JP4038655B2 - 磁気記録用紡錘状合金磁性粒子粉末及び磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録用紡錘状合金磁性粒子粉末及び磁気記録媒体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、短波長領域での出力特性に優れ、ノイズが大幅に低減され、しかも優れた保存安定性を有する高密度磁気記録媒体及び該磁気記録媒体に含有するFe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、オーディオ用、ビデオ用、コンピュータ用の磁気記録再生用機器の小型軽量化、長時間記録化、記憶容量の増大化が進行しており、磁気記録媒体に対する高性能化、高密度記録化の要求が益々高まってきている。
【0003】
特に、コンピュータテープの分野において、コンピュータの急速な高性能化に伴い、小型化、大容量化のため、記憶容量の向上が強く要求されている。
【0004】
即ち、磁気記録媒体の高密度化、高出力特性及び周波数特性の向上、殊に短波長領域での出力特性に優れることが要求され、その為には、磁気記録媒体に起因するノイズが低減され、高い保磁力Hcを有することが要求されている。
【0005】
また、近年、これまで用いられてきた誘導型磁気ヘッドに代り、磁気抵抗型(MR)ヘッドがコンピュータテープ用再生ヘッドとして導入が検討されている。MRヘッドは、誘導型磁気ヘッドに比べ、大幅に再生出力が得られ易く、一層の高密度記録化が期待されている。
【0006】
殊に、MRヘッドにおいては、誘導コイルに伴うインピーダンスノイズが発生せず、機器ノイズなどのシステムに伴うノイズが大幅に減少するため、磁気記録媒体のノイズを低減することで高C/Nを達成することができる。よって、磁気記録媒体のノイズを低減することが、従来以上に強く求められている。
【0007】
加えて、高記録密度化、特に記録波長の低減を図る上で、磁化遷移領域が狭く、デジタル信号再生波形がシャープであることが高出力、ノイズ抑制の観点から望まれている。このためには、磁化反転幅が小さく、磁界に対して磁化が一斉回転できることが望まれている。
【0008】
磁気記録媒体のこれらの諸特性は磁気記録媒体に使用される磁性粒子粉末と密接な関係を有しており、近年においては、従来の酸化鉄磁性粒子粉末に比較して高い保磁力と大きな飽和磁化値σsを有する鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末が注目され、コンピュータテープではDDS、DLT、TRAVANなどの外部記憶システムに使用されている。
【0009】
そこで、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末についても、前記磁気記録媒体に対する要求を満足させるために、更に一層の特性改善が強く望まれている。
【0010】
即ち、高い保磁力、ノイズが小さく、しかも磁化反転幅が小さい磁気記録媒体を得るためには、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末が微粒子であって、結晶子サイズが小さく、高い保磁力を有し、分散性に優れ、且つ、一斉回転に近い磁化反転メカニズムを有することが強く要求されている。
【0011】
まず、金属磁性粒子粉末の微粒子化については、特開2000―251243号公報の「……信号を記録する領域の長さに対して、使用される磁性体が比較出来る大きさになると明瞭な磁化遷移領域を作り出すことが出来ないので、実質的に記録不可能となる。このため使用する高記録密度化のために、磁性体の微粒子化が長年にわたり指向されている。」なる記載の通り、短波長領域での高出力、ノイズが低減された磁気記録媒体を得るためには、金属磁性粒子粉末の微粒子化、即ち、長軸径の低減が必要になる。
【0012】
また、金属磁性粒子粉末の結晶子サイズについては、特開平7−126704号公報の「記録媒体に起因するノイズレベルを低下させる為には、金属磁性粒子のX線粒径をできるだけ小さくすることも有効な手段であり……」なる記載の通り、ノイズの少ない磁気記録媒体を得るためには、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末がより小さい結晶子サイズD110を有することが強く要求されている。
【0013】
更に、一層の磁気記録媒体のノイズ低減を図るためには、単に金属磁性粒子粉末の長軸径及び結晶子サイズを小さくするだけでは不十分であり、更にノイズ低減に係わる要因の明確化が強く求められている。
【0014】
殊に、最近では、熱揺らぎ磁気余効のための磁化の時間変化を測定することにより得られる活性化体積についての研究が行われており、活性化体積を最適化することによって磁気記録媒体の低ノイズ化が試みられている。
【0015】
また、金属磁性粒子粉末の磁化反転モードを一斉回転に近づけることが求められている。
【0016】
しかしながら、微粒子であって、結晶子サイズが小さく、高い保磁力を有すると共に、磁化反転モードが一斉回転に近いFe及びCoを主成分とする金属磁性粒子粉末を得ることは、その製造法に起因して非常に困難である。
【0017】
以下、この事実について詳述する。
【0018】
即ち、一般に、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末は、第一鉄塩水溶液とアルカリ水溶液とを反応して得られる鉄含有沈殿物を含む水溶液を空気等の酸素含有ガスを通気して酸化反応を行い得られる紡錘状ゲータイト粒子粉末、該ゲータイト粒子粉末を加熱脱水して得られる紡錘状ヘマタイト粒子粉末、又は、これら粒子粉末に鉄以外の異種元素を含有させた紡錘状粒子粉末を出発原料として用い、該出発原料を還元性ガス雰囲気下で加熱還元することにより得られている。
【0019】
先ず、結晶子サイズと保磁力との関係について言えば、特開平4−61302号公報に「……結晶子サイズが小さくなる程保磁力は小さくなる傾向にある為、……磁性粒子粉末の保磁力を出来るだけ高く維持しながら、小さい結晶子サイズを有する磁性粒子が強く要求されている。」と記載されている通り、紡錘状金属磁性粒子粉末の場合は、結晶子サイズと保磁力は逆の相関があり、金属磁性粒子粉末の結晶子サイズをより小さくすることと高い保磁力とを共に有することは非常に困難である。
【0020】
また、金属磁性粒子粉末の酸化安定性を考慮した場合、加熱還元温度をできるだけ高くして十分に還元率を高めておくことが必要であるが、加熱還元温度を高くした場合には、出発原料は形状破壊を生起しやすくなり、結果として保磁力の低下につながる。更に、加熱還元工程における雰囲気や温度等の条件は非常に過酷であるため、紡錘状金属磁性粒子粉末は粒子及び粒子相互間で焼結を生起しやすい。
【0021】
出発原料が0.15μm以下の微粒子になると、加熱還元工程における粒子形状の破壊がより顕著となる傾向にある。形状破壊された金属磁性粒子粉末は、形状異方性の低下によって高い保磁力を得ることができず、粒子サイズの分布は低下する。また、粒子サイズの微粒子化は酸化安定性の急激な低下を引き起こす。加えて、磁気記録媒体の製造に当っても、ビヒクル中での結合剤との混練、分散過程における粒子間力の増大、あるいは磁気的凝集力の増大によって、分散性が低下し、磁性塗膜とした時の角型比が低下し、優れたSFDを有する磁気記録媒体を得ることが難しい。
【0022】
