JP6729024B2 - リチウムイオン二次電池用材料、リチウムイオン二次電池負極形成用組成物、リチウムイオン二次電池正極形成用組成物、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池用正極、及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents
リチウムイオン二次電池用材料、リチウムイオン二次電池負極形成用組成物、リチウムイオン二次電池正極形成用組成物、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池用正極、及びリチウムイオン二次電池 Download PDFInfo
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Description
<1> 無定形アルミニウムケイ酸塩と、前記無定形アルミニウムケイ酸塩の表面に配置される炭素と、を有し、BET比表面積が0.1m2/g〜100m2/gであり、水分吸着率が0質量%〜10質量%であり、アルミニウム(Al)に対するケイ素(Si)の元素モル比Si/Alが1〜50である無定形アルミニウムケイ酸塩複合体を含むリチウムイオン二次電池用材料。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において組成物中の各成分の含有率は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
本明細書において組成物中の各成分の粒子径は、組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本明細書において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本明細書において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
本明細書において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用材料は、無定形アルミニウムケイ酸塩と、前記無定形アルミニウムケイ酸塩の表面に配置される炭素と、を有し、BET比表面積が0.1m2/g〜100m2/gであり、水分吸着率が0質量%〜10質量%であり、アルミニウム(Al)に対するケイ素(Si)の元素モル比Si/Alが1〜50である無定形アルミニウムケイ酸塩複合体を含む。本実施形態のリチウムイオン二次電池用材料は、上記構成とすることにより、リチウムイオン二次電池の電池膨れを抑制し、寿命特性を向上させることができる。
また、無定形アルミニウムケイ酸塩複合体は、前述のように優れた金属イオン吸着能を有し、表面に配置された炭素により水分吸着率が小さいという特徴を有している。したがって、リチウムイオン二次電池用材料用途の他にも、空気浄化フィルタ、水処理材、光吸収フィルム、電磁波シールドフィルム、有機溶媒及び非水溶媒のイオン交換フィルタ、半導体封止材、並びに電子材料の一成分として好適に利用することができる。
水分吸着率(%)=100×(M1−M0)/M0
前処理では、0.05gの測定試料を投入した測定用セルを、真空ポンプで10Pa以下に減圧した後、110℃で加熱し、3時間以上保持した後、減圧した状態を保ったまま常温(25℃)まで自然冷却する。この前処理を行った後、評価温度を77Kとし、評価圧力範囲を相対圧(飽和蒸気圧に対する平衡圧力)にて1未満として測定する。
<無定形アルミニウムケイ酸塩>
無定形アルミニウムケイ酸塩は、アルミニウムとケイ素とを含む酸化物塩である。アルミニウムとケイ素とを含む酸化物塩とすることにより、上述したイオン交換能を発揮し得る。
−測定条件−
・X線源:CuKα線
・発散スリット:1°
・散乱スリット:1°
・受光スリット:0.30mm
・X線出力:40kV、40mA
なお、第一洗浄工程及び第二洗浄工程は、必要に応じていずれか一方を省略してもよい。例えば、必要に応じて第一洗浄工程を省略してもよい。
以下、この好ましい製造方法に従って、無定形アルミニウムケイ酸塩の製造方法を説明する。
反応工程では、ケイ酸イオンを含む溶液とアルミニウムイオンを含む溶液とを混合して、無定形アルミニウムケイ酸塩及び共存イオンを含む反応生成物を含有する混合溶液を得る。
