JP4301539B2 - 乾式成形焼結磁石の製造方法 - Google Patents

乾式成形焼結磁石の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乾式成形法を用いてフェライト焼結磁石を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にSr系のマグネトプランバイト型(M型)フェライト磁石は、安価でしかも高い磁気特性を有するという特徴から、家電製品や自動車に搭載される電装用モータなどに広く利用されている。
【0003】
フェライト磁石は、一般に、出発原料粉末を混合して仮焼し、次いで、適度な粒度となるまで粉砕して仮焼体粉末とした後、必要な形状に成形し、焼結することにより製造する。異方性焼結磁石を製造するためには、磁場中で成形を行う。成形方法は湿式法と乾式法とに大別され、高磁気特性を目標とするものには湿式成形法が用いられる。
【0004】
湿式成形法では、まず、仮焼体粉末を水などの分散媒に懸濁させてスラリーを調製し、このスラリーを成形装置の成形空間内に圧送して充填し、磁場中で加圧すると共に分散媒を成形空間外へ排除することにより成形体を得る。湿式成形法では分散媒を用いるため、仮焼体粉末を構成する粒子が回転しやすく、その結果、磁場印加による配向が容易となって高磁気特性、特に高い残留磁束密度が得られる。しかし、湿式成形法では分散媒を排除する必要があるため、成形時間が長くなって生産性が低くなる、成形装置の金型構造が複雑になる、成形装置が大掛かりになる、といった短所も存在する。
【0005】
一方、乾式成形法では、乾燥した仮焼体粉末を成形空間内に充填し、磁場中で加圧して成形する。乾式成形法は、生産性が高く、成形装置の構造も単純であるため、製造コストが低いという長所があるが、湿式成形法に比べ磁場印加による配向性が劣る結果、高い残留磁束密度が得られないという短所がある。なお、磁石の残留磁束密度Brは、磁石の密度およびその配向度と、その結晶構造で決まる飽和磁化(4πIs)とで決定され、
Br=4πIs×配向度×密度
で表わされる。
【0006】
乾式成形法において配向性が悪いのは、仮焼体粒子同士の凝集、摩擦を和らげる分散媒が存在しないためである。乾式成形法では、一般に、粒子間の摩擦低減のために、界面活性剤等の有機物を添加したり、加圧時の補形力を向上させるために有機バインダを添加したりする。例えば特開平7−99129号公報では、仮焼後の湿式粉砕の際にスラリー中に界面活性剤を添加することにより、配向度を向上させて高残留磁束密度を得る提案がなされている。ただし、有機物の添加は密度を低下させ、その結果、配向度向上による残留磁束密度向上効果が相殺されてしまうので、有機物の添加量を抑えることのできる配向度向上手段が望まれる。
【0007】
ところで、フェライト磁石の製造に際しては、焼結助剤や結晶粒径制御剤として働く添加物を仮焼体粒子間に介在させて液相化させることにより、焼結体密度や保磁力を向上させることが一般的である。添加物としては、例えば上記特開平7−99129号公報に示されるように、SiO2、CaOが最も一般的である。
【0008】
また、特開平11−154604号公報には、M型のSr系フェライトの主成分の一部をLaおよびCoで置換することにより、高飽和磁化および高保磁力を両立させる提案がなされている。ただし、同公報において高飽和磁化および高保磁力が確認されているのは湿式成形を用いた場合である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来、Sr系フェライト磁石の高性能化には、まず、湿式成形法を用いることが第1と考えられている。そのため、低コスト化が可能な乾式成形法を用い、かつ、磁石の高性能化をはかる提案は少ない。
【0010】
フェライト磁石の高保磁力化のためには、磁石中における単磁区結晶粒子の比率を高めることが必要である。また、高残留磁束密度を得るためには、前記したように磁石の密度を高めることが有効である。フェライト焼結磁石では、一般に、焼結時に結晶粒を成長させることで緻密度が向上し、高密度化が実現できる。そのため、前記したようにSiO2、CaOなどの焼結助剤を添加している。粒成長に伴って高密度化が進行するため、残留磁束密度は単調に増大していくが、粒成長に伴って結晶粒の多磁区化が進むため、保磁力は単調に減少していく。
【0011】
したがって、従来の湿式成形フェライト焼結磁石では、保磁力および残留磁束密度を共に高くするために、仮焼工程において結晶粒の寸法を小さくし、かつ、焼結工程において粒成長させて適度の結晶粒径とすることにより、保磁力劣化を抑えた上で磁石密度を向上させる手法が採用されている。
【0012】
しかし、この手法では、粒成長させるための焼結助剤としてSiO2やCaOなどの非磁性材料を用いるため、焼結密度向上に伴う残留磁束密度向上はそれほどでもない。ただし、湿式成形フェライト焼結磁石では、乾式成形フェライト焼結磁石に比べ焼結密度を高くできるため、この手法を用いても十分に高い残留磁束密度が得られている。
