JP4336932B2 - 磁気記録用金属磁性粒子の二次凝集体及びその製造法 - Google Patents

磁気記録用金属磁性粒子の二次凝集体及びその製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、良好な磁気特性を維持したまま、優れた分散性を有していると共に可及的に可溶性塩が低減されているFeを主成分とする金属磁性粒子の二次凝集体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、オーディオ用、ビデオ用、コンピュータ用の磁気記録再生用機器の小型軽量化、長時間記録化、記録の高密度化、若しくは記憶容量の増大化が著しく進行しており、磁気記録媒体である磁気テープ、磁気ディスクに対する高性能化、高密度記録化の要求が益々高まってきている。
【0003】
即ち、磁気記録媒体の高画像画質、高出力特性、殊に周波数特性の向上及び保存特性、耐久性の向上が要求され、その為には、磁気記録媒体に起因するノイズの低下、高い保磁力Hcと保磁力分布SFD、耐候性ΔBmが優れていることが要求されている。
【0004】
磁気記録媒体のこれらの諸特性は磁気記録媒体に使用される磁性粒子粉末と密接な関係を有しており、近年においては、従来の酸化鉄磁性粒子粉末に比較して高い保磁力と大きな飽和磁化値σsを有する鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末が注目され、デジタルオーディオテープ(DAT)、8mmビデオテープ、Hi−8テープ、さらにハイビジョン用のW−VHSテープ、デジタル記録方式のDVCテープ等に使用され、コンピュータ用ではZip,スーパーディスク等のリムーバブルディスクに使用され、最近では大容量のHi−FDで採用され、現在その事業化段階にある。
【0005】
そこで、これらの鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末についても更に特性改善が強く望まれている。
【0006】
即ち、より高い保磁力、優れた保磁力分布SFD、優れた耐候性ΔBmを有する磁気記録媒体を得るためには、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末がより高い保磁力とより大きい飽和磁化値を有すると共に、粒子サイズの分布ができるだけ狭く、分散性が優れ、且つ、酸化安定性Δσsに優れていることが強く要求されている。
【0007】
また、前記各種磁気記録媒体の高密度化、高信頼性及び耐久性向上のために金属磁性粒子粉末としては、可及的に可溶性塩が除去されていることが要求されている。
【0008】
以下、この事実について詳述する。
【0009】
即ち、一般に、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末は、第一鉄塩水溶液と水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ水溶液とを反応して得られる鉄含有沈殿物を含む懸濁液を空気等の酸素含有ガスを通気して酸化反応を行い得られる紡錘状ゲータイト粒子粉末、該ゲータイト粒子粉末を加熱脱水して得られる紡錘状ヘマタイト粒子粉末、又は、これら粒子粉末に鉄以外の異種元素を含有させた紡錘状粒子粉末を出発原料として用い、該出発原料を還元性ガス雰囲気下で加熱還元することにより得られている。
【0010】
前記製造法に由来して、紡錘状金属磁性粒子粉末はナトリウムや製法上不可避的に存在するカルシウムを含有しており、可溶性ナトリウム塩や可溶性カルシウム塩を含有している場合には、磁気記録媒体に使用したときに含有している可溶性ナトリウム塩や可溶性カルシウム塩などの可溶性塩に起因した化合物が磁性塗膜に析出するため問題となっている。この事実は、特開平8−186015号公報の「・・・・・・このような可溶性イオン量が増大したFe金属磁性粉末を用いて磁気記録媒体を作製した場合、初期特性に優れるが、高温高湿下での保存において可溶性イオンが不溶化塩となって析出することがあり、製品のドロップアウト(DO)や出力低下等を引き起こしやすいという問題がある。」という記載からも明らかである。
【0011】
金属磁性粒子粉末中の可溶性塩を低減させる方法としては、1)出発原料として水酸化ナトリウム等のアルカリ金属からなるアルカリ水溶液を用いない、2)水洗によって可溶性塩を低減する、のどちらかの方法が採られている。本発明は、2)の方法に関するものである。
【0012】
水洗による場合には、金属磁性粒子粉末の製造過程における各生成物ごとに水洗することが考えられるが、前記金属磁性粒子粉末の製造法において、出発原料であるゲータイト粒子粉末及びヘマタイト粒子粉末の段階で水洗を行っても、除去されるのは粒子粉末中の可溶性塩だけであるため、還元して金属磁性粒子粉末とした場合には、粒子中に含有している不溶性不純物が粒子表面に移動し可溶性塩となって析出してくることが知られている。この事実は、特開平7−22224号公報の「周期表第1a族元素を0.05重量%以下にするには、これらの元素が製造過程で不可避的に混入する場合にはその除去処理を行うことが必要である。……特にオキシ水酸化鉄、酸化鉄、金属磁性粉と工程が進むに伴って該元素は粒子表面に偏析してくる…」という記載からも明らかである。一方、金属磁性粒子粉末とした後に水洗を行った場合、特に粒子形状が紡錘状の場合には、保磁力などの磁気特性が低下し、磁性塗料中での分散性も低下する傾向がある。
【0013】
ところで、周知の通り、金属磁性粒子粉末は出発原料であるゲータイト粒子粉末、当該ゲータイト粒子粉末を加熱脱水して得られるヘマタイト粒子粉末を、適度な大きさの造粒物に形成した後、前記造粒物を加熱還元することにより得られている。
【0014】
一般に、塗布型磁気記録媒体を製造する場合には、金属磁性粒子粉末は造粒物の形態のまま混練機に投入され、各種結合剤樹脂や有機溶剤と共にニーダー等の混練機でまず混練し、その混練物に有機溶媒を追加し希釈分散して磁性塗料として非磁性支持体上に塗布する。
【0015】
前述した通り、金属磁性粒子の分散性は、磁性塗膜の表面平滑性を左右するものであり、また、分散性が悪い場合には角型比も低下することから、金属磁性粒子が分散性に優れ、且つ、前記金属磁性粒子の造粒物は容易に一次粒子である金属磁性粒子にできることが強く要求されている。
【0016】
なお、金属磁性粒子粉末を水洗して可溶性ナトリウムなどの不純物を低減させる技術が、特開昭56−51029号公報、特開平7−22224号公報、特開平8−172005号公報、特開平8−186015号公報、特開平9−305958号公報等に記載されている。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
良好な磁気特性を維持したまま、優れた分散性を有していると共に可及的に可溶性塩が低減されているFeを主成分とする紡錘状金属磁性粒子は現在最も要求されているところであるが、未だ得られていない。
【0018】
即ち、前出特開昭56−51029号公報には、針状金属磁性粒子粉末を水性溶媒(水又は水と有機溶媒を混和した水が50%以上のもの)で洗浄することが記載されているが、水洗時に有機溶剤の混合溶液が使用されており乾燥時の水の表面張力については考慮されているが、水洗時の二次凝集体の形態については考慮されていない。
【0019】
また、前出特開平7−22224号公報には、ヘマタイト粒子粉末及び金属磁性粒子粉末を水洗することが記載されているが、乾燥時の水の表面張力を考慮した水洗前の2次凝集体の形態については全く言及されていない。
【0020】
また、前出特開平8−172005号公報には、紡錘状ゲータイト粒子粉末及び紡錘状ヘマタイト粒子粉末を加熱還元し、次いで表面酸化した後、水洗乾燥することが記載されているが、水洗時の二次凝集体の形態及び乾燥時の水の表面張力については考慮されておらず、水洗効率に関して十分であるとは言い難いものである。
