JP4182310B2 - 磁気記録用Fe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末の製造法 - Google Patents
磁気記録用Fe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末の製造法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、小さい結晶子サイズ、殊に160Å以下であるにもかかわらず、高い保磁力と大きな飽和磁化値及び優れた酸化安定性を有すると共に、塗布膜での回転ヒステリシス積分値が小さいFe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、オーディオ用、ビデオ用、コンピュータ用の磁気記録再生用機器の小型軽量化、長時間記録化、記録の高密度化、若しくは記憶容量の増大化が著しく進行しており、磁気記録媒体である磁気テープ、磁気ディスクに対する高性能化、高密度記録化の要求が益々高まってきている。
【0003】
即ち、磁気記録媒体の高画像画質、高出力特性、殊に周波数特性の向上及び保存特性、耐久性の向上が要求され、その為には、磁気記録媒体に起因するノイズの低下、高い保磁力Hcと保磁力分布SFD、耐候性ΔBmが優れていることが要求されている。
【0004】
磁気記録媒体のこれらの諸特性は磁気記録媒体に使用される磁性粒子粉末と密接な関係を有しており、近年においては、従来の酸化鉄磁性粒子粉末に比較して高い保磁力と大きな飽和磁化値σsを有する鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末が注目され、デジタルオーディオテープ(DAT)、8mmビデオテープ、Hi−8テープ、さらにハイビジョン用のW−VHSテープ、デジタル記録方式のDVCテープ等に使用され、コンピューター用ではZip,スーパーディスク等のリムーバブルディスクに使用され、最近では大容量のHi−FDで採用され、現在その事業化段階にある。
【0005】
そこで、これらの鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末についても更に特性改善が強く望まれている。
【0006】
即ち、より高い保磁力、優れた保磁力分布SFD、優れた耐候性ΔBmを有する磁気記録媒体を得るためには、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末がより高い保磁力とより大きい飽和磁化値を有するとともに、粒子サイズの分布ができるだけ狭く、分散性が優れ、且つ、酸化安定性Δσsに優れていることが強く要求されている。
【0007】
また、特開平7−126704号公報に、「……磁気記録媒体に起因するノイズレベルを低下させる為には、金属磁性粒子のX線粒径をできるだけ小さくすることも有効な手段であり……」と記載されている通り、ノイズの少ない磁気記録媒体を得るためには、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末がより小さい結晶子サイズD110を有することが強く要求されている。
【0008】
しかしながら、結晶子サイズが小さく、高い保磁力と大きな飽和磁化値とを共に満たす金属磁性粒子粉末を得ることは、その製造法に起因して非常に困難である。
【0009】
以下、この事実について詳述する。
【0010】
即ち、一般に、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末は、第一鉄塩水溶液とアルカリ水溶液とを反応して得られる鉄含有沈殿物を含む水溶液を空気等の酸素含有ガスを通気して酸化反応を行い得られる紡錘状ゲータイト粒子粉末、該ゲータイト粒子粉末を加熱脱水して得られる紡錘状ヘマタイト粒子粉末、又は、これら粒子粉末に鉄以外の異種元素を含有させた紡錘状粒子粉末を出発原料として用い、該出発原料を還元性ガス雰囲気下で加熱還元することにより得られている。
【0011】
先ず、金属磁性粒子粉末の保磁力と飽和磁化値との関係について言えば、前記加熱還元工程における雰囲気や温度等の条件は非常に過酷であるため、紡錘状金属磁性粒子粉末は粒子及び粒子相互間で焼結を生起しやすい。特に、金属磁性粒子粉末の長所である大きな飽和磁化値を得るためには、加熱還元温度をできるだけ高くして十分に還元を進めておくことが必要であるが、加熱還元温度を高くした場合には、逆に出発原料は形状破壊を生起しやすくなり、結果として保磁力の低下につながる。
【0012】
次に、結晶子サイズと保磁力との関係について言えば、特開平4−61302号公報に「……結晶子サイズが小さくなる程保磁力は小さくなる傾向にある為、……磁性粒子粉末の保磁力を出来るだけ高く維持しながら、小さい結晶子サイズを有する磁性粒子が強く要求されている。」と記載されている通り、紡錘状金属磁性粒子粉末の場合は、結晶子サイズと保磁力は逆の相関があり、前述した通り、金属磁性粒子粉末の結晶子サイズをより小さくすることと高い保磁力とを共に有することは非常に困難である。
