JP2000311831A - 積層セラミック電子部品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
ミック電子部品の製造において、内部電極のような内部
回路要素膜の厚みによる段差を実質的になくすためにセ
ラミックペーストをセラミックグリーンシート上に付与
するとき、その付与位置にずれが生じても、内部回路要
素膜との間でギャップが形成されたり、セラミックペー
ストの内部回路要素膜上への乗り上げによる厚みの増大
が生じたりすることを防止する。 【解決手段】 内部回路要素膜としての内部電極13の
周縁部に、傾斜面15を形成し、セラミックペースト1
7を、内部電極13の周縁部に重なるように付与する。
また、セラミックペースト17として、溶剤の含有量が
40重量%〜85重量%のものを用いる。このようにし
て、付与されたセラミックペースト17のレベリングを
円滑に生じさせるようにする。
Description
コンデンサ、積層インダクタ、多層回路基板、積層圧電
部品等の積層セラミック電子部品の製造方法に関するも
ので、特に、所定の厚みを有する導電膜のような内部回
路要素膜が部分的に形成された複数のセラミックグリー
ンシートを積み重ねる工程を備える、積層セラミック電
子部品の製造方法に関するものである。
うな積層セラミック電子部品を製造しようとするとき、
複数のセラミックグリーンシートが用意され、これらセ
ラミックグリーンシートが積み重ねられる。特定のセラ
ミックグリーンシート上には、得ようとする積層セラミ
ック電子部品の機能に応じて、コンデンサ、抵抗、イン
ダクタ、バリスタ、フィルタ等を構成するための導電
膜、抵抗膜のような内部回路要素膜が形成されている。
て、その小型化および高性能化を実現するため、セラミ
ックグリーンシートの薄層化および多層化が進められて
いる。たとえば積層セラミックコンデンサであれば、セ
ラミックグリーンシートの薄層化および多層化によっ
て、小型化かつ大容量化を図ることができる。しかしな
がら、セラミックグリーンシートの薄層化および多層化
が進めば進むほど、内部回路要素膜の厚みがより大きく
影響するようになり、以下のような問題を引き起こす。
内部回路要素膜を形成し、これらセラミックグリーンシ
ートを積み重ねると、内部回路要素膜が形成されている
部分と形成されていない部分とで内部回路要素膜の厚み
による段差が累積するため、セラミックグリーンシート
の積み重ねによって得られた積層体をプレスする工程に
おいて、圧力がセラミックグリーンシートの主面方向に
関して均一に及ぼされず、積層体のデラミネーション等
を引き起こす原因となることがある。また、積層体の表
面が部分的に膨らんで平面とはならず、以後の焼成段階
において、この膨らみ部分に亀裂が生じることもある。
クグリーンシート上の内部回路要素膜が形成されていな
い領域に、セラミックペーストをスクリーン印刷、グラ
ビア印刷、凸版印刷等の印刷によって付与することによ
って、セラミックグリーンシート上の段差をなくすこと
が提案されている。
サの製造方法に関してより詳細に説明すると、まず、図
2(1A)および(1B)にそれぞれ示すように、セラ
ミックグリーンシート1aおよび1bが用意される。
ぞれ示すように、セラミックグリーンシート1aおよび
1bの主面上に、内部回路要素膜としての内部電極2a
および2bが部分的に形成される。これら内部電極2a
および2bは、それぞれ、所定の厚みを有していて、セ
ラミックグリーンシート1aおよび1b上には、この厚
みによる段差3aおよび3bが生じている。
いて、内部電極2aおよび2bは、セラミックグリーン
シート1aおよび1bの各々の矩形の主面の長手方向の
端に位置する一方の長手方向端縁にのみ届き、かつ主面
の他方の長手方向端縁および幅方向の端に位置する2つ
の幅方向端縁には届かないように形成される。
ぞれ示すように、セラミックグリーンシート1aおよび
1bの主面上の内部電極2aおよび2bが形成されてい
ない領域に、スクリーン印刷、グラビア印刷、凸版印刷
等の印刷により、セラミックペースト4aおよび4bが
付与される。これによって、図2(2A)および(2
B)にそれぞれ示した内部電極2aおよび2bによる段
差3aおよび3bが実質的になくなる。
の付与工程において、印刷により付与されたセラミック
ペースト4aおよび4bのパターンの解像度を所定以上
に保つためには、セラミックペースト4aおよび4b
は、一定値以上の粘度を有していなければならず、その
ため、セラミックペースト4aおよび4bに含まれる溶
剤の含有量は、従来、35重量%程度以下とされるのが