【0021】
また、前出特開平8−186015号公報には、ゲータイト粒子又はヘマタイト粒子を水洗することが記載されているが、可溶性塩が十分に低減されているとは言い難いものである。また、比較例で金属磁性粉末を水洗した例が示されているが、磁気特性の劣化したものとなっている。
【0022】
また、前出特開平9−305958号公報には、金属磁性粒子粉末を水洗した後、再度還元・表面酸化することが記載されているが、水洗時の二次凝集体の形態については全く考慮されておらず、再還元・表面酸化における水の表面張力について考慮されていないため、分散性に優れた金属磁性粒子粉末とは言い難いものである。
【0023】
そこで、本発明は、良好な磁気特性を維持したまま、優れた分散性を有していると共に可及的に可溶性塩を低減されているFeを主成分とする金属磁性粒子であり、しかも、得られた磁性塗膜の表面平滑性及び角型比をより向上させることができる金属磁性粒子の二次凝集体を得ることを技術的課題とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0025】
即ち、本発明は、金属磁性粒子の平均長軸径が0.05〜0.25μmであり、ナトリウム含有量が20ppm以下、カルシウム含有量が40ppm以下である金属磁性粒子からなる二次凝集体であり、当該二次凝集体の平均粒径が300〜800μm、粒径の上限値が2000μmであることを特徴とする磁気記録用金属磁性粒子の二次凝集体である。
【0026】
また、本発明は、金属磁性粒子の平均長軸径(L)が0.05〜0.15μmであり、保磁力が111.4〜143.2kA/m(1400〜1800Oe)、全Feに対して0.5原子%以上5原子%未満のCoを含有しており、ナトリウム含有量が20ppm以下、カルシウム含有量が40ppm以下、結晶子サイズが150〜170Å未満、比表面積(S)が下記式で表され、Δσsが5.0%以下であり、且つ、発火温度が150℃以上である鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子からなる二次凝集体であり、当該二次凝集体の平均粒径が300〜800μm、粒径の上限値が2000μmであることを特徴とする磁気記録用金属磁性粒子の二次凝集体である。
一般式:S≦−160×L+65
【0027】
また、本発明は、平均長軸径が0.05〜0.40μmのゲータイト粒子粉末又は該ゲータイト粒子粉末を加熱脱水して得られるへマタイト粒子粉末を出発原料とし、当該出発原料を造粒成形後、得られた造粒物を加熱還元して金属磁性粒子の造粒物とし、当該金属磁性粒子の造粒物をローターで解砕する機能と強制的にスクリーンを通過させる整粒機能とを有する装置で解砕し、解砕して得られた金属磁性粒子の二次凝集体を水洗した後、乾燥することを特徴とする可溶性塩の低減された前記金属磁性粒子の二次凝集体の製造法である。
【0028】
平均長軸径が0.05〜0.40μmのゲータイト粒子粉末又は該ゲータイト粒子粉末を加熱脱水して得られるへマタイト粒子粉末を出発原料とし、当該出発原料を造粒成形後、得られた造粒物を加熱還元して金属磁性粒子の造粒物とし、当該金属磁性粒子の造粒物をローターで解砕する機能と強制的にスクリーンを通過させる整粒機能とを有する装置で解砕し、解砕した金属磁性粒子の二次凝集体を水洗した後、乾燥して金属磁性粒子の二次凝集体を製造するにあたり、解砕前の金属磁性粒子の造粒物を下記3工程によって製造することを特徴とする可溶性塩の低減された前記金属磁性粒子の二次凝集体の製造法である。
第1工程:炭酸アルカリ水溶液と水酸化アルカリ水溶液との混合アルカリ水溶液と第一鉄塩水溶液とを反応させて得られる第一鉄含有沈殿物を含む水懸濁液を非酸化性雰囲気下において熟成させた後に該水懸濁液中に酸素含有ガスを通気して酸化反応によって紡錘状ゲータイト種晶粒子を生成させ、次いで当該種晶粒子と第一鉄含有沈澱物とを含む水懸濁液中に酸素含有ガスを通気して酸化反応によって該種晶粒子の粒子表面上にゲータイト層を成長させて紡錘状ゲータイト粒子を生成させるにあたり、前記種晶粒子の生成時において、酸化反応開始前の熟成中の第一鉄含有沈澱物を含む水懸濁液に、全熟成期間の20%以内の時点において全Feに対しCo換算で0.5以上5原子%未満のCo化合物を添加し、酸素含有ガスの空塔速度を2.3〜3.5cm/sとして酸化反応を全Fe2+の30〜50%の範囲で行い、次いで、全Feに対しAl換算で5〜10原子%のAl化合物を添加した後、引き続き酸化反応を行い紡錘状ゲータイト粒子粉末を得る。
第2工程:第1工程で得られた紡錘状ゲータイト粒子を含有する懸濁液に希土類元素換算で全Feに対して1.5〜5原子%の希土類元素の化合物からなる焼結防止剤で処理して希土類元素で被覆された紡錘状ゲータイト粒子粉末を得る。又は当該紡錘状ゲータイト粒子粉末を非還元性雰囲気中、650〜800℃で加熱処理を行い紡錘状ヘマタイト粒子粉末を得る。
第3工程:第2工程で得られた紡錘状ゲータイト粒子粉末又はヘマタイト粒子粉末を造粒成型後、還元装置内に導入して層高が3〜15cmの固定層を形成せしめた後、空塔速度が40〜150cm/sの還元性ガス雰囲気下で昇温速度が10〜80℃/minで400〜700℃に昇温し、前記紡錘状ゲータイト粒子粉末あるいはヘマタイト粒子粉末を還元し、次いで表面酸化被膜を形成して鉄を主成分とする金属磁性粒子の造粒物を得る。
【0029】
先ず、本発明に係る可溶性塩の低減された金属磁性粒子の二次凝集体について述べる。
【0030】
本発明に係る金属磁性粒子の二次凝集体を構成する一次粒子である金属磁性粒子は平均長軸径が0.05〜0.25μm、好ましくは0.05〜0.15μmである。平均長軸径が0.05μm未満の場合には粒子サイズが小さくなり過ぎて超常磁性の領域に近くなるので飽和磁化、保磁力が低下し、更に塗料中での分散性が劣り、酸化安定性も劣化しやすくなる。0.25μmを超える場合には粒子サイズが大きいために塗膜の表面平滑性が低下し、それに起因して出力も向上し難くなる。
【0031】
本発明における金属磁性粒子の粒子形状は針状が好ましく、軸比(平均長軸径/平均短軸径)は4〜13が好ましい。ここで針状とは、文字通りの針状粒子はもちろん、紡錘状、米粒状も含まれる。軸比が4未満の場合には必要とする保磁力が得られず、一方、軸比が13を超える場合は、長軸径にも依存するが酸化安定性が劣化しやすい傾向がある。特に、紡錘状の場合は、軸比は5〜9がより好ましい。
【0032】
本発明における金属磁性粒子のBET比表面積(S)は、平均長軸径をLとした場合、S≦−160×L+65を満たす値を有することが好ましい。前記関係式を超える値の場合には、優れた酸化安定性が得られ難い。なお、下限値は35m/gが好ましい。比表面積が35m/g未満では加熱還元工程での焼結が既に生じており、磁性塗膜の角形比が向上し難い。
【0033】
具体的には、本発明における金属磁性粒子のBET比表面積は、35〜65m/gが好ましく、より好ましくは40〜60m/gである。BET比表面積が35m/g未満では加熱還元工程での焼結が既に生じており、磁性塗膜の角型比が向上し難く、一方、65m/gを超えると塗料中の粘度が高くなり過ぎ、分散し難くなるので好ましくない。
【0034】
本発明における金属磁性粒子のサイズ分布(標準偏差/平均長軸径)は、0.30以下が好ましい。サイズ分布は小さければ小さい程良く、下限は特に限定されないが、工業的製造の観点からは0.10程度である。0.30を超えると酸化安定性が劣化し、また、磁性塗膜のSFDも劣化し、高密度記録化が困難となる。
【0035】
本発明における金属磁性粒子の結晶子サイズD110は、150以上170Å未満が好ましい。結晶子サイズD110が150Å未満の場合には、磁気記録媒体にした場合に粒子性ノイズ低減の点では有利となるが、飽和磁化値が低くなりやすく、また酸化安定性も低下する。170Å以上の場合には粒子性ノイズが増加するため好ましくない。
