1.0μm以上小さい粒子径を有する透明トナー粒子の個数割合(Rt1)よりも大きい。つまり、Rc1及びRt1は下記数式(IV)、(V)及び(VIa)を満たす。
Rc1(個数%)=100×有色トナー粒子の体積中位径よりも1.0μm以上小さい粒子径を有する有色トナー粒子の個数/有色トナー粒子の全個数・・・(IV)
Rt1(個数%)=100×透明トナー粒子の体積中位径よりも1.0μm以上小さい粒子径を有する透明トナー粒子の個数/透明トナー粒子の全個数・・・(V)
Rc1>Rt1・・・(VIa)
なお、有色トナー粒子の体積中位径(D50c)よりも1.0μm以上小さい粒子径を有する有色トナー粒子は、「D50c−1.0μm」以下の粒子径を有する有色トナー粒子である。透明トナー粒子の体積中位径(D50t)よりも1.0μm以上小さい粒子径を有する透明トナー粒子は、「D50t−1.0μm」以下の粒子径を有する透明トナー粒子である。
ここで、有色トナー粒子の粒子径と透明トナー粒子の粒子径とが重なる範囲が小さくなると、トナーの現像時に、像担持体上に透明トナー粒子の層が配置され、透明トナー粒子の層上に有色トナー粒子の層が配置される位置関係が形成され易くなる。構成(4)で述べたように、透明トナー粒子の体積中位径(D50t)は有色トナー粒子の体積中位径(D50c)よりも大きい。そのため、大きい体積中位径(D50t)を有する透明トナー粒子の微粉側の個数分布を、有色トナー粒子よりも少なくすることにより、有色トナー粒子の粒子径と透明トナー粒子の粒子径とが重なる範囲を減少できると考えられる。本実施形態のトナーは構成(6)を有する。そのため、有色トナー粒子の粒子径と透明トナー粒子の粒子径とが重なる範囲を減少できると考えられる。そのため、透明トナー粒子の層と有色トナー粒子の層との位置関係が良好に連続して形成され易い。その結果、連続して画像を形成した場合であっても、画像不良の発生を抑制することができる。
構成(6)の好適な例では、有色トナー粒子の全個数に対する有色トナー粒子の体積中位径(D50c)よりも1.0μm以上小さい粒子径を有する有色トナー粒子の個数割合(Rc1)と、透明トナー粒子の全個数に対する透明トナー粒子の体積中位径(D50t)よりも1.0μm以上小さい粒子径を有する透明トナー粒子の個数割合(Rt1)との差は、5以上6以下である。つまり、Rc1とRt1とは、下記数式(VIb)を満たすことが好ましい。下記数式(VIb)を満たすことにより、連続した場合であっても画像不良の発生を特に抑制することができる。
5≦Rc1−Rt1≦6・・・(VIb)
個数割合(Rt1)は、例えば以下の方法で測定される。精密粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター株式会社製「コールターカウンターマルチサイザー3」)を用いて、測定試料(透明トナー)の粒子径の個数分布を得る。得られた透明トナーの粒子径の個数分布から、数式(V)に従って個数割合(Rt1)を算出する。図3(a)は、透明トナーの粒子径の個数分布の一例を示す。図3(a)中、横軸は透明トナー粒子の粒子径(μm)を示す。縦軸は対応する粒子径を有する透明トナー粒子の個数割合(個数%)を示す。透明トナー粒子の全個数に対する、透明トナー粒子の体積中位径よりも1.0μm以上小さい粒子径(D50t−1.0μm以下の粒子径)を有する透明トナー粒子の個数割合(Rt1)は、個数分布曲線と横軸とで囲まれる領域の面積に対する斜線で示される領域の面積の比率に対応する。
個数割合(Rc1)は、例えば以下の方法で測定される。精密粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター株式会社製「コールターカウンターマルチサイザー3」)を用いて、測定試料(有色トナー)の粒子径の個数分布を得る。得られた有色トナーの粒子径の個数分布から、数式(IV)に従って個数割合(Rc1)を算出する。図3(b)は、有色トナーの粒子径の個数分布の一例を示す。図3(b)中、横軸は有色トナー粒子の粒子径(μm)を示す。縦軸は対応する粒子径を有する有色トナー粒子の個数割合(個数%)を示す。有色トナー粒子の全個数に対する、有色トナー粒子の体積中位径よりも1.0μm以上小さい粒子径(D50c−1.0μm以下の粒子径)を有する有色トナー粒子の個数割合(Rc1)は、個数分布曲線と横軸とで囲まれる領域の面積に対するドットで示される領域の面積の比率に対応する。
有色トナーの含有量は、透明トナー1.0質量部に対して、1.0質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。有色トナーの含有量が透明トナー1.0質量部に対して1.0質量部以上であると、形成される画像における色再現性を向上でき、画像不良の発生を抑制できる。有色トナーの含有量が透明トナー1.0質量部に対して5.0質量部以下であると、トナーの定着性を向上できる。また、トナーの耐ホットオフセット性を向上させ易くなる。
有色トナーの含有量は、透明トナー1.0質量部に対して、3.0質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましい。有色トナーの含有量がこのような範囲内であると、トナーの耐熱保存性を一層向上できる。
<2.有色トナー>
有色トナーに含まれる有色トナー粒子は、離型剤及び結晶性ポリエステル樹脂を含有しない。有色トナー粒子が離型剤を含有しないことにより、トナー粒子に含まれる着色剤及び結着樹脂のような成分の分散性を向上させ易くなる。その結果、形成される画像おける色再現性が向上し、高画質な画像が形成され易くなる。また、有色トナー粒子が結晶性ポリエステル樹脂を含有しないことにより、トナーの耐熱保存性を向上させ易くなる。
有色トナー粒子は、結晶性ポリエステル樹脂と異なる結着樹脂と、着色剤とを含有する。有色トナー粒子は、必要に応じて、電荷制御剤を含有してもよい。有色トナー粒子の体積中位径(D50c)は、上述の構成(4)を満たし、更に5.0μm以上10.0μm以下であることが好ましい。
<2−1.結着樹脂>
有色トナー粒子は、結晶性ポリエステル樹脂と異なる結着樹脂を含有する。有色トナー粒子に含有される結着樹脂は非結晶性であることが好ましい。有色トナー粒子に含有される結着樹脂が結晶性であるか非結晶性であるかは、例えば結着樹脂の結晶化度から判断できる。本実施形態において結晶化度が50.0%以上である結着樹脂を結晶性とする。本実施形態において結晶化度が50.0%未満である結着樹脂を非結晶性とする。有色トナー粒子に含有される結着樹脂の結晶化度は、0.0%以上50.0%未満であることが好ましく、0.0%以上27.0%未満であることがより好ましく、20.0%以上26.5%以下であることが特に好ましい。有色トナー粒子に含有される結着樹脂の結晶化度は、測定試料をポリエステル樹脂から有色トナー粒子に含有される結着樹脂に変更する以外は、後述するポリエステル樹脂の結晶化度の測定と同様の方法で測定される。
有色トナー粒子に含有される結晶性ポリエステル樹脂と異なる結着樹脂の例は、後述する透明トナー粒子に含有される別の結着樹脂の例と同様である。トナー中の着色剤の分散性、トナーの帯電性及び記録媒体に対するトナーの定着性を向上できることから、これらの結着樹脂のなかでも、スチレン系樹脂、スチレンアクリル酸系樹脂又は非結晶性ポリエステル樹脂が好ましく、非結晶性ポリエステル樹脂がより好ましい。
有色トナー粒子に含有されてもよい非結晶性ポリエステル樹脂は、後述する透明トナー粒子に含有されてもよい非結晶性ポリエステル樹脂と同様である。
以下、結着樹脂として用いられるスチレン系樹脂及びスチレンアクリル酸系樹脂を説明する。スチレン系樹脂は、スチレン系モノマーの重合体である。スチレン系樹脂は、スチレン系モノマーとその他のモノマー(スチレン系モノマー及びアクリル酸系モノマー以外のモノマー)との共重合体であってもよい。スチレンアクリル酸系樹脂は、スチレン系モノマーとアクリル酸系モノマーとの共重合体である。スチレンアクリル酸系樹脂は、スチレン系モノマーとアクリル酸系モノマーとその他のモノマーとの共重合体であってもよい。
スチレン系モノマーの例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン又はp−エチルスチレンが挙げられる。
アクリル酸系モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、α−クロロ(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸フェニル又はその他のアクリル酸誘導体が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル又は(メタ)アクリル酸ドデシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが挙げられる。その他のアクリル酸誘導体の例としては、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル又はアクリルアミドが挙げられる。
