JP4647731B2 - 磁石粉末、焼結磁石、それらの製造方法、ボンディッド磁石および磁気記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フェライト磁石粉末、焼結磁石、それらの製造方法、ボンディッド磁石、さらには磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化物永久磁石材料には、マグネトプランバイト型(M型)の六方晶系のSrフェライトまたはBaフェライトが主に用いられており、これらの焼結磁石やボンディッド磁石等が製造されている。
【0003】
磁石特性のうち特に重要なものは、残留磁束密度(Br)および固有保磁力(HcJ)であるが、それらの温度特性も重要である。
【0004】
磁石材料のなかで、従来のM型SrフェライトまたはBaフェライトの飽和磁化(4πIs)の温度依存性は最も大きく、−0.19%/℃程度の値である。Brは4πIsに比例するから、この4πIsの温度係数は、Brまたは磁石の表面磁束密度の温度係数と同様である。このため、例えば自動車のエンジンルーム内で使用されるモータ等の場合、使用時の温度が100℃以上で、最高150℃程度にもなるが、このような高温時にトルクが大幅に低下するなどの問題がある。
【0005】
一方、M型Srフェライト、Baフェライト焼結磁石のHcJの温度依存性は+13Oe/℃程度で、温度係数は+0.3〜+0.5%/℃程度の比較的大きな値である。このため、低温側でHcJが大きく減少し、いわゆる「低温減磁」によって永久減磁し易くなる。この減磁を防ぐためには、室温におけるHcJを例えば5kOe程度の大きな値にする必要があるが、このとき、高いBrを同時に得ることは実質的に不可能であった。M型フェライト粉末のHcJの温度依存性は焼結磁石に比べると優れているが、それでも少なくとも+8Oe/℃程度で、温度係数は+0.15%/℃以上であり、温度特性をこれ以上改善することは困難であった。フェライト磁石は、耐環境性に優れ安価でもあることから、自動車の各部に用いられるモータなどに使用されることが多い。自動車は、寒冷あるいは酷暑の環境で使用されることがあり、モータにもこのような厳しい環境下での安定した動作が要求される。しかし、従来のフェライト磁石は、上述したように低温環境下での保磁力の劣化が著しく、永久減磁し易いという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、保磁力や残留磁束密度の温度特性が極めて優れ、高温域において、残留磁束密度の低下が少なく、また、低温域においても保磁力の低下が少ないフェライト焼結磁石や磁石粉末と、それらの製造方法とを提供することである。また、そのフェライトを用いてボンディッド磁石と、磁気記録媒体を提供することである。そして、好ましい態様においては、高い残留磁束密度と保磁力を得ることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(13)のいずれかの構成により達成される。
(1)M型フェライト相とCoスピネルフェライト相が共存し、
M型フェライト相と前記Coスピネルフェライト相の組成が、
Sr、Ba、CaおよびPbから選択される少なくとも1種の元素であって、Sr、CaまたはBaを必ず含むものをAとし、
希土類元素(Yを含む)およびBiから選択される少なくとも1種の元素をRとし、
2価の金属元素であるCoをMとしたとき、
A、R、FeおよびMから構成され、
それぞれの金属元素の総計の構成比率が、全金属元素量に対し、
A:1〜13原子%、
R:0.05〜10原子%、
Fe:80〜95原子%、
M:0.1〜5原子%であり、
前記Coスピネルフェライト相の存在割合が10〜30wt%である磁石粉末。
(2)少なくとも2つの異なるキュリー温度を有する上記(1)の磁石粉末。
(3)室温(25℃)〜+125℃の温度範囲での飽和磁化の変化の絶対値が、0.18%/℃以下である上記(1)又は(2)の磁石粉末。
(4)−50℃〜50℃の温度範囲での保磁力の温度係数の絶対値が0.25%/℃以下である上記(1)〜(3)のいずれかの磁石粉末。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかの磁石粉末を含むボンディッド磁石。
(6)上記(1)〜(4)のいずれかの磁石粉末を含む磁気記録媒体。
(7)R〔Rは希土類元素(Yを含む)およびBiから選択される少なくとも1種の元素を表す〕を含有するM型フェライト原料を、還元性雰囲気または酸素過少雰囲気で焼成して、上記(1)〜(4)のいずれかの磁石粉末を得る磁石粉末の製造方法。
【0008】
(8)M型フェライト相とCoスピネルフェライト相が共存し、
M型フェライト相と前記Coスピネルフェライト相の組成が、
Sr、Ba、CaおよびPbから選択される少なくとも1種の元素であって、Srおよび/またはCaを必ず含むものをAとし、
希土類元素(Yを含む)およびBiから選択される少なくとも1種の元素をRとし、