無定形アルミニウムケイ酸塩を製造する際、原料には、ケイ酸イオン及びアルミニウムイオンが必要となる。ケイ酸イオンを含む溶液(以下、「ケイ酸溶液」ともいう。)を構成するケイ酸源としては、溶媒和した際にケイ酸イオンが生じるものであれば特に制限されない。ケイ酸源としては、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、アルミニウムイオンを含む溶液(以下、「アルミニウム溶液」ともいう。)を構成するアルミニウム源は、溶媒和した際にアルミニウムイオンが生じるものであれば特に制限されない。アルミニウム源としては、塩化アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミニウムsec−ブトキシド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの原料をそれぞれ溶媒に溶解させて原料溶液(ケイ酸溶液及びアルミニウム溶液)を調製した後、原料溶液を互いに混合して混合溶液を得る。このとき、特定の元素モル比Si/Alを有する無定形アルミニウムケイ酸塩を得るため、無定形アルミニウムケイ酸塩における元素モル比Si/Alに合わせて、混合溶液中のSi及びAlの元素モル比Si/Alが1〜50となるように調整する。混合溶液中のSi及びAlの元素モル比Si/Alは、1.1〜30であってもよく、1.2〜20であってもよく、1.2〜10であってもよく、1.3〜10であってもよく、1.3〜5.0であってもよい。
ケイ酸溶液とアルミニウム溶液とを混合して得られた混合溶液に、共存イオンを含む無定形アルミニウムケイ酸塩を反応生成物として生成させた後、生成した共存イオンを含む無定形アルミニウムケイ酸塩を脱塩及び固体分離する第一洗浄工程を行う。第一洗浄工程では、混合溶液中から共存イオンの少なくとも一部を除去して混合溶液中の共存イオン濃度を低下させる。第一洗浄工程を行うことで、合成工程において所望の無定形アルミニウムケイ酸塩を形成し易くなる。
なお、電気伝導率は、株式会社堀場製作所の装置:F−55及び同社の一般的な電気伝導率セル:9382−10Dを用いて、常温(25℃)で測定される。
合成工程では、水性媒体中、第一洗浄工程で得られた固体分離物の熱処理を行う。
第一洗浄工程により得られた、共存イオンの濃度を低減させたアルミニウムケイ酸塩を含む溶液(分散液)を熱処理することで、無定形アルミニウムケイ酸塩を形成することができる。
濃度条件として、ケイ素原子濃度を100mmol/L以上且つアルミニウム原子濃度を100mmol/L以上とすることで、第二の無定形アルミニウムケイ酸塩をより効率よく製造することができ、更に無定形アルミニウムケイ酸塩の生産性もより向上する傾向にある。
また、ケイ素原子濃度及びアルミニウム原子濃度は、ICP発光分光装置(例えば、株式会社日立製作所、P−4010)を用いて、常法により測定される。
熱処理の温度は特に制限されない。所望の無定形アルミニウムケイ酸塩を効率良く得る観点から、熱処理の温度は80℃〜250℃とすることができる。熱処理の温度が250℃以下であると、ベーマイト(水酸化アルミニウム)が析出することをより抑制することができる傾向にある。熱処理の温度が80℃以上であると、所望の無定形アルミニウムケイ酸塩の合成速度が向上し、より効率よく所望の無定形アルミニウムケイ酸塩を製造できる傾向にある。
合成工程において熱処理して得られた生成物は、第二洗浄工程において脱塩及び固体分離に供される。これにより優れた金属イオン吸着能を有する無定形アルミニウムケイ酸塩を得ることができる傾向にある。これは、例えば、以下のように考えることができる。すなわち、合成工程において熱処理して得られた生成物は、無定形アルミニウムケイ酸塩の吸着サイトが共存イオンで塞がれている場合があり、期待する程の金属イオン吸着能が得られない場合がある。そのため、合成工程で得られた生成物としての無定形アルミニウムケイ酸塩から共存イオンの少なくとも一部を、脱塩及び固体分離することにより除去する第二洗浄工程を行うことにより、優れた金属イオン吸着能を有する所望の無定形アルミニウムケイ酸塩を得ることができると考えることができる。
無定形アルミニウムケイ酸塩複合体では、無定形アルミニウムケイ酸塩の表面に、炭素が配置される。炭素は、無定形アルミニウムケイ酸塩の表面の一部又は全部に配置される。
図1では、炭素40が無定形アルミニウムケイ酸塩50の表面全体を被覆している。図2では、炭素40が無定形アルミニウムケイ酸塩50の表面全体を被覆しているが、炭素40の厚みにばらつきがある。図3では、炭素40が無定形アルミニウムケイ酸塩50の表面に部分的に存在し、無定形アルミニウムケイ酸塩50の表面には、炭素40で覆われていない部分がある。図4では、無定形アルミニウムケイ酸塩50の表面に、無定形アルミニウムケイ酸塩50よりも小さい粒径を有する炭素40の粒子が存在している。図5は、図4の変形例であり、炭素40の粒子形状が鱗片状となっている。なお、図1〜図5では、無定形アルミニウムケイ酸塩50の形状は、模式的に球状(断面形状としては円)で表されているが、球状、ブロック状、鱗片状、断面形状が多角形の形状(角のある形状)等のいずれであってもよい。