【0013】
近年、高い保磁力を有する金属磁性粒子粉末を得るために粒子サイズは益々微粒子化しており、その出発原料も微粒子化している。出発原料が0.15μm以下の微粒子になると、加熱還元工程における粒子形状の破壊がより顕著となる傾向にある。形状破壊された金属磁性粒子粉末は、形状異方性の低下によって高い保磁力を得ることができず、粒子サイズの分布は低下する。また、磁気記録媒体の製造に当っても、ビヒクル中での結合剤との混練、分散過程における粒子間力の増大、あるいは磁気的凝集力の増大によって、分散性が低下し、磁性塗膜とした時の角型比が低下し、優れたSFDを有する磁気記録媒体を得ることはできない。
【0014】
ところで、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末は、加熱還元工程後、空気中に取り出した時に、空気中の酸素により酸化反応が急激に進行して大幅な磁気特性の低下が起こることが知られている。特に、平均長軸径が0.15μm以下の微粒子粉末では、活性が高く容易に酸化反応が進行するため、目的とする大きな飽和磁化値を有する金属磁性粒子粉末を得ることができず、更に、磁性塗膜とした時の耐候性ΔBmに劣るものである。
【0015】
還元直後の飽和磁化値が大きな金属磁性粒子粉末であると共に酸化安定性にも優れた金属磁性粒子粉末を得るために、Coを20〜45原子%と多量に含有させる方法が知られている。この方法によれば酸化安定性が改善された金属磁性粒子粉末が得られるが、加熱処理の際に過度の粒子成長が起こりやすく、形状破壊を誘起するため、得られた金属磁性粒子粉末は形状異方性が低下していることにより、高い保磁力を得ることはできず、サイズ分布が低下し分散性が低下する。
【0016】
また、前記酸化反応による特性の低下を抑制するため、金属磁性粒子粉末の粒子表面に表面酸化層を形成することによって、酸化安定性を向上させる技術が知られており、広く用いられている。しかし、酸化安定性向上のために表面酸化層を厚くした場合には、金属磁性粒子粉末としての磁気特性が低下するため好ましくない。そこで、高い酸化安定性を有すると共にできるだけ薄い表面酸化層を有する金属磁性粒子粉末であることが要求される。この事実は、特開平5−234734号公報の、「……気相法安定化方法では、酸素の酸化力が強いためと、また金属磁性粉末表面には酸化されやすい部分と酸化され難い部分があるため、局部的な酸化ムラが生じ易い。これらを改良して均一な酸化被膜を得るためには、酸化被膜を厚くせざるを得ず、結果として飽和磁化値が低下する。さらに高密度磁気記録においては、より微細な粒子で高い飽和磁化値をもち、且つ、高い耐蝕性が要求される。さらには、保磁力の分布が小さいことも重要である。そのためには薄いが緻密で、且つ均一な酸化被膜が要求される。」という記載からも明らかである。
【0017】
2段階で還元して磁性金属粒子粉末を得る方法は、特開平1−172501号公報、特開平2−58809号公報、特開平9−305958号公報に記載されている。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
小さい結晶子サイズ、殊に160Å以下であるにもかかわらず、高い保磁力と大きな飽和磁化値及び優れた酸化安定性を有すると共に、塗布膜での回転ヒステリシス積分値が小さいFe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末を製造することは、現在最も要求されているところであるが、前記諸特性を十分満足する紡錘状合金磁性粒子粉末は未だ提供されていない。
【0019】
即ち、前出特開平1−172501号公報に記載の方法は、粒子表面に酸化膜を形成した金属粉末を還元雰囲気中で熱処理した後、該粉末を酸化性ガスを用いて安定化処理する技術であるが、後出比較例に示すとおり、二段階目の還元処理温度が低いので、表面酸化層の還元及び粒子全体の緻密化が不十分となり、最終的に形成される表面酸化層が緻密な層であるとは言い難いものである。
【0020】
また、特開平2−58809号公報に記載の方法は、還元処理を二段階に分けて行っているが、二段階目の還元処理は焼締めを目的とするものであり、後出比較例に示す通り、表面酸化層を緻密に形成することは困難である。
【0021】
また、特開平9−305958号公報に記載の方法は、金属磁性粉末の水溶性アニオン及びカチオンの含有量を低減するために、ゲータイト粒子粉末又はヘマタイト粒子粉末を金属磁性粉末に還元処理した後、水洗し、再度還元処理を行うことが記載されているが、二段階目の還元温度が低いので、表面酸化層の還元及び粒子全体の緻密化が不十分となり、最終的に形成される表面酸化層が緻密な層であるとは言い難いものである。
【0022】
