JP2011090869A - 非水電解質二次電池用負極材料、非水電解質二次電池用負極材の製造方法並びに非水電解質二次電池用負極及び非水電解質二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】酸化珪素粒子の表面を炭素皮膜で被覆し、更にこの炭素被膜を熱プラズマ処理することによって改質した炭素被覆酸化珪素粒子と、結着剤1〜20質量%とを含有することを特徴とする非水電解質二次電池用負極材と、それを利用した非水電解質二次電池の負極材と非水電解質二次電池。
【選択図】なし
Description
従来、この種の非水電解質二次電池の高容量化策として、例えば、負極材料にB、Ti、V、Mn、Co、Fe、Ni、Cr、Nb、Mo等の酸化物及びそれらの複合酸化物を用いる方法(特許文献1,2等参照)、溶融急冷したM100−xSix(x≧50at%,M=Ni,Fe,Co,Mn)を負極材に用いる方法(特許文献3参照)、酸化珪素を用いる方法(特許文献4参照)、Si2N2O、Ge2N2O及びSn2N2Oを用いる方法(特許文献5参照)等が提案されている。
珪素は、その製法により結晶構造の異なった種々の形態が知られている。例えば、単結晶珪素を負極活物質の支持体として使用したリチウムイオン二次電池が提案されており(特許文献6参照)、単結晶珪素、多結晶珪素及び非晶質珪素のLixSi(但し、xは0〜5)なるリチウム合金を使用したリチウムイオン二次電池が提案されている(特許文献7参照)。これは非晶質珪素を用いたLixSi、具体的にはモノシランをプラズマ分解した非晶質珪素で被覆した結晶性珪素の粉砕物が例示されている。しかしながら、珪素分を30wt%、導電剤としてのグラファイトを55wt%使用しており、珪素の電池容量を十分発揮させることができなかった。
しかしながら、粒子表面に炭素層を設けることによって導電性を改善することはできるが、珪素負極の克服すべき課題である充放電に伴う大きな体積変化の緩和、これに伴う集電性の劣化とサイクル特性の低下を防止することはできなかった。
また、結晶粒界を持つ多結晶珪素では、提案された方法では冷却速度の制御が困難であり、安定した物性を再現することが難しかった。
しかしながら、酸化珪素は不可逆容量が大きく、初期効率が70%程度と非常に低いため、実際に電池を作製した場合では正極の電池容量を過剰に必要とし、活物質あたり5〜6倍の容量増加分に見合うだけの電池容量の増加を期待することができなかった。
しかしながら、Li箔の貼り付けでは酸化珪素負極の初期効率に見合ったLi薄体の入手が困難で、かつ高コストであり、Li蒸気による蒸着は製造工程が複雑となり実用的でない等の問題があった。
ひとつには珪素粉末を酸化珪素粉末に添加して酸化珪素の質量割合を減少させる方法であり(特許文献28参照)、他方では酸化珪素の製造段階において珪素蒸気を同時に発生、析出することで珪素と酸化珪素の混合固体を得る方法である(特許文献29参照)。
しかしながら、珪素は酸化珪素と比較して高い初期効率と電池容量を併せ持つが、充電時に400%もの体積膨張率を示す活物質であり、酸化珪素と炭素材料の混合物に添加する場合であっても、体積膨張率が非常に大きくなる。更に、結果的に炭素材料を20質量%以上添加して電池容量を1000mAh/gに抑えることが必要であった。一方、珪素と酸化珪素の蒸気を同時に発生させて混合固体を得る方法では、珪素の蒸気圧が低いことから、2000℃を超える高温での製造工程を必要とし、作業上問題があった。
そこで、十分にLiの吸蔵、放出に伴う体積変化の抑制、粒子の割れによる微粉化や集電体からの剥離による導電性の低下を緩和することが可能であり、大量生産が可能で、コスト的に有利であって、かつ携帯電話用等の特に繰り返しのサイクル特性を重要視される用途に適応することが可能な負極活物質が望まれていた。
これによって、酸化珪素粒子の表面を被覆する炭素材が、ダイヤモンド構造を有する炭素材とグラファイト構造を有する炭素材の割合が適当な値となり、高強度・高密度・高絶縁性とのダイヤモンドの特徴と、電気伝導性とのグラファイトの特徴が最適化され、充放電時に伴う電極材料の膨張・収縮による電極破壊を強く防止でき、かつ導電性の高い導電ネットワークを有する負極活物質を製造することができる。
そしてこのような非水電解質二次電池用負極材を用いることで、電池の変形が小さく、高い電池容量を維持しつつ、サイクル特性に優れた非水電解質二次電池を得ることができる。
