JP5344139B2 - 磁気記録媒体の非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末、並びに磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録媒体の非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末、並びに磁気記録媒体 Download PDF

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Description

本発明は、非磁性下地層用塗料における分散性に優れると共に、非磁性下地層中における充填性が改善された磁気記録媒体の非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末、及び、該非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末を用いて得られる表面平滑性に優れた磁気記録媒体を提供する。
磁気記録技術は、オーディオ用、ビデオ用、コンピューター用等をはじめとしてさまざまな分野で幅広く用いられている。近年、機器の小型軽量化、記録の長時間化及び記録容量の増大等が求められており、記録媒体に対しては、記録密度のより一層の向上が望まれている。
従来の磁気記録媒体に対してより高密度記録を行うためには、高いC/N比が必要であり、ノイズ(N)が低く、再生出力(C)が高いことが求められている。近年では、これまで用いられていた誘導型磁気ヘッドに代わり、磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)や巨大磁気抵抗型ヘッド(GMRヘッド)等の高感度ヘッドが開発されており、これらは誘導型磁気ヘッドに比べて再生出力が得られやすいことから、高いC/N比を得るためには、出力を上げるよりもノイズを低減する方が重要となってきている。
磁気記録媒体のノイズは、粒子性ノイズと磁気記録媒体の表面性に起因して発生する表面性ノイズに大別される。粒子性ノイズの場合、粒子サイズの影響が大きく、微粒子であるほどノイズ低減に有利であることから、磁気記録媒体に用いる磁性粒子粉末の粒子サイズはできるだけ小さいことが必要となる。
しかしながら、磁性粒子粉末の微粒子化は、磁気記録層の薄層化を伴うものであり、磁気記録層が薄層化することによって、磁気記録層の表面平滑化が困難になること及び塗膜強度の低下が問題となるため、上記磁気記録層の薄層化に対しては、ベースフィルム等の非磁性支持体上にヘマタイト粒子粉末等の非磁性粒子粉末を結合剤樹脂中に分散させてなる下地層(以下、「非磁性下地層」という。)を少なくとも一層設けることにより、磁気記録媒体の表面平滑性及び強度向上を図っている。
一方、表面性ノイズの場合、磁気記録媒体の表面平滑性を改良することが重要であるが、磁気記録層が薄層化することによって、非磁性下地層の表面平滑性がそのまま上層の磁気記録層の表面平滑性に影響を及ぼすこととなる。
従って、非磁性下地層には、平滑な表面と高い塗膜強度が要求されており、このような非磁性下地層を形成するために、非磁性下地層中に配合される非磁性粒子粉末に対しては、非磁性下地層用塗料における優れた分散性と共に、非磁性下地層中における充填性の向上が求められている。
粒子粉末を高充填するためには、粒子粉末の微粒子化と、微粒子化された粒子粉末をいかに高充填するかがポイントであり、一般に、粉体のタップ密度(ρt)が高いと粒子粉末中に含まれる空気が少なくなってかさが小さくなるため、強力なせん断力を混練物にかけることができることが知られている。
一般に、ヘマタイト粒子粉末は、出発原料(前駆体)となるゲータイト粒子粉末を加熱脱水することによって得られることから、微細なヘマタイト粒子粉末を得るためには、ゲータイト粒子の段階で微粒子化しておく必要がある。しかしながら、粒子粉末を微粒子化すると、粒子粉末の表面積が増大するため、これを加熱焼成すると粒子間焼結しやすくなると共に、粒子形状が崩れやすくなるために、ヘマタイト粒子粉末の分散性が低下するといった問題を有している。
均整な粒度を有する非磁性粒子粉末を得ることを目的として、アルミニウム含有針状ゲータイト粒子粉末を100〜200℃の温度範囲で加熱処理して該アルミニウム含有針状ゲータイト粒子粉末に含まれているアルミニウム含有ゲータイト超微粒子をアルミニウム含有針状ゲータイト粒子に吸収させる方法(特許文献1)が開示されている。
特開2000−182236号公報
非磁性下地層用塗料における分散性に優れると共に、非磁性下地層中における充填性が改善された非磁性下地層用非磁性粒子粉末は、現在最も要求されているところであるが、未だ得られていない。
即ち、前出特許文献1では、アルミニウム含有針状ゲータイト粒子粉末を100〜200℃の温度範囲で加熱処理して該アルミニウム含有針状ゲータイト粒子粉末に含まれているアルミニウム含有ゲータイト超微粒子をアルミニウム含有針状ゲータイト粒子に吸収させる方法が記載されているが、得られたゲータイト粒子粉末を真空凍結乾燥することについては記載されておらず、後出比較例に示す通り、真空凍結乾燥を行わない場合には、下記関係式を満たすマタイト粒子粉末を得ることが困難であり、非磁性塗料中における分散性が不十分であるため、十分な表面平滑性を有する磁気記録媒体を得ることが困難となる。
<式>
713.1L−0.521 ≦BET比表面積値(SSA)≦ 725.5L−0.451
そこで、本発明は、表面平滑性が良好な磁気記録媒体を得ることのできる、非磁性下地層用塗料における分散性及び非磁性下地層中における充填性に優れた非磁性下地層用非磁性粒子粉末を提供することを技術的課題とする。
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
即ち、本発明は、タップ密度(ρt)が0.60g/cm以上であると共に、平均一次長軸径(L)(nm)とBET比表面積値(SSA)が下記関係式を満たすことを特徴とする磁気記録媒体の非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末である(本発明1)。
<式>
713.1L−0.521 ≦BET比表面積値(SSA)≦ 725.5L−0.451
また、本発明は、圧縮性指数が28%以上であることを特徴とする本発明1の磁気記録媒体の非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末である(本発明2)。
