JP3263694B2 - 六方晶フェライト焼結磁石 - Google Patents

六方晶フェライト焼結磁石

Info

Publication number
JP3263694B2
JP3263694B2 JP2000207339A JP2000207339A JP3263694B2 JP 3263694 B2 JP3263694 B2 JP 3263694B2 JP 2000207339 A JP2000207339 A JP 2000207339A JP 2000207339 A JP2000207339 A JP 2000207339A JP 3263694 B2 JP3263694 B2 JP 3263694B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ferrite
magnet
magnetic
slurry
hexagonal ferrite
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP2000207339A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2001057305A (ja
Inventor
仁 田口
清幸 増澤
良彦 皆地
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
TDK Corp
Original Assignee
TDK Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by TDK Corp filed Critical TDK Corp
Priority to JP2000207339A priority Critical patent/JP3263694B2/ja
Publication of JP2001057305A publication Critical patent/JP2001057305A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3263694B2 publication Critical patent/JP3263694B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Magnetic Ceramics (AREA)
  • Hard Magnetic Materials (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車用モータ等
の永久磁石材料として好適に使用される六方晶フェライ
ト、特にマグネトプランバイト型構造を有する六方晶フ
ェライトに関する。
【0002】
【従来の技術】酸化物永久磁石材料には、マグネトプラ
ンバイト型(M型)の六方晶系のSrフェライトまたは
Baフェライトが主に用いられており、これらの焼結磁
石やボンディッド磁石が製造されている。
【0003】磁石特性のうち特に重要なものは、残留磁
束密度(Br)および固有保磁力(HcJ)である。
【0004】Brは、磁石の密度およびその配向度と、
その結晶構造で決まる飽和磁化(4πIs)とで決定さ
れ、 Br=4πIs×配向度×密度 で表わされる。M型のSrフェライトやBaフェライト
の4πIsは約4.65kGである。密度と配向度とは、
最も高い値が得られる焼結磁石の場合でもそれぞれ98
%程度が限界である。したがって、これらの磁石のBr
は4.46kG程度が限界であり、4.5kG以上の高いB
rを得ることは、従来、実質的に不可能であった。
【0005】本発明者らは、特開平9−115715号
公報において、M型フェライトに例えばLaとZnとを
適量含有させることにより、4πIsを最高約200G
高めることが可能であり、これによって4.5kG以上の
Brが得られることを見出した。しかしこの場合、後述
する異方性磁場(HA)が低下するため、4.5kG以上
のBrと3.5kOe以上のHcJとを同時に得ることは困
難であった。
【0006】HcJは、異方性磁場{HA(=2K1/I
s)}と単磁区粒子比率(fc)との積(HA×fc)
に比例する。ここで、K1は結晶磁気異方性定数であ
り、Isと同様に結晶構造で決まる定数である。M型B
aフェライトの場合、K1=3.3×106erg/cm3であ
り、M型Srフェライトの場合、K1=3.5×106er
g/cm 3である。このように、M型Srフェライトは最大
のK1をもつことが知られているが、K1をこれ以上向上
させることは困難であった。
【0007】また、粒子の形状で決まる反磁場係数をN
とすると、下式1に示すように、Nが大きいほど粒子に
は大きな反磁場がかかり、HcJを劣化させる。 HcJ∝(2K1 /Is−NIs)・・・(式1)
【0008】一般的に、粒子のアスペクト比が大きくな
る(扁平化する)と、Nは大きくなり、HcJは劣化す
る。
【0009】一方、フェライト粒子が単磁区状態となれ
ば、磁化を反転させるためには異方性磁場に逆らって磁
化を回転させる必要があるから、最大のHcJが期待され
る。フェライト粒子を単磁区粒子化するためには、フェ
ライト粒子の大きさを下記の臨界径(dc)以下にする
ことが必要である。
【0010】 dc=2(k・Tc・K1/a)1/2/Is2
【0011】ここで、kはボルツマン定数、Tcはキュ
リー温度、aは鉄イオン間距離である。M型Srフェラ
イトの場合、dcは約1μmであるから、例えば焼結磁
石を作製する場合は、焼結体の結晶粒径を1μm以下に
制御することが必要になる。高いBrを得るための高密
度化かつ高配向度と同時に、このように微細な結晶粒を
実現することは従来困難であったが、本発明者らは特開
平6−53064号公報において、新しい製造方法を提
案し、従来にない高特性が得られることを示した。しか
し、この方法においても、Brが4.4kGのときにはH
cJが4.0kOe程度となり、4.4kG以上の高いBrを
維持してかつ4.5kOe以上の高いHcJを同時に得るこ
とは困難であった。
【0012】また、焼結体の結晶粒径を1μm以下に制
御するためには、焼結段階での粒成長を考慮すると、成
形段階での粒子サイズを好ましくは0.5μm以下にす
る必要がある。このような微細な粒子を用いると、成形
時間の増加や成形時のクラックの増加などにより、一般
的に生産性が低下するという問題がある。このため、高
特性化と高生産性とを両立させることは非常に困難であ
った。
【0013】一方、高いHcJを得るためには、Al23
やCr23の添加が有効であることが従来から知られて
いた。この場合、Al3+やCr3+はM型構造中の「上向
き」スピンをもつFe3+を置換してHAを増加させると
共に、粒成長を抑制する効果があるため、4.5kOe以
上の高いHcJが得られる。しかし、Isが低下すると共
に焼結密度も低下しやすくなるため、Brは著しく低下
する。このため、HcJが4.5kOeとなる組成では最高
でも4.2kG程度のBrしか得られなかった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、M型
フェライトの飽和磁化と磁気異方性とを同時に高めるこ
とにより、従来のM型六方晶フェライト磁石では達成不
可能であった高い残留磁束密度と高い保磁力とを有する
六方晶フェライト磁石を実現することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(3)のいずれかの構成により達成される。 (1) Sr、BaおよびCaから選択される少なくと
も1種の元素をAとし、La,Pr,NdおよびCeの
いずれか1種または2種以上をRとし、Co,Niおよ
びZnのいずれか1種または2種以上をMとし、A,
R,FeおよびMを含有し、このA,R,FeおよびM
それぞれの金属元素の総計の構成比率が、全金属元素量
に対し、 A:1〜13原子%、 R:0.05〜10原子%、 Fe:80〜95原子%、 M:0.1〜5原子% である六方晶フェライト磁石であり、フェライト中のR
の比率をR23に換算して求めた場合に、R23が結晶
粒子中心近傍では3wt%以下、結晶粒界近傍では4wt%
以上存在する六方晶フェライト焼結磁石。 (2) フェライト中のMの比率をMOに換算して求め
た場合に、MOが結晶粒子中心近傍では1wt%以下、結
晶粒界近傍では1wt%超存在する六方晶フェライト焼結
磁石。 (3) マグネトプランバイト型フェライトである上記
(1)または(2)の六方晶フェライト焼結磁石。
【0016】
【作用】六方晶フェライト磁石の特性のうち、HcJは単
磁区粒子理論から予想される値よりも通常はかなり小さ
い。この原因のひとつとして、上記のように粒子サイズ
が単磁区臨界径より大きいことが挙げられるが、これだ
けでは説明できない場合が多い。
【0017】本発明者らは、焼結体をTEMにより注意
深く観察した結果、図25に示すように、結晶粒子1の
中にc軸と直交するような面に積層欠陥2を有するもの
があることを突き止めた。なお、図中、矢印cは、c軸
方向を示している。
【0018】ここで、例えば特願平9−56856(国
際公開WO98/38654)、特開平10−1499
10号公報に記載されているように、Sr2+をLa
3+で、Fe3+をCo2+で置換したM型Srフェライト組
成の場合、結晶構造に依存する基本的な磁気特性である
飽和磁化と、結晶磁気異方性定数(K1)が共に増加し
て高特性が得られる。しかし、本発明者らはこのように
価数やイオン半径の異なる元素で置換した組成の六方晶
フェライト磁石を従来の製造法で作製すると、積層欠陥
を特に生じやすくなることを初めて見いだした。さら
に、このような積層欠陥によって、高い結晶磁気異方性
が、磁石特性である保磁力に十分に反映されない場合が
あることを見いだした。
【0019】本発明者らは、特願平9−273936号
において、これに記載されている製造方法(後添加法)
により優れた磁気特性が得られ、この方法によって作製
されたフェライト磁石は、2つのキュリー温度を有する
ことを見出すに至ったが、さらに研究を重ねた結果、こ
のときに積層欠陥が非常に少なくなっていることを見出
し本発明に至った。
【0020】さらに、積層欠陥を少なくする方法として
は、Rを余剰にする手法が有効である。また、特願平9
−273932号に記載されているように、六方晶フェ
ライトを焼成する際の雰囲気を、酸素過剰雰囲気、具体
的には酸素分圧を0.2atm超として製造する方法も有
効である。
【0021】マグネトプランバイト構造のような六方晶
フェライトは、酸素イオン(O2-)が、ABAB・・・
のように積み重なって六方最密充填されており、酸素イ
オンの一部が、Sr2+,Ba2+およびCa2+等で置換さ
れる構造になっている。また、鉄イオン(Fe3+)等の