【0013】
しかし、焼結密度が絶対的に低くなる乾式成形フェライト焼結磁石では、湿式成形フェライト焼結磁石に比べ、より効果的な残留磁束密度向上方法が望まれる。
【0014】
本発明の目的は、低コスト化が可能であるが高特性が得られにくい乾式成形法を用いて製造されるフェライト焼結磁石において、保磁力の低下を抑えた上で残留磁束密度の向上をはかることである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜()の本発明により達成される。
(1) 六方晶マグネトプランバイト型フェライトを主相として有し、
Sr、BaおよびPbから選択される少なくとも1種の元素であって、Srを必ず含むものをAとし、
Y、希土類元素およびBiから選択される少なくとも1種の元素であってLaを必ず含むものをRとし、
Co、またはCoおよびZnをMとしたとき、
主成分が式A1−x(Fe12−y19(x、y、zはモル比を表し、0.04≦x≦0.45、0.04≦y≦0.3、0.9≦x/y≦1.5、0.95≦z≦1.05である)で表され
副成分としてSiO 及びCaOを、前記主成分に対して0.77〜1.61質量%含む
焼結磁石を製造するに際し、
出発原料粉末の少なくとも一部を混合して混合粉末を得る混合工程と、前記混合粉末を仮焼して仮焼体を得る仮焼工程と、前記仮焼体を粉砕して仮焼体粉末を得る粉砕工程と、前記仮焼体粉末を含む成形対象粉末を磁場中で乾式成形して成形体を得る成形工程と、前記成形体を焼成して焼結体を得る焼結工程とを設け、
前記仮焼工程において、
前記副成分は、モル比Ca/Siを2.0以下とし、
前記仮焼工程において、1230℃以上の温度で仮焼して平均一次粒径が1.2μm以上である仮焼体を得る乾式成形焼結磁石の製造方法。
(2) 前記仮焼工程と前記成形工程との間に、非磁性の出発原料粉末の一部が後添加物として仮焼体に添加され、後添加物と仮焼体との合計量に対する後添加物の比率が2〜20質量%である上記(1)の乾式成形焼結磁石の製造方法。
(3) 前記仮焼工程と前記成形工程との間に、非磁性の出発原料粉末の一部が後添加物として仮焼体に添加され、後添加物と仮焼体との合計量に対する後添加物の比率が6〜12質量%である上記(1)の乾式成形焼結磁石の製造方法。
) 前記仮焼工程において、平均一次粒径が5μm以下である仮焼体を得る上記(1)〜()のいずれかの乾式成形焼結磁石の製造方法。
【0016】
【作用および効果】
本発明では、乾式成形フェライト焼結磁石を作製するに際し、仮焼体の平均一次粒径が1μm超となるように制御する。仮焼体は、仮焼粒子(一次粒子)が二次粒子化した状態であり、これを単磁区粒子となる程度まで粉砕してから成形工程に供されるが、前記平均一次粒径は、仮焼体を粉砕する前に測定される一次粒子の平均粒径である。
【0017】
焼結工程において、単磁区でかつ粒径の小さな粉砕粉を用いて粒成長させることにより、保磁力劣化を抑えた上で残留磁束密度向上をはかる従来の方法では、粉砕を容易にするために仮焼体の一次粒径も小さくすることが一般的である。しかし、本発明者らは、平均一次粒径が比較的大きい仮焼体を用いることにより、すなわち、仮焼工程において粒成長を促進させることにより、従来の方法に比べ、焼結磁石の緻密度をより向上でき、その結果、残留磁束密度をより向上できることを見いだした。
【0018】
本発明では、仮焼体を粉砕した後の平均粒径、すなわち粉砕粉の平均粒径は、従来の方法とほぼ同じとする。したがって本発明では、仮焼体の平均一次粒径を大きくするだけで残留磁束密度が向上することになる。その理由は明らかではないが、粉砕後の平均粒径が同等であっても、粉砕粉中に比較的大径の粒子が多くなるためとも考えられる。
【0019】
乾式成形法を用いる場合において平均一次粒径の大きい仮焼体を用ることにより、残留磁束密度が高く、しかも保磁力も十分に高い焼結磁石を実現することができる。本発明者の研究では、湿式成形法を用いた場合には、平均一次粒径の大きな仮焼体を用いても残留磁束密度は顕著には向上せず、焼結助剤の添加量を制御した場合と同程度の効果しか得られないことがわかった。したがって、仮焼体の平均一次粒径の制御による残留磁束密度向上は、乾式成形焼結磁石においてだけ実用化可能である。
【0020】
本発明の好ましい態様では、後添加法を利用する。通常の粉末冶金法による焼結磁石の製造に際しては、焼結助剤を除く出発原料粉末のすべてを仮焼し、得られた仮焼体を粉砕して成形し、焼結する。一方、後添加法では、出発原料粉末の一部を仮焼せずに後添加物として残し、そのほかの出発原料を仮焼した後に、仮焼体と前記後添加物とを混合し、次いで成形および焼結を行う。Coを含有する場合においてこの後添加法を利用すれば、角形性Hk/HcJが著しく改善される。また、高価なCoやRの含有量を少なくしても同等の磁石特性が得られるので、コスト低減が可能となる。なお、上記Hk/HcJにおけるHkは、磁気ヒステリシスループの第2象限において磁束密度が残留磁束密度の90%になるときの外部磁界強度である。Hkが低いと高い最大エネルギー積が得られない。
