明 細 書
スピネル型フエリ磁性粉及び磁気記録用媒体 . ,技術分野
本発明は、 金属酸化物磁性粉及び当該磁性粉を含有する磁気記録用媒体に かかり、 特に、 Co、 N i及びその他の 2価の金属を含有するスピネル型フ エリ磁性粉及び当該磁性粉を含有する磁気記録用媒体に関する。 背景技術
従来から、 データファイル用テープの記録媒体に使用される磁性材料とし て、 鉄を含む複合酸化物であるスピネル型フェライ卜に関する研究が行われ ている。 そして、 スピネル型フェライトとして、 種々の組成 (M, F e) 30 4 (M=F e (Π) , Co, N i, Mn, A 1 , C u, Z nなど) が考えられ るが、 その一例として、 C oフェライトが挙げられる。 この Coフェライト は、 結晶磁気異方性定数の値が大きいために、 より微細な微粒子になっても 超常磁性粉になりにくいので良好な磁気特性を保持できることから、 高密度 磁気記録材料としての応用が期待されている。
これまで、 上記 C oフェライトとしては、 スピン ·スプレー,フェライト めっき法を用いて、 薄膜として作製される例が知られている。 また、 さらな る磁性材料の磁気特性の向上を図るべく、 上記方法により Co— N iフェラ イト薄膜の作製に関する研究が知られている (非特許文献 1参照) 。
そして、 従来から行われてきた C o -N i系スピネルフェライトもフェリ 磁性体であるが、 バルク材、 あるいは、 薄膜のものであり、 その保磁力は最 高でも 239 [k A/m] (3000 [O e] ) に満たず、 この磁性材料を 用いた記録媒体のさらなる高記録密度化を図ることが困難である。 すなわち
、 上記スピネルフェライトは、 記録媒体としてのテープに使用されるが、 そ の保磁力の向上を図ることができないため、 これまで以上に記録媒体の性能 の向上を図ることができないという問題が生じていた。
一方、 記録媒体に塗布される磁性材料の微粒子化の検討も図られ、 マグネ トプラムバイト型フェライト (M型フェライ卜) として、 例えば B aフェラ イトの研究も盛んに行われているが、 平均粒子径が 30 [nm] 〜40 [n m] の磁性粉末を作製することができるものの、 その保磁力は上記同様に最 高でも 239 [kAZm] (3000 [O e ] ) に満たず、 依然として保磁 力は低いものである。
すなわち、 従来における磁性材料では、 これまで以上の保磁力の向上を図 ることができず、 さらなる記録媒体の高記録密度化を図ることが困難である という問題が生じていた。
そして、 上記のような問題から、 現在では、 従来は薄膜やバルク材であつ た Co— N i系スピネル型フェライ卜の微粒子化に関する研究が行われてい る。 その一例が、 以下に示す非特許文献 2に示されている。 この非特許文献 2では、 従来の C o系スピネルフェライ卜微粒子の磁気特性、 特に保磁力の 向上を図るべく、 C oの一部を N iで置換して C oと N iを共存させること により、 保磁力 He Jの高い磁性材料を提供している。 特に、 F eZ (Co + N i ) の値を、 ある範囲の値にすることにより、 比較的保磁力の高い磁性 材料を得ることができる。
非特許文献 1
張、 他 2名, 「C oフェライ卜薄膜における N iの添加効果」 , 粉末及び 粉末治金, 平成 1 2年 2月 25日, 第 47巻, 第 2号, p. 17 1 - 1 74 非特許文献 2
H. Yamamoto, Y. Nissato, "Magnetic Properties of Co - Ni Spinel Ferrite
Fine Part ic les Wi th High Coerc ivi ty Prepared by the Chemical
Coprec ipi tat ion Me thod, " IEEE Transac t ion on Magne t ics, vo l. 38, No. 5, PP3488-3492, SEPTEMBER 2002
しかしながら、 上述した C o—N i系スピネル型フェライトでは、 粒子径 の微細化及び均一化が図れず、 このため当該粒子における保磁力も不均一と なってしまう。 また、 磁性粉中に多くの割合で超常磁性粉が存在するため、 周囲の磁界の強さに応じて磁化状態が変動し、 磁化を安定に保つことができ ないという問題が生じる。
このため、 上記従来例における磁性粉をデ一タストレージ用記憶媒体、 特 に磁気テープに使用すると、 巻回されて積層状態にある箇所では、 記録デー 夕の転写が発生し易くなるという問題が生じる。 すなわち、 まず保磁力が均 一でないと、 保磁力の弱い箇所では記録データを安定して保持できず、 重な り合う他の磁気テープに磁気転写が生じうる。 また、 超常磁性が存在する箇 所では、 重なり合う磁気テープの磁化状態に応じて、 当該超常磁性箇所では 磁化が揺らぎ、 安定した磁化状態を保持することができない。 このように、 従来例における磁性粉を磁気記録用媒体に使用すると、 情報の記録性能の低 下という問題が生じる。
一方で、 安定した磁化状態を実現するために、 生成した磁性粉中から超常 磁性体を取り除くことも考えられるが、 かかる作業の手間が増大し、 これに より製造コストが増大する、 という問題も生じる。
さらには、 飽和磁化や残留磁化の値が必ずしも高くはなく、 データストレ —ジ用記憶媒体に使用する上で、 依然として磁気特性が不十分なものであつ た。
