JP5836887B2 - フェライト焼結体およびこれを備えるノイズフィルタ - Google Patents

フェライト焼結体およびこれを備えるノイズフィルタ Download PDF

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Description

本発明は、フェライト焼結体およびこのフェライト焼結体に金属線を巻きつけてなるノイズフィルタに関する。
インダクタ、変圧器、安定器、電磁石等のコアとして、Fe,Zn,NiおよびCuを含有するフェライト焼結体が広く使用されている。
このようなFe,Zn,NiおよびCuを含有するフェライト焼結体として、例えば特許文献1には、Fe,Ni,Zn,CuをFe換算で48〜51モル%、ZnO換算で15モル%以上30モル%未満、NiO換算で7〜35モル%、CuO換算で2〜7モル%それぞれ含有する主成分100重量部に対し、TiをTiO換算で0.16〜1.0重量部含有したフェライト材料が提案されている。
また、特許文献2には、主組成としてFeが49.0mol%〜50.0mol%,NiOが10.0mol%〜15.0mol%、CuOが5.0mol%〜8.0mol%、残部がZnOであるNi系フェライトにおいて、副成分としてTiをTiO換算で0.1重量%以下(0
を含まず)を含有するNi系フェライトが提案されている。
また、特許文献3には、主成分組成が、48.0〜49.8mol%Fe、20.0〜35.0mol%ZnO、残部NiOとCuOのうち、少なくとも1種からなるNi−Zn系フェライトにMoOを0〜0.2wt%(0を含まず)添加した低損失酸化物磁性材料が提案さ
れている。実施例において、MoOの添加量が0.01wt%〜0.1wt%間で、添加量が
増えると透磁率は上昇傾向を示し、キュリー温度については低下傾向を示すことが記載されている。
特開2004−269316号公報 特開2002−321971号公報 特開2000−269018号公報
今般のフェライト焼結体には、広い温度域で保有する特性を発揮することができるように、透磁率およびキュリー温度を高めることが求められている。しかしながら、キュリー温度を高めようとすれば、透磁率が下がることとなり、透磁率とキュリー温度とは、トレードオフの関係にあることから、透磁率およびキュリー温度をともに高めることができる組成を見出さなければならないという課題があった。
本発明は、上記課題を解決すべく案出されたものであり、透磁率およびキュリー温度ともに高め、保有する特性を発揮することができる温度域の広いフェライト焼結体およびこれを備えるノイズフィルタを提供することを目的とするものである。
本発明のフェライト焼結体は、Fe,Zn,NiおよびCuの酸化物を主成分とし、該主成分の組成範囲が、FeをFe 換算で48モル%以上51モル%以下、ZnをZnO換算で29モル%以上31モル%以下、NiをNiO換算で14モル%以上16モル%以下、CuをCuO換算で5モル%以上7モル%以下であり、前記主成分100質量部に対し、Tiを
TiO換算で0.05質量%以上0.3質量%以下、MoをMoO換算で0.01質量%以上0.1質量%以下含有することを特徴とするものである。
また、本発明のノイズフィルタは、上記構成のフェライト焼結体に金属線を巻きつけてなることを特徴とするものである。
本発明のフェライト焼結体によれば、透磁率とキュリー温度の両方の特性を高めることができるので、保有する特性を発揮することのできる温度域の広いフェライト焼結体とすることができる。
本発明のノイズフィルタによれば、上記構成のフェライト焼結体に金属線を巻き付けてなることにより、透磁率が1320以上、キュリー温度が165℃以上とともに高く、コアとな
るフェライト焼結体が優れたノイズ除去性能を有し、ノイズ除去性能を発揮する温度域が広いので、優れたノイズフィルタとすることができる。
本実施形態のフェライト焼結体の一例を示す、(a)はトロイダルコアの斜視図であり、(b)はボビンコアの斜視図である。
以下、本実施形態のフェライト焼結体およびこれを備えるノイズフィルタについて説明する。
本実施形態のフェライト焼結体は、このフェライト焼結体をコアとして金属線を巻きつけることによって、例えば、回路のノイズ除去に用いるノイズフィルタとして、DC−DCコンバータや各種電源のトランス等に好適に使用されるものである。
ここで、コアとなるフェライト焼結体は、様々な形状のものがあり、例えば、図1(a)の斜視図に示すリング状のトロイダルコア10や図1(b)の斜視図に示すボビン状のボビンコア20がある。