大きさの小さいイオンは、O2-やSr2+で形成される層
の隙間に位置する。一般的に、積層欠陥とは、このAB
AB・・・のような積み重なりの順序が一部乱れた面欠
陥のことであるが、本明細書における積層欠陥をさらに
詳しく説明すると次のようになる。
【0022】図1に示されるように、M型六方晶フェラ
イトは、S層/R層/S* 層/R*層のように、S層と
R層とが交互に積層する構造を有している。ここで、S
* ,R* は、S,Rをc軸を中心に180度回転させた
ものである。下記実験例(TEM−EDS解析)から、
積層欠陥はS層(スピネル層)部分が異常に成長した部
分である可能性が高まった。これは、例えば、Journal
of Solid State Chemistry vol.26 , P1〜6 (1978)に記
載されているように"Intergrowth Layer"と呼ばれてい
るものである。
【0023】RやMを含有させた六方晶フェライトは積
層欠陥が多く、この積層欠陥を減少させることにより、
高特性が得られることは本発明者らにより初めて見出さ
れたことである。なお、欠陥をゼロにすることが理想で
あるが、実際には、積層欠陥を有する結晶粒子の数をn
とし、全体の結晶粒子の数をNとしたときに、n/N=
0.05〜0.35の範囲においても、高い特性が得ら
れることを見出した。
【0024】以上のような積層欠陥が存在すると、フェ
ライト磁石としての磁気特性が劣化する原因は次のよう
に推察される。第一に、積層欠陥が非磁性層の場合は、
結晶粒子(グレイン)を磁気的に分断すると考えられ
る。これは、粒子が扁平化することと実効的に同じこと
であり、反磁場係数(N)が増加し、上記式1に従って
HcJは劣化する。第二に、積層欠陥が軟磁性を示すスピ
ネル層とすると、軟磁性層が閉磁路を構成して、実効的
な結晶磁気異方性が低下することが考えられる。
【0025】また、本発明者らは、先の特願平9−27
3936号において、これに記載されている製造方法
(後添加法)により優れた磁気特性が得られ、この方法
によって作製されたフェライト磁石は、2つのキュリー
温度を有することを見出すに至ったが、このとき後添加
した元素のうち、特にLa等の元素Rの濃度が結晶粒の
中心部分で低く、粒界近傍や、三重点で比較的高いこと
を初めて見出した。
【0026】さらに、このときCo等の元素Mの分布
は、少量だと解析が困難になり、不明確な場合もあるも
のの、元素Rと同様になっていることを見いだした。
【0027】このように、LaなどのRや、Coなどの
Mを、結晶粒子中心近傍よりも粒界近傍に高濃度に存在
させる構造とすることにより、優れた磁気特性を有する
フェライト磁石が得られる原因は次のように推察され
る。第一に、LaおよびCoを含有したSrフェライト
は、結晶磁気異方性が大きいことが知られている。従っ
て、このような元素が粒界近傍に高濃度に存在すると、
粒界近傍に異方性の大きい磁性相が存在することになる
と考えられる。このような構造は、逆磁区の生成が抑制
されることなどにより、高い保磁力が得られやすいこと
が知られている。第二に、結晶粒子中心でRやCoの濃
度が低いため、上記の積層欠陥が少なくなる。
【0028】
【発明の実施の形態】本発明の六方晶フェライト磁石
は、Sr、BaおよびCaから選択される少なくとも1
種の元素をAとし、La,Pr,NdおよびCeのいず
れか1種または2種以上をRとし、Co,NiおよびZ
nのいずれか1種または2種以上をMとし、A,R,F
eおよびMを含有し、このA,R,FeおよびMそれぞ
れの金属元素の総計の構成比率が、全金属元素量に対
し、A:1〜13原子%、R:0.05〜10原子%、
Fe:80〜95原子%、M:0.1〜5原子%であ
り、Rの結晶粒子中心近傍での含有量が3wt%以下であ
るとき、結晶粒界近傍に4wt%以上、特に5wt%以上含
有するものである。
【0029】また、好ましくは前記元素Mの結晶粒子の
中心近傍での含有量が1wt%以下であるとき、結晶粒界
近傍に1wt%超含有する。
【0030】このように、RやMが結晶粒子の中心近傍
より、粒界近傍に多く存在するような構造とすることに
より、優れた磁気特性が得られる。
【0031】本発明の六方晶フェライト磁石は、Sr、
BaおよびCaから選択される少なくとも1種の元素を
Aとし、+3価または+4価を取りうるイオン半径が
1.00Å以上の元素をRとし、A,RおよびFeを含
有し、Rが結晶粒子の中心よりも結晶粒界近傍に多く存
在する。このような構造とすることにより優れた磁気特
性が得られる。
【0032】このような構造は、例えばチタン酸バリウ
ムのような誘電材料にみられるような「コアシェル構
造」に似ているとも言える。そして、このような構造
は、TEM−EDSにより解析することで、識別するこ
とができる。
【0033】ここで、六方晶フェライトを形成するため
には、Rのイオンが酸素イオン(O 2-)と近い大きさと
なる必要があり、具体的には、1.00〜1.60オン
グストローム程度である必要がある。また、Mは酸素イ
オン(O2-)よりも小さく、鉄イオン(Fe3+)に近い
必要があり、具体的には、0.50〜0.90オングス
トローム程度である必要がある。
【0034】本発明の六方晶フェライト磁石は、上記
A,RおよびFeを含有していればよく、他の添加物等
は特に限定されるものではないが、好ましくはSr、B
aおよびCaから選択される少なくとも1種の元素をA
とし、+3価または+4価を取りうるイオン半径が1.
00オングストローム以上、特に1.00〜1.60オ
ングストロームの元素をRとし、イオン半径が0.90
オングストローム以下、特に0.50〜0.90オング
ストロームの元素をMとしたとき、A,R,Feおよび
Mを含有する。
【0035】また、好ましくはA,R,FeおよびMそ
れぞれの金属元素の総計の構成比率が、全金属元素量に
対し、A:3〜11原子%、R:0.2〜6原子%、F
e:83〜94原子%、M:0.3〜4原子%であり、
さらに好ましくは、A:3〜9原子%、R:0.5〜4
原子%、Fe:86〜93原子%、M:0.5〜3原子
%である。
【0036】上記各構成元素において、Aは、Sr、B
aおよびCaから選択される少なくとも1種の元素であ
る。Aが小さすぎると、M型フェライトが生成しない
か、α−Fe23 等の非磁性相が多くなってくる。A
が大きすぎるとM型フェライトが生成しないか、SrF
eO3-x 等の非磁性相が多くなってくる。A中のSrの
比率は、好ましくは51原子%以上、より好ましくは7
0原子%以上、さらに好ましくは100原子%である。
A中のSrの比率が低すぎると、飽和磁化向上と保磁力
の著しい向上とを共に得ることができなくなってくる。
【0037】Rは、La、Nd、PrまたはCeである
ことが好ましい。Rが小さすぎると、Mの固溶量が少な
くなり、本発明の効果が得られ難くなる。Rが大きすぎ
ると、オルソフェライト等の非磁性の異相が多くなって
くる。R中においてLaの占める割合は、好ましくは4
0原子%以上、より好ましくは70原子%以上であり、
飽和磁化向上のためにはRとしてLaだけを用いること
が最も好ましい。これは、六方晶M型フェライトに対す
る固溶限界量を比較すると、Laが最も多いためであ
る。したがって、R中のLaの割合が低すぎるとRの固
溶量を多くすることができず、その結果、元素Mの固溶
量も多くすることができなくなり、本発明の効果が小さ
くなってしまう。
【0038】元素Mは、Co、NiまたはZnであるこ
とが好ましい。Mが小さすぎると、本発明の効果が得難
くなり、Mが大きすぎると、BrやHcJが逆に低下し本
発明の効果を得難くなる。M中のCoの比率は、好まし
くは10原子%以上、より好ましくは20原子%以上で
ある。Coの比率が低すぎると、保磁力向上が不十分と
なってくる。
【0039】ここで、RとMの含有量と、欠陥を有する
結晶粒子の数とは相関関係があり、RおよびMの量が増
加すると欠陥を有する結晶粒子の数も増加する傾向にあ
る。ただし、Rを化学量論組成より多く存在させた場合
にも欠陥を有する結晶粒子は減少する。
【0040】積層欠陥はTEM等により比較的容易に識
別することができるが、この場合、全体の結晶粒子の数
を測定することは現実的でない。このため、例えば、T
EM(透過型電子顕微鏡)で異方性焼結磁石のc軸に平
行な面(a面)を観察したときのある視野内の結晶数を
計測し、この結晶粒の全数をNとしたとき、その結晶粒
中に見出される欠陥を有する結晶粒の数をnとし、上記
数として推定する。ここで、観察するTEMの倍率とし
ては1000〜100000倍、特に10000〜20
000倍が好ましく、観察する視野としては、2視野以
上が好ましく、特に2〜10視野とし、Nを20〜50
0程度とする。なお、結晶粒中に存在する欠陥は、通常
1つまたは2つ程度であるが、3つ以上である場合もあ
る。
【0041】また、好ましくは上記の六方晶マグネトプ
ランバイト型フェライトは、 A1-xx(Fe12-yyz19 ・・・(式2) と表したとき、0.04≦x≦0.9、特に0.04≦
x≦0.6、0.04≦y≦0.5、0.8≦x/y≦
5、0.7≦z≦1.2である。
【0042】また、より好ましくは0.04≦x≦0.
5、0.04≦y≦0.5、0.8≦x/y≦5、0.
7≦z≦1.2であり、さらに好ましくは0.1≦x≦
0.4、0.1≦y≦0.4、0.8≦z≦1.1であ
り、特に好ましくは0.9≦z≦1.05である。
【0043】上記式2において、xが小さすぎると、す
なわち元素Rの量が少なすぎると、六方晶フェライトに
対する元素Mの固溶量を多くできなくなり、飽和磁化向
上効果および/または異方性磁場向上効果が不十分とな
ってくる。xが大きすぎると六方晶フェライト中に元素
Rが置換固溶できなくなり、例えば元素Rを含むオルソ
フェライトが生成して飽和磁化が低くなってくる。yが
小さすぎると飽和磁化向上効果および/または異方性磁
場向上効果が不十分となってくる。yが大きすぎると六
方晶フェライト中に元素Mが置換固溶できなくなってく
る。また、元素Mが置換固溶できる範囲であっても、異
方性定数(K1)や異方性磁場(HA)の劣化が大きくな
ってしまう。zが小さすぎるとSrおよび元素Rを含む
非磁性相が増えるため、飽和磁化が低くなってしまう。
zが大きすぎるとα−Fe23相または元素Mを含む非
磁性スピネルフェライト相が増えるため、飽和磁化が低
くなってしまう。なお、上記式は不純物が含まれていな
いものとして規定されている。
【0044】上記式2において、x/yが小さすぎても
大きすぎても元素Rと元素Mとの価数の平衡がとれなく
なり、W型フェライト等の異相が生成しやすくなる。元
素Mは2価であるから、元素Rが3価イオンである場
合、理想的にはx/y=1である。なお、x/yが1超
の領域で許容範囲が大きい理由は、yが小さくてもFe