また、金属磁性粒子粉末の磁化反転モードを一斉回転に近づけることは、金属磁性粒子粉末の単結晶化を高めることにより達成されるが、結果、結晶子サイズを増大させることになり、金属磁性粒子粉末の磁化反転モードを一斉回転に近づけることと金属磁性粒子粉末の結晶子サイズを小さくすることとを両立させることは困難であった。
【0023】
磁性金属粒子粉末の特性を改善することによって、高出力、低ノイズ化を満たす磁気記録媒体を得ることが、特開平8−171718号公報、特開平9−22522号公報、特開平9−22523号公報、特開平9−106535号公報、特開平10−302243号公報等に記載されている。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
微粒子であって、結晶子サイズが小さく、殊に160Å以下であるにもかかわらず、高い保磁力と適切な飽和磁化値を有すると共に、磁化反転モードが一斉回転に近い紡錘状合金磁性粒子粉末は、現在最も要求されているところであるが、前記諸特性を十分満足する紡錘状合金磁性粒子粉末は未だ提供されていない。
【0025】
即ち、特開平8−171718号公報には、磁気記録媒体の保磁力Hcと異方性磁界HKとの比Hc/HKを特定されているが、低ノイズ化に関する検討が不十分であり、ノイズ低減の点で十分とは言い難いものである。加えて、ノイズ低減に必要な金属磁性粒子粉末の特性について十分に考慮されていない。
【0026】
また、特開平9−22522号公報、特開平9−22523号公報には、金属磁性粒子粉末の結晶子数が特定されており、特開平9−106535号公報には金属磁性粒子粉末の結晶子数及び結晶率が特定され、磁化反転モードに言及されているが、低ノイズ化の点で要求を満足できるものではなく、また、磁化反転モードも一斉回転の観点から十分とは言い難いものである。
【0027】
また、特開平10−302243号公報には保磁力の周波数依存性から求めた磁気記録媒体の磁化反転体積が特定されているが、ノイズ低減の点で十分に満足できるものではなかった。また、ノイズ低減に必要な金属磁性粒子粉末の特性に対する言及はなされていない。
【0028】
また、信学技報、MR97−22、29〜34(1997−07)(社団法人電子情報通信学会)には金属磁性粒子粉末を用いた磁気記録媒体の活性化体積と実体積の関係について記載されているが、活性化体積が大きく、ノイズ低減の点で十分とは言い難いものである。加えて、ノイズ低減に必要な金属磁性粒子粉末の特性について十分に考慮されていない。
【0029】
また、Journal of magnetism and magnetic materials、193、314−317(1999)には、金属磁性粒子粉末の活性化体積について記載されているが、結晶子サイズが大きく、ノイズが十分に低減できるとは言い難いものである。
【0030】
そこで、本発明は、微粒子であって、結晶子サイズが小さい、殊に160Å以下であるにもかかわらず、高い保磁力と適切な飽和磁化値を有すると共に、回転ヒステリシス積分値が小さい紡錘状合金磁性粒子粉末を得ることを技術的課題とする。
【0031】
【課題を解決するための手段】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0033】
即ち、本発明は、全Feに対してCo換算で20〜50原子%のコバルトを含有している平均長軸径(L)が0.03〜0.10μmのFe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末であり、該Fe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末の保磁力値が159.2〜238.7kA/m(2000〜3000Oe)であって、結晶子サイズが100〜160Åであって、活性化体積(Vact)が0.01〜0.07E−4μmであって、回転ヒステリシス積分(Rh)値が1.0以下であることを特徴とする紡錘状合金磁性粒子粉末である。
【0034】
また、本発明は、全Feに対してCo換算で20〜50原子%のコバルトを含有している平均長軸径(L)が0.03〜0.10μmのFe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末であり、該Fe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末の保磁力値が159.2〜238.7kA/m(2000〜3000Oe)であって、飽和磁化値が100〜150Am/kgであって、結晶子サイズが100〜160Åであって、活性化体積(Vact)が0.01〜0.07E−4μmであって、回転ヒステリシス積分(Rh)値が1.0以下であることを特徴とする紡錘状合金磁性粒子粉末である。
【0035】
また、本発明は、非磁性支持体上に前記紡錘状合金磁性粒子粉末のいずれかと結合剤とを主体とする磁性層を形成していることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0036】
次に、本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
【0037】
先ず、本発明に係る紡錘状合金磁性粒子粉末について述べる。
【0038】
本発明に係る紡錘状合金磁性粒子粉末は、Coを全Feに対して20〜50原子%、好ましくは20〜45原子%含有する。Co含有量が20原子%未満の場合には、酸化安定性を十分に改良することができず、また、大きな保磁力が得られ難い。50原子%を超える場合には、飽和磁化値、保磁力の低下を招く。また、コストの観点からも不必要な添加は好ましくない。
【0039】
本発明に係る紡錘状合金磁性粒子粉末の平均長軸径は0.03〜0.10μmである。平均長軸径が0.03μm未満の場合には、飽和磁化値及び酸化安定性が急激に低下し、同時に高い保磁力も得られ難くなる。更に、熱ゆらぎによる記録の経時変化が無視出来なくなるため、記録材料として好ましくない。0.10μmを超える場合には、目的とする短波長領域での高出力、低ノイズが十分に達成されない。加えて、保磁力の低下の点からも好ましくない。好ましくは0.03〜0.098μm、より好ましくは0.03〜0.095μmである。
【0040】
本発明に係る紡錘状合金磁性粒子粉末の平均短軸径は0.008〜0.020μmが好ましい。平均短軸径が0.020μmを超える場合、保磁力、異方性磁界が低下し好ましくない。また、結晶子サイズ、活性化体積及び回転ヒステリシス積分値の全てを満足する合金磁性粒子粉末が得られ難い。平均短軸径が0.008μmに満たない場合は、飽和磁化値及び酸化安定性が急激に低下し、同時に高い保磁力も得られ難くなる。更に、熱ゆらぎによる記録の経時変化が無視出来なくなるため、記録材料として好ましくない。
【0041】
また、軸比(平均長軸径/平均短軸径)は3〜8が好ましい。
【0042】
本発明に係る紡錘状合金磁性粒子粉末の結晶子サイズD110は100〜160Åである。160Åを超える場合は、目的とする短波長領域での低ノイズ化が十分に達成されない。100Å未満の場合は、飽和磁化値及び酸化安定性が急激に低下し、同時に高い保磁力も得られ難くなる。更に、熱ゆらぎによる記録の経時変化が無視出来なくなるため、記録材料として好ましくない。好ましくは100〜155Åである。
【0043】
本発明に係る紡錘状合金磁性粒子粉末の活性化体積(Vact)は0.01〜0.07E−4μmである。好ましくは0.015〜0.07E−4μmである。0.07E−4μmを超える場合は、目的とする短波長領域での低ノイズが十分に達成されない。0.01E−4μm未満の場合は、飽和磁化値、酸化安定性が急激に低下し、同時に高い保磁力も得られ難くなる。更に、熱ゆらぎによる記録の経時変化が無視出来なくなるため、記録材料として好ましくない。