【0021】
本発明では、磁場中で乾式成形を行う。その際には、金型に磁場を印加した状態で、金型中の成形空間内に成形対象粉末を充填する。充填の際には、成形対象粉末は磁場にそって成形空間内に吸引される。本発明者は、上記した後添加法を用い、かつ後添加物の添加量が所定範囲内となるように制御すれば、磁場中で金型に成形対象粉末を充填する際に充填密度のばらつき(ショット間でのばらつき)が臨界的に小さくなることを見いだした。充填密度のばらつきが小さくなれば焼結体の寸法精度が向上するため、焼結体を所定の寸法とするための加工の際に、負荷が軽減される。また、後添加物の添加量が所定範囲内であれば、十分に高い充填密度が得られ、さらに、金型から脱型する際に成形体にクラックが生じにくくなるという効果も得られることがわかった。磁場中乾式成形法と後添加法との組み合わせによって生じるこのような効果は、本発明者が初めて見いだしたものである。
【0022】
充填密度ばらつきが低減する理由は明らかではないが、以下のように考えることができる。後添加法を用いない場合には、仮焼体粉末そのものが成形対象粉末となる。仮焼体粉末は磁性粉末であるため、磁場中で金型に充填される際に磁気的に凝集しやすい。充填時の磁場強度が同じであっても、磁気的凝集は常に同じように発生するわけではないため、後添加法を用いない場合には充填密度のばらつきが大きくなると考えられる。一方、後添加法では、非磁性の後添加物を仮焼体粉末と混合することにより、成形対象粉末を調製する。したがって、後添加法では、後添加された非磁性成分の粉末と、M型フェライトとなるように秤量・混合されて仮焼された仮焼体粉末とが、成形対象粉末中において互いに完全に分離された状態となっている。そのため、後添加物が仮焼体粒子同士の磁気的凝集を妨げる緩衝材として機能すると考えられる。後添加物の添加量が少なすぎると、このような作用が不十分となる。一方、後添加物の添加量が多すぎると、後添加物が仮焼体粉末中に均一に分散しにくくなるため、磁気的凝集防止作用が不安定になる。その結果、充填密度のばらつきが逆に増大してしまう。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明では、六方晶M型フェライトを主相とする焼結磁石が製造される。
【0024】
本発明により製造される焼結磁石において、Sr、BaおよびPbから選択される少なくとも1種の元素であって、Srを必ず含むものをAとし、Y、希土類元素およびBiから選択される少なくとも1種の元素であってLaを必ず含むものをRとし、CoであるかCoおよびZnをMとしたとき、主成分は
式 A1-xx(Fe12-yyz19
で表される。x、y、zはモル比を表し、
0.04≦x≦0.45、
0.04≦y≦0.3、
0.9≦x/y≦1.5、
0.95≦z≦1.05
であり、好ましくは
0.12≦x≦0.33、
0.12≦y≦0.25、
1.0≦x/y≦1.3、
0.975≦z≦1.025
である。
【0025】
上記式において、xが小さすぎると、すなわち元素Rの量が少なすぎると、六方晶フェライトに対する元素Mの固溶量を多くできなくなり、飽和磁化向上効果および/または異方性磁場向上効果が不十分となってくる。xが大きすぎると六方晶フェライト中に元素Rが置換固溶できなくなり、例えば元素Rを含むオルソフェライトが生成して飽和磁化が低くなってくる。yが小さすぎると飽和磁化向上効果および/または異方性磁場向上効果が不十分となってくる。yが大きすぎると六方晶フェライト中に元素Mが置換固溶できなくなってくる。また、元素Mが置換固溶できる範囲であっても、異方性定数(K1)や異方性磁場(HA)の劣化が大きくなってしまう。zが小さすぎるとSrおよび元素Rを含む非磁性相が増えるため、飽和磁化が低くなってしまう。zが大きすぎるとα−Fe23相または元素Mを含む非磁性スピネルフェライト相が増えるため、飽和磁化が低くなってしまう。
【0026】
上記式において、x/yが小さすぎても大きすぎても元素Rと元素Mとの価数の平衡がとれなくなり、W型フェライト等の異相が生成しやすくなる。元素Mは2価であるから、元素Rが3価イオンである場合、理想的にはx/y=1である。なお、x/yが1超の領域で許容範囲が大きい理由は、yが小さくてもFe3+→Fe2+の還元によって価数の平衡がとれるためである。
【0027】
元素A中のSrの比率は、好ましくは51モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。元素A中のSrの比率が低すぎると、飽和磁化および保磁力を十分に高くできない。
【0028】
