JP6408323B2 - フェライト焼結体およびフェライトコアならびにコイル部品 - Google Patents

フェライト焼結体およびフェライトコアならびにコイル部品 Download PDF

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Description

本発明は、フェライト焼結体およびこのフェライト焼結体からなるフェライトコアならびにこのフェライトコアに金属線を巻きつけてなるコイル部品に関する。
インダクタ、変圧器、安定器、電磁石、ノイズフィルタ等のコアや、各種IT関連機器のLANインターフェース部に用いられるパルストランス用のコアには、フェライト焼結体が用いられている。例えば、特許文献1には、酸化鉄48〜50モル%,酸化ニッケル12〜15モル%,酸化亜鉛26〜29モル%,酸化銅7〜10モル%を主成分とするフェライト焼結体が提案されている。
特開平1−72924号公報
フェライト焼結体は、用途に応じて求められるキュリー温度および透磁率が異なる。そして、フェライト焼結体は、特許文献1における特性結果の記載のように、透磁率を高めようとすれば、キュリー温度は低くなる傾向があり、キュリー温度が低くなれば、高温環境における磁性体特性が著しく低下してしまう。また、キュリー温度を高めようとすれば、透磁率が低くなる傾向がある。そのため、キュリー温度を維持しつつ高い透磁率を有するフェライト焼結体が求められている。
本発明は、キュリー温度を維持しつつ高い透磁率を有するフェライト焼結体およびこのフェライト焼結体からなるフェライトコアならびにこのフェライトコアに金属線を巻き付けてなるコイル部品を提供することを目的とするものである。
本発明のフェライト焼結体は、中央部におけるFeの質量が、外縁部におけるFeの質量よりも多いフェライト結晶を含むことを特徴とするものである。
本発明のフェライト焼結体は、Fe、Zn、NiおよびCuを含み、それぞれを酸化物換算した合計100モル%における組成範囲が、FeがFe 換算で49モル%以上50モル%以下であり、ZnがZnO換算で29モル%以上32モル%以下であり、Ni
がNiO換算で10モル%以上13モル%以下であり、CuがCuO換算で6モル%以上9モル%以下であり、中央部におけるFeの質量が、外縁部におけるFeの質量よりも多いフェライト結晶を含むことを特徴とするものである。
さらに、本発明のコイル部品は、上記構成のフェライトコアに金属線を巻き付けてなることを特徴とするものである。
本発明のフェライト焼結体によれば、Fe、Zn、NiおよびCuを含み、それぞれを酸化物換算した合計100モル%における組成範囲が、FeがFe 換算で49モル%以上50モル%以下であり、ZnがZnO換算で29モル%以上32モル%以下であり、NiがNiO換算で10モル%以上13モル%以下であり、CuがCuO換算で6モル%以上9モル%以下であり、中央部におけるFeの質量が、外縁部におけるFeの質量よりも多いフェライト結晶を含むことにより、キュリー温度を維持しつつ高い透磁率を有するフェライト焼結体とすることができる。
また、本発明のフェライトコアによれば、キュリー温度を維持しつつ透磁率の高いフェライト焼結体からなることにより、磁性体特性に優れたフェライトコアとすることができる。
さらに、本発明のコイル部品によれば、キュリー温度を維持しつつ透磁率の高いフェライト焼結体からなるフェライトコアに金属線を巻き付けてなることにより、ノイズフィルタとして用いたときには、優れたノイズの除去性能を発揮することができる。
本実施形態のフェライト焼結体の一例を示す、(a)はトロイダルコアの斜視図であり、(b)はボビンコアの斜視図である。
以下、本発明のフェライト焼結体およびフェライトコアならびにフェライトコアに金属線を巻きつけてなるコイル部品について説明する。本実施形態のフェライト焼結体は、このフェライト焼結体からなるフェライトコア(以下、単にコアとも記載する。)を単独、またはフェライトコアに金属線を巻き付けたコイル部品として、例えば、絶縁や変圧を目的としたインダクタ、変圧器、安定器および電磁石に使用されたり、ノイズ除去などを目的としたノイズフィルタに使用されたりするものである。
ここで、コアとなるフェライト焼結体には様々な形状のものがあり、例えば図1(a)の斜視図に示すリング状のトロイダルコア1や、図1(b)の斜視図に示すボビン状のボビンコア2などがある。
そして、このようなフェライト焼結体には、キュリー温度(Tc)を維持しつつ透磁率(μ)が高いことが求められおり、このような要求を満たす本実施形態のフェライト焼結体としては、中央部におけるFeの質量が、外縁部におけるFeの質量よりも多いフェライト結晶を含む。
