JP4305617B2 - 鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末及びその製造法並びに磁気記録媒体 - Google Patents

鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末及びその製造法並びに磁気記録媒体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、微細な粒子、殊に、平均長軸径が0.02〜0.08μmの微粒子でありながら、高い保磁力を示し、酸化安定性に優れ、しかも、可溶性塩が可及的に低減された鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末を提供するものであり、当該鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末は磁気記録媒体用磁性材料として好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、オーディオ用、ビデオ用、コンピューター用の磁気記録再生用機器の小型軽量化、長時間記録化、記録の高密度化、若しくは記憶容量の増大化が著しく進行しており、磁気記録媒体である磁気テープ、磁気ディスクに対する高性能化、高密度記録化の要求が益々高まってきている。
【0003】
即ち、磁気記録媒体の高画像画質、高出力特性、殊に周波数特性の向上、保存特性及び耐久性の向上が要求され、その為には、磁気記録媒体に起因するノイズの低下、高い保磁力Hcと保磁力分布SFD、耐候性ΔBmが優れていることが要求されている。
【0004】
磁気記録媒体のこれらの諸特性は磁気記録媒体に使用される磁性粒子粉末と密接な関係を有しており、近年においては、従来の磁性酸化鉄粒子粉末に比較して高い保磁力と大きな飽和磁化値σsを有する鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末が注目され、デジタルオーディオテープ(DAT)、8mmビデオテープ、Hi−8テープ、さらにハイビジョン用のW−VHSテープ、デジタル記録方式のDVCテープ等に使用され、コンピューター用ではZip、スーパーディスク等のリムーバブルディスクに使用されており、最近では大容量のHi−FDにも採用され、現在その事業化段階にある。
【0005】
そこで、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末についても更なる特性改善が強く望まれている。
【0006】
即ち、前記諸特性を満たす磁気記録媒体を得るためには、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末が微粒子であって、より高い保磁力を有し、酸化安定性Δσsに優れ、しかも、可溶性塩の含有量が可及的に低減されていることが強く要求されている。
【0007】
まず、金属磁性粒子粉末の微粒子化については、特開2000―251243号公報の「……磁気記録媒体の高記録密度を達成するため、使用する信号の短波長化が強力に進められている。信号を記録する領域の長さに対して、使用される磁性体が比較出来る大きさになると明瞭な磁化遷移領域を作り出すことが出来ないので、実質的に記録不可能となる。このため使用する高記録密度化のために、磁性体の微粒子化が長年にわたり指向されている。」なる記載の通り、短波長領域での高出力、ノイズが低減された磁気記録媒体を得るためには、金属磁性粒子粉末の微粒子化、即ち、長軸径の低減が必要になる。
【0008】
また、近年では、これまで用いられてきた誘導型磁気ヘッドに替わり、磁気抵抗型ヘッドがコンピューター用テープ再生ヘッドとして導入され始めている。磁気抵抗型ヘッドは、誘導型ヘッドに比べて再生出力が得られやすく、誘導コイルに起因するインピーダンスノイズが発生しないため、システムノイズの大幅な低減に寄与する。このため、磁気記録媒体ノイズを低減することができれば、高いC/N比を達成することが可能となる。したがって、磁気記録媒体ノイズのうち、粒子性ノイズの低減の観点からも金属磁性粒子粉末の更なる微粒子化が求められている。
【0009】
一方、磁性粒子粉末の保磁力は、一般に、その形状磁気異方性に起因して生じるため、高い保磁力の磁性粒子粉末を得るためには、粒子の軸比(平均長軸径/平均短軸径)を大きくする必要がある。しかし、微粒子であるほど軸比が低下する傾向にあるため、高い保磁力を有する金属磁性粒子粉末を得ることが困難となる。この事実は特開平10−83906号公報の「・・・上記金属粉末の保磁力は、一般的には粒子の大きさに密接に関係しており、粒子が細かくなればなるほど保磁力を保つことが困難になる。例えば、針状粒子の短軸径が一定の場合、その保磁力は、軸比(長軸径/短軸径)が大であるほど高くなるが、・・・・・・保磁力を高く保ち且つ短波長領域における高出力を得るためには、粒子の長軸が限定されてしまう以上、短軸を短くして軸比を大きくすることにより保磁力を高めるしかない。しかしながら、粒子の短軸径があまり小さくなると、いわゆる超常磁性が発現して保磁力を示さないことが知られ、短軸径の短縮化にも限界があった。」なる記載の通りである。
【0010】
また、金属磁性粒子の微細化に伴い短軸径が短縮化し、金属磁性粒子粉末の結晶子サイズが減少して比表面積が増大するため、高い酸化安定性を維持することが非常に困難になることが知られている。金属磁性粒子粉末の酸化安定性は、磁気記録媒体の保存特性及び耐久性に大きく寄与することから、微粒子でありながら、高い酸化安定性を有することが強く望まれている。
【0011】
一方、金属磁性粒子粉末は、その製造法に由来して、アルカリ金属などの不純物を含有している。この事実について詳述する。
【0012】
即ち、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末は、硫酸第一鉄などの第一鉄塩水溶液と水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ水溶液とを反応して得られる鉄含有沈殿物を含む水懸濁液を空気等の酸素含有ガスを通気して酸化反応を行い得られるゲータイト粒子粉末、該ゲータイト粒子粉末を加熱脱水して得られるヘマタイト粒子粉末又はこれら粒子粉末に鉄以外の異種元素を含有させた粒子粉末を出発原料として用い、該出発原料を還元性ガス雰囲気下で加熱還元することにより得られている。
【0013】
前記製造法に由来して、金属磁性粒子粉末は可溶性ナトリウム及び硫酸イオンや製法上不可避的に存在する可溶性カルシウムを含有しており、可溶性ナトリウム塩、可溶性カルシウム塩及び硫酸イオンを含有している場合には、磁気記録媒体に使用したときに含有している前記可溶性塩に起因した化合物が磁性塗膜及び磁気ヘッドに析出することが問題となっている。この事実は、特開平9−305958号公報の「各層に使用される磁性体、非磁性体、カーボンブラック、フィラーが含有している水溶性イオンの総和がある量を超えると高温高湿条件で保存後走行させると摩擦係数が増加し、極端な場合は張り付き現象が発生し走行停止する現象が認められた。さらに極端な場合、析出物がスペーシングロスとなり、磁気テープの再生出力が低下する。また金属ヘッドを腐食し、記録再生特性を劣化させてしまう。」という記載からも明らかである。
【0014】
金属磁性粒子粉末中の可溶性塩を低減させる方法としては、1)原料として水酸化ナトリウム等のアルカリ金属からなるアルカリ水溶液を用いない、2)水洗によって可溶性塩を低減する、のどちらかの方法が採られている。
【0015】
水洗によって可溶性塩を低減する場合には、金属磁性粒子粉末に至るまでの各生成物ごとに水洗することが考えられるが、前記金属磁性粒子粉末の製造法において、出発原料であるゲータイト粒子粉末及びヘマタイト粒子粉末の段階で水洗を行っても、除去されるのは粒子表面に存在する可溶性塩だけである。そのため、還元して金属磁性粒子粉末とした場合には、粒子中に含有している不溶性不純物が粒子表面に移動し可溶性塩となって析出することが知られており、完全に除去できるものではない。一方、金属磁性粒子粉末とした後に水洗を行った場合、特に、粒子形状が紡錘状の場合には、保磁力などの磁気特性が低下し、磁性塗料中での分散性も低下する傾向がある。
【0016】
従って、水洗によって可溶性塩を低減する技術では、可溶性塩を低減することはできるが、ゼロにすることは容易ではなく、また磁気特性の低下を招くことになるため好ましくない。そこで、原料として水酸化ナトリウム等のアルカリ金属からなるアルカリ水溶液を用いないことによって、残存する不純物を限りなく無くし、高純度の金属磁性粒子粉末を得ることが要求されている。
【0017】
従来、アルカリ金属からなるアルカリ水溶液を用いることなくゲータイト粒子粉末を製造する技術やゲータイト粒子粉末を加熱脱水した後のヘマタイト粒子粉末及び金属磁性粒子粉末を水洗する技術が試みられている(特許文献1乃至18等)。
【0018】
【特許文献1】
特開昭61−174119号公報
【特許文献2】
特開平7−22224号公報
【特許文献3】
特開平7−326035号公報
【特許文献4】
特開平8−7256号公報
【特許文献5】
特開平8−185624号公報
【特許文献6】
特開平8−186015号公報
【特許文献7】
特開平8−279137号公報
【特許文献8】
特開平8−279138号公報
【特許文献9】
特開平8−306031号公報
【特許文献10】
特開平9−106535号公報
【特許文献11】
特開平9−171814号公報
【特許文献12】
特開平9−305958号公報
【特許文献13】
特開平10−69629号公報
【特許文献14】
特開平10−83906号公報
【特許文献15】
特開2001−81506号公報
【特許文献16】
特開2001−176052号公報
【特許文献17】
特開2001−176053号公報
【特許文献18】
WO00/38201号公報
【特許文献19】
特開2001−192211号公報
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
微粒子でありながら、高い保磁力を示し、酸化安定性に優れ、しかも、可溶性塩が可及的に除去された鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末は、現在最も要求されているところであるが、前記諸特性を十分満足する鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末は未だ提供されていない。
