JP5907966B2 - 埋め込み型治療デバイス - Google Patents

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Description

関連出願の相互参照
本国際特許出願は、2010年8月5日に出願された米国特許出願第61/371,169号、名称「埋め込み型治療デバイス」、2010年8月5日に出願された米国特許出願第61/371,136号、名称「伸縮可能な治療用送達装置および方法」、2010年8月5日に出願された米国特許出願第61/371,154号、名称「薬剤送達のための注入器装置および方法」、2010年10月26日に出願された米国特許出願第61/406,934号、名称「埋め込み型治療デバイス」、および2010年10月27日に出願された米国特許出願第61/407,361号、名称「埋め込み型治療デバイス」基づく優先権を主張し、その全開示を参照によりここに援用するものである。
本発明は、後眼部への治療薬の送達に関する。具体的には、抗体または抗体フラグメントを含む巨大分子の後眼部への送達について言及されるが、本発明の実施態様は、身体の多様な組織へ多様な治療薬を送達するために使用することが可能である。例えば、本発明の実施態様は、治療薬を血管内組織、関節内組織、髄腔内組織、心膜組織、管腔内組織、および消化管組織のうちの1つ以上に送達するために使用することが可能である。
眼は視覚にとって不可欠である。眼は角膜および水晶体を有し、これらによって網膜上に像を形成する。網膜上に形成された像は、網膜上の杆体錐体によって検知される。網膜上の杆体錐体により検出された光は、個体が網膜上に形成された像を見ることができるように、視神経を介して大脳の後頭皮質に伝達される。視力は網膜上の杆体錐体の密度に関連している。当人がカラー画像を高視力で知覚できるように、網膜は高密度の錐体を有する黄斑を備えている。
残念ながら、疾患が視覚に影響を及ぼすことがありえる。いくつかのケースでは、視覚に影響を与える疾患は網膜を損傷し、少なくともいくつかのケースでは失明をもたらすことがありうる。視覚に影響を与える疾患の1つの例として、加齢黄斑変性(以下、AMD)が挙げられる。網膜の変性を最小限に抑制するための治療薬が知られているが、少なくともいくつかのケースではこれら薬剤の送達は理想的であるとはいい難い。
いくつかのケースでは、薬剤が強膜を通して眼に注入される。AMDの治療に有望である薬剤のクラスのひとつとして、血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤が知られている。残念ながら、少なくともいくつかのケースでは、薬剤の注入が患者の痛みを伴うものであり、少なくとも何らかの感染症、出血、網膜剥離のリスクを伴い、また医師および患者にとって時間のかかるものである。従って、少なくともいくつかのケースでは、薬剤の送達が理想的な回数よりも少なくなったり、少なくとも何人かの患者は、少なくともいくつかのケースでは理想的な量よりも少ない量の薬剤を受け取ることになる。
本発明の実施態様に係る研究が示唆するところによると、針による薬剤の注入は、薬剤をボーラス(大量瞬時)投与することとなり、少なくともいくつかのケースではこれは理想的であるとは言えない。例えば、薬剤のボーラス注入では、患者の硝子体液中の薬剤濃度が、必要とされる治療量の数倍のピーク値に達し、その後、次回の注入前に治療量以下に減少してしまうかもしれない。
埋め込み型デバイスがいくつか提案されているが、公知のデバイスの多くは、少なくともいくつかのケースで少なくともいくつかの観点において欠陥を有している。少なくともいくつかの公知の埋め込み型デバイスでは、長期間にわたって治療薬剤の徐放を行うことができない。例えば、少なくともいくつかの公知の埋め込み型デバイスでは、薬剤放出速度の制御をポリマー膜またはポリマーマトリックスにより行うが、公知の膜やマトリックスの多くのは、少なくともいくつかのケースではイオン性薬剤や高分子量のタンパク薬剤などの少なくともいくつかの治療薬と配合禁忌であるかもしれない。少なくともいくつかの公知の半透過性ポリマー膜の透過性は、抗体または抗体フラグメントなどの高分子量のタンパクの徐放には理想的であるとはいい難い。また、本発明の実施態様に係る研究において、少なくともいくつかの公知の半透膜は、大分子の透過性が時間の経過とともに変化する可能性があり、少なくともいくつかの公知の半透膜はやや脆弱であり、少なくともいくつかのケースでは長期間の薬剤放出のための使用には理想的であるとはいいい難いことが示唆された。薬剤放出のために毛細管を使用することが提案されているが、本発明の実施態様に係る研究において、毛細管中の流動が少なくともいくつかのケースでは、例えばおそらく気泡形成や部分的な目詰まりのために理想的であるとはいいい難いことが示唆されている。
眼の症状を治療するために十分な量の薬剤を送達した場合、少なくともいくつかの公知の埋め込み可能デバイスは、少なくともいくつかのケースでは患者に副作用をもたらす可能性がある。例えば、少なくともいくつかの市販の小分子薬剤送達デバイスは、少なくともいくつかのケースでは患者に白内障、眼圧上昇、めまい、視覚低下などの副作用をもたらす可能性がある。炎症を治療するためにコルチコステロイドやそれらの類似体を埋め込み型デバイスにより送達することができるが、少なくともいくつかのケースでは患者が白内障を罹患するなど、薬剤送達プロファイルが理想的であるとはいい難い。
少なくともいくつかの提案された埋め込み型デバイスでは、デバイスへの注入が可能であるが、埋め込み型デバイスへの注入は、少なくともいくつかのケースでは、患者が少なくとも何らかの感染症を発症するリスクがあるという問題がある。また、少なくともいくつかのケースでは、埋め込み型デバイスの薬剤放出速度が時間の経過とともに変化する可能性があり、少なくともいくつかのケースでは、薬剤の放出速度が注入後理想的であるとはいい難くなる。少なくともいくつかの提案された埋め込み型デバイスは、患者の感染症のリスクを最小化するという観点で埋め込まれているとはいえないであろう。例えば、少なくともいくつかの提案されたデバイスは、細孔や細管を利用しており、細菌などの微生物がそれら細管および/または細孔を通過する可能性があり、少なくともいくつかのケースでは感染が広がるかもしれない。また、本発明の実施態様に関する研究により、少なくともいくつかの提案された埋め込み型デバイスでは、マクロファージや抗体などの患者の免疫システムによる保護が適切に働かず、少なくともいくつかのケースでは治療効果が限定されてしまうことが示唆された。
少なくともいくつかの従来の注入デバイスは、少なくともいくつかのケースでは眼に埋め込まれた治療デバイスに所望量の治療薬を注入することに適していないかもしれない。例えば、少なくともいくつかのケースでは、眼に埋め込まれた治療デバイスへの注入器の結合が理想的とはいい難い。また、治療デバイスは流れ抵抗を有し、少なくともいくつかのケースでは、注入が困難で理想とするよりも時間がかかったり、治療デバイスへの流入がやや不均一になったりする可能性がある。少なくともいくつかのケースでは、注入器が治療デバイスから外れて、治療薬の送達量が理想よりも少なくなるかもしれない。少なくともいくつかのケースでは、注入された治療薬が治療デバイスの中に既にある溶液と混合され、少なくともいくつかのケースでは、注入が完了したときにデバイスに残存する治療薬の量が理想量と異なる可能性がある。
上記に鑑み、例えば埋め込まれたときに長期間にわたって薬剤放出が維持されるように改良されるなど、公知の治療の上記欠点の少なくともいくつかを克服する、改良された治療デバイおよび方法を提供することが望まれている。
本発明の実施態様は、治療薬製剤を体内に注入する方法および装置を提供し、例えば、少なくとも約1ヶ月の長期間にわたって治療量の治療薬を治療デバイスから送達するように、埋め込まれた治療デバイスへ治療薬を注入することが提供される。注入装置は、所定量の治療薬を正確に治療デバイスへ注入することが可能であり、デバイスのチャンバ・リザーバ内に留まる治療薬の量と眼へ放出される量とが目的量に実質的に相当する。注入装置は、注入装置が治療デバイスに連結されていること、かつ、治療薬の注入または治療デバイス内の材料と治療薬との置換のうちの1つ以上のために注入装置がデバイスの中へ十分な深さまで延出していることを指示する連結インジケータを備えてもよい。治療デバイスのリザーバ・チャンバは、リザーバ・チャンバが強膜の下、結膜と強膜との間、硝子体液中で強膜の下、またはそれらの組み合わせで設置されるように、眼に埋め込むことが可能である。
多くの実施態様では、治療デバイスは、治療デバイスへの注入頻度および感染症のリスクを実質的に低減できるように、少なくとも1つの治療薬の治療量を、3ヶ月以上、例えば6ヶ月の長期間にわたって連続放出するように構成される。更なる実施態様では、治療デバイスは、少なくとも1つの治療薬の治療量を、12ヶ月以上、あるいは2年間以上または3年間以上の長期間にわたって連続放出するように構成される。
治療デバイスは、長期間にわたって治療薬を放出するように様々な方法で構成することが可能であり、長期間にわたって治療薬を放出するような大きさを持つ、開口、細長い構造体、多孔質構造体、または多孔質表面の少なくとも1つを備えることができる。例えば、治療デバイスは、長期間にわたって多孔質構造体を通して治療薬を放出する多孔質構造体を含むことができる。多孔質構造体は、相互に付着する多数の粒子の周りを延出する、例えば相互連結チャネルなどの多数のチャネルを有する焼結材料を備えることができる。多孔質構造体は、リザーバに連結された複数の第1の開口を備える第1の側面と、硝子体液に連結された複数の第2の開口を備える第2の側面とを備えることができる。相互連結チャネルは、例えば少なくともいくつかの開口が閉塞されたときに多孔質構造体を通る治療薬の放出を維持するために、第1の側面の複数の第1の開口の各々と第2の側面の複数の第2の開口の各々の間を延出するようにしてもよい。多孔質構造体は硬質であって、例えば多孔質構造体が長期間にわたって埋め込まれており薬剤リザーバが補充される場合に組織や細胞が開口の少なくとも一部分を覆ったときには、相互連結チャネルを通して治療薬の放出を維持することが可能である。
治療デバイスは保持構造体を備えることができ、保持構造体は、治療薬の送達用容器を眼の硝子体液中に配置するように強膜に連結するよう構成されており、デバイスが埋め込まれた状態で結膜が保持構造体を覆って延出するので、患者の感染症のリスクを抑制し、かつ、デバイスへのアクセス時にも感染症のリスクを抑えることが可能である。例えば、保持構造体は、結膜と強膜の間に配置される外方に延出するフランジと、強膜を通る切開部内に嵌合する幅狭部分とを備えることができる。切開部に嵌合する幅狭部分は、切開部に嵌合する大きさの細長い断面形状を備えてもよい。切開部に嵌合する大きさの細長い断面形状は、埋め込み型デバイスの強膜切開部への嵌合を向上でき、切開部に沿って強膜に対し埋め込み体を密閉することが可能となる。幅狭部分の細長い断面形状は、種々の方法で切開部に嵌合する大きさとすることができる。例えば、細長い断面は、第1の寸法とそれより短い第2の寸法を備えてもよく、膨張したスリット、膨張したスロット、両凸面、長円、卵、または楕円など様々な形状のうちの1つ以上を備えることができる。膨張したスリット形状および膨張したスロット形状は、切断および膨張したときに強膜組織がとりうる形状であろう。両凸面形状は、両凸レンズ形状に対応することができる。幅狭部分の細長い断面は、第1の軸の沿った第1の曲線と、第1の曲線とは異なる、第2の軸に沿った第2の曲線とを備えることができる。
多くの実施態様では、治療デバイスのリザーバは、洗い流しおよび/または補充可能となっている。このため、医師は、患者から治療薬が消失するのを待つのではなくむしろ治療デバイスのリザーバから薬を洗い流すことで、患者から治療薬を除去できるという更なる利点をもたらす。このように除去できることは、患者が薬物有害反応を示した場合や、休薬日と呼ばれることもある治療の一時停止が患者に利益をもたらす場合などに、有利である。リザーバの容積および多孔質構造体の放出速度は、治療薬が長期間にわたって放出されるような容積の市販の製剤を受容するように調整可能である。例えば、市販の治療薬の前記容積は、例えば1ヶ月の治療期間を有するボーラス注入に対応してもよく、前記製剤容積を受容するように調整されたリザーバ容積および放出速度は、注入された容積の治療期間を約2倍以上で、例えば1ヶ月を2ヶ月以上に延長することが可能である。
第1の側面では、実施態様は、硝子体液を有する眼を治療する方法を提供する。少なくとも約3.5mgのラニビズマブが眼に埋め込まれた治療デバイスに注入され、その量は、約3.5〜約5.5mgの範囲内で、例えば約4.5mgであってもよい。治療デバイスは、少なくとも約2mgのラニビズマブがボーラス注入として治療デバイスから眼の硝子体液へ放出されるように、約1.5mg以下、例えば約2.5mg以下のラニビズマブを保管する大きさのチャンバ容積を有する。
多くの実施態様では、少なくとも約2mgのラニビズマブが2回目のボーラス注入として治療デバイスから眼の硝子体液へ放出されるように、眼に埋め込まれた治療デバイスに少なくとも約4mgのラニビズマブを注入する。
他の側面では、実施態様は、硝子体液を有する眼を治療する方法を提供する。第1の量の治療薬が眼に埋め込まれた治療デバイスに注入される。第2の量の治療薬が眼に埋め込まれた治療デバイスに注入される。第2の量が注入されるときに治療デバイスに収容されている治療薬の量の部分に基づいて、第2の量が第1の量より少なくてもよい。
多くの実施態様では、前記部分と第2の量の混合比率に基づいて、第2の量が第1の量より少ない。
多くの実施態様では、第1の量が注入されてから少なくとも約1ヵ月後に第2の量が注入される。
他の側面では、実施態様は、硝子体液を有する眼を治療する方法を提供する。第1の量の治療薬が眼に埋め込まれた治療デバイスに注入される。第1の量の第1の部分は1回目のボーラス注入としてチャンバを通過して硝子体液の中へ入り、第2の部分はチャンバの中に収容され長期間にわたって放出されるように、第1の量は治療デバイスのチャンバ容積よりも大きい1回目の注入容積に対応する。第2の量の治療薬が眼に埋め込まれた治療デバイスに注入され、第2の量の第1の部分は2回目のボーラス注入としてチャンバを通過して硝子体液の中へ入り、第2の部分はチャンバの中に収容され長期間にわたって放出されるように、第2の量は治療デバイスのチャンバ容積よりも大きい2回目の注入容積に対応する。2回目のボーラス注入が1回目のボーラス注入よりも多くの治療薬を有さないように、第2の量は第1の量よりも少なくてもよい。