通常である。
ぞれ示したセラミックグリーンシート1aおよび1bが
交互に積み重ねられる。このとき、セラミックグリーン
シート1aまたは1bにおける内部電極2aまたは2b
が届く長手方向端縁と届かない長手方向端縁とが交互に
積み重ね方向に配列された状態となっている。このよう
なセラミックグリーンシート1aおよび1bの積み重ね
によって、図2(4)に示すように、積層体5が得られ
る。
れる。そして、この積層体5の両端部に外部電極を形成
することにより、所望の積層セラミックコンデンサが完
成する。
電極2aおよび2bの厚みによる段差3aおよび3bを
実質的になくすことができるので、内部電極2aおよび
2bの厚みの影響を実質的に受けない状態で、セラミッ
クグリーンシート1aおよび1bを積み重ねることがで
きる。したがって、積層体5においてデラミネーション
や亀裂等を生じにくくしながら、セラミックグリーンシ
ート1aおよび1bの薄層化および多層化を図ることが
できる。
めの方法が図示されているが、通常の場合、積層体5を
能率的に得るようにするため、多数個の積層体5を与え
るマザー積層体が得られるように、図2に示した各工程
が実施され、マザー積層体をカットすることによって個
々の積層体5を取り出すようにされる。そのため、図2
に示したセラミックグリーンシート1aおよび1bは、
それぞれ、大きな寸法を有するマザーの状態で用意さ
れ、このマザーの状態で、内部電極2aおよび2bの各
々の形成、セラミックペースト4aおよび4bの各々の
付与、ならびに積み重ねが行なわれる。
ように提案されたセラミックグリーンシート上の段差を
なくす方法には、次のような問題がある。
あるセラミックグリーンシート1の一部と、その主面上
に形成される内部電極2の一部とが拡大されて断面図で
示されている。また、内部電極2の厚みによる段差を実
質的になくすことを目的としながらも、不適正な態様
で、セラミックグリーンシート1の主面上に付与された
セラミックペースト4も図示されている。
に、スクリーン印刷、グラビア印刷、凸版印刷等の印刷
により、付与されるものであるが、このような印刷にお
ける位置精度は、30〜200μm程度である。そのた
め、印刷位置のずれが発生した場合には、図5に示すよ
うに、セラミックペースト4の一部が内部電極2上に乗
り上げてしまい、段差を逆に助長する結果を招いてしま
う。
に示すように、セラミックペースト4の印刷パターンの
設計段階で、セラミックペースト4と内部電極2との間
にたとえば数十μmのギャップ6が形成されるように
し、印刷位置のずれが生じても、セラミックペースト4
が内部電極2上に乗り上げる状態が生じにくくすること
も提案されている。しかしながら、この方法によれば、
ギャップ6の存在のために、内部電極2の端部が歪みや
すいという問題や、焼成後の積層体において、ボイド等
の構造欠陥を招きやすいという問題に遭遇する。
を解決し得る、積層セラミック電子部品の製造方法を提
供しようとすることである。
グリーンシートを用意する工程と、セラミックグリーン
シートの主面上に、その厚みによる段差をもたらす状態
で内部回路要素膜を部分的に形成する工程と、内部回路
要素膜の厚みによる段差を実質的になくすように、セラ
ミックグリーンシートの主面上にセラミックペーストを
付与する工程と、セラミックペーストが付与されたセラ
ミックグリーンシートを積み重ねる工程とを備える、積
層セラミック電子部品の製造方法に向けられる。
発明の第1の局面では、内部回路要素膜を形成する工程
において、内部回路要素膜は、その周縁部においてセラ
ミックグリーンシートの主面に対して鋭角をもつ傾斜面
を与えるように形成されることを特徴とするとともに、
セラミックペーストを付与する工程において、セラミッ
クペーストは、内部回路要素膜の周縁部に重なるように
付与されることを特徴としている。
ックペーストを付与する工程において、セラミックペー
ストは、内部回路要素膜の周縁部に重なるように付与さ
れ、かつ、セラミックペーストとして、溶剤の含有量が
40重量%〜85重量%のものが用いられることを特徴
としている。
した第1および第2の局面での各特徴を兼ね備えるよう
にして、この発明に係る積層セラミック電子部品の製造
方法が実施されてもよい。すなわち、この発明の第3の
局面では、内部回路要素膜を形成する工程において、内
部回路要素膜は、その周縁部においてセラミックグリー
ンシートの主面に対して鋭角をもつ傾斜面を与えるよう
に形成されることを特徴とするとともに、セラミックペ
ーストを付与する工程において、セラミックペースト
は、内部回路要素膜の周縁部に重なるように付与され、