本発明は、 上記従来例の有する不都合を改善し、 特に、 高保磁力を維持し つつ、 超常磁性粉の含有率の低い、 磁気記録用媒体に好適な磁性材料を提供
することをその目的とする。 発明の開示
上記課題を解決するために、 本発明にかかるスピネル型フェリ磁性粉は、 仕込み時の組成式が (C οθ) 0. 5_x (N i O) o. 5_y (MO) x + y · n/2 (F e 203) (Mは、 (:0及び 1を除く、 2価の金属) で表され、 n = F eZ (Co+N〖 +Zn) (モル比) の値が、 スピネル型フェライトの化学 量論量 (n=2) より大きく化学量論量の 1. 5倍未満である 2. 0<n< 3. 0であり、 上記 X, yの値が、 0≤x<0. 5、 0≤y<0. 5、 0< x + y<0. 5、 を満たすスピネル型フェリ磁性粉である。 そして、 さらに 、 当該スピネル型フェリ磁性粉に含有される超常磁性粉が 5質量%以下であ る。 このとき、 2価の金属である上記 Mは、 Z n、 Mnが好ましい。
そして、 上記 nの値が、 2. 2<n<2. 8であり、 上記 x, yの値が、 0≤x<0. 2、 0≤y<0. 2、 0. 0 l<x + y<0. 2、 を満たし、 かつ、 当該スピネル型フェリ磁性粉に含有される超常磁性粉が 2質量%以下 であると望ましい。 このとき、 生成された磁性粉の磁気特性は、 保磁力が 2 39〜637 [kA/m] 、 飽和磁化が 50. 3 X 10— 6〜88. 0 X 10— 6 [Wb - m/k g] 、 であることが特に好ましい。
また、 上述したスピネル型フェリ磁性粉は、 鉄、 コバルト、 ニッケル、 及 び Mの水可溶性金属塩をそれぞれ含む各水溶液を、 X, y, nの条件を満た すように調合して混合水溶液とする工程と、 当該混合水溶液にアル力リ水溶 液を加え、 pH値を、 12. 0≤pH≤ 14. 0に調整して共沈物含有液を 得る工程と、 当該共沈物含有液を、 80° (:〜 120°Cで加熱処理した後、 ろ 過、 洗浄して乾燥することにより粉末を生成する工程と、 から成る製造工程 によって製造されたものであると望ましい。 このとき、 上記共沈物含有液を
得る工程が、 pH値を 13. 0く pHく 13. 7に調整して当該共沈物含有 液を得る工程であるとなお望ましい。
上記のようにして生成されたスピネル型フェリ磁性粉は、 粒径が均一かつ 微細な磁性粉であり、 さらに、 高保磁力を有していて、 磁気特性の優れた磁 性材料である。 そして、 超常磁性粉の含有率がほぼ零に等しいため、 記録媒 体に使用したときに安定した記録保持を実現できる。 特に、 巻回された状態 で使用される磁気テープとして使用したとしても、 磁気転写が生じることな く、 記録媒体に用いることに良好な磁性材料である。 図面の簡単な説明 '
第 1図は、 本発明におけるスピネル型フェリ磁性粉の生成方法を示すフロ 一チヤ一卜である。
第 2図は、 実施例 1乃至 3における Co— N i—Zn系スピネル型フェリ 磁性粉の生成条件の一覧を示す図である。
第 3図は、 第 2図に示した磁性粉の磁気特性の一覧を示す図である。
第 4図は、 実施例 1における生成磁性粉の X線回折パターンを示した図で ある。
第 5図は、 実施例 1における生成磁性粉の電子顕微鏡 TEM写真の図であ る。
第 6図は、 実施例 2における生成磁性粉の磁気特性を示す図であり、 具体 的には、 組成式 (CoO) 0. 5 (N i O) o. 45 (Z ηθ) 0. 。5 · n/2 (F e 203) で、 モル比 n = F e/ (C o+N i +Zn) の値を 2. 0≤n≤ 3 . 0に変化させて生成した磁性粉の飽和磁化、 残留磁化、 保磁力を示す図で ある。
第 7図は、 実施例 4で作製した磁気シ一卜のトルク曲線を示す図である。
第 8図は、 実施例 4で作製した磁気シートの外部磁界に対する回転ヒステ リシス損失の変化を示す図である。
第 9図は、 実施例 4で作製した磁気シート (Co— N i— Zn系スピネル フェライト) と、 従来の C o— N i系スピネルフェライトとのヒステリシス ループを示す図である。
第 10図は、 実施例 7における C o _N i—Mn系スピネル型フェリ磁性 粉の生成条件及び磁気特性の一覧を示す図である。
第 1 1図は、 実施例 7における C o— N i一 Mn系スピネル型フェリ磁性 粉の生成条件及び磁気特性の一覧を示す図である。
第 12図は、 実施例 7における C o— N i— Mn系スピネル型フェリ磁性 粉の生成条件及び磁気特性の一覧を示す図である。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明であるスピネル型フェリ磁性粉について、 第 1図乃至第 12 図を参照して説明する。 本発明は、 仕込み時の組成式が (CoO) 0. 5_x ( N i O) o. 5_y (MO) x + y · nZ2 (F e 203) (Mは、 C o及び N iを 除く、 2価の金属) で表されるスピネル型フェリ磁性粉であって、 特に、 2 価の金属である Mが Z nである場合を例示して説明する。 なお、 Mが 2価の 他の金属である (例えば、 Mn, Mgなど) である場合も、 以下の説明と同 様の磁気特性を有することを実験により確認している。 特に、 Mnの場合は 実施例 7にて開示している。
