JP2006286860A - 積層電子部品及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】導電層に起因した段差を解消することが可能でありながら、脱バイガスの円滑な排出を促進することができる、積層電子部品等を提供すること。
【解決手段】本発明は、バインダを含むセラミックペースト23から構成したグリーンシート25上に内部電極層5、7及び段差吸収層6、8を形成した単位層を複数積層して積層セラミックコンデンサ1などの積層電子部品を製造するものである。その際、少なくとも一つの単位層において、一チップ領域43a及び43b内に関して、内部電極層の引き出し部と逆側に脱バイガス排気部45を確保すると共に、該内部電極層の側方であって引き出し方向と直交する方向の側方に、引き出し方向に亙って連続的に延長する段差吸収層を形成する。
【選択図】 図3

Description

本発明は、積層電子部品及びその製造方法に関するものである。
一般に、積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品は、次のような工程によって製造されている。まず、原料となるセラミック粉末、有機バインダ、溶剤等を含むセラミックペーストにより、いわゆるグリーンシートを形成する。次に、このグリーンシートに、導電性ペーストにより複数の内部電極をスクリーン印刷法などで形成する。そして、内部電極を有するグリーンシートを、内部電極の位置がずらされた状態とずらされていない状態とが交互に重なるように複数枚積層し、シート積層体を作る。次に、かかるシート積層体をプレスし、電子部品単位に対応する大きさに切断して、積層チップ体を得る。さらに、その積層チップ体に対して、バインダ等を除去する脱バインダ処理を行い、所定条件で焼成した後、積層チップ体の両端部に外部電極を形成して、積層セラミック電子部品を得る。
また、このようにして製造される積層セラミック電子部品においては、積層数が多層になるほど内部電極の厚みによる他の部位との段差が無視できなくなる。すなわち、内部電極が印刷されていない余白部分を含む積層領域と、内部電極を含んだ積層領域との間で、内部電極の有無による段差が生じる。かかる段差は、焼成時のクラックやデラミネーションなどを誘発させ、製品の特性の劣化や歩留まりの低下を招く原因となり得る。そこで、内部電極の周囲に段差吸収用のセラミックペーストを印刷することで、上記段差の問題を解消するものもある(特許文献1参照)。
特開2001−358036号公報
しかしながら、上述した特許文献1のように内部電極の周囲に段差吸収用のセラミックペーストを印刷しても依然として、焼成時のクラックやデラミネーションが生じることが分かっている。本出願人の鋭意研究によると、脱バインダ処理においてバインダが気化したガス、いわゆる脱バイガスが積層チップ体内に滞留され又は突発的に排出されることがクラックやデラミネーションの発生要因でもあると考えることができる。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、内部電極などの導電層に起因した段差を解消することが可能でありながら、脱バイガスの円滑な排出を促進することができる、積層電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するため、本発明は、バインダを含む誘電体ペーストから構成したグリーン層上に導電層及び段差吸収層を形成した単位層を複数積層して積層電子部品を製造する方法において、少なくとも一つの前記単位層において、一チップ領域内に関して、前記導電層の引き出し部と逆側に脱バイガス排気部を確保すると共に、該導電層の側方であって引き出し方向と直交する方向の側方に、引き出し方向に亙って連続的に延長する段差吸収層を形成することを特徴とする。
好適には、前記単位層として、前記誘電体ペーストから構成し複数チップ領域を有するグリーンシート上に前記導電層及び前記段差吸収層を設けたもの、を複数枚用意する工程と、それら複数の単位層を、前記導電層の位置が交互にずれる態様で積層し、シート積層体を得る工程と、前記シート積層体を、一チップ領域毎に裁断して積層チップ体を得る工程と、前記積層チップ体に対し脱バインダ処理を行う工程とを備える。
前記段差吸収層を、前記導電層における引き出し方向と直交する方向の両側の側方に設けると好適である。
また、好適には、複数の前記単位層に亙って、前記段差吸収層を同一パターンによって形成する。
