JP2003303710A - 強磁性金属粉末及びそれを含む磁気記録媒体 - Google Patents

強磁性金属粉末及びそれを含む磁気記録媒体

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JP2003303710A
JP2003303710A JP2002110794A JP2002110794A JP2003303710A JP 2003303710 A JP2003303710 A JP 2003303710A JP 2002110794 A JP2002110794 A JP 2002110794A JP 2002110794 A JP2002110794 A JP 2002110794A JP 2003303710 A JP2003303710 A JP 2003303710A
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Masashi Aonuma
政志 青沼
Kiyomi Ejiri
清美 江尻
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高密度記録(記録波長0.5μm未満)におい
て出力が高く、ノイズの低い、かつ耐候性に優れる強磁
性金属粉末及びそれを含む磁気記録媒体を提供するこ
と。 【解決手段】結晶子サイズが、金属部の平均短軸長の
2.0倍以上であり、かつ飽和磁化量(σs)が140
A・m2/kg以下であることを特徴とする強磁性金属
粉末及びそれを含む磁気記録媒体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は塗布型の高記録密度の磁
気記録媒体に関する。特に超微粒子の強磁性金属微粉末
を含む高密度記録用の磁気記録媒体に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】磁気記録技術は、媒体の繰り返し使用が
可能であること、信号の電子化が容易であって周辺機器
との組み合わせによるシステムの構築が可能であるこ
と、信号の修正も簡単にできることなど、他の記録方式
にはない特徴を有することから、ビデオ、オーディオ、
コンピューター用途などを始めとして様々な分野で幅広
く利用されてきた。
【0003】そして、機器の小型化、記録再生信号の質
の向上、記録の長時間化、記録容量の増大などの要求に
対応するために、記録媒体に関しては、記録密度、信頼
性、耐久性をより一層向上させることが常に望まれてき
た。
【0004】近年、オフィスコンピュータの普及に伴っ
て、外部記憶媒体としてコンピュータデータを記録する
ための磁気テープ(所謂、バックアップテープ)の研究
が盛んに行われている。このような用途の磁気テープの
実用化に際しては、特にコンピュータの小型化、情報処
理能力の増大と相まって、記録の大容量化、小型化を達
成するために記録容量の向上が強く要求される。また磁
気テープの使用環境の広がりによる幅広い環境条件下
(特に、変動の激しい温湿度条件下など)での使用、デ
ータ保存に対する信頼性、更に高速での繰り返し使用に
よる多数回走行におけるデータの安定した記録、読み出
し等の性能に対する信頼性なども従来に増して要求され
る。
【0005】従来から、デジタル信号記録システムにお
いて使用される磁気テープは、システム毎に決められて
おり、所謂DLT型、3480、3490、3590、
QIC、D8型、LT0,あるいはDDS型対応の磁気
テープが知られている。そしてどのシステムにおいて
も、用いられる磁気テープは、非磁性支持体上の一方の
側に、膜厚が0.2〜3.0μmと比較的厚い重層構成
もしくは単層構造の強磁性粉末、結合剤、及び研磨剤を
含む磁性層が設けられており、また他方の側には、巻き
乱れの防止や良好な走行耐久性を保つために、バックコ
ート層が設けられている。しかし一般に上記のように比
較的厚い単層構造の磁性層においては、出力が低下する
という厚み損失の問題がある。
【0006】近年、コンピュータデータを記録再生する
ための磁気記録再生システムにおいて、薄膜磁気ヘッド
を組み込んだシステムが実用化されている。薄膜磁気ヘ
ッドは、小型化やマルチトラックヘッドに加工し易いた
めに、特に磁気テープを記録媒体としたシステムでは、
薄膜磁気ヘッドのマルチトラック固定ヘッドが多く利用
されている。薄膜磁気ヘッドの利用によって、小型化に
よるトラック密度の向上や記録効率の向上が可能とな
り、高密度の記録を実現できると共に、マルチトラック
化によりデータの転送速度の向上も可能になる。薄膜磁
気ヘッドは、磁束の時間変化に応答する誘導型ヘッド
と、磁束の大きさに応答する磁気抵抗効果を利用した磁
気抵抗型ヘッド(MRヘッド)に大別できる。電磁誘導
を動作原理とする磁気ヘッド(誘導型磁気ヘッド)が用
いられ普及している。だが更に高密度記録再生領域で使
用するには限界が見え始めている。すなわち、大きな再
生出力を得るためには再生ヘッドのコイル巻数を多くす
る必要があるがインダクタンスが増加し高周波での抵抗
が増加し結果として再生出力が低下する問題があった。
近年MR(磁気抵抗)を動作原理とする再生ヘッドが提
案され、ハードデイスク等で使用されている。MRヘッ
ドは誘導型磁気ヘッドに比較して数倍の再生出力が得ら
れ、かつ誘導コイルを用いないため、インピーダンスノ
イズ等の機器ノイズが大幅に低下し、磁気記録媒体のノ
イズを下げることで大きなSN比を得ることが可能にな
ってきた。誘導型ヘッドは平面構造のためにヘッドコイ
ルの巻き数が少なく、起磁力を大きくすることが困難と
なり、従って再生出力が十分得られないと云う問題があ
る。このため、再生用には高い再生出力が得られ易いM
Rヘッドが用いられ、一方、記録用には誘導型のヘッド
が用いられている。これらの磁気ヘッドは、通常一体型
としてシステム中に組み込まれている。このような磁気
記録システムでは、より速いデータ転送速度を実現でき
るリニア記録方式が採用されている。
【0007】一方、小型カセットを用いた大容量の磁気
情報の高転送速度のテープ記録を実現するため、ヘリカ
ルスキャン方式のテープ記録装置に適用する回転ドラム
搭載型MRヘッドの開発が進められている。また、オー
ディオ、ビデオ用途にあっては、音質及び画質の向上を
実現するディジタル記録方式の実用化、ハイビジョンT
Vに対応した録画方式の開発に対応するために、従来の
システムよりも一層、短波長信号の記録再生ができ、か
つヘッドと媒体の相対速度が大きくなっても信頼性、耐
久性が確保された磁気記録媒体が要求されるようになっ
ている。
【0008】塗布型の磁気記録媒体の高密度記録化のた
めに、従来より使用されていた磁性酸化鉄粉末に代わる
鉄又は鉄を主体とする合金磁性粉末の使用及び磁性粉末
の微細化などの磁性体の改良あるいはその充填性や配向
性の改良などによって磁性層の磁気特性を向上させるこ
と、強磁性粉末の分散性を向上させること、さらには磁
性層の表面性を高めることなどの観点から種々の方法が
検討され提案されてきた。
【0009】例えば、磁気特性を高めるために強磁性粉
末として強磁性金属粉末や六方晶系フェライト粉末を使
用する方法が特開昭58−122623号公報、特開昭
61−74137号公報、特公昭62−49656号公
報、特公昭60−50323号公報、US462965
3号、US4666770号、US4543198号な
どに開示されている。
【0010】特開平1−18961号には、長軸径が
0.05〜0.2μm、軸比が4〜8の金属磁性粉で、
比表面積が30〜55m2/g、保磁力が1300エル
ステッド以上、飽和磁化量が120emu/g以上の強
磁性粉を開示し、比表面積の小さい微小金属粉を提供す
るとしている。また、特開昭60−11300号公報お
よび特開昭60−21307号公報には、強磁性粉末、
特に強磁性金属粉末に適した微細なα−オキシ水酸化鉄
針状結晶の製造方法を開示し、後者では長軸長0.12
〜0.25μm、軸比6〜8のゲータイトからHc14
50〜1600エルステッド、σs142〜155em
u/gの強磁性金属粉末が製造できることを開示してい
る。特開平9−91684号公報には、平均長径が0.
05μm〜0.12μm、針状比8以上の強磁性金属粒
子が強磁性金属粒子全体の5.0%以下であるか、また
は、粒子を構成する結晶子の針状比4以上である強磁性
金属粒子が強磁性金属粒子の全体の17.0%以下であ
る強磁性金属粒子を用いることが提案されているが、針
状比が小さい粒子が混在すると高Hcの強磁性粉末が得
られにくく、S/N、オーバーライトも不十分である。
【0011】更に、特開平6−340426号公報およ
び特開平7−109122号公報には、ヘマタイト核
晶、水酸化鉄、特定イオンを用いた単分散紡錘型ヘマタ
イト粒子、及び該ヘマタイト粒子を還元して得られる極
めて微小な強磁性粉末が開示されている。
【0012】また、強磁性粉末の分散性を高めるため
に、種々の界面活性剤(例えば特開昭52−15660
6号公報、特開昭53−15803号公報、特開昭53
−116114号公報などに開示されている)を用いた
り、種々の反応性のカップリング剤(例えば、特開昭4
9−59608号公報、特開昭56−58135号公
報、特公昭62−28489号公報などに開示されてい
る)を用いることが提案されている。
【0013】また、特開平1−239819号公報に
は、磁性酸化鉄の粒子表面に硼素化合物、アルミニウム
化合物もしくはアルミニウム化合物と珪素化合物を順次
被着させた磁性粉末が開示され、磁気特性および分散性
が改善されるとしている。更に、特開平7−22224
号公報には、周期率表第1a族元素の含有量が0.05
質量%以下であり、必要に応じて金属元素の総量に対し
て0.1〜30原子%のアルミニウム、更には金属元素
の総量に対して0.1〜10原子%の希土類元素を含有
させ、また周期率表第2a族元素の残存量が0.1質量
%以下の強磁性金属粉末を開示し、保存安定性および磁
気特性の良好な高密度磁気記録媒体が得られるとしてい
る。
【0014】更に、磁性層の表面性を改良するために、
塗布、乾燥後の磁性層の表面形成処理方法を改良する方
法(例えば、特公昭60−44725号公報に開示され
ている)が提案されている。
【0015】一方、磁気記録媒体の高記録密度を達成す
るために、使用する信号の短波長化が強力に進められて
いる。しかし、信号を記録する領域の長さが使用されて
いる磁性体の大きさと比較できる大きさになると明瞭な
磁化遷移状態を作り出すことができないので、実質的に
記録不可能となる。このため使用する最短波長に対し充
分小さな粒子サイズの磁性体を開発する必要があり、磁
性体の微粒子化が長年にわたり指向されている。
【0016】磁気記録用金属粉末では、粒子形状を針状
にして形状異方性を付与し、目的とする抗磁力を得てい
る。高密度記録のためには、強磁性金属粉末を微細化し
て得られる媒体の表面粗さを小さくする必要があること
は当業者によく知られたことである。しかしながら磁気
記録用金属粉末を微細化すると、それにともなって針状
比が低下して所望の抗磁力が得られなくなる。最近、ビ
デオ信号をデジタル化して記録するDVCシステムが提
案されており、その用途に高性能なメタル蒸着テープ
(MEテープ)およびメタル粉末(塗布)テープ(MP
テープ)が使用される。DVCに使用されるMPテープ
の抗磁力は、159.2kA/m(2000エルステッ
ド)以上であるので、抗磁力が大きく微細かつ粒度分布
がすぐれた強磁性金属粉末が必要である。また実用形態
の多くは、磁気信号を上書きする記録法なのでオーバー
ライト特性が良好であることが望まれている。
【0017】本出願人は先にDVCシステムに好適な強
磁性金属粉末およびそれを用いた磁気記録媒体を提案し
ている(特開平7−326035号)。この発明は磁性
層を、抗磁力2000〜3000エルステッド、厚さ
0.05〜0.3μm、表面粗さ1〜3nmに制御し、
かつ特定の反転磁化成分率を規定した磁気記録媒体を提
供するものである。
【0018】更に、薄膜磁気ヘッドが組み込まれた磁気
記録システムに用いられる磁気記録媒体として、非磁性
支持体上に無機質非磁性粉末を結合剤に分散してなる下