そして、本実施形態のフェライト焼結体には、透磁率(μ)およびキュリー温度(Tc)がともに高いことが求められる。ここで、透磁率とは、LCRメータを用いて周波数100kHzの条件で試料を測定した測定値であり、試料としては、例えば、外径が13mm、
内径が7mm、厚みが3mmの図1(a)に示すフェライト焼結体からなるリング状のトロイダルコア10を用いて、トロイダルコア10の巻き線部10aの全周にわたって線径が0.2
mmの被膜導線を10回巻きつけたものを用いる。
このようなノイズフィルタ等のコアとなる本実施形態のフェライト焼結体は、Fe,Zn,NiおよびCuの酸化物を主成分とし、この主成分100質量部に対し、TiをTiO
換算で0.05質量%以上0.3質量%以下、MoをMoO換算で0.01質量%以上0.1質量%以下含有することを特徴としている。
なお、ここで主成分とは、フェライト焼結体を構成する成分の95%以上を占める成分のことをいう。そして、主成分以外の成分であるTi,Moおよび不可避不純物等の含有量は、それぞれ、TiO,MoOおよび不可避不純物等をそれぞれ酸化物に換算した値の合計で、フェライト焼結体を構成する全成分の1質量%未満であり、残部が主成分であることが好ましい。
そして、主成分100質量部に対し、TiをTiO換算で0.05質量%以上0.3質量%以下、MoをMoO換算で0.01質量%以上0.1質量%以下含有することによって、TiやM
oを含まない、またはTiのみを含む、またはMoのみを含むときと比べて、透磁率およびキュリー温度をともに高めることができる。そのため、保有する特性を発揮することのできる温度域の広いフェライト焼結体とすることができる。
これに対し、主成分100質量%に対するTiの含有量がTiO換算で0.05質量%未満
では、透磁率を高める効果が小さく、0.3質量%を越えると透磁率およびキュリー温度が
低下する。また、主成分100質量%に対するMoの含有量がMoO換算で0.01質量%未
満では、キュリー温度を高める効果が小さく、0.1質量%を越えると、透磁率が低下する
特に、TiおよびMoの含有量としてが、主成分100質量%に対して、TiO換算で0.05質量%以上0.15質量%以下であり、MoO換算で0.01質量%以上0.07質量%以下で
あることが好ましい。
また、本実施形態のフェライト焼結体は、主成分の組成範囲が、FeをFe換算で48モル%以上51モル%以下、ZnをZnO換算で29モル%以上31モル%以下、NiをNiO換算で14モル%以上16モル%以下、CuをCuO換算で5モル%以上7モル%以下であることが好ましい。主成分100質量部に対し、TiをTiO換算で0.05質量%以上0.3質量%以下、MoをMoO換算で0.01質量%以上0.1質量%以下含有し、主成分の組成
が前述した範囲からなることにより、透磁率を1320以上、キュリー温度が165℃以上とす
ることができる。これにより、近年、電気自動車やハイブリッドカーなどの複雑な制御を必要とする制御装置に組み込まれる電気回路のノイズ除去に用いられる、ノイズフィルタのコアとなるフェライト焼結体に求められる特性を満たすものとすることができる。
また、主成分の組成を上述した範囲としたのは、電気抵抗を大きくし、フェライト焼結体に金属線を巻きつけてノイズフィルタ等として用いたときの過電流損失(生じた渦電流でフェライト焼結体が発熱することによるエネルギーの損失)を低減することができるからである。
また、本実施形態のフェライト焼結体は、平均結晶粒径(D50)が10μm以下であることが好ましい。これにより、透磁率の温度変化率が小さいことに加え、優れた機械的特性を有するフェライト焼結体とすることができる。なお、平均結晶粒径は、周知のプラニメトリック法にて測定することができる。
そして、FeをFe換算で48モル%以上51モル%以下、ZnをZnO換算で29モル%以上31モル%以下、NiをNiO換算で14モル%以上16モル%以下、CuをCuO換
算で5モル%以上7モル%以下であり、主成分100質量部に対し、TiをTiO換算で0.05質量%以上0.3質量%以下、MoをMoO換算で0.01質量%以上0.1質量%以下含有
するフェライト焼結体に金属線を巻きつけてノイズフィルタとして用いた場合には、優れたノイズ除去特性を有し、この特性を発揮する温度域が広いので、ノイズ除去性能を有する優れたノイズフィルタとすることができる。
