JP5447767B2 - 強磁性金属粒子粉末の製造法 - Google Patents

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Description

本発明は、微細な粒子、殊に、平均長軸径が100nm以下の微粒子であっても、焼結による粒子の凝集が抑制された良好な分散性を有する強磁性金属粒子粉末及びその製造法並びに該強磁性金属粒子粉末を用いた良好な表面平滑性を有する磁気記録媒体に関する。
磁気記録技術は、従来、オーディオ用、ビデオ用、コンピューター用等をはじめとしてさまざまな分野で幅広く用いられている。近年、機器の小型軽量化、記録の長時間化及び記録容量の増大等が求められており、記録媒体に対しては、記録密度のより一層の向上が望まれている。
従来の磁気記録媒体に対してより高密度記録を行うためには、高いC/N比が必要であり、ノイズ(N)が低く、再生出力(C)が高いことが求められている。近年では、これまで用いられていた誘導型磁気ヘッドに替わり、磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)や巨大磁気抵抗型ヘッド(GMRヘッド)等の高感度ヘッドが開発されており、これらは誘導型磁気ヘッドに比べて再生出力が得られやすいことから、高いC/N比を得るためには、出力を上げるよりもノイズを低減する方が重要となってきている。
磁気記録媒体のノイズは、粒子性ノイズと磁気記録媒体の表面性に起因して発生する表面性ノイズに大別される。粒子性ノイズの場合、粒子サイズの影響が大きく、微粒子であるほどノイズ低減に有利であることから、磁気記録媒体に用いる磁性粒子粉末の粒子サイズはできるだけ小さいことが必要となる。
一般に、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末は、出発原料(前駆体)となるゲータイト粒子粉末を加熱脱水・還元することによって得られることから、微細な強磁性金属粒子粉末を得るためには、ゲータイト粒子の段階で微粒子化しておく必要がある。しかしながら、粒子粉末を微粒子化すると、粒子粉末の表面積が増大するため、これを加熱焼成・還元すると粒子間焼結しやすくなると共に、粒子形状が崩れやすくなるために、強磁性金属粒子粉末の磁気特性が低下するといった問題を有している。そのため、従来は、前駆体となるゲータイト粒子粉末に多量の焼結防止剤を含有させることによって焼結を防止することが行われている。また、Coは磁気特性向上の効果があることが知られていることから、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末へのCoの添加は必須となっている。
一方、表面性ノイズの場合、磁気記録媒体の表面平滑性を改良することが重要であり、磁性粒子粉末の磁性塗料中での分散性や磁気記録層中での配向性及び充填性の向上が必要不可欠である。しかしながら、上述した通り、粒子粉末を微粒子化することによって加熱焼成・還元時に粒子間焼結しやすくなると共に、焼結によって粗大な凝集体が形成されることにより磁性塗料中での分散性が低下するため、良好な表面平滑性を有する磁気記録媒体を得ることが困難となる。
これまでに、粒子形状・分布が均整な金属磁性粒子粉末を得ることを目的として、ゲータイトの核晶を急速に成長させた後、特定の酸化率の範囲でアルミニウムを添加してゲータイトを成長させ、酸化終了後に希土類元素で被覆したゲータイト粒子粉末を出発原料として得られた特定の形状を有する金属磁性粒子粉末(特許文献1)が提案されている。
また、金属磁性粒子粉末の磁気特性の改善を目的として、還元剤を作用させることにより焼結防止剤を除去した金属磁性粒子粉末(特許文献2)が提案されている。
また、凝集発生が低減された分散性の良い金属磁性粒子粉末を得ることを目的として、金属磁性粒子粉末を水蒸気に曝すことにより表面官能基を特定の範囲に限定した金属磁性粒子粉末(特許文献3)が提案されている。
また、粒子間の焼結が抑制された金属磁性粒子粉末を得ることを目的として、特定の位置にCo、Al及びR(R:Yを含む希土類元素の少なくとも一種)が含有されている前駆体(ゲータイト粒子粉末)を出発原料として得られた金属磁性粒子粉末(特許文献4及び特許文献5)が提案されている。
また、微粒子であるにもかかわらず適度な保磁力値を有すると共に、分散性及び酸化安定性が良好である金属磁性粒子粉末を得ることを目的として、Coを含有するゲータイト粒子の表面にCoと希土類元素化合物とからなる最外層を形成したゲータイト粒子粉末を出発原料として得られた金属磁性粒子粉末(特許文献6)が提案されている。
特開2007−81227号公報 特開2007−294841号公報 特開2008−84900号公報 特開平11−130439号公報 特開2007−194666号公報 特開2003−59707号公報
微粒子でありながら、焼結による粒子の凝集が抑制された良好な分散性を有する強磁性金属粒子粉末は、現在最も要求されているところであるが、前記諸特性を十分満足する強磁性金属粒子粉末は未だ得られていない。
即ち、前記特許文献1〜6記載の技術では、微粒子化されたゲータイト粒子粉末を加熱脱水・還元することによって強磁性金属粒子粉末を得る際に、十分な焼結防止対策がなされていない、即ち、溶出するCo量が十分に低減されていないため、得られる強磁性金属粒子粉末は粒子間焼結していると共に、焼結によって粗大な凝集体が形成されることにより磁性塗料中での分散性が低下するため、良好な表面平滑性を有する磁気記録媒体を得ることが困難となる。
そこで、本発明は、微細な粒子、殊に、平均長軸径が100nm以下の微粒子であっても、焼結による粒子の凝集が抑制された良好な分散性を有する強磁性金属粒子粉末を提供することを技術的課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、可溶性Co量が20ppm以下であるゲータイト粒子粉末を出発原料とし、該ゲータイト粒子粉末を加熱脱水・還元することにより、焼結による粒子の凝集が抑制された良好な分散性を有する強磁性金属粒子粉末を得ることができることを見いだし、本発明をなすに至った。