【0044】
本発明に係る紡錘状合金磁性粒子粉末の回転ヒステリシス積分(Rh)値は1.0以下であり、好ましくは0.95以下である。回転ヒステリシス積分(Rh)値が1.0を超える場合、短波長領域での高出力、低ノイズ化が達成されない。
【0045】
本発明に係る紡錘状合金磁性粒子粉末のBET比表面積値は40〜75m/gが好ましく、より好ましくは45〜75m/gである。75m/gを超える場合は、塗料化時に分散し難くなり好ましくない。40m/g未満の場合は、結晶子サイズ、活性化体積、長軸径を全て満足する金属磁性粒子粉末が得られない。
【0046】
本発明に係る紡錘状合金磁性粒子粉末は、保磁力Hcが159.2〜238.7kA/m(2000〜3000Oe)である。238.7kA/mを超える場合は、記録ヘッドの飽和を引き起こし、目的とする短波長領域での高出力が得られない。159.2kA/m未満の場合は、短波長領域で十分な高出力が得られない。好ましくは167.1〜222.8kA/m(2100〜2800Oe)である。
【0047】
本発明に係る紡錘状合金磁性粒子粉末の飽和磁化値σsが100〜150Am/kg(100〜150emu/g)が好ましく、より好ましくは100〜145Am/kg(100〜145emu/g)である。150Am/kgを超える場合は、ノイズ増加の観点で好ましくない。特に再生ヘッドにMRヘッドを用いる場合、過剰な残留磁化を生じ、不必要なノイズの増加を引き起こすため、C/Nが低下し好ましくない。100Am/kg未満の場合は、金属磁性粒子粉末の保磁力低下、保磁力分布の拡大を引き起こし、好ましくない。
【0048】
本発明に係る紡錘状合金磁性粒子粉末の角型比(σr/σs)は0.52〜0.55が好ましい。
【0049】
本発明に係る紡錘状合金磁性粒子粉末の異方性磁界(Hk)は477.5〜636.6kA/m(6000〜8000Oe)、好ましくは517.3〜636.6kA/m(6500〜8000Oe)である。636.6kA/m(8000Oe)を超える金属磁性粒子粉末は工業的に得ることが困難である。477.5kA/m(6000Oe)未満である場合は、短波長領域での高出力が得られない。
【0050】
本発明に係る紡錘状合金磁性粒子粉末の飽和磁化値の酸化安定性Δσsは15%以下が好ましく、より好ましくは13%以下であり、更により好ましくは10%以下である。
【0051】
次に、本発明に係る磁気記録媒体について述べる。
【0052】
本発明に係る磁気記録媒体は、非磁性支持体上と該非磁性支持体上に形成される本発明に係る紡錘状合金磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む磁気記録層とからなる。
【0053】
非磁性支持体としては、現在、磁気記録媒体に汎用されているポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等の合成樹脂フィルム、アルミニウム、ステンレス等金属の箔や板及び各種の紙を使用することができ、その厚みは、その材質により種々異なるが、通常好ましくは1.0〜300μm、より好ましくは2.0〜50μmである。
【0054】
磁気ディスクの場合、非磁性支持体としてはポリエチレンテレフタレートが通常用いられ、その厚みは、通常50〜300μmである。磁気テープの場合は、ポリエチレンテレフタレートの場合、その厚みは、通常3〜100μm、ポリエチレンナフタレートの場合、その厚みは、通常3〜50μm、ポリアミドの場合、その厚みは、通常2〜10μmである。
【0055】
結合剤樹脂としては、現在、磁気記録媒体の製造にあたって汎用されている塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、ウレタンエラストマー、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリビニルブチラール、ニトロセルロース等セルロース誘導体、ポリエステル樹脂、ポリブタジエン等の合成ゴム系樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイソシアネート、電子線硬化型アクリルウレタン樹脂等とその混合物を使用することができる。
【0056】
また、各結合剤樹脂には−OH、−COOH、−SOM、−OPO、−NH等の極性基(但し、MはH、Na、Kである。)が含まれていてもよい。
【0057】
非磁性支持体上に形成された磁気記録層の塗膜厚さは、0.01〜5.0μmの範囲である。0.01μm未満の場合には、均一な塗布が困難で塗りむら等が生じやすくなるため好ましくない。5.0μmを超える場合には、反磁界の影響のため、所望の電磁変換特性が得られにくくなる。
【0058】
磁気記録層中における複合磁性粒子粉末と結合剤樹脂との配合割合は、結合剤樹脂100重量部に対して複合磁性粒子粉末が5〜2000重量部である。
【0059】
尚、磁気記録層に、磁気記録媒体に用いられている周知の潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤等が必要により結合剤樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部程度含まれていてもよい。
【0060】
なお、本発明に係る紡錘状合金磁性粒子粉末を用いて得られた磁気記録媒体は、保磁力Hcが159.2〜238.7kA/m(2000〜3000Oe)であり、角形比(Br/Bm)が0.82以上、好ましくは0.85以上であり、SFDが0.60以下、好ましくは0.50以下であり、配向度が2.0以上、好ましくは2.3以上であり、酸化安定性ΔBmが8%未満、好ましくは5%未満であり、表面粗さRaが8nm以下、好ましくは5nm以下である。
【0061】
本発明に係る磁気記録媒体は、非磁性支持体と磁気記録層との間に非磁性粒子粉末及び結合剤樹脂を含む非磁性下地層が形成されてもよい。
【0062】
非磁性下地層用非磁性粒子粉末としては、通常、磁気記録媒体用非磁性下地層に用いられる非磁性無機質粉末を使用することができる。具体的には、ヘマタイト、含水酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化タングステン、二酸化ケイ素、α−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、酸化クロム、酸化セリウム、炭化ケイ素、チタンカーバイト、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデン、チタン酸バリウム等を単独又は組み合わせて用いることができ、殊に、ヘマタイト、含水酸化鉄、酸化チタン等が好ましい。
【0063】
なお、非磁性塗料製造時におけるビヒクル中での分散性改善のため、必要により、これら非磁性粒子粉末の粒子表面をアルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物、ケイ素の酸化物等で表面処理してもよく、また、得られる磁気記録媒体の光透過率、表面電気抵抗値、機械的強度、表面平滑性、耐久性等の諸特性改善のため、必要により、粒子内部にAl,Ti,Zr,Mn,Sn,Sb等を含有させてもよい。
【0064】
非磁性粒子粉末には各種形状の粒子があり、球状、粒状、八面体状、六面体状、多面体状等の粒状粒子粉末、針状、紡錘状、米粒状等の針状粒子粉末及び板状粒子粉末等がある。得られる磁気記録媒体の表面平滑性を考慮すれば、非磁性粒子粉末の粒子形状は針状が好ましい。
