JP3960730B2 - 焼結磁石の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乾式成形法を用いてフェライト焼結磁石を製造する方法およびこの方法により製造されたフェライト焼結磁石に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にSr系のマグネトプランバイト型(M型)フェライト磁石は、安価でしかも高い磁気特性を有するという特徴から、家電製品や自動車に搭載される電装用モータなどに広く利用されている。
【0003】
フェライト磁石は、一般に、原料粉末を混合して仮焼し、次いで、適度な粒度となるまで粉砕して磁石材料粉末とした後、必要な形状に成形し、焼結することにより製造する。異方性焼結磁石を製造するためには、磁場中で成形を行う。成形方法は湿式法と乾式法とに大別され、高磁気特性を目標とするものには湿式成形法が用いられる。
【0004】
湿式成形法では、まず、磁石材料粉末を水などの分散媒に懸濁させてスラリーを調製し、このスラリーを成形装置の成形空間内に圧送して充填し、磁場中で加圧すると共に分散媒を成形空間外へ排除することにより成形体を得る。湿式成形法では分散媒を用いるため、磁石材料粉末を構成する粒子が回転しやすく、その結果、磁場印加による配向が容易となって高磁気特性、特に高い残留磁束密度が得られる。しかし、湿式成形法では分散媒を排除する必要があるため、成形時間が長くなって生産性が低くなる、成形装置の金型構造が複雑になる、成形装置が大掛かりになる、といった短所も存在する。
【0005】
一方、乾式成形法では、乾燥した磁石材料粉末を成形空間内に充填し、磁場中で加圧して成形する。乾式成形法は、生産性が高く、成形装置の構造も単純であるため、製造コストが低いという長所があるが、湿式成形法に比べ磁場印加による配向性が劣る結果、高い残留磁束密度が得られないという短所がある。なお、磁石の残留磁束密度Brは、磁石の密度およびその配向度と、その結晶構造で決まる飽和磁化(4πIs)とで決定され、
Br=4πIs×配向度×密度
で表わされる。
【0006】
乾式成形法において配向性が悪いのは、磁石材料粒子同士の凝集、摩擦を和らげる分散媒が存在しないためである。乾式成形法では、一般に、粒子間の摩擦低減のために、界面活性剤等の有機物を添加したり、加圧時の補形力を向上させるために有機バインダを添加したりする。例えば特開平7−99129号公報では、仮焼後の湿式粉砕の際にスラリー中に界面活性剤を添加することにより、配向度を向上させて高残留磁束密度を得る提案がなされている。ただし、有機物の添加は密度を低下させ、その結果、配向度向上による残留磁束密度向上効果が相殺されてしまうので、有機物の添加量を抑え得る配向度向上手段が望まれる。
【0007】
ところで、フェライト磁石の製造に際しては、焼結助剤や結晶粒径制御剤として働く添加物を磁石材料粒子間に介在させて液相化させることにより、焼結体密度や保磁力を向上させることが一般的である。添加物としてはSiO2、CaOが最も一般的である。例えば上記特開平7−99129号公報では、SiO2を0.1〜1.0質量%、CaOを0.05〜1.5質量%含有させることが好ましい旨が開示され、実施例では、仮焼粉に対し0.5質量%のSiO2と1質量%のCaCO3とを添加している。また、特許第2908631号公報では、焼結を促進するために、SiO2およびCaOに加えてMO(ただしMはPb、BaおよびSrの少なくとも1種)を添加し、MOの一部を結晶粒界中に存在させることを提案している。なお、同公報の実施例には成形法についての記載はないが、記載されている磁気特性から判断すると、湿式成形法を用いたものと考えられる。また、特開平5−182820号公報では、SiO2、CaCO3、SrCO3に加え、さらにH3BO3を添加して焼結することが提案されている。同公報の実施例では、湿式成形法を用いている。
【0008】