その他のモノマーの例としては、ビニルナフタレン、アルキレンモノオレフィン、ハロゲン化ビニル、ビニルエステル類、ビニルアルキルエーテル、ビニルケトン類、N−ビニル化合物が挙げられる。アルキレンモノオレフィンの例としては、アルキレン(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン又はイソブチレン)のモノオレフィンが挙げられる。ハロゲン化ビニルの例としては、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニルが挙げられる。ビニルエステル類の例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル又は酪酸ビニルが挙げられる。ビニルアルキルエーテルの例としては、ビニルメチルエーテル又はビニルイソブチルエーテルが挙げられる。ビニルケトン類の例としては、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン又はメチルイソプロペニルケトンが挙げられる。N−ビニル化合物の例としては、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール又はN−ビニルピロリデンが挙げられる。
スチレンアクリル酸系樹脂を調製する際に、例えば水酸基を有するモノマー(例えば、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル)を用いることで、スチレンアクリル酸系樹脂に水酸基が導入される。例えば、水酸基を有するモノマーの使用量を調整することで、得られるスチレンアクリル酸系樹脂の水酸基価が調整される。
スチレンアクリル酸系樹脂を調製する際に、例えば(メタ)アクリル酸を用いることで、スチレンアクリル酸系樹脂にカルボキシル基が導入される。例えば、(メタ)アクリル酸の使用量を調整することで、得られるスチレンアクリル酸系樹脂の酸価が調整される。
結着樹脂がスチレン系樹脂又はスチレンアクリル酸系樹脂である場合、有色トナー粒子の強度及び記録媒体に対するトナーの定着性を向上させるためには、スチレン系樹脂又はスチレンアクリル酸系樹脂の数平均分子量(Mn)が2000以上3000以下であることが好ましい。スチレン系樹脂又はスチレンアクリル酸系樹脂の分子量分布(数平均分子量Mnに対する質量平均分子量Mwの比率Mw/Mn)は10以上20以下であることが好ましい。スチレン系樹脂又はスチレンアクリル酸系樹脂のMnとMwは、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定される。
また、有色トナー粒子は、結着樹脂として熱硬化性樹脂を含有してもよい。有色トナー粒子が熱硬化性樹脂を含有することにより、結着樹脂中に一部架橋構造が導入され、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させつつ、トナーの耐熱保存性、形態保持性及び耐久性を向上させ易い。有色トナー粒子が含有してもよい熱硬化性樹脂は、後述する透明トナー粒子が含有してもよい熱硬化性樹脂と同様である。
有色トナー粒子が含有する結着樹脂のガラス転移点(Tg)は50℃以上65℃以下であることが好ましく、50℃以上60℃以下であることが更に好ましい。結着樹脂のガラス転移点が50℃以上であれば、トナー粒子と他のトナー粒子とが現像装置内で融着し難い。また、トナー粒子が像担持体に付着し難い。結着樹脂のガラス転移点が65℃以下であれば、トナーの低温定着性を向上させ易い。結着樹脂のガラス転移点は、例えば示差走査熱量計を用いて結着樹脂の吸熱曲線を測定することにより、吸熱曲線における比熱の変化点から求められる。
<2−2.着色剤>
有色トナー粒子に含まれる着色剤としては、有色トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料が用いられる。着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
有色トナー粒子に含まれる着色剤は、黒色着色剤であってもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
有色トナー粒子に含まれる着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤又はシアン着色剤であってもよい。
イエロー着色剤の例としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物又はアリールアミド化合物が挙げられる。イエロー着色剤の好適な例としては、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191又は194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG又はC.I.バットイエローが挙げられる。
マゼンタ着色剤の例としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物又はペリレン化合物が挙げられる。マゼンタ着色剤の好適な例としては、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221又は254)が挙げられる。
シアン着色剤の例としては、銅フタロシアニン、銅フタロシアニン誘導体、アントラキノン化合物又は塩基染料レーキ化合物が挙げられる。シアン着色剤の好適な例としては、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62又は66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー又はC.I.アシッドブルーが挙げられる。
また、イエロー、マゼンタ及びシアン以外の色の着色剤であってもよい。このような着色剤としては、アシッドバイオレットのような染料が挙げられる。
<2−3.電荷制御剤>
有色トナー粒子は、電荷制御剤を含んでいてもよい。電荷制御剤は、例えばトナーの帯電レベル及び帯電立ち上がり特性を向上させ、耐久性及び安定性に優れたトナーを得るために配合される。トナーの帯電立ち上がり特性は、所定の帯電レベルにトナーを短時間で帯電可能か否かの指標である。正帯電させたトナーを用いて現像する場合には、正帯電性の電荷制御剤を添加することが好ましい。負帯電させたトナーを用いて現像する場合には、負帯電性の電荷制御剤を添加することが好ましい。
正帯電性の電荷制御剤の例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2−オキサジン、1,3−オキサジン、1,4−オキサジン、1,2−チアジン、1,3−チアジン、1,4−チアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン又はキノキサリンのようなアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリーンBH/C、アジンディープブラックEW又はアジンディーブラック3RLのようなアジン化合物からなる直接染料;ニグロシン、ニグロシン塩又はニグロシン誘導体のようなニグロシン化合物;ニグロシンBK、ニグロシンNB又はニグロシンZのようなニグロシン化合物からなる酸性染料;ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;又はベンジルデシルヘキシルメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウムクロライドのような4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの電荷制御剤の2種以上を組み合わせてもよい。より迅速なトナーの帯電立ち上がり性が得られる観点から、これらの正帯電性の電荷制御剤のなかでも、ニグロシン化合物が好ましい。
また、4級アンモニウム塩、カルボン酸塩又はカルボキシル基を官能基として有する樹脂又はオリゴマ−を正帯電性の電荷制御剤として用いてもよい。より具体的には、4級アンモニウム塩を有するスチレン系樹脂、4級アンモニウム塩を有するアクリル酸系樹脂、4級アンモニウム塩を有するスチレンアクリル酸系樹脂、4級アンモニウム塩を有するポリエステル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン系樹脂、カルボン酸塩を有するアクリル酸系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレンアクリル酸系樹脂、カルボン酸塩を有するポリエステル系樹脂、カルボキシル基を有するポリスチレン系樹脂、カルボキシル基を有するアクリル酸系樹脂、カルボキシル基を有するスチレンアクリル酸系樹脂又はカルボキシル基を有するポリエステル系樹脂が挙げられる。