【0020】
即ち、前出特許文献1には、炭酸アンモニウム水溶液に硫酸第一鉄水溶液を用いてゲータイト粒子粉末を製造することが記載されているが、得られたゲータイト粒子粉末はコバルトを含有していないため、該粒子粉末を出発物質として得られた金属磁性粒子粉末の酸化安定性は十分とは言い難いものである。
【0021】
また、前出特許文献2にはヘマタイト粒子粉末又は金属磁性粒子粉末を水洗することが記載されているが、得られた磁性金属粒子粉末は長軸径が0.08μm以上、保磁力が2000Oe以下であって、微粒子化・高保磁力化の要求を十分満たしていない。
【0022】
また、前出特許文献3及び特許文献4には、第一鉄塩水溶液と炭酸アンモニウム及びアンモニア水とを用いて得られたゲータイト粒子粉末を用いて金属磁性粒子粉末を製造することが記載されているが、平均長軸径が0.08μm以上と大きいので、微粒子化・高保磁力化の要求を十分満たしていない。
【0023】
また、前出特許文献5にはヘマタイト粒子又は金属磁性粒子を水洗してナトリウムイオンとカリウムイオンとの含有割合を特定範囲に制限することが記載されているが、平均長軸径が0.13μm程度と大きく、可溶性ナトリウム含有量が200ppm以下と多いので、微粒子化・高保磁力化および酸化安定性向上の要求を十分満たしていない。
【0024】
また、前出特許文献7及び特許文献9には、第一鉄塩水溶液と炭酸アンモニウム及びアンモニア水とを用いて得られたゲータイト粒子粉末を用いて金属磁性粒子粉末を製造することが記載されており、得られる金属磁性粒子粉末は、平均長軸径が0.05〜0.13μmであって、粒子の表層部が粒子全体に比べアルミニウム、希土類元素及び酸素の含有割合が高くなっている。しかしながら、ゲータイト粒子生成反応終了後、水洗した後アルミニウム化合物を添加しているため、アルミニウムを結晶中に含有させたゲータイト粒子が得られておらず、加熱還元処理時の還元速度の制御が十分行われないため、焼結が進行するので、微粒子かつ磁気特性・酸化安定性に優れた金属磁性粒子粉末が得られない。
【0025】
また、前出特許文献10には、第一鉄塩水溶液と炭酸アンモニウム及びアンモニア水とを用いて得られたゲータイト粒子粉末を用いて金属磁性粒子粉末を製造することが記載されており、長軸径が0.03〜0.08μmで保磁力1900〜2400Oeの金属磁性粒子粉末が得られているが、酸化安定性向上の要求を十分満たしていない。
【0026】
また、前出特許文献12には、アルカリ金属を含まない炭酸アルカリを用いてゲータイト粒子粉末を得、更に、金属磁性粒子粉末とするまでに水洗して金属磁性粒子粉末中の水溶性イオンの含有量を低減することが記載されているが、添加物としてアルカリ金属を含有する化合物を用いているため、ゲータイト粒子中にアルカリ金属を含有しており、高純度のゲータイト粒子が得られているとは言い難いものである。
【0027】
また、前出特許文献13には、ゲータイト粒子、ヘマタイト粒子又は金属磁性粒子のいずれかの段階で水洗することが記載されている。ゲータイト粒子、ヘマタイト粒子を還元して金属磁性粒子粉末とした場合には、粒子中に含有される不溶性不純物が粒子表面に移動し可溶性塩となって析出することが知られており、完全に除去できない。一方、金属磁性粒子粉末とした後に水洗を行った場合、飽和磁化、保磁力などの磁気特性が低下し、磁性塗料中での分散性も低下するので好ましくない。
【0028】
また、前出特許文献14には、塩化第一鉄とアンモニア水溶液からなる水酸化アルカリと炭酸アンモニウム等からなる炭酸アルカリからゲータイト粒子粉末を製造することが記載されているが、アンモニア水で水洗することは記載されておらず、また、ゲータイト粒子を生成するときの反応pHが高いため、コバルトイオンがアンミン錯体として溶出するため、高い保磁力を有する金属磁性粒子粉末を得ることが困難となる。
【0029】
なお、特許文献11には、ゲータイト粒子にCo、Al、Si及びCaから選ばれる1種以上の化合物と希土類化合物を被着させ、水洗した後、最外層に炭素化合物を被着させ、次いで、加熱脱水、還元して金属磁性粒子粉末を得ることが記載されているが、ゲータイト粒子中にコバルト及びアルミニウムが固溶していないため、得られる金属磁性粒子粉末の磁気特性が未だ十分とは言い難いものである。また、S及びCl含有量を低減することを目的として、Co、Al、Si及びCaから選ばれる1種以上の化合物と希土類化合物を被着させたゲータイト粒子水洗することが記載されているが、該粒子を還元して金属磁性粒子粉末とした場合には、粒子中に含有している不溶性不純物が粒子表面に移動し可溶性塩となって析出してくることが知られており、S及びCl含有量は十分に低減されない。
【0030】
また、前出特許文献15には、Coを含有し、Alを固溶したオキシ水酸化鉄または酸化鉄の粒子表面に、希土類とSiを被着させ、該粒子粉末をガス還元して金属磁性粒子粉末を得ることが記載されているが、平均長軸径が0.10μmと大きいものであり、微粒子化・高保磁力化の要求を十分満たしていない。
【0031】
また、前出特許文献16及び特許文献17には、第一鉄塩水溶液と炭酸アンモニウム及びアンモニア水とを用いて得られたゲータイト粒子粉末を用いて金属磁性粒子粉末を製造することが記載されているが、ゲータイト粒子生成反応終了後、コバルト化合物を添加しているため、ゲータイト結晶中にコバルトを含有させたゲータイト粒子が得られておらず、加熱還元処理時の還元速度の制御が十分行われないため、焼結が進行するので、微粒子かつ磁気特性・酸化安定性に優れた金属磁性粒子粉末が得られない。
【0032】
また、前出特許文献18には、第二鉄塩水溶液、コバルト塩水溶液およびアルミニウムの水可溶性塩を水酸化ナトリウム水溶液と混合・熟成することでコバルトとアルミニウムを含有させたオキシ水酸化鉄粒子を得た後、該粒子表面を更に希土類元素の化合物で被覆したオキシ水酸化鉄粒子粉末を加熱還元して、金属磁性粒子粉末を製造することが記載されている。しかしながら、アルカリ源として水酸化ナトリウムを用いた前記オキシ水酸化鉄粒子粉末を還元して金属磁性粒子粉末とした場合には、粒子中に含有している不溶性不純物が粒子表面に移動し可溶性塩となって析出してくるため、Na等の可溶性塩の含有量は十分に低減されない。
【0033】
また、前出特許文献19には、第一鉄塩水溶液と炭酸アンモニウム及びアンモニア水とを用いて得られたゲータイト粒子粉末を用いて金属磁性粒子粉末を製造することが記載されているが、前記ゲータイト粒子粉末の粒子表面にコバルト化合物及び希土類化合物を被覆する際に、同時に被覆を行っており、還元処理時の焼結防止効果が不十分であるため、平均長軸径が0.02〜0.08μmの微粒子であって、高い保磁力を示し、かつ酸化安定性に優れた金属磁性粒子粉末を得ることは困難である。
【0034】
そこで、本発明は、平均長軸径が0.02〜0.08μmの微粒子でありながら、高い保磁力を示し、酸化安定性に優れ、しかも可溶性塩が可及的に除去された鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末を提供することを技術的課題とする。
【0035】
【課題を解決するための手段】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0036】
即ち、本発明は、全Feに対してCo換算で20〜50原子%のコバルト、Al換算で3〜15原子%のアルミニウム及び希土類元素換算で3〜20原子%の希土類元素を含有する鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末であって、前記鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の平均長軸径が0.02〜0.08μmであり、軸比(長軸径/短軸径)が3以上であり、結晶子サイズが90〜150Åであり、保磁力が159.2〜222.9kA/m(2000〜2800Oe)であり、可溶性Na含有量が30ppm以下であって可溶性Ca含有量が100ppm以下であって残存硫黄量が60ppm以下であり、且つ、酸化安定性Δσsが10%以下であること特徴とする鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末である。
【0037】
また、本発明は、全Feに対してCo換算で20〜50原子%のコバルト、Al換算で3〜15原子%のアルミニウム及び希土類元素換算で3〜20原子%の希土類元素を含有する鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末であって、前記鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の平均長軸径が0.02〜0.05μmであり、軸比(長軸径/短軸径)が3以上であり、結晶子サイズが90〜150Åであり、保磁力が159.2〜222.9kA/m(2000〜2800Oe)であり、可溶性Na含有量が30ppm以下であって可溶性Ca含有量が100ppm以下であって残存硫黄量が60ppm以下であり、且つ、酸化安定性Δσsが10%以下であること特徴とする鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末である。
【0038】
また、本発明は、全Feに対してAl換算で3〜15原子%のアルミニウムとCo換算で10〜35原子%のコバルトとを含有するゲータイト粒子の粒子表面が、全Feに対してCo換算で10〜25原子%の炭酸コバルトで被覆されており、更に、当該炭酸コバルトの表面に全Feに対して希土類元素換算で3〜20原子%の希土類化合物が被覆されているゲータイト粒子粉末を加熱還元して得られる全Feに対してCo換算で20〜50原子%のコバルト、Al換算で3〜15原子%のアルミニウム及び希土類元素換算で3〜20原子%の希土類元素を含有する鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末であって、前記鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の平均長軸径が0.02〜0.08μmであり、保磁力が159.2〜222.9kA/m(2000〜2800Oe)であり、可溶性Na含有量が30ppm以下であって可溶性Ca含有量が100ppm以下であって残存硫黄量が60ppm以下であり、且つ、酸化安定性Δσsが10%以下であること特徴とする鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末である。
