JP3603926B2 - 紡錘状ゲータイト粒子粉末及びその製造法、紡錘状ヘマタイト粒子粉末及びその製造法並びに鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末及びその製造法 - Google Patents
紡錘状ゲータイト粒子粉末及びその製造法、紡錘状ヘマタイト粒子粉末及びその製造法並びに鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末及びその製造法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粒度が均斉であって樹枝状粒子が混在しておらず、しかも、適切な粒子形状と大きな軸比(長軸径/短軸径−以下、同じ)を有している紡錘状ゲータイト粒子粉末、紡錘状ヘマタイト粒子粉末並びに該紡錘状ゲータイト粒子粉末又は紡錘状ヘマタイト粒子粉末を出発原料として得られる高い保磁力と優れた保磁力分布とを有している鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ビデオ用、オーディオ用の磁気記録再生用機器の長時間記録化、小型軽量化が激化しており、特に、昨今におけるVTR(ビデオ・テープ・レコーダー)の普及は目覚しく、長時間記録化並びに小型軽量化を目指したVTRの開発が盛んに行われている。一方においては、磁気記録媒体である磁気テープに対する高性能化、高密度記録化の要求が益々高まってきている。
【0003】
即ち、磁気記録媒体の高画像画質、高出力特性、殊に周波数特性の向上が要求され、その為には、残留磁束密度Brの向上、高保磁力化並びに、分散性、充填性、テープ表面の平滑性の向上が必要であり、益々S/N比の向上が要求されてきている。
磁気記録媒体のこれらの諸特性は磁気記録媒体に使用される磁性粒子粉末と密接な関係を有するものであるが、近年においては、従来の酸化鉄磁性粒子粉末に比較して高い保磁力と大きな飽和磁化を有する鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末が注目され、ディジタルオーディオテープ(DAT)、8mmビデオテープ、Hi−8テープ並びにビデオフロッピー等の磁気記録媒体に使用され実用化されている。しかしながらこれらの鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末についても更に特性改善が強く望まれている。
【0004】
今、磁気記録媒体の諸特性と使用される磁性粒子粉末の特性との関係について詳述すれば次の通りである。ビデオ用磁気記録媒体として高画像画質を得る為には、日経エレクトロニクス(1976年)5月3日号第82〜105頁の記録からも明らかな通り、(1)ビデオS/N比、(2)クロマS/N比、(3)ビデオ周波数特性の向上が要求される。
【0005】
ビデオS/N比及びクロマS/N比の向上をはかる為には、磁性粒子粉末のビヒクル中での分散性、塗膜中での配向性及び充填性を向上させること、並びに、磁気記録媒体の表面平滑性を改良することが重要であり、そのような磁性粒子粉末としては、粒度が均斉であって、樹枝状粒子が混在しておらず、しかも、適切な粒子形状と軸比であることが要求される。
【0006】
次に、ビデオ周波数特性の向上を図る為には、磁気記録媒体の保磁力Hcが高く、且つ、残留磁束密度Brが大きいことが必要である。磁気記録媒体の保磁力Hcを高める為には、磁性粒子粉末の保磁力Hcができるだけ高いことが要求されている。磁性粒子粉末の保磁力は、一般にはその形状異方性に起因して生じる為粒子の軸比が大きくなる程保磁力は増加する傾向にある。
【0007】
また、磁気記録媒体の高出力化の為には、特開昭63−26821号公報の「第1図は、上記した磁気ディスクについて測定されたS.F.D.と記録再生出力との関係を示す図である。‥‥S.F.D.と記録再生出力の関係は、第1図から明らかな様に直線になり、これにより、S.F.D.の小さい強磁性粉末を使うことで、記録再生出力が上ることがわかる。即ち、記録再生出力を高出力化するためには、S.F.D.は小さい方が望ましく、通常以上の出力を得るには、0.6以下のS.F.D.が必要である。」なる記載の通り、磁気記録媒体のS.F.D.(Switching Field Distribution)、即ち、保磁力分布が小さいことが必要であり、その為には、磁性粒子粉末の粒度が出来るだけ均斉であって樹枝状粒子が混在していないことが要求されている。
【0008】
上述した通り、粒度が均斉であって樹枝状粒子が混在しておらず、適切な粒子形状と軸比を有しており、しかも、高い保磁力と優れた保磁力分布とを有している鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末は、現在、最も要求されているところである。
【0009】
一般に、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末は、出発原料であるゲータイト粒子、該ゲータイト粒子を加熱脱水して得られるヘマタイト粒子、又は前記各粒子に鉄以外の異種金属を含有させた粒子等を、必要により非還元性雰囲気下で加熱処理した後、還元性ガス雰囲気下で加熱還元することにより得られている。従って、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末は、その出発原料であるゲータイト粒子粉末の形状を相似的に継承し、軸比はゲータイト粒子の軸比が高いほど金属磁性粒子の軸比も高くなることが知られており、前記諸特性を有する鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末を得るにあたっては、粒度が均斉であって樹枝状粒子が混在しておらず、しかも、適切な粒子形状と軸比を有しているゲータイト粒子粉末を用いることが必要であり、また、その粒子形状や均斉な粒度等を後の加熱処理工程において保持継承させることが必要である。
【0010】
従来、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の出発原料であるゲータイト粒子粉末を製造する方法としては、種々の方法が知られている。殊に金属磁性粒子粉末とした場合に磁気特性の向上効果があるCoや、金属磁性粒子粉末にした場合に焼結防止効果を有するため、形状保持性に優れるAl等の金属化合物をゲータイト粒子の生成過程において、あらかじめ添加する方法としては、次のものが知られている。例えば、コバルト化合物の存在下に第一鉄塩水溶液に当量以下の水酸化アルカリ水溶液を加えて得られる水酸化第一鉄コロイドを含む懸濁液を50℃で酸素含有ガスを通気して酸化反応を行うことにより針状ゲータイト粒子を生成させ、さらに成長反応を行う方法(特開平7−11310号公報)、Alの酸性塩化合物を添加した第一鉄塩水溶液とAlの塩基性塩化合物を添加した炭酸アルカリ水溶液とを反応させて得られたFeCO3 を含む懸濁液に酸素含有ガスを通気して酸化反応を行うことにより紡錘状を呈したゲータイト粒子を生成させる方法(特開平6−228614号公報)、第二鉄塩およびCo化合物の混合水溶液を水酸化アルカリ水溶液で中和し、加水分解で得られたゲータイト種晶粒子をAl化合物を存在させた第二鉄塩水溶液中で、水酸化アルカリ水溶液を中和することで加水分解反応により成長反応を行う方法(特開昭58−176902号公報)、炭酸アルカリ水溶液と第一鉄塩水溶液とを反応させて得られた第一鉄含有沈澱物を含む懸濁液を非酸化性雰囲気下において熟成させた後、該懸濁液中に酸素含有ガスを通気して酸化反応を行うことにより紡錘状を呈したゲータイト粒子を生成させるにあたり、前記第一鉄塩水溶液、前記第一鉄含有沈澱物を含む懸濁液及び酸化反応を行う前の前記熟成させた第一鉄含有沈澱物を含む懸濁液のいずれかの液中に、あらかじめ、Co化合物を存在させ、さらに前記第一鉄塩水溶液中のFe2+に対し50〜90%の範囲にある酸化反応途上の液中に、前記酸化反応と同条件下において、Al、Si、Ca、Mg、Ba、Sr及びNd等の希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の化合物の水溶液を、前記第一鉄塩水溶液中のFe2+に対し添加する化合物の各元素換算の総和で0.1〜5.0mol%の範囲の量となるように添加する方法(特開平7−126704号公報)等が知られている。
