JP5309466B2 - 磁気記録媒体用フェライト粒子 - Google Patents

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Description

本発明は、磁気記録媒体用フェライト粒子に関し、特に高密度垂直磁気記録に適する磁気記録媒体用フェライト粒子に関する。
高記録密度の磁気記録媒体用フェライト粒子のニーズが高くなっている。例えば、磁気テープの分野においても、近年、ミニコンピューター、パーソナルコンピューター、ワークステーションなどのオフィスコンピューターの普及に伴って、外部記憶媒体としてのコンピューターデータを記録するための磁気テープ(いわゆるバックアップテープ)の研究が盛んに行われている。特に、コンピューターの小型化、情報処理能力の増大と相まって、記録の大容量化、小型化を達成するために、記録容量の向上が強く要求されている。
特許文献1は、六方晶フェライトを主相とし、一般式:Ca1-xRx(Fe12-yMy)zO19(Rは、Yを含む希土類元素及びBiから選択される少なくとも1種の元素であって、Laを必ず含み、MはCo及び/又はNiであり、x、y及びzはそれぞれ0.2≦x≦0.8、0.2≦y≦1.0、及び0.5≦z≦1.2の条件を満たす。)により表される組成を有するフェライト粒子を含有する磁気記録媒体を開示している(請求項7を参照)。しかし、特許文献1には、特定少量のBaを添加することにより、従来に比べて飽和磁化(4πIs)を顕著に高め、かつ適正な保磁力(HcJ)を有るようにした磁気記録媒体用フェライト粒子は記載されておらず、示唆もされていない。
特許文献2は、六方晶マグネトプランバイト型フェライトを主相として有し、希土類元素(Yを含む)及びBiから選択される少なくとも1種の元素をRとし、Co又は(Co+Zn)をMとしたとき、Ba、R、Fe及びMの総計の構成比率が、全金属元素量に対し、Ba:1〜13原子%、R:0.05〜10原子%、Fe:80〜95原子%、M:2〜6.5原子%である磁石粉末を含む磁気記録媒体(請求項8を参照)を開示している。特許文献2の表1に示されている各仮焼試料の組成は、本発明のフェライト粒子の特定組成に対して特にCa量が少なく、本発明の対象範囲外である。
特許文献3は、M型フェライト構造を有し、Sr又はSr及びBaからなるA元素、Yを含む希土類元素の少なくとも1種であってLaを必須に含むR元素、Ca、Fe及びCoを必須元素とし、酸化物磁性材料を粉砕、成形及び焼成する工程により製造されるフェライト焼結磁石を開示している。前記酸化物磁性材料は下記一般式(1):A1-x-yCaxRyFe2n-zCozO19(原子比率)、前記フェライト焼結磁石は下記一般式(2):A1-x-y+aCax+bRy+cFe2n-zCoz+dO19(原子比率)[ただし、式(1)及び(2)において、x、y、z及びnはそれぞれCa、R元素及びCoの含有量及びモル比を表し、a、b、c及びdはそれぞれ前記粉砕工程で添加されたA元素、Ca、R元素及びCoの量を表し、0.03≦x≦0.4、0.1≦y≦0.6、0≦z≦0.4、4≦n≦10、x+y<1、0.03≦x+b≦0.4、0.1≦y+c≦0.6、0.1≦z+d≦0.4、0.50≦{(1-x-y+a)/(1-y+a+b)}≦0.97、1.1≦(y+c)/(z+d)≦1.8、1.0≦(y+c)/x≦20、及び0.1≦x/(z+d)≦1.2を満たす。]により表される。このフェライト焼結磁石はSrを必須に含み、かつSr又は(Sr+Ba)含有量がCa含有量より多い点で、本発明のフェライト粒子の範囲からはずれる。
特許文献4は、式:(1-x)CaO・(x/2)R2O3・(n-y/2)Fe2O3・yMO(RはLa、Nd、Prから選択される少なくとも一種の元素であってLaを必ず含み、MはCo、Zn、Ni、Mnから選択される少なくとも一種の元素であってCoを必ず含み、x、y、nはモル比を表わし、0.4≦x≦0.6、0.2≦y≦0.35、4≦n≦6、1.4≦x/y≦2.5を満足する。)で表される組成を有する六方晶のM型マグネトプランバイト構造を有するフェライトを主相とする酸化物磁性材料を開示している。しかし特許文献4に記載の酸化物磁性材料は、Baを有さないため本発明のフェライト粒子の特定組成の範囲からはずれる。
