本発明は、非磁性下地層用塗料における分散性に優れると共に、非磁性下地層中における充填性が改善された磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末及び、該非磁性下地層用非磁性粒子粉末を用いて得られる表面平滑性に優れた磁気記録媒体に関する。
磁気記録技術は、オーディオ用、ビデオ用、コンピューター用等をはじめとしてさまざまな分野で幅広く用いられている。近年、機器の小型軽量化、記録の長時間化及び記録容量の増大等が求められており、記録媒体に対しては、記録密度のより一層の向上が望まれている。
従来の磁気記録媒体に対してより高密度記録を行うためには、高いC/N比が必要であり、ノイズ(N)が低く、再生出力(C)が高いことが求められている。近年では、これまで用いられていた誘導型磁気ヘッドに代わり、磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)や巨大磁気抵抗型ヘッド(GMRヘッド)等の高感度ヘッドが開発されており、これらは誘導型磁気ヘッドに比べて再生出力が得られやすいことから、高いC/N比を得るためには、出力を上げるよりもノイズを低減する方が重要となってきている。
磁気記録媒体のノイズは、粒子性ノイズと磁気記録媒体の表面性に起因して発生する表面性ノイズに大別される。粒子性ノイズの場合、粒子サイズの影響が大きく、微粒子であるほどノイズ低減に有利であることから、磁気記録媒体に用いる磁性粒子粉末の粒子サイズはできるだけ小さいことが必要となる。
しかしながら、磁性粒子粉末の微粒子化は、磁気記録層の薄層化を伴うものであり、磁気記録層が薄層化することによって、磁気記録層の表面平滑化が困難になること及び塗膜強度の低下が問題となるため、上記磁気記録層の薄層化に対しては、ベースフィルム等の非磁性支持体上にヘマタイト粒子粉末等の非磁性粒子粉末を結合剤樹脂中に分散させてなる下地層(以下、「非磁性下地層」という。)を少なくとも一層設けることにより、磁気記録媒体の表面平滑性及び強度向上を図っている。
一方、表面性ノイズの場合、磁気記録媒体の表面平滑性を改良することが重要であるが、磁気記録層が薄層化することによって、非磁性下地層の表面平滑性がそのまま上層の磁気記録層の表面平滑性に影響を及ぼすこととなる。
従って、非磁性下地層には、平滑な表面と高い塗膜強度が要求されており、このような非磁性下地層を形成するために、非磁性下地層中に配合される非磁性粒子粉末に対しては、非磁性下地層用塗料における優れた分散性と共に、非磁性下地層中における充填性の向上が求められている。
粒子粉末を高充填するためには、粒子粉末の微粒子化と、微粒子化された粒子粉末をいかに高充填するかがポイントであり、一般に、粉体のタップ密度(ρt)が高いと粒子粉末中に含まれる空気が少なくなってかさが小さくなるため、強力なせん断力を混練物にかけることができることが知られている。
分散性に優れた含水酸化鉄微粒子粉末及び酸化鉄微粒子粉末を得ることを目的として、軸比が1.0±0.2の含水酸化鉄微粒子粉末及び酸化鉄微粒子粉末の製造法(特許文献1)が開示されている。
粒度分布が狭く、分散性に優れた分散性に優れたヘマタイト微粒子粉末を得ることを目的として、特定の化合物のイオンの存在下、含水酸化鉄の水懸濁液を、pH3〜11で60〜100℃に加熱するヘマタイト微粒子粉末の製造法(特許文献2)が開示されている。
非磁性下地層の傷つき性と表面性を改善することを目的として、非磁性下地層に含まれる非磁性粒子粉末の平均粒子径が0.05〜0.5μm、且つ、軸比が2.5以下である非磁性粒子粉末(特許文献3)が開示されている。
特開平7−257929号公報
特開平5−208829号公報
特開2000−293835号公報
前出特許文献1では、軸比が1.0±0.2の含水酸化鉄微粒子粉末及び酸化鉄微粒子粉末の製造法が記載されているが、後出比較例に示す通り、特許文献1の製造法で得られた含水酸化鉄粒子粉末及びヘマタイト粒子粉末は、タップ密度(ρt)が0.6g/cm3であり、非磁性下地層中における充填性の向上を図ることが困難である。
前出特許文献2では、特定の化合物のイオンの存在下、含水酸化鉄の水懸濁液を、pH3〜11で60〜100℃に加熱するヘマタイト微粒子粉末の製造法が記載されているが、含水酸化鉄の加熱脱水温度が低く、また、その後の加熱焼成もなされていないため、ヘマタイト粒子の粒子内部及び粒子表面に脱水孔が多数存在する。そのため、粒子サイズに対してBET比表面積値が大きくなると共に、タップ密度(ρt)が低いため、非磁性塗料中における分散が難しく、非磁性下地層を形成した時、表面平滑な塗膜が得られにくく、また、非磁性下地層中における充填性の向上を図ることが困難である。
前出特許文献3では、非磁性下地層の傷つき性と表面性を改善するために、非磁性下地層に含まれる非磁性粒子粉末の平均粒子径が0.05〜0.5μm、且つ、軸比が2.5以下である非磁性粒子粉末を用いることが記載されているが、実施例で用いられている非磁性粒子粉末の軸比は2.4であり、また、平均粒子径も160nmと大きいものである。後出比較例に示す通り、軸比が2.0以上の場合には、非磁性塗料中における分散性が劣るため、非磁性下地層中における充填性の向上を図ることが困難である。
本発明は、表面平滑性が良好な磁気記録媒体を得ることのできる、非磁性下地層用塗料における分散性及び非磁性下地層中における充填性に優れた非磁性下地層用非磁性粒子粉末を提供することを技術的課題とする。