【0065】
非磁性粒子粉末の粒子サイズは、通常、平均粒子径が0.01〜0.3μmであり、粒子形状は粒状、針状及び板状である。
【0066】
また、粒子形状が針状の場合、通常、軸比が2〜20であり、粒子形状が板状の場合、板状比(平均板面径/平均厚み)が2〜50である。
【0067】
非磁性下地層は、塗膜厚さが0.2〜10.0μmの範囲が好ましい。0.2μm未満の場合には、非磁性支持体の表面粗さを改善することが困難となる。
【0068】
非磁性下地層における結合剤樹脂は、磁気記録層を形成する場合に用いた前記結合剤樹脂が使用できる。
【0069】
非磁性下地層における非磁性粒子粉末及び結合剤樹脂との配合割合は、結合剤樹脂100重量部に対して非磁性粒子粉末が5〜2000重量部である。
【0070】
なお、非磁性下地層に、磁気記録媒体に用いられている周知の潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤等が必要により結合剤樹脂100重量部に対し0.1〜50重量部程度含まれていてもよい。
【0071】
本発明における非磁性下地層を有する磁気記録媒体は前記非磁性下地層を有さない磁気記録媒体とほぼ同様の特性を有する。本発明における非磁性下地層を有する磁気記録媒体は特に、カレンダーによる表面平滑化が容易となり、また、非磁性下地層から潤滑剤が供給させるため走行耐久性が向上する。
【0072】
次に、本発明に係る紡錘状合金磁性粒子粉末の製造法について述べる。
【0073】
本発明に係る紡錘状合金磁性粒子粉末は、全Feに対してCo換算で20〜50原子%のコバルトを含有する平均長軸径が0.05〜0.15μmの紡錘状ゲータイト粒子粉末又は該紡錘状ゲータイト粒子粉末を加熱脱水して得られる紡錘状へマタイト粒子粉末を出発原料として紡錘状合金磁性粒子粉末を得る製造法において、前記出発原料を不活性ガス雰囲気下で300〜600℃の温度範囲まで昇温し、次いで還元性ガス雰囲気に切り替えた後、300〜600℃の温度範囲で加熱還元を行って紡錘状合金磁性粒子粉末を得る第1工程、第1工程で得た紡錘状合金磁性粒子粉末を酸素含有不活性ガス雰囲気下で80〜200℃の温度範囲で表面酸化を行って該紡錘状合金磁性粒子粉末の飽和磁化値を100〜135Am/kgとする第2工程、第2工程を経由した紡錘状合金磁性粒子粉末を不活性ガス雰囲気下で第1工程の還元温度よりも50℃以上高く、且つ、400〜700℃の温度範囲まで昇温し、次いで、還元性ガス雰囲気に切り替えた後、400〜700℃の温度範囲で再度加熱還元を行う第3工程及び第3工程を経由した紡錘状合金磁性粒子粉末を5〜10g/mの水蒸気と酸素とを含んだ不活性ガス雰囲気下で40〜160℃の温度範囲で再度表面酸化を行うことによって得ることができる。
【0074】
本発明における出発原料には、全Feに対してCo換算で20〜50原子%のコバルトを含有し、平均長軸径が0.05〜0.15μmである紡錘状ゲータイト粒子粉末又は該紡錘状ゲータイト粒子粉末を加熱脱水処理して得られた全Feに対してCo換算で20〜50原子%のコバルトを含有し、平均長軸径が0.05〜0.13μmである紡錘状へマタイト粒子粉末を用いる。
【0075】
本発明における出発原料は、紡錘状粒子であり、樹枝状粒子が混在せず、サイズ分布に優れるものである。
【0076】
また、紡錘状ゲータイト粒子粉末としては、アルカリ水溶液として、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、アンモニア水の1種又は2種以上及びこれらと水酸化ナトリウムとの混合溶液を用いて得ることができる。Na量低減及び磁気特性を考慮した場合、炭酸水素アンモニウム及び/又はアンモニア水を用いることが好ましい。
【0077】
本発明における紡錘状ゲータイト粒子粉末は、粒子表面をCo化合物、Al化合物及び焼結防止剤で被覆してもよい。
【0078】
焼結防止剤としては、希土類元素の化合物を用いることができ、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、サマリウム等の1種又は2種以上が好ましい。特に、イットリウムが好適である。
【0079】
なお、焼結防止効果の向上のため、あるいは、必要によりその他の元素としてSi、B、Mg、Ba、Sr等から選ばれる元素の化合物の1種又は2種以上を使用してもよい。これらの化合物は、焼結防止効果を有するだけでなく、還元速度を制御する働きも有するので、必要に応じて組み合わせて使用すればよい。
【0080】
本発明における紡錘状ゲータイト粒子粉末は、焼結防止効果や還元速度の制御を考慮すると、平均短軸径が0.010〜0.024μmであって、全Feに対してAl換算で5〜15原子%のアルミニウムと希土類元素換算で5〜15原子%の希土類元素とを含有し、軸比(平均長軸径/平均短軸径)が4〜8、BET比表面積値が100〜250m/gであることが好ましい。
【0081】
また、紡錘状ヘマタイト粒子粉末は、紡錘状ゲータイト粒子粉末を酸化性雰囲気下で150〜350℃の温度範囲で加熱脱水し、更に、同雰囲気下で450℃を超えて700℃未満の温度範囲で加熱処理して得ることが好ましい。
【0082】
本発明における紡錘状へマタイト粒子粉末は、焼結防止効果や還元速度の制御を考慮すると、平均短軸径が0.010〜0.023μmであって、全Feに対してAl換算で5〜15原子%のアルミニウムと希土類元素換算で5〜15原子%の希土類元素とを含有し、軸比(平均長軸径/平均短軸径)が4〜8、BET比表面積値が50〜120m/gであることが好ましい。
【0083】
また、紡錘状ゲータイト粒子粉末の生成反応に由来して含有されているNaSOなどの不純物塩を除去するために加熱処理後の紡錘状ヘマタイト粒子粉末を洗浄してもよい。この場合において、被覆された焼結防止剤が溶出しない条件で洗浄を行うことにより、不純物の除去を行うことが好ましい。
【0084】
本発明において還元装置へ投入するに当っては、前記出発粒子粉末を常法により造粒して平均径1〜5mmの顆粒状物にして用いることが好ましい。
【0085】
本発明における還元装置としては、固定層を形成させた還元装置が好ましく、具体的には、静置式還元装置(バッチ式)もしくはベルト上に固定層を形成して該ベルトを移送させながら還元する移動式還元装置(連続式)が好ましい。
【0086】
本発明における固定層の層高は、30cm以下が好ましい。30cmを超える場合には、多量にCoを含有するため還元促進作用が顕著であるのと同時に、固定層の層下部の急激な還元による水蒸気分圧の増大によって、固定層上部の保磁力が低下する等の問題が起こり、全体として特性が劣化する。工業的な生産性を考慮すると、3〜30cmがより好ましい。なお、バッチ式(特開昭54−62915号公報、特開平4−224609号公報等)、連続式(特開平6−93312号公報等)では生産性が異なるため、バッチ式の固定層還元装置では8cmを超え、30cm以下が好ましい。
【0087】
本発明では、第1工程及び第3工程の加熱還元温度まで昇温する期間の雰囲気は不活性ガス雰囲気である。不活性ガス雰囲気としては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等が好ましく、殊に、窒素ガスが好適である。不活性ガス以外の雰囲気では、温度が経時的に変化する昇温時に還元が起こり、金属磁性粒子生成時の還元温度が一定にできないため、均一な粒子成長が起こりにくく高い保磁力が得られない。
