JP3927401B2 - フェライト焼結磁石の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フェライト焼結磁石を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にSr系のマグネトプランバイト型(M型)フェライト焼結磁石は、安価でしかも高い磁気特性を有するという特徴から、家電製品や自動車に搭載されるモータなどに広く利用されている。
【0003】
特開平11−154604号公報には、M型のSr系フェライトの成分の一部をLaおよびCoで置換することにより、高飽和磁化および高保磁力を実現できることが記載されている。このLaCo置換フェライトは高特性であるため、小型化、薄肉化が可能である。
【0004】
しかし、フェライト焼結磁石は陶磁器の一種であるため、小型化、薄肉化すると機械的強度が低くなるという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、磁石特性の高いフェライト焼結磁石において、機械的強度を向上させることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(6)の本発明により達成される。
(1) Fe、元素A(Aは、Sr、Ba、CaおよびPbから選択される少なくとも1種)、元素R(Rは、希土類元素およびBiから選択される少なくとも1種であって、Laを必ず含む)および元素M(Mは、Coであるか、CoおよびZnである)を含有し、六方晶マグネトプランバイト型フェライトを主相として有するフェライト焼結磁石を製造する方法であって、
成形対象粉末を成形した後、焼結する工程を有し、
前記成形対象粉末が、Fe、元素A、元素Rおよび元素Mを含有するフェライト焼結磁石を粉末化した磁石粉末から実質的に構成されるか、または、この磁石粉末と、Fe、元素A、元素Rおよび元素Mを含有する原料粉末とから実質的に構成されるフェライト焼結磁石の製造方法。
(2) 前記原料粉末が、Fe、元素A、元素Rおよび元素Mを含有する仮焼体粉末を含む上記(1)のフェライト焼結磁石の製造方法。
(3) 前記原料粉末が、少なくともFeおよび元素Aを含有する仮焼体粉末と、Fe、元素A、元素Rおよび元素Mの少なくとも1種を含有する後添加物とを含む上記(1)のフェライト焼結磁石の製造方法。
(4) 前記成形対象粉末中における前記磁石粉末の含有量が、質量比で1%以上である上記(1)〜(3)のいずれかのフェライト焼結磁石の製造方法。
(5) 前記磁石粉末が、フェライト焼結磁石の形状加工の際に生じた屑材であるか、不良なフェライト焼結磁石を粉砕したものである上記(1)〜(4)のいずれかのフェライト焼結磁石の製造方法。
(6) 前記磁石粉末の原料となるフェライト焼結磁石の主成分および製造されるフェライト焼結磁石の主成分が、
式 A1-xRx(Fe12-yMy)zO19
(x、y、zはモル比を表し、
0.04≦x≦0.9、
0.04≦y≦1.0、
0.4≦x/y≦5、
0.7≦z≦1.2
である)
で表される上記(1)〜(5)のいずれかのフェライト焼結磁石の製造方法。
【0007】
【作用および効果】
フェライト焼結磁石は、一般に、出発原料を混合して仮焼し、次いで、仮焼体を適度な粒度となるまで粉砕して成形対象粉末とした後、必要な形状に成形し、焼結することにより製造する。
【0008】
本発明の好ましい態様では、前記元素Rおよび前記元素Mを含有するフェライト焼結磁石を製造するに際し、成形対象粉末として、元素Rおよび元素Mを含有するフェライト焼結磁石を粉末化した磁石粉末を用いるか、この磁石粉末と、Fe、元素A、元素Rおよび元素Mを含有する原料粉末とを用いる。これにより、機械的強度が著しく向上し、また、熱衝撃に対する耐久性が著しく向上したフェライト焼結磁石が得られる。この効果は、成形対象粉末に含有される磁石粉末が、元素Rおよび元素Mを共に含有する場合にだけ実現する。
【0009】
また、本発明では、最終的に得られるフェライト焼結磁石の磁気特性を高くすることができる。すなわち、本発明により製造された磁石と従来の方法により製造された磁石とを比較した場合、元素R含有量および元素M含有量がそれぞれ同じであっても、本発明により製造された磁石のほうが保磁力および残留磁束密度のいずれもが高くなる。そのため、元素R含有量および元素M含有量を従来より少なくしても、本発明により従来と同等の磁気特性を得ることが可能である。したがって本発明では、いずれも高価な元素Rおよび元素Mの使用量を減らすことができるので、材料コストを低減することが可能である。
【0010】
本発明によって機械的強度の向上および熱衝撃に対する耐性の向上が実現し、かつ磁気特性の向上も実現する理由は明らかではない。ただし、元素Rおよび元素Mのいずれも含有しない通常のフェライト焼結磁石では上記効果が実現しないこと、また、成形対象粉末中に含有される磁石粉末が最終的に2度焼結されること、を考慮すると、通常の焼結磁石では、元素Rおよび元素Mが結晶粒界付近に相対的に高濃度で存在し、一方、本発明によって2度焼結された場合には、元素Rおよび元素Mが結晶粒内に拡散することにより、機械的強度の向上、熱衝撃に対する耐性の向上および磁気特性の向上が実現すると考えられる。