そこで、本発明は、小さい結晶子サイズ、殊に160Å以下であるにもかかわらず、高い保磁力と大きな飽和磁化値及び優れた酸化安定性を有すると共に、塗布膜での回転ヒステリシス積分値が小さいFe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末を得ることを技術的課題とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0024】
即ち、本発明は、全Feに対してCo換算で20〜45原子%のコバルトを含有する平均長軸径が0.05〜0.15μmの紡錘状ゲータイト粒子粉末又は該ゲータイト粒子粉末を加熱脱水して得られる紡錘状へマタイト粒子粉末を出発原料として紡錘状合金磁性粒子粉末を得る製造法において、前記出発原料を不活性ガス雰囲気下で350〜600℃の温度範囲まで昇温し、次いで還元性ガス雰囲気に切り替えた後、350〜600℃の温度範囲で加熱還元を行って紡錘状合金磁性粒子粉末を得る第1工程、第1工程で得た紡錘状合金磁性粒子粉末を酸素含有不活性ガス雰囲気下で80〜200℃の温度範囲で表面酸化を行って該紡錘状合金磁性粒子粉末の飽和磁化値を100〜135Am2/kgとする第2工程、第2工程を経由した紡錘状合金磁性粒子粉末を不活性ガス雰囲気下で第1工程の還元温度よりも50℃以上高く、且つ、450〜700℃の温度範囲まで昇温し、次いで、還元性ガス雰囲気に切り替えた後、450〜700℃の温度範囲で再度加熱還元を行う第3工程及び第3工程を経由した紡錘状合金磁性粒子粉末を5〜10g/m3の水蒸気と酸素とを含んだ不活性ガス雰囲気下で40〜160℃の温度範囲で再度表面酸化を行って該紡錘状合金磁性粒子粉末の飽和磁化値を135〜160Am2/kgとする第4工程からなることを特徴とする磁気記録用Fe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末の製造法である。
【0025】
次に、本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
【0026】
本発明における出発原料には、全Feに対してCo換算で20〜45原子%のコバルトを含有し、平均長軸径が0.05〜0.15μmである紡錘状ゲータイト粒子粉末又は該ゲータイト粒子粉末を加熱脱水処理して得られた全Feに対してCo換算で20〜45原子%のコバルトを含有し、平均長軸径が0.05〜0.13μmである紡錘状へマタイト粒子粉末を用いる。
【0027】
本発明における出発原料は、紡錘状粒子であり、樹枝状粒子が混在せず、サイズ分布に優れるものである。
【0028】
本発明における出発原料のコバルトの含有量が全Feに対して20原子%未満の場合には、得られたFe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末は酸化安定性を十分に改良することができず、また、大きな飽和磁化値が得られ難い。45原子%を超える場合は、還元速度の制御が非常に難しくなり、加熱還元時に粒子及び粒子相互間で形状破壊や焼結を生じ、高い保磁力が得られ難くなる。
【0029】
本発明における出発原料の平均長軸径が0.05μm未満の場合には、得られる紡錘状合金磁性粒子が超常磁性となるため大きな飽和磁化値が得られず、同時に高い保磁力も得られ難くなる。逆に0.15μmを超える場合には、目的とする高い保磁力が得られない。
【0030】
本発明における紡錘状ゲータイト粒子粉末は、焼結防止効果や還元速度の制御を考慮すると、平均短軸径が0.010〜0.023μm、全Feに対してAl換算で5〜15原子%のアルミニウムを含有し、軸比(平均長軸径/平均短軸径)が4〜8、BET比表面積値が100〜250m2/gであることが好ましい。
【0031】
本発明における紡錘状ゲータイト粒子粉末は、粒子表面をCo化合物、Al化合物及び焼結防止剤で被覆してもよい。
【0032】
焼結防止剤としては、希土類元素の化合物を用いることができ、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、サマリウム等の1種又は2種以上が好ましい。特に、イットリウム、ネオジウムが好適である。
【0033】
なお、焼結防止効果の向上のため、あるいは、必要によりその他の元素としてSi、B、Ca、Mg、Ba、Sr等から選ばれる元素の化合物の1種又は2種以上を使用してもよい。これらの化合物は、焼結防止効果を有するだけでなく、還元速度を制御する働きも有するので、必要に応じて組み合わせて使用すればよい。
【0034】
本発明における紡錘状へマタイト粒子粉末は、焼結防止効果や還元速度の制御を考慮すると、平均短軸径が0.010〜0.022μmであって、全Feに対してAl換算で5〜15原子%のアルミニウムと希土類元素換算で5〜10原子%の希土類元素を含有し、軸比(平均長軸径/平均短軸径)が4〜8、BET比表面積値が50〜120m2/gであることが好ましい。
【0035】
また、紡錘状ヘマタイト粒子粉末は、紡錘状ゲータイト粒子粉末を酸化性雰囲気下で150〜350℃の温度範囲で加熱脱水し、更に、同雰囲気下で450℃を超えて700℃未満の温度範囲で加熱処理して得ることが好ましい。
【0036】