すなわち、無定形アルミニウムケイ酸塩の内部の状態は、試料を熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)に埋め込み硬化して成形加工した後、機械的に研磨することで無定形アルミニウムケイ酸塩の内部を露出させ、内部にあたる部分を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することで確認することができる。無定形アルミニウムケイ酸塩の内部に炭素が配置されているか否かは、上記のSEMから、エネルギー分散型X線分光法(EDX)にて確認することができる。
無定形アルミニウムケイ酸塩複合体における炭素含有比率は、例えば、0.1質量%〜50質量%であってもよく、0.5質量%〜40質量%であってもよく、1質量%〜30質量%であってもよい。炭素含有比率が0.1質量%以上であると、無定形アルミニウムケイ酸塩複合体の導電性がより向上する傾向にあり、炭素含有比率が50質量%以下であると、無定形アルミニウムケイ酸塩複合体の金属イオン吸着能をより有効に活用できる傾向にある。
無定形アルミニウムケイ酸塩複合体における炭素含有比率は、示差熱−熱重量分析装置(TG−DTA)を用いて、20℃/分の昇温速度で昇温した後、大気雰囲気中、800℃で20分間保持したときの質量減少率にて測定される。
なお、R値は、ラマンスペクトル測定装置(例えば、日本分光株式会社、NSR−1000型、励起波長532nm)を用い、測定範囲(830cm−1〜1940cm−1)全体をベースラインとして、ラマンスペクトル解析から求めることができる。
無定形アルミニウムケイ酸塩複合体の製造方法は、無定形アルミニウムケイ酸塩を得る工程と、得られた無定形アルミニウムケイ酸塩の表面に炭素を付与する炭素付与工程と、を有し、必要に応じて他の工程を有していてもよい。
無定形アルミニウムケイ酸塩を得る工程は、炭素を付与する対象となる無定形アルミニウムケイ酸塩を得ることができればよく、無定形アルミニウムケイ酸塩を準備することを含む工程であってもよく、ケイ酸源とアルミニウム源とから無定形アルミニウムケイ酸塩を製造することを含む工程であってもよい。無定形アルミニウムケイ酸塩を製造する方法については、上述した方法を適用し得る。無定形アルミニウムケイ酸塩を準備することとしては、市販品等を入手してそのまま用いることが挙げられる。
炭素付与工程では、無定形アルミニウムケイ酸塩の表面に炭素を付与する。これにより、無定形アルミニウムケイ酸塩の表面に炭素が配置される。無定形アルミニウムケイ酸塩の表面に炭素を付与する方法としては、特に制限はなく、湿式混合法、乾式混合法、化学蒸着法等の方法が挙げられる。無定形アルミニウムケイ酸塩の表面に付与される炭素の厚みを揃えやすく、かつ、反応系の制御が容易で、大気圧下での処理が可能であるという点から、湿式混合法又は乾式混合法を採用してもよい。また、無定形アルミニウムケイ酸塩複合体のBET比表面積を0.1m2/g〜100m2/gの範囲に調整しやすい点から、乾式混合法を採用してもよい。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用材料は、無定形アルミニウムケイ酸塩複合体の他に、任意の成分を含むことができる。リチウムイオン二次電池用材料が含んでいてもよい他の成分としては特に制限されない。リチウムイオン二次電池用材料が含んでいてもよい他の成分としては、カーボンブラック、グラファイト、アセチレンブラック、導電性を示す酸化物、導電性を示す窒化物等を挙げることができる。本実施形態のリチウムイオン二次電池用材料は、スラリーとしたときの使い勝手の良さの観点から、これらの中でも、アセチレンブラックを含むことが好ましい。
本実施形態のリチウムイオン二次電池負極形成用組成物は、上述のリチウムイオン二次電池用材料と、負極活物質と、結着剤と、を含有する。本実施形態のリチウムイオン二次電池負極形成用組成物は、更に、溶媒、増粘剤、導電助剤等を含有していてもよい。
なお、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味する。「(メタ)アクリル共重合体」等の他の類似の表現においても同様である。
本実施形態のリチウムイオン二次電池正極形成用組成物は、上述のリチウムイオン二次電池用材料と、正極活物質と、結着剤と、を含有する。本実施形態のリチウムイオン二次電池正極形成用組成物は、更に、溶媒、増粘剤、導電助剤等を含有していてもよい。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極(以下、「負極」と略称する場合がある。)は、集電体と、前記集電体上に設けられ、上述のリチウムイオン二次電池用材料及び負極活物質を含有する負極層と、を有する。