ここで、 以下の総ての実施例 (Mが Zn, Mn, Mgなどの場合) にて共 通する事項について、 Mが Z nである場合を例示して説明する。 まず、 第 1 図を参照して、 本発明である C o— N i一 Z n系スピネル型フェリ磁性粉の 生成方法を説明する。 第 1図は、 生成方法を示すフローチャートである。
生成するスピネル型フェリ磁性粉は、 上述したように、 仕込み時の組成式 力 s (CoO) 0. 5_x (N i O) o. 5_y (ZnO) x + y - n/2 (F e 203) であって、 n = F e/ (Co+N i +Zn) (モル比) の値が、 2. 0<n <3. 0である。 これは、 スピネル型フェライトの化学量論量 (n = 2) よ り大きく化学量論量の 1. 5倍未満であることを示している。 また、 上記 X , yの値が、 0≤x<0. 5、 0≤y< 0. 5、 0<x + y<0. 5、 を満 たす組成である。 換言すると、 従来例における C o— N〖系スピネルフェラ イトの組成のうち、 Co (CoO) 又は N i (N i O) の一部、 あるいは、 Co (CoO) と N i (N i O) とを合わせた一部を 2価の金属である Z n (Z nO) で置換したものである。 かかる組成にすることにより、 超常磁性 の含有が 5質量%以下というようにほぼ無くなり、 粒径が微細で均一であり かつ、 高保磁力である、 といった磁気特性の優れた磁性材料を得ることがで きる。 具体的な生成方法を以下に説明する。
まず、 原料である水可溶性金属塩を純水に溶解する。 具体的に、 原料金属 塩としては、 F e C 13 · 6 H20 (塩化二鉄六水塩 (l) ) 、 CoC l 2 ' 6 H20 (塩化コバルト六水塩 (2) ) 、 N i C 12 · 6 H20 (塩化ニッケル六 水塩 (3) ) 、 ZnC 12 (塩化亜鉛 (4) ) の試薬特級を用いる。 また、 共 沈時にアルカリ水溶液を用いるが、 NaOH (水酸化ナトリウム (5) ) の 試薬特級を用いる。 なお、 各原料あるいはアルカリ水溶液は、 上記のものに 限定されるものではない。
そして、 上記鉄、 コバルト、 ニッケル、 亜鉛を含む各水溶液を調合して、 混合水溶液とする (ステップ S 1) 。 また、 F eと (Co+N i +Z n) と のモル比である n = F e/ (C o +N i +Z n) の値を、 2. 0<n<3. 0になるよう調整して、 混合する。
ここで、 以下に示す実施例 1乃至 4では、 上記組成式のうち、 Xの値を X
=0に固定して、 N i Oのみを Ζ ηθに置換することとしているため、 その 置換量は 「y」 にて表せる。 そして、 yの値を、 0<y<0. 5に設定する 。 また、 実施例 5では、 yの値を y=0に固定し、 ( 00のー部のみを2]1 〇に置換した例を示す。 さらに、 実施例 6にて説明するように、 両者の一部 を ZnOに置換しても、 同様の効果を得ることができる。 上記 Mが Mnや M gなどの場合も同様である。
なお、 nの値を、 2. 0<n<3. 0に設定している理由は、 以下の通り である。 まず、 n>2. 0の組成は 1相から成るフェリ磁性粒子であるが、 n>3. 0の組成では F e分が大過剰になり酸化鉄が混在してしまう。 また 、 n=2. 0の組成は 2相から成る磁性粒子となる。 さらに、 n<2. 0の ものは、 F eに対する C oと N iの総和で 2価金属イオンが過剰であり異相 が混在する。 そして、 2相以上の組成物が混在すると磁性材料としての磁気 特性が劣化するため、 2. 0<n<3. 0に設定することで、 組成が単相か ら成る粒子を生成でき、 磁気特性の高い高品質のものとなる。 なお、 好まし くは 2. 2く n<2. 8を満たすよう、 nの値を設定するとよい。 続いて (ステップ S 1に続いて) 、 混合水溶液をよく攪拌しながら、 当該 混合水溶液にアル力リ水溶液 5を加え、 pH値を 1 2. 0≤pH≤ 14. 0 に調整して沈殿物を共沈させ、 共沈物含有液を得る (ステップ S 2) 。 この とき、 特に、 pH値を 1 3. 0<pHく 13. 7に設定して共沈を行うとよ い。
続いて、 沈殿物の生じた混合水溶液 (沈殿スラリー) を、 100°Cで 2時 間加熱して煮沸し (ステップ S 3) 、 金属混合沈殿から縮重合反応により黒 色粒子を生成する。 そして、 この黒色粒子を 24時間毎に 5回水洗いして ( ステップ S 4) 、 2号ろ紙でろ過して回収する (ステップ S 5) 。
その後、 ろ過物を恒温槽を用いて 80°Cで 12時間乾燥し (ステップ S 6 ) 、 乾燥物を乳鉢で粉砕して黒色粉末である C o— N i— Z n系スピネルフ ェライト微粒子を得る。
なお、 上記ステップ S 3における加熱処理は、 100°Cにて加熱すること に限定されず、 80°Cから 120°Cにて加熱することが好ましい。 また、 ろ 過や洗浄、 乾燥などの処理は、 上記条件で行うことに限定されない。
そして、 得られたフェライト粉末の磁気特性を測定すべく、 ドクターブレ ―ドを用いて厚さ 1 5 mの P ETフィルム上に均一に塗布した直後に、 0 . 8 MAZmの磁界中で配向させて乾燥し、 磁気シートを作製する。 なお、 試料の磁気特性は振動試料磁力計 (VSM) で測定し、 粉末の結晶構造は X 線回折装置 (F eKa使用) から得られた回折図形により検討し、 粉末の粒 度は透過型電子顕微鏡 (TEM) によって観察する。 磁気シート試料の磁気 異方性定数については、 トルク磁力計を用いて測定し、 されに、 回転ヒステ リシス損失 (Wr/Ms) について検討する。