元素R中においてLaの占める割合は、好ましくは40モル%以上、より好ましくは70モル%以上であり、飽和磁化向上のためには元素RとしてLaだけを用いることが最も好ましい。これは、六方晶M型フェライトに対する固溶限界量を比較すると、Laが最も多いためである。したがって、元素R中のLaの割合が低すぎると元素Rの固溶量を多くすることができず、その結果、元素Mの固溶量も多くすることができなくなる。また、Biを併用すれば仮焼温度および焼結温度を低くすることができるので、生産上有利である。
【0029】
元素Mは、CoであるかCoおよびZnである。元素M中のCoの比率は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上であり、最も好ましくは100モル%である。Coの比率が低すぎると、保磁力および飽和磁化の向上が不十分となる。
【0030】
組成を表わす上記式において、酸素(O)のモル数は19となっているが、これは、元素Rがすべて3価であって、かつx=y、z=1のときの化学量論組成比を示したものである。元素Rの種類やx、y、zの値によって、酸素のモル数は異なってくる。また、例えば焼成雰囲気が還元性雰囲気の場合は、酸素の欠損(ベイカンシー)ができる可能性がある。さらに、FeはM型フェライト中においては通常3価で存在するが、これが2価などに変化する可能性もある。また、Co等の元素Mも価数が変化する可能性があり、これらにより金属元素に対する酸素の比率は変化する。本明細書では、元素Rの種類やx、y、zの値によらず酸素のモル数を19と表示してあるが、実際の酸素のモル数は化学量論組成比から多少偏倚していてもよい。
【0031】
焼結磁石中には、上記主成分に加え、副成分としてSiOおよびCaOが含有される。上記主成分に対するSiOおよびCaOの合計量の比率は、0.77〜1.61質量%、好ましくは0.98〜1.36質量%である。なお、主成分の質量は、磁石中に含有される金属元素量に基づいて、上記組成式を利用して算出する。また、副成分中におけるモル比Ca/Siは、1.3〜2.0、好ましくは1.6〜2.0である。
【0032】
副成分の比率およびCa/Siを上記範囲内とすることにより、焼結時の異常粒成長を抑制できると共に、結晶粒の板状化が促進される。その結果、焼結時の結晶の再配列が進むと共に緻密な焼結体が得られるので、残留磁束密度の極めて高い焼結磁石が実現する。主成分に対する副成分の比率が低すぎると、結晶粒の板状化が促進されすぎるため、保磁力が低くなってしまう。一方、主成分に対する副成分の比率が高すぎると、非磁性成分の割合が高くなってしまうので、飽和磁化が低くなる結果、残留磁束密度が低くなってしまう。モル比Ca/Siが小さすぎると、焼結体密度の向上が不十分となる。一方、モル比Ca/Siが大きすぎると、すなわち、SiO2が少なすぎると、粒成長の制御が効かず、保磁力が低くなってしまう。
【0033】
焼結磁石には、Al23が含有されていてもよい。Al23は、保磁力を向上させるが残留密度を低下させる。Al23の含有量は、好ましくは1.0質量%以下である。本発明を適用すれば、Al23含有量をこの程度に抑えても、十分に高い保磁力が得られるため、残留磁束密度の低下を抑えることができる。なお、Al23添加の効果を十分に発揮させるためには、Al23含有量を0.1質量%以上とすることが好ましい。
【0034】
焼結磁石には、B23が含まれていてもよい。B23を含むことにより仮焼温度および焼結温度を低くすることができるので、生産上有利である。B23の含有量は、主成分に対し0.5質量%以下であることが好ましい。B23含有量が多すぎると、飽和磁化が低くなってしまう。
【0035】
焼結磁石中には、Na、K、Rb等のアルカリ金属元素は含まれないことが好ましいが、不純物として含有されていてもよい。これらをNa2O、K2O、Rb2O等の酸化物に換算して含有量を求めたとき、これらの含有量の合計は、焼結磁石全体の3質量%以下であることが好ましい。これらの含有量が多すぎると、飽和磁化が低くなってしまう。
【0036】
また、このほか、例えばGa、In、Li、Mg、Mn、Ni、Cr、Cu、Ti、Zr、Ge、Sn、V、Nb、Ta、Sb、W、Mo等が酸化物の形で、それぞれ酸化ガリウム5質量%以下、酸化インジウム3質量%以下、酸化リチウム1質量%以下、酸化マグネシウム3質量%以下、酸化マンガン3質量%以下、酸化ニッケル3質量%以下、酸化クロム5質量%以下、酸化銅3質量%以下、酸化チタン3質量%以下、酸化ジルコニウム3質量%以下、酸化ゲルマニウム3質量%以下、酸化スズ3質量%以下、酸化バナジウム3質量%以下、酸化ニオブ3質量%以下、酸化タンタル3質量%以下、酸化アンチモン3質量%以下、酸化タングステン3質量%以下、酸化モリブデン3質量%以下程度含有されていてもよい。
【0037】
焼結磁石の組成は、蛍光X線定量分析などにより測定することができる。また、主相、すなわち六方晶構造を有するフェライト相の存在は、X線回折により確認できる。