また、特開平11−154604号公報には、M型のSr系フェライトの主成分の一部をLaおよびCoで置換することにより、高飽和磁化および高保磁力を両立させる提案がなされている。ただし、同公報において高飽和磁化および高保磁力が確認されているのは湿式成形を用いた場合である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来、Sr系フェライト磁石の高性能化には、まず、湿式成形法を用いることが第1と考えられている。そのため、低コスト化が可能な乾式成形法を用い、かつ、磁石の高性能化をはかる提案は少ない。
【0010】
本発明の目的は、低コスト化が可能であるが高特性が得られにくい乾式成形法を用いて製造されるフェライト焼結磁石において、焼結体密度を向上させることにより残留磁束密度の向上をはかることである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)の本発明により達成される。
(1)六方晶マグネトプランバイト型フェライトを主相として有し、
Sr、BaおよびPbから選択される少なくとも1種の元素であって、Srを必ず含むものをAとし、Y、希土類元素およびBiから選択される少なくとも1種の元素であってLaを必ず含むものをRとし、Co、またはCoおよびZnをMとしたとき、主成分としてA,R,FeおよびMを含有し、前記主成分の組成を
式 A - (Fe12 - 19(x,y,zはモル数を表す)
で表したとき、
0.04≦x≦0.45、
0.04≦y≦0.3、
0.9≦x/y≦1.5、
0.95≦z≦1.05
であり、
さらに、副成分としてSiOおよびCaOを含有し、主成分に対する副成分の比率が0.42〜0.84質量%である焼結磁石を製造する方法であって、出発原料の混合物を得る混合工程と、前記混合物を焼成して仮焼体を得る仮焼工程と、前記仮焼体を粉砕して磁石材料粉末を得る粉砕工程と、前記磁石材料粉末を磁場中で乾式成形して成形体を得る成形工程と、前記成形体を焼結する焼結工程とを設け、混合工程またはこれと粉砕工程とにおいて、副成分の出発原料を添加する焼結磁石の製造方法。
【0012】
【作用および効果】
本発明では、従来のSr系フェライト磁石において添加物として一般的に用いられていたSiO2およびCaCO3を添加する際に、両者の総量を従来よりも低く抑えると共に、モル比Ca/Siが所定範囲内となるように制御する。本発明者は、SiO2およびCaCO3をこのように添加して乾式成形し、得られた成形体を焼結したとき、磁石材料粒子が従来とは全く異なる焼結挙動を示し、その結果、従来の乾式成形法では実現し得ない高残留磁束密度かつ十分な保磁力を備える焼結磁石が実現することを見いだした。
【0013】
具体的には、主としてSiO2含有量を削減することにより、結晶の板状化が促進される結果、焼結体密度が著しく向上する。そして、この板状化促進によって焼結時の結晶の再配列が活発となるので、配向性の悪い乾式成形法を用いた場合でも焼結後の配向度が良好となる。このように焼結体密度および配向度が向上する結果、残留磁束密度が著しく向上する。一方、結晶粒の板状化が進んで粒径が均一となり、微小粒子の比率が減少するため、保磁力はやや低下する。これに対し本発明では、主組成の置換成分として上記元素Rおよび元素Mを含有させることにより保磁力を向上させる。その結果、本発明では、従来の乾式成形フェライト磁石では実現不可能であった著しく高い残留磁束密度と十分に高い保磁力とが得られる。
【0014】
本発明により実現する上記作用効果は、従来全く知られていないことである。前記した各公報には、SiO2およびCaCO3の添加量の下限として、本発明において限定する範囲を包含する範囲が記載されているものもある。しかし、前記各公報の実施例に記載されているように、SiO2とCaCO3との合計量を本発明で限定する範囲内として磁石を作製した例はない。本発明で限定する副成分含有量はSiO2+CaOとして算出されているため、これをSiO2+CaCO3に換算すると、ほぼ0.6〜1.2質量%となる。これを前記各公報の実施例における添加量と比較すると、例えば、湿式成形法を用いてLaおよびCoを含有する磁石が製造されている上記特開平11−154604号公報ではSiO2+CaCO3が2.0質量%となり、また、乾式成形法を用いている上記特開平7−99129号公報では、SiO2+CaCO3が1.5質量%となり、いずれも本発明で限定する範囲を大きく上回る。