3+→Fe2+の還元によって価数の平衡がとれるためであ
る。
【0045】組成を表わす上記式2において、酸素
(O)の原子数は19となっているが、これは、Rがす
べて3価であって、かつx=y、z=1のときの化学量
論組成比を示したものである。Rの種類やx、y、zの
値によって、酸素の原子数は異なってくる。また、例え
ば焼成雰囲気が還元性雰囲気の場合は、酸素の欠損(ベ
イカンシー)ができる可能性がある。さらに、FeはM
型フェライト中においては通常3価で存在するが、これ
が2価などに変化する可能性もある。また、Co等のM
で示される元素も価数が変化する可能性があり、これら
により金属元素の対する酸素の比率は変化する。本明細
書では、Rの種類やx、y、zの値によらず酸素の原子
数を19と表示してあるが、実際の酸素の原子数は化学
量論組成比から多少偏倚していてもよい。
【0046】フェライトの組成は、蛍光X線定量分析な
どにより測定することができる。また、上記の主相の存
在はX線回折や電子回折等から確認される。
【0047】磁石粉末には、B23が含まれていてもよ
い。B23を含むことにより仮焼温度および焼結温度を
低くすることができるので、生産上有利である。B23
の含有量は、磁石粉末全体の0.5重量%以下であるこ
とが好ましい。B23含有量が多すぎると、飽和磁化が
低くなってしまう。
【0048】磁石粉末中には、Na、KおよびRbの少
なくとも1種が含まれていてもよい。これらをそれぞれ
Na2O、K2OおよびRb2Oに換算したとき、これら
の含有量の合計は、磁石粉末全体の3重量%以下である
ことが好ましい。これらの含有量が多すぎると、飽和磁
化が低くなってしまう。これらの元素をMIで表わした
とき、フェライト中においてMIは例えば Sr1.3-2aaI a-0.3Fe11.70.319 の形で含有される。なお、この場合、0.3<a≦0.
5であることが好ましい。aが大きすぎると、飽和磁化
が低くなってしまう他、焼成時に元素MIが多量に蒸発
してしまうという問題が生じる。
【0049】また、これらの不純物の他、例えばSi,
Al,Ga,In,Li,Mg,Mn,Ni,Cr,C
u,Ti,Zr,Ge,Sn,V,Nb,Ta,Sb,
As,W,Mo等を酸化物の形で、それぞれ酸化シリコ
ン1重量%以下、酸化アルミニウム5重量%以下、酸化
ガリウム5重量%以下、酸化インジウム3重量%以下、
酸化リチウム1重量%以下、酸化マグネシウム3重量%
以下、酸化マンガン3重量%以下、酸化ニッケル3重量
%以下、酸化クロム5重量%以下、酸化銅3重量%以
下、酸化チタン3重量%以下、酸化ジルコニウム3重量
%以下、酸化ゲルマニウム3重量%以下、酸化スズ3重
量%以下、酸化バナジウム3重量%以下、酸化ニオブ3
重量%以下、酸化タンタル3重量%以下、酸化アンチモ
ン3重量%以下、酸化砒素3重量%以下、酸化タングス
テン3重量%以下、酸化モリブデン3重量%以下程度含
有されていてもよい。
【0050】また、本発明の六方晶フェライト磁石は、
好ましくは少なくとも2つの異なるキュリー温度Tc
1,Tc2を有し、この2つの異なるキュリー温度Tc
1,Tc2は400〜470℃であり、かつこれらTc
1,Tc2の差の絶対値が5℃以上である。このように
2つの異なるキュリー温度を有することで、角形性Hk
/HcJが著しく改善される。
【0051】キュリー温度は、磁石の磁化(σ)−温度
(T)曲線における変化点から求めることができる。よ
り具体的には、常法に従い、σ−T曲線の変化点での低
温側曲線の接線と温度軸との交点の温度により求められ
る。2つの異なるキュリー点Tc1,Tc2は、その差
の絶対値が5℃以上、好ましくは10℃以上である。ま
た、その上限は特に規制されるものではないが465℃
程度である。これらのキュリー温度は400〜470
℃、好ましくは430〜460℃の範囲である。この2
つのキュリー温度は、本発明のフェライト結晶の組織構
造が、後述する製造工程などにより磁気的に異なるM型
フェライトの2相構造を有するためであると考えられ
る。ただし、通常のX線回折法ではM相の単相が検出さ
れる。
【0052】角形性Hk /HcJは、好ましくは90%以
上、特に92%以上であることが好ましい。なお、最高
では95%に及ぶ。また、本発明の磁石は、好ましくは
配向度Ir/Isが96.5%以上、より好ましくは9
7%以上であることが好ましい。なお、最高では98%
程度に及ぶ。配向度を向上させることにより、高いBr
が得られる。また、成形体では、磁気的配向度の値が成
形体密度にも影響されるため、成形体の表面に対しX線
回折による測定を行い、現れたピークの面指数と強度と
から求められる成形体の結晶学的な配向度(X線配向
度)が重要である。この成形体のX線配向度は、焼結体
の磁気的配向度の値をかなりの程度支配する。好ましく
はX線配向度としてΣI(00L)/ΣI(hkL)を
用いる。(00L)は、(004)や(006)等のc
面を総称する表示であり、ΣI(00L)は(00L)
面のすべてのピーク強度の合計である。また、(hk
L)は、検出されたすべてのピークを表し、ΣI(hk
L)はそれらの強度の合計である。したがってΣI(0
0L)/ΣI(hkL)は、c面配向の程度を表す。こ
の、ΣI(00L)/ΣI(hkL)は好ましくは0.
85以上、より好ましくは0.9以上が好ましく、その
上限としては1.0程度である。
【0053】次に、フェライト焼結磁石を製造する方法
を説明する。上記フェライト焼結磁石は、原料粉末とし
て、通常、A(Aは、Sr,Ba,Ca)、R(Rは、
+3価または+4価を取りうるイオン半径が1.00オ
ングストローム以上の元素:好ましくはLa,Pr,N
dまたはCeのいずれか)、M(Mは、イオン半径が
0.90オングストローム以下の元素:好ましくはC
o,NiまたはZn)を含有する化合物の粉末を用い、
これらの原料粉末の少なくとも1種または2種以上と、
Feを含有する酸化物の粉末の混合物を仮焼する。そし
て、仮焼後、さらに前記A(Aは、Sr,Ba,C
a)、R(Rは、+3価または+4価を取りうるイオン
半径が1.00オングストローム以上の元素:好ましく
はLa,Pr,NdまたはCeのいずれか)、M(M
は、イオン半径が0.90オングストローム以下の元
素:好ましくはCo,NiまたはZn)を含有する化合
物の粉末のうち、少なくとも1種または2種以上を添加
混合し、焼成して製造される。前記A(Aは、Sr,B
a,Ca)、R(Rは、+3価または+4価を取りうる
イオン半径が1.00オングストローム以上の元素:好
ましくはLa,Pr,NdまたはCeのいずれか)、M
(Mは、イオン半径が0.90オングストローム以下の
元素:好ましくはCo,NiまたはZn)を含有する化
合物の粉末としては、酸化物、または焼成により酸化物
となる化合物、例えば炭酸塩、水酸化物、硝酸塩等のい
ずれであってもよい。原料粉末の平均粒径は特に限定さ
れないが、特に酸化鉄は微細粉末が好ましく、一次粒子
の平均粒径が1μm以下、特に0.5μm以下であること
が好ましい。なお、上記の原料粉末の他、必要に応じて
23等や、他の化合物、例えばSi,Al,Ga,I
n,Li,Mg,Mn,Ni,Cr,Cu,Ti,Z
r,Ge,Sn,V,Nb,Ta,Sb,As,W,M
o等を含む化合物を添加物あるいは不可避成分等の不純
物として含有していてもよい。
【0054】仮焼は、空気中において例えば1000〜
1350℃で1秒間〜10時間、特に1秒間〜3時間程
度行えばよい。
【0055】このようにして得られた仮焼体は、実質的
にマグネトプランバイト型のフェライト構造をもち、そ
の一次粒子の平均粒径は、好ましくは2μm以下、より
好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.1〜1μ
m、最も好ましくは0.1〜0.5μmである。平均粒径
は走査型電子顕微鏡により測定すればよい。
【0056】次いで、仮焼体を粉砕した後、あるいは粉
砕時に前記A(Aは、Sr,Ba,Ca)、R(Rは、
+3価または+4価を取りうるイオン半径が1.00オ
ングストローム以上の元素:好ましくはLa,Pr,N
dまたはCeのいずれか)、M(Mは、イオン半径が
0.90オングストローム以下の元素:好ましくはC
o,NiまたはZn)を含有する化合物の粉末の少なく
とも1種または2種以上を混合し、成形し、焼結するこ
とにより製造する。具体的には、以下の手順で製造する
ことが好ましい。化合物の粉末の添加量は、仮焼体の1
〜100体積%、より好ましくは5〜70体積%、特に
10〜50体積%が好ましい。
【0057】前記化合物の添加時期は仮焼後、焼成前で
あれば特に規制されるものではないが、好ましくは次に
説明する粉砕時に添加することが好ましい。添加される
原料粉末の種類や量は任意であり、同じ原料を仮焼前後
で分けて添加してもよい。ただし、全量の30%以上、
特に50%以上は仮焼後に行う後工程で添加することが
好ましい。なお、添加される化合物の平均粒径は、通常
0.1〜2μm 程度とする。
【0058】本発明では、酸化物磁性体粒子と、分散媒
としての水と、分散剤とを含む成形用スラリーを用いて
湿式成形を行うが、分散剤の効果をより高くするために
は、湿式成形工程の前に湿式粉砕工程を設けることが好
ましい。また、酸化物磁性体粒子として仮焼体粒子を用
いる場合、仮焼体粒子は一般に顆粒状であるので、仮焼
体粒子の粗粉砕ないし解砕のために、湿式粉砕工程の前
に乾式粗粉砕工程を設けることが好ましい。なお、共沈
法や水熱合成法などにより酸化物磁性体粒子を製造した
場合には、通常、乾式粗粉砕工程は設けず、湿式粉砕工
程も必須ではないが、配向度をより高くするためには湿
式粉砕工程を設けることが好ましい。以下では、仮焼体
粒子を酸化物磁性体粒子として用い、乾式粗粉砕工程お
よび湿式粉砕工程を設ける場合について説明する。
【0059】乾式粗粉砕工程では、通常、BET比表面
積が2〜10倍程度となるまで粉砕する。粉砕後の平均
粒径は、0.1〜1μm 程度、BET比表面積は4〜1
0m2/g程度であることが好ましく、粒径のCVは80%
以下、特に10〜70%に維持することが好ましい。粉
砕手段は特に限定されず、例えば乾式振動ミル、乾式ア
トライター(媒体撹拌型ミル)、乾式ボールミル等が使
用できるが、特に乾式振動ミルを用いることが好まし
い。粉砕時間は、粉砕手段に応じて適宜決定すればよ
い。なお、乾式粉砕工程時に、前記原料粉末の一部を添
加することが好ましい。
【0060】乾式粗粉砕には、仮焼体粒子に結晶歪を導
入して保磁力HcBを小さくする効果もある。保磁力の低
下により粒子の凝集が抑制され、分散性が向上し、配向
度も向上する。粒子の結晶歪は、後の焼結工程において
解放され、永久磁石とすることができる。
【0061】なお、乾式粗粉砕の際には、通常、SiO