また、本発明は、炭酸水素アルカリ水溶液又は炭酸アルカリ水溶液と水酸化アルカリ水溶液との混合アルカリ水溶液と第一鉄塩水溶液とを反応させて得られる第一鉄含有沈殿物を含む水懸濁液を非酸化性雰囲気下において熟成させた後に、酸化反応によってゲータイト核晶粒子を生成させ、次いで該核晶粒子と第一鉄含有沈殿物とを含む水懸濁液中に酸素含有ガスを通気して酸化反応によって当該核晶粒子の表面上にゲータイト層を成長させてゲータイトを生成させるにあたり、前記核晶粒子の生成時において、酸化反応開始前の熟成中の第一鉄含有沈殿物を含む水懸濁液にCo化合物を添加して酸化反応を行い、前記ゲータイト層の成長時において、Al化合物を酸化反応の段階に応じて少なくとも2回以上に分割して添加し、生成したゲータイト粒子を濾別した後、濾液の電導度が100μS以下になるまで水洗し、得られたゲータイト粒子を含む水懸濁液に希土類化合物を添加して前記ゲータイト粒子の粒子表面を希土類化合物で被覆して、可溶性Co量が20ppm以下であるゲータイト粒子粉末を得た後、表面被覆したゲータイト粒子粉末を非還元性雰囲気中で加熱脱水処理してヘマタイト粒子粉末とし、得られたヘマタイト粒子粉末を還元性雰囲気中で加熱還元して、分散挙動粒子における体積換算粒子径の幾何標準偏差値が2.0以下である鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末を得ることを特徴とする強磁性金属粒子粉末の製造法である(本発明)。
また、本発明は、本発明の強磁性金属粒子粉末の製造法において、ゲータイト層の成長時にAl化合物を酸化反応の段階に応じて少なくとも2回以上に分割して添加した後、反応液中のFe2+が10%以下になるまで酸化反応が進んだ時点で酸化剤を添加して反応液中の残存Fe2+をFe3+に強制的に酸化させることを特徴とする本発明の強磁性金属粒子粉末の製造法である(本発明)。
本発明に係る強磁性金属粒子粉末は、微細な粒子、殊に、平均長軸径が100nm以下の微粒子であっても、焼結による粒子の凝集が抑制されており、良好な分散性を有するため、高密度磁気記録媒体の強磁性金属粒子粉末として好適である。
また、本発明に係る磁気記録媒体は、上述の焼結による粒子の凝集が抑制された強磁性金属粒子粉末を磁気記録媒体の磁性粒子粉末として用いることにより、良好な表面平滑性を有するため、高密度磁気記録媒体として好適である。
本発明の構成を詳しく説明すれば、次の通りである。
まず、本発明に係る強磁性金属粒子粉末について述べる。
本発明に係る強磁性金属粒子粉末は、可溶性Co量が20ppm以下であるゲータイト粒子粉末を出発原料とし、該ゲータイト粒子粉末を加熱脱水・還元することによって得ることができる。
本発明に係る強磁性金属粒子粉末の平均長軸径は5〜100nmが好ましく、より好ましくは5〜90nmであり、更により好ましくは5〜80nmである。平均長軸径が5nm未満の場合には、酸化安定性が急激に低下し、同時に高い保磁力値と良好な保磁力分布SFD(Switching Field Distribution)が得られ難くなる。100nmを超える場合には、粒子サイズが大きいため、これを用いて得られた磁気記録媒体の表面平滑性が低下し、それに起因して出力も向上し難くなる。また、短波長領域における飽和磁化値や保磁力値が低下すると共に粒子性ノイズが増大するため好ましくない。
本発明に係る強磁性金属粒子粉末の形状は針状であって、軸比(平均長軸径と平均短軸径の比)(以下、「軸比」という。)は2.0以上が好ましく、より好ましくは2.3〜8.0である。軸比が2.0未満の場合には高い保磁力値を有する強磁性金属粒子粉末を得ることが困難となる。ここで針状とは、文字通りの針状粒子はもちろん、紡錘状、米粒状も含まれる。
本発明に係る強磁性金属粒子粉末のBET比表面積値は35〜200m/gが好ましく、より好ましくは40〜180m/g、更により好ましくは50〜150m/gである。BET比表面積値が35m/g未満の場合には、強磁性金属粒子粉末の製造工程において粒子間に焼結が生じている可能性があり、これを用いて得られた磁気記録媒体の表面平滑性が低下するため、それに起因して出力も向上し難くなる。BET比表面積値が200m/gを超える場合には、強磁性金属粒子粉末の表面積が大きくなりすぎて磁性塗料中のバインダーにぬれ難くなるため磁性塗料の粘度が高くなり、分散できずに凝集するため好ましくない。
本発明に係る強磁性金属粒子粉末の分散挙動粒子における平均粒子径は、300nm以下が好ましく、より好ましくは5〜270nmであり、更により好ましくは10〜240nmである。分散挙動粒子の平均粒子径が300nmを超える場合には、強磁性金属粒子粉末の製造工程において粒子間に焼結が生じている可能性があり、これを用いて得られた磁気記録媒体の表面平滑性が低下するため、それに起因して出力も向上し難くなる。
本発明に係る強磁性金属粒子粉末の分散挙動粒子における体積換算粒子径の幾何標準偏差値は、2.0以下であることが好ましいく、より好ましくは1.9以下であり、更により好ましくは1.8以下である。幾何標準偏差値が2.0を超える場合には、粒子サイズの不均一さに起因して分散性が低下するため、これを用いて得られた磁気記録媒体の表面平滑性もまた低下するため好ましくない。
本発明に係る強磁性金属粒子粉末のコバルト含有量は全Feに対してCo換算で4〜50原子%が好ましく、より好ましくは5〜45原子%、更により好ましくは10〜40原子%であり、この範囲でコバルト含有量をコントロールすることによって、後述する磁気特性(保磁力値及び飽和磁化値)を得ることができる。
本発明に係る強磁性金属粒子粉末のアルミニウム含有量は全Feに対してAl換算で4〜40原子%が好ましく、より好ましくは5〜35原子%、更により好ましくは6〜30原子%である。アルミニウム含有量が4原子%未満の場合には、加熱脱水・還元過程における焼結防止効果が低下し、保磁力値が低下するため好ましくない。40原子%を超える場合には、非磁性成分の増大に伴い磁気特性が低下するため好ましくない。