【0039】
また、本発明は、硫酸第一鉄水溶液と該硫酸第一鉄水溶液に対する当量比が1.7〜3.0である炭酸水素アンモニウム水溶液及び水酸化アンモニウム水溶液からなる混合アルカリ水溶液とを反応させて得られる第一鉄含有沈殿物を含む水懸濁液を非酸化性雰囲気下において熟成させた後に、該水懸濁液中に酸素含有ガスを通気して酸化反応によってゲータイト種晶粒子を生成させ、次いで、該種晶粒子と第一鉄含有沈澱物とを含む水懸濁液中に酸素含有ガスを通気して酸化反応によって該種晶粒子の粒子表面上にゲータイト層を成長させてゲータイト粒子を生成させるにあたり、
前記混合アルカリ水溶液として、該混合アルカリ水溶液に対して前記水酸化アンモニウム水溶液が55〜85mol%の割合で配合されているものを使用すると共に、前記種晶粒子の生成時においては、酸化反応開始前の熟成中の第一鉄含有沈澱物を含む水懸濁液に全Feに対しCo換算で10〜35原子%のCo化合物を添加して酸化反応を全Fe2+の20〜80%の範囲で行い、
前記ゲータイト層の成長時においては、前記種晶粒子と第一鉄含有沈殿物とを含む水懸濁液のpHが9.0未満となるように全Feに対しAl換算で3〜15原子%のAl化合物を添加し、
生成させた前記ゲータイト粒子を濾別した後、pH9.5〜11.5のアンモニア水で水洗することによってゲータイト粒子粉末とし、
得られたゲータイト粒子を含む水懸濁液にコバルト化合物及び炭酸アルカリを添加して、ゲータイト粒子の粒子表面に全Feに対してCo換算で10〜25原子%の炭酸コバルトを被覆し、次いで、全Feに対して希土類元素換算で3〜20原子%の希土類化合物によって前記炭酸コバルトで被覆されたゲータイト粒子の粒子表面を被覆した後、表面被覆したゲータイト粒子粉末又は該表面被覆したゲータイト粒子粉末を非還元性雰囲気中、400〜750℃で加熱処理して得られたヘマタイト粒子粉末を還元性雰囲気中、350〜700℃で加熱還元して鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末を得ることを特徴とする前記鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の製造法である。
【0040】
また、本発明は、非磁性支持体上に前記いずれかの鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末と結合剤とを主体とする磁性層を形成していることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0041】
本発明の構成を詳しく説明すれば、次の通りである。
【0042】
まず、本発明に係る鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末について述べる。
【0043】
本発明に係る鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末は、紡錘状であって、平均長軸径は0.02〜0.08μmである。平均長軸径が0.02μm未満の場合には、飽和磁化値及び酸化安定性が急激に低下し、同時に高い保磁力も得られ難くなる。0.08μmを越える場合には、短波長領域での高出力、ノイズが低減された磁気記録媒体を得るための磁性体粒子としては、粒子サイズが大きいため好ましくない。好ましくは0.02〜0.075μmであり、殊に、短波長領域でのより高い出力及びノイズがより低減された磁気記録媒体を得るためには、更により好ましくは0.02〜0.065μmであり、最も好ましくは0.025〜0.05μmである。
【0044】
本発明に係る鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の軸比は3以上であり、好ましくは3.5〜8であり、より好ましくは3.5〜7.0である。軸比が3未満の場合には目的とする高い保磁力を得ることができない。
【0045】
本発明に係る鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の結晶子サイズD110は90〜150Åであり、好ましくは95〜150Åであり、より好ましくは95〜140Åである。結晶子サイズが90Å未満の場合には、磁気記録媒体にした場合に粒子性ノイズ低減の点では有利となるが、飽和磁化値が低くなりやすく、また酸化安定性も低下する。150Å以上の場合には粒子性ノイズが増加するため好ましくない。
【0046】
また、BET比表面積値は40〜80m/gが好ましい。
【0047】
本発明に係る鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の粒子全体でのコバルト含有量は全Feに対してCo換算で20〜50原子%、好ましくは25〜50原子%であり、更に好ましくは30〜50原子%である。Co含有量が20原子%未満の場合には、酸化安定性を十分に改良することができず、また、大きな保磁力が得られ難い。50原子%を超える場合には、飽和磁化値、保磁力の低下を招く。また、コストの観点からも不必要な添加は好ましくない。
【0048】
本発明に係る鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末のAl含有量はAl換算で全Feに対して3〜15原子%であり、希土類元素の含有量は希土類元素換算で全Feに対して3〜20原子%である。Al含有量及び希土類元素の含有量が前記下限値未満の場合には、加熱還元過程における焼結防止効果が低下するため、保磁力が低下する。上限値を超える場合には、非磁性成分が増加するため、飽和磁化値等の磁気特性が低下する。
【0049】
また、本発明に係る鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の可溶性Naの含有量は30ppm以下であり、好ましくは20ppm以下、更に好ましくは10ppm以下であり、可溶性Caの含有量は100ppm以下であり、好ましくは80ppm以下、更に好ましくは70ppm以下である。前記不純物含有量が上限値を超えた場合、これに起因した化合物が磁性塗膜表面に析出する可能性があるため好ましくない。また、残存硫黄量は60ppm以下が好ましく、より好ましくは50ppm以下である。
【0050】
本発明に係る鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末は、保磁力Hcが159.2〜222.8kA/m(2000〜2800Oe)であり、好ましくは159.2〜214.9kA/m(2000〜2700Oe)であって、飽和磁化値σsが90〜160Am/kg(90〜160emu/g)であり、好ましくは90〜150Am/kg(90〜150emu/g)、角型比(σr/σs)が0.51〜0.55である。
【0051】
本発明に係る鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の酸化安定性Δσsは、10%以下であり、好ましくは8%以下である。
【0052】
なお、本発明に係る鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末を用いて、後述する処方によって得られた磁性塗膜は、保磁力Hc159.2〜238.8kA/m(2000〜3000Oe)が好ましく、角形比(Br/Bm)0.82以上が好ましく、SFD0.60以下が好ましく、酸化安定性ΔBm8%未満が好ましい。
【0053】
次に、本発明に係る鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の製造法について述べる。
【0054】
本発明においては、下記詳述する方法によって紡錘状ゲータイト粒子を形成した後、当該ゲータイト粒子を含有する水懸濁液にコバルト化合物及びアルカリ金属からなる炭酸塩を添加して前記紡錘状ゲータイト粒子の粒子表面を炭酸コバルトで被覆し、更に、前記炭酸コバルトの表面に希土類化合物を被覆し、得られた表面被覆ゲータイト粒子粉末又は該ゲータイト粒子粉末を400〜750℃で加熱脱水して得られた紡錘状ヘマタイト粒子粉末を、350〜700℃で加熱還元することによって鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末を得ることができる。
【0055】
本発明における紡錘状ゲータイト粒子粉末は、硫酸第一鉄水溶液と該硫酸第一鉄水溶液に対する当量比が1.7〜3.0である炭酸水素アンモニウム水溶液及び水酸化アンモニウム水溶液からなる混合アルカリ水溶液とを反応させて得られる第一鉄含有沈殿物を含む水懸濁液を非酸化性雰囲気下において熟成させた後に、該水懸濁液中に酸素含有ガスを通気して酸化反応によって紡錘状ゲータイト種晶粒子を生成させ、次いで、該種晶粒子と第一鉄含有沈澱物とを含む水懸濁液中に酸素含有ガスを通気し酸化反応によって該種晶粒子の粒子表面上にゲータイト層を成長させて紡錘状ゲータイト粒子を生成させるにあたり、
前記混合アルカリ水溶液として、該混合アルカリ水溶液に対して前記水酸化アンモニウム水溶液が55〜85mol%の割合で配合されているものを使用すると共に、前記種晶粒子の生成時においては、酸化反応開始前の熟成中の第一鉄含有沈澱物を含む水懸濁液に全Feに対しCo換算で10〜45原子%のCo化合物を添加して酸化反応を全Fe2+の20〜80%の範囲で行い、
前記ゲータイト層の成長時においては、前記種晶粒子と第一鉄含有沈殿物とを含む水懸濁液のpHが9.0未満となるように全Feに対しAl換算で0.5〜15原子%のAl化合物を添加し、
生成させた前記紡錘状ゲータイト粒子を濾別した後、pH9.5〜11.5のアンモニア水で水洗することによって得ることができる。
【0056】