なお、本実施形態のフェライト焼結体の主成分が、FeをFe換算で48モル%以上51モル%以下、ZnをZnO換算で29モル%以上31モル%以下、NiをNiO換算で14モル%以上16モル%以下およびCuをCuO換算で5モル%以上7モル%以下含んでいることは、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析装置または蛍光X線分析装置を用いて、Fe、Zn、Ni、Cuの含有量を求めて、それぞれFe、ZnO、NiO、CuOに換算し、この換算した値を用いてモル%に換算することにより確認することができる。また、Ti、Moについては、ICP発光分光分析装置または蛍光X線分析装置を用いて、Ti、Moの含有量を求めて、それぞれ酸化物に換算し、主成分100質
量部に対する値に換算すればよい。
また、本実施形態のフェライト焼結体は、Tiの酸化物が結晶粒界に存在することが好ましい。Tiの酸化物が結晶粒界に存在するときには、主成分によって構成される結晶の粒成長を抑制して微細結晶からなる組織形態とすることができ、緻密化したフェライト焼結体を得ることができることから、機械的強度を向上させることができる。なお、ここでいうTiの酸化物とは、TiO,TiO,Tiなどのことである。
なお、機械的強度については、JIS R 1601−2008に準拠した形状の試験片を用意して測定した3点曲げ強度で確認することができる。
また、結晶粒界におけるTiの酸化物の存在については、以下の方法により確認することができる。まず、測定する試料を機械加工により切断し、切断された試料表面を機械研磨し、さらに試料表面を収束イオンビーム加工装置(日立ハイテクノロジーズ製 FIB FB2100)により加工する。そして、透過電子顕微鏡(JEOL製 JEM2010F)を用いて、加工
後の試料表面を5000〜10万倍の倍率で、加速電圧200kVの条件下で観察する。そして、
観察視野における任意の結晶粒界を測定箇所とし、付設されたエネルギー分散型X線分析装置(サーモエレクトロン製 NSS)により、スポット径1nm、測定時間50secおよ
び測定エネルギー幅0.14〜20.48keVの条件で測定し、得られたチャート(縦軸:元素
カウント、横軸:測定エネルギー幅)から、測定箇所においてTiとOとが検出されるか否かによって、結晶粒界におけるTiの酸化物の存在の有無を知ることができる。
また、本実施形態のフェライト焼結体は、主成分100質量部に対し、SiをSiO
算で0.005質量%以上0.1質量%以下含有することが好ましい。これにより、透磁率を低下させることなく、電気抵抗を大きくすることができる。なお、SiOは結晶粒界に存在するものであり、その存在形態は、非晶質であっても結晶であってもよいが、非晶質である方が電気抵抗を大きくする効果が大きいものである。
なお、電気抵抗の大きさは、体積固有抵抗で表すことができ、その測定方法としては、例えば、φが10〜20mm、厚みが0.5〜2mmの平板形状の試料を用意し、超絶縁抵抗計
(TOA製 DSM−8103)を用いて、印可電圧1000V、温度26℃、湿度36%の測定環境下で3端子法(JIS K6271;二重リング電極法)により測定すればよい。
なお、主成分100質量部に対するSiをSiO換算での含有量は、ICP発光分光分
析装置または蛍光X線分析装置を用いて、Siの含有量を求めて、SiOに換算し、主成分100質量部に対する値に換算すればよい。また、SiOが非晶質であるか結晶であ
るかについては、結晶となっていれば、X線回折でピークを確認することができ、非晶質であれば、X線回折でピークは確認されないものの、上述したTiの酸化物の存在について確認したときと同様の方法において、SiとOの存在が確認されることで判別できる。また、Tiの酸化物の存在について確認したときと同様の方法により、SiOが結晶粒界に存在するものであることを確認できる。
次に、本実施形態のフェライト焼結体の製造方法について以下に詳細を示す。
本実施形態のフェライト材料の製造方法は、まず、主成分となる平均粒径が0.5〜1μ
mのFe,Zn,Niの酸化物、平均粒径が1〜3μmのCuの酸化物あるいは焼成によりこれらの酸化物を生成する炭酸塩、硝酸塩等の金属塩を用い、これらを所望のモル比となるように主成分の各原料を秤量し、ボールミルや振動ミル等で粉砕混合した後、700℃
以上750℃以下の温度で2時間以上仮焼して仮焼体を得る。このように、700℃以上750℃
