JP3262321B2 - 六方晶フェライト焼結磁石の製造方法 - Google Patents

六方晶フェライト焼結磁石の製造方法

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JP3262321B2
JP3262321B2 JP28600998A JP28600998A JP3262321B2 JP 3262321 B2 JP3262321 B2 JP 3262321B2 JP 28600998 A JP28600998 A JP 28600998A JP 28600998 A JP28600998 A JP 28600998A JP 3262321 B2 JP3262321 B2 JP 3262321B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車用モータ等
の永久磁石材料として好適に使用される六方晶フェライ
ト、特に六方晶M型フェライトを有する磁石材料の製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】酸化物永久磁石材料には、マグネトプラ
ンバイト型(M型)の六方晶系のSrフェライトまたは
Baフェライトが主に用いられており、これらの焼結磁
石やボンディッド磁石が製造されている。
【0003】磁石特性のうち特に重要なものは、残留磁
束密度(Br)および固有保磁力(HcJ)である。
【0004】Brは、磁石の密度およびその配向度と、
その結晶構造で決まる飽和磁化(4πIs)とで決定さ
れ、 Br=4πIs×配向度×密度 で表わされる。M型のSrフェライトやBaフェライト
の4πIsは約4.65kGである。密度と配向度とは、
最も高い値が得られる焼結磁石の場合でもそれぞれ98
%程度が限界である。したがって、これらの磁石のBr
は4.46kG程度が限界であり、4.5kG以上の高いB
rを得ることは、従来、実質的に不可能であった。
【0005】本発明者らは、特開平9−115715号
公報において、M型フェライトに例えばLaとZnとを
適量含有させることにより、4πIsを最高約200G
高めることが可能であり、これによって4.5kG以上の
Brが得られることを見出した。しかしこの場合、後述
する異方性磁場(HA)が低下するため、4.5kG以上
のBrと3.5kOe以上のHcJとを同時に得ることは困
難であった。
【0006】HcJは、異方性磁場{HA(=2K1/I
s)}と単磁区粒子比率(fc)との積(HA×fc)
に比例する。ここで、K1は結晶磁気異方性定数であ
り、Isと同様に結晶構造で決まる定数である。M型B
aフェライトの場合、K1=3.3×106erg/cm3であ
り、M型Srフェライトの場合、K1=3.5×106er
g/cm3である。このように、M型Srフェライトは最大
のK1をもつことが知られているが、K1をこれ以上向上
させることは困難であった。
【0007】一方、フェライト粒子が単磁区状態となれ
ば、磁化を反転させるためには異方性磁場に逆らって磁
化を回転させる必要があるから、最大のHcJが期待され
る。フェライト粒子を単磁区粒子化するためには、フェ
ライト粒子の大きさを下記の臨界径(dc)以下にする
ことが必要である。
【0008】 dc=2(k・Tc・K1/a)1/2/Is2
【0009】ここで、kはボルツマン定数、Tcはキュ
リー温度、aは鉄イオン間距離である。M型Srフェラ
イトの場合、dcは約1μmであるから、例えば焼結磁
石を作製する場合は、焼結体の結晶粒径を1μm以下に
制御することが必要になる。高いBrを得るための高密
度化かつ高配向度と同時に、このように微細な結晶粒を
実現することは従来困難であったが、本発明者らは特開
平6−53064号公報において、新しい製造方法を提
案し、従来にない高特性が得られることを示した。しか
し、この方法においても、Brが4.4kGのときにはH
cJが4.0kOe程度となり、4.4kG以上の高いBrを
維持してかつ4.5kOe以上の高いHcJを同時に得るこ
とは困難であった。
【0010】また、焼結体の結晶粒径を1μm以下に制
御するためには、焼結段階での粒成長を考慮すると、成
形段階での粒子サイズを好ましくは0.5μm以下にす
る必要がある。このような微細な粒子を用いると、成形
時間の増加や成形時のクラックの増加などにより、一般
的に生産性が低下するという問題がある。このため、高
特性化と高生産性とを両立させることは非常に困難であ
った。
【0011】一方、高いHcJを得るためには、Al23
やCr23の添加が有効であることが従来から知られて
いた。この場合、Al3+やCr3+はM型構造中の「上向
き」スピンをもつFe3+を置換してHAを増加させると
共に、粒成長を抑制する効果があるため、4.5kOe以
上の高いHcJが得られる。しかし、Isが低下すると共
に焼結密度も低下しやすくなるため、Brは著しく低下
する。このため、HcJが4.5kOeとなる組成では最高
でも4.2kG程度のBrしか得られなかった。
【0012】ところで、従来の異方性M型フェライト焼
結磁石のHcJの温度依存性は+13Oe/℃程度で、温度
係数は+0.3〜+0.5%/℃程度の比較的大きな値
であった。このため、低温側でHcJが大きく減少し、減
磁する場合があった。この減磁を防ぐためには、室温に
おけるHcJを例えば5kOe程度の大きな値にする必要が
あるので、同時に高いBrを得ることは実質的に不可能
であった。M型フェライトの粉末のHcJの温度依存性は
焼結磁石に比べると優れているが、それでも少なくとも
+8Oe/℃程度で、温度係数は+0.15%/℃以上で
あり、温度特性をこれ以上改善することは困難であっ
た。フェライト磁石は、耐環境性に優れ安価でもあるこ
とから、自動車の各部に用いられるモータなどに使用さ
れることが多い。自動車は、寒冷あるいは酷暑の環境で
使用されることがあり、モータにもこのような厳しい環
境下での安定した動作が要求される。しかし、従来のフ
ェライト磁石は、上述したように低温環境下での保磁力
の劣化が著しく、問題があった。
【0013】また、これらの特性を満足するものであっ
ても、減磁曲線における角型性(Hk /HcJ)が低いも
のでは(BH )max が低くなると共に、経時変化が大き
くなるなどの問題がある。
【0014】一方、水系溶媒を用いた製造工程において
も、有機溶媒系を用いた場合に得られる高い配向度を得
ることができれば製造が容易となり、生産性の面で有利
であるばかりか、環境を汚染する恐れもなく、汚染防止
のための設備の必要もなくなる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、M型
フェライトの飽和磁化と磁気異方性とを同時に高めるこ
とにより、従来のM型フェライト磁石では達成不可能で
あった高い残留磁束密度と高い保磁力とを有し、保磁力
の温度特性が極めて優れ、特に低温域においても保磁力
の低下が少ない優れた磁気特性を有し、しかも減磁曲線
の角形性にも優れたフェライト磁石の製造方法を提供す
ることである。
【0016】また、本発明の他の目的は、高価なCoの
含有量を少なくしても高特性を得ることの可能なフェラ
イト磁石の製造方法を提供することである。
【0017】また、本発明の他の目的は、水系の製造工
程でも配向度が溶剤系に匹敵する値の得られるフェライ
ト磁石の製造方法を提供することである。
【0018】さらには、良好な特性を有するモータおよ
び磁気記録媒体を提供することである。
【0019】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(5)のいずれかの構成により達成される。 (1) 六方晶フェライトを主相とし、組成が、A(A
はSr,BaまたはCaから選択される少なくとも1種
の元素であって、SrまたはBaを必ず含む)、R〔R
はYを含む希土類元素から選択される少なくとも1種の
元素、またはこれにBiを含む〕、 M(MはCo、または、CoおよびZn) およびFeを含み、それぞれの金属元素の総計の構成比
率が、全金属元素量に対し、 A:1〜13原子%、 R:0.05〜10原子%、 M:0.1〜5原子%、 Fe:80〜95原子%、 を満足する焼結磁石を製造するにあたり、少なくとも前
記Aを含有する六方晶フェライトを主相とする粒子に、
焼結磁石の各元素が前記組成を満足するようにCoおよ
び/またはRを含む化合物を添加し、あるいはこれに加
えてさらにFeおよび/またはAを含む化合物を添加
し、その後、成形し、本焼成を行うことを特徴とする六
方晶フェライト焼結磁石の製造方法。 (2) 前記化合物の一部、または全部を添加するに際
し、さらに、SiおよびCaを添加する上記(1)の六
方晶フェライト焼結磁石の製造方法。 (3) 前記化合物の一部、または全部を添加するに際
し、さらに、分散剤を添加する上記(1)または(2)
の六方晶フェライト焼結磁石の製造方法。 (4) 前記化合物の一部は、粉砕時に添加される上記
(1)〜(3)のいずれかの六方晶フェライト焼結磁石
の製造方法。 (5) 前記分散剤は、水酸基およびカルボキシル基を
有する有機化合物またはその中和塩もしくはそのラクト
ンであるか、ヒドロキシメチルカルボニル基を有する有
機化合物であるか、酸として解離し得るエノール形水酸
基を有する有機化合物またはその中和塩であり、前記有
機化合物が、炭素数3〜20であり、酸素原子と二重結
合した炭素原子以外の炭素原子の50%以上に水酸基が
結合しているものである上記(3)または(4)の六方
晶フェライト焼結磁石の製造方法。
【0020】
【0021】
【0022】
【作用】本発明者らは、特願平9−56856号におい
て、上記磁気特性の改善について検討した結果、例えば
LaやCoを含有するマグネトプランパイト型Srフェ
ライトにおいて、高い磁気特性と優れたHcJの温度特性
が得られることを見出した。しかし、この組成における
フェライト焼結磁石を従来の製法、すなわち、基本組成
となる全ての原料を混合した後、仮焼、粉砕、成形、焼
成を行う製法により製造すると、80〜90%の角型性
(Hk /HcJ)しか得ることができなかった。ここで、
上記のような「原料混合時における添加による製法」と
は、Sr,FeおよびLaやCoなどの主組成成分を仮
焼前の原料混合段階で添加する方法であり、成分の均一
性が向上し易いため優れた製法と従来は考えられてい
た。
【0023】例えば、特開平10−149910号公
報、第3頁第4欄第11行〜第17行には、「以上の基
本組成物は以下に示すフェライト磁石の標準製造工程の
仮焼段階で、 混合→仮焼→粉砕→成形→焼結 実質的に形成し原料粉末として粉砕に供することが望ま
しい。即ち、RおよびM元素は上記工程の混合段階で加
えた方が仮焼と焼結の2回の高温過程を経ることとな
り、固体拡散が進行してより均一な組成物が得られ
る。」という記述がある。前記特願平9−56856号
に記載の実施例も、全てこの製法により焼結磁石を作製
している。一方、本発明者らは、国際公開WO98/2
5278号公報(特願平8−337445号)におい
て、水系プロセスでも高配向度が得られる製法を提案す
るに至った。しかしながら、この製法を用いたとして
も、例えば、特開平6−53064号で提案されている
ような有機溶剤系を用いたプロセスで得られる配向度I
r/Is=97〜98%と比較すると十分なものとはい
えなかった。
【0024】そこで、本発明者らはこれらの点に鑑み、
鋭意研究を重ねた結果、上記特願平9−56856号に
示されるようなマグネトプランバイト型フェライトにお
いて、2つの異なるキュリー温度を有する構造とするこ
とにより、角型性の高い磁石を作製可能であることを見
出した。さらに、この構造とすることによりCo含有量
を少量化することも可能となる。
【0025】また、本発明者らはこの構造を実現する1
つの製法として、A(AはSr,Ba,またはCa),
R〔Rは希土類元素(Yを含む)およびBiから選択さ
れる少なくとも1種の元素を表す〕,CoおよびFeの
うち少なくとも1種類の元素の一部、または全部を、そ
れらの元素の一部、または全部を除いたフェライトに添
加し、成形、焼成する方法が適していることを見出し
た。そして、この製造方法の場合に、例えば、グルコン
酸カルシウムのような国際公開WO98/25278号
公報(特願平8−337445号)に記載の水系分散剤
をさらに添加すると、有機溶剤系に匹敵するほどの配向
度が得られることを見出した。
【0026】ここで、この製法についてより具体的に説
明する。例えば、Sr:La:Fe:Co=0.8:
0.2:11.8:0.2の組成の焼結磁石を作製する
場合、従来は、SiO2 やCaCO3 等の焼結助剤とし
ての添加物を除いた全ての元素を仮焼前の原料配合段階
で混合して仮焼を行い、その後SiO2 やCaCO3
を添加して粉砕、成形、焼成を行うという方法により主
に製造されてきた。
【0027】これに対して、例えば、原料配合時にはS
r:Fe=0.8:9.6(=1:12)の組成で混合
し、仮焼を行い(このとき、仮焼粉はM型Srフェライ
トとなる)、その後、La,Fe,Coを各々0.2:
2.2:0.2の比率で添加することにより、Sr:L
a:Fe:Co=0.8:0.2:11.8:0.2の
最終組成とすることができる。この場合、La,Fe,
Coの添加は、例えば共沈法、フラックス法等によって
作製したSrフェライト粉末に対して行ってもよい。
【0028】また、配合時にはSr:Fe=0.8:1
1.8(=1:14.75)の組成で混合し、仮焼を行
い(このとき、仮焼粉はM型Srフェライトとα−Fe
23の2相状態となる)、その後La,Coを各々0.