【0011】
なお、前出各公報には、各公報記載の各ゲータイト粒子粉末を出発原料として得られた鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末についても記載されている。
【0012】
また、ヘマタイト粒子のX線結晶粒径の比を特定したものとしては、(104)面に垂直方向のX線結晶粒径D104 と(110)面に垂直方向のX線結晶粒径D110 の比D104 /D110 が1〜2の範囲にあり、比表面積が40〜50m2 /gである微細針状α−酸化第二鉄粒子(特開平7−206446号公報)がある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
粒度が均斉であって樹枝状粒子が混在しておらず、適切な粒子形状と高い軸比を有しており、しかも、高い保磁力と優れた保磁力分布とを有している鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末は、現在最も要求されているところであるが、前出各公報記載の各ゲータイト粒子粉末を出発原料とした場合に得られる金属磁性粒子粉末は、これら諸特性を十分満足するものとはいいがたいものである。
【0014】
即ち、前出特開平7−11310号公報記載の製造法による場合には、ゲータイト粒子中にCo原子が存在している軸比10以上の針状ゲータイト粒子が生成するが、樹枝状粒子が混在しており、また、粒度から言えば、均斉な粒度を有した粒子とは言い難い。
【0015】
前出特開平6−228614号公報記載の製造法による場合は、樹枝状粒子が混在しておらず、また、均斉な粒度を有しているゲータイト粒子を、Alの添加方法を工夫することによって生成させることができるが、軸比の点で未だ十分ではない。
【0016】
前出特開平7−126704号公報記載の製造法においては、酸化反応の途中段階においてAlを添加している。酸化反応の途中段階ではCoイオンが溶液中に残存しており、溶液中にCoが存在した状態でAlを添加し、残存第一鉄イオンを酸化してゲータイト粒子を成長させると短軸方向への顕著な成長が認められ、軸比が低下することを後述するように本発明者は見出している。従って、軸比の大きな、殊に、13以上の紡錘状ゲータイト粒子の生成は困難である。
【0017】
前出特開昭58−176902号公報記載の製造法は3価の鉄を出発原料としており、反応機構が酸化ではなく加水分解であること、さらに2次反応は100℃を越える高温において水熱処理を行っており、本発明における反応とは異なるものである。
【0018】
また、前出各公報記載の製造法により得られたゲータイト粒子粉末を出発原料として得られた鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末もまた粒度が均斉であって樹枝状粒子が混在しておらず、しかも、大きな軸比を有しているとは言い難いものである。
【0019】
なお、前出特開平7−206446号公報記載の針状α−酸化第二鉄粒子は、X線結晶粒径の比D104 /D110 が1〜2の範囲であり、本発明におけるX線結晶粒径の比D104 /D110 の特定範囲にないものであって、むしろD110 のほうがD104 より小さいことからその結晶性が全く相違するものである。
しかも、前記針状α−酸化第二鉄粒子は、水熱反応によって得られたものである。一方、比較例として、ゲータイト粒子粉末を加熱脱水して得られるヘマタイト粒子のX線結晶粒径の比D104 /D110 が0.7であるものが記載されているが、本発明のX線結晶粒径の比の特定範囲にはないものである。
【0020】
そこで、本発明は、粒度が均斉であって樹枝状粒子が混在しておらず、しかも、適切な粒子形状と軸比を有している紡錘状ゲータイト粒子粉末を得、該紡錘状ゲータイト粒子粉末を出発原料として、高い保磁力と優れた保磁力分布とを有している鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末を得ることを技術的課題とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0022】
即ち、本発明は、平均長軸径が0.05〜1.0μmの紡錘状粒子であって、ゲータイト種晶部分とゲータイト表層部分とからなり、前記種晶部分にはCoを全Feに対して0.5〜25原子%含有し、且つ、前記表層部分にはCoを含有せずAlを全Feに対して0.5〜15原子%含有するとともに希土類元素を全Feに対して0.5〜10原子%含有しているゲータイト粒子からなることを特徴とする紡錘状ゲータイト粒子粉末である。
【0023】
また、本発明は、平均長軸径が0.05〜1.0μmの紡錘状粒子であって、ヘマタイト種晶部分とヘマタイト表層部分とからなり、前記種晶部分にはCoを全Feに対して0.5〜25原子%含有し、且つ、前記表層部分にはCoを含有せずAlを全Feに対して0.5〜15原子%含有し、且つ、前記種晶部分以外の表層部分に希土類元素を全Feに対して0.5〜15原子%含有しており、しかも、X線結晶粒径の比D104/D110が0.20〜0.65の範囲内にあるヘマタイト粒子からなることを特徴とする紡錘状ヘマタイト粒子粉末である。
【0024】
また、本発明は、炭酸アルカリ水溶液と水酸化アルカリ水溶液との混合アルカリ水溶液と第一鉄塩水溶液とを反応させて得られる第一鉄含有沈殿物を含む水懸濁液を非酸化性雰囲気下において熟成させた後、該水懸濁液中に酸素含有ガスを通気して紡錘状ゲータイト種晶粒子を生成させた後、該種晶粒子を含む水懸濁液中に、炭酸アルカリと水酸化アルカリとの混合アルカリ水溶液と第一鉄塩水溶液とを新たに添加、混合し、酸素含有ガスを通気して、前記紡錘状ゲータイト種晶粒子の粒子表面上にゲータイト層を成長させて紡錘状ゲータイト粒子を生成させるにあたり、前記種晶粒子の生成反応時において、第一鉄塩水溶液、第一鉄含有沈殿物を含む水懸濁液、酸化反応開始前の熟成中の第一鉄含有沈澱物を含む水懸濁液若しくは生成反応中の水懸濁液に、全Feに対しCo換算で0.5〜25原子%のCo化合物を添加し、且つ、前記ゲータイト層の成長反応時において、添加する各アルカリ水溶液、第一鉄塩水溶液、酸化反応開始前の紡錘状ゲータイト種晶粒子と第一鉄含有沈殿物とを含む水懸濁液若しくは成長反応中の水懸濁液に、全Feに対しAl換算で0.5〜15原子%のAl化合物及び希土類元素を全Feに対して0.5〜10原子%の希土類元素の化合物とをそれぞれ添加することを特徴とする前記紡錘状ゲータイト粒子粉末の製造法である。
【0025】
また、本発明は、前記紡錘状ゲータイト粒子粉末を焼結防止剤で焼結防止処理を行った後、400〜850℃の範囲内で加熱処理を行うことを特徴とする前記紡錘状ヘマタイト粒子粉末の製造法である。
【0026】
また、本発明は、焼結防止剤がAl化合物、希土類元素の化合物又はAl化合物及び希土類元素の化合物のいずれかであることを特徴とする前記紡錘状ヘマタイト粒子粉末の製造法である。
【0027】
また、本発明は、前記紡錘状ゲータイト粒子粉末を焼結防止剤で焼結防止処理を行った後、400〜850℃の範囲内で加熱処理を行い、さらに、還元性ガス雰囲気中、400〜600℃の範囲内で加熱還元することを特徴とする鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末の製造法である。
【0028】
また、本発明は、前記紡錘状ヘマタイト粒子粉末を還元性ガス雰囲気中、400〜600℃の範囲内で加熱還元することを特徴とする鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末の製造法である。
【0029】
また、本発明は、前記鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末の製造法により得られる平均長軸径が0.05〜0.5μmの紡錘状粒子であって、Coを全Feに対して0.5〜25原子%含有し、且つ、Alを全Feに対して0.5〜15原子%含有するとともに希土類元素を全Feに対して0.5〜15原子%含有している鉄を主成分とする金属磁性粒子からなることを特徴とする鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末である。