【0015】
このように、従来、SiO2およびCaCO3を本発明で限定する範囲内で添加した例がないのは、SiO2およびCaCO3が単なる結晶粒径制御剤および焼結助剤として考えられていたからである。そのため、これらを少量しか添加しないと焼結体密度が低くなって残留磁束密度が低くなると考えられていた。これに対し本発明者は、上述したように結晶の板状化が促進されること、その結果、配向度および焼結体密度が向上すること、これにより残留磁束密度が向上することを、全く新たに見いだした。
【0016】
また、上記作用効果と同様、本発明による予期し得ない効果として、焼結時の温度変動および雰囲気変動による磁気特性(特に保磁力)への影響が小さくなる、という効果が得られることがわかった。フェライト磁石を製造する際には、その焼結工程において、バインダや分散剤等の分解・燃焼に伴う酸素の吸収、構成元素の価数の変化や構造の変化に伴う酸素の吸収・放出等により、焼成雰囲気中の酸素分圧が絶えず変動している。その変動の幅は、被焼成体の組成および焼成炉への投入量、添加物の種類および添加量など、各種条件に応じて大きく異なるため、酸素分圧が常に一定となるように制御することは難しい。したがって、焼成時の酸素分圧変動により特性が影響されやすい組成のフェライト磁石では、本来の高保磁力を安定して実現することが難しい。特に、量産時の生産性向上に有効である連続炉では、バッチ炉に比べ酸素分圧の変動がより大きくなる。また、焼成に要するコストが低い炉、例えばガス燃焼炉など燃料の燃焼を利用して加熱する方式の炉では、燃料の燃焼の際に酸素を消費するため、炉中の酸素分圧が激しく変動する。したがって、連続炉および燃焼炉ならびに燃焼炉タイプの連続炉を利用する場合には、特に、焼成時の酸素分圧変動に影響されにくいフェライト磁石が求められる。このような要望に対し、本発明では焼結時の温度変動および雰囲気変動による磁気特性への影響を小さくできるので、乾式成形法を用いることによる低コスト化に加え、焼成炉の選択にかかわる低コスト化も可能である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明では、六方晶M型フェライトを主相とする焼結磁石が製造される。
【0018】
本発明により製造される焼結磁石は、Sr、BaおよびPbから選択される少なくとも1種の元素であって、Srを必ず含むものをAとし、Y、希土類元素およびBiから選択される少なくとも1種の元素であってLaを必ず含むものをRとし、CoであるかCoおよびZnをMとしたとき、A,R,FeおよびMを主成分として含有する。
【0019】
上記主成分の組成を
式 A1-xx(Fe12-yyz19
(x,y,zはモル数を表す)
で表したとき、
0.04≦x≦0.45、
0.04≦y≦0.3、
0.9≦x/y≦1.5、
0.95≦z≦1.05
であり、好ましくは
0.08≦x≦0.26、
0.08≦y≦0.2、
1.0≦x/y≦1.3、
0.975≦z≦1.025
である。
【0020】
上記式において、xが小さすぎると、すなわち元素Rの量が少なすぎると、六方晶フェライトに対する元素Mの固溶量を多くできなくなり、飽和磁化向上効果および/または異方性磁場向上効果が不十分となってくる。xが大きすぎると六方晶フェライト中に元素Rが置換固溶できなくなり、例えば元素Rを含むオルソフェライトが生成して飽和磁化が低くなってくる。yが小さすぎると飽和磁化向上効果および/または異方性磁場向上効果が不十分となってくる。yが大きすぎると六方晶フェライト中に元素Mが置換固溶できなくなってくる。また、元素Mが置換固溶できる範囲であっても、異方性定数(K1)や異方性磁場(HA)の劣化が大きくなってしまう。zが小さすぎるとSrおよび元素Rを含む非磁性相が増えるため、飽和磁化が低くなってしまう。zが大きすぎるとα−Fe23相または元素Mを含む非磁性スピネルフェライト相が増えるため、飽和磁化が低くなってしまう。