以下の各実施例では、 上述した組成にて、 ∑ 110の置換量 + 、 モル比 n、 共沈時の pH値、 をそれぞれ変えてスピネル型フェリ磁性粉を生成し、 その磁気特性について測定した結果を示す。 なお、 それぞれの生成条件を図 2に、 磁気特性の測定結果を、 図 3乃至図 9に示す。 また、 Mを Mnとした ときの磁気特性を図 10乃至図 12に示す。
(実施例 1 )
まず、 原料金属塩として、 塩化二鉄六水塩、 塩化コバルト六水塩、 塩化二 ッケル六水塩、 塩化亜鉛を用い、 これらそれぞれをガラスビーカ一中で純水 に溶解して、
(1 - 1) : 0. 25 [mo 1 / 1 ] の F e 3+水溶液を 200 [m l ] 、 0. l O mo l Z l] の Co 2+水溶液を 100 [m 1 ] 、 0. 10 [mo
1 / 1 ] の N i 2+水溶液を 100 [m 1 ] 、
(1 -2) : 0. 25 [mo l / 1 ] の F e3 +水溶液を 200 [m l] ,
0. 10 [mo l / 1 ] の Co2 +水溶液を 100 [m Γ] 、 0. 10 [mo
1 / 1 ] の N i 2 +水溶液を 90 [m l ] , 0. 10 [mo l / 1 ] の Z n2 + 水溶液を 10 [m 1 ] 、
(1— 3) : 0. 25 [mo l Z l ] の F e 3+水溶液を 200 [m 1 ] 、
0. 10 [mo 1 / 1 ] の C o2+水溶液を 100 [m 1 ] 、 0. 10 [mo
1 / 1 ] の N i 2+水溶液を 40 [ml ] 、 0. 10 [mo lZ l ] の Zn2 + 水溶液を 60 [m l ] ,
をそれぞれ調整した。 これら水溶液を用いて、 pHメ一夕と温度計を装備し た容積が 1リットルの耐熱性ビーカーに投入して、 (1一 1) 、 (1— 2)
、 (1 - 3) 共に、 n (-F e/ (C o +N i + Z n) ) =2. 25の混合 溶液 400 [m l ] を調合した。
その後、 攪拌混合しながら、 別に用意した濃度が 3 [mo 1 / 1] の苛性 ソーダ水溶液 200乃至 500 [m l ] を投入して、 金属塩混合水溶液から 中和反応により、 それぞれ 600乃至 900 [m l ] の沈殿スラリーを生成 した。 このとき、 pH= 1 3. 0で共沈を行った。
次に、 この沈殿スラリーを 100°Cの温度で 1 20分間加熱して、 金属混 合沈殿から縮重合反応により黒色粒子を生成した。 この粒子は、 デカンテ一 シヨン法で 24時間毎に 5回水洗いを行った後、 2号ろ紙でろ過して回収し た。 ろ過物は恒温槽を用いて 80°Cで 12時間乾燥し、 乾燥物を乳鉢で粉砕 して黒色粉末を得た。
得られた黒色粉末は、 組成式 (CoO) 0. 5 (N i O) o. 5_y (Z nO) y
• n/2 (F e 203) であって、
(1 - 1) : n = 2. 5、 y = 0
(1 -2) : n= 2. 5、 y = 0. 05
(1— 3) : n= 2. 5、 y=0. 3
である。
そして、 X線回折測定の結果、 それぞれスピネル結晶の結晶構造であった 。 なお、 図 4に、 上記 (1— 2) の条件にて生成した粒子の X線回折パター ンを示す。 また、 その粒子形態は透過型電子顕微鏡 (TEM) により観察し た結果、 ほぼ立方形状である平均粒子径が約 38 [nm] の単分散微粒子で あった。 その様子を、 図 5の生成粒子の電子顕微鏡 TEM写真の図に示す。 この写真からわかるように、 非常に微細で、 かつ、 均一な粒子を生成するこ とができる。
また、 それぞれの粒子について、 振動試料型磁力計 (VSM) を用いて磁 気測定を行った結果、 特に、 (1— 2) の条件 (n=2. 5、 y=0. 05 ) で良好な値を示し、 飽和磁化 a sが 62. 0 X 10— 6 [Wb - m/k g] 、 残留磁化 σ r力 S36. 6 X 10_6 [Wb · m/k g] 、 保磁力 He Jが 3 72 [k A/m] の単相粒子であるスピネル型フェリ磁性部粒子であった。 また、 同様にして、 Z ηθ置換量である yの値を、 0<y<0. 5に変化 させて粒子を生成し、 これら粒子の飽和磁化、 残留磁化、 保磁力といった磁 気特性を測定した。 その結果、 上述同様に、 粒子径が微細かつ均一であり、 磁気特性の高い磁性粉であることを確認した。
特に、 保磁力は、 通常 239〜637 [k AZm] (3000〜8000 [Oe] ) であり、 従来より開発されている B aフェライト微粒子に比べ、 1. 6倍以上の値を有する (従来技術にて説明したように、 B aフェライト の保磁力 He Jは、 最高でも 239 [k A/m] ) 。 また、 飽和磁化 σ sも 、 通常 50. 3 X 10- 6〜 88. 0 X 10—6 [Wb - m/k g] (40乃至 70 [emu/g] ) であり、 従来のものよりも高い。