【0011】
本発明では、成形対象粉末に含有させる磁石粉末の原料として、フェライト焼結磁石を研削や研磨することによって形状加工する際に生じた屑材またはこれを粉砕したものを用いることができる。また、不良な焼結磁石、例えば、割れやクラックなどの不良が生じた焼結磁石や、寸法不良となった焼結磁石、焼結条件が不適正で磁石特性が不良となった焼結磁石など、を粉砕して、前記磁石粉末として用いることもできる。すなわち、本発明ではフェライト焼結磁石のリサイクルが可能である。したがって本発明は、材料コスト低減および環境負荷の低減の面においても著しい効果を示す。
【0012】
【発明の実施の形態】
製造方法
本発明では、Fe、元素A(Aは、Sr、Ba、CaおよびPbから選択される少なくとも1種)、元素R(Rは、希土類元素およびBiから選択される少なくとも1種であって、Laを必ず含む)および元素M(Mは、Coであるか、CoおよびZnである)を含有し、六方晶マグネトプランバイト型フェライトを主相として有するフェライト焼結磁石を製造する。
【0013】
フェライト焼結磁石は、成形対象粉末を成形して焼結することにより製造される。従来のフェライト焼結磁石の製造工程では、仮焼体の粉砕粉や、水熱合成法や共沈法により製造された粉末に焼結助剤等の添加物を混合したものを、成形対象粉末として用いる。これに対し本発明における成形対象粉末は、フェライト焼結磁石を粉末化した磁石粉末から実質的に構成されるか、または、この磁石粉末と、Fe、元素A、元素Rおよび元素Mを含有する原料粉末とから実質的に構成される。なお、成形対象粉末が磁石粉末(および原料粉末)から実質的に構成されるとは、焼結助剤等の微量添加物を除いた全量が、磁石粉末(および原料粉末)から構成されることを意味する。ただし、焼結助剤等の微量添加物を添加することは必須ではなく、例えば成形対象粉末が磁石粉末だけから構成されていてもよい。
【0014】
成形対象粉末中における磁石粉末の含有量は、好ましくは1〜100質量%、より好ましくは5〜100質量%、さらに好ましくは10〜100質量%である。磁石粉末の含有量が少なすぎると、最終的に得られるフェライト焼結磁石において、機械的強度の著しい向上、熱衝撃に対する耐久性の著しい向上および磁気特性の向上を実現することが困難となる。
【0015】
成形対象粉末全体の平均粒径は、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.5〜5μmである。この平均粒径が小さすぎると、成形性が悪くなりやすい。一方、この平均粒径が大きすぎると、良好な磁石特性が得られにくい。
【0016】
本発明の効果は、成形対象粉末に含有される磁石粉末および上記原料粉末の両者が、共にFe、元素A、元素Rおよび元素Mを含有する場合に実現する。本発明では、成形対象粉末中の磁石粉末における各元素の含有量と、上記原料粉末における各元素の含有量とを、それぞれほぼ同じとしてもよく、異なるものとしてもよい。これらを異なるものとすることにより、最終的に得られるフェライト焼結磁石の組成を制御することが可能である。ただし、上述したようにフェライト焼結磁石のリサイクルを目的の一つとする場合には、成形対象粉末中の磁石粉末と原料粉末とで各元素の含有量をそれぞれほぼ同じとすることが好ましい。なお、磁石粉末および原料粉末において、元素Aは同一種(例えばSr)であることが好ましいが、異なるものであってもよい。
【0017】
本発明の製造方法において、成形対象粉末を上記構成とする以外に特に限定される条件はない。ただし、通常は、以下に示す手順でフェライト焼結磁石を製造することが好ましい。なお、以降では、主として上記原料粉末を用いる場合について説明する。
【0018】
本発明において原料粉末として用いられるのは、六方晶マグネトプランバイト型フェライト相を有し、かつ、成形されて焼結されたことのない粉末であるか、または、この粉末と、後に詳細に説明する後添加物とである。六方晶マグネトプランバイト型フェライト相を有する原料粉末の製造方法は特に限定されず、例えば、いわゆる仮焼によって固相反応により製造してもよく、共沈法や水熱合成法などにより製造してもよい。ただし、原料粉末として仮焼体粉末を用いた場合に本発明は特に有効である。以降では、主として仮焼工程を設ける場合について説明する。
【0019】
まず、出発原料を混合した後、仮焼し、仮焼体を得る。次に、この仮焼体の粉末および磁石粉末を含有する混合物を調製して成形対象粉末とし、これを成形した後、焼結する。
【0020】
出発原料としては、Fe、元素A、元素Rおよび元素Mのそれぞれ1種を含有する化合物、またはこれらの2種以上を含有する化合物を用いればよい。元素Aを含む出発原料には、ストック時の安定性が良好であることから、水酸化物または炭酸塩を用いることが好ましい。このほか、焼結助剤として、Si化合物および/またはCa化合物が用いられる。Si化合物としてはSiO2が好ましく、Ca化合物としてはCaCO3が好ましい。Si化合物のSiO2換算での添加量は、成形対象粉末の0.1〜2質量%程度とすればよく、Ca化合物のCaCO3換算での添加量は、成形対象粉末の0.2〜4質量%程度とすればよい。