【0021】
上記式において、x/yが小さすぎても大きすぎても元素Rと元素Mとの価数の平衡がとれなくなり、W型フェライト等の異相が生成しやすくなる。元素Mは2価であるから、元素Rが3価イオンである場合、理想的にはx/y=1である。なお、x/yが1超の領域で許容範囲が大きい理由は、yが小さくてもFe3+→Fe2+の還元によって価数の平衡がとれるためである。
【0022】
元素A中のSrの比率は、好ましくは51モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。元素A中のSrの比率が低すぎると、飽和磁化および保磁力を十分に高くできない。
【0023】
元素R中においてLaの占める割合は、好ましくは40モル%以上、より好ましくは70モル%以上であり、飽和磁化向上のためには元素RとしてLaだけを用いることが最も好ましい。これは、六方晶M型フェライトに対する固溶限界量を比較すると、Laが最も多いためである。したがって、元素R中のLaの割合が低すぎると元素Rの固溶量を多くすることができず、その結果、元素Mの固溶量も多くすることができなくなる。また、Biを併用すれば仮焼温度および焼結温度を低くすることができるので、生産上有利である。
【0024】
元素Mは、CoであるかCoおよびZnである。元素M中のCoの比率は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上であり、最も好ましくは100モル%である。Coの比率が低すぎると、保磁力および飽和磁化の向上が不十分となる。
【0025】
組成を表わす上記式において、酸素(O)のモル数は19となっているが、これは、元素Rがすべて3価であって、かつx=y、z=1のときの化学量論組成比を示したものである。元素Rの種類やx、y、zの値によって、酸素のモル数は異なってくる。また、例えば焼成雰囲気が還元性雰囲気の場合は、酸素の欠損(ベイカンシー)ができる可能性がある。さらに、FeはM型フェライト中においては通常3価で存在するが、これが2価などに変化する可能性もある。また、Co等の元素Mも価数が変化する可能性があり、これらにより金属元素に対する酸素の比率は変化する。本明細書では、元素Rの種類やx、y、zの値によらず酸素のモル数を19と表示してあるが、実際の酸素のモル数は化学量論組成比から多少偏倚していてもよい。
【0026】
焼結磁石中には、上記主成分に加え、副成分としてSiO2およびCaOが含有される。上記主成分に対するSiO2およびCaOの合計量の比率は、0.42〜0.84質量%、好ましくは0.42〜0.75質量%である。なお、主成分の質量は、磁石中に含有される金属元素量に基づいて、上記組成式を利用して算出する。また、副成分中におけるモル比Ca/Siは、1.3〜2.2、好ましくは1.6〜2.2である。
【0027】
副成分の比率およびCa/Siを上記範囲内とすることにより、焼結時の異常粒成長を抑制できると共に、結晶粒の板状化が促進される。その結果、焼結時の結晶の再配列が進むと共に緻密な焼結体が得られるので、残留磁束密度が極めて高い焼結磁石が実現する。主成分に対する副成分の比率が低すぎると、焼結に必要な液相の生成が不十分となって焼結体密度の向上が不十分となる結果、残留磁束密度が低くなる。一方、主成分に対する副成分の比率が高すぎても、焼結体密度の向上が不十分となり、残留磁束密度が低くなってしまう。モル比Ca/Siが小さすぎると、焼結体密度の向上が不十分となる。一方、モル比Ca/Siが大きすぎると、すなわち、SiO2少なすぎると、粒成長の制御が効かず、保磁力が低くなってしまう。
【0028】
