JP6315258B2 - リチウムイオン二次電池用導電材料、リチウムイオン二次電池負極形成用組成物、リチウムイオン二次電池正極形成用組成物、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用導電材料、リチウムイオン二次電池負極形成用組成物、リチウムイオン二次電池正極形成用組成物、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Description

本発明はリチウムイオン二次電池用導電材料、リチウムイオン二次電池負極形成用組成物、リチウムイオン二次電池正極形成用組成物、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池は、ニッケル水素電池、鉛蓄電池等の他の二次電池に比べて軽量で、高い入出力特性を有することから、近年、電気自動車、ハイブリッド型電気自動車等に用いられる高入出力用電源として注目されている。
リチウムイオン二次電池の電極としては、構成元素に金属元素としてFe又はMnを含むリチウム化合物を正極活物質とする正極と、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な炭素材料を負極活物質とする負極と、が用いられている。正極中の正極活物質の導電性、又は負極における充放電特性を改善するために、正極材又は負極材に、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック)等の炭素材料を、導電助剤として添加することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
一方、電池の構成材料中に不純物(Fe、Ni、Cu等の磁性不純物)が存在すると、充放電時に不純物が負極上に析出する場合がある。負極上に析出した不純物は、セパレータを破って正極に到達することにより、短絡の原因となり得る。また、リチウムイオン二次電池は、夏場の車中等で使用される場合がある。この場合には、リチウムイオン二次電池の使用温度が40℃〜80℃となることがある。このとき、正極を構成するLi含有金属酸化物中の金属が正極から溶出し、電池の特性が低下し得る。
このため、不純物の捕捉剤又は吸着剤(以下、単に吸着剤という)の検討、及び正極の安定化の検討がなされている(例えば、特許文献2参照)。
特開2011−181229号公報 特開2000−77103号公報
リチウムイオン二次電池の特性に対する要求が高まる中で、リチウムイオン二次電池の電気特性と寿命特性の双方に対する要求がますます高まっている。従って本発明は、優れたリチウムイオン二次電池の電気特性及び寿命特性を付与し得るリチウムイオン二次電池用導電材料、並びにリチウムイオン二次電池用導電材料を用いたリチウムイオン二次電池負極形成用組成物、リチウムイオン二次電池正極形成用組成物、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
本発明は以下のとおりである。
<1> マグネシウムケイ酸塩と、
前記マグネシウムケイ酸塩の表面に配置される炭素と、
を有するマグネシウムケイ酸塩複合体を含むリチウムイオン二次電池用導電材料。
<2> 前記マグネシウムケイ酸塩複合体における炭素含有比率が、0.1質量%〜50質量%である前記<1>に記載のリチウムイオン二次電池用導電材料。
<3> 前記マグネシウムケイ酸塩複合体のラマンスペクトル解析から得られるR値が、0.1〜5.0である前記<1>又は<2>に記載のリチウムイオン二次電池用導電材料。
<4> 前記マグネシウムケイ酸塩複合体の粉体抵抗率が、0.001Ω・cm〜100Ω・cmである前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用導電材料。
<5> 前記マグネシウムケイ酸塩複合体におけるアルミニウム(Al)に対するケイ素(Si)の元素モル比Si/Mgが、0.1〜500である前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用導電材料。
<6> 前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用導電材料と、負極活物質と、結着剤と、を含有するリチウムイオン二次電池負極形成用組成物。
<7> 前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用導電材料と、正極活物質と、結着剤と、を含有するリチウムイオン二次電池正極形成用組成物。
<8> 集電体と、
前記集電体上に設けられ、前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用導電材料及び負極活物質を含有する負極層と、
を有するリチウムイオン二次電池用負極。
<9> 集電体と、
前記集電体上に設けられ、前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用導電材料及び正極活物質を含有する正極層と、
を有するリチウムイオン二次電池用正極。
<10> 前記<8>に記載のリチウムイオン二次電池用負極及び前記<9>に記載のリチウムイオン二次電池用正極のうち少なくとも一方を備えるリチウムイオン二次電池。
本発明によれば、優れたリチウムイオン二次電池の電気特性及び寿命特性を付与し得るリチウムイオン二次電池用導電材料、並びにリチウムイオン二次電池用導電材料を用いたリチウムイオン二次電池負極形成用組成物、リチウムイオン二次電池正極形成用組成物、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池を提供することができる。
マグネシウムケイ酸塩複合体の構成の一例を示す概略断面図である。 マグネシウムケイ酸塩複合体の構成の一例を示す概略断面図である。 マグネシウムケイ酸塩複合体の構成の一例を示す概略断面図である。 マグネシウムケイ酸塩複合体の構成の一例を示す概略断面図である。 マグネシウムケイ酸塩複合体の構成の一例を示す概略断面図である。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。更に本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本発明のリチウムイオン二次電池用導電材料は、マグネシウムケイ酸塩と、マグネシウムケイ酸塩の表面に配置される炭素と、を有するマグネシウムケイ酸塩複合体を含む。本発明のリチウムイオン二次電池用導電材料は、上記構成とすることにより、リチウムイオン二次電池の電気特性と寿命特性とを向上させることができる。