2:0.2の比率で添加することにより、Sr:La:
Fe:Co=0.8:0.2:11.8:0.2の最終
組成とすることもできる。
【0029】上記の例のように、A(AはSr,Baま
たはCa),Co,R〔Rは希土類元素(Yを含む)お
よびBiから選択される少なくとも1種の元素を表
す〕,およびFeを含有する六方晶マグネトプランパイ
ト型フェライトの主相を有する焼結磁石の製造方法にお
いて、前記構成元素、少なくともRおよびCoの一部、
またはその全部を仮焼後に添加し、成形し、本焼成を行
う焼結磁石の製造方法の場合に2つの異なるキュリー温
度(Tc)を有する構造が実現可能となり、上記のよう
な優れた特性を実現することができる。なお、A(Aは
Sr,BaまたはCa),Co,R〔Rは希土類元素
(Yを含む)およびBiから選択される少なくとも1種
の元素を表す〕,およびFeの各元素は、その酸化物、
または炭酸塩や水酸化物等の焼成により酸化物となる化
合物として添加すればよい。
【0030】以上は2つのキュリー点Tcを有する焼結
磁石の製造法であるが、フェライト粒子の製造法に応用
することもできる。すなわち、上記焼結磁石の製造工程
における成形に代えて造粒を行い、焼成後必要に応じて
再度粉砕を行うことにより、少なくとも2つのTcを有
するフェライト粒子を得ることができる。また、Sr,
FeおよびLa,Co等の主組成成分を、仮焼前の原料
混合段階で添加する方法でも、仮焼時の温度、時間、お
よび雰囲気等を制御することによって、LaやCoの拡
散過程を制御して、少なくとも2つのTcを有するフェ
ライト粒子を得ることができる。
【0031】上記のような製造方法により、何故2つの
異なるキュリー温度を有する構造とすることができるの
か、詳細は不明であるが、次のように考えられる。すな
わち、上記の例の場合、本焼成時においてSr(または
Ba、またはCa)フェライトと、後から添加した添加
物(La,Co,Fe)の反応が生じるが、その過程で
LaとCoの濃度の高いM型フェライト部分と、濃度の
低いM型フェライト部分ができると考えられる。M型フ
ェライトの粒子に対して、LaやCoが拡散していくと
すると、粒子(焼結体グレイン)の中心部よりも表層部
でLaやCoの濃度が高いとも考えられる。キュリー温
度は、LaやCoの置換量、特にLaの置換量に依存す
るため、キュリー温度が少なくとも2つ発現する現象
は、このような組成成分が不均一になっているような構
造を反映しているためと考えられる。
【0032】また、本発明における好ましい組成のM型
フェライトは、少なくとも、構造物全体としてLaとC
oを共に最適量含有させるような組成とする。その結
果、Isを低下させず、むしろIsを高めると同時にK
1を高めることによりHAを増加させることができ、これ
により高Brかつ高HcJを実現した。具体的には、本発
明の焼結磁石では、25℃程度の常温において、保磁力
HcJ(単位kOe)と残留磁束密度Br(単位kG)とが、
HcJ≧4のとき 式I Br+1/3HcJ≧5.75 で、HcJ<4のとき 式II Br+1/10HcJ≧4.82 を満足する特性が容易に得られる。従来のSrフェライ
ト焼結磁石では、4.4kGのBrと4.0kOeのHcJと
が得られたことは報告されているが、HcJが4kOe以上
であって、かつ上記式Iを満足する特性のものは得られ
ていない。すなわち、HcJを高くした場合にはBrが低
くなってしまう。本発明の焼結磁石において、CoとZ
nとを複合添加した場合、保磁力はCo単独添加よりも
低くなり、4kOe を下回ることもあるが、残留磁束密度
は著しく向上する。このとき、上記式IIを満足する磁気
特性が得られる。従来、HcJが4kOe未満のSrフェラ
イト焼結磁石において、上記式IIを満足するものは得ら
れていない。
【0033】本発明により得られるフェライトは、異方
性定数(K1)または異方性磁場(HA)が従来のフェラ
イトよりも大きくなるため、同じ粒子サイズであればよ
り大きなHcJが得られ、また同じHcJを得るのであれ
ば、粒子サイズを大きくすることができる。例えば焼結
体の平均粒径が、0.3〜1μm だと4.5kOe以上の
HcJが得られ、1〜2μm でも3.5kOe 以上のHcJを
得ることができる。粒子サイズを大きくした場合は、粉
砕時間や成形時間を短縮することができ、また、製品歩
留まりの改善が可能となる。
【0034】
【0035】
【0036】本発明により得られる磁石材料はHcJの温
度依存性が小さく、焼結磁石の−50〜50℃における
HcJの温度係数(絶対値)は0.25%/℃以下であ
り、0.20%/℃以下とすることも容易にできる。そ
して、このようにHcJの温度特性が良好であることか
ら、−25℃において下記式IIIを満足する良好な磁気
特性が得られる。低温環境下におけるこのような高磁気
特性は、従来のSrフェライト磁石では達成できなかっ
たものである。 式III Br+1/3HcJ≧5.95
【0037】ところで、Bull.Acad.Sci.USSR,phys.Ser.