【0036】
本発明における金属磁性粒子はCoを全Feに対して0.5〜45原子%、好ましくは0.5以上5原子%未満、より好ましくは2.0〜5.0原子%含有する。Co含有量が0.5原子%未満では磁気特性の向上効果がなく、45原子%以上の場合には粒子サイズの制御が困難となり、また、経済的にも不利である。
【0037】
本発明における金属磁性粒子はAlを全Feに対して5.0〜20原子%含有することが好ましい。Al含有量が5.0原子%以下では、特に粒子サイズが小さい場合には、保磁力が大きくなり過ぎるため適度な保磁力に制御することが困難となる。20原子%を超える場合では、軸比が低い粒子では、保磁力の調整が困難となる。より好ましくは5.0〜10原子%、更により好ましくは5.0〜9.0原子%である。
【0038】
本発明における金属磁性粒子は希土類元素を全Feに対して1.0〜15原子%含有することが好ましい。希土類元素の含有量が1.0原子%未満の場合、焼結防止効果が十分でなく、また金属磁性粒子粉末とする場合、サイズ分布が劣化し、磁性塗膜のSFDも悪化する。また、15原子%を超えるときには飽和磁化の減少が生じ易くなる。より好ましくは1.5〜5原子%、更により好ましくは2.0〜5原子%である。
【0039】
本発明における金属磁性粒子のナトリウム含有量は20ppm以下であり、好ましくは0〜10ppmである。カルシウム含有量は40ppm以下であり、好ましくは0〜30ppmである。ナトリウム含有量及びカルシウム含有量が前記範囲を超える場合には、磁性塗膜中での分散性、耐候性向上効果が得られ難い。
【0040】
本発明における金属磁性粒子の水分含有量は0.5〜1.5重量%が好ましい。
【0041】
本発明における金属磁性粒子は、保磁力Hcが103.5〜206.9kA/m(1300〜2600Oe)が好ましく、111.4〜143.2kA/m(1400〜1800Oe)がより好ましい。また、飽和磁化σsは110〜160Am/kg(110〜160emu/g)が好ましく、120〜140Am/kg(120〜140emu/g)がより好ましい。
【0042】
本発明における金属磁性粒子は、温度60℃、相対湿度90%の環境下における促進経時試験の1週間後における飽和磁化(σs)の酸化安定性(Δσs)が絶対値として5.0%以下が好ましく、より好ましくは4.5%以下であり、発火温度が150℃以上が好ましく、より好ましくは155℃以上である。飽和磁化値の酸化安定性及び発火温度が前記範囲外の場合には酸化安定性が十分とは言い難い。
【0043】
本発明における金属磁性粒子を用いた塗膜の特性は、397.9kA/m(5kOe)磁場配向した場合に、角形比(Br/Bm)は0.855以上が好ましく、配向性(OR)は3.2以上が好ましく、保磁力分布(SFD)は0.50以下が好ましい。本発明における金属磁性粒子を用いた磁性塗膜の酸化安定性(ΔBm)は、397.9kA/m(5kOe)磁場配向の塗膜で4.0%以下が好ましい。
【0044】
本発明に係る金属磁性粒子の二次凝集体は平均粒径が300〜800μmであって、造粒径の上限値が2000μmであり、安息角は38〜45度が好ましい。
【0045】
二次凝集体の平均粒径が300μm未満の場合には、安息角が大きくなり易く流動性が悪化する。一方、800μmを超える場合には、良好な混練特性、分散特性が得られ難い。好ましくは400〜800μmである。
【0046】
二次凝集体の造粒径の上限値が2000μmを超える場合には、良好な混練特性、分散特性が得られ難い。
【0047】
本発明に係る金属磁性粒子の二次凝集体において、平均粒径が53μm以下の凝集体の重量割合は30%以下が好ましく、30%を超える場合には、安息角が大きくなりやすく流動性が悪化して、ハンドリング性能が低下する。より好ましくは20%以下、更により好ましくは15%以下である。
【0048】
安息角が45度を超える場合にも、同様に、流動性が著しく悪化し、ハンドリング性能が低下するので好ましくない。
【0049】
本発明に係る金属磁性粒子の二次凝集体の形状は、円柱状の金属磁性粒子の造粒物を解砕して得られるので、不定形である。
【0050】
本発明に係る金属磁性粒子の二次凝集体の嵩密度は0.45〜0.90g/mlが好ましく、より好ましくは0.50〜0.80g/mlである。
【0051】
次に、本発明に係る金属磁性粒子の二次凝集体の製造法について述べる。
【0052】
本発明に係る金属磁性粒子の二次凝集体は、ゲータイト粒子粉末又は該ゲータイト粒子粉末を加熱処理して得られたヘマタイト粒子粉末を所定の大きさに造粒して、得られた造粒物を還元し金属磁性粒子の造粒物とした後に、前記金属磁性粒子の造粒物を解砕し、水洗、乾燥して得ることができる。
【0053】
本発明におけるゲータイト粒子粉末は、粒子形状が針状であって、平均長軸径が0.05〜0.40μm、好ましくは0.05〜0.30μm、軸比が4〜15、好ましくは4〜10であって、BET比表面積が70〜250m/g、好ましくは100〜250m/gである。
【0054】
前記ゲータイト粒子はCoを全Feに対して0.5〜45原子%含有し、Alを全Feに対して5〜20原子%含有することが好ましい。
【0055】
また、本発明におけるヘマタイト粒子粉末は、前記ゲータイト粒子粉末に焼結防止処理を施した後に、400〜850℃の温度範囲で加熱処理して得ることができる。
【0056】
焼結防止剤としては希土類化合物を用い、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、サマリウム等の1種又は2種以上の化合物が好適であり、前記希土類元素の塩化物、硫酸塩、硝酸塩等が使用できる。その処理方法は乾式又は湿式のいずれでもよく、好ましくは湿式での被覆処理である。
【0057】
希土類化合物の使用量は、全Feに対して好ましくは1〜15原子%である。
【0058】
なお、NaSO等の不純物塩の除去のために加熱処理後のヘマタイト粒子を洗浄しても良い。この場合において、被覆された焼結防止剤が溶出しない条件で洗浄を行うことにより、不要な不純物の除去を行うことが好ましい。具体的には、陽イオン性不純物の除去によりpHを上げて行い、陰イオン性不純物の除去には、pHを下げることでより効率的に洗浄することができる。
【0059】
本発明におけるヘマタイト粒子粉末は、粒子形状が針状であって、平均長軸径が0.05〜0.38μm、好ましくは0.05〜0.28μm、軸比が4〜15、好ましくは4〜10であって、BET比表面積が30〜150m/gであることが好ましい。ヘマタイト粒子粉末はCoを全Feに対して0.5〜45原子%、Alを全Feに対して5〜20原子%、希土類元素を全Feに対して1〜15原子%含有することが好ましい。
【0060】
本発明におけるゲータイト粒子粉末又はヘマタイト粒子粉末の造粒物は転動造粒、圧縮造粒、解砕造粒、押し出し造粒等の各種方法によって得ることができるが、焼結防止剤を被覆されたゲータイト粒子粉末又はヘマタイト粒子粉末を含む懸濁液をフィルタープレスにより圧縮脱水して得たケーキを押し出し造粒法によって造粒成形する方法が工業的に好ましい。
【0061】
本発明におけるゲータイト粒子粉末又はヘマタイト粒子粉末の造粒物は平均造粒径(平均長さ)が1〜10mm、平均直径が2〜5mmの円柱状であって、嵩密度が0.25g/ml以上、好ましくは0.3g/ml以上、より好ましくは0.4g/ml以上である。
【0062】
出発原料の造粒物の平均造粒径が1mm未満の場合には、還元ガス流によって造粒物が大きく流動し始めるため粒子間の衝突や摩擦を生起し、粒子同士の焼結や一次粒子である金属磁性粒子の形状のくずれが発生するので好ましくなく、また微粉化した粒子が系外に飛散しダストとなって排気ガスフィルターの目詰まりを引き起こすなど設備的にも好ましくない現象が生ずる。10mmを越えた場合には、還元性ガスが粒子内部に行渡るまでに時間がかかると同時に、還元反応を律速する造粒粒子内の水蒸気の拡散も遅くなる為、還元時間が長くなり、生産性が劣りまた、磁気特性の劣化を招き好ましくない。