前記紡錘状ゲータイト種晶粒子の生成反応において、硫酸第一鉄水溶液を用いるのは、硫酸第一鉄水溶液以外では、例えば、塩化第一鉄水溶液では、塩素を含有するため好ましくない。前記硫酸第一鉄水溶液と前記混合アルカリ水溶液との混合後の第一鉄濃度は0.1〜1.0mol/lが好ましく、より好ましくは0.2〜0.8mol/lである。0.1mol/l未満の場合には、収量が少なく工業的でない。1.0mol/lを越える場合には、粒径分布が大きくなるため好ましくない。
【0057】
本発明においては炭酸水素アンモニウム水溶液(NHHCO)及び水酸化アンモニウム水溶液(NHOH)を用いる。アルカリ金属からなるアルカリ水溶液を用いた場合には、粒子中にアルカリ金属が残存するため本発明の目的とする可溶性塩が除去された金属磁性粒子粉末を得ることができない。炭酸水素アンモニウム水溶液と水酸化アンモニウム水溶液の混合割合は、混合アルカリ水溶液に対して水酸化アンモニウム水溶液が55〜85mol%であり、好ましくは57〜80mol%である。炭酸水素アンモニウムが多い場合には、得られるゲータイト粒子の軸比が小さくなる。一方、水酸化アンモニウムが多くなりすぎるとマグネタイトが発生しやすくなると共にコバルトの溶出も起こりやすい。
【0058】
前記炭酸水素アンモニウム水溶液と水酸化アンモニウム水溶液の合計使用量は、硫酸第一鉄水溶液中の全Feに対する当量比として1.7〜3.0、好ましくは1.75〜2.85である。1.7未満の場合には、マグネタイトが混在しやすくなり、3.0を越えると工業的に好ましくない。
【0059】
本発明における第一鉄含有沈殿物を含む水懸濁液のpHは7.5〜9.5が好ましく、より好ましくは8.0〜9.0である。pH7.5未満の場合にはマグネタイトが混在するため好ましくない。pHが9.5を超える場合には、コバルトの溶出が顕著になるため好ましくない。
【0060】
前記紡錘状ゲータイト種晶粒子の熟成反応は、非酸化性雰囲気下で攪拌して行う。非酸化性雰囲気とは、不活性ガス(窒素ガスなど)又は還元性ガス(水素ガスなど)を液中に通気する。好ましくは窒素ガスである。
【0061】
前記紡錘状ゲータイト種晶粒子の熟成反応における反応温度は、非酸化性雰囲気下の前記水懸濁液を、通常、40〜80℃の温度範囲で行うことが好適である。40℃未満の場合には、軸比が小さく十分な熟成効果が得られ難く、80℃を越える場合には、マグネタイトが混在してくることがある。熟成時間としては、30〜300分間である。30分間未満の場合には、十分に軸比を大きくすることができない。300分間を越える場合には、アンモニアが揮発するため十分な熟成効果を得ることが困難となる。
【0062】
前記紡錘状ゲータイト種晶粒子の生成反応における酸化手段は、酸素含有ガス(例えば空気)を液中に通気することにより行う。
【0063】
前記紡錘状ゲータイト種晶粒子の生成反応における温度は、通常、ゲータイト粒子が生成する80℃以下の温度で行えばよい。80℃を越える場合には、紡錘状ゲータイト粒子中にマグネタイトが混在することがある。好ましくは45〜55℃の範囲である。
【0064】
前記紡錘状ゲータイト種晶粒子の生成反応において、酸化反応を行う前の熟成されている第一鉄含有沈澱物を含む水懸濁液に、硫酸コバルトや硝酸コバルト等のCo化合物を添加する。前記Co化合物の添加量は、最終生成物である紡錘状ゲータイト粒子中の全Feに対してCo換算で10〜35原子%、好ましくは12〜35原子%である。10原子%未満の場合には、金属磁性粒子粉末とした場合に磁気的特性の向上効果がなく、35原子%を越える場合には、微細化のため軸比が低下する。
【0065】
前記紡錘状ゲータイト種晶粒子の生成反応は全Fe2+の20〜80%の範囲で行う。20%未満では軸比が小さくなり過ぎ、金属磁性粒子粉末とした場合に高い保磁力が得られ難く、一方、80%を超えるとゲータイト粒子の生成が終了間近であり、添加するAl化合物の効果が十分得られず保磁力が低下する。
【0066】
前記紡錘状ゲータイト種晶粒子を含む水懸濁液中に、酸素含有ガスを通気して、前記紡錘状ゲータイト種晶粒子の粒子表面上にゲータイト層を成長させるにあたり、水懸濁液にAl化合物を添加することによって、アルミニウムを含有した紡錘状ゲータイト粒子粉末を得ることができる。
【0067】
Al化合物としては、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム等の酸性塩、アルミン酸アンモニウム等のアルミン酸塩を使用することができる。Al化合物の添加時期は、成長反応において酸素含有ガスを通気する前の紡錘状ゲータイト種晶粒子と第一鉄含有沈殿物とを含む水懸濁液若しくは成長反応中の水懸濁液のいずれに存在させてもよい。殊に、ゲータイト層の成長反応を開始する前が好ましい。また、Al化合物を分割添加したり連続的及び間欠的に添加してもよい。
【0068】
前記Al化合物の添加量は、最終生成物である紡錘状ゲータイト粒子中の全Feに対してAl換算で3〜15原子%、好ましくは3.5〜14原子%である。3原子%未満の場合には、焼結防止効果がなく、15原子%を越える場合には、軸比が低下する。
【0069】
前記ゲータイト層の成長反応におけるpH値は9.0未満であり、好ましくは7.0〜8.8の範囲である。pHが9.0を越える場合にはコバルトの溶出が起こりやすくなり、金属磁性粒子粉末とした場合に目的とする高い保磁力が得られない。pH値が7.0未満の場合には、マグネタイトが混入するため好ましくない。
【0070】
前記ゲータイト層の成長反応における酸化手段は、酸素含有ガス(例えば空気)を液中に通気することにより行う。
【0071】
前記ゲータイト層の成長反応における温度は、通常、ゲータイト粒子が生成する80℃以下の温度で行えばよい。80℃を越える場合には、紡錘状ゲータイト粒子中にマグネタイトが混在することがある。好ましくは45〜55℃の範囲である。
【0072】
得られた紡錘状ゲータイト粒子粉末をpH9.5〜11.5のアンモニア水で水洗する。アンモニア水で洗浄することによって硫酸イオンを除去することができる。アンモニア水のpHが上記範囲以外の場合には、硫酸イオンを十分に除去することができない。アンモニア水の温度範囲は20〜50℃が好ましい。20℃未満の場合には洗浄効率が低下し、また50℃を超える場合にはアンモニアが揮発するため好ましくない。
【0073】
アンモニア水で洗浄した後、更に、水洗することが好ましい。洗浄水としてはイオン交換水が好ましい。
【0074】
得られた紡錘状ゲータイト粒子粉末は、平均長軸径0.06〜0.15μmが好ましく、より好ましくは0.06〜0.14μmであり、軸比6.5〜12が好ましく、より好ましくは7〜12であり、BET比表面積値100〜250m/gが好ましい。Co含有量はCo換算で全Feに対して10〜35原子%、Al含有量がAl換算で全Feに対して3〜15原子%である。
【0075】
本発明においては、前記紡錘状ゲータイト粒子の粒子表面を炭酸コバルトで被覆することが重要である。ゲータイト粒子表面を炭酸コバルトで被覆することによって、還元速度の制御を容易にすることができるので焼結防止効果が向上する。
【0076】
ゲータイト粒子を含有する水懸濁液に添加するコバルト化合物としては、酢酸コバルト又は硝酸コバルトが好ましい。コバルト化合物の添加量は、ゲータイト粒子が含有するCo量との合計で全Feに対してCo換算で50原子%を超えない範囲で添加する。
【0077】
コバルト化合物が存在するゲータイト粒子の水懸濁液にアルカリ金属からなる炭酸アルカリ水溶液を添加することによって、ゲータイト粒子の粒子表面に炭酸コバルトを被覆する。アルカリ金属からなる炭酸アルカリ水溶液としては、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液が好ましい。アルカリ金属からなる炭酸アルカリ水溶液以外のアルカリ水溶液では、炭酸コバルトによって被覆することが困難となり、分散性及び酸化安定性に優れた金属磁性粒子粉末を得ることができない。なお、被覆反応によって付着したアルカリ金属は水洗することによって容易に除去することができる。
【0078】
炭酸コバルトで被覆したゲータイト粒子の粒子表面を被覆する希土類元素としては、イットリウム、ネオジム、ランタン、セリウム、スカンジウム、プラセオジム及びサマリウム等の1種又は2種以上が好適である。添加する希土類化合物としては、前記希土類元素の塩化物、硝酸塩を使用することが好ましい。
【0079】
前記希土類化合物の添加量は、希土類元素換算で全Feに対して3〜20原子%が好ましく、より好ましくは3.5〜19原子%である。3原子%未満の場合には、焼結防止効果が十分でなく、金属磁性粒子粉末とした場合にSFD(保磁力分布)等が悪化する。20原子%を越える場合には、飽和磁化値が低くなる。
【0080】
添加した希土類化合物は、炭酸アルカリ水溶液を添加して反応溶液のpHを調整することによって炭酸コバルトが被覆されたゲータイト粒子粉末の粒子表面に被覆することができる。希土類化合物は炭酸塩又は水酸化物の状態で被覆されている。なお、被覆反応によって付着したアルカリ金属は水洗することによって容易に除去することができる。
【0081】
前記表面被覆されたゲータイト粒子粉末は、コバルトとアルミニウムを含有するゲータイト粒子粉末の粒子表面が炭酸コバルトで被覆され、更に当該炭酸コバルトの表面が希土類元素からなる化合物で被覆されている。
【0082】
紡錘状ゲータイト粒子の粒子表面を炭酸コバルトによって表面被覆し、更に当該粒子表面を希土類化合物によって表面被覆することで、粒子及び粒子相互間の焼結が防止され、紡錘状ゲータイト粒子の粒子形状及び軸比を保持継承した紡錘状ヘマタイト粒子粉末を得ることができ、これによって、前記形状等を保持継承し、個々に独立した鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末が得られやすくなる。
【0083】
次に、表面被覆した紡錘状ゲータイト粒子粉末の加熱還元処理を行う。
【0084】
なお、磁気特性、粉体特性及び粉体形状の制御ためには、常法により、還元処理に先立って、あらかじめ、非還元性ガス雰囲気中において加熱脱水処理を行って、紡錘状ヘマタイト粒子粉末とすることが好ましい。
【0085】
非還元性雰囲気としては、空気、酸素ガス、窒素ガス等から選択される一種以上のガス流下とすることができる。加熱処理温度は、400〜750℃の範囲で行うことができ、該加熱処理温度は、紡錘状ゲータイト粒子の被覆処理に用いた化合物の種類に応じて適宜選択することがより好ましい。400℃未満では加熱処理に長時間を要し、750℃を超える場合には、粒子の変形と粒子及び粒子相互間の焼結を引き起こす。
