JP2015216089A - リチウムイオン二次電池用導電材料、リチウムイオン二次電池負極形成用組成物、リチウムイオン二次電池正極形成用組成物、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents
リチウムイオン二次電池用導電材料、リチウムイオン二次電池負極形成用組成物、リチウムイオン二次電池正極形成用組成物、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池 Download PDFInfo
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Abstract
Description
このため、不純物の捕捉剤又は吸着剤(以下、単に吸着剤という)の検討、及び正極の安定化の検討がなされている(例えば、特許文献2参照)。
<1> アルミニウムケイ酸塩と、
前記アルミニウムケイ酸塩の表面に配置される炭素と、
を有するアルミニウムケイ酸塩複合体を含むリチウムイオン二次電池用導電材料。
前記集電体上に設けられ、前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用導電材料及び負極活物質を含有する負極層と、
を有するリチウムイオン二次電池用負極。
前記集電体上に設けられ、前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用導電材料及び正極活物質を含有する正極層と、
を有するリチウムイオン二次電池用正極。
従って、本発明のリチウムイオン二次電池用導電材料は、アルミニウムケイ酸塩複合体によるSiとAlとによるイオン交換能と、炭素による導電性とにより、リチウムイオン二次電池の電気特性と寿命特性とを共に向上させる。
[アルミニウムケイ酸塩]
本発明におけるアルミニウムケイ酸塩は、アルミニウムとケイ素とを含む酸化物塩である。アルミニウムとケイ素とを含む酸化物塩とすることにより、上述したイオン交換能を発揮し得る。本発明におけるアルミニウムケイ酸塩は、アルミニウムとケイ素とを含む酸化物塩であれば、特に制限はなく、他の金属元素を含むものであってもよい。本発明におけるアルミニウムケイ酸塩としては、例えば、アロフェン、カオリン、ゼオライト、サポナイト、モンモリロナイト、アタパルジャイト及びイモゴライトが挙げられる。
本発明におけるアロフェンとは、アルミニウム(Al)に対するケイ素(Si)の元素モル比Si/Alが0.1〜1.0である非晶質のアルミニウムケイ酸塩であって、中空球の構造体を形成すると言われているアルミニウムケイ酸塩を意味する。このようなアロフェンとしては、例えば、nSiO2・Al2O3・mH2O[n=1〜2、m=2.5〜3]で示される組成を有するものが挙げられる。
本発明におけるカオリンとは、層状構造をとるアルミニウムケイ酸塩であって、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、加水ハロイサイト等の1種又は2種以上から形成されるアルミニウムケイ酸塩を意味する。このようなカオリンとしては、例えば、Al2SiO5・(H2O)4・nH2O[n=0〜5]で示される組成を有するものが挙げられる。
本発明におけるゼオライトとは、アルミニウム(Al)に対するケイ素(Si)の元素モル比Si/Alが1〜500であるアルミニウムケイ酸塩であり、塩としてアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含み、沸石とも称される物質を意味する。このようなゼオライトとしては、例えば、X2/nO・Al2O3・ySiO2・zH2O[X=Na、K、Li等の金属カチオン、n=金属Xの原子価、y=2〜200、z=0以上]で示される組成を有するものが挙げられる。
本発明におけるサポナイトとは、構造中にMg、Ca等の金属カチオンを含むスメクタイト族(3八面体型スメクタイト)の層状粘土化合物であるアルミニウムケイ酸塩を意味する。このようなサポナイトとしては、例えば、X0.33(Mg3)(Al0.33Si3.67)O10(OH)2・nH2O[X=Mg、Ca、Na、K、Li等の金属カチオン、n=0以上]で示される組成を有するものが挙げられる。
本発明におけるモンモリロナイトナイトとは、構造中にMg、Ca等の金属カチオンを含むスメクタイト族(2八面体型スメクタイト)の層状粘土化合物であるアルミニウムケイ酸塩を意味する。このようなモンモリロナイトナイトとしては、例えば、(Na、Ca)0.33(Al1.67,Mg0.33)SiO4O10(OH)2:nH2Oで示される組成を有するものが挙げられる。
本発明におけるアタパルジャイトとは、パリゴルスカイトとも称される、繊維状の結晶構造を有するアルミニウムケイ酸塩を意味する。このようなアタパルジャイトとしては、例えば、Mg(Al0.5〜1Fe0〜0.5)Si4O10(OH)・4H2Oで示される組成を有するものが挙げられる。
本発明におけるイモゴライトとは、アルミニウム(Al)に対するケイ素(Si)の元素モル比Si/Alが0.3〜1.0のアルミニウムケイ酸塩であって、上記以外のものを意味する。このようなイモゴライトとしては、例えば、nSiO2・Al2O3・mH2O[n=0.6〜2.0、m=0以上]で示される組成を有するものが挙げられる。
測定方法:MAS(シングルパルス)
MAS回転数:10kHz
測定領域:52kHz
データポイント数:4096
resolution(測定領域/データポイント数):12.7Hz
パルス幅:3.0μsec
遅延時間:2sec
化学シフト値基準:α−アルミナを3.94ppm
window関数:指数関数
Line Broadening係数:10Hz
またイモゴライトは、金属イオン吸着能と金属イオン選択性の観点から、27Al−NMRスペクトルにおいて、3ppm近辺のピークに対する55ppm付近のピークの面積比率が、1%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることが更に好ましい。
測定方法:MAS(シングルパルス)
MAS回転数:6kHz
測定領域:24kHz
データポイント数:2048
resolution(測定領域/データポイント数):5.8Hz
パルス幅:4.7μsec
遅延時間:600sec
化学シフト値基準:TMSP−d4(3−(トリメチルシリル)(2,2,3,3−2H4)プロピオン酸ナトリウム)を1.52ppm
window関数:指数関数
Line Broadening係数:50Hz
また−85ppm近辺に現れるピークBは、粘土構造のアルミニウムケイ酸塩又は非晶質構造のアルミニウムケイ酸塩と考えられる。したがって、−78ppm近辺及び−85ppm近辺にピークを有するイモゴライトは、結晶構造のイモゴライトと、粘土構造又は非晶質構造のイモゴライトとの混合物又は複合体であると推定される。
なお、上記各ピークの面積は、NMR測定装置に組み込まれた解析ソフトにより求めてもよい。
図3に示すように、イモゴライトは、粉末X線回折スペクトルにおいて、2θ=26.9°及び40.3°近辺にピークを有する。2θ=26.9°及び40.3°近辺のピークは、イモゴライトに由来するピークと推定される。