帯電量を所望の範囲内の値に調整し易い観点から、4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレンアクリル酸系樹脂が好ましい。スチレンアクリル酸系樹脂に用いられるアクリル酸系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル又は(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。
4級アンモニウム塩は、例えば(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステルから第4級化の工程を経て誘導される。誘導される(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジプロピルアミノエチル又は(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチルのような(メタ)アクリル酸ジ(低級アルキル)アミノエチル;ジメチル(メタ)アクリルアミド;ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドが好適である。また、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル又はN−メチロール(メタ)アクリルアミドのような水酸基含有重合性モノマーを重合時に併用してもよい。
負帯電性の電荷制御剤の例としては、キレート化合物である有機金属錯体が挙げられる。有機金属錯体としては、例えばアセチルアセトン金属錯体、サリチル酸系金属錯体又はこれらの塩が好ましく、サリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩が更に好ましい。具体的には、アルミニウムアセチルアセトナート、鉄(II)アセチルアセトナート又は3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸クロムが挙げられる。
電荷制御剤の含有量は、トナー全体の質量100質量部に対して、0.5質量部以上15質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上8.0質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上7.0質量部以下であることが最も好ましい。電荷制御剤の含有量が0.5質量部以上であると、トナーを安定して帯電し易いため、画像濃度を向上させ易い。また、電荷制御剤の分散不良に起因するカブリの発生を抑制し易く、トナーによる像担持体の汚染を防止し易い。電荷制御剤の含有量が15質量部以下であると、高温高湿下でもトナーを安定して帯電させ易いため、画像不良を抑制し易く、トナーによる像担持体の汚染を抑制し易い。
<3.透明トナー粒子>
有色トナー粒子及び透明トナー粒子のうちの透明トナー粒子のみが、離型剤及び結晶性ポリエステル樹脂を含有する。これにより、既に述べたように、形成される画像における画像不良の発生を抑制でき、トナーの耐ホットオフセット性及び耐熱保存性を向上させることができる。透明トナー粒子は、結晶性ポリエステル樹脂と異なる結着樹脂を更に含有する。透明トナー粒子は、透光性を有する。そのため、透明トナー粒子は、着色剤を含有しないことが好ましい。透明トナー粒子は、必要に応じて、電荷制御剤を含有してもよい。なお、透明トナー粒子の体積中位径(D50t)は、上述の構成(4)を満たし、更に5.0μm以上10.0μm以下であることが好ましい。
<3−1.結着樹脂>
透明トナー粒子は、結着樹脂として少なくとも結晶性ポリエステル樹脂を含有する。透明トナー粒子は、結晶性ポリエステル樹脂と異なる結着樹脂(以下、別の結着樹脂と記載することがある)を更に含有する。
透明トナー粒子に含有される結晶性ポリエステル樹脂の含有率は、透明トナー粒子に含有される結着樹脂の合計質量(結晶性ポリエステル樹脂と別の結着樹脂との合計質量)に対して、10質量%以上30質量%以下である。透明トナー粒子に含有される結晶性ポリエステル樹脂の含有率が10質量%未満であると、トナーの定着性が低下する傾向がある。透明トナー粒子に含有される結晶性ポリエステル樹脂の含有率が30質量%を超えると、トナーの耐熱保存性が低下する傾向がある。透明トナー粒子に含有される結晶性ポリエステル樹脂の含有率が30質量%を超えると、連続して画像を形成した場合に、画像不良が発生し易くもなる。また、トナーの耐熱保存性が低下する傾向もある。
透明トナー粒子に含有される結晶性ポリエステル樹脂の含有率は、透明トナー粒子に含有される結着樹脂の合計質量に対して、20質量%以上30質量%以下であることが好ましい。透明トナー粒子に含有される結晶性ポリエステル樹脂の含有率がこのような範囲内であると、トナーの定着性及び耐ホットオフセット性を特に向上させることができる。
別の結着樹脂は、非結晶性であることが好ましい。別の結着樹脂が結晶性であるか非結晶性であるかは、例えば別の結着樹脂の結晶化度から判断できる。本実施形態において結晶化度が50.0%以上である別の結着樹脂を結晶性とする。本実施形態において結晶化度が50.0%未満である別の結着樹脂を非結晶性とする。別の結着樹脂の結晶化度は、後述するポリエステル樹脂の結晶化度の測定と同様の方法で測定される。
透明トナー粒子に含有される別の結着樹脂の例としては、結晶性ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂が好ましい。このような熱可塑性樹脂の例としては、スチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂、オレフィン樹脂(具体的には、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂)、ビニル樹脂(具体的には、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ビニルエーテル樹脂又はN−ビニル樹脂)、非結晶性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、スチレンアクリル酸系樹脂又はスチレンブタジエン系樹脂が挙げられる。透明トナー粒子の透光性に優れることから、これらの別の結着樹脂のなかでも、非結晶性ポリエステル樹脂が好ましい。
別の結着樹脂が非結晶性ポリエステル樹脂である場合、透明トナー粒子に含有される結着樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂である。この場合、透明トナー粒子に含有される結晶性ポリエステル樹脂の含有率は、透明トナー粒子に結着樹脂として含有される結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂の合計質量に対して、10質量%以上30質量%以下であることが好ましく、20質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
透明トナー粒子に含有される結着樹脂全体の結晶化度は、6.0%以上64.0%以下であることが好ましく、27.0%以上38.0%以下であることがより好ましく、28.5%以上35.5%以下であることが特に好ましい。透明トナー粒子に含有される結着樹脂全体の結晶化度は、透明トナー粒子に含有される結晶性ポリエステル樹脂及び別の結着樹脂の全体の結晶化度である。透明トナー粒子に含有される結着樹脂の結晶化度は、測定試料をポリエステル樹脂から透明トナー粒子に含有される結着樹脂に変更する以外は、後述するポリエステル樹脂の結晶化度の測定と同様の方法で測定される。なお、実施例で後述する方法で算出される結着樹脂の結晶化度は、測定試料として結着樹脂を用いて測定される結着樹脂の結晶化度と概ね一致する。
以下、透明トナー粒子に結着樹脂として含有される結晶性ポリエステル樹脂、及び透明トナー粒子に結着樹脂として含有されてもよい非結晶性ポリエステル樹脂について説明する。ポリエステル樹脂が結晶性であるか非結晶性であるかは、例えばポリエステル樹脂の結晶化度から判断できる。本実施形態において結晶化度が50.0%以上であるポリエステル樹脂を結晶性とする。本実施形態において結晶化度が50.0%未満であるポリエステル樹脂を非結晶性とする。