例えば、本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極は、上述のリチウムイオン二次電池負極形成用組成物を調製し、このリチウムイオン二次電池負極形成用組成物を集電体に付与した後、任意で含まれる溶媒を除去し、加圧成形して負極層を形成することにより得られる。一般に、リチウムイオン二次電池負極形成用組成物は、混練後、シート状、ペレット状等の形状に成形される。
なお、リチウムイオン二次電池負極形成用組成物を用いて本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極が製造された場合、負極層には結着剤が含有される。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極(以下、「正極」と略称する場合がある。)は、集電体と、前記集電体上に設けられ、上述のリチウムイオン二次電池用材料及び正極活物質を含有する正極層と、を有する。
リチウムイオン二次電池用正極における集電体としては、リチウムイオン二次電池用負極で説明した集電体を挙げることができる。リチウムイオン二次電池用正極は、上述のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法において、リチウムイオン二次電池負極形成用組成物をリチウムイオン二次電池正極形成用組成物に置き換えることにより、同様の方法で製造することができる。
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、上述のリチウムイオン二次電池用負極及び上述のリチウムイオン二次電池用正極のうち少なくとも一方を備える。上述のリチウムイオン二次電池用負極以外の負極を用いる場合には、リチウムイオン二次電池に用いられる通常の負極を適用することができる。また、上述のリチウムイオン二次電池用正極以外の正極を用いる場合には、リチウムイオン二次電池に用いられる通常の正極を適用することができる。
負極と正極とは、例えば、セパレータを介して対向して配置し、電解質を含む電解液を注入することにより、リチウムイオン二次電池とすることができる。
<無定形アルミニウムケイ酸塩の製造>
Al濃度:1.0mol/Lの硫酸アルミニウム水溶液(500mL)に、Si濃度:2.0mol/Lのオルトケイ酸ナトリウム水溶液(500mL)を加え、30分間撹拌した。次いで、撹拌後の溶液を乾燥器に入れ、98℃で5時間加熱した。
ICP発光分光装置として株式会社日立製作所:P−4010を用いて、常法により試料Aの元素分析を行ったところ、元素モル比Si/Alは2.0であった。
粉末X線回折装置として株式会社リガク:Geigerflex RAD−2Xを用いて、以下の測定条件で試料Aの粉末X線回折分析を行った。その結果、ムライト構造を示すピークは観測されず、2θ=24°近辺にブロードなピークが観測された。
−測定条件−
・X線源:CuKα線
・発散スリット:1°
・散乱スリット:1°
・受光スリット:0.30mm
・X線出力:40kV、40mA
上記の試料Aを用いて、無定形アルミニウムケイ酸塩複合体Aを以下のようにして製造した。
試料Aとポリビニルアルコール粉末(和光純薬工業株式会社)とを100:70の質量比で混合し、窒素雰囲気下、1000℃で1時間焼成した。これを無定形アルミニウムケイ酸塩複合体Aとした。
無定形アルミニウムケイ酸塩複合体Aの炭素含有比率を、示差熱−熱重量分析装置(TG−DTA)を用いて測定した。具体的には、無定形アルミニウムケイ酸塩複合体Aを20℃/分の昇温速度で昇温した後、800℃で20分間保持したときの質量減少率を測定することにより、炭素含有比率を求めた。その結果、無定形アルミニウムケイ酸塩複合体Aの炭素含有比率は15質量%であった。
無定形アルミニウムケイ酸塩複合体AのR値を、以下の条件で測定したところ、1.0であった。また、ラマン分光測定法によるマッピングを行い、無定形アルミニウムケイ酸塩複合体Aの表面の被覆状態を確認したところ、炭素により被覆されていない部分が非常に少なく、表面のほとんどの部分が炭素により被覆されている状態の炭素被覆が確認できた。
−測定条件−
・レーザー波長:532nm
・照射強度:1.5mW(レーザーパワーモニターでの測定値)
・照射時間:60秒間
・照射面積:4μm2
・測定範囲:830cm−1〜1940cm−1
・ベースライン:1050cm−1〜1750cm−1
補正後に得られたラマンスペクトルの中で、1360cm−1付近に現れるピークの強度をId、1580cm−1付近に現れるピークの強度をIgとし、その両ピークの強度比Id/Ig(D/G)をR値として求めた。
無定形アルミニウムケイ酸塩複合体AのBET比表面積を窒素吸着能に基づいて測定した。窒素吸着測定装置としては、QUANTACHROME社:AUTOSORB−1を用いた。これらの測定を行う際には、後述する試料の前処理を行った後、評価温度を77Kとし、評価圧力範囲を相対圧(飽和蒸気圧に対する平衡圧力)にて1未満としている。