Co、Mg、Mn、Cu、Fe、NiおよびLi+Fe等の2価の金属元素または2価を示す金属元素の組合せをMとしたとき、
A、R、FeおよびMから構成され、
それぞれの金属元素の総計の構成比率が、全金属元素量に対し、
A:1〜13原子%、
R:0.05〜10原子%、
Fe:80〜95原子%、
M:0.1〜5原子%であり、
前記Coスピネルフェライト相の存在割合が10〜30wt%である焼結磁石。
(9)少なくとも2つの異なるキュリー温度を有する上記(8)の焼結磁石。
(10)室温(25℃)〜+125℃の温度範囲での飽和磁化の変化の絶対値が、0.18%/℃以下である上記(8)又は(9)の焼結磁石。
(11)−50℃〜50℃の温度範囲での保磁力温度係数の絶対値が0.25%/℃以下である上記(8)〜(10)のいずれかの焼結磁石。
(12)M型フェライト相のc軸方向と、立方晶のスピネルフェライト相の〈111〉方向とがほぼ一致している上記(8)〜(11)のいずれかの焼結磁石。
(13)R〔Rは希土類元素(Yを含む)およびBiから選択される少なくとも1種の元素を表す〕を含有するM型フェライト原料を、還元性雰囲気または酸素過少雰囲気で焼成して、上記(8)〜(12)のいずれかの焼結磁石を得る焼結磁石の製造方法。
【0009】
【作用】
通常、M型フェライトをN2中などの酸素過少ないし還元雰囲気下で焼成すると、M型フェライトは分解してW型フェライトが生成する。しかし、La等の希土類Rで置換したM型フェライトを酸素過少ないし、還元性雰囲気下で焼成すると、W型フェライトは生成せずに、M型フェライトとスピネルフェライトに分解することがわかった。
【0010】
また、LaCo置換系のSrCa系フェライトでは大気中焼成でもM型フェライトとスピネルフェライトの混合物が得られる場合がある。しかも、これらの二相型フェライトは、好ましくはスピネル相の〈111〉方向と、M型の〈00L〉(c軸)方向が一致している。
【0011】
六方晶M型フェライトの結晶構造は、S(スピネル)ブロックとRブロックが交互に積層した構造となっている。ここで、Sブロックはスピネルの〈111〉方向を、六方晶のC軸に一致させた構造である。La等の希土類元素Rで置換したM型フェライトを、例えば、還元性雰囲気中で焼成することにより、上記のような特徴的な構造が得られるのは、このSブロック部分がスピネルフェライト相として分解析出したためとも考えられる。
【0012】
この結果、HcJやBrの温度特性が優れたフェライト磁石を実現することができる。具体的には、HcJの温度特性をゼロにすることが可能にできる。一方、スピネルフェライトはもともと磁化(4πIs( Br))の温度変化が小さいため、本発明のフェライト磁石はBrの温度特性も良くなる。
【0013】
より具体的には、焼結磁石では、−50℃〜50℃でのHcJの温度係数△HcJ/HcJ/△Tの絶対値は、好ましい態様では、0.25%/℃以下、特に0.2%/℃以下、さらには、0.15%/℃以下にすることができる。また、室温(25℃)と+125℃の範囲のσsの温度特性Δσ/σ/ΔTの絶対値は、通常のM型Srフェライトの0.19%/℃に対し、0.18%/℃以下にすることができる。磁石粉末では、−50℃〜50℃でのHcJの変化△HcJ/△Tの絶対値は、好ましい態様では、5Oe/℃以下、特に3Oe/℃以下、さらには、2Oe/℃以下にすることができる。また、室温(25℃)と+125℃の範囲のσsの温度特性Δσ/σ/ΔTの絶対値は、通常のM型Srフェライトの0.19%/℃に対し、0.18%/℃以下にすることができる。
【0014】
この結果、従来はフェライト磁石の低温減磁(永久減磁)の危険性のあった低温環境でも使用される製品の信頼性を上げることが可能になる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明は、各種フェライト磁石であってよいが、特に顕著な効果が得られることから、以下の説明ではフェライト磁石粉末と焼結磁石の場合を例に挙げる。
【0016】
本発明が適用される磁石粉末および焼結磁石は、マグネトプランバイト型のM相の六方晶系のフェライト組成である。このようなフェライトとしては、
Sr、Ba、CaおよびPbから選択される少なくとも1種の元素であって、Sr,CaまたはBaを必ず含むものをAとし、
希土類元素(Yを含む)およびBiから選択される少なくとも1種の元素をRとし、
2価の金属元素であるCoをMとしたとき、A、R、FeおよびMそれぞれの金属元素の総計の構成比率が、全金属元素量に対し、
A:1〜13原子%、
R:0〜10原子%、
Fe:80〜95原子%、
M:0〜5原子%
である組成とするものが好ましい。
【0018】
また、好ましくは、
A:2〜13原子%、
R:0.05〜10原子%、
Fe:83〜95原子%、
M:0.1〜5原子%であり、
より好ましくは、
A:3〜11原子%、
R:0.2〜6原子%、
Fe:83〜94原子%、
M:0.3〜4原子%である。
【0019】
