JP4305589B2 - 磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末及びその製造法並びに磁気記録媒体 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、表面平滑で、強度が大きく、耐久性に優れ、且つ、磁気記録層中に分散されている鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の腐蝕に伴う磁気特性の劣化が抑制された磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末として好適なアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末を提供する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ビデオ用、オーディオ用磁気記録再生用機器の長時間記録化、小型軽量化が進むにつれて、磁気テープ、磁気ディスク等の磁気記録媒体に対する高性能化、即ち、高密度記録化、高出力特性、殊に周波数特性の向上、低ノイズ化の要求が益々強まっている。
【0003】
磁気記録媒体の上記諸特性を向上させるために、磁性層に用いる磁性粒子粉末の高性能化及び磁気記録層の薄層化の両面から種々の試みがなされている。
【0004】
まず、磁性粒子粉末の高性能化についていえば、上記諸特性を満たすような磁性粒子粉末としては、高い保磁力値と大きな飽和磁化値を有することが必要である。
【0005】
高い保磁力値と大きな飽和磁化値を有する磁性粒子粉末として、近年、鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末が広く使用されている。
【0006】
鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末は、高い保磁力値と大きな飽和磁化値とを有するものであるが、磁気記録媒体用の粒子粉末は1μm以下、殊に、0.01〜0.3μm程度の非常に微細な粒子粉末であるため、腐蝕しやすく、磁気特性が劣化し、殊に保磁力値と飽和磁化値の減少を引き起こすという欠点がある。
【0007】
従って、磁性粒子粉末として鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末を使用している磁気記録媒体の特性を長期に亘って維持するためには、鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の腐蝕を極力抑制することが強く要求される。
【0008】
次に、磁気記録層の薄層化について述べる。
【0009】
近時におけるビデオテープの高画像高画質化に対する要求は益々強まっており、従来のビデオテープに比べ、記録されるキャリアー信号の周波数が短波長領域に移行しており、その結果、磁気テープの表面からの磁化深度が著しく浅くなっている。
【0010】
短波長信号に対して、磁気記録媒体の高出力特性、殊に、S/N比を向上させるためには、磁気記録層の薄層化が強く要求されている。この事実は、例えば、株式会社総合技術センター発行「磁性材料の開発と磁粉の高分散化技術」(1982年)第312頁の「‥‥塗布型テープにおける高密度記録のための条件は、短波長信号に対して、低ノイズで高出力特性を保持できることであるが、その為には保磁力Hcと残留磁化Brが‥‥共に大きいことと塗布膜の厚みがより薄いことが必要である。‥‥」なる記載の通りである。
【0011】
磁気記録層の薄層化が進む中で、磁気記録層の平滑化と厚みむらの問題が生じている。周知の通り、磁気記録層を平滑で厚みむらがないものとするためには、ベースフィルムの表面もまた平滑でなければならない。この事実は、例えば、工学情報センター出版部発行「磁気テープ−ヘッド走行系の摩擦摩耗発生要因とトラブル対策−総合技術資料集(−以下、総合技術資料集という−)」(昭和62年)第180及び181頁の「‥‥硬化後の磁性層表面粗さは、ベースの表面粗さ(バック面粗さ)に強く依存し両者はほぼ比例関係にあり、‥‥磁性層はベースの上に塗布されているからベースの表面を平滑にすればするほど均一で大きなヘッド出力が得られS/Nが向上する。‥‥」なる記載の通りである。
【0012】
また、ベースフィルム等の非磁性支持体もまた磁性層の薄層化と同様に薄層化が進んでおり、その結果、ベースフィルムの強度が問題となってきている。この事実は、例えば、前出「磁性材料の開発と磁粉の高分散化技術」第77頁の「‥‥高密度記録化が今の磁気テープに課せられた大きなテーマであるが、このことは、テープの長さを短くしてカセットを小型化していく上でも、また長時間記録に対しても重要となってくる。このためにはフィルムベースの厚さを減らすことが必要な訳である。‥‥このように薄くなるにつれてテープのスティフネスが急激に減少してしまうためレコーダーでのスムーズな走行がむずかしくなる。ビデオテープの薄型化にともない長手方向、幅方向両方向に渡ってのこのスティフネスの向上が大いに望まれている。‥‥」なる記載の通りである。
【0013】
更に、近時における磁気記録媒体の高性能化の要求はとどまるところがなく、上述した磁気記録層の薄層化に伴って磁気記録媒体自体の耐久性が低下することとなるため、磁気記録媒体自体の耐久性を向上させることが強く要求されている。
【0014】
この事実は、特開平5−298679号公報の「…近年、磁気記録の発展と共に高画質、高音質の要求がますます高まっており、電磁変換特性の改良、特に強磁性粉末の微粒子化、高密度化が進められ、更に磁気テープの表面を平滑化することでノイズを下げ、C/Nを上げることが要求されている。…しかしながら、磁気テープの走行中において磁性層と装置系との接触の摩擦係数が増大する結果、短時間の使用で磁気記録媒体の磁性層が損傷を受け、あるいは磁性層が剥離する傾向がある。特にビデオテープではビデオヘッドと磁気記録媒体が高速で接触しながら走行するため、磁性層から強磁性粉末が脱落しやすく、磁気ヘッドの目詰まりの原因ともなる。従って、磁気記録媒体の磁性層の走行耐久性の向上が望まれている。…」なる記載から明らかである。
【0015】
磁気記録層の薄層化が進む中で、ベースフィルム等の非磁性支持体上に針状へマタイト粒子粉末等の非磁性粒子粉末を結合剤樹脂中に分散させてなる下地層(以下、非磁性下地層という。)を少なくとも一層設けることにより、磁気記録層の表面性の悪化や電磁変換特性を劣化させる等の問題を解決することが提案され、実用化されている(特公平6−93297号公報、特開昭62−159338号公報、特開昭63−187418号公報、特開平4−167225号公報、特開平4−325915公報、特開平5−73882号公報、特開平5−182177号公報、特開平9−170003号公報等)。
【0016】
下地層の表面平滑性の改善は強く求められており、これまで長軸径の粒度に注目して、非磁性粒子粉末である針状ヘマタイト粒子粉末の分散性を向上させることが試みられてきた。(特開平9−170003号公報、特開平10−198948号公報、特開平10−273325号公報等)。
【0017】
更に、下地層の表面をより平滑にするために、針状へマタイト粒子粉末の分散性を改善することが望まれており、本発明者は、アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末中のヘマタイト超微粒子を除去したアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末に係る発明を出願している(特願平10−116046号)。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
表面平滑で、強度が大きく、耐久性に優れ、且つ、磁気記録層中に分散されている鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の腐蝕に伴う磁気特性の劣化が抑制された磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末として好適である、均斉な粒度を有する、殊に短軸径の粒度が均斉である針状ヘマタイト粒子粉末は現在最も要求されているところであるが、未だ得られていない。
【0019】
即ち、前出特開平10−198948号公報には、針状ゲータイト粒子粉末又は該針状ゲータイト粒子粉末を加熱脱水して得られた針状へマタイト粒子粉末を550℃以上の温度で加熱して高密度化された針状へマタイト粒子粉末を得る方法が記載されているが、後出比較例に示す通り、短軸径の幾何標準偏差値が高く、短軸径の粒度が十分に均斉といえるものではない。
【0020】
また、前出特願平10−116046号は、アルミニウム含有針状へマタイト粒子粉末を酸溶解することにより、アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末中に存在するアルミニウム含有針状ヘマタイト微粒子成分を溶解し、粒子径の粒度分布を改善したものであるが、後出比較例に示す通り、短軸径の幾何標準偏差値が高く、短軸径の粒度が十分に均斉であるとは言い難いものである。
【0021】
そこで、本発明は、表面平滑で、強度が大きく、耐久性に優れ、且つ、磁気記録層中に分散されている鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の腐蝕に伴う磁気特性の劣化が抑制された磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末として好適な、均斉な粒度を有する、殊に短軸径の粒度が均斉である針状ヘマタイト粒子粉末を得ることを技術的課題とする。
【0022】
【課題を解決する為の手段】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0023】
即ち、本発明は、粒子内部にAl換算で0.05〜50重量%のアルミニウムを含有し、長軸径の幾何標準偏差値が1.50以下であって短軸径の幾何標準偏差値が1.30以下であり、BET比表面積値が40〜180m2/gであり、且つ、粉体pH値が8.0以上、可溶性ナトリウム塩の含有量がNa換算で300ppm以下、可溶性硫酸塩の含有量がSO4換算で150ppm以下である、平均長軸径が0.01〜0.2μmのアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末からなることを特徴とする磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末である(本発明1)。
【0024】
また、本発明は、本発明1におけるアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末の粒子表面が、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれる少なくとも一種からなる表面被覆物によって被覆されていることを特徴とする磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末である(本発明2)。
【0025】