【0038】
次に、本発明の製造方法を説明する。本発明の製造方法は、乾式成形法を用いる通常の方法と同様に、出発原料粉末の混合物を得る混合工程と、前記混合物を焼成して仮焼体を得る仮焼工程と、前記仮焼体を粉砕して仮焼体粉末を得る粉砕工程と、前記仮焼体粉末を含む成形対象粉末を磁場中で乾式成形して成形体を得る成形工程と、前記成形体を焼結する焼結工程とを有する。
【0039】
出発原料としては、酸化物、または、焼成により酸化物となる各種化合物、例えば炭酸塩、シュウ酸塩等を用いればよい。
【0040】
発明では、仮焼工程において、平均一次粒径が1.2μm以上、好ましくは1.5μm以上である仮焼体が得られるように、仮焼条件を設定する。平均一次粒径が小さすぎると、本発明の効果が実現しない。本発明において、焼結磁石の組成が同じであれば、仮焼体の平均一次粒径が大きくなるに伴い、焼結磁石の残留磁束密度は単調に増大し、一方、保磁力は単調に減少する。上記平均一次粒径が5μm程度となると、焼結助剤等による焼結制御では高保磁力の確保が難しくなり、仮焼体の平均一次粒径が5μmより大きくなると実用レベルの保磁力が得られなくなってしまう。そのため本発明では、仮焼体の平均一次粒径は5μm以下であることが好ましい。なお、仮焼体の平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡により測定する。この測定は、200個以上、好ましくは500個以上の一次粒子について行う。
【0041】
なお、前記した副成分におけるモル比Ca/Siを制御することによっても、残留磁束密度と保磁力とを同時に制御することができ、その場合にも、残留磁束密度を高くすれば保磁力は減少する。しかし、本発明において仮焼体の平均一次粒径を制御すれば、モル比Ca/Siによる制御に比べ、同等の保磁力でより高い残留磁束密度が得られる。
【0042】
本発明における仮焼体の平均一次粒径の制御は、乾式成形を用いる場合に有効である。平均一次粒径の増大に伴い、湿式成形でも乾式成形と同様に残留磁束密度は単調に増大し、一方、保磁力は単調に減少する。しかし、湿式成形を用いる場合、平均一次粒径の制御による残留磁束密度向上効果は、前記モル比Ca/Siの制御によって代用できる程度のものである。すなわち、湿式成形を用いる場合には、仮焼体の平均一次粒径を制御してもモル比Ca/Siを制御しても、保磁力が同等であれば同等の残留磁束密度しか得られない。
【0043】
具体的な仮焼条件は、磁石組成によっても異なるが、通常、空気中またはこれより酸素分圧の低い還元性雰囲気中において、好ましくは1230〜1400℃で1秒間〜10時間、特に1秒間〜3時間程度仮焼すればよい。仮焼体は、実質的にマグネトプランバイト型のフェライト構造をもつ。なお、一般に仮焼温度が高いほど、また、仮焼時間が長いほど、仮焼体の平均一次粒径は大きくなる。
【0044】
粉砕工程は、一般に顆粒状として得られる仮焼体を粉砕ないし解砕するために設ける。粉砕工程では、まず、乾式粗粉砕を行うことが好ましい。乾式粗粉砕には、フェライト粒子に結晶歪を導入して、保磁力HcBをいったん小さくする効果もある。保磁力の低下により粒子の凝集が抑制され、分散性が向上する。また、粒子の凝集を抑制することにより、配向度が向上する。粒子に導入された結晶歪は、後の焼結工程において解放され、保磁力が回復することによって永久磁石とすることができる。
【0045】
乾式粗粉砕後、粉砕粉と水とを含む粉砕用スラリーを調製し、これを用いて湿式微粉砕を行うことが好ましい。湿式微粉砕後、乾燥することにより仮焼体粉末が得られる。
【0046】
粉砕工程では、上記副成分の出発原料として、SiO2と、焼成によりCaOとなるCaCO3とが添加される。副成分の出発原料は、一部を仮焼前に、すなわち上記混合工程において添加してもよい。ただし、副成分の出発原料は仮焼後に添加したほうが、より有効に粒界成分として機能し、焼結時の均一な粒成長に寄与する。そのため、粉砕工程において添加する量は、副成分全体の好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%とする。不純物および添加されたSiやCaは、大部分粒界や三重点部分に偏析するが、一部は粒内のフェライト部分(主相)にも取り込まれる。特にCaは、Srサイトにはいる可能性が高い。
【0047】
粉砕工程で添加する副成分の出発原料は、乾式粗粉砕の際に添加しても湿式微粉砕の際に添加してもよい。
【0048】
なお、粉砕工程では、界面活性剤および/または有機バインダを必要に応じて添加してもよい。
【0049】
成形工程では、磁場中で乾式成形を行う。成形圧力は29〜49MPa程度、印加磁場は0.5〜1.0T程度とすればよい。
【0050】