さらに、同目的を達成するための本発明に係る積層電子部品は、バインダを含む誘電体ペーストから構成された誘電体基体と、積層方向に所定の間隔をあけて前記誘電体基体内に埋設された複数の導電層と、少なくとも一つの前記導電層の側方に設けられた脱バイガス排気部及び段差吸収層とを備え、前記脱バイガス排気部は、一つの前記導電層につき、該導電層における引き出し部と逆側の側方に配置されており、前記段差吸収層は、一つの前記導電層につき、該導電層における引き出し方向と直交する方向の少なくとも一方の側方に配置されている。
前記段差吸収層は、一つの前記導電層につき、該導電層における引き出し方向と直交する方向の一方のみの側方に配置されるようにして、複数の該導電層につき設けられており、上下に隣り合う前記導電層に関する前記段差吸収層は、該導電層を挟んで相互に逆側となるように配置されているようにしてもよい。
あるいは、前記段差吸収層は、一つの前記導電層につき、該導電層における引き出し方向と直交する方向の両側の側方に一対配置されるようにして、複数の該導電層につき設けられているようにしてもよい。
本発明によれば、導電層の有無による段差を緩和しつつも、脱バイガス排気部を介して脱バイガスの円滑な排気を促進することができ、クラックやデラミネーションをより確実に防止することができる。
また、段差吸収層が導電層における引き出し方向と直交する方向の側方に設けられているので、導電層が全く存在せず最も段差が顕著に現れる部分において段差吸収効果を発揮することができる。それと共に、導電層における引き出し部の逆側には段差吸収層を設けずに脱バイガス排気部を設けているので、全内部電極層の半分が部分的に存在するため直交方向の側部より段差が顕著に現れない部分を利用して、脱バイガスの排出を促進することができる。
また、複数の単位層を用意する工程と、それら複数の単位層を積層してシート積層体を得る工程と、シート積層体を一チップ領域毎に裁断して積層チップ体を得る工程と、積層チップ体に対し脱バインダ処理を行う工程とを備える場合には、上記のように段差吸収層及び脱バイガス排気部を形成するに際して、積層セラミックコンデンサの既存のプロセスにのせて実施することができる。
また、段差吸収層が複数の単位層に亙って同一パターンによって形成される場合には、単一の印刷パターンを用いて段差吸収層と脱バイガス排気部との双方を有する態様を簡単且つ大量に製造できる。
なお、本発明の他の特徴及びそれによる作用効果は、添付図面を参照し、実施の形態によって更に詳しく説明する。
以下、本発明を積層セラミックコンデンサの製造方法に適用した場合の実施の形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図中、同一符号は同一又は対応部分を示すものとする。
図1は、本発明の実施の形態1に係る積層セラミックコンデンサの一例を示す断面図であって、図1の(a)は内部電極層の引き出し方向に延長する縦断面を示し、図1の(b)は(a)のI−I線による断面であって内部電極層の引き出し方向と直交する方向に延長する縦断面を示す。
積層セラミックコンデンサ1は、誘電体基体3の内部に、複数の内部電極層(導電層)5、7が埋設されている。隣り合う2つの内部電極層5、7は誘電体からなる層を介して向き合っている。内部電極層5、7の層数は、要求される静電容量に応じて決定される。
図1の(b)に示されるように、内部電極層5、7における引き出し方向と直交する方向の両側の側方には、誘電体からなる段差吸収層6、8が設けられている。段差吸収層6、8は、一層の内部電極層につき一対の割合で内部電極層の両側に配置されており、全ての内部電極層5、7につき設けられている。
誘電体基体3において引き出し方向と直交する方向の対向する側面には、外部電極部9、11が設けられている。内部電極層5は、このうちの外部電極部9に導通されており、内部電極層7は外部電極部11に導通されている。
次に、このような構成の積層セラミックコンデンサの製造方法について説明する。まず、図2に示されるように、可撓性のあるPETフィルム21の上面に、セラミック粉末、バインダ及び溶剤などを少なくとも含むセラミックペースト(誘電体ペースト)23を塗布し、いわゆるグリーンシート(グリーン層)25が得られる。セラミックペースト23の塗布は、ドクターブレード又は押出ヘッド等を用い、塗布後に乾燥処理を行う。また、グリーンシート25の厚みは1.0〜3.0μm(焼成後は1.0μm)に設定されており、所定角のシートとして構成されている。
続いて、グリーンシート25を乾燥させた後、シート上面に、内部電極層5、7を構成すべく導電体ペースト27を複数、分離して配置する。導電体ペースト27は、例えばスクリーン印刷法やグラビア印刷法によって形成することができる。導電体ペースト27の厚みは1.0〜3.0μmに設定されている。