本発明に係る強磁性金属粒子粉末の希土類元素含有量は全Feに対して希土類元素換算で3〜30原子%が好ましく、より好ましくは4〜29原子%、更により好ましくは5〜28原子%である。希土類元素含有量が3原子%未満の場合には、加熱還元過程における焼結防止効果が低下し、保磁力値が低下するため好ましくない。30原子%を超える場合には、非磁性成分の増大に伴い磁気特性が低下するため好ましくない。なお、ここではSc、Yも希土類元素として扱う。
本発明に係る強磁性金属粒子粉末の保磁力値Hcは79.6〜278.5kA/mが好ましく、より好ましくは95.4〜278.5kA/m、更により好ましくは119.4〜278.5kA/mである。保磁力値Hcが前記範囲外の場合、短波長領域で高い出力が得られないため、磁気記録媒体の記録密度を向上させることが困難となる。
本発明に係る強磁性金属粒子粉末の飽和磁化値σsは50〜180Am/kgが好ましく、より好ましくは60〜170Am/kg、更により好ましくは70〜160Am/kgである。飽和磁化値σsが50Am/kg未満の場合には、残留磁化値が低下するため、短波長領域で高い出力が得られない。飽和磁化値σsが180Am/kgを超える場合には、過剰な残留磁化を生じ、磁気抵抗ヘッドの飽和を引き起こし、再生特性に歪みを生じやすく、短波長領域での高いC/N出力が得られない。
次に、本発明に係る強磁性金属粒子粉末の製造法について述べる。
本発明に係る強磁性金属粒子粉末は、可溶性Co量が20ppm以下であるゲータイト粒子粉末を加熱脱水処理することによってヘマタイト粒子粉末を得、該ヘマタイト粒子粉末を加熱還元することによって得ることができる。
本発明におけるゲータイト粒子粉末は、まず、ゲータイト核晶粒子を生成させ、次いで、該核晶粒子表面にゲータイト層を成長させた後水洗し、得られたゲータイト粒子表面を希土類化合物で被覆することによって得られる。
前記ゲータイト核晶粒子は、炭酸水素アルカリ水溶液又は炭酸アルカリ水溶液と水酸化アルカリ水溶液との混合アルカリ水溶液と第一鉄塩水溶液とを反応させて得られる第一鉄含有沈殿物を含む水懸濁液を非酸化性雰囲気下において熟成させた後に、酸化反応によってゲータイト核晶粒子を生成させるにあたり、酸化反応開始前の熟成中の第一鉄含有沈殿物を含む水懸濁液にCo化合物を添加しておくことによって得られる。
なお、前記酸化反応は常法に従って行えばよく、例えば、前記水懸濁液に酸化剤を添加する、あるいは、該水懸濁液中に酸素含有ガスを通気する、等の方法により行うことができる。また、酸化剤としては、過硫酸アンモニウム、過酸化水素水等を用いることができる。
Co化合物は、上記ゲータイト核晶粒子の生成反応時に添加することが肝要である。それ以外、例えばゲータイト層の成長反応時や焼結防止等を目的としたゲータイト粒子表層部への被覆処理時に用いた場合には、ゲータイト粒子からの可溶性Co量が増加し、これによって加熱脱水・還元処理における粒子間の焼結が生じやすくなるため好ましくない。
前記ゲータイト核晶粒子の生成反応において、第一鉄塩水溶液としては、硫酸第一鉄水溶液、塩化第一鉄水溶液等を用いることができる。
前記ゲータイト核晶粒子の生成反応において、Co化合物としては、硫酸コバルト、酢酸コバルト、塩化コバルト、硝酸コバルト等を用いることができる。これらは単独又は必要に応じ2種以上混合して用いられる。また、Co化合物の添加量は、ゲータイト粒子中の全Feに対してCo換算で4〜50原子%が好ましく、より好ましくは5〜45原子%、更により好ましくは10〜40原子%である。
前記ゲータイト層の成長反応は、前記ゲータイト核晶粒子と第一鉄含有沈殿物とを含む水懸濁液中に酸素含有ガスを通気して、酸化反応によって当該核晶粒子の表面上にゲータイト層を成長させてゲータイトを生成させるにあたり、Al化合物を酸化反応の段階に応じて少なくとも2回以上に分割して添加することによって行う。Al化合物を分割添加することにより、ゲータイト粒子から溶出するCo量をより低減できるため、加熱脱水・還元処理における粒子間の焼結を抑制することができる。また、Al化合物を一括添加もしくは徐添加(一定期間に亘って添加を続ける方法)すると、ゲータイト粒子から溶出するCo量を低減できないばかりか、得られるゲータイト粒子の形状が崩れやすく、高い磁気特性も得られにくくなるため好ましくない。
前記ゲータイト層の成長反応において、Al化合物としては、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等のアルミニウム塩、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸アンモニウム等のアルミン酸塩を使用することができる。これらは単独又は必要に応じ2種以上混合して用いられる。また、Al化合物の添加量は、ゲータイト粒子中の全Feに対してAl換算で4〜40原子%が好ましく、より好ましくは5〜35原子%、更により好ましくは6〜30原子%である。Al化合物の添加量をこの範囲とすることにより、焼結防止効果が得られる。また、ゲータイト粒子中の全Feに対してAl換算で40原子%を超える場合には、非磁性成分が増えて磁気特性が低下すると共に、加熱還元に必要な温度が著しく高くなるため工業的にも好ましくない。
Al化合物の添加時期としては、Fe2+の酸化率が20〜90%の間が好ましく、より好ましくは25〜85%、更により好ましくは30〜80%の間である。Al化合物の添加は少なくとも2回以上に分割して行い、1回のAl化合物の添加量は、ゲータイト粒子中の全Feに対してAl換算で1〜12原子%が好ましく、より好ましくは1〜11原子%、更により好ましくは1〜10原子%である。1回のAl化合物の添加量が14原子%を超える場合には、得られるゲータイト粒子の形状が崩れやすいため粒度分布が広がると共に、微細な粒子が生成し、高い磁気特性が得られにくくなるため好ましくない。