かつ、セラミックペーストとして、溶剤の含有量が40
重量%〜85重量%のものが用いられることを特徴とし
ている。
て、内部回路要素膜の周縁部の傾斜面は、セラミックグ
リーンシートの主面に対して0.3度〜30度の角度を
もつように形成されることが好ましい。
おいて、セラミックペーストを付与する際、このセラミ
ックペーストは、内部回路要素膜の周縁部に180μm
以下の幅をもって重なるように付与されることが好まし
く、20〜140μmの幅をもって重なるように付与さ
れることがより好ましい。
おいて、前述したように、セラミックペーストとして、
溶剤の含有量が40重量%〜85重量%のものを用いる
が、この発明の第1ないし第3の局面のいずれにおいて
も、セラミックペーストとして、溶剤の含有量が40重
量%〜75重量%のものを用いることが好ましい。
ンサの製造方法において有利に適用される。この場合、
得ようとする個々の積層セラミックコンデンサを単位と
して見たとき、セラミックグリーンシートは、矩形の主
面を有し、静電容量形成のための内部電極となる内部回
路要素膜を形成する工程において、内部回路要素膜は、
セラミックグリーンシートの矩形の主面の長手方向の端
に位置する一方の長手方向端縁にのみ届き、かつ主面の
他方の長手方向端縁および幅方向の端に位置する2つの
幅方向端縁には届かないように形成されるとともに、セ
ラミックグリーンシートを積み重ねる工程において、内
部回路要素膜が届く長手方向端縁と届かない長手方向端
縁とが交互に積み重ね方向に配列されるように、複数の
セラミックグリーンシートが積み重ねられる。
程において、セラミックペーストは、セラミックグリー
ンシートの主面上であって、内部回路要素膜が形成され
ない全領域に付与されるのが通常であるが、上述したよ
うに、この発明が積層セラミックコンデンサの製造方法
に適用される場合には、セラミックペーストは、セラミ
ックグリーンシートの主面の幅方向端縁と内部回路要素
膜との間に挟まれた領域にのみ付与されるようにしても
よい。
セラミック電子部品の製造方法がたとえば積層セラミッ
クコンデンサの製造に適用されるとき、基本的には、図
2に示した各工程が実施され、また、製造の能率を上げ
るため、図2に示した各工程は、マザーの状態で実施さ
れる。図1には、この発明の実施形態による積層セラミ
ックコンデンサの製造方法に含まれる特徴的な工程が断
面図で示されている。
グリーンシート11がマザーの状態で用意される。
主面12上に、内部回路要素膜としての内部電極13
が、多数箇所に分布するように部分的に形成される。内
部電極13は、セラミックグリーンシート11の主面1
2上において、その厚みによる段差14をもたらしてい
る。
て、得ようとする個々の積層セラミックコンデンサを単
位として見たとき、セラミックグリーンシート11の主
面12は矩形であり、内部電極13は、セラミックグリ
ーンシート11の矩形の主面12の長手方向の端に位置
する一方の長手方向端縁にのみ届き、かつ主面12の他
方の長手方向端縁および幅方向の端に位置する2つの幅
方向端縁には届かないように形成される。
に内部電極13を形成するとき、内部電極13は、その
周縁部においてセラミックグリーンシート11の主面1
2に対して鋭角をもつ傾斜面15を与えるように形成さ
れる。この傾斜面15の主面12に対する角度16は、
好ましくは、0.3度〜30度の範囲になるように選ば
れる。
刷、グラビア印刷、凸版印刷等の印刷によって形成され
るが、この印刷において用いられるスクリーンのような
マスク、印版等により、あるいは、内部電極13の形成
のために用いる導電性ペーストの粘度を調整したりする
こと等によって、上述した傾斜面15を容易に形成する
ことができる。このように、内部電極13が印刷によっ
て形成される場合、次いで、内部電極13を乾燥するこ
とが行なわれる。また、内部電極13は、スパッタリン
グのような乾式めっきによって形成されることもある
が、この場合には、マスクを工夫したりすることによっ
て、傾斜面15を容易に形成することができる。
4を実質的になくすように、セラミックグリーンシート
11の主面12上であって、内部電極13が形成されな
い全領域に、セラミックペースト17が、たとえば、ス
クリーン印刷、グラビア印刷、凸版印刷等の印刷によっ
て付与される。セラミックペースト17は、セラミック
粉末、バインダおよび溶剤を含むものであるが、ここに
含まれるセラミック粉末としては、セラミックグリーン
シート11に含まれるセラミック粉末と実質的に同じ成
分であることが好ましい。
にセラミックペースト17を付与するとき、セラミック