ここで外縁部とは、フェライト焼結体の断面から確認されるフェライト結晶において、フェライト結晶の界面から、長径の20%の長さまでの領域のことである。そして、長径とは、JIS R 1670−2006に記載されているように、現出したグレイン(フェライト結晶)の最も長い方向における長さのことであり、長径の20%の長さとは、長径の長さに0.2を乗じたものである。また、中央部とはフェライト結晶の長径の中心から界面に向かっ
て長径の20%の長さまでの領域のことである。
なお、フェライト焼結体の断面からフェライト結晶を選択するにあたっては、フェライト焼結体の断面において算出した平均結晶粒径をD50としたとき、D40〜D60の範囲の大きさの結晶を選択するものとする。これは、フェライト焼結体の一断面は、個々の結晶が部分的に切断されたものであるため、D40〜D60の範囲の大きさの結晶粒子を選択することで、結晶の中央で2等分に切断されたとみなされる結晶を対象とするためである。
ここで、本実施形態のフェライト焼結体が、キュリー温度を維持しつつ高い透磁率を有することができるのは、フェライト焼結体中において、中央部におけるFeの質量が、外縁部におけるFeの質量よりも多いフェライト結晶(以下、Fe偏在フェライト結晶ともいう。)を含むことにより、Fe偏在フェライト結晶の中央部において2価のFeが多く存在することとなって異方性磁界が弱まり、外縁部において3価のFeが存在することとなってホッピング伝導が生じにくく、抵抗が低下しにくくなることに起因しているものと推察される。
なお、透磁率については、LCRメータを用いて周波数100kHzの条件で試料を測定
すればよい。試料としては、例えば、外径が13mm、内径が7mm、厚みが3mmの図1(a)に示すフェライト焼結体からなるリング状のトロイダルコア1を用いて、トロイダ
ルコア1の巻き線部1aの全周にわたって線径が0.2mmの被膜導線を10回巻きつけたも
のを用いればよい。また、キュリー温度は、同様の試料を用いて、LCRメータを用いたブリッジ回路法により求めることができる。
また、フェライト結晶におけるFeの質量とは、フェライト焼結体の鏡面加工した断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、付設のエネルギー分散型X線分光器(EDS)を用いて、フェライト結晶内における中央部および外縁部にスポット(φ1nm)を当てることによって得られる、φ1nmのスポットにおける質量を100質量%としたときのF
eの質量のことである。なお、この測定においては、Feのみならず、フェライト結晶に含まれる成分の質量を確認することができる。
また、本実施形態のフェライト焼結体は、Fe、Zn、NiおよびCuを含み、それぞれを酸化物換算した合計100モル%における組成範囲が、FeがFe換算で49モル
%以上50モル%以下であり、ZnがZnO換算で29モル%以上32モル%以下であり、NiがNiO換算で10モル%以上13モル%以下であり、CuがCuO換算で6モル%以上9モル%以下であることが好適である。
フェライト焼結体が、上記組成範囲を満たすときには、高いキュリー温度を有しつつ、さらに透磁率の高いフェライト焼結体とすることができる。具体的には、キュリー温度が120℃以上であり、透磁率が2000以上である。なお、Fe、Zn、NiおよびCuをそれ
ぞれの含有量に基づいて、Fe、ZnO、NiOおよびCuOに換算した含有量は、フェライト焼結体を構成する全成分を100質量%としたとき、98質量%以上を占めるも
のであることが好適である。
また、上記組成範囲の算出方法については、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析装置または蛍光X線分析装置を用いて、Fe、Zn、Ni、Cuの含有量を求めて、それぞれFe、ZnO、NiO、CuOに換算し、それぞれの分子量からモル値を算出し、合計100モル%における占有率を算出することにより確認することができ
る。
また、本実施形態のフェライト焼結体は、Cu−Kα線を用いたX線回折における回折角2θ=29.5°〜30.5°の間に現れるピーク強度をI、回折角2θ=34.9°〜35.9°に現れるピーク強度をIとしたとき、I/Iが0.29〜0.38であることが好適である。このような構成を満たすときには、高い透磁率を維持しつつ、キュリー温度の高いフェライト焼結体とすることができる。