無定形アルミニウムケイ酸塩複合体Aの体積平均粒子径を以下の方法によって測定したところ、体積平均粒子径は5.0μmであった。
測定試料(5mg)を界面活性剤(ライオン株式会社、エソミンT/15)0.01質量%水溶液中に入れ、振動撹拌機で分散した。得られた分散液をレーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所、SALD3000J)の試料水槽に入れ、超音波をかけながらポンプで循環させ、レーザー回折式で測定した。測定条件は下記の通りとした。得られた粒度分布の体積累積50%粒子径(D50%)を体積平均粒子径とした。以下、実施例において、体積平均粒子径の測定は同様にして行った。
−測定条件−
・光源:赤色半導体レーザー(690nm)
・吸光度:0.10〜0.15
・屈折率:2.00−0.20i
上記の試料Aを用いて、無定形アルミニウムケイ酸塩複合体Cを以下のようにして製造した。
アルミニウムケイ酸塩と炭素源との混合質量比が100:70となるように、1質量%のポリビニルアルコール水溶液に試料Aを分散させ、120℃で乾燥した。乾燥後の固体を粉砕して、窒素雰囲気下、850℃にて1時間焼成した。これを無定形アルミニウムケイ酸塩複合体Cとした。
また、得られた無定形アルミニウムケイ酸塩複合体CのR値を、実施例1と同一の条件で測定したところ、1.0であった。また、ラマン分光測定法によるマッピングを行い、無定形アルミニウムケイ酸塩複合体Cの表面の被覆状態を確認したところ、炭素により被覆されていない部分が非常に少なく、表面のほとんどの部分が炭素により被覆されている状態の炭素被覆が確認できた。
また、無定形アルミニウムケイ酸塩複合体Cの体積平均粒子径を、実施例1と同一の条件で測定したところ、5.0μmであった。
アルミニウムケイ酸塩複合体としてのゼオライト複合体を以下のようにして製造した。
ゼオライトとしては、製品名:HSZ−331HSA(東ソー株式会社)を用いた。製造例1と同一の条件でゼオライトの元素分析を行ったところ、元素モル比Si/Alは3.0であった。
ゼオライトとポリビニルアルコール粉末(和光純薬工業株式会社)とを100:70の質量比で混合し、窒素雰囲気下、850℃で1時間焼成した。これをゼオライト複合体とした。
また、ゼオライト複合体のR値を、実施例1と同一の条件で測定したところ、1.0であった。また、ラマン分光測定法によるマッピングを行い、ゼオライト複合体の表面の被覆状態を確認したところ、炭素により被覆されていない部分が非常に少なく、表面のほとんどの部分が炭素により被覆されている状態の炭素被覆が確認できた。
また、ゼオライト複合体の体積平均粒子径を、実施例1と同一の条件で測定したところ、2.9μmであった。
無定形アルミニウムケイ酸塩複合体A及びC、並びにゼオライト複合体について、以下の評価を行った。
無定形アルミニウムケイ酸塩複合体A及びC、並びにゼオライト複合体について、製造例1に対して記載した条件と同一の条件で粉末X線回折を行った。粉末X線回折スペクトルを図6に示す。
図6に示されるように、無定形アルミニウムケイ酸塩複合体A及びCの粉末X線回折スペクトルには、ムライト構造を示すピークは確認できず、2θ=24°近辺にブロードなピークが観測された。このことから、無定形アルミニウムケイ酸塩複合体A及びCでは、無定形アルミニウムケイ酸塩(試料A)由来の構造が維持されていることがわかる。
無定形アルミニウムケイ酸塩複合体A及びC、並びにゼオライト複合体について、水分吸着率を以下のようにして評価した。
吸着水の量は、1gの各試料を130℃にて3時間真空乾燥させた後の質量M0と、その後に温度20℃、相対湿度90%RH〜99%RHの条件下で24時間静置した後の質量M1とを測定し、以下の式に従って求めた。結果を表1に示す。
水分吸着率(%)=100×(M1−M0)/M0
無定形アルミニウムケイ酸塩複合体A及びC、並びにゼオライト複合体について、以下のように、電解液中での金属(Mn)イオン吸着能を評価した。
1mol/LのLiPF6と、エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC):ジエチルカーボネート(DEC)を体積比1:1:1の比率で含む電解液を調製し、これにMn(BF4)2を溶解して、500質量ppmのMn溶液を調製した。このMn溶液に各試料を0.05g添加して30分間撹拌した後、室温(25℃)にて一晩静置させた。その後、上澄み液を0.45μmのフィルタを用いて濾過し、ICP発光分光装置(ICP−AES)を用いてMnイオンの吸着量を測定した。結果を表1に示す。
表1の結果から、無定形アルミニウムケイ酸塩複合体A及びC、並びにゼオライト複合体は良好な金属イオン吸着能を有することがわかる。
(負極への添加)