2 と、焼成によりCaOとなるCaCO3 とが添加され
る。SiO2 およびCaCO3 は、一部を仮焼前に添加
してもよく、その場合には特性向上が認められる。
【0062】乾式粗粉砕の後、粉砕された粒子と水とを
含む粉砕用スラリーを調製し、これを用いて湿式粉砕を
行う。粉砕用スラリー中の仮焼体粒子の含有量は、10
〜70重量%程度であることが好ましい。湿式粉砕に用
いる粉砕手段は特に限定されないが、通常、ボールミ
ル、アトライター、振動ミル等を用いることが好まし
い。粉砕時間は、粉砕手段に応じて適宜決定すればよ
い。
【0063】湿式粉砕後、粉砕用スラリーを濃縮して成
形用スラリーを調製する。濃縮は、遠心分離などによっ
て行えばよい。成形用スラリー中の仮焼体粒子の含有量
は、60〜90重量%程度であることが好ましい。
【0064】湿式成形工程では、成形用スラリーを用い
て磁場中成形を行う。成形圧力は0.1〜0.5ton/cm
2 程度、印加磁場は5〜15kOe 程度とすればよい。
【0065】成型用のスラリーに非水系の分散媒を用い
ると、高配向度が得られ好ましいが、本発明では好まし
くは水系分散媒に分散剤が添加された成形用スラリーを
用いる。本発明で好ましく用いる分散剤は、水酸基およ
びカルボキシル基を有する有機化合物であるか、その中
和塩であるか、そのラクトンであるか、ヒロドキシメチ
ルカルボニル基を有する有機化合物であるか、酸として
解離し得るエノール型水酸基を有する有機化合物である
か、その中和塩であることが好ましい。
【0066】なお、非水系の分散媒を用いる場合には、
例えば特開平6−53064号公報に記載されているよ
うに、トルエンやキシレンのような有機溶媒に、例えば
オレイン酸のような界面活性剤を添加して、分散媒とす
る。このような分散媒を用いることにより、分散しにく
いサブミクロンサイズのフェライト粒子を用いた場合で
も最高で98%程度の高い磁気的配向度を得ることが可
能である。
【0067】上記各有機化合物は、炭素数が3〜20、
好ましくは4〜12であり、かつ、酸素原子と二重結合
した炭素原子以外の炭素原子の50%以上に水酸基が結
合しているものである。炭素数が2以下であると、本発
明の効果が実現しない。また、炭素数が3以上であって
も、酸素原子と二重結合した炭素原子以外の炭素原子へ
の水酸基の結合比率が50%未満であれば、やはり本発
明の効果は実現しない。なお、水酸基の結合比率は、上
記有機化合物について限定されるものであり、分散剤そ
のものについて限定されるものではない。例えば、分散
剤として、水酸基およびカルボキシル基を有する有機化
合物(ヒドロキシカルボン酸)のラクトンを用いると
き、水酸基の結合比率の限定は、ラクトンではなくヒド
ロキシカルボン酸自体に適用される。
【0068】上記有機化合物の基本骨格は、鎖式であっ
ても環式であってもよく、また、飽和であっても不飽和
結合を含んでいてもよい。
【0069】分散剤としては、具体的にはヒドロキシカ
ルボン酸またはその中和塩もしくはそのラクトンが好ま
しく、特に、グルコン酸(C=6;OH=5;COOH
=1)またはその中和塩もしくはそのラクトン、ラクト
ビオン酸(C=12;OH=8;COOH=1)、酒石
酸(C=4;OH=2;COOH=2)またはこれらの
中和塩、グルコヘプトン酸γ−ラクトン(C=7;OH
=5)が好ましい。そして、これらのうちでは、配向度
向上効果が高く、しかも安価であることから、グルコン
酸またはその中和塩もしくはそのラクトンが好ましい。
【0070】ヒドロキシメチルカルボニル基を有する有
機化合物としては、ソルボースが好ましい。
【0071】酸として解離し得るエノール型水酸基を有
する有機化合物としては、アスコルビン酸が好ましい。
【0072】なお、本発明では、クエン酸またはその中
和塩も分散剤として使用可能である。クエン酸は水酸基
およびカルボキシル基を有するが、酸素原子と二重結合
した炭素原子以外の炭素原子の50%以上に水酸基が結
合しているという条件は満足しない。しかし、配向度向
上効果は認められる。
【0073】上記した好ましい分散剤の一部について、
構造を以下に示す。
【0074】
【化1】
【0075】また、本出願人による特願平10−159
927号に記載されているような分散剤を用いてもよ
い。すなわち、この分散剤は、カルボキシル基を有する
糖類またはその誘導体であるか、これらの塩である有機
化合物である。そして、この分散剤は、炭素数が21以
上とされる。
【0076】なお、分散剤の分子量が大きくなるほどス
ラリーの粘度が高くなるため、スラリーの粘度が高すぎ
る場合には、例えば、分散剤を酵素などにより加水分解
する方法により粘度を低下させてもよい。
【0077】上記分散剤において基本骨格を構成する糖
類は、セルロースやでんぷんなどの多糖類のほか、これ
らの還元誘導体、酸化誘導体、脱水誘導体などを包含
し、さらに広範囲の誘導体、例えばアミノ糖やチオ糖な
どをも包含する化合物である。
【0078】カルボキシル基を有する糖類としては、O
H基の少なくとも一部が、カルボキシル基を有する有機
化合物との間でエーテル結合を形成しているものが好ま
しい。このような化合物としては、糖類とグリコール酸
とのエーテルが好ましく、具体的には、カルボキシメチ
ルセルロースまたはカルボキシメチルでんぷんが好まし
い。これらの化合物において、カルボキシメチル基の置
換度、すなわちエーテル化度は最大で3となるが、エー
テル化度は0.4以上であることが好ましい。エーテル
化度が小さすぎると、水に溶けにくくなる。なお、カル
ボキシメチルセルロースは、通常、ナトリウム塩の形で
合成され、本発明ではこのナトリウム塩も分散剤として
用いることができるが、磁気特性に与える悪影響が少な
いことから、好ましくはアンモニウム塩を用いる。ま
た、酸化でんぷんも分子内にカルボキシル基を有する糖
類であり、本発明において好ましく用いられる分散剤で
ある。
【0079】磁場配向による配向度は、スラリーのpH
の影響を受ける。具体的には、pHが低すぎると配向度
は低下し、これにより焼結後の残留磁束密度が影響を受
ける。分散剤として水溶液中で酸としての性質を示す化
合物、例えばヒドロキシカルボン酸などを用いた場合に
は、スラリーのpHが低くなってしまう。したがって、
例えば、分散剤と共に塩基性化合物を添加するなどし
て、スラリーのpHを調整することが好ましい。上記塩
基性化合物としては、アンモニアや水酸化ナトリウムが
好ましい。アンモニアは、アンモニア水として添加すれ
ばよい。なお、ヒドロキシカルボン酸のナトリウム塩を
用いることにより、pH低下を防ぐこともできる。
【0080】六方晶フェライト磁石のように副成分とし
てSiO2 およびCaCO3 を添加する場合、分散剤と
してヒドロキシカルボン酸やそのラクトンを用いると、
主として成形用スラリー調製の際にスラリーの上澄みと
共にSiO2 およびCaCO 3 が流出してしまい、HcJ
が低下するなど所望の性能が得られなくなる。また、上
記塩基性化合物を添加するなどしてpHを高くしたとき
には、SiO2 およびCaCO3 の流出量がより多くな
る。これに対し、ヒドロキシカルボン酸のカルシウム塩
を分散剤として用いれば、SiO2 およびCaCO3
流出が抑えられる。ただし、上記塩基性化合物を添加し
たり、分散剤としてナトリウム塩を用いたりしたとき
に、SiO2 およびCaCO3 を目標組成に対し過剰に
添加すれば、磁石中のSiO2 量およびCaO量の不足
を防ぐことができる。なお、アスコルビン酸を用いた場
合には、SiO2 およびCaCO3 の流出はほとんど認
められない。
【0081】上記理由により、スラリーのpHは、好まし
くは7以上、より好ましくは8〜11である。
【0082】分散剤として用いる中和塩の種類は特に限
定されず、カルシウム塩やナトリウム塩等のいずれであ
ってもよいが、上記理由から、好ましくはカルシウム塩
を用いる。分散剤にナトリウム塩を用いたり、アンモニ
ア水を添加した場合には、副成分の流出のほか、成形体
や焼結体にクラックが発生しやすくなるという問題が生
じる。
【0083】なお、分散剤は2種以上を併用してもよ
い。
【0084】分散剤の添加量は、酸化物磁性体粒子であ
る仮焼体粒子に対し、好ましくは0.05〜3.0重量
%、より好ましくは0.10〜2.0重量%である。分
散剤が少なすぎると配向度の向上が不十分となる。一
方、分散剤が多すぎると、成形体や焼結体にクラックが
発生しやすくなる。
【0085】なお、分散剤が水溶液中でイオン化し得る
もの、例えば酸や金属塩などであるときには、分散剤の
添加量はイオン換算値とする。すなわち、水素イオンや
金属イオンを除く有機成分に換算して添加量を求める。
また、分散剤が水和物である場合には、結晶水を除外し
て添加量を求める。例えば、分散剤がグルコン酸カルシ
ウム一水和物である場合の添加量は、グルコン酸イオン
に換算して求める。
【0086】また、分散剤がラクトンからなるとき、あ
るいはラクトンを含むときには、ラクトンがすべて開環
してヒドロキシカルボン酸になるものとして、ヒドロキ
シカルボン酸イオン換算で添加量を求める。
【0087】分散剤の添加時期は特に限定されず、乾式
粗粉砕時に添加してもよく、湿式粉砕時の粉砕用スラリ
ー調製の際に添加してもよく、一部を乾式粗粉砕の際に
添加し、残部を湿式粉砕の際に添加してもよい。あるい
は、湿式粉砕後に撹拌などによって添加してもよい。い
ずれの場合でも、成形用スラリー中に分散剤が存在する
ことになるので、本発明の効果は実現する。ただし、粉
砕時に、特に乾式粗粉砕時に添加するほうが、配向度向
上効果は高くなる。乾式粗粉砕に用いる振動ミル等で
は、湿式粉砕に用いるボールミル等に比べて粒子に大き
なエネルギーが与えられ、また、粒子の温度が上昇する
ため、化学反応が進行しやすい状態になると考えられ
る。したがって、乾式粗粉砕時に分散剤を添加すれば、
粒子表面への分散剤の吸着量がより多くなり、この結
果、より高い配向度が得られるものと考えられる。実際
に、成形用スラリー中における分散剤の残留量(吸着量
にほぼ等しいと考えられる)を測定すると、分散剤を乾
式粗粉砕時に添加した場合のほうが、湿式粉砕時に添加
した場合よりも添加量に対する残留量の比率が高くな
る。なお、分散剤を複数回に分けて添加する場合には、
合計添加量が前記した好ましい範囲となるように各回の
添加量を設定すればよい。
【0088】成形工程後、成形体を大気中または窒素中
において100〜500℃の温度で熱処理して、添加し
た分散剤を十分に分解除去する。次いで焼結工程におい
て、成形体を例えば大気中で好ましくは1150〜12
50℃、より好ましくは1160〜1220℃の温度で
0.5〜3時間程度焼結して、異方性六方晶フェライト
磁石を得る。
【0089】本発明の磁石の平均結晶粒径は、好ましく