層非磁性層と、該非磁性層の上に強磁性金属粉末を結合
剤に分散してなる上層磁性層を設けた磁気記録媒体が提
案されている(特開平8−227517号公報)。上記
のように上層の磁性層を薄くすることで厚み損失による
出力低下が抑制され、また高い記録密度が達成できるた
め、単層構造の磁性層を有する磁気記録媒体に比べてよ
り大きな容量のデータの保存が可能となる。そしてここ
には、上層磁性層の厚みは、0.05〜1.0μm、好
ましくは、0.05〜0.8μmであるとの記載があ
り、また具体的には、厚さ10μmのポリエチレンテレ
フタレート製支持体の一方の側に、厚さ2.7μmの非
磁性層及び保磁力Hcが1800エルステッドである強
磁性金属粉末を含有する厚さ0.3μmの磁性層が順に
設けられたコンピュータデータ記録用の磁気記録媒体が
記載されている。
【0019】MRヘッドが組み込まれた磁気記録システ
ムにおいて、該MRヘッドとこのシステムに用いられる
磁気記録媒体との適応性については、次のような問題が
ある。磁気記録媒体として、比較的厚い(0.3μm)
磁性層を有するものを使用した場合には、磁性層の磁束
が高くなるために、再生出力が出過ぎてMRヘッドが飽
和し、再生波形が歪み、その結果、十分高いS/N値が
得られず、エラーレートが増大し易くなったり、また一
般に、高い記録密度を達成するためには記録再生波形
(孤立再生反転波形)はよりシャープ(波形の半値幅が
小さい)であることが望ましいが、磁性層が比較的厚い
磁気記録媒体では、記録再生波形の半値幅が大きくな
り、十分高い記録密度が得られないことが判明した。一
方、非常に薄い(0.02μm)磁性層を有するものを
使用した場合には、記録再生波形に歪みが生じ、その結
果、同様に高いS/N値が得られず、また再生出力自体
も低下し易くなることが判明した。また、速いデータ転
送速度でかつ高い密度の記録が可能なMR磁気ヘッドを
組み込んだ磁気記録再生システムに好適に用いられる磁
気記録媒体には、極めて微細な強磁性粉末が必要とされ
ているが、微細になるほど電磁変換特性と保存安定性
(耐候性)の両者を満足する強磁性粉末の製造は困難と
なってきている。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、高密度記録
(記録波長0.5μm未満)において出力が高く、ノイ
ズの低い、かつ耐候性に優れる強磁性金属粉末及びそれ
を含む磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】本発明者は特に高密度記
録領域で電磁変換特性が良好な磁気記録媒体を得るため
に鋭意検討した結果、強磁性金属粉末の粒子サイズは小
さくすることが必要であるが、単にサイズを小さくする
のではHcが小さくなり、耐候性が劣ってしまう。粒子
の短軸長を小さくさせても結晶子サイズの低下を抑える
ことにより、微粒子化させてもHcの低下を抑え、かつ
耐候性の劣化を抑制できるうえ、媒体にした時の低ノイ
ズ化も図れることを見出し、本発明に至ったものであ
る。本発明は、結晶子サイズが、金属部の平均短軸長の
2.0倍以上であり、かつ飽和磁化量(σs)が140
A・m2/kg以下であることを特徴とする強磁性金属
粉末である。また、本発明は、支持体上に強磁性金属粉
末と結合剤を主体とする磁性層を設けた磁気記録媒体に
おいて、該強磁性金属粉末は上記のものであることを特
徴とする磁気記録媒体である。
【0022】本発明の好ましい態様は次の通りである。 前記強磁性金属粉末は平均長軸長が80nm未満であ
る強磁性金属粉末およびそれを用いた磁気記録媒体。 前記強磁性金属粉末の金属部の平均短軸長が6.5n
m未満である強磁性金属粉末およびそれを用いた磁気記
録媒体。 前記強磁性金属粉末の結晶子サイズが130Å以下で
あり、金属部の平均短軸長の2.5倍以上である強磁性
金属粉末およびそれを用いた磁気記録媒体。 前記強磁性金属粉末の金属部の平均長軸長が20nm
以上75nm未満であり、平均針状比3.5以上である
強磁性金属粉末およびそれを用いた磁気記録媒体。 前記強磁性金属粉末の平均長軸長が80nm未満であ
りその変動係数は25%以下、平均針状比2.5以上で
ある強磁性金属粉末およびそれを用いた磁気記録媒体。 前記磁気記録媒体は、磁性層の厚みが0.02〜0.
2μmであり、磁性層の抗磁力が120kA/m以上で
ある磁気記録媒体。 前記磁気記録媒体は、残留磁束(Φr)=残留磁束密
度(Br)×磁性層厚み(δ)が5〜75mT・μmで
ある磁気記録媒体。 前記磁気記録媒体は、前記支持体と前記磁性層の間に
非磁性粉末と結合剤樹脂を主体とする非磁性層を設けて
なり、且つ前記磁性層の表面粗さが中心面平均表面粗さ
で、3.0nm以下である磁気記録媒体。 前記磁性層に含まれる強磁性金属粉末の体積含有率が
35%以上である磁気記録媒体。
【0023】
【発明の実施の形態】まず、本発明の強磁性金属粉末か
ら説明する。本発明の強磁性金属粉末は、高分解能透過
型電子顕微鏡で強磁性金属粉末のサイズ(即ち、平均長
軸長、平均短軸長及び金属部の平均長軸長、平均短軸
長)を求め、X線回折により求めた結晶子サイズと金属
部の平均短軸長との関係を特定したものであり、結晶子
サイズが、金属部の平均短軸長の2.0倍以上であり、
かつ飽和磁化量(σs)が140A・m2/kg以下で
ある。この強磁性金属粉末を用いた磁気記録媒体は高密
度記録(λ=0.5μm未満)における電磁変換特性を
改善すると共に耐候性の優れた磁気記録媒体を提供する
ことができる。強磁性金属粉末の結晶子サイズが金属部
の短軸長の2.0倍以上とすることによりHcの低下を
抑え、かつ耐候性の劣化を抑制できるうえ、媒体にした
時の低ノイズ化も図れるものであり、好ましくは強磁性
金属粉末の結晶子サイズが金属部の短軸長の2.5倍以
上である。金属部の短軸長が小さくなるほど、その倍率
を大きくなるようにすることが好ましい。また強磁性金
属粉末の金属部の平均長軸長は好ましくは20nm以
上,75nm未満であり、平均針状比は3.5以上であ
ることが好ましい。金属部の平均短軸長は6.5nm未
満であることが好ましい。強磁性金属粉末の結晶子サイ
ズは、80〜130Å、好ましくは80〜125Å、更
に好ましくは85〜120Åである。結晶子サイズが8
0Åより小さいとHcが小さくなり、また、耐候性が極
端に劣ってしまい好ましくない。130Åより大きいと
ノイズが極端に大きくなるため不適当である。強磁性金
属粉末の平均長軸長は80nm未満が好ましく、更に好
ましくは25〜75nmであり,特に好ましくは25n
m〜60nmである。長軸長の変動係数は25%以下が
好ましく、20%以下が更に好ましい。また、平均針状
比{(長軸長/短軸長)の平均}は2.5〜8が好まし
い。平均針状比が2.5より小さいときには、形状異方
性に立脚した抗磁力Hcが小さくなり、高密度記録に不
利になる。強磁性金属粉末の平均針状比が大きいほど抗
磁力Hcは大きくなる。強磁性金属粉末の長軸長および
針状比の各々の変動係数が25%以下で小さいほうが好
ましい。これら長軸長と針状比の変動係数が小さいと、
Hc分布が小さく、特に、高Hc成分(磁界320kA
/m以上で磁化反転する成分の割合)が減少するので、
オ−バ−ライト特性上好ましい。平均粉体サイズが一定
の場合、平均長軸長と針状比の変動係数が小さい状態
が、高HcかつHc分布が小さく、高抗磁力成分が少な
く、SFD(switching−field dis
tribution)、SFDrが小さくなる傾向が認
められた。特に金属部の針状比の寄与が大きいことがわ
かった。
【0024】本発明の強磁性金属粉末の粒子及び金属
(コア)部のサイズは,下記により計測される値を言
う。高分解能透過型電子顕微鏡で強磁性金属粉末の格子
像を観察し、強磁性金属粉末全体(金属部分の周りに存
在する酸化物層(酸化膜)を含む)、強磁性金属粉末の
内部(コア部)の長さ(長軸長及び短軸長)を求める。
以下、具体的に示す。先ず、水中で超音波分散させた粒
子をメッシュに載せ、日立製作所製透過型電子顕微鏡H
−9000型を用いて粒子を撮影(300kV)し、総
合倍率50万倍と300万倍の写真を得る。50万倍の
写真で強磁性金属粉末全体(金属部分の周りに存在する
酸化物層(酸化膜)を含む)の粒子長(長軸長または短
軸長)を測定する。300ケの粒子を測定し平均粒子長
と標準偏差を求める。粒子長の変動率は、粒子長の標準
偏差を平均粒子長で除して求める。次いで,300万倍
の写真で酸化膜厚みを求める。写真の粒子は中心部の金
属部分が黒く,その周辺の被膜部が中心部よりも白っぽ
い状態で観察される。金属部と被膜部表面の線をスキャ
ナーで取り込んで、線の間隔をKontron製画像解
析装置KS−400で自動測定して、平均の酸化膜厚を
求める。測定数は1ヶの粒子で150点測定し、15ヶ
の粒子(計2250ヶ所)を測定し、平均酸化膜厚と標
準偏差を求める。酸化膜厚の変動率は、酸化膜厚(酸化
物層)の標準偏差を平均酸化膜厚で除して求める。粒子
全体の平均長軸長及び平均短軸長より、平均酸化膜厚
(両端に存在するため酸化膜厚X2)を差し引いて金属
部(コア部)の平均長軸長及び平均短軸長とした。
【0025】強磁性金属粉末の結晶子サイズは、X線回
折によるα−Feの110面と220面のそれぞれのピ
ーク(半値幅)の和を2で除すことにより求められる値
を意味する。80〜130Å、好ましくは80〜125
Å、更に好ましくは85〜120Åである。結晶子サイ
ズが80Åより小さいとHcが小さくなり、また、耐候
性が極端に劣ってしまい好ましくない。130Åより大
きいとノイズが極端に大きくなるため不適当である。
【0026】本発明の強磁性金属粉末のσsは140A
・m2/kg以下、好ましくは75〜130A・m2/k
g、更に好ましくは80〜125A・m2/kgであ
る。徐酸化を強化して酸化膜を厚くしてσsを低くする
とSFDが大きくなり、特に平均長軸長が65nm以下
でSFDの増加が顕著である。平均長軸長が65nm以
下でSFDの増加が顕著であるのは、粒子は粒度分布を
もっており、平均長軸長が小さくなると相対的に熱揺ら
ぎが大きくなる領域の微粒子成分が多くなる。すなわ
ち、超常磁性成分の含有量が多くなるためと考えられ
る。更に、徐酸化してσsを下げることにより、超常磁
性成分が増加するためと思われる。SFDを下げるため
には、徐酸化条件を制御して、表面の酸化物層を緻密に
し、かつ極力薄くすることが有効である。そこで、本発
明の強磁性金属粉末の平均酸化膜は、1.5〜3.5n
mに制御されることが好ましい。酸化膜の厚みを上記範
囲に抑えてσsを低下させる好ましい方法として、強磁
性金属粉末は強磁性金属元素の酸化物を還元により強磁
性金属粉末とし、徐酸化処理してσsを120〜150
A・m2/kgとした後、水中にて少なくともAl、
Y、ランタノイド、ZrおよびWの中から選ばれる少な
くとも1種の元素を被着させた後、熱処理して、再度、
徐酸化処理することが非常に有効である。σsが75A
・m2/kgより低いと、SFDが大幅に劣化するだけ
でなく、Hcも小さくなり、高密度記録に不利となる。
一方σsが140A・m2/kgを超えると、Br(残
留磁束密度)が高くなり、磁性層厚みを薄くしても、媒
体の残留磁束(Φr)が高くなってしまい、MRヘッド
を飽和して、波形歪みやパルスの非対称性が発生する等
の悪影響を及ぼす。また、媒体のHcの変化率△Hcの
絶対値が極端に大きくなることがわかった。σsは高い
程磁性層の耐久性が弱くなり、σsは低い程耐久性が良
くなることがわかった。また、充填度を下げて残留磁束
密度を低くすると、磁性層厚みを薄くすることにより、
単位面積当たりの強磁性金属粉末の存在量が少なくな
り、必要なS/Nを得ることができなくなってしまう。
磁性層に含まれる強磁性金属粉末の体積含有率(100
X強磁性金属粉末の体積/磁性層体積)は35%以上,
好ましくは40%以上である。単位記録面積当たりの強
磁性金属粉末の存在量を多くするためには、強磁性金属
粉末のσsをできる限り小さくすることが、重要であ
り、また、媒体とした時の磁性層の耐久性および耐候性
を向上させるためにも有効である。
【0027】強磁性金属粉末の抗磁力Hcは好ましくは
111.4〜320kA/m、更に好ましくは127.
