JP2006196115A - 磁気テープおよび磁性粉末 - Google Patents

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勇治 佐々木
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和貴 松尾
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Abstract

【課題】高出力でかつ良好な再生出力ノイズ比(C/N)、良好な温度サイクル特性を示す磁気テープを提供する。
【解決手段】磁気テープの最上層磁性層が、粒子サイズ30nm以下の略粒状の磁性粉末を含有し、磁気テープの長手方向の保磁力が220〜400kA/mで、かつ−100℃と50℃間の保磁力の変化率を10%以下にする。また、特定相の窒化鉄を含有し、略粒状の微粒子で、表面が特定元素の化合物で構成され構成され、かつ特定温度間の保磁力の変化率が小さい磁性粉末を、磁気テープ用として使用する。
【選択図】図1

Description

本発明は、磁気テープカートリッジ用の磁気テープと磁性粉末に関し、さらに詳しくは、デジタルビデオテープカートリッジ、コンピュータ用バックアップテープカートリッジなど、高密度記録が要求される磁気テープカートリッジ用の磁気テープと、これに最適な磁性粉末に関するものである。
磁性粉末を結合剤に分散してなる塗布型磁気テープは、その記録再生方式がアナログ方式からデジタル方式への移行に伴い、記録密度の一層の向上が要求されている。特に、高密度ビデオテープカートリッジ用やコンピュータ用バックアップテープカートリッジ用においては、この要求が年々高まってきている。
特にデータバックアップ用テープカートリッジの分野では、バックアップの対象となるハードディスクの大容量化に伴い、1巻当たり数100GBの記録容量のものが商品化されている。また、1TBを超える大容量バックアップテープカートリッジも提案されている。
磁気テープカートリッジには、ビデオテープカートリッジやDDSコンピュータカートリッジに用いられているようなヘリキャルスキャンレコーディングタイプのカートリッジと、LTOコンピュータカートリッジに用いられるようなリニアレコーディングタイプのカートリッジに大別される。
DDSコンピュータカートリッジのようなヘリキャルスキャンレコーディングタイプのカートリッジは、磁気テープを走行させながら磁気ヘッドを回転させることで、磁気テープの長手方向と一定角度の方向に磁気記録するタイプで、トラック幅が狭くできるので磁気テープ単位面積当りの記録密度を高くできる反面、記録・再生には1対の磁気ヘッド(記録と再生に同一の磁気ヘッドを用いる場合は1個の磁気ヘッド)を使用するので、一般的に転送速度が遅い。このタイプでは2個のリールを内蔵したカートリッジが使用される。
なお、ヘリキャルスキャンレコーディングタイプのカートリッジを記録・再生する装置で多数対の磁気ヘッドを搭載しているタイプのものもあるが、このタイプでは多数対の磁気ヘッドは時間差を設けて記録・再生されるので、同時に使用される磁気ヘッドは1対のみである。
一方、LTOコンピュータカートリッジのようなリニアレコーディングタイプのカートリッジは、磁気テープの長手方向に沿って磁気記録するタイプで、磁気テープの長手方向にのびるサーボバンドと、データ記録用のデータバンドが設けられている。このうちサーボバンドは、各々サーボトラック番号を磁気的に記録した複数のサーボ信号記録部からなる。磁気テープのサーボと記録・再生を行う磁気ヘッドアレイは、一対(順方向用と逆方向用)のサーボトラック用の磁気抵抗効果型(MR)ヘッドと、例えば8x2対の磁気ヘッド(一般に磁気誘導型の記録ヘッド16個と再生用MRヘッド16個)で構成され、サーボトラック用のMRヘッドからの信号に基づいて磁気ヘッドアレイ全体が連動して動くことで、記録・再生用ヘッドがテープ幅方向に移動してデータトラックに到達する。このタイプでは数トラック(8x2対の磁気ヘッドを使用した場合は8トラック)を同時に記録・再生できるので、一般的に転送速度が極めて速い。また、リニアレコーディングタイプのカートリッジでは、順方向と逆方向のいずれの方向にも記録・再生できるようになっている。このタイプではカートリッジ1巻あたりの体積記憶容量を高くするため、1個のリールを内蔵したカートリッジが使用される。
なお、このタイプでは、上述の磁気テープの磁気記録層にサーボトラック用の磁気信号を記録する方式の他、磁気テープのバック層にサーボトラック用の磁気信号を記録する方式、バック層にサーボトラック用の光学信号を設ける方式もある。
データバックアップ用テープカートリッジの分野では、バックアップの対象となるハードディスクの大容量化にともない、転送速度が速く、かつカートリッジ1巻あたりの体積記憶容量も高い、単一リールのリニアレコーディングタイプのカートリッジが主流になりつつある。
このような記録密度の向上にあたり、短波長記録に対応するため、年々微粒子化がはかられ、現在では、粒子長さが0.1μm程度の針状のメタル磁性粉末や、この磁性粉末を使用した磁気テープが実用化に供されている。また、短波長記録時の減磁による出力低下を防止するため、年々高保磁力化がはかられ、たとえば、鉄−コバルト合金化された針状のメタル磁性粉末やこの磁性粉末においては、238.9A/m(3,000Oe)程度の保磁力が実現されている(特許文献1〜3参照)。
しかし、針状粒子を用いる磁気記録媒体では、保磁力が形状異方性に起因することから、上記粒子径からの大幅な微粒子化は困難になってきている。
そこで、保磁力が形状異方性によらず結晶異方性によることから微粒子化が容易で、かつ高保磁力化が可能な、平均粒子サイズが5〜200nmの範囲にある粒状ないし楕円状の希土類−鉄−ホウ素系磁性粉末を用いた磁気記録媒体が開示されている(特許文献4参照)。また、Fe162 相を主相とした磁性粉末を使用した磁気記録媒体も開示されている(特許文献5〜8)。例えば、特許文献5には、粒子形状が不定形で、Fe162 相を主相としたBET比表面積が10m2 /g以上の窒化鉄系磁性粉末を用いることにより、94.7〜179.1kA/m(1,190〜2,250エルステッド)程度の高保磁力を得ることが提案されている。また、特許文献6〜8には、平均粒子サイズが5〜50nmで、保磁力が200kA/m以上の、本質的に球状ないし楕円状で、かつFe162 相を主相とする希土類−鉄−窒化鉄系磁性粉末を用いた磁気記録媒体が開示されている。
特開平3−49026号公報(第4頁) 特開平10−340805号公報(第2頁) 特開平10−83906号公報(第3頁) 特開2201−181754号公報(第4頁、第22頁) 特開2220−277311号公報(第3頁、図4) WO03/079332A1パンフレット(国際公開第03/079332号パンフレット) WO03/079333A1パンフレット(国際公開第03/079333号パンフレット) US2204/0072025A1
特許文献1〜8に開示される磁性粉末およびこれを用いた磁気記録媒体は、各文献に記載される前記独自の構成とすることでそれに応じた特有の効果が奏される。特に、文献6〜8では、微粒子で、かつ高保磁力とすることで、高いC/Nを実現している。しかし、結晶異方性を利用した、略球状ないし楕円体状の微粒子を用いた磁気記録媒体では、保磁力の温度依存性が高く、高温−低温の温度サイクルをかけると、記録磁化が減磁して、再生出力(C)およびC/Nが低下するという問題があり、この問題点の解決が、磁気記録媒体の実用化の課題である。
本発明は、このような問題点を解決して、高記録密度(1.0Gb/in 以上)に適した、デジタルビデオ磁気テープ、コンピュータ用バックアップ磁気テープ、特に高容量のコンピュータ用バックアップ磁気テープ、およびこれらの磁気テープに使用する磁性粉末を得ることを目的とする。
本発明者らは、結晶磁気異方性に基づく、略粒状の微粒子かつ高保磁力の磁性粉末を用いた磁気テープに関して、高記録密度(1Gb/in以上)における電磁変換特性に優れ、かつ高温・低温サイクル時の電磁変換特性の低下の少ない磁気テープの完成を目的に、最上層に使用する磁性粉末の粒子サイズと形状、磁気テープの長手方向の保磁力、特定温度間の保磁力の変化率について詳細に検討した。その結果、本発明者らは、最上層磁性層に特定粒子サイズ以下、特定形状の磁性粉末を含有させ、磁気テープの長手方向の保磁力を特定範囲にすると共に、特定温度間の保磁力の変化率を特定値以下にしたときに、高密度記録時の電磁変換特性に優れ、かつ温度サイクルによる電磁変換特性の劣化のない磁気テープが得られることを知り、本発明を完成するに至った。また、粒子サイズ、組成、構造を特定のものにすると共に、特定温度間の保磁力の変化率を特定値以下にした磁性粉末は、本発明の磁気テープ用の磁性粉末として優れている。さらに、本発明の磁性粉末は、磁気テープの磁性層厚さが薄い、磁気テープの磁性粉末として優れている。
すなわち、本発明の磁気テープは、非磁性支持体と、非磁性支持体の一方の面に、少なくとも1層の、磁性粉末を含有する磁性層を有する磁気テープにおいて、前記磁気テープの最上層磁性層が、粒子サイズが30nm以下の略粒状の磁性粉末を含有し、前記磁気テープの長手方向の保磁力が220〜400kA/mであり、かつ−100℃と50℃間の保磁力の変化率が10%以下である磁気テープ(請求項1)である。また、本発明の磁性粉末は、鉄および窒素を少なくとも構成元素とし、かつFe16相を少なくとも含む、粒子サイズが30nm以下の磁性粉末であって、該磁性粉末の表面が希土類元素、シリコン、アルミニウムの中から選ばれた少なくとも1種を含む化合物層で構成され、−100℃と50℃間の保磁力の変化率が10%以下である磁性粉末(請求項2)である。鉄に対する窒素の含有量が1.0〜20原子%の磁性粉末がより好ましい。この磁性粉末は、本発明の磁気テープに使用する磁性粉末として優れている。
本発明の最上層磁性層の磁性粉末の粒子サイズは、30nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましく、15nm以下がさらに好ましい。粒子サイズ30nm以下が好ましいのは、30nmを超えると磁気テープのノイズ(N)が高くなり再生出力ノイズ比(C/N)が低くなるためである。また、粒子サイズを3nm以上にすると、磁性塗料調製時の分散が容易になるので3nm以上が好ましい。さらに、粒子サイズを3nm以上にすると、保磁力の温度変化が小さくなる傾向にある。5nm以上がより好ましく、8nm以上がさらに好ましい。粒子サイズが30nmを超えたり、3nm未満の磁性粒子の混入を排除するものではないが、その場合でも、粒子サイズの中央値が30nm以下、3nm以上が好ましい。