【0063】
造粒物の嵩密度が0.25g/ml未満の場合には、造粒物の強度が弱くなり微粉が発生し易く、また、造粒物1個の重量が小さくなる為、還元効率を上げる目的でガスの通気量を増やすと造粒物が流動し易くなり造粒物同志の摩擦や衝突によって粒子同志の焼結や一次粒子である金属磁性粒子の形状の崩れが発生し易くなる。
【0064】
本発明においては、得られた造粒物を400〜700℃の温度範囲で加熱還元することによって金属磁性粒子を得ることができる。400℃未満である場合には、還元反応の進行が遅く、長時間を要する。また、700℃を超える場合には、還元反応が急激に進行して粒子の変形と、粒子及び粒子相互間の焼結を引き起こす場合がある。
【0065】
本発明では、加熱還元後の金属磁性粒子の造粒物は周知の方法、例えば、還元後の金属磁性粒子の造粒物の雰囲気を一旦不活性ガスに置換した後に、不活性ガスの酸素含有量を徐々に増加させながら最終的に空気とする方法、酸素と水蒸気を混合したガスを使用して徐々に酸化する方法等により空気中に取り出すことができる。
【0066】
金属磁性粒子の造粒物は、平均造粒径(平均長さ)が1〜5mm、平均直径が2〜3mmの円柱状であることが好ましい。また、安息角は36〜43度が好ましく、嵩密度は0.35g/ml以上が好ましく、より好ましくは0.50g/ml以上が好ましい。
【0067】
本発明では、加熱還元した後の金属磁性粒子の造粒物を解砕処理する。
【0068】
本発明で言う解砕処理とは、ローターで解砕する機能と強制的にスクリーンを通過させる整粒機能とを有する装置で金属磁性粒子の造粒物を解砕処理することであり、具体的には、対向回転する2軸のローターで解砕し、次いで、孔径1.0mm〜2.0mmのスクリーンを強制的に通過させて整粒することを言う。使用する処理装置としては、ランデルミルRMI型(徳寿工作所(株)製)やコンバインドグラニュレーター(ターボ工業(株)製)等が挙げられる。運転条件は、ローター回転数を100〜400rpmとし、被処理物の投入速度は1〜10kg/minとするのが好ましい。
【0069】
なお、スクリーンとしては、金属板を打ち抜いたパンチングタイプ、又は金属の針金を織り込んだメッシュタイプのいずれかを用いることができる。
【0070】
本発明では解砕処理した金属磁性粒子の二次凝集体を水洗して、金属磁性粒子の可溶性塩を低減する。造粒物の状態で水洗した場合には、水洗効率が悪いため可溶性塩を十分に低減することが困難であり、また、可溶性塩を低減するのに長時間を必要とするため工業的とは言い難いばかりか、飽和磁化値の低下を引き起こし易くなる。一方、造粒物を一次粒子である金属磁性粒子まで粉砕して、金属磁性粒子を含有する水懸濁液の状態で水洗した場合には、水の表面張力が高いことに起因して乾燥時に一次粒子間距離が短くなり、塗膜での分散性が低下し、また、磁気特性も低下する。
【0071】
水洗は、常法によって行えばよいが、造粒物の形態を崩さないことが好ましく、解砕処理によって得られた金属磁性粒子の二次凝集体に、イオン交換水を通水して濾液の電導度10μS/cm以下まで水洗することが好ましい。また、水洗の温度が高いほど水洗効率が向上するが、あまり高すぎると飽和磁化値が低下し易くなるため80℃以下の水で水洗することが好ましい。
【0072】
水洗後の金属磁性粒子の二次凝集体は、80℃以下の温度で乾燥することが好ましい。80℃を超える場合には、磁気特性、特に飽和磁化値が低下するので好ましくない。乾燥の雰囲気は、空気中及び/又は窒素中が好ましい。
【0073】
乾燥することによって金属磁性粒子の水分量が0.5〜1.5重量%になるように調節することが好ましい。
【0074】
本発明においては、前述した通り解砕処理前の金属磁性粒子粉末の製造法については、特に限定されるものではないが、以下の製造法によって製造された金属磁性粒子を解砕処理して水洗した場合には、より可溶性塩を低減できると共に、少ないコバルト量でも磁気特性の維持することが可能となる。
【0075】
即ち、本発明における金属磁性粒子は、第一工程において紡錘状ゲータイト粒子粉末を製造した後、第二工程において紡錘状ゲータイト粒子に焼結防止剤を被覆するか、又は該焼結防止剤を被覆した紡錘状ゲータイト粒子粉末を加熱脱水して紡錘状ヘマタイト粒子粉末とし、次いで、第三工程において前記焼結防止剤を被覆した紡錘状ゲータイト粒子粉末又は前記紡錘状ヘマタイト粒子粉末を加熱還元することにより得ることができる。
【0076】
第一工程の紡錘状ゲータイト粒子の製造法について述べる。
【0077】
本発明における紡錘状ゲータイト粒子を構成する粒子は、紡錘状ゲータイト種晶粒子を生成させ、該種晶粒子表面にゲータイト層を成長させることによって得られる。
【0078】
紡錘状ゲータイト種晶粒子は、炭酸アルカリ水溶液と水酸化アルカリ水溶液との混合アルカリ水溶液と第一鉄塩水溶液とを反応させて得られる第一鉄含有沈殿物を含む水懸濁液を非酸化性雰囲気下において熟成させた後に、該水懸濁液中に酸素含有ガスを通気して酸化反応によって紡錘状ゲータイト種晶粒子を生成させるにあたり、酸化反応開始前の熟成中の第一鉄含有沈澱物を含む水懸濁液に、全熟成期間の20%以下の時点において全Feに対しCo換算で0.5以上5原子%未満のCo化合物を添加し、酸化反応を全Fe2+の30〜50%の範囲で行うことによって得られる。
【0079】
Co化合物を全熟成期間の20%を超える時点において添加した場合には、目的とする粒子サイズ及び軸比のゲータイト粒子粉末が得られない。また、酸化反応が全Fe2+の30%未満及び50%を超える場合にも、目的とする粒子サイズ及び軸比のゲータイト粒子粉末が得られ難くなる。
【0080】
熟成は、非酸化性雰囲気下の前記懸濁液を40〜80℃の温度範囲で行うのが好適である。40℃未満の場合には、軸比が小さく十分な熟成効果が得られ難く、80℃を越える場合には、マグネタイトが混在してくることがある。熟成時間は、通常、30〜300分間である。30分未満及び300分を超える場合には目的とする軸比のものが得られ難い。非酸化性雰囲気とするには、前記懸濁液の反応容器内に不活性ガス(窒素ガスなど)又は還元性ガス(水素ガスなど)を通気すればよい。
【0081】
紡錘状ゲータイト種晶粒子の生成反応において、第一鉄塩水溶液としては、硫酸第一鉄水溶液、塩化第一鉄水溶液等を使用することができる。これらは単独又は必要に応じ2種以上混合して用いられる。
【0082】
紡錘状ゲータイト種晶粒子の生成反応において使用される混合アルカリ水溶液は、炭酸アルカリ水溶液と水酸化アルカリ水溶液とを混合して得られる。この場合の混合比率(規定換算による%表示)として、水酸化アルカリ水溶液の割合は10〜40%(規定換算%)が好ましく、より好ましくは15〜35%(規定換算%)である。10%未満の場合には、目的とする軸比が得られないことがあり、40%を超える場合には、粒状マグネタイトが混在してくることがある。
【0083】
炭酸アルカリ水溶液としては、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸アンモニウム水溶液等が使用でき、前記水酸化アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が使用できる。これらはそれぞれ単独又は必要に応じ2種以上混合して用いられる。
【0084】
混合アルカリ水溶液の使用量は、第一鉄塩水溶液中の全Feに対する当量比として1.3〜3.5、好ましくは1.5〜2.5である。1.3未満の場合には、マグネタイトが混在することがあり、3.5を超えると工業的に好ましくない。
【0085】