(English Transl.)vol.25,(1961)pp1405-1408(以下、
文献1)には、 Ba1-x3+ xFe12-x2+ x19 で表されるBaフェライトが記載されている。このBa
フェライトにおいて、M3+はLa3+、Pr3+またはBi
3+であり、M2+はCo2+またはNi2+である。文献1の
Baフェライトは、製造方法が不明確であり、しかも粉
体か焼結体か不明確であるが、LaおよびCoを含有す
る組成という点では本発明のフェライトと類似してい
る。文献1のFig.1には、LaおよびCoを含有するB
aフェライトについてxの変化に伴う飽和磁化の変化が
記載されているが、このFig.1ではxの増大にともなっ
て飽和磁化が減少している。また、文献1には保磁力が
数倍になったとの記載があるが、具体的数値の記載はな
い。また、キュリー温度Tcに関する記述も全く見られ
ない。
【0038】これに対し本発明の製造方法では、六方晶
フェライト焼結磁石において、LaとCoとをそれぞれ
最適量含有させた組成で、かつ少なくとも2つのTcを
有する構造とすることにより、HcJの著しい向上と共
に、Brの微増を実現し、かつ、HcJの温度依存性の著
しい改善をも成し遂げたものである。LaおよびCoを
含有させ、かつ少なくとも2つのTcを有する構造とし
たときにこのような効果が得られることは、本発明にお
いて初めて見出されたものである。
【0039】Indian Journal of Pure & Applied Physi
cs Vol.8,July 1970,pp.412-415 (以下、文献2)に
は、 式 La3+Me2+Fe3+ 1119 (Me2+=Cu2+、Cd2+、Zn2+、Ni2+、Co2+
たはMg2+)で表わされるフェライトが記載されてい
る。このフェライトは、SrまたはBaまたはCaを含
有しないという点で、本発明の磁石材料と異なる。さら
に、文献2においてMe2+=Co2+の場合の飽和磁化σ
sは、室温で42cgs unit、0Kで50cgs unitという
低い値である。また、具体的な値は示されていないが、
文献2には、保磁力は低く磁石材料にはならない、とい
う記述がある。これは、文献2記載のフェライトの組成
が本発明範囲と異なるためと考えられる。さらに、Me
2+=Co2+ のTcが800°k(=527℃)という
記述があるが、Tcは本発明の温度範囲を大きくはずれ
ており、さらにTcが2段になるなどの記述は一切みら
れない。
【0040】特開昭62−100417号公報(以下、
文献3)には、 式 Mx(I)My(II)Mz(III)Fe12-(y+z)19 で表される組成の等軸ヘキサフェライト顔料類が記載さ
れている。上記式において、M(I)は、Sr、Ba、
希土類金属等と、一価の陽イオンとの組み合わせであ
り、M(II)は、Fe(II)、Mn、Co、Ni、C
u、Zn、CdまたはMgであり、M(III)はTi等
である。文献3に記載されたヘキサフェライト顔料類
は、希土類金属とCoとを同時に含みうる点では本発明
の磁石材料と同じである。しかし、文献3には、Laと
Coとを同時に添加した実施例は記載されておらず、こ
れらの同時添加により飽和磁化および保磁力が共に向上
する旨の記載もない。しかも、文献3の実施例のうちC
oを添加したものでは、同時に元素M(III)としてT
iが添加されている。元素M(III)、特にTiは、飽
和磁化および保磁力を共に低下させる元素なので、文献
3において本発明の構成および効果が示唆されていない
のは明らかである。
【0041】特開昭62−119760号公報(以下、
文献4)には、マグネトプランバイト型のバリウムフェ
ライトのBaの一部をLaで置換するとともに、Feの
一部をCoで置換したことを特徴とする光磁気記録材料
が記載されている。このBaフェライトにおいて、La
およびCoを含有する点では本発明のSrフェライトと
類似しているようにも見える。しかし、文献4のフェラ
イトは光の熱効果を利用して磁性薄膜に磁区を書き込ん
で情報を記録し、磁気光学効果を利用して情報を読み出
すようにした「光磁気記録」用の材料であり、本発明の
磁石材料とは技術分野が異なる。また、文献4は(I)
の組成式でBa,La,Coを必須とし、式(II)およ
び(III)では、これに3価、または4価以上の金属イ
オン(特定されていない)が添加された場合が示されて
いるのみである。また、式(III)において、Ga,A
l,In等の3価のイオンを添加した場合に、Tcが低
下する旨の記述があるが、Tcが2段になる等の記述は
全くみられない。
【0042】特開平10−149910号公報(以下文
献5)には、「(Sr1-xx)O・n〔(Fe1-yy
23〕(ここでRは、La、Nd、Prの内少なくとも
1種以上、Mは、Mn,Co,Ni,Znのうちの少な
くとも1種以上)からなる基本組成を有するフェライト
磁石において、 0.05≦x≦0.5 〔x/(2.2n)〕≦y≦〔x・(1.8n)〕 5.70≦n<6.00 であることを特徴とするフェライト磁石およびその製造
方法」が記載されている(なお、この文献5は先願であ
り、特許法第29条の2の規定に該当するものであ
る)。このフェライト粒子は、LaとCoを同時に含有
する点において本発明と一部組成を同じにしている。し
かし、文献5には、キュリー温度に関する記載は一切な
く、実施例の特性もBr=4.3kG,HcJ=3.5kOe
程度の低いものである。さらに、第3頁第4欄第11行
〜第17行には、「以上の基本組成物は以下に示すフェ
ライト磁石の標準製造工程の仮焼段階で、 混合→仮焼→粉砕→成形→焼結 実質的に形成し原料粉末として粉砕に供することが望ま
しい。即ち、RおよびM元素は上記工程の混合段階で加
えた方が仮焼と焼結の2回の高温過程を経ることとな
り、固体拡散が進行してより均一な組成物が得られ
る。」という記述があり、本発明の製造方法とは明らか
に異なっており、これによって得られる焼結体の構造も
異なっていると考えられる。
【0043】本発明の組成とは異なる六方晶フェライト
において、キュリー温度が400〜480℃で2段にな
る場合があることは、従来から知られていた。例えば、
特開平9−115715号公報の図2には、LaとZn
を含有させたSrフェライトにおいて、2つのTcを有
する場合が示されている。
【0044】しかし、このときに磁気特性等が改善され
ることはなく、実施例7にB23添加などにより、キュ
リー温度を一段にする方が好ましい旨の記述があること
からわかるように、むしろ組成成分の均一性を向上させ
て、磁気特性等の改善を図っていた。
【0045】これに対して、A,CoおよびRを含有す
る組成の六方晶フェライトにおいて、キュリー温度を少
なくとも2段もつような、ある種の不均一な構造とする
ことで優れた磁気特性が得られるということは、本発明
者らが初めて見出したことである。
【0046】
【発明の実施の形態】本発明の六方晶フェライト焼結磁
石の製造方法は、A(AはSr,BaまたはCa),C
o,R〔Rは希土類元素(Yを含む)およびBiから選
択される少なくとも1種の元素を表す〕およびFeを含
有する六方晶フェライトの主相を有する焼結磁石を製造
するに当たり、前記構成元素の一部、または全部を、少
なくともSr,BaまたはCaを含有する六方晶フェラ
イトを主相とする粒子に添加し、その後、成形し、本焼
成を行うものである。このようにして製造された六方晶
マグネトプランバイト型フェライトは、少なくとも2つ
の異なるキュリー温度Tc1,Tc2を有し、この2つ
の異なるキュリー温度Tc1,Tc2は400〜480
℃であり、かつこれらTc1,Tc2の差の絶対値が5
℃以上である。このように2つの異なるキュリー温度を
有する構造とすることで、角形性Hk /HcJが著しく改
善されると共に、高価なCoやRの含有量を少なくする
ことが可能になる。
【0047】キュリー温度(Tc)は、磁性材料が強磁
性から常磁性に変化するときの温度である。Tcを測定
するにはいくつかの方法があるが、特に複数のTcをも
つ磁性材料の場合は、ヒータなどで測定サンプルの温度
を変化させながら、磁化−温度曲線(σ−T曲線)を描
くことによりTcを求める。ここで、磁化の測定には、
振動式磁力計(VSM)が多く用いられる。これは、サ
ンプルの周囲にヒータ等を設置する空間を確保しやすい
ためである。
【0048】試料は粉末でも焼結体でもよいが、粉体の
場合は耐熱性の接着剤のようなもので固定する必要があ
る。また、温度の均一性と追随性をよくするため、磁化
の測定精度が確保できる範囲で、サンプルはなるべく小
さくすることが好ましい(本発明の実施例では、直径:
5mm、高さ:6.5mm程度)。また、周囲温度とサンプ
ルの温度を一致させるために、周囲温度の変化速度を遅
くすることが好ましい。
【0049】サンプルは異方性でも、等方性でもよい
が、異方性サンプルの場合は磁化容易軸方向であるc軸
方向に着磁後、c軸方向に測定することが好ましい。等
方性サンプルの場合は、着磁方向と同一方向の磁化を測
定する。サンプルの着磁は、10 kOe以上の充分に大き
な磁場を印加して行う。通常は常温で着磁した後、温度
を上げながらサンプルの磁化を測定していくが、このと
き磁場は全く印加しないか、印加しても1 kOe以下の弱
い磁場下で測定することが好ましい。これは、大きな磁
場を印加しながら測定すると、キュリー温度以上の常磁
性成分も検出してしまい、Tcが不明確になりやすいた
めである。
【0050】2つのキュリー温度が表れる例を図22に
示す。図に示すように、Tc1 より高温のσ−T曲線
は、上に凸となる。この場合、一段目のキュリー温度
(Tc1)は、接線と接線の交点から求めることが
できる。また、二段目のキュリー温度(Tc2 )は、接
線とσ=0の軸との交点から求められる。
【0051】2つの異なるキュリー点Tc1,Tc2
は、その差の絶対値が5℃以上、好ましくは10℃以上
である。これらのキュリー温度は400〜480℃、好
ましくは400〜470℃、さらには430〜460℃
の範囲である。なお、純粋なM型SrフェライトのTc
は465℃程度である。
【0052】ここで、温度Tc1 における磁化(σ1 )
の、25℃の室温における磁化(σRT)に対する割合
(σ1 /σRT)は、好ましくは0.5%〜30%、より
好ましくは1%〜20%、さらに好ましくは2%〜10
%である。σ1 /σRTが0.5%未満の場合、2段目の
Tc2 は実質的に検出することが困難になる。また、σ
1 /σRTがこの範囲を外れると本発明の効果が得難くな
る。