以下の温度で2時間以上仮焼して得られた仮焼体は粉砕しやすいので、粉砕後に均質な仮焼粉体を得ることができ、仮焼粉体に添加するTiおよびMo成分を凝集することなく分散させることができる。なお、仮焼温度が700℃未満ではフェライト材料としての合成が
不十分となり、750℃を超えると合成後の仮焼体の硬度が増し均質に粉砕することが困難
となる。
次に、平均粒径が0.5〜10μmのTiの酸化物あるいは焼成によりTiの酸化物を生成
する炭酸塩、硝酸塩等の金属塩、また、平均粒径が0.5〜3μmのMoの酸化物あるいは
モリブデン珪化物(MoSi)を用い、仮焼粉体100質量部に対して、TiをTiO
換算で0.05質量%以上0.3質量%以下、MoをMoO換算で0.01質量%以上0.1質量%以下の範囲内となるように加え、ボールミルや振動ミル等で混合した後、さらに所定量のバインダを加えてスラリーとし、噴霧造粒装置(スプレードライヤ)を用いて造粒した球状顆粒を得る。次に、この球状顆粒を用いてプレス成形して所定形状の成形体を得る。なお、TiおよびMo成分を仮焼前に添加したときには、両成分がFe,Zn,NiおよびCuの酸化物からなる主結晶に固溶しやすく、所望の特性が得られにくくなる。
なお、よりフェライト焼結体の機械的強度を向上させたい場合には、添加前にTiの酸化物を予め900℃以上で熱処理し、平均粒径が3μm以上10μm未満に粉砕したもの用い
ればよい。これにより、添加するTiの酸化物の粒子表面の活性は低下し、かつルチル型のみの安定した結晶構造とできることから、焼成時における主成分によって構成される結晶へのTiの固溶量が低下し、結晶粒界にTiの酸化物が存在しやすくなる。そのため、主成分によって構成される結晶は、結晶粒界にTiの酸化物が存在することにより、粒成長が抑制されて微細結晶からなる組織形態となり、緻密化されることから、機械的強度の向上したフェライト焼結体を得ることができる。
また、透磁率を低下させることなく電気抵抗を大きくして過電流損失を低減させたい場合には、フェライト焼結体において、主成分100質量部に対し、SiO換算での含有量
が0.005質量%以上0.1質量%以下となるように、Si源を仮焼粉体に添加すればよい。
また、電気抵抗を大きくして渦電流損失を低減させたい場合には、仮焼粉体に所定量のCaOやZrOを添加してもよい。また、より高い透磁率を得たい場合には、仮焼粉体に所定量のMnOを添加すればよい。なお、CaO、ZrO、MnOは、いずれもフェライト焼結体において、主成分100質量部に対し、0.2質量%未満であることが好ましい。
そして、得られた成形体を脱脂炉にて400〜800℃の範囲で脱バインダ処理を施して脱脂体とした後、これを焼成炉にて1000〜1200℃の最高温度で2〜5時間保持して焼成するこ
とにより本実施形態のフェライト焼結体を得ることができる。なお、Si源を含んでいるとき、最高温度から800℃までの降温速度を100℃/時間以上とすることにより、結晶粒界にSiOを非晶質で存在させやすくできる。
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
TiおよびMoの含有量による透磁率およびキュリー温度の向上効果を確認するために、主成分組成が表1に示すフェライト焼結体と、表1と同様の主成分組成にTiOおよびMoOを表2に示す量となるように添加したフェライト焼結体を作製し、各試料の透磁率およびキュリー温度の測定を行なった。
まず、主成分として平均粒径が1μmのFe、ZnOおよびNiO粉末と、平均粒径が3μmのCuO粉末を表1に示したモル比となるように秤量し、ボールミルで粉砕混合した後、750℃で仮焼して仮焼体を得た。そして、仮焼体を粉砕して仮焼粉体を得た
後、バインダを加えてスラリーとし、噴霧造粒装置(スプレードライヤ)にて造粒して球状顆粒を得た。そして、この球状顆粒を用いプレス成形法により圧縮成形して、図1に示すトロイダルコア1の形状の成形体を得た。
次に、この成形体を脱脂炉にて、600℃の最高温度で5時間保持して脱バインダ処理を
施して脱脂体を得た。しかる後、この脱脂体を焼成炉にて大気雰囲気中1000〜1200℃の最高温度で2時間保持して焼成した。その後研削加工を施し、外径13mm、内径7mm、厚み3mmのトロイダル形状の試料No.1〜16のフェライト焼結体を得た。
また、試料No.1〜16となる各仮焼粉体に、仮焼粉体100質量部に対し、表2に示す
TiOおよびMoOの含有量となるように添加して、その後の工程は、試料No.1〜16を作製したときと同じ製造方法により試料No.17〜32のフェライト焼結体を得た。