は2μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好まし
くは0.5〜1.0μmであるが、本発明では平均結晶
粒径が1μmを超えていても、十分に高い保磁力が得ら
れる。結晶粒径は走査型電子顕微鏡によって測定するこ
とができる。なお、比抵抗は100Ωm 程度以上であ
る。
【0090】なお、前記成形体をクラッシャー等を用い
て解砕し、ふるい等により平均粒径が100〜700μ
m程度となるように分級して磁場配向顆粒を得、これを
乾式磁場成形した後、焼結することにより焼結磁石を得
てもよい。
【0091】なお、前記の仮焼体のスラリーを用いた粉
砕後、これを乾燥し、その後焼成を行って磁石粉末を得
てもよい。
【0092】本発明の六方晶フェライト磁石を使用する
ことにより、一般に次に述べるような効果が得られ、優
れた応用製品を得ることができる。すなわち、従来のフ
ェライト製品と同一形状であれば、磁石から発生する磁
束密度を増やすことができるため、モータであれば高ト
ルク化等を実現でき、スピーカーやヘッドホーンであれ
ば磁気回路の強化により、リニアリティーのよい音質が
得られるなど応用製品の高性能化に寄与できる。また、
従来と同じ機能でよいとすれば、磁石の大きさ(厚み)
を小さく(薄く)でき、小型軽量化(薄型化)に寄与で
きる。また、従来は界磁用の磁石を巻線式の電磁石とし
ていたようなモータにおいても、これを六方晶フェライ
ト磁石で置き換えることが可能となり、軽量化、生産工
程の短縮、低価格化に寄与できる。さらに、保磁力(H
cJ)の温度特性に優れているため、従来は六方晶フェラ
イト磁石の低温減磁(永久減磁)の危険のあった低温環
境でも使用可能となり、特に寒冷地、上空域などで使用
される製品の信頼性を著しく高めることができる。
【0093】本発明の六方晶フェライト磁石は所定の形
状に加工され、下記に示すような幅広い用途に使用され
る。
【0094】例えば、フュエールポンプ用、パワーウイ
ンド用、ABS用、ファン用、ワイパ用、パワーステア
リング用、アクティブサスペンション用、スタータ用、
ドアロック用、電動ミラー用等の自動車用モータ;FD
Dスピンドル用、VTRキャプスタン用、VTR回転ヘ
ッド用、VTRリール用、VTRローディング用、VT
Rカメラキャプスタン用、VTRカメラ回転ヘッド用、
VTRカメラズーム用、VTRカメラフォーカス用、ラ
ジカセ等キャプスタン用、CD,LD,MDスピンドル
用、CD,LD,MDローディング用、CD,LD光ピ
ックアップ用等のOA、AV機器用モータ;エアコンコ
ンプレッサー用、冷蔵庫コンプレッサー用、電動工具駆
動用、扇風機用、電子レンジファン用、電子レンジプレ
ート回転用、ミキサ駆動用、ドライヤーファン用、シェ
ーバー駆動用、電動歯ブラシ用等の家電機器用モータ;
ロボット軸、関節駆動用、ロボット主駆動用、工作機器
テーブル駆動用、工作機器ベルト駆動用等のFA機器用
モータ;その他、オートバイ用発電器、スピーカ・ヘッ
ドホン用マグネット、マグネトロン管、MRI用磁場発
生装置、CD−ROM用クランパ、ディストリビュータ
用センサ、ABS用センサ、燃料・オイルレベルセン
サ、マグネットラッチ等に好適に使用される。
【0095】
【実施例】 <実験例> 原料としては、次のものを用いた。 Fe23粉末(一次粒子径0.3μm)、 1000.0g (不純物としてMn,Cr,Si,Clを含む) SrCO3粉末(一次粒子径2μm)、 130.3g (不純物としてBa,Caを含む) 酸化コバルト 17.56g La23 35.67g
【0096】 また添加物として、 SiO2粉末(一次粒子径0.01μm) 2.30g CaCO3粉末(一次粒子径1μm) 1.72g を用いた。
【0097】上記出発原料および添加物を湿式アトライ
ターで粉砕後、乾燥・整粒し、これを空気中において1
250℃で3時間焼成し、顆粒状の仮焼体を得た。得ら
れた仮焼体の磁気特性を試料振動式磁力計(VSM)で
測定した結果、飽和磁化σsは68 emu/g 、保磁力H
cJは4.6kOe であった。
【0098】得られた仮焼体(110g )に対し、Si
2(0.44g )、CaCO3(1.38g )を、それ
ぞれ所定量混合し、さらにグルコン酸カルシウム(1.
13g )を添加し、バッチの振動ロッドミルにより20
分間乾式粗粉砕した。このとき、粉砕による歪みが導入
され、仮焼体粒子のHcJは、1.7kOe に低下してい
た。
【0099】この操作を2回行い、得られた粗粉砕材を
210g採取し、分散媒として水を400cc加えて混合
し、粉砕用スラリーを調整した。仮焼体の比表面積が7
m2/gとなるまで粉砕を行なった。粉砕用スラリーの固形
分濃度は34重量%であった。
【0100】この湿式粉砕用スラリーを用いて、ボール
ミル中で湿式粉砕を40時間行った。湿式粉砕後の比表
面積は、8.5m2/g (平均粒径0.5μm )であっ
た。湿式粉砕後のスラリーのpHは、9〜10であった。
【0101】湿式粉砕後、粉砕用スラリーを遠心分離し
て、スラリー中の仮焼体粒子の濃度が約78%となるよ
うに調整し、成形用スラリーとした。この成形用スラリ
ーから水を除去しながら圧縮成形を行った。この成形
は、圧縮方向に約13kOe の磁場を印加しながら行っ
た。得られた成形体は、直径30mm、高さ18mmの円柱
状であった。成形圧力は0.4ton/cm2とした。
【0102】次に、成形体を100〜360℃で熱処理
してグルコン酸を十分に除去した後、空気中において、
昇温速度を5℃/分間とし、1220℃で1時間保持す
ることにより焼成を行い、焼結体を得た。得られた焼結
体を高分解能TEMで観察し、積層欠陥部分と、それ以
外の部分との組成分析をEDS分析により行った。各1
0点を測定した平均値を以下に示す。
【0103】 積層欠陥部分(wt%) 積層欠陥以外の部分(wt%) Fe23 84.5 84.2 SrO 8.5 9.8 La23 3.4 3.7 CoO 2.6 0.9 SiO2 0.8 1.0 CaO 0.2 0.4
【0104】この場合、EDSによる分析領域(スポッ
トサイズ)は、積層欠陥の幅よりも広いため、積層欠陥
部分の組成は、その他の部分の影響を受けているが、明
確な傾向として、積層欠陥部分にCoが多く存在してい
ることが確認された。さらに、積層欠陥部分を高分解能
TEM(透過型電子顕微鏡)で注意深く観察した。本発
明の六方晶フェライト磁石の一般的な結晶構造を図1
に、積層欠陥部分の高分解能TEM写真を図2に示す。
図1に示されるように、M型六方晶フェライトは、S層
/R層/S* 層/R* 層のように、S層とR層とが交互
に積層する構造を有している。ここで、S* ,R* は、
S,Rをc軸を中心に180度回転させたものである。
しかしながら、図2から、積層欠陥は、この周期が乱れ
ている部分であることがわかった。なお、図中Cで示す
領域は格子定数Cに対応する長さ(単位胞または単位格
子)を表している。ここで、Coなどの2価のイオンは
スピネル層にはいるものと考えられるから、積層欠陥
が、スピネル層の"IntergrowthLayer"であると考えれ
ば、積層欠陥部分のCo濃度が高いことを説明できるこ
とがわかった。
【0105】実施例1〔焼結磁石:サンプル1(水系後添加)〕 原料としては、次のものを用いた。 Fe23粉末(一次粒子径0.3μm)、 1000.0g (不純物としてMn,Cr,Si,Clを含む) SrCO3粉末(一次粒子径2μm)、 161.2g (不純物としてBa,Caを含む)
【0106】 また添加物として、 SiO2粉末(一次粒子径0.01μm) 2.30g CaCO3粉末(一次粒子径1μm) 1.72g を用いた。
【0107】上記出発原料および添加物を湿式アトライ
ターで粉砕後、乾燥・整粒し、これを空気中において1
250℃で3時間焼成し、顆粒状の仮焼体を得た。
【0108】得られた仮焼体(87.26g)に対し、
SiO2(0.44g )、CaCO3(1.38g )、炭
酸ランタン〔La2(CO33・8H2O〕(6.12g
)、酸化コバルト(CoO)(1.63g )を、それ
ぞれ混合し、さらにグルコン酸カルシウム(1.13g
)を添加し、バッチの振動ロッドミルにより20分間
乾式粗粉砕した。このとき、粉砕による歪みが導入さ
れ、仮焼体粒子のHcJは、1.7kOe に低下していた。
【0109】この操作を2回行い、得られた粗粉砕材1
77gを採取し、これに原料として使用したのと同じ酸
化鉄(α−Fe23)37.25g加え、分散媒として
水を400cc加えて混合し、粉砕用スラリーを調整し
た。仮焼体の比表面積が7m2/gとなるまで粉砕を行なっ
た。粉砕用スラリーの固形分濃度は34重量%であっ
た。
【0110】この湿式粉砕用スラリーを用いて、ボール
ミル中で湿式粉砕を40時間行った。湿式粉砕後の比表
面積は、8.5m2/g (平均粒径0.5μm )であっ
た。湿式粉砕後のスラリーのpHは、9.5であった。
【0111】湿式粉砕後、粉砕用スラリーを遠心分離し
て、スラリー中の仮焼体粒子の濃度が78%となるよう
に調整し、成形用スラリーとした。この成形用スラリー
から水を除去しながら圧縮成形を行った。この成形は、
圧縮方向に約13kOe の磁場を印加しながら行った。得
られた成形体は、直径30mm、高さ18mmの円柱状であ
った。成形圧力は0.4ton/cm2とした。
【0112】次に、成形体を100〜300℃で熱処理
してグルコン酸を十分に除去した後、空気中において、
昇温速度を5℃/分間とし、1220℃で1時間保持す
ることにより焼成を行い、焼結体を得た。得られた焼結
体の組成は、 Sr0.8La0.2(Fe11.8Co0.2)O19 であった。得られた焼結体のa面の組織をTEM(透過
型電子顕微鏡)で観察した。このときの倍率は1000
0倍、視野は2視野観察した。その結果、全体の結晶粒
子の数N(N=80)に対する積層欠陥を有する結晶の
数nの割合n/Nは、9/80であった。得られた試料
のTEM写真を図3,4に示す。また、これらの拡大写
真を、それぞれ図5(上半分)、6(下半分)、および
図7(上半分)、8(下半分)に示す。また、TEM観
察と同時にEDSによる成分分析を行った結果、Laは
粒子内の中心部で殆ど存在せず、粒界近傍や、三重点部
分に多く存在していた。結果を図9〜図11に示す。こ
こで、図9は粒界部、図10は結晶粒内部、図11は三
重点における分析結果を表している。さらに、観察され
た任意の粒子1,3について、粒界→粒子内部→粒界と
連続的にLa23 およびCoOの分析を行った。結果
を図12,13および図14,15に示す。これらの測
定結果からも、La、およびCoも粒子内部より粒界近
傍に高濃度で存在することが確認された。なお、各試料
をX線回折により解析したところ、いずれもM型フェラ
イト単相であった。
【0113】さらに、得られた焼結体の上下面を加工し