また、本発明は、粒子内部にAl換算で0.05〜50重量%のアルミニウムを含有しているアルミニウム含有針状ゲータイト粒子粉末を550〜850℃の温度範囲で加熱脱水処理してアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末とするに当って、前記加熱脱水処理に先立ってあらかじめ、前記アルミニウム含有針状ゲータイト粒子粉末を100〜200℃の温度範囲で加熱処理して該アルミニウム含有針状ゲータイト粒子粉末に含まれているアルミニウム含有ゲータイト超微粒子をアルミニウム含有針状ゲータイト粒子に吸収させておき、550〜850℃の温度範囲で加熱脱水してアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末を得、次いで、該アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末を水溶液中へ分散させた水性懸濁液にアルカリ水溶液を添加してpH値を13.0以上に調製し、80〜103℃の温度範囲で加熱処理した後、濾過、水洗、乾燥することを特徴とする上記記載の磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末の製造法である。
【0026】
また、本発明は、非磁性支持体、該非磁性支持体上に形成される非磁性粒子粉末と結合剤樹脂とからなる非磁性下地層及び該非磁性下地層の上に形成される磁性粒子粉末と結合剤樹脂とからなる磁気記録層からなる磁気記録媒体において、前記非磁性粒子粉末が上記本発明1及び本発明2に係る各非磁性下地層用非磁性粒子粉末であることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0027】
次に、本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
【0028】
まず、本発明に係るアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末について述べる。
【0029】
本発明に係るアルミニウム含有ヘマタイト粒子粉末の粒子形状は、針状である。ここで「針状」とは、文字どおりの針状はもちろん、紡錘状や米粒状などを含む意味である。
【0030】
本発明に係るアルミニウム含有針状へマタイト粒子粉末は、粒子内部にAl換算で0.05〜50重量%のアルミニウムを粒子内部にほぼ均一に含有している。
【0031】
粒子内部に含有しているアルミニウム量がアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末に対してAl換算で0.05重量%未満の場合には、得られる非磁性下地層を有する磁気記録媒体は十分な耐久性向上効果を得ることが困難である。50重量%を超える場合には、効果が飽和するため必要以上に添加する意味がない。
【0032】
本発明に係るアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末は、長軸径の幾何標準偏差値が1.50以下であって短軸径の幾何標準偏差値が1.30以下である。
【0033】
長軸径の幾何標準偏差値が1.50を超える場合又は短軸径の幾何標準偏差値が1.30を超える場合には、存在する粗大粒子が塗膜の表面平滑性に悪影響を与えるために好ましくない。塗膜の表面平滑性を考慮すれば、長軸径の幾何標準偏差値は、好ましくは1.45以下、より好ましくは1.40以下である。また、短軸径の幾何標準偏差値は、好ましくは1.29以下、より好ましくは1.28以下である。工業的な生産性を考慮すれば、得られるアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末の長軸径及び短軸径の幾何標準偏差値の下限値は、1.01である。
【0034】
本発明に係るアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末の平均長軸径は、0.01〜0.2μmである。平均長軸径が0.01μm未満の場合には、粒子の微粒子化による分子間力の増大により、ビヒクル中における分散が困難となる。0.2μmを超える場合には、粒子サイズが大きすぎるため、塗膜の表面平滑性を害するので好ましくない。ビヒクル中における分散性及び塗膜の表面平滑性を考慮すれば平均長軸径は0.01〜0.1μmが好ましい。
【0035】
本発明に係るアルミニウム含有針状へマタイト粒子粉末の平均短軸径は0.005〜0.1μmが好ましい。
【0036】
本発明に係るアルミニウム含有針状へマタイト粒子粉末の平均短軸径の下限値及び上限値を定めた理由は、上記平均長軸径の場合と同様である。ビヒクル中における分散性及び塗膜の表面平滑性を考慮すれば平均短軸径は0.005〜0.05μmが好ましい。
【0037】
本発明に係るアルミニウム含有針状へマタイト粒子粉末はBET比表面積値が40〜180m2/gである。
【0038】
BET比表面積値の下限値及び上限値を定めた理由は、上記平均長軸径の上限値及び下限値と同様である。ビヒクル中における分散性及び塗膜の表面平滑性を考慮すれば、BET比表面積値は45〜175m2/gが好ましく、より好ましくは48〜160m2/gである。
【0039】
本発明に係る針状ヘマタイト粒子粉末の粉体pH値は8.0以上である。粉体pH値が8.0未満の場合には、非磁性下地層の上に形成されている磁気記録層中に含まれる鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末を徐々に腐蝕させ、磁気特性の劣化を引き起こす。鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の腐蝕防止効果を考慮すると、粉体pH値は8.5〜11.0が好ましく、より好ましくは9.0〜10.5である。
【0040】
本発明に係るアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末の可溶性ナトリウム塩の含有量はNa換算で300ppm以下である。300ppmを超える場合には、非磁性下地層の上に形成されている磁気記録層中に含まれる鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末を徐々に腐蝕させ、磁気特性の劣化を引き起こす。また、ビヒクル中におけるアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末の分散性が害されやすくなったり、磁気記録媒体の保存状態、特に湿度の高い環境下においては白華現象を生じる場合がある。鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の腐蝕防止効果を考慮すると、好ましくは250ppm以下、より好ましくは200ppm以下、更により好ましくは150ppm以下である。工業的な生産性を考慮すれば、その下限値は0.01ppmである。
【0041】
本発明に係るアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末の可溶性硫酸塩の含有量はSO4換算で150ppm以下である。150ppmを超える場合には、非磁性下地層の上に形成されている磁気記録層中に含まれる鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末を徐々に腐蝕させ、磁気特性の劣化を引き起こす。また、ビヒクル中におけるアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末の分散性が害されやすくなったり、磁気記録媒体の保存状態、特に湿度の高い環境下においては白華現象を生じる場合がある。鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の腐蝕防止効果を考慮すると、好ましくは100ppm以下、より好ましくは70ppm以下、更により好ましくは50ppm以下である。工業的な生産性を考慮すれば、その下限値は0.01ppmである。
【0042】
本発明に係るアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末の軸比(平均長軸径と平均短軸径の比)(以下、「軸比」という。)が2〜20が好ましく、より好ましくは2.5〜18、更により好ましくは3〜15である。軸比が2未満の場合には、十分な強度を有する塗膜が得られ難い。軸比が20を超える場合には、ビヒクル中での粒子の絡み合いが多くなり、分散性が悪くなったり、粘度が増加したりすることがある。
【0043】
本発明に係るアルミニウム含有針状へマタイト粒子粉末の密度化の程度は、0.5〜2.5が好ましい。密度化の程度はBET法により測定した比表面積SBET値と電子顕微鏡写真に示されている粒子から計測された長軸径及び短軸径から算出した表面積STEM値との比(SBET/STEM値)で示した。
【0044】
SBET/STEM値が0.5未満の場合には、アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末の高密度化が達成されてはいるが、粒子及び粒子相互間の焼結により、粒子径が増大しており、十分な表面平滑性を有する塗膜が得られない。SBET/STEM値が2.5を超える場合には、高密度化が十分ではなく、粒子内部及び粒子表面に多数の脱水孔が存在するため、ビヒクル中における分散が不十分となる。ビヒクル中における分散性及び塗膜の表面平滑性を考慮するとSBET/STEM値は0.7〜2.0が好ましく、より好ましくは0.8〜1.6である。
【0045】
本発明に係るアルミニウム含有針状へマタイト粒子粉末は、樹脂吸着強度が65%以上であり、好ましくは68%以上であり、より好ましくは70%以上である。
【0046】
本発明に係るアルミニウム含有針状へマタイト粒子粉末は、必要により、粒子表面がアルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれる少なくとも1種からなる表面被覆物によって被覆されていてもよい。粒子表面が表面被覆物で被覆されているアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末は、ビヒクル中に分散させた場合に、結合剤樹脂とのなじみがよく、容易に所望の分散度が得られ易い。
【0047】
前記表面被覆物の量は、アルミニウム含有針状へマタイト粒子粉末に対しアルミニウムの水酸化物やアルミニウムの酸化物はAl換算で、ケイ素の水酸化物やケイ素の酸化物はSiO2換算で、それぞれ0.01〜50重量%が好ましい。0.01重量%未満である場合には、被覆による分散性向上効果がほとんどなく、50重量%を超える場合には、被覆効果が飽和するため、必要以上に被覆する意味がない。ビヒクル中における分散性向上効果及び工業的な生産性を考慮すれば、0.05〜20重量%がより好ましい。
【0048】
アルミニウム化合物とケイ素化合物とを併せて使用する場合には、アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末に対し、Al換算量とSiO2換算量との総和で0.01〜50重量%が好ましい。
【0049】