【0053】この2つのキュリー温度は、本発明のフェ
ライト結晶の組織構造が、後述する製造方法などにより
磁気的に異なるM型フェライトの2相構造となるために
発現すると考えられる。ただし、通常のX線回折法では
M相の単相が検出される。
【0054】本発明により得られる焼結磁石の角形性H
k /HcJは、好ましくは90%以上、特に92%以上が
得られる。なお、最高では95%に及ぶ。また、本発明
の焼結磁石の配向度Ir/Isは、好ましくは96.5
%以上、より好ましくは97%以上が得られる。なお、
最高では98%程度に及ぶ。配向度の向上により、高い
Brが得られる。また、成形体の場合は、磁気的配向度
は成形体密度に影響されるため、正確な評価ができない
場合がある。このため成形体の表面に対しX線回折測定
を行い、回折ピークの面指数と強度とから成形体の結晶
学的な配向度(X線配向度)を求める。すなわち、X線
配向度としてΣI(00L)/ΣI(hkL)を用い
る。ここで、(00L)は、(004)や(006)等
のc面を総称する表示であり、ΣI(00L)は(00
L)面のすべてのピーク強度の合計である。また、(h
kL)は、検出されたすべてのピークを表し、ΣI(h
kL)はそれらの強度の合計である。実際には、特性X
線にCuKα線を用いる場合は、例えば、2θが10°
〜80°の範囲で測定を行って、この範囲のピーク強度
を計算に用いる。この成形体のX線配向度は、焼結体の
配向度をかなりの程度支配する。焼結体c面の、ΣI
(00L)/ΣI(hkL)は好ましくは0.85以
上、より好ましくは0.9以上であり、その上限として
は1.0である。なお、下記の各実施例において、図中
配向度をΣI(00l)/ΣI(hkl)として記載す
る場合がある。
【0055】本発明により得られる磁石は、Sr,Ba
またはCa,Co,R〔Rは希土類元素(Yを含む)か
ら選択される少なくとも1種の元素を表す〕を含有する
六方晶マグネトプランバイト型フェライトを主相に有
し、この主相は好ましくはSr、Ba、CaおよびPb
から選択される少なくとも1種の元素であって、Srま
たはBaを必ず含むものをA’とし、希土類元素(Yを
含む)から選択される少なくとも1種の元素をRとし、
CoであるかCoおよびZnをMとしたとき、A’,
R,FeおよびMそれぞれの金属元素の総計の構成比率
が、全金属元素量に対し、 A’:1〜13原子%、 R:0.05〜10原子%、 Fe:80〜95原子%、 M:0.1〜5原子% である。
【0056】また、より好ましくは、A’:3〜11原
子%、R:0.2〜6原子%、Fe:83〜94原子
%、M:0.3〜4原子%であり、さらに好ましくは、
A’:3〜9原子%、R:0.5〜4原子%、Fe:8
6〜93原子%、M:0.5〜3原子%である。
【0057】上記各構成元素において、A’は、Sr、
Ba、CaおよびPbから選択される少なくとも1種の
元素であって、SrまたはBaを必ず含む。A’が小さ
すぎると、M型フェライトが生成しないか、α−Fe2
3 等の非磁性相が多くなってくる。A’はSrを必ず
含むことが好ましく、A’が大きすぎるとM型フェライ
トが生成しないか、SrFeO3-x 等の非磁性相が多く
なってくる。A’中のSrの比率は、好ましくは51原
子%以上、より好ましくは70原子%以上、さらに好ま
しくは100原子%である。A’中のSrの比率が低す
ぎると、飽和磁化向上と保磁力の著しい向上とを共に得
ることができなくなってくる。
【0058】Rは、希土類元素(Yを含む)から選択さ
れる少なくとも1種の元素である。Rには、La、N
d、Pr、特にLaが必ず含まれることが好ましい。R
が小さすぎると、Mの固溶量が少なくなり、本発明の効
果が得られ難くなる。Rが大きすぎると、オルソフェラ
イト等の非磁性の異相が多くなってくる。R中において
Laの占める割合は、好ましくは40原子%以上、より
好ましくは70原子%以上であり、飽和磁化向上のため
にはRとしてLaだけを用いることが最も好ましい。こ
れは、六方晶M型フェライトに対する固溶限界量を比較
すると、Laが最も多いためである。したがって、R中
のLaの割合が低すぎるとRの固溶量を多くすることが
できず、その結果、元素Mの固溶量も多くすることがで
きなくなり、本発明の効果が小さくなってしまう。
【0059】元素Mは、CoまたはCoおよびZnであ
る。Mが小さすぎると、本発明の効果が得難くなり、M
が大きすぎると、BrやHcJが逆に低下し本発明の効果
を得難くなる。M中のCoの比率は、好ましくは10原
子%以上、より好ましくは20原子%以上である。Co
の比率が低すぎると、保磁力向上が不十分となってく
る。
【0060】また、好ましくは上記の六方晶マグネトプ
ランバイト型フェライトは、 A’1-xx(Fe12-yyz19 と表したとき、 0.04≦x≦0.9、特に0.04≦x≦0.6、 0.04≦y≦0.5、 0.8≦x/y≦5、 0.7≦z≦1.2 である。
【0061】また、より好ましくは 0.04≦x≦0.5、 0.04≦y≦0.5、 0.8≦x/y≦5、 0.7≦z≦1.2 であり、さらに好ましくは 0.1≦x≦0.4、 0.1≦y≦0.4、 0.8≦z≦1.1 であり、特に好ましくは 0.9≦z≦1.05 である。
【0062】上記式において、xが小さすぎると、すな
わち元素Rの量が少なすぎると、六方晶フェライトに対
する元素Mの固溶量を多くできなくなり、飽和磁化向上
効果および/または異方性磁場向上効果が不十分となっ
てくる。xが大きすぎると六方晶フェライト中に元素R
が置換固溶できなくなり、例えば元素Rを含むオルソフ
ェライトが生成して飽和磁化が低くなってくる。yが小
さすぎると飽和磁化向上効果および/または異方性磁場
向上効果が不十分となってくる。yが大きすぎると六方
晶フェライト中に元素Mが置換固溶できなってくる。ま
た、元素Mが置換固溶できる範囲であっても、異方性定
数(K1)や異方性磁場(HA)の劣化が大きくなってし
まう。zが小さすぎるとSrおよび元素Rを含む非磁性
相が増えるため、飽和磁化が低くなってしまう。zが大
きすぎるとα−Fe23相または元素Mを含む非磁性ス
ピネルフェライト相が増えるため、飽和磁化が低くなっ
てしまう。なお、上記式は不純物が含まれていないもの
として規定されている。
【0063】上記式Iにおいて、x/yが小さすぎても
大きすぎても元素Rと元素Mとの価数の平衡がとれなく
なり、W型フェライト等の異相が生成しやすくなる。元
素Mは2価であるから、元素Rが3価イオンである場
合、理想的にはx/y=1である。なお、x/yが1超
の領域で許容範囲が大きい理由は、yが小さくてもFe
3+→Fe2+の還元によって価数の平衡がとれるためであ
る。
【0064】組成を表わす上記式Iにおいて、酸素
(O)の原子数は19となっているが、これは、Rがす
べて3価であって、かつx=y、z=1のときの化学量
論組成比を示したものである。Rの種類やx、y、zの
値によって、酸素の原子数は異なってくる。また、例え
ば焼成雰囲気が還元性雰囲気の場合は、酸素の欠損(ベ
イカンシー)ができる可能性がある。さらに、FeはM
型フェライト中においては通常3価で存在するが、これ
が2価などに変化する可能性もある。また、Co等のM
で示される元素も価数が変化する可能性があり、これら
により金属元素に対する酸素の比率は変化する。本明細
書では、Rの種類やx、y、zの値によらず酸素の原子
数を19と表示してあるが、実際の酸素の原子数は化学
量論組成比から多少偏倚していてもよい。
【0065】フェライトの組成は、蛍光X線定量分析な
どにより測定することができる。また、上記の主相の存
在はX線回折や電子回折等から確認される。
【0066】磁石粉末には、B23が含まれていてもよ
い。B23を含むことにより仮焼温度および焼結温度を
低くすることができるので、生産上有利である。B23
の含有量は、磁石粉末全体の0.5重量%以下であるこ
とが好ましい。B23含有量が多すぎると、飽和磁化が
低くなってしまう。
【0067】磁石粉末中には、Na、KおよびRbの少
なくとも1種が含まれていてもよい。これらをそれぞれ
Na2O、K2OおよびRb2Oに換算したとき、これら
の含有量の合計は、磁石粉末全体の3重量%以下である
ことが好ましい。これらの含有量が多すぎると、飽和磁
化が低くなってしまう。これらの元素をMIで表わした
とき、フェライト中においてMIは例えば Sr1.3-2aaI a-0.3Fe11.70.319 の形で含有される。なお、この場合、0.3<a≦0.
5であることが好ましい。aが大きすぎると、飽和磁化
が低くなってしまう他、焼成時に元素MIが多量に蒸発
してしまうという問題が生じる。
【0068】また、これらの不純物の他、例えばSi,
Al,Ga,In,Li,Mg,Mn,Ni,Cr,C
u,Ti,Zr,Ge,Sn,V,Nb,Ta,Sb,
As,W,Mo等を酸化物の形で、それぞれ酸化シリコ
ン1重量%以下、酸化アルミニウム5重量%以下、酸化
ガリウム5重量%以下、酸化インジウム3重量%以下、
酸化リチウム1重量%以下、酸化マグネシウム3重量%
以下、酸化マンガン3重量%以下、酸化ニッケル3重量
%以下、酸化クロム5重量%以下、酸化銅3重量%以
下、酸化チタン3重量%以下、酸化ジルコニウム3重量
%以下、酸化ゲルマニウム3重量%以下、酸化スズ3重
量%以下、酸化バナジウム3重量%以下、酸化ニオブ3
重量%以下、酸化タンタル3重量%以下、酸化アンチモ
ン3重量%以下、酸化砒素3重量%以下、酸化タングス
テン3重量%以下、酸化モリブデン3重量%以下程度含
有されていてもよい。
【0069】次に、焼結磁石を製造する方法を説明す
る。
【0070】上記フェライトを有する焼結磁石は、原料
粉末として、通常、Fe,A(AはSr,BaまたはC
aであって、必要によりPbを有する),Co,R〔R
は希土類元素(Yを含む)およびBiから選択される少
なくとも1種類の元素〕を含有する化合物の粉末を用
い、これらの原料粉末の2種以上の混合物(ただし、F
eおよびAを必ず含む)を仮焼する。そして、仮焼後、
さらに前記Fe,A(AはSr,BaまたはCaであっ
て、必要によりPbを有する),Co,R〔Rは希土類
元素(Yを含む)およびBiから選択される少なくとも
1種類の元素〕を含有する化合物の粉末のうち、少なく
とも1種または2種以上を添加混合し、粉砕、成形、焼
成して製造される。前記Fe,A(AはSr,Baまた
はCaであって、必要によりPbを有する),Co,R
〔Rは希土類元素(Yを含む)およびBiから選択され
る少なくとも1種類の元素〕を含有する化合物の粉末と