なお、上述したピーク強度は、JCPDSカードとの照合によって同一結晶のピークと確認されたピークの強度を対象とするのであって、回折角2θ=29.5°〜30.5°の間と、回折角2θ=34.9°〜35.9°の間に現れるピークであっても、別な結晶であれば対象とはならない。そして、I/Iの算出方法としては、X線回折装置にてCu−Kα線を用いた測定を行なうことによって得られた回折角2θ=29.5°〜30.5°の間に現れるピークの強度値(I)と、回折角2θ=34.9°〜35.9°に現れるピークの強度値(I)とを用いて算出すればよい。
また、本実施形態のフェライト焼結体は、中央部におけるFeの質量%をC1、外縁部におけるFeの質量%をC2としたとき、C1−C2の値が1.3質量%以上4.0質量%以下のフェライト結晶を含むことが好適である。このような構成を満たすときには、キュリー温度を維持しつつさらに高い透磁率を有するフェライト焼結体とすることができる。
ここで、キュリー温度を維持しつつさらに透磁率を高めることができる理由については
明らかではないが、フェライト結晶の中央部と外縁部とにおいて、2価のFeと3価のFeとが最適な割合で存在していることが寄与していると推察される。
次に、本実施形態のフェライト焼結体の製造方法の一例について以下に詳細を示す。まず、出発原料として、Fe、Zn、NiおよびCuの酸化物あるいは焼成によりFe、Zn、NiおよびCuの酸化物を生成する炭酸塩、硝酸塩等(以下、Fe源粉末、Zn源粉末、Ni源粉末、Cu源粉末と記載することもある。)の金属塩を用意する。このとき平均粒径としては、例えば、Feが酸化鉄(Fe)、Znが酸化亜鉛(ZnO)、Niが酸化ニッケル(NiO)およびCuが酸化銅(CuO)であるとき、それぞれ0.5μ
m以上5μm以下とすることが好適である。
次に、例えば、Fe、Zn、NiおよびCuを酸化物換算した合計100モル%における
組成範囲が、FeがFe換算で49.5モル%、ZnがZnO換算で30.5モル%、NiがNiO換算で12.5モル%、CuがCuO換算で7.5モル%とする場合、出発原料のうち
Zn源粉末、Ni源粉末およびCu源粉末を上記組成となるように秤量して混合し、混合後の粉末を2等分する。
また、Fe源粉末をFeがFe換算で25モル%分と、24.5モル%分となるように秤量して、上述した粉末に加え、それぞれボールミル等を用いて粉砕・混合する。ここで、25モル%添加側を第1の混合粉末とし、24.5モル%添加側を第2の混合粉末とする。次に、それぞれ大気中において700〜1000℃の温度で仮焼して、第1の混合粉末を仮焼した
第1の仮焼体および第2の混合粉末を仮焼した第2の仮焼体を得る。
その後、第1の仮焼体を水とともにボールミル等に入れて粉砕・混合する。また、第2の仮焼体についても、水とともに別のボールミル等に入れて粉砕・混合する。なおこのとき、第2の仮焼体の粉砕・混合時間は、第1の仮焼体の粉砕・混合より長く行ない、粒径を小さくする。そして、これらを合わせた後、所定量のバインダ等を加えてスラリーとする。次に、スプレードライヤを用いてこのスラリーを噴霧して造粒することにより球状の顆粒を得る。そして、得られた球状の顆粒を用いてプレス成形して所定形状の成形体を得る。その後、成形体を脱脂炉にて400〜800℃の範囲の温度で脱脂処理を施して脱脂体とした後、これを焼成炉にて1000〜1200℃の最高温度で2〜5時間保持する条件で焼成することにより本実施形態のフェライト焼結体を得ることができる。
次に、X線回折における回折角2θ=29.5°〜30.5°の間に現れるピーク強度をI、回折角2θ=34.9°〜35.9°に現れるピーク強度をIとしたとき、I/Iを0.29〜0.38の範囲にする製造方法について説明する。I/Iの0.29〜0.38の範囲にするには、最高温度から600℃までの降温速度を500〜1200℃/時間の範囲とすればよい。なお、時間当たりが1200℃を超える降温速度では、I/Iは変化せず、さらに降温速度を速めるには、強制的な冷却装置を必要としたり、焼成炉に与える負荷が大きくなったりすることから、最高温度から600℃までの降温速度の上限は1200℃とすることが好適である。
また、降温速度とは、最高温度から600℃まで降温するのに掛かった時間を表したもの
であり、最高温度から600℃までの降温条件は一定である必要はない。
次に、本実施形態のフェライト焼結体において、中央部におけるFeの質量%をC1、外縁部におけるFeの質量%をC2としたとき、C1−C2の値を1,3質量%以上4.0質量%以下とするためには、Fe源粉末の秤量時におけるモル%差を6.5モル%以上40.5モル