特許文献5は、A1-xLaxFe12-xCoxO18(AはBa、Sr、Ca、Pbの群から選ばれた少なくとも1種の元素、xは0.5〜1.1)で示される六方晶系フェライトであって、かつ平均粒径0.01〜0.3μmの磁性微粉末を含む磁性記録層を備えてなり、前記磁性微粉末はC軸が面方向に対し垂直に配列されている磁気記録媒体を開示している(特許請求の範囲を参照)。しかし、特許文献5には、本発明のフェライト粒子の特定組成を採用することにより飽和磁化を顕著に向上できることは何ら記載されておらず、示唆も認められない。
特許第3181559号 特開平11-97225号 国際公開第05/027153号 国際公開第06/028185号 特公平3-3922号公報
従って、本発明の目的は、高密度磁気記録媒体用に適する六方晶フェライト粒子、特に基体面上に垂直な方向の磁化を用いる垂直磁気記録方式に適する新規な高密度垂直磁気記録媒体用フェライト粒子を提供することである。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、M型フェライト構造を有し、Ca、希土類元素の少なくとも1種であってLaを必須に含むR元素、Ba、Fe及びCoを必須元素とする新規なフェライト組成物からなるフェライト粒子が、従来に比べて顕著に高い飽和磁化(4πIs)及び異方性磁場(HA)を有することを発見した(国際特許出願PCT/JP2007/052525を参照)。更に、この新規なフェライト組成物からなるフェライト粒子はM型フェライト構造を有し、適正なHcJを有するように平均粒径を調整したものが高密度磁気記録媒体用に好適なことを発見した。
本発明の磁気記録媒体用フェライト粒子は、M型フェライト構造を有し、Ca、希土類元素の少なくとも1種であってLaを必須に含むR元素、Ba、Fe及びCoを必須元素とし、下記一般式:
Ca1-x-yRxBayFe2n-zCoz(原子比率)
[(1-x-y)、x、y、z及びnはそれぞれCa、R元素、Ba及びCoの含有量、及びモル比を表し、
0.3≦1-x-y≦0.65、
0.2≦x≦0.65、
0.001≦y≦0.2、
0.03≦z≦0.65、
4≦n≦7、及び
1-x-y>y
を満たす数値である。]により表わされる組成を有することを特徴とする。
本発明のフェライト粒子は板状であり、かつ適性範囲のHcJを有するために、前記板状粒子の平均粒径は0.001〜0.3μmであるのが好ましい。
本発明のフェライト粒子は、下記一般式:
Ca1-x-yRxBayFe2n-zCozOα(原子比率)
[(1-x-y)、x、y、z、n及びαはそれぞれCa、R元素、Ba及びCoの含有量、モル比及びOの含有量を表し、
0.3≦1-x-y≦0.65、
0.2≦x≦0.65、
0.001≦y≦0.2、
0.03≦z≦0.65、
4≦n≦7、及び
1-x-y>y
を満たす数値である。ただし、x=zでかつn=6のときの化学量論組成比を示した場合はα=19である。]により表わされるものが好ましい。
本発明のフェライト粒子は、新規で独創的な上記フェライト組成物の組成を採用したことにより、従来のCa-R-Co系フェライト粒子においてM型結晶粒の結晶成長率が低いために板状粒子が得られないという欠点を改良したものである。即ち、本発明のフェライト粒子は、板状粒子であり、従来のフェライト粒子に比べて4πIsが顕著に高いので、特に高密度垂直磁気記録媒体用に好適である。
[1] フェライト粒子
(1) 組成
本発明の磁気記録媒体用フェライト粒子は、M型フェライト構造を有し、Ca、希土類元素の少なくとも1種であってLaを必須に含むR元素、Ba、Fe及びCoを必須元素とし、下記一般式:
Ca1-x-yRxBayFe2n-zCoz(原子比率)
{ただし、(1-x-y)、x、y及びzはそれぞれCa、R元素、Ba及びCoの含有量、nはモル比を表し、
0.3≦1-x-y≦0.65、
0.2≦x≦0.65、
0.001≦y≦0.2、
0.03≦z≦0.65、
4≦n≦7、及び
1-x-y>y