しては、酸化物、または焼成により酸化物となる化合
物、例えば炭酸塩、水酸化物、硝酸塩等のいずれであっ
てもよい。原料粉末の平均粒径は特に限定されないが、
特に酸化鉄は微細粉末が好ましく、一次粒子の平均粒径
が1μm以下、特に0.5μm以下であることが好まし
い。なお、上記の原料粉末の他、必要に応じてB23
や、他の化合物、例えばSi,Al,Ga,In,L
i,Mg,Mn,Ni,Cr,Cu,Ti,Zr,G
e,Sn,V,Nb,Ta,Sb,As,W,Mo等を
含む化合物を添加物あるいは不可避成分等の不純物とし
て含有していてもよい。
【0071】仮焼は、空気中において例えば1000〜
1350℃で1秒間〜10時間、特に1秒間〜3時間程
度行えばよい。
【0072】このようにして得られた仮焼体は、実質的
にマグネトプランバイト型のフェライト構造をもち、そ
の一次粒子の平均粒径は、好ましくは2μm以下、より
好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.1〜1μ
m、最も好ましくは0.1〜0.5μmである。平均粒径
は走査型電子顕微鏡により測定すればよい。
【0073】次いで、仮焼体を粉砕した後、または粉砕
時に前記Fe,A(AはSr,BaまたはCaであっ
て、必要によりPbを有する),Co,R〔Rは希土類
元素(Yを含む)およびBiから選択される少なくとも
1種類の元素〕を含有する化合物の粉末の少なくとも1
種または2種以上を混合し、成形し、焼結することによ
り製造する。具体的には、以下の手順で製造することが
好ましい。化合物の粉末の添加量は、仮焼体の1〜10
0体積%、より好ましくは5〜70体積%、特に10〜
50体積%が好ましい。
【0074】前記化合物のうちのR酸化物は、水に対す
る溶解度が比較的大きく、湿式成形の際に流出してしま
うなどの問題がある。また、吸湿性もあるため、秤量誤
差の原因になりやすい。このため、R化合物としては、
炭酸塩または水酸塩が好ましい。
【0075】前記化合物の添加時期は仮焼後、焼成前で
あれば特に規制されるものではないが、好ましくは次に
説明する粉砕時に添加することが好ましい。添加される
原料粉末の種類や量は任意であり、同じ原料を仮焼前後
で分けて添加してもよい。ただし、CoまたはRについ
ては全量の30%以上、特に50%以上は仮焼後に行う
後工程で添加することが好ましい。なお、添加される化
合物の平均粒径は、通常0.1〜2μm 程度とする。
【0076】本発明では、酸化物磁性体粒子と、分散媒
としての水と、分散剤と添加物とを含む成形用スラリー
を用いて湿式成形を行うことが好ましいが、分散剤の効
果をより高くするためには、湿式成形工程の前に湿式粉
砕工程を設けることが好ましい。また、酸化物磁性体粒
子として仮焼体粒子を用いる場合、仮焼体粒子は一般に
顆粒状であるので、仮焼体粒子の粗粉砕ないし解砕のた
めに、湿式粉砕工程の前に乾式粗粉砕工程を設けること
が好ましい。なお、共沈法や水熱合成法などにより酸化
物磁性体粒子を製造した場合には、通常、乾式粗粉砕工
程は設けず、湿式粉砕工程も必須ではないが、配向度を
より高くするためには湿式粉砕工程を設けることが好ま
しい。以下では、仮焼体粒子を酸化物磁性体粒子として
用い、乾式粗粉砕工程および湿式粉砕工程を設ける場合
について説明する。
【0077】乾式粗粉砕工程では、通常、BET比表面
積が2〜10倍程度となるまで粉砕する。粉砕後の平均
粒径は、0.1〜1μm 程度、BET比表面積は4〜1
0m2/g程度であることが好ましく、粒径のCVは80%
以下、特に10〜70%に維持することが好ましい。粉
砕手段は特に限定されず、例えば乾式振動ミル、乾式ア
トライター(媒体攪拌型ミル)、乾式ボールミル等が使
用できるが、特に乾式振動ミルを用いることが好まし
い。粉砕時間は、粉砕手段に応じて適宜決定すればよ
い。なお、乾式粉砕工程時に、前記原料粉末の一部を添
加することが好ましい。
【0078】乾式粗粉砕には、仮焼体粒子に結晶歪を導
入して保磁力HcBを小さくする効果もある。保磁力の低
下により粒子の磁気的凝集が抑制され、分散性が向上す
る。これにより配向度が向上する。粒子に導入された結
晶歪は、後の焼結工程において解放され、焼結後には高
い保磁力を有する永久磁石とすることができる。
【0079】なお、乾式粗粉砕の際には、通常、SiO
2 と、焼成によりCaOとなるCaCO3 とが添加され
る。SiO2 およびCaCO3 は、一部を仮焼前に添加
してもよく、その場合には特性向上が認められる。ま
た、SiO2 およびCaCO3は、後の湿式粉砕時に添
加してもよい。
【0080】乾式粗粉砕の後、粉砕された粒子と水とを
含む粉砕用スラリーを調製し、これを用いて湿式粉砕を
行う。粉砕用スラリー中の仮焼体粒子の含有量は、10
〜70重量%程度であることが好ましい。湿式粉砕に用
いる粉砕手段は特に限定されないが、通常、ボールミ
ル、アトライター、振動ミル等を用いることが好まし
い。粉砕時間は、粉砕手段に応じて適宜決定すればよ
い。
【0081】湿式粉砕後、粉砕用スラリーを濃縮して成
形用スラリーを調製する。濃縮は、遠心分離などによっ
て行えばよい。成形用スラリー中の仮焼体粒子の含有量
は、60〜90重量%程度であることが好ましい。
【0082】湿式成形工程では、成形用スラリーを用い
て磁場中成形を行う。成形圧力は0.1〜0.5ton/cm
2 程度、印加磁場は5〜15kOe 程度とすればよい。
【0083】成型用のスラリーに非水系の分散媒を用い
ると、高配向度が得られ好ましいが、本発明では好まし
くは水系分散媒に分散剤が添加された成形用スラリーを
用いる。本発明で好ましく用いる分散剤は、水酸基およ
びカルボキシル基を有する有機化合物であるか、その中
和塩であるか、そのラクトンであるか、ヒロドキシメチ
ルカルボニル基を有する有機化合物であるか、酸として
解離し得るエノール型水酸基を有する有機化合物である
か、その中和塩であることが好ましい。
【0084】なお、非水系の分散媒を用いる場合には、
例えば特開平6−53064号公報に記載されているよ
うに、トルエン、キシレン等のような有機溶媒に、例え
ば、オレイン酸、ステアリン酸、およびその金属塩等の
ような界面活性剤を添加して、分散媒とする。このよう
な分散媒を用いることにより、分散しにくいサブミクロ
ンサイズのフェライト粒子を用いた場合でも最高で98
%程度の高い磁気的配向度を得ることが可能である。
【0085】上記水系分散媒を用いる場合の分散剤とし
ての有機化合物は、炭素数が3〜20、好ましくは4〜
12であり、かつ、酸素原子と二重結合した炭素原子以
外の炭素原子の50%以上に水酸基が結合しているもの
である。炭素数が2以下であると、本発明の効果が実現
しない。また、炭素数が3以上であっても、酸素原子と
二重結合した炭素原子以外の炭素原子への水酸基の結合
比率が50%未満であれば、やはり本発明の効果は実現
しない。なお、水酸基の結合比率は、上記有機化合物に
ついて限定されるものであり、分散剤そのものについて
限定されるものではない。例えば、分散剤として、水酸
基およびカルボキシル基を有する有機化合物(ヒドロキ
シカルボン酸)のラクトンを用いるとき、水酸基の結合
比率の限定は、ラクトンではなくヒドロキシカルボン酸
自体に適用される。
【0086】上記有機化合物の基本骨格は、鎖式であっ
ても環式であってもよく、また、飽和であっても不飽和
結合を含んでいてもよい。
【0087】分散剤としては、具体的にはヒドロキシカ
ルボン酸またはその中和塩もしくはそのラクトンが好ま
しく、特に、グルコン酸(C=6;OH=5;COOH
=1)またはその中和塩もしくはそのラクトン、ラクト
ビオン酸(C=12;OH=8;COOH=1)、酒石
酸(C=4;OH=2;COOH=2)またはこれらの
中和塩、グルコヘプトン酸γ−ラクトン(C=7;OH
=5)が好ましい。そして、これらのうちでは、配向度
向上効果が高く、しかも安価であることから、グルコン
酸またはその中和塩もしくはそのラクトンが好ましい。
【0088】ヒドロキシメチルカルボニル基を有する有
機化合物としては、ソルボースが好ましい。
【0089】酸として解離し得るエノール型水酸基を有
する有機化合物としては、アスコルビン酸が好ましい。
【0090】なお、本発明では、クエン酸またはその中
和塩も分散剤として使用可能である。クエン酸は水酸基
およびカルボキシル基を有するが、酸素原子と二重結合
した炭素原子以外の炭素原子の50%以上に水酸基が結
合しているという条件は満足しない。しかし、配向度向
上効果は認められる。
【0091】上記した好ましい分散剤の一部について、
構造を以下に示す。
【0092】
【化1】
【0093】磁場配向による配向度は、スラリーの上澄
みのpHの影響を受ける。具体的には、pHが低すぎる
と配向度は低下し、これにより焼結後の残留磁束密度が
影響を受ける。分散剤として水溶液中で酸としての性質
を示す化合物、例えばヒドロキシカルボン酸などを用い
た場合には、スラリーの上澄みのpHが低くなってしま
う。したがって、例えば、分散剤と共に塩基性化合物を
添加するなどして、スラリー上澄みのpHを調整するこ
とが好ましい。上記塩基性化合物としては、アンモニア
や水酸化ナトリウムが好ましい。アンモニアは、アンモ
ニア水として添加すればよい。なお、ヒドロキシカルボ
ン酸のナトリウム塩を用いることにより、pH低下を防
ぐこともできる。
【0094】フェライト磁石のように副成分としてSi
2 およびCaCO3 を添加する場合、分散剤としてヒ
ドロキシカルボン酸やそのラクトンを用いると、主とし
て成形用スラリー調製の際にスラリーの上澄みと共にS
iO2 およびCaCO3 が流出してしまい、HcJが低下
するなど所望の性能が得られなくなる。また、上記塩基
性化合物を添加するなどしてpHを高くしたときには、
SiO2 およびCaCO3 の流出量がより多くなる。こ
れに対し、ヒドロキシカルボン酸のカルシウム塩を分散
剤として用いれば、SiO2 およびCaCO3 の流出が
抑えられる。ただし、上記塩基性化合物を添加したり、
分散剤としてナトリウム塩を用いたりした場合でも、S
iO2 およびCaCO3 を目標組成に対し過剰に添加す
れば、磁石中のSiO2 量およびCaO量の不足を防ぐ
ことができる。なお、アスコルビン酸を用いた場合に
は、SiO2 およびCaCO3 の流出はほとんど認めら
れない。
【0095】上記理由により、スラリー上澄みのpHは、
好ましくは7以上、より好ましくは8〜11である。
【0096】分散剤として用いる中和塩の種類は特に限