また、紡錘状ゲータイト粒子粉末の生成反応に由来して含有されているNa2SO4などの不純物塩を除去するために加熱処理後の紡錘状ヘマタイト粒子粉末を洗浄してもよい。この場合において、被覆された焼結防止剤が溶出しない条件で洗浄を行うことにより、不要な不純物の除去を行うことが好ましい。
【0037】
本発明において還元装置へ投入するに当っては、前記出発粒子粉末を常法により造粒して平均径1〜5mmの顆粒状物にして用いることが好ましい。
【0038】
本発明における還元装置としては、固定層を形成させた還元装置が好ましく、具体的には、静置式還元装置(バッチ式)もしくはベルト上に固定層を形成して該ベルトを移送させながら還元する移動式還元装置(連続式)が好ましい。
【0039】
本発明における固定層の層高は、30cm以下が好ましい。30cmを超える場合には、多量にCoを含有するため還元促進作用が顕著であるのと同時に、固定層の層下部の急激な還元による水蒸気分圧の増大によって、固定層上部の保磁力が低下する等の問題が起こり、全体として特性が劣化する。工業的な生産性を考慮すると、3〜30cmがより好ましい。なお、バッチ式(特開昭54−62915号公報、特開平4−224609号公報等)、連続式(特開平6−93312号公報等)では生産性が異なるため、バッチ式の固定層還元装置では8cmを超え、30cm以下が好ましい。
【0040】
本発明では、第1工程及び第3工程の加熱還元温度まで昇温する期間の雰囲気は不活性ガス雰囲気である。不活性ガス雰囲気としては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等が好ましく、殊に窒素ガスが好適である。不活性ガス以外の雰囲気では、温度が経時的に変化する昇温時に還元が起こり、金属磁性粒子生成時の還元温度が一定にできないため、均一な粒子成長が起こりにくく高い保磁力が得られない。
【0041】
なお、第1工程及び第3工程の昇温速度は特に限定されないが、2〜100℃/minが好ましい。
【0042】
また、第1工程及び第3工程の昇温時の不活性ガスのガス空塔速度は特に限定されないが、出発原料の顆粒状物が飛散したり、破壊されたりしない速度にすればよい。
【0043】
また、第1工程及び第3工程の昇温時の不活性ガス雰囲気から加熱還元工程の還元性ガス雰囲気への切り替えは、還元装置の種類によって異なり、工業的には、バッチ式の場合では還元装置内の圧力を制御しながら段階的に行う方法が好ましく、連続式の場合では昇温ゾーンと還元ゾーンとを区分する方法が好ましい。いずれの場合も短時間で切り替えを行う方が好ましく、少なくとも10分以内に行うことが好ましい。
【0044】
本発明の第1工程及び第3工程の加熱還元工程における雰囲気は、還元性ガスであり、還元性ガスとしては水素が好適である。
【0045】
本発明における第1工程の加熱還元温度は350〜600℃であり、好ましくは、400〜550℃である。加熱還元温度は、出発原料の被覆処理に用いた化合物の種類、量に応じて上記温度範囲から適宜選択することが好ましい。加熱還元温度が350℃未満の場合には、還元の進行が非常に遅く工業的でなく、得られた紡錘状合金磁性粉末の飽和磁化値も低いものとなる。600℃を超える場合には、還元反応が急激に進行して粒子の形状破壊や粒子及び粒子相互間の焼結を引き起こしてしまい、保磁力が低下する。
【0046】
本発明における第1工程の還元性ガスのガス空塔速度は、40〜150cm/sが好ましい。ガス空塔速度が40cm/s未満の場合、出発原料の還元で発生した水蒸気が系外に運ばれる速度が非常に遅くなるため、層上部の保磁力、SFDが低下し、全体として高い保磁力が得られない。150cm/sを超える場合、目的とする紡錘状合金磁性粒子粉末は得られるが、還元温度が高温を要したり、造粒物が飛散し破壊されるなどの問題が起こり易く好ましくない。
【0047】
本発明における第2工程は、酸素を含んだ不活性ガス雰囲気で表面酸化処理を行う。不活性ガス雰囲気としては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等が好ましく、殊に窒素ガスが好適である。酸素の含有量は0.1〜5vol%が好ましく、所定量まで徐々に酸素量を増加させることが好ましい。
【0048】
本発明における第2工程の反応温度は、80〜200℃であり、好ましくは、80〜180℃である。80℃未満の場合には、十分な厚さを有する表面酸化層を形成することが困難である。200℃を超える場合には、粒子の形骸変化、特に酸化物が多量に生成されるため短軸が極端に膨張し、場合によっては、形骸破壊が起こりやすいため好ましくない。
【0049】
第2工程を終了した紡錘状合金磁性粒子粉末は、飽和磁化値が100〜135Am2/kg(100〜135emu/g)であり、好ましくは105〜130Am2/kg(105〜130emu/g)である。飽和磁化値が100Am2/kg未満の場合には、表面酸化層が厚くなりすぎるため、第3工程の加熱還元処理を行っても保磁力の大きな紡錘状合金磁性粒子粉末を得ることができない。130Am2/kgを超える場合には、表面酸化層の形成が不十分であるため、緻密な表面酸化層を形成することができない。
