JP5457260B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents

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本発明は塗布型の磁気記録媒体に関する。特に本発明は、軟磁性層と前記軟磁性層上に垂直方向に磁化容易軸を有する強磁性層とを備えた塗布型の磁気記録媒体に関する。
磁性粉末が結合剤中に分散された磁性層を有する塗布型の磁気記録媒体は、アナログ方式からデジタル方式への記録再生方式の移行に伴い、記録密度の一層の向上が要求されている。特に、高密度デジタルビデオテープやコンピュータバックアップテープなどに用いられる磁気記録媒体においては、この要求が年々高まってきている。
このような記録密度の向上にあたり、短波長記録に対応するため、年々磁性粉末の微粒子化が図られており、現在では0.1μm程度の長軸長を有する針状の鉄系金属磁性粉末が実用化に供されている。また、短波長記録時の減磁による出力低下を防止するため、年々磁性粉末の高保磁力化が図られてきている。例えば、鉄−コバルト合金化により、199.0kA/m程度の保磁力を有する鉄系金属磁性粉末が実現されている(特許文献1)。しかしながら、これらの針状粒子を用いる磁気記録媒体では保磁力が磁性粉末の形状に依存することから、上記長軸長からの大幅な微粒子化は困難になってきているのが現状である。
また、高密度記録化を目的として記録波長を短縮化していった場合、短波長領域においては従来の磁性粉末の飽和磁化や保磁力のレベルでは出力が数分の1程度しか得られないという問題だけでなく、記録再生時の自己減磁損失や磁性層の厚さに起因する厚み損失の影響が大きくなり、十分な分解能が得られないという問題がある。このためコンピュータバックアップテープであるLTO(Linear Tape Open)やDLT(Digital Linear Tape)などでは、磁性層の厚みを低減することを目的として、下層に非磁性層を設け、上層に0.2μm程度の厚さを有する磁性層を設けた重層構成の磁気記録媒体が実用に供されている。
一方、上記のような磁気記録媒体は長手方向に磁性粉末を配向させているが、再生出力を向上するため、従来から磁性層の残留磁化の垂直成分が面内成分より大きくなるように垂直方向に磁性粉末を配向させ、磁化容易軸を垂直方向に有する磁性層を設けた磁気記録媒体が提案されている(例えば、特許文献2〜4)。磁性粉末を垂直配向させた磁気記録媒体は記録ビットの境界である磁化遷移領域付近の反磁界が小さく、また自己減磁も小さいため、高出力が得られるというメリットがある。しかしながら、従来の針状の磁性粉末は塗布時の機械配向によって長手方向に配向しやすいことから、磁性粉末を垂直配向させることは困難であり、また垂直配向によって磁性粉末が磁性層表面から突出し、磁性層の表面性が低下しやすい。従って、針状の磁性粉末の長軸長と磁性層の厚さとが同レベルとなるような磁性層厚さの領域では、針状の磁性粉末を垂直配向させることは本質的に適さない。このため、塗布型の磁気記録媒体においてはこれまで磁性粉末を垂直配向させた磁気記録媒体は商品化されていないのが実情である。
そこで、本出願人は、低保磁力磁性粉末を含有する低保磁力層と、該低保磁力層上に5〜50nmの粒径を有する粒状の窒化鉄系磁性粉末を垂直配向させた薄層(例えば、150nm以下)の上層磁性層とを備えた磁気記録媒体を先に提案した(特許文献5)。この磁気記録媒体によれば、上層磁性層が高保磁力、高飽和磁化を有する微粒子で粒状の窒化鉄系磁性粉末を含有するため、上層磁性層の厚みが薄い場合でも、表面平滑性に優れた上層磁性層を得ることができ、再生出力に優れた磁気記録媒体を得ることができる。
特開平3−49026号公報 特開昭57−183626号公報 特開昭59−167854号公報 特開平2−254621号公報 特開2004−335019号公報
ところで、コンピュータ用データ記録システムには、記録情報の再生を行う際に用いる磁気ヘッドとして、従来の誘導型ヘッドに代わり、磁気抵抗効果型磁気ヘッド(MRヘッド)、異方性磁気抵抗効果型磁気ヘッド(AMRヘッド)、巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッド(GMRヘッド)、あるいはトンネル磁気抵抗効果型磁気ヘッド(TMRヘッド)などの高感度の磁気ヘッド(以下、総称してMR系ヘッドという)の適用が検討されてきている。このようなMR系ヘッドを使用したシステムにおいてはシステムに起因するノイズの大幅な低減が可能であることから、磁気記録媒体に由来する媒体ノイズがシステムのSNR(Signal Noise Ratio)を支配する。従って、上記のような垂直記録に好適な磁性粉末を用いた磁気記録媒体も高出力化と同時に、より低ノイズ化を図る必要がある。
二層垂直磁気記録媒体特有のノイズとして、軟磁性層起因のスパイクノイズがある。これは強磁性層と軟磁性層の界面の乱れにより突発的に発生し、ノイズ電圧が高いことが特徴である。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、粒状の強磁性粉末を使用して垂直方向に磁化容易軸を有する薄層の強磁性層を設けた塗布型の磁気記録媒体において、再生出力に優れ、スパイクノイズが低減された磁気記録媒体を提供することにある。
スパイクノイズ低減の為には、強磁性層/軟磁性層界面の変動を小さくすることが重要であるが、塗布型の磁気記録媒体でこれを実現するためには、強磁性層と軟磁性層に使用している磁性粉末の粒径及び軸比を実質的に等しくすることが有効である。これは物理的な形状をほぼ等しくすることにより、両層の界面変動をきわめて均一にすることが出来、界面由来と考えられているスパイクノイズを大きく低減することが出来るからである。
本発明は以上の知見をもとにして完成されたものである。すなわち本発明は、非磁性支持体と、前記非磁性支持体上に少なくとも軟磁性層と強磁性層とをこの順で有する磁気記録媒体であって、前記軟磁性層は粒状のFe系軟磁性粉末及び結合剤を含有し、前記軟磁性粉末の飽和磁化は70〜220Am2/kg、平均粒径duは5〜30nm、平均軸比juは1〜2であり、前記強磁性層は粒状の強磁性粉末及び結合剤を含有し、前記強磁性粉末の平均粒径drは5〜30nm、平均軸比jrは1〜2であり、前記軟磁性粉末の平均粒径duと前記強磁性粉末の平均粒径drの比dr/duが0.95〜1.05であり、前記軟磁性粉末の平均軸比juと前記強磁性粉末の平均軸比jrの比jr/juが0.95〜1.05であることを特徴とする磁気記録媒体(請求項1)と、前記強磁性粉末が窒化鉄系強磁性粉末であり、前記軟磁性粉末が該強磁性粉末の原材料である、請求項1に記載の磁気記録媒体(請求項2)と、前記強磁性層は実質的に垂直方向に磁化容易軸を有し、垂直カー回転角を測定したときに0.70〜0.98の垂直方向の角型を有する請求項1〜2いずれかに記載の磁気記録媒体(請求項3)とからなる。
本発明によれば、再生出力に優れ、スパイクノイズが低減された磁気記録媒体を提供することができる。