本発明に係る表面被覆物で被覆されているアルミニウム含有針状へマタイト粒子粉末は、表面被覆物で被覆されていない本発明に係るアルミニウム含有針状へマタイト粒子粉末とほぼ同程度の粒子サイズ、幾何標準偏差値、軸比、BET比表面積値及びSBET/STEM値を有している。また、粉体pH値、可溶性ナトリウム塩及び可溶性硫酸塩の含有量についてもほぼ同程度である。
【0050】
本発明に係る表面被覆物で被覆されているアルミニウム含有針状へマタイト粒子粉末は、樹脂吸着強度が68%以上であり、好ましくは70%以上であり、より好ましくは72%以上である。
【0051】
次に、本発明に係るアルミニウム含有針状へマタイト粒子粉末の製造法について述べる。
【0052】
本発明に係るアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末は、第一鉄塩と水酸化アルカリ水溶液、炭酸アルカリ水溶液又は水酸化アルカリ・炭酸アルカリ水溶液のいずれかの水溶液を用いて反応して得られる鉄含有沈殿物を含む懸濁液に空気等の酸素含有ガスを通気しゲータイト粒子粉末を生成させるにあたり、空気等の酸素含有ガスを通気する前にアルミニウム化合物を存在させておくことにより、粒子内部にアルミニウムを実質的に均一に含有している針状ゲータイト粒子粉末を得、該針状ゲータイト粒子粉末を100〜200℃の温度範囲で加熱処理した後、更に550〜850℃の温度範囲で加熱脱水処理し、次いで、該アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末を水溶液中へ分散させた水性懸濁液にアルカリ水溶液を添加してpH値を13.0以上のアルカリ性懸濁液とし、80℃〜103℃の温度範囲で加熱処理した後、濾過、水洗、乾燥して得ることができる。
【0053】
アルミニウム化合物の添加は、針状ゲータイト粒子粉末を得る通常の方法において空気等の酸素含有ガスを通気する前に存在させておくことが肝要であり、具体的には、第一鉄塩水溶液、水酸化アルカリ水溶液や炭酸アルカリ水溶液、鉄含有沈殿物を含む懸濁液のいずれの溶液に添加してもよく、最も好ましくは第一鉄塩水溶液である。
【0054】
前記アルミニウム化合物としては、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等のアルミニウム塩やアルミン酸ソーダ等のアルミン酸アルカリ塩、アルミナゾル、水酸化アルミニウム等を用いることができる。
【0055】
本発明における出発原料粒子粉末としてのアルミニウム含有針状ゲータイト粒子粉末は、粒子内部にAl換算で0.05〜50重量%のアルミニウムを含有し、長軸径の幾何標準偏差値が1.70以下、短軸径の幾何標準偏差値が1.50以下、BET比表面積値が50〜250m2/g、平均長軸径が0.01〜0.25μm、粉体pH値が2.0〜8.0、可溶性ナトリウム塩がNa換算で300〜1500ppm、可溶性硫酸塩がSO4換算で150〜3000ppmである。好ましくは平均短軸径が0.005〜0.125μmであり、軸比が2〜20である。
【0056】
なお、針状ゲータイト粒子の生成反応中に、粒子の長軸径、短軸径、軸比等の諸特性向上のために通常添加されているNi、Zn、P、Si等の異種元素が添加されていても支障はない。
【0057】
加熱処理温度が100℃未満の場合、ゲータイト超微粒子を十分に針状ゲータイト粒子に吸収させることが困難であり、粒度が均斉な粒子を得ることができない。200℃を超える場合、ゲータイト超微粒子成分が存在したまま針状ゲータイト粒子の脱水反応が始まるため、粒子間で焼結が起こり、粒度が均斉な粒子を得ることができない。工業的な生産性等を考慮すれば、加熱処理温度は好ましくは、120〜200℃である。
【0058】
加熱処理の時間は、5〜60分が好ましい。
【0059】
100〜200℃の温度範囲で加熱処理したアルミニウム含有針状ゲータイト粒子粉末は、粒子内部にAl換算で0.05〜50重量%のアルミニウムを含有し、長軸径の幾何標準偏差値が1.50以下、短軸径の幾何標準偏差値が1.30以下、BET比表面積値が50〜250m2/g、平均長軸径が0.011〜0.26μm、粉体pH値が3.0〜8.0、可溶性ナトリウム塩がNa換算で300〜1500ppm、可溶性硫酸塩がSO4換算で150〜3000ppmである。好ましくは、平均短軸径が0.0055〜0.13μm、軸比が2〜20である。
【0060】
加熱脱水処理の温度が550℃未満の場合には、焼きしめによる高密度化が不十分であるためアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子の粒子内部及び粒子表面に脱水孔が多数存在しており、その結果、ビヒクル中における分散が不十分となり、非磁性下地層を形成した時、表面平滑な塗膜が得られにくい。850℃を超える場合には、アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子の高密度化は十分なされているが、粒子及び粒子相互間の焼結が生じるため、粒子径が増大し、同様に表面平滑な塗膜は得られにくい。加熱温度の上限値は好ましくは800℃である。
【0061】
なお、本発明に係るアルミニウム含有針状へマタイト粒子粉末としては、100〜200℃の温度範囲で加熱処理したアルミニウム含有ゲータイト粒子粉末を、あらかじめ250〜500℃の温度範囲で加熱脱水処理を行い低密度アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末を得、次いで、該低密度アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末を550〜850℃の温度範囲で焼きしめを行うことにより得られるアルミニウム含有高密度針状へマタイト粒子粉末であることが好ましい。
【0062】
あらかじめ行う加熱脱水処理の温度が250℃未満の場合には、脱水反応に長時間を要するため好ましくない。加熱脱水温度が500℃を超える場合には、脱水反応が急激に生起し、粒子の形状が崩れやすくなったり、粒子相互間の焼結を引き起こす可能性がある。加熱脱水処理して得られるアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子は、アルミニウム含有針状ゲータイト粒子からH2Oが脱水され、脱水孔を多数有する低密度粒子であり、BET比表面積値がアルミニウム含有針状ゲータイト粒子粉末の1.2〜2倍程度となる。
【0063】
焼きしめ処理の温度が550℃未満の場合には、高密度化が不十分であるためアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子の粒子内部及び粒子表面に脱水孔が多数存在しており、その結果、ビヒクル中における分散が不十分となり、非磁性下地層を形成した時、表面平滑な塗膜が得られにくい。850℃を超える場合には、アルミニウム含有針状へマタイト粒子の高密度化は十分なされているが、粒子及び粒子相互間の焼結が生じるため、粒子径が増大し、同様に表面平滑な塗膜は得られにくい。加熱温度の上限値は好ましくは800℃である。
【0064】
本発明に係るアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末は、550〜850℃の加熱脱水処理又は焼きしめ処理に先立って、あらかじめ粒子表面を焼結防止剤で被覆処理しておくことが好ましい。焼結防止剤による被覆処理は、出発原料粒子粉末であるアルミニウム含有針状ゲータイト粒子粉末、100〜200℃で加熱処理後のアルミニウム含有針状ゲータイト粒子粉末、又は該アルミニウム含有針状ゲータイト粒子粉末を250〜500℃の温度範囲で加熱脱水処理して得られる低密度アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末を含む水懸濁液中に焼結防止剤を添加し、混合攪拌した後、濾別、水洗、乾燥すればよい。
【0065】
焼結防止剤としては、通常使用されるヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリリン酸、オルトリン酸等のリン化合物、3号水ガラス、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、コロイダルシリカ等のケイ素化合物、ホウ酸等のホウ素化合物、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等のアルミニウム塩や、アルミン酸ソーダ等のアルミン酸アルカリ塩、アルミナゾル等のアルミニウム化合物、硫酸チタニル等のチタン化合物を使用することができる。
【0066】
アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末を水性懸濁液とするに当って、あらかじめ乾式で粗粉砕をして粗粒をほぐした後、懸濁液とし、次いで、湿式粉砕することにより更に粗粒をほぐしておくことが好ましい。湿式粉砕は、少なくとも44μm以上の粗粒が無くなるようにボールミル、サンドグラインダー、コロイドミル等を用いて行えばよい。湿式粉砕の程度は44μm以上の粗粒が10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは0%である。44μm以上の粗粒が10%を超えて残存していると、次工程におけるアルカリ性懸濁液中での加熱処理の効果が得られ難い。
【0067】
アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末を含有する水性懸濁液中におけるアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末の濃度は、50〜250g/lが好ましい。
【0068】
アルカリ水溶液は、アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末を水中へ分散させたアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末を含有する水性懸濁液へ添加する。
【0069】
アルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の水酸化アルカリ水溶液を用いることができる。
【0070】
アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末を含有するアルカリ性懸濁液中のpH値は13.0以上である。pH13.0未満の場合には、アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末の粒子表面に存在する焼結防止剤に起因する固体架橋を効果的に取りはずすことができず、粒子内部及び粒子表面に存在する可溶性ナトリウム塩、可溶性硫酸塩等の効果的な洗い出しができない。pH値の上限は14である。アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子表面に存在する焼結防止剤に起因する固体架橋の取りはずしや可溶性ナトリウム塩、可溶性硫酸塩等の洗い出しの効果、更には、アルカリ性懸濁液中の加熱処理においてアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子表面に付着したナトリウム等のアルカリを除去するための洗浄効果を考慮すれば、pH値は13.1〜13.8の範囲が好ましい。
【0071】