リチウムイオン二次電池用導電材料に含まれるマグネシウムケイ酸塩は、マグネシウム(Mg)とケイ素(Si)とを含む酸化物塩である。SiとMgとではその価数が異なるため、SiとMgとの酸化物塩にはOH基が多く存在し、これがイオン交換能を有している。これにより、マグネシウムケイ酸塩は、単位質量あたりに多くの金属イオンの吸着サイトを持ち、高比表面積で金属イオンを高選択的に吸着する。マグネシウムケイ酸塩複合体は、特に、リチウムイオン、ナトリウムイオン等のアルカリ金属イオンよりも、ニッケルイオン、マンガンイオン、コバルトイオン、銅イオン、鉄イオン等の遷移金属イオンを吸着しやすいという特異的な性質を示す傾向がある。
上述したようなマグネシウムケイ酸塩複合体の中でも、金属イオンの吸着能及び金属イオンの選択性の点で、マグネシウムケイ酸塩複合体におけるマグネシウム(Mg)に対するケイ素(Si)の元素モル比Si/Mgは、0.1〜500であることが好ましく、0.3〜100であることがより好ましく、0.3〜50であることが更に好ましい。
更に、本発明におけるマグネシウムケイ酸塩複合体は、このようなマグネシウムケイ酸塩の表面に炭素を配置しており、表面に配置された炭素により導電性を備える。また、マグネシウムケイ酸塩は無機酸化物であるため、熱安定性、及び溶剤中での安定性に優れている。
従って、本発明のリチウムイオン二次電池用導電材料は、マグネシウムケイ酸塩複合体によるSiとMgとによるイオン交換能と、炭素による導電性とにより、リチウムイオン二次電池の電気特性と寿命特性とを共に向上させる。
なお、本発明において不要な金属イオンとは、ニッケルイオン、マンガンイオン、コバルトイオン、銅イオン、鉄イオン等をいう。これらの不要な金属イオンは、例えば、リチウムイオン二次電池の構成材料中に存在する不純物イオン、又は、高温下で正極から溶出するイオンに由来する。
<マグネシウムケイ酸塩複合体>
[マグネシウムケイ酸塩]
本発明におけるマグネシウムケイ酸塩は、アルミニウムとケイ素との酸化物である。アルミニウムとケイ素との酸化物とすることにより、上述したイオン交換能を発揮し得る。本発明におけるマグネシウムケイ酸塩は、アルミニウムとケイ素とを含む酸化物塩であれば、特に制限はなく、他の金属元素を含むものであってもよい。本発明におけるマグネシウムケイ酸塩としては、例えば、マイカ、セピオライト、タルクが挙げられる。
マグネシウムケイ酸塩の体積基準の平均粒子径は、最終的な所望のマグネシウムケイ酸塩複合体の大きさに合わせて、0.1μm〜100μmであることが好ましく、0.5μm〜50μmであることがより好ましく、1μm〜30μmであることが更に好ましい。マグネシウムケイ酸塩の体積平均粒子径は、後述のレーザー回折法を用いて測定される。
(マイカ)
本発明におけるマイカとは、層状の結晶構造体をとるマグネシウムケイ酸塩であって、例えば、NaMg2.5Si10F、KMg2.5Si10F等で表される組成を有するものが挙げられる。
マイカは、水分含有率が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。水分含有率が10質量%以下であることで、電気分解を起こす際に生じうるガスの発生を抑制することができ、電池膨張を抑制できる。なお、水分含有率はカールフィッシャー法にて測定することができる。マイカの水分含有率を10質量%以下とする方法としては、通常用いられる加熱方法を特に制限なく用いることができる。マイカの水分含有率を10質量%以下とする方法としては、例えば、大気圧下で、100℃〜300℃、6時間〜24時間程度の間、加熱処理する方法が挙げられる。
本発明におけるマイカは、合成したものであってもよく、市販品を購入して用いてもよい。マイカの市販品としては、製品名ME−100(コープケミカル株式会社)等が挙げられる。
(セピオライト)
本発明におけるセピオライトとは、繊維状の結晶構造をとるマグネシウムケイ酸塩であって、例えば、MgSi1230(OH(OH)nHO[n=6〜8]で示される組成を有するものが挙げられる。
セピオライトは、水分含有率が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。水分含有率が10質量%以下であることで、電気分解を起こす際に生じうるガスの発生を抑制することができ、電池膨張を抑制できる。なお、水分含有率はカールフィッシャー法にて測定することができる。セピオライトの水分含有率を10質量%以下とする方法としては、通常用いられる加熱方法を特に制限なく用いることができる。セピオライトの水分含有率を10質量%以下とする方法としては、例えば、大気圧下で、100℃〜300℃、6時間〜24時間程度の間、加熱処理する方法が挙げられる。
本発明におけるセピオライトは、合成したものであってもよく、市販品を購入して用いてもよい。セピオライトの市販品としては、製品名ミルコン(林化成株式会社)等が挙げられる。
(タルク)
本発明におけるタルクとは、薄片状の結晶構造をとるマグネシウムケイ酸塩であって、例えば、MgSi10(OH)で示される組成を有するものが挙げられる。
タルクは、水分含有率が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。水分含有率が10質量%以下であることで、電気分解を起こす際に生じうるガスの発生を抑制することができ、電池膨張を抑制できる。なお、水分含有率はカールフィッシャー法にて測定することができる。タルクの水分含有率を10質量%以下とする方法としては、通常用いられる加熱方法を特に制限なく用いることができる。タルクの水分含有率を10質量%以下とする方法としては、例えば、大気圧下で、100℃〜300℃、6時間〜24時間程度の間、加熱処理する方法が挙げられる。
本発明におけるタルクは、合成したものであってもよく、市販品を購入して用いてもよい。タルクの市販品としては、製品名MW HS−T(林化成株式会社)等が挙げられる。
[炭素被覆]
本発明に係るマグネシウムケイ酸塩複合体では、マグネシウムケイ酸塩の表面に、炭素が配置される。配置される炭素は、マグネシウムケイ酸塩複合体の表面の少なくとも一部又は全部に配置される。
炭素は、マグネシウムケイ酸塩の表面に配置されていればよい。図1〜図5は、本発明に係るマグネシウムケイ酸塩複合体の構成の例を示す概略断面図である。
図1では、炭素10がマグネシウムケイ酸塩20の表面全体を被覆している。図2では、炭素10がマグネシウムケイ酸塩20の表面全体を被覆しているが、炭素10の厚みにばらつきがある。また、図3では、炭素10がマグネシウムケイ酸塩20の表面に部分的に存在し、マグネシウムケイ酸塩20の表面には、炭素10で覆われていない部分がある。図4では、マグネシウムケイ酸塩20の表面に、マグネシウムケイ酸塩20よりも小さい粒径を有する炭素10の粒子が存在している。図5は、図4の変形例であり、炭素10の粒子形状が鱗片状となっている。なお、図1〜図5では、マグネシウムケイ酸塩20の形状は、模式的に球状(断面形状としては円)で表されているが、球状、ブロック状、鱗片状、断面形状が多角形の形状(角のある形状)等のいずれであってもよい。
なお、マグネシウムケイ酸塩が複数の管状物により構成される場合、微視的には管状物の外壁の少なくとも一部又は全部に炭素が配置されていればよく、内壁の少なくとも一部又は全部に炭素が配置されていてもよい。