本実施の形態の磁気記録媒体は、平均粒径drが5〜30nm、平均軸比jrが1〜2である粒状の強磁性粉末を含有し、垂直方向に磁化容易軸を有する薄層の強磁性層と、該強磁性層の下に飽和磁化が70〜220Am2/kg、平均粒径duが5〜30nm、平均軸比juが1〜2粒状であるFe系軟磁性粉末を含有する軟磁性層とを備える。さらに強磁性層に用いる強磁性粉末と、軟磁性層に用いる軟磁性粉末の大きさと物理的形状がほぼ等しく、平均粒径の比dr/duが0.95〜1.05であり、平均軸比の比jr/juが0.95〜1.05となる。
塗布型の磁気記録媒体において、粒子性ノイズは磁性粉末の充填量で比較すると、記録ビット内に存在する磁性粉末の個数が多くなるほど低くなる。従って、粒子性ノイズを低減するためには、微粒子の磁性粉末を使用して磁性層中の磁性粉末の充填性を向上することが有効である。特許文献5に記載されている窒化鉄系磁性粉末は5〜50nmの粒径を有する微粒子の磁性粉末であるため、上記の点からも好ましい。
しかしながら、粒径を小さくしていくと磁性粉末における磁気的な熱揺らぎが大きくなる。これに起因して磁性粉末の保磁力の低下、保磁力分布が広くなるといった磁気特性の劣化が起こってしまう。粒子性ノイズを下げつつこの磁気特性の劣化を補うためには、垂直磁気記録媒体を構成することが有効である。塗布型の垂直磁気記録媒体としては、非磁性支持体上に少なくとも軟磁性層と強磁性層とをこの順で有し、この軟磁性層は軟磁性粉末と結合剤を含有し、また強磁性層は粒状の強磁性粉末と結合剤を含有する構成をとる。
ところで二層の磁気層を設ける上記記録媒体は、両者を適切に制御しなければノイズの増加を招き、SNRをむしろ低下させてしまうことが知られている。特に強磁性層と軟磁性層の界面が均一でなければ、スパイクノイズと呼ばれる、突発的に発生する電圧レベルの高いノイズの発生を招いてしまう。従って塗布型二層垂直磁気記録媒体においては、強磁性層/軟磁性層界面の平滑化が必須となってくる。
上記観点から本発明者等は、粒状の強磁性粉末と粒状の軟磁性粉末による垂直磁気記録媒体の、強磁性層/軟磁性層界面を低減することを目的として検討を行った結果、強磁性層に用いる粒状の強磁性層粉末と、粒径、軸比が実質的に等しい粒状のFe系軟磁性粉末を軟磁性層に用い、更にFe系軟磁性粉末の飽和磁化を特定の範囲とすれば、スパイクノイズが格段に低減されることを見出した。軟磁性粉末がFeを基本とした材料である理由は必ずしも明らかではないが、5〜30nmという微粒子において適切な軟磁性特性を示す材料として、Feが最適であるからと考えられる。
また特に強磁性層に窒化鉄系強磁性粉末を用いる場合、軟磁性層に使用するFe系軟磁性粉末は、この窒化鉄系強磁性粉末の原材料であることが好ましい。特許文献5でも開示されているように、5〜30nmの金属鉄微粒子を窒化することによって、磁気記録媒体用に最適な窒化鉄系強磁性粉末が得られる。窒化において焼結などによる物理形状の変化は少ないことが分かっているので、原材料のFe系軟磁性粉末と窒化後の窒化鉄系強磁性粉末の物理形状はほぼ同等になると考えて良い。従って本発明のように強磁性層と軟磁性層に用いる磁性粉末の物理形状が実質的に等しくするためには、この窒化鉄系強磁性粉末とその原材料となるFe系軟磁性層粉末の組み合わせは最適である。
本実施の形態において、強磁性層は粒状の強磁性粉末を含有する。上記粒状の強磁性粉末の粒径drは5〜30nmであることが好ましく、8〜30nmがより好ましく、10〜25nmがさらに好ましい。このような微粒子の強磁性粉末を用いることにより粒子性ノイズを低減し、SNRを向上することができる。なお強磁性粉末の粒径は、球状の強磁性粉末の場合は直径を、楕円体状の強磁性粉末の場合は長軸径を、板状の強磁性粉末の場合は最も長い板径をそれぞれ意味する。
高出力化を目的として磁性層の垂直方向に磁化容易軸を有する塗布型の磁気記録媒体を得るためには、強磁性粉末の物理的形状に異方性のない球状のものを用いるのが理想的である。しかしながら既述したように、従来の鉄系金属磁性粉末などの針状の強磁性粉末は、保磁力が形状磁気異方性に依存するため、本質的に軸比の小さい粒状の強磁性粉末とすることが困難である。
このため本実施の形態においては、上層の強磁性粉末として異方性の小さい粒状の強磁性粉末、例えば、窒化鉄系磁性粉末やCo系磁性粉末などの略球状ないし略楕円体状の強磁性粉末や、バリウムフェライト系磁性粉末などの板状の強磁性粉末が用いられる。これらの軸比の小さい粒状の強磁性粉末を垂直配向させることにより垂直方向に磁化容易軸を有する強磁性層を得ることができる。強磁性粉末の軸比jrは1〜2が好ましく、1.0〜1.2がより好ましい。強磁性粉末の軸比が2.0より大きいと、強磁性粉末が垂直配向されにくくなり、短波長記録において再生出力が低下する。なお強磁性粉末の軸比は楕円体状の強磁性粉末の場合、長軸径/短軸径を、板状の強磁性粉末の場合、板径/板面の最も短い板径を意味する。
これらの中でも窒化鉄系磁性粉末及びCo系磁性粉末は優れた結晶磁気異方性を有するため、異方性の小さい略球状ないし略楕円体状の形状を有する強磁性粉末であっても、高保磁力を有している。また結晶磁気異方性により、これらの強磁性粉末を垂直配向させても、磁化容易軸が垂直方向に揃うだけで、強磁性層の表面平滑性が劣化せず、5〜150nmの厚さを有する薄層の強磁性層であっても、高密度記録に適した優れた表面平滑性を有する強磁性層が得られる。
また強磁性粉末の粒径変動率を粒径分布の標準偏差/平均値で定義した場合、11%〜20%が好ましく、19%以下がさらに好ましい。粒径と同様に強磁性粉末の製造の容易さを考慮すれば、通常粒径変動率は11%以上である。
本明細書において、磁性粉末の粒径は透過型電子顕微鏡(TEM)により倍率20万倍で撮影した磁性粉末100個の粒径の平均値である。また軸比は100個の軸比の平均値である。また磁気記録媒体から粒径と軸比を求める場合、走査型電子顕微鏡(SEM)により試料断面を10万倍で観察し、その画像からとらえられる粒子に対して前記磁性粉末の粒径の評価方法と同じ評価方法を用いることにより求めることができる。
強磁性粉末のBET比表面積は40〜200m2/gが好ましく、50〜200m2/g以上がより好ましく、60〜200m2/g以上がさらに好ましい。BET比表面積が40m2/gより小さいと、保磁力が低下しやすい。BET比表面積が200m2/gを超えると、塗料分散性が低下したり、化学的に不安定になったりする場合がある。
強磁性粉末の保磁力は119.4〜318.5kA/mが好ましく、飽和磁化は70〜160Am2/kgが好ましい。上記のような高保磁力、高飽和磁化の強磁性粉末を用いることにより、短波長記録において高い再生出力を得ることができる。