他の側面では、実施態様は、硝子体液を有する眼を治療する方法を提供する。治療デバイスのリザーバの中へ、ある量の治療薬を注入する。リザーバは、多孔質構造体に連結された実質的に一定の容積を有する。前記量の第1の部分がボーラス注入として眼の硝子体液の中へ放出され第2の部分がリザーバ中に保持されるように、前記量が前記実質的に一定の容積より大きくてもよい。このボーラス注入が眼中の治療薬の最大濃度に対応するように、第2の部分は、第1の部分の量よりも少ない量で多孔質構造体から放出されてもよい。
多くの実施態様では、前記最大濃度が、ボーラス注入の量に対応するピーク濃度以下である。
他の側面では、実施態様は、硝子体液と治療薬の既定の安全ボーラス量とを有する眼を治療する方法を提供する。第1の量の治療薬が、眼に埋め込まれた治療デバイスに注入される。第2の量の治療薬が、眼に埋め込まれた治療デバイスに注入される。既定の安全ボーラス量よりも多い第2の量の治療薬を含む2回目のボーラス量が治療デバイスから硝子体液へ放出されるように、第2の量が注入されるときに第1の量の治療薬の部分が治療デバイスに収容されている。
多くの実施態様では、前記第2の量が、治療薬への露出においてを漸次増加する。
多くの実施態様では、第2の安全ボーラス量を確立するために、前記第2の量を超える追加のボーラス量を注入することを更に含む。
多くの実施態様では、第2の量の治療薬への陰性反応に基づいて、治療デバイスから治療薬を除去することをさらに含み、治療薬は治療薬を実質的に含まない溶液で置換する。
他の側面では、実施態様は、安全量が既定された治療薬で眼を治療する装置を提供する。注入器は、ある量の治療薬を含むある容積の液体を有する。治療デバイスは、ボーラス量の治療薬を放出するために前記注入器容積よりも小さいチャンバ容積を有する。
他の側面では、実施態様は、治療薬が上記のようなデバイスのリザーバに収容されており、治療薬が埋め込まれた状態のリザーバ内半減期を有する、治療薬を含む薬剤徐放用製剤を提供する。前記リザーバ内半減期は、眼の硝子体へ直接注入したときの前記少なくとも1つの治療薬の対応する半減期よりも実質的に長いものである。
多くの実施態様では、前記デバイスは、所望の有効半減期を得るために、リザーバ容積と適切な速度放出指数を有する多孔質構造体とを選択して構成することができる。
多くの実施態様では、前記多孔質構造体の速度放出指数が約0.001〜約5、例えば約0.002〜約5であり、約0.01〜約5であってもよい。
多くの実施態様では、前記第1の治療薬がVEGF阻害剤であり、前記第2の治療薬が炎症反応阻害剤である。
他の側面では、実施態様は、ある集団の患者を治療するための薬剤徐放用製剤を提供する。前記製剤は治療薬を含み、該治療薬が、眼に埋め込まれたデバイスの中に注入された治療薬の半減期に対応する眼内半減期を有する。
他の側面では、実施態様は、眼を治療する方法を提供する。約0.01mg〜約50mgの範囲内の量の治療薬を治療デバイスへ注入し、前記量は約0.1mg〜約30mgであってもよい。
他の側面では、実施態様は、眼を治療する装置を提供する。前記装置は、約0.01mg〜約50mgの範囲内の量の治療薬に対応する量の製剤を備え、該量は約0.1mg〜約30mgであってもよい。治療デバイスは前記量の治療薬に対応する量の製剤を受容するように調整されたリザーバ・チャンバおよび多孔質構造体を有する。
多くの実施態様では、前記量が約0.1mg〜約30mgの範囲内である。
他の側面では、実施態様は、治療薬で眼を治療する装置を提供する。前記装置は、ある量の治療薬を含むある容積の流体を有する注入器を備える。治療デバイスはリザーバ・チャンバを備え、リザーバ・チャンバは前記量の治療薬を受容するサイズの容積を有する。前記量の治療薬を前記リザーバ・チャンバに配置する。
多くの実施態様では、前記流体が約40mg/mL〜約200mg/mLの範囲内、例えば約40mg/mL〜約100mg/mLの範囲内の濃度のラニビズマブを含む。
多くの実施態様では、前記注入器が実質的にボーラス注入なしで前記量を配置するように構成される。
多くの実施態様では、前記注入器が少なくとも約80%の置換効率で前記量を配置するように構成される。
多くの実施態様では、前記注入器が治療薬を注入する注入管腔とチャンバの流体を受容するベントとを備え、前記治療デバイスが治療薬を放出するリザーバ・チャンバを備える。治療デバイスの多孔質構造体を通る治療薬のボーラス注入を抑制するために、前記ベントは、多孔質構造体の流れ抵抗よりも実質的に小さい流れ抵抗を有してもよい。
他の側面では、実施態様は、治療薬で眼を治療する装置を提供するる。ある量の治療薬を含むある容積の流体を、リザーバ・チャンバを備える治療デバイスへ注入する。リザーバ・チャンバは、前記量の治療薬を受容するサイズの容積を有し、前記量の治療薬をリザーバ・チャンバに配置する。
多くの実施態様では、前記注入器は、少なくとも約80%の置換効率で前記量を配置するように構成される。
多くの実施態様では、治療薬を含む流体が実質的に多孔質構造体を通るボーラス注入されることなく、前記量をリザーバ・チャンバに配置する。
他の側面では、実施態様は、実質的に一定の容積を有する伸縮可能な治療デバイスを提供する。治療デバイスは、配置のための第1の幅狭プロファイルと、眼に設置された際にリザーバで薬剤を送達するための第2の膨張した幅広プロファイル構成とを備える。1つ以上の支持部構造を有する膨張したデバイスは、デバイスが切開部を通って嵌合できるように、例えば断面サイズを減少するよう圧縮または延長するなど、折り畳むことが可能である。例えば、治療デバイスは、支持部に連結された可撓性隔壁材を備えてもよく、隔壁材と支持部とが第1の幅狭プロファイル構成から第2の膨張したプロファイル構成へ膨張し、その後除去のために第1の幅狭プロファイル構成へ折り畳むことが可能となる。所定容積の治療薬製剤を受容し長期間にわたって治療量を放出するように多孔質構造体および膨張式リザーバによってデバイスを調整できるように、支持部は、膨張した構成では実質的に一定のリザーバ容積を提供する。治療デバイスは、容器からの治療薬の通過は可能とするが容器からの細菌体または容器へのマクロファージや他の免疫細胞のうちの少なくとも1つの移動を抑制するサイズのチャネルを有して容器の周りを延長する多孔質隔壁を備えてもよい。支持部に連結された可撓性隔壁を有する治療デバイスを除去するために、支持部は除去に際して少なくとも部分的に折り畳み可能であり、例えば切開部を通って除去できるよう支持部の断面サイズが減少するように、治療デバイスの軸に沿って細長くなる。多くの実施態様において、治療デバイスの近位端が除去装置に連結され、細長い構造体が治療デバイスの遠位部分に連結し、遠位部分が遠方に付勢され支持部の断面サイズが切開部を通る除去のために減少するように延長される。細長い構造体は、針、軸部、マンドレルまたはワイヤーのうちの1つ以上を備え、前記遠位部分は、細長い構造体を遠方へ押し進めたとき支持部が除去の軸線に沿って延長されるように、多孔質構造体や支持部の部分などの、支持部に連結される停止部であってもよい。
多くの実施態様では、除去装置が、前記細長い構造体と保持構造体に連結するための顎部とを備え、前記細長い構造体が針、軸部、マンドレルおよびワイヤーのうちの1つ以上を備える。
多くの実施態様では、前記多孔質構造体が、治療薬を眼の硝子体液の中へ長期間にわたって放出するために支持部の遠位端に固着した硬質多孔質構造体を備える。前記可撓性支持部および可撓性隔壁は、細長い構造体が硬質多孔質構造体に接触したとき、長さを第2の長さから第1の長さへ増加するのに十分な可撓性を有する。
多くの実施態様では、前記支持部が、前記保持構造体から、多孔質構造体をデバイスの遠位端に支持するためのサイズを有する環状フランジへ軸方向に延出する複数の可撓性支柱を備え、デバイスが実質的に一定の容積を有するチャンバを画成するための第2の膨張したプロファイル構成となるとき、前記可撓性支柱は離間される。
図1は、本発明の実施態様による治療デバイスを組み込むのに適した眼を示す図である;
図1A−1は、図1と同様な眼の強膜内に少なくとも部分的に埋め込まれた治療デバイスを示す図である;
図1A−1−1および図1A−1−2は、本発明の実施態様による、網膜を治療するために眼の硝子体液中へ治療薬を放出するよう、結膜の下で強膜を貫通して埋め込まれた治療デバイスを示す図である; 図1A−1−1および図1A−1−2は、本発明の実施態様による、網膜を治療するために眼の硝子体液中へ治療薬を放出するよう、結膜の下で強膜を貫通して埋め込まれた治療デバイスを示す図である;
図1A−2は、本発明の実施態様による、図1A−1および図1A−1−1と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイスの構成体を示す図である;
図1A−2−1は、強膜への挿入のため長く幅狭な形状を備え、強膜に少なくとも部分的に保持されるように第2の長く幅太な形状へ拡大するように構成された、挿入用カニューレ内に装着された治療デバイスを示す図である;
図1A−2−2は、カニューレへの装着に適したリザーバを備える治療デバイスを示す図である;
図1Bは、本発明の実施態様による、図1A−1および図1A−1−1と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイスを示す図である;
図1Cは、本発明の実施態様による、図1A−1および図1A−1−1と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイスを示す図である;
図1C−Aは、本発明の実施態様による、少なくとも1つの出口ポートを示す図である;
図1C−1は、本発明の実施態様による、結合材料の除去方法を示す図である;
図1C−2は、TA(治療薬)が結合した第2のインサートによる治療薬の挿入を示す図である;
図1C−3は、実施態様による、治療デバイスの中へ注入するために市販の治療薬製剤が充填されている状態のシリンジを示す図である;
図1Dは、治療薬を直線的に放出するために複数のチャンバとチャンバを連結するチャネルを備える、図1A−1および図1A−1−1と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイスを示す図である;
図1Eは、治療デバイスの底部に設置された針停止部を備える、図1A−1および図1A−1−1と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイスを示す図である;
図1E−1は、治療デバイスの底部に設置された針停止部を備え、治療デバイスのチャンバ内での治療薬の移動を促進する形状を持つ、図1A−1および図1A−1−1と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイスを示す図である;
図1E−2は、治療デバイスの中央に設置された針停止部を備える、図1A−1および図1A−1−1と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイスを示す図である;
図1E−3は、治療デバイスのチャンバ内での治療薬の移動を促進する形状を持つ、治療デバイスの中央に設置された針停止部を備え、図1A−1および図1A−1−1と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイスを示す図である;
図1E−3−1は、図1E−3と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイスの上面図である;
図2は、本発明の実施態様による、治療デバイスに組み込むのに適したアクセスポートを示す図である;
図3Aは、本発明の実施態様による治療デバイスに組み込むのに適した鍔部を示す図である;
図3Bは、強膜から硝子体液へデバイスに沿って細菌が繁殖するのを抑制するために治療デバイス上に設けた、抗細菌剤を含浸した生体適合性材料を示す図である;
図4Aは、本発明の実施態様による、放出された抗体フラグメントを示し、図4Bは、基質に可逆的に結合された抗体フラグメントを示す図である;
図5Aは、治療薬をデバイス内に挿入する注入器に連結された治療デバイスを示す図である;
図5A−1は、デバイスへの材料の注入および除去を同時に行う注入器に連結された治療デバイスを示す図である;
図5Bは、マイクロループ状チャネルを備える治療デバイスを示す図である;
図5C−1は、蛇行状チャネルを備える治療デバイスを示す図である;
図5C−2は、コイル状チャネルを備える治療デバイスを示す図である;
図5Dは、治療薬を保持する伸縮可能構造および強膜に結合する外側硬質ケースを示す図である;
図5Eは、治療デバイスの出口ポートを覆って配置された膜を示す図である;
図5Fは、治療デバイスにクランプで固定された筒状膜を備える治療デバイスを示す図である;
図6A−1は、第1の端部に配置された貫通性隔壁を有する容器と、長期間治療薬を放出するよう第2の端部に配置された多孔質構造体と、強膜と結膜に結合するよう容器から外方に突出する延長部を備える保持構造体とを備える治療デバイスを示す図である;
図6A−2は、丸い遠位端を備える、図6Aと同様な治療デバイスを示す図である;
図6Bは、図6Aと同様なデバイスにおいて、徐放のために構成された硬質多孔質構造体を示す図である;
図6B−1は、図6Bと同様な多孔質構造体の第1の側面から第2の側面へ延出する相互連結チャネルを示す図である;
図6B−2は、図6Bおよび図6B1と同様な多孔質構造体の第1の側面から第2の側面へ延出する相互連結チャネルに沿った治療薬の複数の通路を示す図である;
図6B−3は、カバーで開口を閉塞している様子、および図6Bおよび図6B1と同様な多孔質構造体の第1の側面から第2の側面へ延出する相互連結チャネルに沿った治療薬の複数の通路を示す図である;
図6B−4は、粒子で開口を閉塞している様子、および図6Bおよび図6B1と同様な多孔質構造体の第1の側面から第2の側面へ延出する相互連結チャネルに沿った治療薬の複数の通路を示す図である;
図6B−5は、図6Bおよび図6B1と同様な多孔質構造体の第1の側面から第2の側面へ延出する相互連結チャネルに沿った治療薬の複数の通路に対応する有効断面のサイズと面積を示す図である;
図6Cは、強膜用鋲体内に組み込まれた、図6Bと同様な硬質多孔質構造体を示す図である;
図6Dは、徐放用リザーバに連結された、図6Bと同様な硬質多孔質構造体を示す図である;
図6Eは、徐放用の中空体部または筒部を含む、図6Bと同様な硬質多孔質構造体を示す図である;
図6Fは、徐放用非線形らせん状構造を含む、図6Bと同様な硬質多孔質構造体を示す図である;
図6Gは、実施態様による多孔質ナノ構造体を示す図である;
図7は、実施態様による、デバイスから材料を除去しかつ治療薬をデバイスに注入する注入器に連結された治療デバイスを示す図である;
図7Aは、実施態様による、図6Eと同様な、デバイスへの材料の注入・除去を行う注入器に連結された貫通性隔壁および多孔質構造体を備える治療デバイスを示す図である;