【0050】
なお、第2工程において粒子全体を酸化した場合には、粒子の形骸変化、特に短軸成長が起こり、酸化物が多量に生成されるため短軸が極端に膨張し、場合によっては、形骸破壊が起こるため、再度還元しても既に形状が崩れているので、保磁力は向上しない。
【0051】
本発明における第3工程の加熱還元温度は、第1工程の加熱還元温度よりも50℃以上高い温度で、且つ、450〜700℃の温度範囲である。第1工程の加熱還元温度よりも50℃以上高くない場合及び450℃未満の場合には、還元の進行が非常に遅く工業的でなく、第2工程で形成した表面酸化層の還元及び粒子全体の緻密化が困難となる。700℃を超える場合には、粒子の形状破壊や粒子及び粒子相互間の焼結を引き起こしてしまい、保磁力が低下する。第3工程の加熱還元温度は、好ましくは、500〜650℃である。
【0052】
本発明における第3工程の加熱還元工程での還元性ガスのガス空塔速度は、前記第1工程と同様に40〜150cm/sが好ましい。
【0053】
本発明における第4工程は、5〜10g/m3の水蒸気と酸素を含んだ不活性ガス雰囲気で表面酸化処理を行う。水蒸気の含有量が5g/m3未満の場合には、緻密で薄い表面酸化層を形成することが難しく、保磁力の向上も十分とは言い難いものである。水蒸気の含有量が10g/m3を超える場合には、目的とする効果が得られるため、必要以上に含有させる意味がない。水蒸気の含有量は好ましくは、2〜8g/m3である。また、酸素の含有量は0.1〜5vol%が好ましく、所定量まで徐々に増加させることが好ましい。不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス及びアルゴンガス等が好ましく、殊に、窒素ガスが好適である。
【0054】
本発明における第4工程の反応温度は40〜160℃であり、好ましくは40〜140である。なお、第4工程の反応温度は、第2工程の表面酸化処理温度よりも低いことが好ましい。40℃未満の場合には、表面酸化層の形成が不十分なため好ましくない。160℃を超える場合には、表面酸化層が厚くなり、飽和磁化値が低下するため好ましくない。
【0055】
次に、本発明に係る製造法によって得られたFe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末について述べる。
【0056】
本発明におけるFe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末は、Coを全Feに対して20〜45原子%、好ましくは20〜40原子%含有する。平均長軸径が0.05〜0.12μmであり、結晶子サイズD110は140〜160Åである。また、標準偏差が0.02μm以下が好ましく、サイズ分布が0.20以下が好ましく、BET比表面積値が40〜60m2/gであることが好ましい。
【0057】
本発明におけるFe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末は、保磁力Hcが175.1〜198.9kA/m(2200〜2500Oe)であって、飽和磁化値σsが135〜160Am2/kg(135〜160emu/g)である。角型比(σr/σs)が0.52〜0.55、飽和磁化値の酸化安定性Δσsは10%以下である。
【0058】
なお、本発明におけるFe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末を用いて得られた磁性塗膜は、保磁力Hcが175.1〜198.9kA/m(2200〜2500Oe)であって、角形比(Br/Bm)が0.85以上、SFDが0.40以下、酸化安定性ΔBmが8%未満、塗膜の回転ヒステリシス積分値(RHI)が1未満である。
【0059】
【発明の実施の形態】
本発明の代表的な実施の形態は次の通りである。
【0060】
本発明における紡錘状ゲータイト粒子粉末、紡錘状へマタイト粒子粉末及びFe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末の平均長軸径、平均短軸径及び軸比は、いずれも電子顕微鏡写真から測定した数値の平均値で示した。
【0061】
本発明における紡錘状ゲータイト粒子粉末、紡錘状へマタイト粒子粉末及びFe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末のCo量、Al量、希土類元素量及びその他の金属元素の含有量は、「誘導結合プラズマ発光分光分析装置SPS4000」(セイコー電子工業(株)製)を使用して、測定した。
【0062】
粒子粉末のBET比表面積値は、「モノソーブMS−11」(カンタクロム(株)製)を使用して、BET法により測定した値で示した。
【0063】