%以下とすればよい。
また、本実施形態のフェライト焼結体においては、CaOやZrOを含んでいてもよ
い。CaOやZrOを含んでいるときには、比抵抗を高めることができる。なお、CaOやZrOは、いずれもフェライト焼結体において、0.2質量%未満の含有量であるこ
とが好適であり、フェライト焼結体に含ませるときには、Caおよび/またはZrの酸化物あるいは焼成によりCaおよび/またはZrの酸化物を生成する炭酸塩、硝酸塩等の金属塩を、Fe、Zn、NiおよびCuをそれぞれ酸化物換算した合計100質量%に対し、
CaO換算、ZrO換算の合計で0.2質量%以下となるように秤量し、仮焼後に添加す
ればよい。
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
仮焼方法を異ならせたフェライト焼結体を作製し、透磁率およびキュリー温度の測定を行なった。試料の作製方法を以下に示す。
まず、平均粒径がそれぞれ1μmの酸化鉄、酸化亜鉛、酸化ニッケルおよび酸化銅の粉末を用意した。そして、それぞれの粉末を表1に示す組成となるように秤量した。次に、秤量後の酸化亜鉛、酸化ニッケルおよび酸化銅粉末を混合し、これを2等分した。次に、酸化鉄粉末を25モル%分と、24.5モル%分となるように秤量して、2等分した粉末のそれぞれに加え、それぞれ別のボールミルで粉砕・混合することにより第1の混合粉末および第2の混合粉末を得た。
次に、それぞれ大気中において750℃の温度で2時間仮焼し、第1の仮焼体および第2
の仮焼体を得た。その後、第1の仮焼体を水とともにボールミルに入れて粉砕・混合した。また、第2の仮焼体についても、水とともに別のボールミルに入れて第1の仮焼体の粉砕・混合時間よりも長い時間を掛けて混合・粉砕した。そして、これらを合わせた後、所定量のバインダを加えてスラリーとした。次に、スプレードライヤを用いてスラリーを噴霧して造粒することにより球状の顆粒を得た。そして、得られた球状の顆粒を用いてプレス成形することにより、図1に示すトロイダルコア1の形状の成形体を得た。
その後、成形体を脱脂炉にて600℃の温度で5時間保持し脱脂処理を施して脱脂体とし
た後、これを焼成炉にて大気雰囲気中、1100℃の最高温度で2時間保持して焼成した。なお、最高温度から600℃までの降温速度は、500℃/時間とした。
次に、この焼結体に研削加工を施し、外径13mm、内径7mm、厚み3mmのトロイダル形状のフェライト焼結体(試料No.1)を得た。
また、上述したような分割した仮焼を行なかったこと以外は、上述した方法と同様の作製方法によりフェライト焼結体(試料No.2)を得た。なお、表1において、仮焼方法の違いとして分割仮焼の有無を記載した。
そして、各試料の巻き線部10aの全周にわたって線径が0.2mmの被膜銅線を10回巻き
付けてLCRメータを用いて周波数100kHzにおける透磁率(μ)を測定した。また、
同様の試料を用いて、LCRメータを用いたブリッジ回路法によりキュリー温度(Tc)を求めた。結果を表1に示す。
また、各試料を鏡面加工した断面をTEMで観察し、付設のEDSを用いて、フェライト結晶内における中央部および外縁部にスポット(φ1nm)を当て、それぞれの領域におけるFeの質量を確認し、比較結果を表1に示した。
また、各試料について、蛍光X線分析装置を用いて、Fe、Zn、NiおよびCuの含有量を求めて、それぞれFe、ZnO、NiO、CuOに換算し、それぞれの分子量からモル値を算出し、合計100モル%における占有率(組成)を算出して表1に示した
Figure 0006408323
表1から、中央部におけるFeの質量が、外縁部におけるFeの質量よりも多いフェライト結晶を含むことにより、キュリー温度を維持しつつ高い透磁率を有するフェライト焼結体とできることがわかった。
次に、組成範囲を表2に示すように種々変更したフェライト焼結体を作製し、透磁率およびキュリー温度の測定を行なった。なお、組成範囲を表2に示すように種々変更したこと以外の作製方法は実施例1の試料No.1と同様とし、第1の混合粉末と第2の混合粉末とにおける酸化鉄の秤量時におけるモル%の差はいずれも0.5モル%とした。そして、
透磁率およびキュリー温度の測定については、実施例1と同様の方法により測定した。また、実施例1と同様の方法により、組成を算出した。結果を表2に示す。
Figure 0006408323
表2から、Fe,Zn,NiおよびCuを含み、それぞれを酸化物換算した合計100モ