また、微細なマグネシウムケイ酸塩が集合、結合又は凝集して粒子を形成している場合、粒子表面の少なくとも一部又は全部に炭素が配置されていればよく、集合、結合又凝集によって粒子内部に細孔を有する場合、細孔内の一部又は全部に炭素が配置されていてもよい。
[マグネシウムケイ酸塩複合体の特性]
マグネシウムケイ酸塩複合体における炭素含有比率は、0.1質量%〜50質量%であることが好ましい。炭素含有比率が0.1質量%以上であれば、マグネシウムケイ酸塩複合体の導電性がより向上する傾向があり、50質量%以下であれば、マグネシウムケイ酸塩複合体の金属イオン吸着能をより活用できる傾向がある。マグネシウムケイ酸塩複合体における炭素含有比率は、0.5質量%〜40質量%であることがより好ましく、1質量%〜30質量%であることが更に好ましい。
マグネシウムケイ酸塩複合体における炭素含有比率は、示差熱−熱重量分析装置(TG−DTA)を用いて、20℃/分の昇温速度で、800℃20分保持での質量減少率にて測定される。
マグネシウムケイ酸塩複合体について励起波長532nmのレーザーラマン分光測定により求めたラマンスペクトルの中で、1360cm−1付近に現れるピークの強度をId、1580cm−1付近に現れるピークの強度をIgとし、その両ピークの強度比Id/Ig(D/G)をR値とした際、そのR値が、0.1〜5.0であることが好ましく、0.3〜3.0であることがより好ましく、0.5〜1.5であることが更に好ましい。R値が、0.1以上であると非晶質炭素による表面被覆効果が優れる傾向があり、5.0以下であると表面被覆炭素量が過剰となるのを防ぐ傾向がある。
ここで、1360cm−1付近に現れるピークとは、通常、炭素の非晶質構造に対応すると同定されるピークであり、例えば、1300cm−1〜1400cm−1に観測されるピークを意味する。また1580cm−1付近に現れるピークとは、通常、炭素の結晶構造に対応すると同定されるピークであり、例えば、1530cm−1〜1630cm−1に観測されるピークを意味する。
なお、R値は、ラマンスペクトル測定装置(例えば、日本分光株式会社、NSR−1000型、励起波長532nm)を用い、測定範囲(830cm−1〜1940cm−1)全体をベースラインとして、ラマンスペクトル解析から求めることができる。
マグネシウムケイ酸塩複合体の粉体抵抗率は、0.001Ω・cm〜100Ω・cmであることが好ましく、0.001Ω・cm〜50Ω・cmであることがより好ましく、0.001Ω・cm〜30Ω・cmであることが更に好ましく、0.001Ω・cm〜10Ω・cmであることが特に好ましい。マグネシウムケイ酸塩複合体の粉体抵抗率が0.001Ω・cm以上では、マグネシウムケイ酸塩複合体の金属イオン吸着能がより維持できる傾向があり、100Ω・cm以下では、マグネシウムケイ酸塩複合体がリチウムイオン二次電池の電池特性の阻害要因とならない傾向がある。
粉体抵抗率は、粉体抵抗測定システム(例えば、株式会社三菱化学アナリテック、ロレスターGP)を用いて、3842N/cm(382Kgf/cm)の圧力にて測定した体積抵抗率の値とする。
マグネシウムケイ酸塩複合体の体積平均粒子径は、0.1μm〜100μmであることが好ましく、0.5μm〜50μmであることがより好ましく、1μm〜30μmであることが更に好ましい。マグネシウムケイ酸塩複合体の体積平均粒子径が0.1μm以上では、粉体のハンドリング性がより向上する傾向があり、100μm以下では、マグネシウムケイ酸塩複合体を含む分散液を用いて塗膜を形成する等の場合に、より均質な膜が得られる傾向がある。
マグネシウムケイ酸塩複合体の体積平均粒子径は、レーザー回折法を用いて測定される。レーザー回折法は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、株式会社島津製作所、SALD3000J)を用いて行うことができる。
具体的には、マグネシウムケイ酸塩複合体を、水等の分散媒に分散させて分散液を調製する。この分散液について、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて小径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、累積50%となる粒子径(D50)を体積平均粒子径として求める。
なお、本明細書中の「体積平均粒子径」については、いずれも上記方法に従って測定した値を用いる。
マグネシウムケイ酸塩複合体におけるマグネシウムケイ酸塩としては、金属イオン吸着能、金属イオン選択性及び電気特性の観点から、マイカ、セピオライト、タルクからなる群より選択された少なくとも1つであることが好ましい。
[マグネシウムケイ酸塩複合体の製造方法]
マグネシウムケイ酸塩複合体の製造方法は、マグネシウムケイ酸塩を得る工程と、得られたマグネシウムケイ酸塩の表面に炭素を付与する炭素付与工程とを含み、必要に応じて他の工程を含む。
(マグネシウムケイ酸塩を得る工程)
マグネシウムケイ酸塩を得る工程は、炭素を付与する対象となるマグネシウムケイ酸塩を得ることができればよく、マグネシウムケイ酸塩を準備することを含む工程であってもよく、ケイ酸源とマグネシウム源とからマグネシウムケイ酸塩の製造することを含む工程であってもよい。マグネシウムケイ酸塩を製造する方法については、各種マグネシウムケイ酸塩に関して既述した方法を適用し得る。マグネシウムケイ酸塩を準備することとしては、市販品等を入手してそのまま用いることが挙げられる。
(炭素付与工程)
炭素付与工程では、マグネシウムケイ酸塩の表面に炭素を付与する。これにより、マグネシウムケイ酸塩の表面に炭素が配置される。マグネシウムケイ酸塩の表面に炭素を付与する方法としては、特に制限はなく、湿式混合法、乾式混合法、化学蒸着法等の方法が挙げられる。マグネシウムケイ酸塩の表面に付与される炭素の厚みを揃えやすく、かつ反応系の制御が容易で、大気圧下での処理が可能であるという点から、湿式混合法(「湿式法」ということがある)又は乾式混合法(「気相法」ということがある)が好ましい。
湿式混合法の場合は、例えば、マグネシウムケイ酸塩と、炭素源を溶媒に溶解させた溶液と、を混合し、炭素源の溶液をマグネシウムケイ酸塩の表面に付着させ、必要に応じて溶媒を除去し、その後、不活性雰囲気下で熱処理することにより炭素源を炭素化させて炭素をマグネシウムケイ酸塩の表面に付与することができる。なお、炭素源が溶媒に溶解しない等の場合は、炭素源を分散媒中に分散させた分散液とすることもできる。
炭素源の溶液又は分散液における炭素源の含有率は、分散のし易さの観点から0.01質量%〜30質量%であることが好ましく、0.05質量%〜20質量%であることがより好ましく、0.1質量%〜10質量%であることが更に好ましい。マグネシウムケイ酸塩と炭素源との混合比(マグネシウムケイ酸塩:炭素源)としては、金属イオン吸着能と導電性との両立の観点から、質量比で100:1〜100:500であることが好ましく、100:5〜100:300であることがより好ましい。