定されず、カルシウム塩やナトリウム塩等のいずれであ
ってもよいが、上記理由から、好ましくはカルシウム塩
を用いる。分散剤にナトリウム塩を用いたり、アンモニ
ア水を添加した場合には、副成分の流出のほか、成形体
や焼結体にクラックが発生しやすくなるという問題が生
じる。
【0097】なお、分散剤は2種以上を併用してもよ
い。
【0098】分散剤の添加量は、酸化物磁性体粒子であ
る仮焼体粒子に対し、好ましくは0.05〜3.0重量
%、より好ましくは0.10〜2.0重量%である。分
散剤が少なすぎると配向度の向上が不十分となる。一
方、分散剤が多すぎると、成形体や焼結体にクラックが
発生しやすくなる。
【0099】なお、分散剤が水溶液中でイオン化し得る
もの、例えば酸や金属塩などであるときには、分散剤の
添加量はイオン換算値とする。すなわち、水素イオンや
金属イオンを除く有機成分に換算して添加量を求める。
また、分散剤が水和物である場合には、結晶水を除外し
て添加量を求める。例えば、分散剤がグルコン酸カルシ
ウム一水和物である場合の添加量は、グルコン酸イオン
に換算して求める。
【0100】また、分散剤がラクトンからなるとき、あ
るいはラクトンを含むときには、ラクトンがすべて開環
してヒドロキシカルボン酸になるものとして、ヒドロキ
シカルボン酸イオン換算で添加量を求める。
【0101】分散剤の添加時期は特に限定されず、乾式
粗粉砕時に添加してもよく、湿式粉砕時の粉砕用スラリ
ー調製の際に添加してもよく、一部を乾式粗粉砕の際に
添加し、残部を湿式粉砕の際に添加してもよい。あるい
は、湿式粉砕後に攪拌などによって添加してもよい。い
ずれの場合でも、成形用スラリー中に分散剤が存在する
ことになるので、本発明の効果は実現する。ただし、粉
砕時に、特に乾式粗粉砕時に添加するほうが、配向度向
上効果は高くなる。乾式粗粉砕に用いる振動ミル等で
は、湿式粉砕に用いるボールミル等に比べて粒子に大き
なエネルギーが与えられ、また、粒子の温度が上昇する
ため、化学反応が進行しやすい状態になると考えられ
る。したがって、乾式粗粉砕時に分散剤を添加すれば、
粒子表面への分散剤の吸着量がより多くなり、この結
果、より高い配向度が得られるものと考えられる。実際
に、成形用スラリー中における分散剤の残留量(吸着量
にほぼ等しいと考えられる)を測定すると、分散剤を乾
式粗粉砕時に添加した場合のほうが、湿式粉砕時に添加
した場合よりも添加量に対する残留量の比率が高くな
る。なお、分散剤を複数回に分けて添加する場合には、
合計添加量が前記した好ましい範囲となるように各回の
添加量を設定すればよい。
【0102】成形工程後、成形体を大気中または窒素中
において100〜500℃の温度で熱処理して、添加し
た分散剤を十分に分解除去する。次いで焼結工程におい
て、成形体を例えば大気中で好ましくは1150〜12
50℃、より好ましくは1160〜1220℃の温度で
0.5〜3時間程度焼結して、異方性フェライト磁石を
得る。
【0103】本発明により得られる磁石の平均結晶粒径
は、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、
さらに好ましくは0.5〜1.0μmであるが、本発明
では平均結晶粒径が1μmを超えていても、十分に高い
保磁力が得られる。結晶粒径は走査型電子顕微鏡によっ
て測定することができる。なお、比抵抗は100Ωm程度
以上である。
【0104】なお、前記成形体をクラッシャー等を用い
て解砕し、ふるい等により平均粒径が100〜700μ
m程度となるように分級して磁場配向顆粒を得、これを
乾式磁場成形した後、焼結することにより焼結磁石を得
てもよい。
【0105】なお、前記の仮焼体のスラリーを用いた粉
砕後、これを乾燥し、その後焼成を行って磁石粉末を得
てもよい。
【0106】
【0107】本発明により得られる磁石を使用すること
により、一般に次に述べるような効果が得られ、優れた
応用製品を得ることができる。すなわち、従来のフェラ
イト製品と同一形状であれば、磁石から発生する磁束密
度を増やすことができるため、モータであれば高トルク
化等を実現でき、スピーカーやヘッドホーンであれば磁
気回路の強化により、リニアリティーのよい音質が得ら
れるなど応用製品の高性能化に寄与できる。また、従来
と同じ機能でよいとすれば、磁石の大きさ(厚み)を小
さく(薄く)でき、小型軽量化(薄型化)に寄与でき
る。また、従来は界磁用の磁石を巻線式の電磁石として
いたようなモータにおいても、これをフェライト磁石で
置き換えることが可能となり、軽量化、生産工程の短
縮、低価格化に寄与できる。さらに、保磁力(HcJ)の
温度特性に優れているため、従来はフェライト磁石の低
温減磁(永久減磁)の危険のあった低温環境でも使用可
能となり、特に寒冷地、上空域などで使用される製品の
信頼性を著しく高めることができる。
【0108】本発明により得られる磁石材料は所定の形
状に加工され、下記に示すような幅広い用途に使用され
る。
【0109】例えば、フュエールポンプ用、パワーウイ
ンド用、ABS用、ファン用、ワイパ用、パワーステア
リング用、アクティブサスペンション用、スタータ用、
ドアロック用、電動ミラー用等の自動車用モータ;FD
Dスピンドル用、VTRキャプスタン用、VTR回転ヘ
ッド用、VTRリール用、VTRローディング用、VT
Rカメラキャプスタン用、VTRカメラ回転ヘッド用、
VTRカメラズーム用、VTRカメラフォーカス用、ラ
ジカセ等キャプスタン用、CD,LD,MDスピンドル
用、CD,LD,MDローディング用、CD,LD光ピ
ックアップ用等のOA、AV機器用モータ;エアコンコ
ンプレッサー用、冷蔵庫コンプレッサー用、電動工具駆
動用、扇風機用、電子レンジファン用、電子レンジプレ
ート回転用、ミキサ駆動用、ドライヤーファン用、シェ
ーバー駆動用、電動歯ブラシ用等の家電機器用モータ;
ロボット軸、関節駆動用、ロボット主駆動用、工作機器
テーブル駆動用、工作機器ベルト駆動用等のFA機器用
モータ;その他、オートバイ用発電器、スピーカ・ヘッ
ドホン用マグネット、マグネトロン管、MRI用磁場発
生装置、CD−ROM用クランパ、ディストリビュータ
用センサ、ABS用センサ、燃料・オイルレベルセン
サ、マグネットラッチ等に好適に使用される。
【0110】
【実施例】実施例1〔焼結磁石:サンプル1,2(水系
後添加)〕 原料としては、次のものを用いた。 Fe23粉末(一次粒子径0.3μm)、 1000.0g (不純物としてMn,Cr,Si,Clを含む) SrCO3粉末(一次粒子径2μm)、 161.2g (不純物としてBa,Caを含む)
【0111】また添加物として、 SiO2粉末(一次粒子径0.01μm) 2.30g CaCO3粉末(一次粒子径1μm) 1.72g を用いた。
【0112】上記出発原料および添加物を湿式アトライ
ターで粉砕後、乾燥・整粒し、これを空気中において1
250℃で3時間焼成し、顆粒状の仮焼体を得た。
【0113】得られた仮焼体に対し、SiO2、CaC
3、炭酸ランタン〔La2(CO33・8H2O〕、酸
化コバルト(CoO)を、それぞれ表1に示す分量で混
合し、さらにグルコン酸カルシウムを表1に示す分量添
加し、バッチの振動ロッドミルにより20分間乾式粗粉
砕した。このとき、粉砕による歪みが導入され、仮焼体
粒子のHcJは、1.7kOe に低下していた。
【0114】次いで、同様にして得られた粗粉砕材17
7gを採取し、これに原料として使用したのと同じ酸化
鉄(α−Fe23)37.25g加え、分散媒として水
を400cc加えて混合し、粉砕用スラリーを調整した。
【0115】この湿式粉砕用スラリーを用いて、ボール
ミル中で湿式粉砕を40時間行った。湿式粉砕後の比表
面積は、8.5m2/g (平均粒径0.5μm )であっ
た。湿式粉砕後のスラリーの上澄み液のpHは、9.5で
あった。
【0116】湿式粉砕後、粉砕用スラリーを遠心分離し
て、スラリー中の仮焼体粒子の濃度が78%となるよう
に調整し、成形用スラリーとした。この成形用スラリー
から水を除去しながら圧縮成形を行った。この成形は、
圧縮方向に約13kOe の磁場を印加しながら行った。得
られた成形体は、直径30mm、高さ18mmの円柱状であ
った。成形圧力は0.4ton/cm2とした。また、このス
ラリーの一部を乾燥後、1000℃で焼成して全て酸化
物となるように処理した後、蛍光X線定量分析法により
各成分量を分析した。結果を表2および表3に示す。
【0117】次に、成形体を100〜300℃で熱処理
してグルコン酸を十分に除去した後、空気中において、
昇温速度を5℃/分間とし、1220℃で1時間保持す
ることにより焼成を行い、焼結体を得た。得られた焼結
体の上下面を加工した後、残留磁束密度(Br)、保磁
力(HcJおよびHcb)および最大エネルギー積[(BH)ma
x]、飽和磁化(4πIs)、磁気的配向度(Ir/I
s)、角型性(Hk /HcJ)を測定した。次いでサンプ
ルを直径5mm×高さ6.5mmの円柱に加工した(高さ方
向がc軸方向)。試料振動式磁力計(VSM)によりサ
ンプルを着磁後、磁場を印加しない状態でc軸方向の残
留磁化の温度依存性を測定することによりキュリー温度
Tcを求めた。
【0118】この測定方法をさらに詳しく述べる。最初
に、円柱サンプルの高さ方向(c軸方向)に、室温(2
5℃)で約20 kOeの磁場を印加することにより、着磁
した。次に、磁場電流をゼロとし〔ただし、磁極の残留
磁化により、約50(Oe)の磁場が発生〕、サンプルの
周囲に配置したヒーターを加熱することにより、約10
℃/分の速度で昇温させて、サンプルの温度と磁化を同
時に測定することにより、σ−T曲線を描いた。結果を
図5,図6に示す。また、サンプルNo.1のa軸方向とc
軸方向の組織のSEM写真をそれぞれ図1,2に示す。
【0119】図5,6から明らかなように、本発明サン
プルNo. 1,2のキュリー温度Tcは、440℃と45
6℃、および434℃と454℃のそれぞれ2段になっ
ていることがわかる。また、一段目のTc(Tc1 )の
点におけるσと25℃のσの比は、各々5.5%および
6.0%であった。なお、Tc1 以上の温度でσ−T曲
線は上に凸の曲線となり、Tc1 とTc2 は明確に決定
できた。このことから、本発明サンプルの焼結体は、磁
気的性質の異なる2相構造となっているものと考えられ
る。なお、各試料をX線回折により解析したところ、い
ずれもM型フェライト単相であった。また、格子定数に
大きな違いは認められなかった。
【0120】比較例1〔焼結磁石:サンプル3(水系前