Aが少ないと、M型フェライトが生成しなくなったり、αFe2O3などの非磁性相が多くなったりすることがある。また、Aが多いと、M型フェライトが生成しなくなったり、SrFeO3-xなどの非磁性相が多くなったりすることがある。Rを添加すると、Mの固溶量が多くなり、BrやHcJが増大する。ただし、Rが多すぎるとオルソフェライトなどの非磁性の異相が多くなる。Mを添加すると、BrやHcJが増大する。ただし、Mが多すぎるとBrやHcJが低下してくる。
【0020】
上記各構成元素において、Aは、Sr、Ba、CaおよびPbから選択される少なくとも1種の元素であって、Sr,CaまたはBaを必ず含む。A中のSr,CaまたはBaの比率は、好ましくは51原子%以上、より好ましくは70原子%以上、さらに好ましくは100原子%である。この場合、SrとCaとBaの量比は任意である。A中のSr,Ca,Baの比率が低すぎると、飽和磁化と保磁力が低下してくる。
【0021】
Rは、希土類元素(Yを含む)およびBiから選択される少なくとも1種の元素である。Rには、Laが必ず含まれることが好ましい。Rが小さすぎると、Mの固溶量が少なくなり、本発明の効果が得られない。Rが大きすぎると、オルソフェライト等の非磁性の異相が多くなってくる。R中においてLaの占める割合は、好ましくは40原子%以上、より好ましくは70原子%以上であり、飽和磁化向上のためにはRとしてLaだけを用いることが最も好ましい。これは、六方晶M型フェライトに対する固溶限界量を比較すると、Laが最も多いためである。したがって、R中のLaの割合が低すぎるとRの固溶量を多くすることができず、その結果、元素Mの固溶量も多くすることができなくなり、本発明の効果が小さくなってくる。また、Biを併用すれば仮焼温度および焼結温度を低くすることができるので、生産上有利である。
【0022】
元素Mは、Coである。Mが小さすぎたり、Mが大きすぎると、BrやHcJが逆に低下してくる。
【0023】
また、好ましくは本発明に用いるフェライトは、
式I A1-xRx(Fe12-yMy)zO19
と表したとき、
0.04≦x≦0.9、
0.04≦y≦0.8、
0.8≦x/y≦5、
0.7≦z≦1.2
である。
【0024】
また、より好ましくは
0.1≦x≦0.4、
0.1≦y≦0.8、
0.8≦z≦1.1
であり、特に好ましくは
0.9≦z≦1.05
である。
【0025】
上記式Iにおいて、xが小さすぎると、すなわち元素Rの量が少なすぎると、六方晶フェライトに対する元素Mの固溶量を多くできなくなり、飽和磁化と異方性磁場が低下してくる。xが大きすぎると六方晶フェライト中に元素Rが置換固溶できなくなり、例えば元素Rを含むオルソフェライトが生成して飽和磁化が低くなってくる。yが小さすぎると飽和磁化と異方性磁場が低下してくる。yが大きすぎると六方晶フェライト中に元素Mが置換固溶できなくなってくる。また、元素Mが置換固溶できる範囲であっても、異方性定数(K1)や異方性磁場(HA)の劣化が大きくなってくる。zが小さすぎたり、zが大きすぎると、保磁力の温度特性が悪化してくる。
【0026】
上記式Iにおいて、x/yが小さすぎても大きすぎても元素Rと元素Mとの価数の平衡がとれにくくなり、W型フェライト等の異相が生成しやすくなる。元素Mは2価であるから、元素Rが3価イオンである場合、理想的にはx/y=1である。なお、x/yが1超の領域で許容範囲が大きい理由は、yが小さくてもFe3+→Fe2+の還元によって価数の平衡がとれるためである。
【0027】
組成を表わす上記式Iにおいて、酸素(O)の原子数は19となっているが、これは、Rがすべて3価であって、かつx=y、z=1のときの化学量論組成比を示したものである。Rの種類やx、y、zの値によって、酸素のモル数は異なってくる。また、例えば焼成雰囲気が還元性雰囲気の場合は、酸素の欠損(ベイカンシー)ができる可能性がある。さらに、FeはM型フェライト中においては通常3価で存在するが、これが2価などに変化する可能性もある。また、Co等のMで示される元素も3価に変化する可能性があり、これらにより金属元素の対する酸素の比率は変化する。本明細書では、Rの種類やx、y、zの値によらず酸素の原子数を19と表示してあるが、実際の酸素の原子数は化学量論組成比から多少偏倚していてもよい。
【0028】
フェライトの組成は、蛍光X線定量分析などにより測定することができる。また、上記の主相の存在はX線回折から確認される。
【0029】
磁石粉末、焼結磁石には、B2O3が含まれていてもよい。B2O3を含むことにより仮焼温度および焼結温度を低くすることができるので、生産上有利である。B2O3の含有量は、磁石粉末全体の0.5wt%以下であることが好ましい。B2O3含有量が多すぎると、飽和磁化が低くなってしまう。
【0030】
磁石粉末、焼結磁石中には、Na、KおよびRbの少なくとも1種が含まれていてもよい。これらをそれぞれNa2O、K2OおよびRb2Oに換算したとき、これらの含有量の合計は、磁石粉末、焼結磁石全体の3wt%以下であることが好ましい。これらの含有量が多すぎると、飽和磁化が低くなってしまう。これらの元素をMIで表わしたとき、フェライト中においてMIは例えば