【0030】
本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
先ず、本発明に係る紡錘状ゲータイト粒子粉末について述べる。
【0031】
本発明に係る紡錘状ゲータイト粒子粉末を構成する粒子は平均長軸径が0.05〜1.0μm、好ましくは0.05〜0.5μmである。その形状は紡錘状であって軸比(長軸径/短軸径)が10〜15、好ましくは13〜15である。
【0032】
本発明に係る紡錘状ゲータイト粒子粉末は、BET比表面積が50〜180m2 /g、好ましくは60〜150m2 /gである。
【0033】
本発明に係る紡錘状ゲータイト粒子粉末を構成する粒子は、種晶部分と表層部分とから形成されている。
前記種晶部分とは、最初に添加した第一鉄塩が全て酸化されて形成されるゲータイト種晶粒子部分をいう。具体的には、成長反応において添加される第一鉄塩との比率により決まる重量比率の部分であって、好ましくは、種晶粒子の内部中心から50〜80重量%、より好ましくは55〜75重量%の部分である。
前記種晶部分のゲータイト種晶粒子に含有するCoは全Feに対して0.5〜25原子%、好ましくは1.0〜20原子%である。0.5原子%未満の場合には磁気特性の向上効果が得られない。25原子%を越える場合には、高い軸比が得られない。
前記表層部分とは、成長反応において添加した第一鉄塩が全て酸化されて、前記ゲータイト種晶粒子の粒子表面上に成長したゲータイト層をいう。具体的には、粒子の最表面から20〜50重量%、好ましくは25〜45重量%の部分である。
前記表層部分のゲータイト層に含有するAlは全Feに対して0.5〜15原子%、好ましくは1.0〜10原子%である。0.5原子%未満の場合には焼結防止効果が得られない。15原子%を超える場合には、高い軸比が得られにくい。
前記表層部分のゲータイト層に含有する希土類元素は、全Feに対して0.5〜10原子%、好ましくは1.0〜8.0原子%、より好ましくは1.0〜6.0原子%である。
【0034】
次に、本発明に係る紡錘状ゲータイト粒子粉末の製造法について述べる。
【0035】
本発明に係る紡錘状ゲータイト粒子粉末を構成する粒子は、まず、紡錘状ゲータイト種晶粒子を生成させ、次いで、該種晶粒子表面にゲータイト層を成長させる成長反応を行って得られる。
【0036】
前記紡錘状ゲータイト種晶粒子は、炭酸アルカリ水溶液と水酸化アルカリ水溶液との混合アルカリ水溶液と第一鉄塩水溶液とを反応させて得られる第一鉄含有沈殿物を含む水懸濁液を非酸化性雰囲気下において熟成させた後、該水懸濁液中に酸素含有ガスを通気して紡錘状ゲータイト種晶粒子を生成させるにあたり、第一鉄塩水溶液、第一鉄含有沈殿物を含む水懸濁液、酸化反応開始前の熟成中の第一鉄含有沈澱物を含む水懸濁液若しくは生成反応中の水懸濁液に、全Feに対しCo換算で0.5〜25原子%のCo化合物を添加しておくことによって得られる。
【0037】
前記紡錘状ゲータイト種晶粒子の生成反応において、第一鉄塩水溶液としては、硫酸第一鉄水溶液、塩化第一鉄水溶液等を使用することができる。
前記第一鉄塩水溶液と混合アルカリ水溶液との混合後の第一鉄濃度は、0.1〜1.0mol/l、好ましくは0.2〜0.8mol/lである。0.1mol/l未満の場合には、収量が少なく、工業的でない。1.0mol/lを越える場合には、粒径分布が大きくなるため好ましくない。
【0038】
前記紡錘状ゲータイト種晶粒子の生成反応において、アルカリ水溶液としては、炭酸アルカリ水溶液として炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸アンモニウム水溶液等、炭酸アルカリに混合する水酸化アルカリ水溶液として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を使用することができる。
【0039】
前記紡錘状ゲータイト種晶粒子の生成反応において使用される混合アルカリ水溶液は、炭酸アルカリ水溶液と水酸化アルカリ水溶液とを混合して得られる。この場合の混合比率(規定換算による%表示)として、水酸化アルカリ水溶液の割合は5〜35mol%(規定換算%)である、好ましくは10〜30%(規定換算%)であり、より好ましくは15〜25%(規定換算%)である。5%未満の場合には、十分な軸比が得られず、35%を越える場合には、粒状マグネタイトが混在してくることがある。
【0040】
前記混合アルカリ水溶液の使用量は、第一鉄塩水溶液中の全Feに対する当量比として1.3〜3.5、好ましくは1.5〜2.5である。1.3未満の場合には、マグネタイトが混在することがあり、3.5を越えると工業的に好ましくない。
【0041】
前記紡錘状ゲータイト種晶粒子の生成反応におけるpH値は、8.0〜11.0、好ましくは8.5〜10.0の範囲である。pHが8.0未満の場合には、ゲータイト粒子粉末中に酸根が多量に含まれるようになり、洗浄によっても簡単に除去することができないので、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末とした場合に粒子同志の焼結を引き起こしてしまう。11.0を越える場合には、金属磁性粒子粉末とした場合に目的とする高い保磁力が得られない。
【0042】
前記紡錘状ゲータイト種晶粒子の生成反応における酸化手段は、酸素含有ガス(例えば空気)を液中に通気することにより行う。
【0043】
前記紡錘状ゲータイト種晶粒子の生成反応における温度は、通常、ゲータイト粒子が生成する80℃以下の温度で行えばよい。80℃を越える場合には、紡錘状ゲータイト粒子中にマグネタイトが混在することがある。好ましくは45〜55℃の範囲である。
【0044】
前記紡錘状ゲータイト種晶粒子の生成反応において、Co化合物としては、硫酸コバルト、塩化コバルト、硝酸コバルト等を使用することができる。Co化合物の添加は、前記第一鉄塩水溶液、第一鉄含有沈澱物を含む懸濁液及び酸化反応を行う前の熟成されている第一鉄含有沈澱物を含む懸濁液若しくは生成反応中の水懸濁液のいずれかの液中に添加することができる。殊に、酸化反応を開始する直前までに添加することが好ましい。
前記Co化合物の添加量は、最終生成物である紡錘状ゲータイト粒子中の全Feに対して0.5〜25原子%、好ましくは1.0〜20.0原子%である。0.5原子%未満の場合には、金属磁性粒子粉末とした場合の磁気的特性の向上効果がなく、25原子%を越える場合には、微細化のため軸比が低下する。
【0045】
前記紡錘状ゲータイト種晶粒子を含む水懸濁液中に、炭酸アルカリ水溶液と水酸化アルカリ水溶液との混合アルカリ水溶液と第一鉄塩水溶液とを新たに添加、混合し、酸素含有ガスを通気して、前記紡錘状ゲータイト種晶粒子の粒子表面上にゲータイト層を成長させるにあたり、添加する各アルカリ水溶液、第一鉄塩水溶液、酸化反応開始前の紡錘状ゲータイト種晶粒子と第一鉄含有沈殿物とを含む水懸濁液、若しくは成長反応中の水懸濁液に、全Feに対しAl換算で0.5〜15原子%のAl化合物及び希土類元素を全Feに対し0.5〜10原子%の希土類元素の化合物とを添加することによって、目的とする紡錘状ゲータイト粒子粉末を得ることができる。
【0046】
前記ゲータイト層の成長反応において使用する第一鉄塩水溶液としては、硫酸第一鉄水溶液、塩化第一鉄水溶液等を挙げることができる。
前記第一鉄塩の添加量は、前記ゲータイト種晶粒子の生成反応における第一鉄塩の添加量との総量に対して、20〜50mol%、好ましくは25〜45mol%である。20mol%未満の場合には、紡錘状ゲータイト粒子の成長反応が十分生起せず、目的とする紡錘状ゲータイト粒子粉末が得られない。50mol%を越える場合には、ゲータイト粒子の新たな種晶が発生することによって樹枝状粒子が生成し、また、生成するゲータイト粒子の粒度が不均斉となる。
【0047】
前記ゲータイト層の成長反応において使用されるアルカリ水溶液は、前記紡錘状ゲータイト種晶粒子の生成反応において使用できるものの中から選択することができ、また、添加量も同様の範囲から選択することができる。
また、前記ゲータイト層の成長反応は、前記紡錘状ゲータイト種晶粒子の生成反応とできるだけ同一の条件とすることが好ましく、混合アルカリ水溶液中の水酸化アルカリ水溶液の割合及び第一鉄塩水溶液中の全Feに対するアルカリ当量比とを同一とすることがさらに好ましい。