焼結工程では、通常、空気中またはこれより酸素分圧の低い還元性雰囲気中において、好ましくは1150〜1270℃、より好ましくは1180〜1240℃の温度(安定温度)で焼成する。焼成時に安定温度に保持する時間(安定時間)は、0.5〜3時間程度とすることが好ましい。
【0051】
本発明において、出発原料化合物は仮焼前にすべてを混合する必要はなく、各化合物の一部または全部を仮焼後に添加する構成としてもよい。上述したように、副成分の出発原料(焼結助剤)として用いるSi化合物およびCa化合物は、一部、好ましくは全部を、仮焼後に添加することが好ましい。
【0052】
また、焼結助剤以外の化合物、すなわち、Fe、元素A、元素Rまたは元素Mを含有する化合物の少なくとも一部も、仮焼後に添加することが好ましい。焼結助剤以外の化合物を仮焼後に添加する方法を、本明細書では後添加法と呼ぶ。この後添加法では、まず、少なくとも前記元素Aを含有する六方晶フェライトを主相とする仮焼体を製造する。次いで、この仮焼体を粉砕した後、または粉砕時に、後添加する化合物を仮焼体に添加し、その後、成形し、焼結する。なお、本明細書では、後添加する化合物を後添加物と呼ぶ。この後添加物には、Si化合物やCa化合物等の焼結助剤も包含される。
【0053】
元素Rを含有する化合物としてはR酸化物を用いることができるが、R酸化物は水に対する溶解度が比較的大きいため、湿式微粉砕の際に流出してしまうなどの問題がある。また、吸湿性もあるため、秤量誤差の原因になりやすい。そのため、R化合物としては炭酸塩または水酸化物が好ましい。そのほかの元素を含む後添加物は、酸化物、または焼成により酸化物となる化合物、例えば炭酸塩や水酸化物として添加すればよい。具体的には、後添加物として例えばFe23、La(OH)3、Co34などを用いることが好ましい。
【0054】
後添加法を実施するに際しては、元素Rおよび元素Mから選択される1種または2種以上の元素、好ましくは元素Rおよび元素Mの両方が後添加物に含有されるように、後添加する化合物を選択する。このとき、元素Rを含む出発原料粉末および元素Mを含む出発原料粉末のすべてが後添加物として添加されることが好ましい。Coを含有する場合においてこの後添加法を利用すれば、前述したように磁石特性の改善およびコスト低減が可能となる。
【0055】
後添加物の量は、後添加物と仮焼体との合計量、すなわち成形対象粉末全体に対し、好ましくは2〜20質量%である。後添加物の量が少なすぎると、後添加法を用いることによる角形性向上効果やコスト低減効果が不十分となる。一方、後添加物の量が多すぎると、金型から脱型する際に成形体にクラックが頻発する。また、成形対象粉末全体に対する後添加物の比率を6〜12質量%とすれば、成形対象粉末を磁場中で金型に充填する際に、充填密度のばらつきを臨界的に小さくすることができ、しかも、十分に高い充填密度が得られ、また、成形体のクラック発生を防止できる。後添加物が6質量%未満であると、充填密度のばらつきが大きくなる。一方、後添加物が12質量%を超えると、充填密度のばらつきが大きくなるほか、充填密度自体が低くなり、また、成形体にクラックが発生しやすくなる。
【0056】
なお、後添加物の量が多すぎる場合に成形体にクラックが発生しやすくなるのは、成形対象粉末中における非磁性粉末(後添加物)の含有量が多くなると磁場に対する流動性が悪くなるためである。磁場に対する流動性が悪くなると、磁場中で金型に充填する際に充填性が悪くなる。具体的には、必要な量の粉末を充填するために金型内の成形空間の深さをより深くする必要が生じる。その結果、成形体を金型から抜き出す際の移動距離が長くなるので、金型との摩擦により成形体にクラックが発生しやすくなる。
【0057】
後添加物の添加時期は、仮焼後かつ焼結前であればよいが、後添加物と仮焼体とは比較的強く粉砕混合される必要があるので、前記粉砕工程において添加することが好ましい。添加は、乾式粗粉砕の際に行っても湿式微粉砕の際に行ってもよい。
【0058】
なお、仮焼体中のモル比Fe23/SrOは、M型フェライト単一相またはこれとα−Feとの混相となるように決定すればよく、通常は6〜8、好ましくは6〜7.5とすればよい。
【0059】
本発明により製造される焼結磁石は、所定の形状に加工され、例えば下記に示すような幅広い用途に使用される。
【0060】
例えば、フュエルポンプ用、パワーウィンドウ用、ABS用、ファン用、ワイパ用、パワーステアリング用、アクティブサスペンション用、スタータ用、ドアロック用、電動ミラー用等の自動車用モータ;FDDスピンドル用、VTRキャプスタン用、VTR回転ヘッド用、VTRリール用、VTRローディング用、VTRカメラキャプスタン用、VTRカメラ回転ヘッド用、VTRカメラズーム用、VTRカメラフォーカス用、ラジカセ等キャプスタン用、CD、LD、MDスピンドル用、CD、LD、MDローディング用、CD、LD光ピックアップ用等のOA、AV機器用モータ;エアコンコンプレッサー用、冷蔵庫コンプレッサー用、電動工具駆動用、扇風機用、電子レンジファン用、電子レンジプレート回転用、ミキサ駆動用、ドライヤーファン用、シェーバー駆動用、電動歯ブラシ用等の家電機器用モータ;ロボット軸、関節駆動用、ロボット主駆動用、工作機器テーブル駆動用、工作機器ベルト駆動用等のFA機器用モータ;その他、オートバイ用発電器、スピーカ・ヘッドホン用マグネット、マグネトロン管、MRI用磁場発生装置、CD−ROM用クランパ、ディストリビュータ用センサ、ABS用センサ、燃料・オイルレベルセンサ、マグネットラッチ等に好適に使用される。