Sr1.3-2aRaMI a-0.3Fe11.7M0.3O19
の形で含有される。なお、この場合、0.3<a≦0.5であることが好ましい。aが大きすぎると、飽和磁化が低くなってしまう他、焼成時に元素MIが多量に蒸発してしまうという問題が生じる。
【0031】
また、その他の化合物、例えばSi,Al,Ga,In,Li,Mg,Mn,Ni,Cr,Cu,Ti,Zr,Ge,Sn,V,Nb,Ta,Sb,As,W,Mo等を酸化物の形で、それぞれ酸化シリコン1wt%以下、酸化アルミニウム5wt%以下、酸化ガリウム5wt%以下、酸化インジウム3wt%以下、酸化リチウム1wt%以下、酸化マグネシウム3wt%以下、酸化マンガン3wt%以下、酸化ニッケル3wt%以下、酸化クロム5wt%以下、酸化銅3wt%以下、酸化チタン3wt%以下、酸化ジルコニウム3wt%以下、酸化ゲルマニウム3wt%以下、酸化スズ3wt%以下、酸化バナジウム3wt%以下、酸化ニオブ3wt%以下、酸化タンタル3wt%以下、酸化アンチモン3wt%以下、酸化砒素3wt%以下、酸化タングステン3wt%以下、酸化モリブデン3wt%程度以下含有されていてもよい。
【0032】
本発明のフェライト磁石において、特にLaを含む組成では、後述の酸素過少の焼成を行うことにより、M相とスピネル相とが生成する。また、La、Coを含み、A中の比率で、Caを好ましくは10原子%以上、特に20〜100原子%含む組成では、大気中の焼成でもM相とスピネル相とが生成する。
【0033】
M相とスピネル相との共存は、X線回析(XRD)によって確認される。上記のような異方性焼結磁石において、c面のXRDをみたとき、M相の(00L)ピークと、スピネル相の(111)ピークが主に観察され、これにより、配向したMと配向したスピネル(S)の2相状態になっていることがわかる。好ましい態様ではM(00L)とS(111)ピークのみが観察される。
【0034】
このようなc面のXRDチャートから、Mの最強ピーク、通常(008)、Sの(111)ピークの強度比から、M相とS相との量比が推定される。I(111)/I(008)は通常0.05〜0.2程度である。
【0035】
好ましい態様では、c面のXRDはMの(00L)とSの(111)のみしか観察されず、M、Sそれぞれの最大ピークに対し、M、Sそれぞれの他の面指数ピークは、強度比で0.3以下、特に0.2以下、さらには0.1以下で、0となることもある。また、スピネルが配向していない場合は、Sの(220)のピーク等が観察される。
【0036】
また、2相状態は、キュリー点からも確認される。すなわち、少なくとも2つの異なるキュリー点が観察されるものである。
【0037】
キュリー温度(Tc)は、磁性材料が強磁性から常磁性に変化するときの温度である。Tcを測定するにはいくつかの方法があるが、特に複数のTcをもつ磁性材料の場合は、ヒータなどで測定サンプルの温度を変化させながら、磁化−温度曲線(σ−T曲線)を描くことによりTcを求める。ここで、磁化の測定には、振動式磁力計(VSM)が多く用いられる。これは、サンプルの周囲にヒータ等を設置する空間を確保しやすいためである。
【0038】
試料は粉末でも焼結体でもよいが、粉体の場合は耐熱性の接着剤のようなもので固定する必要がある。また、温度の均一性と追随性をよくするため、磁化の測定精度が確保できる範囲で、サンプルはなるべく小さくすることが好ましい(本発明の実施例では、直径:5mm、高さ:6.5mm程度)。また、周囲温度とサンプルの温度を一致させるために、周囲温度の変化速度を遅くすることが好ましい。
【0039】
サンプルは異方性でも、等方性でもよいが、異方性サンプルの場合は磁化容易軸方向であるc軸方向に着磁後、c軸方向に測定することが好ましい。等方性サンプルの場合は、着磁方向と同一方向の磁化を測定する。サンプルの着磁は、10 kOe以上の充分に大きな磁場を印加して行う。通常は常温で着磁した後、温度を上げながらサンプルの磁化を測定していくが、このとき磁場は全く印加しないか、印加しても1 kOe以下の弱い磁場下で測定することが好ましい。これは、大きな磁場を印加しながら測定すると、キュリー温度以上の常磁性成分も検出してしまい、Tcが不明確になるためである。
【0040】
2つのキュリー温度が表れる例を図9に示す。この場合、一段目のキュリー温度(Tc1 )は、接線▲1▼と接線▲2▼の交点から求めることができる。また、二段目のキュリー温度(Tc2 )は、接線▲3▼とσ=0の軸との交点から求められる。
【0041】
2つの異なるキュリー点Tc1、Tc2は、一方がM相のTc1で350〜480℃(ただし480℃を含まない)、さらに350〜470℃、特に、420〜465℃、他方がスピネル相のTc2で、300〜600℃であるが、好ましくは480℃以上、特に500〜580℃である。Tc1、Tc2は場合によっては複数存在してもよい。