【0021】
出発原料には、酸化物粉末、または焼成により酸化物となる化合物、例えば炭酸塩、水酸化物、硝酸塩等の粉末を用いる。出発原料の平均粒径は特に限定されないが、通常、0.1〜2μm程度とすることが好ましい。特に酸化鉄は微細粉末を用いることが好ましく、具体的には一次粒子の平均粒径が好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下のものを用いる。
【0022】
仮焼は、通常、空気中等の酸化性雰囲気中で行えばよい。仮焼条件は特に限定されないが、通常、安定温度は1000〜1350℃、安定時間は1秒間〜10時間、より好ましくは1秒間〜3時間とすればよい。仮焼体は、実質的にマグネトプランバイト型のフェライト構造をもち、その一次粒子の平均粒径は、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.1〜1μmである。平均粒径は走査型電子顕微鏡により測定することができる。
【0023】
出発原料化合物は、仮焼前にすべてを混合する必要はなく、各化合物の一部または全部を仮焼後に添加する構成としてもよい。特に、焼結助剤として用いるSi化合物およびCa化合物は、一部、好ましくは全部を、仮焼後に添加することが好ましい。
【0024】
焼結助剤以外の化合物、すなわち、Fe、元素A、元素Rまたは元素Mを含有する化合物の少なくとも一部を仮焼後に添加する方法を、本明細書では後添加法と呼ぶ。後添加法については、特開平11−195516号公報に詳細に記載されている。この後添加法では、まず、少なくともFeおよび元素Aを含有し、かつ六方晶フェライトを主相とする仮焼体を製造する。次いで、この仮焼体を粉砕した後、または粉砕時に、後添加する化合物(後添加物)を仮焼体に添加し、その後、成形し、焼結する。元素Rおよび元素Mから選択される少なくとも1種の元素、好ましくは元素Rおよび元素Mの両方が後添加物に含有されるように、後添加する化合物を選択すれば、磁石特性をより高くすることができる。
【0025】
本発明において後添加法を用いない場合の成形対象粉末は、元素Rおよび元素Mを含有する仮焼体粉末と磁石粉末とを主成分とする。一方、本発明において後添加法を用いる場合の成形対象粉末は、仮焼体粉末と後添加物とを主成分とする。後添加物に元素Rおよび元素Mが含有される場合、仮焼体粉末が元素Rおよび元素Mを含有する必要はない。
【0026】
後添加法で用いられる、元素Rおよび元素Mを含有しない仮焼体粉末は、
式 AO・nFe2O3
で表される組成(モル比)をもつことが好ましい。上記式におけるモル比nは、好ましくは5〜7.5、より好ましくは6〜7である。モル比nが小さいと、後添加物の一部としてFe2O3を加える必要が生じ、モル比nが小さいほどFe2O3添加量を増やす必要ある。しかし、後添加物としてFe2O3を多量に添加すると、成形性が悪化する。また、Fe2O3は質量が大きいため、取り扱いが面倒である。一方、モル比nが大きいと、後添加物の一部としてSrO等の元素A酸化物を加える必要が生じ、モル比nが大きいほど元素A酸化物を増やす必要がある。しかし、後添加物として元素A酸化物を多量に添加すると、最終的に得られる焼結磁石の特性が不十分となりやすい。
【0027】
本発明による磁気特性向上効果は、後添加法を用いる場合に特に顕著となる。すなわち、従来法において後添加法を用いた場合と、本発明法において後添加法を用いた場合とを比較した場合、本発明により磁気特性が顕著に向上する。
【0028】
後添加物の量は、成形対象粉末全体に対し、好ましくは2〜20質量%である。元素Rを含有する化合物としてはR酸化物を用いることができるが、R酸化物は水に対する溶解度が比較的大きいため、湿式成形の際に流出してしまうなどの問題がある。また、吸湿性もあるため、秤量誤差の原因になりやすい。そのため、R化合物としては炭酸塩または水酸化物が好ましい。そのほかの元素の後添加物は、酸化物、または焼成により酸化物となる化合物、例えば炭酸塩や水酸化物として添加すればよい。
【0029】
後添加物の添加時期は、仮焼後かつ焼結前であればよいが、好ましくは、次に説明する粉砕時に添加する。ただし、仮焼体ではなく、共沈法や水熱合成法などにより製造され、少なくとも前記元素Aを含有する六方晶フェライトを主相とする粒子に対し、後添加物を添加してもよい。
【0030】
元素Rまたは元素Mについては、磁石中に含まれる全量の好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上が、後添加物として添加されることが望ましい。そのほかの元素については、後添加物として添加される量は特に限定されない。なお、後添加物の平均粒径は、0.1〜2μm程度であることが好ましい。
【0031】
次に、成形およびその前工程である粉砕について説明する。
【0032】
成形対象粉末の成形には、湿式成形法または乾式成形法を利用する。本発明の効果は成形方法に依存せず実現する。以下では、湿式成形法を用いる場合について説明する。
【0033】