磁性粉末の飽和磁化及び保磁力は、試料振動型磁力計を使用して、25℃下、印加磁界1273.3kA/mで測定したときの基準試料による補正後の値である。また磁気記録媒体から軟磁性層のFe系軟磁性粉末の磁気特性を測定する方法としては、磁気記録媒体のヒステリシスループを用いて、フィッティングによって算出することができる。具体的には、まず磁気記録媒体のヒステリシスループを、軟磁性層と強磁性層の成分に分解する。ヒステリシスの磁化測定値を磁場で微分すると、2つのピークをもつ曲線になる。ピークは軟磁性層と強磁性層のそれぞれに対応するので、両者をローレンツ曲線でフィッティングすることができる。計算によって求めた2つのローレンツ曲線の和と測定値の各点における自乗平均誤差を求め、この平均値が10%以内になるようにフィッティングを行い、パラメータを算出する。それぞれのフィッティング曲線を積分することによって、軟磁性層と強磁性層それぞれのヒステリシスループを作成することができる。このようにして得られた軟磁性層のヒステリシスループから、飽和磁化及び軟磁性粉末の保磁力に対応する保磁力を算出することができる。次に単位体積あたりの粉末の個数を断面写真で粉末個数を数えることで算出し、この単位体積あたりの個数と飽和磁化から、磁性粉末の飽和磁化量を算出することができる。
本実施の形態において、強磁性粉末として窒化鉄系磁性粉末を用いる場合、Fe16相を主相として含有する窒化鉄系磁性粉末が好ましい。結晶性の高いFe16相を主相として含有させることにより、保磁力及び飽和磁化を向上することができる。このようなFe16相を主相として含有する粒状の窒化鉄系磁性粉末は、例えば特開2000−277311号公報に記載されている。また、このような窒化鉄系磁性粉末の中でも、鉄に対して窒素を1〜20原子%含有する窒化鉄系磁性粉末が好ましい。
窒化鉄系磁性粉末は、鉄の一部が他の遷移金属元素で置換されていてもよい。このような他の遷移金属元素としては、具体的には、例えば、Mn、Zn、Ni、Cu、Coなどが挙げられる。これらは単独でまたは複数含有されていてもよい。これらの中でも、Co、Niが好ましく、特にCoは飽和磁化を最も向上できるので、好ましい。ただしCoの含有量は鉄に対して10原子%以下が好ましい。Coの含有量が多くなりすぎると、窒化に長時間を要する傾向がある。
また、Fe16相を主相とする窒化鉄を主として内層部分として含有し、希土類元素を主として含有する外層部分とを有する2層構成の窒化鉄系磁性粉末としてもうよい。このように希土類元素を含有する窒化鉄系磁性粉末は、高保磁力でありながら高い分散性や優れた形状維持性を示すため好ましい。このような希土類元素としては、具体的には、例えば、イットリウム、イッテルビウム、セシウム、プラセオジウム、ランタン、ユーロピウム、ネオジウムなどが挙げられる。これらは単独でまたは複数含有されていてもよい。これらの中でも、イットリウム、サマリウム、及びネオジウムは還元時の粒子形状の維持効果が大きいため好ましい。希土類元素の含有量は、鉄に対し総含有量で、0.05〜20原子%が好ましく、0.1〜15原子%がより好ましく、0.5〜10原子%が最も好ましい。希土類元素が少なすぎると、分散性の向上効果が少なくなり、また還元時の粒子形状維持効果が小さくなる。希土類元素が多すぎると、未反応の希土類元素部分が多くなり、分散、塗布工程での障害となったり、保磁力や飽和磁化の過度な低下を引き起こしやすい。
さらに窒化鉄系磁性粉末は、ホウ素、シリコン、アルミニウム、リンを含有してもよい。このような元素を含有することにより、高分散性の窒化鉄系磁性粉末が得られる。これらの元素は、希土類元素に比べて安価であるため、コスト的にも有利である。これらの元素の含有量は、鉄に対し、ホウ素、シリコン、アルミニウム及びリンの総含有量で0.1〜20原子%が好ましい。これらの元素が少なすぎると、形状維持効果が少ない。一方、これらの元素が多すぎると、飽和磁化が低下しやすい。なお、窒化鉄系磁性粉末は、必要により、炭素、カルシウム、マグネシウム、ジルコニウム、バリウム、ストロンチウムなどを含有してもよい。これら元素と希土類元素とを併用することにより、より高い形状維持性と分散性能を得ることができる。
窒化鉄系磁性粉末の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば特開2004−273094号公報等に記載の方法により製造することができる。具体的には、出発原料としては、鉄系酸化物または鉄系水酸化物が用いられる。鉄系酸化物、鉄系水酸化物としては、例えば、ヘマタイト、マグネタイト、ゲータイトなどが挙げられる。出発原料の粒径は、特に限定されないが、5〜30nmが好ましく、5〜20nmがより好ましく、5〜18nmがさらに好ましい。粒径が小さすぎると、還元時に粒子間焼結が生じやすい。粒径が大きすぎると、還元処理が不均質となりやすく、得られる窒化鉄系磁性粉末の粒径や磁気特性の制御が困難となる。また、出発原料の軸比は、特に限定されないが、1.0〜2.0が好ましく、1.0〜1.2がより好ましい。
上記の出発原料には既述した希土類元素を被着させてもよい。被着処理の方法としては、例えば、アルカリまたは酸の水溶液中に出発原料を分散させ、これに希土類元素の塩を溶解させた後、中和反応などにより出発原料に希土類元素を含む水酸化物や水和物を沈殿析出させる方法が挙げられる。また、上記の出発原料にはホウ素、シリコン、アルミニウム、リンなどの元素を被着させてもよい。これらの元素の被着処理の方法としては、例えば、上記元素を含有する化合物を溶解させた溶液を調製し、この溶液に出発原料を浸漬して、出発原料にホウ素、シリコン、アルミニウム、リンなどを被着させる方法が挙げられる。これらの被着処理を効率良く行うために、溶液には還元剤、pH緩衝剤、粒径制御剤などの添加剤をさらに添加してもよい。さらに、被着処理において、希土類元素と、ホウ素、シリコン、アルミニウム、リンなどの元素とを同時にあるいは交互に出発原料に被着させるようにしてもよい。
次に、上記の出発原料を水素気流中で加熱還元する。還元ガスは特に限定されず、水素ガス以外に、一酸化炭素ガスなどの還元性ガスを使用してもよい。還元温度は、300〜600℃が望ましい。還元温度が300℃より低いと、還元反応が十分進まなくなる。還元温度が600℃より高いと、焼結が起こりやすくなる。
上記のような加熱還元後、窒化処理を施すことにより、鉄と窒素とを構成元素として有する窒化鉄系磁性粉末が得られる。窒化処理としては、アンモニアを含むガスを用いて行うのが望ましい。また、アンモニアガス単体のほかに、水素ガス、ヘリウムガス、窒素ガス、アルゴンガスなどをキャリアーガスとした混合ガスを使用してもよい。窒素ガスは安価なため、特に好ましい。窒化処理温度は100〜300℃が好ましい。窒化処理温度が低すぎると窒化が十分進まず、保磁力増加の効果が少ない。窒化処理温度が高すぎると窒化が過剰に促進され、FeN相やFeN相等の割合が増加し、保磁力がむしろ低下し、さらに飽和磁化の過度な低下を引き起こしやすい。窒化処理に際しては、鉄に対する窒素の含有量が1〜20原子%となるように、窒化処理の条件を選択することが望ましい。窒素の量が少なすぎると、Fe16N2相の生成量が少なくなり、保磁力向上の効果が少なくなる。窒素の量が多すぎると、FeN相やFeN相等が形成されやすくなり、保磁力がむしろ低下し、さらに飽和磁化の過度な低下を引き起こしやすい。
Co系強磁性粉末の製造方法としては、特に限定されるものではないが、従来公知の無電解析出法などが挙げられる。例えば、塩化コバルトなどのコバルト化合物、次亜リン酸ナトリウムなどの還元剤、クエン酸ナトリウムなどの錯化剤、及びゼラチンなどの粒径制御剤を含有する水溶液とアルカリ水溶液とを混合してpH調整し、これに塩化パラジウムなどの反応開始剤を混合した後、これらを反応させることによりCo系磁性粉末を形成することができる。