3〜280kA/m、特に好ましくは143.2〜23
0kA/mである。先に述べたように強磁性金属粉末を
規定すること、好ましくは、磁性層厚みを0.02〜
0.2μmと薄くすることによりHc分布の少ないオー
バーライト特性の優れた磁気記録媒体が得られたと推定
している。なお、σsが小さいほど、磁気記録媒体にし
た時のHcは粉体のHcに対し大きい値となる傾向にあ
る。
【0028】本発明の強磁性金属粉末は、Fe以外にC
oをFeに対して20〜45質量%含むことが好まし
い。また、本発明の強磁性金属粉末はFeおよびCo以
外に質量比で20質量%以下の割合でAl、Si、S、
Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、
Sn、Sb、Te、Ba、Sr、W、Au、Pb、B
i、La、Ce、Pr、Nd、P、Mg、Mn、Zn、
Sr、B、Caなどの原子を含むことが好ましい。特
に、AlがAl/Feで5〜15原子%の範囲であり、
希土類元素が希土類元素の総和/Feで10原子%以上
含むことが好ましい。この希土類元素とは、Y及びラン
タノイドの元素を指し、具体的にはY、La、Ce、P
r、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、H
o、Er、Tm、Yb、Luであるが、Y、La、C
e、Nd、Sm、Gd等が特に好ましい。これらの元素
は出発原料の形状制御の他に、粒子間の焼結防止と還元
の促進及び還元した強磁性金属粉末の形状と粒子表面の
凹凸制御に効果がある。
【0029】本発明においては出発原料のサイズや形態
の特に長軸長と針状比の変動係数を小さくしたものを用
いることにより、強磁性金属粉末粒子のサイズ及び変動
係数を小さくするとともに、従来の多結晶の状態からで
きるだけ単結晶の構造の粒子を可能な限り多くしたもの
が好ましい。本発明の強磁性金属粉末は、単分散ゲータ
イトあるいは単分散ヘマタイトを出発原料とすることが
好ましく、最終的に金属に還元するためには、純水素に
て還元する。その途中段階で、αFe23でのアニール
処理をすることが結晶率を大きくするために有用であ
る。またαFe23よりFe34、FeOに還元すると
きは、純水素ではなく各種還元ガスを使用することがで
きる。還元の際に水分は焼結に関係することが知られて
いるので、核の生成をできるだけ一つに抑制し、かつ結
晶率を高めるために、還元により発生する水を短時間に
系外へ除去することあるいは還元により生成する水の量
を制御することが好ましい。このような水の制御は、還
元ガスの分圧を制御したり、還元ガス量を制御すること
により行うことができる。本発明の平均酸化膜厚を与え
る表面酸化物層は、金属部分を形成後、公知の酸化法、
例えば、前記徐酸化処理などにより金属部分の周りに形
成することができる。徐酸化処理の際に使用するガス中
に炭酸ガスが含有されていると、強磁性金属粉末表面の
塩基性点に吸着するので、このような炭酸ガスが含まれ
ていてもよい。
【0030】本発明の強磁性金属粉末の表面酸化物層を
構成する酸化物としては、磁性酸化物でも非磁性酸化物
でもよい。また少量の金属元素、例えば、Al、Mg、
Si、Y、ランタノイド、Ca,Ba,Sr,Niなど
の金属が固溶していてもよい。磁性酸化物としては、好
ましくは飽和磁化が50〜90A・m2/kgであるも
のが挙げられる。例えば、磁性を有する鉄酸化物として
は、CoxFe(1-x) y、(例えばCoFe24、Co
Fe34など)、FeOx(但しxは1.33≦x≦2
で、例えばγFe23、Fe34、ベルドライド化合
物)が挙げられる。また非磁性酸化物としては、結晶性
及び非晶質の金属酸化物や、オキシ水酸化物、水酸化
物、水和酸化物を含めた単独または複合物が包含され
る。この非磁性酸化物は、主として焼結防止剤として添
加した元素、及び強磁性金属粉末原料の生成時に添加し
た元素に由来する。
【0031】また、表面酸化物層は例えば、磁性酸化物
単独、非磁性酸化物単独、またはそれら両者の組合せか
ら構成されるが、その構造は特に制限されない。表面酸
化物層が両者の組合せから構成される場合、磁性酸化物
と非磁性酸化物は互いに混在したものであっても、互い
に独立した層を形成したものでもよい。強磁性金属粒子
表面部分に互いに独立した酸化物層を設けた場合、各層
間の界面における金属相と磁性酸化物相、磁性酸化物相
と非磁性酸化物相とは混在していてもよい。金属部分の
周りに順次、粒子表面方向へ磁性酸化物層、非磁性酸化
物層を形成してもよい。
【0032】本発明の強磁性金属粉末には後述する分散
剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤などで分散前にあ
らかじめ処理を行うこともできる。具体的には、特公昭
44−14090号公報、特公昭45−18372号公
報、特公昭47−22062号公報、特公昭47−22
513号公報、特公昭46−28466号公報、特公昭
46−38755号公報、特公昭47−4286号公
報、特公昭47−12422号公報、特公昭47−17
284号公報、特公昭47−18509号公報、特公昭
47−18573号公報、特公昭39−10307号公
報、特公昭48−39639号公報、及び米国特許30
26215号、同3031341号、同3100194
号、同3242005号、同3389014号などの各
公報に記載されている。
【0033】強磁性金属粉末の含水率は0.01〜2質
量%とするのが望ましい。ただし、後述する結合剤の種
類によって上記の範囲の間で含水率を最適化するのが望
ましい。
【0034】強磁性金属粉末のタップ密度は0.2〜
0.8g/mlが望ましい。0.8g/mlより大きい
と該粉末を徐酸化するときに均一に徐酸化されないので
該粉末を安全にハンドリングのすることが困難であった
り、得られた磁気記録媒体の磁化が経時によって減少す
る傾向がある。タップ密度が0.2g/mlより小さい
と嵩高くなりハンドリングが難しくなるとともに,分散
が不十分になりやすい。
【0035】次に本発明の強磁性金属粉末を製造する方
法について述べる。上記強磁性金属粉末を得る方法は特
に制限されず、任意の方法を用いることができるが、好
ましくは以下の方法が例示される。長軸長と針状比がよ
くそろい且つ粒度がよくそろった出発原料に焼結防止処
理を行い、還元するときに金属酸化物(例、FeOx
1≦x≦1.5、例えばFe23、Fe34)から金属
(例、Fe)の針状比を制御することができる。出発原
料は、粒子に枝分かれのない粒度分布の揃った単分散ゲ
ータイトあるいは単分散ヘマタイトが挙げられる。
【0036】出発原料においては、平均長軸長が30〜
90nm、平均針状比が4〜10であることが好まし
い。出発原料の形状、長軸長と短軸長と針状比をよくそ
ろえることが重要である。平均長軸長が30nmより小
さい原料を使用した時、Hc、Bmを望ましい範囲とす
ることができない。平均長軸長が90nmより大きい原
料を使用すると、高密度記録(λ=0.5μm未満)に
おける磁気記録媒体としては表面粗さが粗くなるととも
に、ノイズが大きくなり、優れたS/Nが得られない場
合がある。針状比が10より大きいと、粒度分布が広く
なり,本発明のように磁性層厚を薄くするほど,安定し
た製造が困難となるとともに、磁気記録媒体の充填度に
ムラが生じ易くなる。また高抗磁力成分が増加し、オー
バーライト特性が劣る傾向がある。針状比が4より小さ
いと強磁性金属粉末とした時の抗磁力が小さく、SFD
が増加し、高密度記録用の磁気記録媒体には使用するこ
とは難しくなる場合がある。
【0037】更に、強磁性金属粉末を制御する手段とし
ては、以下の方法およびが挙げられる。 主として強磁性金属粉末内部の元素組成を特定する
こと。特に金属部分がFeもしくはFe−Coを主体と
する強磁性金属粉末は、Feと相互作用する微量元素を
特定する。該微量元素としては、Ca、Mn、Ni、C
r、Mg等が好ましい。この微量元素はゲータイトやヘ
マタイト作成時に添加する事および/または作成後、表
面処理により添加することが好ましい。また、焼結を防
止するための焼結防止剤をドープ及び/又は被着させる
ことは重要な要素である。焼結防止剤としては、Si、
Al、Y、ランタノイド等が有効である。 強磁性金属元素の酸化物を還元により強磁性金属粉
末とする手法において、還元前の前処理、例えば、ゲー
タイト等の脱水条件、アニール条件(例えば、温度、雰
囲気、処理時間、初期と後半で温度差をつける等)及び
該還元条件、例えば、温度、還元ガス、還元処理時間等
を選定すること。特に、強磁性金属粉末の長軸長、短軸
長のサイズを均一に且つ針状比を2.5〜7の範囲に保
持する為に、還元処理と徐酸化処理を段階的に、くり返
し処理を行って形状制御、結晶性制御、及び酸化物層の
厚み制御、酸化物層の結晶性を制御することが非常に重
要である。
【0038】具体的には上記で得られた微量元素含有
ゲータイトを処理する場合の各条件は以下の通りであ
る。脱水条件としては、静置式または回転式の電気炉で
窒素雰囲気下、通常、250〜400℃、好ましくは3
00〜400℃で0.5〜2時間、好ましくは0.5〜
1時間行うことが挙げられる。アニール条件としては、
静置式の還元炉で窒素雰囲気下、通常、500〜800
℃、好ましくは550〜700℃で1〜5時間、好まし
くは2〜3時間行うことが挙げられる。脱水処理後、ア
ニール処理前に脱水処理により得られたヘマタイトを水
洗し、可溶性のアルカリ金属を除去する工程を設けても
よい。脱水及びアニール処理と徐酸化処理を例えば、低
温から徐々に高温へ、好ましくは脱水処理の初めは25
0〜300℃、次いで300〜350℃、更に350〜
400℃およびアニール条件を初めに500〜550
℃、次いで550〜650℃、更に600〜800℃で
処理する、段階的な昇温、及び、くり返し処理を行って
形状制御、結晶性制御、及び酸化物層の厚みや酸化物層
の結晶性を制御することが有効である。
【0039】還元条件としては、静置式の還元炉で水素
雰囲気下、通常、350〜600℃、好ましくは425
〜530℃、通常、0.25〜2時間、好ましくは0.