図7A−1は、実施態様による、多孔質フリット構造体を通して液体製剤を噴出させることでリザーバを洗い流すために、針の遠位端をデバイスの近位端に位置決めする停止部を備える注入針に連結された治療デバイスを示す図である;
図7A−2は、実施態様による、リザーバの液体を注入された製剤で置換するようにデバイスに材料を注入かつ除去する注入器に連結された貫通性隔壁を備える治療デバイスを示す図である;
図7A−3は、可変形可視表示器を示す図である;
図7A−4は、眼の組織、例えば治療デバイスの貫通性隔壁を覆って配置された結膜などの軟部組織に連結された可視表示器を示す図である;
図7A−5は、注入前の力または深さのうちの1つ以上が不十分である可能性のある状態で注入器701が連結された治療デバイス100を示す図である;
図7A−6は、注入前の力または深さのうちの1つ以上が不十分である可能性のある状態で注入器701が連結された治療デバイス100を示す図である;
図7A−7A〜図7A−9Bは、リザーバ内の液体の第1の所定量を治療薬製剤の容積で置換し、かつ、液体の第2の容積を多孔質フリット構造体を通して注入するために弁を閉じるようにピストンに連結されたプランジャーへの弁の摺動結合を示す図である; 図7A−7A〜図7A−9Bは、リザーバ内の液体の第1の所定量を治療薬製剤の容積で置換し、かつ、液体の第2の容積を多孔質フリット構造体を通して注入するために弁を閉じるようにピストンに連結されたプランジャーへの弁の摺動結合を示す図である; 図7A−7A〜図7A−9Bは、リザーバ内の液体の第1の所定量を治療薬製剤の容積で置換し、かつ、液体の第2の容積を多孔質フリット構造体を通して注入するために弁を閉じるようにピストンに連結されたプランジャーへの弁の摺動結合を示す図である; 図7A−7A〜図7A−9Bは、リザーバ内の液体の第1の所定量を治療薬製剤の容積で置換し、かつ、液体の第2の容積を多孔質フリット構造体を通して注入するために弁を閉じるようにピストンに連結されたプランジャーへの弁の摺動結合を示す図である; 図7A−7A〜図7A−9Bは、リザーバ内の液体の第1の所定量を治療薬製剤の容積で置換し、かつ、液体の第2の容積を多孔質フリット構造体を通して注入するために弁を閉じるようにピストンに連結されたプランジャーへの弁の摺動結合を示す図である; 図7A−7A〜図7A−9Bは、リザーバ内の液体の第1の所定量を治療薬製剤の容積で置換し、かつ、液体の第2の容積を多孔質フリット構造体を通して注入するために弁を閉じるようにピストンに連結されたプランジャーへの弁の摺動結合を示す図である;
図7A−10A〜図7A−10Bは、治療薬のデバイス100への注入時間がデバイス毎および注入毎に実質的に一定であるように、デバイスへの流量を約+/−50%以内、例えば約+/−25%以内に保持するための注入器の第1の構成を示す図である; 図7A−10A〜図7A−10Bは、治療薬のデバイス100への注入時間がデバイス毎および注入毎に実質的に一定であるように、デバイスへの流量を約+/−50%以内、例えば約+/−25%以内に保持するための注入器の第1の構成を示す図である;
図7B−1は、実施態様による、細長い切開部に嵌合する断面積を有する保持構造体を備える治療デバイスの側面断面図である;
図7B−2は、図7B−1と同様な治療デバイスの等角図である;
図7B−3は、図7B−1と同様な治療デバイスの上面図である;
図7B−4は、図7B−1と同様な治療デバイスの保持構造体の短い側面に沿った側面断面図である;
図7B−5は、強膜に埋め込まれた図7B−1と同様な治療デバイスの底面図である;
図7B−5Aは、隔壁の周囲長および保持構造体幅狭部分の周囲長に対応する幅を有するブレードを備える切削具を示す図である;
図7B−6Aおよび図7B−6Bは、それぞれ、実施態様による、細長い非円形断面サイズを有する治療デバイスの遠位断面図および近位断面図である; 図7B−6Aおよび図7B−6Bは、それぞれ、実施態様による、細長い非円形断面サイズを有する治療デバイスの遠位断面図および近位断面図である;
図7B−6Cは、実施態様による、細長い断面積を持つ保持構造体を有する治療デバイスの等角図である;
図7B−6Dは、図7B−6Cと同様な治療デバイスの遠位端図である、;
図7B−6E1は、図7B−6Cと同様な治療デバイスの幅狭ネック部分の短軸の側面図である;
図7B−6E2は、7B−6Cと同様な治療デバイスの幅狭ネック部分の長軸の側面図である;
図7B−6Fは、図7B−6Cと同様な治療デバイスの近位図である;
図7B−6G〜図7B−6Iは、図7B−6C〜図7B−6Fと同様な治療デバイスの分解組立図である; 図7B−6G〜図7B−6Iは、図7B−6C〜図7B−6Fと同様な治療デバイスの分解組立図である; 図7B−6G〜図7B−6Iは、図7B−6C〜図7B−6Fと同様な治療デバイスの分解組立図である;
図7C−1は、実施態様による、治療薬の徐放のために膨張した構成にある膨張性隔壁材および支持部を備える膨張式治療デバイスを示す図である;
図7C−1Aは、図7C−1と同様な支持部160Sの遠位端部を示す図である;
図7C−1Bは、実施態様による、隔壁160の内側に配置された支持部160Sを示す図である;
図7C−1Cは、実施態様による、隔壁160の内面に沿って配置された支持部160Sを示す図である;
図7C−1Dは、伸縮可能な断面を持つデバイスの断面幅を減少させるために、デバイスに挿入された除去装置の細長い構造体を示す図である;
図7C−1Eは、第1の長さL1および第1の幅W1を有する支持部160Sの第1の細長プロファイル構成を示す図である;
図7C−1Fは、第2の長さL2および第2の幅W2を有する支持部160Sの第2の幅広プロファイル構成を示す図である;
図7C−2は、幅狭プロファイル構成での図7C−1と同様な膨張式治療デバイスを示す図である;
図7C−3は、膨張プロファイル構成での図7C−1と同様な膨張式治療デバイスを示す図である;
図7C−4Aおよび図7C−4Bは、実施態様による、展開式保持構造体を示す図である; 図7C−4Aおよび図7C−4Bは、実施態様による、展開式保持構造体を示す図である;
図7Dは、実施態様による、網膜上の標的位置に治療薬を送達するために眼に配置された多孔質構造体を備える治療デバイスを示す図である、
図7Eは、実施態様による、眼に配置されたときに毛様体または小柱網のうちの1つ以上へ治療薬を送達するようにデバイスに設置された多孔質構造体を備える治療デバイスを示す図である;
図7Fは、実施態様による、水晶体から離れて網膜の方へ治療薬を放出するように配向された多孔質構造体150備える治療デバイス100を示す図である;
図7Gは、実施態様による、装着器具と、容器と、この容器内の治療デバイスとを備えるキットを示す図である;
図8は、実施態様による、ルアーロック(商標)チップを有する1mLシリンジと様々な直径の針から作製された規定の直径を有する出口ポートを備えたリザーバを示す図である;
図8−1は、図8と同様なシリンジに取り付けられた針を示す図である;
図8−2は、バイアルに入れたリザーバを示す図である;
図9は、様々な直径の針による累積放出率を示す図である;
図10は、面積の関数としての放出速度を示す図である;
図11は、1mLシリンジのルアーロックチップを切断して作製した多孔質膜を持つリザーバを示す図である;
図11−1は、図11と同様なリザーバの2つの複製サンプルの送達速度を示す図である;
図12は、切断した針を通るフルオレセインの累積放出率示す図である;
図13は、焼結多孔質チタンシリンダを通るBSAタンパクの累積放出率を示す図である;
図13−1は、図13のBSAの累積放出率を180日間測定した結果を示す図である;
図14は、実験例による、条件1におけるマスクした焼結多孔質チタンシリンダを通るBSAタンパクの累積放出率を示す図である;
図15は、実験例による、条件2におけるマスクした焼結多孔質チタンシリンダを通るBSAタンパクの累積放出率を示す図である;
図16は、実験例による、条件3におけるマスクした焼結多孔質チタンシリンダ通るBSAタンパクの累積放出率を示す図である;
図17は、メディアグレード0.1の焼結多孔質ステンレス鋼シリンダ通るBSAの累積放出率を示す図である;
図18Aは、メディアグレード0.2の焼結多孔質ステンレス鋼シリンダ通るBSAの累積放出率を示す図である;
図18Bは、メディアグレード0.2の焼結多孔質ステンレス鋼シリンダ通るBSAの累積放出率を180日間示す図である;
図19Aは、計算されたルセンティス(商標)薬剤動態学的プロファイルを、例8のデバイスで予測された薬剤動態学的プロファイルと比較するものである;
図19Bは、実施態様による、1回目の50μLのルセンティス(商標)をデバイスの25μLリザーバへ注入し、90日目に2回目の50μLを注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度を求めた結果を示す図である;
図19Cは、実施態様による、1回目の50μLのルセンティス(商標)をデバイスの32μLのリザーバへ注入し、90日目に2回目の50μLを注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度を求めた結果を示す図である;
図19Dは、実施態様による、1回目の50μLのルセンティス(商標)をデバイスの50μLのリザーバへ注入し、90日目に2回目の50μLを注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度を求めた結果を示す図である;
図19Eは、実施態様による、1回目の50μLのルセンティス(商標)をデバイスの50μLのリザーバへ注入し、130日目に2回目の50μLを注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度を求めた結果を示す図である;
図19Fは、実施態様による、50μLルセンティス(商標)を放出速度指数が0.05の50μLデバイスに注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度を求めた結果を示す図である;
図19Gは、実施態様による、50μLルセンティス(商標)を放出速度指数が0.05の75μLデバイスに注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度を求めた結果を示す図である;
図19Hは、実施態様による、50μLルセンティス(商標)を放出速度指数が0.05の100μLデバイスに注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度を求めた結果を示す図である;
図19Iは、実施態様による、50μLルセンティス(商標)を放出速度指数が0.05の125μLデバイスに注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度を求めた結果を示す図である;
図19Jは、実施態様による、50μLルセンティス(商標)を放出速度指数が0.05の150μLデバイスに注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度を求めた結果を示す図である;
図19Kは、実施態様による、50μLルセンティス(商標)を放出速度指数が0.1の100μLデバイスに注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度を求めた結果を示す図である;
図19Lは、実施態様による、50μLルセンティス(商標)を放出速度指数が0.105の125μLリザーバのデバイスに注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度プロファイルを求めた結果を示す図である;
図19Mは、実施態様による、50μLルセンティス(商標)を放出速度指数が0.095の125μLリザーバのデバイスに注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度プロファイルを求めた結果を示す図である;
図19Nは、実施態様による、50μLルセンティス(商標)を放出速度指数が0.085の125μLリザーバのデバイスに注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度プロファイルを求めた結果を示す図である;
図19Oは、実施態様による、50μLルセンティス(商標)を放出速度指数が0.075の125μLリザーバのデバイスに注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度プロファイルを求めた結果を示す図である;
図19Pは、実施態様による、50μLルセンティス(商標)を放出速度指数が0.065の125μLリザーバのデバイスに注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度プロファイルを求めた結果を示す図である;
図19Qは、実施態様による、ラニビズマブの硝子体液中での半減期を約9日間とし、10μLの濃縮ルセンティス(商標)(40mg/mL)を放出速度指数が0.01の10μLデバイスへ注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度を求めた結果を示す図である;
図19Rは、実施態様による、ラニビズマブの硝子体液中での半減期を約5日間とし、10μLの濃縮ルセンティス(商標)(40mg/mL)を放出速度指数が0.01の10μLデバイスへ注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度を求めた結果を示す図である;
図19Sは、実施態様による、ラニビズマブの硝子体液中での半減期を約9日間とし、10μL標準ルセンティス(商標)(10mg/mL)を放出速度指数が0.01の10μLデバイスへ注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度を求めた結果を示す図である;
図19Tは、実施態様による、ラニビズマブの硝子体液中での半減期を約5日間とし、10μL標準ルセンティス(商標)(10mg/mL)を放出速度指数が0.01の10μLデバイスへ注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度を求めた結果を示す図である;
図20は、実施態様による、リザーバにおける治療薬懸濁剤の時間放出プロファイルの計算結果を示す図である。
図21は、実質的に同様の多孔質フリット構造体と16μLリザーバおよび33μLリザーバとを備える治療デバイスよるアバスチン(商標)の累積放出率を示す図である;
図22Aは、厚さ0.049インチの多孔質フリット構造体によるアバスチン(商標)の累積放出率を示す図である;