ル%における組成範囲が、FeがFe換算で49モル%以上50モル%以下であり、ZnがZnO換算で29モル%以上32モル%以下であり、NiがNiO換算で10モル%以上13モル%以下であり、CuがCuO換算で6モル%以上9モル%以下であることにより、120℃以上の高いキュリー温度を有しつつ、2000以上の透磁率を有しており、磁性体特性に
優れたフェライト焼結体であることがわかった。
最高温度から600℃までの降温速度を変更したこと以外は、試料No.22〜27について
は実施例2のNo.5と同じ、試料No.28〜33については実施例2の試料No.18と同じ方法でフェライト焼結体を作製した。そして、実施例1と同様の方法により、透磁率およびキュリー温度を測定した。
また、各試料につき、X線回折装置にてCu−Kα線を用いた測定を行ない、回折角2θ=29.5°〜30.5°の間に現れるピークの強度値(I)と、回折角2θ=34.9°〜35.9°に現れるピークの強度値(I)とにより、I/Iの値を算出した。結果を表3に示す。
Figure 0006408323
表3から、X線回折における回折角2θ=29.5°〜30.5°の間に現れるピーク強度をI、回折角2θ=34.9°〜35.9°に現れるピーク強度をIとしたとき、I/Iが0.29〜0.38であることにより、高い透磁率を維持しつつ、キュリー温度を高められることがわかった。また、降温速度が1200℃/を超えても、I/Iに変化は見られず、焼成炉に与える負荷等を考慮すると、最高温度から600℃までの降温速度の上限は1200℃とする
ことが好適であることがわかった。
次に、Fe源粉末の秤量時におけるモル%差を種々変更したフェライト焼結体を作製し、透磁率およびキュリー温度の測定を行なった。なお、Fe源粉末の秤量時におけるモル%差を種々変更したこと以外の作製方法は実施例1の試料No.1と同様とした。
そして、実施例1と同様の方法により、中央部と外縁部とにおけるFeの質量を測定し、その結果および差を表4に示した。また、実施例1と同様の方法により、透磁率およびキュリー温度を測定した。結果を表4に示す。なお、各試料における組成範囲は、FeがFe換算で49.5モル%、ZnがZnO換算で31.5モル%、NiがNiO換算で11.5
モル%、CuがCuO換算で7.5モル%であった。また、試料No.23は、実施例2の試
料No.5と同じである。
Figure 0006408323
表4から、中央部におけるFeの質量%をC1、外縁部におけるFeの質量%をC2としたとき、C1−C2の値が1.3質量%以上4.0質量%以下のフェライト結晶を含むことにより、キュリー温度を維持しつつさらに高い透磁率を有しており、さらに磁性体特性に優れたフェライト焼結体であることがわかった。このように、本実施形態のフェライト焼結体は、磁性体特性に優れたものであることから、このフェライト焼結体をフェライトコアとし、金属線を巻きつけてノイズフィルタとして用いれば、高温環境化においても優れたノイズ除去性能を発揮できることがわかった。
1:トロイダルコア
1a:巻線部
2:ボビンコア
2a:巻線部

Claims (6)

  1. Fe、Zn、NiおよびCuを含み、それぞれを酸化物換算した合計100モル%における組成範囲が、FeがFe 換算で49モル%以上50モル%以下であり、ZnがZnO換算で29モル%以上32モル%以下であり、NiがNiO換算で10モル%以上13モル%以下であり、CuがCuO換算で6モル%以上9モル%以下であり、
    中央部におけるFeの質量が、外縁部におけるFeの質量よりも多いフェライト結晶を含むことを特徴とするフェライト焼結体。
  2. Cu−Kα線を用いたX線回折における回折角2θ=29.5°〜30.5°の間に現れるピーク強度をI、回折角2θ=34.9°〜35.9°に現れるピーク強度をIとしたとき、I/Iが0.29〜0.38であることを特徴とする請求項1に記載のフェライト焼結体。
  3. 前記中央部におけるFeの質量%をC1、前記外縁部におけるFeの質量%をC2としたとき、C1−C2の値が1.3質量%以上4.0質量%以下のフェライト結晶を含むことを特徴とする請求項1または請求項に記載のフェライト焼結体。
  4. 請求項1乃至請求項のいずれかに記載のフェライト焼結体からなることを特徴とするフェライトコア。
  5. 請求項乃至請求項のいずれかに記載のフェライト焼結体からなるフェライトコアに金属線を巻きつけてなることを特徴とするコイル部品。
  6. ノイズフィルタに用いることを特徴とする請求項に記載のコイル部品。
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