ペースト17は、図1(1)に示すように、重なりの幅
18をもって、内部電極13の周縁部に重なるように付
与される。
部電極13の周縁部に重なるように付与されることによ
って、たとえ印刷等の位置ずれが生じても、内部電極1
3とセラミックペースト17との間にギャップが形成さ
れることが防止される。
5が形成されているので、この周縁部に重なるようにセ
ラミックペースト17が付与されても、その後におい
て、図1(2)に示すように、セラミックペースト17
の、内部電極13の周縁部に乗り上げた部分は、内部電
極13間へと迅速に移動し、円滑にレベリングされる。
言い換えると、内部電極13の段差14が、セラミック
ペースト17のパターンをアライニングするように作用
することになる。また、セラミックペースト17は、付
与後において乾燥される。これらのことから、セラミッ
クペースト17は、内部電極13の表面と実質的に面一
の表面を形成する状態となる。
180μm以下とされ、より好ましくは、20〜140
μmの範囲とされる。このことを確認するため、以下の
ような実験を実施した。
ックグリーンシート11上に内部電極13を印刷し乾燥
したものを用意するとともに、セラミックペースト17
を用意した。ここで、内部電極13の乾燥後の厚み(段
差14)を5μmとし、内部電極13の周縁部の傾斜角
度16を3度とし、また、セラミックペースト17とし
ては、溶剤の含有量が60%であって内部電極13とほ
ぼ同じ厚みの塗膜を得ることができるものを用意した。
クグリーンシート11の主面12上にセラミックペース
ト17をスクリーン印刷によって塗布した。このとき、
用いるスクリーンを変えることによって、以下の表1に
示すように、重なりの幅18を−40μmないし300
μmの範囲で種々に変えた試料を作製した。
ースト17を乾燥した後、このように内部電極13およ
びセラミックペースト17が形成されたセラミックグリ
ーンシート11を300層積層し、さらに、その上下
に、内部電極およびセラミックペーストのいずれもが形
成されていないセラミックグリーンシートを積層するこ
とによって、マザー積層体を得た。
ダイシングソーを用いて、これをカットし、複数個のチ
ップを切り出した。
外観を観察することによって、構造欠陥の有無を評価
し、全試料数に対する構造欠陥発生試料数の比率、すな
わち構造欠陥発生率を求めた。また、焼成後のチップの
断面を観察することによって、内部電極13の端部での
折れ曲がり状態を評価した。これら構造欠陥発生率およ
び折れ曲がり状態が表1に示されている。
は、たとえば、セラミックペースト17の端縁が内部電
極13の周縁部の傾斜面15を越えて、内部電極13と
セラミックペースト17との重なり部分で厚みが増すこ
とが原因となったり、内部電極13とセラミックペース
ト17との間にギャップが形成されて、このギャップに
沿って内部電極13が歪むことが原因となったりして生
じるもので、表1において、折れ曲がりが実質的に生じ
なかったものを「○」、やや生じたものを「△」、比較
的大きく生じたものを「×」でそれぞれ示した。
18が−40μmや−20μmとなる試料、すなわち、
内部電極13とセラミックペースト17との間にギャッ
プが形成される試料の場合には、比較的高い構造欠陥発
生率を示した。そして、重なりの幅18が0μmすなわ
ちギャップが0μmとなる試料以降のいくつかの試料に
おいて、構造欠陥発生率が0/100となるものを認め
ることができた。
なる試料の中で、重なりの幅18が増し、100μm程
度になると、セラミックペースト17の端縁が内部電極
13の周縁部の傾斜面15を越えるようになった。その
ため、焼成後のチップの断面を観察すると、内部電極1
3とセラミックペースト17との重なり部分で厚みが増
し、内部電極13の端部に折れ曲がりが生じたものも認
められたが、重なりの幅18が180μm以下では、構
造欠陥に至るものはなかった。他方、重なりの幅18が
180μmを超え、200μm以上となると、構造欠陥
が発生した。
なりの幅18は、好ましくは、180μm以下となるよ
うにされる。
チップであって、重なりの幅18が0μm以上の試料に
外部電極を形成して、積層セラミックコンデンサを完成
させた後、各試料に係る積層セラミックコンデンサにつ
いて、絶縁抵抗(IR)を測定し、全試料数に対するI
R不良発生試料数の比率、すなわちIR不良発生率を求
めた。このIR不良発生率も表1に示されている。
3の端部での折れ曲がりとは、相関関係を有していて、
IR不良の多くは、内部電極13の端部での折れ曲がり
が原因となって生じていることが推定できる。このよう