なお、本発明の磁性粉末の粒子サイズは、透過型電子顕微鏡(TEM)により倍率20万倍で撮影した、0.7μm×0.5μmの視野の写真から求めた最大さしわたし径(長軸径)である。粒子サイズは、同写真から粒子サイズ(最大さしわたし径、長軸径)を求め、50個の粒子サイズの中央値と粒子サイズの範囲とを求めた。本発明の粒子サイズは中央値である。粒子サイズの範囲は上下各5個を除外した40個の範囲である。また、軸比は、同写真から求めた最大さしわたし径(長軸径)と、最大さしわたし径方向と直交する方向のさしわたし最大径(短軸径)との比〔(最大さしわたし径)/(最大さしわたし径方向と直交する方向のさしわたし最大径)〕である。軸比は、50個の粒子の軸比を求め、中央値と軸比の範囲と求めた。本発明の軸比は中央値である。軸比の範囲は上下各5個を除外した40個の範囲である。テープ状となった媒体においての磁性粉粒子サイズは、磁気テープの縦断面(長手方向に切断)の最上層磁性層を走査型電子顕微鏡(SEM)写真を倍率20万倍、0.5μm×0.3μmの視野で撮影して求めた。この写真の視野で30nm以上の粒子サイズの磁性粉末が混入している場合には、上述の磁性粉末の場合と同様に、50個の磁性粉末の粒子サイズの中央値と範囲とを測定する。3nm未満の粒子が混入している場合も必要に応じて同様にして粒子サイズの中央値と範囲を求める。0.5μm×0.3μmの視野で50個の磁性粉末の粒子サイズが測定できない場合は適宜写真枚数を増やして測定する。磁性粉末と、カーボンブラック、研磨剤とは、通常SEM写真のコントラストや形状で区別できるが、磁性粉末と、カーボンブラック、研磨剤との区別がつかない場合にはピンポイント元素分析法を併用してもよい。
磁気テープの最上層磁性層の長手方向の保磁力は、220〜400kA/mが好ましく、250kA/m以上がより好ましい。220kA/m未満では、記録波長を十分小さくし難く、400kA/mを超えると、磁気ヘッドによる記録が不十分になる場合がある。380kA/m以下が好ましく、350kA/m以下がより好ましい。
なお、最上層磁性層の長手方向の保磁力を上記範囲にする方法としては、磁性粉末の保磁力を選択すればよい。
本発明において、最上層磁性層の長手方向の保磁力は、東英工業社製の試料振動型磁力計で、25℃、最大外部磁場1273kA/m(16kOe)で定法に準じて測定した値である。測定試料の調製は、磁気テープ20枚を貼り合わせ、これを直径8mmに打ち抜いて行った。
なお、2層以上の磁性層を有する磁気テープの最上層磁性層の長手方向の保磁力を測定する場合には、磁化の値をカー回転角で測定する方法を利用してもよい。この場合には、直径8mmに打ち抜いた磁気テープ1枚を使用する。
−100℃と50℃間の保磁力の変化率は10%以下が好ましく、8%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。−100℃と50℃間の保磁力の変化率は10%以下が好ましいのは、保磁力の変化率が10%をこえると、高温・低温サイクルで、短波長記録時の再生出力(C)および再生出力ノイズ比(C/N)が劣化するためである。最上層磁性層の長手方向における保磁力の変化率は理想的には0であるが、1%程度であれば実用上問題がないので、実用上の下限は1%である。
本発明において、最上層磁性層の長手方向における−100℃と50℃間の保磁力の変化率は、ヘリウムガス雰囲気中、−100℃、50℃で測定された保磁力について、保磁力の最大値と最小値の差(ΔHc)を求め、この差と最小値(最小Hc)との比として次式より求めた。
保磁力の変化率=(ΔHc/最小Hc)×100(%)
なお、磁気テープの長手方向における−100℃〜50℃の温度範囲における保磁力の温度変化の一例を図1に示す。−100℃〜50℃の温度範囲における保磁力は温度低下と共に連続的に上昇することが分かる。
本発明において、−100℃と50℃間の保磁力の変化率を10%以下にするための手段は、特に制限されないが、好ましくは以下の(a)〜(f)の方法が挙げられる。
以下の(a)〜(f)の方法を単独で用いて、好ましくはこれらの幾つかを併用することにより、保磁力の変化率が10%以下の値を有する磁気テープを製造することができる。もちろん、保磁力の変化率の値を制御する方法は、以下の(a)〜(f)の方法に限定されず、他の公知の方法を、適宜併用しても差し支えない。
(a)−100℃と50℃間の保磁力の変化率を小さくするためには、磁性粉末中のナトリウム、硝酸痕等の不純物量を減少させる。例えば、略粒状の窒化鉄系微粒子では、原材料であるマグネタイト粒子に希土類元素、アルミニウム、シリコン他を被着後、濾液の伝道度が100μS/cm以下になるまで充分に洗浄する。
(b)−100℃と50℃間の保磁力の変化率を小さくするためには、磁性粉末の結晶性を高くする。例えば、略粒状の窒化鉄系微粒子等では、原材料であるマグネタイト粒子に希土類元素、アルミニウム、シリコン他を被着後、還元処理前に窒素ガス雰囲気等の乾燥雰囲気中100℃〜900℃で熱処理する。120℃〜700℃がより好ましく、150℃〜500℃がさらに好ましく、200℃〜400℃がいっそう好ましい。同様に、熱処理時の昇温速度を10℃/min.〜50℃/min.のように遅い速度で昇温することも有効である。
(c)−100℃と50℃間の保磁力の変化率を小さくするためには、磁性粉末の粒子間の組成の分布を少なくする。例えば、略粒状の窒化鉄系微粒子等では、還元の起こらない不活性ガス雰囲気で粉末全体の温度を還元温度に調整後、還元ガスを導入して均一温度で還元する。また、同様に、窒化鉄系微粒子では還元終了後、不活性ガスに切り替えて、窒化の起こらない不活性ガス雰囲気で粉末全体の温度を窒化処理温度に調整後、アンモニアガスを導入して均一温度で窒化する。さらに、窒化鉄系微粒子等では、酸化処理時に、はじめに低濃度の酸素を含有する不活性ガス(例:200ppmの低濃度酸素−窒素混合ガス)を導入することで酸化熱による磁性粉末の温度上昇を抑制し、磁性粉末表面に均一温度で表面酸化膜を形成した後、高濃度の酸素を含有する不活性ガス(例:1000ppmの酸素−窒素混合ガス)を導入して、均一厚さの酸化膜を形成する。また、酸素濃度を順次、200ppm、1000ppm、2000ppm、3000ppm、5000ppmのようにさらに段階を増やして酸化処理したり、200ppm〜5000ppmの間で連続的に酸素濃度を徐々に増やしながら酸化処理してもよい。さらに、還元処理、窒化処理、表面酸化処理の各工程を繰り返し行うことも、磁性粉末の粒子間の組成の分布を少なくするのに有効である。
(d)−100℃と50℃間の保磁力の変化率を小さくするためには、磁性粉末の粒子間の粒度分布、形状分布を少なくする。特に、粒度分布を少なくして3nm未満の微小磁性粉末の混入を少なくすることが有効である。例えば、略粒状の窒化鉄系微粒子等では、原材料であるマグネタイト粒子に粒度分布の少なく、かつ3nm未満の超微粒子の混入がないマグネタイト粒子を使用すると共に、粒子間の希土類元素、アルミニウム、シリコン他の被着量を均一にする。このようにすれば、磁性粉末の粒子間の粒度分布、形状分布が少なくなると共に、(c)の組成分布も小さくなる。また、保磁力の温度変化の大きい磁性粉末の混入を避けることができる。
(e)−100℃と50℃間の保磁力の変化率を小さくするためには、磁性粉末の各粒子を単結晶または単結晶に近い粒子にする。例えば、略粒状の窒化鉄系微粒子等では、上記(a)〜(d)を適宜組み合わせる方法が有効である。磁性粉末の各粒子が単結晶または単結晶に近い粒子であるかは、高分解能電子顕微鏡写真で格子像を観察することで判断できる。
(f)−100℃と50℃間の保磁力の変化率を小さくするためには、磁性塗料での磁性粉末の分散性を向上させることが有効である。磁性塗料での磁性粉末の分散性を向上させると、−100℃と50℃間の保磁力の変化率が小さくなる理由は不明であるが、磁性粉末が密な部分と、粗な部分では粒子間の磁気的相互作用が温度によって異なるためと考えられる。
このための手法は、微粒子磁性粉末の分散性を上げるために従来から用いられている公知の手法が可能であり、これらを適宜組み合せて実施すればよい。磁性塗料の調製においては、磁性粉末を混練する前に、分散工程で良くほぐれるように、予め分散剤や樹脂と一緒に高速撹拌混合しておくのが好ましい。
混練には、樹脂とよくなじむように、大きなせん断力がかかる加圧型混練機や連続式2軸混練機等を用いるのが好ましく、通常の混練機であるならば、磁性粉末のバッチ量を適宜工夫するのが好ましい。分散は、通常のサンドミル型の分散機でよい。分散メディアとしては、従来の一般的な材質のものが使えるが、粒径が1mm未満で、チタニア、ジルコニアを主成分とする比重の大きいビーズを使用するのが好ましい。これは小粒径で比重が大きいほど分散能力が大きいからである。また、分散しやすいように磁性粉末の表面を、公知の表面処理剤で処理してもよい。さらに、バインダとして用いる樹脂には、分散性を向上させる官能基を持つ従来公知の樹脂を使用するのが好ましい。また、カーボンブラックやアルミナのような充填剤を磁性粉末とは別に分散して、予め分散しておいた磁性粉末、分散剤、樹脂の分散塗料に添加して磁性層用の塗料にする方法が好ましい。
本発明の磁気テープに使用する磁性粉末としては、鉄および窒素を少なくとも構成元素とし、かつFe16相を少なくとも含む、粒子サイズが30nm以下の磁性粉末であって、磁性粉末の表面が希土類元素、シリコン、アルミニウムの中から選ばれた少なくとも1種を含む化合物層で構成され、−100℃と50℃間の保磁力の変化率が10%以下である磁性粉末が特に好ましい。磁性粉末の、鉄に対する窒素の含有量が1.0〜20.0原子%がより好ましい。この磁性粉末およびその製造方法については後述する。
本発明によれば、磁気テープに使用する磁性粉末の粒子サイズ、形状、分散性、磁気テープの長手方向の保磁力、特定温度間の保磁力の変化率を制御することで、高記録密度、特に記録波長が短い場合にも電磁変換特性に優れ、高温・低温サイクルにおける電磁変換特性の劣化のない、信頼性の高い磁気テープを提供することができる。
以下に、本発明の磁気テープの構成要素として、磁気テープの構成、非磁性支持体、磁性層、磁性粉末、磁性粉末の製造方法、磁性塗料の調製、下層、結合剤、潤滑剤、分散剤、バック層、下層およびバックコート層の調整、有機溶剤の順に、項分けして、詳しく説明する。
<磁気テープの構成>