を満たす数値である。}により表わされる基本組成を有する。
本発明の磁気記録媒体用フェライト粒子は、M型結晶粒が六角板状になりにくいという従来のCa-R-Co系フェライト粉末粒子の欠点を改良したものである。すなわち相対的に厚みのある((c面の最大径/c軸方向の厚み)で定義されるアスペクト比が小さい)M型結晶粒からなるフェライト粒子が得られ、4πIs及びHAから予測される本来の磁気特性ポテンシャルに極めて近いBr及びHcJを有し、かつHcJの温度依存性[温度係数(β)]が小さい。
Ca含有量(1-x-y)は、0.3〜0.65であり、0.4〜0.55であるのが好ましい。(1-x-y)が0.3未満ではM相が不安定になり、余剰のR元素によりオルソフェライトが生成して磁気特性が低下する。(1-x-y)が0.65を超えるとM相を生成しなくなり、CaFeO3-x等の好ましくない相が生成する。
R元素はLa、Ce、Nd及びPr等の希土類元素の少なくとも1種であってLaを必須に含む。高い磁気特性を付与するために、R中のLaの比率は50原子%以上であるのが好ましく、70原子%以上であるのがさらに好ましく、La単独(ただし、不可避的不純物は許容される。)が特に好ましい。R含有量(x)は、0.2〜0.65であり、0.3〜0.55であるのが好ましく、0.35〜0.5であるのがより好ましい。xが0.2未満では、M相へのCoの置換量が不十分になり、M型フェライト構造が不安定になる。xが0.65を超えると未反応のR元素の酸化物が増加し、オルソフェライト等の好ましくない相が生じる。
Ba含有量(y)は、0.001〜0.2であり、0.005〜0.2であるのが好ましく、0.01〜0.2であるのがより好ましく、0.02〜0.15であるのがさらに好ましく、0.02〜0.12であるのが特に好ましい。yが0.001未満ではBaの添加による磁気特性の向上効果が得られない。yが0.2を超えると磁気特性が低下する。
Co含有量(z)は、0.03〜0.65であり、0.1〜0.55であるのが好ましく、0.2〜0.4であるのがより好ましい。zが0.03未満ではCoの添加による磁気特性の向上効果が得られない。zが0.65を超えるとCoを多く含む異相が生成して磁気特性が大きく低下する。
モル比nは、(Ca+R+Ba)と(Fe+Co)のモル比を反映する値で、2n=(Fe+Co)/(Ca+R+Ba)で表される。モル比nは4〜7であり、4〜6であるのが好ましく、4.5〜5.5であるのがより好ましく、4.6〜5.4がさらに好ましい。nが4未満では非磁性部分の比率が多くなり、磁気特性が低下する。nが7を超えると、未反応のα-Fe2O3が増加して磁気特性が大きく低下する。
R元素とCoのモル比x/zの値は、0.73≦x/z≦15.62であるが、1≦x/z≦3であるのが好ましく、1.2≦x/z≦2であるのが特に好ましい。これらの値を満たす組成を選択することにより、磁気特性が顕著に向上する。
(R元素含有量)>(Co含有量)>(Ba含有量)であるとき、すなわち、x>z>yであるとき、磁気特性の向上効果が大きい。また(Ca含有量)>(Ba含有量)であるとき、すなわち、1-x-y>yであるとき、高い磁気特性を発揮する。
B2O3の換算値で0.05〜0.2質量%のBを含有することが好ましく、0.08〜0.15質量%を含有することがさらに好ましい。これらの量のBを含有することにより高い4πIsが得られる。0.05質量%未満ではBの含有効果が得られず、0.2質量%を超えると逆に磁気特性が低下する。
SiO2の換算値で0.05〜0.2質量%のSiを含有することが好ましく、0.08〜0.15質量%を含有することがさらに好ましい。これらの量のSiを含有することにより高い4πIsが得られる。0.05質量%未満ではSiの含有効果が得られず、0.2質量%を超えると逆に磁気特性が低下する。
フェライト粒子は、適正なHcJを有するために不可避に含有されるCr及びAl量を極力低く抑えることが好ましい。逆に、要求されるフェライト粒子の平均粒径が上記特定範囲の下限側にシフトした場合のHcJの低下を補完するために、共沈物100質量部に対し、0.1〜3質量%のCr2O3又はAl2O3を添加してHcJを高めることが有効である。しかし、3質量%を超えると4πIsが大きく低下する。