な折れ曲がりによるIR不良を考慮すると、重なりの幅
18は、より好ましくは、20〜140μmの範囲とな
るようにされる。
しい範囲は、用いるセラミックペースト17の粘度、溶
剤量、塗布厚み、内部電極13の周縁部の傾斜面15の
角度16等の種々のファクタによって左右され、また、
適用する積層セラミック電子部品の大きさや種類等によ
っても、その許容範囲が異なってくる。したがって、上
述した重なりの幅18の好ましい範囲は、一例にすぎ
ず、さらに広い範囲であってもよい場合があったり、逆
にさらに狭い範囲でなければならない場合があったりす
る。
察においても示唆したように、セラミックペースト17
の挙動は、そこに含まれる溶剤の含有量によって左右さ
れる。この溶剤の含有量を40重量%以上とし、それに
よってセラミックペースト17の粘度を低くしたとき
に、セラミックペースト17のレベリングがより助長さ
れることがわかった。このことを確認するため、セラミ
ックペースト17に含まれる溶剤の含有量を、以下の表
2に示すように、種々に変更し、所定時間経過後、乾燥
させて、内部電極13の周縁部でのセラミックペースト
17の厚み方向寸法19およびセラミックペースト17
の中央部における膜厚22をそれぞれ測定した。
差14の寸法を3μm、内部電極13の周縁部の傾斜角
度16を3度としながら、段差14を埋めるようにセラ
ミックペースト17を付与し、乾燥したときの内部電極
13の周縁部でのセラミックペースト17の厚み方向寸
法19および中央部でのセラミックペースト17の膜厚
22を示すもので、内部電極13間の間隔20を500
μmと設定し、かつ、セラミックペースト17の付与幅
21を600μmと設定した場合のものである。
ト17の溶剤含有量が40重量%未満の35重量%以下
である場合には、セラミックペースト17の周縁部での
厚み方向寸法19は、内部電極13の段差14の寸法あ
るいはセラミックペースト17の中央部での膜厚22で
ある3μmを超え、レベリング性に劣っている。また、
このような溶剤含有量が40重量%未満の領域において
は、セラミックペースト17の粘度が増すほど、セラミ
ックペースト17の周縁部での厚み方向寸法19がより
大きくなり、レベリング性がより劣る傾向を示してい
る。
スト17の溶剤含有量が40重量%未満となり、セラミ
ックペースト17の粘度が高く、そのため、レベリング
性に劣る結果としてもたらされたセラミックペースト1
7の付与状態が示されている。図3において、セラミッ
クペースト17の中央部での膜厚22については、実質
的に適正であるにも関わらず、周縁部での厚み方向寸法
19が中央部に比べて大きくなっている。なお、図3に
示したセラミックペースト17の付与状態は、セラミッ
クペースト17の溶剤含有量が40重量%未満である場
合以外に、前述したように、重なりの幅18が180μ
mを超える場合、あるいは、後述するように、内部電極
13の周縁部の傾斜角度16が3度を超える場合におい
ても、生じやすい。
85重量%であると、セラミックペースト17の周縁部
での厚み方向寸法19は、内部電極13の段差14の寸
法と同等の3μmとなり、優れたレベリング性を示すこ
とがわかる。このようなことから、セラミックペースト
17に含まれる溶剤の含有量は、40重量%〜85重量
%であることが好ましい。
0重量%〜85重量%と多くなった場合、表2の「周縁
部での厚み方向寸法19」の欄を見る限り、適正な厚み
方向寸法19を示しているが、このように溶剤含有量が
多くなると、セラミックペースト17の乾燥収縮率が高
くなり、表2の「中央部での膜厚22」の欄に示すよう
に、セラミックペースト17の中央部での膜厚22が内
部電極13の段差14の寸法より小さくなってしまい、
好ましくない。また、乾燥による厚みむらが生じやすい
ことも実験で確認されている。
17に含まれる溶剤の含有量の上限は、75重量%であ
ることがより好ましい。
溶剤の含有量が40重量%〜85重量%と多くされ、そ
れによってセラミックペースト17の粘度が低くされる
と、前述したように、内部電極13の周縁部に傾斜面1
5が形成されなくても、良好なレベリング性を示すこと
も確認されている。
その周縁部においてセラミックグリーンシート11の主
面12に対して鋭角をもつ傾斜面15を与えるように形
成され、この傾斜面15の主面12に対する角度16
は、好ましくは、0.3度〜30度の範囲になるように
選ばれる。
た傾斜面15の主面12への投影長さ23に影響を及ぼ
す。すなわち、角度16が小さいと、この投影長さ23
が長くなり、角度16が大きいと、投影長さ23が短く
なる。