また、本発明は、非磁性支持体、該非磁性支持体上に形成される非磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む非磁性下地層及び該非磁性下地層の上に形成される磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む磁気記録層からなる磁気記録媒体において、前記非磁性粒子粉末が本発明1又は本発明2に記載された磁気記録媒体の非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末であることを特徴とする磁気記録媒体である(本発明3)。
本発明に係る磁気記録媒体の非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末は、非磁性下地層用塗料における分散性及び非磁性下地層中における充填性に優れているため、高密度磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末として好適である。
また、本発明に係る磁気記録媒体は、上述のヘマタイト粒子粉末を磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末として用いることにより、高い表面平滑性を有する磁気記録媒体を得ることができるため、高密度磁気記録媒体として好適である。
本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
先ず、本発明に係る磁気記録媒体用の非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末(以下、「ヘマタイト粒子粉末」という。)について述べる。
本発明に係るヘマタイト粒子粉末の粒子形状は針状であって、軸比(平均一次長軸径と平均一次短軸径の比)(以下、「軸比」という。)は2.0〜20.0が好ましく、より好ましくは2.5〜18.0、更により好ましくは3.0〜15.0である。ここで針状とは、文字通りの針状粒子はもちろん、紡錘状、米粒状も含まれる。
本発明に係るヘマタイト粒子粉末の平均一次長軸径(L)は5〜300nmが好ましく、より好ましくは10〜250nm、更により好ましくは10〜200nmである。ヘマタイト粒子粉末の平均一次長軸径(L)が300nmを超える場合には、粒子サイズが大きすぎるため、これを用いて非磁性下地層を形成した場合、ヘマタイト粒子粉末を塗膜中に高充填することが難しく、結果、優れた表面平滑性を有する磁気記録媒体を得ることが困難となる。平均一次長軸径(L)が5nm未満の場合には、粒子の微細化による分子間力の増大により凝集を起こしやすいため、非磁性塗料中での分散が困難となる。
本発明に係るヘマタイト粒子粉末のBET比表面積値(SSA)は10〜200m/gが好ましく、より好ましくは15〜180m/g、更により好ましくは20〜160m/gである。BET比表面積値が10m/g未満の場合には、粒子サイズが大きすぎるため、これを用いて非磁性下地層を形成した場合、ヘマタイト粒子粉末を塗膜中に高充填することが難しく、結果、優れた表面平滑性を有する磁気記録媒体を得ることが困難となる。BET比表面積値が200m/gを超える場合には、粒子の微細化による分子間力の増大により凝集を起こしやすいため、非磁性塗料中での分散が困難となる。
本発明に係るヘマタイト粒子粉末は、ヘマタイト粒子粉末の平均長軸径(L)(nm)とBET比表面積値(SSA)が下記関係式を満たす。
<式>
713.1L−0.521 ≦BET比表面積値(SSA)≦ 725.5L−0.451
ヘマタイト粒子粉末の平均長軸径(L)(nm)とBET比表面積値(SSA)との関係が前記関係式の範囲外の場合、優れた分散性を有しているとは言い難い。殊に、BET比表面積値(SSA)が前記関係式の上限値を超える場合には、粒子サイズに対してBET比表面積値が大きすぎるため非磁性塗料中で増粘し、分散が困難となる。
本発明に係るヘマタイト粒子粉末のタップ密度(ρt)は0.60g/cm以上であり、好ましくは0.65〜1.50g/cm、より好ましくは0.70〜1.20g/cmである。タップ密度(ρt)が0.60g/cm未満の場合には、粒子粉末中に含まれる空気が多いため、非磁性塗料作製時のヘマタイト粒子粉末を混練・分散する際に、強力なせん断力を混練物にかけることが難しく、塗膜中にヘマタイト粒子粉末高充填することができないため、結果、優れた表面平滑性を有する磁気記録媒体を得ることが困難となる。
本発明に係るヘマタイト粒子粉末の圧縮性指数は28%以上であることが好ましく、より好ましくは30%以上、更により好ましくは32%以上である。圧縮性指数が28%以上の場合には、塗膜中に充填されたヘマタイト粒子粉末がカレンダーをかけることにより圧縮されやすく、結果、表面平滑性に優れた磁気記録媒体を得ることができる。
本発明に係るヘマタイト粒子粉末の体積基準平均粒子径(D50)は、0.01〜2.80μmであることが好ましく、より好ましくは0.01〜2.70μm、更により好ましくは0.01〜2.60μmである。体積基準平均粒子径(D50)が2.80μmを超える場合には、非磁性下地層を薄層化した場合に、得られた磁気記録媒体の表面性が低下するため好ましくない。
次に、本発明に係る磁気記録媒体について述べる。
本発明に係る磁気記録媒体は、非磁性支持体、該非磁性支持体上に形成された非磁性下地層及び該非磁性下地層上に形成された磁気記録層とからなる。また、必要に応じて、非磁性支持体の一方の面に形成される磁気記録層に対し、非磁性支持体の他方の面にバックコート層を形成させてもよい。殊に、コンピューター記録用のバックアップテープの場合には、巻き乱れの防止や走行耐久性向上の点から、バックコート層を設けることが好ましい。
本発明における非磁性支持体としては、現在、磁気記録媒体に汎用されているポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドイミド、ポリスルフォン、セルローストリアセテート、ポリベンゾオキサゾール等の合成樹脂フィルム、アルミニウム、ステンレス等金属の箔や板及び各種の紙を使用することができる。得られる磁気記録媒体の強度を考慮すれば、ポリエステル類、ポリアミド又は芳香族ポリアミドが好ましい。
次に、本発明における非磁性下地層について述べる。
本発明における非磁性下地層は、本発明に係る非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末、及び結合剤樹脂とからなる。また、必要に応じて、磁気記録媒体の製造に通常用いられている潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
結合剤樹脂としては、磁気記録媒体の製造にあたって汎用されている熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化型樹脂等を単独又は組み合わせて用いることができる。
帯電防止剤としては、カーボンブラック、グラファイト、酸化スズ、酸化チタン−酸化スズ−酸化アンチモン等の導電性粉末及び界面活性剤等を用いることができる。帯電防止の他に、摩擦係数低減、磁気記録媒体の強度向上といった効果が期待できることから、帯電防止剤としては、カーボンブラックを用いることが好ましい。