5質量部の無定形アルミニウムケイ酸塩複合体Aに対して、アセチレンブラック1質量部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)3質量部、及び黒鉛91質量部を添加し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いて混練して、スラリーを得た。得られたスラリーを銅箔上に塗布し、105℃で30分間乾燥した後、プレスを行い、負極Aを得た。
比較として、アセチレンブラック1質量部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)3質量部、及び黒鉛96質量部を混合し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いて混練して、スラリーを得た。得られたスラリーを用いて、同様の手法で負極Xを得た。
3質量部の無定形アルミニウムケイ酸塩複合体Aに対して、アセチレンブラック5質量部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)6質量部、及びスピネルマンガン(マンガン酸リチウム)86質量部を添加し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いて混練して、スラリーを得た。得られたスラリーをアルミニウム箔上に塗布し、105℃で30分間乾燥した後、プレスを行い、正極Aを得た。
セルA−1、セルC−1、及び標準セルのそれぞれを25℃の恒温槽内に入れた後、電圧が4.2V、電流が0.46mAの定電流定電圧充電にて0.0046Vまで充電し、その後、0.46mAの電流で2.7Vとなるまで放電した。次に、各セルに対して、電圧が4.2V、電流が0.46mAの定電流定電圧充電にて0.0046Vまで充電し、充電容量(放置前の初回充電容量)を得た。充電後の各セルを60℃の恒温槽内に入れ、7日間静置した。静置後の各セルに対して、0.46mAの電流で2.7Vとなるまで放電させて、放電容量(7日間放置後の初回放電容量)を得た。((7日間放置後の初回放電容量)/(放置前の初回充電容量))×100を容量維持率(%)とした。
各々のセルの容量維持率を比較した結果、セルA−1は標準セルと比較して容量維持率が0.5%向上した。また、セルC−1は標準セルと比較して容量維持率が5%向上した。
ラミネート型のリチウムイオン電池を、次のようにして作製した。まず、正極Aと負極Xとをそれぞれ130℃にて6時間真空乾燥した後、角形に切断し、それぞれの電極にタブを溶接し正負極端子を作製した。正極A、セパレータ、負極Xをこの順番に積層した積層体を作製し、その状態でアルミニウム製のラミネートパック内に収容し、正負極端子をラミネートパックの外に出し密封した。次いで、非水電解質をラミネートパック内に注液し、ラミネートパックの開口部を密封した。このようにして作製したラミネート型セルをセルD−1とした。
50 無定形アルミニウムケイ酸塩
Claims (7)
- 無定形アルミニウムケイ酸塩と、前記無定形アルミニウムケイ酸塩の表面に配置される炭素と、を有し、BET比表面積が0.1m2/g〜100m2/gであり、水分吸着率が0質量%以上2.5質量%未満であり、アルミニウム(Al)に対するケイ素(Si)の元素モル比Si/Alが1〜50である無定形アルミニウムケイ酸塩複合体を含むリチウムイオン二次電池用材料。
- 前記無定形アルミニウムケイ酸塩複合体のラマンスペクトル解析から得られるR値が0.1〜5.0である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用材料。
- 請求項1又は請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用材料と、負極活物質と、結着剤と、を含有するリチウムイオン二次電池負極形成用組成物。
- 請求項1又は請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用材料と、正極活物質と、結着剤と、を含有するリチウムイオン二次電池正極形成用組成物。
- 集電体と、前記集電体上に設けられ、請求項1又は請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用材料及び負極活物質を含有する負極層と、を有するリチウムイオン二次電池用負極。
- 集電体と、前記集電体上に設けられ、請求項1又は請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用材料及び正極活物質を含有する正極層と、を有するリチウムイオン二次電池用正極。
- 請求項5に記載のリチウムイオン二次電池用負極及び請求項6に記載のリチウムイオン二次電池用正極のうち少なくとも一方を備えるリチウムイオン二次電池。
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