乾式混合法の場合は、例えば、マグネシウムケイ酸塩と炭素源とを固体同士で混合して混合物とし、この混合物を不活性雰囲気下で熱処理することにより炭素源を炭素化させて、マグネシウムケイ酸塩の表面に炭素を付与することができる。なお、マグネシウムケイ酸塩と炭素源とを混合する際、力学的エネルギーを加える処理(例えば、メカノケミカル処理)を施してもよい。
マグネシウムケイ酸塩と炭素源とを固体同士で混合する際のマグネシウムケイ酸塩と炭素源との混合比(マグネシウムケイ酸塩:炭素源)としては、金属イオン吸着能と導電性の両立の観点から、質量比で100:1〜100:500であることが好ましく、100:5〜100:300であることがより好ましい。
前記方法にて、マグネシウムケイ酸塩の表面に炭素を付与する場合、前記炭素源としては、特に制限はないが、熱処理により炭素を残し得る化合物であればよく、具体的には、フェノール樹脂、スチレン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリブチラール等の高分子化合物;エチレンヘビーエンドピッチ、石炭ピッチ、石油ピッチ、コールタールピッチ、アスファルト分解ピッチ、ポリ塩化ビニル(PVC)等を熱分解して生成するPVCピッチ、ナフタレン等を超強酸存在下で重合させて作製されるナフタレンピッチ等のピッチ;デンプン、セルロース等の多糖類などが挙げられる。これら炭素源は、1種単独で又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
化学蒸着法の場合は、公知の方法が適用でき、例えば、炭素源を気化させたガスを含む雰囲気中でマグネシウムケイ酸塩を熱処理することで、マグネシウムケイ酸塩の表面に炭素を付与することができる。
化学蒸着法によってマグネシウムケイ酸塩の表面に炭素を付与する場合、炭素源としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環族炭化水素、及びこれらの誘導体等のうち、気体状又は容易に気体化可能な化合物を用いることが好ましい。具体的には、メタン、エタン、プロパン、トルエン、ベンゼン、キシレン、スチレン、ナフタレン、アントラセン等の炭化水素、クレゾール等のこれらの誘導体などが挙げられる。これら炭素源は、1種単独で又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
炭素源を炭素化するための熱処理温度は、炭素源が炭素化する温度であれば特に制限されず、500℃以上であることが好ましく、600℃以上であることがより好ましく、700℃以上であることが更に好ましい。また、炭素を低結晶性とする観点からは、1300℃以下であることが好ましく、1200℃以下であることがより好ましく、1100℃以下であることが更に好ましい。
熱処理時間は、用いる炭素源の種類又はその付与量によって適宜選択され、例えば、0.1時間〜10時間が好ましく、0.5時間〜5時間がより好ましい。
なお、熱処理は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下で行うことが好ましい。熱処理装置は、加熱機構を有する反応装置を用いれば特に限定されず、連続法、回分法等での処理が可能な加熱装置などが挙げられる。具体的には、流動層反応炉、回転炉、竪型移動層反応炉、トンネル炉、バッチ炉等をその目的に応じ適宜選択することができる。
熱処理により得られた熱処理物は個々の粒子が凝集している場合があるため、解砕処理することが好ましい。また、所望の平均粒子径への調整が必要な場合は更に粉砕処理を行ってもよい。
また、マグネシウムケイ酸塩の表面に炭素を付与する別の方法としては、例えば、マグネシウムケイ酸塩の表面に付与する炭素として、ソフトカーボン、ハードカーボン等の非晶質炭素、黒鉛などの炭素質物質を用いる方法が挙げられる。この方法によれば、図4及び図5に示す、炭素10が粒子としてマグネシウムケイ酸塩20の表面に存在するマグネシウムケイ酸塩複合体を作製することもできる。炭素質物質を用いる方法としては、湿式混合法又は乾式混合法を応用することができる。
湿式混合法を応用する場合は、炭素質物質の粒子と、分散媒とを混合して分散液とし、この分散液とマグネシウムケイ酸塩とを更に混合することにより、マグネシウムケイ酸塩の表面に分散液を付着させ、それを乾燥後に熱処理することで作製される。また、結着剤を用いる場合には、炭素質物質の粒子と、結着剤となる有機化合物(熱処理により炭素を残し得る化合物)と分散媒とを混合して混合物とし、この混合物とマグネシウムケイ酸塩とを更に混合することにより、マグネシウムケイ酸塩の表面に混合物を付着させ、それを乾燥後に熱処理することで、マグネシウムケイ酸塩の表面に炭素を付与することもできる。前記有機化合物としては、熱処理により炭素を残し得る化合物であれば特に制限はない。また、湿式混合法を応用する場合の熱処理条件は、前記炭素源を炭素化するための熱処理条件を適用することができる。
乾式混合法を応用する場合は、炭素質物質の粒子と、マグネシウムケイ酸塩とを固体同士で混合して混合物とし、この混合物に必要に応じて力学的エネルギーを加える処理(例えば、メカノケミカル処理)を行うことで作製される。なお、乾式混合法を応用する場合においても、マグネシウムケイ酸塩中にケイ素の結晶子を生成させるために、熱処理を行うことが好ましい。乾式混合法を応用する場合の熱処理条件は、前記炭素源を炭素化するための熱処理条件を適用することができる。
マグネシウムケイ酸塩を製造により得る場合には、マグネシウムケイ酸塩複合体の製造方法は、マグネシウムケイ酸塩を得る工程のいずれかの段階で炭素源を供給して、マグネシウムケイ酸塩を得る際に表面に炭素を配置させて、マグネシウムケイ酸塩複合体を得る製造方法であってもよい。この製造方法では、合成又は脱塩後のマグネシウムケイ酸塩の分散液に炭素源を供給し、得られた炭素源を含有するマグネシウムケイ酸塩分散液を、炭素源を炭素化するための熱処理に供することができる。炭素源含有分散液を熱処理することにより、表面に炭素を有するマグネシウムケイ酸塩複合体が得られる。
マグネシウムケイ酸塩の分散液に炭素源を供給する場合、分散液中の炭素源の含有率は、0.005質量%〜5質量%であることが好ましく、0.01質量%〜3質量%であることがより好ましく、0.05質量%〜1.5質量%であることが更に好ましい。炭素源の含有率が、0.005質量%以上とすることにより、マグネシウムケイ酸塩複合体の導電性がより向上する傾向があり、5質量%以下とすることにより、マグネシウムケイ酸塩複合体の金属イオン吸着能をより活用できる傾向がある。
<その他の成分>
本発明のリチウムイオン二次電池用導電材料は、マグネシウムケイ酸塩複合体の他に、任意の成分を含むことができる。リチウムイオン二次電池用導電材料に含有可能な他の成分としては、リチウムイオン二次電池用導電材料に一般的に含有可能な成分であれば特に制限されない。リチウムイオン二次電池用導電材料に含有可能な他の成分としては、カーボンブラック、グラファイト、アセチレンブラック、導電性を示す酸化物、導電性を示す窒化物等を挙げることができる。本発明のリチウムイオン二次電池用導電材料は、スラリーとしたときの使い勝手の良さの観点から、なかでも、アセチレンブラックを含むことが好ましい。