本発明における非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末を用いて得られた非磁性下地層は、塗膜の光沢度が175〜280%、好ましくは180〜280%、より好ましくは185〜280%であって、塗膜の表面粗度Raが2.0〜11.0nm、好ましくは2.0〜10.5nm、より好ましくは2.0〜10.0nmである。
次に、本発明における磁気記録層について述べる。
本発明における磁気記録層は、磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含んでいる。また、必要に応じて、磁気記録媒体の製造に通常用いられている潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
磁性粒子粉末としては、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末、鉄以外のCo、Al、Ni、P、Zn、Si、B、希土類金属等を含有する鉄合金磁性粒子粉末、Ba、Sr、又はBa−Srを含有するマグネトプランバイト型フェライト粒子粉末並びにこれらにCo、Ni、Zn、Mn、Mg、Ti、Sn、Zr、Nb、Cu、Mo等の2価及び4価の金属から選ばれた保磁力低減剤の一種又は二種以上を含有させたマグネトプランバイト型フェライト粒子粉末や窒化鉄等のいずれをも用いることができる。
磁性粒子粉末は、平均一次長軸径もしくは平均一次粒子径が0.005〜0.50μmであることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.30μmである。
磁性粒子粉末の磁気特性は、保磁力値が63.7〜318.3kA/m、好ましくは71.6〜318.3kA/m、飽和磁化値が40〜200Am/kg、好ましくは45〜180Am/kgである。
結合剤樹脂としては、前記非磁性下地層を作製するために用いた結合剤樹脂を使用することができる。
本発明におけるバックコート層中には、結合剤樹脂と共に、バックコート層の表面電気抵抗値及び光透過率低減、並びに強度向上を目的として、帯電防止剤及び無機粒子粉末を含有させることが好ましい。また、必要に応じて、通常の磁気記録媒体の製造に用いられる潤滑剤、研磨剤等が含まれていてもよい。
結合剤樹脂及び帯電防止剤としては、前記非磁性下地層、及び磁気記録層を作製するために用いた結合剤樹脂及び帯電防止剤を使用することができる。
無機粉末としては、アルミナ、ヘマタイト、ゲータイト、酸化チタン、シリカ、酸化クロム、酸化セリウム、酸化亜鉛、チッ化珪素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭酸カルシウム及び硫酸バリウム等から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
本発明に係る磁気記録媒体は、保磁力値は63.7〜318.3kA/mが好ましく、より好ましくは71.6〜318.3kA/m、塗膜の光沢度は185〜300%が好ましく、より好ましくは190〜300%、更により好ましくは195〜300%、塗膜の表面粗度Raは8.0nm以下が好ましく、より好ましくは2.0〜7.5nm、更により好ましくは2.0〜7.0nmである。
次に、本発明に係る磁気記録媒体の非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末の製造法について述べる。
本発明に係るヘマタイト粒子粉末は、出発原料であるゲータイト粒子粉末を真空凍結乾燥した後に、200〜850℃の温度範囲で加熱脱水処理して得ることができる。
本発明において前駆体となるゲータイト粒子粉末は、例えば、第一鉄塩と、水酸化アルカリ又は炭酸アルカリ又は水酸化アルカリと炭酸アルカリの混合アルカリのいずれかとを用いて反応して得られる鉄の水酸化物や炭酸鉄等の第一鉄含有沈澱物を含む懸濁液に空気等の酸素含有ガスを通気してゲータイト粒子を生成させるといった、従来公知の製造方法によって得られたものを用いることができる。
なお、ゲータイト粒子の生成反応中に、粒子の長軸径、短軸径、軸比等の諸特性向上のためにAl、Zr、Ti、P、Si、Sn、Sb、Y、Nb又はMn等の異種元素が添加されてもよい。殊に、得られる磁気記録媒体の塗膜強度向上を考慮した場合、粒子内部にアルミニウムを含有させることが好ましい。粒子内部に含有させる異種元素は、各元素換算の合計で0.05〜50重量%が好ましく、より好ましくは0.10〜40重量%、更により好ましくは0.15〜30重量%である。
本発明におけるゲータイト粒子粉末の粒子形状は針状であり、軸比は2.0〜20.0が好ましく、より好ましくは2.5〜18.0、更により好ましくは3.0〜15.0である。
本発明におけるゲータイト粒子粉末の平均一次長軸径は0.005〜0.40μmであり、BET比表面積値は20〜250m/gであり、体積基準平均粒子径(D50)は通常下限値が2.70μmを超える値を有している。その上限値は、好ましくは5.00μmであり、より好ましくは4.50μmである。
本発明においては、真空凍結乾燥を行う前に、あらかじめゲータイト粒子粉末の粒子表面を焼結防止剤で被覆しておくことが好ましい。焼結防止剤による被覆処理は、出発原料であるゲータイト粒子粉末を含む水懸濁液中に焼結防止剤を添加し、均一になるように混合攪拌した後、ゲータイト粒子表面に焼結防止剤が被覆できるような適切なpH調整を行って表面を被覆する。
前記焼結防止剤としては、通常使用されるヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリリン酸、オルトリン酸等のリン化合物、3号水ガラス、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、コロイダルシリカ等のケイ素化合物、ホウ酸等のホウ素化合物、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等のアルミニウム塩や、アルミン酸ソーダ等のアルミン酸アルカリ塩、アルミナゾル、水酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物、オキシ硫酸チタン等のチタン化合物、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、サマリウムから選ばれる希土類元素を含む硫酸塩、塩化物、硝酸塩等の一種又は二種以上を使用することができる。
ゲータイト粒子粉末の粒子表面に存在する焼結防止剤の量は、焼結防止剤の種類や量、アルカリ水溶液中におけるpH値や加熱処理温度等の諸条件により異なるが、ゲータイト粒子粉末の全重量に対して0.05〜20重量%である。