た後、残留磁束密度(Br)、保磁力(HcJおよびHc
b)および最大エネルギー積[(BH)max]、飽和磁化(4π
Is)、磁気的配向度(Ir/Is)、角型性(Hk /
HcJ)を測定した。結果を表1に示す。
【0114】次いでサンプルを直径5mm×高さ6.5mm
に加工した。VSMによりc軸方向の磁化の温度依存性
を測定することによりキュリー温度Tcを求めた。その
結果本発明サンプルNo. 1のキュリー温度Tcは、44
0℃と456℃の2段になっていることがわかった。
【0115】
【表1】
【0116】なお、表1において、*は比較サンプルを
表す。
【0117】実施例2 実施例1の方法で作製した成形体を、酸素濃度を1%、
20%、50%として焼成し、実施例1と同様にして磁
気特性、およびキュリー温度、Brの温度係数を測定し
た。結果を表2に示す。
【0118】
【表2】
【0119】表2から明らかなように、酸素濃度の増加
に従い、得られた焼結体の磁気特性が向上していること
がわかる。
【0120】さらに、焼成雰囲気O2 :1%、と20%
で得られた焼結体をTEMで観察した。結果を図16お
よび17に示す。図16,17から明らかなように、酸
素濃度が少ないと欠陥が増加することがわかる。
【0121】比較例1〔焼結磁石:サンプル2(溶剤系前添加)〕 原料としては、次のものを用いた。 Fe23粉末(一次粒子径0.3μm)、 1000.0g (不純物としてMn,Cr,Si,Clを含む) SrCO3粉末(一次粒子径2μm)、 130.3g (不純物としてBa,Caを含む) 酸化コバルト 17.56g La23 35.67g
【0122】 また添加物として、 SiO2粉末(一次粒子径0.01μm) 2.30g CaCO3粉末(一次粒子径1μm) 1.72g を用いた。
【0123】上記出発原料および添加物を湿式アトライ
ターで粉砕後、乾燥・整粒し、これを空気中において1
250℃で3時間焼成し、顆粒状の仮焼体を得た。得ら
れた仮焼体の磁気特性を試料振動式磁力計(VSM)で
測定した結果、飽和磁化σsは68 emu/g 、保磁力H
cJは4.6kOe であった。
【0124】得られた仮焼体(110g )に対し、Si
2(0.44g )、CaCO3(1.38g )を、それ
ぞれ所定量混合し、バッチの振動ロッドミルにより20
分間乾式粗粉砕した。このとき、粉砕による歪みが導入
され、仮焼体粒子のHcJは、1.7kOe に低下してい
た。
【0125】次いで、非水系溶媒としてキシレンを用
い、界面活性剤としてオレイン酸を用いて、ボールミル
中で仮焼体粉末を40時間湿式粉砕した。オレイン酸
は、仮焼体粉末に対して、1.3重量%添加した。スラ
リー中の仮焼体粉末は、33重量%とした。粉砕は、比
表面積が8〜9m2/g となるまで行った。
【0126】湿式粉砕後、粉砕用スラリーを遠心分離し
て、スラリー中のフェライト粒子の濃度が約85%とな
るように調整し、成形用スラリーとした。この成形用ス
ラリーから溶剤を除去しながら圧縮成形を行った。この
成形は、圧縮方向に約13kOe の磁場を印加しながら行
った。得られた成形体は、直径30mm、高さ18mmの円
柱状であった。成形圧力は0.4ton/cm2とした。
【0127】次に、成形体を100〜360℃で熱処理
してオレイン酸を十分に除去した後、空気中において、
昇温速度を5℃/分間とし、1220℃で1時間保持す
ることにより焼成を行い、焼結体を得た。得られた焼結
体の組成は、Sr0.8La0.2(Fe11.8Co0.2)O19
であった。得られた焼結体を上記サンプル1と同様にし
てTEMで観察した。その結果、全体の結晶粒子の数N
(N=120)に対する積層欠陥を有する結晶の数nの
割合n/Nは、50/120であった。得られた試料の
TEM写真を図18,19に示す。また、TEM観察と
同時にEDSによる成分分析を行った結果、上記実施例
と異なり、La濃度は、結晶粒子内、粒界近傍、三重点
部で殆ど変化はなかった。結果を図20〜図22に示
す。ここで、図20は粒界部、図21は結晶粒内部、図
22は三重点における分析結果を表している。これによ
り、実施例の後添加方式だと結晶粒内のLa量が少なく
なることがわかった。なお、各試料をX線回折により解
析したところ、いずれもM型フェライト単相であった。
【0128】さらに、得られた焼結体の上下面を加工し
た後、残留磁束密度(Br)、保磁力(HcJおよびHc
b)および最大エネルギー積[(BH)max]、飽和磁化(4π
Is)、磁気的配向度(Ir/Is)、角型性(Hk /
HcJ)を測定した。結果を表1に示す。
【0129】次いでサンプルを直径5mm×高さ6.5mm
に加工した。VSMによりc軸方向の磁化の温度依存性
を測定することによりキュリー温度Tcを求めた。その
結果比較サンプルNo. 2のキュリー温度Tcは、444
℃の1段になっていることがわかった。
【0130】比較例2〔焼結磁石:(サンプル3:Zn
含有溶剤系前添加)〕 比較例1においてCoの代わりにZnを含有するよう原
料粉末を替え、かつ最終組成が、 Sr0.80.3(Fe11.7Zn0.3)O19 (R=La,Ce,Pr,Nd,Sm)となるように調
整した他は、比較例1と同様にして焼結体を得た。得ら
れた焼結体を上記サンプル1と同様にしてTEMで観察
した。その結果、全体の結晶粒子の数Nに対する積層欠
陥を有する結晶の数nの割合n/Nは、0.6〜0.8
であった。さらに、1個の結晶粒子中に、3個以上の積
層欠陥を含む結晶も多く観察された。次に、TEM−E
DSにより積層欠陥部分と、それ以外の部分との組成分
析を行った。各10点を測定した平均値を以下に示す。
【0131】 積層欠陥部分(wt%) 積層欠陥以外の部分(wt%) Fe23 83.99 84.65 SrO 6.49 7.22 La23 5.22 6.13 ZnO 4.30 2.00
【0132】これより、積層欠陥部分にZnが多く存在
していることがわかった。これらのサンプルのTEM写
真を図23,24に示す。
【0133】比較例3 焼結体の組成を、Sr1−xLaFe12−xCo
19(x=0,0.1,0.2,0.3,0.4,
0.6)となるよう、比較例1と同様にして焼結体を作
製して、TEMにより観察した。その結果、積層欠陥の
割合は、以下の表3に示すように、LaとCoの比率が
増える(xが増加する)に従って、積層欠陥の割合が増
加することがわかった。また、これらの積層欠陥部分で
は、Co濃度が高いことがわかった。
【0134】
【表3】
【0135】さらに、比較例1と同様にして焼結体の磁
気特性を測定した。結果を表4に示す。焼結体の磁気特
性(特にHcJ)は、x=0〜0.3の範囲ではxの増加
とともに向上するが、xが0.4以上では逆に劣化し
た。このことは、LaとCoを含有させることによる特
性向上効果に、積層欠陥の割合が増加することによる特
性劣化効果が掛け合わされた結果と考えられる。従っ
て、積層欠陥の割合を低く抑えることにより、LaとC
oの効果をさらに高めることができると考えられる。
【0136】
【表4】
【0137】比較例4 焼結体の組成が、 Sr0.7La0.3Fe11.7Ni0.319 Sr0.8La0.2Fe11.8Mn0.219 Sr0.8La0.2Fe11.8Cu0.219 SrFe11.7Co0.319 SrFe11.6Ti0.219 となるようにした以外は、比較例1と同様にして焼結体
を作製し、TEM−EDSで解析した。その結果、Sr
0.8La0.2Fe11.8Mn0.219以外の試料には同様の
欠陥の存在が確認され、欠陥部分には焼結体の元素Mが
高濃度に存在することが確認された。以上の実施例か
ら、本発明の効果が明らかである。
【0138】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、M型フェ
ライトの飽和磁化と磁気異方性とを同時に高めることに
より、従来のM型六方晶フェライト磁石では達成不可能
であった高い残留磁束密度と高い保磁力とを有する六方
晶フェライト磁石を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の六方晶フェライト磁石の結晶構造を示
した図である。
【図2】実験例で得られた欠陥部分のTEM写真であ
る。
【図3】本発明の焼結磁石サンプル1のa面の組織をT
EMにより撮影した第1の図面代用写真である。
【図4】本発明の焼結磁石サンプル1のa面の組織をT
EMにより撮影した第2の図面代用写真である。
【図5】図3の拡大写真(上半分)である。
【図6】図3の拡大写真(下半分)である。
【図7】図4の拡大写真(上半分)である。
【図8】図5の拡大写真(下半分)である。
【図9】本発明の焼結磁石サンプル1のEDSによる粒
界部における成分分析結果を示した図である。
【図10】本発明の焼結磁石サンプル1のEDSによる
結晶粒内部における成分分析結果を示した図である。
【図11】本発明の焼結磁石サンプル1のEDSによる
三重点部における成分分析結果を示した図である。
【図12】任意の粒子1について、粒界→粒子内部→粒
界と連続的にLa23 およびCoOの分析を行った様
子を示すTEM写真である。
【図13】任意の粒子1について、粒界→粒子内部→粒
界と連続的にLa23 およびCoOの分析を行った結
果を示すグラフである。
【図14】任意の粒子3について、粒界→粒子内部→粒
界と連続的にLa23 およびCoOの分析を行った様
子を示すTEM写真である。
【図15】任意の粒子3について、粒界→粒子内部→粒
界と連続的にLa23 およびCoOの分析を行った結
果を示すグラフである。
【図16】実施例2の焼成雰囲気O2 :1%で得られた
焼結体のTEM写真である。
【図17】実施例2の焼成雰囲気O2 :20%で得られ
た焼結体のTEM写真である。
【図18】比較例の焼結磁石サンプル1のa面の組織を
TEMにより撮影した第2の図面代用写真である。
【図19】比較例の焼結磁石サンプル1のa面の組織を
TEMにより撮影した第2の図面代用写真である。
【図20】比較例の焼結磁石サンプル1のEDSによる
粒界部における成分分析結果を示した図である。
【図21】比較例の焼結磁石サンプル1のEDSによる
結晶粒内部における成分分析結果を示した図である。
【図22】比較例の焼結磁石サンプル1のEDSによる
三重点部における成分分析結果を示した図である。
【図23】比較例2で得られたサンプルのTEM写真で
ある。
【図24】比較例2で得られたサンプルのTEM写真で
ある。
【図25】結晶粒と積層欠陥の様子を示した概念図であ
る。
【符号の説明】 1 結晶粒子 2 積層欠陥
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01F 1/10 - 1/117 C22C 38/00 303