湿式成形では、成形対象粉末と、分散媒としての水と、分散剤とを含む成形用スラリーを用いることが好ましい。なお、分散剤の効果をより高くするためには、湿式成形工程の前に湿式微粉砕工程を設けることが好ましい。また、原料粉末として仮焼体粉末を用いる場合、仮焼体は一般に顆粒から構成されるので、仮焼体の粗粉砕ないし解砕のために、湿式微粉砕工程の前に乾式粗粉砕工程を設けることが好ましい。共沈法や水熱合成法などにより原料粉末を製造した場合には、通常、乾式粗粉砕工程は設けず、湿式微粉砕工程も必須ではないが、配向度をより高くするためには湿式微粉砕工程を設けることが好ましい。以下では、仮焼体粒子を原料粉末として用い、乾式粗粉砕工程および湿式微粉砕工程を設ける場合について説明する。
【0034】
なお、成形対象粉末の一部として用いるフェライト焼結磁石は、乾式粗粉砕工程において混合してもよく、湿式微粉砕工程において混合してもよいが、通常、湿式微粉砕工程において混合する。添加するフェライト焼結磁石は粉末またはスラリー状態であることが好ましい。フェライト焼結磁石の形状加工の際に生じた屑材は、通常、粒径5μm程度以下の粉末であるため、通常、屑材は乾式粗粉砕を行うことなく湿式微粉砕工程に供することができる。また、不良品となった焼結磁石を混合する場合、焼結磁石を粗砕きした後、振動ミル等によって平均粒径0.1〜10μm、好ましくは0.5〜5μm程度まで粗粉砕し、これを湿式微粉砕工程に供すればよい。添加する磁石粉末の平均粒径が小さすぎると、粉砕後の平均粒径、すなわち成形対象粉末中における平均粒径が小さくなりすぎる。一方、添加する磁石粉末の平均粒径が大きすぎると、粉砕後の平均粒径が十分に小さくならない。
【0035】
しかし、仮焼体と混合される焼結磁石はいったん焼結されているため、仮焼体に比べ硬度が高く粉砕されにくい。そのため、湿式微粉砕後の成形対象粉末の平均粒径は、粉砕時間が同じであれば、成形対象粉末中の磁石粉末含有量が多いほど大きくなる。その結果、成形対象粉末中の磁石粉末含有量を多くしても磁気特性が顕著には向上しなかったり、磁気特性がかえって低下することもある。このような問題を解決するためには、成形対象粉末中の磁石粉末含有量が多いほど、成形対象粉末の粉砕時間を長くすればよい。
【0036】
ただし、混合時に仮焼体粉末と焼結磁石の粉末とがほぼ同じ平均粒径であったとしても、その後の湿式微粉砕において仮焼体の粉砕がより進みやすい。したがって、磁石粉末が所定の粒径となるまで混合物を微粉砕したとき、混合物中の仮焼体は粉砕が進みすぎて超微粉が発生しやすくなる。あるいは、仮焼体粉末が所定の粒径となるまで混合物を粉砕したとき、混合物中の磁石粉末は粉砕が不十分となる。その結果、成形性が悪化したり、最終的に得られる磁石の磁気特性が十分に高くならないことがある。このような問題の発生を防ぐためには、焼結磁石の屑材または粗粉砕粉をそのまま仮焼体の粗粉砕粉と混合せず、焼結磁石の屑材または粗粉砕粉を湿式微粉砕した後、仮焼体の粗粉砕粉と混合し、得られた混合物を所定の粒径となるまでさらに湿式微粉砕することが好ましい。
【0037】
仮焼体の乾式粗粉砕工程では、平均粒径が好ましくは1〜10μm程度、BET比表面積が好ましくは0.5〜7m2/g程度となるまで粉砕する。粉砕手段は特に限定されず、例えば乾式振動ミル、乾式アトライター(媒体攪拌型ミル)、乾式ボールミル等が使用できるが、特に乾式振動ミルを用いることが好ましい。粉砕時間は、粉砕手段に応じて適宜決定すればよい。なお、仮焼後に一部の出発原料を添加する場合には、この乾式粗粉砕工程において添加することが好ましい。例えば、SiO2と、焼成によりCaOとなるCaCO3とは、それぞれの少なくとも一部をこの乾式粗粉砕工程において添加することが好ましい。
【0038】
乾式粗粉砕には、仮焼体粒子に結晶歪を導入して保磁力HcBを小さくする効果もある。保磁力の低下により粒子の凝集が抑制され、分散性が向上する。また、軟磁性化することにより、配向度も向上する。軟磁性化された粒子は、後の焼結工程において本来の硬磁性に戻る。
【0039】
乾式粗粉砕の後、粗粉砕粉と水等の分散媒とを含む粉砕用スラリーを調製し、これを用いて湿式微粉砕を行う。粉砕用スラリー中の固形分の含有量は、10〜70質量%程度であることが好ましい。湿式微粉砕に用いる粉砕手段は特に限定されないが、通常、ボールミル、アトライター、振動ミル等を用いることが好ましい。粉砕時間は、粉砕手段に応じて適宜決定すればよい。
【0040】
湿式微粉砕後、粉砕用スラリーを濃縮して成形用スラリーを調製する。濃縮は、遠心分離などによって行えばよい。成形用スラリー中の固形分の含有量は、60〜90質量%程度であることが好ましい。
【0041】
なお、成形対象粉末を実質的に磁石粉末だけから構成する場合、磁石の粗粉砕粉または削り屑を湿式微粉砕した後、粉砕用スラリーを濃縮して成形用スラリーを調製すればよい。この場合、焼結助剤等の微量添加物は、必要に応じて添加すればよい。
【0042】
湿式成形工程では、成形用スラリーを用いて磁場中成形を行う。成形圧力は10〜50MPa程度、印加磁場強度は0.5〜1.5T程度とすればよい。
【0043】