が長くなると、内部電極13の膜厚の薄い領域が広くな
り、焼成時において、内部電極13に含まれる金属成分
の連続性が損なわれ、その結果、内部電極13としての
機能が失われる可能性がある。この観点から、前述した
ように、傾斜面15の角度16の下限を0.3度に選ぶ
ことが好ましい。
ると、セラミックペースト17の印刷位置に対する許容
範囲が狭くなってしまう。以下の表3には、傾斜面15
の角度16および内部電極13の膜厚22をそれぞれ種
々に変えたときに与えられる傾斜面15の投影長さ23
(単位はμm)が示されている。
置精度は、前述したように、30〜200μm程度であ
る。そのため、傾斜面15の投影長さ23は、この位置
精度範囲に入ることが好ましい。表3において、二重線
で囲んだ数値がこの位置精度範囲に入っている。表3か
らわかるように、内部電極13の膜厚22が1μm、3
μm、5μm、10μmおよび20μmのいずれの場合
においても、傾斜面15の投影長さ23を印刷の位置精
度範囲である30〜200μmの範囲内とする傾斜面1
5の角度16を、0.3度、0.6度、1度、3度、1
0度および30度のいずれかから選び出すことができ
る。この観点から、傾斜面15の角度16の上限は30
度に選ぶことが好ましい。
法の説明に戻ると、図1(2)に示すように、前述のよ
うに内部電極13が形成されかつその段差14を実質的
になくすようにセラミックペースト17が付与されたセ
ラミックグリーンシート11は、次いで、積み重ねら
れ、それによって、マザー状態の積層体が得られる。
重ね工程において、得ようとする個々の積層セラミック
コンデンサを単位として見たとき、セラミックグリーン
シート11における内部電極13が届く長手方向端縁と
届かない長手方向端縁とが交互に積み重ね方向に配列さ
れるように、複数のセラミックグリーンシート11が積
み重ねられる。
れた後、カットされ、それによって、個々の積層セラミ
ックコンデンサのための本体となるべき積層体が取り出
され、これら積層体が焼成される。そして、焼成後の各
積層体の両端部に外部電極を形成することにより、所望
の積層セラミックコンデンサが完成される。
の製造方法に関して、図4に示すような実施形態を採用
してもよい。図4は、図2の(3A)および(3B)に
相当する図である。図4において、図2の(3A)およ
び(3B)に示した要素に相当する要素には同様の参照
符号を付し、重複する説明は省略する。
ようとする個々の積層セラミックコンデンサを単位とし
て見たとき、セラミックペースト4aおよび4bを付与
する工程において、このセラミックペースト4aおよび
4bが、それぞれ、セラミックグリーンシート1aおよ
び1bの各々の主面の幅方向端縁と内部電極2aおよび
2bとの間に挟まれた領域にのみ付与されることが特徴
である。
の各厚みによる段差の累積が特に生じやすい領域にの
み、セラミックペースト4aおよび4bを付与しようと
するものである。
積層セラミックコンデンサの製造方法に関連して説明し
たが、この発明は、積層セラミックコンデンサに限ら
ず、抵抗、インダクタ、バリスタ、フィルタ等として機
能する積層セラミック電子部品にも、これら機能素子が
複合された積層セラミック電子部品にも適用することが
できる。
素膜が、内部電極のような導電膜であったが、上述した
ように、この発明は、任意の機能を有する種々の積層セ
ラミック電子部品に適用可能であるので、内部回路要素
膜としては、種々の態様が考えられる。たとえば、内部
回路要素膜は、導電膜のような良好な導電性を有する回
路要素膜である以外に、たとえば比較的大きい電気抵抗
性あるいは他の電気的特性を有する回路要素膜であるこ
ともあり得る。
回路要素膜の厚みによる段差を実質的になくすためにセ
ラミックペーストを付与するにあたって、内部回路要素
膜の周縁部に重なるように付与されるので、たとえ付与
位置にずれが生じたとしても、内部回路要素膜に対して
ギャップを生じさせない状態でセラミックペーストを付
与することが容易になる。
部回路要素膜は、その周縁部においてセラミックグリー
ンシートの主面に対して鋭角をもつ傾斜面を与えるよう
に形成されるので、セラミックペーストの、内部回路要
素膜の周縁部に重なるように付与された部分は、この傾
斜面に沿って迅速に移動し、セラミックペーストは円滑
にレベリングされることができる。言い換えると、内部
回路要素膜の段差が、セラミックペーストのパターンを
アライニングするように作用することになる。そのた
め、内部回路要素の周縁部に重なるようにセラミックペ
ーストが付与されても、結果として、この重なり部分に
おいて他の部分に比べて厚みが増すことを防止できる。