前記アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末を含有するアルカリ性懸濁液の加熱温度は、80〜103℃である。80℃未満の場合には、アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子表面に存在する焼結防止剤に起因する固体架橋を効果的に取りはずすことが困難となる。103℃を超える場合には、固体架橋は効果的に取りはずすことはできるが、オートクレーブ等が必要となったり、常圧下においては被処理液が沸騰するなど工業的に不利となる。より好ましくは90〜100℃である。
【0072】
アルカリ性懸濁液中で加熱処理したアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末は、常法によって、濾別、水洗することにより、粒子内部及び粒子表面から洗い出した可溶性ナトリウム塩及び可溶性硫酸塩やアルカリ性懸濁液処理中にアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子表面に付着したナトリウム等のアルカリを除去し、次いで、乾燥する。
【0073】
水洗は、デカンテーションによって洗浄する方法、フィルターシックナーを使用して希釈法で洗浄する方法、フィルタープレスに通水して洗浄する方法等の工業的に通常使用されている方法を行えばよい。
【0074】
なお、アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末の粒子内部に含有されている可溶性ナトリウム塩や可溶性硫酸塩を洗い出しておけば、それ以降の工程、例えば、後出する被覆処理工程においてアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末の粒子表面に可溶性ナトリウム塩や可溶性硫酸塩が付着しても水洗により容易に除去することができる。
【0075】
次に、本発明に係る表面被覆物で被覆されているアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末の表面被覆処理は、本発明に係るアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末を水溶液中に分散して得られる水懸濁液に、アルミニウム化合物、ケイ素化合物又は当該両化合物を添加して混合攪拌することにより、または、必要により、混合攪拌後にpH値を調整することにより、前記アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末の粒子表面に、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物を被覆すればよく、次いで、濾別、水洗、乾燥、粉砕する。必要により、更に、脱気・圧密処理等を行ってもよい。
【0076】
表面被覆処理に用いるアルミニウム化合物及びケイ素化合物としては、前出焼結防止剤として用いているアルミニウム化合物及びケイ素化合物と同じものが使用できる。
【0077】
次に、本発明に係る磁気記録媒体について述べる。
【0078】
本発明に係る磁気記録媒体は、非磁性支持体、該非磁性支持体上に形成された非磁性下地層及び該非磁性下地層上に形成された磁気記録層とからなる。
【0079】
前記非磁性支持体としては、現在、磁気記録媒体に汎用されているポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等の合成樹脂フィルム、アルミニウム、ステンレス等金属の箔や板および各種の紙を使用することができる。その厚みは、その材質により種々異なるが、通常好ましくは1.0〜300μm、より好ましくは2.0〜200μmである。磁気ディスクの場合、非磁性支持体としてはポリエチレンテレフタレートが通常用いられ、その厚みは、通常50〜300μm、好ましくは60〜200μmである。磁気テープの場合は、ポリエチレンテレフタレートの場合、その厚みは、通常3〜100μm、好ましくは4〜20μm、ポリエチレンナフタレートの場合、その厚みは、通常3〜50μm、好ましくは4〜20μm、ポリアミドの場合、その厚みは、通常2〜10μm、好ましくは3〜7μmである。
【0080】
本発明における非磁性下地層は、本発明に係るアルミニウム含有針状へマタイト粒子粉末又は本発明に係る表面被覆物で被覆されているアルミニウム含有針状へマタイト粒子粉末と結合剤樹脂とからなる。
【0081】
結合剤樹脂としては、現在、磁気記録媒体の製造にあたって汎用されている塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、ウレタンエラストマー、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリビニルブチラール、ニトロセルロース等セルロース誘導体、ポリエステル樹脂、ポリブタジエン等の合成ゴム系樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイソシアネート、電子線硬化型アクリルウレタン樹脂等とその混合物を使用することができる。また、各結合剤樹脂には−OH、−COOH、−SO3M、−OPO2M2、−NH2等の極性基(但し、MはH、Na、Kである。)が含まれていてもよい。本発明に係るアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末のビヒクル中における分散性を考慮すれば、極性基として−COOH、−SO3Mが含まれている結合剤樹脂が好ましい。
【0082】
本発明に係るアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末又は本発明に係る表面被覆物で被覆されているアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末と結合剤樹脂との配合割合は、結合剤樹脂100重量部に対し、アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末が5〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。
【0083】
非磁性支持体上に形成された非磁性下地層の塗膜厚さは、0.2〜10μmである。0.2μm未満の場合には、非磁性支持体の表面粗さを改善することが困難となり、強度も不十分となりやすい。磁気記録媒体の薄層化及び塗膜の強度を考慮すれば、塗膜厚さはより好ましくは0.5〜5μmである。
【0084】
なお、非磁性下地層に、通常の磁気記録媒体の製造に用いられる潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤等を、必要により、添加してもよい。
【0085】
粒子表面が前記表面被覆物によって被覆されていない本発明に係るアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末を用いた非磁性下地層は、塗膜の光沢度が198〜300%、好ましくは202〜300%、より好ましくは206〜300%であって、塗膜表面粗度Raが0.5〜8.0nm、好ましくは0.5〜7.5nmであって、より好ましくは0.5〜7.0nm、塗膜の強度は、ヤング率(相対値)が124〜160、好ましくは128〜160である。
【0086】
粒子表面が前記表面被覆物によって被覆されている本発明に係るアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末を用いた非磁性下地層は、塗膜の光沢度が200〜300%、好ましくは204〜300%、より好ましくは208〜300%であって、塗膜表面粗度Raが0.5〜7.8nm、好ましくは0.5〜7.3nm、より好ましくは0.5〜6.8nmであって、塗膜の強度は、ヤング率(相対値)が126〜160、好ましくは130〜160である。
【0087】
本発明における磁気記録層は、鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末と結合剤樹脂とからなる。
【0088】
本発明における鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末は、鉄を50〜99重量%、好ましくは60〜95重量%含有している粒子粉末であり、必要により、鉄以外のAl、Co、Ni、P、Si、B、Nd、La、Y等を0.05〜10重量%程度含有していてもよい。
【0089】
殊に、アルミニウムを含有した鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末を使用して本発明に係る磁気記録媒体を製造した場合には、より耐久性に優れた磁気記録層や磁気記録媒体を得ることができる。アルミニウムの含有量はFeに対してAl換算で0.05〜10重量%が好ましい。
【0090】
Feに対してAl換算で0.05重量%以上のアルミニウムを含有する鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末を使用して本発明に係る磁気記録媒体を製造した場合には、アルミニウムを含有する鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の樹脂吸着強度が向上するため、耐久性がより向上する。10重量%を超える場合には、磁気記録媒体は十分な耐久性を有しており、必要以上に存在させる意味がない。また、非磁性成分であるアルミニウムの増加により鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の磁気特性が損なわれる。
【0091】
なお、AlとNd、La、Y等の希土類金属とを含有している鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末を使用して、磁気記録媒体を製造した場合には、より耐久性に優れた磁気記録媒体を得ることができる。殊に、AlとNdとを含有している鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末がより好ましい。
【0092】
鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末は、平均長軸径が0.01〜0.5μm、好ましくは0.03〜0.3μmである。該粒子粉末の粒子の形状は針状が好ましい。ここで「針状」とは、文字通りの針状はもちろん、紡錘状や米粒状などを含む意味である。
【0093】
鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の軸比は3以上、好ましくは5以上であり、ビヒクル中における分散性を考慮すれば、その上限値は15であり、好ましくは10である。
【0094】
特に、アルミニウムを含有する鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の樹脂吸着強度は65%以上であり、好ましくは68%以上であり、より好ましくは70%以上である。
【0095】
鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末又は鉄合金磁性粒子粉末を用いた場合の磁気特性は、保磁力値が800〜3500Oe、好ましくは900〜3500Oe、飽和磁化値が90〜170emu/g、好ましくは100〜170emu/gである。
【0096】
結合剤樹脂としては、前記非磁性下地層を形成するために用いた結合剤樹脂を使用することができる。
【0097】
非磁性下地層上に設けられた磁気記録層の塗膜厚さは、0.01〜5μmの範囲である。0.01μm未満の場合には、均一な塗布が困難であり、塗りむら等の現象が出やすくなるため好ましくない。5μmを超える場合には、反磁界の影響のため、所望の電磁変換特性が得られにくくなる。好ましくは0.05〜1μmの範囲である。
【0098】
磁性粒子粉末と結合剤樹脂との配合割合は、結合剤樹脂100重量部に対し、磁性粒子粉末が200〜2000重量部、好ましくは300〜1500重量部である。
【0099】
磁気記録層中には、通常用いられる潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
【0100】
本発明に係る磁気記録媒体は、非磁性下地層用非磁性粒子粉末として表面被覆物によって被覆されていない本発明に係るアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末を用いた場合には、保磁力値が800〜3500Oe、好ましくは900〜3500Oe、角形比(残留磁束密度Br/飽和磁束密度Bm)が0.87〜0.95、好ましくは0.88〜0.95、塗膜の光沢度が200〜300%、好ましくは205〜300%、塗膜表面粗度Raが8.0nm以下、好ましくは2.0〜7.7nm、より好ましくは2.0〜7.2nm、塗膜の線吸収係数が1.20〜2.00μm−1、好ましくは1.25〜2.00μm−1、ヤング率が128〜160、好ましくは130〜160、耐久性のうち走行耐久性は24分以上、好ましくは26分以上、すり傷特性はB又はA、好ましくはA、耐腐蝕性のうち、保磁力値の変化率(%)で示す耐腐蝕性が10.0%以下、好ましくは9.5%以下、飽和磁束密度値の変化率(%)で示す耐腐蝕性が10.0%以下、好ましくは9.5%以下である。
【0101】
本発明に係る磁気記録媒体は、非磁性下地層用非磁性粒子粉末として表面被覆物によって被覆されている本発明に係るアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末を用いた場合には、保磁力値が800〜3500Oe、好ましくは900〜3500Oe、角形比(残留磁束密度Br/飽和磁束密度Bm)が0.87〜0.95、好ましくは0.88〜0.95、塗膜の光沢度が202〜300%、好ましくは207〜300%、塗膜表面粗度Raが7.8nm以下、好ましくは2.0〜7.5nm、より好ましくは2.0〜7.0nm、塗膜の線吸収係数が1.20〜2.00μm−1、好ましくは1.25〜2.00μm−1、ヤング率が130〜160、好ましくは132〜160、耐久性のうち走行耐久性は25分以上、好ましくは27分以上、すり傷特性はB又はA、好ましくはA、耐腐蝕性のうち、保磁力値の変化率(%)で示す耐腐蝕性が10.0%以下、好ましくは9.5%以下、飽和磁束密度値の変化率(%)で示す耐腐蝕性が10.0%以下、好ましくは9.5%以下である。
【0102】
磁気記録媒体の耐久性を考慮して、磁性粒子粉末としてアルミニウムを含有した鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末を用い、非磁性下地層用非磁性粒子粉末として表面被覆物によって被覆されていない本発明に係るアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末を用いた場合には、保磁力値が800〜3500Oe、好ましくは900〜3500Oe、角形比(残留磁束密度Br/飽和磁束密度Bm)が0.87〜0.95、好ましくは0.88〜0.95、塗膜の光沢度が202〜300%、好ましくは207〜300%、塗膜表面粗度Raが7.8nm以下、好ましくは2.0〜7.5nm、より好ましくは2.0〜7.0nm、塗膜の線吸収係数が1.20〜2.00μm−1、好ましくは1.25〜2.00μm−1、ヤング率が130〜160、好ましくは132〜160であり、耐久性のうち走行耐久性は25分以上、好ましくは27分以上、すり傷特性はB又はA、好ましくはA、耐腐蝕性のうち、保磁力値の変化率(%)で示す耐腐蝕性が10.0%以下、好ましくは9.5%以下、飽和磁束密度値の変化率(%)で示す耐腐蝕性が10.0%以下、好ましくは9.5%以下である。
【0103】
磁性粒子粉末としてアルミニウムを含有する鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末を用い、非磁性下地層用非磁性粒子粉末として表面被覆物によって被覆されている本発明に係るアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末を用いた場合には、保磁力値が800〜3500Oe、好ましくは900〜3500Oe、角形比(残留磁束密度Br/飽和磁束密度Bm)が0.87〜0.95、好ましくは0.88〜0.95、塗膜の光沢度が204〜300%、好ましくは209〜300%、塗膜表面粗度Raが7.6nm以下、好ましくは2.0〜7.2nm、より好ましくは2.0〜6.8nm、塗膜の線吸収係数が1.20〜2.00μm−1、好ましくは1.25〜2.00μm−1、ヤング率が132〜160、好ましくは134〜160であり、耐久性のうち走行耐久性は26分以上、好ましくは28分以上、すり傷特性はB又はA、好ましくはA、耐腐蝕性のうち、保磁力値の変化率(%)で示す耐腐蝕性が10.0%以下、好ましくは9.5%以下、飽和磁束密度値の変化率(%)で示す耐腐蝕性が10.0%以下、好ましくは9.5%以下である。
【0104】
なお、前記非磁性下地層及び前記磁気記録層の形成に当って用いる溶剤としては、磁気記録媒体に汎用されているメチルエチルケトン、トルエン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン及びその混合物等を使用することができる。
【0105】
溶剤の使用量は、粒子粉末100重量部に対しその総量で65〜1000重量部である。65重量部未満では塗料とした場合に粘度が高くなりすぎ塗布が困難となる。1000重量部を超える場合には、塗膜を形成する際の溶剤の揮発量が多くなりすぎ工業的に不利となる。
【0106】
【発明の実施の形態】
本発明の代表的な実施の形態は、次の通りである。
【0107】
粒子の平均長軸径、平均短軸径は、電子顕微鏡写真(×30,000)を縦方向及び横方向にそれぞれ4倍に拡大した写真に示される粒子約350個について長軸径、短軸径をそれぞれ測定し、その平均値で示した。
【0108】
軸比は、平均長軸径と平均短軸径との比で示した。
【0109】
粒子の長軸径及び短軸径(以下、「粒子径」という。)の粒度分布は、下記の方法により求めた幾何標準偏差値で示した。
【0110】
即ち、上記拡大写真に示される粒子の粒子径を測定した値を、その測定値から計算して求めた粒子の実際の粒子径と個数から統計学的手法に従って対数正規確率紙上に横軸に粒子径を、縦軸に所定の粒子径区間のそれぞれに属する粒子の累積個数(積算フルイ下)を百分率でプロットする。そして、このグラフから粒子の個数が50%及び84.13%のそれぞれに相当する粒子径の値を読みとり、幾何標準偏差値=積算フルイ下84.13%における粒子径/積算フルイ下50%における粒子径(幾何平均径)に従って算出した値で示した。幾何標準偏差値が1に近いほど、粒子の粒度分布が優れていることを意味する。
【0111】
比表面積値はBET法により測定した値で示した。
【0112】
アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末及び鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の粒子内部や粒子表面に存在するAl量、Si量及びP量のそれぞれは「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業(株)製)を使用し、JISK0119の「けい光X線分析通則」に従って測定した。
【0113】
粉体pH値は、試料5gを300mlの三角フラスコに秤り取り、煮沸した純水100mlを加え、加熱して煮沸状態を約5分間保持した後、栓をして常温まで放冷し、減量に相当する水を加えて再び栓をして1分間振り混ぜ、5分間静置した後、得られた上澄み液のpH値をJIS Z 8802−7に従って測定し、得られた値を粉体pH値とした。
【0114】
可溶性ナトリウム塩及び可溶性硫酸塩の含有量は、上記粉体pH値の測定用に作製した上澄み液をNo.5Cの濾紙を用いて濾過し、濾液中のNa+及びSO4 2−を「誘導結合プラズマ発光分光分析装置(セイコー電子工業株式会社製)」を用いて測定した。
【0115】
アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末の密度化の程度は、前述した通り、SBET/STEM値で示した。ここで、SBET値は、上記BET法により測定した比表面積の値である。STEM値は、前記電子顕微鏡写真から測定した粒子の平均長軸径lcm、平均短軸径wcmを用いて粒子を直方体と仮定して数1に従って算出した値である。
【0116】
【数1】
STEM値(m2/g)=〔(4lw+2w2)/(lw2・ρp)〕×10−4
(但し、ρpはへマタイト粒子粉末の真比重であり、5.2g/cm3を用いた。)
【0117】
樹脂吸着強度は、樹脂が粒子粉末に吸着される程度を示すものであり、下記の方法により求めた値(%)が100に近いほど、樹脂が粒子粉末の粒子表面に強く吸着されていることを示す。
【0118】
先ず、樹脂吸着量Waを求める。
被測定粒子粉末20gとスルホン酸ナトリウム基を有する塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂2gを溶解させた混合溶剤とを3mmφスチールビーズ120gとともに100mlポリビンに入れ、60分間ペイントシェーカーで混合分散する。
【0119】
次に、この塗料組成物50gを取り出し50mlの沈降管に入れ回転数10000rpmで15分間遠心分離を行い、固形部分と溶剤部分とを分離する。そして、溶剤部分に含まれる樹脂固形分濃度を重量法によって定量し、仕込みの樹脂量との差し引きにより、固形部分に存在する樹脂量を求め、これを粒子に対する樹脂吸着量Wa(mg/g)とする。
【0120】
次に、先に分離した固形部分のみを100mlトールビーカーに全量取り出し、これに混合溶剤(メチルエチルケトン25g、トルエン15g、シクロヘキサノン10g)50gを加え、15分間超音波分散を行って懸濁状態とした後、50ml沈降管に入れ回転数10000rpmで15分間遠心分離を行い、固形部分と溶剤部分とを分離する。そして、溶剤部分の樹脂固形分濃度を測定することによって、粒子表面に吸着していた樹脂のうち溶剤相に抽出された樹脂量を定量する。
【0121】
更に、上記固形部分のみの100mlトールビーカーへの全量取り出しから溶剤相に溶け出した樹脂量の定量までの操作を2回繰り返し、合計3回の溶剤相中における樹脂の抽出量の総和We(mg/g)を求め、数2に従って求めた値を樹脂吸着強度(%)とした。