真空凍結乾燥は、上記で得られたゲータイト粒子粉末又は焼結防止処理されたゲータイト粒子粉末を含む含液物の固形分濃度を調整したものをそのまま用いて行うこともできるが、通常、濾別・水洗を行った後、固形分濃度を調整したものを用いることが好ましい。
本発明においては、真空凍結乾燥する前のゲータイト粒子粉末は、水などの分散媒体に分散させ、固形分濃度を調整した後、真空凍結乾燥を行う。本発明においては、真空凍結乾燥する前のゲータイト粒子粉末を含む含液物の濃度(固形分換算)は5〜50重量%に調整することが好ましい。含液物の固形分が50重量%を超える場合には、ゲータイト粒子粉末を含む含液物を構成する液体が固体に変態した際に、粒子の存在割合が多すぎるために粒子間の距離が十分に広がらないため、ヘマタイト粒子を作製するための熱処理を行う際に、粒子同士の焼結が生じやすくなるため好ましくない。また、含液物の固形分が5重量%未満の場合には、真空凍結乾燥後に粒子同士の凝結は生じないが、真空凍結乾燥に時間がかかると共に、収量も少なく工業的に不利となるため好ましくない。
本発明における真空凍結乾燥としては、固形分濃度を調整したゲータイト粒子粉末を含む含液物を予備凍結させ、予備凍結後に一定の真空度以下に減圧し、次いで減圧した状態で温度を徐々に上げて乾燥する方法や、固形分濃度を調整したゲータイト粒子粉末を含む含液物を一定の真空度以下になるまで減圧して、ゲータイト粒子粉末に含まれる水分を気化させることで、ゲータイト粒子粉末を含む含液物の温度を下げて自己凍結させ、その凍結した状態から温度を徐々に上げて乾燥する方法等、いずれの方法によっても行うことができる。
ゲータイト粒子粉末を含む含液物の予備凍結温度は0℃以下が好ましく、より好ましくは−20℃以下、更により好ましくは−30℃以下が好ましい。予備凍結温度が0℃を超えると、ゲータイト粒子粉末を含む含液物を構成する液体が完全に固体に変態できず、粒子間の距離が広がらないため、ヘマタイト粒子を作製するための熱処理を行う際に、粒子同士の焼結が生じやすいため好ましくない。
ゲータイト粒子粉末を含む含液物の予備凍結後、又は自己凍結を行う際の真空度は、100Pa以下が好ましく、80Pa以下がより好ましい。
ゲータイト粒子粉末を含む含液物の予備凍結後、又は自己凍結後の乾燥温度は、0℃〜80℃が好ましく、10℃〜60℃がより好ましい。また、乾燥は、水分量が3.0%以下になるまで行うことが好ましく、より好ましくは2.5%以下である。
本発明における真空凍結乾燥後のゲータイト粒子粉末は、真空凍結乾燥前のゲータイト粒子粉末とほぼ同程度の粒子サイズ及びBET比表面積値を有している。
本発明における真空凍結乾燥後のゲータイト粒子粉末の体積基準平均粒子径(D50)は、0.01〜2.70μmであり、好ましくは0.01〜2.65μm、より好ましくは0.01〜2.60μmである。体積基準平均粒子径(D50)が2.70μmを超える場合には、高温加熱処理を行うことで粒子同士の焼結が起こりやすいため好ましくない。
本発明に係るヘマタイト粒子粉末は、真空凍結乾燥を行ったゲータイト粒子粉末を200〜400℃の温度範囲で低温加熱脱水処理して低密度ヘマタイト粒子粉末を得、次いで、該低密度ヘマタイト粒子粉末を400〜800℃の温度範囲で高温加熱処理を行うことにより得られる高密度化されたヘマタイト粒子粉末であることが好ましい。
低温加熱脱水温度が200℃未満の場合には、脱水反応に長時間を要するために好ましくない。低温加熱脱水温度が400℃を超える場合には、脱水反応が急激に生起し、粒子の形状が崩れやすくなったり、粒子相互間の焼結を引き起こしたりする可能性がある。低温加熱脱水処理して得られる低密度ヘマタイト粒子粉末は、ゲータイト粒子粉末からHOが脱水され、脱水孔を多数有する低密度粒子からなる。
また、低密度ヘマタイト粒子粉末を400〜800℃で高温加熱処理して高密度化されたヘマタイト粒子粉末とする場合、高温加熱処理温度が400℃未満の場合には、高密度化が不十分であるためヘマタイト粒子の粒子内部及び粒子表面に脱水孔が多数存在しており、非磁性塗料中における分散が難しく、非磁性下地層を形成した時、表面平滑な塗膜が得られにくい。800℃を超える場合には、ヘマタイト粒子の高密度化は十分なされているが、粒子及び粒子相互間の焼結が生じるため、粒子径が増大し、同様に表面平滑な塗膜は得られにくい。
本発明に係るヘマタイト粒子粉末は、磁気記録媒体の耐腐食性を考慮した場合、ヘマタイト粒子粉末中の可溶性ナトリウム塩、可溶性硫酸塩等の含有量を低減した高純度化したヘマタイト粒子粉末が好ましい。
高純度化したヘマタイト粒子粉末は、可溶性ナトリウム塩の含有量がNa換算で300ppm以下が好ましく、より好ましくは200ppmである。また、可溶性硫酸塩の含有量はSO換算で150ppm以下が好ましく、より好ましくは100ppm以下である。
高純度化されたヘマタイト粒子粉末は、ヘマタイト粒子粉末を湿式分散処理してスラリー化した後に、アルカリ水溶液中で加熱処理し、濾別・水洗することにより得ることができる。アルカリ水溶液のpH値は13.0以上が好ましく、加熱処理の温度は80℃以上が好ましい。
また、本発明に係るヘマタイト粒子粉末は、ヘマタイト粒子粉末の表面がアルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれる一種又は二種以上の表面被覆物によって被覆されていることが好ましい。粒子表面が表面被覆物で被覆されているヘマタイト粒子粉末は、非磁性塗料中に分散させた場合に、結合剤樹脂とのなじみがよく、所望の分散度がより得られ易い。
表面被覆物により被覆されたヘマタイト粒子粉末は、ヘマタイト粒子粉末を分散して得られる水懸濁液に、アルミニウム化合物、ケイ素化合物又は当該両化合物を添加して混合攪拌することにより、又は、必要により、混合攪拌後にpH値を調整することにより、前記ヘマタイト粒子粉末の粒子表面を、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれる一種又は二種以上の表面被覆物で被覆し、次いで、濾別、水洗、乾燥、粉砕する。必要により、更に、脱気・圧密処理等を施してもよい。
アルミニウム化合物としては、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等のアルミニウム塩や、アルミン酸ナトリウム等のアルミン酸アルカリ塩等が使用できる。
ケイ素化合物としては、3号水ガラス、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等が使用できる。
前記表面被覆物の添加量は、ヘマタイト粒子粉末に対してアルミニウムの水酸化物やアルミニウムの酸化物はAl換算で、ケイ素の水酸化物やケイ素の酸化物はSiO換算で、それぞれ0.01〜50重量%が好ましい。0.01重量%未満の場合には、被覆による分散性向上効果がほとんどなく、50重量%を超える場合には、被覆効果が飽和するため、必要以上に被覆する意味がない。ビヒクル中における分散性向上効果及び工業的な生産性を考慮すれば、0.05〜20重量%がより好ましい。