部回路要素膜の厚みによる段差を実質的になくすように
セラミックグリーンシートの主面上に付与されるセラミ
ックペーストとして、溶剤の含有量40重量%〜85重
量%のものが用いられるので、セラミックペーストの粘
度を低くすることができる。その結果、セラミックペー
ストの、内部回路要素膜の周縁部に重なるように付与さ
れた部分は、円滑に他の部分との間でレベリングされる
ことができる。この場合においても、内部回路要素膜の
段差が、セラミックペーストのパターンをアライニング
するように作用することになる。そのため、セラミック
ペーストが内部回路要素膜の周縁部に重なるように付与
されたとしても、結果として、この重なり部分での厚み
が他の部分に比べて厚くなることを防止できる。
述した第1および第2の局面の各特徴を兼ね備えている
ので、セラミックペーストのレベリングがより迅速、よ
り円滑、かつより確実に達成されることができる。
デラミネーションや亀裂等の機械的欠陥を生じないよう
にしながら、セラミックグリーンシートの薄層化および
多層化を図ることができ、それゆえ、性能の優れた積層
セラミック電子部品を得ることができる。
膜の周縁部に形成される傾斜面が、セラミックグリーン
シートの主面に対して0.3度〜30度の角度をもつよ
うにされていると、セラミックペーストの円滑なレベリ
ングをより確実に達成することができる。また、傾斜面
の角度を0.3度以上にすれば、傾斜面が長くなりすぎ
るために、内部回路要素膜の膜厚の薄い領域が広くなり
すぎることによって、焼成時において、内部回路要素膜
の連続性が損なわれることを防止することができ、他
方、傾斜面の角度を30度以下にすれば、傾斜面が短く
なりすぎるために、セラミックペーストの印刷位置に対
する許容範囲を狭くしてしまい、それによって、不所望
な領域にセラミックペーストが付与されてしまうことを
防止することができる。
ストの、内部回路要素膜の周縁部への重なりの幅が、1
80μm以下とされることによって、セラミックペース
トの円滑なレベリングをより確実に達成することができ
る。
て、20〜140μmの範囲に選ばれると、内部回路要
素膜の端部での折れ曲がりによる積層セラミック電子部
品の絶縁抵抗不良を生じにくくすることができる。
ストに含まれる溶剤の含有量の上限を75重量%とすれ
ば、セラミックペーストの乾燥収縮率が高くなりすぎる
ことによって、乾燥によるセラミックペーストの膜厚が
中央部において小さくなってしまうことや、膜厚の不均
一が生じることを防止することができる。
子部品の製造方法に備える特徴的工程を断面図によって
図解的に示すもので、(1)はセラミックペースト17
を付与した直後の状態を示し、(2)はセラミックペー
スト17を付与し、所定の時間の経過後に、これを乾燥
させた後の状態を示している。
デンサの製造方法を示す斜視図である。
ペースト17の溶剤含有量が少ない場合等に生じ得る不
適正な状態を示す断面図である。
って、この発明の他の実施形態におけるセラミックペー
スト4aおよび4bの付与状態を示す斜視図である。
めのもので、セラミックペースト4の付与が不適正とな
った状態を示す断面図である。
めのもので、セラミックペースト4が内部電極2に対し
てギャップ6を形成しながら付与された状態を示す断面
図である。
Claims (10)
- 【請求項1】 セラミックグリーンシートを用意する工
程と、 前記セラミックグリーンシートの主面上に、その厚みに
よる段差をもたらす状態で内部回路要素膜を部分的に形
成する工程と、 前記内部回路要素膜の厚みによる段差を実質的になくす
ように、前記セラミックグリーンシートの前記主面上に
セラミックペーストを付与する工程と、 前記セラミックペーストが付与された前記セラミックグ
リーンシートを積み重ねる工程とを備える、積層セラミ
ック電子部品の製造方法であって、 前記内部回路要素膜を形成する工程において、前記内部
回路要素膜は、その周縁部において前記セラミックグリ
ーンシートの主面に対して鋭角をもつ傾斜面を与えるよ
うに形成されることを特徴とするとともに、 前記セラミックペーストを付与する工程において、前記
セラミックペーストは、前記内部回路要素膜の周縁部に
重なるように付与されることを特徴とする、積層セラミ
ック電子部品の製造方法。 - 【請求項2】 セラミックグリーンシートを用意する工
程と、 前記セラミックグリーンシートの主面上に、その厚みに
よる段差をもたらす状態で内部回路要素膜を部分的に形
成する工程と、 前記内部回路要素膜の厚みによる段差を実質的になくす
ように、前記セラミックグリーンシートの前記主面上に