ポリエステル樹脂の結晶化度は、例えば示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される。ポリエステル樹脂の結晶化度の具体的な測定方法は、実施例で後述する方法又はその代替法である。
以下、結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂に共通する性質を説明する。なお、結晶性ポリエステル樹脂と非結晶性ポリエステル樹脂とを包括的に、ポリエステル樹脂と総称する。ポリエステル樹脂は、2価又は3価以上のアルコールと2価又は3価以上のカルボン酸とを重合させることで得られる。
ポリエステル樹脂を調製するために用いられる2価アルコールの例としては、ジオール類又はビスフェノール類が挙げられる。
ジオール類の例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
ビスフェノール類の例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物又はビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
ポリエステル樹脂を調製するために用いられる3価以上のアルコールの例としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
ポリエステル樹脂を調製するために用いられる2価カルボン酸の例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸(具体的には、n−ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸又はイソドデシルコハク酸)又はアルケニルコハク酸(具体的には、n−ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸又はイソドデセニルコハク酸)が挙げられる。
ポリエステル樹脂を調製するために用いられる3価以上のカルボン酸の例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸又はエンポール三量体酸が挙げられる。
また、2価又は3価以上のカルボン酸として、2価又は3価以上のカルボン酸のエステル形成性の誘導体(例えば、酸ハライド、酸無水物又は低級アルキルエステル)を用いてもよい。2価又は3価以上のカルボン酸の酸無水物としては、例えばアルケニル無水コハク酸が挙げられ、より具体的にはドデセニル無水コハク酸が挙げられる。ここで、低級アルキルとは、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を意味する。
ポリエステル樹脂を調製する際に、アルコールの使用量とカルボン酸の使用量とをそれぞれ変更することで、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価が調整される。ポリエステル樹脂の分子量を上げると、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価は低下する傾向がある。
結着樹脂がポリエステル樹脂である場合、有色トナー粒子の強度及び記録媒体に対するトナーの定着性を向上させるためには、ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)が1000以上2000以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布(数平均分子量Mnに対する質量平均分子量Mwの比率Mw/Mn)は9以上21以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂のMnとMwは、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定される。
ポリエステル樹脂の軟化点は80℃以上150℃以下であることが好ましく、90℃以上140℃以下であることが更に好ましい。
また、透明トナー粒子は、結着樹脂として熱硬化性樹脂を含有していてもよい。熱硬化性樹脂が含有されることにより、結着樹脂中に一部架橋構造が導入され、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させつつ、トナーの耐熱保存性、形態保持性及び耐久性を向上させ易い。
透明トナー粒子の結着樹脂として用いられる熱硬化性樹脂の好適な例としては、エポキシ系樹脂又はシアネート系樹脂が挙げられる。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリアルキレンエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂又はシアネート樹脂が挙げられる。
透明トナー粒子が含有する結着樹脂のガラス転移点(Tg)は50℃以上65℃以下であることが好ましく、50℃以上60℃以下であることが更に好ましい。結着樹脂のガラス転移点が50℃以上であれば、トナー粒子と他のトナー粒子とが現像装置内で融着し難い。また、トナー粒子が像担持体に付着し難い。結着樹脂のガラス転移点が65℃以下であれば、トナーの低温定着性を維持させ易い。
結着樹脂のガラス転移点は、例えば示差走査熱量計を用いて結着樹脂の吸熱曲線を測定することにより、吸熱曲線における比熱の変化点から求められる。測定装置として、例えば、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)が使用される。10mgの測定試料(結着樹脂)をアルミパン中に入れる。リファレンスとして空のアルミパンを使用する。測定装置の測定条件を、測定温度範囲25℃以上200℃以下、昇温速度10℃/分に設定する。測定装置を用いて測定試料の吸熱曲線を得る。得られた吸熱曲線における比熱の変化点から、測定試料のガラス転移点を求める。
<3−2.離型剤>
透明トナー粒子は、離型剤を含有する。透明トナー粒子が離型剤を含有することにより、トナーの耐ホットオフセット性を向上できる。
離型剤の好適な例としては、脂肪族炭化水素ワックス(例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、オレフィン共重合体、ポリオレフィン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス又はフィッシャートロプシュワックス)、脂肪族炭化水素ワックスの酸化物(例えば、酸化ポリエチレンワックスのブロック共重合体又は酸化ポリエチレンワックス)、植物ワックス(例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう又はライスワックス)、動物ワックス(例えば、みつろう、ラノリン又は鯨ろう)、鉱物ワックス(例えば、オゾケライト、セレシン又はペトロラタム)、脂肪酸エステルを主成分とするワックス(例えば、モンタン酸エステルワックス又はカスターワックス)又は脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックス(例えば、脱酸カルナバワックス)が挙げられる。これらの離型剤の2種以上を組み合わせてもよい。透明トナー粒子がこのような離型剤を含有することにより、トナーの耐オフセット性及び定着性を向上させ易く、像スミアリングのような画像不良を抑制し易くなる。
トナーの耐ホットオフセット性を向上させるためには、離型剤の含有量は、透明トナー粒子全体の質量100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、1質量部以上20質量部以下であることがより好ましく、1質量部以上10質量部以下であることが特に好ましい。離型剤の添加量が1質量部以上であると、トナーの耐オフセット性を向上し易く、像スミアリングのような画像不良を抑制し易くなる。離型剤の添加量が30質量部以下であると、トナー粒子同士が融着し難く、トナーの耐熱保存性を向上させ易い。
なお、結着樹脂と離型剤との相溶性を改善するために、相溶化剤を透明トナー粒子に含有させてもよい。
<3−3.電荷制御剤>
透明トナー粒子は、電荷制御剤を含有してもよい。透明トナー粒子に含有される電荷制御剤は、透明である限り限定されない。透明トナー粒子に含有される電荷制御剤の例は、有色トナーに含有される電荷制御剤の例と同様である。
<4.外添剤>
有色トナー粒子の表面には、必要に応じて、外添剤を付着させてもよい。外添剤を付着させる前の有色トナー粒子を、有色トナー母粒子と記載することがある。また、透明トナー粒子の表面にも、必要に応じて、外添剤を付着させてもよい。外添剤を付着させる前の透明トナー粒子を、透明トナー母粒子と記載することがある。