第一鉄塩水溶液と混合アルカリ水溶液との混合後の第一鉄濃度は、0.1〜1.0mol/lが好ましく、より好ましくは0.2〜0.8mol/lである。0.1mol/l未満の場合には、収量が少なく、工業的でない。1.0mol/lを超える場合には、粒度分布が大きくなるため好ましくない。
【0086】
紡錘状ゲータイト種晶粒子の生成反応におけるpH値は、8.0〜11.5が好ましく、より好ましくは8.5〜11.0の範囲である。pHが8.0未満の場合には、ゲータイト粒子中に酸根が多量に含まれるようになり、洗浄によっても簡単に除去することができないので、金属磁性粒子粉末とする場合、粒子同志の焼結を引き起こす場合があり、また11.5を越えるときには目的とする保磁力が得られにくい。
【0087】
紡錘状ゲータイト種晶粒子の生成反応は、酸素含有ガス(例えば空気)を液中に通気する酸化反応によって行う。
【0088】
酸素含有ガスの空塔速度は、好ましくは2.3〜3.5cm/sである。2.3cm/s未満では酸化速度が遅いため、粒状マグネタイト粒子が混在し易く、且つ、目的の粒子サイズに制御することが困難になる。一方、3.5cm/sを超えると酸化速度が速すぎ、目的の粒子サイズに制御することが困難になる。なお、空塔速度とは、単位断面積(円柱反応塔の底断面積、巣板の孔径、孔数は考慮しない。)当たりの酸素含有ガスの通気量であって、単位はcm/secである。
【0089】
紡錘状ゲータイト種晶粒子の生成反応における温度は、ゲータイト粒子が生成する80℃以下で行えばよい。80℃を超える場合には、紡錘状ゲータイト粒子中にマグネタイトが混在することがある。好ましくは45〜55℃の範囲である。
【0090】
紡錘状ゲータイト種晶粒子の生成反応において、添加するCo化合物としては、硫酸コバルト、塩化コバルト、硝酸コバルト等を使用することができる。これらは単独又は必要に応じ2種以上混合して用いられる。Co化合物は、酸化反応を行う前の熟成中の第一鉄含有沈澱物を含む懸濁液に添加する。
【0091】
Co化合物の添加量は、最終生成物である紡錘状ゲータイト粒子粉末中の全Feに対して0.5原子%以上5原子%未満である。
【0092】
ゲータイト層の成長反応におけるpH値は、8.0〜11.5が好ましく、より好ましくは8.5〜11.0の範囲である。pHが8.0未満の場合には、ゲータイト粒子中に酸根が多量に含まれるようになり、洗浄によっても簡単に除去することができないので、金属磁性粒子粉末とする場合、粒子同志の焼結を引き起こす場合があり、また11.5を超えるときには、目的とする粒度分布のものが得られない場合がある。
【0093】
ゲータイト層の成長反応は、酸素含有ガス(例えば空気)を液中に通気する酸化反応によって行う。酸素含有ガスの通気の空塔速度は、前記種晶粒子の生成反応時より大きくすることが好ましい。大きくしない場合には、Al添加時に水懸濁液の粘度が上昇し、短軸方向の成長がより促進され、軸比が低下し、目的とする軸比のものが得られないことがある。但し、種晶粒子の生成反応時の空塔速度が2.0cm/s以上の場合はこの限りではない。
【0094】
ゲータイト層の成長反応における温度は、通常、ゲータイト粒子が生成する80℃以下の温度で行えばよい。80℃を越える場合には、ゲータイト粒子中にマグネタイトが混在することがある。好ましくは45〜55℃の範囲である。
【0095】
ゲータイト層の成長反応において、添加するAl化合物としては、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等の酸性塩、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸アンモニウム等のアルミン酸塩を使用することができる。これらは単独又は必要に応じ2種以上混合して用いられる。
【0096】
Al化合物の添加は、酸素含有ガスの空塔速度を種晶粒子の生成反応時の空塔速度を大きくして通気することが好ましい。Alの添加が長時間に渡る場合は、酸化反応を進行させない意味で、窒素含有ガスに切り替えて行うことができる。なお、酸素含有ガスを通気した状態でAl化合物を分割添加したり、連続的及び間欠的に添加した場合には本発明の十分な効果が得られない。
【0097】
Al化合物の添加量は、最終生成物である紡錘状ゲータイト粒子中の全Feに対して5〜10原子%である。
【0098】
得られる紡錘状ゲータイト粒子は、Coを全Feに対して0.5以上5原子%未満含有し、Alを全Feに対して5〜10原子%含有することが好ましい。粒子形状は紡錘状を呈し、平均長軸径が0.05〜0.18μmであり、サイズ分布が0.20以下であり、軸比が4〜8であり、BET比表面積は100〜160m/gであることが好ましい。また、結晶子サイズD020は100〜200Å、D110は90〜130Åがそれぞれ好適である。また、結晶子サイズ比D020/D110は1.8未満が好適である。
【0099】
本発明における紡錘状ゲータイト粒子粉末を構成する粒子は、種晶部分と表層部分とから形成されており、該種晶部分及び該表層部分にCoが存在し、Alは当該表層部分にのみ存在することが好ましい。
【0100】
前記種晶部分とは、添加した第一鉄塩の内、Al化合物を添加するまでに酸化されて形成されるゲータイト種晶粒子部分をいう。具体的には、Fe2+の酸化率により決まるFeの重量比率の部分であって、好ましくは、ゲータイト粒子の内部中心から30〜50重量%の部分である。
【0101】
第二工程の紡錘状ゲータイト粒子及びヘマタイト粒子の製造法について述べる。
【0102】
本発明においては、加熱脱水処理に先立って焼結防止剤により前記紡錘状ゲータイト粒子の粒子表面を被覆処理し、前記焼結防止剤で被覆された紡錘状ゲータイト粒子を得る。更に、前記紡錘状ゲータイト粒子を非還元性雰囲気中、650〜800℃で加熱処理を行い紡錘状ヘマタイト粒子粉末を得る。
【0103】
前記焼結防止剤等をあらかじめ被覆しておくことにより、粒子及び粒子相互間の焼結が防止され、紡錘状ゲータイト粒子粉末の粒子形状及び軸比をより一層保持継承した紡錘状ヘマタイト粒子粉末を得ることができ、これによって、前記形状等を保持継承し、個々に独立した鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末が得られやすくなる。
【0104】
前記焼結防止剤を被覆処理した紡錘状ゲータイト粒子粉末を非還元性雰囲気下において650〜800℃の範囲内で加熱処理を行うに際しては、紡錘状ヘマタイト粒子粉末の結晶子サイズD104がD104/D110(ゲータイト)として1.0〜1.3の範囲になるように加熱処理することが好ましい。
【0105】
加熱処理温度が650℃未満では前記比率が1.0未満となりやすく、一方、800℃を超えると前記比率が1.3を超えやすい。なお、D104/D110(ゲータイト)が1.0未満のときは、金属磁性粒子粉末とする場合、粒度分布が広がり塗膜のSFDが劣化する。D104/D110(ゲータイト)が1.3を超えるときはヘマタイト粒子での形状破壊及び焼結が生じるため、金属磁性粒子粉末とした場合もそれを継承し粒度分布が広く、焼結体も存在し、磁性塗膜とした場合は角形比、SFDともに劣化する。
【0106】
得られた紡錘状ヘマタイト粒子粉末は、Coを全Feに対して0.5原子%以上5原子%未満含有し、Alを全Feに対して5〜10原子%含有し、また、希土類元素を全Feに対して1.5〜5原子%含有する。Co含有量、Al含有量を特定した理由は、前記ゲータイト粒子の組成を特定した理由と同様である。希土類元素が1.5原子%未満のときには、焼結防止効果が十分でなく、また金属磁性粒子粉末とする場合、サイズ分布が劣化し、磁性塗膜のSFDも悪化し、また、5原子%を超えるときには飽和磁化の減少が生じやすくなる。
【0107】