このように、炭素蒸着後の酸化珪素粒子のBET比表面積を、5m2/g以下とすることによって、酸化珪素粒子の表面上に炭素が均一に皮膜されたものとすることができ、負極材として用いる場合に、導電性が高く、サイクル特性に優れた非水電解質二次電池用負極材を製造することができる。
このように、結着剤に、ポリイミド樹脂を用いることによって、銅箔等の集電体との密着性に優れ、また初期充放電効率が高く、充放電時の体積変化を緩和することができ、繰り返しによるサイクル特性及びサイクル効率が良好な非水電解質二次電池を製造することができる。
このように、炭素蒸着処理の処理雰囲気の圧力を50Pa以上とすることによって、電池特性を向上させることができるとともに、過剰な真空能力が必要にならず、装置コスト、ランニングコストの増加を防止することができる。また30000Pa以下とすることによって、導電性が低下することによって粉体の粉体比抵抗が増加することを防止でき、非水電解質二次電池用負極材として用いた場合に電池容量が低下することを確実に防止できる。
そして、炭素蒸着処理温度を600℃以上とすることによって、短時間の蒸着処理とすることができ、歩留り向上を図ることができる。また1100℃以下とすることによって、化学蒸着処理により粒子同士が融着、凝集を起こす可能性を小さくすることができ、凝集面で導電性皮膜が形成されない危険性を極力小さくすることができる。よって、リチウムイオン二次電池負極材として用いた場合に、サイクル性能が低下するおそれを無くすことができ、サイクル特性の良好な非水電解質二次電池用負極材を得ることができる。
また、炭素蒸着後の酸化珪素粒子を5000℃〜10000℃の温度の熱プラズマ雰囲気中に投入することによって、表面を被覆する炭素皮膜中の炭素を、電池特性を向上させるのに好適なダイヤモンド構造炭素とグラファイト構造炭素の割合のものとすることができ、電池特性に優れた非水電解質二次電池用負極材とすることができる。
従って、更に電池の変形が小さく、高い電池容量を維持しつつ、サイクル特性に優れた非水電解質二次電池用負極材を製造することができる。
上述のように、本発明の製造方法によって製造された非水電解質二次電池用負極材は、表面にダイヤモンド構造の炭素とグラファイト構造の炭素を従来に比べて電池特性を改善できる割合でバランスよく含んだ酸化珪素粒子と結着剤からなる負極材である。従ってこのような非水電解質二次電池用負極材を用いた負極は、充電後の体積膨張が従来に比べて小さく抑制されたものであり、充電前の2倍未満となるものである。
このように、電池の変形が小さく、高い電池容量を維持しつつ、サイクル特性に優れた本発明の非水電解質二次電池用負極と、正極と、セパレーターと、非水電解質とを備えた非水電解質二次電池は、充放電を繰り返しても、従来に比べて電池の変形が小さく、また電池容量の低下が小さいサイクル特性に非常に優れた二次電池である。
上述のように、本発明の非水電解質二次電池は、電池の変形や容量低下が小さな、サイクル特性に非常に優れた二次電池である。従って近年の高エネルギー密度化の要望が強いリチウムイオン二次電池として非常に好適なものである。
前述のように、電池の負極として用いた際の変形が小さく、高い電池容量を維持しつつ、サイクル特性に優れた非水電解質二次電池用の負極材の開発が待たれていた。
そして、この活物質に結着剤を適量配合した負極材を用いることによって、充放電による膨張・収縮が繰り返されても負極材の破壊・粉化が防止でき、電極自体の導電性が低下しない非水電解質二次電池用負極材を製造することができることが判った。
更に、この負極材を非水電解質二次電池として用いると、ガス発生量が少なく、サイクル特性が良好な非水電解質二次電池が得られることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
本発明の非水電解質を用いる二次電池用の負極に用いられる負極材料は、一般式SiOxで表される酸化珪素粒子の表面上に炭素皮膜が被覆されたものであり、かつ被覆された炭素皮膜は熱プラズマ処理されたものである。
まず、一般式SiOxで表される酸化珪素粒子の表面上に炭素を蒸着させる。
ここで、本発明における酸化珪素とは、二酸化珪素と金属珪素との混合物を加熱して生成した酸化珪素ガスを冷却・析出して得られた非晶質珪素酸化物であり、一般式SiOxで表されるものである。