結晶子サイズD110(紡錘状合金磁性粒子のX線結晶粒径)は、「X線回折装置」(Rigaku製)(測定条件:ターゲットCu、管電圧40kV、管電流40mA)を使用して、X線回折法で測定される結晶粒子の大きさを、紡錘状合金磁性粒子の(110)結晶面のそれぞれに垂直な方向における結晶粒子の厚さを表したものであり、各結晶面についての回折ピーク曲線から、下記のシェラーの式を用いて計算した値で示したものである。
【0064】
D110=Kλ/βcosθ
【0065】
但し、β=装置に起因する機械幅を補正した真の回折ピークの半値幅(ラジアン単位)。
K=シェラー定数(=0.9)、
λ=X線の波長(Cu Kα線 0.1542nm)、
θ=回折角((110)面の回折ピークに対応)。
【0066】
Fe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末の磁気特性は、「振動試料磁力計VSM−3S−15」(東英工業(株)製)を使用して、外部磁場795.8kA/m(10kOe)で測定した。
【0067】
磁性塗膜片の磁気特性は、下記の成分を100mlのポリビンに下記の割合で入れた後、ペイントシェーカー(レッドデビル社製)で8時間混合分散を行うことにより調製した磁性塗料を厚さ25μmのポリエチレンテレフタートフィルム上にアプリケータを用いて50μmの厚さに塗布し、次いで、5kGaussの磁場中で乾燥させることにより得た磁性塗膜片の磁気特性を測定した。
【0068】
3mmφスチールボール: 800重量部、
Fe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末:100重量部、
スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂:20重量部、
シクロヘキサノン: 83.3重量部、
メチルエチルケトン: 83.3重量部、
トルエン: 83.3重量部。
【0069】
粉体の飽和磁化値の酸化安定性の評価であるΔσs及び磁性塗膜の飽和磁束密度Bmの耐候性の評価であるΔBmは、温度60℃、相対湿度90%の恒温槽に粉体又は磁性塗膜片を一週間静置する促進経時試験の後に、粉体の飽和磁化値及び磁性塗膜の飽和磁束密度をそれぞれ測定し、試験開始前に測定したσs及びBmと促進経時試験一週間後のσs’及びBm’との差(絶対値)を試験開始前のσs及びBmでそれぞれ除した値をΔσs、ΔBmとして算出した。Δσs、ΔBmが0%に近いほど酸化安定性が優れていることを示す。
【0070】
磁性塗膜片の回転ヒステリシス積分値(RHI:rotatioal hysteresis integral)は、トルク型磁力計(デジタルメジャーメントシステムズ社製)を用いて下記のようにして求めた。
【0071】
まず、上記組成の磁性塗膜片をカプセルに詰め、15.9kA/m(200Oe)から795.8kA/m(10kOe)まで19.9kA/m(250Oe刻みで外部磁界を印加した状態で、磁界の回転角度を0→360°→0(5.63°刻み)と往復させて、各磁界でのヒステリシス損失を求め、それぞれの印可磁界の逆数(1/H)でプロットし、回転ヒステリシス積分値を求めた。
【0072】
<紡錘状ゲータイト粒子粉末の製造>
炭酸ナトリウム25molと、水酸化ナトリウム水溶液を20mol(混合アルカリに対し水酸化ナトリウムは規定換算で28.6mol%に該当する。)を含む混合アルカリ水溶液30lを気泡塔の中に投入し、窒素ガスを通気しながら47℃に調整する。次いでFe2+として20molを含む硫酸第一鉄水溶液20l(硫酸第一鉄に対し混合アルカリ水溶液は規定換算で1.75当量に該当する。)を気泡塔中に投入して20分間熟成した後、Co2+4.2molを含む硫酸コバルト水溶液4l(全Feに対しCo換算で21原子%に該当する。)を添加し、さらに4時間40分間熟成した後、空気を通気してFe2+の酸化率40%まで酸化反応を行ってゲータイト種晶粒子を生成させた。
【0073】
次いで、Al3+2.4molを含む硫酸アルミニウム水溶液1l(全Feに対しAl換算で12原子%に該当する。)を添加して酸化反応を行った後、水洗してプレスケーキとした。
【0074】
前記ケーキの一部を常法により乾燥、粉砕を行って得られた紡錘状ゲータイト粒子粉末は、平均長軸径が0.131μm、平均短軸径が0.0175μm、軸比が7.5、標準偏差σが0.0250μm、サイズ分布(標準偏差/平均長軸径)が0.191、BET比表面積値が179.2m2/g、粒子全体としてCo含有量が全Feに対して21原子%、Al含有量が全Feに対して12原子%であった。
【0075】
<紡錘状へマタイト粒子粉末の製造>
次いで、得られた紡錘状ゲータイト粒子粉末のプレスケーキを水中に十分分散させた後、硝酸イットリウム水溶液と硫酸コバルト水溶液を添加し十分攪拌した。次いで攪拌しながら、炭酸ナトリウム水溶液を添加して水溶液のpHを9.5に調整し、その後、フィルタープレスで濾過、水洗し、プレスケーキを得た。得られたプレスケーキを、押出し成型機を用いて孔径3mmの成型板で押出し成型し、次いで120℃で乾燥し、全Feに対してY換算で8原子%のY化合物と全Feに対してCo換算で12原子%のCo化合物とが被覆された紡錘状ゲータイト粒子粉末の成型物を得た。得られた紡錘状ゲータイト粒子粉末中のCoの含有量は全Feに対して33原子%、Alの含有量は全Feに対して12原子%、Yの含有量は全Feに対して8原子%であった。