25〜1.5時間還元処理し、次いで、雰囲気を窒素に
置換して後、通常、450〜650℃、好ましくは50
0〜600℃、通常、0.5〜4時間、好ましくは1〜
3時間加熱し、次いで純水素に切り換え前記温度にて3
〜5時間還元処理することが挙げられる。還元処理を例
えば、低温から徐々に高温へ、好ましくは還元初期を3
50〜470℃、次いで370〜620℃、更に450
〜620℃(且つ各段階で10℃以上温度を上げて)
等、段階的に、及び、くり返し処理を行って金属部分の
形状制御、結晶性を高めることは、非常に有効である。
【0040】還元の終了は、排水系ガス中の水分を露点
計で測定して決定する。上記強磁性金属粉末の製法にお
いては、公知の方法、例えば、特開平7−109122
号公報および特開平6−340426号公報に記載の方
法を適用することができる。強磁性金属粉末の金属部分
の強磁性金属元素としては、FeまたはFe−Coを主
成分とすることが好ましい。ここで、主成分とは、金属
部分の全質量に対して、75質量%以上であることを意
味する。Coはσsを大きくしかつ緻密で薄い酸化膜を
形成することができるので特に好ましい。強磁性金属粉
末のCo含有量は強磁性金属粉末に含有されるFeに対
し15〜45原子%が好ましく、より好ましくは20〜
42重量%である。強磁性金属粉末のCo含有量が15
原子%未満では、σs,抗磁力が小さくなるとともに,
酸化膜厚の変動率を低く抑えることは困難であり、ま
た、本発明の磁気記録媒体構成で減磁を10%以内に抑
えるのは困難となる。また、45原子%を超えると、粒
度分布を揃えることが困難となる。また、還元速度の制
御が難しくなり、粒子の破壊や粒子間で焼結を生じてし
まう。Coを強磁性金属粉末に含ませる手段は上述のよ
うに一部をゲータイト等の原料中にドープし、次に残量
を当該原料表面に焼結防止処理などにより被着し、還元
により合金化することが好ましい。原料表面に被着され
るCo量が強磁性金属粉末に含有されるFeに対し10
〜45原子%となることが好ましく、更には15〜40
原子%となることが好ましい。
【0041】酸化物の還元終了後、金属化された粉末
は、徐酸化処理が施される。徐酸化処理の雰囲気は、酸
素を含んだ不活性ガス雰囲気である。不活性ガス雰囲気
としては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等が
好ましく、殊に窒素ガスが好適である。酸素の含有量は
0.1〜5vol%が好ましく、所定量まで徐々に酸素
量を増加させることが好ましい。また、不活性ガス雰囲
気としては水蒸気を含有させてもよい。水蒸気を含有さ
せた場合は、高い保磁力を有する紡錘状合金磁性粒子粉
末が得られやすい。徐酸化温度は、40〜200℃が好
ましく、より好ましくは、40〜180℃である。40
℃未満の場合には、十分な厚さを有する表面酸化層を形
成することが困難となり、水洗による磁気特性の低下が
顕著となる。200℃を超える場合には、粒子の形骸変
化、特に酸化物が多量に生成されるため短軸が極端に膨
張し、場合によっては、形骸破壊が起こりやすいため好
ましくない。
【0042】徐酸化処理を施した後、加熱処理、還元処
理、並びに表面酸化処理(徐酸化処理)を繰り返し行っ
てもよい。これらの処理を繰り返し行うことによってよ
り緻密な強磁性金属粉末を容易に得ることができる。ま
た、強磁性金属粉末とした後に水洗することは、強磁性
金属粉末の表面に存在する水溶性の塩を除去することが
できるため必要により処理される。更に,特願2001
−315366号において提案している徐酸化処理方法
を用いることも効果的である。
【0043】次に本発明の磁気記録媒体について説明す
る。本発明の磁気記録媒体は、磁性層の耐候性、即ち、
60℃90%RHに1週間保存後の減磁を10%以下に
抑えることにより、磁気記録媒体の保存安定性は問題な
いレベルとなる。しかし、減磁は低ければ低いほど好ま
しい。本発明の強磁性金属粉末を用いることにより、減
磁(△Φm)を10%以下に抑えることができる。磁性
層の減磁ΔΦm(%)は、以下の測定方法により求めた
ものを意味する。 ΔΦm(%)=100×(保存前Φm−保存後Φm)/
保存前Φm Φm:最大磁束 測定は振動試料型磁束計VSM−5(東英工業社製)を
用い、タイムコンスタント0.1秒、スイープ速度3分
/10kOe{Oe=(1/4π)kA/m}、測定磁
場10kOeで測定する。また、Hcの変化率ΔHc
(%)は、2.5%以内が好ましい。ΔHc(%)は、
以下の測定方法により求めたものを意味する。 ΔHc(%)=100×(保存前Hc−保存後Hc)/
保存前Hc 測定はΔΦmと同様である。ΔHc(%)が、−2.5
%を下まわると高Hc成分の増加が生じるため好ましく
なく、+2.5%を超えると低Hc成分の増加が生じる
ため好ましくない。
【0044】本発明の磁性層の残留磁束(Φr){残留
磁束密度(Br)×磁性層厚み(δ)}は、5〜75m
T・μmが好ましく、更に好ましくは10〜70mT・
μm、特に好ましくは、15〜60mT・μmである。
磁性層の残留磁束(Φr)はMRヘッドの性能により最
適値を設定することが望ましく、MRヘッドが飽和しな
い範囲で高めに選ぶことが好ましい。
【0045】本発明において、磁性層のHcは120k
A/m〜320kA/mが好ましく、さらに好ましくは
143.2〜300kA/mであり、特に好ましくは1
59.2〜240kA/mである。Hcが120kA/
m未満では出力が不足し、また、低Hc成分の存在量が
多くなり、熱揺らぎの問題が発生してくる。320kA
/mを超えるとオーバーライト特性上好ましくない。ま
た、記録電流が不足したり、ヘッドが飽和して、歪を生
じたり、出力が不十分となり好ましくない。この傾向は
特に高感度なヘッド例えば磁気抵抗型(MR)ヘッドを
使用する系で顕著である。Hc、Br、Φrが上記下限
値より小さいと短波長出力を十分に得ることができない
場合があり、また、それらが上限値より大きいと記録に
使用するヘッドが飽和してしまうので出力を確保するこ
とができない場合がある。
【0046】本発明の磁気記録媒体の層構成は、基本的
に支持体の上に少なくとも本発明の強磁性金属粉末を含
む磁性層を設けてなり、該磁性層を支持体面の一方側又
は両側に設けたものであれば、特に制限されない。ま
た、磁性層は単層であっても2層以上から構成してもよ
く、後者の場合、それら層同士の位置関係は目的により
隣接して設けても間に磁性層以外の層を介在させて設け
てもよく、公知の層構成が採用できる。尚、本発明にお
いて、磁性層の厚みとは、複層の場合は最上層の磁性層
の乾燥厚みを言う。磁性層の厚みは、好ましくは、0.
02〜0.2μm、更に好ましくは0.03〜0.18
μm、特に好ましくは0.03〜0.15μmである。
0.02μm未満では強磁性金属粉末は2層前後しか存
在しないため、厚み変動が大きくなる。また,単位面積
当たりの粒子数が少なくなり,高密度記録には適しなく
なる。本発明の磁気記録媒体は、好ましくは支持体と磁
性層との間に非磁性粉末と結合剤を主体とする非磁性層
が設けられる。この場合、磁性層の表面粗さは、中心面
平均表面粗さ(Ra)で、好ましくは3.0nm以下、
更に好ましくは0.6〜2.8nmである。磁性層の分
散性はノイズに影響を与えるため重要である。磁気的ク
ラスターサイズを測定して磁性層の分散性をみることが
できる。本発明における磁気的クラスターサイズは小さ
い方が望ましい。磁性層を複層で構成することも可能で
ある。例としては、強磁性酸化鉄、強磁性コバルト変性
酸化鉄、CrO2粉末、六方晶系フェライト粉末及び各
種強磁性金属粉末などから選択した強磁性粉末を結合剤
中に分散した磁性層を組み合わせたものが挙げられる。
尚、この場合、同種の強磁性粉末であっても元素組成、
粉体サイズなどの異なる強磁性粉末を含む磁性層を組み
合わせることもできる。
【0047】本発明においては、強磁性金属粉末を含む
磁性層と支持体との間に非磁性層を設けた磁気記録媒体
が好ましい。このような層構成の層の位置関係におい
て、磁性層を上層、非磁性層を下層ともいう。次に下層
に関する詳細な内容について説明する。下層は、実質的
に非磁性であり、非磁性粉末と結合剤を含む構成である
ことが好ましいが、特に制限されるべきものではない。
下層は実質的に非磁性である範囲で磁性粉末も使用され
得るものである。下層が実質的に非磁性であるとは、上
層の電磁変換特性を実質的に低下させない範囲で下層が
磁性を有することを許容するということである。
【0048】非磁性粉末としては、例えば、金属酸化
物、金属炭酸塩、金属窒化物、金属炭化物などの無機化
合物から選択することができる。無機化合物としては例
えばα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、
γ−アルミナ、θ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロ
ム、酸化セリウム、α−酸化鉄、ゲータイト、窒化珪
素、二酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネ
シウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、
などが単独または組合せで使用される。特に好ましいの
は、粒度分布の小さいこと、機能付与の手段が多いこと
などから、二酸化チタン、酸化亜鉛、α−酸化鉄、硫酸
バリウムであり、更に好ましいのは二酸化チタン、α−
酸化鉄である。α−酸化鉄は、粒子サイズがそろった磁
性酸化鉄や金属粉末作製用の酸化鉄原料を加熱脱水、ア
ニ−ル処理し空孔を少なくし、必要により表面処理をし
たものが好ましい。通常、二酸化チタンは光触媒性を持
っているので、光があたるとラジカルが発生しバインダ
ー、潤滑剤と反応する懸念がある。そのため、本発明に
使用する二酸化チタンは、Al、Feなどを1〜10%
固溶させ、光触媒特性を低下させることが必要である。
さらに表面をAl、Si化合物で処理して触媒作用を低
下させることも好ましい。これら非磁性粉末の粒子サイ
ズは0.005〜1μmが好ましいが、必要に応じて粒
子サイズの異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の
非磁性粉末でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせ
ることもできる。
【0049】とりわけ好ましい非磁性粉末の粒子サイズ
は、0.01μm〜0.5μmである。特に、非磁性粉
末が粒状金属酸化物である場合は、平均円相当径が0.