本発明の磁気テープは、非磁性支持体、非磁性支持体の上に少なくとも1層の磁性層を有する構成で、高密度記録に寄与する磁性層は最上層磁性層である。また、必要に応じて、磁性層形成面(記録面)とは反対の面にバック層を設けてもよく、最上層磁性層と非磁性支持体の間に下層を設けてもよい。さらに、最上層磁性層の下に下層を介してサーボ信号を記録する下層磁性層を設けてもよい。
磁気テープの厚さ(磁気テープの総厚)は、8μm未満が好ましく、6μm未満がより好ましく、5.0μm未満がさらに好ましい。磁気テープの厚さが8μm以上では、リールに巻回できる磁気テープの全長が短くなって、磁気テープカートリッジ1巻当たりの容量が低下するためである。また、薄い非磁性支持体は得にくいのと、得られても高コストなので、磁気テープの厚さは通常2.5μm以上である。
磁気テープの長手方向のヤング率EMDは、5GPa以上が好ましく、7GPa以上がより好ましい。この範囲が好ましいのは、磁気テープの長手方向のヤング率は、5GPa未満になると、磁気テープが伸びたり、傷ついたりして、電磁変換特性が劣化する場合があるためである。また、磁気テープ幅が1/2インチ以下の磁気テープで、磁気テープ全厚が6μm未満の磁気テープでは、8GPa以上が好ましく、11GPa以上がより好ましく、12GPa以上がさらに好ましく、14GPa以上がいっそう好ましい。通常、磁気テープの長手方向のヤング率EMDは、30GPa以下である。この理由は、30GPa以上のEMDは得にくいのと、得られても高コストになるためである。また、EMDが30GPaを超えると、LTOコンピュータカートリッジのようなリニアレコーディングタイプでは、磁気テープと磁気ヘッドアレイとのコンタクトが悪くなって、C/Nの低下やエラーレートの上昇が起こる場合があるためである。
<非磁性支持体>
非磁性支持体には、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ナフタレンテレフタレートフィルム、芳香族ポリアミドフィルム、芳香族ポリイミドフィルム等が使用される。
非磁性支持体の厚さは、用途により異なるが、通常2〜8μm、好ましくは2〜7μm、より好ましくは2〜5μm、さらに好ましくは2〜4.5μm、いっそう好ましくは2〜4μmである。この範囲の厚さの非磁性支持体が使用されるのは、2μm未満では製膜が難しく、またテープ強度が小さくなり、7μmを超えるとテープ全厚が厚くなり、テープ1巻当りの記録容量が小さくなるためである。
非磁性支持体の長手方向のヤング率ESMDは、磁気テープ幅、非磁性支持体の厚さによって異なるが、通常5GPa以上が好ましく、7Gpa以上が好ましい。この範囲のヤング率の非磁性支持体が好ましいのは、5GPa未満では、磁気テープの長手方向のヤング率EMDが低くなる場合があるためである。また、磁気テープ幅が1/2インチ以下で、磁気テープ全厚が6μm未満の場合は、8GPa以上が好ましく、10GPa以上がより好ましく、12GPa以上のものがさらに好ましい。15GPa以上がいっそうこの好ましい。この範囲のヤング率の非磁性支持体が好ましいのは、8GPa未満では、磁気テープの長手方向の強度が低くなる場合があるためである。非磁性支持体の長手方向のヤング率ESMDを高くする方法には、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミドのようにヤング率が高い樹脂のフィルムを用いて長手方向に延伸する、フィルム中にヤング率の高いフィラを添加する、フィルムの表面にヤング率の高い金属等の膜を形成する、ヤング率の高い金属等をフィルムでラミネートする方法等がある。
なお、長手方向のヤング率ESMDが高い非磁性支持体は高コストなので、ESMDは通常40GPa以下である。
<磁性層>
磁性層は、少なくとも1層の、記録層として設けられる最上層磁性層からなり、この最上層磁性層の厚さは、5〜150nm以下が好ましい。120nm以下がより好ましく、90nm以下がさらに好ましい。また、10nm以上がより好ましく、15nm以上がさらに好ましい。この範囲が好ましいのは、5nm未満では均一厚さの磁性層形成が難しく、150nmを超えると厚さ減磁により再生出力の低下が起こりやすいためである。
なお、最上層磁性層が90nm以下と薄い場合、非磁性下層を介して最上層磁性層の下に、サーボ信号記録用の下層磁性層を設けてもよい。
磁気テープの最上層磁性層の残留磁束密度(Br)と厚さδとの積(Br・δ)が0.001μTm以上、0.06μTm以下が好ましい。Br・δは0.004μTm以上、0.04μTm以下がより好ましい。Br・δが0.001μTm未満だと、MRヘッドを使用した場合も再生出力(C)が小さくなり再生出力ノイズ比(C/N)が小さくなり、Br・δが0.06μTmを越えると、MRヘッドが飽和してノイズ(N)が高くなり再生出力ノイズ比(C/N)が小さくなるためである。
<磁性粉末>
塗布型磁気テープでは磁性粉末を磁性層に用いるが、この磁性粉末の特性が磁気テープの特性に重要な役割を果たす。磁性粉末には、針状の鉄系磁性粉末、略粒状の希土類元素−ホウ素−鉄系磁性粉末、略粒状の希土類元素−鉄系磁性粉末、略粒状の窒化鉄系磁性粉末、略粒状のFe162相含有窒化鉄系磁性粉末、板状の六方晶系Baフェライト磁性粉末がある。これらの磁性粉末の中、略粒状の磁性粉末が好ましく、略粒状の窒化鉄系磁性粉末がより好ましく、略粒状のFe162相含有窒化鉄系磁性粉末が特に好ましい。略粒状のFe162相含有窒化鉄系磁性粉末が特に好ましいのは、30nm以下の微粒子で、かつ保磁力を高くでき、しかも保磁力の変化率を小さく制御しやすいためである。
なお、Fe162相の含有の有無はX線回折によって確認できる。
また、上述のように、この希土類−窒化鉄系磁性粉末は、−100℃と50℃間の保磁力の変化率を10%以下にすると、磁気テープの保磁力の温度変化率も小さくなる傾向にあるので好ましい。
なお、磁性粉末の保磁力の変化率も、上述の磁気テープの長手方向における保磁力の変化率を求める方法に準拠して求めた。
本発明の磁気テープの最上層磁性層に使用する略粒状のFe162相含有窒化鉄系磁性粉末の粒子サイズは、上述のように、30nm以下が好ましい。磁性粉末の粒子体積は500nm〜5000nmがより好ましく、500〜3000nmがさらに好ましく、500〜2000nmがいっそう好ましい。この範囲の磁性粉末の粒子体積がより好ましいのは、磁性粉末の粒子体積が500nm未満では、磁性塗料への磁性粉末の均一分散が難しく、かつ保磁力の温度変化が大きくなる場合があり、5000nmを超えると磁気テープの粒子性ノイズ(N)が高くなると共に、磁性層面の平滑性が低下してノイズ(N)が高くなって、再生出力ノイズ比(C/N)が低くなる場合があるためである。略粒状の磁性粉末とは、軸比(長径/短径)が2未満、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.5未満である、球状、略球状、楕円体状、略楕円体状、多面体状、略多面体状、板状、略板状の粒子である。略粒状の磁性粉末は、表面に凹凸のあるもの、及び若干の変形を有するものでも良い。これらの粒子体積は、透過型電子顕微鏡(TEM)にて撮影した写真から実測した粒子サイズを用いて算出した粒子体積である。粒子サイズや形状に分布がある場合には、50個の粒子から、数平均長軸長、数平均短軸長等を求め、この値から体積の数平均値より求められる。算出の方法は、粒子形状によって、(a)球体モデル(粒子体積=4πr/3:r=粒子サイズの1/2)、(b)円柱モデル(粒子体積=πrh:r=短軸長の1/2、h=長軸長)、(c)角柱モデル(粒子体積=dh:d=短軸長、h=長軸長)のモデルで個々の粒子の体積を計算する。また、これら以外にも粒子形状によって回転楕円体モデルを用いて計算することができる。
なお、磁性粉末が真球の場合、磁性粉末の粒子体積が500nmは、磁性粉末の粒子サイズが約10nm、2000nmは約16nm、3000nmは約18nm、5000nmは約21nmに相当する。
Fe162相含有窒化鉄系磁性粉末における、鉄に対する窒素の含有量は、1.0〜20.0原子%が好ましく、5.0〜18.0原子%がより好ましく、8.0〜15.0原子%がさらに好ましい。窒素が少なすぎると、Fe162 相の形成量が少なく、保磁力増加の効果が少なくなり、多すぎると、非磁性窒化物が形成されやすく、保磁力増加の効果が少なくなり、また飽和磁化が過度に低下する。
また、鉄に対する希土類元素、シリコン、アルミニウムの総含有量は、0.10〜40.0原子%が好ましく、さらに好ましくは1.0〜30.0原子%、より好ましくは3.0〜25.0原子%である。これらの元素の総含有量が少なすぎると、磁性粉末の磁気異方性が減少するだけでなく、焼結防止効果が下がることから、30nm以上の粗大粒子が形成されやすくなる。また、これらの元素が多すぎると、飽和磁化の過度な低下が起こりやすい。
なお、希土類元素、シリコン、アルミニウムの中、シリコン、アルミニウムはFe162相への窒化が起こりやすいという利点を有する。一方、希土類元素は磁気テープの耐食性を向上させやすいという利点を有する。また、希土類元素、シリコン、アルミニウム以外にも、効果は希土類元素、シリコン、アルミニウムより劣るが、ホウ素、リン、チタン、ジルコニウム、カーボンも焼結防止効果を有するので、目的に応じて、ホウ素、リン、チタン、ジルコニウム、カーボンを使用してもよい。
磁性粉末および磁気テープに含まれる元素は、蛍光X線分析やX線光電子分光分析に代表される非破壊分析法、ならびに原子吸光分析装置や窒素分析装置などによる破壊分析法を用いて測定することが出来る。本発明では、希土類元素、アルミニウム、シリコンの鉄に対する量については、蛍光X線分析法で定法に従って分析し(分析視野:直径10mm)、窒素の鉄に対する量については、X線光電子分光分析法で定法に従って分析した(分析視野:直径5mm)。X線光電子分光分析法で窒素量を分析する場合には、アルゴンガスでエッチングした後、鉄に対する窒素量を分析して、エッチング時間と鉄に対する窒素量との関係を求め、鉄に対する窒素量が一定になるエッチング時間での鉄に対する窒素量を求めた。
希土類−Fe162相含有窒化鉄系磁性粉末は、飽和磁化が50〜150Am2 /kg(50〜150emu/g)、好ましくは60〜120Am2 /kg(60〜120emu/g)、さらに好ましくは60〜100Am2 /kg(60〜100emu/g)である。磁性粉末の保磁力および飽和磁化は、最上層磁性層の保磁力および残留磁束密度(Br)と厚さδとの積(Br・δ)が上述の磁性層の好ましい特性になるように選択すればよい
また、この希土類−窒化鉄系磁性粉末は、−100℃と50℃間の保磁力の変化率を10%以下にすると、磁気テープの保磁力の温度変化率も小さくなる傾向にあるので好ましい。
なお、磁性粉末の保磁力の変化率も、上述の磁気テープの保磁力の変化率を求める方法に準拠して求めた。