その一般物性などは特に限定されないが、xの範囲は0.1≦x<2.0であることが望ましく、より好適には0.5≦x≦1.2である。
この条件であれば、酸化珪素中に析出してくる結晶珪素は数nm〜数十nmのナノサイズの粒子となるため、充放電時の体積膨張が非常に小さいものとなることから、非水電解質を用いる二次電池の負極材に好適に使用することができるものとなる。
一方、高温によって不均化が生じると、珪素粒子が増大する傾向が見られる上、電極膨張が増大する傾向を示すため、できるだけ低い温度に保持した酸化珪素を用いることが望ましい。目安として固体NMR(29Si−DD/MAS)測定において、−110ppm付近を中心とするブロードなシグナル面積と−84ppm付近のシグナル面積との比S−84/S−110が0.5<S−84/S−110<1.1である事が望ましい。
準備する酸化珪素粒子は、メジアン径D50が0.1〜20μmの範囲のものが望ましく、より好適には1〜10μmがより望ましい。メジアン径D50が0.1μm以上であれば、BET比表面積が大きく(10m2/g以上)なることを抑制でき、また負極膜密度が小さくなりすぎることを抑制できる。そして、メジアン径D50が20μm以下であれば、負極膜を貫通してショートする原因となるおそれを確実に防止することができる。
粉砕機の例としては、例えば、ボール、ビーズ等の粉砕媒体を運動させ、その運動エネルギーによる衝撃力や摩擦力、圧縮力を利用して被砕物を粉砕するボールミル、媒体撹拌ミルを用いることができる。また、ローラによる圧縮力を利用して粉砕を行うローラミルや、被砕物を高速で内張材に衝突、粒子を相互に衝突させ、その衝撃による衝撃力によって粉砕を行うジェットミルを用いることもできる。そして、ハンマー、ブレード、ピン等を固設したローターの回転による衝撃力を利用して被砕物を粉砕するハンマーミル、ピンミル、ディスクミルや、剪断力を利用するコロイドミルや高圧湿式対向衝突式分散機「アルティマイザー」等を用いることができる。
そして、この粉砕は、湿式、乾式共に用いることができる。
乾式分級では、主として気流を用い、分散、分離(細粒子と粗粒子の分離)、捕集(固体と気体の分離)、排出のプロセスが逐次もしくは同時に行われる。粒子相互間の干渉、粒子の形状、気流の流れの乱れ、速度分布、静電気の影響等で分級効率を低下させないように、分級をする前に前処理(水分、分散性、湿度等の調整)を行うか、使用される気流の水分や酸素濃度を調整して行うことができる。また、乾式で分級機が一体となっているタイプでは、一度に粉砕、分級が行われ、所望の粒度分布とすることが可能となり、より好適である。
これによって、絶縁性の酸化珪素に導電性を付与することができる。
圧力範囲は、50〜30000Paの減圧下、より望ましくは100〜20000Paであり、更には1000〜20000Paが望ましい。
このように、炭素蒸着処理の処理雰囲気の圧力が50Pa以上であれば、電池特性を向上させることができ、過剰な真空能力も必要でなく、装置コストやランニングコストの増加を防止できる。また30000Pa以下であれば、導電性の低下および粉体比抵抗が増加することを防ぐことができ、非水電解質二次電池用負極材として用いた場合に電池容量が低下することが確実に防止される。
炭素蒸着処理の処理温度を600℃以上であれば、蒸着処理が短時間となり、歩留り向上を達成できる。また1100℃以下であれば、化学蒸着処理により粒子同士が融着、凝集することを防止でき、炭素皮膜が形成されない箇所が発生することを防止できる。すなわち、導電性の低下・サイクル性能が低下するおそれを無くすことができ、サイクル特性の良好な非水電解質二次電池用負極材を得ることができる。
このように、炭素蒸着後の酸化珪素粒子のBET比表面積が5m2/g以下であれば、表面上に炭素がムラなく皮膜されたものであり、負極材として用いる場合に、導電性が高く、サイクル特性に優れた非水電解質二次電池用負極材となる。
1質量%以上であれば炭素被覆にばらつきが出ることを防止できるとともに、十分な導電性を得ることができる。一方、炭素量が30質量%以下であれば、炭素の割合が多くなって酸化珪素としての高い電池容量が減少することを防止でき、BET比表面積が10m2/gを超えることによって電解液の分解反応が増大し、ガス発生などにより電池の膨張が生じることも確実に防止することができる。