また、必要に応じて、上記Al化合物の分割添加後、反応液中のFe2+が10%未満になるまで酸化反応が進んだ時点で、反応液中の残存Fe2+を強制的に酸化させてFe3+とするために酸化剤を添加してもよい。反応液中の残存Fe2+を酸化剤によりFe3+とすることで、得られる強磁性金属粒子粉末の磁気特性をより向上させることができると共に、ゲータイト粒子から溶出するCo量を低減できるため、加熱脱水・還元処理における粒子間の焼結をより抑制することができる。
なお、各工程におけるFe2+残存量は、反応液の一部を取り出して混酸(リン酸:硫酸=2:1)に溶解させた後、ジフェニルアミンスルフォン酸ナトリウムを指示薬として添加し、重クロム酸カリウムを用いて滴定することによって求めた。
上記Al化合物の分割添加後の酸化反応に用いる酸化剤としては、前述のゲータイト核晶粒子の生成反応において用いた、過硫酸アンモニウム、過酸化水素水等の酸化剤を用いることができる。
上記生成したゲータイト粒子を濾別した後、濾液の電導度が100μS以下になるまで水洗する。このとき、必要に応じて水洗の前に、あらかじめ、アンモニア水や炭酸ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液によって洗浄しておいてもよい。アルカリ水溶液による予備洗浄を行うことにより、得られる強磁性金属粒子粉末に含まれる硫酸根をより低減することができる。
次いで、水洗後のゲータイト粒子を含む水懸濁液に、焼結防止剤として希土類化合物を添加して、前記ゲータイト粒子の粒子表面を被覆する。希土類元素による被覆処理は、常法に従って、ゲータイト粒子粉末を含む水懸濁液中に希土類化合物を添加し、均一になるように混合攪拌した後、ゲータイト粒子表面に希土類化合物が被覆できるような適切なpH調整をすることによって行う。その後、粒子表面に希土類化合物が被覆されたゲータイト粒子を濾別、水洗、乾燥することによって、本発明に係る強磁性金属粒子粉末の出発原料となるゲータイト粒子粉末を得る。
添加する希土類元素化合物としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、サマリウム等の1種又は2種以上の化合物が好適であり、前記希土類元素の硫酸塩、塩化物、硝酸塩等を用いることができる。また、希土類元素含有量は、ゲータイト粒子中の全Feに対して希土類元素換算で3〜30原子%が好ましく、より好ましくは4〜29原子%、更により好ましくは5〜28原子%である。希土類元素含有量が3原子%未満の場合には、加熱還元過程における焼結防止効果が低下し、保磁力値が低下するため好ましくない。30原子%を超える場合には、非磁性成分の増大に伴い磁気特性が低下すると共に、加熱還元に必要な温度が著しく高くなるため、工業的に好ましくない。
なお、磁気特性の改善や磁性塗料中における分散性改善を目的として、上記以外の元素、例えばSi、Mg、Zn、Cu、Ti、Ni、P等を添加してもよい。
本発明に係る強磁性金属粒子粉末を製造するための出発原料であるゲータイト粒子粉末は、平均長軸径が5〜180nm、好ましくは5〜150nmであり、軸比が3〜10、好ましくは4〜9であり、BET比表面積値が100〜300m/g、好ましくは110〜280m/gである。また、可溶性Co量が20ppm以下、好ましくは15ppm以下であり、可溶性Al量は10ppm以下であり、可溶性希土類元素量は5ppm以下である。また、コバルト含有量は全Feに対してCo換算で4〜50原子%であり、アルミニウム含有量は全Feに対してAl換算で4〜40原子%であり、希土類元素含有量は全Feに対して希土類元素換算で3〜30原子%である。
可溶性Coが存在することにより、加熱脱水・還元処理における粒子間の焼結が生じやすくなるため、可溶性Co量が20ppmを超えるゲータイト粒子粉末を強磁性金属粒子粉末の出発原料とした場合には、得られる強磁性金属粒子粉末は粒子間が焼結したものとなっており、磁性塗料作製時において、良好な分散性を得ることが困難となる。
本発明に係る強磁性金属粒子粉末を製造するための出発原料であるゲータイト粒子粉末は、Fe2+残存量が1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは500ppm以下、更により好ましくは100ppm以下である。Fe2+残存量を1000ppm以下とすることで、可溶性Co量をより低減できると共に、これを用いて得られる強磁性金属粒子の磁気特性を向上することができる。
次に、上記で得られたゲータイト粒子粉末を非還元性雰囲気中において加熱脱水処理を行って、ヘマタイト粒子粉末とする。
非還元性雰囲気としては、空気、酸素ガス、窒素ガス等から選択される1種以上のガス流通下が好ましい。また、上記非還元性雰囲気中に水蒸気等が含まれていてもかまわない。
加熱脱水温度は100〜650℃の範囲で行うことができる。100℃未満の場合には、加熱脱水処理に長時間を要し、650℃を超える場合には、粒子の変形と粒子及び粒子相互間の焼結を引き起こすため好ましくない。また、前記加熱脱水処理は、1段目と2段目で温度を変える多段加熱脱水処理によっても行うことができる。
次に、ヘマタイト粒子粉末の加熱還元処理を行う。
本発明における加熱還元処理の温度範囲は300〜700℃が好ましい。300℃未満の場合には、還元反応の進行が遅く長時間を要するため好ましくない。また、強磁性金属粒子粉末の結晶成長が不十分であるため、飽和磁化値、保磁力値などの磁気特性が著しく低下する。700℃を超える場合には、還元反応が急激に進行し、粒子の変形と粒子及び粒子相互間の焼結を引き起こすため好ましくない。また、前記加熱還元処理は、1段目と2段目、必要によっては3段目もしくはそれ以上のステップで温度を変える多段加熱還元処理によっても行うことができる。
本発明の加熱還元処理における還元性ガスとしては、水素、アセチレン、一酸化炭素等を用いることができ、殊に、水素が好適である。