08μm以下であることが好ましく、針状金属酸化物で
ある場合は、平均長径が0.3μm以下であることが好
ましく、0.2μm以下であることがさらに好ましい。
タップ密度は通常、0.3〜1.5g/ml、好ましく
は0.4〜1.3g/mlである。非磁性粉末の含水率
は通常、0.2〜5質量%、好ましくは0.3〜3質量
%、更に好ましくは0.3〜1.5質量%である。非磁
性粉末のpHは通常、2〜12であるが、5.5〜11
の間であることが特に好ましい。非磁性粉末のBET法
による比表面積(SBET)は通常、1〜100m2/g、
好ましくは5〜80m2/g、更に好ましくは10〜8
0m2/gである。非磁性粉末の結晶子サイズは40〜
1000Åが好ましく、40〜800Åが更に好まし
い。DBP(ジブチルフタレート)を用いた吸油量は通
常、5〜100ml/100g、好ましくは10〜80
ml/100g、更に好ましくは20〜60ml/10
0gである。比重は通常、1.5〜7、好ましくは3〜
6である。形状は針状、球状、多面体状、板状のいずれ
でも良い。非磁性粉末のSA(ステアリン酸)吸着量は
1〜20μmol/m2、好ましくは2〜15μmol
/m2、さらに好ましくは3〜8μmol/m2である。
ステアリン酸吸着量が多い非磁性粉末を使用する時、表
面に強く吸着する有機物で表面修飾して磁気記録媒体を
作成することが好ましい。
【0050】これらの非磁性粉末の表面にはAl、M
g、Si、Ti、Zr、Sn、Sb、Zn、Yなどの元
素を含む化合物で表面処理することが好ましい。この表
面処理によりその表面に形成される酸化物として、特に
分散性に好ましいのはAl23、SiO2、TiO2、Z
rO2、MgOおよびこれらの含水酸化物であるが、更
に好ましいのはAl23、SiO2、ZrO2およびこれ
らの含水酸化物である。これらは組み合わせて使用して
も良いし、単独で用いることもできる。また、目的に応
じて共沈させた表面処理層を用いても良いし、先ずアル
ミナを形成した後にその表層にシリカを形成する方法、
またはその逆の方法を採ることもできる。また、表面処
理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質
で密である方が一般には好ましい。
【0051】下層に用いられる非磁性粉末の具体的な例
としては、昭和電工製ナノタイト、住友化学製HIT−
100、HIT−82、戸田工業製α−酸化鉄DPN−
250BX、DPN−245、DPN−270BX、D
PN−550BX、DPN−550RX、DPN−01
10RX、DBN−650RX、DAN−855RX、
DAN−890RX、石原産業製酸化チタンTTO−5
1B、TTO−55A、TTO−55B、TTO−55
C、TTO−55S、TTO−55D、SN−100、
チタン工業製酸化チタンSTT−4D、STT−30
D、STT−30、STT−65C、α−酸化鉄α−4
0、テイカ製酸化チタンMT−100S、MT−100
T、MT−150W、MT−500B、MT−600
B、MT−100F、MT−500HD、堺化学製FI
NEX−25、BF−1、BF−10、BF−20、S
T−M、同和鉱業製酸化鉄DEFIC−Y、DEFIC
−R、日本アエロジル製AS2BM、TiO2P25、
宇部興産製100A、500A、及びそれを焼成したも
のが挙げられる。
【0052】下層にカ−ボンブラックを混合させること
によって、よく知られているように表面電気抵抗Rsを
下げること、光透過率を小さくすること、所望のマイク
ロビッカース硬度を得ることができる。尚、本発明にお
いて、下層に使用するカーボンブラックは上記非磁性粉
末として含んでも良い。また、下層にカーボンブラック
を含ませることで潤滑剤貯蔵の効果をもたらすことも可
能である。好適なカーボンブラックの種類としては、ゴ
ム用の各種ファーネスブラック、ゴム用の各種サーマル
ブラック、カラー用カーボンブラック、導電性カーボン
ブラック、アセチレンブラックなどを用いることができ
る。下層のカーボンブラックは所望する効果によって、
以下のような特性を最適化すべきであり、併用すること
でより効果が得られることがある。
【0053】下層のカーボンブラックのBET法により
測定した比表面積は通常、50〜500m2/g、好ま
しくは70〜400m2/g、DBP吸油量は通常、2
0〜400ml/100g、好ましくは30〜400m
l/100gである。カ−ボンブラックの平均粒子径は
通常、5〜80nm、好ましくは10〜50nm、さら
に好ましくは10〜40nmである。カーボンブラック
のpHは2〜10、含水率は0.1〜10質量%、タッ
プ密度は0.1〜1g/mlが好ましい。本発明に用い
られるカーボンブラックの具体的な例としてはキャボッ
ト社製BLACKPEARLS 2000、1300、
1000、900、800、880、700、VULC
AN社製XC−72、三菱化学製#3050B、#31
50B、#3750B、#3950B、#950、#6
50B、#970B、#850B、MA−600、MA
−230、#4000、#4010、コロンビアンカ−
ボン社製CONDUCTEX SC、RAVEN 88
00、8000、7000、5750、5250、35
00、2100、2000、1800、1500、12
55、1250、アクゾー社製ケッチェンブラックEC
などがあげられる。カーボンブラックを分散剤などで表
面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面
の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわな
い。また、カーボンブラックを塗料に添加する前にあら
かじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボ
ンブラックは上記非磁性粉末に対して50質量%を越え
ない範囲、下層総質量の40質量%を越えない範囲で使
用できる。これらのカーボンブラックは単独、または組
合せで使用することができる。本発明で使用できるカー
ボンブラックは例えば「カーボンブラック便覧」(カー
ボンブラック協会編)を参考にすることができる。
【0054】また下層には、目的に応じて有機質粉末を
添加することもできる。好ましい有機質粉末としては、
例えば、アクリルスチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミ
ン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔
料が挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエ
ステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド
系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂も使用することが
できる。その製法は、例えば特開昭62−18564
号、特開昭60−255827号などの各公報に記され
ているものが使用できる。
【0055】下層の結合剤(種類と量)、潤滑剤・分散
剤・添加剤の量、種類、溶剤、分散方法に関しては上層
に関する公知技術が適用できる。
【0056】本発明の磁気記録媒体における磁性層、あ
るいは更に非磁性層に用いられる結合剤は、従来公知の
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混
合物が使用できる。熱可塑性樹脂としては、ガラス転移
温度が−100〜150℃、数平均分子量が1000〜
200000、好ましくは10000〜100000、
重合度が約50〜1000程度のものが好ましく用いら
れる。
【0057】このような結合剤としては、塩化ビニル、
酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル
酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニ
トリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレ
ン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニル
アセタール、ビニルエーテル、などを構成単位として含
む重合体または共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム
系樹脂がある。
【0058】また、熱硬化性樹脂または反応型樹脂とし
てはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化
型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アク
リル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹
脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイ
ソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリ
オールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンと
ポリイソシアネートの混合物などが挙げられる。
【0059】前記の結合剤に、より優れた強磁性粉末の
分散効果と磁性層の耐久性を得るためには、必要に応じ
て−COOM、−SO3M、−OSO3M、−P=O(O
M) 2、−O−P=O(OM)2、(上記各基のMは水素
原子、またはアルカリ金属)、−OH、−NR2、−N+
3(Rは炭化水素基)、エポキシ基、SH、CN、な
どから選ばれる少なくともひとつ以上の極性基を共重合
または付加反応で導入したものを用いることが好まし
い。このような極性基の量は、結合剤の量に対して10
-1〜10-8モル/gであり、好ましくは10-2〜10-6
モル/gである。
【0060】本発明の磁気記録媒体に用いられる結合剤
は、強磁性粉末に対し、5〜50質量%の範囲、好まし
くは10〜30質量%の範囲で用いられる。塩化ビニル
系樹脂を用いる場合は5〜100質量%、ポリウレタン
樹脂を用いる場合は0〜100質量%、ポリイソシアネ
ートは2〜100質量%の範囲でこれらを組み合わせて
用いるのが好ましい。また,結合剤としてポリウレタン
樹脂を単独で用いることが可能である。
【0061】上記ポリウレタン樹脂としては、ジオール
と有機ジイソシアネートを主要原料とした反応生成物で
あるポリウレタン樹脂からなり、ジオール成分として
は、環状構造を有する短鎖ジオール単位とエーテル基を
含む長鎖ジオール単位とを含むことが好ましい。そし
て、このポリウレタン樹脂は、環状構造を有する短鎖ジ
オール単位をポリウレタン樹脂中に17〜40重量%含
み、かつポリウレタン樹脂全体に対して、エーテル基を
1.0〜5.0mmol/gを含む長鎖ジオール単位を
ポリウレタン樹脂中に10〜50重量%含む結合剤であ
ることが好ましい。
【0062】環状構造を有する短鎖ジオールとは、飽和
又は不飽和の環状構造を有し、かつ分子量が500未満
のジオールを意味する。
【0063】環状構造を有する短鎖ジオールは、通常、
分子量が50以上500未満のものから選ばれる。ま
た、前記環状構造を有する短鎖ジオールと共に、通常、
分子量500未満の他のジオールを併用することができ
る。具体的には、エチレングリコール、1,3−プロピ
レンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,4
−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6
−ヘキサンジオール、2,2−ジメチルプロパンジオー
ル、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオー
ル、ジエチレングリコール、N−ジエタノールアミンの
エチレンオキシドまたはプロピレンオキシド付加物等の
直鎖又は分枝のジオールを挙げることができる。
【0064】これらを用いることによって、環状構造に
より高強度、高Tgであって、高耐久性の塗布膜が得ら
れる。さらに分岐CH3の導入により溶剤への溶解性に
優れるため高分散性が得られる。ポリウレタン樹脂中の
短鎖ジオール単位の含有量は、17〜40重量%が好ま
しく、さらに好ましくは20〜30重量%である。
【0065】また、長鎖ジオールとは、分子量が500
以上のジオールを意味し、具体的には、ビスフェノール
A、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールS又はビ
スフェノールPにエチレンオキシド、プロピレンオキシ
ド又はこれらの両者を付加させたもの、ポリプロピレン
グリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチ
レングリコールが好ましい。
【0066】長鎖ジオールの重量平均分子量(Mw)
は、通常、500〜5000であり、好ましくは700
〜3000の範囲から選ばれることが適当である。エー
テル基を含む長鎖ジオール単位の含有量は、ポリウレタ
ン樹脂中10〜50重量%であることが好ましく、さら
に好ましくは30〜40重量%であることが適当であ
る。該長鎖ジオール単位のエーテル基の含有量は、ポリ
ウレタン樹脂中に1.0〜5.0mmol/gであるこ
とが好ましく、より好ましくは2.0〜4.0mmol
/gであることが適当である。
【0067】ポリウレタン樹脂の数平均分子量(Mn)
は、好ましくは、18000〜56000、更に好まし
くは23000〜34000であり、重量平均分子量
(Mw)は、好ましくは、30000〜100000、
更に好ましくは40000〜60000であることが適
当である。
【0068】上述したポリウレタン樹脂は、塩化ビニル
系樹脂等の合成樹脂を併用しても良いが、ウレタン樹脂
の比率の高いほど、磁性液の表面張力を下げられるた
め、塗布、乾燥における磁性層厚みムラや厚み変動を抑
制することが出来る。尚、上記ポリウレタン樹脂は、非
磁性層にも配合することが好ましい。
【0069】本発明において、ポリウレタンを用いる場
合はガラス転移温度が−50〜100℃、破断伸びが1
00〜2000%、破断応力は通常、0.05〜10K
g/mm2(≒0.49〜98MPa)、降伏点は0.