【0088】
なお、第1工程及び第3工程の昇温速度は特に限定されないが、2〜100℃/minが好ましい。
【0089】
また、第1工程及び第3工程の昇温時の不活性ガスのガス空塔速度は特に限定されないが、出発原料の顆粒状物が飛散したり、破壊されたりしない速度にすればよい。
【0090】
また、第1工程及び第3工程の昇温時の不活性ガス雰囲気から加熱還元工程の還元性ガス雰囲気への切り替えは、還元装置の種類によって異なり、工業的には、バッチ式の場合では還元装置内の圧力を制御しながら段階的に行う方法が好ましく、連続式の場合では昇温ゾーンと還元ゾーンとを区分する方法が好ましい。いずれの場合も短時間で切り替えを行う方が好ましく、少なくとも10分以内に行うことが好ましい。
【0091】
本発明の第1工程及び第3工程の加熱還元工程における雰囲気は、還元性ガスであり、還元性ガスとしては水素が好適である。
【0092】
本発明における第1工程の加熱還元温度は300〜600℃であり、好ましくは、350〜550℃である。加熱還元温度は、出発原料の被覆処理に用いた化合物の種類、量に応じて上記温度範囲から適宜選択することが好ましい。加熱還元温度が300℃未満の場合には、還元の進行が非常に遅く工業的でなく、得られた紡錘状合金磁性粒子粉末の飽和磁化値も低いものとなる。600℃を超える場合には、還元反応が急激に進行して粒子の形状破壊や粒子及び粒子相互間の焼結を引き起こしてしまい、保磁力が低下する。
【0093】
本発明における第1工程の還元性ガスのガス空塔速度は、40〜150cm/sが好ましい。ガス空塔速度が40cm/s未満の場合、出発原料の還元で発生した水蒸気が系外に運ばれる速度が非常に遅くなるため、層上部の保磁力、SFDが低下し、全体として高い保磁力が得られない。150cm/sを超える場合、目的とする紡錘状合金磁性粒子粉末は得られるが、還元温度が高温を要したり、造粒物が飛散し破壊されるなどの問題が起こり易く好ましくない。
【0094】
本発明における第2工程は、酸素を含んだ不活性ガス雰囲気で表面酸化処理を行う。不活性ガス雰囲気としては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等が好ましく、殊に窒素ガスが好適である。酸素の含有量は0.1〜5vol%が好ましく、所定量まで徐々に酸素量を増加させることが好ましい。
【0095】
本発明における第2工程の反応温度は、80〜200℃であり、好ましくは、80〜180℃である。80℃未満の場合には、十分な厚さを有する表面酸化層を形成することが困難である。200℃を超える場合には、粒子の形骸変化、特に酸化物が多量に生成されるため短軸が極端に膨張し、場合によっては、形骸破壊が起こりやすいため好ましくない。
【0096】
第2工程を終了した紡錘状合金磁性粒子粉末は、飽和磁化値が85〜135Am/kg(85〜135emu/g)であり、好ましくは90〜130Am/kg(90〜130emu/g)であり、更に好ましくは95〜130Am/kg(95〜130emu/g)である。飽和磁化値が85Am/kg未満の場合には、表面酸化層が厚くなりすぎるため、第3工程の加熱還元処理を行っても保磁力の大きな紡錘状合金磁性粒子粉末を得ることができない。135Am/kgを超える場合には、表面酸化層の形成が不十分であるため、緻密な表面酸化層を形成することができない。
【0097】
なお、第2工程において粒子全体を酸化した場合には、粒子の形骸変化、特に短軸成長が起こり、酸化物が多量に生成されるため短軸が極端に膨張し、場合によっては、形骸破壊が起こるため、再度還元しても既に形状が崩れているので、保磁力は向上しない。
【0098】
本発明における第3工程の加熱還元温度は、第1工程の加熱還元温度よりも50℃以上高い温度で、且つ、400〜700℃の温度範囲である。第1工程の加熱還元温度よりも50℃以上高くない場合及び400℃未満の場合には、還元の進行が非常に遅く工業的でなく、第2工程で形成した表面酸化層の還元及び粒子全体の緻密化が困難となる。700℃を超える場合には、粒子の形状破壊や粒子及び粒子相互間の焼結を引き起こしてしまい、保磁力が低下する。第3工程の加熱還元温度は、好ましくは450〜650℃である。
【0099】
本発明における第3工程の加熱還元工程での還元性ガスのガス空塔速度は、前記第1工程と同様に40〜150cm/sが好ましい。
【0100】
なお、第3工程においては、還元工程の後、アニール処理を行ってもよく、処理温度は500〜700℃が好ましく、雰囲気は水素ガス、不活性ガスが好ましく、殊に、窒素ガスが好ましい。
【0101】
本発明における第4工程は、5〜10g/mの水蒸気と酸素を含んだ不活性ガス雰囲気で表面酸化処理を行う。水蒸気の含有量が5g/m未満の場合には、緻密で薄い表面酸化層を形成することが難しく、保磁力の向上も十分とは言い難いものである。水蒸気の含有量が10g/mを超える場合には、目的とする効果が得られるため、必要以上に含有させる意味がない。水蒸気の含有量は好ましくは2〜8g/mである。また、酸素の含有量は0.1〜5vol%が好ましく、所定量まで徐々に増加させることが好ましい。不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス及びアルゴンガス等が好ましく、殊に、窒素ガスが好適である。
【0102】
本発明における第4工程の反応温度は40〜160℃であり、好ましくは40〜140である。なお、第4工程の反応温度は、第2工程の表面酸化処理温度よりも低いことが好ましい。40℃未満の場合には、表面酸化層の形成が不十分なため好ましくない。160℃を超える場合には、表面酸化層が厚くなり、飽和磁化値が低下するため好ましくない。
【0103】
【発明の実施の形態】
本発明の代表的な実施の形態は次の通りである。
【0104】
本発明における紡錘状ゲータイト粒子粉末、紡錘状へマタイト粒子粉末及び紡錘状合金磁性粒子粉末の平均長軸径、平均短軸径及び軸比は、いずれも電子顕微鏡写真から測定した数値の平均値で示した。
【0105】
本発明における紡錘状ゲータイト粒子粉末、紡錘状へマタイト粒子粉末及び紡錘状合金磁性粒子粉末のCo量、Al量、希土類元素量及びその他の金属元素の含有量は、「誘導結合プラズマ発光分光分析装置SPS4000」(セイコー電子工業(株)製)を使用して、測定した。
【0106】
各粒子粉末のBET比表面積値は、「モノソーブMS−11」(カンタクロム(株)製)を使用して、BET法により測定した値で示した。
【0107】
結晶子サイズD110(紡錘状合金磁性粒子のX線結晶粒径)は、「X線回折装置」(Rigaku製)(測定条件:ターゲットCu、管電圧40kV、管電流40mA)を使用して、X線回折法で測定される結晶粒子の大きさを、紡錘状合金磁性粒子の(110)結晶面のそれぞれに垂直な方向における結晶粒子の厚さを表したものであり、各結晶面についての回折ピーク曲線から、下記のシェラーの式を用いて計算した値で示したものである。
【0108】
110=Kλ/βcosθ
但し、β=装置に起因する機械幅を補正した真の回折ピークの半値幅(ラジアン単位)。
K=シェラー定数(=0.9)、
λ=X線の波長(Cu Kα線 0.1542nm)、
θ=回折角((110)面の回折ピークに対応)。
【0109】
紡錘状合金磁性粒子粉末の磁気特性は、「振動試料磁力計」(東英工業(株)製)を使用して、外部磁場795.8kA/m(10kOe)で測定した。
【0110】