そして、各試料の巻き線部10aの全周にわたって線径が0.2mmの被膜銅線を10回巻き
付けてLCRメータを用いて周波数100kHzにおける透磁率を測定した。また、キュリ
ー温度については、250℃までは、透磁率の測定と同様の試料およびLCRメータを用い
てブリッジ回路法により求め、250℃を超える試料については、この試料を粉砕した粉末
をケースに入れ、振動試料型磁力計(TOEI社製 VSM−5型)の所定位置に置き磁場をかけて常磁性になる温度をキュリー温度として測定した。
なお、各試料について、蛍光X線分析装置を用いて、Fe,Zn,NiおよびCuの金属元素量を求めて、それぞれFe,ZnO,NiO,CuOに換算し、これらの酸化物に換算した値を用いてモル%に換算し、表1および表2に記載のモル%となっていることを確認した。また、TiおよびMoについては、TiOおよびMoOにそれぞれ換算し、この値を用いて、Fe,ZnO,NiO,CuOを100質量部としたとき
に対する比率を百分率で表すことによって、表2に記載の質量%となっていることを確認した。結果を表1、表2にそれぞれ示す。
Figure 0005836887
Figure 0005836887
表1および表2の結果から、TiおよびMoを含有していない表1に示す試料No.1〜16と比較して、TiをTiO換算で0.1質量%およびMoをMoO換算で0.05質量
%含有する表2の試料No.17〜32については、いずれも透磁率、キュリー温度ともに高い値を示しており、TiおよびMoを含有することによって、透磁率およびキュリー温度を高められることがわかった。
次に、主成分組成を試料No.3に示す組成に固定し、TiOおよびMoO換算での含有量を種々変更した試料No.33〜46を実施例1と同様の製造方法を用いて作製し、実施例1と同様の方法により透磁率およびキュリー温度を測定した。結果を表3に示す。
Figure 0005836887
表3の結果から、試料No.3に比べて、Ti成分のみを添加しMo成分を添加していない試料No.49〜52は、透磁率は高められているものの、キュリー温度を高めることはできていなかった。また、Ti成分を添加せずMo成分のみを添加した試料No.53〜56は、キュリー温度は高められているものの、透磁率を高めることはできなかった。さらに、TiO換算で0.05質量%未満である試料No.33およびTiO換算で0.3質量%を
超える試料No.38は、透磁率を高めることができなかった。また、MoO換算で0.01質量%未満である試料No.39は、キュリー温度を高めることができず、MoO換算で0.1質量%を超える試料No.44は、透磁率を高めることができなかった。
これに対し、TiをTiO換算で0.05質量%以上0.3質量%以下、MoをMoO
算で0.01質量%以上0.1質量%以下含有する試料No.34〜37,40〜43,45〜48は、透磁
率およびキュリー温度のいずれも高めることができていた。
また、試料No.34〜36,40〜42,47の結果から、TiをTiO換算で0.05質量%以上0.15質量%以下、MoをMoO換算で0.01質量%以上0.07質量%以下含有することにより、透磁率およびキュリー温度を高められることがわかった。
次に、主成分組成、TiO換算での含有量およびMoO換算での含有量を種々変更した試料No.57〜82を実施例1と同様の製造方法を用いて作製し、実施例1と同様の方法により透磁率とキュリー温度を実施例1と同様の方法を用いて測定した。結果を表4に示す。
Figure 0005836887
表4の結果から、主成分の組成範囲が、FeをFe換算で48モル%以上51モル%以下、ZnをZnO換算で29モル%以上31モル%以下、NiをNiO換算で14モル%以上16モル%以下、CuをCuO換算で5モル%以上7モル%以下であり、TiをTiO換算で0.05質量%以上0.3質量%以下、MoをMoO換算で0.01質量%以上0.1質量%以下含有する試料No.59〜74は、透磁率が1320以上であり、キュリー温度が165℃以上であった。そのため、電気自動車やハイブリッドカーなどの複雑な制御を必要と
する制御装置に組み込まれる電気回路のノイズ除去に用いられる、ノイズフィルタのコア
となるフェライト焼結体に求められる特性を満たす、優れた特性を有していることがわかった。
試料No.61と同様の組成とし、仮焼粉体に添加するTiOが平均粒径3μmのものと、予め900℃で熱処理して平均粒径が3μmとなるまで粉砕したものとを用い、それぞ