本発明の磁気記録媒体用フェライト粒子は、下記一般式:
Ca1-x-yRxBayFe2n-zCozOα(原子比率)
[(1-x-y)、x、y、z、n及びαはそれぞれCa、R元素、Ba及びCoの含有量、モル比及びOの含有量を表し、
0.3≦1-x-y≦0.65、
0.2≦x≦0.65、
0.001≦y≦0.2、
0.03≦z≦0.65、
4≦n≦7、及び
1-x-y>y
を満たす数値である。ただし、x=zでかつn=6のときの化学量論組成比を示した場合はα=19である。]により表わされる組成を有するのが好ましい。
R元素の含有量xとCo含有量zとの関係がx=zでかつモル比n=6のときに酸素のモル数αは19となる。Fe及びCoの価数、n値、R元素の種類、仮焼又は焼成雰囲気によって酸素のモル数は異なる。還元性雰囲気で焼成した場合の酸素の欠損(ベイカンシー)、M型フェライト中におけるFeの価数の変化、Coの価数の変化等により金属元素に対する酸素の比率は変化する。従って、実際の酸素のモル数αは19からずれる場合がある。
(2) 形状・特性
本発明のフェライト粒子は板状(ほぼ六角板状)であるのが好ましい。磁気記録媒体用に好適なHcJの範囲である400〜2000Oe、好ましくは500〜1500Oe程度に調整するために、平均粒径は、0.001〜0.3μmであるのが好ましく、0.003〜0.2μmであるのがより好ましい。平均粒径は、本発明の任意のフェライト粒子20個を、透過型又は走査型電子顕微鏡(TEM又はSEM)により撮影した写真から、各フェライト粒子のc面の最大径を測定し、得られた測定値を平均して求めることができる。
[2] フェライト粒子の製造方法
本発明のフェライト粒子は、例えば、共沈法、水熱合成法等の液相法、又はガラス析出化法(ガラス結晶化法)により製造することができる。
本発明のフェライト粒子を共沈法により製造する場合の一例を以下に説明する。まず、M型フェライト粒子を生成するのに必要な各金属元素(Ca、La、Ba、Fe及びCo)の水溶性塩を水に溶解したもの(溶液1)及びアルカリ水溶液(溶液2)を準備する。この水溶性塩として、Ca、La、Fe及びCoについては、例えば塩化物又は硝酸塩が挙げられ、Baについては例えば塩化物が挙げられる。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。アルカリ水溶液の濃度は、M型フェライト粒子を構成するために必要な各金属塩に対して、当量〜当量の5倍の範囲が好ましい。アルカリ量が、当量未満では上記特定組成を有するフェライト組成物(共沈物)が得られず、当量の5倍超としても添加効果が飽和し有益でない。
所定量の溶液1及び溶液2を混合することにより共沈物を得る。混合は溶液1に溶液2を添加して行っても良いし、逆に溶液2に溶液1を添加して行っても良い。また溶液1と溶液2を同時に添加して行っても良い。添加の際、反応を促進させるために溶液1及び/又は溶液2を攪拌するのが好ましい。
共沈反応により得られた共沈物(フェライト組成物)100質量部に対し、0.05〜0.2質量部のホウ素化合物又はSiO2を添加することが好ましい。ホウ素化合物又はSiO2の添加量が、0.05質量部未満では添加効果が得られず、0.2質量部超では逆に磁気特性が低下する。ホウ素化合物として、H3BO3、B2O3又はメタホウ酸塩[Ca(BO2)2]等が好ましい。
得られた共沈物は攪拌しながら50〜150℃の温度に保持して反応・熟成させる。0.5〜4時間反応させることにより、均一組成の共沈物が得られる。反応温度を50℃未満とするためには冷却装置が必要となり実用性に劣る。150℃超では粒子の成長速度が速くなりすぎて共沈物の粒径分布が広くなり、好ましくない。反応時間が0.5時間未満の場合は反応が不十分となり、4時間超とするのは実用的でない。