ここで、2θ=20°及び35°近辺のピークを有しないとは、2θ=20°及び35°近辺におけるベースラインからの変位がノイズレベル以下であることを意味し、具体的にはベースラインからの変位がノイズ幅の100%以下であることを意味する。
イモゴライトには、金属イオン吸着能と金属イオン選択性の観点から、透過型電子顕微鏡(TEM)において100,000倍で観察したときに、長さ50nm以上の管状物が存在していないことが好ましい。
イモゴライトを合成する場合、本発明におけるイモゴライトの製造方法は、ケイ酸イオンを含む溶液及びアルミニウムイオンを含む溶液を混合して反応生成物を得る工程と、前記反応生成物を、水性媒体中、酸の存在下で熱処理する工程と、を有し、必要に応じてその他の工程を有することができる。得られるイモゴライトの収率、構造体形成等の観点から、少なくとも熱処理する工程の後、好ましくは、熱処理工程の前及び後で、脱塩及び固体分離を行う洗浄工程を有することが好ましい。
反応生成物であるイモゴライトを含む溶液から共存イオンを脱塩処理した後に、酸の存在下で熱処理することで、金属イオン吸着能に優れるイモゴライトを効率良く製造することができる傾向にある。ここで共存イオンとは、例えば、ナトリウムイオン、塩化物イオン、過塩素酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン等が挙げられる。
これは、例えば、以下のように考えることができる。規則的な構造の形成を阻害する共存イオンが除去されたイモゴライトを、酸の存在下で熱処理することで、規則的な構造を有するイモゴライトが形成される。イモゴライトが規則的な構造を有することで、金属イオンに対する親和性が向上し、効率よく金属イオンを吸着できると考えることができる。
反応生成物を得る工程では、ケイ酸イオンを含む溶液と、アルミニウムイオンを含む溶液とを混合して、イモゴライト及び共存イオンを含む反応生成物を含有する混合溶液を得る。
イモゴライトを製造する際、原料には、ケイ酸イオン及びアルミニウムイオンが必要となる。ケイ酸イオンを含む溶液(以下、「ケイ酸溶液」ともいう)を構成するケイ酸源としては、溶媒和した際にケイ酸イオンが生じるものであれば特に制限されない。ケイ酸源としては、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、アルミニウムイオンを含む溶液(以下、「アルミニウム溶液」ともいう)を構成するアルミニウム源は、溶媒和した際にアルミニウムイオンが生じるものであれば特に制限されない。アルミニウム源としては、塩化アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミニウムsec−ブトキシド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの原料をそれぞれ溶媒に溶解させて原料溶液(ケイ酸溶液及びアルミニウム溶液)を調製した後、原料溶液を互いに混合して混合溶液を得る。このとき、特定の元素モル比Si/Alを有するイモゴライトを得るためには、混合溶液中のSi及びAlの元素モル比Si/Alを、得られるイモゴライトにおけるSi及びAlの元素モル比Si/Alに合わせて調整すればよく、例えば、0.3〜1.0となるように調整し、好ましくは0.3以上1.0未満となるように調整し、より好ましくは0.4〜0.6となるように調整し、更に好ましくは0.45〜0.55となるように調整する。元素モル比Si/Alを0.3〜1.0とすることで、所望の規則的な構造を有するイモゴライトが合成され易くなる。
ケイ酸溶液のケイ素原子濃度が1mmol/L以上であると、生産性がより向上し、効率よく所望のイモゴライトを製造することができる。またケイ素原子濃度が1000mmol/L以下であると、ケイ素原子濃度に応じて生産性がより向上する。
アルミニウム溶液のアルミニウム原子濃度が100mmol/L以上であると、生産性がより向上し、効率よくイモゴライトを製造することができる。またアルミニウム原子濃度が1000mmol/L以下であると、アルミニウム原子濃度に応じて生産性がより向上する。
ケイ酸イオンを含む溶液とアルミニウムイオンを含む溶液とを混合し、得られた混合溶液に、共存イオンを含むイモゴライトを反応生成物として生成させた後、生成した共存イオンを含むイモゴライトを脱塩及び固体分離する第一洗浄工程を行う。第一洗浄工程では、混合溶液中から共存イオンの少なくとも一部を除去して混合溶液中の共存イオン濃度を低下させる。第一洗浄工程を行うことで、合成工程において所望のイモゴライトを形成し易くなる。
分散液の電気伝導率が4.0S/m以下であると、合成工程において所望のアルミニウムケイ酸塩がより形成しやすくなる傾向がある。
なお、電気伝導率は、株式会社堀場製作所:F−55及び同社の一般的な電気伝導率セル:9382−10Dを用いて、常温(25℃)で測定される。
例えば、第一洗浄工程を、遠心分離を用いて行なう場合、以下のようにして行うことができる。分散物にアルカリ等を加えてpHを5〜8に調整する。pHを調整した後の分散物を遠心分離した後、上澄み溶液を排出してゲル状沈殿物として固体分離する。固体分離されたものを溶媒に再分散させる。その際、分散物の容積を、例えば、溶媒を用いて遠心分離前の容積に戻すことが好ましい。再分散させた分散液を同様にして遠心分離して脱塩及び固体分離する操作を繰り返すことで、共存イオンの濃度を所定の濃度以下にすることができる。
合成工程では、水性媒体中、酸の存在下で、第一洗浄工程で得られた固体分離物の熱処理を行う。
第一洗浄工程により得られた、共存イオンの濃度を低減させたイモゴライトを含む溶液(分散液)を、酸の存在下で熱処理することで、規則的な構造を有する所望のイモゴライトを形成することができる。
合成工程を希薄溶液中で行なうことで、規則的な構造が管状に伸長した構造を有するイモゴライト(以下、「第一のイモゴライト」ともいう)を得ることができる。また合成工程を高濃度溶液中で行なうことで、規則的な構造に加えて粘土構造及び非晶質構造を有するイモゴライト(以下、「第二のイモゴライト」ともいう)を得ることができる。なお、第二のイモゴライトは、長さ50nm以上の管状物に成長するのに代えて、粘土構造及び非晶質構造の形成が増大しているものと推測される。
第一及び第二のいずれのイモゴライトも特定の規則的な構造を有することにより、優れた金属イオン吸着能を示す。
希釈条件として、ケイ素原子濃度を20mmol/L以下且つアルミニウム原子濃度を60mmol/L以下とすることで、第一のイモゴライトをより効率よく製造することができる傾向にある。
尚、第一のイモゴライトの合成では、希薄溶液で行うため反応が進みにくい場合があり、仕込み量のSi/Al比と、得られるイモゴライトのSi/Al比とが異なる場合がある。その場合には、所望の比率よりも原料のケイ素原子量を少な目に仕込むことによって、所望のSi/Al比を有するイモゴライトが得られる傾向がある。