このように、 高保磁力を有し、 その粒径が均一な微粒子であるため、 高品 質な磁気記録用媒体を生成することができる。 また、 後述する実施例 4にて 確認したように、 磁性粉中に超常磁性粉の含有がほぼ見られず、 超常磁性体 を取り除く作業が不要であり、 記録媒体として好適な磁性材料となる。 そして、 上記特性を有する本実施例におけるスピネル型フェリ磁性粉は、 特に、 磁気記録テープに用いることに好適である。 すなわち、 磁気記録テー プの巻回されて積層状態にある箇所では、 まず保磁力が均一でないと保磁力 の弱い箇所では磁気を安定して保持できず、 重なり合う磁気テープ間で磁気 転写が生じ、 また、 超常磁性が存在する箇所は、 重なり合う磁気テープの磁 化状態によって磁化状態が揺らぎ、 上記同様に磁気転写が生じるなど、 安定 した記録保持を行うことができないという問題が生じる。 従って、 本実施例 における磁性粉を含有した磁気記録用媒体、 特に、 磁気記録テープでは、 上 述したように超常磁性粉の含有がほぼ零であるなどの磁気特性を有している ことにより、 積層箇所にて磁気転写の発生を抑制でき、 安定して磁気情報を 記録保持することが可能である。 なお、 以下に説明する各実施例にて製造し た磁性粉も、 同様に、 磁気記録用媒体に用いることが好ましい。
また、 製造したスピネル型フェリ磁性分をバインダ一で固めてポンド磁石 を製造するとよい。 これにより、 例えば、 モータ一用のポンド磁石として使 用することが可能である。 さらには、 製造したスピネル型フェリ磁性粉と熱 可塑性樹脂とを混合して、 射出成型用プラスチック磁石 (プラマグ) 、 ある いは、 シート状プラスチック磁石 (プラマグ) を製造するとよい。 これによ り、 従来よりも高保磁力である各種磁石を製造することができる。 なお、 以 下に説明する各実施例にて製造した磁性粉にて、 上述同様に、 ポンド磁石等 を製造するとよい。
(実施例 2 )
次に、 実施例 2では、 モル比 nの値を変化させて、 磁性微粒子を生成した 。 まず、 原料金属塩として、 塩化二鉄六水塩、 塩化コバルト六水塩、 塩化二 ッケル六水塩、 塩化亜鉛を用い、 これらそれぞれをガラスビーカー中で純水 に溶解して、
(2— 1) : 0. 2 [mo l Z l ] の F e 3+水溶液を 200 [m l ] , 0 • 1 [mo 1 / 1 ] の C o 2 +水溶液を 100 [m l ] , 0. 1 [mo 1 / 1 ] の N i 2+水溶液を 90 [m l ] , 0. 1 [mo l / 1 ] の Z n 2+水溶液を 10 [m 1 ]
(2 2) : 0. 225 [mo l / 1] の F e 3+水溶液を 200 [m l] , 0. 1 [mo l / 1 ] の C o2+水溶液を 100 [m 1 ] 0. 1 [mo 1 / 1 ] の N i 2 +水溶液を 90 [m l ] , 0. 1 [m o 1 / 1 ] の Z n 2 +水溶 液を 10 [m 1 ]
(2-3) : 0. 25 [mo l / 1 ] の F e 3+水溶液を 200 [m l ] , 0. 1 [mo l / 1 ] の Co2 +水溶液を 100 [m l ] 0. 1 [mo 1 / 1] の N i 2+水溶液を 90 [m l ] , 0. 1 [mo l / 1 ] の Zn2+水溶液 を 10 [m 1 ]
(2— 4) : 0. 275 [mo l Z l ] の F e 3+水溶液を 200 [m l ] 0. 1 [mo 1 / 1 ] の Co2+水溶液を 100 [m 1 ] 0. 1 [mo 1 / 1 ] の N i 2 +水溶液を 90 [m l ] 0 · 1 [mo 1 / 1 ] の Z n2+水溶 液を 10 [m 1 ]
(2 -5) : 0. 3 [mo l Z l] の F e 3 +水溶液を 200 [m l ] , 0 . 1 [mo l / 1 ] の Co2 +水溶液を 100 [m l ] 0. 1 [mo 1 / 1 ] の N i 2+水溶液を 90 [m l ] 0. 1 [mo l / 1 ] の Zn2+水溶液を 10 [ml] ,
をそれぞれ調整した。 これら水溶液を用いて、 ρΗメ一夕と温度計を装備し
た容積が 1リットルの耐熱性ビーカーに投入して、 (2— 1) : n (=F e / (C o+N i +Z n) ) =2. 0、 (2 - 2) : n (=F e/ (C o+N i +Z n) ) = 2. 2 5、 (2— 3) : n (=F e/ (C o +N i +Z n) ) =2. 5、 (2 -4) : n (=F e/ (C o+N i +Z n) ) = 2. 7 5 、 (2 - 5) : n (=F e/ (Co +N i +Z n) ) = 3. 0、 の混合溶液 400 [m l ] を調合した。
その後、 攪拌混合しながら、 別に用意した濃度が 3 [mo 1 / 1 ] の苛性 ソーダ水溶液 2 00乃至 500 [m l ] を投入して、 金属塩混合水溶液から 中和反応により、 それぞれ 600乃至 900 [m l ] の沈殿スラリーを生成 した。 このとき、 pH= 1 3. 0で共沈を行った。
次に、 この沈殿スラリーを 1 00°Cの温度で 1 20分間加熱して、 金属混 合沈殿から縮重合反応により黒色粒子を生成した。 この粒子は、 デカンテ一 シヨン法で 24時間毎に 5回水洗いを行った後、 2号ろ紙でろ過して回収し た。 ろ過物は恒温槽を用いて 80°Cで 1 2時間乾燥し、 乾燥物を乳鉢で粉砕 して黒色粉末を得た。