05〜10Kg/mm2(≒0.49〜98MPa)が
好ましい。
【0070】本発明に用いるポリイソシアネートとして
は、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニル
メタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジ
イソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチ
レン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイ
ソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェ
ニルメタントリイソシアネートなどのイソシアネート
類、また、これらのイソシアネート類とポリアルコール
との生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生
成したポリイソシアネートなどを使用することができ
る。これらのイソシアネート類の市販されている商品名
としては、日本ポリウレタン社製、コロネートL、コロ
ネートHL、コロネート2030、コロネート203
1、ミリオネートMR、ミリオネートMTL、武田薬品
社製、タケネートD−102、タケネートD−110
N、タケネートD−200、タケネートD−202、住
友バイエル社製、デスモジュールL、デスモジュールI
L、デスモジュールN、デスモジュールHLなどがあり
これらを単独または硬化反応性の差を利用して二つもし
くはそれ以上の組合せで用いることができる。
【0071】本発明の磁気記録媒体の磁性層及び/又は
非磁性層中には、通常、潤滑剤、研磨剤、分散剤、帯電
防止剤、可塑剤、防黴剤などなどを始めとする種々の機
能を有する素材をその目的に応じて含有させることがで
きる。
【0072】潤滑剤としては、ジアルキルポリシロキサ
ン(アルキルは炭素数1〜5個)、ジアルコキシポリシ
ロキサン(アルコキシは炭素数1〜4個)、モノアルキ
ルモノアルコキシポリシロキサン(アルキルは炭素数1
〜5個、アルコキシは炭素数1〜4個)、フェニルポリ
シロキサン、フロロアルキルポリシロキサン(アルキル
は炭素数1〜5個)などのシリコンオイル;グラファイ
トなどの導電性微粉末;二硫化モリブデン、二硫化タン
グステンなどの無機粉末;ポリエチレン、ポリプロピレ
ン、ポリエチレン塩化ビニル共重合体、ポリテトラフル
オロエチレンなどのプラスチック微粉末;α−オレフィ
ン重合物;常温で固体の飽和脂肪酸(炭素数10から2
2);常温で液状の不飽和脂肪族炭化水素(n−オレフ
ィン二重結合が末端の炭素に結合した化合物、炭素数約
20);炭素数12〜20個の一塩基性脂肪酸と炭素数
3〜12個の一価のアルコールから成る脂肪酸エステル
類、フルオロカーボン類などが使用できる。
【0073】上記の中でも飽和脂肪酸と脂肪酸エステル
が好ましく、両者を併用することがより好ましい。飽和
脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリ
ン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、アラキン酸が挙げられ
る。脂肪酸エステルの原料となるアルコールとしては、
エタノール、ブタノール、フェノール、ベンジルアルコ
ール、2−メチルブチルアルコール、2−ヘキシルデシ
ルアルコール、プロピレングリコールモノブチルエーテ
ル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピ
レングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコ
ールモノブチルエーテル、s−ブチルアルコールなどの
モノアルコール類、エチレングリコール、ジエチレング
リコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ソル
ビタン誘導体などの多価アルコールが挙げられる。同じ
くエステルの原料となる脂肪酸としては、酢酸、プロピ
オン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ラウリン
酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘ
ン酸、アラキン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン
酸、エライジン酸、パルミトレイン酸などの脂肪族カル
ボン酸またはこれらの混合物が挙げられる。
【0074】脂肪酸エステルとしての具体例は、ブチル
ステアレート、s−ブチルステアレート、イソプロピル
ステアレート、ブチルオレエート、アミルステアレー
ト、3−メチルブチルステアレート、2−エチルヘキシ
ルステアレート、2−ヘキシルデシルステアレート、ブ
チルパルミテート、2−エチルヘキシルミリステート、
ブチルステアレートとブチルパルミテートの混合物、ブ
トキシエチルステアレート、2−ブトキシ−1−プロピ
ルステアレート、ジプロピレングリコールモノブチルエ
ーテルをステアリン酸でエステル化したもの、ジエチレ
ングリコールジパルミテート、ヘキサメチレンジオール
をミリスチン酸でエステル化してジエステル化としたも
の、グリセリンのオレエートなどの種々のエステル化合
物を挙げることができる。
【0075】さらに、磁気記録媒体を高湿度下で使用す
るときしばしば生ずる脂肪酸エステルの加水分解を軽減
するために、原料の脂肪酸及びアルコールの分岐/直
鎖、シス/トランスなどの異性構造、分岐位置を選択す
ることも好ましい。これらの潤滑剤は結合剤100質量
部に対して0.2〜20質量部の範囲で添加される。
【0076】潤滑剤としては、更に以下の化合物を使用
することもできる。即ち、シリコンオイル、グラファイ
ト、二硫化モリブデン、窒化ほう素、弗化黒鉛、フッ素
アルコール、ポリオレフィン、ポリグリコール、アルキ
ル燐酸エステル、二硫化タングステンなどである。
【0077】本発明の磁性層に用いられる研磨剤として
は、一般に使用される材料でαアルミナ、γアルミナ、
溶融アルミナ、コランダム、人造コランダム、炭化珪
素、酸化クロム(Cr23)、ダイアモンド、人造ダイ
アモンド、ザクロ石、エメリー(主成分:コランダムと
磁鉄鉱)、αFe23などが使用される。これらの研磨
剤はモース硬度が6以上である。具体的な例としては住
友化学社製、AKP−10、AKPー12、AKP−1
5、AKP−20、AKP−30、AKP−50、AK
P−1520、AKP−1500、HIT−50、HI
T60A、HIT70、HIT80、HIT−100、
日本化学工業社製、G5、G7、S−1、酸化クロム
K、上村工業社製UB40B、不二見研磨剤社製WA8
000、WA10000、戸田工業社製TF100、T
F140、TF180などが上げられる。平均粉体サイ
ズが0.05〜3μmの大きさのものが効果があり、好
ましくは0.05〜1.0μmである。
【0078】これら研磨剤の合計量は、磁性体100質
量部に対して1〜20質量部、望ましくは1〜15質量
部の範囲で添加される。1質量部より少ないと十分な耐
久性が得られない傾向にあり、20質量部より多すぎる
と表面性、充填度が劣化する傾向にある。これら研磨剤
は、あらかじめ結合剤で分散処理したのち磁性塗料中に
添加してもよい。
【0079】本発明の磁気記録媒体の磁性層中には、前
記非磁性粉末の他に帯電防止剤として導電性粒子を含有
させることもできる。支持体と磁性層の間に非磁性層を
設けた磁気記録媒体は、上層の飽和磁束密度を最大限に
増加させるためにはできるだけ上層への添加は少なく
し、上層以外の塗布層に添加するのが好ましい。帯電防
止剤としては、特に、カーボンブラックを添加すること
は、媒体全体の表面電気抵抗を下げる点で好ましい。本
発明に使用できるカーボンブラックはゴム用の各種ファ
ーネスブラック、ゴム用の各種サーマルブラック、カラ
ー用カーボンブラック、導電性カーボンブラック、アセ
チレンブラックなどを用いることができる。SBETは5
〜500m2/g、DBP吸油量は、10〜1500m
l/100g、平均粒子径は5〜300nm、pHは2
〜10、含水率は0.1〜10質量%、タップ密度は
0.1〜1g/cc、が好ましい。本発明に用いられる
カーボンブラックの具体的な例としてはキャボット社
製、BLACKPEARLS 2000、1300、1
000、900、800、700、VULCAN XC
−72、旭カーボン社製、#80、#60、#55、#
50、#35、三菱化学社製、#3950B、#270
0、#2650、#2600、#2400B、#230
0、#900、#1000、#95、#30、#40、
#10B、MA230、MA220、MA77、コロン
ビアカーボン社製、CONDUCTEX SC、RAV
EN150、50、40、15、ライオンアグゾ社製ケ
ッチェンブラックEC、ケッチェンブラックECDJ−
500、ケッチェンブラックECDJ−600などが挙
げられる。カーボンブラックを分散剤などで表面処理し
たり、カーボンブラックを酸化処理したり、樹脂でグラ
フト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化し
たものを使用してもかまわない。また、カーボンブラッ
クを磁性塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散し
てもかまわない。磁性層にカーボンブラックを使用する
場合は磁性体に対する量は0.1〜30質量%で用いる
ことが好ましい。非磁性層には無機質非磁性粉末(ただ
し、非磁性粉末にはカーボンブラックは含まれない)に
対し3〜20質量%含有させることが好ましい。
【0080】一般的にカーボンブラックは、帯電防止剤
としてだけでなく、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度
向上などの働きがあり、これらは、それぞれ適した性質
を持つカーボンブラックが選択される。従って本発明に
使用されるこれらのカーボンブラックは、その種類、
量、組合せを変え、粉体サイズ、吸油量、電導度、pH
などの先に示した諸特性をもとに目的に応じて使い分け
ることはもちろん可能である。使用できるカーボンブラ
ックは例えば「カーボンブラック便覧」カーボンブラッ
ク協会編を参考にすることができる。
【0081】本発明の磁気記録媒体として、支持体上に
2層以上の塗布層を形成させてなる場合には、その形成
手段としては、逐次塗布方式(ウェット・オン・ドライ
方式)及び同時塗布方式(ウェット・オン・ウェット方
式)が挙げられるが、後者が超薄層の磁性層を作り出す
ことができるので特に優れている。その同時塗布方式、
即ちウェット・オン・ウェット方式の具体的な方法とし
ては、
【0082】(1)磁性塗料で一般的に用いられるグラ
ビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージ
ョン塗布装置によりまず下層を塗布し、その層がまだ湿
潤状態にあるうちに、例えば、特公平1−46186号
公報、特開昭60−238179号公報及び特開平2−
265672号公報に開示されている支持体加圧型エク
ストルージョン塗布装置により上層を塗布する方法、
【0083】(2)特開昭63−88080号公報、特
開平2−17971号公報及び特開平2−265672
号公報に開示されているような塗布液通液スリットを二
つ内蔵した塗布ヘッドにより、下層の塗布液及び上層の
塗布液をほぼ同時に塗布する方法、
【0084】(3)特開平2−174965号公報に開
示されているバックアップロール付きエクストルージョ
ン塗布装置により、上層及び下層をほぼ同時に塗布する
方法、などが挙げられる。
【0085】ウェット・オン・ウェット方式で塗布する
場合、磁性層用塗布液と非磁性層用塗布液の流動特性は
できるだけ近い方が、塗布された磁性層と非磁性層の界
面の乱れがなく厚さが均一な厚み変動の少ない磁性層を
得ることができる。塗布液の流動特性は、塗布液中の粉
体と結合剤の組み合わせに強く依存するので、特に、非
磁性層に使用する非磁性粉末の選択に留意することが重
要である。
【0086】本磁気記録媒体の支持体の厚みは、通常、
1〜100μm、テープ状で使用するときは、望ましく