セラミックペーストを付与する工程と、 前記セラミックペーストが付与された前記セラミックグ
リーンシートを積み重ねる工程とを備える、積層セラミ
ック電子部品の製造方法であって、 前記セラミックペーストを付与する工程において、前記
セラミックペーストは、前記内部回路要素膜の周縁部に
重なるように付与され、かつ、前記セラミックペースト
として、溶剤の含有量が40重量%〜85重量%のもの
が用いられることを特徴とする、積層セラミック電子部
品の製造方法。 - 【請求項3】 セラミックグリーンシートを用意する工
程と、 前記セラミックグリーンシートの主面上に、その厚みに
よる段差をもたらす状態で内部回路要素膜を部分的に形
成する工程と、 前記内部回路要素膜の厚みによる段差を実質的になくす
ように、前記セラミックグリーンシートの前記主面上に
セラミックペーストを付与する工程と、 前記セラミックペーストが付与された前記セラミックグ
リーンシートを積み重ねる工程とを備える、積層セラミ
ック電子部品の製造方法であって、 前記内部回路要素膜を形成する工程において、前記内部
回路要素膜は、その周縁部において前記セラミックグリ
ーンシートの主面に対して鋭角をもつ傾斜面を与えるよ
うに形成されることを特徴とするとともに、 前記セラミックペーストを付与する工程において、前記
セラミックペーストは、前記内部回路要素膜の周縁部に
重なるように付与され、かつ、前記セラミックペースト
として、溶剤の含有量が40重量%〜85重量%のもの
が用いられることを特徴とする、積層セラミック電子部
品の製造方法。 - 【請求項4】 前記内部回路要素膜を形成する工程にお
いて、前記傾斜面は、前記セラミックグリーンシートの
主面に対して0.3度〜30度の角度をもつように形成
されることを特徴とする、請求項1または3に記載の積
層セラミック電子部品の製造方法。 - 【請求項5】 前記セラミックペーストを付与する工程
において、前記セラミックペーストは、前記内部回路要
素膜の周縁部に180μm以下の幅をもって重なるよう
に付与されることを特徴とする、請求項1ないし4のい
ずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。 - 【請求項6】 前記セラミックペーストを付与する工程
において、前記セラミックペーストは、前記内部回路要
素膜の周縁部に20〜140μmの幅をもって重なるよ
うに付与されることを特徴とする、請求項5に記載の積
層セラミック電子部品の製造方法。 - 【請求項7】 前記セラミックペーストとして、溶剤の
含有量が40重量%〜75重量%のものが用いられるこ
とを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載の
積層セラミック電子部品の製造方法。 - 【請求項8】 当該積層セラミック電子部品は積層セラ
ミックコンデンサであり、得ようとする個々の前記積層
セラミックコンデンサを単位として見たとき、前記セラ
ミックグリーンシートは、矩形の前記主面を有し、前記
内部回路要素膜を形成する工程において、前記内部回路
要素膜は、前記セラミックグリーンシートの矩形の前記
主面の長手方向の端に位置する一方の長手方向端縁にの
み届き、かつ前記主面の他方の長手方向端縁および幅方
向の端に位置する2つの幅方向端縁には届かないように
形成されるとともに、前記セラミックグリーンシートを
積み重ねる工程において、前記内部回路要素膜が届く長
手方向端縁と届かない長手方向端縁とが交互に積み重ね
方向に配列されるように、複数の前記セラミックグリー
ンシートが積み重ねられる、請求項1ないし7のいずれ
かに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。 - 【請求項9】 前記セラミックペーストを付与する工程
において、前記セラミックペーストは、前記セラミック
グリーンシートの前記主面上であって、前記内部回路要
素膜が形成されない全領域に付与される、請求項1ない
し8のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造
方法。 - 【請求項10】 前記セラミックペーストを付与する工
程において、前記セラミックペーストは、前記セラミッ
クグリーンシートの前記主面の前記幅方向端縁と前記内
部回路要素膜との間に挟まれた領域にのみ付与される、
請求項8に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
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