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Sr、BaおよびCaから選択される少
    なくとも1種の元素をAとし、 La,Pr,NdおよびCeのいずれか1種または2種
    以上をRとし、 Co,NiおよびZnのいずれか1種または2種以上を
    Mとし、 A,R,FeおよびMを含有し、 このA,R,FeおよびMそれぞれの金属元素の総計の
    構成比率が、全金属元素量に対し、 A:1〜13原子%、 R:0.05〜10原子%、 Fe:80〜95原子%、 M:0.1〜5原子%である六方晶フェライト磁石であ
    り、フェライト中のRの比率をR23に換算して求めた
    場合に、R23が結晶粒子中心近傍では3wt%以下、結
    晶粒界近傍では4wt%以上存在する六方晶フェライト焼
    結磁石。
  2. 【請求項2】 フェライト中のMの比率をMOに換算し
    て求めた場合に、MOが結晶粒子中心近傍では1wt%以
    下、結晶粒界近傍では1wt%超存在する六方晶フェライ
    ト焼結磁石。
  3. 【請求項3】 マグネトプランバイト型フェライトであ
    る請求項1または2の六方晶フェライト焼結磁石。
JP2000207339A 1998-06-25 2000-07-07 六方晶フェライト焼結磁石 Expired - Lifetime JP3263694B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000207339A JP3263694B2 (ja) 1998-06-25 2000-07-07 六方晶フェライト焼結磁石