<リチウムイオン二次電池負極形成用組成物>
本発明のリチウムイオン二次電池負極形成用組成物は、上述のリチウムイオン二次電池用導電材料と、負極活物質と、結着剤と、を含有する。本発明のリチウムイオン二次電池負極形成用組成物は、更に、溶媒、増粘剤、導電助剤等を含有してもよい。
リチウムイオン二次電池負極形成用組成物中のマグネシウムケイ酸塩複合体の含有率は、特に限定されず、例えば、必要に応じて用いられる溶媒を除いたリチウムイオン二次電池負極形成用組成物の全量に対して、0.1質量%〜30質量%とすることができ、0.3質量%〜20質量%とすることが好ましく、0.5質量%〜10質量%とすることがより好ましい。
負極活物質としては、リチウムイオン二次電池用負極に用いられる通常のものを適用することができる。負極活物質としては、リチウムイオンをドーピング又はインターカレーション可能な炭素材料、金属化合物、金属酸化物、金属硫化物、導電性高分子材料等を挙げることができ、天然黒鉛、人造黒鉛、ケイ素、チタン酸リチウム等が挙げられる。負極活物質は、これらを1種単独で使用し、又は2種以上を併用することができる。
結着剤としては、特に限定されず、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸エステルと、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸とを共重合して得られる(メタ)アクリル共重合体;ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリエピクロルヒドリン、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミドイミド等の高分子化合物などが挙げられる。なお、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味する。「(メタ)アクリル共重合体」等の他の類似の表現においても同様である。
溶媒としては、特に制限はなく、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン等を用いることができる。
増粘剤としては、特に制限はなく、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等を用いることができる。
導電助剤としては、特に制限はなく、カーボンブラック、アセチレンブラック、導電性を示す酸化物、導電性を示す窒化物等を用いることができる。これらの導電助剤は1種単独で又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
<リチウムイオン二次電池正極形成用組成物>
本発明のリチウムイオン二次電池正極形成用組成物は、上述のリチウムイオン二次電池用導電材料と、正極活物質と、結着剤と、を含有する。本発明のリチウムイオン二次電池正極形成用組成物は、更に、溶媒、増粘剤、導電助剤等を含有してもよい。
リチウムイオン二次電池正極形成用組成物中のマグネシウムケイ酸塩複合体の含有率は、特に限定されず、例えば、必要に応じて用いられる溶媒を除いたリチウムイオン二次電池正極形成用組成物の全量に対して、0.1質量%〜30質量%とすることができ、0.3質量%〜20質量%とすることが好ましく、0.5質量%〜10質量%とすることがより好ましい。
正極活物質としては、リチウムイオン二次電池用正極に用いられる通常のものを適用することができる。正極活物質は、リチウムイオンをドーピング又はインターカレーション可能な化合物であればよく、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMnO)及びニッケルマンガンコバルト酸リチウム(Li(NiCoAl)O)が挙げられる。
リチウムイオン二次電池正極形成用組成物における結着剤としては、リチウムイオン二次電池負極形成用組成物で説明した結着剤を挙げることができる。リチウムイオン二次電池正極形成用組成物に任意で含有する溶媒、増粘剤及び導電助剤についても、リチウムイオン二次電池負極形成用組成物で説明したものを挙げることができる。
<リチウムイオン二次電池用負極>
本発明のリチウムイオン二次電池用負極(以下「負極」と略称する場合がある)は、集電体と、前記集電体上に設けられ上述のリチウムイオン二次電池用導電材料及び負極活物質を含有する負極層と、を有する。
例えば、本発明のリチウムイオン二次電池用負極は、前述のリチウムイオン二次電池負極形成用組成物を調製し、このリチウムイオン二次電池負極形成用組成物を集電体に付与した後、任意で含まれる溶媒を除去し、加圧成形して負極層を形成することにより得られる。一般に、リチウムイオン二次電池負極形成用組成物は、混練後、シート状、ペレット状等の形状に成形される。
尚、リチウムイオン二次電池負極形成用組成物を用いて本発明のリチウムイオン二次電池用負極が製造された場合、負極層には結着剤が含有される。
集電体の材質は、特に限定されず、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼、ポーラスメタル(発泡メタル)及びカーボンペーパーが挙げられる。集電体の形状は、特に限定されず、例えば、箔状、穴開け箔状及びメッシュ状が挙げられる。
リチウムイオン二次電池負極形成用組成物を集電体に付与する方法としては、特に限定されず、例えば、メタルマスク印刷法、静電塗装法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、グラビアコート法及びスクリーン印刷法が挙げられる。付与後は、必要に応じて平板プレス、カレンダーロール等による加圧処理を行うことが好ましい。また、シート状、ペレット状等の形状に成形されたリチウムイオン二次電池負極形成用組成物と集電体との一体化は、例えば、ロールによる一体化、プレスによる一体化及びこれらの組み合わせによる一体化により行うことができる。
集電体上に形成された負極層又は集電体と一体化した負極層は、用いた結着剤に応じて熱処理することが好ましい。例えば、ポリアクリロニトリルを主骨格とした結着剤を用いる場合は、100℃〜180℃で熱処理することが好ましく、ポリイミド又はポリアミドイミドを主骨格とした結着剤を用いる場合には、150℃〜450℃で熱処理することが好ましい。この熱処理により必要に応じて用いられる溶媒の除去及び結着剤の硬化による高強度化が進み、負極材料間の密着性及び負極材料と集電体との間の密着性が高まる傾向にある。なお、これらの熱処理は、処理中の集電体の酸化を防ぐため、ヘリウム、アルゴン、窒素等の不活性雰囲気又は真空雰囲気で行うことが好ましい。