濃度条件として、ケイ素原子濃度を100mmol/L以上且つアルミニウム原子濃度を100mmol/L以上とすることで、第二のイモゴライトをより効率よく製造することができ、更にアルミニウムケイ酸塩の生産性もより向上する傾向にある。
また、ケイ素原子濃度及びアルミニウム原子濃度は、ICP発光分光装置(例えば、株式会社日立製作所、ICP発光分光装置:P−4010)を用いて、定法により測定される。
熱処理の温度は特に制限されない。所望のイモゴライトを効率よく得る観点から、熱処理の温度は80℃〜160℃であることが好ましい。
熱処理の温度が160℃以下であると、ベーマイト(水酸化アルミニウム)が析出することをより抑制することができる傾向がある。また熱処理の温度が80℃以上であると、所望のアルミニウムケイ酸塩の合成速度が向上し、より効率よく所望のイモゴライトを製造できる傾向がある。
合成工程において熱処理して得られた生成物は、第二洗浄工程において脱塩及び固体分離に供される。これにより優れた金属イオン吸着能を有するイモゴライトを得ることができる傾向がある。これは、例えば、以下のように考えることができる。すなわち合成工程において熱処理して得られた生成物は、イモゴライトの吸着サイトが共存イオンで塞がれている場合があり、期待する程の金属イオン吸着能は得られない場合がある。そのため、合成工程で得られた生成物としてのイモゴライトから共存イオンの少なくとも一部を、脱塩及び固体分離することにより除去する第二洗浄工程を行うことにより、優れた金属イオン吸着能を有する所望のイモゴライトを得ることができると考えることができる。
第二洗浄工程は、共存イオンの濃度が所定の濃度以下になるように行うことが好ましい。ここで共存イオンの濃度としては、例えば、第二洗浄工程で得られる固体分離されたものを、濃度が60g/Lとなるように純水に分散させた場合、500mmol/L以下とすることができる。このような共存イオン濃度とするには、具体的には例えば、第二洗浄工程で得られる固体分離されたものを、濃度が60g/Lとなるように純水に分散させた場合に、その分散液の電気伝導率が4.0S/m以下となるように洗浄を行なうことが好ましく、1.0mS/m〜3.0S/mとなるように洗浄を行なうことがより好ましく、1.0mS/m〜2.0S/mとなるように洗浄を行なうことが更に好ましい。
分散液の電気伝導率が4.0S/m以下であると、より優れた金属イオン吸着能を有するイモゴライトが得られやすくなる傾向がある。
なお、塩化物イオン濃度及びナトリウムイオン濃度は、イオンクロマトグラフィー(例えば、日本ダイオネクス株式会社、DX−320及びDX−100)により通常の条件で測定される。
また、イモゴライトの分散物の濃度は、固体分離されたものを110℃、24時間乾燥して得られる固体の質量を基準とする。
本発明に係るアルミニウムケイ酸塩複合体では、アルミニウムケイ酸塩の表面に、炭素が配置される。配置される炭素は、アルミニウムケイ酸塩複合体の表面の少なくとも一部又は全部に配置される。
図7では、炭素40がアルミニウムケイ酸塩50の表面全体を被覆している。図8では、炭素40がアルミニウムケイ酸塩50の表面全体を被覆しているが、炭素40の厚みにばらつきがある。また、図9では、炭素40がアルミニウムケイ酸塩50の表面に部分的に存在し、アルミニウムケイ酸塩50の表面には、炭素40で覆われていない部分がある。図10では、アルミニウムケイ酸塩50の表面に、アルミニウムケイ酸塩50よりも小さい粒径を有する炭素40の粒子が存在している。図11は、図10の変形例であり、炭素40の粒子形状が鱗片状となっている。なお、図7〜図11では、アルミニウムケイ酸塩50の形状は、模式的に球状(断面形状としては円)で表されているが、球状、ブロック状、鱗片状、断面形状が多角形の形状(角のある形状)等のいずれであってもよい。
また、微細なアルミニウムケイ酸塩が集合、結合又は凝集して粒子を形成している場合、粒子表面の少なくとも一部又は全部に炭素が配置されていればよく、集合、結合又凝集によって粒子内部に細孔を有する場合、細孔内の一部又は全部に炭素が配置されていてもよい。
すなわち、アルミニウムケイ酸塩の内部の状態は、試料を熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)に埋め込み硬化して成形加工した後、機械的に研磨することでアルミニウムケイ酸塩の内部を露出させ、内部にあたる部分を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することで確認することができる。アルミニウムケイ酸塩の内部に炭素が配置されているか否かは、上記のSEMから、エネルギー分散型X線分光法(EDX)にて確認することができる。
アルミニウムケイ酸塩複合体における炭素含有比率は、0.1質量%〜50質量%であることが好ましい。炭素含有比率が0.1質量%以上であれば、アルミニウムケイ酸塩複合体の導電性がより向上する傾向があり、50質量%以下であれば、アルミニウムケイ酸塩複合体の金属イオン吸着能をより有効に活用できる傾向がある。アルミニウムケイ酸塩複合体における炭素含有比率は、0.5質量%〜40質量%であることがより好ましく、1質量%〜30質量%であることが更に好ましい。
アルミニウムケイ酸塩複合体における炭素含有比率は、示差熱−熱重量分析装置(TG−DTA)を用いて、20℃/分の昇温速度で、800℃20分保持での質量減少率にて測定される。
なお、R値は、ラマンスペクトル測定装置(例えば、日本分光株式会社、NSR−1000型、励起波長532nm)を用い、測定範囲(830cm−1〜1940cm−1)全体をベースラインとして、ラマンスペクトル解析から求めることができる。
粉体抵抗率は、粉体抵抗測定システム(例えば、株式会社三菱化学アナリテック、ロレスターGP)を用いて、3842N/cm2(382Kgf/cm2)の圧力にて測定した体積抵抗率の値とする。
具体的には、アルミニウムケイ酸塩複合体を、水等の分散媒に分散させて分散液を調製する。この分散液について、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて小径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、累積50%となる粒子径(D50)を体積平均粒子径として求める。
なお、本明細書中の「体積平均粒子径」については、いずれも上記方法に従って測定した値を用いる。
(1) 27Al−NMRスペクトルにおいて3ppm近辺にピークを有する。
(2) 29Si−NMRスペクトルにおいて−78ppm近辺及び−85ppm近辺にピークを有する。
(3) X線源としてCuKα線を用いた粉末X線回折スペクトルにおいて2θ=26.9°及び40.3°近辺にピークを有し、2θ=20°及び35°近辺のピークを有しない。
(4) 29Si−NMRスペクトルにおける前記−78ppm近辺のピークAに対する前記−85ppm近辺のピークBの面積比率(ピークB/ピークA)が、2.0〜9.0である。
(5) BET比表面積が250m2/g以上である。
(6) 水分含有率が、10質量%以下である。
アルミニウムケイ酸塩複合体の製造方法は、アルミニウムケイ酸塩を得る工程と、得られたアルミニウムケイ酸塩の表面に炭素を付与する炭素付与工程とを含み、必要に応じて他の工程を含む。