導電体ペースト27が配置されると、導電体ペースト27の間には、導電体ペースト27自体の厚みに起因した段差部29が生じる。したがって、それら段差部29を段差吸収用セラミックペースト31によって埋める余白印刷を行う。段差吸収用セラミックペースト31の印刷は、スクリーン印刷法によって行われ、後述する印刷パターンを実現するスクリーン製版33を使用する。また、段差吸収用セラミックペースト31は、基本的には、前述したセラミックペースト23と同様な構成であり、セラミック粉末、バインダ及び溶剤などを少なくとも構成要素として含む。
このようにして、グリーンシート25上に内部電極層5、7及び段差吸収層6、8を形成した単位シート(単位層)35を、本実施の形態では400層以上積層し、シート積層体37を得る(後述の図3及び図4参照)。かかる積層は、内部電極層5、7の位置が交互にずれる態様で行われる。なお、シート積層体37の最上部と最下部には、誘電体のみからなるシートを積層して構成した保護層を設けることもできる。
次に、かかるシート積層体37をプレスした後、一チップ領域(単位層)に裁断して、積層チップ体39を得る。さらに、積層チップ体39から有機バインダ等をバーンアウトする脱バインダ処理を行った後、焼成を行って、最後に、積層チップ体の対向する側面に、外部電極部9、11を焼付し、積層セラミックコンデンサ1を得る。
次に、図3及び図4に基づいて、本実施の形態における導電体ペースト27及び段差吸収用セラミックペースト31の印刷パターンについて説明する。導電体ペースト27及び段差吸収用セラミックペースト31はそれぞれ、内部電極層5、7及び段差吸収層6、8を構成する。また、図3及び図4において、斜線部分は導電体ペースト27(内部電極層5、7)を示し、ドット部分は段差吸収用セラミックペースト31(段差吸収層6、8)を示すものとする。また、点線は、一チップ領域(一部品単位の大きさつまりコンデンサ1個分)の境界すなわち裁断工程の切断ラインを示すものとする。本実施の形態では、一チップ領域は平面視長方形に設定されている。また、説明の便宜上、多層積層されるうちの四層部分のみを抜き出して説明するものとする。以上は図5〜図8においても同様である。
第1単位シート35a、第2単位シート35b、第3単位シート35c、第4単位シート35dのそれぞれにおいて、導電体ペースト27は、二チップ領域毎にその二チップ領域に跨るように配置されていると共に、当該二チップ領域と隣り合う二チップ領域との境界で分断するように配置されている。
また、段差吸収用セラミックペースト31は、引き出し方向と直交する方向に隣り合う導電体ペースト27の間の部分を、引き出し方向のチップ領域の境界に沿って連続的に延びている。よって、導電体ペースト27が分断されているチップ領域の境界の部分においては、一対の段差吸収用セラミックペースト31に挟まれる部分がペースト無印刷部41として残存する。
このように、第1〜第4単位シート35a〜35dにおいては、同一形状の導電体ペースト27と段差吸収用セラミックペースト31とが長手方向に繰り返される印刷パターンが用いられる。すなわち、これらの第1〜第4単位シート35a〜35dを含むすべての単位シート35は、積層位置をずらすものの、印刷パターンとしては同一の態様を採用している。
また、相互の積層位置は、図3に示すとおりであり、導電体ペースト27の二チップ領域に跨る部分と分断している部分とは一層毎に交互に重なるように、且つ、導電体ペースト27とペースト無印刷部41とが一層毎に交互に重なるように、長手方向の位置をずらして積層される。
上記のような単位シート35の積層態様によって、積層位置を同じくする一チップ領域に着目すると次のような構成を備える。本実施の形態の一チップ領域においては、2種類の構成が存在している。図5に、2種類の一チップ領域43a、43bを示す。二層重ねて一チップ領域の構成は一巡し、三層目の一チップ領域には、一層目と同じ構成の一チップ領域が配置される。
図5には、第1〜第4単位シート35a〜35dにおいて積層位置を同じくする第1及び第2一チップ領域43a及び43bを示すが、全ての一チップ領域において、内部電極層5、7と、段差吸収層6、8と、脱バイガス排気部45とが形成されている。脱バイガス排気部45は、ペースト無印刷部41が残存されていることによって存在する部分である。