本発明における加熱還元後の強磁性金属粒子粉末は、周知の方法により表面酸化処理を行うことで、空気中に取り出すことができる。具体的には、例えば、トルエン等の有機溶剤中に浸漬する方法、還元後の強磁性金属粒子粉末の雰囲気を一旦不活性ガスに置換した後、不活性ガス中の酸素含有量を徐々に増加させながら最終的に空気とする方法及び酸素と水蒸気を混合したガスを使用して徐酸化する方法等が挙げられる。
本発明においては、還元後の強磁性金属粒子粉末の雰囲気を一旦不活性ガスに置換した後、不活性ガス中の酸素含有量を徐々に増加させながら最終的に空気とする方法及び酸素と水蒸気を混合したガスを使用して徐酸化する方法が好ましく、その場合の処理温度は40〜200℃であり、好ましくは40〜180℃である。表面酸化処理の処理温度が40℃未満の場合には、十分な厚さを有する表面酸化層を形成することが困難である。処理温度が200℃を超える場合には、表面酸化層が厚くなり、磁気特性が劣化するため好ましくない。また、粒子の形骸変化、特に酸化物が多量に生成されるため短軸が極端に膨張し、形骸破壊が起こりやすくなる。
次に、本発明に係る磁気記録媒体について述べる。
本発明における磁気記録媒体は、非磁性支持体、該非磁性支持体上に形成された非磁性下地層及び該非磁性下地層上に形成された磁気記録層とからなる。また、必要に応じて、非磁性支持体の一方の面に形成される磁気記録層に対し、非磁性支持体の他方の面にバックコート層を形成させてもよい。殊に、コンピューター記録用のバックアップテープの場合には、巻き乱れの防止や走行耐久性向上の点から、バックコート層を設けることが好ましい。
本発明における非磁性支持体としては、現在、磁気記録媒体に汎用されているポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドイミド、ポリスルフォン、セルローストリアセテート、ポリベンゾオキサゾール等の合成樹脂フィルム、アルミニウム、ステンレス等金属の箔や板及び各種の紙を使用することができる。
本発明における非磁性下地層は、非磁性粒子粉末及び結合剤樹脂とからなる。また、必要に応じて、磁気記録媒体の製造に通常用いられている潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
非磁性下地層に用いられる非磁性粒子粉末としては、アルミナ、ヘマタイト、ゲータイト、酸化チタン、シリカ、酸化クロム、酸化セリウム、酸化亜鉛、チッ化珪素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭酸カルシウム及び硫酸バリウム等を、単独又は組合せて用いることができる。好ましくはヘマタイト、ゲータイト、酸化チタンであり、より好ましくはヘマタイトである。
前記非磁性粒子粉末の粒子形状は、針状、紡錘状、米粒状、球状、粒状、多面体状、フレーク状、鱗片状及び板状等のいずれの形状であってもよい。粒子サイズは、好ましくは0.005〜0.30μmであり、より好ましくは0.010〜0.25μmである。また、必要により、粒子表面をアルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれた1種又は2種以上の化合物で被覆してもよく、化合物で被覆しない場合に比べ、非磁性塗料中での分散性を改善することができる。
結合剤樹脂としては、磁気記録媒体の製造にあたって汎用されている熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化型樹脂等を単独又は組み合わせて用いることができる。
帯電防止剤としては、カーボンブラック、グラファイト、酸化スズ、酸化チタン−酸化スズ−酸化アンチモン等の導電性粉末及び界面活性剤等を用いることができる。帯電防止の他に、摩擦係数低減、磁気記録媒体の強度向上といった効果が期待できることから、帯電防止剤としては、カーボンブラックを用いることが好ましい。
本発明における磁気記録層は、本発明に係る強磁性金属粒子粉末と結合剤樹脂とを含んでいる。また、必要に応じて、磁気記録媒体の製造に通常用いられている潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
結合剤樹脂としては、前記非磁性下地層を作製するために用いた結合剤樹脂を使用することができる。
本発明におけるバックコート層中には、結合剤樹脂と共に、バックコート層の表面電気抵抗値及び光透過率低減、並びに強度向上を目的として、帯電防止剤及び無機粒子粉末を含有させることが好ましい。また、必要に応じて、通常の磁気記録媒体の製造に用いられる潤滑剤、研磨剤等が含まれていてもよい。
結合剤樹脂及び帯電防止剤としては、前記非磁性下地層、及び磁気記録層を作製するために用いた結合剤樹脂及び帯電防止剤を使用することができる。
無機粉末としては、アルミナ、ヘマタイト、ゲータイト、酸化チタン、シリカ、酸化クロム、酸化セリウム、酸化亜鉛、チッ化珪素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭酸カルシウム及び硫酸バリウム等から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。粒子サイズは、好ましくは0.005〜1.0μmであり、より好ましくは0.010〜0.5μmである。
本発明に係る磁気記録媒体は、保磁力値は63.7〜318.3kA/mが好ましく、より好ましくは71.6〜318.3kA/mであり、角形比(Br/Bm)は0.65以上が好ましく、より好ましくは0.70以上であり、保磁力分布SFDは0.60以下が好ましく、より好ましくは0.55であり、更により好ましくは0.50以下である。塗膜の表面粗度Raは4.0nm以下が好ましく、より好ましくは3.8nm以下、更により好ましくは3.6nm以下である。
<作用>
本発明において重要な点は、可溶性Co量が20ppm以下であるゲータイト粒子粉末を加熱還元して得られた強磁性金属粒子粉末は、微細な粒子、殊に、平均長軸径が100nm以下の微粒子であっても、優れた分散性を有するという事実である。