図22B−1は、厚さ0.029インチの多孔質フリット構造体によるアバスチン(商標)の累積放出率を示す図である;
図22B−2は、図22B−1と同様な厚さ0.029インチの多孔質フリット構造体によるアバスチン(商標)の放出速度を示す図である;
図23Aは、容積20μLのリザーバによるアバスチン(商標)の累積放出率を示す図である;
図23A−1は、図23Aと同様な容積20μLのリザーバによる約90日間のアバスチン(商標)の累積放出率を示す図である;
図23Bは、図23Aと同様な放出速度を示す図である;
図23B−1は、図23A−1と同様な放出速度を示す図である;
図24Aは、メディアグレード0.1の多孔質フリット構造体によるアバスチン(商標)の累積放出率を示す図である;
図24A−1は、図24Aと同様なメディアグレード0.1の多孔質フリット構造体による約90日間の放出のアバスチン(商標)の累積放出率を示す図である;
図24Bは、図24Aと同様なデバイスの放出速度を示す図である;
図24B−1は、図24A−1と同様なデバイスの放出速度を示す図である;
図25Aは、メディアグレード0.2の多孔質フリット構造体によるフルオレセインの累積放出率を示す図である;
図25A−1は、図25Aと同様なメディアグレード0.2の多孔質フリット構造体による約90日間のフルオレセインの累積放出率を示す図である;
図25Bは、図25Aと同様なデバイスの放出速度を示す図である;
図25B−1は、図25A−1と同様なデバイスの放出速度を示す図である;
図25Cは、直径0.038インチ、長さ(厚さ)0.029インチのメディアグレード0.2の多孔質フリット構造体を通る約30日間のルセンティス(商標)の累積放出率を示す図である;
図25Dは、図25Cと同様なデバイスの放出速度を示す図である;
図25Eは、RRIが約0.015〜約0.090である30μLデバイスによる約30日間のルセンティス(商標)の累積放出率を示す図である;
図25Fは、図25Eと同様なデバイスの放出速度を示す図である;
図25E1および図25F1は、それぞれを図25Eおよび25Fにおけるルセンティス薬剤放出試験を6ヶ月まで測定したものを示す図である; 図25E1および図25F1は、それぞれを図25Eおよび25Fにおけるルセンティス薬剤放出試験を6ヶ月まで測定したものを示す図である;
図26Aおよび図26Bは、実施態様による、治療薬を放出する多孔質構造体の構造を示すための多孔質フリット構造体の破断端縁部の走査電子顕微鏡像を示す図である; 図26Aおよび図26Bは、実施態様による、治療薬を放出する多孔質構造体の構造を示すための多孔質フリット構造体の破断端縁部の走査電子顕微鏡像を示す図である;
図27Aおよび図27Bは、実施態様による多孔質フリット構造体の表面の走査電子顕微鏡像を示す図である; 図27Aおよび図27Bは、実施態様による多孔質フリット構造体の表面の走査電子顕微鏡像を示す図である;
図28は、ここに記載されるような実施態様による治療デバイスとの使用に適した多孔質フリット構造体を特定するために、多孔質構造体をテストするための圧力減衰テストおよびテスト装置を示す図である;
図29は、ここに記載されるような実施態様による治療デバイスとの使用に適した多孔質フリット構造体を特定するために、多孔質構造体との使用に適した圧力フローテストおよびテスト装置を示す図である;
図30A−1は、対象となる領域(黒い矢印)を特定し治療への反応を決定するために使用されるOCT黄斑3DOCT像の例を示す図である;
図30B−1、図30B−2および図30B−3は、それぞれ対象となる領域の断面の注入前、注入後1日、および注入後1週間経過した時点での一連のOCTスキャン像の例を示す図である; 図30B−1、図30B−2および図30B−3は、それぞれ対象となる領域の断面の注入前、注入後1日、および注入後1週間経過した時点での一連のOCTスキャン像の例を示す図である; 図30B−1、図30B−2および図30B−3は、それぞれ対象となる領域の断面の注入前、注入後1日、および注入後1週間経過した時点での一連のOCTスキャン像の例を示す図である;
図31Aおよび図31Bは、治療デバイスをウサギの眼の毛様体扁平部25へ埋め込む実験において、細長い切開部をフランジの下に密閉しているデバイスの像と埋め込まれた治療デバイスの暗視野像を示す図である; 図31Aおよび図31Bは、治療デバイスをウサギの眼の毛様体扁平部25へ埋め込む実験において、細長い切開部をフランジの下に密閉しているデバイスの像と埋め込まれた治療デバイスの暗視野像を示す図である;
図32Aは、2mgのラニビズマブをひと月毎に硝子体液へ直接ボーラス注入した場合と、2.5mgのラニビズマブがデバイスに保管されかつ2mgのラニビズマブが多孔質構造体150を通って眼に注入されるように4.5mgのラニビズマブをデバイス100へ注入した場合とを比較した、濃度プロファイルを示す図である;
図32Bは、2mgのラニビズマブをひと月毎に硝子体液へ直接ボーラス注入した場合と、2.5mgのラニビズマブがデバイスに保管されかつ2mgのラニビズマブが多孔質構造体150を通って眼に注入されるように4.5mgラニビズマブをデバイス100へ複数回注入した場合とを比較した、濃度プロファイルを示す図である;
図32Cは、図32Bと同様な4.5mgのラニビズマブの複数回注入およびひと月毎の2mgのボーラス注入を、0.5mgの認可された市販のルセンティス(商標)のひと月毎のボーラス注入との比較を示す図である;
図32Dおよび図32Eは、図32A〜図32Cと同様の量のデバイス100への6ヶ月毎の注入およびボーラス注入を示す図である; 図32Dおよび図32Eは、図32A〜図32Cと同様の量のデバイス100への6ヶ月毎の注入およびボーラス注入を示す図である;
図33Aおよび図33A1は、それぞれ結膜と強膜との間に実質的に設置された治療デバイス100の側面断面図および上面図である; 図33Aおよび図33A1は、それぞれ結膜と強膜との間に実質的に設置された治療デバイス100の側面断面図および上面図である;
図33A2は、細長い構造体172が強膜を通過してリザーバ・チャンバを硝子体液に連結させるように、リザーバが結膜と強膜の間にあるように埋め込まれた治療デバイス100を示す図である;
図33Bは、治療デバイス100の容器130のチャンバへの開口の近傍でチャネル174の中に設置された多孔質構造体150を示す図である;
図33Cは、放出速度プロファイルを与えるように、容器150のチャンバ内に設置され、かつ細長い構造体172の第1の開口に連結された多孔質構造体150を示す図である;
図33Dは、容器130のチャンバの液体を注入、置換し、治療薬を容器130のリザーバ・チャンバへ注入するように離間している複数の注入ポートを示す図である;
図34は、容器130の中心から離れて容器130に連結され、容器の端部の近傍に設置された細長い構造体172を示す図である;
図35は、実施態様による、多孔質フリット構造体の材料を特定するために使用されるルセンティスの製剤の安定性データを示す図である、
図36Aは、リザーバ・チャンバの容積がそれぞれ約10μL〜約50μL、RRIがそれぞれ約0.01〜約0.08での、100mg/mLラニビズマブ製剤の約90日目におけるラニビズマブ放出量を示す図である;
図36Bは、リザーバ・チャンバの容積がそれぞれ約10μL〜約50μL、RRIがそれぞれ約0.01〜約0.08での、100mg/mLラニビズマブ製剤の約180日目におけるラニビズマブ放出量を示す図である;
図36Cは、リザーバ・チャンバの容積がそれぞれRRI約10μL〜約50μL、RRIがそれぞれRRI約0.01〜約0.08での、10mg/mLラニビズマブ製剤の約90日目におけるラニビズマブ放出量を示す図である;
図36Dは、リザーバ・チャンバの容積がそれぞれRRI約10μL〜約50μL、RRIがそれぞれ約0.01〜約0.08での、10mg/mLラニビズマブ製剤の約180日目におけるラニビズマブ放出量を示す図である
図37は、実施態様による、40mg/mLおよび100mg/mLのラニビズマブ製剤を治療デバイスに注入した場合に対応する、硝子体液中の濃度プロファイルを示す図である;
図37Aは、デバイス中の治療薬の有効半減期が100日に対応する、RRIが0.02かつ容積が25μLの治療デバイスからの180日目までのラニビズマブ製剤の放出を示す図である;
図37Bは、実施態様による、デバイス中の治療薬の有効半減期が250日に対応する、RRIが0.008かつ容積が25μLの治療デバイスからの180日目までのラニビズマブの放出を示す図である;
図37Cは、実施態様による、40mg/mL製剤および100mg/mL製剤が注入されるデバイス群からのラニビズマブの放出を示す図である。
具体的には、抗体または抗体フラグメントを含む巨大分子の後眼部への送達について言及されているが、本発明の実施態様は、身体の多様な組織へ多様な治療薬を送達するために使用することが可能である。例えば、本発明の実施態様は、血管内、関節内、髄腔内、心膜、管腔内および消化管の組織のうちの1つ以上へ、長期間にわたって治療薬を送達するために使用することが可能である。
本発明の実施態様は、後眼部または前眼部、またはそれらの両方へ治療薬を徐放することを提供する。治療量の治療薬が眼の硝子体液の中へ放出され、治療薬は拡散または対流のうちの少なくとも1つによって網膜または脈絡膜や毛様体などの他の眼組織へ移送され、治療効果が発揮される。
ここで放出速度指標とは、多孔率をP、有効面積をA、有効長さに対応する曲線近似パラメータをF、多孔質構造体の長さまたは厚さをLとしたとき、(PA/FL)で表される。放出速度指標(RRI)は特記しない限りmmの単位を有し、ここに記載される教示に従い当業者は求めることができるものである。
ここで徐放とは、治療薬の有効成分の治療量を長期間にわたって放出することを意味する。徐放は、有効成分の一次放出、有効成分の0次放出、0次と一次の中間型などの他の放出速度式、またはこれらの組み合わせを含んでいてもよい。
ここで商標名で言及される治療薬とは、その商標名で市販されている治療薬製剤、市販製剤の有効成分、有効成分の一般名、または有効成分を含有する分子のうちの1つ以上を意味することができる。
ここで、類似の符号は類似の構成部分および/または類似の工程を示している。
治療薬は、容器のチャンバ内、例えば容器とチャンバを含むリザーバ内に収容されていてもよい。治療薬は、例えば、治療薬の溶液、治療薬の懸濁液または治療薬の分散液などの製剤でもよい。治療デバイスの実施態様に従って使用するのに適した治療薬の例は、例えば以下の表1Aやその他を参照してここに記載される。
治療薬は、巨大分子、例えば抗体または抗体フラグメントなどであってもよい。治療用巨大分子としては、VEGF阻害剤、例えば市販のルセンティス(商標)が挙げられる。VEGF(血管内皮増殖因子)阻害剤は、眼の硝子体液中へ放出されることにより異常血管の退縮および視力の改善を行うことができる。VEGF阻害剤の例としては、ルセンティス(商標)、アバスチン(商標)、マクジェン(商標)、およびVEGFトラップが挙げられる。
治療薬は、コルチコステロイドやその類似体などの小分子であってもよい。例えば、治療用コルチコステロイドには、トリマシナロン、トリマシナロンアセトニド、デキサメタゾン、デキサメタゾンアセテート、フルオシノロン、フルオシノロンアセテート、またはこれらの類似体のうちの1つ以上が含まれる。代替としてあるは併用して、小分子の治療薬としては、例えば、アクシチニブ、ボスチニブ、セディラニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レスタウルチニブ、ニロチニブ、セマクサニブ、スニチニブ、トセラニブ、バンデタニブ、またはバタラニブのうちの1つ以上を含むチロシンキナーゼ阻害剤が挙げられる。
治療薬は抗VEGF治療薬であってもよい。抗VEGF療法および薬剤は、ある種の癌や加齢黄斑変性の治療に使用できる。ここに記載する実施態様による使用に適した抗VEGF治療薬の例としては、ベバシズマブ(アバスチン(商標))などのモノクローナル抗体、ラニビズマブ(ルセンティス(商標))などの抗体誘導体、ラパチニブ(チケルブ(商標))、スニチニブ(スーテント(商標))、ソラフェニブ(ネクサバール(商標))、アクシチニブ若しくはパゾパニブなどのVEGFによって活性化されるチロシンキナーゼを阻害する小分子のうちの1つ以上が挙げられる。
治療薬は、例えばシロリムス(商標)(ラパマイシン)、コパクソン(商標)(グラチラマーアセテート)、オセラ(商標)、補体C5aRブロッカー、毛様体神経栄養因子、フェンレチニドまたはレオフェレシスのうちの1つ以上などの乾性AMDの治療に適した治療薬であってもよい。
治療薬は、例えばREDD14NP(クォーク)、シロリムス(商標)(ラパマイシン)、ATG003、レジェネロン(商標)(VEGFトラップ)または補体阻害剤(POT−4)のうちの1つ以上などの滲出性AMDの治療に適した治療薬であってもよい。
治療薬は、例えばベバシズマブ(モノクローナル抗体)、BIBW2992(EGFR/Erb2標的小分子)、セツキシマブ(モノクローナル抗体)、イマチニブ(小分子)、トラスツズマブ(モノクローナル抗体)、ゲフィチニブ(小分子)、ラニビズマブ(モノクローナル抗体)、ペガプタニブ(小分子)、ソラフェニブ(小分子)、ダサチニブ(小分子)、スニチニブ(小分子)、エルロチニブ(小分子)、ニロチニブ(小分子)、ラパチニブ(小分子)、パニツムマブ(モノクローナル抗体)、バンデタニブ(小分子)またはE7080(VEGFR2/VEGFR2標的、エーザイ製市販小分子)のうちの1つ以上などのキナーゼ阻害剤であってもよい。
治療デバイス内の治療薬量は、例えば30日以上の長期間にわたって治療量の治療薬を供給するように、例えばルセンティス(商標)なら約0.01mg〜約1mgであってもよい。長期間とは、90日以上、例えば180日以上、または例えば1年以上、2年以上、あるいは3年以上であってもよい。硝子体内のルセンティス(商標)などの治療薬の治療濃度の目標閾値は、0.1μg/mL以上の治療濃度であってもよい。例えば、目標閾値濃度は、長期間にわたって約0.1μg/mL〜約5μg/mLの濃度であってもよく、その上限値は公表されたデータを使用して例9に示す計算に基づいている。目標閾値濃度は薬剤に依存するため、他の治療薬では違った値となるであろう。
送達プロファイルは、徐放デバイスの治療有効性を得るために多様な方法で構成することができる。治療薬の濃度が確実にその治療薬の安全性プロトコルまたは有効性プロトコルを超えるようにするために、所定量の治療薬をひと月単位の間隔で容器内へ挿入、例えばひと月毎またはそれ以下の頻度で容器内へ注入してもよい。徐放によって、送達プロファイルが改善され、治療効果が向上する可能性がある。例えば、治療薬の濃度が長期間にわたって常に、例えば0.1μg/mLの閾値量以上とすることができる。