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
即ち、本発明は、ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末からなる非磁性粒子粉末において、平均長軸径が80nm以下であり、軸比(長軸径と短軸径の比)が2.0未満であると共に、タップ密度(ρt)が0.60g/cm3以上であり、BET比表面積値は10〜210m2/gであり、圧縮性指数が28%以上であることを特徴とする磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末である(本発明1)。
また、本発明は、非磁性支持体、該非磁性支持体上に形成される非磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む非磁性下地層及び該非磁性下地層の上に形成される磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む磁気記録層からなる磁気記録媒体において、前記非磁性粒子粉末が本発明1に記載された磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末であることを特徴とする磁気記録媒体である(本発明2)。
本発明に係る磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末は、非磁性下地層用塗料における分散性及び非磁性下地層中における充填性に優れているため、高密度磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末として好適である。
また、本発明に係る磁気記録媒体は、上述の非磁性粒子粉末を磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末として用いることにより、高い表面平滑性を有する磁気記録媒体を得ることができるため、高密度磁気記録媒体として好適である。
本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
先ず、本発明に係る非磁性下地層用非磁性粒子粉末について述べる。
本発明に係る非磁性下地層用非磁性粒子粉末はヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末である。また、前記ヘマタイト粒子又は含水酸化鉄粒子は粒子内部にSi元素を含有すると共に、Al、Zr、Ti、P、Sn、Sb、Y、Nb又はMn等の異種元素を含有させてもよい。
本発明に係る非磁性下地層用非磁性粒子粉末の軸比(長軸径と短軸径の比)(以下、「軸比」という。)は2.0未満であり、好ましくは1.0〜1.9である。
本発明に係る非磁性下地層用非磁性粒子粉末の平均長軸径は80nm以下が好ましく、より好ましくは1〜70nm、更により好ましくは1〜60nmである。非磁性粒子粉末の平均長軸径が80nmを超える場合には、粒子サイズが大きすぎるため、これを用いて非磁性下地層を形成した場合、非磁性粒子粉末を塗膜中に高充填することが難しく、結果、優れた表面平滑性と強度を有する磁気記録媒体を得ることが困難となる。平均長軸径が1nm未満の場合には、粒子の微細化による分子間力の増大により凝集を起こしやすいため、非磁性塗料中での分散が困難となる。
本発明に係る非磁性下地層用非磁性粒子粉末のBET比表面積値は10〜210m2/gが好ましく、より好ましくは15〜200m2/g、更により好ましくは20〜190m2/gである。BET比表面積値が10m2/g未満の場合には、粒子サイズが大きすぎるため、これを用いて非磁性下地層を形成した場合、非磁性粒子粉末を塗膜中に高充填することが難しく、結果、優れた表面平滑性を有する磁気記録媒体を得ることが困難となる。BET比表面積値が210m2/gを超える場合には、粒子の微細化による分子間力の増大により凝集を起こしやすいため、非磁性塗料中での分散が困難となる。
本発明に係る非磁性下地層用非磁性粒子粉末のタップ密度(ρt)は0.60g/cm3以上であり、好ましくは0.70〜1.80g/cm3、より好ましくは0.80〜1.50g/cm3である。タップ密度(ρt)が0.60g/cm3未満の場合には、粒子粉末中に含まれる空気が多いため、非磁性塗料作製時の非磁性粒子粉末を混練・分散する際に、強力なせん断力を混練物にかけることが難しく、塗膜中に非磁性粒子粉末高充填することができないため、結果、優れた表面平滑性を有する磁気記録媒体を得ることが困難となる。
本発明に係る非磁性下地層用非磁性粒子粉末の圧縮性指数は28%以上であることが好ましく、より好ましくは30%以上、更により好ましくは32%以上である。圧縮性指数が28%以上の場合には、塗膜中に充填された非磁性粒子粉末がカレンダーをかけることにより圧縮されやすく、結果、表面平滑性に優れた磁気記録媒体を得ることができる。
本発明に係る非磁性下地層用非磁性粒子粉末は、アルミニウム、シリカ、チタン、亜鉛、リン、ホウ素、スカンジウム、イットリウム及び希土類元素(ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、サマリウム)から選ばれる元素からなる一種又は二種以上の化合物により焼結防止処理又は表面処理されていてもよい。粒子表面が前述の化合物により被覆されている非磁性粒子粉末は、非磁性塗料中に分散させた場合に、結合剤樹脂とのなじみがよく、所望の分散度がより得られ易い。