アルミニウム化合物とケイ素化合物とを併せて使用する場合には、ヘマタイト粒子粉末に対してAl換算量とSiO換算量との総和で0.01〜50重量%が好ましい。
また、本発明に係るヘマタイト粒子粉末は、低温加熱脱水及び高温加熱処理を経て得られたヘマタイト粒子粉末を水に再分散して得られる含液物又は表面被覆物によって被覆されたヘマタイト粒子粉末を含む含液物の固形分濃度を調整した後、再度真空凍結乾燥を行ってもよい。ヘマタイト粒子粉末を真空凍結乾燥することにより、非磁性塗料中への分散性がより向上し、より優れた表面平滑性を有する磁気記録媒体を得ることができる。
上記で得られた表面処理されたゲータイト粒子粉末を含む含液物の場合、固形分濃度を調整したものをそのまま用いて行うこともできるが、通常、濾別・水洗を行った後、固形分濃度を調整したものを用いることが好ましい。
ヘマタイト粒子粉末を含む含液物もしくは表面被覆物により被覆されたヘマタイト粒子粉末を含む含液物の真空凍結乾燥及びその処理条件は、前記ゲータイト粒子粉末の真空凍結乾燥を行う場合と同様の条件で行えばよい。
次に、本発明における磁気記録媒体の製造法について述べる。
前記非磁性下地層、磁気記録層、及びバックコート層の形成にあたって用いる溶剤としては、磁気記録媒体に汎用されているアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びテトラヒドロフラン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール及びイソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル及び酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル及びジオキサン等のグリコールエーテル類及びその混合物等を使用することができる。
非磁性下地層、磁気記録層、バックコート層は、各層を構成する成分及び溶剤を一般に使用される混練機及び分散機により混練・分散処理を行い、各塗料を作製する。該各塗料を用いて、非磁性支持体上の一面に非磁性下地層、磁気記録層の順に塗布、乾燥後、カレンダー処理を行う。その際の塗布方法としては、磁性層と非磁性層をほぼ同時に塗布するWet on Wet法でも、非磁性下地層を塗布・乾燥後、その上に磁気記録層を塗布するWet on Dry法のどちらでもよい。また、必要により、バックコート層を設ける場合には、非磁性下地層及び磁気記録層とは反対面の非磁性支持体上にバックコート層用塗料を塗布、乾燥後、カレンダー処理を行い、磁気記録媒体を得る。
<作用>
本発明において最も重要な点は、ゲータイト粒子粉末を含む含液物を真空凍結乾燥した後に、該乾燥物を熱処理することによって得られた非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末は、下記関係式を満たすと共にタップ密度(ρt)が0.60g/cm以上であるため、非磁性塗料中における分散性に優れると共に、塗膜中にヘマタイト粒子粉末高充填することができるという事実である。
<式>
713.1L−0.521 ≦BET比表面積値(SSA)≦ 725.5L−0.451
本発明に係る非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉が、非磁性塗料中における分散性に優れると共に、塗膜中にヘマタイト粒子粉末を高充填することができる理由として、本発明者は下記のように推定している。
即ち、ゲータイト粒子粉末を含む含液物に対して真空凍結乾燥を行うことで、含液物を構成する液体が固体に変態する際に体積が膨張し、粒子間の距離が広がるため、その後行う熱処理における粒子同士の焼結を抑制できる。また、ゲータイト粒子の加熱脱水処理後の高温加熱処理が従来に比べて低い温度でできるため、より粒子同士の焼結を抑制することができると共に、上記関係式を満足する、粒子サイズ(平均一次長軸径)に対してBET比表面積値が大きいヘマタイト粒子粉末を得ることが可能となる。一方、ヘマタイト粒子粉末のタップ密度(ρt)を0.60g/cm以上とすることにより、粒子粉末中に含まれる空気を少なくできるため、非磁性塗料作製時のヘマタイト粒子粉末を混練・分散する際に、強力なせん断力を混練物にかけることが容易となり、塗膜中にヘマタイト粒子粉末を高充填することができる。
以下に、本発明における実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
ゲータイト粒子又はヘマタイト粒子を含む含液物の固形分濃度は、ゲータイト粒子又はヘマタイト粒子を含む含液物100gを秤量し、乾燥機を用いて含液物を構成する液体を蒸発させ、その後の乾燥物の重量を測定し、重量比から固形分濃度を算出した。
粒子の平均一次長軸径、平均一次短軸径、平均一次粒子径、及び平均一次厚みは、以下の手順で測定を行った。まず、透過型電子顕微鏡を用いて粒子を観察し、個々の粒子が重ならず、ばらばらに分散している視野において、粒子約400個が存在するように倍率を調整し、写真を撮影した。次に得られた写真を縦横4倍に拡大した後に、粒子約350個について長軸径、短軸径、粒子径、又は厚みを、DIGITIZER(型式:KD 4620、グラフテック株式会社製)を用いてそれぞれ測定し、その平均値で粒子の平均一次長軸径、平均一次短軸径、平均一次粒子径、及び平均一次厚みを示した。写真上において、粒子の輪郭がはっきりしないものや、粒子同士が重なって個々の粒子を判別しにくいものは粒子径の測定から除外した。
軸比は平均一次長軸径と平均一次短軸径との比で示し、板状比は平均一次粒子径と平均一次厚みの比で示した。
比表面積値は、「モノソーブMS−11」(カンタクロム株式会社製)を用いて、BET法により測定した値で示した。
ゲータイト粒子粉末、ヘマタイト粒子粉末の粒子内部や粒子表面に存在するAl量、P量、SiO量及びY量のそれぞれは、「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業株式会社製)を使用し、JIS K0119の「けい光X線分析通則」に従って測定した。また、板状マグネトプランバイト型フェライト粒子粉末のTi量、Ni量及びFe量は、上記と同様にして測定した。
ヘマタイト粒子粉末のかさ密度(ρa)はJIS K5101に従い、カサ比重測定器((株)蔵持科学機械製作所)を用いて測定を行った。また、タップ密度(ρt)は、振盪比重測定器((株)蔵持科学機械製作所)を用い、25mlのタッピングセルに粉末を落下させ、セルが満杯に充填された後、ストローク長25mmでタッピングを600回行って測定した。