アルミニウムケイ酸塩を得る工程は、炭素を付与する対象となるアルミニウムケイ酸塩を得ることができればよく、アルミニウムケイ酸塩を準備することを含む工程であってもよく、ケイ酸源とアルミニウム源とからアルミニウムケイ酸塩を製造することを含む工程であってもよい。アルミニウムケイ酸塩を製造する方法については、各種アルミニウムケイ酸塩に関して既述した方法を適用し得る。アルミニウムケイ酸塩を準備することとしては、市販品等を入手してそのまま用いることが挙げられる。
炭素付与工程では、アルミニウムケイ酸塩の表面に炭素を付与する。これにより、アルミニウムケイ酸塩の表面に炭素が配置される。アルミニウムケイ酸塩の表面に炭素を付与する方法としては、特に制限はなく、湿式混合法、乾式混合法、化学蒸着法等の方法が挙げられる。アルミニウムケイ酸塩の表面に付与される炭素の厚みを揃えやすく、かつ反応系の制御が容易で、大気圧下での処理が可能であるという点から、湿式混合法(「湿式法」ということがある)又は乾式混合法(「気相法」ということがある)が好ましい。
炭素源の溶液又は分散液における炭素源の含有率は、分散のし易さの観点から0.01質量%〜30質量%であることが好ましく、0.05質量%〜20質量%であることがより好ましく、0.1質量%〜10質量%であることが更に好ましい。アルミニウムケイ酸塩と炭素源との混合比(アルミニウムケイ酸塩:炭素源)としては、金属イオン吸着能と導電性との両立の観点から、質量比で100:1〜100:500であることが好ましく、100:5〜100:300であることがより好ましい。
アルミニウムケイ酸塩と炭素源とを固体同士で混合する際のアルミニウムケイ酸塩と炭素源との混合比(アルミニウムケイ酸塩:炭素源)としては、金属イオン吸着能と導電性の両立の観点から、質量比で100:1〜100:500であることが好ましく、100:5〜100:300であることがより好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池用導電材料は、アルミニウムケイ酸塩複合体の他に、任意の成分を含むことができる。リチウムイオン二次電池用導電材料に含有可能な他の成分としては、リチウムイオン二次電池用導電材料に一般的に含有可能な成分であれば特に制限されない。リチウムイオン二次電池用導電材料に含有可能な他の成分としては、カーボンブラック、グラファイト、アセチレンブラック、導電性を示す酸化物、導電性を示す窒化物等を挙げることができる。本発明のリチウムイオン二次電池用導電材料は、スラリーとしたときの使い勝手の良さの観点から、なかでも、アセチレンブラックを含むことが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池負極形成用組成物は、上述のリチウムイオン二次電池用導電材料と、負極活物質と、結着剤と、を含有する。本発明のリチウムイオン二次電池負極形成用組成物は、更に、溶媒、増粘剤、導電助剤等を含有してもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池正極形成用組成物は、上述のリチウムイオン二次電池用導電材料と、正極活物質と、結着剤と、を含有する。本発明のリチウムイオン二次電池正極形成用組成物は、更に、溶媒、増粘剤、導電助剤等を含有してもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極(以下「負極」と略称する場合がある)は、集電体と、前記集電体上に設けられ上述のリチウムイオン二次電池用導電材料及び負極活物質を含有する負極層と、を有する。
例えば、本発明のリチウムイオン二次電池用負極は、前述のリチウムイオン二次電池負極形成用組成物を調製し、このリチウムイオン二次電池負極形成用組成物を集電体に付与した後、任意で含まれる溶媒を除去し、加圧成形して負極層を形成することにより得られる。一般に、リチウムイオン二次電池負極形成用組成物は、混練後、シート状、ペレット状等の形状に成形される。
尚、リチウムイオン二次電池負極形成用組成物を用いて本発明のリチウムイオン二次電池用負極が製造された場合、負極層には結着剤が含有される。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極(以下「正極」と略称する場合がある)は、集電体と、前記集電体上に設けられ上述のリチウムイオン二次電池用導電材料及び正極活物質を含有する正極層と、を有する。
リチウムイオン二次電池用正極における集電体としては、リチウムイオン二次電池用負極で説明した集電体を挙げることができる。リチウムイオン二次電池用正極は、前述のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法において、リチウムイオン二次電池負極形成用組成物をリチウムイオン二次電池正極形成用組成物に置き換えることにより、同様の方法で製造することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、上述のリチウムイオン二次電池用負極及び上述のリチウムイオン二次電池用正極のうち少なくとも一方を備える。上述のリチウムイオン二次電池用負極以外の負極を用いる場合には、リチウムイオン二次電池に用いられる通常の負極を適用することができる。また、上述のリチウムイオン二次電池用正極以外の正極を用いる場合には、リチウムイオン二次電池に用いられる通常の正極を適用することができる。
負極と正極とは、例えば、セパレータを介して対向して配置し、電解質を含む電解液を注入することにより、リチウムイオン二次電池とすることができる。
[製造例1]
濃度:700mmol/Lの塩化アルミニウム水溶液(500mL)に、濃度:350mmol/Lのオルトケイ酸ナトリウム水溶液(500mL)を加え、30分間攪拌した。この溶液に、濃度:1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を330mL加え、pHを6.1に調整した。
脱塩処理3回目の上澄み排出後に得たゲル状沈殿物を、濃度が60g/Lとなるように純水に分散し、株式会社堀場製作所:F−55及び電気伝導率セル:9382−10Dを用いて、常温(25℃)で、電気伝導率を測定したところ、1.3S/mであった。
次に、この溶液を乾燥器に入れ、98℃で48時間(2日間)加熱した。
脱塩処理3回目の上澄み排出後に得たゲル状沈殿物を、濃度が60g/Lとなるように純水に分散し、株式会社堀場製作所:F−55及び電気伝導率セル:9382−10Dを用いて、常温(25℃)で電気伝導率を測定したところ、0.6S/mであった。
試料AのBET比表面積、全細孔容積、及び平均細孔直径を、窒素吸着能に基づいて測定した。評価装置には、窒素吸着測定装置(AUTOSORB−1、QUANTACHROME社)を用いた。これらの測定を行う際には、後述する試料の前処理を行った後、評価温度を77Kとし、評価圧力範囲を相対圧(飽和蒸気圧に対する平衡圧力)にて1未満としている。
試料Aの体積平均粒子径を以下の方法によって測定したところ、体積平均粒子径は5.0μmであった。