本発明における紡錘状ヘマタイト粒子粉末は、平均長軸径が0.05〜0.17μmであり、サイズ分布が0.22以下である。また、その粒子形状は紡錘状であって、軸比が4〜9である。BET比表面積は35m/g以上60m/g未満が好ましい。また、結晶子サイズD104は120〜160Åが好ましく、D110は200〜300Åが好ましい。結晶子サイズ比D110/D104は1.8〜2.2が好ましい。
【0108】
本発明における紡錘状ヘマタイト粒子粉末を構成する粒子は、種晶部分と中間層部分と最外層部分とから形成されており、該種晶部分及び該中間層部分にCoが存在し、当該中間層部分にのみAlが存在し、且つ該最外層部分にのみ希土類元素が存在する。
【0109】
前記種晶部分とは、前記ゲータイト粒子の種晶部分がそのまま変化したものであり、好ましくは、ヘマタイト粒子の中心部からFeの重量比率が30〜50重量%である。また、前記中間層部分とは、前記ゲータイト粒子の表層部分がそのまま変化したものであり、好ましくは、粒子表面の希土類元素からなる最外層を除いた場合の表面からFeの重量比率が50〜70重量%の部分である。
【0110】
第三工程においては、前記紡錘状ヘマタイト粒子粉末を還元装置内に導入して固定層を形成し、400〜700℃の温度範囲で加熱還元して鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末を得る。
【0111】
本発明において、紡錘状ヘマタイト粒子の固定層を形成するのに当って、前記ヘマタイト粒子粉末を前述した方法によって平均造粒径1〜5mmのヘマタイト粒子の造粒物を形成する。
【0112】
本発明における固定層を形成させた還元装置としては、ベルトまたはトレー上に固定層を形成して該ベルト又はトレーを移送させながら還元する移動式還元装置(連続式)が好ましい。
【0113】
本発明における紡錘状ヘマタイト粒子からなる造粒物で形成された固定層の層高は3〜15cmが好ましく、より好ましくは4〜14cmである。15cmを超える場合には、固定層の層下部の急激な還元による水蒸気分圧の増大によって、固定層上部の保磁力が低下する等の問題が起こり、全体として特性が劣化する。3cm未満の場合は、ガス空塔速度にも依存するが造粒物が飛散する場合があり好ましくない。
【0114】
本発明において、400〜700℃の還元温度に昇温する間の雰囲気は還元性ガス雰囲気が好ましい。還元性ガスとしては水素が好適である。還元性ガス以外の雰囲気、特に窒素等の不活性ガス雰囲気では、昇温後の還元工程で還元性ガスに切り替えた場合、急激に還元が生じ均一な粒子成長が起こりにくいため高い保磁力が得られない。
【0115】
本発明における昇温工程の還元性ガスの空塔速度は40〜150cm/s、好ましくは40〜140cm/sである。空塔速度が40cm/s未満の場合、ヘマタイト粒子の還元で発生した水蒸気が系外に運ばれる速度が非常に遅くなるため、層上部の保磁力、塗膜のSFDが低下し、全体として高い保磁力が得られない。150cm/sを超える場合、目的とする紡錘状金属磁性粒子は得られるが、還元温度が高温を要したり、造粒物が飛散し破壊されるなどの問題が起こり易く好ましくない。
【0116】
本発明における昇温速度は10〜80℃/min、好ましくは20〜70℃/minである。昇温速度が10℃/min未満の場合、低温領域で層下部から非常にゆっくり還元が進行するため、得られる金属磁性粒子の結晶子サイズの非常に小さいものが生成しやすく、且つ発生した水蒸気が系外に運ばれる速度も非常に遅くなり、層上部の保磁力、塗膜のSFDが低下し、下層の結晶性が悪化するのも合わせて全体として高い保磁力が得られない。また、80℃/minを超える場合は、窒素中で昇温した時の挙動に近くなり、急激に還元が生じ、水蒸気分圧の比較的高い条件でのα−Feへ移行が起こるため、得られる金属磁性粒子の結晶子サイズも大きく、保磁力が低下し、塗膜のSFDも劣化したものとなる。
【0117】
本発明における加熱還元における雰囲気は還元性ガスであり、還元性ガスとしては水素が好適である。
【0118】
加熱還元の温度範囲は400〜700℃が好ましい。400℃未満である場合には、還元反応の進行が遅く、長時間を要する。また、700℃を越える場合には、還元反応が急激に進行して粒子粉末の変形と、粒子及び粒子相互間の焼結を引き起こす場合がある。
【0119】
加熱還元後の鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末は、前述した通り、表面酸化処理した後、解砕処理及び水洗処理を行う。
【0120】
【発明の実施の形態】
本発明の代表的な実施の形態は次の通りである。
【0121】
各粒子粉末の平均長軸径、平均短軸径及び軸比は、いずれも電子顕微鏡写真から測定した数値の平均値で示した。
【0122】
各粒子粉末のCo量、Al量、希土類元素量、ナトリウム量及びカルシウム量は、「誘導結合プラズマ発光分光分析装置SPS4000」(セイコー電子工業(株)製)を使用し、測定した。
【0123】
各粒子粉末の比表面積は、「モノソーブMS−11」(カンタクロム(株)製)を使用し、BET法により測定した値で示した。
【0124】
各粒子粉末の結晶子サイズは、X線回折法で測定される結晶粒子の大きさを、各粒子の結晶面のそれぞれに垂直な方向における結晶粒子の厚さを表したものであり、各結晶面についての回折ピーク曲線から、下記のシェラーの式を用いて計算した値で示したものである。
【0125】
結晶子サイズ=Kλ/βcosθ
但し、β=装置に起因する機械幅を補正した真の回折ピークの半値幅(ラジアン単位)。
K=シェラー定数(=0.9)。
λ=X線の波長(Cu Kα線 0.1542nm)。
θ=回折角(各結晶面の回折ピークに対応)。
【0126】
金属磁性粒子及び磁性塗膜の磁気特性は、「振動試料磁力計VSM−3S−15」(東英工業(株)製)を使用し、外部磁場795.8kA/m(10kOe)で測定した。
【0127】
粉体の飽和磁化値(σs)の酸化安定性(Δσs)及び磁性塗膜の飽和磁束密度(Bm)の酸化安定性(ΔBm)は、温度60℃、相対湿度90%の恒温槽に粉体又は磁性塗膜を一週間静置する促進経時試験の後、粉体の飽和磁化値及び磁性塗膜の飽和磁束密度をそれぞれ測定し、試験開始前のσs及びBmと促進経時試験一週間後のσs’及びBm’との差(絶対値)を試験開始前のσs及びBmで除した値、即ち、Δσs、ΔBmとしてそれぞれ算出した。
【0128】
金属磁性粒子の発火温度は、「TG/DTA測定装置SSC5100TG/DTA22」(セイコー電子工業(株)製)を用いて測定した。
【0129】
紡錘状金属磁性粒子粉末の水分含有量は、「カールフィッシャー水分計」(京都電子(株)製)を使用して測定した。
【0130】
二次凝集体の平均粒径、安息角、嵩密度は、「パウダテスタ PT−N型」(ホソカワミクロン株式会社製)を用いてそれぞれ測定した。
【0131】
磁性塗膜は下記成分を100ccのポリビンに下記の割合で入れた後、ペイントシェーカー(レッドデビル社製)で8時間混合分散を行うことにより調製した磁性塗料を厚さ25μmのポリエチレンテレフタートフィルム上にアプリケータを用いて50μmの厚さに塗布し、次いで、397.9kA/m(5kOe)で磁場中で乾燥させることにより得た。得られた磁性塗膜について磁気特性を測定した。
【0132】
3mmφスチールボール 800重量部、
鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末 100重量部、
スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂 20重量部、
シクロヘキサノン 83.3重量部、
メチルエチルケトン 83.3重量部、
トルエン 83.3重量部。
【0133】
<第1工程:紡錘状ゲータイト粒子の製造>