例えば、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、ブタン、ブテン、ペンタン、イソブタン、ヘキサン等の炭化水素およびシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセンなどの環式炭化水素の単独又は混合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、エチルベンゼン、ジフェニルメタン、ナフタレン、フェノール、クレゾール、ニトロベンゼン、クロルベンゼン、インデン、クマロン、ピリジン、アントラセン、フェナントレン等の1環〜3環の芳香族炭化水素又はこれらの混合物が挙げられる。
また、タール蒸留工程で得られるガス軽油、クレオソート油、アントラセン油、ナフサ分解タール油も単独又は混合物も用いることができる。
この熱プラズマ処理に用いるプラズマ処理装置は、粉体をアルゴン等のガス気流にて搬送する粉体供給装置を備え、粉体が反応器上部よりプラズマ雰囲気に投入されるものとすることができる。
また、アルゴンあるいはアルゴン/水素を原料ガスとして用いた熱プラズマ雰囲気下に投入することによって処理されるものとすることが望ましい。
処理時間は概ね1秒以下とすることが望ましいが、短時間で処理することがより望ましく、これによって内部の酸化珪素粒子の不均化反応を抑制することができる。
一般的に、炭素材は三つの同素体、すなわちダイヤモンド、グラファイト(黒鉛)、アモルファスカーボン(無定形炭素)に分けられる。これら炭素材料はそれぞれ特徴的な物性を有している。すなわち、ダイヤモンドは高強度、高密度、高絶縁性であり、グラファイトは電気伝導性に優れている。
ラマン強度が上記の値の範囲内であれば、酸化珪素粒子の表面を被覆する炭素皮膜中のダイヤモンド構造を有する炭素材とグラファイト構造を有する炭素材の割合が適当な値となり、上記のそれぞれの特徴が最適化され、結果として充放電時に伴う電極材料の膨張・収縮による電極破壊を防止でき、かつ導電ネットワークを有する負極材となる。
これによって、表面に被覆された炭素皮膜中のダイヤモンド構造の炭素とグラファイト構造の炭素の割合を、充放電時に伴う電極材料の膨張・収縮による電極破壊をより強く防止でき、かつより高い導電ネットワークを有する負極材とするのに好適な割合により容易にすることができる。
よって、更に電池の変形が小さく、高い電池容量を維持しつつ、サイクル特性に優れた非水電解質二次電池用負極材を製造することができる。
アルゴン供給量は50〜200L/minが望ましいが、供給量が多すぎるとプラズマ状態を維持できなくなるため80〜150L/minとすることがより望ましく、水素プラズマ条件とするためには水素供給量をアルゴン供給量の1/20〜1/5L/minとすることが良い。
反応器内圧力は1〜25kPaとすると良いが、反応器内圧が上昇するとプラズマが不安定となるので1〜15kPaとすることがより望ましい。
上記の供給速度・処理条件であれば、0.1秒以下の処理が可能であり、より短時間での処理が可能となり、熱プラズマ処理での内部の酸化珪素粒子の不均化反応を更に抑制することができる。
結着剤としてポリイミド樹脂を用いることによって、集電体との密着性に優れ、また初期充放電効率が高く、充放電時の体積変化が緩和されて、繰り返しによるサイクル特性や効率が良好な非水電解質二次電池が得られる。
また、芳香族ポリイミド樹脂は耐溶剤性に優れ、集電体からの剥離や活物質の分離を強く抑制することができる。なお、結着剤は1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
従って、電極ペーストの作製の際には、ポリイミドの前駆体であって、種々の有機溶剤、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジオキソランに比較的易溶であるポリアミック酸の状態で添加し、300℃以上の温度で長時間加熱処理することにより、脱水、イミド化させて結着剤とするとよい。
この場合、導電剤の種類は特に限定されず、構成された電池において、分解や変質を起こさない電子伝導性の材料であればよい。具体的にはAl、Ti、Fe、Ni、Cu、Zn、Ag、SnSi等の金属粉末や金属繊維、天然黒鉛、人造黒鉛、各種のコークス粉末、メソフェーズ炭素、気相成長炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、各種の樹脂焼成体等の黒鉛等を用いることができる。