測定試料(5mg)を界面活性剤(エソミンT/15、ライオン株式会社)0.01質量%水溶液中に入れ、振動攪拌機で分散した。得られた分散液をレーザー回折式粒度分布測定装置(SALD3000J、株式会社島津製作所)の試料水槽に入れ、超音波をかけながらポンプで循環させ、レーザー回折式で測定した。測定条件は下記の通りとした。得られた粒度分布の体積累積50%粒径(D50%)を体積平均粒子径とした。以下、実施例において、体積平均粒子径の測定は同様にして行った。
・光源:赤色半導体レーザー(690nm)
・吸光度:0.10〜0.15
・屈折率:2.00−0.20i
27Al−NMRスペクトルの測定装置として、核磁気共鳴分光装置(AV400WB型、ブルカー・バイオスピン株式会社)を用い、下記条件で測定を行った。
測定方法:MAS(シングルパルス)
MAS回転数:10kHz
測定領域:52kHz
データポイント数:4096
resolution(測定領域/データポイント数):12.7Hz
パルス幅:3.0μsec
遅延時間:2sec
化学シフト値基準:α−アルミナを3.94ppm
window関数:指数関数
Line Broadening係数:10Hz
29Si−NMRスペクトル測定装置としては、核磁気共鳴分光装置(AV400WB型、ブルカー・バイオスピン株式会社)を用い、下記条件で測定を行った。
測定方法:MAS(シングルパルス)
MAS回転数:6kHz
測定領域:24kHz
データポイント数:2048
resolution(測定領域/データポイント数):5.8Hz
パルス幅:4.7μsec
遅延時間:600sec
化学シフト値基準:TMSP−d4(3−(トリメチルシリル)(2,2,3,3−2H4)プロピオン酸ナトリウム)を1.52ppm
window関数:指数関数
Line Broadening係数:50Hz
常法のICP発光分光分析(ICP発光分光装置:P−4010、株式会社日立製作所)から求めたSi及びAlの元素モル比Si/Alは、0.5であった。
粉末X線回折は、株式会社リガク:Geigerflex RAD−2X(製品名)を用い、X線源として波長0.15418nmのCuKα線を用いて行なった。図3に、試料Aの粉末X線回折のスペクトルを示す。2θ=26.9°近辺、そして40.3°近辺にブロードなピークが観測された。また2θ=18.8°、20.3°、27.8°、40.6°及び53.3°近辺にシャープなピークが観測された。また、2θ=20°及び35°近辺にはブロードなピークは観測されなかった。
図4に、試料Aを100,000倍で観察したときの透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示す。なお、TEM観察は、透過型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ、H−7100FA型)を用いて、100kVの加速電圧で行なった。また、TEM観察対象の試料Aは以下のようにして調製した。すなわち、最終の脱塩処理工程前の、加熱後の溶液(アルミニウムケイ酸塩濃度47g/L)を純水で10倍に希釈し、超音波照射処理を5分間行ったものをTEM観察試料調製用の支持体上に滴下し、次いで自然乾燥して薄膜とすることで調製した。
図4に示されるように、試料Aでは長さ50nm以上の管状物は存在していなかった。
試料Aの水分含有率を、大気圧下、120℃で加熱し、6時間保持した後、カールフィッシャー法にて測定した結果、3質量%であった。
試料Aの金属イオン吸着能評価を、ICP発光分光分析(ICP発光分光装置:P−4010、株式会社日立製作所)によって行った。
金属イオン吸着能の評価にあたり、まず、Ni2+、Mn2+又はLi+について、各々の金属硫酸塩及び純水を用いて100ppmの金属イオン溶液を調製した。その金属イオン溶液に対し、最終濃度が1.0質量%となるように試料Aを添加し、充分混合した後、静置した。そして、試料Aの添加前後の各々の金属イオン濃度をICP発光分光分析にて測定した。結果を表1に示す。
市販品の活性炭(和光純薬工業株式会社、活性炭、破砕状、粒径2mm〜5mm)を試料Bとした。水中での金属イオン吸着能について、試料B添加後の濃度はNi2+が50ppm、Mn2+が60ppm、Li+が100ppmとなった。結果を表1に示す。
製造例1で作製した試料Aを用い、試料Aの添加量を表2に示すように変更した以外は「水中での金属イオン吸着能1」で説明した方法で、水中での金属イオン吸着能を評価した。その結果を表2に示す。
製造例1で作製した試料Aを用い、金属イオン種をCu2+に、また金属イオン調整濃度を400ppmに代えた以外は「水中での金属イオン吸着能1」で説明した方法で、水中での金属イオン吸着能を評価した。このときのpHは5.1であった。試料A添加後の濃度はCu2+が160ppmとなった。
濃度:180mmol/Lの塩化アルミニウム水溶液(500mL)に、濃度:74mmol/Lのオルトケイ酸ナトリウム水溶液(500mL)を加え、30分間攪拌した。この溶液に、濃度:1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を93mL加え、pHを7.0に調整した。
次に、この溶液を乾燥器に入れ、98℃で96時間(4日間)加熱した。
図1に試料Dの27Al−NMRのスペクトルを示す。図1に示すように、3ppm近辺にピークを有していた。また55ppm近辺に若干のピークが見られた。3ppm近辺のピークに対する、55ppm近辺のピークの面積比率は、4%であった。
図2に試料Dの29Si−NMRのスペクトルを示す。図2に示されるように、−78ppm及び−85ppm近辺にピークを有していた。−78ppm及び−85ppm近辺のピークの面積を上記方法により測定した。その結果、−78ppm近辺のピークAの面積を1.00としたとき、−85ppm近辺のピークBの面積は0.44であった。
常法のICP発光分光分析(ICP発光分光装置:P−4010(株式会社日立製作所))から求めた試料DのSi及びAlの元素モル比Si/Alは、0.5であった。
製造例1と同様の方法で、試料Dの粉末X線回折を行った。図3に、試料Dの粉末X線回折のスペクトルを示す。2θ=4.8°、9.7°、14.0°、18.3°、27.3°及び40.8°近辺にブロードなピークを有していた。また、2θ=20°及び35°近辺にはブロードなピークは観測されなかった。
製造例1と同様の方法で、試料DのBET比表面積、全細孔容積、及び平均細孔直径を、窒素吸着能に基づいて測定した。
評価の結果、試料DのBET比表面積は323m2/g、全細孔容積は0.22cm3/g、そして平均細孔直径は2.7nmとなった。
製造例1と同様の方法で、試料Dの体積平均粒子径を測定した。その結果、体積平均粒子径は5.0μmであった。
図5に、試料Dを製造例1と同様の方法により100,000倍で観察したときの透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示す。図5に示されるように管状物が生成しており、管状物10aの管部長さ方向の長さは、10nm〜10μm程度であり、外径は1.5nm〜3.0nm程度であり、内径は0.7nm〜1.4nm程度であった。