本発明に係る強磁性金属粒子粉末の分散性が優れている理由として、本発明者は下記のとおり推定している。
即ち、本発明者らの知見によれば、例えばCo化合物をゲータイト成長反応時、あるいはゲータイト成長反応後の焼結防止処理時に添加した場合は可溶性のCo量が多く、これを前駆体として得られた強磁性金属粒子粉末は粒子間の焼結が多数生じているため、高い分散性を得ることが困難であった。そこで、ゲータイトの核晶生成反応時にCo化合物を添加することにより、ゲータイト核晶中にCoをドープしてゲータイト粒子内部に固溶化すると共に、ゲータイトの成長反応においてアルミニウム化合物を添加する際に、アルミニウム化合物を分割して添加することにより、ゲータイト粒子の可溶性Co量を低減できたことによるものと考えている。更に、焼結防止処理前に水洗することで可溶性Coを除去しておくことにより、より可溶性Co量を低減でき、その結果、その後の加熱脱水・還元工程における粒子間の焼結を抑制できたことによるものと考えている。
また、本検討により、ゲータイト粒子中のFe2+を、酸化剤を用いてFe3+にすることにより、より一層の可溶性Co量を低減できると共に、得られる強磁性粒子粉末の磁気特性も併せて向上できる知見が得られた。
本発明の代表的な実施の形態は次の通りである。
本発明に係る粒子の平均長軸径並びに平均短軸径は、透過型電子顕微鏡を用いて粒子の写真を撮影し、該写真を用いて粒子360個以上について長軸径及び短軸径を測定し、その平均値で粒子の平均長軸径及び平均短軸径を示した。なお、強磁性金属粒子粉末の粒子径は、下記挙動粒子の平均粒子径を測定する際に作製した分散体を透過型電子顕微鏡観察用試料として用いた。
軸比は平均長軸径と平均短軸径との比で示した。
本発明に係るゲータイト粒子粉末及び強磁性金属粒子粉末の比表面積値は、「モノソーブMS−11」(カンタクロム株式会社製)を用いて、BET法により測定した値で示した。
本発明に係るゲータイト粒子粉末及び強磁性金属粒子粉末のCo量、Al量及び希土類元素量の含有量は、「誘導結合プラズマ発光分光分析装置 SPS4000」(セイコー電子工業株式会社製)を用いて測定した。
本発明に係るゲータイト粒子粉末及び強磁性金属粒子粉末の可溶性Co量、可溶性Al量及び可溶性希土類元素量は、試料5gを300mlの三角フラスコに秤り取り、煮沸した純水100mlを加え、加熱して煮沸状態を約5分間保持した後、栓をして常温まで放冷し、減量に相当する水を加えて再び栓をして1分間振り混ぜ、5分間静置した後、得られた上澄み液をNo.5Cの濾紙を用いて濾過し、該濾液を用いて「誘導結合プラズマ発光分光分析装置 SPS4000」(セイコー電子工業株式会社製)によって測定した。
本発明に係る強磁性金属粒子粉末の挙動粒子の平均粒子径は、強磁性金属粒子粉末を0.04重量部、分散剤を0.12重量部及び分散媒(分散溶剤)99.84重量部を超音波分散機で3分間分散した後、湿式ジェットミルにて10パス分散させた分散体を用いて、動的光散乱法を利用した溶液中の挙動粒度分布測定装置「FPAR−1000」(大塚電子株式会社製)で測定を行った。また、解析方法はキュムラント法の解析手法を用いた。
また、本発明に係る強磁性金属粒子粉末の挙動粒子の幾何標準偏差値(D84.13/D50)は、上記動的光散乱法を用いて測定した体積換算粒子径と頻度分布をグラフにプロットし、このグラフから粒子の個数が50%及び84.13%のそれぞれに相当する粒子径の値を読みとり、幾何標準偏差値=積算フルイ下84.13%における粒子径/積算フルイ下50%における粒子径(幾何平均径)に従って算出した値で示した。幾何標準偏差値が1に近いほど、挙動粒子としての強磁性金属粒子粉末の粒度分布が優れていることを意味する。
強磁性金属粒子粉末及び磁気記録媒体の磁気特性は、振動試料型磁力計「model BHV−35」(理研電子株式会社製)を用いて外部磁場795.8kA/mの下で測定した。
磁気記録媒体の塗膜の表面粗度Raは、非接触表面形状測定機「NewView 600s」(Zygo株式会社製)を用いて塗膜の中心線平均粗さRaを測定した。
<実施例1−1:強磁性金属粒子粉末の製造>
<ゲータイト1:ゲータイト粒子粉末の製造>
<ゲータイト核晶粒子の生成反応>
炭酸水素アンモニウム20molとアンモニア水60molを含む混合アルカリ水溶液28Lを反応塔容器の中に入れ、攪拌しながら窒素ガスを流し、非酸化性雰囲気下で50℃に調整した。次いで、1.25mol/Lの硫酸第一鉄水溶液16Lを反応容器に入れて30分熟成した後、1.5mol/Lの硫酸コバルト水溶液4L(全Feに対しCo換算で30原子%に該当する。)を添加し2.5時間熟成した。
次いで、攪拌しながら酸化剤として過硫酸アンモニウム水溶液(全Feに対して1.8mol%)を添加し、均一混合のため10分間保持した。その後、0.82L/min.の流量で空気を通気しながら全Fe2+の30%が酸化するまで酸化反応を行い、ゲータイト核晶粒子を得た。
<ゲータイト層の成長反応>
次いで、前記ゲータイト核晶粒子を含有する懸濁液に1.6mol/Lの硫酸アルミニウム水溶液1.25L(全Feに対しAl換算で10原子%に該当する。)を添加し、0.82L/min.の流量で空気を通気しながら全Fe2+の50%が酸化するまで酸化反応を行った。
次いで、1.6mol/Lの硫酸アルミニウム水溶液0.75L(全Feに対しAl換算で6原子%に該当する。)を添加し、0.82L/min.の流量で空気を通気しながら全Fe2+の70%が酸化するまで酸化反応を行った。
次いで、1.6mol/Lの硫酸アルミニウム水溶液0.5L(全Feに対しAl換算で4原子%に該当する。)を添加し、0.82L/min.の流量で空気を通気しながら全Fe2+の95%が酸化するまで酸化反応を行った。
上記で得られた全Fe2+の97.0%が酸化したゲータイト粒子を含む懸濁液に、酸化剤として過硫酸アンモニウム水溶液2.0mol%を添加した後、0.82L/min.の流量で空気を通気しながらFe2+がFe3+へ完全に酸化するまで酸化反応を行った。反応終了時のpH値は8.3であった。