これらの導電剤は、予め水又はN−メチル−2−ピロリドン等の溶剤の分散物を作製し、添加することで、珪素粒子に均一に付着、分散した電極ペーストを作製することができることから、上記溶剤分散物として添加することが望ましい。
なお、導電剤は上記溶剤に公知の界面活性剤を用いて分散を行うことができる。また、導電剤に用いる溶剤は、結着剤に用いる溶剤と同一のものであることが望ましい。
そして、結着剤の配合量は、負極材中に1〜20質量%が好適であり、3〜15質量%がより望ましい。結着剤が少なすぎると負極活物質が分離することがあり、多すぎると空隙率が減少して絶縁膜が厚くなり、Liイオンの移動を阻害する場合がある。このため、1〜20質量%とすることが望ましい。
更に、導電剤の配合量は、負極材中に50質量%以下(負極材あたりの電池容量は概ね1000mAHr/g以上となる)が望ましく、1〜30質量%、更には1〜10質量%が望ましい。導電剤の量が少ないと、負極材の導電性に乏しい場合があり、初期抵抗が高くなる傾向がある。一方、導電剤の量の増加は電池容量の低下につながるおそれがある。
このような負極は、充電後の体積膨張が従来に比べて小さなものであり、充電前の2倍未満となるものである。なお、充填後の体積(V2)が充填前の体積(V1)の2倍未満、つまり(V2)/(V1)が2未満となる場合の測定条件は、後述する実施例1に記載した測定条件における値である。
ここで、本発明における集電体は、銅箔、ニッケル箔等、通常、負極の集電体として使用されている材料であれば、特に厚さ、表面処理の制限なく使用することができる。なお、合剤をシート状に成形する成形方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
非水電解質二次電池は、上記負極材を用いる点に特徴を有し、その他の正極、セパレーター、非水電解質溶液等の材料及び電池形状等は限定されない。
具体的には、TiS2、MoS2、NbS2、ZrS2、VS2、V2O5、MoO3、Mg(V3O8)2等のリチウムを含有しない金属硫化物もしくは酸化物、又はリチウム及びリチウムを含有するリチウム複合酸化物等が挙げられ、NbSe2等の複合金属等も用いられる。中でも、エネルギー密度を高くするには、LipMetO2を主体とするリチウム複合酸化物が望ましい。なお、Metは、コバルト、ニッケル、鉄及びマンガンのうちの1種以上が望ましく、pは通常0.05≦p≦1.10の範囲内の値である。
電解質塩としては、例えば、軽金属塩が挙げられる。軽金属塩にはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩等が挙げられ、目的に応じて1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。例えば、リチウム塩であれば、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、CF3SO3Li、(CF3SO2)2NLi、C4F9SO3Li、CF3CO2Li、(CF3CO2)2NLi、C6F5SO3Li、C8F17SO3Li、(C2F5SO2)2NLi、(C4F9SO2)(CF3SO2)NLi、(FSO2C6F4)(CF3SO2)NLi、((CF3)2CHOSO2)2NLi、(CF3SO2)3CLi、(3,5−(CF3)2C6F3)4BLi、LiCF3、LiAlCl4あるいはC4BO8Liが挙げられる。
例えば、サイクル寿命向上を目的としたビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、4−ビニルエチレンカーボネート等や、過充電防止を目的としたビフェニル、アルキルビフェニル、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、ジフェニルエーテル、ベンゾフラン等や、脱酸や脱水を目的とした各種カーボネート化合物、各種カルボン酸無水物、各種含窒素及び含硫黄化合物が挙げられる。
(実施例1)
二酸化珪素粒子(BET比表面積=200m2/g)とケミカルグレード金属珪素粒子(BET比表面積=4m2/g)を等モルの割合で混合した混合粒子を、1350℃、10Paの高温減圧雰囲気で熱処理し、発生した酸化珪素ガスを800℃に保持したSUS製基体に析出させた。