図5から分かるように、各一チップ領域43a及び43b内に関して、脱バイガス排気部45は、内部電極層5、7における引き出し部5a、7aと逆側の側方に設けられている。より詳細には、本実施の形態では、内部電極層5、7及び脱バイガス排気部45が平面視矩形に形成されており、脱バイガス排気部45は内部電極層5、7と同じ幅(引き出し方向と直交する方向の寸法)を有している。また、脱バイガス排気部45の一方側(内側)は内部電極層5、7に連通しており、他方側(外側)は一チップ領域の境界に開放されている。
また、一対の段差吸収層6、8は、内部電極層5、7における引き出し方向と直交する方向の両側の側方に設けられている。各段差吸収層6、8は、一チップ領域の側部に沿って引き出し方向に亙って連続して延びている。よって、2種類のチップ領域43a及び43bは、平面でみて、引き出し方向と直交する方向の軸線によって線対称構造を有する。
各一チップ領域43a及び43bがこのように構成された第1〜第4単位シート35a〜35dを積層することによって、積層セラミックコンデンサ1の全体において、一チップ領域内に関し、積層される一対の層においてみて、一方の層の段差吸収層6、8には常に他方の層の段差吸収層6、8が重なるようになっており、且つ、一方の層の脱バイガス排気部45には常に、他方の層の内部電極層5、7の引き出し部5a、7aが重なるように構成されている。
以上のように構成された本実施の形態に係る積層セラミックコンデンサ1においては、各チップ領域において内部電極層5、7の側方に脱バイガス排気部45を残存するように段差吸収層6、8を設けて積層されるため、内部電極層5、7の有無による段差を緩和しつつも、脱バイガス排気部45を介して脱バイガスの円滑な排気を促進することができ、クラックやデラミネーションをより確実に防止することができる。特に、グリーンシート25及び内部電極層5、7の合計厚みが3μm以下であって、シート積層体37の厚みが400μm以上の薄層多層品に有効である。
また、段差吸収層6、8は、内部電極層5、7における引き出し方向と直交する方向の側方に設けられているので、積層チップ体39において内部電極層5、7が全く存在せず最も段差が顕著に現れる部分において段差吸収効果を発揮することができる。それと共に、内部電極層5、7における引き出し部の逆側には段差吸収層6、8を設けずに脱バイガス排気部45を設けている。これにより、積層チップ体39において全内部電極層の半分が部分的に存在するため直交方向の側部より段差が顕著に現れない部分を利用して、脱バイガスの排出を促進することができる。
また、複数の単位シート35に亙って、段差吸収層6、8や脱バイガス排気部45が同一パターンに形成されるため、単一の印刷パターンを用いて段差吸収層6、8と脱バイガス排気部45との双方を有する態様を簡単且つ大量に製造できる。
また、脱バイガス排気部45と段差吸収層6、8との双方は、積層後の裁断処理によって形成されていく。よって、積層セラミックコンデンサの既存のプロセスにのせて実施することができる。
次に、図6〜図8に基づいて、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態は、導電体ペースト及び段差吸収用セラミックペーストの印刷パターンが上記実施の形態1と異なり、他の構成や製造過程は実施の形態1と同様であるものとする。図6〜図8は図3〜図5と同態様・同意味で図示されており、四層部分のみの構成を抜き出して説明する。
図6に示されるように、第1単位シート135a、第2単位シート135b、第3単位シート135c、第4単位シート135dのそれぞれにおいて、段差吸収用セラミックペースト131は、次のような態様で配置される。すなわち、導電体ペースト27が境界に跨る二チップ領域における一方のチップ領域においては、段差吸収用セラミックペースト131は、導電体ペースト27における直交方向の一方の側方に設けられ、当該チップ領域を引き出し方向に亙って連続的に延びている。また、他方のチップ領域においては、段差吸収用セラミックペースト131は、導電体ペースト27における直交方向の他方の側方に設けられ、当該チップ領域を引き出し方向に亙って連続的に延びている。
そして、このような段差吸収用セラミックペースト131の形成パターンは、各単位シートにおいて、引き出し方向の直交方向では同一態様で並んでおり、引き出し方向では段差吸収用セラミックペースト131の形成位置が導電体ペースト27における当該直交方向の側方において交互に入れ替わる態様となっている。
そして、導電体ペースト27が分断されているチップ領域の境界部分を含め、導電体ペースト27及び段差吸収用セラミックペースト131のいずれも塗布されていない部分が、ペースト無印刷部141として残存する。また、すべての単位シート135は、積層位置をずらすものの、印刷パターンとしては同一の態様を採用している。