試料Dの水分含有率を、大気圧下、120℃で加熱し、6時間保持した後、カールフィッシャー法にて測定した結果、3質量%であった。
製造例1と同様の方法で、試料Dの水中でのMn2+イオン吸着能を評価したところ、試料Dは試料Aと同様の金属イオン吸着能を示した。
上記の試料Aを用いて、アルミニウムケイ酸塩複合体としてのイモゴライト複合体Aを以下のようにして製造した。
試料Aとポリビニルアルコール粉末(和光純薬工業株式会社)とを100:70の質量比で混合し、窒素雰囲気下、850℃で1時間焼成した。これをイモゴライト複合体Aとした。
得られたイモゴライト複合体Aの炭素含有比率を、示差熱−熱重量分析装置(TG−DTA)を用いて、20℃/分の昇温速度で、800℃20分保持での質量減少率にて測定したところ、10質量%であった。
また、得られたイモゴライト複合体AのR値を、以下の条件で測定したところ、1.0であった。ラマン分光測定法によるマッピングを行い、イモゴライト複合体Aの表面の被覆状態を確認したところ、炭素により被覆されていない部分が非常に少なく、表面のほとんどの部分が炭素により被覆されている状態の炭素被覆が確認できた。
・レーザー波長:532nm
・照射強度:1.5mW(レーザーパワーモニターでの測定値)
・照射時間:60秒・照射面積:4μm2
・測定範囲:830cm−1〜1940cm−1
・ベースライン:1050cm−1〜1750cm−1
補正後に得られたラマンスペクトルの中で、1360cm−1付近に現れるピークの強度をId、1580cm−1付近に現れるピークの強度をIgとし、その両ピークの強度比Id/Ig(D/G)をR値として求めた。
上記の試料Aを用いて、アルミニウムケイ酸塩複合体としてのイモゴライト複合体Bを以下のようにして製造した。
アルミニウムケイ酸塩と炭素源との混合質量比が100:70となるように、1質量%のポリビニルアルコール水溶液に試料Aを分散させ120℃で乾燥した。乾燥後の固体を粉砕して、窒素雰囲気下、850℃にて1時間焼成した。これをイモゴライト複合体Bとした。得られたイモゴライト複合体Bの炭素含有比率を、示差熱−熱重量分析装置(TG−DTA)を用いて、20℃/分の昇温速度で、800℃、20分保持での質量減少率にて測定したところ、10質量%であった。
また、得られたイモゴライト複合体BのR値を、上記と同一の条件で測定したところ、1.0であった。ラマン分光測定法によるマッピングを行い、イモゴライト複合体Bの表面の被覆状態を確認したところ、炭素により被覆されていない部分が非常に少なく、表面のほとんどの部分が炭素により被覆されている状態の炭素被覆が確認できた。
イモゴライト複合体A及びBに対して以下の評価を行った。なお、比較対照として、炭素被覆前の試料Aと、試料Aに対して窒素雰囲気下で850℃1時間の熱処理を行って得られた焼成物Aを用いた。製造例1と同様の方法で、焼成物AのBET比表面積を窒素吸着能に基づいて測定した。その結果、焼成物AのBET比表面積は5m2/gであった。また、製造例1と同様の方法で、焼成物Aの体積平均粒子径を測定した。その結果、体積平均粒子径は5.0μmであった。
また、粉体抵抗率、導電率、金属吸着能、及び充放電特性については、比較対照として、更にアセチレンブラック(HS−100、電気化学工業株式会社)を用いた。このアセチレンブラックの体積平均粒子径及びBET比表面積を上記方法で測定したところ、それぞれ、2.0μm及び38m2/gであった。
イモゴライト複合体A及びBと、炭素被覆前の試料A、並びに、焼成物Aについて、製造例1に対して記載した条件と同一の条件で粉末X線回折を行った。その結果を図12に示す。図12において、黒丸は非晶質アルミニウムケイ酸塩を示すピーク、黒三角はバイヤライト構造を示すピーク、黒四角はムライト構造を示すピークを、それぞれ表す。
図12に示されるように、イモゴライト複合体A及びBは、いずれもムライト構造を示すピークは確認できず、非晶質アルミニウムケイ酸塩由来の構造が維持されていることがわかった。
これに対して、焼成物Aでは、バイヤライト構造及び非晶質アルミニウムケイ酸塩の構造を示すピークが確認できず、ムライト構造を有するものであり、非晶質アルミニウムケイ酸塩由来の構造を有していないことがわかった。
粉体抵抗率及び導電率は、表3に示す各試料3gを秤取り、粉体抵抗測定システム(ロレスターGP、三菱化学アナリテック株式会社)を用いて、3842N/cm2(382kgf/cm2)の圧力を加えた状態にて測定した。尚、試料として用いたゼオライト、アロフェン、カオリン、サポナイト、モンモリロナイト及びアタパルジャイトは、後述の実施例3〜8で使用した原料を示し、ゼオライト複合体、アロフェン複合体、カオリン複合体、サポナイト複合体、モンモリロナイト複合体及びアタパルジャイト複合体は、後述の実施例3〜8で製造されたものを示す。
それぞれの結果を表3に示す。
また、ゼオライト、アロフェン、カオリン及びサポナイトにおいても、それぞれ表面に炭素を有するゼオライト複合体、アロフェン複合体、カオリン複合体、サポナイト複合体、モンモリロナイト複合体及びアタパルジャイト複合体の方が、いずれも粉体抵抗率が低く、導電率が高くなっていることが分かる。
イモゴライト複合体A及びB、炭素被覆前の試料A、焼成物A、並びにアセチレンブラックについて、以下のように、電解液中での金属(Mn)イオン吸着能を評価した。
1MのLiPF6と、エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC):ジエチルカーボネート(DEC)を体積比1:1:1の比率で含む電解液を調製し、これにMn(BF4)2を溶解して、500ppmのMn溶液を調製した。このMn溶液に各試料を0.05g添加して30分間攪拌した後、室温(25℃)にて一晩静置させた。その後、上澄み液を0.45μmのフィルタを用いて濾過し、ICP発光分光装置(ICP−AES)を用いてMnイオンの吸着量を測定した。結果を図13に示す。
図13に示すように、イモゴライト複合体A及びBは共に、アセチレンブラック及び焼成物Aと比較して良好な金属イオン吸着能を有することがわかった。
それぞれ90質量部の、試料A、焼成物A、イモゴライト複合体A、イモゴライト複合体B又はアセチレンブラックに対して、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)10質量部を添加して、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いて混練して、スラリーを得た。得られたスラリーを銅箔上に塗布し、105℃で30分乾燥後、プレスを行い、電極を得た。得られた電極を負極とし、対極である金属リチウムとを20μmのポリプロピレン製セパレータを介して対向させ、電解液を注入することによりコインセル(ハーフセル)を作製した。電解液はエチルカーボネートとメチルエチルカーボネートの混合溶媒(体積比3対7)に、LiPF6を1mol/L、ビニレンカーボネートを0.5質量%の濃度になるように溶解させたものを使用した。