得られた共沈物のスラリーを水洗して、遊離しているアルカリ及びNaCl等の塩を除去する。あらかじめ水洗の前に、希塩酸等で共沈物のスラリーのpHを10程度まで中和するのが好ましい。水洗後の共沈物のスラリーは、例えば、ろ過し凍結乾燥した後、アルコール等で脱水し、ろ過・乾燥することにより乾燥した共沈物が得られる。凍結乾燥を行った方が、後工程の結晶化においてフェライト粒子同士の焼結が抑制され、塗料化した時に分散性の良好なM型フェライト粒子が得られる。
なお、水洗後の共沈物のスラリーをそのまま乾燥し、粉砕して乾燥した共沈物の粉末としてもよい。あるいは、水洗後の共沈物のスラリーに、NaCl等のフラックス剤を少量添加し、乾燥、粉砕して共沈物の粉末を得てもよい。フラックス剤の添加量は乾燥して得られた共沈物の総質量に対し0.5〜5質量部であるのが好ましい。0.5質量部未満では添加効果が得られず、5質量部超ではM型フェライト結晶粒の成長が顕著となり、適正範囲のHcJを得られなくなる。
乾燥した共沈物を焼成することにより、4πIsが顕著に高いM型フェライト粒子が得られる。焼成は大気中(実質的に酸素分圧が0.05〜0.2 atm程度に相当する。)で行うのが実用的であるが、酸素過剰雰囲気中(例えば酸素分圧が0.2 atm超1 atm以下)、特に酸素100%雰囲気中で行ってもよい。焼成温度は600〜950℃とし、680〜900℃とするのが好ましい。焼成時間は0.5〜10時間とし、1〜5時間とするのが好ましい。焼成温度が600℃未満、又は焼成時間が0.5時間未満では結晶化が十分に進まない。950℃超ではフェライト粒子の粗大化及びフェライト粒子相互の焼き付きが顕著になる。焼成時間を10時間超とするのは実用的でない。
焼成後、洗浄及び乾燥することにより、M型結晶粒が板状(ほぼ六角板状)に成長したフェライト粒子が得られる。
[3] 磁気記録媒体
フェライト粒子をバインダと混練して塗料化し、これを樹脂等からなる基体に塗布及び硬化し磁性層を形成することにより、磁気記録媒体を製造することができる。磁性層中のフェライト粒子の含有量は、磁性層全体の50〜85重量%、好ましくは55〜75重量%である。また磁性層には必要に応じ、研磨材、カーボンブラック等の非磁性粒子、潤滑剤等の各種添加剤を含有させても良い。磁気記録媒体としては、ハードディスク、フレキシブルディスク、磁気テープ、磁気カード等が挙げられる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
CaCl2,LaCl3・7H2O,BaCl2・2H2O,FeCl3・6H2O,CoCl2・6H2Oを、Ca:La:Ba:Fe:Co=0.475:0.5:0.025:10.1:0.3(原子比率)の比率でFeCl3の濃度が1.5 mol/Lになるように(金属塩の濃度は全部で4.96当量/Lである。)水に溶解した(溶液1)。別にNaOHとNa2CO3をNaOH:Na2CO3=25:6(質量比)でNaOHの濃度が17.4 mol/L(当量/L)になるように水に溶解した(溶液2)。このときNaOH/塩は当量比で3.5である。室温(20℃)で溶液2を撹拌しながら溶液1を混合していき共沈反応を行った。得られた共沈物を含んだ溶液を100℃で2時間煮沸した後、充分に水洗し,その後乾燥を行った。得られた乾燥後の共沈物を大気中、800℃の温度で2時間加熱して焼成した。得られた焼成物を充分に洗浄後、乾燥して本発明の磁気記録媒体用フェライト粒子の粉末を得た。
得られたフェライト粉末の組成はCa1-x-yLaxBayFe2n-zCozO19(x=0.5、y=0.025、z=0.30、n=5.2)であった。得られたフェライト粉末をX線回折した結果、M型フェライト構造を有することがわかった。得られたフェライト粉末をTEM及びSEMにより観察したところ、ほぼ六角板状に成長したM型フェライト結晶粒が観察された。任意に選択した前記フェライト粒子のTEM及びSEM写真から求めた平均粒径は0.09μmであった。
得られたフェライト粉末の磁気特性は、室温(20℃)において4πIs=4960 G、HA=26.4 kOeという、塗布型垂直磁気記録媒体用の従来のM型フェライト粒子では実現できなかった、非常に高い値であった。
比較例1