得られた黒色粉末は、 組成式 (C οθ) 0. 5 (N i 0) 0. 5_y (Ζ ηθ) , • n/2 (F e 203) であって、
(2 - 1) : n = 2. 0、 y=0. 05
(2 - 2) : n = 2 2 5、 y= 0. 0 5
(2 - 3) : n = 2 5、 y = 0. 0 5
(2 -4) : n = 2 7 5、 y = 0. 0 5
(2 - 5) : n = 3 0、 y=0. 0 5
である。
そして、 X線回折測定の結果、 上記図 3に示すものと同様に、 それぞれス ピネル結晶の結晶構造であった。 また、 その粒子形態は透過型電子顕微鏡 (
TEM) により観察した結果、 上記図 4に示すものと同様に、 ほぼ立方形状 である単分散微粒子であった。
また、 それぞれの粒子について、 振動試料型磁力計 (VSM) を用いて磁 気測定を行った結果を図 6に示す。 すなわち、 本実施例では、 組成式 (C o O) 0. 5 (N i O) 0. 5— y (Z ηθ) y · nZ2 (F e 203) で、 共沈時の p H= 13. 0、 Z ηθ置換量である yの値を y = 0. 05に固定して、 モル 比 n = F e/ (C o +N i + Z n) の値を、 2. 0≤n≤3. 0に変化させ て微粒子を生成し、 これら粒子の飽和磁化、 残留磁化、 保磁力といった磁気 特性を測定した。
すると、 モル比 n = F e/" (Co+N i +Zn) の値が増加するにつれて 、 飽和磁化 σ s、 残留磁化 σ rは高い値を維持しつつ、 保磁力 He Jは増加 することがわかる。 そして、 特に、 (2— 3) の条件 (n = 2. 5、 y= 0 . 05) で良好な値を示し、 飽和磁化 が 62. 0 X 10—6 [Wb - / k g] 、 残留磁化 σ r力 36. 6 X 10— 6 [Wb · m/k g] 、 保磁力 He Jが 372 [kA/m] の単相粒子であるスピネル型フェリ磁性部粒子であ つた。
また、 生成された磁性粉中には、 超常磁性粉の含有量が 5質量%以下であ ることを確認した。 特に、 nの値が 2. 2<n<2. 8の場合には、 超常磁 性粉の含有量が 2質量%以下となった。 このように、 超常磁性粉の含有量が ほぼ零に等しいことで、 安定して磁化されうる磁性材料であり、 上述したよ うに、 磁気記録用媒体に好適である。
(実施例 3 )
次に、 実施例 3では、 共沈時の pH値を変化させて、 磁性粉を生成した。 まず、 原料金属塩として、 塩化二鉄六水塩、 塩化コバルト六水塩、 塩化ニッ
ケル六水塩、 塩化亜鉛を用い、 これらそれぞれをガラスビーカー中で純水に 溶解して、
以下に示す (3— 1) 、 (3 -2) , (3— 3) 共に、 0. 25 [mo l / 1 ] の F e 3+水溶液を 200 [m l ] , 0. 1 [mo 1 / 1 ] の C o 2+水 溶液を 100 [m 1 ] 、 0. 1 [mo 1 / 1 ] の N i 2+水溶液を 90 [m 1 ] 、 0. 1 [mo 1 / 1 ] の Z n2+水溶液を 10 [m l ] ,
をそれぞれ調整した。 これら水溶液を用いて、 pHメ一夕と温度計を装備し た容積が 1リットルの耐熱性ビーカーに投入して、 n (=F e/ (Co+N i +Zn) ) =2. 5、 の混合溶液 400 [m l ] を調合した。
その後、 攪拌混合しながら、 別に用意した濃度が 3 [mo 1 / 1] の苛性 ソ一ダ水溶液 200乃至 500 [m l ] を投入して、 金属塩混合水溶液から 中和反応により、 それぞれ 600乃至 900 [ml ] の沈殿スラリーを生成 した。 このとき、 以下に示すそれぞれ異なる pH値で共沈を行った。
(3 - 1 ) : pH= 12. 7
(3- 2) : ρΗ= 13. 0
(3- 3) : ρΗ= 13. 3
次に、 この沈殿スラリーを 100°Cの温度で 120分間加熱して、 金属混 合沈殿から縮重合反応により黒色粒子を生成した。 この粒子は、 デカンテ一 シヨン法で 24時間毎に 5回水洗いを行った後、 2号ろ紙でろ過して回収し た。 ろ過物は恒温槽を用いて 80°Cで 12時間乾燥し、 乾燥物を乳鉢で粉砕 して黒色粉末を得た。
得られた黒色粉末は、 組成式 (C οθ) 0. 5 (N i 0) 0. 5— y (Z ηθ) y - n/2 (F e 203) であって、 すべてが、 n = 2. 5、 y = 0. 05であ る。 異なるのは、 上述したように、 共沈時の pH値である。
そして、 X線回折測定の結果、 上記図 4に示すものと同様に、 それぞれス
ピネル結晶の結晶構造であった。 また、 その粒子形態は透過型電子顕微鏡 ( TEM) により観察した結果、 上記図 5に示すものと同様に、 ほぼ立方形状 である単分散微粒子であった。
また、 それぞれの粒子について、 振動試料型磁力計 (VSM) を用いて行 つた磁気測定結果の一部を以下に示すと、
(3 -2) :飽和磁化 a sが 62. 0 X 10 _6 [Wb · m/k g] 、 残留 磁化ひ r力 36. 6 X 10—6 [Wb · mZk g] 、 保磁力 He J力 372. 6 [k A/m] 、
(3— 3) :飽和磁化 a sが 62. 8 X 10 6 [Wb · mZk g] 、 残留 磁化 o rが 37. 0 X 10_6 [Wb · mZk g] 、 保磁力 He Jが 372.