【0048】
前記ゲータイト層の成長反応におけるpH値は、8.0〜11.0、好ましくは8.5〜10.0の範囲である。pHが8.0未満の場合には、ゲータイト粒子粉末中に酸根が多量に含まれるようになり、洗浄によっても簡単に除去することができないので、金属磁性粒子粉末とした場合に粒子同志の焼結を引き起こしてしまう。11.0を越える場合には、金属磁性粒子粉末とした場合に目的とする高い保磁力が得られない。
【0049】
前記紡錘状ゲータイト種晶粒子の生成反応時における反応液のpH値と前記ゲータイト層の成長反応時における反応液のpH値とは、各反応溶液中のpH値の差を±0.5の範囲内とする。pH値の差が±0.5を越える場合には、金属磁性粒子粉末の保磁力が未だ不十分である。好ましくは±0.3であり、より好ましくは±0.1である。
【0050】
前記ゲータイト層の成長反応における酸化手段は、酸素含有ガス(例えば空気)を液中に通気することにより行う。
【0051】
前記ゲータイト層の成長反応における温度は、通常、ゲータイト粒子が生成する80℃以下の温度で行えばよい。80℃を越える場合には、紡錘状ゲータイト粒子中にマグネタイトが混在することがある。好ましくは45〜55℃の範囲である。
【0052】
前記ゲータイト層の成長反応において、Al化合物としては、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等の酸性塩、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸アンモニウム等のアルミン酸塩を使用することができる。Al化合物の添加時期は、成長反応において添加する第一鉄塩水溶液、各アルカリ水溶液、酸素含有ガスを通気する前の紡錘状ゲータイト種晶粒子と第一鉄含有沈殿物とを含む水懸濁液若しくは成長反応中の水懸濁液のいずれに存在させてもよい。殊に、ゲータイト層の成長反応を開始する前が好ましい。また、Al化合物を分割添加したり連続的及び間欠的に添加しても本発明の効果はかわらず、むしろ向上させることができる。
この場合において、Al化合物の添加は、水懸濁液中にCo化合物が残存していない状態において行う。Co化合物の存在下でAl化合物の添加を行った場合には、生成するゲータイト粒子の軸比が低下してしまうため好ましくない。
【0053】
前記Al化合物の添加量は、最終生成物である紡錘状ゲータイト粒子中の全Feに対して0.5〜15原子%、好ましくは1.0〜10原子%である。0.5原子%未満の場合には、焼結防止効果がなく、15原子%を越える場合には、軸比が低下する。
【0054】
前記ゲータイト層の成長反応において、添加する前記希土類元素の化合物としては、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセウジウム、ネオジウム、サマリウム等の1種又は2種以上の化合物が好適であり、前記希土類元素の塩化物、硫酸塩、硝酸塩等が使用できる。その使用方法は乾式又は湿式のいずれでもよく、好ましくは湿式での被覆処理である。
希土類元素の化合物の添加は、前記Al化合物の添加と同時又は別々に行ってもよい。添加時期は成長反応において添加する第一鉄塩水溶液、各アルカリ水溶液、酸素含有ガスを通気する前の紡錘状ゲータイト種晶粒子と第一鉄含有沈澱物とを含む水懸濁液若しくは成長反応中の水懸濁液のいずれに存在させてもよい。殊に、ゲータイト層の成長反応を開始する前が好ましい。また、希土類元素の化合物を分割添加したり連続的及び間欠的に添加してもよい。
【0055】
その使用量は、希土類元素として全Feに対して0.5〜10原子%、好ましくは1.0〜8.0原子%、より好ましくは1.0〜6.0原子%である。0.5原子%未満の場合には、その後の加熱焼成、加熱還元時における焼結防止効果が十分でなく、金属磁性粒子粉末とした場合にSFD(保磁力分布)が悪化する。10原子%を越える場合には、ゲータイト表層部分へ含有されず単独で析出し、シート化した際にドロップアウトを引き起こすため好ましくない。
【0056】
なお、前記紡錘状ゲータイト種晶粒子の生成反応においては、第一鉄含有沈殿物を含む懸濁液を非酸化性雰囲気下で維持攪拌して行う、いわゆる熟成を行うことが好ましい。その場合の熟成は、非酸化性雰囲気下の前記懸濁液を、通常、40〜80℃の温度範囲で行うのが好適である。40℃未満の場合には、軸比が小さく十分な熟成効果が得られ難く、80℃を越える場合には、マグネタイトが混在してくることがある。熟成時間としては、30〜300分間である。30分間未満の場合には、十分に軸比を大きくすることができない。300分間を越えてもよいが、必要以上に長時間とする意味がない。
また、前記ゲータイト層の成長反応時においても熟成を行ってもよい。
【0057】
前記非酸性雰囲気とするには、前記懸濁液の反応容器内に不活性ガス(窒素ガスなど)又は還元性ガス(水素ガスなど)を通気すればよい。
【0058】
なお、本発明においては、鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末の諸特性の向上の為、前記紡錘状ゲータイト粒子の生成反応中に通常添加されるMg化合物を種晶粒子の生成反応時又は種晶粒子の成長反応中に添加しておいてもよい。
【0059】
次に、本発明に係る紡錘状ヘマタイト粒子粉末について述べる。
【0060】
本発明に係る紡錘状ヘマタイト粒子粉末を構成する粒子は、平均長軸径が0.05〜1.0μm、好ましくは0.05〜0.5μmである。その形状は紡錘状であって軸比(長軸径/短軸径)が10〜15、好ましくは11〜15である。
【0061】
本発明に係る紡錘状ヘマタイト粒子粉末は、BET比表面積が30〜140m2 /g、好ましくは35〜100m2 /gである。
【0062】
本発明に係る紡錘状ヘマタイト粒子粉末を構成する粒子は、種晶部分と表層部分とから形成されている。
前記種晶部分とは、前記ゲータイト粒子の種晶部分がそのまま変化したものであり、好ましくは、種晶粒子の内部中心から50〜80重量%、より好ましくは55〜75重量%である。
前記種晶部分のヘマタイト種晶粒子に含有するCoは全Feに対して0.5〜25原子%、好ましくは1.0〜20原子%である。0.5原子%未満の場合には、磁気特性の向上効果が得られない。25原子%を越える場合には、高い軸比が得られない。
前記表層部分とは、前記ゲータイト粒子の表層部分がそのまま変化したものであり、好ましくは、粒子の最表面から20〜50重量%、より好ましくは25〜45重量%の部分である。
前記表層部分のヘマタイト層に含有するAlは全Feに対して0.5〜15原子%、好ましくは1.0〜10原子%である。0.5原子%未満の場合には焼結防止効果が得られない。15原子%を越える場合には、高い軸比が得られにくい。
【0063】
本発明に係る紡錘状ヘマタイト粒子粉末を構成する粒子の希土類元素の含有量は、種晶部分以外の表層部分に全Feに対して0.5〜15原子%、好ましくは1.0〜12原子%である。0.5原子%未満の場合には、焼結防止効果が得られない。15原子%を越える場合には飽和磁化の減少が生じる。
【0064】
本発明に係る紡錘状ヘマタイト粒子粉末を構成する粒子は、X線結晶粒径D110 とD104 の比D104 /D110 が0.20〜0.65の範囲内であって、好ましくは含有する希土類元素として全Feに対する含有量x(原子%)についての下記不等式、
0.5≦x≦10の場合、
0.500−0.03x≦D104 /D110 ≦0.665−0.03x
10<x≦15の場合、
0.20≦D104 /D110 ≦0.365
を満たす範囲内にあるものである。この範囲については後出図1に示した通りである。X線結晶粒径の比D104 /D110 が0.20未満の場合及び0.65を越える場合のいずれにおいても、この紡錘状ヘマタイト粒子粉末を還元して得られる金属磁性粒子粉末をシート化した場合のSFD(保磁力分布)が悪化する。
【0065】
次に、本発明に係る紡錘状ヘマタイト粒子粉末の製造法について述べる。
【0066】
本発明においては、前記得られた紡錘状ゲータイト粒子粉末を、加熱脱水処理に先立って焼結防止のために焼結防止剤により前記紡錘状ゲータイト粒子表面を被覆処理しておく。
【0067】