次に、本発明に係る磁気記録媒体について述べる。
本発明に係る磁気記録媒体は、非磁性支持体、該非磁性支持体上に形成された非磁性下地層及び該非磁性下地層上に形成された磁気記録層とからなる。また、必要に応じて、非磁性支持体の一方の面に形成される磁気記録層に対し、非磁性支持体の他方の面にバックコート層を形成させてもよい。殊に、コンピューター記録用のバックアップテープの場合には、巻き乱れの防止や走行耐久性向上の点から、バックコート層を設けることが好ましい。
本発明における非磁性支持体としては、現在、磁気記録媒体に汎用されているポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドイミド、ポリスルフォン、セルローストリアセテート、ポリベンゾオキサゾール等の合成樹脂フィルム、アルミニウム、ステンレス等金属の箔や板及び各種の紙を使用することができる。得られる磁気記録媒体の強度を考慮すれば、ポリエステル類、ポリアミド又は芳香族ポリアミドが好ましい。
次に、本発明における非磁性下地層について述べる。
本発明における非磁性下地層は、本発明に係る非磁性下地層用非磁性粒子粉末、及び結合剤樹脂とからなる。また、必要に応じて、磁気記録媒体の製造に通常用いられている潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
結合剤樹脂としては、磁気記録媒体の製造にあたって汎用されている熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化型樹脂等を単独又は組み合わせて用いることができる。
帯電防止剤としては、カーボンブラック、グラファイト、酸化スズ、酸化チタン−酸化スズ−酸化アンチモン等の導電性粉末及び界面活性剤等を用いることができる。帯電防止の他に、摩擦係数低減、磁気記録媒体の強度向上といった効果が期待できることから、帯電防止剤としては、カーボンブラックを用いることが好ましい。
本発明における非磁性下地層用非磁性粒子粉末を用いて得られた非磁性下地層は、塗膜の光沢度が170〜280%、好ましくは175〜280%、より好ましくは180〜280%であって、塗膜の表面粗度Raが10.0nm以下、好ましくは9.5nm以下、より好ましくは9.0nm以下である。
次に、本発明における磁気記録層について述べる。
本発明における磁気記録層は、磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含んでいる。また、必要に応じて、磁気記録媒体の製造に通常用いられている潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
磁性粒子粉末としては、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末、鉄以外のCo、Al、Ni、P、Zn、Si、B、希土類金属等を含有する鉄合金磁性粒子粉末、Ba、Sr及びCaから選ばれる1種又は2種以上の元素を含有するマグネトプランバイト型(M型)フェライト微粒子粉末又はW型フェライト微粒子粉末、あるいはそれらの原子の一部が他の元素(Co、Ni、Zn、Mn、Mg、Ti、Sn、Zr、Cu、Mo、La、Ce、V、Si、S、Sc、Sb、Y、Rh、Pd、Nd、Nb、B、P、Ge、Al、Ag、Au、Ru、Pr、Bi、W、Re、Te等)で置換された六方晶フェライト粒子粉末並びに窒化鉄等のいずれをも用いることができる。
磁性粒子粉末は、平均長軸径もしくは平均粒子径が0.005〜0.15μmであることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.10μmである。
磁性粒子粉末の磁気特性は、保磁力(Hc)が95.5〜397.9kA/mが好ましく、より好ましくは119.4〜318.3kA/mであり、飽和磁化値が40〜200Am2/kgが好ましく、より好ましくは45〜180Am2/kgである。
結合剤樹脂としては、前記非磁性下地層を作製するために用いた結合剤樹脂を使用することができる。
本発明におけるバックコート層中には、結合剤樹脂と共に、バックコート層の表面電気抵抗値低減及び強度向上を目的として、帯電防止剤及び無機粒子粉末を含有させることが好ましい。また、必要に応じて、通常の磁気記録媒体の製造に用いられる潤滑剤、研磨剤等が含まれていてもよい。
結合剤樹脂及び帯電防止剤としては、前記非磁性下地層、及び磁気記録層を作製するために用いた結合剤樹脂及び帯電防止剤を使用することができる。
無機粉末としては、アルミナ、ヘマタイト、ゲータイト、酸化チタン、シリカ、酸化クロム、酸化セリウム、酸化亜鉛、チッ化珪素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭酸カルシウム及び硫酸バリウム等から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
本発明に係る磁気記録媒体は、保磁力(Hc)は95.5〜397.9kA/mが好ましく、より好ましくは119.4〜318.3kA/m、塗膜の光沢度は185〜300%が好ましく、より好ましくは190〜300%、更により好ましくは195〜300%、塗膜の表面粗度Raは8.0nm以下が好ましく、より好ましくは7.5nm以下、更により好ましくは7.0nm以下である。
次に、本発明に係る非磁性下地層用非磁性粒子粉末の製造法について述べる。