成形用スラリーに非水系の分散媒を用いると高配向度が得られるが、環境への負荷を軽減するためには水系分散媒を用いることが好ましい。そして、水系分散媒を用いることによる配向度の低下を補うために、成形用スラリー中に分散剤を存在させることが好ましい。この場合に用いる分散剤は、水酸基およびカルボキシル基を有する有機化合物であるか、その中和塩であるか、そのラクトンであるか、ヒロドキシメチルカルボニル基を有する有機化合物であるか、酸として解離し得るエノール型水酸基を有する有機化合物であるか、その中和塩であることが好ましい。このような分散剤は、例えば特開平11−214208号公報に記載されている。
【0044】
なお、非水系の分散媒を用いる場合には、例えば特開平6−53064号公報に記載されているように、トルエンやキシレンのような有機溶媒に、例えばオレイン酸のような界面活性剤を添加して、分散媒とする。このような分散媒を用いることにより、分散しにくいサブミクロンサイズのフェライト粒子を用いた場合でも最高で98%程度の高い磁気的配向度を得ることが可能である。
【0045】
湿式成形後、成形体を乾燥させ、次いで、空気中または窒素中において好ましくは100〜500℃の温度に加熱する脱脂処理を施すことにより、添加した分散剤を十分に分解除去する。脱脂処理後、焼結することによりフェライト焼結磁石を得る。
【0046】
焼結温度は、好ましくは1150〜1250℃、より好ましくは1160〜1220℃であり、前記温度範囲に保持する時間または安定温度に保持する時間は、好ましくは0.5〜3時間である。
【0047】
なお、前記成形体をクラッシャー等を用いて解砕し、ふるい等により平均粒径が100〜700μm程度となるように分級して磁場配向顆粒を得、これを乾式磁場成形した後、焼結することにより磁石を得てもよい。
【0048】
焼結磁石
本発明により製造されるフェライト磁石は、六方晶マグネトプランバイト型(M型)フェライトを主相として有し、Fe、元素A(Aは、Sr、Ba、CaおよびPbから選択される少なくとも1種)、元素R(Rは、希土類元素およびBiから選択される少なくとも1種であって、Laを必ず含む)および元素M(Mは、Coであるか、CoおよびZnである)を主成分構成元素として含有する。
【0049】
本発明により製造される磁石の主成分は、モル比で
式I A1-xRx(Fe12-yMy)zO19
で表すことができる。上記式Iにおいて、x、yおよびzは、好ましくは
0.04≦x≦0.9、
0.04≦y≦1.0、
0.4≦x/y≦5、
0.7≦z≦1.2
であり、より好ましくは
0.04≦x≦0.5、
0.04≦y≦0.5、
であり、さらに好ましくは
0.1≦x≦0.4、
0.1≦y≦0.4、
である。また、本発明で製造工程において添加する磁石粉末の組成も、上記式Iで表されるものであることが好ましい。
【0050】
上記式Iにおいて、xが小さすぎると、すなわち元素Rの量が少なすぎると、六方晶フェライトに対する元素Mの固溶量を多くできなくなってきて、飽和磁化向上効果および/または異方性磁場向上効果が不十分となってくる。xが大きすぎると六方晶フェライト中に元素Rが置換固溶できなくなってきて、例えば元素Rを含むオルソフェライトが生成して飽和磁化が低くなってくる。yが小さすぎると飽和磁化向上効果および/または異方性磁場向上効果が不十分となってくる。yが大きすぎると六方晶フェライト中に元素Mが置換固溶できなくなってくる。また、元素Mが置換固溶できる範囲であっても、異方性定数(K1)や異方性磁場(HA)の劣化が大きくなってくる。zが小さすぎるとSrおよび元素Rを含む非磁性相が増えるため、飽和磁化が低くなってくる。zが大きすぎるとα−Fe2O3相または元素Mを含む非磁性スピネルフェライト相が増えるため、飽和磁化が低くなってくる。
【0051】
上記式Iにおいて、x/yが小さすぎても大きすぎても元素Rと元素Mとの価数の平衡がとれなくなり、W型フェライト等の異相が生成しやすくなる。元素Mが2価イオンであって、かつ元素Rが3価イオンである場合、価数平衡の点でx/y=1とすることが一般的であるが、前述したようにRを過剰にすることが好ましい。なお、x/yが1超の領域で許容範囲が大きい理由は、yが小さくてもFe3+→Fe2+の還元によって価数の平衡がとれるためである。
【0052】
組成を表わす上記式Iにおいて、酸素(O)の原子数は19となっているが、これは、Mがすべて2価、Rがすべて3価であって、かつx=y、z=1のときの酸素の化学量論組成比を示したものである。MおよびRの種類やx、y、zの値によって、酸素の原子数は異なってくる。また、例えば焼成雰囲気が還元性雰囲気の場合は、酸素の欠損(ベイカンシー)ができる可能性がある。さらに、FeはM型フェライト中においては通常3価で存在するが、これが2価などに変化する可能性もある。また、Co等の元素Mも価数が変化する可能性があり、これらにより金属元素に対する酸素の比率は変化する。本明細書では、Rの種類やx、y、zの値によらず酸素の原子数を19と表示してあるが、実際の酸素の原子数は、これから多少偏倚した値であってよい。
【0053】
磁石組成は、蛍光X線定量分析などにより測定することができる。また、上記主相の存在は、X線回折や電子線回折などにより確認できる。
【0054】