次にこの析出物を回収した後、ジョークラッシャーで粗砕した。この粗砕物をジェットミル(ホソカワミクロン社製AFG−100)を用いて分級機の回転数9000rpmにて粉砕し、D50=7.6μm、D90=11.9μmの酸化珪素粒子(SiOx:x=1.02)をサイクロンにて回収した。
運転終了後、冷却して炭素被覆量10質量%の黒色粒子「A’」を回収した。この粒子について、固体NMR(29Si−DDMAS)測定したところ、−110ppm付近を中心とするブロードな二酸化珪素のシグナル面積と−84ppm付近のダイヤモンド構造珪素のシグナル面積との比(S−84/S−110)は0.69であり、顕微ラマン分析を行った結果、ラマンシフトが1330cm−1と1580cm−1付近にスペクトルを有しており、強度比I1330/I1580は1.1であった。このときBET比表面積は6.0m2/gであった。
プラズマの発生条件は出力12.5kW、圧力15kPaとして、アルゴン供給量を120L/min、水素供給量10L/minとした。なお、得られた黒色粒子「A’」は25g/minの速度で10L/minのアルゴンをキャリアーガスに使用してプラズマ反応室に供給した。
このスラリーを厚さ12μmの銅箔に50μmのドクターブレードを使用して塗布し、200℃で2時間減圧乾燥後、60℃のローラープレスにより電極を加圧成形し、負極成型体を得た。
上記で得られた負極成型体を円盤状に2cm2に打ち抜き、対極にリチウム箔、非水電解質としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドをエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの1/1(体積比)混合液に1mol/Lの濃度で溶解した非水電解質溶液、セパレーターに厚さ30μmのポリエチレン製微多孔質フィルムを用いた評価用リチウムイオン二次電池を各6個作製した。
次の2個は、二次電池充放電試験装置(アスカ電子(株)製)を用いて、リチウムイオン二次電池の電圧が5mVに達するまで0.05cの定電流で充電を行い、5mVに達した後は、セル電圧を5mVに保つように電流を減少させて充電を行った。そして、電流値が0.02cを下回った時点で充電を終了した。なお、cは負極の理論容量を1時間で充電する電流値であり、1c=15mAである。
充電終了後、先の2個のリチウムイオン二次電池を解体し、厚みを測定することで充電時の体積を求めた(V2)。そして、上記V1とV2の結果から、V2/V1により充電後の体積変化率を算出した。
残りの2個は上記の方法で充電を行った後、2000mVに達するまで0.05cの定電流で放電を行うことで、充放電容量[mAh/g]を算出し、初回充放電効率(%)を求めた。なお、充放電容量は結着剤を除いた活物質あたりの容量であり、初回充放電効率(%)は充電容量に対する放電容量の百分率(放電容量/充電容量×100)で示した。
正極に、コバルト酸リチウム/アセチレンブラック/PVDF(=94/2/4)を使用し、先に作製した負極を組み合わせることで10cm×10cmのラミネート電池を作製した。
非水電解質は六フッ化リン酸リチウムをエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの1/1(体積比)混合液に1mol/Lの濃度で溶解した非水電解質溶液を用い、セパレーターに厚さ30μmのポリエチレン製微多孔質フィルムを用いた。
その後、二次電池充放電試験装置(アスカ電子(株)製)を用い、テストセルの電圧が4.2Vに達するまで380mA(正極基準で1c)の定電流で充電を行い、4.2Vに達した後は、セル電圧を4.2Vに保つように電流を減少させて充電を行った。そして、電流値が40mAを下回った時点で充電を終了した。放電は250mAの定電流で行い、セル電圧が2.5Vに達した時点で放電を終了した。これを50サイクル継続したのちの電池厚みを測定した。
また、初回放電容量に対する50サイクル目の放電容量の百分率(50サイクル目の放電容量/初回放電容量×100)を放電容量維持率(%)として算出した。
これらの結果を表1に示す。
二酸化珪素粒子(BET比表面積=200m2/g)とケミカルグレード金属珪素粒子(BET比表面積=4m2/g)を等モルの割合で混合した混合粒子を、1350℃、10Paの高温減圧雰囲気で熱処理し、発生した酸化珪素ガスを800℃に保持したSUS製基体に析出させた。