【0086】
本発明における紡錘状ヘマタイト粒子粉末は、平均長軸径0.05〜0.15μmが好ましく、より好ましくは0.05〜0.14μmであり、軸比6.5〜12が好ましく、より好ましくは7〜12であり、BET比表面積値30〜140m/gが好ましい。
【0087】
紡錘状ヘマタイト粒子粉末のコバルト含有量はCo換算で全Feに対して20〜50原子%であって、Al含有量はAl換算で全Feに対して3〜15原子%であって、希土類元素の含有量は、希土類元素換算で全Feに対し3〜20原子%である。
【0088】
本発明における加熱還元処理の温度範囲は、350〜700℃が好ましい。350℃未満である場合には、還元反応の進行が遅く、長時間を要する。また、金属磁性粒子の結晶成長が不十分であるため、飽和磁化値、保磁力などの磁気特性が著しく低下する。700℃を超える場合には、還元反応が急激に進行して粒子の変形と、粒子及び粒子相互間の焼結を引き起こす。
【0089】
本発明における加熱還元後の鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末は、周知の方法、例えば、トルエン等の有機溶剤中に浸漬する方法、還元後の鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の雰囲気を一旦不活性ガスに置換した後、不活性ガス中の酸素含有量を徐々に増加させながら最終的に空気とする方法及び酸素と水蒸気を混合したガスを使用して徐酸化する方法等により空気中に取り出すことができる。
【0090】
次に、本発明に係る磁気記録媒体について述べる。
【0091】
本発明に係る磁気記録媒体は、非磁性支持体上と該非磁性支持体上に形成される本発明に係る鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む磁気記録層とからなる。
【0092】
非磁性支持体としては、現在、磁気記録媒体に汎用されているポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等の合成樹脂フィルム、アルミニウム、ステンレス等金属の箔や板及び各種の紙を使用することができ、その厚みは、その材質により種々異なるが、通常好ましくは1.0〜300μm、より好ましくは2.0〜50μmである。
【0093】
磁気ディスクの場合、非磁性支持体としてはポリエチレンテレフタレートが通常用いられ、その厚みは、通常50〜300μmである。磁気テープの場合は、ポリエチレンテレフタレートの場合、その厚みは、通常3〜100μm、ポリエチレンナフタレートの場合、その厚みは、通常3〜50μm、ポリアミドの場合、その厚みは、通常2〜10μmである。
【0094】
結合剤樹脂としては、現在、磁気記録媒体の製造にあたって汎用されている塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、ウレタンエラストマー、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリビニルブチラール、ニトロセルロース等セルロース誘導体、ポリエステル樹脂、ポリブタジエン等の合成ゴム系樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイソシアネート、電子線硬化型アクリルウレタン樹脂等とその混合物を使用することができる。
【0095】
また、各結合剤樹脂には−OH、−COOH、−SOM、−OPO、−NH等の極性基(但し、MはH、Na、Kである。)が含まれていてもよい。
【0096】
非磁性支持体上に形成された磁気記録層の塗膜厚さは、0.01〜5.0μmの範囲である。0.01μm未満の場合には、均一な塗布が困難で塗りむら等が生じやすくなるため好ましくない。5.0μmを超える場合には、反磁界の影響のため、所望の電磁変換特性が得られにくくなる。
【0097】
磁気記録層中における鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末と結合剤樹脂との配合割合は、結合剤樹脂100重量部に対して複合磁性粒子粉末が5〜2000重量部である。
【0098】
尚、磁気記録層に、磁気記録媒体に用いられている周知の潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤等が必要により結合剤樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部程度含まれていてもよい。
【0099】
なお、本発明に係る鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末を用いて得られた磁気記録媒体は、保磁力Hcが159.2〜238.7kA/m(2000〜3000Oe)であり、角形比(Br/Bm)が0.82以上、好ましくは0.85以上であり、SFDが0.60以下、好ましくは0.50以下であり、配向度が2.0以上、好ましくは2.3以上であり、酸化安定性ΔBmが8%未満、好ましくは5%未満であり、表面粗さRaが8nm以下、好ましくは5nm以下である。
【0100】
本発明に係る磁気記録媒体は、非磁性支持体と磁気記録層との間に非磁性粒子粉末及び結合剤樹脂を含む非磁性下地層が形成されてもよい。
【0101】
非磁性下地層用非磁性粒子粉末としては、通常、磁気記録媒体用非磁性下地層に用いられる非磁性無機質粉末を使用することができる。具体的には、ヘマタイト、含水酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化タングステン、二酸化ケイ素、α−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、酸化クロム、酸化セリウム、炭化ケイ素、チタンカーバイト、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデン、チタン酸バリウム等を単独又は組み合わせて用いることができ、殊に、ヘマタイト、含水酸化鉄、酸化チタン等が好ましい。
【0102】
なお、非磁性塗料製造時におけるビヒクル中での分散性改善のため、必要により、これら非磁性粒子粉末の粒子表面をアルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物、ケイ素の酸化物等で表面処理してもよく、また、得られる磁気記録媒体の光透過率、表面電気抵抗値、機械的強度、表面平滑性、耐久性等の諸特性改善のため、必要により、粒子内部にAl,Ti,Zr,Mn,Sn,Sb等を含有させてもよい。
【0103】
非磁性粒子粉末には各種形状の粒子があり、球状、粒状、八面体状、六面体状、多面体状等の粒状粒子粉末、針状、紡錘状、米粒状等の針状粒子粉末及び板状粒子粉末等がある。得られる磁気記録媒体の表面平滑性を考慮すれば、非磁性粒子粉末の粒子形状は針状が好ましい。
【0104】
非磁性粒子粉末の粒子サイズは、通常、平均粒子径が0.01〜0.3μmであり、粒子形状は粒状、針状及び板状である。
【0105】
また、粒子形状が針状の場合、通常、軸比が2〜20であり、粒子形状が板状の場合、板状比(平均板面径/平均厚み)が2〜50である。
【0106】
非磁性下地層は、塗膜厚さが0.2〜10.0μmの範囲が好ましい。0.2μm未満の場合には、非磁性支持体の表面粗さを改善することが困難となる。
【0107】
非磁性下地層における結合剤樹脂は、磁気記録層を形成する場合に用いた前記結合剤樹脂が使用できる。
【0108】
非磁性下地層における非磁性粒子粉末及び結合剤樹脂との配合割合は、結合剤樹脂100重量部に対して非磁性粒子粉末が5〜2000重量部である。
【0109】
なお、非磁性下地層に、磁気記録媒体に用いられている周知の潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤等が必要により結合剤樹脂100重量部に対し0.1〜50重量部程度含まれていてもよい。
【0110】
本発明における非磁性下地層を有する磁気記録媒体は前記非磁性下地層を有さない磁気記録媒体とほぼ同様の特性を有する。本発明における非磁性下地層を有する磁気記録媒体は特に、カレンダーによる表面平滑化が容易となり、また、非磁性下地層から潤滑剤が供給させるため走行耐久性が向上する。
【0111】
【発明の実施の形態】
本発明の代表的な実施の形態は次の通りである。
【0112】
本発明における紡錘状ゲータイト粒子粉末、紡錘状へマタイト粒子粉末及び鉄を主成分とする磁性粒子粉末の平均長軸径、平均短軸径及び軸比は、いずれも電子顕微鏡写真から測定した数値の平均値で示した。
【0113】
本発明における紡錘状ゲータイト粒子粉末、紡錘状へマタイト粒子粉末及び鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末のCo量、Al量、希土類元素量、Na量、Ca量及びその他の金属元素の含有量は、「誘導結合プラズマ発光分光分析装置SPS4000」(セイコー電子工業(株)製)を使用して測定した。
【0114】
鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の残存硫黄分量は、「炭素・硫黄測定装置」(Horiba製)を使用して測定した。
【0115】
粒子粉末のBET比表面積値は、「モノソーブMS−11」(カンタクロム(株)製)を使用して、BET法により測定した値で示した。
【0116】
結晶子サイズD110(鉄を主成分とする金属磁性粒子のX線結晶粒径)は、「X線回折装置」(Rigaku製)(測定条件:ターゲットCu、管電圧40kV、管電流40mA)を使用して、X線回折法で測定される結晶粒子の大きさを、鉄を主成分とする金属磁性粒子の(110)結晶面のそれぞれに垂直な方向における結晶粒子の厚さを表したものであり、各結晶面についての回折ピーク曲線から、下記のシェラーの式を用いて計算した値で示したものである。
【0117】
110=Kλ/βcosθ
【0118】
但し、β=装置に起因する機械幅を補正した真の回折ピークの半値幅(ラジアン単位)。
K=シェラー定数(=0.9)、
λ=X線の波長(Cu Kα線 0.1542nm)、
θ=回折角((110)面の回折ピークに対応)。
【0119】
鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末及び磁性塗膜片の磁気特性は、「振動試料磁力計VSM−3S−15」(東英工業(株)製)を使用して、外部磁場795.8kA/m(10kOe)で測定した。
【0120】
磁性塗膜片の磁気特性は、下記の成分を100mlのポリビンに下記の割合で入れた後、ペイントシェーカー(レッドデビル社製)で8時間混合分散を行うことにより調製した磁性塗料を厚さ25μmのポリエチレンテレフタートフィルム上にアプリケータを用いて50μmの厚さに塗布し、次いで、500mT(5kGauss)の磁場中で乾燥させることにより得た磁性塗膜片の磁気特性を測定した。
【0121】
3mmφスチールボール: 800重量部、
鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末: 100重量部、
スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂: 20重量部、
シクロヘキサノン: 83.3重量部、
メチルエチルケトン: 83.3重量部、
トルエン: 83.3重量部。
【0122】
鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の飽和磁化値の酸化安定性を示すΔσs及び磁性塗膜の飽和磁束密度Bmの耐候性を示すΔBmは、温度60℃、相対湿度90%の恒温槽に粒子粉末又は磁性塗膜片を一週間静置する促進経時試験の後に、粒子粉末の飽和磁化値σs’及び磁性塗膜の飽和磁束密度Bm’をそれぞれ測定し、試験開始前に測定したσs及びBmと促進経時試験一週間後のσs’及びBm’との差(絶対値)を試験開始前のσs及びBmでそれぞれ除した値をΔσs、ΔBmとして算出した。Δσs、ΔBmが0%に近いほど酸化安定性が優れていることを示す。
【0123】
<磁気テープの製造>
本発明における非磁性下地層を有する磁気テープは下記のようにして作製した。
【0124】
磁性塗料は下記の組成・方法で塗料化した。
【0125】
「塗料組成」
鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末 100重量部
<結合剤>
塩化ビニル系共重合体樹脂 10重量部
(商品名:MR104 日本ゼオン(株))
ポリウレタン系樹脂 10重量部
(商品名:UR−8200 東洋紡(株))
α−アルミナ 10重量部
(商品名:AKP−50 住友化学(株))
カーボンブラック 3重量部
(商品名:3250 三菱化学(株))
<潤滑剤>
ミリスチン酸 1重量部
ブチルステアレート 2重量部
<硬化剤>
イソシアネート系硬化剤 5重量部
(商品名:E−31 武田薬品(株))
<溶剤>
メチルエチルケトン 114重量部
トルエン 68重量部
シクロヘキサノン 46重量部
【0126】
「塗料化方法」
合金磁性粒子粉末、塩化ビニル系共重合体樹脂、α−アルミナ、カーボンブラックに溶剤を加えて混合、加圧ニーダーで混練した後、溶剤を加えて希釈した。更にウレタン系共重合体樹脂を加えて、サンドミルで分散させ後、潤滑剤、溶剤を加えて、適性な固形分に調整し、フィルターで濾過した。そして、塗布前に塗料を攪拌しながら、硬化剤を添加し、磁性塗料を作成した。
【0127】
非磁性下地層用非磁性塗料は下記の組成・方法で塗料化し、前記磁性塗料、前記非磁性塗料を下記の塗布を行い、磁気テープを作製した。
塗料組成:
非磁性針状ヘマタイト粉末 100重量部
(平均長軸径:0.16μm、平均短軸径:0.026μm、軸比:6.2、BET:49.1m/g、Al含有量3.5wt%)
<結合剤>
塩化ビニル系共重合体樹脂 7.5重量部
(商品名 MR104 日本ゼオン(株))
ポリウレタン系樹脂 7.5重量部
(商品名 UR−8200 東洋紡(株))
<潤滑剤>
ミリスチン酸 2.5重量部
ブチルステアレート 2.5重量部
<硬化剤>
イソシアネート系硬化剤 5重量部
(商品名 E−31 武田薬品(株))
<溶剤>
メチルエチルケトン 93重量部
トルエン 55重量部
シクロヘキサノン 36重量部
【0128】
ヘマタイト粒子粉末、塩化ビニル系共重合体樹脂に溶剤を加えて混合、加圧ニーダーで混練した後、溶剤を加えて希釈した。更にウレタン系共重合体樹脂を加えて、サンドミルで分散させ後、潤滑剤、溶剤を加えて、適性な固形分に調整し、フィルターで濾過した。そして、塗布前に塗料を攪拌しながら、硬化剤を添加し、非磁性塗料を作成した。
【0129】
塗布方法;
厚さ7μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に前記磁性塗料と前記非磁性塗料を乾燥時磁性層厚及び非磁性層厚がそれぞれ0.10μm、1.1μmになる様に同時塗布し、ソレノイド磁石による配向処理を行い、乾燥させ、カレンダーによる表面平滑化及び硬化処理を行った。引き続き、カーボンブラック、塩化ビニル系共重合体樹脂、ポリウレタン系樹脂からなるバックコート用の塗料を上記磁性層、非磁性層とは反対の面に塗布、乾燥してバックコート層を形成させた。その後、8mm幅にスリットして磁気テープ化した。
【0130】
得られた磁気テープについて、以下に示す方法で、静磁気特性、表面粗度及び電磁変換特性の測定を行った。
【0131】
磁気テープの磁気特性は、振動試料磁力計(形式:VSM−3S−15、東英工業(株)製)を用いて、外部磁場795.8kA/m(10kOe)で測定した。
【0132】
磁気テープの表面粗度Raは、触針式表面粗さ計(形式:Surfcom−575A、東京精密(株)製)を用いて中心線平均粗さを測定した。
【0133】
磁気テープの電磁変換特性は、固定ヘッド式電特測定機(形式:ドラムテスターBX−3168、BELBEX社製)を用いて行った。磁気テープをドラムに巻き付け、テープとヘッド間の相対速度3.3m/sec.になる様に、ドラムを回転させ、各テープの最適記録電流で10kHzの短形波信号を記録し、スペクトラムアナライザーにより10kHzの出力レベルを測定した。次に9kHz(記録周波数−1kHz)のノイズレベルと10kHz出力レベルの差をC/Nとして求めた。なお、出力レベル、C/Nレベルは基準テープに対する相対値(dB)として示した。基準テープは、比較例1により得られたものを用いた。
【0134】
<紡錘状ゲータイト粒子粉末の製造>
炭酸水素アンモニウム20molと、アンモニア水を60mol(混合アルカリに対し水酸化アンモニア水溶液は規定換算で75mol%に該当する。)を含む混合アルカリ水溶液30lを、気泡分散翼を備えた撹拌機付き反応塔の中に投入し、毎分400回転の速度で撹拌機を回転させながら、毎分60lの流量で窒素ガスを通気しながら50℃に調整する。次いでFe2+として20molを含む硫酸第一鉄水溶液16l(硫酸第一鉄に対し混合アルカリ水溶液は規定換算で1.875当量に該当する。)を気泡塔中に投入して25分間熟成した後、Co2+として4.0molを含む硫酸コバルト水溶液4l(全Feに対しCo換算で20原子%に該当する。)を添加し、さらに3時間熟成した後、毎分2lの流量で空気を通気しながら全Fe2+の30%が酸化するまで反応を行った。
【0135】
次いで、Al3+1.6molを含む硫酸アルミニウム水溶液1l(全Feに対しAl換算で8原子%に該当する。)を添加し、さらに反応終了まで酸化反応を行った。反応終了時のpHは、8.4であった。
【0136】
得られたゲータイト粒子含有スラリーをプレスフィルターを用いて濾別し、アンモニアを使用してpH=10.5に調整したアンモニア水を用いて洗浄し、その後、イオン交換水にてさらに洗浄してプレスケーキとした。濾別後の濾液からは55ppmのCoが検出された。
【0137】
前記ケーキの一部を常法により乾燥、粉砕を行って得られた紡錘状ゲータイト粒子粉末は、平均長軸径が0.098μm、平均短軸径が0.0095μm、軸比が8.8、BET比表面積値が189.6m/g、粒子全体としてCo含有量が全Feに対して19.9原子%、Al含有量が全Feに対して8原子%であった。Coの吸着率(Coの残存量/Coの添加量)は、99.3%であった。
【0138】
<紡錘状へマタイト粒子粉末の製造>
ここに得た紡錘状ゲータイト粒子粉末のプレスケーキを水中に十分分散させた後、酢酸コバルト水溶液(全Feに対して15原子%)を添加し十分攪拌した。次いで攪拌しながら、炭酸ナトリウム水溶液を添加して水溶液のpHを8.8に調整し、次いで、硝酸イットリウム水溶液(全Feに対して12原子%)を添加して攪拌混合し、炭酸ナトリウム水溶液を添加して水溶液のpHを9.3に調整する。その後、フィルタープレスで濾過、水洗し、プレスケーキを得た。得られたプレスケーキを、押出し成型機を用いて孔径3mmの成型板で押出し成型して造粒し、次いで120℃で乾燥し、全Feに対してCo換算で15原子%の炭酸コバルトと全Feに対してY換算で12原子%のY化合物とが被覆された紡錘状ゲータイト粒子粉末の造粒物を得た。得られた紡錘状ゲータイト粒子粉末中のCoの含有量は全Feに対して35原子%、Alの含有量は全Feに対して8原子%、Yの含有量は全Feに対して12原子%であった
【0139】
前記炭酸コバルトとY化合物が被覆された紡錘状ゲータイト粒子粉末の造粒物を空気中300℃で脱水し、その後、同雰囲気中600℃で加熱脱水して紡錘状ヘマタイト粒子粉末の造粒物を得た。
【0140】
<鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の製造>
ここに得た紡錘状ヘマタイト粒子粉末の顆粒状造粒物100g(平均径:2.6mm)を内径72mmのバッチ式固定層還元装置に入れ、層高を5.5cmとした後、500℃でガス空塔速度50cm/sの窒素ガスを通気しながら、500℃まで加熱昇温し、次いで、水素ガスに切り替えてガス空塔速度50cm/sの水素ガスを通気しながら、500℃で排気ガス露点が−30℃に達するまで加熱還元して鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の造粒物を得た。
【0141】
その後、再び窒素ガスに切り替えて60℃まで冷却し、品温を60℃で保持し、次いで空気を混合して酸素濃度を0.35vol%まで徐々に増加させて品温が[保持温度+1]℃になるまで(最大品温100℃、処理時間2時間)表面酸化処理を行い、粒子表面に表面酸化層を形成して鉄を主成分とする金属磁性粒子の造粒物を得た。