【0076】
前記Y、Co化合物が被覆された紡錘状ゲータイト粒子粉末の成型物を空気中300℃で脱水し、その後、同雰囲気中600℃で加熱脱水して紡錘状ヘマタイト粒子粉末の成型物を得た。得られた紡錘状ヘマタイト粒子粉末成型物は、顆粒状で、平均径が2.6mmであった。
【0077】
得られた紡錘状ヘマタイト粒子粉末は、平均長軸径が0.121μm、平均短軸径が0.0168μm、軸比が7.2、標準偏差σが0.0220μm、サイズ分布が0.182、BET比表面積値が94.2m2/gであり、該粒子中のCoの含有量は全Feに対して33原子%、Alの含有量は全Feに対して12原子%、Yの含有量は全Feに対して8原子%であった。
【0078】
<紡錘状合金磁性粒子粉末の製造>
次いで、ここに得た紡錘状ヘマタイト粒子粉末の顆粒状成型物100g(平均径:2.6mm)を内径72mmのバッチ式固定層還元装置に入れ、層高を5.5cmとした後、500℃でガス空塔速度50cm/sの窒素ガスを通気しながら、500℃まで加熱昇温し、次いで、水素ガスに切り替えてガス空塔速度50cm/sの水素ガスを通気しながら、500℃で排気ガス露点が−30℃に達するまで加熱還元して紡錘状合金磁性粒子粉末を得た(第1工程)。
【0079】
その後、再び窒素ガスに切り替えて80℃まで冷却し、品温を80℃で保持し、次いで空気を混合して酸素濃度を0.35vol%まで徐々に増加させて品温が[保持温度+1]℃になるまで(最大品温140℃、処理時間2時間)表面酸化処理を行い、粒子表面に表面酸化層を形成した(第2工程)。
【0080】
第2工程終了後の紡錘状合金磁性粒子粉末の飽和磁化値は128.2Am2/kgであった。次に、不活性ガス雰囲気下で600℃まで昇温し、ガス空塔速度60cm/sの水素ガスに切り換えて排気ガス露点が−30℃に達するまで再度加熱還元した(第3工程)。
【0081】
その後、再び窒素ガスに切り替えて80℃まで冷却し、品温を80℃で保持し、次いで水蒸気6g/m3と空気を混合して酸素濃度を0.35vol%まで徐々に増加させて、品温が[保持温度+1]℃となるまで(最大品温120℃、処理時間1.25時間)表面酸化処理を行い、粒子表面に安定な表面酸化層を形成して紡錘状合金磁性粒子の成型物を得た(第4工程)。
【0082】
得られた紡錘状合金磁性粉末は、平均長軸径が0.110μm、BET比表面積値が51.0m2/g、結晶子サイズD110が155Åの粒子からなり、紡錘状かつ粒度が均整で樹枝状粒子がないものであった。また、該粒子中のCo含有量は全Feに対して33原子%、Al含有量は全Feに対して12原子%、Y含有量は8原子%であった。
【0083】
また、該紡錘状合金磁性粒子粉末の磁気特性は、保磁力Hcが193.6kA/m(2433Oe)、飽和磁化値σsが138.4Am2/kg(138.4emu/g)、角型比(σr/σs)が0.534、飽和磁化値の酸化安定性Δσsが絶対値として2.7%(実測値−2.7%)であった。また、磁性塗膜の特性は、保磁力Hcが193.8kA/m(2435Oe)、角形比(Br/Bm)が0.87、SFDが0.38、酸化安定性ΔBmが絶対値として2.4%(実測値−2.4%)であった。また、その塗膜の回転ヒステリシス積分値(RHI)は0.93であった。
【0084】
【作用】
本発明において最も重要な点は、Fe及びCoを含有する紡錘状合金磁性粒子粉末の製造法において、適切な条件で加熱還元処理及び表面酸化処理を繰り返すことで、得られる紡錘状合金磁性粒子粉末は、小さい結晶子サイズ、殊に160Å以下であるにもかかわらず、高い保磁力と大きな飽和磁化値及び優れた酸化安定性を有するという事実である。
【0085】
本発明に係る製造法において、高い保磁力と大きな飽和磁化値及び優れた酸化安定性を有する紡錘状合金磁性粒子粉末を得られる理由について未だ明らかではないが、本発明者は紡錘状合金磁性粒子粉末の粒子表面に薄くて緻密な表面酸化層が形成されたことによるものと推定している。
【0086】
即ち、第1工程の還元処理で緩やかに結晶成長させ、次いで第2工程の表面酸化層の形成条件を過酷にして形成される表面酸化層を厚くし、その後、第3工程において還元温度を高くすることにより第2工程で形成された表面酸化層は還元されると同時に粒子全体が緻密化し、更に、第4工程で得られる表面酸化層は結晶変態を繰り返すことにより強固で緻密な層が形成されるため、第4工程の酸化条件を緩やかにし、表面酸化層を薄く形成しても、優れた酸化安定性が達成でき、また、第4工程において水蒸気を導入することも、Fe−Co酸化物の状態が形状あるいは結晶異方性を向上させ、保磁力の向上に上手く関与しているものと推定される。
【0087】