粉体の飽和磁化値の酸化安定性の評価であるΔσs及び磁性塗膜の飽和磁束密度Bmの耐候性の評価であるΔBmは、温度60℃、相対湿度90%の恒温槽に粉体又は磁性塗膜片を一週間静置する促進経時試験の後に、粉体の飽和磁化値及び磁性塗膜の飽和磁束密度をそれぞれ測定し、試験開始前に測定したσs及びBmと促進経時試験一週間後のσs’及びBm’との差(絶対値)を試験開始前のσs及びBmでそれぞれ除した値をΔσs、ΔBmとして算出した。Δσs、ΔBmが0%に近いほど酸化安定性が優れていることを示す。
【0111】
紡錘状合金磁性粒子粉末の回転ヒステリシス積分値Rh(rotatioalhysteresis integral)及び異方性磁界Hkは、トルク型磁力計(デジタルメジャーメントシステムズ社製)を用いて下記のようにして求めた。
【0112】
まず、消磁状態の紡錘状合金磁性粒子粉末をカプセルに詰め、19.9kA/m(250Oe)から795.8kA/m(10kOe)まで19.9kA/m(250Oe刻みで外部磁界を印加した状態で、磁界の回転角度を0→360°→0(5.63°刻み)と往復させて、各磁界での磁気トルクのヒステリシス損失Wrを求め、それぞれの印可磁界の逆数(1/H)でプロットし、下記式から回転ヒステリシス積分値Rhを求めた。また、高印加磁場側において、Wr−1/H曲線に接線を引き、最大勾配を持つ接線と印加磁界の逆数(1/H)軸との交点を異方性磁界Hkとして示す。
【0113】
Rh=∫(Wr/Ms)d(1/H)
Ms:飽和磁化値(emu/cm
【0114】
紡錘状合金磁性粒子粉末の活性化体積Vact(Activation Volume)は、振動試料磁力計(東英工業(株)製)を用いて下記のようにして求めた。
【0115】
まず、紡錘状合金磁性粒子粉末をカプセルに詰め、外部磁場795.8kA/m(10kOe)で磁化した後、300Kにおいて、減磁曲線上で印加磁場を200Oeから3600Oeまで200Oe刻みで保持し、熱揺らぎ磁気余効による磁化の変化を1000秒間測定し、その磁化の減衰量を△Mとした。その直後に印加磁場を200Oeだけ増加させ、同様に1000秒間後の磁化の減衰量を測定する。次に印加磁場を200Oeだけ減少させ、可逆磁化率χrevを求める。全微分磁化率χtotは1000秒後の磁化の時間変化が小さくなった時の磁化値の差を200Oeで除して求めた。
【0116】
200Oeから3600Oeにおける不可逆磁化率χirrは全微分磁化率χtotから可逆磁化率χrevを差し引いて求めた。紡錘状合金磁性粒子粉末の活性化体積は緩やかな磁界依存性を有しているので、その代表値として保磁力Hcにおける値を用いた。
次に、式1、式2により活性化体積Vactを求めた。
【0117】
(式1)Sv=△M/(χirr・In t)
(式2)Vact=kB・T/Ms・Sv
kB:ボルツマン定数
Sv:磁気余効定数
【0118】
紡錘状合金磁性粒子粉末の真密度は、「マルチボリューム密度計1305」(マイクロメリテックス社製)を使用して、定容積膨張法により測定した。
【0119】
<磁気テープの製造>
次いで、下記の方法で、磁性塗料化、塗布を行い、磁気テープを作成した。
【0120】
「塗料組成」
紡錘状合金磁性粒子粉末 100重量部
<結合剤>
塩化ビニル系共重合体樹脂 10重量部
(商品名:MR104 日本ゼオン(株))
ポリウレタン系樹脂 10重量部
(商品名:UR−8200 東洋紡(株))
α−アルミナ 10重量部
(商品名:AKP−50 住友化学(株))
カーボンブラック 3重量部
(商品名:3250 三菱化学(株))
<潤滑剤>
ミリスチン酸 1重量部
ブチルステアレート 2重量部
<硬化剤>
イソシアネート系硬化剤 5重量部
(商品名:E−31 武田薬品(株))
<溶剤>
メチルエチルケトン 114重量部
トルエン 68重量部
シクロヘキサノン 46重量部
【0121】
「塗料化方法」
合金磁性粒子粉末、塩化ビニル系共重合体樹脂、α−アルミナ、カーボンブラックに溶剤を加えて混合、加圧ニーダーで混練した後、溶剤を加えて希釈した。更にウレタン系共重合体樹脂を加えて、サンドミルで分散させ後、潤滑剤、溶剤を加えて、適性な固形分に調整し、フィルターで濾過した。そして、塗布前に塗料を攪拌しながら、硬化剤を添加し、磁性塗料を作成した。
【0122】
「塗布方法」
厚さ7μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に乾燥時磁性層厚が1.2μmになる様に塗布し、ソレノイド磁石による配向処理を行い、乾燥させ、カレンダーによる表面平滑化及び硬化処理を行った。
【0123】
引き続き、カーボンブラック、塩化ビニル系共重合体樹脂、ポリウレタン系樹脂からなるバックコート用の塗料を上記磁性層とは反対の面に塗布、乾燥してバックコート層を形成させた。その後、8mm幅にスリットして磁気テープ化した。
【0124】
得られた磁気テープについて、以下に示す方法で、静磁気特性、表面粗度及び電磁変換特性の測定を行った。
【0125】
磁気テープの磁気特性は、振動試料磁力計(形式:VSM−3S−15、東英工業(株)製)を用いて、外部磁場795.8kA/m(10kOe)で測定した。
【0126】
磁気テープの表面粗度Raは、触針式表面粗さ計(形式:Surfcom−575A、東京精密(株)製)を用いて中心線平均粗さを測定した。
【0127】
磁気テープの電磁変換特性は、固定ヘッド式電特測定機(形式:ドラムテスターBX−3168、BELBEX社製)を用いて行った。磁気テープをドラムに巻き付け、テープとヘッド間の相対速度3.3m/sec.になる様に、ドラムを回転させ、各テープの最適記録電流で10kHzの短形波信号を記録し、スペクトラムアナライザーにより10kHzの出力レベルを測定した。次に9kHz(記録周波数−1kHz)のノイズレベルと10kHz出力レベルの差をC/Nとして求めた。なお、出力レベル、C/Nレベルは基準テープに対する相対値(dB)として示した。基準テープは、比較例1により得られたものを用いた。
【0128】
<紡錘状ゲータイト粒子粉末の製造>
炭酸水素アンモニウム30molとアンモニア水45molを含む混合アルカリ水溶液30lを気泡分散翼を備えた攪拌機付き反応塔の中へ投入し、毎分600回転の速度で攪拌機を回転させながら、毎分60lの流量で窒素ガスを通気しながら50℃に調整する。次いでFe2+として20molを含む硫酸第一鉄水溶液16l(硫酸第一鉄に対し混合アルカリ水溶液は規定換算で1.875当量に該当する。)を気泡塔中に投入して25分間熟成した後、Co2+4.0molを含む硫酸コバルト水溶液4l(全Feに対しCo換算で20原子%に該当する。)を添加し、さらに3時間熟成した後、毎分2lの流量で空気を通気しながら全Fe2+の30%が酸化するまで反応を行った。
【0129】
次いで、Al3+1.6molを含む硫酸アルミニウム水溶液1l(全Feに対しAl換算で8原子%に該当する。)を添加し、さらに反応終了まで酸化反応を行った。反応終了時のpHは7.63であった。
【0130】
得られたゲータイト粒子含有スラリーをプレスフィルターを用いて濾別し、アンモニアを使用してpH=10.5に調整したアンモニア水を用いて洗浄し、その後、イオン交換水にてさらに洗浄してプレスケーキとした。
【0131】
前記ケーキの一部を常法により乾燥、粉砕を行って得られた紡錘状ゲータイト粒子粉末は、平均長軸径が0.11μm、平均短軸径が0.019μm、軸比が5.8、サイズ分布(標準偏差/平均長軸径)が0.16、BET比表面積値が192m/g、粒子全体としてCo含有量が全Feに対して19.8原子%、Al含有量が全Feに対して8原子%であった。
【0132】
<紡錘状へマタイト粒子粉末の製造>