【0142】
ここに得た鉄を主成分とする金属磁性粉末は、平均長軸径が0.063μm、軸比が5.4、BET比表面積値が60.5m/g、結晶子サイズD110が134Åの粒子からなり、紡錘状かつ粒度が均整で樹枝状粒子がないものであった。また、該粒子中のCo含有量は全Feに対して35原子%、Al含有量は全Feに対して8原子%、Y含有量は12原子%であった。
【0143】
また、可溶性Na含有量が5ppm、可溶性Ca含有量が63ppm、残存硫黄分が47ppmであり、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末から可溶性Feは検出されなかった。
【0144】
また、該鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の磁気特性は、保磁力Hcが187.1kA/m(2350Oe)、飽和磁化値σsが131.8Am/kg(131.8emu/g)、角型比(σr/σs)が0.534、飽和磁化値の酸化安定性Δσsが絶対値として5.9%(実測値−5.9%)であった。
【0145】
また、磁性塗膜の特性は、保磁力Hcが193.4kA/m(2430Oe)、角形比(Br/Bm)が0.848、SFDが0.416、酸化安定性ΔBmが絶対値として5.8%(実測値−5.8%)であった。
【0146】
ここに得た鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末を用いて作製した磁気テープは、保磁力Hcが198.1kA/m(2490Oe)、角形比(Br/Bm)が0.874、ORが2.68、SFDが0.388、表面平滑性Raが3.5nm、酸化安定性ΔBmが絶対値として3.4%(実測値−3.4%)であった。電磁変換特性は10kHzでの出力レベルが+4.2dB、C/N比が+7.2dBであった。なお、電磁変換特性測定後、再生ヘッド表面に顕著な汚れは観察されなかった。
【0147】
【作用】
本発明において最も重要な点は、アルカリ金属からなるアルカリ水溶液を用いることなくアルミニウムとコバルトを含有する紡錘状ゲータイト粒子粉末を得、当該ゲータイト粒子粉末の表面を炭酸コバルトで被覆し、更に当該炭酸コバルトの表面を希土類化合物で被覆して加熱還元することによって、平均長軸径が0.02〜0.08μmの微粒子でありながら、高い保磁力を示し、酸化安定性に優れ、しかも可溶性塩が可及的に除去された鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末が得られるという事実である。
【0148】
本発明においては、アルカリ金属を残存させないために炭酸水素アンモニウム水溶液と水酸化アンモニウム水溶液を用いる。従来、アルカリ水溶液としてアンモニウム化合物を用いた場合には、アンミン錯体([M(NHn+、但し、Mはn価の金属イオン)形成によるコバルトの溶出のため、Fe含有沈殿物を含む水懸濁液のpHを高くすることができなかった。また、pHを低くするとマグネタイトが混在したり、ゲータイト粒子の軸比が小さくなる弊害があった。本発明では、水懸濁液のpHをマグネタイトが混在せず、しかも軸比が小さくならない領域を特定し、ゲータイト粒子の生成反応を行った。
【0149】
一方、第一鉄含有沈殿物を含む水懸濁液のpHを7.5〜9.5の範囲に特定したことにより、アルカリ金属が存在しないため、ゲータイト粒子がアニオンを吸着しやすく、硫酸イオンを多量に含有するゲータイト粒子となり、通常の水を用いた洗浄では十分に除去できなかった。本発明では、pHが9.5〜11.5のアンモニア水を用いて前記ゲータイト粒子を洗浄することによって、硫酸イオンも除去することが可能となった。
【0150】
また、前述した通り、コバルトはアンモニア化合物の存在下では十分に吸着させることができないが、ゲータイト粒子の粒子表面をコバルトで被覆する際に、炭酸アルカリ水溶液を使うことによって、添加したコバルト化合物のほぼ全量を炭酸コバルトとしてゲータイト粒子粉末の粒子表面に被覆することができた。本発明においては、ゲータイト粒子の粒子表面を炭酸コバルトで被覆することによって、還元速度の制御を容易にすることができるので焼結防止効果が向上する。この理由は未だ明らかではないが、炭酸コバルト微粒子が前記ゲータイト粒子の粒子表面を均一に被覆するため、水酸化コバルト等の他の化合物で被覆した場合と比較して、焼結防止効果が向上したものと本発明者は推定している。
【0151】
更に、本発明においては、当該炭酸コバルトの表面に希土類化合物が被覆されている。難還元性の希土類化合物がゲータイト粒子の最外層を被覆していることにより、各粒子間距離を近接することなく維持できるので還元処理時に焼結を抑制することができ、紡錘状の粒子形状が保持されるので、微粒子であっても、磁気特性及び酸化安定性に優れた鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末を得ることができる。なお、被覆反応によって付着したアルカリ金属は水洗することによって容易に除去することができる。
【0152】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げる。
【0153】
実施例1〜5、比較例1〜11:
紡錘状ゲータイト粒子粉末の製造条件を種々変化させた以外は前記発明の実施の形態と同様にして紡錘状ゲータイト粒子粉末を得た。このときの製造条件を表1及び表2に、得られた紡錘状ゲータイト粒子粉末の諸特性を表3に示す。
【0154】
なお、表3の種類中のAはゲータイト粒子にマグネタイト粒子が混入していたことを示す。
【0155】
【表1】
Figure 0004305617
【0156】
【表2】
Figure 0004305617
【0157】
【表3】
Figure 0004305617
【0158】
表3に示した諸特性を有する紡錘状ゲータイト粒子粉末を用いて前記発明の実施の形態と同様にして紡錘状ヘマタイト粒子粉末を得た。このときの製造条件を表4に、得られた紡錘状ヘマタイト粒子粉末の諸特性を表5に示す。実施例5は焼結防止剤で処理した後、加熱処理を行わなかった。
【0159】
【表4】
Figure 0004305617
【0160】
【表5】
Figure 0004305617
【0161】
表5に示した諸特性を有する紡錘状ヘマタイト粒子粉末を用いて前記発明の実施の形態と同様にして鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末を得た。このときの製造条件、得られた鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の諸特性を表6及び表7に示す。なお、実施例5では、表4に示した焼結防止処理を行った後、ヘマタイト化することなく加熱還元処理を行った。
【0162】
【表6】
Figure 0004305617
【0163】
【表7】
Figure 0004305617
【0164】
実施例6
<紡錘状ゲータイト粒子粉末の製造>
炭酸水素アンモニウム30molと、アンモニア水を49mol(混合アルカリに対し水酸化アンモニア水溶液は規定換算で62mol%に該当する。)を含む混合アルカリ水溶液30lを、気泡分散翼を備えた撹拌機付き反応塔の中に投入し、毎分400回転の速度で撹拌機を回転させながら、毎分60lの流量で窒素ガスを通気しながら50℃に調整する。次いでFe2+として20molを含む硫酸第一鉄水溶液16l(硫酸第一鉄に対し混合アルカリ水溶液は規定換算で1.973当量に該当する。)を気泡塔中に投入して45分間熟成した後、Co2+として4.4molを含む硫酸コバルト水溶液4l(全Feに対しCo換算で22原子%に該当する。)を添加し、さらに3時間熟成した後、毎分1lの流量で空気を通気しながら全Fe2+の30%が酸化するまで反応を行った。
【0165】
次いで、Al3+1.6molを含む硫酸アルミニウム水溶液1l(全Feに対しAl換算で8原子%に該当する。)を添加し、さらに反応終了まで酸化反応を行った。反応終了時のpHは、8.2であった。
【0166】
得られたゲータイト粒子含有スラリーをプレスフィルターを用いて濾別し、アンモニアを使用してpH=10.5に調整したアンモニア水を用いて洗浄し、その後、イオン交換水にてさらに洗浄してプレスケーキとした。濾別後の濾液からは44ppmのCoが検出された。
【0167】
前記ケーキの一部を常法により乾燥、粉砕を行って得られた紡錘状ゲータイト粒子粉末は、平均長軸径が0.084μm、平均短軸径が0.0117μm、軸比が7.2、BET比表面積値が195.4m/g、粒子全体としてCo含有量が全Feに対して21.9原子%、Al含有量が全Feに対して8原子%であった。Coの吸着率(Coの残存量/Coの添加量)は、99.5%であった。
【0168】
<紡錘状へマタイト粒子粉末の製造>
ここに得た紡錘状ゲータイト粒子粉末のプレスケーキを水中に十分分散させた後、酢酸コバルト水溶液(全Feに対して20原子%)を添加し十分攪拌した。次いで攪拌しながら、炭酸ナトリウム水溶液を添加して水溶液のpHを8.8に調整し、次いで、硝酸イットリウム水溶液(全Feに対して14原子%)を添加して攪拌混合し、炭酸ナトリウム水溶液を添加して水溶液のpHを9.3に調整する。その後、フィルタープレスで濾過、水洗し、プレスケーキを得た。得られたプレスケーキを、押出し成型機を用いて孔径3mmの成型板で押出し成型して造粒し、次いで120℃で乾燥し、全Feに対してCo換算で20原子%の炭酸コバルトと全Feに対してY換算で14原子%のY化合物とが被覆された紡錘状ゲータイト粒子粉末の造粒物を得た。得られた紡錘状ゲータイト粒子粉末中のCoの含有量は全Feに対して42原子%、Alの含有量は全Feに対して8原子%、Yの含有量は全Feに対して14原子%であった
【0169】
前記炭酸コバルトとY化合物が被覆された紡錘状ゲータイト粒子粉末の造粒物を空気中300℃で脱水し、その後、同雰囲気中550℃で加熱脱水して紡錘状ヘマタイト粒子粉末の造粒物を得た。
【0170】
<鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の製造>