前記焼結防止剤としては、希土類元素の化合物、Al化合物又はAl化合物及び希土類元素の化合物のいずれかを用いることが好ましく、さらにその他の金属元素の化合物を合わせて用いることができる。
【0068】
前記希土類元素の化合物としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、サマリウム等の1種又は2種以上の化合物が好適であり、前記希土類元素の塩化物、硫酸塩、硝酸塩等が使用できる。その処理方法は乾式又は湿式のいずれでもよく、好ましくは湿式での被覆処理である。
その使用量は、希土類元素の化合物を使用する場合には、希土類元素として前記ゲータイト表層部分に含有する希土類元素の含有量との合計として全Feに対して好ましくは0.5〜15.0原子%、より好ましくは1.0〜12.0原子%である。0.5原子未満の場合には、焼結防止効果が十分でなく、金属磁性粒子粉末とした場合にSFD(保磁力分布)が悪化する。15.0原子%を越える場合には、飽和磁化値が低くなる。
【0069】
前記Al化合物としては、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等の酸性塩、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸アンモニウム等のアルミン酸塩を使用することができる。
前記Al化合物の使用量は、前記紡錘状ゲータイト粒子の表層部分に含有するAlとの合計量として全Feに対してAl換算で好ましくは0.5〜15原子%、より好ましくは1.0〜10原子%である。0.5原子%未満の場合には、焼結防止効果がなく、15原子%を越える場合には金属磁性粒子粉末にしたときに磁気特性が悪くなる。
【0070】
なお、焼結防止効果の向上のため、必要によりその他の元素としてSi、B、Ca、Mg、Ba、Sr等から選ばれる元素の化合物の1種又は2種以上を使用してもよい。これらの化合物は、焼結防止効果を有するだけでなく、還元速度を制御する働きも有するので、必要に応じて組み合わせて使用すればよい。この場合の使用量の総量は、前記紡錘状ゲータイト粒子粉末の全Feに対して前記焼結防止剤として使用するAl化合物、希土類元素の化合物との合計量として好ましくは1〜15原子%である。少量では焼結防止の効果が十分ではなく、多過ぎると金属磁性粒子粉末とした場合に飽和磁化が低下するので組み合わせる種類により、最適量を適宜選べばよい。
【0071】
前記焼結防止剤等によってあらかじめ被覆しておくことにより、粒子及び粒子相互間の焼結が防止され、紡錘状ゲータイト粒子の粒子形状及び軸比をより一層保持継承した紡錘状ヘマタイト粒子粉末を得ることができ、これによって、前記形状等を保持継承し、個々に独立した鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末が得られやすくなる。
【0072】
前記焼結防止剤を被覆処理した紡錘状ゲータイト粒子粉末を、非還元性雰囲気下において400〜850℃の範囲内において加熱処理を行って紡錘状ヘマタイト粒子粉末を得ることができる。この場合の加熱処理の温度は、ヘマタイト粒子のX線結晶粒径の比D104 /D110 が特定範囲内となるように適宜選ぶことができる。
【0073】
また、Na2 SO4 といった不純物塩の除去のために加熱処理後のヘマタイトを洗浄してもよい。この場合において、被覆された焼結防止剤が溶出しない条件で洗浄を行うことにより、不要な不純物の除去を行うことが好ましい。
具体的には、陽イオン性不純物の除去にはpHを上げて行い、陰イオン性不純物の除去には、pHを下げることでより効率的に洗浄することができる。
【0074】
次に、本発明に係る鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末の製造法について述べる。
【0075】
本発明においては、前記本発明に係る紡錘状ゲータイト粒子粉末を、あらかじめ焼結防止剤によって焼結防止処理しておき、そのまま直接加熱還元する場合、加熱還元に先立って加熱処理を行ってその後に加熱還元を行う場合、又は、前記本発明に係る紡錘状ヘマタイト粒子粉末を直接加熱還元を行う場合のいずれかによって鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末を得ることができる。
【0076】
前記焼結防止剤等によって、あらかじめ被覆しておくことにより粒子及び粒子相互間の焼結が防止され、紡錘状ゲータイト粒子の粒子形状及び軸比をより一層保持継承しやすくなり、個々に独立した鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末が得られやすくなる。
【0077】
前記焼結防止剤としては、周知の通り、Al、Si、B、Ca、Mg、Ba、Sr並びに希土類元素の化合物から選ばれる化合物の1種または2種以上を使用することができる。
好ましくは希土類元素の化合物及び/又はAl化合物である。
これらの化合物は焼結防止効果を有するだけでなく、還元速度を制御する働きも有するので、必要に応じて組み合わせて使用すればよい。
【0078】
前記希土類元素の化合物としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、サマリウム等の1種又は2種以上の化合物、例えば、塩化物、硫酸塩、硝酸塩等が好適である。
その処理方法は乾式又は湿式のいずれでもよいが湿式での被覆処理が好ましい。
その使用量は、希土類元素の化合物を使用する場合には、希土類元素として、被処理粒子中に含有している希土類元素の量との総量として全Feに対して好ましくは0.5〜15原子%、より好ましくは1.0〜12.0原子%である。0.5原子未満の場合には、焼結防止効果が十分でなく、金属磁性粒子粉末とした場合にSFD(保磁力分布)が悪化する。15原子%を越える場合には、飽和磁化値が低くなる。
【0079】
前記Al化合物としては、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等の酸性塩、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸アンモニウム等のアルミン酸塩を使用することができる。
前記Al化合物の使用量は、前記紡錘状ゲータイト粒子の表層部分に含有するAlとの合計量として全Feに対してAl換算で好ましくは0.5〜15原子%、より好ましくは1.0〜10原子%である。0.5原子%未満の場合には、焼結防止効果がなく、15原子%を越える場合には金属磁性粒子粉末にしたときに磁気特性が悪くなる。
【0080】
焼結防止剤の使用量の総量は、前記紡錘状ゲータイト粒子粉末の全Feに対して前記希土類元素の化合物及び/又は前記Al化合物との合計量として好ましくは1.0〜15原子%である。少量では焼結防止効果が十分ではなく、多過ぎると飽和磁化値が低下するので組み合わせる種類により、最適量を適宜選べばよい。
【0081】
なお、焼結防止効果の向上のため、必要によりその他の元素としてSi、B、Ca、Mg、Ba、Sr等から選ばれる元素の化合物の1種又は2種以上を使用してもよい。これらの化合物は、焼結防止効果を有するだけでなく、還元速度を制御する働きも有するので、必要に応じて組み合わせて使用すればよい。この場合の使用量の総量は、前記紡錘状ゲータイト粒子粉末の全Feに対して前記焼結防止剤として使用するAl化合物、希土類元素の化合物との合計量として好ましくは1〜15原子%である。少量では焼結防止の効果が十分ではなく、多過ぎると金属磁性粒子粉末とした場合に飽和磁化が低下するので組み合わせる種類により、最適量を適宜選べばよい。
【0082】
前記の通り、焼結防止剤等によってあらかじめ被覆しておくことにより、粒子及び粒子相互間の焼結が防止され、紡錘状ゲータイト粒子の粒子形状及び軸比をより一層保持継承し、個々に独立した鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末が得られやすくなる。
【0083】
前記化合物で被覆処理を施した紡錘状ゲータイト粒子粉末は、そのまま還元しても目的とする鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末を得ることができるが、磁気特性、粉体特性のコントロール及び形状のコントロールの為には、常法により、還元に先立って、あらかじめ、非還元性ガス雰囲気中において加熱処理を施しておくことが好ましい。