外添剤としては、例えば、金属酸化物(例えば、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム又はチタン酸バリウム)、炭化珪素又はシリカが挙げられる。シリカの具体例としては、コロイダルシリカ又は疎水性シリカが挙げられる。外添剤としては、例えば、脂肪酸と金属との塩(例えば、ステアリン酸亜鉛)も挙げられる。また、外添剤は、必要に応じて、表面処理剤(例えば、アミノシラン、シリコーンオイル、ヘキサメチルジシラザン、チタネートカップリング剤又はシランカップリング剤)により表面処理されていてもよい。
外添剤の粒子径は、0.01μm以上1.0μm以下であることが好ましい。外添剤の使用量は、有色トナー母粒子又は透明トナー母粒子100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましく、1質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
<5.トナーの製造方法>
本実施形態のトナーの製造方法は、例えば、有色トナーの製造工程、透明トナーの製造工程及び有色トナーと透明トナーとの混合工程を含む。本実施形態のトナーの製造方法は、適宜改変して実施されてもよく、別の公知の工程を更に含んでもよい。
<5−1.有色トナーの製造工程>
有色トナーの製造方法としては、例えば、凝集法又は粉砕法が挙げられる。
凝集法は、例えば、凝集工程及び合一化工程を含む。凝集工程では、有色トナーを構成する成分を含む微粒子を水性媒体中で凝集させて、凝集粒子を形成する。合一化工程では、凝集粒子に含まれる成分を水性媒体中で合一化させて有色トナー母粒子を形成する。凝集法によれば、形状が均一であり、粒子径の揃った有色トナー母粒子を得易い。凝集法は、後述する外添工程を含んでもよい。
次に粉砕法を説明する。粉砕法によれば、比較的容易に有色トナーを調製できる。粉砕法で有色トナーを製造する場合、有色トナーの製造工程は、例えば混合工程、混練工程、粉砕工程、球形化工程及び分級工程を含む。有色トナーの製造工程は、更に後述する外添工程を含んでもよい。混合工程では、例えば、結着樹脂と、着色剤と、内添剤(例えば、電荷制御剤)とを混合して、混合物を得る。混練工程では、得られた混合物を溶融し混練して、混練物を得る。粉砕工程では、得られた混練物を粉砕して、粉砕物を得る。球形化工程では、粉砕物を更に粉砕することで、粉砕物を球形化する。
分級工程では、得られた粉砕物を分級して、有色トナー母粒子を得る。分級は、分級機(例えば、気流式分級機)を用いて行われる。有色トナーの製造の分級工程において、分級機の微粉側に除去される微粉ゾーンのゾーン幅(ΔFc)、粗粉側に除去される粗粉ゾーンのゾーン幅(ΔMc)及び分級回数のうちの1以上を変更することにより、有色トナー粒子の体積中位径(D50c)、有色トナー粒子の全個数に対する有色トナー粒子の体積中位径(D50c)よりも1.0μm以上小さい粒子径を有する有色トナー粒子の個数割合(Rc1)、及び有色トナー粒子の全個数に対する3.0μm以下の粒子径を有する有色トナー粒子の個数割合(Rcs)を所望の値に調整することができる。
有色トナーの製造の分級工程において、分級機の微粉側に除去される微粉ゾーンのゾーン幅(ΔFc)は、10mm以上13mm以下であることが好ましい。分級機の粗粉側に除去される粗粉ゾーンのゾーン幅(ΔMc)は20mm以上25mm以下であることが好ましく、22mmであることがより好ましい。分級回数は2回であることが好ましい。
外添工程では、有色トナー母粒子の表面に外添剤を付着させて、有色トナー粒子を得る。外添剤を付着させる好適な方法としては、外添剤が有色トナー母粒子の表面に埋没しないような条件で、混合機(例えば、FMミキサー、ナウターミキサー(登録商標))を用いて、有色トナー母粒子と外添剤とを混合する方法が挙げられる。
<5−2.透明トナーの製造工程>
透明トナーは、例えば有色トナーと同様に製造される。粉砕法で透明トナーを製造する場合、透明トナーの製造工程は、例えば混合工程、混練工程、粉砕工程、球形化工程及び分級工程を含む。透明トナーの製造工程は、更に外添工程を含んでもよい。混合工程では、例えば、結着樹脂としての結晶性ポリエステル樹脂と、別の結着樹脂と、離型剤と、内添剤(例えば、電荷制御剤)とを混合して、混合物を得る。混練工程では、得られた混合物を溶融し混練して、混練物を得る。粉砕工程では、得られた混練物を粉砕して、粉砕物を得る。球形化工程では、粉砕物を更に粉砕することで、粉砕物を球形化する。
分級工程では、得られた粉砕物を分級して、透明トナー母粒子を得る。分級は、分級機(例えば、気流式分級機)を用いて行われる。透明トナーの製造の分級工程において、分級機の微粉側に除去される微粉ゾーンのゾーン幅(ΔFt)、粗粉側に除去される粗粉ゾーンのゾーン幅(ΔMt)及び分級回数のうちの1以上を変更することにより、透明トナー粒子の体積中位径(D50t)、及び透明トナー粒子の全個数に対する透明トナー粒子の体積中位径(D50t)よりも1.0μm以上小さい粒子径を有する透明トナー粒子の個数割合(Rt1)を所望の値に調整することができる。
透明トナーの分級工程において、分級機の微粉側に除去される微粉ゾーンのゾーン幅(ΔFt)は、15mm以上17mm以下であることが好ましい。分級機の粗粉側に除去される粗粉ゾーンのゾーン幅(ΔMt)は20mm以上25mm以下であることが好ましく、22mmであることがより好ましい。分級回数は1回であることが好ましい。
構成(4)〜(6)を満たすトナーを得るためには、透明トナーの製造の分級工程において分級機の微粉側に除去される微粉ゾーンのゾーン幅(ΔFt)と、有色トナーの製造の分級工程において分級機の微粉側に除去される微粉ゾーンのゾーン幅(ΔFc)との差(ΔFt−ΔFc)が、3mm以上5mm以下であることが好ましく、3mm以上4mm以下であることがより好ましく、4mmであることが特に好ましい。
<5−3.有色トナーと透明トナーとの混合工程>
有色トナーと透明トナーとの混合工程では、有色トナーと透明トナーとを混合して、トナーを得る。有色トナーと透明トナーとを混合するためには、例えば、FMミキサーが用いられる。
本発明の実施例について説明する。しかし、本発明は以下の実施例に何ら限定されない。
<1.ポリエステル樹脂の製造>
以下の方法で、有色トナー粒子及び透明トナー粒子に含有させるポリエステル樹脂A及びBを製造した。
(ポリエステル樹脂Aの製造)
ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物1960gと、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物780gと、ドデセニル無水コハク酸257gと、テレフタル酸770gと、酸化ジブチル錫4gとを容器に投入した。容器内の空気を窒素ガスで置換した。窒素雰囲気下、温度235℃及び常圧の条件で、容器内容物を8時間反応させた。その後、温度235℃及び圧力8.3kPaの条件で、容器内容物を1時間反応させた。更に、温度180℃で、容器内容物に無水トリメリット酸を添加した。その後、10℃/時の昇温速度で容器内容物を210℃まで昇温した。その結果、ポリエステル樹脂Aが得られた。ポリエステル樹脂Aの結晶化度は25.0%であった。このことから、ポリエステル樹脂Aは非結晶性であることが確認された。
(ポリエステル樹脂Bの製造)
1,4−ブタンジオール918gと、1,6−ヘキサンジオール118gと、フマル酸1160gと、酸化ジブチル錫4gと、ハイドロキノン2gとを容器に投入した。容器内の空気を窒素ガスで置換した。窒素雰囲気下、温度160℃及び常圧の条件で、容器内容物を5時間反応させた。その後、温度200℃及び常圧の条件で、容器内容物を1時間反応させた。その結果、ポリエステル樹脂Bが得られた。ポリエステル樹脂Bの結晶化度は60.0%であった。このことから、ポリエステル樹脂Bは結晶性であることが確認された。
(ポリエステル樹脂の結晶化度の測定方法)
ポリエステル樹脂A及びBの結晶化度は、示差走査熱量計(DSC、セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて測定した。10mgの測定試料(ポリエステル樹脂A又はB)をアルミパン中に入れた。リファレンスとして空のアルミパンを使用した。DSCの測定条件を、測定温度範囲25℃以上200℃以下、昇温速度10℃/分に設定した。DSCを用いて測定試料の吸熱曲線を得た。得られた吸熱曲線の吸熱ピークの面積から、測定試料の融解熱量(ΔHm、単位:J/g)を求めた。得られたΔHmに基づき、下記式により結晶化度(単位:%)を算出した。下記式中、aは、測定試料と同一の化学構造を有し結晶化度が100.0%である基準試料をDSCで測定した場合の基準試料の融解熱量(単位:J/g)を示す。
結晶化度=(ΔHm/a)×100