【0061】
【実施例】
実施例1
出発原料粉末として、Fe23およびSrCO3を用意し、これらを
n=Fe23/SrCO3
におけるモル比nが6.0となるように秤量し、水を分散媒として用いて湿式混合した。
【0062】
得られた混合物を仮焼し、表1に示される平均一次粒径をもつ仮焼体を得た。仮焼は、空気中で2時間行った。仮焼温度と平均一次粒径との関係は、1200℃のとき0.8μm、1230℃のとき1.2μm、1260℃のとき1.5μm、1290℃のとき2.0μmであった。平均一次粒径は、500個の一次粒子について測定した。これらの仮焼体を振動ミルで乾式粗粉砕し、平均粒径3μmの粗粉砕粉を得た。なお、この粗粉砕粉には、一次粒子の集合体(二次粒子)が含まれていると考えられる。この粗粉砕粉の前記平均粒径は、(株)日本電子から販売されたレーザー回折式粒度分布測定装置(HELOS & RODOS)での測定値であり、これは、走査型電子顕微鏡写真による測定値とは異なる値となる。
【0063】
この粗粉砕粉に、後添加物としてFe23、La(OH)3およびCo34を添加した。後添加物の添加量は、焼結後の組成が
式 Sr0.82La0.18(Fe11.83Co0.17)O19
となるように設定した。また、同時に、副成分の出発原料として、SiO2粉末およびCaCO3粉末を添加した。副成分の添加量は、主成分に対するSiO2+CaOの質量比が1.12%となり、かつ、Ca/Siが表1に示される値となるように設定した。次いで、全体の平均粒径が1μmとなるまでアトライタで湿式微粉砕した。なお、この粉砕における分散媒には水を用いた。
【0064】
湿式微粉砕後、スラリーを脱水して乾燥し、次いで、昇華性バインダを1質量%添加した後、ハンマーミルにより凝集粉を解砕し、成形対象粉末を得た。
【0065】
次いで、0.7Tの磁場中において成形対象粉末を乾式成形装置の成形空間内に充填して39MPaの圧力で乾式成形し、円柱状の成形体を得た。
【0066】
得られた成形体を、空気中において1230℃で1時間焼成し、焼結体を得た。次いで、焼結体を面研磨して評価用サンプルとし、各サンプルについてBHトレーサにより磁気特性を測定し、また、密度を測定した。各サンプルの残留磁束密度Br、保磁力HcJおよび密度dfを表1に示す。また、表1に示される結果を、図1にHcJ−Brグラフとして示す。
【0067】
【表1】
Figure 0004301539
【0068】
表1および図1から、本発明の効果が明らかである。すなわち、本発明にしたがって平均一次粒径が所定範囲内にある仮焼体を用いて作製したサンプルでは、高保磁力を確保したまま高密度化が可能となっており、本発明により高保磁力かつ高残留磁束密度をもつ乾式成形磁石が得られることがわかる。
【0069】
比較例
湿式成形法を用い、以下の手順で焼結磁石サンプルを作製した。湿式微粉砕までは、実施例1と同様にして進め、湿式微粉砕後、固形分濃度73%となるまでスラリーを濃縮することにより成形用スラリーを調製した。この成形用スラリーを成形し、円柱状の成形体を得た。成形時の磁場強度は実施例1と同じとした。次いで、実施例1と同様にして成形体を焼結し、焼結磁石サンプルを得た。
【0070】
得られたサンプルについて、保磁力HcJと残留磁束密度Brとの関係を図2に示す。なお、図2に示すサンプルでは、モル比Ca/Siを1.7〜2.0の範囲から選択した。
【0071】
図1と図2との比較から、仮焼体の平均一次粒径の制御は、乾式成形を用いる場合に有効であることがわかる。すなわち、湿式成形を用いた場合には、仮焼体の平均一次粒径が異なっていても、図2に示されるように測定値はほぼ直線状に並んでいる。すなわち、湿式成形を用いた場合には、仮焼体の平均一次粒径を制御してもモル比Ca/Siを制御しても、保磁力が同等であれば同等の残留磁束密度しか得られないことがわかる。これに対し乾式成形を用いた場合には、仮焼体の平均一次粒径を大きくし、かつ、モル比Ca/Siを制御して保磁力低下を防げば、保磁力を低下させずに残留磁束密度を向上できることがわかる。
【0072】
実施例2
n=Fe23/SrCO3