【0084】
非還元性ガス雰囲気としては、空気、酸素ガス、窒素ガス等から選択される一種以上のガス流下とすることができる。加熱処理温度は、300〜850℃の範囲で行うことができ、該加熱処理温度は、紡錘状ゲータイト粒子の被覆処理に用いた化合物の種類に応じて適宜選択することがより好ましい。850℃を越える場合には、粒子の変形と粒子及び粒子相互間の焼結を引き起こしてしまう。
【0085】
本発明における加熱還元は、前記焼結防止剤で処理した紡錘状ゲータイト粒子粉末について直接加熱還元を行う場合、前記焼結防止剤で処理した紡錘状ゲータイト粒子粉末をあらかじめ加熱処理した後に連続して加熱還元を行う場合、又は、前記本発明に係る紡錘状ヘマタイト粒子粉末について加熱還元を行う場合のいずれかによって行うことができる。
【0086】
本発明における加熱還元の温度範囲は、300〜600℃が好ましい。300℃未満である場合には、還元反応の進行が遅く、長時間を要する。また、600℃を越える場合には、還元反応が急激に進行して粒子の変形と、粒子及び粒子相互間の焼結を引き起こしてしまう。
【0087】
本発明における加熱還元後の鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末は周知の方法、例えば、トルエン等の有機溶剤中に浸漬する方法及び還元後の鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末の雰囲気を一旦不活性ガスに置換した後、不活性ガス中の酸素含有量を徐々に増加させながら最終的に空気とすることによって徐酸化する方法等により空気中に取り出すことができる。
【0088】
次に、本発明に係る鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末について述べる。
【0089】
本発明に係る鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末を構成する粒子は、平均長軸径が0.05〜0.50μm、好ましくは0.06〜0.3μmである。その形状は紡錘状であって軸比(長軸径/短軸径)が9以上、好ましくは9.5以上である。
【0090】
本発明に係る鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末は、BET比表面積が30〜80m2 /g、好ましくは35〜60m2 /gである。
【0091】
本発明に係る鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末を構成する粒子は、Coを全Feに対して0.5〜25原子%、好ましくは1.0〜20原子%含有する。また、Alを全Feに対して0.5〜15原子%、好ましくは1.0〜10原子%含有する。また、希土類元素を全Feに対して0.5〜15原子%、好ましくは1.0〜12原子%含有する。
【0092】
本発明に係る鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末は、保磁力Hcが95.49〜175.07kA/m(1200〜2200Oe)、好ましくは119.37〜159.15kA/m(1500〜2000Oe)である。また、飽和磁化σsが100Am 2 /kg(100emu/g)以上、好ましくは110Am 2 /kg(110emu/g)以上である。
【0093】
本発明に係る鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末は、シート特性における保磁力分布SFDが0.50以下、好ましくは0.45以下である。
【0094】
【発明の実施の形態】
本発明の代表的な実施の形態は次の通りである。
【0095】
粒子粉末を構成する粒子の平均長軸径及び軸比は、いずれも電子顕微鏡写真から測定した数値の平均値で示した。
【0096】
粒子粉末の比表面積は、「モノソーブMS−11」(カンタクロム(株)製)を使用し、BET法により測定した値で示した。
【0097】
X線結晶粒径(ヘマタイト粒子の場合のD104 又はD110 、鉄を主成分とする金属磁性粒子のD110 )は、X線回折法で測定される結晶粒子の大きさを、ヘマタイト粒子の場合の(104)結晶面又は(110)結晶面、鉄を主成分とする金属磁性粒子の(110)結晶面のそれぞれに垂直な方向における結晶粒子の厚さを表したものであり、各結晶面についての回折ピーク曲線から、下記のシェラーの式を用いて計算した値で示したものである。
【0098】
D104 又はD110 =Kλ/βcosθ
但し、β=装置に起因する機械幅を補正した真の回折ピークの半値幅(ラジアン単位)
K=シェラー定数(=0.9)
λ=X線の波長(Fe Kα線 0.1935nm)
θ=回折角((104)面及び(110)面の回折ピークに対応)
【0099】
鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の磁気特性は、「振動試料磁力計VSM−3S−15」(東英工業(株)製)を使用し、外部磁場795.8kA/m(10kOe)で測定した。
【0100】
紡錘状ゲータイト粒子粉末及び鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末のCo量、Al量及びその他の金属元素の含有量は、「誘導結合プラズマ発光分光分析装置SPS4000」(セイコー電子工業(株)製)を使用し、測定した。
【0101】
シート状試料片は下記の成分を100ccのポリビンに下記の割合で入れた後、ペイントシェーカー(レッドデビル社製)で8時間混合分散を行うことにより調整した磁性塗料を厚さ25μmのポリエチレンテレフタートフィルム上にアプリケータを用いて50μmの厚さに塗布し、次いで、5kGaussの磁場中で乾燥させることにより得た。
3mmφスチールボール 800重量部
鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末 100重量部
スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂 20重量部
シクロヘキサノン 83.3重量部
メチルエチルケトン 83.3重量部
トルエン 83.3重量部
得られたシート状試料片について磁気特性を測定した。
【0102】
N2 ガスを通気して非酸化性雰囲気下にある反応器中に、6.5NのNa2 CO3 水溶液3.7lに0.374NのNaOH水溶液32.0l(混合アルカリに対しNaOHは33.3mol%に該当する。)を加えて混合溶液とし、次いで、Fe2+1.5mol/lを含む硫酸第一鉄水溶液13.3l(硫酸第一鉄に対しアルカリ水溶液は1.5当量に該当する。)を加えて50℃に昇温して130分維持した後、当該懸濁液中に硫酸コバルト311g(種晶粒子の生成反応及び成長反応の全Feに対しCo換算で3.67原子%に該当する。)を純水1lに溶解して添加し、攪拌混合した。さらに、180分、pH9.5にて非酸化性雰囲気下で維持する、いわゆる熟成を行った後、温度47℃において毎分70lの空気を6.0時間通気して紡錘状ゲータイト種晶粒子粉末を生成した。
【0103】
生成させた紡錘状ゲータイト種晶粒子粉末を含むスラリーを一部抜き取り、濾別、水洗、乾燥して得られた針状ゲータイト種晶粒子粉末は、平均長軸径0.30μm、軸比13.3、BET比表面積80.2m2 /gの粒子からなり、樹枝状粒子が全く混在しておらず、粒度が均斉なものであった。また、前記抜き取ったスラリーを固液分離した際の濾液と紡錘状ゲータイト種晶粒子粉末を分析したところ、濾液中にはCoイオンは検出されなかった。一方、紡錘状ゲータイト種晶粒子粉末には、Coとして種晶粒子中の全Feに対してはCo換算で5.5原子%(種晶粒子の成長反応後のゲータイト粒子の全Feに対してはCo換算で3.7原子%に該当する。)を含有しており、添加したCoイオンが100%吸着していた。
【0104】