ここに得た紡錘状ゲータイト粒子粉末のプレスケーキを水中に十分分散させた後、硝酸イットリウム水溶液(全Feに対して11原子%)と酢酸コバルト水溶液(全Feに対して23原子%)を添加し十分攪拌した。次いで攪拌しながら、炭酸水素アンモニウム水溶液を添加して水溶液のpHを7.2に調整し、その後、フィルタープレスで濾過、水洗し、プレスケーキを得た。得られたプレスケーキを、押出し成型機を用いて孔径3mmの成型板で押出し成型して造粒し、次いで120℃で乾燥し、Y化合物とCo化合物とが被覆された紡錘状ゲータイト粒子粉末の造粒物を得た。得られた紡錘状ゲータイト粒子粉末中のCoの含有量は全Feに対して37原子%、Alの含有量は全Feに対して8原子%、Yの含有量は全Feに対して11原子%であった
【0133】
前記Y、Co化合物が被覆された紡錘状ゲータイト粒子粉末の造粒物を空気中300℃で脱水し、その後、同雰囲気中600℃で加熱脱水して紡錘状ヘマタイト粒子粉末の造粒物を得た。
【0134】
<紡錘状合金磁性粒子粉末の製造>
次いで、ここに得た紡錘状ヘマタイト粒子粉末の顆粒状成型物100g(平均径:2.6mm)を内径72mmのバッチ式固定層還元装置に入れ、層高を5.5cmとした後、窒素ガスをガス空塔速度50cm/sで通気しながら400℃まで加熱昇温し、次いで、水素ガスに切り替えてガス空塔速度50cm/sで通気しながら、400℃で排気ガス露点が−30℃に達するまで加熱還元して紡錘状合金磁性粒子粉末を得た(第1工程)。
【0135】
その後、再び窒素ガスに切り替えて80℃まで冷却し、品温を80℃で保持し、次いで空気を混合して酸素濃度を0.35vol%まで徐々に増加させて品温が[保持温度+1]℃になるまで(最大品温140℃、処理時間2時間)表面酸化処理を行い、粒子表面に表面酸化層を形成した(第2工程)。
【0136】
第2工程終了後の紡錘状合金磁性粒子粉末の飽和磁化値は108.1Am/kg(108.1emu/g)であった。次に、不活性ガス雰囲気下で500℃まで昇温し、ガス空塔速度60cm/sの水素ガスに切り換えて排気ガス露点が−30℃に達するまで再度加熱還元した(第3工程)。
【0137】
その後、再び窒素ガスに切り替えて50℃まで冷却し、品温を50℃で保持し、次いで水蒸気6g/mと空気を混合して酸素濃度を0.35vol%まで徐々に増加させて、品温が[保持温度+1]℃となるまで(最大品温110℃、処理時間1.25時間)表面酸化処理を行い、粒子表面に安定な表面酸化層を形成して紡錘状合金磁性粒子の成型物を得た(第4工程)。
【0138】
得られた紡錘状合金磁性粒子粉末は、平均長軸径が0.073μm、平均短軸径0.017μm、平均粒子体積0.166×10E−4μm、BET比表面積値が61.3m/g、結晶子サイズD110が134Åであって、紡錘状かつ粒度が均整で樹枝状粒子がないものであった。また、該粒子中のCo含有量は全Feに対して37原子%、Al含有量は全Feに対して8原子%、Y含有量は11原子%であった。
【0139】
また、該紡錘状合金磁性粒子粉末の磁気特性は、保磁力Hcが187.1kA/m(2351Oe)、飽和磁化値σsが130.0Am/kg(130.0emu/g)、角型比(σr/σs)が0.543、飽和磁化値の酸化安定性Δσsが絶対値として7.5%(実測値−7.5%)、真密度5.8g/cmであった。また、回転ヒステリシス積分値Rhは0.79、異方性磁界Hkは536kA/m(6730Oe)であった。
【0140】
また、該紡錘状合金磁性粒子粉末の活性化体積Vactは、0.043×E−4μm(0.043×10−4μm)であった。
【0141】
先に得た紡錘状合金磁性粒子粉末を用いて、作成した磁気テープの磁気特性は、保磁力Hcが195.4kA/m(2456Oe)、角形比(Br/Bm)が0.876、配向度ORが2.81、SFDが0.351、表面粗度Raは3.3nm、酸化安定性ΔBmが絶対値として3.8%(実測値−3.8%)であった。
【0142】
また、得られた磁気テープの電磁変換特性は、10kHzの出力レベルが+2.8dB、C/Nレベルが+5.7dBであった。また、10kHzの再生信号波形もシャープであり、再生信号の半価幅も、比較例1に比べ小さなものであった。
【0143】
【作用】
本発明において最も重要な点は、Fe及びCoを含有する紡錘状合金磁性粒子粉末の結晶子サイズ及び活性化体積を特定することによって、ノイズが低減された磁気記録媒体が得られるという点である。
【0144】
本発明においては、前記製造法において、第1及び第2工程の還元・表面酸化によって活性化体積及び結晶子サイズを小さく制御し、更に、第3及び第4工程の還元・表面酸化によって、活性化体積及び結晶子サイズの成長を最小限に留めながら、緻密な表面酸化層が形成されたことにより、結晶子サイズ及び活性化体積を小さく維持し、しかも、高い保磁力と小さな回転ヒステリシス積分値が全て達成できたものと本発明者は推定している。
【0145】
また、本発明においては、活性化体積及び結晶子サイズを小さく制御することができるので、低ノイズ化することができる。また、回転ヒステリシス積分値が小さいので、磁化反転幅が小さく、磁化反転モードを一斉回転に近づけることができる。更に、微粒子であって、且つ、高い保磁力、大きな異方性磁界を有するので、高出力化することができる。
【0146】
本発明に係る紡錘状合金磁性粒子粉末は、前記諸特性を満たすので、本発明に係る紡錘状合金磁性粒子粉末を用いた磁気記録媒体は、短波長領域での出力特性に優れ、ノイズが大幅に低減され、しかも磁化反転幅を小さくすることができる。また、前記製造法によって得られる紡錘状合金磁性粒子粉末は、粒子間の焼結がなく、緻密な表面酸化層を形成することができるので、分散性及び酸化安定性に優れており、該合金磁性粒子粉末を用いた磁気記録媒体は、表面平滑性及び長期保存安定性に優れるものである。
【0147】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げる。
【0148】
表1に示すゲータイト粒子粉末を準備し、当該ゲータイト粒子粉末を用いて表2に示すヘマタイト粒子粉末を得た。
【0149】
ゲータイト粒子1及びヘマタイト粒子1;
攪拌機の回転数、熟成時間、空気の通気量、Y化合物の添加量を変更した以外は前記発明の実施の形態と同様にして紡錘状ゲータイト粒子粉末及び紡錘状ヘマタイト粒子粉末を得た。
【0150】
ゲータイト粒子2及びヘマタイト粒子2;
<紡錘状ゲータイト粒子粉末の製造>
炭酸ナトリウム25molと、水酸化ナトリウム水溶液を20mol(混合アルカリに対し水酸化ナトリウムは規定換算で28.6mol%に該当する。)を含む混合アルカリ水溶液30lを気泡塔の中に投入し、毎分50lの流量で窒素ガスを通気しながら47℃に調整する。次いでFe2+として20molを含む硫酸第一鉄水溶液20l(硫酸第一鉄に対し混合アルカリ水溶液は規定換算で1.75当量に該当する。)を気泡塔中に投入して30分間熟成した後、Co2+4.0molを含む硫酸コバルト水溶液4l(全Feに対しCo換算で20原子%に該当する。)を添加し、さらに4時間30分間熟成した後、毎分90lの流量で空気を通気ながら、全Fe2+の40%が酸化するまで反応を行った。
【0151】
次いで、Al3+2.4molを含む硫酸アルミニウム水溶液1l(全Feに対しAl換算で12原子%に該当する。)を添加して酸化反応を行った後、イオン交換水で水洗してプレスケーキとした。
【0152】