本発明に係る非磁性下地層用非磁性粒子粉末のうち、含水酸化鉄粒子粉末は、第一鉄塩水溶液とアルカリ水溶液との混合溶液に水溶性酸化防止剤と水可溶性ケイ酸塩を添加した後、40〜50℃の温度範囲にて非酸化性雰囲気下で30〜360分間維持攪拌することでエイジングを行い鉄含有沈澱物を含む懸濁液とし、次いで、当該懸濁液を40〜60℃の温度範囲にて酸化反応を行うことにより生成した含水酸化鉄粒子を、濾別、水洗、乾燥することにより得ることができる。
アルカリ水溶液としては、炭酸アルカリ水溶液又は水酸化アルカリと炭酸アルカリの混合アルカリ水溶液を用いることができる。炭酸アルカリ1molに対する水酸化アルカリの添加量は、0〜0.3molが好ましい。炭酸アルカリに対する水酸化アルカリの添加量が少ないほど得られる含水酸化鉄粒子は微粒子化する傾向がある。また、0.3molを超える場合には、マグネタイトが生成・混在しやすくなるため好ましくない。
本発明における水溶性酸化防止剤としては、アスコルビン酸、エリソルビン酸又はそれらの塩を用いることができる。水溶性酸化防止剤の添加時期としては、エイジングの前であればいつでもよい。エイジングの前に水溶性酸化防止剤を添加しておくことで、エイジング中の含水酸化鉄粒子生成を抑制することができるため、微粒子且つ粒度分布に優れた含水酸化鉄を得ることができる。
本発明における水可溶性ケイ酸塩としては、3号水ガラス、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、コロイダルシリカ等を用いることができる。水可溶性ケイ酸塩の添加量は、Fe2+に対してSi換算で0.1〜5.0原子%である。水可溶性ケイ酸塩の添加時期としてはエイジングの前が好ましい。エイジング前に添加することで、Si化合物が懸濁液中に均一に分散して存在するため、その後の酸化反応による含水酸化鉄の粒子成長がより均一に生起することとなり、得られる粒子粉末の粒度が均一になると共に、粒子サイズに対してBET比表面積値を小さくでき、また、タップ密度(ρt)の高い粒子粉末を得やすくなる。
前記エイジングは、非酸化性雰囲気下、40〜50℃の温度範囲で行うことが好ましい。50℃を超える場合には、マグネタイトが混在しやすくなるため好ましくない。また、攪拌の保持時間は30〜360分であり、好ましくは60〜240分である。
前記酸化反応は常法に従って行えばよく、例えば、前記懸濁液中に酸素含有ガスを通気する、あるいは、前記懸濁液に酸化剤を添加する、等の方法により行うことができる。酸化反応の温度範囲は40〜60℃で行うことが好ましく、60℃を超える場合には、マグネタイトが混在しやすくなるため好ましくない。また、酸化剤としては、過硫酸アンモニウム、過酸化水素水等を用いることができる。
なお、前記酸化反応前に、粒子形状のコントロール及び諸特性向上を目的として、Al、Zr、Ti、P、Sn、Sb、Y、Nb又はMn等の異種元素が添加されてもよい。殊に、20nm未満の超微粒子を得るためには、Al化合物を添加することが好ましい。Al化合物としては、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム等を用いることができる。
本発明に係る非磁性下地層用非磁性粒子粉末としての含水酸化鉄粒子粉末は、軸比が2.0未満であり、平均長軸径が80nm以下である。また、ヘマタイト粒子粉末の出発原料としての含水酸化鉄粒子粉末としては、軸比が2.8以下、好ましくは2.4以下であり、平均長軸径が120nm以下、好ましくは105nm以下、より好ましくは90nm以下のものを用いることができる。
本発明に係る非磁性下地層用非磁性粒子粉末のうち、ヘマタイト粒子粉末は、前記含水酸化鉄粒子粉末を200〜400℃の温度範囲で加熱脱水して低密度ヘマタイト粒子粉末とした後、更に400〜800℃の温度範囲で加熱焼成することにより得ることができる。
本発明においては、加熱脱水処理を行う前に、あらかじめ含水酸化鉄粒子粉末の粒子表面を焼結防止剤で被覆しておくことが好ましい。焼結防止剤による被覆処理は、出発原料である含水酸化鉄粒子粉末を含む懸濁液中に焼結防止剤を添加し、均一になるように混合攪拌した後、含水酸化鉄粒子表面に焼結防止剤が被覆できるよう、適切なpH調整を行って表面を被覆する。
前記焼結防止剤としては、通常使用されるヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリリン酸、オルトリン酸等のリン化合物、3号水ガラス、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、コロイダルシリカ等のケイ素化合物、ホウ酸等のホウ素化合物、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等のアルミニウム塩や、アルミン酸ソーダ等のアルミン酸アルカリ塩、アルミナゾル、水酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物、オキシ硫酸チタン等のチタン化合物、スカンジウム、イットリウム、希土類元素(ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、サマリウム)から選ばれるを含む硫酸塩、塩化物、硝酸塩等の一種又は二種以上を使用することができる。