【0122】
【数2】
樹脂吸着強度(%)=〔(Wa−We)/Wa〕×100
【0123】
塗料粘度は、得られた塗料の25℃における塗料粘度を、「E型粘度計EMD−R」(株式会社東京計器製)を用いて測定し、ずり速度D=1.92sec−1における値で示した。
【0124】
非磁性下地層及び磁気記録層の塗膜表面の光沢度は、「グロスメーターUGV−5D」(スガ試験機株式会社製)を用いて塗膜の45°光沢度を測定して求めた。
【0125】
表面粗度Raは、「Surfcom−575A」(東京精密株式会社製)を用いて塗布膜の中心線平均粗さを測定した。
【0126】
磁性粒子粉末及び磁気記録媒体の磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM−3S−15」(東英工業株式会社製)を使用し、外部磁場10KOeまでかけて測定した。
【0127】
磁気記録媒体の耐久性については、次に示す走行耐久性とすり傷特性を評価した。
【0128】
走行耐久性は、「Media Durability Tester MDT−3000」(Steinberg Associates社製)を用いて、負荷200gw、ヘッドとテープとの相対速度16m/sにおける実可動時間で評価した。実可動時間が長い程走行耐久性が良いことを示す。
【0129】
すり傷特性は、走行後のテープの表面を顕微鏡で観察し、すり傷の有無を目視で評価し、下記の4段階の評価を行った。
【0130】
A:すり傷なし
B:すり傷若干有り
C:すり傷有り
D:ひどいすり傷有り
【0131】
塗膜の強度は、「オートグラフ」(株式会社島津製作所製)を用いて塗膜のヤング率を測定して求めた。ヤング率は市販ビデオテープ「AV T−120」(日本ビクター株式会社製)との相対値で表した。相対値が高いほど塗膜の強度が良好であることを示す。
【0132】
磁気記録層中の鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の腐蝕に伴う磁気記録媒体の磁気特性の経時変化は、磁気記録媒体を温度60℃、相対湿度90%の環境下に14日間放置し、放置前後の保磁力値及び飽和磁束密度値を測定し、その変化量を放置前の値で除した値を変化率として百分率で示した。
【0133】
光透過の程度は、「自記分光光度計UV−2100」(株式会社島津製作所製)を用いて磁気記録媒体について測定した光透過率の値を下記式に挿入して算出した線吸収係数で示した。線吸収係数は、その値が大きいほど、光を透しにくいことを示す。光透過率の値を測定するにあたっては、上記磁気記録媒体に用いた非磁性支持体と同一の非磁性支持体をブランクとして用いた。
【0134】
線吸収係数(μm−1)=〔ln(1/t)〕/FT
t:λ=900nmにおける光透過率(−)
FT:測定に用いたフィルムの塗布層(非磁性下地層の膜厚と磁気記録層の膜厚との総和)の厚み(μm)
【0135】
磁気記録媒体を構成する非磁性支持体、非磁性下地層及び磁気記録層の各層の厚みは、次の通りの測定手法によって測定した。
【0136】
「デジタル電子マイクロメーターK351C」(安立電気株式会社製)を用いて、先ず、非磁性支持体の膜厚(A)を測定する。次に、非磁性支持体と該非磁性支持体上に形成された非磁性下地層との厚み(B)(非磁性支持体の厚みと非磁性下地層の厚みとの総和)を同様にして測定する。更に、非磁性下地層上に磁気記録層を形成することにより得られた磁気記録媒体の厚み(C)(非磁性支持体の厚みと非磁性下地層の厚みと磁気記録層の厚みとの総和)を同様にして測定する。そして、非磁性下地層の厚みは(B)−(A)で示し、磁気記録層の厚みは(C)−(B)で示した。
【0137】
<紡錘状ヘマタイト粒子粉末の製造>
硫酸第一鉄水溶液、炭酸ナトリウム水溶液及び硫酸アルミニウム水溶液を用いて得られた粒子内部にアルミニウムを均一に含有しているアルミニウム含有紡錘状ゲータイト粒子粉末(平均長軸径0.0846μm、長軸径の幾何標準偏差値1.49、平均短軸径0.0115μm、短軸径の幾何標準偏差値1.37、軸比7.4、BET比表面積値161.6m2/g、アルミニウム含有量(Al換算)2.12重量%、粉体pH値6.0、可溶性ナトリウム塩(Na換算)1168ppm及び可溶性硫酸塩(SO4換算)1712ppm)1200gを水中に懸濁させて懸濁液とし、固形分濃度を8g/lに調整した。この懸濁液150lを加熱し、温度を60℃とし、0.1NのNaOH水溶液を加えて懸濁液のpH値を10.0に調整した。
【0138】
次に、上記アルカリ性懸濁液中に、焼結防止剤として3号水ガラス42.0gを徐々に加え、添加が終わった後、60分間熟成を行った。次に、この懸濁液に0.1Nの酢酸溶液を加え、懸濁液のpH値を6.0に調整した。その後、常法により、濾別、水洗、乾燥、粉砕を行い、ケイ素の酸化物が粒子表面に被覆されているアルミニウム含有紡錘状ゲータイト粒子粉末を得た。ケイ素の含有量はSiO2換算で0.90重量%であった。
【0139】
得られたアルミニウム含有紡錘状ゲータイト粒子粉末を金属製の熱処理炉に入れ、140℃で30分間加熱処理を行い、アルミニウム含有紡錘状ゲータイト粒子粉末中に含まれるゲータイト超微粒子をアルミニウム含有紡錘状ゲータイト粒子に吸収させた。
【0140】
得られたアルミニウム含有紡錘状ゲータイト粒子粉末は平均長軸径0.0846μm、長軸径の幾何標準偏差値1.37、平均短軸径0.0116μm、短軸径の幾何標準偏差値1.22、軸比7.3、BET比表面積値162.9m2/g、粉体pH値7.2、可溶性ナトリウム塩(Na換算)792ppm及び可溶性硫酸塩(SO4換算)408ppm及びアルミニウム含有量(Al換算)2.12重量%であった。
【0141】
次いで、得られたアルミニウム含有紡錘状ゲータイト粒子粉末を再度、金属製の熱処理炉に入れ、340℃で30分間加熱脱水処理を行い、低密度アルミニウム含有紡錘状ヘマタイト粒子粉末を得た。得られた低密度アルミニウム含有紡錘状ヘマタイト粒子粉末は、平均長軸径0.0793μm、長軸径の幾何標準偏差値1.37、平均短軸径0.0119μm、短軸径の幾何標準偏差値1.23、軸比6.7、BET比表面積値181.0m2/g、SBET/STEM値2.60、粉体pH値5.9、可溶性ナトリウム塩(Na換算)1465ppm及び可溶性硫酸塩(SO4換算)1965ppmであった。アルミニウム含有量(Al換算)2.35重量%、ケイ素含有量(SiO2換算)0.99重量%であった。
【0142】
次に、上記低密度アルミニウム含有紡錘状ヘマタイト粒子粉末850gをセラミック製の回転炉に投入し、回転駆動させながら空気中650℃で30分間熱処理を行い、脱水孔の封孔処理を行った。高密度化されたアルミニウム含有紡錘状ヘマタイト粒子粉末は、平均長軸径が0.0753μm、長軸径の幾何標準偏差値が1.37、平均短軸径が0.0122μm、短軸径の幾何標準偏差値が1.24、軸比が6.2、BET比表面積値が83.8m2/g、SBET/STEM値が1.23、粉体pH値5.7、可溶性ナトリウム塩(Na換算)1612ppm及び可溶性硫酸塩(SO4換算)2101ppmであった。アルミニウム含有量(Al換算)2.35重量%、ケイ素含有量(SiO2換算)1.00重量%であった。
【0143】
<アルミニウム含有紡錘状ヘマタイト粒子粉末のアルカリ性懸濁液の加熱処理>得られたアルミニウム含有高密度紡錘状ヘマタイト粒子粉末800gを奈良式粉砕機で粗粉砕した後、純水4.7lに投入し、ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて60分間解膠した。
【0144】
次に、得られたアルミニウム含有高密度紡錘状ヘマタイト粒子粉末の懸濁液を横型SGM(ディスパマットSL:エスシー・アディケム株式会社製)で循環しながら、軸回転数2000rpmのもとで3時間混合・分散した。得られた懸濁液中のアルミニウム含有紡錘状ヘマタイト粒子粉末の325mesh(目開き44μm)における篩残分は0%であった。
【0145】
得られたアルミニウム含有紡錘状ヘマタイト粒子粉末の懸濁液に水を添加して濃度を50g/lとし、懸濁液を5lを採取した。この懸濁液を攪拌しながら、6NのNaOH水溶液を加えて懸濁液のpH値を13.8に調整した。次に、この懸濁液を攪拌しながら加熱して95℃まで昇温し、その温度で3時間保持した。
【0146】
次に、この懸濁液をデカンテーション法により水洗し、pH値が10.5の懸濁液とした。正確を期すため、この時点での懸濁液の濃度を確認したところ98g/lであった。
【0147】
次に、水洗した懸濁液1lをブフナーロートを用いて濾別し、純水を通水して濾液の電導度が30μs以下になるまで水洗し、その後、常法によって乾燥させた後、粉砕して、目的とするアルミニウム含有紡錘状ヘマタイト粒子粉末を得た。得られたアルミニウム含有紡錘状ヘマタイト粒子粉末は、平均長軸径0.0752μm、長軸径の幾何標準偏差値1.37、平均短軸径0.0122μm、短軸径の幾何標準偏差値1.24、軸比6.2、BET比表面積値(SBET)83.4m2/g、SBET/STEM値1.22、粉体pH値9.1、可溶性ナトリウム塩(Na換算)63ppm、可溶性硫酸塩(SO4換算)21ppm及び樹脂吸着強度が79.6%であった。
【0148】
<非磁性下地層の形成>
得られた高密度アルミニウム含有紡錘状ヘマタイト粒子粉末と結合剤樹脂及び溶剤とを混合し、固形分率72重量%でプラストミルを用いて30分間混練した。しかる後、所定量の混練物を取り出し、140mlガラスビンに1.5mmφガラスビーズ95g及び溶剤とともに添加し、ペイントコンディショナーで6時間混合・分散を行った。
【0149】
得られた非磁性塗料の組成は、下記の通りである。
アルミニウム含有紡錘状ヘマタイト粒子粉末: 100重量部、
スルホン酸ナトリウム基を有する
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂: 10重量部、
スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂: 10重量部、
シクロヘキサノン: 44.6重量部、
メチルエチルケトン: 111.4重量部、
トルエン: 66.9重量部。
【0150】
次いで、上記非磁性塗料を厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上にアプリケーターを用いて55μmの厚さに塗布し、次いで、乾燥させることにより非磁性下地層を形成した。
【0151】
得られた非磁性下地層の厚みは3.5μm、光沢は218%、表面粗度Raは6.2nm、ヤング率は135であった。
【0152】
<磁気記録層の形成>
鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末(平均長軸径0.110μm、平均短軸径0.0146μm、軸比7.5、長軸径の幾何標準偏差値1.38、保磁力値1943Oe、飽和磁化値132emu/g)と結合剤樹脂及び溶剤とを混合し、固形分率78重量%でプラストミルを用いて30分間混練して混練物を得た。この混練物を140mlガラスビンに1.5mmφガラスビーズ95g及び溶剤とともに添加し、ペイントコンディショナーで6時間混合・分散を行った。
【0153】