図14及び図15に示されるように、試料A、焼成物Aの初回放電容量は0.3mAh/g〜0.4mAh/gであるのに対し、気相法又は湿式法にて炭素被覆したイモゴライト複合体A及びイモゴライト複合体Bは、220mAh/g〜280mAh/gの初回放電容量を有し、アセチレンブラックの205mAh/gと比較して同等以上の性能を有することが分かった。
(負極への添加)
5質量部のイモゴライト複合体Aに対して、アセチレンブラックを1質量部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を3質量部、及び黒鉛を91質量部添加して、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いて混練して、スラリーを得た。得られたスラリーを用いて銅箔上に塗布し、105℃で30分乾燥後、プレスを行い、負極Aを得た。比較として、アセチレンブラックを1質量部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を3質量部、及び黒鉛を96質量部添加して、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いて混練して、得たスラリーを用いて同様の手法で負極Xを得た。
イモゴライト複合体Aの3質量部に対して、アセチレンブラックを5質量部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を6質量部、及びスピネルマンガン(マンガン酸リチウム)を86質量部、添加して、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いて混練して、スラリーを得た。得られたスラリーを用いてアルミ箔上に塗布し、105℃で30分乾燥後、プレスを行い、正極Aを得た。比較として、前記正極Xを用いた。なお、負極として前記負極Xを用いた。
前記の負極と正極をそれぞれ130℃にて6時間真空乾燥後、20μmのポリプロピレン製セパレータを介して対向させ、電解液を注入することによりコインセルを作製した。電解液はエチルカーボネートとメチルエチルカーボネートの混合溶媒(体積比3対7)に、LiPF6を1mol/L、ビニレンカーボネートを0.5質量%の濃度になるように溶解させたものを使用した。正極Aと負極Xとを用いて作製したコインセルをセルC−1とした。
セルA−1、セルC−1及び標準セルのそれぞれに対して、25℃の恒温槽内に入れた後、電圧が4.2V、電流が0.46mAの定電流定電圧充電にて0.0046Vまで充電し、その後、0.46mAの電流で2.7Vとなるまで放電した。次に、各セルに対して、電圧が4.2V、電流が0.46mAの定電流定電圧充電にて0.0046Vまで充電し、充電容量(放置前の初回充電容量)を得た。充電後の各セルを60℃の恒温槽内に入れ、7日間静置した。静置後の各セルに対して、0.46mAの電流で2.7Vとなるまで放電させて、放電容量(7日間放置後の初回放電容量)を得た。(7日間放置後の初回放電容量)/(放置前の初回充電容量)を容量維持率とした。各々のセルの容量維持率を比較した結果、セルA−1は標準セルと比較して容量維持率が0.5%向上した。また、セルC−1は標準セルと比較して容量維持率が5%向上した。
これより、イモゴライト複合体をリチウムイオン二次電池の負極又は正極に添加することで、イモゴライト複合体を添加しない場合と比較して容量維持率が向上することが分かった。
アルミニウムケイ酸塩複合体としてのゼオライト複合体を、以下のようにして作製した。
ゼオライトとしては、製品名:SP#600(日東粉化工業株式会社)を用いた。このゼオライトの各種物性は以下のとおりであった。なおBET比表面積及び元素モル比Si/Alは、上記製造例1と同一の条件で測定した。
BET比表面積:250m2/g
元素モル比Si/Al:2.8
体積平均粒子径:10.0μm
ゼオライトとポリビニルアルコール粉末(和光純薬工業株式会社)とを100:70の質量比で混合し、窒素雰囲気下、850℃で1時間焼成した。これをゼオライト複合体とした。
得られたゼオライト複合体の炭素含有比率を、示差熱−熱重量分析装置(TG−DTA)を用いて、20℃/分の昇温速度で、800℃20分保持での質量減少率にて測定したところ、10質量%であった。
また、得られたゼオライト複合体のR値を、上記と同一の条件で測定したところ、1.0であった。ラマン分光測定法によるマッピングを行い、ゼオライト複合体の表面の被覆状態を確認したところ、炭素により被覆されていない部分が非常に少なく、表面のほとんどの部分が炭素により被覆されている状態の炭素被覆が確認できた。
アルミニウムケイ酸塩複合体としてのアロフェン複合体を、以下のようにして作製した。アロフェンとしては、製品名:セカード(品川化成株式会社)を用いた。このアロフェンの各種物性は以下のとおりであった。なおBET比表面積及び元素モル比Si/Alは、上記製造例1と同一の条件で測定した。
BET比表面積:345m2/g
元素モル比Si/Al:0.6
体積平均粒子径:13.0μm
アロフェンとポリビニルアルコール粉末(和光純薬工業株式会社)とを100:70の質量比で混合し、窒素雰囲気下、850℃で1時間焼成した。これをアロフェン複合体とした。
得られたアロフェン複合体の炭素含有比率を、示差熱−熱重量分析装置(TG−DTA)を用いて、20℃/分の昇温速度で、800℃、20分保持での質量減少率にて測定したところ、10質量%であった。
また、得られたアロフェン複合体のR値を、上記と同一の条件で測定したところ、1.0であった。ラマン分光測定法によるマッピングを行い、アロフェン複合体の表面の被覆状態を確認したところ、炭素により被覆されていない部分が非常に少なく、表面のほとんどの部分が炭素により被覆されている状態の炭素被覆が確認できた。
アルミニウムケイ酸塩複合体としてのカオリン複合体を、以下のようにして作製した。
カオリンとしては、製品名:ASP−200(林化成株式会社)を用いた。このカオリンの各種物性は以下のとおりであった。なおBET比表面積及び元素モル比Si/Alは、上記製造例1と同一の条件で測定した。
BET比表面積:20m2/g
元素モル比Si/Al:0.6
体積平均粒子径:4.0μm
カオリンとポリビニルアルコール粉末(和光純薬工業株式会社)とを100:70の質量比で混合し、窒素雰囲気下、850℃で1時間焼成した。これをカオリン複合体とした。
得られたカオリン複合体の炭素含有比率を、示差熱−熱重量分析装置(TG−DTA)を用いて、20℃/分の昇温速度で、800℃20分保持での質量減少率にて測定したところ、10質量%であった。
また、得られたカオリン複合体のR値を、上記と同一の条件で測定したところ、1.0であった。ラマン分光測定法によるマッピングを行い、カオリン複合体の表面の被覆状態を確認したところ、炭素により被覆されていない部分が非常に少なく、表面のほとんどの部分が炭素により被覆されている状態の炭素被覆が確認できた。
アルミニウムケイ酸塩複合体としてのサポナイト複合体を、以下のようにして作製した。