焼結磁石には、Al23が含有されていてもよい。Al23の含有量は、好ましくは1.0質量%以下である。本発明を適用すれば、Al23含有量をこの程度に抑えても、十分に高い保磁力が得られるため、残留磁束密度の低下を抑えることができる。なお、Al23添加の効果を十分に発揮させるためには、Al23含有量を0.1質量%以上とすることが好ましい、
【0029】
焼結磁石には、B23が含まれていてもよい。B23を含むことにより仮焼温度および焼結温度を低くすることができるので、生産上有利である。B23の含有量は、主成分に対し0.5質量%以下であることが好ましい。B23含有量が多すぎると、飽和磁化が低くなってしまう。
【0030】
焼結磁石中には、Na、KおよびRbの少なくとも1種が含まれていてもよい。これらをそれぞれNa2O、K2OおよびRb2Oに換算したとき、これらの含有量の合計は、焼結磁石全体の3質量%以下であることが好ましい。これらの含有量が多すぎると、飽和磁化が低くなってしまう。これらの元素をMIで表わしたとき、焼結磁石中においてMIは例えば
Sr1.3-2aaI a-0.3Fe11.70.319
の形で含有される。なお、この場合、0.3<a≦0.5であることが好ましい。aが大きすぎると、飽和磁化が低くなってしまう他、焼成時に元素MIが多量に蒸発してしまうという問題が生じる。
【0031】
また、このほか、例えばGa,In,Li,Mg,Mn,Ni,Cr,Cu,Ti,Zr,Ge,Sn,V,Nb,Ta,Sb,W,Mo等を酸化物の形で、それぞれ酸化ガリウム5質量%以下、酸化インジウム3質量%以下、酸化リチウム1質量%以下、酸化マグネシウム3質量%以下、酸化マンガン3質量%以下、酸化ニッケル3質量%以下、酸化クロム5質量%以下、酸化銅3質量%以下、酸化チタン3質量%以下、酸化ジルコニウム3質量%以下、酸化ゲルマニウム3質量%以下、酸化スズ3質量%以下、酸化バナジウム3質量%以下、酸化ニオブ3質量%以下、酸化タンタル3質量%以下、酸化アンチモン3質量%以下、酸化タングステン3質量%以下、酸化モリブデン3質量%以下程度含有されていてもよい。
【0032】
焼結磁石の組成は、蛍光X線定量分析などにより測定することができる。また、主相、すなわち六方晶構造を有するフェライト相の存在は、X線回折により確認できる。
【0033】
次に、本発明の製造方法を説明する。本発明の製造方法は、乾式成形法を用いる通常の方法と同様に、出発原料の混合物を得る混合工程と、前記混合物を焼成して仮焼体を得る仮焼工程と、前記仮焼体を粉砕して磁石材料粉末を得る粉砕工程と、前記磁石材料粉末を乾式成形して成形体を得る成形工程と、前記成形体を焼結する焼結工程とを有する。
【0034】
出発原料としては、焼成により酸化物となる各種化合物、例えば炭酸塩、シュウ酸塩等を用いればよい。
【0035】
仮焼は、空気中等の酸化性雰囲気中において好ましくは1000〜1350℃で1秒間〜10時間、特に1秒間〜3時間程度行えばよい。仮焼体は、実質的にマグネトプランバイト型のフェライト構造をもつ。
【0036】
粉砕工程は、一般に顆粒状として得られる仮焼体を粉砕ないし解砕するために設ける。粉砕工程では、まず、乾式粗粉砕を行うことが好ましい。乾式粗粉砕には、フェライト粒子に結晶歪を導入して、保磁力HcBをいったん小さくする効果もある。保磁力の低下により粒子の凝集が抑制され、分散性が向上する。また、粒子の凝集を抑制することにより、配向度が向上する。粒子に導入された結晶歪は、後の焼成工程において解放され、保磁力が回復することによって永久磁石とすることができる。
【0037】
乾式粗粉砕の際には、上記副成分の出発原料として、SiO2と、焼成によりCaOとなるCaCO3とが添加される。副成分の出発原料は、一部を仮焼前に、すなわち上記混合工程において添加してもよい。ただし、副成分の出発原料は仮焼後に添加したほうが、より有効に粒界成分として機能し、焼結時の均一な粒成長に寄与する。そのため、粉砕工程において添加する量は、副成分全体の好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%とする。不純物および添加されたSiやCaは、大部分粒界や三重点部分に偏析するが、一部は粒内のフェライト部分(主相)にも取り込まれる。特にCaは、Srサイトにはいる可能性が高い。