また、熱処理する前に、負極はプレス(加圧処理)しておくことが好ましい。加圧処理することで電極密度を調整することができる。本発明のリチウムイオン二次電池用負極では、電極密度が1.4g/cm〜1.9g/cmであることが好ましく、1.5g/cm〜1.85g/cmであることがより好ましく、1.6g/cm〜1.8g/cmであることが更に好ましい。電極密度については、その値が高いほど負極の体積容量が向上する傾向があり、また、負極材料間の密着性及び負極材料と集電体との間の密着性が向上する傾向がある。
<リチウムイオン二次電池用正極>
本発明のリチウムイオン二次電池用正極(以下「正極」と略称する場合がある)は、集電体と、前記集電体上に設けられ上述のリチウムイオン二次電池用導電材料及び正極活物質を含有する正極層と、を有する。
リチウムイオン二次電池用正極における集電体としては、リチウムイオン二次電池用負極で説明した集電体を挙げることができる。リチウムイオン二次電池用正極は、前述のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法において、リチウムイオン二次電池負極形成用組成物をリチウムイオン二次電池正極形成用組成物に置き換えることにより、同様の方法で製造することができる。
<リチウムイオン二次電池>
本発明のリチウムイオン二次電池は、上述のリチウムイオン二次電池用負極及び上述のリチウムイオン二次電池用正極のうち少なくとも一方を備える。上述のリチウムイオン二次電池用負極以外の負極を用いる場合には、リチウムイオン二次電池に用いられる通常の負極を適用することができる。また、上述のリチウムイオン二次電池用正極以外の正極を用いる場合には、リチウムイオン二次電池に用いられる通常の正極を適用することができる。
負極と正極とは、例えば、セパレータを介して対向して配置し、電解質を含む電解液を注入することにより、リチウムイオン二次電池とすることができる。
電解液は、特に制限されず、公知のものを用いることができる。例えば、電解液として、有機溶剤に電解質を溶解させた溶液を用いることにより、非水系リチウムイオン二次電池を製造することができる。
前記電解質としては、例えば、LiPF、LiClO、LiBF、LiClF、LiAsF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO、LiCl及びLiIが挙げられる。
セパレータは、公知の各種セパレータを用いることができる。具体的には、紙製セパレータ、ポリプロピレン製セパレータ、ポリエチレン製セパレータ、ガラス繊維製セパレータ等が挙げられる。
リチウムイオン二次電池の製造方法としては、例えば、まず正極と負極の2つの電極を、セパレータを介して捲回する。得られたスパイラル状の捲回群を電池缶に挿入し、予め負極の集電体に溶接しておいたタブ端子を電池缶底に溶接する。得られた電池缶に電解液を注入し、更に予め正極の集電体に溶接しておいたタブ端子を電池の蓋に溶接し、蓋を絶縁性のガスケットを介して電池缶の上部に配置し、蓋と電池缶とが接した部分をかしめて密閉することによって電池を得る。
本発明のリチウムイオン二次電池の形態は、特に限定されないが、ペーパー型電池、ボタン型電池、コイン型電池、積層型電池、円筒型電池、角型電池等のリチウムイオン二次電池が挙げられる。
次に、実施例により本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
マグネシウムケイ酸塩複合体としてのマイカ複合体を、以下のようにして作製した。
マイカとしては、製品名:ME−100(コープケミカル株式会社)を用いた。このマイカの各種物性は以下のとおりであった。なおBET比表面積及び体積平均粒子径は下記の条件で測定した。
BET比表面積:10m/g
体積平均粒子径:5.0μm
(BET比表面積)
BET比表面積は、窒素吸着能に基づいて測定した。評価装置には、窒素吸着測定装置(AUTOSORB−1、QUANTACHROME)を用いた。測定を行う際には、後述する試料の前処理を行った後、評価温度を77Kとし、評価圧力範囲を相対圧(飽和蒸気圧に対する平衡圧力)にて1未満としている。
前処理として、0.05gの試料を投入した測定用セルに、真空ポンプで脱気及び加熱を自動制御で行った。この処理の詳細条件は、10Pa以下に減圧した後、110℃で
加熱し、3時間以上保持した後、減圧した状態を保ったまま常温(25℃)まで自然冷却
するという設定とした。以下、実施例において、BET比表面積の測定は同様にして行った。
(体積平均粒子径)
体積平均粒子径は、以下のようにして測定した。
測定試料(5mg)を界面活性剤(エソミンT/15、ライオン株式会社)0.01質
量%水溶液中に入れ、振動攪拌機で分散した。得られた分散液をレーザー回折式粒度分布
測定装置(SALD3000J、株式会社島津製作所)の試料水槽に入れ、超音波をか
けながらポンプで循環させ、レーザー回折式で測定した。測定条件は下記の通りとした。
得られた粒度分布の体積累積50%粒径(D50%)を体積平均粒子径とした。以下、実施例において、体積平均粒子径の測定は同様にして行った。
・光源:赤色半導体レーザー(690nm)
・吸光度:0.10〜0.15
・屈折率:2.00−0.20i
上記のマイカを用いて、マイカ複合体を以下のようにして製造した。
マイカとポリビニルアルコール粉末(和光純薬工業株式会社)とを100:70の質量比で混合し、窒素雰囲気下、850℃で1時間焼成した。これをマイカ複合体とした。
得られたマイカ複合体の炭素含有比率を、示差熱−熱重量分析装置(TG−DTA)を用いて、20℃/分の昇温速度で、800℃20分保持での質量減少率にて測定したところ、10質量%であった。
また、得られたマイカ複合体のR値を、下記の条件で測定したところ、1.0であった。ラマン分光測定法によるマッピングを行い、マイカ複合体の表面の被覆状態を確認したところ、炭素により被覆されていない部分が非常に少なく、表面全体のほとんどが炭素により被覆されている状態の炭素被覆が確認できた。
得られたマイカ複合体の各種物性は以下のとおりであった。
BET比表面積:5m/g
体積平均粒子径:6.7μm
(R値)
R値の測定には、ラマンスペクトル測定装置(NSR−1000型、日本分光株式会社)を用い、得られたスペクトルは下記範囲をベースラインとした。測定条件は、下記の通りとした。
・レーザー波長:532nm
・照射強度:1.5mW(レーザーパワーモニターでの測定値)
・照射時間:60秒
・照射面積:4μm
・測定範囲:830cm−1〜1940cm−1
・ベースライン:1050cm−1〜1750cm−1
なお、得られたスペクトルの波数は、基準物質インデン(和光純薬、和光一級)を前記と同一条件で測定して得られる各ピークの波数と、インデンの各ピークの波数理論値との差から求めた検量線を用いて補正した。
補正後に得られたプロファイルの中で、1360cm−1付近に現れるピークの強度をId、1580cm−1付近に現れるピークの強度をIgとし、その両ピークの強度比Id/Ig(D/G)をR値として求めた。
マッピングには、R値の測定で用いたものと同一のラマンスペクトル測定装置を使用し同一の条件で行った。以下、実施例において、R値の測定は同様にして行った。