は3〜20μm、フレキシブルディスクとして使用する
場合は、40〜80μmが好ましく、支持体に設ける非
磁性層は通常、0.5〜10μm、好ましくは0.5〜
3μmである。
【0087】また、前記磁性層及び前記非磁性層以外の
他の層を目的に応じて形成することができる。例えば、
支持体と下層の間に密着性向上のための下塗り層を設け
てもかまわない。この厚みは通常、0.01〜2μm、
好ましくは0.05〜0.5μmである。また、支持体
の磁性層側と反対側にバック層を設けてもかまわない。
この厚みは通常、0.1〜2μm、好ましくは0.3〜
1.0μmである。これらの下塗り層、バック層は公知
のものが使用できる。円盤状磁気記録媒体の場合、片面
もしくは両面に上記構成の層を設けることができる。
【0088】本発明で使用される支持体には特に制限は
なく、通常使用されているものを用いることができる。
支持体を形成する素材の例としては、ポリエチレンテレ
フタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカー
ボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポ
リアミドイミド、ポリイミド、ポリサルホン、ポリエー
テルサルホンなどの各種合成樹脂のフィルム、およびア
ルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を挙げること
ができる。
【0089】本発明の目的を有効に達成するには、支持
体の表面粗さは、中心面平均表面粗さ(Ra)(カット
オフ値0.25mm)で0.03μm以下、望ましく
0.02μm以下、さらに望ましく0.01μm以下で
ある。また、これらの支持体は単に前記中心面平均表面
粗さが小さいだけではなく、1μm以上の粗大突起がな
いことが好ましい。また表面の粗さ形状は必要に応じて
支持体に添加されるフィラーの大きさと量により自由に
コントロールされるものである。これらのフィラーの一
例としては、Ca、Si、Tiなどの酸化物や炭酸塩の
他、アクリル系などの有機樹脂微粉末があげられる。本
発明に用いられる支持体のウエブ走行方向のF−5値は
好ましくは5〜50Kg/mm2(≒49〜490MP
a)、ウエブ幅方向のF−5値は好ましくは3〜30K
g/mm2(≒29.4〜294MPa)であり、ウエ
ブ長手方向のF−5値がウエブ幅方向のF−5値より高
いのが一般的であるが、特に幅方向の強度を高くする必
要があるときはその限りでない。
【0090】また、支持体のウエブ走行方向および幅方
向の100℃で30分間の熱収縮率は、好ましくは3%
以下、さらに望ましくは1.5%以下、また、80℃で
30分間の熱収縮率は、好ましくは1%以下、さらに望
ましくは0.5%以下である。破断強度は5〜100K
g/mm2(≒49〜980MPa)、弾性率は100
〜2000Kg/mm2(≒0.98〜19.6GP
a)が望ましい。
【0091】本発明で用いられる有機溶媒は任意の比率
でアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケ
トン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホ
ロン、テトラヒドロフランなどのケトン類、メタノー
ル、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチ
ルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロ
ヘキサノールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブ
チル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチ
ル、酢酸グリコールなどのエステル類、グリコールジメ
チルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキ
サンなどのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエ
ン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼンなどの芳香
族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライ
ド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリ
ン、ジクロルベンゼンなどの塩素化炭化水素類、N,N
−ジメチルホルムアミド、ヘキサンなどを混合して、あ
るいは単独の溶剤として使用できる。これら有機溶媒は
必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、
未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分などの不純
分が含まれていてもかまわない。これらの不純分は30
%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下であ
る。本発明で用いる有機溶媒は必要ならば磁性層と非磁
性層でその種類、量を変えてもかまわない。例えば、非
磁性層に揮発性の高い溶媒を用いて表面性を向上させ
る、非磁性層に表面張力の高い溶媒(シクロヘキサノ
ン、ジオキサンなど)を用い塗布の安定性をあげる、あ
るいは磁性層に溶解性パラメータの高い溶媒を用いて充
填度を上げる、などがその例としてあげられるが、これ
らの例に限られたものではないことは無論である。
【0092】本発明の磁気記録媒体は、非磁性粉末又は
強磁性粉末と結合剤、及び必要ならば他の添加剤と共に
有機溶媒を用いて混練分散し、非磁性塗料及び磁性塗料
を支持体上に塗布し、必要に応じて配向、乾燥して得ら
れる。
【0093】本発明の磁気記録媒体の磁性塗料を製造す
る工程は、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれ
らの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からな
る。個々の工程はそれぞれ2段階以上にわかれていても
かまわない。本発明に使用する非磁性粉末、強磁性粉
末、結合剤、カーボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、
潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初または
途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ
以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、
ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整
のための混合工程で分割して投入してもよい。
【0094】非磁性塗料、磁性塗料の混練分散に当たっ
ては各種の混練機が使用される。例えば、二本ロールミ
ル、三本ロールミル、ボールミル、ペブルミル、トロン
ミル、サンドグラインダー、ゼグバリ(Szegvar
i)、アトライター、高速インペラー分散機、高速スト
ーンミル、高速衝撃ミル、ディスパー、ニーダ、高速ミ
キサー、ホモジナイザー、超音波分散機などを用いるこ
とができる。
【0095】本発明の目的を達成するためには、従来の
公知の製造技術を一部の工程として用いることができる
ことはもちろんであるが、混練工程では連続ニーダや加
圧ニーダなど強い混練力をもつものを使用することが好
ましい。連続ニーダまたは加圧ニーダを用いる場合は、
強磁性粉末と結合剤のすべてまたはその一部(ただし全
結合剤の30質量%以上が好ましい)および強磁性粉末
100質量部に対し15〜500質量部の範囲の溶剤や
その他の添加成分で混練処理される。これらの混練処理
の詳細については特開平1−106338号公報、特開
昭64−79274号公報に記載されている。本発明で
は、特開昭62−212933に示されるような同時重
層塗布方式をもちいることによりより効率的に生産する
ことが出来る。
【0096】本発明の磁気記録媒体の磁性層中に含まれ
る残留溶媒は、好ましくは100mg/m2以下、さら
に好ましくは10mg/m2以下であり、磁性層に含ま
れる残留溶媒が非磁性層に含まれる残留溶媒より少ない
方が好ましい。
【0097】空隙率は下層、上層とも好ましくは30容
量%以下、さらに好ましくは10容量%以下である。非
磁性層の空隙率が磁性層の空隙率より大きいほうが好ま
しいが、非磁性層の空隙率が5容量%以上であれば小さ
くてもかまわない。
【0098】本発明の磁気記録媒体は、下層と上層を有
することができるが、目的に応じ下層と上層でこれらの
物理特性を変えることができる。例えば、上層の弾性率
を高くし走行耐久性を向上させると同時に下層の弾性率
を磁性層より低くして磁気記録媒体のヘッドへの当りを
良くするなどが考えられる。
【0099】このような方法により、支持体上に塗布さ
れた磁性層は必要により層中の強磁性粉末を配向させる
処理を施したのち、形成された磁性層を乾燥する。又必
要により表面平滑化加工を施したり、所望の形状に裁断
したりして、本発明の磁気記録媒体を製造する。
【0100】磁性層の0.5%伸びでの弾性率はウエブ
塗布方向、幅方向とも望ましくは100〜2000Kg
/mm2(≒980〜19600N/mm2)、破断強度
は好ましくは10〜70Kg/mm2(≒98〜686
N/mm2)、磁気記録媒体の弾性率は面内各方向で好
ましくは100〜1500Kg/mm2(≒980〜1
4700N/mm2)、残留のびは好ましくは0.5%
以下、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は好ま
しくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下、もっ
とも好ましくは0.1%以下である。
【0101】本発明の磁気記録媒体は、ビデオ用途、オ
ーディオ用途などのテープであってもデータ記録用途の
フロッピー(登録商標)ディスクや磁気ディスクであっ
てもよいが、ドロップアウトの発生による信号の欠落が
致命的となるデジタル記録用途の媒体に対しては特に有
効である。更に、下層を非磁性層とし、下層上の磁性層
の厚さを0.25μm以下とすることにより、電磁変換
特性が高く、オーバーライト特性も優れ、かつ高密度で
大容量の磁気記録媒体を得ることができる。
【実施例】本発明の新規な特長を以下の実施例で具体的
に説明するが、本発明はこれに限定されるものではな
い。
【0102】強磁性金属粉末の製造 (サンプル1) サンプルA(ゲータイト)の製造工程 撹拌機つきの150リットルタンクに1.7mol/l
の炭酸アンモニウム35リットルと2.0mol/lの
アンモニア水15リットルの混合溶液を窒素でバブリン
グしつつ液温を20℃とし、別のタンクで窒素をバブリ
ングさせながら溶解した液温22℃の硫酸第一鉄、硫酸
コバルト及び硫酸アルミニウムを含有する水溶液(Fe
2+濃度が1.35mol/l、Co濃度が0.33mo
l/l、Al濃度が0.06mol/l)45リットル
を添加し混合した。10分間撹拌した後、懸濁液の温度
を28℃とし第一鉄を主成分とする沈殿物を生成した。
窒素をバブリングし、90分沈殿を熟成した。窒素にか
えて空気を導入し沈殿物を酸化しゲータイト核晶を生成
させた。懸濁液中のFe2+濃度が0.75mol/lと
なったとき空気酸化を中断し窒素にきりかえ、懸濁液の
温度を40℃に加熱し2時間保持したのち、窒素を空気
に切り換え酸化反応を進めAlを固溶させた紡錘状を呈
したゲータイト(サンプルAとする)を生成させた。得
られた粒子を瀘過、水洗した。一部を乾燥し透過型電子
顕微鏡写真をとり粉体サイズを求めたところ、平均長軸
長が60nm、平均針状比が6であった。また窒素中で
120℃で30分加熱脱水後比表面積を測定すると16
5m2/gであった。
【0103】焼結防止処理されたサンプルAの製造工程 得られたゲータイト(サンプルA)を水中で2%スラリ
ーとし撹拌しつつ硫酸コバルト水溶液(Co換算20
部:ゲータイト中の鉄のモル数を100部とした時のモ
ル数を部で表示)、硝酸マンガン水溶液(Mn換算0.