磁石の飽和磁化および保磁力を高くするためには、元素AとしてSrおよびCaの少なくとも1種を用いることが好ましく、特にSrを用いることが好ましい。A中においてSr+Caの占める割合、特にSrの占める割合は、好ましくは51原子%以上、より好ましくは70原子%以上、さらに好ましくは100原子%である。元素A中のSrの比率が低すぎると、飽和磁化と保磁力とを共に高くすることが難しくなる。
【0055】
元素Rとして用いる希土類元素は、Y、Scおよびランタノイドである。元素Rとしては、Laを必ず用い、そのほかの元素を用いる場合には、好ましくはランタノイドの少なくとも1種、より好ましくは軽希土類の少なくとも1種、さらに好ましくはNdおよびPrの少なくとも1種を用いる。R中においてLaの占める割合は、好ましくは40原子%以上、より好ましくは70原子%以上であり、飽和磁化向上のためにはRとしてLaだけを用いることが最も好ましい。これは、六方晶M型フェライトに対する固溶限界量を比較すると、Laが最も多いためである。したがって、R中のLaの割合が低すぎるとRの固溶量を多くすることができず、その結果、元素Mの固溶量も多くすることができなくなり、磁気特性向上効果が小さくなってしまう。なお、Biを併用すれば、仮焼温度および焼結温度を低くすることができるので、生産上有利である。
【0056】
元素M中においてCoの占める割合は、好ましくは10原子%以上、より好ましくは20原子%以上である。M中におけるCoの割合が低すぎると、保磁力向上が不十分となる。
【0057】
焼結磁石には、Al2O3および/またはCr2O3が含有されていてもよい。Al2O3およびCr2O3は、保磁力を向上させるが残留磁束密度を低下させる。Al2O3とCr2O3との合計含有量は、残留磁束密度の低下を抑えるために好ましくは3質量%以下とする。なお、Al2O3および/またはCr2O3添加の効果を十分に発揮させるためには、Al2O3とCr2O3との合計含有量を0.1質量%以上とすることが好ましい。
【0058】
焼結磁石には、B2O3が含まれていてもよい。B2O3を含むことにより仮焼温度および焼結温度を低くすることができるので、生産上有利である。B2O3の含有量は、磁石粉末全体の0.5質量%以下であることが好ましい。B2O3含有量が多すぎると、飽和磁化が低くなってしまう。
【0059】
焼結磁石中には、Na、K、Rb等のアルカリ金属元素は含まれないことが好ましいが、不純物として含有されていてもよい。これらをNa2O、K2O、Rb2O等の酸化物に換算して含有量を求めたとき、これらの含有量の合計は、焼結磁石全体の3質量%以下であることが好ましい。これらの含有量が多すぎると、飽和磁化が低くなってしまう。
【0060】
また、これらのほか、例えばGa、In、Li、Mg、Cu、Ti、Zr、Ge、Sn、V、Nb、Ta、Sb、As、W、Mo等が酸化物として含有されていてもよい。これらの含有量は、化学量論組成の酸化物に換算して、それぞれ酸化ガリウム5質量%以下、酸化インジウム3質量%以下、酸化リチウム1質量%以下、酸化マグネシウム3質量%以下、酸化銅3質量%以下、酸化チタン3質量%以下、酸化ジルコニウム3質量%以下、酸化ゲルマニウム3質量%以下、酸化スズ3質量%以下、酸化バナジウム3質量%以下、酸化ニオブ3質量%以下、酸化タンタル3質量%以下、酸化アンチモン3質量%以下、酸化砒素3質量%以下、酸化タングステン3質量%以下、酸化モリブデン3質量%以下であることが好ましい。
【0061】
磁石の平均結晶粒径は、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.5〜1.0μmである。結晶粒径は走査型電子顕微鏡によって測定することができる。
【0062】
本発明により製造された磁石は所定の形状に加工される。この形状加工は、通常、焼結磁石を研削ないし研磨することにより行われる。この研削ないし研磨により発生する屑材は、そのまま、あるいは必要に応じて粉砕した後、成形対象粉末の一部として用いることができる。
【0063】
本発明により製造されるフェライト磁石では、高保磁力かつ高飽和磁化が実現する。そのため、元素Rおよび元素Mを含有しない従来のフェライト磁石と同一形状であれば、発生する磁束密度を増やすことができるため、モータに適用した場合には高トルク化等を実現でき、スピーカやヘッドホンに適用した場合には磁気回路の強化によりリニアリティーのよい音質が得られるなど、応用製品の高性能化に寄与できる。また、従来のフェライト磁石と同じ機能でよいとすれば、磁石の大きさ(厚さ)を小さく(薄く)できるので、小型軽量化(薄型化)に寄与できる。また、従来は界磁用の磁石を巻線式の電磁石としていたようなモータにおいても、これをフェライト磁石で置き換えることが可能となり、軽量化、生産工程の短縮、低価格化に寄与できる。さらに、保磁力(HcJ)の温度特性に優れているため、従来はフェライト磁石の低温減磁(永久減磁)の危険のあった低温環境でも使用可能となり、特に寒冷地、上空域などで使用される製品の信頼性を著しく高めることができる。
【0064】