9 [k A/m] 、
であり、 特に、 pH値が、 ρΗ= 13. 0、 ρΗ= 13. 3にて生成した微 粒子において、 良好な特性を示した。
(実施例 4)
次に、 良好な特性が得られた微粒子を用いて磁気シートの作製を行った。 磁気シートに用いた微粒子の組成は、 組成式 (CoO) 0. 5 (N i O) 0. 4 5 (ZnO) 。. 。5 · 1. 25 (F e203) であり (n = 2. 5、 y = 0. 05 ) 、 共沈時の pH値は、 pH= 13. 0である。 また、 磁気特性は、 飽和磁 ィ匕 a s力 62. 0 X 10_6 [Wb · mZk g] 、 残留磁化 σ rが 36. 6 X 10_6 [Wb - m/k g] 、 保磁力 He Jが 372. 6 [kA/m] 、 であ る。
続いて、 磁性塗料作製条件を以下に示す。
(条件 1) 磁粉と混合溶液の重量比 (固形分 (磁粉 +樹脂) 濃度を 25wt %とした場合の磁粉と混合溶液の重量比)
磁粉: 1
樹脂 (バインダー) と溶剤の混合溶液: 4
ガラスビーズ (直径約 0. 3 mm) : 8
(条件 2) 樹脂と溶剤の混合溶液の重量比
塩化ビニル系共重合樹脂: 1
へク口へキサン: 6. 2 1
トルエン : 6. 2 1
MEK: 2. 5 9
(条件 3) 分散装置: S p e X社製ミキサーミル (Mo d e l 8 0 0 0 - D)
(条件 4) 分散時間: 8時間
また、 磁性シートの作成方法を説明すると、 上記条件にて作成した磁性塗 料を、 ドクタ一ブレードを用いて厚さ 1 5 mの P ETフィルム上に均一に 塗布直後に、 0. 8MAZm ( l O kO e) の磁界中で配向させ、 乾燥して 磁性シートを作製した。
そして、 磁気特性の評価法は、 以下の通りである。
(評価法 1) 磁化曲線は、 上述した VSMを用いて測定した。
(評価法 2 ) 磁気異方性定数 K!及び K 2は、 T o r q u e ma g n e t o me t e rを用いて測定した T o r q u e曲線をフーリエ解析し、 下記の式 から決定した。
L = - (Kノ 4 +Kノ 6 4) s i n 2 Θ - (3 Kノ 8 +Κ2/1 6) s i n 4 Θ + (3 K2/64) s i n 6 0
ちなみに、 上記式については以下の文献を参考にする。
参考文献:近角聡伸, 他, 「強磁性体の物理 (下) 」 , 裳華房, 昭和 5 9年 , 1 2章, p. 1 3
(4— B 3) 磁気異方性磁界 H aは、 T o r a u e ma g n e t ome t
e rを用いて測定した。 ちなみに、 その測定方法については、 以下の文献を 参考にする。 .
参考文献: I. S. Jacobs and F. E.. Luborsky, J. Appl. Phys. , vol.28, pp467- 473, 1957、 D. M.Paige, S. R. Hoon, B.K. Tanner and KO' Grady, IEEE
Trans. Magen. , vol20, ppl852-1854, 1984.
以上のようにして測定した磁気異方性について、 図 7乃至図 9を参照して 説明する。 図 7は、 2. 1 5 [MA/m] の磁界中で測定した上記各スピネ ル微粒子のトルク曲線を示す。 図 8は、 回転ヒステリシス損失を示す。
図 7に示すように、 300 Kにおける 及び K2の値は、 7 X 104 J /cm3, K2 = - 16. 8 X 104 J / c m3であった。 また、 図 9 に示すように、 縦軸に回転ヒステリシス損失に相当する値である Wr/ J s を、 横軸に外部磁界 Hを取り、 回転ヒステリシス損失を評価した。 この結果 、 異方性磁界 Haは、 約 2. 8 [MA/m] が得られ、 本発明であるスピネ ル型フェリ磁性微粒子粉を用いて作製した磁気シートは、 高い磁気異方性を 有することがわかる。
また、 図 9には、 上記組成の微粒子のヒステリシスループを示す。 この図 において、 (1) は、 組成式 (C οθ) 0. 5 (N i O) o. 45 (Z ηθ) 0. 05 • 1. 25 (F e 203) であり、 pH= 1 3. 0で共沈を行ったものであり 、 (2) 【ま、 (C o 0) 0. 5 (N i O) 0. 5 · 1. 125 (F e 203) 、 pH = 13. 3のものである。 すなわち、 (1) は、 本発明である Co— N i— Z n系スピネル型フェリ磁性微粒子のものであり、 (2) は、 従来の Co— N i系スピネル型フェリ磁性微粒子のものである。 この図を見ると、 (2) は、 強磁界になるにつれて、 飽和磁化の値が飽和せずに上昇しており、 これ は超常磁性体が磁化しているためであると考えられる。 従って、 従来の CO — N i系のスピネルフェライト (2) では、 超常磁性体が含まれていること
がわかる。 これに対して、 本実施例にて生成した (1) の Co— N i _Zn 系のスピネルフェライトは、 強磁界において磁化がほぼ飽和しているため、 超常磁性体のほとんどない微粒子であることがわかる。
以上をまとめると、 本実施形態においては、 組成式 (CoO) x (N i O) y · 2/n (F e 203) で表される C o _N i系スピネル系フェリ磁性微粒子 の N i〇の一部を Z ηθで置換して、 上述した組成の C o—N i - Z n系ス ピネル系フェリ磁性粉を生成することにより、 保磁力は B aフェライ卜の約 1. 6倍もあり、 また、 飽和磁化に関しては、 従来の C o— N iフェライト 磁性粉の飽和磁化よりも 21 %増加し、 磁気特性の優れた磁性材料と言える 。 さらに、 超常磁性粉の含有量がほぼ零であり、 上述したように当該磁性粉 を含有する磁気記録用媒体は、 高品質なものとなる。
(実施例 5 )