ヘマタイト粒子粉末の圧縮性指数(%)は、下記数1に従って算出した値である。
<数1>
圧縮性指数(%)=((タップ密度−かさ密度)/タップ密度)×100
ゲータイト粒子粉末及びヘマタイト粒子粉末の体積基準平均粒子径(D50)は、あらかじめ乾燥機にて試料粉末を80℃で3時間乾燥した後、該試料を60mesh(目開き 250μm)の篩に通し、「レーザー回折式粒度分布測定装置 model HELOS LA/KA」(SYMPATEC社製)の乾式分散ユニットを用いて、分散圧0.5MPaにて測定した。
磁性粒子粉末及び磁気記録媒体の磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM−3S−15」(東英工業株式会社製)を用いて外部磁場795.8kA/mの下で測定した値である。
塗膜の表面光沢度は、「グロスメーター UGV−5D」(スガ試験機株式会社製)を用いて入射角45°で測定した値であり、標準板光沢を86.3%とした時の値を%で示したものである。
表面粗度Raは、「Surfcom−575A」(東京精密株式会社製)を用いて塗膜の中心線平均粗さRaを測定した。
磁気記録媒体を構成する非磁性支持体、非磁性下地層、磁気記録層及びバックコート層の各層の厚みは、下記のようにして測定した。
「デジタル電子マイクロメーター K351C」(安立電気株式会社製)を用いて、先ず、非磁性支持体の膜厚(A)を測定する。次に、非磁性支持体と該非磁性支持体上に形成された非磁性下地層との厚み(B)(非磁性支持体の厚みと非磁性下地層の厚みとの総和)を同様にして測定する。更に、非磁性下地層上に磁気記録層を形成することにより得られた磁気記録媒体の厚み(C)(非磁性支持体の厚みと非磁性下地層の厚みと磁気記録層の厚みとの総和)を同様にして測定する。そして、非磁性下地層の厚みは(B)−(A)で示し、磁気記録層の厚みは(C)−(B)で示した。
また、非磁性支持体の一方の面に形成される磁気記録層に対し、非磁性支持体の他方の面にバックコート層を設けた場合には、上記と同様に、「デジタル電子マイクロメーター K351C」(安立電気株式会社製)を用いて、先ず、非磁性支持体の膜厚(A)を測定する。次に、非磁性支持体と該非磁性支持体上に形成された非磁性下地層との厚み(B)(非磁性支持体の厚みと非磁性下地層の厚みとの総和)を同様にして測定する。更に、非磁性下地層上に磁気記録層を形成することにより得られた磁気記録媒体の厚み(C)(非磁性支持体の厚みと非磁性下地層の厚みと磁気記録層の厚みとの総和)を同様にして測定する。更に、磁気記録層とは反対の非磁性支持体面に設けたバックコート層との厚み(D)(非磁性支持体の厚みと非磁性下地層の厚みと磁気記録層の厚みとバックコート層の厚みとの総和)を同様にして測定する。そして、非磁性下地層の厚みは(B)−(A)で示し、磁気記録層の厚みは(C)−(B)で示し、バックコート層の厚みは(D)−(C)で示した。
<実施例1−1:非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末の製造>
硫酸第一鉄水溶液と、水酸化ナトリウムと炭酸ナトリウムの混合水溶液とを用いて得られた前駆体1(種類:ゲータイト粒子、粒子形状:針状、平均一次長軸径:129.8nm、平均一次短軸径:17.0nm、軸比:7.6、BET比表面積値:145.4m/g、体積基準平均粒子径D50:3.75μm)17kgのスラリー(固形分濃度を31g/l)550lを加熱し、温度を60℃とし、0.1NのNaOH水溶液を加えてスラリーのpH値を10.0に調整した。
次に、上記スラリー中に、焼結防止剤としてヘキサメタリン酸ナトリウム400gを溶解した水溶液を徐々に加え、添加が終わった後、60分間熟成を行った。次に、このスラリーに0.1Nの酢酸溶液を加え、スラリーのpH値を6.5に調整した。その後、常法により、水洗、濾過を行い、ゲータイト粒子粉末を含む含水物(固形分濃度31重量%)を得た。
次に、上記焼結防止処理を行って得られたゲータイト粒子粉末を含む含水物を、−50℃にて凍結させた(予備凍結)。凍結後、真空度を50Paにまであげて、そのままの状態で、凍結温度−50℃の状態から徐々に温度をあげて50℃にし、水分が3%以下になるまで乾燥を行い、リンの化合物が粒子表面に被覆されているゲータイト粒子粉末(ゲータイト粒子1)を16kg得た。得られたゲータイト粒子粉末はリンの含有量はP換算で0.70重量%、体積基準平均粒子径D50は2.10μmであった。
次いで、得られたゲータイト粒子粉末を、セラミック製の回転炉に入れ、回転駆動させながら空気中280℃で60分間加熱脱水処理を行い、ゲータイト粒子粉末を脱水して、低密度ヘマタイト粒子粉末を得た。
次に、上記低密度ヘマタイト粒子粉末13kgをセラミック製の回転炉に再度投入し、回転駆動させながら空気中560℃で30分間熱処理を行い、脱水孔の封孔処理をすることにより、実施例1−1の非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末を得た。
得られた実施例1−1の非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末は、粒子形状が針状、平均一次長軸径が98.4nm、平均一次短軸径が15.3nm、軸比が6.4、BET比表面積値が76.1m/g、体積基準平均粒子径D50が2.08、タップ密度(ρt)が0.95g/cm、圧縮性指数が34.2%であり、リンの含有量(P換算)が0.63重量%であった。
<非磁性下地層1:非磁性下地層の製造>
前記実施例1−1の非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末12gと結合剤樹脂溶液(スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂30重量%とシクロヘキサノン70重量%)及びシクロヘキサノンとを混合し、自動乳鉢を用いて30分間混練して混練物を得た。
この混練物を1.5mmφガラスビーズ95g、追加の結合剤樹脂溶液(スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂30重量%、溶剤(メチルエチルケトン:トルエン=1:1)70重量%)、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン及びトルエンと共に140mlガラス瓶に添加し、ペイントシェーカーで6時間混合・分散を行って塗料組成物を得た。その後、潤滑剤及び硬化剤を加え、更に、ペイントシェーカーで15分間混合・分散した後、3μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過し、非磁性下地層用非磁性塗料を調整した。
得られた非磁性下地層用非磁性塗料の組成は、下記の通りであった。