本発明の磁気テープに使用する磁性粉末として、鉄および窒素を少なくとも構成元素とし、かつFe16相を少なくとも含む、粒子サイズが30nm以下の磁性粉末であって、該磁性粉末の表面が希土類元素、シリコン、アルミニウムの中から選ばれた少なくとも1種を含む化合物層で構成され、−100℃と50℃間の保磁力の変化率が10%以下である磁性粉末を均一分散して上述の磁気テープの構成とすることで、デジタルビデオテープ、コンピュータ用バックアップテープ等、特にコンピュータ用バックアップテープの高密度記録用の磁気テープに適した性能を発揮する。鉄に対する窒素の含有量が1.0〜20原子%の磁性粉末がより好ましい。
このような効果が奏される理由については、必ずしも明らかではないが、Fe162 相と特定の元素が含ませ、かつ上述の磁気テープ構成とすることで、粒子サイズが30nm以下と小さくても、高い保磁力と、小さい保磁力の温度変化が実現できると考えられる。
本発明の磁性粉末において、希土類元素、シリコン、アルミニウムの中から選ばれた少なくとも1種の元素は磁性粉末の内部に存在させてもよいが、形状を維持した状態でより高い保磁力を得るために、磁性粉末を内層と外層との多層構成として、外層部分を前記元素を含む化合物(通常酸化物)で構成するのが望ましい。この場合、内層のFe相をFe162 相単層にすることが好ましいが、Fe162 相とα−Fe相、あるいはFeN相の混相を排除するものではない。
希土類元素としては、イットリウム、イッテルビウム、セシウム、プラセオジウム、ランタン、ユーロピウム、ネオジウムなどが挙げられる。これらのうち、イットリウム、サマリウムまたはネオジウムは、保磁力の向上効果、還元時の粒子形状の維持効果が大きい。
また、希土類元素、シリコン、アルミニウム以外にも、チタン、ジルコニウム、リン、カーボン、マグネシウム、チタニウム、マンガン、ホウ素などを用いることが出来る。これらの元素を組合せて使用することで、所望の磁気特性、温度特性、さらには保存安定性やコストを考慮した材料設計を行うことができる。
<磁性粉末の製造方法>
つぎに本発明の磁性粉末の製造方法について、説明する。
出発原料としては、鉄系酸化物、酸水酸化物または水酸化物を使用する。たとえば、ヘマタイト、マグネタイト、ゲータイトなどが挙げられる。粒子サイズは、とくに限定されないが、30nm以下で、保磁力の温度変化が小さい磁性粉末を作製するためには、5〜30nm程度が望ましい。粒子サイズが小さすぎると、還元処理時に粒子間焼結が生じやすく、また大きすぎると、還元処理が不均質となりやすく、粒子サイズ、粒子体積や磁気特性の制御が難しくなる。また、保磁力の温度変化が小さい磁性粉末を作製するためには、粒子サイズの分布の少ない出発原料を使用する。形状は、球状、楕円体状、多面体状、板状などの粒子であり、とくに限定されないが、軸比(長軸/短軸)2未満が好ましく、1.5未満が、より好ましい。
この出発原料に希土類元素、シリコン、アルミニウム、または必要に応じて、チタン、ジルコニウム、炭素、リン、ホウ素などの元素を含む化合物を被着する。希土類元素を被着させる場合、通常は、アルカリまたは酸の水溶液中に出発原料を分散させ、これに希土類元素の塩を溶解させ、中和反応などにより原料粉末に希土類元素を含む水酸化物や水和物を沈殿析出させればよい。また、ホウ素、シリコン、アルミニウム、リンなどの元素を含む化合物を被着させる場合、原料粉末を浸漬した溶液に、これらの化合物を溶解させ、吸着により被着させることが出来る。あるいは沈澱析出を行うことにより被着しても良い。原料粉末に対して、前記元素を同時にあるいは交互に被着させてもよい。これらの被着処理を効率良く行うため、還元剤、pH緩衝剤、粒径制御剤などの添加剤を混入させてもよい。保磁力の温度変化が小さい磁性粉末を作製するためには、濾液の導電度が100μS/cm以下になるまで洗浄することが好ましい。
つぎに、これを窒素ガス等の雰囲気中または窒素ガス等を流しながら熱処理を行う。使用ガスは特に限定されず、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガス、酸素、およびこれらの混合ガスを用いることが出来る。保磁力の温度変化が小さい磁性粉末を作製するためには、熱処理温度は100℃〜900℃とするのが望ましい。120℃〜700℃がより好ましく、150℃〜500℃がさらに好ましく、200〜400℃がいっそう好ましい。熱処理温度が900℃を超えると、粒子同士が焼結し、粒子サイズの分布が大きくなる。また、100℃に満たない低い温度では、出発原料に含まれる水分により、還元が不均一となりやすい。また、10〜50℃/min.の比較的遅い速度で昇温することが好ましい。
熱処理後、水素ガス中で加熱還元する。還元ガスは、とくに限定されず、水素ガス以外に、一酸化炭素ガスなどの還元性ガスを使用してもよい。還元温度としては、300℃〜600℃とするのが望ましい。還元温度が300℃より低くなると、還元反応が十分進まなくなり、また、600℃を超えると、粉末粒子の焼結が起こりやすくなる。また、保磁力の温度変化が小さい磁性粉末を作製するためには、還元温度になるまでは不活性ガス中で昇温して、試料温度が均一になってから還元性ガスに切り替えて還元処理を行うことが好ましい。また、10〜50℃/min.の比較的遅い速度で昇温することが好ましい。
加熱還元処理後、窒化処理を施す。窒化処理としては、アンモニアを含むガスを用いて行うのが望ましい。アンモニアガス単体のほかに、水素ガス、ヘリウムガス、窒素ガス、アルゴンガスなどをキャリアーガスとした混合ガスを使用してもよい。窒素ガスは安価なため、とくに好ましい。窒化処理温度は、90℃〜250℃とするのがよい。窒化処理温度が低すぎると、窒化が十分進まず、保磁力増加の効果が少ない。高すぎると、窒化が過剰に促進され、FeNやFeN相などの割合が増加し、保磁力がむしろ低下し、さらに飽和磁化の過度な低下を引き起こしやすい。また、保磁力の温度変化が小さい磁性粉末を作製するためには、窒化温度になるまでは不活性ガス中で降温して、試料温度が均一になってから窒化処理ガスに切り替えて窒化処理を行うことが好ましい。
このような窒化処理後、酸化処理を行うことにより、本発明の鉄と窒素を構成要素とし、適度な表面化合物層を有する磁性粉末が得られる。酸化処理としては、酸素を含む混合ガスを用いて行うのが望ましい。これには窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどを用いることができる。
酸化温度は、200℃以下とするのがよい。酸化温度が高すぎると、酸化が過剰に進み、窒化鉄相が著しく減少し、保磁力や飽和磁化の劣化を招く。また、保磁力の温度変化が小さい磁性粉末を作製するためには、はじめに低濃度の酸素を含有する不活性ガス(例:200ppmの低濃度酸素−窒素混合ガス)を導入することで磁性粉末の温度上昇を抑制し、磁性粉末表面に均一温度で表面酸化膜を形成した後、高濃度の酸素を含有する不活性ガス(例えば酸素濃度1000ppmの不活性ガス)を導入して、均一厚さの酸化膜を形成することが好ましい。
なお、磁性粉末の温度上昇がない範囲で徐々に酸素濃度を増加させる方法を採用してもよい。
本発明における上記の磁性粉末は、従来の形状磁気異方性のみに基づく針状磁性粉末とは異なり、粒状形状とした場合でも、大きな保磁力を発現する。さらには適度な飽和磁化と優れた温度特性を有するものである。
この磁性材料と結合材とを有する磁性層を構成要素とする磁気テープは、磁気ヘッドでの記録・消去が可能な範囲内で高い保磁力と適度な飽和磁化を示し、薄層領域の塗布型磁気テープとしてすぐれた電磁変換特性を付与する。さらには保磁力の温度特性に優れる、本発明の磁性粉末は、飽和磁化、保磁力、粒子形状のすべてが薄層最上層磁性層を得るのに本質的に適したものである。
本発明は、上記特定の磁性粉末を用いて薄層磁性層(たとえば厚さ150nm以下)を形成することにより良好な記録再生特性を得るに至ったものであるが、極めて粒子サイズや粒子体積が小さく、かつ高保磁力と安定した温度特性を有するばかりでなく、適度な飽和磁化を併せ持つ材料であり、これまでの塗布型磁気テープの材料技術の常識を打ち破る画期的なことである。
本発明の磁気テープは、上記した窒化鉄系磁性粉末を結合剤と共に、分散技術を駆使して溶剤中に均一分散して得られた磁性塗料を、非磁性支持体上に塗布し乾燥して、磁性層を形成することにより作製できる。
<磁性塗料の調製>
磁気テープの最上層磁性層には、粒子サイズが30nm以下の超微粒子磁性粉末を塗膜中に高充填化し、かつ高分散させるためには、下記のような工程で、塗料製造を行うのが好ましい。
混練工程の前工程として、磁性粉末の顆粒を解砕機で解砕し、その後、混合機でリン酸系の有機酸等やバインダ樹脂と混合し、磁性粉の表面処理、バインダ樹脂との混合を行う工程を設けるのが好ましい。
混練工程には、連続式2軸混練機により固形分濃度80〜85重量%、磁性粉末に対するバインダ樹脂の割合が17〜30重量%で混練を行うのが好ましい。
混練工程の後工程として、連続式2軸混練機か他の希釈装置を用いて、少なくとも1回以上の、バインダ樹脂溶液および/または溶媒を加えて混練希釈する工程、サンドミル等の微小メデイア回転型分散装置による分散工程等により塗料分散を行うのが好ましい。
なお、磁性層に含ませる非磁性粉末が磁性粉末よりも大きなものでは、非磁性粉末が磁性塗料の分散時に分散力となる分散メディアによるせん断応力を遮断して、磁性粉末の分散を阻害する場合がある。このような非磁性粉末は、磁性粉末とは別に分散してスラリー状にしておき、これを磁性粉末の分散塗料と混合して磁性層用塗料を調製するようにすると、保磁力の温度変化が小さい最上層磁性層が得やすいので好ましい。
<下層>
本発明の磁気テープにおいては、最上層磁性層の平滑性の向上、耐久性の向上のため、下層を形成するのが望ましい。特に、磁性層厚さが90nm以下の磁気テープにおいては下層形成効果が大きい。また、最上層磁性層の磁気記録信号を乱さないため、通常、下層は非磁性である。
下層の厚さは、0.10〜1.5μmが好ましく、0.15〜1.0μmがより好ましく、0.15〜0.9μmがさらに好ましい。0.10μm未満では、磁気テープの耐久性向上効果が小さく、1.5μmを超えると、磁気テープの耐久性の向上効果が飽和し、またテープ全厚が厚くなり、1巻当りのテープ長さが短くなり、記憶容量が小さくなる。