【0038】
乾式粗粉砕後、粉砕粉と水とを含む粉砕用スラリーを調製し、これを用いて湿式粉砕を行うことが好ましい。湿式粉砕後、乾燥することにより磁石材料粉末が得られる。
【0039】
なお、粉砕工程では、界面活性剤および/または有機バインダを必要に応じて添加してもよい。
【0040】
成形工程では、磁場中で乾式成形を行う。成形圧力は29〜49MPa程度、印加磁場は0.5〜1.0T程度とすればよい。
【0041】
焼成工程では、空気中等の酸化性雰囲気中において、好ましくは1150〜1270℃、より好ましくは1160〜1240℃の温度(安定温度)で焼成する。焼成時に安定温度に保持する時間(安定時間)は、0.5〜3時間程度とすることが好ましい。
【0042】
本発明により製造される焼結磁石は、所定の形状に加工され、例えば下記に示すような幅広い用途に使用される。
【0043】
例えば、フュエルポンプ用、パワーウィンドウ用、ABS用、ファン用、ワイパ用、パワーステアリング用、アクティブサスペンション用、スタータ用、ドアロック用、電動ミラー用等の自動車用モータ;FDDスピンドル用、VTRキャプスタン用、VTR回転ヘッド用、VTRリール用、VTRローディング用、VTRカメラキャプスタン用、VTRカメラ回転ヘッド用、VTRカメラズーム用、VTRカメラフォーカス用、ラジカセ等キャプスタン用、CD,LD,MDスピンドル用、CD,LD,MDローディング用、CD,LD光ピックアップ用等のOA、AVI機器用モータ;エアコンコンプレッサー用、冷蔵庫コンプレッサー用、電動工具駆動用、扇風機用、電子レンジファン用、電子レンジプレート回転用、ミキサ駆動用、ドライヤーファン用、シェーバー駆動用、電動歯ブラシ用等の家電機器用モータ;ロボット軸、関節駆動用、ロボット主駆動用、工作機器テーブル駆動用、工作機器ベルト駆動用等のFA機器用モータ;その他、オートバイ用発電器、スピーカ・ヘッドホン用マグネット、マグネトロン管、MRI用磁場発生装置、CD−ROM用クランパ、ディストリビュータ用センサ、ABS用センサ、燃料・オイルレベルセンサ、マグネットラッチ等に好適に使用される。
【0044】
【実施例】
実施例1
原料粉末として、Fe23およびSrCO3を用意し、これらを
SrO・nFe23
においてn=7.0となるように秤量し、水を分散媒として用いて湿式混合した。
【0045】
次いで、空気中において1300℃で2時間仮焼し、仮焼体を得た。この仮焼体を振動ミルで乾式粗粉砕し、平均粒径3μmの粗粉砕粉を得た。
【0046】
この粗粉砕粉に、主成分の出発原料としてFe23、La(OH)3およびCo34を添加した。これらの添加量は、焼結後の主成分組成が
式 Sr1-xLax(Fe12-yCoyz19
において
x=0.19、
y=0.18、
z=1.0
となるものとした。また、同時に、副成分の出発原料としてSiO2粉末およびCaCO3粉末を添加した。副成分の出発原料の添加量は、SiO2+CaOの主組成に対する質量比およびCa/Siが表1〜表3に示される値となるように選択した。次いで、全体の平均粒径が1μmとなるまで湿式アトライタで粉砕した。なお、この粉砕における分散媒には水を用いた。
【0047】
湿式粉砕後、スラリーを脱水して乾燥し、次いで、昇華性バインダを1質量%添加した後、ハンマーミルにより凝集粉を解砕し、磁石材料粉末を得た。
【0048】
次いで、磁石材料粉末を乾式成形装置の成形空間内に充填し、0.7Tの磁場中において39MPaの圧力で乾式成形し、円柱状の成形体を得た。
【0049】
得られた成形体を空気中において1230℃で1時間焼成し、焼結体を得た。次いで、焼結体を面研磨して評価用サンプルとし、各サンプルについてBHトレーサにより磁気特性を測定し、また、密度を測定した。各サンプルの残留磁束密度Brを表1に、保磁力HcJを表2に、密度dfを表3に、それぞれ示す。また、表1および表2に示される結果を、図1にHcJ−Brグラフとして示す。