【0042】
本発明におけるフェライト磁石粉末、焼結磁石は、上記の組成と2相構造とを有する。平均粒径は、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下であり、さらに好ましくは0.5〜1μmである。平均粒径が大きすぎると、磁石粉末中の多磁区粒子の比率が高くなってHcJが低くなり、平均粒径が小さすぎると、磁場中成形時の配向性や成形性が悪くなる。
【0043】
磁石粉末は、通常、これをバインダで結合したボンディッド磁石に用いられる。
【0044】
次に、磁石粉末と焼結磁石を製造する方法を説明する。
【0045】
上記フェライトを有する磁石粉末は、原料粉末として、通常、酸化鉄粉末と、元素Aを含む粉末、さらには元素Rを含む粉末と、元素Mを含む粉末とを用い、これらの粉末の混合物を仮焼することにより製造する。元素Aを含む粉末、元素Rを含む粉末および元素Mを含む粉末としては、酸化物、または焼成により酸化物となる化合物、例えば炭酸塩、水酸化物、硝酸塩等のいずれであってもよい。原料粉末の平均粒径は特に限定されないが、特に酸化鉄は微細粉末が好ましく、一次粒子の平均粒径が1μm以下、特に0.5μm以下であることが好ましい。また、元素AおよびRはストック時の安定性等から水酸化物、炭酸塩であることが好ましい。
【0046】
なお、上記の原料粉末の他、必要に応じてB2O3等や、他の化合物、例えばSi,Al,Ga,In,Li,Mg,Mn,Ni,Cr,Cu,Ti,Zr,Ge,Sn,V,Nb,Ta,Sb,As,W,Mo等を含む化合物を添加物あるいは不可避成分等の不純物として含有していてもよい。
【0047】
仮焼は、空気中において例えば1000〜1350℃で1秒間〜10時間、特に1秒間〜3時間程度行えばよい。
【0048】
このようにして得られた仮焼体は、通常、実質的にマグネトプランバイト型のフェライト構造をもつ。ただし、Caと、Laと、Coとを含有する系では、前記のとおり二相化する。仮焼体の一次粒子の平均粒径は、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.1〜1μm、最も好ましくは0.1〜0.5μmである。平均粒径は走査型電子顕微鏡により測定すればよい。
【0049】
仮焼体を二相構造の磁石粉末として用いる場合には、還元性雰囲気または酸素過少雰囲気で仮焼を行う。この二相化は空気中での仮焼の後に、酸素過少の焼成を行ってもよい。酸素過少の焼成温度と時間は仮焼条件と同様である。これにより、Laを含む組成では容易に二相化する。CaLaCo系でも二相化が生じる。この場合、酸素過少雰囲気とは、大気中より酸素濃度が低い雰囲気であり、酸素濃度は1%以下のものが好ましい。
【0050】
次いで、通常、仮焼体を粉砕ないし解砕して磁石粉末とする。そして、この磁石粉末を樹脂、金属、ゴム等の各種バインダと混練し、磁場中または無磁場中で成形する。その後、必要に応じて硬化を行なってボンディッド磁石とする。
【0051】
また、磁石粉末をバインダと混練して塗料化し、これを樹脂等からなる基体に塗布し、必要に応じて硬化することにより磁性層を形成すれば、塗布型の磁気記録媒体とすることができる。
【0052】
焼結磁石は、必要に応じて仮焼体を粉砕した後、成形し、焼結することにより製造する。具体的には、以下の手順で製造することが好ましい。なお、この場合仮焼体の二相化は必ずしも必要ない。
【0053】
仮焼体粒子は一般に顆粒状なので、これを粉砕ないし解砕するために、まず、乾式粗粉砕を行うことが好ましい。乾式粗粉砕には、仮焼体粒子に結晶歪を導入して保磁力HcBを小さくする効果もある。保磁力の低下により粒子の凝集が抑制され、分散性が向上する。また、粒子の凝集を抑制することにより、配向度が向上する。粒子に導入された結晶歪は、後の焼結工程において解放され、保磁力が回復することによって永久磁石とすることができる。なお、乾式粗粉砕の際には、通常、SiO2 と、焼成によりCaOとなるCaCO3 とが添加される。SiO2 およびCaCO3 は、一部を仮焼前に添加してもよい。不純物および添加されたSiやCaは、大部分粒界や三重点部分に偏析するが、一部は粒内のフェライト部分(主相)にも取り込まれる。特にCaは、Srサイトにはいる可能性が高い。
【0054】
乾式粗粉砕の後、仮焼体粒子と水とを含む粉砕用スラリーを調製し、これを用いて湿式粉砕を行うことが好ましい。
【0055】
湿式粉砕後、粉砕用スラリーを濃縮して成形用スラリーを調製する。濃縮は、遠心分離やフィルタープレス等によって行えばよい。
【0056】
成形は、乾式で行っても湿式で行ってもよいが、配向度を高くするためには、湿式成形を行うことが好ましい。
【0057】
湿式成形工程では、成形用スラリーを用いて磁場中成形を行う。成形圧力は0.1〜0.5ton/cm2 程度、印加磁場は5〜15kOe 程度とすればよい。
【0058】