下層には、塗料粘度やテープ剛性の制御を目的で、酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウムなどの非磁性粉末を含ませることができる。非磁性の酸化鉄には、針状のほか、粒状または無定形のものがある。針状のものは、平均長軸長50〜200nm、平均短軸長(平均粒径)5〜100nmであるのが好ましく、粒状または無定形のものは、平均粒径5〜200nmであるのが好ましく、5〜150nmであるのがより好ましく、5〜100nmであるのが最も好ましい。粒径が上記よりも小さいと均一分散が難しく、また上記よりも大きいと下層と磁性層の界面の凹凸が増加しやすい。
酸化アルミニウムは、平均粒径が10〜100nmであるのが好ましく、20〜100nmであるのがより好ましく、30〜100nmであるのが最も好ましい。平均粒径が上記よりも小さいと均一分散が難しくなり、また上記よりも大きいと下層と磁性層の界面の凹凸が増加しやすい。
下層には、導電性改良の目的で、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラックを含ませることができる。
これらのカーボンブラックは、平均粒径が通常5〜200nmであるのが好ましく、より好ましくは10〜100nmである。カーボンブラックは、ストラクチャー構造を持っており、平均粒径が小さすぎるとカーボンブラックの分散が難しくなり、大きすぎると表面平滑性が悪くなる。なお、表面平滑性を損なわない範囲で、平均粒径が前記範囲を超える大粒径のカーボンブラックを含ませることを排除するものではない。この場合、下層へのカーボンブラックの添加量は、両者のカーボンブラックを合わせて、無機粉末100重量部に対して、通常5〜70重量部、とくに15〜50重量部とするのが好ましい。
<結合剤>
下層、磁性層に使用する結合剤には、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合樹脂、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合樹脂などの塩化ビニル系樹脂、ニトロセルロース、エポキシ樹脂などの中から選ばれる少なくとも1種と、ポリウレタン樹脂との組み合わせがある。
とくに、塩化ビニル系樹脂とポリウレタン樹脂とを併用するのが好ましい。その中でも、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合樹脂とポリウレタン樹脂を併用するのが最も好ましい。
ポリウレタン樹脂には、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタンなどがある。
これらの結合剤は、磁性粉末などの分散性を向上し、充填性を上げるために、官能基を有するものが好ましい。官能基には、COOM、SOM、OSOM、P=O(OM)3 、O−P=O(OM)(Mは水素原子、アルカリ金属塩またはアミン塩)、OH、NR1 R2 、NR3 R4 R5(R1 ,R2 ,R3 ,R4 ,R5 は水素または炭化水素基、通常その炭素数が1〜10である)、エポキシ基などがある。2種以上の樹脂を併用する場合、官能基の極性を一致させるのが好ましく、中でも、−SOM基同士の組み合わせが好ましい。
これらの結合剤とともに、結合剤中に含まれる官能基などと結合させて架橋する熱硬化性の架橋剤を併用するのが望ましい。この架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどや、これらのイソシアネート類とトリメチロールプロパンなどの水酸基を複数個有するものとの反応生成物、上記イソシアネート類の縮合生成物などの各種のポリイソシアネートが好ましく用いられる。
<潤滑剤>
磁気テープでは、磁性層、下層には、引用特許文献に記載の従来公知の潤滑剤を添加でき、その添加量も上記公知の量でよい。例えば、下層にミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸等の炭素数10以上の高級脂肪酸と、ステアリン酸ブチルなどの高級脂肪酸のエステルを含有させると、ヘッドとの摩擦係数が小さくなるので、好ましい。また、磁性層には、パルミチン酸、ステアリン酸等のアミドである脂肪酸アミドと、高級脂肪酸のエステルを含有させると、テープ走行時の摩擦係数が小さくなるので、好ましい。なお、磁性層の潤滑剤と下層の潤滑剤の相互移動を排除するものではない。
<分散剤>
下層や磁性層に含まれる非磁性粉末やカーボンブラック、磁性粉末は、結合剤(バインダ樹脂)との分散性を良くするため、適宜の分散剤で表面処理することができる。また、上記各粉体を含む下層、磁性層を形成するための塗料中に適宜の分散剤を添加してもよい。分散剤としては、リン酸系分散剤、カルボン酸系分散剤、アミン系分散剤、キレート剤、各種シランカップリング剤などが好適なものとして用いられる。これらの分散剤は、混練前処理工程、混練工程や初期分散工程の後に配合するのが好ましい。リン酸系分散剤としては、リン酸モノメチル、リン酸ジメチル、リン酸モノエチル、リン酸ジエチルなどのアルキルリン酸エステル類、フエニルホスホン酸、モノオクチルフエニルホスホン酸などの芳香族リン酸類などが挙げられ、市販品として、東邦化学製の「GARFAC RS410」、城北化学工業製の「JP−502」、「JP−504」、「JP−508」などを用いることができる。また、カルボン酸系分散剤としては、炭素数12〜18個の脂肪酸、具体的には、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸などが用いられる。また、上記脂肪酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属からなる金属石けん、上記脂肪酸のアミド、上記脂肪酸のエステルまたはこれにフッ素を含ませた化合物、ポリアルキレンオキサイドアルキルリン酸エステル、レシチン、トリアルキルポリオレフィンオキシ第四級アンモニウム塩(アルキルは炭素数1〜5個、オレフィンはエチレン、プロピレンなど)、硫酸塩、スルホン酸塩、りん酸塩、銅フタロシアニン、安息香酸、フタル酸、テトラカルボキシルナフタレン、ジカルボキシルナフタレン、炭素数12〜22の脂肪酸などが挙げられる。アミン系分散剤としては炭素数8〜22の脂肪族アミン、芳香族アミン、アルカノールアミン、アルコキシアルキルアミン等がある。さらに、キレ―ト剤としては、1,10−フエナントロリン、EDTA、ジメチルグリオキシム、アセチルアセトン、グリシン、ジチアゾン、ニトリロ三酢酸などが挙げられる。これらは、単独でも組み合わせて使用してもよい。
分散剤は、いずれの層においても結合剤100重量部に対して通常、0.5〜20重量部の範囲で添加される。
<バック層>
バック層は、必須の構成要素ではないが、本発明の磁気テープを構成する非磁性支持体の他方の面(磁性層が形成されている面とは反対側の面)には、走行性の向上等を目的として、バック層を形成できる。
このバック層は、蒸着、スパッタ、CVD、塗布により、形成できる。バック層に磁気サーボ信号を記録する場合には、従来公知の薄膜型または塗布型磁性層がバック層に使用されるが、磁性層に磁気サーボ信号を記録する場合や、バック層に光学サーボ信号を記録する場合には、バック層としてバックコート層が使用される。バックコート層としては、カーボンブラックとバインダ樹脂からなるバックコート層が一般的である。このようなバックコート層の厚さとしては、0.2〜0.8μmが好ましい。また、表面粗さRaとしては、3〜8nmが好ましく、4〜7nmがより好ましい。
バックコート層に含ませるカーボンブラックには、従来公知のアセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等の小粒径カーボンブラックと、少量の大粒径カーボンブラックを使用する。小粒径カーボンブラックの数平均粒子径は5〜100nmで、大粒径カーボンブラックの数平均粒径200〜400nmである。
バックコート層のバインダ樹脂としては、セルロース系樹脂とポリウレタン系樹脂を使用するのが好ましい。また、バインダ樹脂を硬化するために、ポリイソシアネート化合物等の架橋剤を用いるのが好ましい。
また、バックコート層には、必要により、強度向上を目的として、数平均粒子径が10〜100nmの酸化アルミニウム、セリウム等の希土類元素、ジルコニウム、珪素、チタン、マンガン、鉄等の元素の酸化物または複合酸化物板状粒子や、導電性改良を目的として、板状ITOを添加することができる。
なお、バックコート層の酸化鉄、酸化セリウム、酸化マンガン、ITOの分散性向上の目的で、アルミナ、シリカ、ジルコニアのようなアルミニウム、珪素、ジルコニウム化合物(特にアルミナのような酸化物)で表面処理することが好ましい。処理量は通常2〜15重量%である。
<下層およびバックコート塗料の調整>
下層塗料、バックコート塗料の調製にあたり、従来から公知の塗料製造工程を使用でき、とくにニーダなどによる混練工程や一次分散工程を併用するのが好ましい。一次分散工程では、サンドミルを使用すると、充填剤、カーボンブラックなどの分散性の改善とともに、表面性状を制御できるので、望ましい。
また、非磁性支持体上に、下層塗料、バックコート塗料を塗布する際には、グラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージヨン塗布などの従来から公知の塗布方法が用いられる。
なお、下層塗料および磁性塗料の塗布方法は、非磁性支持体上に下層塗料を塗布し乾燥したのちに磁性塗料を塗布する、逐次重層塗布方法か、下層塗料と磁性塗料とを同時に塗布する、同時重層塗布方法(ウェット・オン・ウェット)かのいずれを採用してもよい。塗布時の薄層磁性層のレベリングを考えると、下層塗料が湿潤状態のうちに磁性塗料を塗布する、同時重層塗布方式を採用するのが好ましい。
<有機溶剤>
塗布型磁気テープ用の磁性塗料、下層塗料、薄膜型および塗布型磁気テープ用のバックコート層塗料に使用する有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル系溶剤等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独でまたは混合して使用でき、さらにトルエンなどと混合して使用することもできる。
つぎに、本発明の実施例を記載して、さらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例において、部とあるのは重量部を示すものとする。
(A)窒化鉄系磁性粉末の製造
磁性粉末A1