ここに得た紡錘状ヘマタイト粒子粉末の顆粒状造粒物100g(平均径:2.6mm)を内径72mmのバッチ式固定層還元装置に入れ、層高を5.5cmとした後、500℃でガス空塔速度50cm/sの窒素ガスを通気しながら、470℃まで加熱昇温し、次いで、水素ガスに切り替えてガス空塔速度50cm/sの水素ガスを通気しながら、470℃で排気ガス露点が−30℃に達するまで加熱還元して鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の造粒物を得た。
【0171】
その後、再び窒素ガスに切り替えて60℃まで冷却し、品温を70℃で保持し、次いで空気を混合して酸素濃度を0.35vol%まで徐々に増加させて品温が[保持温度+1]℃になるまで(最大品温100℃、処理時間2時間)表面酸化処理を行い、粒子表面に表面酸化層を形成して鉄を主成分とする金属磁性粒子の造粒物を得た。
【0172】
ここに得た鉄を主成分とする金属磁性粉末は、平均長軸径が0.045μm、軸比が4.3、BET比表面積値が70.5m/g、結晶子サイズD110が107Åの粒子からなり、紡錘状かつ粒度が均整で樹枝状粒子がないものであった。また、該粒子中のCo含有量は全Feに対して42原子%、Al含有量は全Feに対して8原子%、Y含有量は14原子%であった。
【0173】
また、可溶性Na含有量が9ppm、可溶性Ca含有量が44ppm、残存硫黄分が37ppmであり、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末から可溶性Feは検出されなかった。
【0174】
また、該鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の磁気特性は、保磁力Hcが173.5kA/m(2180Oe)、飽和磁化値σsが112.1Am/kg(112.1emu/g)、角型比(σr/σs)が0.533、飽和磁化値の酸化安定性Δσsが絶対値として6.2%(実測値−6.2%)であった。
【0175】
また、磁性塗膜の特性は、保磁力Hcが188.6kA/m(2370Oe)、角形比(Br/Bm)が0.830、SFDが0.570、酸化安定性ΔBmが絶対値として3.5%(実測値−3.5%)であった。
【0176】
更に、ここに得た鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末を用いた磁気テープは、保磁力Hcが194.2kA/m(2440Oe)、角形比(Br/Bm)が0.862、ORが2.62、SFDが0.540、表面平滑性Raが2.8nm、酸化安定性ΔBmが絶対値として2.9%(実測値−2.9%)であった。電磁変換特性は10kHzでの出力レベルが+5.9dB、C/N比が+13.0dBであった。なお、電磁変換特性測定後、再生ヘッド表面に顕著な汚れは観察されなかった。
【0177】
このときの製造条件及び得られた鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の諸特性を表1乃至表7に示す。
【0178】
実施例7
表1乃至表5に示した製造条件を種々変化させた以外は、前記実施例6と同様にして鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末を得た。
【0179】
このときの製造条件及び得られた鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の諸特性を表1乃至表7に示す。
【0180】
ここに得た鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末を用いた磁気テープは、保磁力Hcが198.5kA/m(2495Oe)、角形比(Br/Bm)が0.868、ORが2.59、SFDが0.495、表面平滑性Raが2.7nm、酸化安定性ΔBmが絶対値として3.0%(実測値−3.0%)であった。電磁変換特性は10kHzでの出力レベルが+6.3dB、C/N比が+14.0dBであった。なお、電磁変換特性測定後、再生ヘッド表面に顕著な汚れは観察されなかった。
【0181】
実施の形態、実施例6及び実施例7の磁気テープの諸特性を表8に示す。
【0182】
【表8】
Figure 0004305617
【0183】
【発明の効果】
本発明に係る鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末は、長軸径が0.02〜0.08μmの微粒子でありながら、高い保磁力を示し、可溶性塩が可及的に除去され、しかも酸化安定性に優れているので高密度記録、高出力、しかも、信頼性が高く耐候性が向上した磁気記録媒体用磁性粒子粉末として好適である。

Claims (5)

  1. 全Feに対してCo換算で20〜50原子%のコバルト、Al換算で3〜15原子%のアルミニウム及び希土類元素換算で3〜20原子%の希土類元素を含有する鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末であって、前記鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の平均長軸径が0.02〜0.08μmであり、軸比(長軸径/短軸径)が3以上であり、結晶子サイズが90〜150Åであり、保磁力が159.2〜222.9kA/m(2000〜2800Oe)であり、可溶性Na含有量が30ppm以下であって可溶性Ca含有量が100ppm以下であって残存硫黄量が60ppm以下であり、且つ、酸化安定性Δσsが10%以下であること特徴とする鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末。
  2. 全Feに対してCo換算で20〜50原子%のコバルト、Al換算で3〜15原子%のアルミニウム及び希土類元素換算で3〜20原子%の希土類元素を含有する鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末であって、前記鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の平均長軸径が0.02〜0.05μmであり、軸比(長軸径/短軸径)が3以上であり、結晶子サイズが90〜150Åであり、保磁力が159.2〜222.9kA/m(2000〜2800Oe)であり、可溶性Na含有量が30ppm以下であって可溶性Ca含有量が100ppm以下であって残存硫黄量が60ppm以下であり、且つ、酸化安定性Δσsが10%以下であること特徴とする鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末。
  3. 全Feに対してAl換算で3〜15原子%のアルミニウムとCo換算で10〜35原子%のコバルトとを含有するゲータイト粒子の粒子表面が、全Feに対してCo換算で10〜25原子%の炭酸コバルトで被覆されており、更に、当該炭酸コバルトの表面に全Feに対して希土類元素換算で3〜20原子%の希土類化合物が被覆されているゲータイト粒子粉末を加熱還元して得られる全Feに対してCo換算で20〜50原子%のコバルト、Al換算で3〜15原子%のアルミニウム及び希土類元素換算で3〜20原子%の希土類元素を含有する鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末であって、前記鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の平均長軸径が0.02〜0.08μmであり、保磁力が159.2〜222.9kA/m(2000〜2800Oe)であり、可溶性Na含有量が30ppm以下であって可溶性Ca含有量が100ppm以下であって残存硫黄量が60ppm以下であり、且つ、酸化安定性Δσsが10%以下であること特徴とする鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末。
  4. 硫酸第一鉄水溶液と該硫酸第一鉄水溶液に対する当量比が1.7〜3.0である炭酸水素アンモニウム水溶液及び水酸化アンモニウム水溶液からなる混合アルカリ水溶液とを反応させて得られる第一鉄含有沈殿物を含む水懸濁液を非酸化性雰囲気下において熟成させた後に、該水懸濁液中に酸素含有ガスを通気して酸化反応によってゲータイト種晶粒子を生成させ、次いで、該種晶粒子と第一鉄含有沈澱物とを含む水懸濁液中に酸素含有ガスを通気して酸化反応によって該種晶粒子の粒子表面上にゲータイト層を成長させてゲータイト粒子を生成させるにあたり、
    前記混合アルカリ水溶液として、該混合アルカリ水溶液に対して前記水酸化アンモニウム水溶液が55〜85mol%の割合で配合されているものを使用すると共に、前記種晶粒子の生成時においては、酸化反応開始前の熟成中の第一鉄含有沈澱物を含む水懸濁液に全Feに対しCo換算で10〜35原子%のCo化合物を添加して酸化反応を全Fe2+の20〜80%の範囲で行い、
    前記ゲータイト層の成長時においては、前記種晶粒子と第一鉄含有沈殿物とを含む水懸濁液のpHが9.0未満となるように全Feに対しAl換算で3〜15原子%のAl化合物を添加し、
    生成させた前記ゲータイト粒子を濾別した後、pH9.5〜11.5のアンモニア水で水洗することによってゲータイト粒子粉末とし、
    得られたゲータイト粒子を含む水懸濁液にコバルト化合物及び炭酸アルカリを添加して、ゲータイト粒子の粒子表面に全Feに対してCo換算で10〜25原子%の炭酸コバルトを被覆し、次いで、全Feに対して希土類元素換算で3〜15原子%の希土類化合物によって前記炭酸コバルトで被覆されたゲータイト粒子の粒子表面を被覆した後、表面被覆したゲータイト粒子粉末又は該表面被覆したゲータイト粒子粉末を非還元性雰囲気中、400〜750℃で加熱処理して得られたヘマタイト粒子粉末を還元性雰囲気中、350〜700℃で加熱還元して鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末を得ることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末の製造法。
  5. 非磁性支持体上に請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末と結合剤とを主体とする磁性層を形成していることを特徴とする磁気記録媒体。
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