相互の積層位置は、図6及び図7に示すとおりであり、導電体ペースト27の二チップ領域に跨る部分と分断している部分とが一層毎に交互に重なるように、且つ、ペースト無印刷部141が常に段差吸収用セラミックペースト131と一層毎に交互に重なるように、長手方向(引き出し方向)の位置をずらして積層される。
積層位置を同じくする一チップ領域に着目すると、二層重ねて一チップ領域の構成は一巡し、三層目の一チップ領域には、一層目と同じ構成の一チップ領域が配置される。全ての一チップ領域143a及び143bにおいて、内部電極層5、7と、段差吸収層6、8と、脱バイガス排気部145とが形成されている。脱バイガス排気部145は、ペースト無印刷部141が残存されていることによって存在する部分である。
図8から分かるように、各一チップ領域143a及び143b内に関して、脱バイガス排気部145は、内部電極層5、7における引き出し部5a、7aと逆側の側方に設けられている。さらに、脱バイガス排気部145は、内部電極層5、7における引き出し方向と直交する方向の側方であって、段差吸収層6、8が設けられている側と逆側の側方において、引き出し方向に連続して延びている。すなわち、各脱バイガス排気部145は、平面でみてL字状に構成されている。また、脱バイガス排気部145の内側は内部電極層5、7に連通しており、外側は一チップ領域の境界に開放されている。
また、段差吸収層6、8は、内部電極層5、7における引き出し方向と直交する方向の一方の側方にのみ設けられている。各段差吸収層6、8は、一チップ領域の側部に沿って引き出し方向に亙って連続して延びている。このような構成によって、2種類のチップ領域143a及び143bは、平面でみて、矩形の中心を回転軸とした点対称構造を有する。
各一チップ領域143a及び143bがこのように構成された第1〜第4単位シート135a〜135dを積層することによって、積層セラミックコンデンサ1の全体において、一チップ領域内に関し、積層される一対の層においてみて、一方の層の段差吸収層6、8には常に他方の層の脱バイガス排気部145が重なるようになっており、且つ、一方の層の内部電極層5、7の引き出し部5a、7aにも常に他方の層の脱バイガス排気部145が重なるように構成されている。
以上のように構成された本実施の形態に係る積層セラミックコンデンサ1においては、各チップ領域において内部電極層5、7の側方に脱バイガス排気部145を残存するように段差吸収層6、8を設けて積層されるため、内部電極層5、7の有無による段差を緩和しつつも、脱バイガス排気部45を介して脱バイガスの円滑な排気を促進することができ、クラックやデラミネーションをより確実に防止することができる。特に、グリーンシート25及び内部電極層5、7の合計厚みが3μm以下であって、シート積層体37の厚みが400μm以上の薄層多層品に有効である。
また、段差吸収層6、8は、内部電極層5、7における引き出し方向と直交する方向の側方に設けられているので、積層チップ体39において内部電極層5、7が全く存在せず最も段差が顕著に現れる部分において段差吸収効果を発揮することができる。それと共に、内部電極層5、7における引き出し部の逆側には段差吸収層6、8を設けずに脱バイガス排気部45を設けている。これにより、積層チップ体39において全内部電極層の半分が部分的に存在するため直交方向の側部より段差が顕著に現れない部分を利用して、脱バイガスの排出を促進することができる。
また、単一の印刷パターンを用いて段差吸収層6、8と脱バイガス排気部145との双方を有する態様を簡単且つ大量に製造できる点や、積層セラミックコンデンサの既存のプロセスにのせて実施することができる点は、上述した実施の形態と同様である。
以上、好ましい実施の形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の改変態様を採り得ることは自明である。
まず、上記実施の形態では、積層セラミックコンデンサ1において内部電極層が設けられている全ての単位シートで、一チップ領域でみて引き出し方向に連続して延びる段差吸収層及び引き出し部と逆側に位置する脱バイガス排気部が設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも一つの一チップ領域でみて、上述した態様の段差吸収層及び脱バイガス排気部を設けていればよい。
また、単位層の構成に関しては、上記実施の形態のように二層で一巡するパターンを用いることには限定されない。また、積層に際して内部電極層(導電層)をずらしながら配置する態様としては、上記実施の形態のように単位シートを長手方向に直線的にシフトさせる態様には限定されず、180度回転させながら重ねていく態様であってもよい。