前記ケーキの一部を常法により乾燥、粉砕を行って得られた紡錘状ゲータイト粒子粉末は、平均長軸径が0.109μm、平均短軸径が0.0160μm、軸比が7.0、サイズ分布(標準偏差/平均長軸径)が0.19、BET比表面積値が181m/g、粒子全体としてCo含有量が全Feに対して20.0原子%、Al含有量が全Feに対して12原子%であった(ゲータイト粒子粉末2)。
【0153】
<紡錘状へマタイト粒子粉末の製造>
次いで、得られた紡錘状ゲータイト粒子粉末のプレスケーキを水中に十分分散させた後、硝酸イットリウム水溶液(全Feに対して8原子%)と硫酸コバルト水溶液(全Feに対して8原子%)を添加し十分攪拌した。次いで攪拌しながら、炭酸ナトリウム水溶液を添加して水溶液のpHを9.5に調整し、その後、フィルタープレスで濾過、水洗し、プレスケーキを得た。得られたプレスケーキを、押出し成型機を用いて孔径3mmの成型板で押出し成型し、次いで120℃で乾燥し、Y化合物とCo化合物とが被覆された紡錘状ゲータイト粒子粉末の成型物を得た。得られた紡錘状ゲータイト粒子粉末中のCoの含有量は全Feに対して28原子%、Alの含有量は全Feに対して12原子%、Yの含有量は全Feに対して8原子%であった。
【0154】
前記Y、Co化合物が被覆された紡錘状ゲータイト粒子粉末の成型物を空気中300℃で脱水し、その後、同雰囲気中600℃で加熱脱水して紡錘状ヘマタイト粒子粉末の成型物を得た。
【0155】
得られた紡錘状ヘマタイト粒子粉末は、該粒子中のCoの含有量は全Feに対して28原子%、Alの含有量は全Feに対して12原子%、Yの含有量は全Feに対して8原子%であった(ヘマタイト粒子粉末2)。
【0156】
得られたゲータイト粒子粉末及びヘマタイト粒子粉末の諸特性を表1及び表2に示す。
【0157】
ゲータイト粒子3及びヘマタイト粒子3;
Co化合物の添加時期及び添加量、空気の通気量、Al化合物の添加量を変更した以外はゲータイト粒子2及びヘマタイト粒子2と同様にして紡錘状ヘマタイト粒子粉末を得た。
【0158】
得られたゲータイト粒子粉末及びヘマタイト粒子粉末の諸特性を表1及び表2に示す。
【0159】
ゲータイト粒子4、5及びヘマタイト粒子4、5;
Co化合物の添加時期及び添加量、攪拌機の回転数、熟成時間、空気の通気量、Y化合物の添加量を変更した以外は前記発明の実施の形態と同様にしてゲータイト粒子粉末及びヘマタイト粒子粉末を得た。
【0160】
得られたゲータイト粒子粉末及びヘマタイト粒子粉末の諸特性を表1及び表2に示す。
【0161】
【表1】
Figure 0004038655
【0162】
【表2】
Figure 0004038655
【0163】
実施例1〜3、比較例1〜2;
出発原料の種類及びそれぞれの製造条件を種々変化させた以外は前記発明に実施の形態と同様にして紡錘状合金磁性粒子粉末を得た。
【0164】
このときの製造条件を表3に、得られた紡錘状合金磁性粒子粉末の諸特性を表4及び表5に示す。
【0165】
【表3】
Figure 0004038655
【0166】
【表4】
Figure 0004038655
【0167】
【表5】
Figure 0004038655
【0168】
磁気テープの製造
表4及び表5に示した各々の紡錘状合金磁性粒子粉末を用いて、前記発明の実施の形態と同様にして磁性テープを得た。得られた磁性テープの諸特性、電磁変換特性を表6に示す。
【0169】
実施例3の磁気テープ:非磁性下地層を有する磁気テープ;
磁性塗料は前記発明の実施の形態と同様の方法で作製した。非磁性下地層用非磁性塗料は下記の組成・方法で塗料化し、前記磁性塗料、前記非磁性塗料を下記の塗布を行い、磁気テープを作製した。
塗料組成:
非磁性針状ヘマタイト粉末 100重量部
(平均長軸径:0.16μm、平均短軸径:0.026μm、軸比:6.2、BET:49.1m/g、Al含有量3.5wt%)
<結合剤>
塩化ビニル系共重合体樹脂 7.5重量部
(商品名 MR104 日本ゼオン(株))
ポリウレタン系樹脂 7.5重量部
(商品名 UR−8200 東洋紡(株))
<潤滑剤>
ミリスチン酸 2.5重量部
ブチルステアレート 2.5重量部
<硬化剤>
イソシアネート系硬化剤 5重量部
(商品名 E−31 武田薬品(株))
<溶剤>
メチルエチルケトン 93重量部
トルエン 55重量部
シクロヘキサノン 36重量部
【0170】
ヘマタイト粒子粉末、塩化ビニル系共重合体樹脂に溶剤を加えて混合、加圧ニーダーで混練した後、溶剤を加えて希釈した。更にウレタン系共重合体樹脂を加えて、サンドミルで分散させ後、潤滑剤、溶剤を加えて、適性な固形分に調整し、フィルターで濾過した。そして、塗布前に塗料を攪拌しながら、硬化剤を添加し、非磁性塗料を作成した。
【0171】
塗布方法;
厚さ7μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に前記磁性塗料と前記非磁性塗料を乾燥時磁性層厚及び非磁性層厚がそれぞれ0.15μm、1.1μmになる様に同時塗布し、ソレノイド磁石による配向処理を行い、乾燥させ、カレンダーによる表面平滑化及び硬化処理を行った。引き続き、カーボンブラック、塩化ビニル系共重合体樹脂、ポリウレタン系樹脂からなるバックコート用の塗料を上記磁性層、非磁性層とは反対の面に塗布、乾燥してバックコート層を形成させた。その後、8mm幅にスリットして磁気テープ化した。
【0172】
【表6】
Figure 0004038655
【0173】
【発明の効果】
本発明に係る紡錘状合金磁性粒子粉末は、長軸径、活性化体積、結晶子サイズが小さく、高い保磁力と優れた酸化安定性を満たし、回転ヒステリシス積分値が小さいことから、高出力、低ノイズ化に適した高密度磁気記録媒体を得ることができる
【0174】
また、本発明に係る磁気記録媒体は、前記本発明に係る紡錘状合金磁性粒子粉末を用いるので、高密度記録、高出力及び低ノイズのデジタル磁気記録媒体として好適である。

Claims (3)

  1. 全Feに対してCo換算で20〜50原子%のコバルトを含有している平均長軸径(L)が0.03〜0.10μmのFe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末であり、該Fe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末の保磁力値が159.2〜238.7kA/m(2000〜3000Oe)であって、結晶子サイズが100〜160Åであって、活性化体積(Vact)が0.01〜0.07E−4μmであって、回転ヒステリシス積分(Rh)値が1.0以下であることを特徴とする紡錘状合金磁性粒子粉末。
  2. 全Feに対してCo換算で20〜50原子%のコバルトを含有している平均長軸径(L)が0.03〜0.10μmのFe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末であり、該Fe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末の保磁力値が159.2〜238.7kA/m(2000〜3000Oe)であって、飽和磁化値が100〜150Am/kgであって、結晶子サイズが100〜160Åであって、活性化体積(Vact)が0.01〜0.07E−4μmであって、回転ヒステリシス積分(Rh)値が1.0以下であることを特徴とする紡錘状合金磁性粒子粉末。
  3. 非磁性支持体上に請求項1乃至請求項2の各請求項記載の紡錘状合金磁性粒子粉末と結合剤とを主体とする磁性層を形成していることを特徴とする磁気記録媒体。
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