例えば、フュエルポンプ用、パワーウインド用、ABS用、ファン用、ワイパ用、パワーステアリング用、アクティブサスペンション用、スタータ用、ドアロック用、電動ミラー用等の自動車用モータ;FDDスピンドル用、VTRキャプスタン用、VTR回転ヘッド用、VTRリール用、VTRローディング用、VTRカメラキャプスタン用、VTRカメラ回転ヘッド用、VTRカメラズーム用、VTRカメラフォーカス用、ラジカセ等キャプスタン用、CD、LD、MDスピンドル用、CD、LD、MDローディング用、CD、LD光ピックアップ用等のOA、AV機器用モータ;エアコンコンプレッサー用、冷蔵庫コンプレッサー用、電動工具駆動用、扇風機用、電子レンジファン用、電子レンジプレート回転用、ミキサ駆動用、ドライヤーファン用、シェーバー駆動用、電動歯ブラシ用等の家電機器用モータ;ロボット軸、関節駆動用、ロボット主駆動用、工作機器テーブル駆動用、工作機器ベルト駆動用等のFA機器用モータ;その他、オートバイ用発電器、スピーカ・ヘッドホン用マグネット、マグネトロン管、MRI用磁場発生装置、CD−ROM用クランパ、ディストリビュータ用センサ、ABS用センサ、燃料・オイルレベルセンサ、マグネットラッチ等に使用できる。
【0065】
【実施例】
実験1(R−M添加)
添加用磁石粉末
モル比で
Fe2O3/SrCO3=6.0
となるようにSrCO3とFe2O3とを秤量し、水を分散媒として湿式混合した。得られた混合物を空気中において1250℃で1時間仮焼した。得られた仮焼体を振動ミルで乾式粗粉砕し、平均粒径3μmの粗粉砕粉を得た。
【0066】
この粗粉砕粉に、焼結助剤としてSiO2およびCaCO3を添加すると共に、後添加物としてLa2O3およびCo3O4を添加した。後添加物の添加量は、最終組成(磁石組成)がモル比で
Sr0.8La0.2(Fe11.8Co0.2)O19
となるように設定した。SiO2およびCaCO3は、成形対象粉末中における合計含有量が全体の1.7質量%となり、かつ、Ca/Si=2.0となるように添加した。さらに、グルコン酸カルシウムを添加し、水を分散媒として湿式アトライタで粉砕して混合することにより、平均粒径1μmの成形対象粉末を含有するスラリーとした。なお、グルコン酸カルシウムの添加量は成形対象粉末全体に対し1質量%とした。次いで、固形分濃度が75%となるように上記スラリーを濃縮して、成形用スラリーを得た。
【0067】
次いで、成形用スラリーを脱水しながら圧縮成形し、成形体を得た。なお、圧縮成形の際には、加圧方向に平行な約1.2Tの磁場を印加した。成形圧力は44.1MPaとした。
【0068】
次いで成形体を空気中において1230℃に1時間保持することにより焼結し、フェライト焼結磁石を得た。このフェライト焼結磁石を振動ミルにより平均粒径3μm程度となるまで乾式粗粉砕し、添加用の磁石粉末を得た。
【0069】
焼結磁石
以下の手順で、フェライト焼結磁石サンプルを作製した。
【0070】
まず、添加用磁石粉末の製造のときと同様にして、仮焼体の粗粉砕粉を製造した。この粗粉砕粉に、焼結助剤としてSiO2およびCaCO3を添加すると共に、後添加物としてLa2O3およびCo3O4を添加し、さらに、上記添加用磁石粉末も添加して、成形対象粉末を得た。後添加物の添加量は、最終組成(磁石組成)がモル比で
Sr0.8La0.2(Fe11.8Co0.2)O19
となるように設定した。SiO2およびCaCO3の添加量は、添加用磁石粉末製造のときと同じとした。各サンプルについて、成形対象粉末中の磁石粉末の含有量を表1に示す。
【0071】
これ以降は、添加用磁石粉末の製造のときと同様にして、湿式微粉砕、湿式成形および焼結を行い、フェライト焼結磁石サンプルを得た。なお、湿式微粉砕の時間は、全てのサンプルで同一とした。各サンプルは、図1に示すように弧状磁石とし、その中心角は180°、弧状断面の高さHは15.5mm、周面の奥行きDは58mmとした。
【0072】
次いで、図2に示すように、サンプル(磁石1)を加圧部材2で図中の矢印方向に加圧し、サンプルが破壊したときの加圧力を測定した。この加圧力を抗折強度として表1に示す。また、熱衝撃に対する対する耐性を調べるために、各サンプル50個ずつを80℃の環境に1時間保持した後、0℃の水中に5秒間浸漬し、そのときのクラック発生率を調べた。結果を表1に示す。また、各サンプルの残留磁束密度(Br)および保磁力(HcJ)を室温で測定した。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
表1から本発明の効果が明らかである。すなわち、成形対象粉末に磁石粉末を添加することにより、抗折強度が著しく向上し、また、磁石粉末の添加量を制御することにより、クラック発生率が激減することがわかる。
【0075】
実験2(R−M無添加)
仮焼体の組成がSrFe12O19となるように出発原料を選択し、かつ、成形対象粉末に添加する磁石粉末の組成もSrFe12O19としたほかは実験1とほぼ同様にして、フェライト焼結磁石サンプルを作製した。
【0076】
これらのサンプルについて、実験1と同様に抗折強度およびクラック発生率を調べた。結果を表2に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