非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末 100.0重量部、
スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂 11.8重量部、
スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂 11.8重量部、
シクロヘキサノン 78.3重量部、
メチルエチルケトン 195.8重量部、
トルエン 117.5重量部、
硬化剤(ポリイソシアネート) 3.0重量部、
潤滑剤(ブチルステアレート) 1.0重量部。
上記非磁性下地層用非磁性塗料を厚さ4.5μmの芳香族ポリアミドフィルム上に塗布し、次いで、乾燥させることにより非磁性下地層を形成した。非磁性下地層の特性を評価するために、得られた塗布片の半分に対してカレンダー処理を行った後、60℃で24時間硬化反応を行った。
得られた非磁性下地層1は、膜厚が1.4μm、塗膜の光沢度が208%、表面粗度Raが5.8nmであった。
<実施例2−1:磁気記録媒体の製造>
磁性粒子(1)(種類:鉄を主成分とする金属磁性粒子、粒子形状:針状、平均一次長軸径:63.2nm、平均一次短軸径:11.6nm、軸比:5.4、保磁力値:187.0kA/m、飽和磁化値:131.8Am/kg)12g、研磨剤(商品名:AKP−50、住友化学株式会社製)1.2g、カーボンブラック 0.12g、結合剤樹脂溶液(スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂30重量%とシクロヘキサノン70重量%)及びシクロヘキサノンとを混合し、自動乳鉢を用いて30分間混練して混練物を得た。
この混練物を1.5mmφガラスビーズ95g、追加結合剤樹脂溶液(スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂30重量%、溶剤(メチルエチルケトン:トルエン=1:1)70重量%)、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン及びトルエンと共に140mlガラス瓶に添加し、ペイントシェーカーで6時間混合・分散を行って磁性塗料を得た。その後、潤滑剤及び硬化剤を加え、更に、ペイントシェーカーで15分間混合・分散した後、3μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過し、磁気記録層用磁性塗料を調整した。
得られた磁気記録層用磁性塗料の組成は下記の通りであった。
鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末 100.0重量部、
スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂 10.0重量部、
スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂 10.0重量部、
研磨剤(AKP−50) 10.0重量部、
カーボンブラック 1.0重量部、
潤滑剤(ミリスチン酸:ステアリン酸ブチル=1:2) 3.0重量部、
硬化剤(ポリイソシアネート) 5.0重量部、
シクロヘキサノン 65.8重量部、
メチルエチルケトン 164.5重量部、
トルエン 98.7重量部。
磁気記録層用塗料を前記非磁性下地層の上に塗布した後、磁場中において配向・乾燥した。その後、60℃で24時間硬化反応を行い、12.7mm幅にスリットして磁気記録媒体を得た。
得られた磁気記録媒体は、磁気記録層の膜厚が0.26μm、保磁力値が197.4kA/m、光沢度が221%、表面粗度Raが5.5nmであった。
前記実施例1−1、非磁性下地層1及び実施例2−1に従って非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末、非磁性下地層及び磁気記録媒体を作製した。各製造条件及び得られた非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末、非磁性下地層及び磁気記録媒体の諸特性を示す。
前駆体2〜4:
ヘマタイト粒子を製造するための前駆体であるゲータイト粒子として前駆体2〜4を準備した。該ゲータイト粒子の諸特性を表1に示す。
Figure 0005344139
ゲータイト粒子2〜4:
前駆体であるゲータイト粒子の種類、焼結防止剤の種類及び被覆量、真空凍結乾燥処理の固形分濃度、凍結温度、真空度及び乾燥温度を種々変化させた以外は、実施例1−1のゲータイト粒子1と同様にしてゲータイト粒子を得た。
このときの製造条件及び得られたゲータイト粒子粉末の体積基準平均粒子径D50を表2に示す。
ゲータイト粒子5:
焼結防止処理を行って得られたゲータイト粒子粉末を含む含水物に対し、予備凍結を行わずに、真空度を50Paまであげて、ゲータイト粒子粉末を含む含水物を自己凍結させた。そのときの凍結温度は−40℃であった。次いで、−40℃の状態から徐々に温度をあげて50℃にし、水分が3%以下になるまで乾燥を行った以外は、実施例1−1のゲータイト粒子1と同様にしてゲータイト粒子を得た。
ゲータイト粒子6(比較ゲータイト粒子):
焼結防止処理後の乾燥を真空凍結乾燥で行わずに、通常の乾燥機により行った以外は、実施例1−1のゲータイト粒子1と同様にしてゲータイト粒子を得た。
ゲータイト粒子5及びゲータイト粒子6の製造条件及び得られたゲータイト粒子の体積基準平均粒子径D50を表2に示す。
Figure 0005344139
実施例1−2〜1−7及び比較例1−1:
ゲータイト粒子の種類、低密度加熱処理の温度と時間、高密度加熱処理の温度と時間を種々変化させた以外は、実施例1−1と同様にして非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末を得た。
このときの製造条件を表3に、得られた非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末の諸特性を表4に示す。
Figure 0005344139
Figure 0005344139
実施例1−8 表面被覆物により被覆された非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末:
実施例1−1で得られたヘマタイト粒子粉末12kgを、凝集を解きほぐすために、純水70lに攪拌機を用いて邂逅し、更に、「TKパイプラインホモミクサー」(製品名、特殊機化工業株式会社製)を3回通して実施例1−1のヘマタイト粒子粉末を含むスラリーを得た。
続いて、この実施例1−1のヘマタイト粒子粉末を含むスラリーを横型サンドグラインダー「マイティーミルMHG−1.5L」(製品名、井上製作所株式会社製)を用いて、軸回転数2000rpmにおいて5回パスさせて、実施例1−1のヘマタイト粒子粉末を含む分散スラリーを得た。