挿入方法としては、治療デバイスの容器内へ用量を挿入することで行うことができる。例えば、ルセンティス(商標)の1回分注入量を治療デバイス内へ注入することができる。
デバイスを患者の眼内へ挿入したときに、治療薬の徐放の継続期間は、デバイス内への治療薬の単回挿入から12週以上、例えば4カ月から6カ月まで及ぶことができる。
長期間にわたる徐放を提供するように、治療薬は様々な方法で送達できる。例えば、治療デバイスは治療薬と結合剤とを備えてもよい。治療薬が硝子体液中への注入後長期間にわたって放出されるように、結合剤は治療薬に放出可能または可逆的に連結するよう構成された小粒子であってもよい。粒子は、長期間にわたって眼の硝子体液中に残留するような大きさとすることができる。
治療薬は眼内に埋め込まれるデバイスによって送達してもよい。例えば、長期間にわたって薬剤送達デバイスを眼の強膜に連結するように、薬剤送達デバイスを眼の強膜内に少なくとも部分的に埋め込むことができる。治療デバイスは薬剤と結合剤とを備えていてもよい。薬剤および結合剤は、長期間の徐放を提供するよう構成できる。膜または他の拡散隔壁やメカニズムが、長期間にわたって薬剤を放出する治療デバイスの構成要素であってもよい。
治療デバイスの寿命および注入の回数は、患者の治療ごとに最適化が可能である。例えば、デバイスは、30年の寿命の間、例えばAMD患者では約10年から15年の間、所定箇所に残置することができる。例えば、デバイスは2年以上の埋め込み期間用に構成でき、8回の注入(3カ月に1回毎)で2年の期間にわたって治療薬を徐放する。また、デバイスは10年以上の埋め込み用に構成でき、40回の注入(3カ月に1回毎)で治療薬を徐放する。
治療デバイスは多くの方法で補充できる。例えば、医師の診察室でデバイス内へ治療薬を補充することが可能である。
治療デバイスは多様な形態および物理的属性を有していてもよく、例えば治療デバイスの物理的特性としては、縫合糸付き薬剤送達デバイス、視力が低下しないような位置決めとサイズ決め、および生体適合材料のうちの少なくとも1つが挙げられる。デバイスは約0.005cc〜約0.2cc、例えば約0.01cc〜約0.1ccのリザーバ容量を有していてもよく、デバイスの容積は約2cc以下であってもよい。0.1ccを超える容積のデバイスの場合、硝子体切除術を行ってもよい。埋め込まれたデバイスの眼に対する位置と同様にデバイスの形状を考慮して、患者の視覚と干渉しないようにデバイスの長さを設定することができる。デバイスの長さは、デバイスが挿入される角度にも依存するものである。例えば、デバイスの長さは約4mm〜6mmであってもよい。眼の直径が約24mmであるため、強膜から硝子体へ約6mm以下で延びるデバイスならば、患者の視力に対する影響を最小限に抑制できるであろう。
実施態様は、埋め込み型薬剤送達デバイスの多くの組み合わせを含むものである。治療デバイスは薬剤と結合剤とを有していてもよい。また、デバイスは、長期間にわたって治療量の治療薬を放出するように、膜、開口、拡散隔壁、拡散メカニズムのうちの少なくとも1つを有していてよい。
図1は、治療デバイスを組み込むのに適した眼10を示す。眼は、網膜26上に像を形成するように構成された角膜12と水晶体22を有する。角膜は、眼の角膜縁14まで延び、角膜縁は眼の強膜24に結合される。眼の結膜16は、強膜の上に配置される。水晶体は、患者が視認した物体に焦点を合わせるように調節する。眼は、光に反応して伸縮する虹彩18を有する。眼はまた強膜24と網膜26との間に配置された脈絡膜28も備える。網膜は、黄斑32を有する。眼は、毛様体扁平部25を有し、毛様体扁平部25は、ここに記載する治療デバイス100の配置および保持、例えば固定に適した眼の領域のひとつの例である。毛様体扁平部の領域は、網膜と角膜の間に配置された結膜と強膜とを含む。治療デバイスは、治療薬を放出するために毛様体扁平部から硝子体液30中まで延びるよう配置可能である。治療薬は、網膜および脈絡膜に到達して黄斑に治療効果を与えるよう硝子体液30中へ放出可能である。眼の硝子体液は、水晶体と網膜との間に配置された液体である。硝子体液は、治療薬を黄斑に送達するための対流を形成してもよい。
図1A−1は、図1と同様な眼10の強膜24内に少なくとも部分的に埋め込まれた治療デバイス100を示す。治療デバイスは、強膜にデバイスを連結する保持構造体、例えば突起部を備えていてもよい。治療デバイスは、治療薬を硝子体液中へ放出可能なよう強膜を貫通して硝子体液30中まで延出していてもよい。
図1A−1−1および図1A−1−2は、眼の網膜を治療するために眼10の硝子体液30中へ治療薬110を放出するよう、結膜16の下で強膜24を貫通して埋め込まれた治療デバイス100を示す。治療デバイス100は、結膜が治療デバイス100を被覆し保護することができるように、強膜に沿って結膜下に配置されるように構成された滑らかな突起などの保持構造体120を有していてもよい。治療薬110がデバイス100内へ挿入されるときに、結膜は、治療デバイスにアクセスするために持ち上げられるか、切開されるか、または針で穴を開けられてもよい。眼には、眼の強膜を上直筋に連結する上直筋の腱27が付着している。デバイス100は毛様体扁平部の多様な位置に配置することができ、例えば腱27から離れた位置でかつ腱の後方部、腱の後方部、腱の下方部、または鼻側しくは耳側のうちの1つ以上の位置に治療デバイスを配置することができる。
埋め込み体は多様な方法で眼内に配置できるが、実施態様に係る研究によると、毛様体扁平部に配置することで、例えば巨大分子からなる有効成分を有する治療薬などの治療薬を網膜を治療するために硝子体内へ放出できることが示唆されている。
治療デバイス100とともに使用するのに適した治療薬110としては、例えば以下の表1Aに記載されるような多様な薬剤が挙げられる。デバイス100の治療薬110は、治療薬の有効成分、治療薬の製剤、治療薬の市販製剤、医師が処方した治療薬の製剤、薬剤師が調合した治療薬の製剤、または賦形剤を含有する治療薬の市販製剤のうちの1つ以上を含んでいてもよい。治療薬は、例えば表1Aに示すように、一般名または商標名で言及することができる。
治療デバイス100は、患者にとって有用かつ有益である限り、眼の治療のために眼内に埋め込んでおくことができる。例えば、デバイスは患者の存命中常設するなど、約5年間以上埋め込むことができる。代替としてあるいは併用して、デバイスは、患者の治療にとってもはや有用または有益でなくなったとき除去することができる。
図1A−2は、図1A−1、図1A−1−1および図1A−1−2と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイス100の構成体を示す。このデバイスは、デバイス100を強膜に連結する保持構造体120、例えばデバイスの近位端上に配置された突起を有していてもよい。デバイス100は保持構造体120に取り付けられた容器130を有していてもよい。有効成分、例えば治療薬110がリザーバ140内、例えばデバイスの容器130によって画成されたチャンバ132内に収容可能である。容器130は、多孔質材152、例えば多孔質ガラスフリット154を含む多孔質構造体150と、治療薬の放出を抑制する隔壁160、例えば不透過膜162とを有していてもよい。不透過膜162は実質的に不透過性の材料164であってもよい。不透過膜162は、長期間にわたって治療薬110の治療量を放出する大きさの開口166を有していてもよい。多孔質構造体150は、開口166と協同して長期間にわたって治療量の治療薬を放出するように構成された厚み150Tおよび孔径を有していてもよい。容器130は、長期間にわたる放出用の治療量の治療薬を収容する大きさの容積142を有するチャンバを備えるリザーバ140を有していてもよい。デバイスは針停止部170を有していてもよい。硝子体液中のタンパク質がデバイスに進入し、多孔質構造体上の吸着サイトを奪うことで、治療薬の放出に寄与していると考えられる。リザーバ140内に収容された治療薬110は硝子体液中のタンパク質と平衡を保つことができるため、系は平衡状態へと進み、治療薬110が治療量放出されることになる。
不透過膜162、多孔質材152、リザーバ140、および保持構造体120は、治療薬110を送達するための多様な形態を有することができる。不透過膜162は、治療薬を放出するために形成された少なくとも1つの開口を有する円板を接合した環状管を含んでもよい。多孔質材152は、環状の多孔質ガラスフリット154と、その上に配置された円形端部とを有していてもよい。リザーバ140は挿入を容易にするために形状が可変でもよく、すなわち、リザーバ140は、強膜を通って挿入される間、薄く細長い形状を呈していてもよく、その後治療薬を充填すると膨張してバルーン形状を呈してもよい。
多孔質構造体150は、所望の放出プロファイルに従って治療薬を放出するために多様な方法で構成できる。多孔質構造体は、例えば焼結硬質材料であって、例えばリザーバに面する第1の側に複数の開口と、硝子体液に面する第2の側に複数の開口と、第1の側の開口を第2の側の開口に連通するようにそれらの間に配置された複数の相互連結チャネルとを有する多孔質構造体であってもよい。多孔質構造体150は、透過膜、半透膜、少なくとも1つの孔を有する材料、ナノチャネル、硬質材料にエッチングされたナノチャネル、レーザーエッチングされナノチャネル、毛細管チャネル、複数の毛細管チャネル、1つ以上の蛇行状チャネル、蛇行ミクロチャネル、焼結ナノ粒子、連続気泡発泡体または連続気泡ヒドロゲルなどのヒドロゲルのうちの1つ以上であってもよい。
図1A−2−1は、挿入器具200の挿入用カニューレ210に装着された治療デバイス100を示し、治療デバイス100は強膜への挿入のため長く幅狭な形状を有し、強膜に少なくとも部分的に保持されるように第2の長く幅太な形状に拡大するように構成される。
図1A−2−2は、膨張した構成である、カニューレへの装着に適したリザーバ140を備える治療デバイス100を示す。
図1Bは、図1A−1および図1A−1−1と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイス100を示す。このデバイスは、例えば強膜と面一となるように強膜に連結する保持構造体120を有し、隔壁160は管168を有する。治療薬110中の有効成分112が、不透過材164からなる管168内に収容されている。多孔質材152が、長期間にわたって治療薬を治療濃度で徐放するように管168の遠位端に配置されている。不透過材164は、デバイスが眼内に挿入されたときに多孔質材152を硝子体液に連結する開口を画成するように多孔質材152の周りを遠位方向に延びていてもよい。
管168および保持構造体120は、表面処理されたガラス棒体を受容するよう構成されてもよく、ガラス棒体は治療薬とともに注入できる。長期間の治療薬の溶出が完了すると、棒体は新しい棒体と交換される。
デバイス100は、治療薬と、例えば治療薬を送達する結合剤からなる結合媒体などの担体とを有していてもよい。治療薬は、侵食消滅する固体支持部を含むカラムで取り囲むことができる。
図1Cは、図1A−1および図1A−1−1と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイスを示す。ガラスウールなどの結合剤190からなる結合媒体192に、アクセスポート180を通ってデバイスへ注入する前に、治療薬を装填してもよい。デバイス100は長期間にわたって治療薬を送達するための結合、漏出、および隔壁機能を有していてもよい。結合媒体192および治療薬110は、結合媒体および治療薬の吸引によって置換することができる。少なくとも大部分の治療薬が放出されたときに、次に注入する治療薬を有する結合媒体でさらに薬剤が送達されるように、結合媒体を流出するかまたは置換するかの少なくともいずれかが可能である。膜195を治療デバイス100の周囲に配置することができる。膜195としては、メチルセルロース、再生セルロース、セルロースアセテート、ナイロン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルスルホン、およびポリビニリデンジフルオライド(PVDF)が挙げられる。治療デバイスは、開口166が出口ポートとなるように形成された隔壁160を有する。治療薬は拡散メカニズムまたは対流メカニズムのうちの少なくとも1つによって放出することができる。出口ポートの数、寸法、および形状によって治療薬の放出速度を決定することができる。出口ポートは、対流ポート、例えば浸透圧で駆動される対流部またはばねで駆動される対流部のうちの少なくとも1つであってもよい。出口ポートは、治療薬が一時的に付着し、その後何らかの物理的または化学的条件下で放出可能な管状通路であってもよい。
図1C−Aは少なくとも1つの出口ポート167を示し、例えば流体がデバイスの注入ポート182内へ注入されるとき、またはガラスフリットなどの挿入物がデバイス内へ挿入されるときに、デバイス内側から外側に液体が流れるのを可能とするように、出口ポートをデバイス100上に配置できる。治療デバイスは、例えばセプタムなどの注入および/または除去用のアクセスポート180を有していてもよい。追加あるいは代替として、治療デバイスを補充するときに、デバイスの内容物を眼の硝子体内へ流出してもよい。
図1C−1は結合剤194を除去する方法を示す。注入器187のシリンジ188に連結された針189が、治療デバイス100のアクセスポート180内に挿入される。結合剤194は針で吸引可能である。
図1C−2は、治療薬110が結合された第2の結合剤190によって、治療薬110を挿入する方法を示す。治療薬は、長期間にわたって徐放するために、デバイスの容器130中へ注入可能である。
図1C−3は、治療デバイス内へ注入される治療薬の製剤で充填されているシリンジを示す。注入器187のシリンジ188に連結された針189を、容器110Cから治療薬110を吸入するために用いることができる。容器110Cは、セプタムを有するボトル、単回用量用の容器、または製剤を混合するのに適した容器などの市販の容器であってもよい。眼内に配置された治療デバイス100内へ注入するために、治療薬110の量110Vが注入器187内へ吸引される。量110Vは、所定の量、例えば治療デバイス110の容器の容積や硝子体液中への所望の注入量に基づいた量とすることができる。量110Vの例では、治療デバイスを通って硝子体液中へ量110Vの第1の部分を注入し、かつ治療デバイス110の容器内に量110Vの第2部分を収容するように、容器の容積を超える量であってもよい。容器110Cは、治療薬110の製剤110Fを含有していてもよい。製剤110Fは治療薬の市販製剤、例えば表1Aを参照してここに記載するような治療薬を含有していてもよい。ここに記載する実施態様による使用に適切な市販製剤の例としては、限定するものではないが、例えばルセンティス(商標)およびトリアムシノロンが挙げられる。製剤110Fは市販治療薬、例えばアバスチン(商標)の濃縮または希釈製剤であってもよい。硝子体液のオスモル濃度および浸透圧は約290〜約320の範囲内にすることができる。例えば、硝子体液のオスモル濃度および浸透圧と実質的に同一のオスモル濃度および浸透圧、例えば約280〜約340、例えば約300mOsmの製剤となるように、アバスチン(商標)の市販製剤を希釈することが可能である。治療薬110は硝子体液と実質的に同一のオスモル濃度および浸透圧を有することができる一方で、治療薬110は、硝子体液よりも高い浸透圧の溶液または硝子体液よりも低い浸透圧の溶液とすることができる。当業者はここに記載する教示に基づき、長期間にわたって治療薬を放出するための治療薬の製剤およびオスモル濃度を経験により決定するための実験を実施することができるであろう。