バリウムフェライト系強磁性粉末の製造方法としては、特に限定されるものではないが、従来公知のガラス結晶化法などを挙げることができる。例えば、酸化バリウム、酸化鉄、鉄を置換する金属酸化物、及びガラス形成物質として酸化ホウ素などを所望のフェライト組成になるように混合し、該混合物を溶融し、急冷して非晶質体とし、ついで再加熱処理した後、洗浄・粉砕することによりバリウムフェライト系磁性粉末を形成することができる。
強磁性層中の粒状の強磁性粉末の含率は、40〜90質量%が好ましく、45〜81質量%がより好ましい。このような高充填の強磁性層とすることにより、粒子性ノイズをさらに低減することができる。
本実施の形態において、強磁性層は垂直配向に好適な粒状の強磁性粉末を含有するため、配向処理により強磁性層用塗料に含まれる粒状の強磁性粉末を効率的に磁場配向することができる。このため、角型が0.70〜0.98の高い垂直配向性と、優れた表面平滑性とを両立することができる。特に本実施の形態によれば、角型が0.92以上の高い垂直配向性を有する強磁性層を形成することもできるため、短波長記録に適した磁気記録媒体を得ることができる。なお、垂直方向の角型は1、すなわち全ての強磁性粉末の磁化容易軸が垂直方向に向いていることが好ましいが、窒化鉄系磁性粉末やCo系磁性粉末などの粒状の強磁性粉末には楕円体状等のある程度の異方性を有する強磁性粉末も含まれるため、塗布時の機械配向により磁化容易軸が垂直方向から斜め方向に傾斜する場合がある。このため、本実施の形態の強磁性層は垂直方向の角型が0.70〜0.98の範囲にある実質的に垂直方向に磁化容易軸を有している。角形が0.70より小さい場合は垂直磁気記録が機能せず、十分な再生出力が得られなくなる。
強磁性層の垂直方向の保磁力は、80〜320kA/mが好ましい。保磁力が上記範囲より小さいと、短波長記録において高出力を得にくくなる傾向がある。保磁力が上記範囲より大きいと、磁気ヘッドで飽和記録するのが難しくなる傾向がある。また、強磁性層の残留磁束密度(Br)と厚さδとの積(Br・δ)は0.001〜0.06μTmが好ましく、0.004〜0.04μTmがより好ましい。上記範囲であれば、MR系ヘッドの飽和が抑えられ、高いSNRを得ることができる。
強磁性層の磁気特性は、上述した全磁性層の磁気特性を測定し、データ分離により強磁性層のみのヒステリシスを再現して、このヒステリシスより算出することが出来る。しかし本明細書において強磁性層の保磁力および角型は、垂直カー回転角測定装置(外部磁場:127kA/m)用いて測定したときの値である。垂直カー回転角測定は磁性粉表面における光反射により磁気特性を検出するので、強磁性層のみの磁気特性を得ることが出来る。このため垂直カー回転角の測定により垂直方向の角型を正確に測定することができる。このような垂直カー回転角測定装置としては、日本分光株式会社製のK−250、ネオアーク株式会社製のBH−810CPCなどが挙げられる。
強磁性層の厚さは、短波長記録において厚み損失を低減するために5〜150nmであり、15〜100nmがより好ましい。上記範囲の厚みを有する強磁性層であれば、短波長記録において高い再生出力を得ることができるとともに、熱揺らぎ現象による磁化の劣化を抑えることができる。強磁性層の厚さが5nm未満では、均一な塗布が困難となる傾向がある。なお、本明細書において、膜厚は、走査型電子顕微鏡(倍率:5〜20万倍)で複数個所の磁気記録媒体の断面(50μm長)を観察したときの平均値である。
強磁性層の平均線表面粗さ(Ra)は2.5nm以下が好ましく、0.4〜2.3nmがより好ましい。本実施の形態の磁気記録媒体は、下層に低保磁力の粒状のFe系軟磁性粉末を含有し、上層に高保磁力、高飽和磁化の粒状の強磁性粉末を含有するため、垂直配向処理によっても上記のような非常に平滑な表面を有する強磁性層を得ることができる。このため、強磁性層と磁気ヘッドとのコンタクトが良くなり、高い再生出力が得られる。なお、平均表面粗さは、ZYGO社製の汎用三次元表面構造解析装置「NewView5000」で、走査型白色光干渉法によりScan Length5μm、測定視野350μm×260μmで強磁性層の表面を測定したときの値である。
本実施の形態において、軟磁性層に用いられるFe系軟磁性粉末の粒径duは5〜30nmであり、軸比juは1〜2である。ここでFe系軟磁性粉末における粒径及び軸比は、上述の粒状強磁性粉末における略球状ないし略楕円体状粉の定義に従う。微粒の粒状Fe系軟磁性粉末を使用することにより、Fe系軟磁性粉末が高充填された軟磁性層を形成することができ、記録時の磁界が印加されたときの強磁性粉末の磁気的な結合を弱める軟磁性層の磁気的な作用を確保することができる。従って粒径は小さいほど好ましいが、粒径が余りに小さすぎると所定の飽和磁化及び粒径変動率を有するFe系軟磁性粉末の製造が困難になるという別の問題が生ずる。このため、粒径は5nm以上が好ましい。
ここで上記の強磁性粉末粒径と軟磁性粉末の粒径との比dr/du、及びが強磁性粉末の軸比と軟磁性粉末の軸比との比jr/juが実質的に等しく、両者とも0.95〜1.05の範囲であれば、軟磁性層と強磁性層との間の界面の変動を抑えることができ、スパイクノイズを低減することができる。またFe系軟磁性粉末の粒径変動率は20%以下が好ましく、19%以下が更に好ましい。粒径変動率が20%より大きい場合、軟磁性層からの磁気的な作用が不均一となるためか、磁気クラスタサイズを低減させる効果が十分に得られない。さらに粒径変動率が20%より大きいと、軟磁性層と強磁性層との間の界面の変動が大きくなり、スパイクノイズが上昇する傾向を示す。このため粒径変動率は低い方がより好ましいが、粒径と同様にFe系軟磁性粉末の製造の容易さを考慮すれば、通常、粒径変動率は11%以上である。
Fe系軟磁性粉末の飽和磁化は70〜220Am2/kgであり、好ましくは90〜180Am2/kgである。飽和磁化が70Am2/kg未満の場合、軟磁性層による記録時の印加磁界の誘導効果が減少し、書き込み能力が低下して再生出力が低下する。一方、飽和磁化が220Am2/kgより高いFe系軟磁性粉末は磁性粉製造が困難であり、また媒体製造工程においても激しい酸化を起こして最終媒体化が出来ない。なおMn−Znフェライト軟磁性粉末などの粒状のフェライト系軟磁性粉末は上記と同程度の粒径及び軸比を有するものが製造できるが、この種の軟磁性粉末は粒径が小さくなると飽和磁化が小さくなり、垂直磁気記録による再生出力の向上効果が十分に得られない。
Fe系軟磁性粉末の保磁力は2〜12kA/mが好ましく、7〜12kA/mがより好ましい。保磁力が高すぎると、軟磁性層から発生する磁束によって分解能が低下し、再生出力が低下する傾向がある。一方、保磁力が低すぎると常磁性を示し、軟磁性層の作用が減少する傾向がある。
上記のようなFe系軟磁性粉末は、上述した窒化鉄系強磁性粉末の原材料を作成するのと同様の方法で製造することが出来る。また窒化鉄系強磁性粉と同様の添加元素を含有することが出来る。