5部:ゲータイト中の鉄のモル数を100部とした時の
モル数を部で表示)を添加し、アンモニア水で中和しコ
バルト化合物とマンガン化合物を粒子表面に沈着させ
た。スラリーを濾過水洗後再度2%水スラリーとし、硫
酸アルミニウム水溶液(Al換算8.0部:ゲータイト
中の鉄のモル数を100部とした時のモル数を部で表
示)と硫酸第2鉄水溶液(Fe3+換算3.2部:ゲータ
イト中の鉄のモル数合計を100部とした時のモル数を
部で表示)を添加した。20分撹拌した後、希釈したア
ンモニア水を添加しスラリーを中和した。瀘過水洗した
後2%スラリーとし硝酸イットリウム水溶液(Y換算1
2.0部:ゲータイト中の鉄のモル数を100部とした
時のモル数を部で表示)を添加し、アンモニア水でpH
を8.5とした。濾過水洗し5%水スラリーとし150
℃で1時間加熱した。その後、濾過水洗し得られたケー
キを成形機を通し、ついで乾燥し焼結防止処理した紡錘
形を呈したゲータイトを得た。
【0104】還元処理工程 得られた紡錘型ゲータイトを静置式焼成炉にいれ、窒素
中で300℃で60分加熱し360℃に昇温し更に30
分加熱し脱水処理し次に温度を550℃で1時間加熱し
650℃で2時間加熱しヘマタイトの結晶性を高めた。
温度を400℃としガスを窒素から水素:窒素=20:
80のガスに切り換え0.5時間還元した。窒素に置換
したのち純水素に切り替え更に5時間還元した。水素を
流しつつ冷却し、250℃で窒素に切り換え室温に冷却
した。
【0105】徐酸化処理工程 徐酸化装置に移し、空気と窒素の混合比率をかえ酸素濃
度を0.2%、ガスの露点は−45℃としメタル粉の温
度をモニターしつつ40℃以下で3時間徐酸化し、発熱
がおさまると酸素濃度を1%とし10時間徐酸化した。
この時徐酸化装置の温度を45℃に維持し、強磁性金属
粉の温度が45℃を越えないように徐酸化した。メタル
粉に対し水分が1%となるように蒸留水を気化させつつ
空気と搬送し、調湿するとともに安定化して強磁性金属
粉末(サンプル1)を得た。
【0106】〔サンプル2〜9〕サンプル1の製法にお
いて各工程における条件を変更してサンプル2〜9の強
磁性金属粉末を得た。
【0107】得られた強磁性金属粉末の磁気特性を振動
試料型磁力計(東英工業製)で外部磁場10kOeで測
定した。得られた強磁性金属粉末の高分解能透過型電子
顕微鏡写真をとり強磁性金属粉末の平均長軸長と変動係
数(標準偏差/平均長軸長)、平均短軸長と平均酸化膜
厚を求め金属部の平均長軸長、平均短軸長を求めた。X
線回折装置により以下の方法により結晶子サイズを求め
た。粉末X線回折法(50kV−300mA:CuKβ
線使用)によりα−Feに相当する(110)面と(2
20)面の回折線の半値幅の広がりから求めた。磁気特
性測定は振動試料型磁束計VSM−5(東英工業製)を
用い、タイムコンスタント0.1秒、スイ−プ速度3分
/10kOe、測定磁場10kOeで測定した。強磁性
金属粉末サンプル1〜9の粉体特性を表1に示す。
【0108】
【表1】
【0109】磁気記録媒体の製造 「ポリウレタン樹脂Aの合成」還流式冷却器、攪拌機を
具備し、予め窒素置換した容器に水添ビスフェノール
A、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物(分
子量700)、ポリプロピレングリコール(分子量40
0)及びビス(2−ヒドロキシエチル)スルホイソフタ
レートのナトリウム塩を各々モル比で24:14:1
0:2でシクロヘキサノンとジメチルアセトアミドを5
0:50の重量比で含む混合溶媒に溶解し、窒素気流
下、60℃で溶解した。触媒として、ジ−n−ジブチル
スズジラウレートを、使用した原料の総量に対して60
ppm加えた。次に、MDI(4,4−ジフェニルメタ
ンジイソシアネート)をジオールの総和と等モル加え、
90℃にて6時間加熱反応し、エーテル基を4.0nm
ol/g含有し、かつ−SO3Na基が8×10-5/g
導入されたMw45000でMn25000のポリウレ
タン樹脂Aを得た。
【0110】〔実施例1〜3、6〜9,比較例1〜3〕
上記強磁性金属粉末を使用した重層構成の磁気テープを
作成するため以下の磁性層の組成物、下層用非磁性層の
組成物及びバック層の組成物を作成した。 (磁性層の組成物) 強磁性金属粉末(サンプル1〜9) 100部 結合剤樹脂 塩化ビニル共重合体 13部 (−SO3Na基を1×10-4eq/g含有、重合度 300) ポリエステルポリウレタン樹脂 7部 (ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI =0.9/2.6/1、−SO3Na基 1×10-4eq/g含有) α−アルミナ(平均粒子径0.13μm) 5部 カーボンブラック(平均粒子サイズ 50nm) 1部 フェニルフォスフォン酸 3部 ブチルステアレート 3部 ステアリン酸 3部 メチルエチルケトンとシクロヘキサノン1:1混合溶剤 360部
【0111】 (下層用非磁性層の組成物) 針状ヘマタイト 80部 (BET法による比表面積55m2/g、 平均長軸長0.10μm、 平均針状比7、pH8.8、アルミ処理Al23として1質量%) カーボンブラック 20部 (平均一次粒子径:17nm、DBP吸油量:80ml/100g、 BET法による表面積:240m2/g、pH7.5) 結合剤樹脂 塩化ビニル共重合体 12部 (−SO3Na基を1×10-4eq/g含有、重合度 300) ポリエステルポリウレタン樹脂 5部 (ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI =0.9/2.6/1、−SO3Na基:1×10-4eq/g含有) フェニルフォスフォン酸 3部 ブチルステアレート 3部 ステアリン酸 3部 メチルエチルケトンとシクロヘキサノン1:1混合溶剤 280部
【0112】 (バック層の組成物) 微粒子状カーボンブラック粉末 100部 [(キャボット社製、BP−800、平均粒子径:17nm)] 粗粒子状カーボンブラック粉末 3部 [(カーンカルブ社製、サーマルブラック、平均粒子径:270nm)] α−アルミナ(硬質無機粉末) 0.5部 (ただし、HIT55/MR110/MEK=5部/1部/4部の分散品を 用い、その分散品のα−アルミナ(HIT55)が0.5部) ニトロセルロース樹脂 108部 ポリウレタン樹脂 15部 ポリイソシアネート 40部 ポリエステル樹脂 5部 分散剤:オレイン酸銅 4部 銅フタロシアニン 4部 硫酸バリウム 5部 メチルエチルケトン 2200部 酢酸ブチル 300部 トルエン 600部
【0113】〔実施例4〜5〕強磁性金属粉末(サンプ
ル5)を使用し,実施例1〜3において磁性層の組成物
処方の結合剤樹脂を上記ポリウレタン樹脂Aに変更し、
添加量を振ったほかは実施例1〜3と同様とし、下層用
非磁性層の組成物及びバック層の組成物は同一のものを
作成した。
【0114】厚さ3.7μmで中心面平均表面粗さが2
nmのアラミド支持体(商品名:ミクトロン)上に非磁
性層形成用塗布液(下層用)を、乾燥後の下層の厚さが
1.05〜1.29μmになるように塗布をおこない、
その上に磁性層の厚さが、所定の厚みとなるように、磁
性層形成用塗布液の塗布をし、湿潤状態にあるうちに4
77.5kA/mの磁力を持つコバルト磁石と477.
5kA/mの磁力を持つソレノイドにより配向し、乾燥
により塗膜をセットした。
【0115】乾燥後、金属ロ−ルとプラスチックロール
とから構成される7段のカレンダ−で温度85℃にて速
度200m/min.線圧2940N/cmで処理を行
い、その後、バックコート層形成用塗布液を用いて厚み
0.5μmのバック層を塗布した。所望の幅(8mm、
1/4吋、1/2吋または3.8mm)にスリットし、
スリット品の送り出し、巻き取り装置を持った装置に不
織布と研磨テ−プが磁性面に押し当たるように取り付
け、テ−プクリ−ニング装置で磁性層の表面のクリ−ニ
ングを行い、テープ試料を得た。
【0116】得られたサンプルを振動試料型磁力計で測
定した磁気特性及び減磁、表面粗さ、磁気的クラスタ
ー,SEMによる表面状態観察,電磁変換特性、を測定
した。電磁変換特性の測定法は次の方法によった。デー
ター記録用8ミリデッキにMIGヘッド(ヘッドギャッ
プ0.2μm、トラック幅17μm、飽和磁束密度1.
5T、アジマス角20°)と再生用MRヘッド(SAL
バイアス、MR素子はFe−Ni、トラック幅6μm、
ギャップ長0.2μm、アジマス角20°)を搭載し
た。MIGヘッドを用いて、テープとヘッドの相対速度
を10.2m/秒とし、1/2Tb(λ=0.5μm)
の入出力特性から最適記録電流を決めこの電流で信号を
記録し、MRヘッドで再生した。C/Nは再生キャリア
のピークから消磁ノイズまでとし、スペクトルアナライ
ザーの分解能バンド幅は100kHzとした。実施例1
を使用したテープに対する特性で表わした。
【0117】磁気特性は振動試料型磁力計(東英工業
製)を使用し外部磁場796kA/mで配向方向に平行
に測定した。
【0118】磁性層厚みの測定は、磁気記録媒体の長手
方向に渡ってダイアモンドカッターで約0.1μmの厚
みに切り出し、透過型電子顕微鏡で倍率3万倍で観察
し、その写真撮影を行った。写真のプリントサイズはA
4版である。その後、磁性層、非磁性層の強磁性粉末や
非磁性粉末の形状差に着目して界面を目視判断して黒く
縁どり、かつ磁性層表面も同様に黒く縁どりした後、画
像解析装置(カールツァイス社製:KS4000)にて
縁どりした線の間隔を測定した。試料写真の長さが21
cmの範囲にわたり、測定点を点取って測定した。その
際の測定値の単純加算平均を倍率で除して磁性層の厚み
とした。
【0119】中心面平均表面粗さ(Ra)は、WYKO
社(USアリゾナ州)製の光干渉3次元粗さ計「HD−
2000」を用いて、磁性層表面(約184μm×24
2μmの面積)のRaを測定する。対物レンズ50倍、
中間レンズ0.5倍で傾き補正、円筒補正、を加えてい
る。本方式は光干渉にて測定する非接触表面粗さ計であ
る。
【0120】磁性層の耐候性ΔΦm(%)は、前記方法
によった。
【0121】磁気的クラスターサイズ測定は,試料を、
振動試料型磁束計(東英工業社製)を用いて10KOe
の磁場を印可した後、取り出すことによってDCイレー
スをおこなった。イレース後の試料をデジタルインスツ
ルメンツ社製ナノスコープIIIの磁気力顕微鏡モードを
用いて、5×5μmの範囲をリフトハイト40nmで測
定し、磁気力像を得た。磁気力分布の標準偏差(rm
s)値の70%をしきい値に設定し、画像を2値化して
70%以上の磁気力を有する部分のみを表示させた。こ
の画像を画像解析装置(KS400)に導入し、ノイズ
除去,穴埋め処理を行った後、平均面積(nm2)を算
出した。
【0122】SEM観察は試料をスパッタ装置内に入れ
て,白金コートして、日立製作所製FE型SEM(型番
S−800)に導入して、傾斜角30°、加速電圧20
kVで、倍率5,000倍で10視野観察した。SEM
による表面状態観察で、○は、磁性層の抜けが認められ
なかったもの、Xは一部に磁性層の抜けが観察されたも
のを示す。
【0123】
【表2】
【0124】
【発明の効果】表1及び2から、結晶子サイズが、金属
部の平均短軸長の2.0倍以上であり、かつ飽和磁化量
(σs)が140A・m2/kg以下である強磁性金属
粉末は、減磁が低く、これを用いた磁気記録媒体は磁気
的クラスターが小さく、C/Nも良好であることがわか
り、磁気抵抗型(MR)ヘッドを再生ヘッドとして搭載
しているシステムに適した磁気記録媒体を提供すること
ができる。
フロントページの続き Fターム(参考) 5D006 BA02 BA04 BA08 BA09 5E040 AB02 AB09 CA06 HB11 HB17 NN01 NN06 NN18

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】結晶子サイズが、金属部の平均短軸長の
    2.0倍以上であり、かつ飽和磁化量(σs)が140
    A・m2/kg以下であることを特徴とする強磁性金属
    粉末。
  2. 【請求項2】支持体上に強磁性金属粉末と結合剤を主体
    とする磁性層を設けた磁気記録媒体において、該強磁性
    金属粉末は請求項1記載のものであることを特徴とする
    磁気記録媒体。
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