湿式成形では、非水系の分散媒を用いてもよいし、水系の分散媒を用いてもよい。非水系の分散媒を用いる場合には、例えば特開平6−53064号公報に記載されているように、トルエンやキシレンのような有機溶媒に、例えばオレイン酸のような界面活性剤を添加して、分散媒とする。このような分散媒を用いることにより、分散しにくいサブミクロンサイズのフェライト粒子を用いた場合でも最高で98%程度の高い磁気的配向度を得ることが可能である。一方、水系の分散媒としては、水に各種界面活性剤を添加したものを用いればよい。
【0059】
成形工程後、焼結工程において、成形体を大気中または酸素過少雰囲気中で好ましくは1150〜1270℃、より好ましくは1160〜1240℃の温度で0.5〜3時間程度焼結して、異方性フェライト焼結磁石を得る。なお、La系は大気中の焼結後、酸素過少雰囲気中で焼結と同様の条件で熱処理してもよい。
【0060】
なお、前記成形体をクラッシャー等を用いて解砕し、ふるい等により平均粒径が100〜700μm程度となるように分級して磁場配向顆粒を得、これを乾式磁場成形した後、焼結することにより焼結磁石を得てもよい。
【0061】
本発明には、薄膜磁性層を有する磁気記録媒体も包含される。この薄膜磁性層は、上記した本発明の磁石粉末と同様に、上記の組成の六方晶マグネトプランバイト型フェライト相を有する。
【0062】
薄膜磁性層の形成には、通常、スパッタ法を利用することが好ましい。スパッタ法を用いる場合、上記焼結磁石をターゲットとして用いてもよく、少なくとも2種の酸化物ターゲットを用いる多元スパッタ法を利用してもよい。スパッタ膜形成後、六方晶マグネトプランバイト構造を形成するために、通常、二相化のための熱処理を施す。
【0063】
本発明の焼結磁石やボンディッド磁石は所定の形状に加工され、下記に示すような幅広い用途に使用される。
【0064】
例えば、フュエールポンプ用、パワーウインド用、ABS用、ファン用、ワイパ用、パワーステアリング用、アクティブサスペンション用、スタータ用、ドアロック用、電動ミラー用等の自動車用モータ;FDDスピンドル用、VTRキャプスタン用、VTR回転ヘッド用、VTRリール用、VTRローディング用、VTRカメラキャプスタン用、VTRカメラ回転ヘッド用、VTRカメラズーム用、VTRカメラフォーカス用、ラジカセ等キャプスタン用、CD,LD,MDスピンドル用、CD,LD,MDローディング用、CD,LD光ピックアップ用等のOA、AV機器用モータ;エアコンコンプレッサー用、冷蔵庫コンプレッサー用、電動工具駆動用、扇風機用、電子レンジファン用、電子レンジプレート回転用、ミキサ駆動用、ドライヤーファン用、シェーバー駆動用、電動歯ブラシ用等の家電機器用モータ;ロボット軸、関節駆動用、ロボット主駆動用、工作機器テーブル駆動用、工作機器ベルト駆動用等のFA機器用モータ;その他、オートバイ用発電器、スピーカ・ヘッドホン用マグネット、マグネトロン管、MRI用磁場発生装置、CD−ROM用クランパ、ディストリビュータ用センサ、ABS用センサ、燃料・オイルレベルセンサ、マグネットラッチ等に好適に使用される。
そして、低温にて高い信頼性を示す。
【0065】
【実施例】
実施例1(大気中焼成により作製したLa含有Srフェライト粉末の、N2中再焼成)
実験組成
Sr1-xLaxMxFe12-xO19(M;Mg、Mn、Cu、Fe、Co、Ni、Li+Fe)で、x=0.4なる組成になるように配合した原料混合物を大気中1200℃で1時間焼成した。使用した原料は、α−Fe2O3(工業用)、La2O3(99.9%)、SrCO3(工業用)、酸化コバルト(試薬;Co含有量=71wt%)、MnO2(試薬特級)、CuO(試薬特級)、NiO(99.8%)、Li2CO3(試薬特級)、MgO(99.9%)である。次に、この焼成粉末を、N2中1200℃で1時間焼成して各種の特性を測定した。
【0066】
〈結果〉
表1に結果を示す。
【0067】
【表1】
【0068】
すべての試料で、M相(Tc=450〜470℃)とスピネル相(Tc>500℃)の二相になった。M=Fe、Mnの場合に、σsが向上した(M型Srフェライトでは、71emu/g)。また、全ての試料で室温(25℃)と+125℃の範囲のσsの温度特性も改善された(M型Srフェライトで−0.19%/℃)。
【0069】
実施例2(SrCaLaCo組成)
Sr0.4-xCaxLa0.6Co0.6Fe11.4O19でx=0,0.2,0.4
Sr:Ca:La:Co:Feが上式の比になるよう、原料を秤量、混合した。使用した原料は、αFe2O3(工業用)、La2O3(99.9%)、SrCO3(工業用)、酸化コバルト(試薬:Co含有量=71%)である。この際、SiO2(0.4wt%)、CaCO3(1.25wt%)を同時に添加した。秤量した原料は、湿式アトライターにて混合後、乾燥した。得られた混合粉末をバッチ炉にて、1200℃で3時間大気中で仮焼を行った。
【0070】