次にこの析出物を回収した後、ジョークラッシャーで粗砕した。この粗砕物をジェットミル(ホソカワミクロン社製AFG−100)を用いて分級機の回転数9000rpmにて粉砕し、D50=7.6μm、D90=11.9μmの酸化珪素粒子(SiOx:x=1.02)をサイクロンにて回収した。
運転終了後冷却し炭素被覆量10質量%の黒色粒子「B’」を回収した。この粒子について、固体NMR(29Si−DDMAS)測定したところ、−110ppm付近を中心とするブロードな二酸化珪素のシグナル面積と−84ppm付近のダイヤモンド構造珪素のシグナル面積との比(S−84/S−110)は0.68であり、顕微ラマン分析を行った結果、ラマンシフトが1330cm−1と1580cm−1付近にスペクトルを有しており、強度比I1330/I1580は1.0であった。このときBET比表面積は2.5m2/gであった。
プラズマの発生条件は出力12.5kW、圧力15kPaとして、アルゴン供給量を120L/min、水素供給量10L/minとした。なお、得られた黒色粒子「B’」は25g/minの速度で10L/minのアルゴンをキャリアーガスに使用してプラズマ反応室に供給した。
実施例1において作製した炭素被覆酸化珪素粒子[A’]の一部を取り出しておき、熱プラズマ処理を行わずにしておいたものをポリイミド樹脂と混合し、非水電解質二次電池用負極材とした以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を製造し、同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
また、50サイクル後の放電容量維持率も、実施例1,2共に比較例1の炭素被覆酸化珪素粒子を用いた場合よりも5%以上良好な値であり、熱プラズマ処理によってサイクル特性も改善できたことが判った。
更に、実施例1の負極は初期厚み2mmに対して50サイクルの充放電後の厚みが2.1mmであったのに対して、比較例1の負極の場合には2.5mmに増加していた。すなわち、実施例1の電極表面でのガス発生が少ないことが判った。
Claims (8)
- 非水電解質を用いる二次電池用の負極に用いられる負極材料であって、
該負極材料は、一般式SiOxで表される酸化珪素粒子の表面上に炭素皮膜が被覆されたものであり、かつ前記炭素皮膜は熱プラズマ処理されたものであることを特徴とする非水電解質二次電池用負極材料。 - 非水電解質を用いる二次電池用の負極材の製造方法であって、
少なくとも、
一般式SiOxで表される酸化珪素粒子の表面上に炭素を蒸着させる工程と、
前記炭素蒸着後の酸化珪素粒子に熱プラズマ処理を行う工程と、
前記熱プラズマ処理後の酸化珪素粒子と結着剤とを混合する工程とを有することを特徴とする非水電解質二次電池用負極材の製造方法。 - 前記炭素蒸着後の酸化珪素粒子のBET比表面積を、5m2/g以下とすることを特徴とする請求項2に記載の非水電解質二次電池用負極材の製造方法。
- 前記結着剤を、ポリイミド樹脂とすることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の非水電解質二次電池用負極材の製造方法。
- 前記炭素蒸着工程を、前記酸化珪素粒子上に、圧力50〜30000Pa、有機物のガス及び/または蒸気の雰囲気下、温度600〜1100℃にて炭素を化学蒸着させる工程とし、
前記熱プラズマ処理工程を、前記炭素蒸着後の酸化珪素粒子を5000℃〜10000℃の温度の熱プラズマ雰囲気中に投入する工程とすることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極材の製造方法。 - 請求項2ないし請求項5のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極材の製造方法により製造された非水電解質二次電池用負極材を含む負極であって、充電後の体積が充電前の2倍未満であることを特徴とする非水電解質二次電池用負極。
- 少なくとも、請求項6に記載の非水電解質二次電池用負極と、正極と、セパレーターと、非水電解質とを備えたものであることを特徴とする非水電解質二次電池。
- 前記非水電解質二次電池が、リチウムイオン二次電池であることを特徴とする請求項7に記載の非水電解質二次電池。
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