例えば、米国では、ルセンティス(商標)(有効成分ラニビズマブ)が、10mMのヒスチジン塩酸塩、10%のα,α−トレハロース二水和物、0.01%のポリソルベート20を有する10mg/mLのルセンティス(商標)水溶液0.05mLをpH5.5にて送達するよう設計されている防腐剤無しの滅菌溶液として、使い捨て硝子小びんで入手可能である。欧州でのルセンティス(商標)の製剤は、米国の製剤と実質的に同様である。
例えば、ジェネンテックおよび/またはノバルティスによって開発中のルセンティス(商標)の徐放製剤を、デバイス100内へ注入される治療薬として用いてもよい。徐放製剤は、有効成分を含有する粒子を含んでもよい。
例えば、米国では、アバスチン(商標)(ベバシズマブ)が抗ガン剤として承認されており、AMD用としての臨床試験が進行中である。ガン用の市販溶液は静脈内注射用pH6.2の溶液である。アバスチン(商標)は、4mLまたは16mLのアバスチン(商標)(25mg/mL)を送達するために100mgおよび400mgの防腐剤無しの使い捨て小びん入りで供給される。100mgの製品は、、240mgのα,α−トレハロース二水和物、23.2mgのリン酸ナトリウム(一塩基、一水和物)、4.8mgのリン酸ナトリウム(二塩基、無水)、1.6mgのポリソルベート20、および米国薬局方の注射用水で製剤されている。400mgの製品は、960mgのα,α−トレハロース二水和物、92.8mgのリン酸ナトリウム(一塩基、一水和物)、19.2mgのリン酸ナトリウム(二塩基、無水)、6.4mgのポリソルベート20、および米国薬局方の注射用水で製剤されている。市販製剤は投与前に0.9%の塩化ナトリウム100mLで希釈され、使用される市販製剤の量は患者や適応症によって調整する。ここに記載する教示に基づき、当業者は治療デバイス100内へ注入するためのアバスチン(商標)の製剤を決定することができるであろう。欧州でのアバスチン(商標)の製剤は、米国の製剤と実質的に同様であると考えられる。
例えば、米国では、注入可能な溶液に用いられるトリアムシノロンにはアセトニドおよびヘキサアセトニドの2つの誘導体がある。アセトアミド誘導体は米国では硝子体内注入用として承認されている。アセトアミド誘導体はトリバリス(アラガン社)における有効成分であり、重量パーセントで2.3%のヒアルロン酸ナトリウム;0.63%の塩化ナトリウム;0.3%のリン酸ナトリウム、二塩基;0.04%のリン酸ナトリウム、一塩基;およびpH7.0〜7.4の注射用蒸留水を含有する賦形剤0.1mL中に8mgのトリアムシノロンアセトニドが含まれる(8%懸濁液)。アセトアミド誘導体は40mg/mL懸濁液のトリエッセンス(商標)(アルコン社)の有効成分でもある。
当業者はこれらの製剤についてオスモル濃度を求めることができる。溶液中の有効成分の解離度を求め、これらの製剤のオスモル濃度とモル濃度との違いを求めるのに用いることができる。例えば、少なくともいくつかの製剤(または懸濁液)が濃縮されいることを考慮すると、モル濃度はオスモル濃度と異なるであろう。
治療デバイス100内へ注入する治療薬の製剤は、公知の多様な治療薬の製剤であってもよく、その治療薬製剤は、デバイス100から長期間にわたって放出するに適したオスモル濃度を有する。表1Bは、生理食塩水および表1Aの市販製剤のいくつかのオスモル濃度(Osm)の例を示している。
表1B
眼の硝子体液は約290mOsm〜約320mOsmのオスモル濃度を有する。約280mOsm〜約340mOsmのオスモル濃度を持つ治療薬の製剤は、眼の硝子体液に対して実質的に等張かつ等浸透圧である。表1Bに記載された製剤は、眼の硝子体液に対して実質的に等浸透圧であるとともに等張であり、治療デバイス内への注入に適しているが、治療デバイス内へ注入された治療薬の製剤は、硝子体の浸透圧およびオスモル濃度に対して高張(高浸透圧)または低張(低浸透圧)であることができる。実施態様に関する研究によれば、高浸透圧性の製剤では、注入された製剤の溶質が硝子体のオスモル濃度と平衡状態になる初期に、治療薬の有効成分がやや速く硝子体内へを放出され、アバスチン(商標)などの低浸透圧性の製剤では、注入された製剤の溶質が眼と平衡状態になる初期に、治療薬の有効成分がやや遅く硝子体内へ放出されることを示唆している。当業者はここに記載する教示に基づき実験を実施して、長期間にわたって治療量の治療薬を放出するように、かつ、硝子体内の治療薬の治療濃度が長期間にわたって最小阻止濃度以上の治療濃度範囲内となるように、リザーバ・チャンバ内に配置された治療薬の製剤に適切なリザーバ・チャンバ容積および多孔質構造体を、経験的に決定することができるであろう。
図1Dは図1A−1および図1A−1−1と同様にして眼内に配置されるように構成された治療デバイス100を示し、デバイスは、治療薬を直線的に放出するように、複数のチャンバおよびチャンバを接続するチャネルを備える。第1のチャンバ132Aが、治療量の治療薬を収容する第1の容積を有するリザーバを有していてもよい。例えば、治療薬はリザーバ内に収容された有効成分であってもよい。第2のチャンバ132Bが、第1のチャンバより遠位に配置され、第1の開口が第1のチャンバと第2のチャンバを接続している。治療薬は第1の開口を通って第2のチャンバ内へ拡散される。第2のチャンバは、例えば0次となるように直線的に治療薬を送達するように、第2のチャンバ内に治療薬が一時的に保管されるような第2の容積を有する。第2の開口が第2のチャンバから硝子体液に向かって延出してもよい。第1の開口、第2の開口および第2の容積は、長期間にわたって治療レベルの徐放用治療薬を直線的に送達できるような大きさとすることができる。治療デバイス内へ挿入する治療薬は1つ以上であってもよい。その場合、2つ以上の治療薬が混合されるか、または個別のチャンバ内へ注入されてもよい。
さらに追加のチャンバおよび開口を、治療薬を直線的に送達できるようにデバイス上に配置できる。例えば、第3のチャンバが第2のチャンバより遠位に配置される。第2のチャンバを第3のチャンバに連結する第2の開口を設けることができる。また、例えば、第4のチャンバが第3のチャンバより遠位に配置され、第3の開口により第3のチャンバと第4のチャンバが接続される。
さらに追加あるいは代替として、治療デバイスは、薬剤の徐放を提供する少なくとも1つのゲートを備えてもよい。ゲートは、磁力を用いてあるいは電流を印加することで「閉鎖」位置から「開放」位置まで移動可能である。例えばゲートは摺動あるいはねじることができる。ゲートは、バネ駆動とすることができ、再負荷可能なポンプを有していてもよい。ゲートは浸透圧ポンプを有していてもよい。
図1Eは図1A−1および図1A−1−1と同様にして眼内に配置されるように構成された治療デバイスを示し、デバイス100は治療デバイスの底部に設置された針停止部170を有する。注入針189が治療デバイス100の出口ポート166を貫通して出口ポート166に損傷を与える可能性をなくすために、針停止部を治療デバイス内に設けてもよい。治療デバイス内の所定位置を越えて注入針が進入することを防ぐために、針停止部は十分に硬質の材料からなることが望ましい。さらに追加あるいは代替として、注入針が治療デバイスの出口ポートを貫通して損傷を与える可能性がないように、注入器の注入針の長さを設計してもよい。
図1Eおよび図1E−1に示すように、針停止部170は治療デバイスの後端部に配置することができる。図1E−2、図1E−3および図1E−3−1は、デバイスの中間部に設置された針停止部を含むことが可能な他の実施態様を示す。針停止部は、治療薬の分流器として機能するように設計してもよい。針停止部の形状によって、治療デバイスの内部チャンバ内の流体の残部と治療薬との混合を促進するようにすることができる。
図1E−1は、治療デバイスのチャンバ内で治療薬100が移動することを促進する形状を持つ、治療デバイスの底部に設置された針停止部170を備え、図1A−1および図1A−1−1と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイスを示す。
図1E−2は、治療デバイスの中央に設置された針停止部170を備え、図1A−1および図1A−1−1と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイスを示す。
図1E−3は、治療デバイスのチャンバ内での治療薬の移動を促進する形状を持つ、治療デバイスの中央に設置された針停止部170を備え、図1A−1および図1A−1−1と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイスを示す。
図1E−3−1は、図1E−3と同様にして眼に配置するように構成された治療デバイスの上面図である。
図2は、治療デバイス100に組み込むのに適したアクセスポート180を示す。アクセスポート180は、例えば図1A−1から図1Dを参照して、ここに記載する治療デバイスと組み合わせることができる。アクセスポートはデバイスの近位端に配置されていてもよい。アクセスポート180は、セプタム186を設けた貫通可能な隔壁184を有する保持構造体120に形成された開口であってもよい。アクセスポート180は、患者の結膜16の下方かつ強膜24の上方に配置されるように構成されてもよい。
図3Aは、治療デバイス100に組み込むのに適した鍔部128を示す。鍔部128は、強膜24に連結するよう構成された保持構造体120に設けてもよい。鍔部は膨張可能な鍔部であってもよい。
図3Bは、強膜から硝子体液へデバイスに沿って細菌が繁殖するのを抑制するために治療デバイス100上に設けた、抗細菌剤310を含浸した生体適合性材料を示す。生体適合性材料はコラーゲン、例えばコラーゲンスポンジ312であってもよく、抗菌剤はコラーゲン内に含浸された銀であってもよい。抗菌剤が含浸された生体適合性材料は、デバイスの外面の少なくとも一部の周りを延出していてもよい。デバイスが眼内へ挿入されるときに抗菌剤が強膜内に少なくとも部分的に配置されるように、抗菌剤は保持構造体120の一部を形成してもよい。
図4Aは、放出された抗体フラグメント410を含む抗体および結合剤190を備える基質420を示す図であり、図4Bは、結合剤190により基質420に可逆的に結合された抗体フラグメント410を示す。結合された抗体フラグメントが結合していない抗体フラグメントと平衡となるように、抗体フラグメントは、結合剤を備える基質に可逆的に結合可能である。ここに記載する教示に基づき、当業者は、抗体の少なくとも一部に可逆的に結合する結合剤を備える多様な基質を想到するであろう。結合媒体の例として、クロマトグラフィーで使用される粒子状物質、例えばマクロプレップ・t−ブチルHIC担体、マクロプレップDEAE担体、CHTセラミック・ハイドロキシアパタイト・タイプI、マクロプレップCM担体、マクロプレップ・メチルHIC担体、マクロプレップ・セラミック・ハイドロキシアパタイト・タイプII、UNOsphereS陽イオン交換担体、UNOsphereQ強陰イオン交換担体、マクロプレップ・ハイS担体、およびマクロプレップ・ハイQ担体が挙げられる。結合性試験に供する他の材料としては、高い能力でタンパク質を結合する親水性ポリマー担体(GEヘルスケア社)に基づくイオン交換クロマトグラフィー材料および生体アフィニティークロマトグラフィー材料、およびシリカよりも多くタンパク質を結合するポリ(ビニルアルコール)からなるハーバードアパラタス社製の親水性パッキング材料が挙げられる。その他の候補は当業者には公知であろう。
図5Aは、治療薬110をデバイスの容器130内に挿入する注入器187に連結された治療デバイス100を示す。注入器187はシリンジ188に連結された針189を有していてもよい。
図5A−1は、デバイスに材料を注入および除去する注入器187に連結された治療デバイス100を示す。注入器は、デバイスの容器内へ挿入するよう構成される第1の管腔189Aおよび第2の管腔189B有する注入針189を備えてもよい。注入器は、デバイス内への治療薬の注入510とデバイスからの液体の除去520を同時に行ってもよい。注入器は、それぞれ第1の管腔および第2の管腔に連結された第1の一方向弁および第2の一方向弁を有してもよい。
図5Bは、マイクロループ状チャネル530を備える治療デバイスを示す。マイクロループチャネルは第1のポート530Aおよび第2のポート530Bまで延出していてもよく、治療薬を例えば結合剤と一緒に第1のポート内へ注入し、例えば結合剤を含有する液体などの流動性材料をマイクロループチャネル530から吸い出すことができる。
図5C−1は、蛇行状チャネル540を備える治療デバイス100を示す。蛇行状チャネルは第1のポート540Aから第2のポート540Bまで延出してもよく、治療薬を第1のポート内へ注入し、例えば結合剤を含有する液体などの流動性材料を第2のチャネルから吸い出すことができる。
図5C−2は、蛇行状コイル状チャネル550を備える治療デバイスを示す。コイル状チャネル550は出口ポート552まで延出してもよい。針189が、デバイス100内へ治療薬を注入するために、ポート180内へ挿入される。
図5Dは、治療薬を保持する伸縮可能構造体562および強膜に結合する外側硬質ケース560を示す。伸縮可能構造体562は、バッグ、バルーン、可撓性リザーバ、隔膜、またはバッグのうちの少なくとも1つなどの膜を含んでもよい。外側硬質ケースは、構造体562を実質的に囲むように延出し、その構造体が拡大したとき硝子体液中へ液体を放出し、材料が構造体から吸い出されて構造体が収縮するときケースのチャンバ内側に硝子体液を引き込む開口を有していてもよい。
図5Eは、治療デバイス100の出口ポート552を覆ってを配置された膜550を示す。
図5Fは、デバイス100のサイドポート570を覆って治療デバイス100にクランプで固定された筒状膜572を備える治療デバイスを示す。