<ゲータイト粒子粉末の水洗>
得られたゲータイト粒子含有スラリーを濾過後、0.029Nの炭酸ナトリウム水溶液を用いて洗浄し、更に濾液の電気伝導度が100μS以下になるまで水洗した。
<ゲータイト粒子粉末の焼結防止処理>
上記で得られた水洗後のゲータイト粒子を水中に再分散し、攪拌しながら炭酸ナトリウム水溶液を添加して水溶液のpH値を8.8に調整し、次いで、塩化イットリウム水溶液(全Feに対してY換算で22原子%相当量)を添加して攪拌混合し、炭酸ナトリウム水溶液を添加してスラリーのpH値を9.3に調整した。その後、常法により濾過、水洗、乾燥し、ゲータイト粒子粉末の乾燥固形物を得た。
得られたゲータイト粒子粉末は、平均長軸径が73.2nm、軸比が7.7、BET比表面積値が245.7m/g、Co含有量は全Feに対して30.1原子%、Al含有量は全Feに対して20.6原子%、Y含有量は22.6原子%であった。また、Fe2+の残存量は0%、可溶性Co量は8ppm、可溶性Al量は3ppm未満(検出限界以下)、可溶性Y量は0.5ppmであった。
<加熱脱水処理>
上記で得られたゲータイト粒子粉末を用いて、180℃で10分間加熱処理を行った後、400℃の過熱蒸気を用いて45分間加熱処理を行い、ヘマタイト粒子粉末を得た。
<加熱還元処理>
得られたヘマタイト粒子粉末をバッチ式固定層還元装置に入れ、水素ガスを50cm/sで通気しながら550℃で加熱還元した後、窒素ガスに切り替えて80℃まで冷却し、次いで空気を混合して酸素濃度を0.35vol%まで徐々に増加させて表面酸化処理を行い、粒子表面に表面酸化層を形成した。
次いで、表面酸化層を形成した強磁性金属粒子粉末を水素ガス雰囲気下で600℃まで昇温し、水素ガスを60cm/sで通気しながら再度加熱還元した後、再び窒素ガスに切り替えて80℃まで冷却し、水蒸気6g/mと空気を混合して酸素濃度を0.35vol%まで徐々に増加させて表面酸化処理を行い、粒子表面に安定な表面酸化層を形成して実施例1−1の強磁性金属粒子粉末を得た。
得られた実施例1−1の強磁性金属粒子粉末は、粒子形状が針状であり、平均長軸径が41.1nm、軸比が3.6、BET比表面積値が88.3m/gの粒子からなり、分散挙動粒子における平均粒子径は110.3nm、分散挙動粒子における体積換算粒子径の幾何標準偏差値は1.62であった。また、該強磁性金属粒子中のCo含有量は全Feに対してCo換算で30.1原子%、Al含有量は全Feに対してAl換算で20.3原子%、Y含有量は全Feに対してY換算で22.2原子%であった。該強磁性金属粒子粉末の磁気特性は、保磁力値Hcが196.6kA/m、飽和磁化値σsが102.1Am/kgであった。
<実施例2−1:磁気記録媒体の製造>
<非磁性下地層用組成物>
ヘマタイト粒子粉末 100.0重量部、
(粒子形状:紡錘状、平均長軸径:0.099μm、軸比:6.2、BET比表面積値:59.1m/g)
スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂 11.8重量部、
スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂 11.8重量部、
シクロヘキサノン 78.3重量部、
メチルエチルケトン 195.8重量部、
トルエン 117.5重量部、
硬化剤(ポリイソシアネート) 3.0重量部、
潤滑剤(ブチルステアレート) 1.0重量部。
<磁気記録層用組成物>
強磁性金属粒子粉末 100.0重量部、
スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂 10.0重量部、
スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂 10.0重量部、
研磨剤(AKP−50) 10.0重量部、
カーボンブラック 1.0重量部、
潤滑剤(ミリスチン酸:ステアリン酸ブチル=1:2) 3.0重量部、
硬化剤(ポリイソシアネート) 5.0重量部、
シクロヘキサノン 65.8重量部、
メチルエチルケトン 164.5重量部、
トルエン 98.7重量部。
上記非磁性下地層用組成物及び磁気記録層用組成物のそれぞれをニーダーで混練した後、ペイントシェーカーで混合・分散を行い、3μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過し、非磁性下地層用塗料及び磁気記録層用磁性塗料を調整した。
得られた非磁性下地層用塗料を厚さ4.5μmの芳香族ポリアミドフィルム上に塗布し、乾燥させることにより非磁性下地層を形成した後、前記非磁性下地層の上に磁気記録層用磁性塗料を塗布し、磁場中において配向・乾燥した。次いで、カレンダー処理を行った後、60℃で24時間硬化反応を行い、12.7mm幅にスリットして磁気記録媒体を得た。
得られた磁気記録媒体は、保磁力値が207.5kA/m、角型比(Br/Bm)が0.788、保磁力分布SFDが0.472、表面粗度Raが2.7nmであった。
前記実施例1−1及び実施例2−1に従って強磁性金属粒子粉末及び磁気記録媒体を作製した。各製造条件並びに得られた強磁性金属粒子粉末及び磁気記録媒体の諸特性を示す。
ゲータイト粒子2、3及び7〜10:
コバルト化合物の添加量、アルミニウム化合物の添加時期及び添加量、酸化剤の添加量、水洗工程の有無、焼結防止剤の種類及び添加量を種々変化させた以外は、実施例1−1の強磁性金属粒子粉末の前駆体であるゲータイト粒子1と同様にしてゲータイト粒子を得た。
なお、ゲータイト7は、1.6mol/Lの硫酸アルミニウム水溶液2.5L(全Feに対しAl換算で20原子%に該当する。)を、Fe2+の酸化率が30%の時点で一括添加したものであり、ゲータイト8は1.6mol/Lの硫酸アルミニウム水溶液2.5L(全Feに対しAl換算で20原子%に該当する。)を、Fe2+の酸化率が30%の時点で一括添加したと共に、その後の酸化剤による酸化反応を行っていないものである。