表2に示されるように、元素Rおよび元素Mを添加しない組成系では、成形対象粉末に磁石粉末を含有させても抗折強度向上効果が実質的に得られないことがわかる。また、クラック発生率に関しても、顕著な改善は認められない。
【0079】
実験3(R−M添加)
添加用磁石粉末
実施例1で製造した添加用磁石粉末を用いた。
【0080】
焼結磁石
以下の手順で、フェライト焼結磁石サンプルを作製した。
【0081】
添加用磁石粉末の製造のときと同様にして、仮焼体の粗粉砕粉を製造した。この粗粉砕粉に、焼結助剤としてSiO2およびCaCO3を添加すると共に、後添加物としてLa2O3およびCo3O4を添加し、さらに、上記添加用磁石粉末も添加して、成形対象粉末を得た。後添加物の添加量は、最終組成(磁石組成)がモル比で
Sr1-xLax(Fe12-yCoy)zO19
となるように設定した。焼結助剤であるSiO2およびCaCO3の添加量は、添加用磁石粉末製造のときと同じとした。
【0082】
なお、仮焼体、後添加物および焼結助剤を加えずに、添加用磁石粉末だけからなる成形対象粉末も調製した。
【0083】
これ以降は、添加用磁石粉末の製造のときと同様にして、湿式微粉砕、湿式成形および焼結を行い、フェライト焼結磁石サンプルを得た。
【0084】
各サンプルについて、組成(モル比)を表すx、y、zと、成形対象粉末中の磁石粉末の含有量とを、それぞれ表3に示す。なお、磁石粉末は仮焼体粉末に比べ粉砕しにくいため、成形対象粉末中の磁石粉末の含有量が多いほど湿式微粉砕の時間を長くして、すべてのサンプルにおいて成形対象粉末の比表面積が同じとなるようにした。各サンプルの残留磁束密度(Br)および保磁力(HcJ)を室温で測定した。結果を表3に示す。
【0085】
【表3】
【0086】
表3に示されるように、成形対象粉末中の磁石粉末の含有量の増大にほぼ依存して、焼結磁石サンプルの磁気特性が高くなっている。実験1と異なり実験3において磁気特性が向上したのは、成形対象粉末中の磁石粉末の含有量が多いほど湿式微粉砕の時間を長くして、すべてのサンプルにおいて成形対象粉末の比表面積が同じとなるようにしたためと考えられる。
【0087】
磁石粉末を添加して製造されたサンプルNo.308、No.309は、従来の方法によって製造されたサンプルNo.301に比べLaおよびCoの含有量が少ないにもかかわらず、サンプルNo.301と同等の磁気特性が得られている。また、サンプルNo.311、No.312では、LaおよびCoの含有量がサンプルNo.301の半分であるにもかかわらず、サンプルNo.301と同等以上の磁気特性が得られている。
【0088】
表3に示されるサンプルについて、実施例1と同様にして抗折強度およびクラック発生率を調べたところ、磁石粉末を添加して製造された本発明サンプルでは、成形対象粉末中における磁石粉末の含有量に応じ、実施例1と同等の結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例において作製した弧状磁石の斜視図である。
【図2】実施例において弧状磁石に対する加圧方向を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 磁石
2 加圧部材
Claims (6)
- Fe、元素A(Aは、Sr、Ba、CaおよびPbから選択される少なくとも1種)、元素R(Rは、希土類元素およびBiから選択される少なくとも1種であって、Laを必ず含む)および元素M(Mは、Coであるか、CoおよびZnである)を含有し、六方晶マグネトプランバイト型フェライトを主相として有するフェライト焼結磁石を製造する方法であって、
成形対象粉末を成形した後、焼結する工程を有し、
前記成形対象粉末が、Fe、元素A、元素Rおよび元素Mを含有するフェライト焼結磁石を粉末化した磁石粉末から実質的に構成されるか、または、この磁石粉末と、Fe、元素A、元素Rおよび元素Mを含有する原料粉末とから実質的に構成されるフェライト焼結磁石の製造方法。 - 前記原料粉末が、Fe、元素A、元素Rおよび元素Mを含有する仮焼体粉末を含む請求項1のフェライト焼結磁石の製造方法。
- 前記原料粉末が、少なくともFeおよび元素Aを含有する仮焼体粉末と、Fe、元素A、元素Rおよび元素Mの少なくとも1種を含有する後添加物とを含む請求項1のフェライト焼結磁石の製造方法。
- 前記成形対象粉末中における前記磁石粉末の含有量が、質量比で1%以上である請求項1〜3のいずれかのフェライト焼結磁石の製造方法。
- 前記磁石粉末が、フェライト焼結磁石の形状加工の際に生じた屑材であるか、不良なフェライト焼結磁石を粉砕したものである請求項1〜4のいずれかのフェライト焼結磁石の製造方法。
- 前記磁石粉末の原料となるフェライト焼結磁石の主成分および製造されるフェライト焼結磁石の主成分が、
式 A1-xRx(Fe12-yMy)zO19
(x、y、zはモル比を表し、
0.04≦x≦0.9、
0.04≦y≦1.0、
0.4≦x/y≦5、
0.7≦z≦1.2
である)
で表される請求項1〜5のいずれかのフェライト焼結磁石の製造方法。
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