本実施の形態において、軟磁性層中のFe系軟磁性粉末の含率は65〜90質量%が好ましく、70〜85質量%がより好ましい。微粒子のFe系軟磁性粉末を使用することにより高充填の軟磁性層を形成することができる。軟磁性層の厚さは、100〜3500nmが好ましい。上記範囲の厚さであれば、軟磁性層の作用を十分に確保することができるとともに、磁気記録媒体全体の厚みを抑えることができる。
本実施の形態において、非磁性支持体としては、従来から使用されている磁気記録媒体用の非磁性支持体を使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフオン、アラミド、芳香族ポリアミド等からなる厚さが通常2〜8μm、特に2〜7μmのプラスチックフィルムが好適に用いられる。
本実施の形態において、強磁性層及び軟磁性層に使用される結合剤としては、例えば、塩化ビニル系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、エポキシ系樹脂及びポリウレタン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。塩化ビニル系樹脂としては、具体的には、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合樹脂、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合樹脂などが挙げられる。これらの中でも、塩化ビニル系樹脂とポリウレタン系樹脂との併用が好ましく、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合樹脂とポリウレタン系樹脂との併用がより好ましい。また、これらの結合剤は、粉末の分散性を向上し、充填性を上げるために、官能基を有するものが好ましい。このような官能基としては、具体的には、例えば、COOM、SOM、OSOM、P=O(OM)、O−P=O(OM)(Mは水素原子、アルカリ金属塩またはアミン塩)、OH、NR、NR(R,R,R,R及びRは、水素または炭化水素基であり、通常その炭素数が1〜10である)、エポキシ基などが挙げられる。2種以上の樹脂を併用する場合、官能基の極性が一致した樹脂を用いることが好ましく、中でも、−SOM基を有する樹脂の組み合わせが好ましい。これらの結合剤は、強磁性粉末あるいはFe系軟磁性粉末100質量部に対して、7〜50質量部、好ましくは10〜35質量部の範囲で用いられる。特に、塩化ビニル系樹脂5〜30質量部と、ポリウレタン系樹脂2〜20質量部との併用が好ましい。
また上記の結合剤とともに、結合剤中に含まれる官能基等と結合し架橋構造を形成する熱硬化性の架橋剤を併用することが好ましい。架橋剤としては、具体的には、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;イソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等の水酸基を複数個有する化合物との反応生成物;イソシアネート化合物の縮合生成物などの各種のポリイソシアネートが挙げられる。架橋剤は、結合剤100質量部に対して、通常10〜50質量部の範囲で用いられる。
強磁性層及び軟磁性層は、導電性と表面潤滑性の向上を目的に、カーボンブラック及び潤滑剤を含有することが好ましい。カーボンブラックとしては、具体的には、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックなどが挙げられる。カーボンブラックの平均粒子径は5〜200nmが好ましく、10〜100nmがより好ましい。強磁性層の場合、カーボンブラックの含有量は、強磁性粉末100質量部に対して、0.2〜5質量部が好ましく、0.5〜4質量部がより好ましい。軟磁性層の場合、カーボンブラックの含有量は、Fe系軟磁性粉末100質量部に対して、15〜35質量部が好ましく、20〜30質量部がより好ましい。潤滑剤としては、具体的には、例えば、10〜30の炭素数を有する脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドなどが挙げられる。これらは単独でまたは複数使用してもよい。強磁性層の場合、潤滑剤の含有量は、強磁性粉末100質量部に対して、0.2〜3質量部が好ましい。軟磁性層の場合、潤滑剤の含有量は、Fe系軟磁性粉末100質量部に対して、0.7〜7質量部が好ましい。
また強磁性層及び軟磁性層は、耐久性、走行性を改善するため、アルミナ、シリカ等の非磁性粉末をさらに含有してもよい。非磁性粉末の含有量は、強磁性粉末あるいはFe系軟磁性粉末100質量部に対して、1〜20質量部が好ましい。
強磁性層用塗料及び軟磁性層用塗料の調製にあたっては、従来から磁気記録媒体の製造で使用されている塗料製造方法を使用できる。具体的には、ニーダ等による混練工程と、サンドミル、ピンミル等による一次分散工程との併用が好ましい。また、非磁性支持体上に、強磁性層用塗料及び軟磁性層用塗料を塗布するにあたっては、グラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージヨン塗布等の従来から磁気記録媒体の製造で使用されている塗布方法を使用できる。強磁性層用塗料及び軟磁性層用塗料の塗布は、逐次重層塗布方法、同時重層塗布方法(ウェットオンウェット法)いずれを使用してもよい。
また、上記の塗布工程においては、塗料が未乾燥の状態で垂直方向に磁界を印加して、強磁性層の磁化容易軸が実質的に垂直方向になるように配向処理が行なわれる。この配向処理では、ソレノイド磁石、永久磁石等を使用することができる。磁界の強さは、強磁性層の表面粗さの劣化を抑えるため、0.05〜10Tが好ましい。
本実施の形態の磁気記録媒体は、表面性の向上や、塗料粘度、テープ剛性等の制御を目的として、非磁性支持体と軟磁性層との間にさらに非磁性粉末及び結合剤を含有する非磁性層を有してもよい。非磁性層の厚さは、0.1〜3.0μmが好ましく、0.15〜2.5μmがより好ましい。非磁性粉末としては、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウム等の非磁性粉末を使用することができる。これらは単独でまたは複数混合して用いてもよい。また、導電性を付与するため、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等のカーボンブラックを用いてもよい。結合剤としては、強磁性層に用いられる結合剤と同様の結合剤を用いることができる。結合剤の含有量は、非磁性粉末100質量部に対して、7〜50質量部が好ましく、10〜35質量部がより好ましい。非磁性層は、軟磁性層及び強磁性層と同時に塗布してもよいし、非磁性層を形成した後に、軟磁性層及び強磁性層を非磁性層上に逐次または同時に塗布してもよい。