また、上記実施の形態では、シート積層体を得る積層工程後に積層チップ体への裁断工程を行うプロセスであったが、本発明はこの順序に限定されるものではない。よって、単位シートから一チップ領域分を取り出す裁断工程の後に、それを重ねる積層工程を行う態様も含まれる。
さらに、本発明に関する積層電子部品は、積層セラミックコンデンサに限定されるものではなく、例えば、インダクタ、LCフィルタ、アレイ部品に適用することも可能であり、よって、導電層もコンデンサにおける内部電極層に限定されるものではない。
本発明の実施の形態に係る積層セラミックコンデンサを示す断面図である。 積層セラミックコンデンサの製造方法を説明する図である。 本発明の一実施の形態における、導電層、段差吸収層及び脱バイガス排気部の配置パターンを示す図である。 シート積層体に関し図3のII−II線に沿う断面を示す図である。 図3の実施の形態に関し一チップ領域の構成パターンを示す図である。 本発明の別の実施の形態における、導電層、段差吸収層及び脱バイガス排気部の配置パターンを示す図である。 シート積層体に関し図6のIII−III線に沿う断面を示す図である。 図6の実施の形態に関し一チップ領域の構成パターンを示す図である。
符号の説明
1 積層セラミックコンデンサ(積層電子部品)
5、7 内部電極層(導電層)
6、8 段差吸収層
25 グリーンシート(グリーン層)
35、135 単位シート(単位層)
37 シート積層体
39 積層チップ体
43a〜43d 一チップ領域(単位層)
45、145 脱バイガス排気部
143a、143b 一チップ領域(単位層)

Claims (7)

  1. バインダを含む誘電体ペーストから構成したグリーン層上に導電層及び段差吸収層を形成した単位層を複数積層して積層電子部品を製造する方法において、
    少なくとも一つの前記単位層において、一チップ領域内に関して、前記導電層の引き出し部と逆側に脱バイガス排気部を確保すると共に、該導電層の側方であって引き出し方向と直交する方向の側方に、引き出し方向に亙って連続的に延長する段差吸収層を形成することを特徴とする積層電子部品の製造方法。
  2. 前記単位層として、前記誘電体ペーストから構成し複数チップ領域を有するグリーンシート上に前記導電層及び前記段差吸収層を設けたもの、を複数枚用意する工程と、
    それら複数の単位層を、前記導電層の位置が交互にずれる態様で積層し、シート積層体を得る工程と、
    前記シート積層体を、一チップ領域毎に裁断して積層チップ体を得る工程と、
    前記積層チップ体に対し脱バインダ処理を行う工程と
    を備えることを特徴とする請求項1に記載の積層電子部品の製造方法。
  3. 前記段差吸収層を、前記導電層における引き出し方向と直交する方向の両側の側方に設けることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層電子部品の製造方法。
  4. 複数の前記単位層に亙って、前記段差吸収層を同一パターンによって形成することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の積層電子部品の製造方法。
  5. バインダを含む誘電体ペーストから構成された誘電体基体と、
    積層方向に所定の間隔をあけて前記誘電体基体内に埋設された複数の導電層と、
    少なくとも一つの前記導電層の側方に設けられた脱バイガス排気部及び段差吸収層とを備え、
    前記脱バイガス排気部は、一つの前記導電層につき、該導電層における引き出し部と逆側の側方に配置されており、
    前記段差吸収層は、一つの前記導電層につき、該導電層における引き出し方向と直交する方向の少なくとも一方の側方に配置されている
    ことを特徴とする積層電子部品。
  6. 前記段差吸収層は、一つの前記導電層につき、該導電層における引き出し方向と直交する方向の一方のみの側方に配置されるようにして、複数の該導電層につき設けられており、
    上下に隣り合う前記導電層に関する前記段差吸収層は、該導電層を挟んで相互に逆側となるように配置されている
    ことを特徴とする請求項5に記載の積層電子部品。
  7. 前記段差吸収層は、一つの前記導電層につき、該導電層における引き出し方向と直交する方向の両側の側方に一対配置されるようにして、複数の該導電層につき設けられていることを特徴とする請求項5に記載の積層電子部品。


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