実施例1と同じCaCl2,LaCl3・7H2O,FeCl3・6H2O,CoCl2・6H2OをCa:La:Ba:Fe:Co=0.5:0.5:0:10.1:0.3(原子比率)の比率でFeCl3の濃度が1.5 mol/Lになるように水に溶解した(溶液3)。溶液3はBaCl2・2H2Oを含まない点で溶液1と異なる。
溶液1に替えて溶液3を用いた以外は、実施例1と同様にしてフェライト粒子を作製した。得られたフェライト粉末の組成はCa1-x-yLaxBayFe2n-zCozO19(x=0.525、y=0、z=0.30、n=5.2)であった。
得られたフェライト粉末は、X線回折により、M型フェライト構造を有していることが分かった。このフェライト粉末をTEM及びSEMで観察したところ、不定形状であり、フェライト粒子の境界を特定できないために平均粒径を決定することができなかった。不定形状になる要因は、BaCl2・2H2Oを添加しなかったことであると考えられる。得られたフェライト粉末の室温(20℃)における4πIs=4830G、HA=20.6kOeであり、実施例1よりも低い値であった。
実施例2〜5
共沈反応後の共沈物(フェライト組成物)の組成が、Ca 1-x-y La x Ba y Fe 2n-z Co z O 19 {x=0.5、y=0.001〜0.2(表1に示す)、z=0.30、n=5.2}になるようにBaCl2・2H2Oの使用量を変えて調整した溶液を、溶液1の代わりに使用した以外は実施例1と同様にして本発明のフェライト粒子(実施例2〜5)を作製した。
得られたフェライト粉末は、X線回折により、いずれもM型フェライト構造を有していることが分かった。得られたフェライト粉末の平均粒径及び室温(20℃)における4πIs、HA及び平均粒径を測定した結果を表1に示す。表1より、実施例2〜5のいずれも、比較例1に比べて4πIsが高く、塗布型垂直磁気記録媒体用のM型フェライト粒子として好適であることがわかる。
Figure 0005309466

Claims (3)

  1. M型フェライト構造を有し、Ca、希土類元素の少なくとも1種であってLaを必須に含むR元素、Ba、Fe及びCoを必須元素とし、下記一般式:
    Ca1-x-yRxBayFe2n-zCoz(原子比率)
    [(1-x-y)、x、y、z及びnはそれぞれCa、R元素、Ba及びCoの含有量、及びモル比を表し、
    0.3≦1-x-y≦0.65、
    0.2≦x≦0.65、
    0.001≦y≦0.2、
    0.03≦z≦0.65、
    4≦n≦7、及び
    1-x-y>y
    を満たす数値である。ただし、x-y座標において、(0.47,0.2)、(0.5,0.2)、(0.64,0.06)、(0.64,0.01)、(0.53,0.02)及び(0.47,0.08)で囲まれた範囲に含まれるx及びyの組み合わせは除く。]により表わされる組成を有することを特徴とする塗布型磁気記録媒体用フェライト粒子。
  2. 請求項1に記載の塗布型磁気記録媒体用フェライト粒子において、前記フェライト粒子は板状であり、平均粒径が0.001〜0.3μmであることを特徴とする塗布型磁気記録媒体用フェライト粒子。
  3. 請求項1又は2に記載の塗布型磁気記録媒体用フェライト粒子において、下記一般式:
    Ca1-x-yRxBayFe2n-zCozOα(原子比率)
    [(1-x-y)、x、y、z、n及びαはそれぞれCa、R元素、Ba及びCoの含有量、モル比及びOの含有量を表し、
    0.3≦1-x-y≦0.65、
    0.2≦x≦0.65、
    0.001≦y≦0.2、
    0.03≦z≦0.65、
    4≦n≦7、及び
    1-x-y>y
    を満たす数値である。ただし、x-y座標において、(0.47,0.2)、(0.5,0.2)、(0.64,0.06)、(0.64,0.01)、(0.53,0.02)及び(0.47,0.08)で囲まれた範囲に含まれるx及びyの組み合わせは除き、x=zでかつn=6のときの化学量論組成比を示した場合はα=19である。]により表わされる組成を有することを特徴とする塗布型磁気記録媒体用フェライト粒子。
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