本実施の形態の磁気記録媒体は、バックコート層をさらに有してもよい。バックコート層の厚さは、0.2〜0.8μmが好ましく、0.3〜0.8μmがより好ましい。バックコート層は、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラックを含有することが好ましい。バックコート層の結合剤としては、強磁性層の結合剤と同様の結合剤を用いることができる。中でも、摩擦係数を低減し走行性を向上するため、セルロース系樹脂とポリウレタン系樹脂とを併用することが好ましい。結合剤の含有量は、粉末100質量部に対して、40〜150質量部が好ましく、50〜120質量部がより好ましい。バックコート層は、軟磁性層及び強磁性層が形成される前に形成されてもよいし、軟磁性層及び強磁性層が形成された後に形成されてもよい。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでない。なお、以下において、「部」とあるのは「質量部」を意味する。
[実施例1]
<Fe系軟磁性粉末の製造>
116部の硫酸鉄(II)七水塩と547部の硝酸鉄(III)九水塩を1,500部の水に溶解した。上記とは別に、150部の水酸化ナトリウムを1,500部の水に溶解した。上記の2種類の鉄塩の水溶液に水酸化ナトリウムの水溶液を添加し、20分間撹拌して、マグネタイト粒子を生成させた。このマグネタイト粒子をオートクレーブに入れ、200℃で4時間加熱した。水熱処理後、水洗し、乾燥して、粒子サイズが25nmの略球状ないし略楕円体状のマグネタイト粒子を得た。
上記のマグネタイト粒子10部を500部の水に、超音波分散機を用いて、30分間分散させた。この分散液に2.5部の硝酸イットリウムを加えて溶解し、30分間撹拌した。上記とは別に、0.8部の水酸化ナトリウムを100部の水に溶解した。この水酸化ナトリウム水溶液を上記の分散液に約30分間かけて滴下し、滴下終了後、さらに1時間撹拌した。この処理により、マグネタイト粒子表面にイットリウムの水酸化物を被着析出させた。これを水洗し、ろ過後、90℃で乾燥して、マグネタイト粒子の表面にイットリウムの水酸化物を被着形成した粉末を得た。
上記のマグネタイト粒子の表面にイットリウムの水酸化物を被着形成した粉末を、水素気流中、450℃で2時間加熱還元して、空気中に取り出し、イットリウムを含有するFe系軟磁性粉末を得た。磁性粉末のイットリウムと窒素の鉄に対する含有量を蛍光X線により測定したところ、それぞれ5.3原子%と10.8原子%であった。また高分解能分析透過型電子顕微鏡で粒子形状を観察したところ、Fe系軟磁性粉末は略球状の粒子で、粒径が20nm、軸比が1.1であることが確認された。また、BET法により求めた比表面積は、69m2/gであった。この窒化鉄系磁性粉末の磁気特性を測定したところ、飽和磁化は158Am2/kg、保磁力は8kA/mであった。
<窒化鉄系強磁性粉末の製造>
上記のFe系軟磁性粉末と同様の製造工程で水素還元した粉末を、水素ガスを流した状態で約1時間かけて、150℃まで降温した。150℃に到達した状態で、ガスをアンモニアガスに切り替え、温度を150℃に保った状態で、30時間窒化処理を行った。その後、アンモニアガスを流した状態で、150℃から90℃まで降温し、90℃で、アンモニアガスから酸素と窒素の混合ガスに切り替え、2時間安定化処理を行った。ついで、混合ガスを流した状態で、90℃から40℃まで降温し、40℃で約10時間保持したのち、空気中に取り出し、窒化鉄系磁性粉末を得た。
上記のようにして得られた窒化鉄系強磁性粉末のイットリウムと窒素の鉄に対する含有量を蛍光X線により測定したところ、それぞれ5.3原子%と10.8原子%であった。また、X線回折パターンよりFe16N2相を示すプロファイルが得られた。さらに、高分解能分析透過型電子顕微鏡で粒子形状を観察したところ、窒化鉄系磁性粉末は略球状の粒子で粒径が20nm、軸比が1.1であることが確認された。また、BET法により求めた比表面積は、53.2m2/gであった。この窒化鉄系磁性粉末の磁気特性を測定したところ、飽和磁化は135.2Am2/kg、保磁力は226.9kA/mであった。
<非磁性層用塗料の調製>
以下の非磁性層用塗料成分をニーダで混練したのち、混練物をサンドミルで分散処理(滞留時間:60分)を行い、これにポリイソシアネート6部を加え、撹拌し、ろ過して、非磁性層用塗料を調製した。
非磁性層用塗料成分 量
酸化鉄粉末(平均粒径:55nm) 70部
アルミナ粉末(平均粒径:80nm) 10部
カーボンブラック(平均粒径:25nm) 20部
塩化ビニル−ヒドロキシプロピルメタクリレート共重合樹脂
(含有−SO3Na基:0.7×10−4当量/g) 10部
ポリエステルポリウレタン樹脂
(含有−SO3Na基:1.0×10−4当量/g) 5部
メチルエチルケトン 130部
トルエン 80部
シクロヘキサノン 65部
ミリスチン酸 1部
ステアリン酸ブチル 1.5部
<軟磁性層用塗料の調製>
以下の軟磁性層用塗料成分をニーダで混練したのち、混練物をサンドミルで分散処理(滞留時間:60分)を行い、これにポリイソシアネート6部を加え、撹拌し、ろ過して、軟磁性層用塗料を調製した。
軟磁性層用塗料成分 量
上記のFe系軟磁性粉末 114部
塩化ビニル−ヒドロキシプロピルメタクリレート共重合樹脂
(含有−SO3Na基:0.7×10−4当量/g) 10部
ポリエステルポリウレタン樹脂
(含有−SO3Na基:1.0×10−4当量/g) 5部
メチルエチルケトン 100部
トルエン 100部
ミリスチン酸 1部
ステアリン酸ブチル 1.5部
<強磁性層用塗料の調製>
以下の強磁性層用塗料成分(1)をニーダで混練したのち、混練物をサンドミルで分散処理(滞留時間:60分)を行い、これに下記表5の強磁性層用塗料成分(2)を加え、撹拌し、ろ過して、強磁性層用塗料を調製した。
強磁性層用塗料成分(1) 量
上記の窒化鉄系磁性粉末 100部
α−アルミナ(平均粒径:80nm) 10部
カーボンブラック(平均粒径:25nm) 1.5部
塩化ビニル−ヒドロキシプロピルメタクリレート共重合樹脂
(含有−SO3Na基:0.7×10−4当量/g) 10部
ポリエステルポリウレタン樹脂
(含有−SO3Na基:1.0×10−4当量/g) 5部
メチルエチルケトン 116部
トルエン 116部
ミリスチン酸 1部
ステアリン酸ブチル 1.5部
強磁性層用塗料成分(2) 量
ステアリン酸 1.5部
ポリイソシアネート 5部
シクロヘキサノン 133部
トルエン 33部
<塗布・配向処理>
まず、上記の非磁性層用塗料を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:6μm)の非磁性支持体上に、乾燥及びカレンダー処理後の厚さが2μmとなるように塗布した。
次に形成された非磁性層上に、上記の軟磁性層用塗料及び強磁性層用塗料を、乾燥及びカレンダー処理後の軟磁性層及び強磁性層の厚さがそれぞれ、0.6μm及び150nmとなるように同時重層塗布した。なお塗布時に、非磁性支持体の厚み方向でN極とS極とが対向するように配置した一対の永久磁石の間に非磁性支持体を搬送させることにより垂直配向処理を行った(磁界強度:0.8T)。
<バックコート層の作製>