保護膜が直径0.2μmの細孔を有する際、この値は、治療薬送達のモデルである対象タンパク質の20倍以上の大きさである。例えば、治療に使用されるタンパク質のモデルの分子量および直径として以下のものが挙げられる。
(a)免疫グロブリンG 150キロダルトン 10.5nm
(b)ウシ血清アルブミン 69キロダルトン 7.2nm
(c)免疫グロブリンGのFabフラグメント 49キロダルトン 流体力学的直径の報告なし
したがって、免疫グロブリンGおよびウシ血清アルブミンのサイズ範囲内の治療化合物の溶液は、細菌性細胞や他の細胞の通過を防止するために用いられる0.2μm孔径の保護膜を比較的容易に通過すると考えるべきである。
結合材料または結合剤は、化学的結合剤または材料、構造的結合剤または材料、または静電気的結合剤または材料のうちの少なくとも1つであることができる。結合剤の種類は、例えばガラスビーズ、ガラスウールまたはガラス棒体などの非生分解性材料から成る分類に属するものであってもよい。表面に少なくとも1つの官能基を導入して、少なくとも1つの治療化合物に対する、イオン結合、疎水性結合、または生体親和性結合のうちの少なくとも1つの能力を結合剤または結合材料に付与することができる。
結合剤は生分解性材料であってもよい。例えば、生分解性、結合性、またはこれらのプロセスの組み合わせにより、拡散速度を制御してもよい。
結合剤はイオン交換を行ってもよく、イオン交換は、官能基、pH感受性結合、または正電荷若しくは負電荷のうちの少なくとも1つを利用していてもよい。例えば、ジエチルアミノエチル官能基またはカルボキシメチル官能基のうちの少なくとも1つとのイオン交換が挙げられる。
結合剤はpH感受性結合剤であってもよい。例えば、結合剤は、pH7で治療薬を溶出し、約4〜約6.5のpHで治療薬を結合するよう構成することができる。例えば、pH7で結合剤の正味の負電荷が減少することで、正に帯電した薬剤との結合が減少し治療薬を放出するように、陽イオン交換結合剤を構成することができる。結合剤を治療薬に可逆的に連結するために、結合剤とともに目標とする緩衝剤を使用してもよい。例えば緩衝剤が硝子体に不溶であることを利用して放出速度を遅くするなど、放出速度を制御することができる。代替あるいは併用して、多孔質膜、あるいは開口のサイズなどの物理的特性を用いることで溶出を制限できる。
イオン交換は、陽イオン交換または陰イオン交換のどちらであってもよい。
結合剤は疎水性相互作用を有していてもよい。例えば、結合剤は疎水性ポケット、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基またはフェニル基などの官能基のうちの少なくとも1つへの少なくとも1つの結合を有していてもよい。
結合剤は、親和性、例えば巨大分子親和性または金属キレート化親和性のうちの少なくとも1つを有していてもよい。例として、ヒドロキシアパタイト、または例えば亜鉛などのキレート化金属が挙げられる。イミノ二酢酸が亜鉛とキレートを生成できる。
結合剤は、チャージング、再チャージングまたは溶出のうちの少なくとも1つの機能を有していてもよい。チャージングは、多孔質材を投入して有効成分を放出することを含むことができる。多孔質材は、結合に使用できる非常に大きな不活性表面積を有していてもよい。再チャージングは、担体+治療薬を除去すること、および新たに「チャージされた」担体+治療薬を添加することを含んでもよい。
溶出は、副生成物、例えば除去可能な結合していない結合剤を含んでもよい。例えば、硝子体の拡散(栓流)によってpHなどの条件が変わり、治療薬+担体の相互作用が低減される。
さらに追加あるいは代替として、治療薬の徐放システムは、活性化される薬剤送達パケット、例えばミクロスフェアを有していてもよい。パケットは光化学活性化、熱活性化または生分解のうちの少なくとも1つで活性化できる。
治療デバイスは、安全措置を提供するよう構成された少なくとも1つの構造を有していてもよい。デバイスは、リザーバ本体内のマクロファージや他の免疫細胞;細菌侵入;または網膜剥離のうちの少なくとも1つを防ぐ少なくとも1つの構造を有していてもよい。
治療デバイスは、体内の他の適用箇所用に構成されてもよい。他の薬剤送達通路は、眼内、口腔内、皮下、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、皮膚、髄腔内、血管内、関節内、心膜、臓器の管腔内、および消化管などのうちの少なくとも1つが挙げられる。
ここに記載する薬剤送達デバイスおよび方法を用いて治療および/または予防できる症状は、下記の疾患の少なくとも1つが挙げられる;すなわち血友病および他の血液疾患、成長障害、糖尿病、白血病、肝炎、腎不全、HIV感染、セレブロシダーゼ欠損およびアデノシン・デアミナーゼ欠損などの遺伝病、高血圧、敗血性ショック、多発性硬化症、グレーブス病、全身性エリテマトーデス、リウマチ性関節炎などの自己免疫疾患、ショック性および消耗性疾患、嚢胞性線維症、乳糖不耐症、クローン病、炎症性腸疾患、消化器ガンまたは他のガン、変性疾患、外傷、貧血症などの複数の全身状態、並びに眼疾患、例えば網膜剥離、増殖網膜症、増殖糖尿病性網膜症、変性疾患、血管疾患、閉塞症、穿通性外傷で生ずる感染、内因/全身感染などの眼内炎、術後感染、後部ブドウ膜炎、網膜炎または脈絡膜炎などの炎症、新生物および網膜芽細胞腫などの腫瘍。
治療デバイス100によって送達可能な治療薬110の例が表1Aに記載されており、例えば、トリアムシノロンアセトニド、ビマトプロスト(ルミガン)、ラニビズマブ(ルセンティス)(商標)、トラボプロスト(トラバタン、アルコン社)、チモロール(チモプティック、メルク社)、レボブナロール(ベタガン、アラガン社)、ブリモニジン(アルファガン、アラガン社)、ドルゾラミド(トルソプト、メルク社)、ブリンゾラミド(エイゾプト、アルコン社)が挙げられる。治療デバイスによって送達可能な治療薬の他の例としては、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、セファレキシン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコールカナマイシン、リファンピシン、シプロフロキサシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシンおよびペニシリンなどの抗生物質;アムホテリシンBおよびミコナゾールなどの抗真菌薬;スルホンアミド、スルファジアジン、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルフィソキサゾール、ニトロフラゾンおよびプロピオン酸ナトリウムなどの抗菌薬;イドクスウリジン、トリフルオロチミジン、アシクロビル、ガンシクロビルおよびインターフェロンなどの抗ウイルス薬;クロモグリク酸ナトリウム、アンタゾリン、メタピリレン、クロルフェニラミン、ピリラミン、セチリジンおよびプロフェンピリダミンなどの抗アレルギー性薬;ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンアセテート、デキサメタゾン、デキサメタゾン21−リン酸塩、フルオシノロン、メドリゾン、プレドニゾロン、プレドニゾロン21−リン酸塩、プレドニゾロンアセテート、フルオロメトロン、ベタメタゾンおよびトリアムシノロンなどの抗炎症薬;サリチル酸塩、インドメタシン、イブプロフェン、ジクロフェナク、フルルビプロフェンおよびピロキシカムなどの非ステロイド性抗炎症薬;フェニレフリン、ナファゾリンおよびテトラヒドロゾリンなどの充血緩和薬;ピロカルピン、サリチル酸塩、塩化アセチルコリン、フィゾスチグミン、エゼリン、カルバコール、フルオロリン酸ジイソプロピル、フォスフォリンアイオダイドおよび臭化デメカリウムなどの縮瞳薬および抗コリンエステラーゼ薬;硫酸アトロピン、シクロペントレート、ホマトロピン、スコポラミン、トロピカミド、ユーカトロピンおよびヒドロキシアンフェタミンなどの散瞳薬;エピネフリンなどの交感神経作用薬;カルムスチン、シスプラチンおよびフルオロウラシルなどの抗悪性腫瘍薬;ワクチンおよび免疫賦活薬などの免疫薬;エストロゲン、エストラジオール、プロゲステロン様、プロゲステロン、インスリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモンおよびペプチドおよび視床下部放出因子のバソプレッシンなどのホルモン剤;マレイン酸チモロール、レボブノロール塩酸塩およびベタキソロール塩酸塩などのβアドレナリン受容体ブロッカー;上皮成長因子、線維芽細胞増殖因子、血小板由来性増殖因子、トランスフォーミング増殖因子β、ソマトトロピンおよびフィブロネクチンなどの増殖因子;ジクロルフェナミド、アセタゾラミドおよびメタゾラミドなどの炭酸脱水酵素阻害剤、並びにプロスタグランジン、抗プロスタグランジンおよびプロスタグランジン前駆体などの他の薬剤が挙げられる。ここに記載するように眼内へ制御放出、徐放が可能な当業者に周知の他の治療薬も、本発明の実施態様に従って使用に好適である。
治療薬110は、下記の薬剤の1つ以上を含むことができる;アバレリックス、アバタセプト、アブシキシマブ、アダリムマブ、アルデスロイキン、アレファセプト、アレムツズマブ、α1−プロテイナーゼ阻害剤、アルテプラーゼ、アナキンラ、アニストレプラーゼ、抗血友病因子、抗胸腺細胞グロブリン、アプロチニン、アルシツモマブ、アスパラギナーゼ、バシリキシマブ、ベカプレルミン、ベバシズマブ、ビバリルジン、ボツリヌス毒素タイプA、ボツリヌス毒素タイプB、カプロマブ、セトロレリクス、セツキシマブ、コリオゴナドトロピンα、凝固因子IX、凝固因子VIIa、コラゲナーゼ、コルチコトロピン、コシントロピン、シクロスポリン、ダクリズマブ、ダルベポエチンα、デフィブロチド、デニロイキンジフチトクス、デスモプレシン、ドルナーゼα、ドロトレコギンα、エクリズマブ、エファリズマブ、エンフビルチド、エポエチンα、エプチフィバチド、エタネルセプト、エクセナチド、フェリプレシン、フィルグラスチム、フォリトロピンβ、ガルスルファーゼ、ゲムツズマブオゾガマイシン、グラチラマーアセテート、グルカゴン(遺伝子組換え)、ゴセレリン、ヒト血清アルブミン、ヒアルロンダーゼ、イブリツモマブ、イデュルスルファーゼ、免疫グロブリン、インフリキシマブ、インスリングラルギン(遺伝子組換え)、インスリンリスプロ(遺伝子組換え)、インスリン(遺伝子組換え)、ブタインスリン、インターフェロンα−2a(遺伝子組換え)、インターフェロンα−2b(遺伝子組換え)、インターフェロンアルファコン−1、インターフェロンα−n1、インターフェロンα−n3、インターフェロンβ−1b、インターフェロンγ−1b、レピルジン、ロイプロリド、ルトロピンα、メカセルミン、メノトロピン、ムロモナブ、ナタリズマブ、ネシリチド、オクトレオチド、オマリズマブ、オプレルベキン、OspAリポタンパク質、オキシトシン、パリフェルミン、パリビズマブ、パニツムマブ、ウシペガデマーゼ、ペガプタニブ、ペグアスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペグインターフェロンα−2a、ペグインターフェロンα−2b、ペグビソマント、プラムリンチド、ラニビズマブ、ラスブリカーゼ、レテプラーゼ、リツキシマブ、サケカルシトニン、サルグラモスチム、セクレチン、セルモレリン、ヨウ化血清アルブミン、ソマトロピン(遺伝子組換え)、ストレプトキナーゼ、テネクテプラーゼ、テリパラチド、チロトロピンα、トシツモマブ、トラスツズマブ、ウロフォリトロピン、ウロキナーゼ、またはバソプレッシン。これらの治療薬の分子の分子量および適応症は以下の表1Aに掲げられている。
治療薬110は、細胞タンパク質のイムノフィリンファミリーの結合メンバーによって作用する化合物の1つ以上を有していてもよい。このような化合物は「イムノフィリン結合化合物」として公知である。イムノフィリン結合化合物は化合物の「リムス」ファミリーを含むが、これに限定されるものではない。使用可能なリムス化合物の例は、シロリムス(ラパマイシン)およびその水溶性類似体のSDZ−RAD、タクロリムス、エベロリムス、ピメクロリムス、CCI−779(ワイエス社)、AP23841(アリアド社)、並びにABT−578(アボット・ラボラトリーズ社)を含むシクロフィリンおよびFK506結合タンパク質(FKBPs)を含むが、これらに限定されるものではない。
リムスファミリーの化合物は、脈絡膜新血管形成を含む、新血管生成が介在する眼の疾患および症状の治療、予防、抑制、発生の遅延、または退行の誘因用の組成物、デバイスおよび方法に用いることができる。リムスファミリーの化合物は、滲出性AMDを含むAMDの予防、治療、抑制、発生の遅延、または退行の誘因用に用いることができる。ラパマイシンは、脈絡膜新血管形成を含む、新血管生成が介在する眼の疾患および症状の予防、治療、抑制、発生の遅延、または退行の誘因用に用いることができる。ラパマイシンは、滲出性AMDを含むAMDの予防、治療、抑制、発生の遅延、または退行の誘因用に用いることができる。
治療薬110は、ピロリジン;ジチオカルバミン酸塩(NF−κB阻害剤);スクアラミン;TNP類似体およびフマギリン;PKC(プロテインキナーゼC)阻害剤;Tie−1およびTie−2キナーゼ阻害剤;VEGF受容体キナーゼの阻害剤;ベルケード(商標)(注射用ボルテゾミブ)などのプロテオソーム阻害剤;ラニビズマブ(ルセンティス(商標))および同一標的指向の他の抗体;ペガプタニブ(マクジェン(商標));ビトロネクチン受容体アンタゴニスト、例えばビトロネクチン受容体タイプインテグリンの環状ペプチドアンタゴニスト;α−v/β−3インテグリンアンタゴニスト;α−v/β−1インテグリンアンタゴニスト;ロシグリタゾンまたはトログリタゾンなどのチアゾリジンジオン;γ−インターフェロン、またはデキサトランおよび金属配位を用いてCNVに標的化したインターフェロンを含むインターフェロン;色素上皮由来因子(PEDF);エンドスタチン;アンジオスタチン;ツミスタチン;カンスタチン;酢酸アネコルタブ;アセトニド;トリアムシノロン;テトラチオモリブデート;VEGF発現を標的にするリボザイムを含む血管新生因子のRNAサイレンシングまたはRNA干渉(RNAi);アキュテイン(商標)(13−シスレチノイン酸);キノプリル、カプトプリル、およびペリンドズリルを含むがこれらに限定されないACE阻害剤;mTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質)の阻害剤;3−アミノサリドマイド;ペントキシフィリン;2−メトキシエストラジオール;コルヒチン;AMG−1470;ネパフェナク、ロフェコキシブ、ジクロフェナク、ロフェコキシブ、NS398、セレコキシブ、ビオックス、および(E)−2−アルキル−2(4−メタンスルホニルフェニル)−1−フェニルエテンなどのシクロオキシゲナーゼ阻害剤;t−RNAシンターゼモジュレーター;メタロプロテアーゼ13阻害剤;アセチルコリンエステラーゼ阻害剤;カリウムイオンチャネルブロッカー;エンドレペリン;6−チアグアニンのプリン類似体;環状ペルオキシドANO−2;アルギニンデイミナーゼ(遺伝子組換え);エピガロカテキン−3−ガレート;セリバスタチン;スラミンの類似体;VEGFトラップ分子;アポトーシス阻害剤;光線力学療法(PDT)で使用可能なビスダイン(商標)、snET2および他の感光薬;肝細胞増殖因子の阻害剤(増殖因子に対する抗体またはその受容体、c−Metチロシンキナーゼの小分子阻害剤、HGFの短縮型例えばNK4)のうちの1つ以上を有していてもよい。