含水酸化鉄粒子粉末の加熱脱水温度は200〜400℃であり、好ましくは250〜400℃である。加熱脱水温度が200℃未満の場合には、脱水反応に長時間を要するために好ましくない。また、低温加熱脱水温度が400℃を超える場合には、脱水反応が急激に生起し、粒子の形状が崩れやすくなったり、粒子相互間の焼結を引き起こしたりする可能性がある。
加熱脱水後の低密度ヘマタイト粒子粉末の加熱焼成温度は400〜800℃であり、好ましくは400〜700℃である。加熱処理温度が400℃未満の場合には、高密度化が不十分であるためヘマタイト粒子の粒子内部及び粒子表面に脱水孔が多数存在しており、非磁性塗料中における分散が難しく、非磁性下地層を形成した時、表面平滑な塗膜が得られにくい。800℃を超える場合には、ヘマタイト粒子の高密度化は十分なされているが、粒子及び粒子相互間の焼結が生じるため、粒子径が増大し、同様に表面平滑な塗膜は得られにくい。
本発明に係る非磁性下地層用非磁性粒子粉末は、アルミニウム、シリカ、チタン、亜鉛、リン、スカンジウム、イットリウム及び希土類元素(ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、サマリウム)から選ばれる元素からなる一種又は二種以上の化合物により表面処理されていてもよい。
上記表面処理は、非磁性粒子粉末を分散して得られる水懸濁液に、アルミニウム、シリカ、チタン、亜鉛、リン、スカンジウム、イットリウム及び希土類元素(ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、サマリウム)から選ばれる元素からなる一種又は二種以上の化合物を添加して混合攪拌することにより、又は、必要により、混合攪拌後にpH値を調整することにより、前記非磁性粒子粉末の粒子表面を被覆し、次いで、濾別、水洗、乾燥、粉砕する。必要により、更に、脱気・圧密処理等を施してもよい。
次に、本発明における磁気記録媒体の製造法について述べる。
前記非磁性下地層、磁気記録層、及びバックコート層の形成にあたって用いる溶剤としては、磁気記録媒体に汎用されているアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びテトラヒドロフラン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール及びイソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル及び酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル及びジオキサン等のグリコールエーテル類及びその混合物等を使用することができる。
非磁性下地層、磁気記録層、バックコート層は、各層を構成する成分及び溶剤を一般に使用される混練機及び分散機により混練・分散処理を行い、各塗料を作製する。該各塗料を用いて、非磁性支持体上の一面に非磁性下地層、磁気記録層の順に塗布、乾燥後、カレンダー処理を行う。その際の塗布方法としては、磁性層と非磁性層をほぼ同時に塗布するWet on Wet法でも、非磁性下地層を塗布・乾燥後、その上に磁気記録層を塗布するWet on Dry法のどちらでもよい。また、必要により、バックコート層を設ける場合には、非磁性下地層及び磁気記録層とは反対面の非磁性支持体上にバックコート層用塗料を塗布、乾燥後、カレンダー処理を行い、磁気記録媒体を得る。
<作用>
本発明において最も重要な点は、ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末からなる非磁性粒子粉末において、軸比(長軸径と短軸径の比)が2.0未満であるとともに、タップ密度(ρt)が0.60g/cm3以上である非磁性下地層用非磁性粒子粉末は、非磁性塗料中における分散性に優れると共に、塗膜中に非磁性粒子粉末を高充填することができるという事実である。
本発明に係る非磁性下地層用非磁性粒子粉末が、非磁性塗料中における分散性に優れると共に、塗膜中に非磁性粒子粉末を高充填することができる理由として、本発明者は下記のように推定している。
即ち、従来の粒状(軸比<2.0)の非磁性粒子粉末は、一般に分散性は良好であるものの最密充填度が低いため、これを用いて得られた磁気記録媒体では、良好な表面平滑性を得ることが困難であったが、本発明の非磁性粒子粉末は、粒子サイズ(平均長軸径)に対してBET比表面積値が小さく、且つ、タップ密度(ρt)が0.60g/cm3以上である非磁性粒子粉末を得ることが可能であるため、より分散性に優れると共に、粒子粉末中に含まれる空気を少なくできるため、非磁性塗料作製時の非磁性粒子粉末を混練・分散する際に、強力なせん断力を混練物にかけることが容易となり、塗膜中に非磁性粒子粉末を高充填することができる。
以下に、本発明における実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
粒子の平均長軸径、平均短軸径、平均粒子径、及び平均厚みは、以下の手順で測定を行った。まず、透過型電子顕微鏡を用いて粒子を観察し、個々の粒子が重ならず、ばらばらに分散している視野において、粒子約400個が存在するように倍率を調整し、写真を撮影した。次に得られた写真を縦横4倍に拡大した後に、粒子約350個について長軸径、短軸径、粒子径、又は厚みを、DIGITIZER(型式:KD 4620、グラフテック株式会社製)を用いてそれぞれ測定し、その平均値で粒子の平均長軸径、平均短軸径、平均粒子径、及び平均厚みを示した。写真上において、粒子の輪郭がはっきりしないものや、粒子同士が重なって個々の粒子を判別しにくいものは粒子径の測定から除外した。