【0050】
【表1】
Figure 0003960730
【0051】
【表2】
Figure 0003960730
【0052】
【表3】
Figure 0003960730
【0053】
表1〜表3および図1から、本発明の効果が明らかである。すなわち、副成分の合計含有量が0.42〜0.84質量%であって、かつ副成分中のモル比Ca/Siが1.3〜2.2である場合、焼結体密度dfの向上に伴って高いBrが得られており、かつ、HcJも十分に高い値となっている。これに対し、従来のフェライト磁石と同等の副成分を添加した場合には、Ca/Siを調整してもBrが本発明サンプルに全くおよばない。
【0054】
実施例2
SiO2+CaOの主組成に対する質量比およびCa/Siならびに焼結温度を表4および表5に示される値としたほかは実施例1と同様にして、評価用サンプルを作製した。なお、1230℃で焼結したサンプルは、実施例1と同じものである。これらのサンプルについて、BrおよびHcJを測定した。Brを表4に、HcJを表5にそれぞれ示す。
【0055】
【表4】
Figure 0003960730
【0056】
【表5】
Figure 0003960730
【0057】
表5から、本発明サンプルでは焼結温度が異なってもHcJの違いが小さいことがわかる。この結果から、本発明によれば、焼結温度が変動した場合でもHcJのばらつきを抑えられることがわかる。
【0058】
実施例3
SiO2+CaOの主組成に対する質量比およびCa/Siならびに焼結雰囲気中の酸素分圧を表6および表7に示される値としたほかは実施例1と同様にして、評価用サンプルを作製した。なお、酸素分圧8%は、ガス燃焼タイプの連続炉における安定温度付近の位置での値である。また、酸素分圧20%で焼結したサンプルは、実施例1と同じものである。これらのサンプルについて、BrおよびHcJを測定した。Brを表6に、HcJを表7にそれぞれ示す。
【0059】
【表6】
Figure 0003960730
【0060】
【表7】
Figure 0003960730
【0061】
表7から、本発明サンプルでは焼結雰囲気が異なってもHcJの違いが小さいことがわかる。この結果から、本発明によれば、焼結雰囲気が変動した場合でもHcJのばらつきを抑えられることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フェライト焼結磁石の保磁力HcJと残留磁束密度Brとの関係を示すグラフである。

Claims (1)

  1. 六方晶マグネトプランバイト型フェライトを主相として有し、
    Sr、BaおよびPbから選択される少なくとも1種の元素であって、Srを必ず含むものをAとし、Y、希土類元素およびBiから選択される少なくとも1種の元素であってLaを必ず含むものをRとし、Co、またはCoおよびZnをMとしたとき、主成分としてA,R,FeおよびMを含有し、前記主成分の組成を
    式 A - (Fe12 - 19(x,y,zはモル数を表す)
    で表したとき、
    0.04≦x≦0.45、
    0.04≦y≦0.3、
    0.9≦x/y≦1.5、
    0.95≦z≦1.05
    であり、
    さらに、副成分としてSiOおよびCaOを含有し、主成分に対する副成分の比率が0.42〜0.84質量%である焼結磁石を製造する方法であって、
    出発原料の混合物を得る混合工程と、
    前記混合物を焼成して仮焼体を得る仮焼工程と、
    前記仮焼体を粉砕して磁石材料粉末を得る粉砕工程と、
    前記磁石材料粉末を磁場中で乾式成形して成形体を得る成形工程と、
    前記成形体を焼結する焼結工程とを設け、
    混合工程またはこれと粉砕工程とにおいて、副成分の出発原料を添加する焼結磁石の製造方法。
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