その後、研磨剤、潤滑剤及び硬化剤とを加え、更に、15分間混合・分散した。
【0154】
得られた磁性塗料の組成は下記の通りであった。
鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末: 100重量部、
スルホン酸ナトリウム基を有する
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂: 10重量部、
スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂: 10重量部、
研磨剤(AKP−30): 10重量部、
カーボンブラック #3250B: 1.0重量部、
潤滑剤(ミリスチン酸:ステアリン酸ブチル=1:2): 3.0重量部
、
硬化剤(ポリイソシアネート): 5重量部
、
シクロヘキサノン: 64.9重量部、
メチルエチルケトン: 162.2重量部、
トルエン: 97.3重量部。
【0155】
得られた磁性塗料を前記非磁性下地層の上にアプリケーターを用いて15μmの厚さに塗布した後、磁場中において配向・乾燥し、次いで、カレンダー処理を行った後、60℃で24時間硬化反応を行い0.5インチ幅にスリットして磁気テープを得た。
【0156】
磁気記録層の厚みは1.0μmであった。
【0157】
得られた磁気テープの保磁力値は1989Oe、角型比(Br/Bm)は0.88、光沢度は238%、表面粗度Raは5.8nm、塗膜の線吸収係数は1.27μm、ヤング率は136、耐久性のうち走行耐久性は30分以上、すり傷耐久性はAであった。
【0158】
磁気テープの磁気特性の経時変化は、保磁力値については2.8%、飽和磁束密度値は2.1%であった。
【0159】
【作用】
本発明において重要な点は、加熱脱水処理に先立って、アルミニウム含有針状ゲータイト粒子粉末を100〜200℃の温度範囲で加熱処理し、該ゲータイト粒子粉末を加熱脱水処理又は250〜500℃の加熱脱水処理及び焼きしめ処理を行ってアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末とした後、該アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末をアルカリ性懸濁液中で加熱処理することにより、粒子内部にアルミニウムを含有し、長軸径の幾何標準偏差値が1.50以下であって、短軸径の幾何標準偏差値が1.30以下である粒度が均斉な、殊に短軸径の粒度が均斉であって、且つ、粉体pH値が8.0以上、可溶性ナトリウム塩の含有量がNa換算で300ppm以下、可溶性硫酸塩の含有量がSO4換算で150ppm以下であるアルミニウム含有針状へマタイト粒子粉末を得ることができるという事実である。
【0160】
本発明に係る粒度が均斉なアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末が得られる理由について、本発明者は、アルミニウム含有針状ゲータイト粒子粉末を、100〜200℃の温度範囲で加熱処理することにより、アルミニウム含有ゲータイト超微粒子が針状ゲータイト粒子に吸収されるため、超微粒子成分が少なく、長軸径の粒度が均斉であるとともに短軸径の粒度も均斉であるアルミニウム含有針状ゲータイト粒子粉末が得られるとともに、アルミニウム含有ゲータイト超微粒子成分が減少することによって、その後の加熱脱水処理においてアルミニウム含有ゲータイト超微粒子に起因する粒子間の焼結が起こりにくいことにより、アルミニウム含有針状ゲータイト粒子の均斉な粒度を保持したアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末を得ることができるためと考えている。
【0161】
本発明に係る磁気記録媒体は、非磁性下地層用非磁性粒子粉末として本発明に係るアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末を用いた場合、表面平滑であって、強度が大きく、耐久性に優れ、且つ、磁気記録層中に分散されている鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の腐蝕に伴う磁気特性の劣化を抑制することができる。
【0162】
本発明に係る磁気記録媒体の表面平滑性が向上する理由について、本発明者は、本発明に係るアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末の長軸径の幾何標準偏差値が1.50以下、短軸径の幾何標準偏差値が1.30以下であり、粗大な粒子や微細な粒子の存在が少ない均斉な粒子であること、BET比表面積値が40〜180m2/gであり、粒子内部及び粒子表面に脱水孔が少ない粒子であること及びアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子相互を強固に架橋して凝集させる原因となっている可溶性ナトリウム塩や可溶性硫酸塩を十分水洗除去することができたことに起因して、凝集物が解きほぐされて、実質的に独立した粒子とすることができることの相乗効果により、得られる非磁性下地層の表面平滑性が更に向上したものと考えている。そのため、非磁性下地層の上に形成される磁気記録層の表面平滑性も向上し、その結果、磁気記録媒体の表面平滑性がより向上したものと考えている。
【0163】
また、非磁性支持体上に設けられた非磁性下地層の強度を向上させ、磁気記録媒体の耐久性が向上した理由については未だ明らかではないが、本発明者は、針状へマタイト粒子粉末の粒子内部にアルミニウムが含有されていることに起因して、非磁性下地層中に含有されているアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末と結合剤樹脂との樹脂吸着強度が向上し、その結果、非磁性下地層と非磁性支持体及び磁気記録層との密着度が高まったことによるものと考えている。
【0164】
また、本発明に係る磁気記録媒体の磁気記録層中に分散されている鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の腐蝕に伴う磁気特性の劣化が抑制されている理由として、本発明者は、金属の腐蝕を促進する可溶性ナトリウム塩や可溶性硫酸塩等の可溶性分がアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末中に少ないこと及びアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末自体の粉体pH値が8.0以上と高いことに起因して、鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の腐蝕の進行が抑制できたものと考えている。
【0165】
【実施例】
次に、実施例並びに比較例を挙げる。
【0166】
ゲータイト粒子1及び2
出発原料粒子粉末として、表1に示す特性を有するアルミニウム含有針状ゲータイト粒子粉末1及び2を準備した。
【0167】
【表1】
【0168】
ゲータイト粒子3〜5
出発原料粒子粉末の種類、焼結防止剤の種類及び量を種々変化させた以外は、前記発明の実施の形態と同様にして焼結防止処理を行ったアルミニウム含有針状ゲータイト粒子粉末を得た。
【0169】
得られたアルミニウム含有針状ゲータイト粒子粉末の諸特性を表2に示す。
【0170】
【表2】
【0171】
<加熱処理>
ゲータイト粒子6〜9
ゲータイト粒子粉末の種類、加熱処理における温度及び時間を種々変化させた以外は前記発明の実施の形態と同様にしてアルミニウム含有針状ゲータイト粒子粉末6〜9を得た。
【0172】
この時の主要製造条件を表3に、得られたアルミニウム含有針状ゲータイト粒子粉末の諸特性を表4に示す。
【0173】
【表3】
【0174】
【表4】
【0175】
<低密度アルミニウム含有針状へマタイト粒子粉末の製造>
ヘマタイト粒子1〜4
ゲータイト粒子粉末の種類及び加熱脱水処理における温度及び時間を種々変化させた以外は前記発明の実施の形態と同様にして低密度アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末1〜4を得た。
【0176】
この時の主要製造条件を表5に、得られた低密度アルミニウム含有針状へマタイト粒子粉末の諸特性を表6に示す。
【0177】
【表5】
【0178】
【表6】
【0179】
<高密度アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末の製造>
実施例1〜4及び比較例1〜5
被処理粒子粉末の種類、高温加熱処理における温度及び時間を種々変化させた以外は前記発明の実施の形態と同様にしてアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末を得た。
【0180】
この時の主要製造条件を表7に、得られたアルミニウム含有針状へマタイト粒子粉末の諸特性を表8に示す。
【0181】
【表7】
【0182】
【表8】
【0183】
<アルカリ性懸濁液中の加熱処理>
実施例5〜8及び参考例1、2
被処理粒子粉末の種類、アルカリ性懸濁液中加熱処理のpH値、温度及び時間を種々変化させた以外は前記発明の実施の形態と同様にしてアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末を得た。
【0184】
この時の主要製造条件を表9に、得られたアルミニウム含有針状へマタイト粒子粉末の諸特性を表10に示す。
【0185】
【表9】
【0186】
【表10】
【0187】
比較例6 (特願平10−116046号公報の追試実験例)
<高密度アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末の製造>
ゲータイト粒子粉末5(出発原料粒子粉末)1000gを、ステンレス製回転炉に投入し、回転駆動させながら空気中で320℃で30分間熱処理を行って加熱脱水し、低密度アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末を得た。
【0188】
得られた低密度アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末は、平均長軸径が0.0851μm、長軸径の幾何標準偏差値が1.51、平均短軸径が0.0132μm、短軸径の幾何標準偏差値が1.41、軸比が6.4、BET比表面積値が206.5m2/g、SBET/STEM値が3.29、粉体pH値5.6、可溶性ナトリウム塩(Na換算)1021ppm及び可溶性硫酸塩(SO4換算)314ppmであった。アルミニウム含有量(Al換算)1.44重量%、ケイ素含有量(SiO2換算)1.21重量%であった。
【0189】
次に、上記低密度アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末850gをセラミック製の回転炉に投入し、回転駆動させながら空気中610℃で30分間熱処理を行い、脱水孔の封孔処理を行った。
【0190】