以下のバックコート層用塗料成分を、サンドミルで分散処理(滞留時間:45分)を行い、これにポリイソシアネート8.5部を加え、撹拌し、ろ過して、バックコート層用塗料を調製した。
バックコート層用塗料成分 量
カーボンブラック(平均粒径:25nm) 40.5部
カーボンブラック(平均粒径:370nm) 0.5部
硫酸バリウム 4.05部
ニトロセルロース 28部
ポリウレタン樹脂(−SO3Na基含有) 20部
メチルエチルケトン 100部
トルエン 100部
シクロヘキサノン 100部
上記のバックコート層用塗料を、非磁性支持体の磁性層が形成された面の反対面に、乾燥及びカレンダー処理後の厚さが700nmとなるように塗布した。
<カレンダー及び裁断処理>
上記のように非磁性支持体の片面に非磁性層、軟磁性層、及び強磁性層を、他面にバックコート層を形成した磁気シートを、5段カレンダー(温度:70℃、線圧:150kg/cm)で鏡面化処理し、これをシートコアに巻いた状態で、60℃,40%RH下、48時間エージングした。その後磁気シートを1/2インチ幅に裁断し、磁気テープを作製した。
[実施例2]
<Co系強磁性粉末の製造>
13部のCoCl2・6H2O、20部のNaPH2O2・H2O、30部のC6H5O7Na3・2H2O、15部のH3BO3、及びゼラチン10部を1,000部の水に溶解した。この水溶液を10Nの水酸化ナトリウム水溶液でpH8.3に調整した後、85℃まで昇温した。昇温後、水溶液に1部のPdCl2を滴下し、45分間反応させた。反応後、水溶液中に形成されたCo系磁性粉末を磁石により回収し、水洗、乾燥して、Co系強磁性粉末を製造した。
上記のようにして得られたCo系磁性粉末を高分解能分析透過型電子顕微鏡で粒子形状を観察したところ、略球状の粒子で粒径が20nm、軸比が1.1であることが確認された。さらに、BET法により求めた比表面積は、53.2m2/gであった。このCo系磁性粉末の磁気特性を測定したところ、飽和磁化は110Am2/kg、保磁力は127kA/mであった。
実施例1の強磁性層用塗料の調製において、窒化鉄系強磁性粉末の代わりにCo系強磁性粉末を用いた以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
[実施例3]
<バリウムフェライト磁性粉末の製造>
1モルの塩化第二鉄、1/8モルの塩化バリウム、1/8モルの塩化コバルト、1/40モルの塩化チタン、及び1/40モルの塩化ニッケルを1Lの水に溶解した混合溶液を作製した。この混合溶液を10℃に冷却し、3モルの水酸化ナトリウムを溶解した1Lの水酸化ナトリウム水溶液に加えて攪拌した。この時、水酸化ナトリウム水溶液を10℃に冷却しておき、混合撹拌時の温度を10℃に保ちながら、共沈反応を行った。次いで、懸濁液を室温で1日間熟成した後、沈殿物をオートクレーブ中に入れ、220℃で4時間、加熱反応させてバリウムフェライトのプリカーサを得た。
得られたバリウムフェライトプリカーサをpHが8以下になるまで十分に水洗した後、バリウムフェライトプリカーサを含む全体の容量が1Lになるように沈降させた懸濁液を調製した。この懸濁液の上澄液を除去した後、懸濁液中に融剤として500gのNaClを添加して撹拌し、溶解させた。次に、このNaClを溶解したバリウムフェライトプリカーサの懸濁液を面積の広いバットに入れ、乾燥機で100℃に加熱して、水を蒸発させた。
次いで、上記のようにして得られたバリウムフェライトプリカーサとNaClとの混合物を解砕し、十分混合したものを坩堝に投入した。そして、この坩堝をまず850℃で20分間加熱して融剤であるNaClを溶解し、次に温度を780℃まで下げ、780℃で約10時間加熱処理し、その後、室温まで冷却した。次に、水洗によりNaClを溶解して除去し、バリウムフェライト磁性粉末を取り出した。
上記のようにして得られたバリウムフェライト磁性粉末を高分解能分析透過型電子顕微鏡で粒子形状を観察したところ、板状の粒子で、粒径が20nm、軸比が2であることが確認された。また、このバリウムフェライト磁性粉末の磁気特性を測定したところ、飽和磁化は48.2Am2/kg、保磁力は180kA/mであった。
実施例1に用いたFe系軟磁性粉末の製造において、イットリウムの水酸化物の滴下量を調製し、Feに対するイットリウムの原子比率が2.1%になるようにした。また実施例1の強磁性層用塗料の調製において、窒化鉄系強磁性粉末の代わりに上記のバリウムフェライト磁性粉末を用いた以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
[実施例4]
実施例1に用いたFe系軟磁性粉末の製造において、還元温度を480℃にした。さらに窒化鉄系強磁性粉の原材料にはこのFe系軟磁性粉を用いた以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
[実施例5]
実施例1に用いたFe系軟磁性粉末の製造において、還元温度を420℃にした。さらに窒化鉄系強磁性粉の原材料にはこのFe系軟磁性粉を用いた以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
[実施例6]
実施例1に用いたFe系軟磁性粉末の製造において、イットリウムの水酸化物の滴下量を調製し、Feに対するイットリウムの原子比率が2.1%になるようにした。さらに窒化鉄系強磁性粉末の原材料にはこのFe系軟磁性粉を用いた以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
[実施例7]
実施例1に用いた窒化鉄系強磁性粉の製造工程で、窒化時間を25時間とした以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
[実施例8]
実施例1に用いた窒化鉄系強磁性粉の製造工程で、窒化時間を35時間とした以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
[実施例9]
実施例1に用いた窒化鉄系強磁性粉の製造工程で、窒化温度を145℃とした以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
[実施例10]
実施例1に用いた窒化鉄系強磁性粉の製造工程で、窒化温度を155℃とした以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
[実施例11]
実施例1の配向処理における磁場強度を0.5Tとした以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
[実施例12]
実施例1に用いたFe系軟磁性粉末の製造において、空気中に取り出した粉末を、還元温度495℃、処理時間2.5時間で水素ガス気流中再還元処理した以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。窒化鉄の原材料には実施例1で製造したFe系軟磁性粉末を用いている。
[実施例13]