形状が略球状で、粒子サイズの分布が小さい、粒子サイズ(中央値)が17nmのマグネタイト粒子(粒子サイズの範囲:15〜19nm)10部を500部の水中に、超音波分散機を用いて30分間分散させた。この分散液に2.5部の硝酸イットリウム[Y(NO)・6HO]を加えて溶解し、30分間撹拌した。これとは別に、0.85部の水酸化ナトリウムを100部の水に溶解した。この水酸化ナトリウム水溶液を上記の分散液に約30分間かけて滴下し、滴下終了後、さらに1時間攪拌した。この処理により、マグネタイト粒子表面にイットリウムの水酸化物を被着析出させた。これを、濾液の伝導度が80μSになるまで水洗し、ろ過後、90℃で乾燥して、マグネタイト粒子の表面にイットリウムの水酸化物を被着形成した粉末を得た。
このようにして得られた、マグネタイト粒子の表面にイットリウムの水酸化物を被着形成した粉末を、窒素気流中で20℃/min.の速度で200℃まで昇温し、窒素ガス気流中200℃で1時間熱処理した。ついで、窒素気流中20℃/min.の速度で400℃まで昇温し、温度が400℃均一になった時点で、ガスを水素ガスに切り替え、水素ガス気流中400℃で10時間加熱還元して、イットリウム−鉄系磁性粉末を得た。水素還元の終了は出口の水素中の水蒸気濃度が100ppm以下になったことで確認した。つぎに、水素ガスを流した状態で、約2時間で、120℃まで降温した。120℃に到達した状態で、ガスをアンモニアガスに切り替え、温度を120℃に保った状態で、30時間窒化処理を行った。その後、アンモニアガスを窒素ガスに切り替えて、120℃から100℃まで降温した。100℃に到達した状態で、200ppmの酸素を含む、酸素と窒素の混合ガスに切り替え、2時間安定化処理を行った後、1000ppmの酸素を含む、酸素と窒素の混合ガスに切り替え、さらに4時間安定化処理を行った後、室温まで冷却した。磁気テープ作製用の磁性粉末はそのままコンテナに移し、磁気特性等の測定用試料は、温度上昇がないことを確認しながら、徐々に酸素濃度を増加させて最終的に酸素濃度が20%になった時点で空気中に取り出した。
このようにして得られたイットリウム−窒化鉄系磁性粉末は、そのイットリウムと窒素の含有量を蛍光X線分析法およびX線光電子分光分析法により測定したところ、それぞれFeに対して5.3原子%と10.8原子%であった。また、X線回折パターンより、Fe162 相を示すプロファイルを得た。さらに、高分解能分析透過電子顕微鏡で粒子形状を観察したところ、ほぼ球状の粒子で、粒子サイズ(中央値)は17nm(粒子サイズの範囲:15〜19nm)であった。平均粒子体積は2600cmであった。図2は、この磁性粉末の透過型電子顕微鏡写真を示したものである。また、1,273kA/m(16kOe)の磁界を印加して測定した室温における飽和磁化は101.6Am2 /kg(101.6emu/g)、保磁力は240.4kA/m(3,020エルステッド)であった。さらに、測定部をヘリウムガスで置換した後、−100℃、25℃(室温)、50℃で保磁力を測定した。保磁力の最大値と最小値から求めた保磁力の変化率は、2.9%であった。
磁性粉末A2
出発原料である粒子サイズ(中央値)が17nmのマグネタイト粒子を、粒子サイズ(中央値)が15nmのマグネタイト粒子(粒子サイズの範囲:13〜17nm)に変更し、硝酸イットリウム[Y(NO)・6HO]と水酸化ナトリウムをそれぞれ、2.5部から5.5部に、0.85部から2.0部に変更した以外は、磁性粉末A1と同様にして、イットリウム−窒化鉄系磁性粉末を製造した。
このイットリウム−窒化鉄系磁性粉末は、そのイットリウムと窒素の含有量を蛍光X線分析法およびX線光電子分光分析法により測定したところ、それぞれFeに対して11.2原子%と9.5原子%であった。また、X線回折パターンより、Fe162 相を示すプロファイルを得た。
さらに、高分解能分析透過電子顕微鏡で粒子形状を観察したところ、略球状の粒子で、粒子サイズ(中央値)は15nm(粒子サイズの範囲:13〜17nm)であった。平均粒子体積は1800nmであった。また、室温における飽和磁化は90.1Am2 /kg(90.1emu/g)、保磁力は226.9kA/m(2,850エルステッド)であった。さらに−100℃、25℃(室温)、50℃で保磁力を測定した後、保磁力の最大値と最小値から求めた保磁力の変化率は、7.2%であった。
磁性粉末A3
酸化処理温度を100℃から120℃に変更し、アンモニアガス処理後、窒素ガスに切り替えて30分間保持した以外は、磁性粉末A1と同様にして、イットリウム−窒化鉄系磁性粉末を製造した。
このイットリウム−窒化鉄系磁性粉末は、そのイットリウムと窒素の含有量を蛍光X線分析法およびX線光電子分光分析法により測定したところ、それぞれFeに対して5.1原子%と8.5原子%であった。また、X線回折パターンより、Fe162 相を示すプロファイルを得た。
さらに、高分解能分析透過電子顕微鏡で粒子形状を観察したところ、略球状の粒子で、粒子サイズ(中央値)は17nm(粒子サイズの範囲:15〜19nm)であった。平均粒子体積は2600nmであった。また、室温における飽和磁化は65.8Am2 /kg(65.8emu/g)、保磁力は218.9kA/m(2,750エルステッド)であった。さらに−100℃、25℃(室温)、50℃で保磁力を測定した後、保磁力の最大値と最小値から求めた保磁力の変化率は、8.8%であった。
磁性粉末A4
磁性粉末A1の作製に使用した、粒子サイズ(中央値)が17nmのマグネタイト粒子10部を500部の水に、超音波分散機を用いて、30分間分散させ、この分散液に2.5部の硝酸イットリウム[Y(NO)・6HO]と3.3部の塩化アルミニウム[AlCl・6HO]を加えて溶解し、30分間撹拌した。これとは別に、2.43部の水酸化ナトリウムを100部の水に溶解した。この水酸化ナトリウム水溶液を上記の分散液に約30分間かけて滴下し、滴下終了後10分間攪拌し、ついで、0.1Nの塩酸溶液を滴下して中性(約pH7)にした後さらに3時間攪拌した。この処理により、マグネタイト粒子表面にイットリウムとアルミニウムの化合物を被着析出させた。これを磁性粉末A1と同様に濾液の伝導度が80μSになるまで水洗し、ろ過後、90℃で乾燥して、マグネタイト粒子の表面にイットリウムとアルミニウムの化合物を被着形成した粉末を得た。
このようにマグネタイト粒子の表面にイットリウムとアルミニウムの化合物を被着形成した粉末から、磁性粉末A1と同様に、熱処理、水素還元処理、窒化処理、安定化処理を行い、イットリウム−アルミニウム−窒化鉄系磁性粉末を作製した。
このイットリウム−アルミニウム−窒化鉄系磁性粉末は、そのイットリウム、アルミニウムおよび窒素の含有量を蛍光X線分析法およびX線光電子分光分析法により測定したところ、それぞれFeに対して5.3原子%、10.5原子%および9.4原子%であった。また、X線回折パターンより、Fe162 相を示すプロファイルを得た。さらに、高分解能分析透過電子顕微鏡で粒子形状を観察したところ、略球状の粒子で、粒子サイズ(中央値)は17nm(粒子サイズの範囲:15〜19nm)であった。平均粒子体積は2600nmであった。また、室温における飽和磁化は104.1Am2 /kg(104.1emu/g)、保磁力は235.7kA/m(2,962エルステッド)であった。さらに−100℃、25℃(室温)、50℃で保磁力を測定した後、保磁力の最大値と最小値から求めた保磁力の変化率は、2.0%であった。
磁性粉末A5
磁性粉末A1と同様にして、熱処理、還元処理、窒化処理、安定化処理を行って得られたイットリウム−窒化鉄系磁性粉末を、再び、磁性粉末A1と同様に、還元処理、窒化処理、安定化処理を行った。ついで、磁性粉末A1と同様にして空気中に取り出した。
このようにして得られたイットリウム−窒化鉄系磁性粉末は、そのイットリウムと窒素の含有量を蛍光X線分析法およびX線光電子分光分析法により測定したところ、それぞれFeに対して5.3原子%と10.9原子%であった。また、X線回折パターンより、Fe162 相を示すプロファイルを得た。さらに、高分解能分析透過電子顕微鏡で粒子形状を観察したところ、ほぼ球状の粒子で、粒子サイズ(中央値)は17nm(粒子サイズ:15〜19nm)であった。平均粒子体積は2600cmであった。1,273kA/m(16kOe)の磁界を印加して測定した室温における飽和磁化は101.5Am2 /kg(101.5emu/g)、保磁力は245.8kA/m(3,090エルステッド)であった。さらに、測定部をヘリウムガスで置換した後、−100℃、25℃(室温)、50℃で保磁力を測定した。保磁力の最大値と最小値から求めた保磁力の変化率は、1.8%であった。
磁性粉末A6
磁性粉末A1の作製に使用した、粒子サイズ(中央値)が17nmのマグネタイト粒子10部を500部の水に、超音波分散機を用いて、30分間分散させ、この分散液に2.2部の珪酸ソーダ[SiO・NaO]を加えて溶解し、30分間撹拌した。これとは別に、0.1Nの薄塩酸水溶液200部を作製した。この希塩酸水溶液を上記の分散液に約30分間かけて滴下し、滴下終了後、さらに3時間攪拌した。この処理により、マグネタイト粒子表面にシリコンの化合物を被着析出させた。これを磁性粉末A1と同様に濾液の伝導度が80μSになるまで水洗し、ろ過後、90℃で乾燥して、マグネタイト粒子の表面にシリコンの化合物を被着形成した粉末を得た。
このようにマグネタイト粒子の表面にシリコンの化合物を被着形成した粉末から、磁性粉末A1と同様に、熱処理、水素還元処理、窒化処理、安定化処理を行い、シリコン−窒化鉄系磁性粉末を作製した。
このシリコン−窒化鉄系磁性粉末は、そのシリコンおよび窒素の含有量を蛍光X線分析法およびX線光電子分光分析法により測定したところ、それぞれFeに対して12.6原子%および11.0原子%であった。また、X線回折パターンより、Fe162 相を示すプロファイルを得た。さらに、高分解能分析透過電子顕微鏡で粒子形状を観察したところ、略球状の粒子で、粒子サイズ(中央値)は17nm(粒子サイズの範囲:15〜19nm)であった。平均粒子体積は2600nmであった。また、室温における飽和磁化は75.3Am2 /kg(75.3emu/g)、保磁力は220.8kA/m(2775エルステッド)であった。さらに−100℃、25℃(室温)、50℃で保磁力を測定した後、保磁力の最大値と最小値から求めた保磁力の変化率は、4.8%であった。
磁性粉末B1
最終洗浄濾液の伝導度を200μSにしたこと、熱処理を行わなかったこと、水素還元時の昇温を水素気流中で行ったこと、窒化処理温度までの降温を水素気流中で行ったこと、安定化温度までの降温をアンモニア雰囲気中で行ったことを除き、磁性粉末A1と同様にして、イットリウム−窒化鉄系磁性粉末の作製を行った。