測定された結晶化度が50.0%以上であるポリエステル樹脂を、結晶性ポリエステル樹脂と判断した。結晶化度が50.0%未満であるポリエステル樹脂を、非結晶性ポリエステル樹脂と判断した。
<2.トナーA−1の製造>
以下の方法で、トナーA−1を製造した。
<2−1.有色トナーの製造>
まず混合工程を行った。詳しくは、結着樹脂としてのポリエステル樹脂A(非結晶性ポリエステル樹脂)100質量部と、電荷制御剤としての4級アンモニウム塩(オリヱント化学工業株式会社製「BONTRON(登録商標)P−51」)2質量部と、着色剤としてのカーボンブラック(三菱化学株式会社製「MA−100」)5質量部とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−20B」)を用いて混合し、混合物を得た。
続いて混練工程を行った。混練工程では、トナー材料の分散性を向上させ形成される画像における色再現性を向上させるために、得られた混合物に対していわゆる低温練りを行った。詳しくは、得られた混合物を、材料投入速度5kg/時、回転速度160rpm、設定温度160℃の条件で、2軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて溶融し混練し、混練物を得た。得られた混練物を冷却した。
続いて粉砕工程を行った。詳しくは、粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製「ロートプレックス(登録商標)16/8型」)を用いて混練物を粗粉砕し、粗粉砕物を得た。得られた粗粉砕物を、材料投入速度10kg/時、回転速度11000rpmの条件で、機械式粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミル」)を用いて微粉砕した。
続いて球形化工程を行った。詳しくは、機械式粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミル」)の粉砕条件を、粉砕工程の材料投入速度10kg/時及び回転速度11000rpmから、材料投入速度10kg/時及び回転速度4000rpmに変更して、得られた微粉砕物を更に粉砕した。これにより、トナーを球形化した。
続いて分級工程を行った。詳しくは、分級機(気流式分級機、日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)の微粉側に除去される微粉ゾーンのゾーン幅(ΔFc)を12mmに設定し、粗粉側に除去される粗粉ゾーンのゾーン幅(ΔMc)を22mmに設定した。得られた微粉砕物を、材料投入速度3.0kg/時の条件で、分級機を用いて2回分級した。その結果、有色トナー母粒子が得られた。
続いて外添工程を行った。詳しくは、得られた有色トナー母粒子97.1質量部と、外添剤としての乾式シリカ微粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA200」)1.8質量部と、外添剤としての導電性酸化チタン微粒子(チタン工業株式会社製「EC−100」)1.0質量部と、外添剤としてのステアリン酸亜鉛(日油株式会社製)0.1質量部とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−20B」)を用いて混合した。混合条件を、回転速度30m/秒及び混合時間5分に設定した。これにより、有色トナー母粒子の表面に外添剤を付着させた。その結果、トナーA−1に含有させる有色トナー(複数の有色トナー粒子)を得た。
<2−2.透明トナーの製造>
まず混合工程を行った。詳しくは、結着樹脂としてのポリエステル樹脂A(非結晶性ポリエステル樹脂)70質量部と、結着樹脂としてのポリエステル樹脂B(結晶性ポリエステル樹脂)30質量部と、離型剤としてのカルナバワックス(株式会社加藤洋行製「カルナウバワックス1号」)6質量部と、電荷制御剤としての4級アンモニウム塩(オリヱント化学工業株式会社製「BONTRON(登録商標)P−51」)2質量部とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−20B」)を用いて混合し、混合物を得た。
続いて混練工程を行った。詳しくは、得られた混合物を、材料投入速度5kg/時、回転速度160rpm、設定温度150℃の条件で、2軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて溶融し混練し、混練物を得た。得られた混練物を冷却した。
続いて粉砕工程を行った。詳しくは、粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製「ロートプレックス(登録商標)16/8型」)を用いて混練物を粗粉砕し、粗粉砕物を得た。得られた粗粉砕物を、材料投入速度10kg/時、回転速度10000rpmの条件で、機械式粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミル」)を用いて微粉砕した。
続いて球形化工程を行った。詳しくは、機械式粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミル」)の粉砕条件を、粉砕工程の材料投入速度10kg/時及び回転速度10000rpmから、材料投入速度10kg/時及び回転速度4000rpmに変更して、得られた微粉砕物を更に粉砕した。これにより、トナーを球形化した。
続いて分級工程を行った。詳しくは、分級機(気流式分級機、日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)の微粉側に除去される微粉ゾーンのゾーン幅(ΔFt)を15mmに設定し、粗粉側に除去される粗粉ゾーンのゾーン幅(ΔMt)を22mmに設定した。得られた微粉砕物を、材料投入速度3.0kg/時の条件で、分級機を用いて1回のみ分級した。その結果、透明トナー母粒子を得た。
得られた透明トナー母粒子に対して、有色トナー粒子の製造と同様の方法で、外添工程を行った。これにより、透明トナー母粒子の表面に外添剤を付着させた。その結果、トナーA−1に含有させる透明トナー(複数の透明トナー粒子)を得た。
<2−3.有色トナーと透明トナーとの混合工程>
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−20B」)を用いて、透明トナー1.0質量部と有色トナー1.0質量部とを混合した。その結果、トナーA−1が得られた。得られたトナーA−1の体積中位径D50は、6.55μmであった。
<3.トナーA−2〜A−6及びトナーB−1〜B−10の製造>
以下の点を変更した以外は、トナーA−1の製造と同様の方法で、トナーA−2〜A−6及びトナーB−1〜B−10を製造した。
トナーA−2〜A−6及びトナーB−1〜B−10の製造では、トナーA−1の製造方法から以下の点を変更した。有色トナーの製造の分級工程について、トナーA−1の製造における微粉ゾーンのゾーン幅(ΔFc)12mm及び分級回数2回を、表1に示すΔFc及び有色トナーの分級回数に変更した。透明トナーの製造の分級工程について、トナーA−1の製造における微粉ゾーンのゾーン幅(ΔFt)15mmを、表1に示すΔFtに変更した。有色トナーと透明トナーとの混合工程ついて、トナーA−1の製造における透明トナー1.0質量部及び有色トナー1.0質量部を、表2〜4に示す透明トナーの添加量(Mt)及び有色トナーの添加量(Mc)に変更した。
各トナーについて、有色トナーの製造の分級工程における分級条件、及び透明トナーの製造の分級工程における分級条件を、表1に示す。ΔFc及びΔMcは各々、有色トナーの製造の分級工程において、分級機の微粉側に除去される微粉ゾーンのゾーン幅、及び粗粉側に除去される粗粉ゾーンのゾーン幅を示す。ΔFt及びΔMtは各々、透明トナーの製造の分級工程において、分級機の微粉側に除去される微粉ゾーンのゾーン幅、及び粗粉側に除去される粗粉ゾーンのゾーン幅を示す。
トナーA−6の製造では、トナーA−1の製造方法から以下の点も変更した。トナーA−1の透明トナーの製造の混合工程で添加したポリエステル樹脂A(非結晶性ポリエステル樹脂)70質量部及びポリエステル樹脂B(結晶性ポリエステル樹脂)30質量部を、ポリエステル樹脂A(非結晶性ポリエステル樹脂)90質量部及びポリエステル樹脂B(結晶性ポリエステル樹脂)10質量部に変更した。これにより、透明トナーに含有される結着樹脂の合計質量に対する結晶性ポリエステル樹脂の含有率を、トナーA−1の製造における30質量%から10質量%に変更した。