サポナイトとしては、製品名:スメクトンSA(クニミネ工業株式会社)を用いた。このサポナイトの各種物性は以下のとおりであった。なおBET比表面積及び元素モル比Si/Alは、上記製造例1と同一の条件で測定した。
BET比表面積:256m2/g
元素モル比Si/Al:11
体積平均粒子径:38.0μm
サポナイトとポリビニルアルコール粉末(和光純薬工業株式会社)とを100:70の質量比で混合し、窒素雰囲気下、850℃で1時間焼成した。これをサポナイト複合体とした。
得られたサポナイト複合体の炭素含有比率を、示差熱−熱重量分析装置(TG−DTA)を用いて、20℃/分の昇温速度で、800℃20分保持での質量減少率にて測定したところ、10質量%であった。
また、得られたサポナイト複合体のR値を、上記と同一の条件で測定したところ、1.0であった。ラマン分光測定法によるマッピングを行い、サポナイト複合体の表面の被覆状態を確認したところ、炭素により被覆されていない部分が非常に少なく、表面のほとんどの部分が炭素により被覆されている状態の炭素被覆が確認できた。
アルミニウムケイ酸塩複合体としてのモンモリロナイト複合体を、以下のようにして作製した。
モンモリロナイトとしては、製品名:クニピア(クニミネ工業株式会社)を用いた。このモンモリロナイトの各種物性は以下のとおりであった。なおBET比表面積及び元素モル比Si/Alは、上記製造例1と同一の条件で測定した。
BET比表面積:20m2/g
元素モル比Si/Al:2.4
体積平均粒子径:3.0μm
モンモリロナイトとポリビニルアルコール粉末(和光純薬工業株式会社)とを100:70の質量比で混合し、窒素雰囲気下、850℃で1時間焼成した。これをモンモリロナイト複合体とした。
得られたモンモリロナイト複合体の炭素含有比率を、示差熱−熱重量分析装置(TG−DTA)を用いて、20℃/分の昇温速度で、800℃20分保持での質量減少率にて測定したところ、10質量%であった。
また、得られたモンモリロナイト複合体のR値を、上記と同一の条件で測定したところ、1.0であった。ラマン分光測定法によるマッピングを行い、モンモリロナイト複合体の表面の被覆状態を確認したところ、炭素により被覆されていない部分が非常に少なく、表面のほとんどの部分が炭素により被覆されている状態の炭素被覆が確認できた。
アルミニウムケイ酸塩複合体としてのアタパルジャイト複合体を、以下のようにして作製した。
アタパルジャイトとしては、製品名:アタゲル50(林化成株式会社)を用いた。このアタパルジャイトの各種物性は以下のとおりであった。なおBET比表面積及び元素モル比Si/Alは、上記製造例1と同一の条件で測定した。
BET比表面積:150m2/g
元素モル比Si/Al:2.7
体積平均粒子径:3.0μm
アタパルジャイトとポリビニルアルコール粉末(和光純薬工業株式会社)とを100:70の質量比で混合し、窒素雰囲気下、850℃で1時間焼成した。これをアタパルジャイト複合体とした。
得られたアタパルジャイト複合体の炭素含有比率を、示差熱−熱重量分析装置(TG−DTA)を用いて、20℃/分の昇温速度で、800℃20分保持での質量減少率にて測定したところ、10質量%であった。
また、得られたアタパルジャイト複合体のR値を、上記と同一の条件で測定したところ、1.0であった。ラマン分光測定法によるマッピングを行い、アタパルジャイト複合体の表面の被覆状態を確認したところ、炭素により被覆されていない部分が非常に少なく、表面のほとんどの部分が炭素により被覆されている状態の炭素被覆が確認できた。
実施例3〜実施例8で得られた、ゼオライト複合体、アロフェン複合体、カオリン複合体、サポナイト複合体、モンモリロナイト複合体及びアタパルジャイト複合体について、金属イオン吸着能を以下のようにして評価した。また、比較対象として、炭素被覆前の合成イモゴライト(試料A)、ゼオライト、アロフェン、カオリン、サポナイト、モンモリロナイト、アタパルジャイト、上記の焼成物A及びアセチレンブラック(HS−100、電気化学工業株式会社)を用いた。
これらのことから、イモゴライト複合体A、イモゴライト複合体B、ゼオライト複合体、アロフェン複合体、カオリン複合体、サポナイト複合体、モンモリロナイト複合体及びアタパルジャイト複合体はいずれも、導電材料として用いることにより、リチウムイオン二次電池の電気特性及び寿命特性を向上させ得ることがわかった。
実施例3〜8で得られたゼオライト複合体、アロフェン複合体、カオリン複合体、サポナイト複合体、モンモリロナイト複合体及びアタパルジャイト複合体について、上記[評価1]と同様の方法で、充放電特性及び保存試験の評価を行った。
10a 管状物
20 内壁
30 隙間
40 炭素
50 アルミニウムケイ酸塩
Claims (10)
- アルミニウムケイ酸塩と、
前記アルミニウムケイ酸塩の表面に配置される炭素と、
を有するアルミニウムケイ酸塩複合体を含むリチウムイオン二次電池用導電材料。 - 前記アルミニウムケイ酸塩複合体における炭素含有比率が、0.1質量%〜50質量%である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用導電材料。
- 前記アルミニウムケイ酸塩複合体のラマンスペクトル解析から得られるR値が、0.1〜5.0である請求項1又は請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用導電材料。
- 前記アルミニウムケイ酸塩複合体の粉体抵抗率が、0.001Ω・cm〜100Ω・cmである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用導電材料。
- 前記アルミニウムケイ酸塩複合体におけるアルミニウム(Al)に対するケイ素(Si)の元素モル比Si/Alが、0.1〜500である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用導電材料。
- 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用導電材料と、負極活物質と、結着剤と、を含有するリチウムイオン二次電池負極形成用組成物。
- 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用導電材料と、正極活物質と、結着剤と、を含有するリチウムイオン二次電池正極形成用組成物。
- 集電体と、
前記集電体上に設けられ、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用導電材料及び負極活物質を含有する負極層と、
を有するリチウムイオン二次電池用負極。 - 集電体と、
前記集電体上に設けられ、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用導電材料及び正極活物質を含有する正極層と、
を有するリチウムイオン二次電池用正極。 - 請求項8に記載のリチウムイオン二次電池用負極及び請求項9に記載のリチウムイオン二次電池用正極のうち少なくとも一方を備えるリチウムイオン二次電池。
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