高密度化されたアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末は、平均長軸径が0.0835μm、長軸径の幾何標準偏差値が1.51、平均短軸径が0.0134μm、短軸径の幾何標準偏差値が1.41、軸比が6.2、BET比表面積値が71.6m2/g、SBET/STEM値が1.15、粉体pH値4.3、可溶性ナトリウム塩(Na換算)1283ppm及び可溶性硫酸塩(SO4換算)1865ppmであった。アルミニウム含有量(Al換算)1.45重量%、ケイ素含有量(SiO2換算)1.23重量%であった。
【0191】
得られた高密度アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末800gを奈良式粉砕機で粗粉砕した後、純水4.7lに投入し、ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて60分間解膠し、懸濁液を横型SGM(ディスパマットSL:エスシー・アディケム株式会社製)で循環しながら、軸回転数2000rpmのもとで3時間分散した。得られた懸濁液中の高密度アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末の325mesh(目開き44μm)における篩残分は0%であった。
【0192】
<高密度アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末の酸による溶解処理>
得られた高密度アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末の懸濁液に水を添加して該懸濁液の濃度を100g/lとした後、当該懸濁液を7l採取した。採取した懸濁液を攪拌しながら、70重量%の硫酸水溶液を加えて硫酸濃度を1.3Nとし、懸濁液のpH値を0.59に調整した。次に、この懸濁液を攪拌しながら加熱して80℃まで昇温し、その温度で3時間保持して溶解処理を行って、液中に存在している高密度アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末全体量の20.8重量%を溶解させた。
【0193】
次に、この懸濁液を濾過して濾液(硫酸鉄の酸性水溶液)を分離した後、デカンテーション法により水洗し、pH値が5.0の懸濁液とした。この時点での懸濁液の濃度を確認したところ79g/lであった。
【0194】
次に、得られた懸濁液2lをブフナーロートを用いて濾別し、純水を通水して濾液の電導度が30μs以下になるまで水洗し、その後、常法によって乾燥させた後、粉砕して、高密度針状ヘマタイト粒子粉末を得た。
【0195】
得られた高密度針状ヘマタイト粒子粉末は、平均長軸径が0.0791μm、長軸径の幾何標準偏差値が1.46、平均短軸径が0.0131μm、短軸径の幾何標準偏差値が1.33、軸比が6.0、BET比表面積値が74.2m2/g、SBET/STEM値が1.17、粉体pH値4.6、可溶性ナトリウム塩(Na換算)158ppm及び可溶性硫酸塩(SO4換算)516ppmであった。アルミニウム含有量(Al換算)1.40重量%、ケイ素含有量(SiO2換算)1.24重量%であった。
【0196】
<アルカリ性懸濁液中の加熱処理>
上記酸による溶解処理後のアルミニウム含有紡錘状ヘマタイト粒子粉末の懸濁液に水を添加して濃度を50g/lとし、懸濁液5lを採取した。この懸濁液を攪拌しながら、6NのNaOH水溶液を加えて懸濁液のpH値を13.6に調整した。次に、この懸濁液を攪拌しながら加熱して95℃まで昇温し、その温度で3時間保持した。
【0197】
次に、この懸濁液をデカンテーション法により水洗し、pH値が10.5の懸濁液とした。正確を期すため、この時点での懸濁液の濃度を確認したところ98g/lであった。
【0198】
次に、得られた懸濁液1lをブフナーロートを用いて濾別し、純水を通水して濾液の電導度が30μs以下になるまで水洗し、その後、常法によって乾燥させた後、粉砕して、目的とするアルミニウム含有紡錘状ヘマタイト粒子粉末を得た。
【0199】
得られたアルミニウム含有紡錘状ヘマタイト粒子粉末は、平均長軸径が0.0791μm、長軸径の幾何標準偏差値が1.46、平均短軸径が0.0130μm、短軸径の幾何標準偏差値が1.33、軸比が6.1、BET比表面積値が74.0m2/g、SBET/STEM値が1.16、粉体pH値が9.1、可溶性ナトリウム塩の含有量(Na換算)112ppm、可溶性硫酸塩の含有量(SO4換算)24ppmであった。アルミニウム含有量(Al換算)1.40重量%、ケイ素含有量(SiO2換算)1.23重量%であった。
【0200】
<表面被覆処理>
実施例9
実施例4で得られたアルミニウム含有針状へマタイト粒子粉末700gを奈良式自由粉砕機で粗粉砕した後、純水7lに投入し、ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて60分間邂逅した。次に、得られたアルミニウム含有針状へマタイト粒子粉末の懸濁液を横形サンドグラインダー「ディスパマットSL」(エスシー・アディケム株式会社製)を用いて軸回転数2000rpmのもとで6時間混合・分散して、アルミニウム含有針状へマタイト粒子粉末の懸濁液を得た。該懸濁液のpH値を、0.1N酢酸水溶液を用いて4.0に調製した。次に、当該懸濁液に水を加え懸濁液の濃度を45g/lに調製した。この懸濁液10lを加熱して60℃とし、この懸濁液中に1.0mol/lの酢酸アルミニウム溶液500ml(針状へマタイト粒子粉末に対してAl換算で3.0重量%に相当する)を加え、30分間保持した後、0.1N水酸化ナトリウム溶液を用いてpH値を7.0に調製した。この状態で30分間保持した後、濾過、水洗、乾燥、粉砕して粒子表面がAlの水酸化物によって被覆されているアルミニウム含有針状へマタイト粒子粉末を得た。
【0201】
この時の主要製造条件を表11に、得られたアルミニウム含有針状へマタイト粒子の諸特性を表12に示す。
【0202】
実施例10〜12
被処理粒子粉末の種類、被覆工程の添加前pH値、添加物種類、添加量及び最終pH値を種々変化させた以外は前記実施例9と同様にして表面被覆物によって被覆されたアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末を得た。
【0203】
この時の主要製造条件を表11に、得られた表面被覆物によって被覆されたアルミニウム含有針状へマタイト粒子粉末の諸特性を表12に示す。
【0204】
【表11】
【0205】
【表12】
【0206】
<非磁性下地層の製造>
実施例13〜20、比較例7〜12及び参考例3、4
実施例5〜12、比較例1〜6及び参考例1、2で得られた各粒子粉末を用いて前記発明の実施の形態と同様にして非磁性下地層を形成した。
【0207】
この時の主要製造条件及び得られた非磁性下地層の諸特性を表13に示す。
【0208】
【表13】
【0209】
<磁気記録媒体の製造>
磁性粒子(a)〜(d)
磁気記録媒体用磁性粒子として磁性粒子(a)〜(d)を用意した。
【0210】
磁性粒子(a)〜(d)の諸特性を表14に示す。
【0211】
【表14】
【0212】
実施例21〜32及び比較例13〜18
非磁性下地層の種類及び磁性粒子の種類を種々変化させた以外は前記発明の実施の形態と同様にして磁気記録媒体を得た。
【0213】
この時の主要製造条件及び得られた磁気記録媒体の諸特性を表15及び表16に示す。
【0214】
【表15】
【0215】
【表16】
【0216】
【発明の効果】
本発明に係るアルミニウム含有針状へマタイト粒子粉末は、非磁性下地層用非磁性粒子粉末として用いた場合、表面平滑で、強度が大きく、耐久性に優れた非磁性下地層を得ることができ、該非磁性下地層を用いて磁気記録媒体とした場合、表面平滑で強度が大きく、耐久性に優れ、且つ、磁気記録層中に分散されている鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の腐蝕に伴う磁気特性の劣化が抑制された磁気記録媒体を得ることができるため、高密度磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末として好適である。
【0217】
また、本発明に係る磁気記録媒体は、上述した通り、表面平滑で強度が大きく、耐久性に優れているとともに、磁気記録層中に分散されている鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末の腐蝕に伴う磁気特性の劣化が抑制されているので高密度磁気記録媒体として好適である。
Claims (4)
- 粒子内部にAl換算で0.05〜50重量%のアルミニウムを含有し、長軸径の幾何標準偏差値が1.50以下であって短軸径の幾何標準偏差値が1.30以下であり、BET比表面積値が40〜180m2/gであり、且つ、粉体pH値が8.0以上、可溶性ナトリウム塩の含有量がNa換算で300ppm以下、可溶性硫酸塩の含有量がSO4換算で150ppm以下である、平均長軸径が0.01〜0.2μmのアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末からなることを特徴とする磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末。
- 請求項1記載のアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末の粒子表面が、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれる少なくとも一種からなる表面被覆物によって被覆されていることを特徴とする磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末。
- 粒子内部にAl換算で0.05〜50重量%のアルミニウムを含有しているアルミニウム含有針状ゲータイト粒子粉末を550〜850℃の温度範囲で加熱脱水処理してアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末とするに当って、前記加熱脱水処理に先立ってあらかじめ、前記アルミニウム含有針状ゲータイト粒子粉末を100〜200℃の温度範囲で加熱処理して該アルミニウム含有針状ゲータイト粒子粉末に含まれているアルミニウム含有ゲータイト超微粒子をアルミニウム含有針状ゲータイト粒子に吸収させておき、550〜850℃の温度範囲で加熱脱水してアルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末を得、次いで、該アルミニウム含有針状ヘマタイト粒子粉末を水溶液中へ分散させた水性懸濁液にアルカリ水溶液を添加してpH値を13.0以上に調製し、80〜103℃の温度範囲で加熱処理した後、濾過、水洗、乾燥することを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体の非磁性下地層用非磁性粒子粉末の製造法。
- 非磁性支持体、該非磁性支持体上に形成される非磁性粒子粉末と結合剤樹脂とからなる非磁性下地層及び該非磁性下地層の上に形成される磁性粒子粉末と結合剤樹脂とからなる磁気記録層からなる磁気記録媒体において、前記非磁性粒子粉末が請求項1又は請求項2記載の非磁性下地層用非磁性粒子粉末であることを特徴とする磁気記録媒体。
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