軸比は長軸径と短軸径との比の平均値で示し、板状比は粒子径と厚みの比の平均値で示した。
比表面積値は、「モノソーブMS−11」(カンタクロム株式会社製)を用いて、BET法により測定した値で示した。
非磁性粒子粉末の粒子内部や粒子表面に存在するSiO2量及び各種焼結防止剤、表面処理剤に含有される元素量のそれぞれは、「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業株式会社製)を使用し、JIS K0119の「けい光X線分析通則」に従って測定した。また、六方晶フェライト粒子粉末のTi量、Ni量及びFe量は、上記と同様にして測定した。
ヘマタイト粒子粉末のかさ密度(ρa)はJIS K5101に従い、カサ比重測定器((株)蔵持科学機械製作所)を用いて測定を行った。また、タップ密度(ρt)は、振盪比重測定器((株)蔵持科学機械製作所)を用い、25mlのタッピングセルに粉末を落下させ、セルが満杯に充填された後、ストローク長25mmでタッピングを600回行って測定した。
ヘマタイト粒子粉末の圧縮性指数(%)は、下記数1に従って算出した値である。
<数1>
圧縮性指数(%)=((タップ密度−かさ密度)/タップ密度)×100
磁性粒子粉末及び磁気記録媒体の磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM−3S−15」(東英工業株式会社製)を用いて外部磁場795.8kA/mの条件で測定した。
塗膜表面の光沢度は、「グロスメーター UGV−5D」(スガ試験機株式会社製)を用いて入射角45°で測定した値であり、標準板光沢を86.3%とした時の値を%で示したものである。
表面粗度Raは、「ZYGO NewView600S」(ZYGO株式会社製)を用いて塗膜の中心線平均粗さを測定した。
磁気記録媒体を構成する非磁性支持体、非磁性下地層、磁気記録層及びバックコート層の各層の厚みは、デジタル電子マイクロメーターK351C(安立電気株式会社製)を用いて測定した。
<実施例1−1:含水酸化鉄粒子粉末の製造>
水酸化ナトリウムと炭酸ナトリウムの混合アルカリ水溶液(炭酸ナトリウム1molに対する水酸化ナトリウムの添加量:0.20mol)にアスコルビン酸1.2atm%、硫酸第一鉄水溶液(Fe2+に対するアルカリの総和量(2OH/Fe2+)が1.5となる量)(反応濃度:0.4mol/L)及び3号水ガラス3.5atm%(Fe2+に対しSi換算で1.5atm%に相当)を添加した後、温度43℃、非酸化性雰囲気下で120分間攪拌することでエイジングを行い、鉄含有沈澱物を含む懸濁液を得た。次いで、当該懸濁液にAirを通気しながら酸化反応を行い、生成した粒子を、常法により濾別、水洗、乾燥することにより実施例1−1の含水酸化鉄粒子を得た。
得られた実施例1−1の含水酸化鉄粒子粉末は、粒子形状が粒状であり、平均長軸径が24nm、平均短軸径が13nm、軸比が1.8、BET比表面積値が197.4m2/g、タップ密度(ρt)が0.91g/cm3、圧縮性指数が48.4%であった。
<実施例1−3:ヘマタイト粒子粉末の製造>
実施例1−1で得られた含水酸化鉄粒子粉末を水に再分散させたスラリー(固形分濃度を31g/L)550Lを加熱して温度を60℃とし、0.1mol/LのNaOH水溶液を加えて該スラリーのpH値を10.0に調整した。
次に、上記スラリー中に、焼結防止剤として3号水ガラス 827gを溶解した水溶液を徐々に加え、添加が終わった後、60分間熟成を行った。次に、このスラリーに0.1mol/Lの酢酸溶液を加え、スラリーのpH値を6.5に調整した。その後、常法により、水洗、濾過、乾燥を行い、焼結防止処理された含水酸化鉄粒子粉末を得た。
次いで、得られた焼結防止処理された含水酸化鉄粒子粉末を、セラミック製の回転炉に入れ、回転駆動させながら空気中280℃で60分間加熱脱水処理を行い、含水酸化鉄粒子粉末を脱水して、低密度ヘマタイト粒子粉末を得た。
次に、上記低密度ヘマタイト粒子粉末13kgをセラミック製の回転炉に再度投入し、回転駆動させながら空気中580℃で30分間熱処理を行い、脱水孔の封孔処理をすることにより、実施例1−3のヘマタイト粒子粉末を得た。
得られた実施例1−3のヘマタイト粒子粉末は、粒子形状が粒状であり、平均長軸径が28nm、平均短軸径が15nm、軸比が1.9、BET比表面積値が66.7m2/g、タップ密度(ρt)が1.12g/cm3、圧縮性指数が39.3%であった。
<非磁性下地層1:非磁性下地層の製造>
前記実施例1−3の非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末12gと結合剤樹脂溶液(スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂30重量%とシクロヘキサノン70重量%)及びシクロヘキサノンとを混合し、自動乳鉢を用いて30分間混練して混練物を得た。
この混練物を1.5mmφガラスビーズ95g、追加の結合剤樹脂溶液(スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂30重量%、溶剤(メチルエチルケトン:トルエン=1:1)70重量%)、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン及びトルエンと共に140mlガラス瓶に添加し、ペイントシェーカーで6時間混合・分散を行って塗料組成物を得た。その後、潤滑剤及び硬化剤を加え、更に、ペイントシェーカーで15分間混合・分散した後、3μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過し、非磁性下地層用非磁性塗料を調整した。