トナーB−6の製造では、トナーA−1の製造方法から以下の点も変更した。トナーA−1の透明トナーの製造の混合工程で添加したポリエステル樹脂A(非結晶性ポリエステル樹脂)70質量部及びポリエステル樹脂B(結晶性ポリエステル樹脂)30質量部を、ポリエステル樹脂A(非結晶性ポリエステル樹脂)100質量部に変更した。これにより、透明トナーに含有される結着樹脂の合計質量に対する結晶性ポリエステル樹脂の含有率を、トナーA−1の製造における30質量%から0質量%に変更した。
トナーB−7の製造では、トナーA−1の製造方法から以下の点も変更した。トナーA−1の有色トナーの混合工程で添加したポリエステル樹脂A(非結晶性ポリエステル樹脂)100質量部を、ポリエステル樹脂A(非結晶性ポリエステル樹脂)85質量部及びポリエステル樹脂B(結晶性ポリエステル樹脂)15質量部に変更した。これにより、有色トナーに含有される結着樹脂の合計質量に対する結晶性ポリエステル樹脂の含有率を、トナーA−1の製造における0質量%から15質量%に変更した。また、トナーA−1の透明トナーの混合工程で添加したポリエステル樹脂A(非結晶性ポリエステル樹脂)70質量部及びポリエステル樹脂B(結晶性ポリエステル樹脂)30質量部を、ポリエステル樹脂A(非結晶性ポリエステル樹脂)85質量部及びポリエステル樹脂B(結晶性ポリエステル樹脂)15質量部に変更した。これにより、有色トナーに含有される結着樹脂の合計質量に対する結晶性ポリエステル樹脂の含有率を、トナーA−1の製造における30質量%から15質量%に変更した。
トナーB−8の製造では、トナーA−1の製造方法から以下の点も変更した。トナーA−1の透明トナーの製造の混合工程で添加したポリエステル樹脂A(非結晶性ポリエステル樹脂)70質量部及びポリエステル樹脂B(結晶性ポリエステル樹脂)30質量部を、ポリエステル樹脂A(非結晶性ポリエステル樹脂)97質量部及びポリエステル樹脂B(結晶性ポリエステル樹脂)3質量部に変更した。これにより、透明トナーに含有される結着樹脂の合計質量に対する結晶性ポリエステル樹脂の含有率を、トナーA−1の製造における30質量%から3質量%に変更した。
トナーB−9の製造では、トナーA−1の製造方法から以下の点も変更した。トナーA−1の透明トナーの製造の混合工程で添加したポリエステル樹脂A(非結晶性ポリエステル樹脂)70質量部及びポリエステル樹脂B(結晶性ポリエステル樹脂)30質量部を、ポリエステル樹脂A(非結晶性ポリエステル樹脂)60質量部及びポリエステル樹脂B(結晶性ポリエステル樹脂)40質量部に変更した。これにより、透明トナーに含有される結着樹脂の合計質量に対する結晶性ポリエステル樹脂の含有率を、トナーA−1の製造における30質量%から40質量%に変更した。
トナーB−10の製造では、トナーA−1の有色トナーの混合工程を、以下の有色トナーの混合工程に変更した。すなわち、離型剤としてのカルナバワックス(株式会社加藤洋行製「カルナウバワックス1号」)3質量部と、結着樹脂としてのポリエステル樹脂A(非結晶性ポリエステル樹脂)100質量部と、電荷制御剤としての4級アンモニウム塩(オリヱント化学工業株式会社製「BONTRON(登録商標)P−51」)2質量部と、着色剤としてのカーボンブラック(三菱化学株式会社製「MA−100」)5質量部とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−20B」)を用いて混合し、混合物を得た。
<4.体積中位径(D50c及びD50t)及びトナー粒子の個数割合(Rc1及びRt1)の測定>
有色トナーと透明トナーとの混合工程前に、トナーA−1〜A−6及びトナーB−1〜B−10の各有色トナーの粒子径分布を測定した。詳しくは、電解液(ベックマン・コールター株式会社製「アイソトンII」)に界面活性剤を添加し、測定試料(有色トナー)10mgを加えた。超音波分散器を用いて、有色トナーを電解液中に分散させた。精密粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製「コールターカウンターマルチサイザー3」)を用いて、アパーチャー径100μmの条件で、電解液中の有色トナーの粒子径の体積分布及び個数分布を得た。得られた有色トナーの粒子径の体積分布から、有色トナー粒子の体積中位径(D50c)を得た。得られた有色トナーの粒子径の個数分布から、有色トナー粒子の全個数に対する、有色トナー粒子の体積中位径よりも1.0μm以上小さい粒子径を有する有色トナー粒子の個数割合(Rc1)を得た。
有色トナーと透明トナーとの混合工程前に、トナーA−1〜A−6及びトナーB−1〜B−10の各透明トナーの粒子径分布を測定した。測定試料を有色トナーから透明トナーに変更した以外は、有色トナーの粒子径分布の測定と同様の方法で、透明トナーの粒子径の体積分布及び個数分布を測定した。得られた透明トナーの粒子径の体積分布から、透明トナー粒子の体積中位径(D50t)を得た。得られた透明トナーの粒子径の個数分布から、透明トナー粒子の全個数に対する、透明トナー粒子の体積中位径よりも1.0μm以上小さい粒子径を有する透明トナー粒子の個数割合(Rt1)を得た。
<5.トナー粒子の個数割合(Rcs)の測定>
有色トナーと透明トナーとの混合工程前に、トナーA−1〜A−6及びトナーB−1〜B−10の各有色トナーに対して以下の測定を行った。詳しくは、走査型電子顕微鏡を用いて、観察倍率2000倍で、測定試料(有色トナー)の写真を撮影した。更に、走査型電子顕微鏡に付属しているX線マイクロアナライザーXMAを用いて測定試料を元素分析し、チタン原子をマッピングした。そして、チタン原子がマッピングされた測定試料を2000倍に拡大した写真を撮影した。これらの写真を対照し、1視野に観察される、有色トナー粒子の全個数及び3.0μm以下の粒子径を有する有色トナー粒子の個数を測定した。なお、3.0μm以下の粒子径を有する有色トナー粒子の個数を測定する際には、外添剤である乾式シリカ微粒子、導電性酸化チタン微粒子及びステアリン酸亜鉛をカウントしないように留意した。詳しくは、チタン原子がマッピングされた粒子は、導電性酸化チタン微粒子であるためカウントしなかった。乾式シリカ微粒子及びステアリン酸亜鉛は、粒子の大きさから判断してカウントしなかった。測定された有色トナー粒子の全個数及び3.0μm以下の粒子径を有する有色トナー粒子の個数から、有色トナー粒子の全個数に対する3.0μm以下の粒子径を有する有色トナー粒子の個数の百分率(個数割合Rcs)を算出した。
<6.結着樹脂の結晶化度の算出>
トナーA−1〜A−6及びB−1〜B−10の各透明トナー及び各有色トナーに含有される結着樹脂の結晶化度を、以下の方法で算出した。ポリエステル樹脂の製造で測定されたポリエステル樹脂A(非結晶性ポリエステル樹脂)の結晶化度及びポリエステル樹脂B(結晶性ポリエステル樹脂)の結晶化度から、下記数式に従って、結着樹脂の結晶化度を算出した。算出された結着樹脂の結晶化度を、表2〜4に示す。
結着樹脂の結晶化度(%)=[非結晶性ポリエステル樹脂の結晶化度(%)×(1−結着樹脂の合計質量に対する結晶性ポリエステル樹脂の含有率(質量%)/100)]+[結晶性ポリエステル樹脂の結晶化度(%)×結着樹脂の合計質量に対する結晶性ポリエステル樹脂の含有率(質量%)/100]
<7.評価方法>
トナーA−1〜A−6及びB−1〜B−10の評価方法は、以下の通りである。形成した画像の画像評価、定着性、耐ホットオフセット性及び光沢性については、各トナーを含有する2成分現像剤を用いて評価した。耐熱保存性については、各トナーを用いて評価した。
評価に使用する2成分現像剤は、100質量部のフェライトキャリア(パウダーテック株式会社製)と、10質量部のトナーとを、ボールミルを用いて30分間混合することによって調製した。
<7−1.画像評価(初期及び1万枚印刷後)>
画像評価は、温度20℃及び湿度65%RH(相対湿度)の環境下で行った。評価機として、複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C8026」の改造機)を用いた。2成分現像剤を評価機のブラック用現像装置に投入した。補充用のトナーを評価機のブラック用トナーコンテナに投入した。評価機を用いて、画像Iを1枚の用紙に印刷した。画像Iは、ソリッド画像部(印字率100%)及びハーフトーン画像部(印字率50%)を含んでいた。画像Iが印刷された用紙を、初期の画像評価用サンプルとした。
続いて、評価機を用いて1万枚の用紙に画像Iを連続して印刷した。1万枚目に画像Iが印刷された用紙を、1万枚印刷後の画像評価用サンプルとした。得られた初期及び1万枚印刷後の画像評価用サンプルを各々肉眼にて観察した。観察結果から、下記基準に従って画像を評価した。初期及び1万枚印刷後の画像評価がA〜Cであるトナーを合格とした。
(画像の評価基準)
評価A:十分に色が再現されていた。ソリッド画像部にもハーフトーン画像部にも画像不良がなかった。
評価B:彩度は低下するが、十分に色が再現されていた。ソリッド画像部にもハーフトーン画像部にも画像不良がなかった。