[実施例2]
マグネシウムケイ酸塩複合体としてのセピオライト複合体を、以下のようにして作製した。セピオライトとしては、製品名:ミルコン(林化成株式会社)を用いた。このセピオライトの各種物性は以下のとおりであった。
BET比表面積:250m/g
体積平均粒子径:5.0μm
上記のセピオライトを用いて、セピオライト複合体を以下のようにして製造した。
セピオライトとポリビニルアルコール粉末(和光純薬工業株式会社)とを100:70の質量比で混合し、窒素雰囲気下、850℃で1時間焼成した。これをセピオライト複合体とした。
得られたセピオライト複合体の炭素含有比率を、示差熱−熱重量分析装置(TG−DTA)を用いて、20℃/分の昇温速度で、800℃20分保持での質量減少率にて測定したところ、10質量%であった。
また、得られたセピオライト複合体のR値は、1.0であった。ラマン分光測定法によるマッピングを行い、セピオライト複合体の表面の被覆状態を確認したところ、炭素により被覆されていない部分が非常に少なく、表面全体のほとんどが炭素により被覆されている状態の炭素被覆が確認できた。
得られたセピオライト複合体の各種物性は以下のとおりであった。
BET比表面積:50m/g
体積平均粒子径:5.5μm
[実施例3]
マグネシウムケイ酸塩複合体としてのタルク複合体を、以下のようにして作製した。タルクとしては、製品名:MW HS−T(林化成株式会社)を用いた。このタルクの各種物性は以下のとおりであった。
BET比表面積:20m/g
体積平均粒子径:3.0μm
上記のタルクを用いて、タルク複合体を以下のようにして製造した。
タルクとポリビニルアルコール粉末(和光純薬工業株式会社)とを100:70の質量比で混合し、窒素雰囲気下、850℃で1時間焼成した。これをタルク複合体とした。
得られたタルク複合体の炭素含有比率を、示差熱−熱重量分析装置(TG−DTA)を用いて、20℃/分の昇温速度で、800℃20分保持での質量減少率にて測定したところ、10質量%であった。
また、得られたタルク複合体のR値は、1.0であった。ラマン分光測定法によるマッピングを行い、タルク複合体の表面の被覆状態を確認したところ、炭素により被覆されていない部分が非常に少なく、表面全体のほとんどが炭素により被覆されている状態の炭素被覆が確認できた。
得られたタルク複合体の各種物性は以下のとおりであった。
BET比表面積:10m/g
体積平均粒子径:3.6μm
[評価]
実施例1〜3で作製した各種マグネシウムケイ酸塩複合体に対して以下の評価を行った。なお、比較対照として、炭素付与前の各種マグネシウムケイ酸塩及びアセチレンブラック(HS−100、電気化学工業株式会社)を用いた。
(1)粉体抵抗率及び導電率
体積抵抗率及び導電率は、各試料3gを秤取り、粉体抵抗測定システム(ロレスターGP、三菱化学アナリテック株式会社)を用いて、3842N/cm(382kgf/cm)の圧力を加えた状態にて測定した。
それぞれの結果を表1に示す。
(2)電解液中での金属(Mn)イオン吸着能
実施例1〜3で作製した各種マグネシウムケイ酸塩複合体、炭素付与前の各種マグネシウムケイ酸塩及びアセチレンブラックについて、以下のように、電解液中での金属(Mn)イオン吸着能を評価した。
1MのLiPFと、エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC):ジエチルカーボネート(DEC)を体積比1:1:1の比率で含む電解液を調製し、これにMn(BFを溶解して、500ppmのMn溶液を調製した。このMn溶液に各試料を0.05g添加して30分間攪拌した後、室温にて一晩静置させた。その後、上澄み液を0.45μmのフィルタを用いて濾過し、ICP発光分析装置(ICP−AES)を用いてMnイオンの吸着量を測定した。結果を表1に示す。
Figure 0006315258
このように、実施例1〜3で作製した各種マグネシウムケイ酸塩複合体の金属イオン吸着能は、炭素付与前のマグネシウムケイ酸塩と同様に維持されていた。また、炭素付与によって導電性が付与されることは、実施例1〜3で作製した各種マグネシウムケイ酸塩複合体に対する評価1の結果から明らかである。
これらのことから、マイカ複合体、セピオライト複合体、タルク複合体はいずれも、導電材料として用いることにより、導電材料として用いることにより、リチウムイオン二次電池の電気特性及び寿命特性を向上させ得ることがわかった。
(3) 充放電特性
それぞれ90質量部の、マイカ複合体、セピオライト複合体、タルク複合体又はアセチレンブラックに対して、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)10質量部を添加して、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いて混練して、スラリーを得た。得られたスラリーを用いて銅箔上に塗布し、105℃で30分乾燥後、プレスを行い、電極を得た。得られた電極を負極とし、対極である金属リチウムとを20μmのポリプロピレン製セパレータを介して対向させ、電解液を注入することによりコインセル(ハーフセル)を作製した。電解液はエチルカーボネートとメチルエチルカーボネートを体積比3対7の混合溶媒に、LiPFを1mol/L、ビニレンカーボネートを0.5質量%の濃度になるように溶解させたものを使用した。
各々のセルは25℃の恒温槽内に入れ、充放電試験を行った。充電は、0.1mAの電流で0.005Vまで充電後、0.005Vの電圧で電流値が0.01mAになるまでLiを作用極に挿入させることにより行った。また放電は、0.1mAの電流で1.5Vの電圧値まで作用極に対してLiを放出させることにより行った。なお、放電容量は初回の充放電試験より得られた結果とした。結果を表2に示す。
Figure 0006315258
これより、マイカ複合体、セピオライト複合体、タルク複合体は、220mAh/g〜280mAh/gの初回放電容量を示し、アセチレンブラックの205mAh/gと比較して同等以上の性能を有することが分かった。
(5)保存試験
(負極への添加)
それぞれ5質量部の、マイカ複合体、セピオライト複合体又はタルク複合体に対して、アセチレンブラックを1質量部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を3質量部、及び黒鉛を91質量部添加して、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いて混練して、スラリーを得た。得られたスラリーを用いて銅箔上に塗布し、105℃で30分乾燥後、プレスを行い、それぞれのマグネシウムケイ酸塩複合体を含む負極を得た。ここで、マイカ複合体を含む負極を負極A、セピオライト複合体を含む負極を負極B、タルク複合体負極を含む負極を負極Cと称する。
また、比較として、アセチレンブラックを1質量部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を3質量部、及び黒鉛を96質量部添加して、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いて混練して、得たスラリーを用いて同様の手法で負極を得た。この負極を、負極Xと称する。