添加)〕 原料としては、次のものを用いた。 Fe23粉末(一次粒子径0.3μm)、 1000.0g (不純物としてMn,Cr,Si,Clを含む) SrCO3粉末(一次粒子径2μm)、 130.3g (不純物としてBa,Caを含む) 酸化コバルト 17.56g La23 35.67g
【0121】また添加物として、 SiO2粉末(一次粒子径0.01μm) 2.30g CaCO3粉末(一次粒子径1μm) 1.72g を用いた。
【0122】上記出発原料および添加物を湿式アトライ
ターで粉砕後、乾燥・整粒し、これを空気中において1
250℃で3時間焼成し、顆粒状の仮焼体を得た。得ら
れた仮焼体の磁気特性を試料振動式磁力計(VSM)で
測定した結果、飽和磁化σsは68 emu/g 、保磁力H
cJは4.6kOe であった。
【0123】得られた仮焼体に対し、SiO2、CaC
3を、それぞれ表1に示す分量で混合し、さらにグル
コン酸カルシウムを表1に示す分量添加し、バッチの振
動ロッドミルにより20分間乾式粗粉砕した。このと
き、粉砕による歪みが導入され、仮焼体粒子のHcJは、
1.7kOe に低下していた。
【0124】次いで、このようにして得られた粗粉砕材
を210g採取し、分散媒として水を400cc加えて混
合し、粉砕用スラリーを調整した。
【0125】この湿式粉砕用スラリーを用いて、ボール
ミル中で湿式粉砕を40時間行った。湿式粉砕後の比表
面積は、8.5m2/g (平均粒径0.5μm )であっ
た。湿式粉砕後のスラリーの上澄み液のpHは、9〜10
であった。
【0126】湿式粉砕後、粉砕用スラリーを遠心分離し
て、スラリー中の仮焼体粒子の濃度が約78%となるよ
うに調整し、成形用スラリーとした。この成形用スラリ
ーから水を除去しながら圧縮成形を行った。この成形
は、圧縮方向に約13kOe の磁場を印加しながら行っ
た。得られた成形体は、直径30mm、高さ18mmの円柱
状であった。成形圧力は0.4ton/cm2とした。また、
このスラリーの一部を乾燥後、1000℃で焼成して全
て酸化物となるように処理した後、蛍光X線定量分析法
により各成分量を分析した。分析結果を表2および表3
に示す。
【0127】次に、成形体を100〜360℃で熱処理
してグルコン酸を十分に除去した後、空気中において、
昇温速度を5℃/分間とし、1220℃で1時間保持す
ることにより焼成を行い、焼結体を得た。得られた焼結
体の上下面を加工した後、残留磁束密度(Br)、保磁
力(HcJおよびHcB)および最大エネルギー積[(BH)ma
x]、飽和磁化(4πIs)、磁気的配向度(Ir/I
s)、角型性(Hk /HcJ)および焼結密度を測定し
た。結果を表4に示す。次いでサンプルを直径5mm×高
さ6.5mmに加工した。実施例1と同様の方法でVSM
によりc軸方向の磁化の温度依存性を測定することによ
りキュリー温度Tcを求めた。結果を図7に示す。図か
ら明らかなように、Tcは444℃で1段であった。
【0128】次に、各焼結体サンプルNo. 1〜3のa軸
方向とc軸方向の比抵抗を測定した。結果を表5に示
す。また、得られたサンプルNo.3をa軸方向およびc軸
方向から観察した組織のSEM写真を図3,4にそれぞ
れ示す。図1,2および図3,4から明らかなように本
発明のフェライトはグレインサイズが図3,4の従来品
に比べ一回り大きくなっている。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
【表3】
【0132】
【表4】
【0133】
【表5】
【0134】表4から明らかなように、本発明範囲の焼
結体コアは極めて優れた特性を示している。
【0135】表5から明らかなように、後添加工程によ
る本発明のサンプル1,2は、比較例の前添加工程によ
るサンプルと比較して、1/10〜1/100と小さい
比抵抗の値を示した。このことから、前添加工程で得ら
れるサンプルと、後工程で得られるサンプルとでは、焼
結体の微細構造が異なるものと考えられる。また、本発
明のサンプルでも、No. 2のLaリッチ組成のサンプル
の方が1/4〜1/2小さい比抵抗となっていた。全て
のサンプルにおいて、a軸方向の値がc軸方向の比抵抗
より小さくなっていた。
【0136】実施例2(Fe,La,Coの後添加量に
よる比較) 実施例1の組成物〔SrFe1219+SiO2:0.2
重量%+CaCO3 :0.15重量%〕を実施例1と同
様にして仮焼し、仮焼体を得た。得られた顆粒状の仮焼
体に対し、添加後の組成が、 Sr1-xLaxFe12-xCox19 において、x=y=0,0.1,0.2,0.3となる
ように、La2(CO33・8H2O、CoOx(CoO
+Co34)、配合時に使用したものと同じ酸化鉄(α
−Fe23)およびSiO2 (0.4重量%)、CaC
3 (1.25重量%)、グルコン酸カルシウム(0.
6重量%)を添加して小型振動ミルで粗粉砕を行った。
その後、実施例1と同様にして水微粉砕を40時間行
い、焼成した。また、グルコン酸カルシウムを添加しな
いで水だけを用いたもの、分散媒として溶媒にキシレン
を用い、分散剤としてオレイン酸を用いたサンプルを用
意した。
【0137】得られた各焼結体サンプルのLa,Co添
加量別の成形体配向度を図8に、HcJ−Br 特性を図9
に示す。ここで、Fe,La,Coの後添加量は、添加
後の組成を Sr1-xLaxFe12-xCox19 とした場合のxの値で示す。水系分散剤にグルコン酸カ
ルシウムを用いた場合、仮焼後の添加量(後添加量)が
増大するに従って明らかな配向度の向上が見られ、0.
4置換では非水系溶媒としてキシレンを用い、界面活性
剤としてオレイン酸を用いた場合に迫る値となってい
る。これに対し、水にグルコン酸を添加しないものでは
配向度の向上は見られない。なお、焼結体の特性は、多
くの場合でHk /HcJ>90%となり、x=0.2のも
のが最高であった。一方、添加量が多くなると(x>
0.3)成形性が劣化した。
【0138】図10に、このときのTcのxに対する依
存性を、有機溶剤系前添加(実施例5の方法)によって
作製した焼結体と比較して示す。2つのキュリー温度の
うち、低い方のTc(Tc1)は、xの増加と共に減少
したが、高い方のTc(Tc2)は、あまり大きな変化
を示さなかった。このことから、Tc1は、LaとCo
の置換量の多い(少なくともLaの置換量の多い)Sr
フェライト部分のTcであることが予想される。
【0139】また、図11は、焼結体のHcJのxに対す
る依存性を、有機溶剤系前添加(実施例5の方法)、水
系前添加(比較例1の方法)によって作製した焼結体と
の比較して示した図である。これにより、前添加の場合
はx=0.3のときHcJの極大値が得られるのに対し、
後添加の場合はx=0.2で極大値をとることがわか
る。これにより、後添加の場合は、高価なCoなどの添
加量を前添加の場合の2/3程度に少量化しても、高い
磁気特性が得られることがわかる。
【0140】また、図12には、焼結体の角型性(Hk
/HcJ)のxに対する依存性を、有機溶剤系前添加(実
施例5の方法)、水系前添加の方法(比較例1の方法)
によって作製した焼結体と比較して示す。これにより、
後添加の場合は、置換量xの多い組成においても、高い
角型性(Hk /HcJ)が得られることがわかる。さら
に、図13に、トルクメータにより測定した異方性定数
(K1)を用いて計算した異方性磁場(HA )を、有機
溶剤系前添加の場合と比較して示す。図から明らかなよ
うに、HA は、有機溶剤系前添加の場合とほぼ同じ値で
あった。
【0141】実施例3(Feのみ前添加、La,Coを
後添加:仮焼温度による比較) Sr:Fe=0.8:11.8=1:14.75となる
ように原料を秤量し、これをそれぞれ1150℃、12
00℃、1250℃、1300℃で仮焼した他は実施例
1と同様にして仮焼体を得た。得られた仮焼体サンプル
をX線回折で分析したところ、M相とヘマタイト相(α
−Fe23)の存在が確認された。ここで、化学量論組
成(Sr:Fe=1:12)よりも多い分のFeが全て
α−Fe23 相となり、残りがSrM相になっている
と仮定して仮焼粉中のSrM相のσsを計算すると、同
じ仮焼温度のSrM仮焼材のσsとほぼ等しくなってい
た。
【0142】得られた顆粒状の仮焼体に対し、 Sr1-xLaxFe12-yCoy19 において、x=y=0.2となるように、La2(C
33・8H2O、CoOx(CoO+Co34)+Si
2 (0.4重量%)、CaCO3 (1.25重量
%)、グルコン酸カルシウム(0.6重量%)を添加し
て小型振動ミルで粗粉砕を行った。得られた粗粉砕材2
10g に対して、水400ccを加えて実施例1と同様に
して(ただし、Fe23 は添加しない)、湿式微粉砕
を40時間行い、湿式磁場成形後焼成した。
【0143】得られた成形体の配向度をX線回折により
調べその結果を図14に示す。図14から明らかよう
に、1250℃仮焼体を用いたサンプルで成形体配向度
が高く、全てを後添加したサンプル並になっている。ま
た、図15に仮焼温度1250℃とした場合の焼結密度
と磁気的配向度(Ir/Is)の関係を示す。成形体配
向度が同じにも関わらず、La,Coだけ後添加したサ
ンプルの方が焼成後の密度と配向度が共に高くなってい
る。また、図16に仮焼温度1250℃とした場合のH
cJ-Br およびHk /HcJを示す。La,Coだけ後添
加したサンプルでは、HcJが低くなるが、密度と配向度
が高いためBr は高くなり、実施例2のサンプルと特性
レベルはほぼ同じであった。
【0144】この製法によると、仮焼後に微細なFe2
3 を大量に添加しなくても、優れた磁気特性が得られ
る。さらに、成形性も比較的良好となるため、製造が容
易になるメリットがある。また、これらの各サンプルに
ついてキュリー温度を測定したところ、2つ以上の異な
るキュリー温度を有することが確認された。
【0145】実施例4(Fe,La前添加、Coのみ後
添加による比較) Sr:La:Fe=0.8:0.2:11.8となるよ
うに原料を秤量し、これをそれぞれ1200℃、125
0℃で仮焼した他は実施例1と同様にして仮焼体を得
た。得られた仮焼体サンプルをX線回折で分析したとこ
ろ、M相とヘマタイト相(α−Fe23相)の存在が確
認されたが、オルソフェライト(FeLaO3)は確認
できなかった。
【0146】得られた顆粒状の仮焼体に対し、 Sr1-xLaxFe12-yCoy19 において、x=y=0.2となるように、CoOx(C
oO+Co34)+SiO2 (0.4重量%)、CaC
3 (1.25重量%)、グルコン酸カルシウム(0.