得られた非磁性下地層用非磁性塗料の組成は、下記の通りであった。
非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末 100.0重量部、
スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂 11.8重量部、
スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂 11.8重量部、
シクロヘキサノン 78.3重量部、
メチルエチルケトン 195.8重量部、
トルエン 117.5重量部、
硬化剤(ポリイソシアネート) 3.0重量部、
潤滑剤(ブチルステアレート) 1.0重量部。
上記非磁性下地層用非磁性塗料を厚さ4.5μmの芳香族ポリアミドフィルム上に塗布し、次いで、乾燥させることにより非磁性下地層を形成した。非磁性下地層の特性を評価するために、得られた塗布片の半分に対してカレンダー処理を行った後、60℃で24時間硬化反応を行った。
得られた非磁性下地層1は、膜厚が1.4μm、塗膜の光沢度が200%、表面粗度Raが6.2nmであった。
<実施例2−1:磁気記録媒体の製造>
磁性粒子(1)(種類:鉄を主成分とする金属磁性粒子、粒子形状:針状、平均一次長軸径:62.2nm、平均一次短軸径:13.5nm、軸比:4.6、BET比表面積値:63.4m2/g、保磁力:197.6kA/m、飽和磁化値:125.6Am2/kg)12g、研磨剤(商品名:AKP−50、住友化学株式会社製)1.2g、カーボンブラック 0.12g、結合剤樹脂溶液(スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂30重量%とシクロヘキサノン70重量%)及びシクロヘキサノンとを混合し、自動乳鉢を用いて30分間混練して混練物を得た。
この混練物を1.5mmφガラスビーズ95g、追加結合剤樹脂溶液(スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂30重量%、溶剤(メチルエチルケトン:トルエン=1:1)70重量%)、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン及びトルエンと共に140mlガラス瓶に添加し、ペイントシェーカーで6時間混合・分散を行って磁性塗料を得た。その後、潤滑剤及び硬化剤を加え、更に、ペイントシェーカーで15分間混合・分散した後、3μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過し、磁気記録層用磁性塗料を調整した。
得られた磁気記録層用磁性塗料の組成は下記の通りであった。
鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末 100.0重量部、
スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂 10.0重量部、
スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂 10.0重量部、
研磨剤(AKP−50) 10.0重量部、
カーボンブラック 1.0重量部、
潤滑剤(ミリスチン酸:ステアリン酸ブチル=1:2) 3.0重量部、
硬化剤(ポリイソシアネート) 5.0重量部、
シクロヘキサノン 65.8重量部、
メチルエチルケトン 164.5重量部、
トルエン 98.7重量部。
磁気記録層用塗料を前記非磁性下地層の上に塗布した後、磁場中において配向・乾燥した。その後、60℃で24時間硬化反応を行い、12.7mm幅にスリットして磁気記録媒体を得た。
得られた磁気記録媒体は、磁気記録層の膜厚が0.27μm、保磁力が198.9kA/m、光沢度が212%、表面粗度Raが6.0nmであった。
前記実施例1−1、実施例1−3、非磁性下地層1及び実施例2−1に従って非磁性下地層用非磁性粒子粉末、非磁性下地層及び磁気記録媒体を作製した。各製造条件及び得られた非磁性下地層用非磁性粒子粉末、非磁性下地層及び磁気記録媒体の諸特性を示す。
<含水酸化鉄粒子粉末の製造>
実施例1−2及び参考例1−1〜1−4:
含水酸化鉄粒子粉末を製造する際の条件を種々変化させた以外は、実施例1−1と同様にして含水酸化鉄粒子粉末を得た。
このときの製造条件を表1に、得られた含水酸化鉄粒子粉末の諸特性を表2に示す。
なお、実施例1−2は、酸化反応前に硫酸アルミニウム2.0atm%(Fe2+に対しAl換算で4.0atm%に相当)を添加した。
比較例1−1(特開平7−257929号公報 実施例1の追試実験):
非酸化性雰囲気に保持された反応容器に、2.12mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液14L及び0.53mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液10L(炭酸ナトリウムに対する水酸化ナトリウムの添加量:0.18mol)を添加後、1.33molのFe2+を含む第一鉄塩水溶液15L(反応濃度:0.5mol/L)(Fe2+に対するアルカリの総和量(2OH/Fe2+):1.76)を添加・混合し、温度50℃において鉄含有沈澱物を含む懸濁液とした後、N2 ガスを毎分50Lの割合で吹き込みながら、当該懸濁液の温度を53℃に加熱し、120分間維持攪拌した。