その後、仮焼粉末にSiO2(0.4wt%)、CaCO3(1.25wt%)およびエタノールを1ml添加し、乾式振動型ロッドミルで20分間粉砕した。粉砕された粉体にオレイン酸を1.3wt%添加して、キシレン中でボールミル粉砕を40時間行った。得られたスラリーは遠心分離機により、スラリー濃度が約85%になるように調整した。次に約10kOeの磁界中にて湿式プレス(プレス圧力0.4ton/cm2)を行い、30φ×15mmの円柱試料を作製した。得られた成形体は、1200℃および1240℃でそれぞれ大気中にて1時間焼成を行った。焼成後、試料を研磨し、B−Hトレーサーによる磁気特性評価を行った。また、焼結体を5mm径×6.5mmの円柱(高さ方向がc軸)に加工し、VSMによって−198℃〜+150℃の磁化曲線を測定した。
【0071】
<結果>
図1にx=0.2の時の1200℃で焼成した焼結体の−198℃〜+150℃の磁化曲線の第2象限を示す。この温度範囲でHcJの変化は0.2kOe以内であり、温度依存性は非常に小さいことがわかった。他の組成でも同様であった。
焼結体のc面をXRDにより調べた結果を表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
これより、スピネルとMの二相状態になっていることがわかった。しかも、このスピネルは(111)面からの回析強度が特に強く、〈111〉方向に配向していることがわかった。
【0074】
参考例(大気中焼成により作製した各種M型フェライト焼結体の、N2中再焼成)
空気中で本焼成を行った各種の異方性M型フェライトの焼結体を、N2中で1200℃×1時間焼成した。表3に焼結体表面のXRD解析結果を示す。
【0075】
【表3】
【0076】
LaZnおよびLaCo置換の場合だけW相にならずに、M相とスピネル相の二相状態となった。
【0077】
試料はSrFe12O19、
BaFe12O19、
Sr0.7La0.3Co0.3Fe11.7O19、
Sr0.7La0.3Zn0.3Fe11.7O19であり、試料の作製は実施例2に準じた。
【0078】
図2はLaZn置換Srフェライトの焼結体c面(磁場配向方向に垂直面)のXRDパターンである。生成したスピネル相は、実施例2と同様に〈111〉配向していることがわかった。
【0079】
実施例4
Sr0.8La0.2Fe11.8Co0.2O19 の組成となるように配合した原料混合物を、窒素と酸素の混合ガス中で酸素分圧を変えて1100℃と1200℃で焼成して、各種の特性を評価した。結果を表4に示す。
【0080】
【表4】
【0081】
全ての試料で、スピネルフェライトのTc(520〜560℃)が検出された。このように、焼成時の雰囲気を必ずしも還元性雰囲気にしない場合でも、スピネルフェライトと、M型フェライトの2相構造が得られ、温度特性の改善が認められた。このとき、σsは61emu/g 以下の低い値であった。より高いσsを得るためには、焼成温度を1200℃以上にして、しかも還元性雰囲気で焼成することが好ましい。
【0082】
参考例
図3に示すように、Srフェライト(SrFe12O19)、およびCoフェライト(CoFe2O4)を別々に作製して、乾式粗粉砕時に所定の割合で混合し、以下実施例2の方法で焼結体を作製した。
【0083】
得られた焼結体表面をXRD解析したところ、Srフェライトに対するCoフェライト量が10,20wt%のとき、若干のW相のピークが見られた。しかし、それ以外はSrフェライトと、Coフェライトの二相であることが確認された。
【0084】
図4〜6に焼結体の磁気特性(Br、HcJ、σsの温度係数)を示す。Coフェライトの量が増えると、BrとHcJは低下したが、飽和磁化(σs)の温度特性が著しく改善された。
【0085】
実施例6
Coスピネルフェライトの結晶磁気異方性HcJは、Co/(Fe+Co)=0.25のとき最大となるため、この組成のCoフェライトを混合する場合について検討した。
【0086】
Coフェライトの量を30%として、実施例2と同様の方法で焼結体を作製した。ただし、Coフェライトの仮焼は窒素中で温度を変化させて(700〜1300℃)、2時間行い、焼成は1150℃で1時間、窒素と酸素の混合ガスにより酸素分圧を変化させて(酸素濃度:0.1%および1%)行った。
【0087】
得られた各サンプルの磁気特性(Br、HcJ)を図7,8に示す。これにより、900℃で仮焼したCoフェライトを用いて、1%の酸素濃度で焼成した場合に、Br=4.0 kG、HcJ=3.0kOeの最高特性が得られ、このときσsの温度特性は、−0.15%/℃であった。
【0088】
上記各実施例で作製したSrフェライトにおいてLaの一部をBiで置換したところ、Bi添加により仮焼温度を低くできることがわかった。すなわち、最良の特性が得られる仮焼温度が低温側に移動し、しかも、保磁力の温度特性はほとんど劣化しなかった。また、Laの一部を他の希土類元素で置換した組成について仮焼体および焼結体を作製したところ、上記各実施例と同様にHcJの温度特性の向上が認められた。
【0089】
また、上記各実施例で作製したSrフェライト仮焼体を用いてボンディッド磁石を作製したところ、良好な温度特性が得られた。
【0090】