6重量%)を添加して小型振動ミルで粗粉砕を行った。
その後、水微粉砕を40時間行い、成形後実施例1と同
様にして焼成した。
【0147】表6にHcJ-Br およびHk /HcJを示
す。
【0148】
【表6】
【0149】特性的には実施例2,3とほぼ同一であっ
た。
【0150】実施例5(溶剤系分散媒での後添加工程に
よる比較) 実施例1の組成物〔SrFe1219+SiO2:0.2
重量%+CaCO3 :0.15重量%〕を用いて、添加
後の組成が、 Sr1-xLaxFe12-yCoy19 において、x=y=0.1,0.2,0.3,0.4と
なるようにして、分散剤をグルコン酸カルシウムに代え
てオレイン酸、分散媒を水に代えてキシレンとした以外
は実施例1と同様の方法により焼結体を作製した。
【0151】一方、組成が、 Sr1-xLaxFe12-yCoy19 において、x=y=0.1,0.2,0.3,0.4と
なるようにして、分散剤をグルコン酸カルシウムに代え
てオレイン酸、分散媒を水に代えてキシレンとした以外
は比較例1と同様の方法により焼結体を作製した。
【0152】得られた1220℃での焼結体サンプルの
角型比Hk /HcJを図17に、添加量別磁気的配向度
(Ir/Is)特性を図18に示す。配向度はほぼ同レ
ベルであるが、Hk /HcJは後添加の方が改善されてい
た。
【0153】実施例6(La,Co分割添加の検討) 原料としては、次のものを用いた。 Fe23粉末(一次粒子径0.3μm)、 1000.0g SrCO3粉末(一次粒子径2μm)、 161.2g
【0154】上記出発原料を湿式アトライターで粉砕
後、乾燥・整粒し、これを空気中において1250℃で
3時間焼成し、顆粒状の仮焼体を得た。
【0155】得られた仮焼体に対し、乾式振動ミル粉砕
時にSiO2=0.6重量%、CaCO3=1.4重量%
と共に、炭酸ランタン〔La2(CO33・8H2O〕、
酸化コバルト(CoO)、グルコン酸カルシウム(0.
9重量%)添加した。その際、La添加量を変えること
により、La/Co比を変化させた。また、ボールミル
粉砕時に酸化鉄(Fe23)を添加した。また、前記仮
焼体(表中母材という)は炭酸ランタン〔La2(C
33・8H2O〕、酸化コバルト(CoO)の前添加
量x=0および0.1としたものを用意した。表7に各
サンプルの組成比と、微粉砕材の分析値を示す。
【0156】
【表7】
【0157】得られた各サンプルを1200℃、122
0℃、1240℃でそれぞれ焼成し、磁気特性を測定し
た。結果を図19示す。いずれのサンプルにおいても、
Laリッチ組成(La/Co=1.14〜1.23)の
場合に比較的高いHcJおよびHk が得られた。La/C
oの最適点で比較すると、x=0.1の母材に対し、x
=0.1後添加するとHk が劣化する傾向を示し、x=
0の母材に対してx=0.2後添加の場合に高い焼結磁
気特性が得られた。LaとCoの粉砕時添加(後添加)
は、配合時添加(前添加)の場合よりも高いHk が得ら
れることがわかっているが、本実施例においては両者の
中間的な挙動を示し、特に特徴的な結果は得られなかっ
た。
【0158】なお、上記の実施例においては、Srを含
有するフェライトについて述べたがCaまたはBaを含
有するフェライトについても同等の結果が得られること
が確認された。
【0159】さらに上記各実施例において、本発明サン
プルを、測定用の円柱形状からC型のモータの界磁用磁
石の形状に変えた他は同様にしてモータ用C型形状焼結
磁石を得た。得られたコア材を従来の材質の焼結磁石に
代えてモータ中に組み込み、定格条件で動作させたとこ
ろ良好な特性を示した。また、そのトルクを測定したと
ころ、従来のコア材を用いたモータより上昇していた。
また、ボンディッド磁石でも同様の結果を得た。
【0160】実施例7(後添加のHcJ温度特性) 実施例1、および比較例1で作製した焼結体サンプルの
保磁力(HcJ)温度特性を測定した。−100℃〜+1
00℃のHcJ測定値は、相関係数99.9%以上で、最
小自乗法直線近似ができた。これに基づき、HcJの温度
特性を計算すると、下記表8に示すような結果が得られ
た。これにより、後添加による製造法により、作製した
2つのTcを持つLaCo含有フェライトも、前添加の
場合と同等以上の優れたHcJの温度特性を有することが
わかる。
【0161】
【表8】
【0162】実施例8(Pr系後添加) La2(CO338H2Oに代えて、Pr2(CO3
30.5H2Oとした以外は、実施例2と同様の方法で焼
結磁石を作製して磁気特性等を評価した。図20に、キ
ュリー点Tcの置換量xに対する依存性を、有機溶剤系
前添加(実施例5の方法)によって作製した焼結体と比
較して示す。2つのキュリー温度Tcのうち、低い方の
Tc(Tc1)は、置換量xの増加と共に減少したが、
高い方のTc(Tc2)は、あまり大きな変化を示さな
かった。このことから、Tc1は、PrとCoの置換量
の多い(少なくともPr置換量の多い)Srフェライト
部分のTcであることが予想される。
【0163】また、図21には、焼結体のHcJのxに対
する依存性を有機溶剤系前添加(実施例5の方法)によ
って作製した焼結体と比較して示す。これにより、後添
加の場合は、x=0.1で極大値をとり、有機溶媒系前
添加の場合よりも高いHcJが得られた。
【0164】
【発明の効果】以上のように本発明方法によれば、M型
フェライトの飽和磁化と磁気異方性とを同時に高めるこ
とにより、従来のM型フェライト磁石では達成不可能で
あった高い残留磁束密度と高い保磁力とを有し、保磁力
の温度特性が極めて優れ、特に低温域においても保磁力
の低下が少ない優れた磁気特性を有し、しかも減磁曲線
の角形性にも優れたフェライト磁石の製造方法を提供す
ることができる。
【0165】また、高価なCoの含有量を少なくしても
高特性を得ることの可能なフェライト磁石の製造方法を
提供することができる。
【0166】また、水系の製造工程でも配向度が溶剤系
に匹敵する値の得られるフェライト磁石の製造方法を提
供することができる。
【0167】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の焼結磁石サンプル1のa面の組織をS
EMにより撮影した図面代用写真である。
【図2】本発明の焼結磁石サンプル1のc面の組織をS
EMにより撮影した図面代用写真である。
【図3】比較サンプル3のa面の組織をSEMにより撮
影した図面代用写真である。
【図4】比較サンプル3のc面の組織をSEMにより撮
影した図面代用写真である。
【図5】本発明サンプル1のσ−T曲線を示すグラフで
ある。
【図6】本発明サンプル2のσ−T曲線を示すグラフで
ある。
【図7】比較サンプル1のσ−T曲線を示すグラフであ
る。
【図8】本発明サンプルのLaCo置換量別配向度を示
したグラフである。
【図9】本発明サンプルの、HcJ−Br 特性を示したグ
ラフである。
【図10】水系後添加の本発明サンプルと、有機溶剤系
前添加の比較サンプルとの、キュリー点Tcのxに対す
る依存性を示したグラフである。
【図11】水系後添加の本発明サンプルと、有機溶剤系
前添加の比較サンプルとの、HcJのxに対する依存性を
示したグラフである。
【図12】水系後添加の本発明サンプルと、有機溶剤系
前添加の比較サンプルとの、角型性(Hk /HcJ)のx
に対する依存性を示したグラフである。
【図13】水系後添加の本発明サンプルと、有機溶剤系
前添加の比較サンプルとの異方性磁場(HA )を示した
グラフである。
【図14】本発明サンプルの配向度を示すグラフであ
る。
【図15】本発明サンプルの仮焼温度1250℃での密
度別磁気的配向度を示したグラフである。
【図16】本発明サンプルの仮焼温度1250℃でのH
cJ-Br およびHk /HcJを示したグラフである。
【図17】本発明サンプルの1220℃での焼結体サン
プルの角型性Hk /HcJを示したグラフである。
【図18】本発明サンプルの置換量別磁気的配向度(I
r/Is)を示したグラフである。ある。
【図19】1200℃、1220℃、1240℃でそれ
ぞれ焼成したサンプルの、磁気特性を示したグラフであ
る。
【図20】有機溶剤系前添加の本発明サンプルと、水系
前添加の比較サンプルとの、キュリー点Tcのxに対す
る依存性を示したグラフである。
【図21】有機溶剤系前添加の本発明サンプルと、水系
前添加の比較サンプルとの、HcJのxに対する依存性を
示したグラフである。
【図22】2つのキュリー温度の求め方を説明するため
の参考グラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI H01F 41/02 H02K 15/03 A H02K 15/03 C04B 35/26 G (72)発明者 皆地 良彦 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 テ ィーディーケイ株式会社内 (72)発明者 飯田 和昌 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 テ ィーディーケイ株式会社内 (72)発明者 佐々木 光昭 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 テ ィーディーケイ株式会社内 (72)発明者 平田 文彦 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 テ ィーディーケイ株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−326234(JP,A) 特開 平2−289431(JP,A) 特開 昭32−8841(JP,A) 特開 昭60−63715(JP,A) 特開 昭62−119760(JP,A) 特開 平9−115715(JP,A)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 六方晶フェライトを主相とし、 組成が、 A(AはSr,BaまたはCaから選択される少なくと
    も1種の元素であって、SrまたはBaを必ず含む)、 R〔RはYを含む希土類元素から選択される少なくとも
    1種の元素、またはこれにBiを含む〕、 M(MはCo、または、CoおよびZn) およびFeを含み、それぞれの金属元素の総計の構成比
    率が、全金属元素量に対し、 A:1〜13原子%、 R:0.05〜10原子%、 M:0.1〜5原子%、 Fe:80〜95原子%、 を満足する焼結磁石を製造するにあたり、 少なくとも前記Aを含有する六方晶フェライトを主相と
    する粒子に、 焼結磁石の各元素が前記組成を満足するようにCoおよ
    び/またはRを含む化合物を添加し、あるいはこれに加
    えてさらにFeおよび/またはAを含む化合物を添加
    し、 その後、成形し、 本焼成を行うことを特徴とする六方晶フェライト焼結磁
    石の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記化合物の一部、または全部を添加す
    るに際し、 さらに、SiおよびCaを添加する請求項1の六方晶フ
    ェライト焼結磁石の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記化合物の一部、または全部を添加す
    るに際し、 さらに、分散剤を添加する請求項1または2の六方晶フ
    ェライト焼結磁石の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記化合物の一部は、粉砕時に添加され
    る請求項1〜3のいずれかの六方晶フェライト焼結磁石
    の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記分散剤は、水酸基およびカルボキシ
    ル基を有する有機化合物またはその中和塩もしくはその
    ラクトンであるか、ヒドロキシメチルカルボニル基を有
    する有機化合物であるか、酸として解離し得るエノール
    形水酸基を有する有機化合物またはその中和塩であり、 前記有機化合物が、炭素数3〜20であり、酸素原子と
    二重結合した炭素原子以外の炭素原子の50%以上に水
    酸基が結合しているものである請求項3または4の六方
    晶フェライト焼結磁石の製造方法。
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