次に、1.0mol/Lのケイ酸ナトリウム0.5L(第一鉄塩水溶液中のFe2+に対しSi換算で2.5原子%に相当)を添加して5分間保持した後、更に、0.8mol/Lのアルミン酸ナトリウム0.5L(第一鉄塩水溶液中のFe2+に対しAl換算で2.0原子%に相当)を添加した。次いで、当該懸濁液中に、温度50℃において150L/minのAirを90分間通気して酸化反応を行い、生成した粒子を、常法により濾別、水洗、乾燥、粉砕することにより比較例1−1の含水酸化鉄粒子を得た。得られた含水酸化鉄粒子粉末の諸特性を表2に示す。なお、Air通気中におけるpH値は9.3〜9.5であった。
比較例1−2(針状含水酸化鉄粒子粉末の製造):
水酸化ナトリウムと炭酸ナトリウムの混合アルカリ水溶液(炭酸ナトリウム1molに対する水酸化ナトリウムの添加量:0.2mol)にアスコルビン酸0.4atm%、硫酸第一鉄水溶液(Fe2+に対するアルカリの総和量(2OH/Fe2+)が1.5となる量)(反応濃度:0.4mol/L)及び3号水ガラス0.5atm%(Fe2+に対しSi換算で0.2atm%に相当)を添加した後、温度43℃、非酸化性雰囲気下で120分間攪拌することでエイジングを行い、鉄含有沈澱物を含む懸濁液を得た。次いで、硫酸アルミニウム1.0atm%(Fe2+に対しAl換算で2.0atm%に相当)を添加した後、当該懸濁液にAirを通気しながら酸化反応を行い、生成した粒子を、常法により濾別、水洗、乾燥することにより比較例1−2の針状含水酸化鉄粒子を得た。得られた含水酸化鉄粒子粉末の諸特性を表2に示す。
<ヘマタイト粒子粉末の製造>
実施例1−4〜1−8及び比較例1−3〜1−4:
前駆体である含水酸化鉄粒子の種類、焼結防止剤の種類及び被覆量、低密度加熱処理の温度と時間、高密度加熱処理の温度と時間を種々変化させた以外は、実施例1−3と同様にしてヘマタイト粒子粉末を得た。
このときの製造条件を表3に、得られたヘマタイト粒子粉末の諸特性を表4に示す。
<表面処理された非磁性下地層用非磁性粒子粉末の製造>
実施例1−9:
実施例1−3で得られたヘマタイト粒子粉末12kgを、凝集を解きほぐすために、純水70Lに攪拌機を用いて邂逅し、更に、「TKパイプラインホモミクサー」(製品名、特殊機化工業株式会社製)を3回通して実施例1−3の含水酸化鉄粒子粉末を含むスラリーを得た。
続いて、この実施例1−3のヘマタイト粒子粉末を含むスラリーを横型サンドグラインダー「マイティーミルMHG−1.5L」(製品名、井上製作所株式会社製)を用いて、軸回転数2000rpmにおいて5回パスさせて、実施例1−3のヘマタイト粒子粉末を含む分散スラリーを得た。
得られた実施例1−3のヘマタイト粒子粉末を含む分散スラリー濃度を62g/Lとし、スラリーを180L採取した。このスラリーを攪拌しながら、6mol/LのNaOH水溶液を加えてスラリーのpH値を13.4に調整した。次に、このスラリーを攪拌しながら加熱して95℃まで昇温し、その温度で3時間保持した。
次に、このスラリーをデカンテーション法により水洗し、pH値が10.5のスラリーとした。この時点での含水酸化鉄粒子粉末の重量は10.5kgであった。
次に、上記アルカリ性スラリー中に、アルミン酸ナトリウム546.0gを徐々に加え、20分間熟成を行った。次に、このスラリーに0.1mol/Lの酢酸溶液を加え、スラリーのpH値を9.1に調整した。その後、常法により、濾別、水洗、乾燥を行い、実施例1−9のヘマタイト粒子粉末を得た。
このときの製造条件を表5に、得られた非磁性下地層用非磁性粒子粉末の諸特性を表6に示す。
実施例1−10〜1−12:
非磁性粒子の種類、表面処理添加物の種類及び量を種々変化させた以外は、実施例1−9と同様にして非磁性下地層用非磁性粒子粉末を得た。
このときの製造条件を表5に、得られた非磁性下地層用非磁性粒子粉末の諸特性を表6に示す。
<非磁性下地層の製造>
非磁性下地層2〜7及び比較非磁性下地層1〜3:
非磁性下地層用非磁性粒子粉末の種類を種々変化させた以外は、非磁性下地層1と同様にして非磁性下地層を得た。
このときの製造条件、及び得られた非磁性下地層の諸特性を表7に示す。
<磁気記録媒体の製造>
実施例2−2〜2−7及び比較例2−1〜2−3:
非磁性下地層の種類及び磁性粒子の種類を種々変化させた以外は、前記実施例2−1と同様にして磁気記録媒体を製造した。
尚、使用した磁性粒子(1)〜(3)の諸特性を表8に示す。
このときの製造条件及び得られた磁気記録媒体の諸特性を表9に示す。
本発明に係る磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末は、非磁性下地層用塗料における分散性及び非磁性下地層中における充填性に優れているため、高密度磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末として好適である。
また、本発明に係る磁気記録媒体は、上述の非磁性粒子粉末を磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末として用いることにより、高い表面平滑性を有する磁気記録媒体を得ることができるため、高密度磁気記録媒体として好適である。