次いで、N2 ガスを通気して反応器を非酸化性雰囲気とした紡錘状ゲータイト種晶粒子粉末を含む懸濁液中に、6.5NのNa2 CO3 水溶液1.85lに3.0NのNaOH水溶液2.0l(混合アルカリに対しNaOHは33.3mol%に該当する。)を加えた混合溶液とFe2+1.5mol/lを含む硫酸第一鉄水溶液6.7l(硫酸第一鉄に対しアルカリ水溶液は1.5当量に該当する。)とを添加し、47℃に昇温して20分維持し、pH9.5(ゲータイト種晶粒子の生成反応時のpH値との差はない。)にて当該懸濁液中にアルミン酸ナトリウム(Al2 O3 含有量19重量%)403g(全Feに対しAl換算で5.0原子%に該当する。)及び2.0mol/lの硝酸Nd溶液225ml(全Feに対しNd換算で1.5原子%に該当する。)を添加して攪拌混合した後、熟成後、温度50℃において毎分150lの空気を2.0時間通気して前記紡錘状ゲータイト種晶粒子の成長反応を行った。
【0105】
成長反応終了後、常法により、濾別、水洗、乾燥、粉砕して得られた針状ゲータイト粒子粉末は、紡錘状を呈し、平均長軸径0.31μm、軸比13.6、BET比表面積102.0m2 /gの粒子からなり、樹枝状粒子が全く混在しておらず、粒度が均斉なものであった。また、Coを全Feに対してはCo換算で3.6原子%含有し、Alを全Feに対しAl換算で5.0原子%含有するものであった。
【0106】
濾別、水洗した紡錘状ゲータイト粒子粉末2500g(Feとして25.1mol)に相当する量のプレスケーキを40lの水中に懸濁させた。この時の懸濁液のpHは7.9であった。次いで、2mol/lの硝酸ネオジウム水溶液を125.5ml(前記ゲータイト粒子粉末中の全Feに対しNdとして1.0原子%に該当する。)添加して10分間攪拌した。
【0107】
次いで、水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを9.5に調整しながら純水を加え、全量を10lとして10分間攪拌した後、フィルタープレスで濾別、水洗、乾燥してNd化合物が被覆されたゲータイト粒子粉末を得た。得られたゲータイト粒子粉末中のCoの含有量は全Feに対して3.6原子%、Alの含有量は全Feに対して5.1原子%、Ndの含有量は全Feに対して2.5原子%であった。
【0108】
上記Nd化合物が被覆された紡錘状ゲータイト粒子粉末800gを空気中770℃で加熱処理してNd化合物が被覆された紡錘状ヘマタイト粒子粉末を得た。前記得られたヘマタイト粒子粉末は、平均長軸径0.28μm、軸比12.8、BET比表面積36.1m2 /g、X線結晶粒径のD104 は14.5nm、D110 は26.8nmであり、その比D104 /D110 が0.54の粒子からなり、また、該粒子中のCoの含有量は全Feに対して3.6原子%、Alの含有量は全Feに対して5.1原子%、Ndの含有量は全Feに対して2.5原子%であった。
【0109】
このNd化合物が被覆された紡錘状ヘマタイト粒子粉末100gを内径72mmの固定層還元装置に投入し、毎分35lのH2 ガスを通気し、還元温度500℃で加熱還元した。
【0110】
還元して得られたCo、Al及びNdを含有する鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末は、空気中に取り出した時に急激な酸化を起こさないように、最初は窒素のみを通気しておき、その後、空気と窒素との混合ガスとし、空気の比率を時間とともに増加させながら表面に安定な酸化被膜を形成した。得られたCo、Al及びNdを含有する鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末は、平均長軸径0.18μm、軸比10.8、BET比表面積が40.2m2/g、X線結晶粒径のD110が16.0nmの粒子からなり、紡錘形状で粒度が均斉で樹枝状粒子の少ないものであった。また、該粒子中のCoの含有量は全Feに対して3.7原子%、Alの含有量は全Feに対して5.0原子%、Ndの含有量は全Feに対して2.5原子%であった。また、この金属磁性粒子粉末の磁気特性は、保磁力Hcが136.08kA/m(1710Oe)と高いものであり、飽和磁化σsが154.3Am 2 /kg(154.3emu/g)、角形比(σr/σs)が0.504であり、シート特性は、シートHcが130.51kA/m(1640Oe)、シート角形比(Br/Bm)が0.860、SFDが0.446であった。
【0111】
【作用】
従来、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の出発原料としてのゲータイト粒子の形状等を改善するために、種々の金属塩の添加が試みられてきた。そのなかでもCoは、金属磁性粒子粉末としたときに鉄との固溶を形成し、磁化を大きくし、その保磁力Hcを高める働きがあることが知られている。またAlは、金属磁性粒子とする場合に焼結防止に寄与し、形状保持性に優れていることが知られている。
【0112】
しかしながら、ゲータイト粒子の生成反応において、Coを固溶させた場合には、微粒子が得られるとともに粒子の短軸方向の粒径が小さいことに起因して、軸比も適度に大きいゲータイト粒子が得られることが知られている。一方、極度に微粒子化するために使用に適するものが得られ難い。また、Alには結晶成長制御効果があり添加時期や添加量によって軸比が大きく異なることが知られており、例えば、ゲータイト粒子の生成途中にAl化合物を添加すると、軸比の低減を招くことが予想される。本発明者はCoが2価のイオンで存在した状態でAl化合物を存在させながらゲータイト粒子の生成反応を行うと軸比が最も低下することを見いだした。
【0113】
そこで、本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、ゲータイト粒子の生成反応を種晶生成反応と成長反応とに分離して、軸比の適正な向上効果のあるCoを種晶粒子の生成反応時に添加し、Coをゲータイト種晶粒子内に固溶させ、さらに、第一鉄塩水溶液と混合アルカリ水溶液とを添加して行う成長反応において、Coが溶液中に存在しない状態で、焼結防止効果を有するAlを添加し、成長反応時のみAlを存在させることにより、種晶粒子の生成反応で必要とする軸比を持つ粒子を作り、成長反応においても種晶粒子の大きな軸比と適当な粒子形状を保持した紡錘状ゲータイト粒子を得ることができることを見出した。
【0114】
種晶部分のゲータイト種晶粒子にCoが固溶しており、且つ、表層部分のゲータイト層にAlが固溶している紡錘状ゲータイト粒子からなる粉末を出発原料として用いることにより、粒度が均斉であって樹枝状粒子が混合しておらず、適切な粒子形状と大きな軸比を有しており、しかも、高い保磁力と優れた保磁力分布とを有している鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末を得ることができる。
【0115】
さらに、本発明者は、種々検討の結果、前記紡錘状ゲータイト種晶粒子の成長反応時にAl化合物とともに希土類元素の化合物を存在させることにより、あるいはさらに、ゲータイト粒子粉末に処理しておく焼結防止剤として希土類元素の化合物を用いることにより、希土類元素をゲータイト種晶部分以外のゲータイト表層部分又は粒子表面に存在させることによって、加熱脱水温度を適宜選択することにより得られる紡錘状ヘマタイト粒子のX線結晶粒径の比D104 /D104 が特定範囲内にあるものとすることができ、このものを加熱還元して得られる鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末のシート特性であるSFD(保磁力分布)を良好とすることができることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0116】
【実施例】
次に、実施例並びに比較例を挙げる。
【0117】
実施例1〜6、比較例1〜2;
<紡錘状ゲータイト粒子粉末の製造>
実施例1〜6、比較例1〜2
紡錘状ゲータイト粒子粉末の生成条件をゲータイト種晶粒子生成反応の条件について表1に示すように種々変化させ、途中抜き取りによるゲータイト種晶粒子の諸特性を表2に示した。さらに、前記ゲータイト種晶粒子の成長反応の条件について表3に示すように種々変化させた以外は、前記本発明の実施の形態と同様にして紡錘状ゲータイト粒子粉末を得た。得られた紡錘状ゲータイト粒子粉末の諸特性を表4に示す。
【0118】
比較例1