におけるnが表2に示す値となるように秤量および混合を行い、次いで、実施例1と同様にして仮焼および粗粉砕を行った。仮焼条件は、仮焼体の平均一次粒径が1.5μmとなるように選択した。次いで、後添加物としてFe23、La(OH)3、Co34、SiO2およびCaCO3を表2に示す比率で添加した。表2に示す後添加物の添加量は、成形対象粉末全体に対する比率である。なお、SiO2およびCaCO3の合計添加量は1.7質量%とし、Ca/Siは2.0とした。これ以降の工程は実施例1と同様にして、焼結磁石サンプルを得た。これら各サンプルの組成は、実施例1で作製したサンプルのうちCa/Siが2.0であるものの組成と同じである。
【0073】
これら各サンプルを作製する際の磁場中乾式成形において、成形空間内への粉末充填密度を測定した。測定数は各サンプルにつき50とし、その平均値および標準偏差σを求めた。また、金型から抜き出す際にクラックが生じた成形体の比率(測定数は各サンプルにつき30)を調べた。また、これらのサンプルについて、実施例1と同様にして保磁力HcJ、残留磁束密度Brおよび密度dfを測定した。結果を表2に示す。
【0074】
【表2】
Figure 0004301539
【0075】
表2から本発明の効果が明らかである。すなわち、後添加物の添加量を20質量%以下とすれば、金型から脱型する際に成形体にクラックが生じにくくなることがわかる。また、後添加物の添加量を12質量%以下とすれば、充填密度のばらつきが十分に低くなり、また、十分に高い充填密度が得られ、また、成形体にクラックが生じなくなることがわかる。
【0076】
実施例3
後添加物として、Fe23、La(OH)3、Co34、SiO2およびCaCO3を用意した。成形対象粉末全体に対する添加量は、SiO2およびCaCO3については実施例2と同じ1.7質量%に固定し、また、Ca/Siも実施例2と同じとした。一方、La(OH)3、Co34およびFe23については、
式 Sr1-xLax(Fe12-yCoyz19
において
x/y=1.05、
z=1
となるように添加量を決定した。このほかの条件は実施例2と同様にして、焼結磁石サンプルを作製した。
【0077】
これら各サンプルを作製する際に、実施例2と同様にして充填密度およびクラックに関する測定を行った。結果を表3に示す。
【0078】
【表3】
Figure 0004301539
【0079】
表3から本発明の効果が明らかである。すなわち、後添加する非磁性化合物の添加量を本発明で限定する範囲内に設定することにより、磁場中乾式成形の際に金型への充填密度が上がり、また、金型から脱型する際に成形体にクラックが生じにくくなる。また、充填密度のばらつきが低減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】乾式成形法によるフェライト焼結磁石の保磁力HcJと残留磁束密度Brとの関係を示すグラフである。
【図2】湿式成形法によるフェライト焼結磁石の保磁力HcJと残留磁束密度Brとの関係を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 六方晶マグネトプランバイト型フェライトを主相として有し、
    Sr、BaおよびPbから選択される少なくとも1種の元素であって、Srを必ず含むものをAとし、
    Y、希土類元素およびBiから選択される少なくとも1種の元素であってLaを必ず含むものをRとし、
    Co、またはCoおよびZnをMとしたとき、主成分が式A1−x(Fe12−y19(x、y、zはモル比を表し、0.04≦x≦0.45、0.04≦y≦0.3、0.9≦x/y≦1.5、0.95≦z≦1.05である)で表され
    副成分としてSiO 及びCaOを、前記主成分に対して0.77〜1.61質量%含む
    焼結磁石を製造するに際し、
    出発原料粉末の少なくとも一部を混合して混合粉末を得る混合工程と、前記混合粉末を仮焼して仮焼体を得る仮焼工程と、前記仮焼体を粉砕して仮焼体粉末を得る粉砕工程と、前記仮焼体粉末を含む成形対象粉末を磁場中で乾式成形して成形体を得る成形工程と、前記成形体を焼成して焼結体を得る焼結工程とを設け、
    前記仮焼工程において、
    前記副成分は、モル比Ca/Siを2.0以下とし、
    前記仮焼工程において、1230℃以上の温度で仮焼して平均一次粒径が1.2μm以上である仮焼体を得る乾式成形焼結磁石の製造方法。
  2. 前記仮焼工程と前記成形工程との間に、非磁性の出発原料粉末の一部が後添加物として仮焼体に添加され、後添加物と仮焼体との合計量に対する後添加物の比率が2〜20質量%である請求項1の乾式成形焼結磁石の製造方法。
  3. 前記仮焼工程と前記成形工程との間に、非磁性の出発原料粉末の一部が後添加物として仮焼体に添加され、後添加物と仮焼体との合計量に対する後添加物の比率が6〜12質量%である請求項1の乾式成形焼結磁石の製造方法。
  4. 前記仮焼工程において、平均一次粒径が5μm以下である仮焼体を得る請求項1〜のいずれかの乾式成形焼結磁石の製造方法。
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