また、上記各実施例で作製したSrフェライト仮焼体を含有する塗布型磁性層を基体上に形成して、磁気カードを作製したところ良好な温度特性が得られた。
【0091】
また、スパッタ法により薄膜を基体上に形成し、これを熱処理して上記実施例と同様な二相構造のフェライト相を形成して薄膜磁性層として、磁気記録媒体を作製した。これらの磁気記録媒体でも、良好な温度特性が得られた。
【0092】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、保磁力や残留磁束密度の温度特性が極めて優れ、高温域において、残留磁束密度の低下が少なく、また、低温域においても保磁力の低下が少ないフェライト焼結磁石や磁石粉末と、それらの製造方法とを提供することができる。また、そのフェライトを用いてボンディッド磁石と、磁気記録媒体を提供することができる。そして、好ましい態様においては、高い残留磁束密度と保磁力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフェライト焼結磁石の減磁曲線である。
【図2】本発明のフェライト焼結磁石のX線回析チャートである。
【図3】本発明のフェライトの製造方法を示すフローチャートである。
【図4】本発明のフェライト焼結磁石の磁気特性(Br)とCoフェライトの割合の関係を示すグラフである。
【図5】本発明のフェライト焼結磁石の磁気特性(HcJ)とCoフェライトの割合の関係を示すグラフである。
【図6】本発明のフェライト焼結磁石の磁気特性(σsの温度係数)とCoフェライトの割合の関係を示すグラフである。
【図7】本発明のフェライト焼結磁石の磁気特性(Br)と焼成温度の関係を示すグラフである。
【図8】本発明のフェライト焼結磁石の磁気特性(HcJ)と焼成温度の関係を示すグラフである。
【図9】2つのキュリー温度の求め方を説明するための参考グラフである。
Claims (13)
- M型フェライト相とCoスピネルフェライト相が共存し、
前記M型フェライト相と前記Coスピネルフェライト相の組成が、
Sr、Ba、CaおよびPbから選択される少なくとも1種の元素であって、Sr、CaまたはBaを必ず含むものをAとし、
希土類元素(Yを含む)およびBiから選択される少なくとも1種の元素をRとし、
2価の金属元素であるCoをMとしたとき、
A、R、FeおよびMから構成され、
それぞれの金属元素の総計の構成比率が、全金属元素量に対し、
A:1〜13原子%、
R:0.05〜10原子%、
Fe:80〜95原子%、
M:0.1〜5原子%であり、
前記Coスピネルフェライト相の存在割合が10〜30wt%である磁石粉末。 - 少なくとも2つの異なるキュリー温度を有する請求項1の磁石粉末。
- 室温(25℃)〜+125℃の温度範囲での飽和磁化の変化の絶対値が、0.18%/℃以下である請求項1又は2の磁石粉末。
- −50℃〜50℃の温度範囲での保磁力の温度係数の絶対値が0.25%/℃以下である請求項1〜3のいずれかの磁石粉末。
- 請求項1〜4のいずれかの磁石粉末を含むボンディッド磁石。
- 請求項1〜4のいずれかの磁石粉末を含む磁気記録媒体。
- R〔Rは希土類元素(Yを含む)およびBiから選択される少なくとも1種の元素を表す〕を含有するM型フェライト原料を、還元性雰囲気または酸素過少雰囲気で焼成して、請求項1〜4のいずれかの磁石粉末を得る磁石粉末の製造方法。
- M型フェライト相とCoスピネルフェライト相が共存し、
前記M型フェライト相と前記Coスピネルフェライト相の組成が、
Sr、Ba、CaおよびPbから選択される少なくとも1種の元素であって、Srおよび/またはCaを必ず含むものをAとし、
希土類元素(Yを含む)およびBiから選択される少なくとも1種の元素をRとし、
2価の金属元素であるCoをMとしたとき、
A、R、FeおよびMから構成され、
それぞれの金属元素の総計の構成比率が、全金属元素量に対し、
A:1〜13原子%、
R:0.05〜10原子%、
Fe:80〜95原子%、
M:0.1〜5原子%であり、
前記Coスピネルフェライト相の存在割合が10〜30wt%である焼結磁石。 - 少なくとも2つの異なるキュリー温度を有する請求項8の焼結磁石。
- 室温(25℃)〜+125℃の温度範囲での飽和磁化の変化の絶対値が、0.18%/℃以下である請求項8又は9の焼結磁石。
- −50℃〜50℃の温度範囲での保磁力温度係数の絶対値が0.25%/℃以下である請求項8〜10のいずれかの焼結磁石。
- 前記M型フェライト相のc軸方向と、立方晶の前記スピネルフェライト相の〈111〉方向とがほぼ一致している請求項8〜11のいずれかの焼結磁石。
- R〔Rは希土類元素(Yを含む)およびBiから選択される少なくとも1種の元素を表す〕を含有するM型フェライト原料を、還元性雰囲気または酸素過少雰囲気で焼成して、請求項8〜12のいずれかの焼結磁石を得る焼結磁石の製造方法。
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