本発明に係る製造法によって得られた紡錘状合金磁性粒子粉末は、保磁力と飽和磁化値及び酸化安定性の関係が良好である。即ち、図1(飽和磁化値σsと保磁力Hcの関係)では、本発明における紡錘状合金磁性粒子粉末の特性は、保磁力と飽和磁化値が共に高い値を示している。また、図2(飽和磁化値σsと酸化安定性Δσsの関係)に示すように、本発明における紡錘状合金磁性粒子粉末は、飽和磁化値が高いにも関わらず、酸化安定性にも優れている。従って、本発明における紡錘状合金磁性粒子粉末は、保磁力と飽和磁化値及び酸化安定性の関係が良好であると言える。
【0088】
更に、得られた紡錘状合金磁性粒子粉末を用いた塗膜において、回転ヒステリシス積分値が1未満の優れた値を示すのは、紡錘状合金磁性粒子がより緻密化したことから磁化反転機構を示す指標である磁化反転機構が一斉回転に近づいたことによるものと本発明者は考えている。
【0089】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げる。
【0090】
出発原料1〜2:
出発原料粒子粉末として、表1に示した特性を有する出発原料を準備した。
尚、出発原料1は実施の形態に記載の紡錘状ヘマタイト粒子粉末と同様の粒子粉末である。出発原料2は実施の形態に記載の紡錘状ゲータイト粒子粉末に対して被覆するCo化合物の量を変化させ、次いで、ヘマタイト粒子粉末を得るときの加熱脱水温度を580℃にした以外は前記発明の実施の形態と同様にして得た紡錘状ヘマタイト粒子粉末である。
【0091】
【表1】
【0092】
実施例1〜5、比較例1〜6:
出発原料の種類及びそれぞれの製造条件を種々変化させた以外は前記発明に実施の形態と同様にして紡錘状合金磁性粒子粉末を得た。
【0093】
このときの製造条件を表2に、得られた紡錘状合金磁性粒子粉末の諸特性を表3に示す。なお、実施例5の出発原料は、発明の実施の形態に記載のY化合物とCo化合物とが被覆された紡錘状ゲータイト粒子粉末である(紡錘状ゲータイト粒子粉末の組成は、全Feに対してCo含有量が33原子%、Al含有量が12原子%、Y含有量が8原子%である。)。
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
表3に示した各々の紡錘状合金磁性粒子粉末を用いて、前記発明の実施の形態と同様にして磁性塗膜片を得た。得られた磁性塗膜片の諸特性を表4に示す。
【0097】
【表4】
【0098】
【発明の効果】
本発明に係るFe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子の製造法によれば、表面酸化層が緻密化しやすいため薄く形成でき、しかも、粒子全体も緻密化しており、相乗的に高い保磁力と大きな飽和磁化値を共に満たした紡錘状合金磁性粒子を得ることができる。
【0099】
また、本発明に係る製造法により製造したFe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末を用いて得られた磁気記録媒体は、高い保磁力、高い飽和磁化値、優れた耐候性、且つ小さい回転ヒステリシス積分値を有するので、高密度記録、高出力の磁気記録媒体用のFe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 表3に示した紡錘状合金磁性粒子粉末のσsとHcの関係を示す。(◆:実施例、□:比較例)
【図2】 表3に示した紡錘状合金磁性粒子粉末のσsとΔσsの関係を示す。(◆:実施例、□:比較例)
Claims (1)
- 全Feに対してCo換算で20〜45原子%のコバルトを含有する平均長軸径が0.05〜0.15μmの紡錘状ゲータイト粒子粉末又は該ゲータイト粒子粉末を加熱脱水して得られる紡錘状へマタイト粒子粉末を出発原料として紡錘状合金磁性粒子粉末を得る製造法において、前記出発原料を不活性ガス雰囲気下で350〜600℃の温度範囲まで昇温し、次いで還元性ガス雰囲気に切り替えた後、350〜600℃の温度範囲で加熱還元を行って紡錘状合金磁性粒子粉末を得る第1工程、第1工程で得た紡錘状合金磁性粒子粉末を酸素含有不活性ガス雰囲気下で80〜200℃の温度範囲で表面酸化を行って該紡錘状合金磁性粒子粉末の飽和磁化値を100〜135Am2/kgとする第2工程、第2工程を経由した紡錘状合金磁性粒子粉末を不活性ガス雰囲気下で第1工程の還元温度よりも50℃以上高く、且つ、450〜700℃の温度範囲まで昇温し、次いで、還元性ガス雰囲気に切り替えた後、450〜700℃の温度範囲で再度加熱還元を行う第3工程及び第3工程を経由した紡錘状合金磁性粒子粉末を5〜10g/m3の水蒸気と酸素とを含んだ不活性ガス雰囲気下で40〜160℃の温度範囲で再度表面酸化を行って該紡錘状合金磁性粒子粉末の飽和磁化値を135〜160Am2/kgとする第4工程からなることを特徴とする磁気記録用Fe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末の製造法。
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