ゲータイト粒子の生成反応時に添加する硝酸ネオジウムの添加時期をゲータイト種晶粒子の生成反応時においてコバルト化合物と共に添加することとした以外は実施例6と同様にしてゲータイト粒子粉末の生成反応を行った。
得られたゲータイト種晶粒子粉末はゲータイト粒子以外の異物粒子が生成、混在しており、ゲータイト種晶粒子の形状も紡錘状とはいえないものであった。
【0119】
比較例2
ゲータイト粒子の生成反応時に添加する硝酸ネオジウムの添加時期をゲータイト種晶粒子の成長反応時においてアルミニウム化合物と共に添加することとした以外は実施例1と同様にしてゲータイト粒子粉末の生成反応を行った。
得られたゲータイト粒子粉末は種晶粒子そのままの紡錘状ゲータイト粒子と異物粒子が生成、混在しているものであった。
【0120】
【表1】
【0121】
【表2】
【0122】
【表3】
【0123】
【表4】
【0124】
<紡錘状ヘマタイト粒子粉末の製造>
実施例1〜6
前駆体である紡錘状ゲータイト粒子粉末の種類、焼結防止処理に用いる被覆物の種類及び添加量、加熱脱水温度、その後の加熱処理の温度を種々変化させた以外は、実施の形態と同様にして紡錘状ヘマタイト粒子粉末を得た。その条件及び得られた紡錘状ヘマタイト粒子粉末の諸特性を表5に示した。
【0125】
なお、前記実施の形態、実施例及び比較例で得られた紡錘状ヘマタイト粒子の含有する希土類元素について全Feに対する含有量x(原子%)とX線結晶粒径の比D104 /D110 との関係を前記実施の形態及び実施例を○で、比較例を●で図1に示した。ここで、直線Aは、0.5≦x≦10において、D104 /D110 =0.500−0.03×xであって、直線A’は10<x≦15の場合のD104 /D110 =0.20である。直線Bは、0.5≦x≦10において、D104 /D110 =0.665−0.03×xであって、直線B’は10<x≦15の場合のD104 /D110 =0.365である。
本発明に係る紡錘状ヘマタイト粒子粉末を構成する粒子のX線結晶粒径の比D104 /D110 の値は、0.20〜0.65の範囲内であり、好ましくは図1中の直線A、直線B、直線A’、直線B’、x=0.5及びx=10によって囲まれる範囲内である。
【0126】
【表5】
【0127】
<鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の製造>
実施例1〜3、5〜6
被処理粒子の種類、焼結防止処理に用いる被覆物の種類及び添加量、加熱温度、加熱還元工程における還元温度を種々変化させた以外は本発明の実施の形態と同様の方法で鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末を得た。この時の還元条件及び得られた鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の諸特性を表6に示す。
【0128】
実施例4
加熱還元にあたって、ヘマタイト粒子粉末200gに対し、2lの純水を用いて洗浄し、内径4mmの成形板を用いて成形し、乾燥させたものを加熱還元に用いた以外は本発明の実施の形態と同様の方法で鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末を得た。この時の還元条件及び得られた鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の諸特性を表6に示す。
【0129】
【表6】
【0130】
【発明の効果】
本発明に係る紡錘状ゲータイト粒子粉末、紡錘状ヘマタイト粒子粉末は、粒度が均斉であって樹枝状粒子が混在しておらず、しかも、適切な粒子形状と軸比を有している粒子からなることから該紡錘状ゲータイト粒子粉末又は紡錘状ヘマタイト粒子粉末を出発原料として得られる鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末は、前出実施例に示した通り、粒度が均斉であって樹枝状粒子が混在しておらず、しかも、適切な粒子形状と軸比を有している粒子からなるので、高い保磁力と優れた保磁力分布とを有しており、高記録密度、高感度、高出力用磁性粒子粉末として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態、実施例及び比較例の紡錘状ヘマタイト粒子が含有する希土類元素として全Feに対する含有量(原子%)とX線結晶粒径の比D104 /D110 との関係を示すものである。
Claims (8)
- 平均長軸径が0.05〜1.0μmの紡錘状粒子であって、ゲータイト種晶部分とゲータイト表層部分とからなり、前記種晶部分にはCoを全Feに対して0.5〜25原子%含有し、且つ、前記表層部分にはCoを含有せずAlを全Feに対して0.5〜15原子%含有するとともに希土類元素を全Feに対して0.5〜10原子%含有しているゲータイト粒子からなることを特徴とする紡錘状ゲータイト粒子粉末。
- 平均長軸径が0.05〜1.0μmの紡錘状粒子であって、ヘマタイト種晶部分とヘマタイト表層部分とからなり、前記種晶部分にはCoを全Feに対して0.5〜25原子%含有し、前記表層部分にはCoを含有せずAlを全Feに対して0.5〜15原子%含有し、且つ、前記種晶部分以外の表層部分に希土類元素を全Feに対して0.5〜15原子%含有しており、しかも、X線結晶粒径の比D104/D110が0.20〜0.65の範囲内にあるヘマタイト粒子からなることを特徴とする紡錘状ヘマタイト粒子粉末。
- 炭酸アルカリ水溶液と水酸化アルカリ水溶液との混合アルカリ水溶液と第一鉄塩水溶液とを反応させて得られる第一鉄含有沈殿物を含む水懸濁液を非酸化性雰囲気下において熟成させた後、該水懸濁液中に酸素含有ガスを通気して紡錘状ゲータイト種晶粒子を生成させた後、該種晶粒子を含む水懸濁液中に、炭酸アルカリと水酸化アルカリとの混合アルカリ水溶液と第一鉄塩水溶液とを新たに添加、混合し、酸素含有ガスを通気して、前記紡錘状ゲータイト種晶粒子の粒子表面上にゲータイト層を成長させて紡錘状ゲータイト粒子を生成させるにあたり、前記種晶粒子の生成反応時において、第一鉄塩水溶液、第一鉄含有沈殿物を含む水懸濁液、酸化反応開始前の熟成中の第一鉄含有沈澱物を含む水懸濁液若しくは生成反応中の水懸濁液に、全Feに対しCo換算で0.5〜25原子%のCo化合物を添加し、且つ、前記ゲータイト層の成長反応時において、添加する各アルカリ水溶液、第一鉄塩水溶液、酸化反応開始前の紡錘状ゲータイト種晶粒子と第一鉄含有沈殿物とを含む水懸濁液若しくは成長反応中の水懸濁液に、全Feに対しAl換算で0.5〜15原子%のAl化合物及び希土類元素を全Feに対して0.5〜10原子%の希土類元素の化合物とをそれぞれ添加することを特徴とする請求項1記載の紡錘状ゲータイト粒子粉末の製造法。
- 請求項1記載の紡錘状ゲータイト粒子粉末を焼結防止剤で処理した後、400〜850℃の範囲内で加熱処理を行うことを特徴とする請求項2記載の紡錘状ヘマタイト粒子粉末の製造法。
- 焼結防止剤がAl化合物、希土類元素の化合物又はAl化合物及び希土類元素の化合物のいずれかである請求項4記載の紡錘状ヘマタイト粒子粉末の製造法。
- 請求項1記載の紡錘状ゲータイト粒子粉末を焼結防止剤で処理を行った後、400〜850℃の範囲内で加熱処理を行い、さらに、還元性ガス雰囲気中、400〜600℃の範囲内で加熱還元することを特徴とする鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末の製造法。
- 請求項2記載の紡錘状ヘマタイト粒子粉末を還元性ガス雰囲気中、400〜600℃の範囲内で加熱還元することを特徴とする鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末の製造法。
- 請求項6記載の製造法又は請求項7記載の製造法により得られる平均長軸径が0.05〜0.5μmの紡錘状粒子であって、Coを全Feに対して0.5〜25原子%含有し、Alを全Feに対して0.5〜15原子%含有し、且つ、希土類元素を全Feに対して0.5〜15原子%含有している鉄を主成分とする金属磁性粒子からなることを特徴とする鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末。
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