炭酸ナトリウム25molと、水酸化ナトリウム水溶液を19mol(混合アルカリに対し水酸化ナトリウムは規定換算で27.5mol%に該当する。)を含む混合アルカリ水溶液30Lを気泡塔の中に投入し、窒素ガスを空塔速度2.20cm/sで通気しながら47℃に調整する。次いでFe2+として20molを含む硫酸第一鉄水溶液20L(硫酸第一鉄に対し混合アルカリ水溶液は規定換算で1.725当量に該当する。)を気泡塔中に投入して45分間熟成した後、Co2+0.96molを含む硫酸コバルト水溶液4L(全Feに対しCo換算で4.8原子%に該当する。)を添加し、さらに4時間15分間熟成(Co添加時期の全熟成時間に対する比率15%)した後、空気を空塔速度2.50cm/sで通気してFe2+の酸化率40%まで酸化反応を行ってゲータイト種晶粒子を生成させた。
【0134】
次いで、Al3+1.6molを含む硫酸アルミニウム水溶液1L(全Feに対しAl換算で8.0原子%に該当する。)を3ml/sec以下の速度で添加して酸化反応を行った後、フィルタープレスで電気伝導度60μS/cmまで水洗を行ってプレスケーキとした。
【0135】
前記ケーキの一部を常法により乾燥、粉砕を行って紡錘状ゲータイト粒子粉末を得た。得られたゲータイト粒子粉末は紡錘状を呈しており、平均長軸径0.159μm、σ(標準偏差)0.0306μm、サイズ分布(標準偏差/長軸径)0.192、平均短軸径0.0248μm、軸比6.4、BET比表面積153.8m/gで樹枝状粒子が全く存在していないものであり、結晶子サイズD020は195Å、D110は110Åであり、その比率D020/D110は1.77であった。
【0136】
また、Co含有量が全Feに対して4.8原子%、Al含有量が全Feに対して8.0原子%であった。また、Alは表層部分にのみ存在していた。
【0137】
<第2工程:紡錘状ヘマタイト粒子粉末の製造>
次いで、得られた紡錘状ゲータイト粒子1000g(Feとして9.22mol)を含有するプレスケーキを40Lの水中に十分に分散させた後、121.2gの硝酸ネオジム6水塩を含む硝酸ネオジム水溶液2L(前記ゲータイト粒子中の全Feに対しNdとして3.0原子%に該当する。)を添加して攪拌し、濃度25.0重量%の炭酸ナトリウム水溶液を沈澱剤として添加してpH9.5に調整した後、フィルタープレスで水洗し、得られたプレスケーキは圧縮成型機を用いて孔径4mmの成型板で押し出し成型して120℃で乾燥してNd化合物が被覆されたゲータイト粒子粉末の成型物を得た。得られた造粒物は、平均直径3.3mm、平均長さ10mmの円柱状であった。
【0138】
該粒子粉末の成型物を粉砕して得られたゲータイト粒子中のCoの含有量は全Feに対して4.8原子%、Alの含有量は全Feに対して8.0原子%、Ndの含有量は全Feに対して3.0原子%であった。また、Alは中間層部分にのみ存在し、Ndは最外層部分にのみ存在していた。
【0139】
上記Nd化合物が被覆された紡錘状ゲータイト粒子を、該粒子のD110の大きさに対して、得られる紡錘状ヘマタイト粒子のD104がD104/D110(ゲータイト粒子)とした場合、1.0〜1.3の範囲になるように、空気中760℃で加熱脱水してNd化合物の最外層を有する紡錘状ヘマタイト粒子からなる造粒物を得た。得られた造粒物は平均直径3.1mm、平均長さ5mmの円柱状であった。
【0140】
得られた紡錘状ヘマタイト粒子は、紡錘状を呈しており、平均長軸径0.141μm、σ(標準偏差)0.0304μm、サイズ分布(標準偏差/平均長軸径)0.216、平均短軸径0.0201μm、軸比7.0、BET比表面積38.8m/gであり、また、該粒子中のCoの含有量は全Feに対して4.8原子%、Alの含有量は全Feに対して8.0原子%、Ndの含有量は全Feに対して3.0原子%であった。更に、結晶子サイズD104は142Åであり、ゲータイト粒子のD110に対する比率はD104/D110(ゲータイト粒子)として1.29であった。また、D110は275Åであり、その比率D110/D104は1.94であった。
【0141】
<第3工程:鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末の製造>
次いで、得られたこのNd化合物の最外層を有する紡錘状ヘマタイト粒子粉末を層高7cmになるように還元装置内に固定層を形成して、480℃でガス空塔速度70cm/sのHガスを通気し、20℃/minの昇温速度で還元温度480℃まで昇温し、引き続き加熱還元する。その後、窒素ガスに切り替えて70℃まで冷却し、次いで、水蒸気を通気しながら酸素分圧を徐々に増加させて空気と同じ比率として粒子表面に安定な酸化被膜を形成した。
【0142】
得られた紡錘状金属磁性粒子の造粒物は円柱状であり、平均長さは3mm、上限長さは5mm、平均直径は2.8mmであり、安息角は40度、嵩密度は0.57g/mlであった。
【0143】
得られた紡錘状金属磁性粒子の造粒物を構成している金属磁性粒子の粒子形状は紡錘状であり、平均長軸径が0.126μm、σ(標準偏差)が0.0290μm、サイズ分布(標準偏差/長軸径)が0.230、平均短軸径が0.0198μm、軸比が6.4、BET比表面積が42.5m/g、結晶子サイズが160Åの粒子からなり、紡錘状で粒度が均斉で樹枝状粒子の少ないものであった。また、該粒子中の水分量は1.00wt%、可溶性Naは83ppm、可溶性Caは44ppmであり、Coの含有量は全Feに対して4.8原子%、Alの含有量は全Feに対して8.0原子%、Ndの含有量は全Feに対して3.0原子%であった。また、この紡錘状金属磁性粒子粉末の磁気特性は、保磁力が133.7kA/m(1680Oe)であり、飽和磁化σsが127.0Am/kg(127.0emu/g)、角形比(σr/σs)が0.490、飽和磁化の酸化安定性Δσsが絶対値として4.5%(実測値−4.5%)であり、発火温度が145℃であった。
【0144】
また、シート特性は、シートHcが132.1kA/m(1660Oe)、シート角形比(Br/Bm)が0.850、シートORが3.10、シートSFDが0.510、ΔBmが3.0%(実測値−3.0%)であった。
【0145】
<金属磁性粒子の二次凝集体の製造>
次いで、前記紡錘状金属磁性粒子の円柱状造粒物を300rpmで対向回転する2軸のローターに5kg/minの速度で投入し、該装置下面にある孔径1.5mmのパンチングタイプのスクリーンを通過させ解砕し(徳寿工作所(株)製ランデルミルRM−1型機)、紡錘状金属磁性粒子の二次凝集体を得た。得られた紡錘状金属磁性粒子の二次凝集体の平均粒径は650μm、上限粒径が1500μmであり、造粒径53μm以下の凝集体の重量割合は2.5%であった。また、安息角は41度であり、嵩密度は0.58g/mlであった。
【0146】
次いで、得られた紡錘状金属磁性粒子の二次凝集体を該二次凝集体1重量部に対して50重量部のイオン交換水を該二次凝集体が崩れないように通水して濾液の電導度が10μS/cmまで水洗した。その後、60℃で12時間通風乾燥機に静置させ、金属磁性粒子の二次凝集体中の水分量が0.5〜1.5%になるまで乾燥させた。
【0147】
乾燥後の紡錘状金属磁性粒子の二次凝集体の平均粒径は640μm、上限粒径が1400μmであった。造粒径が53μm以下の凝集体の重量割合は3.5%であった。また、安息角は42度であり、嵩密度は0.80g/mlであった。
【0148】
得られた紡錘状金属磁性粒子の造粒物を構成している金属磁性粒子の粒子形状は紡錘状であり、平均長軸径が0.125μm、σ(標準偏差)が0.0288μm、サイズ分布(標準偏差/長軸径)が0.230、平均短軸径が0.0195μm、軸比が6.4、BET比表面積が41.4m/g、結晶子サイズが159Åの粒子からなり、紡錘状で粒度が均斉で樹枝状粒子の少ないものであった。また、該粒子中の水分量は1.05wt%、可溶性Naは5ppm、可溶性Caは22ppmであり、Coの含有量は全Feに対して4.8原子%、Alの含有量は全Feに対して8.0原子%、Ndの含有量は全Feに対して3.0原子%であった。また、この紡錘状金属磁性粒子粉末の磁気特性は、保磁力が127.8kA/m(1606Oe)であり、飽和磁化σsが125.0Am/kg(125.0emu/g)、水洗処理による飽和磁化値の低下値は−2.0emu/g、角形比(σr/σs)が0.478、飽和磁化の酸化安定性Δσsが絶対値として3.8%(実測値−3.8%)であり、発火温度が160℃であった。