このようにして得られたイットリウム−窒化鉄系磁性粉末は、そのイットリウムと窒素の含有量を蛍光X線分析法およびX線光電子分光分析法により測定したところ、それぞれFeに対して5.3原子%と10.8原子%であった。また、X線回折パターンより、Fe162 相を示すプロファイルを得た。さらに、高分解能分析透過電子顕微鏡で粒子形状を観察したところ、ほぼ球状の粒子で、粒子サイズ(中央値)は17nm(粒子サイズの範囲:15〜19nm)であった。平均粒子体積は2600cmであった。1,273kA/m(16kOe)の磁界を印加して測定した室温における飽和磁化は130.5Am2 /kg(130.5emu/g)、保磁力は211.0kA/m(2,650エルステッド)であった。さらに、測定部をヘリウムガスで置換した後、−100℃、25℃(室温)、50℃で保磁力を測定した。保磁力の最大値と最小値から求めた保磁力の変化率は、12.5%であった。
磁性粉末B2
安定化処理温度を100℃から220℃に変更した以外は、磁性粉末A1と同様にして、イットリウム−窒化鉄系磁性粉末を製造した。
このイットリウム−窒化鉄系磁性粉末は、そのイットリウムと窒素の含有量を蛍光X線分析法およびX線光電子分光分析法により測定したところ、それぞれFeに対して4.9原子%と5.6原子%であった。また、X線回折パターンより、Fe162 相とマグネタイト相を示すプロファイルを得た。
さらに、高分解能分析透過電子顕微鏡で粒子形状を観察したところ、略球状の粒子で、粒子サイズ(中央値)は17nm(粒子サイズの範囲:15〜19nm)であった。平均粒子体積は2600nmであった。また、室温における飽和磁化は48.3Am2 /kg(48.3emu/g)、保磁力は181.5kA/m(2,280エルステッド)であった。さらに−100℃、25℃(室温)、50℃で保磁力を測定した後、保磁力の最大値と最小値から求めた保磁力の変化率は、13.5%であった。
磁性粉末B3
出発原料である粒子サイズ(中央値)が17nmのマグネタイト粒子を、粒子サイズ(中央値)が34nm(粒子サイズの範囲:31〜37nm)のマグネタイト粒子に変更し、還元処理温度を400℃から450℃、窒化処理温度を120℃から160℃に変更した以外は、磁性粉末A1と同様に、熱処理、水素還元処理、窒化処理、安定化処理を行い、イットリウム−窒化鉄系磁性粉末を作製した。
このイットリウム−窒化鉄系磁性粉末は、そのイットリウムと窒素の含有量を蛍光X線分析法およびX線光電子分光分析法により測定したところ、それぞれ5.5原子%と10.5原子%であった。また、X線回折パターンより、Fe162 相を示すプロファイルを得た。
さらに、高分解能分析透過電子顕微鏡で粒子形状を観察したところ、略球状の粒子で、粒子サイズ(中央値)は35nm(粒子サイズの範囲:32〜38nm)であった。平均粒子体積は14100nmであった。また、室温における飽和磁化は120.5Am2 /kg(120.5emu/g)、保磁力は246.8kA/m(3,100エルステッド)であった。さらに−100℃、25℃(室温)、50℃で保磁力を測定した後、保磁力の最大値と最小値から求めた保磁力の変化率は、4.3%であった。
上記の磁性粉末A1〜A6および磁性粉末B1〜B3の各磁性粉末の作製条件を表1、表2に、粒子サイズ、計算で求めた粒子体積、元素組成(イットリウム、アルミニウム、シリコンおよび窒素の原子%)、室温での磁気特性および保磁力の変化率を表3にそれぞれまとめて示した。
Figure 2006196115
Figure 2006196115
Figure 2006196115
上記結果から明らかなように、本発明の磁性粉末A1〜A6の窒化鉄系磁性粉末は、磁性粉末B2〜B3の磁性粉末に比べて、高い磁気特性を有する微粒子の磁性粉末で、かつ保磁力の変化率も小さい。また、磁性粉末B1は、高い磁気特性を有する微粒子の磁性粉末であるが、保磁力が磁性粉末A1〜A6に比べて若干小さく、保磁力の変化率は磁性粉末A1〜6に比べて若干大きい。
(B)磁気テープの作製
つぎに、本発明の磁気テープを作製した。
実施例1
<下層塗料成分>
(1)成分
非磁性針状酸化鉄粉末(平均粒径:100nm、軸比:5) 68部
粒状アルミナ粉末(平均粒径:80nm) 8部
カーボンブラック(平均粒径:25nm) 24部
ステアリン酸 2.0部
塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体 8.8部
(含有−SONa基:1×10-4当量/g)
ポリエステルポリウレタン樹脂 4.4部
(Tg:40℃、含有−SONa基:1×10-4当量/g)
シクロヘキサノン 25部
メチルエチルケトン 40部
トルエン 10部
(2)成分
ステアリン酸ブチル 1部
シクロヘキサノン 70部
メチルエチルケトン 50部
トルエン 20部
(3)成分
ポリイソシアネート 1.4部
シクロヘキサノン 10部
メチルエチルケトン 15部
トルエン 10部
<磁性塗料成分>
(1)混練工程成分
粒状磁性粉(磁性粉末A1) 100部
(外層部分にYを主体的に含有し、コアー部分にFe16
を含有、Y/Fe:5.3原子%、N/Fe:10.8原子%、
Fe16相:主相、
飽和磁化量:101.6Am/kg(101.6emu/g)、
Hc:240.4kA/m(3,020Oe)、
粒子サイズ(中央値):17nm(15〜19nm)
塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体 13部
(含有−SONa基:0.7×10-4当量/g)
ポリエステルポリウレタン樹脂 4.5部
(含有−SONa基:1.0×10-4当量/g)
メチルアシッドホスフェート 2部
テトラヒドロフラン 20部
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(重量で1:1) 9部
(2)希釈工程成分
パルミチン酸アミド 1.5部
ステアリン酸n−ブチル 1部
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(重量で1:1) 350部
(3)別分散スラリー成分
粒状アルミナ粉末(平均粒径:80nm) 10部
塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体 1部
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(重量で1:1) 15部
(4)配合工程成分
ポリイソシアネート 1.5部
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(重量で1:1) 29部
上記の下層塗料成分のうち、(1)成分を回分式ニーダで混練したのち、(2)成分を加えて、攪拌後、サンドミルで滞留時間を60分として分散処理を行い、これに(3)成分を加えて、攪拌、ろ過したのち、下層塗料(下層用塗料)とした。
これとは別に、上記の磁性塗料成分のうち、(1)の混練工程成分中、磁性粉末全量と樹脂および溶剤の所定量を予め高速撹拌混合しておき、その混合粉末を(1)の混練工程成分となるように調整したのち、連続式2軸混練機で混練し、さらに(2)の希釈工程成分を加えて、連続式2軸混練機で少なくとも2段階以上に分けて希釈を行い、サンドミルで分散メディアとして直径0.5mmのジルコニアビ−ズを用いて、滞留時間を45分として分散した。これに(3)の別分散スラリー成分をサンドミルで滞留時間を40分として分散したものを加え、さらに(4)の配合工程成分を加えて、撹拌、ろ過したのち、磁性塗料とした。
芳香族ポリアミドフイルム(厚さ3.3μm、MD=13.7GPa、TD=13.4GPa、東レ社製の商品名「ミクトロン」)からなる非磁性支持体(ベースフィルム)上に、上記の下層塗料を、乾燥、カレンダ後の厚さが1.0μmとなるように塗布し、この下層上に、さらに上記の磁性塗料を、磁場配向処理、乾燥、カレンダ処理後の磁性層の厚さが80nmとなるように、ウエット・オン・ウエットで塗布し、磁場配向処理後、ドライヤおよび遠赤外線を用いて乾燥し、磁気シートを作製した。
なお、磁場配向処理ハードライヤ前にN−N対向磁石(5kG)を設置し、ドライヤ内で塗膜の指蝕乾燥位置の手前側75cmからN−N対向磁石(5kG)を2基50cm間隔で設置して行った。塗布速度は100m/分とした。
<バックコート層用塗料成分>
カーボンブラック(平均粒径:25nm) 80部
カーボンブラック(平均粒径:350nm) 10部
粒状酸化鉄粉末(平均粒径:50nm) 10部
ニトロセルロース 45部
ポリウレタン樹脂(SONa基含有) 30部
シクロヘキサノン 260部
トルエン 260部
メチルエチルケトン 525部
上記バックコート層用塗料成分を、サンドミルで滞留時間45分として分散したのち、ポリイソシアネート15部を加えて、ろ過したのち、バックコート層用塗料を調製した。この塗料を、前記の方法で作製した磁気シートの磁性層の反対面に、乾燥、カレンダ後の厚さが0.5μmとなるように、塗布し、乾燥した。
その後、この磁気シートを、金属ロールからなる7段カレンダで、温度100℃、線圧200kg/cmの条件で、鏡面化処理し、さらに磁気シートをコアーに巻いた状態で、70℃72時間エージングしたのち、1/2インチ幅に裁断した。これを200m/分で走行させながら、磁性層表面に対し、ラッピングテープ研磨、ブレード研磨、表面拭き取りの後処理を行い、磁気テープを作製した。
ラッピングテープにはK10000、ブレードには超硬刃、表面拭き取りには東レ社製の商品名「トレシー」を用い、走行テンション0.294Nで処理を行った。
このようにして得られた磁気テープにサーボライタで磁気サーボ信号を記録し、コンピュータ用磁気テープを作製した。この磁気テープの残留磁束密度と磁性層厚さの積Br・δは、0.023μTmであった。また、磁気テープ長手方向のヤング率は12.5GPaであった。この磁気テープをLTOカートリッジに組み込んで走行テストを行った結果、走行性能に問題は生じなかった。磁気テープ全厚が5μm未満と薄くても磁気テープの長手方向のヤング率を高くすれば走行特性に問題がないことがわかる。
実施例2
非磁性支持体に、ポリエチレンナフタレートフイルム(厚さ6μm、MD=8.82GPa、TD=5.88GPa、帝人社製の商品名「Q14」)を使用したことを除き、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。この磁気テープの残留磁束密度と磁性層厚さの積Br・δは、0.023μTmであった。また、磁気テープ長手方向のヤング率は9.1GPaであった。この磁気テープをLTOカートリッジに組み込んで走行テストを行った結果、走行性能に問題は生じなかった。磁気テープ全厚が7μm以上と厚い場合は磁気テープの長手方向のヤング率が9GPa程度であれば走行特性に問題がないことがわかる。