このときの製造条件を表1に、得られたゲータイト粒子粉末の特性を表2に示す。
<ゲータイト粒子4>
<ゲータイト核晶粒子の生成反応>
炭酸水素アンモニウム20molとアンモニア水60molを含む混合アルカリ水溶液28Lを反応塔容器の中に入れ、攪拌しながら窒素ガスを流し、非酸化性雰囲気下で50℃に調整した。次いで、1.25mol/Lの硫酸第一鉄水溶液16Lを反応容器に入れて30分熟成した後、1.5mol/Lの硫酸コバルト水溶液4L(全Feに対しCo換算で30原子%に該当する。)を添加し2.5時間熟成した。
次いで、0.82L/min.の流量で空気を通気しながら全Fe2+の30%が酸化するまで酸化反応を行い、ゲータイト核晶粒子を得た。
<ゲータイト層の成長反応>
次いで、前記ゲータイト核晶粒子を含有する懸濁液に1.6mol/Lの硫酸アルミニウム水溶液1.0L(全Feに対しAl換算で8原子%に該当する。)を添加し、0.82L/min.の流量で空気を通気しながら全Fe2+の50%が酸化するまで酸化反応を行った。
次いで、1.6mol/Lの硫酸アルミニウム水溶液0.75L(全Feに対しAl換算で6原子%に該当する。)を添加し、0.82L/min.の流量で空気を通気しながら全Fe2+の70%が酸化するまで酸化反応を行った。
次いで、1.6mol/Lの硫酸アルミニウム水溶液0.25L(全Feに対しAl換算で4原子%に該当する。)を添加し、0.82L/min.の流量で空気を通気しながら全Fe2+の95%が酸化するまで酸化反応を行った。
上記で得られた全Fe2+の97.0%が酸化したゲータイト粒子を含む懸濁液に、酸化剤として過硫酸アンモニウム水溶液2.0mol%を添加した後、0.82L/min.の流量で空気を通気しながらFe2+がFe3+へ完全に酸化するまで酸化反応を行った。反応終了時のpH値は8.3であった。
<ゲータイト粒子粉末の水洗>
得られたゲータイト粒子含有スラリーを濾過後、0.029Nの炭酸ナトリウム水溶液を用いて洗浄し、更に濾液の電気伝導度が100μS以下になるまで水洗した。
<ゲータイト粒子粉末の焼結防止処理>
上記で得られた水洗後のゲータイト粒子を水中に再分散し、攪拌しながら炭酸ナトリウム水溶液を添加して水溶液のpH値を8.8に調整し、次いで、塩化イットリウム水溶液(全Feに対してY換算で10原子%相当量)を添加して攪拌混合し、炭酸ナトリウム水溶液を添加してスラリーのpH値を9.3に調整した。その後、常法により濾過、水洗、乾燥し、ゲータイト粒子粉末の乾燥固形物を得た。
ゲータイト粒子5及び6:
コバルト化合物の添加量、アルミニウム化合物の添加時期及び添加量、酸化剤の添加量、水洗度、焼結防止剤の添加量を種々変化させた以外は、前述のゲータイト粒子4と同様にしてゲータイト粒子を得た。
なお、ゲータイト6は、アルミニウム化合物を分割添加した後の酸化剤による酸化反応を行っていないものである。
このときの製造条件を表1に、得られたゲータイト粒子粉末の特性を表2に示す。
Figure 0005447767
Figure 0005447767
実施例1−2〜1−6及び比較例1−1〜1−4:
前駆体であるゲータイト粒子粉末の種類を種々変化させた以外は、前記実施例1−1と同様にして強磁性金属粒子粉末を得た。
このときの製造条件及び得られた強磁性金属粒子粉末の諸特性を表3に示す。
Figure 0005447767
<磁気記録媒体の製造>
実施例2−2〜2−6及び比較例2−1〜2−4:
強磁性金属粒子粉末の種類を種々変化させた以外は、前記実施例2−1と同様にして磁気記録媒体を製造した。
このときの製造条件及び得られた磁気記録媒体の諸特性を表4に示す。
Figure 0005447767
本発明に係る強磁性金属粒子粉末は、微細な粒子、殊に、平均長軸径が100nm以下の微粒子であっても、焼結による粒子の凝集が抑制されており、良好な分散性を有するため、高密度磁気記録媒体の強磁性金属粒子粉末として好適である。

Claims (2)

  1. 炭酸水素アルカリ水溶液又は炭酸アルカリ水溶液と水酸化アルカリ水溶液との混合アルカリ水溶液と第一鉄塩水溶液とを反応させて得られる第一鉄含有沈殿物を含む水懸濁液を非酸化性雰囲気下において熟成させた後に、酸化反応によってゲータイト核晶粒子を生成させ、次いで該核晶粒子と第一鉄含有沈殿物とを含む水懸濁液中に酸素含有ガスを通気して酸化反応によって当該核晶粒子の表面上にゲータイト層を成長させてゲータイトを生成させるにあたり、前記核晶粒子の生成時において、酸化反応開始前の熟成中の第一鉄含有沈殿物を含む水懸濁液にCo化合物を添加して酸化反応を行い、前記ゲータイト層の成長時において、Al化合物を酸化反応の段階に応じて少なくとも2回以上に分割して添加し、生成したゲータイト粒子を濾別した後、濾液の電導度が100μS以下になるまで水洗し、得られたゲータイト粒子を含む水懸濁液に希土類化合物を添加して前記ゲータイト粒子の粒子表面を希土類化合物で被覆して、可溶性Co量が20ppm以下であるゲータイト粒子粉末を得た後、表面被覆したゲータイト粒子粉末を非還元性雰囲気中で加熱脱水処理してヘマタイト粒子粉末とし、得られたヘマタイト粒子粉末を還元性雰囲気中で加熱還元して、分散挙動粒子における体積換算粒子径の幾何標準偏差値が2.0以下である鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末を得ることを特徴とする強磁性金属粒子粉末の製造法。
  2. 請求項記載の強磁性金属粒子粉末の製造法において、ゲータイト層の成長時にAl化合物を酸化反応の段階に応じて少なくとも2回以上に分割して添加した後、反応液中のFe2+が10%以下になるまで酸化反応が進んだ時点で酸化剤を添加して反応液中の残存Fe2+をFe3+に酸化させることを特徴とする請求項記載の強磁性金属粒子粉末の製造法。
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