れ実施例1と同様の製造方法によりフェライト焼結体を作製した。なお、以降の説明において、TiOに熱処理を施していない方の試料を試料A、TiOに熱処理を施した方の試料を試料Bと称す。
そして、各試料を機械加工により切断し、切断された試料表面を機械研磨し、さらに試料表面を収束イオンビーム加工装置(日立ハイテクノロジーズ製 FIB FB2100)により
加工した。そして、透過電子顕微鏡(JEOL製 JEM2010F)を用いて、加工後の試料表面を倍率28000倍の倍率で、加速電圧200kVの条件下で観察した。そして、観察視野における結晶粒界について、5箇所を測定箇所とし、付設されたエネルギー分散型X線分光分析装置(サーモエレクトロン製 NSS)により、スポット径1nm、測定時間50secおよび
測定エネルギー幅0.14〜20.48keVの条件で測定し、得られたチャート(縦軸:元素カ
ウント、横軸:測定エネルギー幅)を得た。
また、試料A、試料Bについて、実施例1と同様の方法により透磁率を測定した。また、JIS R1634−1998に準拠して密度を、JIS R 1601-2008に準拠して3点曲げ
強度を測定した。
結果、試料Aについては、得られたチャートからTiの存在が確認されなかった。これに対し、試料Bについては、TiおよびOの存在が確認された。また、試料A,試料Bともに、透磁率が1350、密度が5.31g/cmと同じであったが、3点曲げ強度については、試料Aが105MPaであったのに対し、試料Bは122MPaであり、結晶粒界にTiの酸化物が存在していることにより、機械的強度を高められることが確認された。
次に、仮焼粉体に添加するSiOの含有量を異ならせたこと以外は、実施例2の表4に示す試料No.61と同様の組成とし、実施例1と同様の製造方法により試料No.83〜89を作製した。
そして、蛍光X線分析装置を用いて、Fe,Zn,NiおよびCuの金属元素量を求めて、それぞれFe,ZnO,NiO,CuOに換算した。また、Siの金属元素量を求めて、SiOに換算し、Fe,ZnO,NiO,CuOに換算した値の合計である主成分100質量部に対するSiOの含有量を求めた。
次に、実施例1と同様の方法により透磁率を測定した。また、各試料の成形原料を用いて、φ15mm、厚さ1.5mmの円板状の成形体を別途成形し、その後の工程については、
実施例1と同様の製造方法により体積固有抵抗測定用の試料を得た。そして、超絶縁抵抗計(TOA製 DSM−8103)を用いて、印可電圧1000V、温度26℃、湿度36%の測定環境下で3端子法(JIS K6271;二重リング電極法)により各試料における体積固有抵抗値を測定した。
結果を表5に示す。
Figure 0005836887
表5の結果から、主成分100質量部に対し、SiをSiO換算で0.005質量%以上0.1
質量%以下含有することにより、透磁率を低下させることなく、体積固有抵抗値を大きく、すなわち電気抵抗を大きくできることが確認された。なお、本実施例において、最高温度から800℃までの降温速度は80℃/時間としたが、同じ成形原料を用いて、最高温度か
ら800℃までの降温速度を100℃/時間以上とした試料を作製したところ、Siを含有する各試料において、最高温度から800℃までの降温速度を100℃/時間以上とした試料の方がさらに体積固有抵抗値は大きい結果が得られた。
1:トロイダルコア
1a:巻線部
2:ボビンコア
2a:巻線部

Claims (4)

  1. Fe,Zn,NiおよびCuの酸化物を主成分とし、該主成分の組成範囲が、FeをFe 換算で48モル%以上51モル%以下、ZnをZnO換算で29モル%以上31モル%以下、NiをNiO換算で14モル%以上16モル%以下、CuをCuO換算で5モル%以上7モル%以下であり、前記主成分100質量部に対し、TiをTiO換算で0.05質量%以上0.15質量%以下、MoをMoO換算で0.01質量%以上0.07質量%以下含有することを特徴とするフェライト焼結体。
  2. 結晶粒界にTiの酸化物が存在することを特徴とする請求項1に記載のフェライト焼結体。
  3. 前記主成分100質量部に対し、SiをSiO換算で0.005質量%以上0.1質量%以下含有することを特徴とする請求項1または請求項に記載のフェライト焼結体。
  4. 請求項1乃至のいずれかに記載のフェライト焼結体に金属線を巻きつけてなることを特徴とするノイズフィルタ。
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