実施例1に用いたFe系軟磁性粉末の製造において、空気中に取り出した粉末の周辺領域を酸素−窒素混合ガスを用いて、酸素濃度0.8vol%、酸化温度80℃、酸化時間は40minで緩やかに酸化させた以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。窒化鉄の原材料には実施例1で製造したFe系軟磁性粉末を用いている。
[比較例1]
実施例1に用いたFe系軟磁性粉末の製造において、還元温度を485℃にした。さらに窒化鉄系強磁性粉の原材料にはこのFe系軟磁性粉を用いた以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
[比較例2]
実施例1に用いたFe系軟磁性粉末の製造において、還元温度を410℃にした。更に窒化鉄系強磁性粉の原材料にはこのFe系軟磁性粉を用いた以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
[比較例3]
実施例1に用いた窒化鉄系強磁性粉の製造において、窒化時間を38時間とした以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
[比較例4]
実施例1に用いた窒化鉄系強磁性粉の製造において、窒化時間を22時間とした以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
[比較例5]
実施例1に用いた窒化鉄系強磁性粉の製造において、窒化温度を160℃とした以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
[比較例6]
実施例1に用いた窒化鉄系強磁性粉の製造において、窒化温度を142℃とした以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
[比較例7]
実施例1に用いたFe系軟磁性粉末の製造において、空気中に取り出した粉末の周辺領域を酸素−窒素混合ガスを用いて、酸素濃度1vol%、酸化温度80℃、酸化時間は40minで緩やかに酸化させ、最外層に徐酸化層を形成した以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
[比較例8]
実施例1の軟磁性層用塗料の調製において、Fe系軟磁性粉末の代わりに、Mn−Znフェライト軟磁性粉末(飽和磁化:62Am2/kg、保磁力:6kA/m、粒径:20nm、形状:略球状、軸比:1.1)を用いた以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
以上のようにして作製した実施例及び比較例の各磁気テープについて、下記の方法により磁性層垂直方向の磁気特性、各磁性層の膜厚及び再生出力、スパイクノイズを評価した。表1にこれらの結果を示す。
<磁気特性、磁性層膜厚>
強磁性層の保磁力および角型を垂直カー回転角測定装置日本分光株式会社製のK−250を用いて測定した。このとき最大外部磁場を127kA/m、入射光波長550nmとした。また膜厚は、の磁気記録媒体の断面を50μm長にわたってイオンミリング加工して得られる断面を用いる。この断面を走査型電子顕微鏡で加速電圧2kV、倍率5万倍で反射電子増を観察した像から強磁性層、軟磁性層それぞれの膜厚を算出する。さらに50μmの断面を20視野観察して膜厚を求め、このときの平均値を平均膜厚として用いる。
<再生出力、スパイクノイズ>
電磁変換特性の評価には、記録ヘッドとしてMIG(Metal−In−Gap)ヘッド(トラック幅:12μm,ギャップ長:0.15μm,Bs:1.2T)と、再生ヘッドとしてスピンバルブタイプのGMRヘッド(トラック幅:2.5μm,SH−SH幅:0.15μm)とが装着されたドラムテスターを用いた。このドラムテスターの回転ドラムに磁気テープを巻きつけ、3.0m/sの相対速度で磁気テープを走行させながら、スペクトルアナライザを使用して169kfciの記録密度における再生出力とブロードバンドノイズを測定し、SNRを算出した。スパイクノイズはスペクトラムアナライザーで再生出力を観測したとき、DC成分の高さとして現れることが知られており、この値を用いた。なお再生出力、SNRとスパイクノイズは比較例8のそれらを基準(100%、及び0dB)とした相対値で評価した。
Figure 0005457260
Figure 0005457260
上記表1、表2に示すようにこれらの実施例の磁気記録媒体は、平均粒径drが5〜30nm、平均軸比jrが1〜2である粒状のFe系強磁性粉末を含有し、垂直方向に磁化容易軸を有する薄層の強磁性層と、該強磁性層の下に飽和磁化が70〜220Am2/kg、平均粒径duが5〜30nm、平均軸比juが1〜2粒状であるFe系軟磁性粉末を含有する軟磁性層とを備え、強磁性粉末と、軟磁性層に用いる軟磁性粉末の平均粒径の比dr/duが0.95〜1.05、平均軸比の比jr/juが0.95〜1.05とすることにより、再生SNR及びスパイクノイズの両者が同時に極めて改善される。
これに対して、軟磁性層がFe系軟磁性粉末を含有しても、粒径や軸比が強磁性層に含有される粒状強磁性粉の粒径や軸比と大きくことなる場合、再生時に発生するスパイクノイズの低減に効果が少ないことが分かる。これは、軟磁性層と強磁性層との界面の変動が大きくなるためと考えられる。また軟磁性粉末及び強磁性粉末の粒径が大きい場合、再生SNRが低下することが分かる。Fe系軟磁性粉末の飽和磁化が低すぎる場合、垂直磁気記録の効果が薄れ再生出力が顕著に低下し、SNRが低下することが分かる。なお、Mn−Znフェライト軟磁性粉末は飽和磁化を大きくすることが出来ず、この軟磁性粉末を含有する軟磁性層を有する比較例の磁気記録媒体は、Fe系軟磁性粉末を含有する軟磁性層を有する実施例の磁気記録媒体に比べてSNRが小さくなることが分かる。

Claims (3)

  1. 非磁性支持体と、前記非磁性支持体上に少なくとも軟磁性層と強磁性層とをこの順で有する磁気記録媒体であって、
    前記軟磁性層は粒状のFe系軟磁性粉末及び結合剤を含有し、厚さが100〜3500nmであり、
    前記軟磁性粉末の飽和磁化は70〜220Am2/kg、平均粒径duは5〜30nm、平均軸比juは1〜2であり、
    前記強磁性層は粒状の強磁性粉末及び結合剤を含有し、実質的に垂直方向に磁化容易軸を有し、
    前記強磁性粉末の平均粒径drは5〜30nm、平均軸比jrは1〜2であり、
    前記軟磁性粉末の平均粒径duと前記強磁性粉末の平均粒径drの比dr/duが0.95〜1.05であり、
    前記軟磁性粉末の平均軸比juと前記強磁性粉末の平均軸比jrの比jr/juが0.95〜1.05であることを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 前記強磁性粉末が窒化鉄系強磁性粉末であり、前記軟磁性粉末が該強磁性粉末の原材料である、請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. 前記強磁性粉末がバリウムフェライト系強磁性粉末である、請求項1に記載の磁気記録媒体。
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