得られた実施例1−1のヘマタイト粒子粉末を含む分散スラリー濃度を62g/lとし、スラリーを180l採取した。このスラリーを攪拌しながら、6NのNaOH水溶液を加えてスラリーのpH値を13.4に調整した。次に、このスラリーを攪拌しながら加熱して95℃まで昇温し、その温度で3時間保持した。
次に、このスラリーをデカンテーション法により水洗し、pH値が10.5のスラリーとした。この時点でのヘマタイト粒子粉末の重量は10.5kgであった。
次に、上記アルカリ性スラリー中に、アルミン酸ナトリウム546.0gを徐々に加え、20分間熟成を行った。次に、このスラリーに0.1Nの酢酸溶液を加え、スラリーのpH値を9.1に調整した。その後、常法により、濾別、水洗、乾燥を行い、実施例1−8の非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末を得た。
このときの製造条件を表5に、得られた非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末の諸特性を表6に示す。
実施例1−9〜1−12及び比較例1−2:
ヘマタイト粒子の種類、表面処理添加物の種類及び量を種々変化させた以外は、実施例1−8と同様にして非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末を得た。
このときの製造条件を表5に、得られた非磁性下地層用非磁性粒子粉末の諸特性を表6に示す。
Figure 0005344139
Figure 0005344139
実施例1−13:
実施例1−1で得られたヘマタイト粒子粉末12kgを、凝集を解きほぐすために、純水70lに攪拌機を用いて邂逅し、更に、「TKパイプラインホモミクサー」(製品名、特殊機化工業株式会社製)を3回通して実施例1−1のヘマタイト粒子粉末を含むスラリーを得た。
続いて、この実施例1−1のヘマタイト粒子粉末を含むスラリーを横型サンドグラインダー「マイティーミルMHG−1.5L」(製品名、井上製作所株式会社製)を用いて、軸回転数2000rpmにおいて5回パスさせて、実施例1−1のヘマタイト粒子粉末を含む分散スラリーを得た。
次に、上記実施例1−1のヘマタイト粒子粉末を含む分散スラリーを水洗・濾過後、固形分濃度を30重量%に調整した実施例1−1のヘマタイト粒子粉末を含む含水物を、−40℃にて完全に凍結させ、凍結後、真空度を50Paにまであげて、その状態から徐々に温度を上げて60℃にした後に、水分が3%以下になるまで乾燥を行った。この乾燥粉末 10.0kgをエッジランナー「MPUV−2型」(製品名、株式会社松本鋳造鉄工所製)に投入して、392N/cmで20分間混合攪拌を行い、粒子の凝集を軽く解きほぐし、実施例1−13の非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末を得た。
このときの製造条件を表7に、得られた非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末の諸特性を表8に示す。
実施例1−14〜1−20及び比較例1−3:
ヘマタイト粒子の種類、真空凍結乾燥処理の固形分濃度、凍結温度、真空度、及び乾燥温度を種々変化させた以外は、実施例1−13と同様にして非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末を得た。
このときの製造条件を表7に、得られた非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末の諸特性を表8に示す。
Figure 0005344139
Figure 0005344139
<非磁性下地層の製造>
非磁性下地層2〜12及び比較非磁性下地層1〜3:
非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末の種類を種々変化させた以外は、非磁性下地層1と同様にして非磁性下地層を得た。
このときの製造条件、及び得られた非磁性下地層の諸特性を表9に示す。
Figure 0005344139
<磁気記録媒体の製造>
実施例2−2〜2−12及び比較例2−1〜2−3:
非磁性下地層の種類及び磁性粒子の種類を種々変化させた以外は、前記実施例2−1と同様にして磁気記録媒体を製造した。
尚、使用した磁性粒子(1)〜(3)の諸特性を表10に示す。
Figure 0005344139
このときの製造条件及び得られた磁気記録媒体の諸特性を表11に示す。
Figure 0005344139
本発明に係る磁気記録媒体の非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末は、非磁性下地層用塗料における分散性及び非磁性下地層中における充填性に優れているため、高密度磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末として好適である。
また、本発明に係る磁気記録媒体は、上述のヘマタイト粒子粉末を磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末として用いることにより、高い表面平滑性を有する磁気記録媒体を得ることができるため、高密度磁気記録媒体として好適である。

Claims (3)

  1. タップ密度(ρt)が0.60g/cm以上であると共に、平均一次長軸径(L)(nm)とBET比表面積値(SSA)が下記関係式を満たすことを特徴とする磁気記録媒体の非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末。
    <式>
    713.1L−0.521 ≦BET比表面積値(SSA)≦ 725.5L−0.451
  2. 圧縮性指数が28%以上であることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体の非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末。
  3. 非磁性支持体、該非磁性支持体上に形成される非磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む非磁性下地層及び該非磁性下地層の上に形成される磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む磁気記録層からなる磁気記録媒体において、前記非磁性粒子粉末が請求項1又は請求項2に記載された磁気記録媒体の非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末であることを特徴とする磁気記録媒体。
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