【0149】
また、シート特性は、シートHcが133.5kA/m(1677Oe)、シート角形比(Br/Bm)が0.862、シートORが3.34、シートSFDが0.490、ΔBmが2.8%(実測値−2.8%)であった。
【0150】
【作用】
本発明において最も重要な点は、金属磁性粒子の造粒物を解砕した二次凝集体を水洗することによって、可溶性塩を可及的に低減することができ、しかも、分散性に優れた金属磁性粒子の二次凝集体が得られるという事実である。
【0151】
本発明においては、金属磁性粒子の造粒物を解砕して特定の粒度を有する二次凝集体の状態で水洗するので、効率的に水洗することができ可溶性塩を低減することができる。従って、磁気特性、殊に、飽和磁化値の低下を極力抑えることが可能である。
【0152】
また、二次凝集体の状態で水洗するので、水洗後の乾燥時において水の表面張力が大きいことによる一次粒子(金属磁性粒子)の粒子間距離の低下を抑制できることにより、金属磁性粒子の耐久性(Δσs、発火温度)の向上ともに混練時の結合剤樹脂及び有機溶媒中での分散性が向上し、その結果、磁性塗膜の表面平滑性及び角形比が向上することができる。
【0153】
【実施例】
次に、実施例並びに比較例を挙げる。
【0154】
出発原料1〜3:
前記発明の実施の形態において製造条件を変化させて出発原料である金属磁性粒子を得た。なお、出発原料3はゲータイト粒子を焼結防止剤で被覆した後、そのまま還元、表面酸化処理して得た。
【0155】
得られた出発原料の諸特性及び磁性塗膜の諸特性を表1〜表3に示す。
【0156】
【表1】
Figure 0004336932
【0157】
【表2】
Figure 0004336932
【0158】
【表3】
Figure 0004336932
【0159】
実施例1〜3、比較例1〜3:
前記各出発原料を用いて、解砕条件及び水洗条件を種々変化させた以外は前記発明の実施の形態と同様にして金属磁性粒子の二次凝集体を得た。
【0160】
このときの製造条件及び得られた金属磁性粒子の二次凝集体の諸特性を表4及び表5に示す。なお、比較例1は二次凝集体をホモミキサーで更に湿式粉砕して、金属磁性粒子を含有する水懸濁液の状態で水洗した。比較例2では解砕処理を行わなかった。また、比較例3は金属磁性粒子の造粒物に線荷重をかけて圧粉処理した後に水洗したものである。
【0161】
【表4】
Figure 0004336932
【0162】
【表5】
Figure 0004336932
【0163】
表5に示した乾燥後の金属磁性粒子の二次凝集体を構成する金属磁性粒子粉末の諸特性及び該金属磁性粒子を用いて製造した磁性塗膜の諸特性を表6及び表7に示す。
【0164】
【表6】
Figure 0004336932
【0165】
【表7】
Figure 0004336932
【0166】
【発明の効果】
本発明に係る金属磁性粒子の二次凝集体は、良好な磁気特性を維持したまま、優れた分散性を有していると共に、可溶性塩が低減されているので、磁性塗膜の表面平滑性及び角型比を向上させることができ、更に、信頼性及び耐久性に優れた塗布型磁気記録媒体用として好適である。

Claims (4)

  1. 金属磁性粒子の平均長軸径が0.05〜0.25μmであり、ナトリウム含有量が20ppm以下、カルシウム含有量が40ppm以下である金属磁性粒子からなる二次凝集体であり、当該二次凝集体の平均粒径が300〜800μm、粒径の上限値が2000μmであることを特徴とする磁気記録用金属磁性粒子の二次凝集体。
  2. 金属磁性粒子の平均長軸径(L)が0.05〜0.15μmであり、保磁力が111.4〜143.2kA/m(1400〜1800Oe)、全Feに対して0.5原子%以上5原子%未満のCoを含有しており、ナトリウム含有量が20ppm以下、カルシウム含有量が40ppm以下、結晶子サイズが150〜170Å未満、比表面積(S)が下記式で表され、Δσsが5.0%以下であり、且つ、発火温度が150℃以上である鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子からなる二次凝集体であり、当該二次凝集体の平均粒径が300〜800μm、粒径の上限値が2000μmであることを特徴とする磁気記録用金属磁性粒子の二次凝集体。
    一般式:S≦−160×L+65
  3. 平均長軸径が0.05〜0.40μmのゲータイト粒子粉末又は該ゲータイト粒子粉末を加熱脱水して得られるへマタイト粒子粉末を出発原料とし、当該出発原料を造粒成形後、得られた造粒物を加熱還元して金属磁性粒子の造粒物とし、当該金属磁性粒子の造粒物をローターで解砕する機能と強制的にスクリーンを通過させる整粒機能とを有する装置で解砕し、解砕して得られた金属磁性粒子の二次凝集体を水洗した後、乾燥することを特徴とする請求項1又は2記載の可溶性塩の低減された金属磁性粒子の二次凝集体の製造法。
  4. 平均長軸径が0.05〜0.40μmのゲータイト粒子粉末又は該ゲータイト粒子粉末を加熱脱水して得られるへマタイト粒子粉末を出発原料とし、当該出発原料を造粒成形後、得られた造粒物を加熱還元して金属磁性粒子の造粒物とし、当該金属磁性粒子の造粒物をローターで解砕する機能と強制的にスクリーンを通過させる整粒機能とを有する装置で解砕し、解砕した金属磁性粒子の二次凝集体を水洗した後、乾燥して金属磁性粒子の二次凝集体を製造するにあたり、解砕前の金属磁性粒子の造粒物を下記3工程によって製造することを特徴とする請求項1又は2記載の可溶性塩の低減された金属磁性粒子の二次凝集体の製造法。
    第1工程:炭酸アルカリ水溶液と水酸化アルカリ水溶液との混合アルカリ水溶液と第一鉄塩水溶液とを反応させて得られる第一鉄含有沈殿物を含む水懸濁液を非酸化性雰囲気下において熟成させた後に、該水懸濁液中に酸素含有ガスを通気して酸化反応によって紡錘状ゲータイト種晶粒子を生成させ、次いで、当該種晶粒子と第一鉄含有沈澱物とを含む水懸濁液中に酸素含有ガスを通気して酸化反応によって該種晶粒子の粒子表面上にゲータイト層を成長させて紡錘状ゲータイト粒子を生成させるにあたり、前記種晶粒子の生成時において、酸化反応開始前の熟成中の第一鉄含有沈澱物を含む水懸濁液に、全熟成期間の20%以内の時点において全Feに対しCo換算で0.5以上5原子%未満のCo化合物を添加し、酸素含有ガスの空塔速度を2.3〜3.5cm/sとして酸化反応を全Fe2+の30〜50%の範囲で行い、次いで、全Feに対しAl換算で5〜10原子%のAl化合物を添加した後、引き続き酸化反応を行い紡錘状ゲータイト粒子粉末を得る。
    第2工程:第1工程で得られた紡錘状ゲータイト粒子を含有する懸濁液に希土類元素換算で全Feに対して1.5〜5原子%の希土類元素の化合物からなる焼結防止剤で処理して希土類元素で被覆された紡錘状ゲータイト粒子粉末を得る。又は当該紡錘状ゲータイト粒子粉末を非還元性雰囲気中、650〜800℃で加熱処理を行い紡錘状ヘマタイト粒子粉末を得る。
    第3工程:第2工程で得られた紡錘状ゲータイト粒子粉末又はヘマタイト粒子粉末を造粒成型後、還元装置内に導入して層高が3〜15cmの固定層を形成せしめた後、空塔速度が40〜150cm/sの還元性ガス雰囲気下で昇温速度が10〜80℃/minで400〜700℃に昇温し、前記紡錘状ゲータイト粒子粉末あるいはヘマタイト粒子粉末を還元し、次いで表面酸化被膜を形成して鉄を主成分とする金属磁性粒子の造粒物を得る。
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