評価C:彩度が低下し、色が若干再現されていなかった。ソリッド画像部にもハーフトーン画像部にもスリーブローラーの回転周期毎に画像不良(スリーブ層ムラ)が若干発生していた。
評価D:十分に色が再現されていなかった。ソリッド画像部にもハーフトーン画像部にもスリーブローラーの回転周期毎に画像不良(スリーブ層ムラ)が多く発生していた。
評価E:十分に色が再現されていなかった。ソリッド画像部にもハーフトーン画像部にもスリーブローラーの回転周期毎に画像不良(スリーブ層ムラ)が非常に多く発生していた。
<7−2.定着性>
評価機の定着装置の定着温度を170℃に設定した後、通常環境(温度20℃、湿度65%RH)にて、定着装置の電源を切って10分間冷却した。その後、定着装置の電源を入れ、定着温度170℃、線速200mm/秒(ニップ通過時間40m秒)、トナー載り量1.0mg/cm2の条件で、5枚の用紙(90g/m2、A4サイズ)に画像IIを連続して印刷した。画像IIは、大きさ25mm×25mmのソリッド画像部(印字率100%)を含んでいた。
トナーを定着させることができたか否かは、5枚の用紙に形成された画像IIの各々に対して、以下に示す摩擦試験で確認した。まず、用紙に形成された画像IIの画像濃度を、反射濃度計(X−Rite社製「SpectroEye(登録商標)」)を用いて測定した。次に、用紙に形成された画像II上を、布帛で覆った1kgの分銅を用いて10往復摩擦した。摩擦後の画像IIの画像濃度を、反射濃度計(X−Rite社製「SpectroEye(登録商標)」)を用いて測定した。得られた摩擦前後の画像濃度から、数式「トナーの定着率(%)=(摩擦後の画像濃度/摩擦前の画像濃度)×100」によって、トナーの定着率を算出した。5枚の用紙に形成された画像IIの各々について算出されたトナーの定着率の和を、測定対象の個数(5枚)で除算することにより、トナーの定着率の平均値を算出した。算出されたトナーの定着率の平均値を評価値とした。評価値(トナーの定着率)から下記基準に従ってトナーの定着性を評価した。トナーの定着性の評価がA〜Cであるトナーを合格とした。
(定着性の評価基準)
評価A:トナーの定着率が97%以上であった。
評価B:トナーの定着率が95%以上97%未満であった。
評価C:トナーの定着率が90%以上95%未満であった。
評価D:トナーの定着率が90%未満であった。
<7−3.耐ホットオフセット性>
耐ホットオフセット性の評価は、通常環境(温度20℃、湿度65%RH)で行った。評価機の定着装置の定着温度230℃、線速200mm/秒(ニップ通過時間40m秒)及びトナー載り量1.0mg/cm2の条件で、10枚の用紙(90g/m2、A4サイズ)に画像IIIを連続して印刷した。画像IIIは、オフセットパターン画像であった。画像IIIが形成された用紙の各々を肉眼にて観察した。観察結果から、下記基準に従って耐ホットオフセット性を評価した。耐ホットオフセット性の評価がA又はBであるトナーを合格とした。
(耐ホットオフセット性の評価基準)
評価A:10枚の用紙の何れにもホットオフセットが発生しなかった。
評価B:10枚の用紙のうちの少なくとも1枚にホットオフセットが若干発生した。
評価C:10枚の用紙のうちの少なくとも1枚にホットオフセットが明らかに発生した。
<7−4.光沢性>
光沢性の評価は、通常環境(温度20℃、湿度65%RH)で行った。評価機の定着装置の定着温度180℃、線速200mm/秒(ニップ通過時間40m秒)、トナー載り量1.0mg/cm2の条件で、1枚の用紙(90g/m2、A4サイズ)に画像IVを印刷した。画像IVは、ソリッド画像(印字率100%)であった。光沢度計(株式会社堀場製作所製「ハンディ光沢度計 グロスチェッカーIG−331」)を用いて、用紙に印刷された画像IVの温度60℃におけるグロス値を測定した。測定されたグロス値から、下記基準に従って光沢性を評価した。光沢性の評価がAであるトナーを合格とした。
(光沢性の評価基準)
評価A:グロス値が6以上であった。
評価B:グロス値が6未満であった。
<7−5.耐熱保存性>
トナー3gを、容量20mLのポリ容器に秤量し、50℃に設定された恒温器内に100時間静置した。これにより、耐熱保存性評価用のトナーが得られた。その後、耐熱保存性評価用のトナーを、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製「TYPE PT−E 84810」)を用いて篩別した。具体的には、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)のマニュアルに従い、レオスタッド目盛り5、時間30秒の条件で、200メッシュの篩を用いて、耐熱保存性評価用のトナーを篩別した。篩別後に、篩上に残留したトナーの質量を測定した。篩別前のトナーの質量と、篩別後に篩上に残留したトナーの質量とから、数式「凝集度(質量%)=100×篩上に残留したトナーの質量/篩別前のトナーの質量」によって算出した。算出された凝集度から、下記基準に従って耐熱保存性を評価した。耐熱保存性の評価がA又はBであるトナーを合格とした。
(耐熱保存性の評価基準)
評価A:凝集度が3質量%未満であった。
評価B:凝集度が3質量%以上10質量%未満であった。
評価C:凝集度が10質量%以上であった。
トナーA−1〜A−6及びB−1〜B−10の測定値及び評価結果を表2〜4に示す。表2〜4中の各用語の意味は次の通りである。透明トナーの「結晶性ポリエステル樹脂含有率」は、透明トナー粒子に含有される結着樹脂の合計質量に対する、透明トナー粒子に含有される結晶性ポリエステル樹脂含有率(質量%)を示す。「D50t」は、透明トナー粒子の体積中位径を示す。「Rt1」は、透明トナー粒子の全個数に対する、透明トナー粒子の体積中位径(D50t)よりも1μm以上小さい粒子径を有する透明トナー粒子の個数割合を示す。「Mt」は、有色トナーと透明トナーとの混合工程における透明トナーの添加量を示す。
有色トナーの「結晶性ポリエステル樹脂含有率」は、有色トナー粒子に含有される結着樹脂の合計質量に対する、有色トナー粒子に含有される結晶性ポリエステル樹脂含有率(質量%)を示す。「D50c」は、有色トナー粒子の体積中位径を示す。「Rc1」は、有色トナー粒子の全個数に対する、有色トナー粒子の体積中位径(D50c)よりも1μm以上小さい粒子径を有する有色トナー粒子の個数割合を示す。「Rcs」は、有色トナー粒子の全個数に対する、3.0μm以下の粒子径を有する有色トナー粒子の個数割合を示す。「Mc」は、有色トナーと透明トナーとの混合工程における有色トナーの添加量を示す。
「D50t−D50c」は、測定されたD50t及びD50cから数式「D50t−D50c」に従って算出された値を示す。「Rc1−Rt1」は、測定されたRc1及びRt1から数式「Rc1−Rt1」に従って算出された値を示す。「Mc/Mt」は、透明トナー1.0質量部に対する有色トナーの含有量を示す。「Mc/Mt」は、有色トナーと透明トナーとの混合工程における有色トナー及び透明トナーの添加量(Mc及びMt)から数式「Mc/Mt」に従って算出された値である。
トナーA−1〜A−6は、構成(1)〜(6)の全てを有していた。そのため、表2に示されるように、トナーA−1〜A−6では、画像評価(初期及び1万枚印刷後)、定着性、耐ホットオフセット性、光沢性及び耐熱保存性の全ての評価が合格であった。
トナーA−1〜A−3及びA−6では、構成(1)〜(6)に加えて、有色トナーの含有量が透明トナー1.0質量部に対して1.0質量部以上5.0質量部以下であった。そのため、表2に示されるように、トナーA−1〜A−3及びA−6では、画像評価(1万枚印刷後)及び定着性が一層良好であった。
トナーA−1〜A−3では、構成(1)〜(6)に加えて、有色トナーの含有量Mc/Mtが透明トナー1.0質量部に対して1.0質量部以上5.0質量部以下であった。更に、透明トナー粒子に含有される結晶性ポリエステル樹脂の含有率が透明トナー粒子に含有される結着樹脂の合計質量に対して20質量%以上30質量%以下であった。そのため、表2に示されるように、トナーA−1〜A−3では、定着性及び耐ホットオフセット性が特に良好であった。
トナーA−2では、構成(1)〜(6)に加えて、有色トナーの含有量が透明トナー1.0質量部に対して3.0質量部以上5.0質量部以下であった。更に、透明トナー粒子に含有される結晶性ポリエステル樹脂の含有率が透明トナー粒子に含有される結着樹脂の合計質量に対して20質量%以上30質量%以下であった。そのため、表2に示されるように、トナーA−2では、耐熱保存性が特に良好であった。
以上のことから、本発明のトナーによれば、連続して画像を形成した場合であっても画像不良の発生を抑制できることが示された。また、本発明のトナーは、定着性、耐ホットオフセット性、光沢性及び耐熱保存性を兼ね備えていることが示された。