次に、 本発明における実施例 5について説明する。 本実施例におけるスピ ネル型フェリ磁性微粒子は、 組成式 (CoO) 0. 5_x (N i O) o. 5 (ZnO ) x · n/2 (F e 203) において、 F eと (Co+N i +Zn) とのモル比 である n = F eZ (Co+N i +Zn) の値が、 2. 0<n<3. 0であり 、 0<x<0. 5である。
すなわち、 上述した実施例 1では、 従来の C o—N i系スピネル型フェリ 磁性粉の N i〇の一部を Z ηθに置換したスピネル型フェリ磁性微粒子につ いて説明したが、 本実施形態では、 yの値を 「0」 に固定し、 CoOの一部 を Z nOに置換する、 というものである。
そして、 その生成方法は、 鉄、 コバルト、 ニッケル、 亜鉛の水可溶性金属 塩をそれぞれ含む各水溶液を、 組成式 (CoO) 0. 5_x (N i O) o. 5 (Z n 〇) x · n / 2 (F e 203) において、 xの値を、 0<x<0. 5に、 F eと (C o+N i +Z n) とのモル比である n = F e / (Co+N i +Z n) の
値を、 2. 0<n<3. 0になるよう、 調合して混合水溶液とする工程と、 混合水溶液にアル力リ水溶液を加え、 p H値を調整して沈殿物を共沈させて 共沈物含有液を得る工程と、 共沈物含有物を、 熱処理、 ろ過、 洗浄、 乾燥す ることにより粉末を生成する工程と、 カゝら成り、 共沈を行う工程にて、 pH 値を 12. 0≤pH≤ 14. 0に設定して共沈を行う。 なお、 上記工程の詳 細は、 上述した実施例 1と同様であるので、 その詳細については省略する。 このような組成であっても、 上記同様に、 粒子径が微細且つ均一であり、 高保磁力を有し、 さらに超常磁性体のない、 良好な磁気特性を有するスピネ ル型フェリ磁性微粒子を得ることができる。
(実施例 6)
次に、 本発明の実施例 6について説明する。 本実施例におけるスピネル型 フェリ磁性微粒子は、 組成式 (CoO) 0. 5_x (N i O) o. 5— y (Z nO) x + y · n/2 (F e 203) において、 F eと (Co+N i +Zn) とのモル比 である n F eZ (C o +N i + Z n) の値が、 2. 0<n< 3. 0であり 0≤x<0. 5 0≤y<0. 5 0<x + y<0. 5、 である。
すなわち、 上記実施例では、 従来の C o— N i系スピネル型フェリ磁性粉 の N i 0、 あるいは、 C οθのいずれか一方の一部を Z ηθに置換したスピ ネル型フェリ磁性粉について説明したが、 本実施例では、 00及び1^ 10 の両方の一部を Z ηθに置換する、 というものである。
そして、 その生成方法は、 鉄、 コバルト、 ニッケル、 亜鉛の水可溶性金属 塩をそれぞれ含む各水溶液を、 組成式 (CoO) 0. 5_x (N i O) 0. 5_y ( ZnO) x + y - n/2 (F e 203) において、 n = F e/ (Co+N i +Z n) (モル比) の値が、 2. 0<nく 3. 0に、 また、 上記 x, yの値が、 0≤x<0. 5 0≤y<0. 5 0<x + y<0. 5、 を満たすよう、 調 合して混合水溶液とする工程と、 混合水溶液にアルカリ水溶液を加え、 pH
値を調整して沈殿物を共沈させ共沈物含有液を得る工程と、 共沈物含有液を 、 加熱、 ろ過、 洗浄、 乾燥することにより粉末を生成する工程と、 から成り 、 共沈を行う工程にて、 pH値を 12. 0≤pH≤ 14. 0に設定して共沈 を行う。 なお、 上記工程の詳細は、 上述した実施例 1と同様であるので、 そ の詳細については省略する。
このような組成であっても、 上記同様に、 粒子径が微細且つ均一であり、 高保磁力を有し、 さらに超常磁性体のない、 良好な磁気特性を有するスピネ ル型フェリ磁性微粒子を得ることができる。
(実施例 7 )
次に、 本発明の実施例 7について説明する。 本実施例におけるスピネル型 フェリ磁性粉は、 上述してきた実施例と異なり、 2価の金属である Mが Mn であり、 C o— N i— Mn系スピネル型フェリ磁性粉である。 すなわち、 従 来の C o— N i系スピネル型フェリ磁性粉の N i Oや C οθの一部を MnO に置換したスピネル型フェリ磁性粉である。
具体的な組成は、 組成式 (CoO) 0. 5_x (N i O) o. 5_y (MnO) x + 3 • n/2 (F e 203) において、 F eと (C o+N i +Mn) とのモル比で ある n = F e/ (Co+N i +Zn) の値が、 2. 0<n< 3. 0であり、 0≤x<0. 5、 0≤y<0. 5、 0<x + y<0. 5、 である。 そして、 その生成方法は、 上述した実施例の場合と同様である。
図 10乃至図 12に、 上記 X, y, nの値、 さらには、 共沈時の pHの値 を種々の値に設定して、 上記組成式の C o— N i一 Mn系スピネル型フェリ 磁性粉を生成した時の磁気特性を示す。 なお、 かかる実験データは、 x = 0 で固定した場合のものである。
これらの図に示すように、 本実施例における磁性粉は、 従来の Co— N i 系スピネル型フェリ磁性粉に比べて保磁力が非常に高い。 また、 上述した Z
nを含む場合と同様に、 超常磁性粉の含有率がほぼ零であることを確認した 。 従って、 磁気特性が優れ、 特に磁気記録用媒体に用いることに好適である
産業上の利用可能性
本発明によるスピネル型フェリ磁性粉は、 その粒子径が微細かつ均一であ り、 高い保磁力、 飽和磁化、 及び、 残留磁化を有し、 また、 超常磁性粉の含 有量がほぼ零に近いという特徴を有するなど、 非常に磁気特性の高い磁性材 料である。 従って、 磁気記録用媒体として利用することに好適であり、 記録 状態の安定化、 及び、 高記録密度化を図ることができる。