実施例3
実施例1の磁性粉末A1の代わりに、磁性粉末A2を使用したことを除き、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
実施例4
実施例1の磁性粉末A1の代わりに、磁性粉末A3を使用したことを除き、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
実施例5
実施例1の磁性粉末A1の代わりに、磁性粉末A4を使用したことを除き、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
実施例6
実施例1の磁性粉末A1の代わりに、磁性粉末A5を使用したことを除き、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
実施例7
実施例1の磁性粉末A1の代わりに、磁性粉末A6を使用したことを除き、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
実施例8
実施例1の磁性粉末A1の代わりに、磁性粉末B1を使用したことを除き、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
実施例9
磁性塗料成分を下記の磁性塗料に変更したことを除き、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
<磁性塗料成分>
(1)混練工程成分
磁性粉末(磁性粉末A1) 100部
塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体 13部
(含有−SO Na基:0.7×10-4当量/g)
ポリエステルポリウレタン樹脂(PU) 4.5部
(含有−SO Na基:1.0×10-4当量/g)
粒状アルミナ粉末(平均粒子径:80nm) 10部
メチルアシッドホスフェート(MAP) 2部
テトラヒドロフラン(THF) 20部
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(重量で1:1) 9部
(2)希釈工程成分
パルミチン酸アミド(PA) 1.5部
ステアリン酸n−ブチル(SB) 1部
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(重量で1:1) 350部
(3)配合工程成分
ポリイソシアネート 1.5部
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(重量で1:1) 29部

上記の磁性塗料の成分において(1)の混練工程成分を予め高速混合しておき、その混合粉末を連続式2軸混練機で混練し、さらに(2)の希釈工程成分を加え連続式2軸混練機で少なくとも2段階以上に分けて希釈を行い、サンドミルで滞留時間を45分として分散し、これに(3)の配合工程成分を加え攪拌・ろ過後、磁性塗料とした。
なお、サンドミルのビーズとして、直径1.5mmのチタニアビーズにした。
比較例1
磁性粉末B1を使用したことを除き、実施例9と同様にして磁気テープを作製した。
比較例2
実施例1の磁性粉末A1の代わりに、磁性粉末B2を使用したことを除き、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
比較例3
実施例1の磁性粉末A1の代わりに、磁性粉末B3を使用したこと、磁性層厚さを150nmにしたことを除き、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
上記の実施例1〜9および比較例1〜3の各磁気テープについの、使用磁性粉末の諸特性、充填剤の別分散の有無、分散機ビーズの材質と粒径を表4に示す。
Figure 2006196115
つぎに、上記の実施例1〜9および比較例1〜3の各磁気テープについて、磁気特性と共に、電磁変換特性として、下記の方法により、出力対ノイズ比(C/N)および温度サイクル特性を測定した。電磁変換特性(C/N)および温度サイクル特性の結果を表5に示した。
<出力対ノイズ比(C/N)>
磁気テープの電磁変換特性の測定には、ドラムテスターを用いた。ドラムテスターには電磁誘導型磁気ヘッド(トラック幅25μm、ギャップ0.1μm)とMR磁気ヘッド(トラック幅8μm)を装着し、誘導型ヘッドで記録、MRヘッドで再生を行った。
両ヘッドは、回転ドラムに対して異なる場所に設置されており、両ヘッドを上下方向に操作することで、トラッキングを合わせることができる。磁気テープはLTOカートリッジのリールに巻き込んだ状態から適切な量を引き出して廃棄し、さらに60cmを切り出し、回転ドラムの外周に巻き付けた。記録・再生は磁気テープの長手方向である。
出力およびノイズは、ファンクションジェネレータにより、波長0.33μmの矩形波を書き込み、MR磁気ヘッドの出力をスペクトラムアナライザーに読み込んだ。0.33μmのキャリア値を媒体再生出力Cとした。また、0.33μmの矩形波を書き込んだときに、記録波長0.33μm以上に相当するスペクトルの成分から、再生出力およびシステムノイズを差し引いた値の積分値をノイズ値Nとして用いた。さらに、両者の比をとってC/Nとした。C/N共に、比較例2の磁気テープの値との相対値として求めた。
同様に、出力およびノイズは、ファンクションジェネレータにより、波長0.2μmの矩形波を書き込み、MR磁気ヘッドの出力をスペクトラムアナライザーに読み込んだ。0.2μmのキャリア値を媒体再生出力Cとした。また、0.2μmの矩形波を書き込んだときに、記録波長0.2μm以上に相当するスペクトルの成分から、再生出力およびシステムノイズを差し引いた値の積分値をノイズ値Nとして用いた。さらに、両者の比をとってC/Nとした。C/N共に、比較例2の磁気テープの値との相対値として求めた。
<温度サイクル特性>
温度サイクル特性は、薄手テープも測定できるように改造したLTOドライブを用いて行った。温度サイクル前に、記録波長0.37μmで記録・再生することによって、サイクル前の再生出力(C)求めた。出力は10秒間再生を行った時の最大再生出力(C)である。但し、突発的に高いCは除外した。このようにして、信号を記録・再生したLTO磁気テープカートリッジを、温度サイクル炉に入れ、高温−低温の温度サイクルをかけた。温度サイクルは、最高温度(50℃)、最低温度(−20℃)の間を1サイクル4時間のサインカーブで温度を上下させて、10サイクルの温度サイクルを行った。ついて、室温に取り出し2時間冷却した後、上記の再生を行ったと同じトラック、同じ番地で、サイクル後の再生出力(C)求めた。出力は10秒間再生を行った時の最大再生出力(C)である。但し、突発的に高いCは除外した。
Figure 2006196115
上記表4、5の結果から、実施例1〜9の各磁気テープは、優れた電磁変換特性(C/N)を有することがわかる。特に、短波長領域(記録波長:0.2μm)において優れた記録特性を示す。また、温度サイクル試験後のCの低下も小さい。これに対して、比較例1の磁気テープは、初期の電磁変換特性(C/N)は優れているが、温度サイクル後の電磁変換特性(C)の低下が大きい。温度サイクル後のCの低下が大きいのは、−100℃と50℃間の保磁力の変化率が10%以上と大きいためである。比較例2の磁気テープは、初期の電磁変換特性(C/N)、温度サイクル後の電磁変換特性(C)は共に、実施例の磁気テープに比べて劣っている。初期の電磁変換特性(C/N)が低いのは、磁気テープの保磁力が220kA/m未満と低いためで、温度サイクル後のCが低いのは、−100℃〜と50℃間の保磁力の変化率が10%以上と大きいためである。さらに、比較例3の磁気テープは、初期の電磁変換特性(C/N)は低いが、温度サイクル後の電磁変換特性(C)の低下は少ない。初期の電磁変換特性(C/N)が低いのは、磁性粉末の粒子サイズ、粒子体積が大きく、ノイズ(N)が高いためである。
図3は、粒子サイズが17nmの磁性粉末を使用した磁気テープに関して、磁気テープの長手方向における保磁力の変化率と、温度サイクル後の再生出力(C)の劣化量との関係を示したものである。保磁力の変化率が大きい程、温度サイクル後のCの劣化量も大きくなることがわかる。保磁力の変化率を10%以下にすれば、Cの劣化量は実用上の問題が少ない1.2dB以下になる。
図4は、粒子サイズが17nmの磁性粉末を使用した磁気テープに関して、磁気テープの長手方向における保磁力と、記録波長が0.2μmにおける再生出力ノイズ比(C/N)との関係を示したものである。保磁力が高くなる程、C/Nも高くなり、保磁力が220kA/m以上になるとC/Nは+2dB以上になる。
図5は、実施例1の磁気テープに関して、磁性粉末の粒子サイズと、記録波長が0.2μmにおける再生出力ノイズ比(C/N)との関係を示したものである。粒子サイズが小さく程、C/Nも高くなり、粒子サイズが30nm以下になると、C/Nは0dB以上になる。
以上のように、本発明の磁気テープは、電磁変換特性(C/N)および温度サイクル後の電磁変換特性(C)の低下も少なく、高記録密度用の磁気テープとして優れている。また、本発明の磁性粉末は、高記録密度用の磁気テープの磁性粉末として優れている。
−100℃〜50℃における磁気テープ保磁力の温度変化の一例である。 磁性粉末の高分解能電子顕微鏡写真である。 −100℃と50℃間の保磁力の変化率と、温度サイクル後の再生出力(C)の低下量との関係を示す特性図である。 磁気テープの保磁力と、記録波長0.2μmにおける再生出力ノイズ比(C/N)との関係を示す特性図である。 磁気テープの最上層磁性層に含有する磁性粉末の粒子サイズと、記録波長0.2μmにおける再生出力ノイズ比(C/N)との関係を示す特性図である。

Claims (2)

  1. 非磁性支持体と、非磁性支持体の一方の面に、少なくとも1層の、磁性粉末を含有する磁性層を有する磁気テープにおいて、前記磁気テープの最上層磁性層が、粒子サイズ30nm以下の略粒状の磁性粉末を含有し、前記磁気テープの長手方向の保磁力が220〜400kA/mであり、かつ−100℃と50℃間の保磁力の変化率が10%以下であることを特徴とする磁気テープ。
  2. 鉄および窒素を少なくとも構成元素とし、かつFe16相を少なくとも含む、粒子サイズが30nm以下の磁性粉末であって、該磁性粉末の表面が希土類元素、シリコン、アルミニウムの中から選ばれた少なくとも1種を含む化合物層で構成され、−100℃と50℃間の保磁力の変化率が10%以下であることを特徴とする磁性粉末。
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