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10-194951 1998-06-25
JP19495198 1998-06-25
JP2000207339A JP3263694B2 (ja) 1998-06-25 2000-07-07 六方晶フェライト焼結磁石

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP07697599A Division JP3183869B2 (ja) 1998-06-25 1999-03-19 六方晶フェライト磁石

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2001057305A JP2001057305A (ja) 2001-02-27
JP3263694B2 true JP3263694B2 (ja) 2002-03-04

Family

ID=26508828

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000207339A Expired - Lifetime JP3263694B2 (ja) 1998-06-25 2000-07-07 六方晶フェライト焼結磁石

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3263694B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US11456096B2 (en) 2018-03-28 2022-09-27 Tdk Corporation Ferrite sintered magnet
US11615901B2 (en) 2019-02-05 2023-03-28 Tdk Corporation Ferrite sintered magnet

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4821792B2 (ja) * 2007-03-29 2011-11-24 Tdk株式会社 フェライト焼結磁石の製造方法
JP5650270B2 (ja) 2013-03-29 2015-01-07 株式会社リケン マグネトプランバイト型六方晶フェライト及びノイズ抑制シート
JP6408323B2 (ja) * 2013-09-27 2018-10-17 京セラ株式会社 フェライト焼結体およびフェライトコアならびにコイル部品
JP6596828B2 (ja) * 2014-03-07 2019-10-30 Tdk株式会社 フェライト焼結磁石及びそれを備えるモータ
KR102419883B1 (ko) * 2018-02-01 2022-07-12 엘지이노텍 주식회사 페라이트 코어 및 이를 포함하는 코일 부품
JP7275740B2 (ja) * 2019-03-27 2023-05-18 Tdk株式会社 フェライト焼結磁石及びこれを備える回転電気機械

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US11456096B2 (en) 2018-03-28 2022-09-27 Tdk Corporation Ferrite sintered magnet
US11615901B2 (en) 2019-02-05 2023-03-28 Tdk Corporation Ferrite sintered magnet

Also Published As

Publication number Publication date
JP2001057305A (ja) 2001-02-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6248253B1 (en) Hexagonal ferrite magnets
JP3181559B2 (ja) 酸化物磁性材料、フェライト粒子、ボンディット磁石、焼結磁石、これらの製造方法および磁気記録媒体
US6258290B1 (en) Magnet powder, sintered magnet, process for producing them, bonded magnet, motor and magnetic recording medium
JP2897871B2 (ja) 磁石粉末、焼結磁石、ボンディッド磁石および磁気記録媒体
JP3163279B2 (ja) 焼結磁石およびモータ
EP1465214A1 (en) Oxide magnetic material, ferrite particle, sintered magnet, bonded magnet, magnetic recording medium and motor
WO1999016086A1 (fr) Corps d'oxyde magnetique, particules de ferrite, aimant agglomere, aimant fritte, procede de fabrication de ces materiaux, et support d'enregistrement magnetique
JP3262321B2 (ja) 六方晶フェライト焼結磁石の製造方法
JP4647731B2 (ja) 磁石粉末、焼結磁石、それらの製造方法、ボンディッド磁石および磁気記録媒体
JP3263694B2 (ja) 六方晶フェライト焼結磁石
JP3157142B2 (ja) 焼結磁石およびモータ
JP3488416B2 (ja) フェライト磁石の製造方法
JP4100665B2 (ja) 六方晶フェライト焼結体の製造方法
JP4709338B2 (ja) 六方晶フェライト磁石粉末と六方晶フェライト焼結磁石の製造方法
JP3935325B2 (ja) フェライト磁石の製造方法
JP3657549B2 (ja) フェライト焼結磁石およびその製造方法
JP3927401B2 (ja) フェライト焼結磁石の製造方法
JP3183869B2 (ja) 六方晶フェライト磁石
JP3337990B2 (ja) 酸化物磁性材料、フェライト粒子、焼結磁石、ボンディッド磁石、磁気記録媒体およびモータ
JP2001223104A (ja) 焼結磁石の製造方法
JP2000138116A (ja) 六方晶フェライト磁石
JP4285797B2 (ja) 磁石粉末、焼結磁石、ボンディッド磁石及びモータ
JPH1197226A (ja) 磁石粉末、焼結磁石、ボンディッド磁石、磁気記録媒体およびモータ
JP3297023B2 (ja) 磁石粉末、焼結磁石、これらの製造方法、ボンディッド磁石、モータおよび磁気記録媒体
JP3310936B2 (ja) 異方性酸化物磁性体の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20011211

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081221

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091221

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091221

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101221

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101221

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111221

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111221

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121221

Year of fee payment: 11

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121221

Year of fee payment: 11

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131221

Year of fee payment: 12

EXPY Cancellation because of completion of term