アセチレンブラックを8質量部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を6質量部、スピネルマンガン86質量部を添加して、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いて混練して、スラリーを得た。得られたスラリーを用いてアルミ箔上に塗布し、105℃で30分乾燥後、プレスを行い、正極Xを得た。
前記の負極A〜C及びXと正極Xとをそれぞれ130℃にて6時間真空乾燥後、20μmのポリプロピレン製セパレータを介して負極と正極を対向させ、電解液を注入することによりコインセルを作製した。電解液はエチルカーボネートとメチルエチルカーボネートを体積比3対7の混合溶媒に、LiPFを1mol/L、ビニレンカーボネートを0.5質量%の濃度になるように溶解させたものを使用した。ここで、負極A〜C及びXを用いて作製したコインセルをそれぞれセルA、セルB、セルC及びセルXと称する。
(正極への添加)
それぞれ3質量部の、マイカ複合体、セピオライト複合体又はタルク複合体に対して、アセチレンブラックを5質量部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を6質量部、及びスピネルマンガン86質量部を添加して、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いて混練して、スラリーを得た。得られたスラリーを用いてアルミ箔上に塗布し、105℃で30分乾燥後、プレスを行い、それぞれのマグネシウムケイ酸塩複合体を含む正極を得た。ここで、マイカ複合体を含む正極を正極D、セピオライト複合体を含む正極を正極E、タルク複合体正極を含む正極を正極Fと称する。
比較として、前記正極Xを用いた。
なお、負極としては、前記負極Xを用いた。
前記の負極Xと正極D〜F及びXとをそれぞれ130℃にて6時間真空乾燥後、20μmのポリプロピレン製セパレータを介して対向させ、電解液を注入することによりコインセルを作製した。電解液はエチルカーボネートとメチルエチルカーボネートを体積比3対7の混合溶媒に、LiPFを1mol/L、ビニレンカーボネートを0.5質量%の濃度になるように溶解させたものを使用した。ここで、正極D〜F及びXを用いて作製したコインセルをそれぞれセルD、セルE、セルF及びセルXと称する。
(保存条件)
それぞれのセル対して、25℃の恒温槽内に入れた後、電圧が4.2V、電流が0.46mAの定電流定電圧充電にて0.0046Vまで充電し、その後、0.46mAの電流で2.7Vとなるまで放電した。次に、各セルに対して、電圧が4.2V、電流が0.46mAの定電流定電圧充電にて0.0046Vまで充電し、充電容量を得た。充電後の各セルを60℃の恒温槽内に入れ、7日間静置した。静置後のそれぞれのセルに対して、0.46mAの電流で2.7Vとなるまで放電させて、放電容量を得た。
(7日間放置後の初回放電容量)/(7日間放置前の初回充電容量)を容量維持率とした。各種マグネシウムケイ酸塩複合体を負極に添加した場合を表3に、各種マグネシウムケイ酸塩複合体を正極に添加した場合を表4に示す。
Figure 0006315258
Figure 0006315258
これより、マイカ複合体、セピオライト複合体、タルク複合体をリチウムイオン二次電池の負極又は正極に添加することで、これらを添加しない場合に比べて容量維持率が向上することが分かった。
従って、本発明におけるマグネシウムケイ酸塩複合体は、SiとMgとによるイオン交換能と炭素による導電性とを共に示すものであり、本発明におけるマグネシウムケイ酸塩複合体をリチウムイオン二次電池の電極(正極・負極)に添加することで、リチウムイオン二次電池の電気特性及び寿命特性を向上させ得ることがわかる。本発明は、優れたリチウムイオン二次電池の電気特性及び寿命特性を付与し得るリチウムイオン二次電池用導電材料、並びにリチウムイオン二次電池用導電材料を用いたリチウムイオン二次電池負極形成用組成物、リチウムイオン二次電池正極形成用組成物、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池を提供することができる。
10 炭素
20 マグネシウムケイ酸塩

Claims (10)

  1. マグネシウムケイ酸塩と、 前記マグネシウムケイ酸塩の表面に配置される炭素と、 を有するマグネシウムケイ酸塩複合体を含むリチウムイオン二次電池用導電材料。
  2. 前記マグネシウムケイ酸塩複合体における炭素含有比率が、0.1質量%〜50質量%である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用導電材料。
  3. 前記マグネシウムケイ酸塩複合体のラマンスペクトル解析から得られるR値が、0.1〜5.0である請求項1又は請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用導電材料。
  4. 前記マグネシウムケイ酸塩複合体の粉体抵抗率が、0.001Ω・cm〜100Ω・cmである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用導電材料。
  5. 前記マグネシウムケイ酸塩複合体におけるマグネシウム(Mg)に対するケイ素(Si)の元素モル比Si/Mgが、0.1〜500である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用導電材料。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用導電材料と、負極活物質と、結着剤と、を含有するリチウムイオン二次電池負極形成用組成物。
  7. 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用導電材料と、正極活物質と、結着剤と、を含有するリチウムイオン二次電池正極形成用組成物。
  8. 集電体と、 前記集電体上に設けられ、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用導電材料及び負極活物質を含有する負極層と、 を有するリチウムイオン二次電池用負極。
  9. 集電体と、 前記集電体上に設けられ、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用導電材料及び正極活物質を含有する正極層と、 を有するリチウムイオン二次電池用正極。
  10. 請求項8に記載のリチウムイオン二次電池用負極及び請求項9に記載のリチウムイオン二次電池用正極のうち少なくとも一方を備えるリチウムイオン二次電池。
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