治療薬110は、血管新生または新血管生成、特にCNVの治療用に有用な治療薬および治療法を含むがこれに限定されない他の治療薬および治療法との組み合わせを有していてもよい。このような追加的治療薬および治療法の例として、限定することなく、ピロリジン;ジチオカルバミン酸塩(NF−κB阻害剤);スクアラミン;TNP470類似体およびフマギリン;PKC(プロテインキナーゼC)阻害剤;Tie−1およびTie−2キナーゼ阻害剤;VEGF受容体キナーゼの阻害剤;ベルケード(商標)(注射用ボルテゾミブ)などのプロテオソーム阻害剤;ラニビズマブ(ルセンティス(商標))および同一標的指向の他の抗体;ペガプタニブ(マクジェン(商標));ビトロネクチン受容体アンタゴニスト、例えばビトロネクチン受容体タイプインテグリンの環状ペプチドアンタゴニスト;α−v/β−3インテグリンアンタゴニスト;α−v/β−1インテグリンアンタゴニスト;ロシグリタゾンまたはトログリタゾンなどのチアゾリジンジオン;γ−インターフェロン、またはデキサトランおよび金属配位を用いてCNVに標的化したインターフェロンを含むインターフェロン;色素上皮由来因子(PEDF);エンドスタチン;アンジオスタチン;ツミスタチン;カンスタチン;酢酸アネコルタブ;アセトニド;トリアムシノロン;テトラチオモリブデート;VEGF発現を標的にするリボザイムを含む血管新生因子のRNAサイレンシングまたはRNA干渉(RNAi);アキュテイン(商標)(13−シスレチノイン酸);キノプリル、カプトプリル、およびペリンドズリルを含むがこれらに限定されないACE阻害剤;mTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質)の阻害剤;3−アミノサリドマイド;ペントキシフィリン;2−メトキシエストラジオール;コルヒチン;AMG−1470;ネパフェナク、ロフェコキシブ、ジクロフェナク、ロフェコキシブ、NS398、セレコキシブ、ビオックス、および(E)−2−アルキル−2(4−メタンスルホニルフェニル)−1−フェニルエテンなどのシクロオキシゲナーゼ阻害剤;t−RNAシンターゼモジュレーター;メタロプロテアーゼ13阻害剤;アセチルコリンエステラーゼ阻害剤;カリウムイオンチャネルブロッカー;エンドレペリン;6−チアグアニンのプリン類似体;環状ペルオキシドANO−2;アルギニンデイミナーゼ(遺伝子組換え);エピガロカテキン−3−ガレート;セリバスタチン;スラミンの類似体;VEGFトラップ分子;肝細胞増殖因子の阻害剤(増殖因子に対する抗体またはその受容体、c−Metチロシンキナーゼの小分子阻害剤、HGFの短縮型例えばNK4);アポトーシス阻害剤;光線力学療法(PDT)とビスダイン(商標)、snET2および他の感光薬;並びにレーザー光凝固術が挙げられる。
治療薬は、例えば、デンプン、ゼラチン、糖、アカシアなどの天然ゴム、アルギン酸ナトリウムおよびカルボキシメチルセルロースなどの固体;シリコーンゴムなどのポリマー;蒸留水、生理食塩水、ブトウ糖、水または生理食塩水中のブドウ糖などの液体;ヒマシ油とエチレンオキシドの縮合物、低分子量脂肪酸の液体グリセリル・トリエステル;低アルカノール;脂肪酸のモノグリセリド若しくはジグリセリドまたはレシチン、ポリソルベート80などのホスファチドなどの乳化剤を有する、コーン油、ピーナッツ油、ゴマ油、ヒマシ油などの油;グリコールおよびポリアルキレン・グリコール;例えば、カルボキシルメチル・セルロース・ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ポリ(ビニルピロリドン)および類似の化合物などの懸濁化剤を単独またはレシチン、ステアリン酸ポリエチレングリコールなどの好適な調薬助剤とともに含む水媒体などの薬学的に許容される担体と併せて使用してもよい。担体は、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤または他の関連する材料などのアジュバントも含んでいてよい。
治療デバイスは少なくとも1つの治療薬を保持するよう構成された容器を有していてもよく、容器は前記少なくとも1つの治療薬を保持するチャンバを備え、前記少なくとも1つの治療薬を硝子体液中へ放出するための少なくとも1つの開口とこの少なくとも1つの開口内に配置された多孔質構造体150が設けられる。多孔質構造体150は、前記少なくとも1つの治療薬の硝子体液への送達速度を制御する一定の蛇行率および多孔率を有する焼結金属、焼結ガラスまたは焼結ポリマーなどの規定の蛇行性および多孔質材料を備えてもよい。硬質多孔質構造体は、治療デバイスからの単一または複数の治療薬の放出を制御するメカニズムとして、毛細管、侵食性ポリマーおよび膜に対していくつかの利点を有する。これらの利点としては、硬質多孔質構造体が針停止部を含有できること、製造がより簡単で費用効果が高いこと、埋め込みの前後いずれで洗浄または目詰まり除去のために洗い流せること、構造体内の不規則な通路による迷路が微生物を高効率深層ろ過すること、および膜または侵食性ポリマーマトリックスと比較して構造体の硬さや厚みが大きいため大変頑丈であることが挙げられる。また、硬質多孔質構造体が焼結金属、セラミック、ガラスまたはある種のプラスチックから製造される場合、熱あるいは放射線による滅菌およびパイロジェン除去など、ポリマー膜や他の膜を損傷する可能性のある滅菌処理および浄化処理を行うことができる。例9に例示するように、ある実施態様では、硬質多孔質構造体は、少なくとも6カ月間硝子体内の治療薬濃度を治療上有効に保つように構成することができる。所定の形態の硬質多孔質構造体が提供する放出プロファイルによって、デバイスが小型化でき、これは大型デバイスが視覚を変化あるいは低下させ得る眼などの小器官における使用に好適である。
図6A1は、第1の端部に配置されている貫通性隔壁184を有する容器130と、第2の端部に配置されて治療薬を長期間にわたって放出する多孔質構造体150と、容器から外方に突出して強膜および結膜に連結する延長部を備えた保持構造体120とを含む、治療デバイス100を示している。保持構造体の延長する突出部は、直径120Dを有する。保持構造体は、強膜を受容する大きさの凹部120Iを含んでいてもよい。容器は、リザーバの少なくとも一部分を画成する管状の隔壁160を含んでいてもよく、この容器は、例えば直径134などの幅を有する。直径134は、例えば約0.5mm〜約4mmの範囲内、例えば約1mm〜3mmの範囲内など、ある範囲内に設定することができ、例えば約2mmであってもよい。容器は、治療薬を硝子体中に放出するために結膜から硝子体に延出するように設定された長さ136を備えていてもよい。長さ136は、例えば約2mm〜約14mmの範囲内、例えば約4mm〜10mmの範囲内に設定することができ、例えば約7mmであってもよい。リザーバの容積は、管状構造の内断面積と、多孔質構造体から貫通性隔壁までの距離とによって実質的に決定される。保持構造体は、容器の直径より大きい保持構造体直径を有する環状の延長部を含んでいてもよい。保持構造体は、延長部が強膜と結膜との間に延出するときに強膜を受容するように構成される凹部を含んでいてもよい。貫通性隔壁は、容器の近位端に配置されるセプタムであってもよく、セプタムは、治療薬を注入するための針などの鋭利な物体で貫通可能な隔壁を備えている。多孔質構造体は、治療薬を長期間にわたって放出するような大きさの断面積150Aを備えてもよい。
多孔質構造体150は、リザーバに連結されている第1の側面150S1と、硝子体に連結されている第2の側面150S2を含んでいてもよい。第1の側面は、第1の面積150A1を含んでいてもよく、第2の側面は、第2の面積150A2を備えていてもよい。多孔質構造体は、厚さ105Tを備えていてもよい。多孔質構造体は、直径150Dを備えていてもよい。
リザーバ140の容積は、約5μL〜約2000μLの治療薬、例えば約10μL〜約200μLの治療薬を含んでいてもよい。
容器のリザーバに保管される治療薬は、治療薬を含む固体、治療薬を含む溶液、治療薬を含む懸濁液、治療薬を吸着している粒子、または治療薬に可逆的に結合している粒子のうちの少なくとも1つを含む。例えば、リザーバは、網膜の炎症を治療するためのトリアムシノロンアセトニドなどのコルチコステロイドの懸濁液を含んでいてもよい。リザーバは、緩衝液と、溶解度が約1μg/mL〜約100μg/mLの範囲内、例えば約1μg/mL〜約40μg/mLの治療薬の懸濁液を含んでいてもよい。例えば、治療薬は、埋め込み時に、37℃の緩衝液中の溶解度が約19μg/mLであるトリアムシノロンアセトニドの懸濁液を含んでいてもよい。
放出速度指数は、多様な値であってもよく、例えば多くの実施態様では、懸濁液の放出速度指数は、溶液のものよりもいくぶん高くなってもよい。治療薬を治療量で長期間にわたって放出するために、放出速度指数は、約5以下であってもよく、約2.0以下、例えば約1.5以下とすることができ、多くの実施態様では約1.2以下であってもよい。
例えば保持構造体および多孔質構造体を含む治療デバイスの大きさは、カテーテルの管腔を貫通するように設定されてもよい。
多孔質構造体は、針の貫通を制限する針停止部を含んでいてもよい。多孔質構造体は、治療薬を徐放するように構成された複数のチャネルを含んでいてもよい。多孔質構造体は、治療薬の徐放性に適した特徴を有する硬質の焼結材料を含んでいてもよい。
図6A2は、丸い遠位端を備える、図6Aと同様の治療デバイスを示す。
図6Bは、図6Aと同様な硬質多孔質構造体を示す。硬質多孔質構造体158は、複数の相互連結チャネル156を含む。多孔質構造体は、相互連結された物質粒子155からなる焼結材料を含む。相互連結された物質粒子が、多孔質物質を貫通し治療薬を放出するチャネルを画成する。チャネルが多孔質物質を貫通する相互連結チャネルを含むように、チャネルは焼結物質粒子の周りを延出してもよい。
硬質多孔質構造体は、多様な方法で治療薬を容器に注入するように構成することができる。硬質多孔質構造体のチャネルは、治療薬が圧力下でリザーバに注入される場合に実質的に固定されたチャネルを含んでいてもよい。硬質多孔質構造体は、約160ビッカース〜約500ビッカースの範囲内の硬度パラメータを有する。いくつかの実施態様では、硬質多孔質構造体が焼結ステンレス鋼から形成され約200ビッカース〜約240ビッカースの範囲内の硬度パラメータを含む。いくつかの実施態様では、治療デバイスのリザーバを流体で充填または補充する間、多孔質構造体を通して治療薬が排出するのを抑制することが好ましい。これらの実施態様では、溶液または懸濁液が治療デバイスのリザーバに注入されるとき、硬質多孔質構造体を通る上記の溶液または懸濁液の排出が実質的に抑制されるように、硬質多孔質構造体のチャネルは、30ゲージの針で注入された溶液または懸濁液の流れに対する抵抗を有する。さらに、リザーバの充填および補充を容易にするために、これらの実施態様は、真空下の排出孔または排出リザーバ、または両者を任意に含んでいてもよい。
リザーバおよび多孔質構造体は、多様な方法で治療量の治療薬を放出するように構成することができる。リザーバおよび多孔質構造体は、約3ヵ月以上の長期間にわたって硝子体液1mLあたり約0.1μg以上の濃度に対応する治療量の治療薬を放出するように構成することができる。リザーバおよび多孔質構造体は、約3ヵ月以上の長期間にわたって硝子体液1mLあたり約0.1μg以上約10μg以下の濃度に対応する治療量の治療薬を放出するように構成することができる。治療薬は、少なくとも抗体のフラグメントを含み、少なくとも約10kダルトン(Dalton)の分子量であってもよい。例えば、治療薬は、ラニビズマブまたはベバシズマブのうちの1つ以上を含んでいてもよい。代替あるいは併用して、治療薬は、徐放に適した小分子薬を含んでいてもよい。リザーバおよび多孔質構造体は、約3ヵ月以上または約6ヵ月以上の長期間にわたって硝子体液1mLあたり約0.1μg以上約10μg以下の濃度に対応する治療量の治療薬を放出するように構成することができる。リザーバおよび多孔質構造は、約12ヵ月以上、または約2年以上、あるいは約3年以上の長期間にわたって硝子体液1mLあたり約0.1μg以上約10μg以下の濃度に対応する治療量の治療薬を放出するように構成することができる。リザーバおよび多孔質構造は、約3ヵ月以上、または6ヵ月、あるいは12ヵ月、または24ヵ月の長期間にわたって硝子体液1mLあたり約0.01μg以上約300μg以下の濃度に対応する治療量の治療薬を放出するように構成することができる。
硬質多孔質構造体のチャネルは、硬質多孔質構造体のチャネルを通過する分子のサイズを制限するように構成したヒドロゲルを含む。例えば、ヒドロゲルは、チャネル内に形成されることができ、アクリルアミド・ゲルであってもよい。ヒドロゲルは、少なくとも約70%の含水率を有する。例えば、治療薬の分子量を約30kダルトンに制限するために、ヒドロゲルの含水率を約90%以下にしてもよい。治療薬の分子量を約100kダルトンに制限するために、ヒドロゲルの含水率を約95%以下にしてもよい。多孔質物質のチャネルがルセンティス(商標)を通過させ、実質的にアバスチン(商標)を通過させないように構成されるよう、ヒドロゲルの含水率を約90%〜約95%の範囲内にしてもよい。
硬質多孔質構造体は、広範囲の異なる形状および形態に容易に形成することができる複合多孔質材を備えてもよい。例えば、多孔質材は、貫通孔が焼結粉末またはエアロゲルで含浸されている、金属、エアロゲル、またはセラミック発泡体の複合体(すなわち、構造体の容積を貫通する細孔の集合体を設けるために内部の空孔が相互に接続され、空孔の壁は実質的に連続していて非多孔性であり、空孔の壁を形成する物質の容積に対する空孔の容積の比は、連続空孔構造体の全密度が理論的密度の約30%未満となるように決定されている、網目状連続空孔構造体)であってもよい。得られる多孔質複合体の厚さ、密度、多孔率、および多孔特性は、所望の治療薬放出に適合するように変更可能である。
実施態様は、一体的な(すなわち単一構成要素の)多孔質構造体を作成する方法を含む。この方法は、所望の形状の多孔質構造体に対応するモールドに粒子を導入することを含んでもよい。その形状は、リザーバに連結する複数の多孔質チャネル近位開口を画成する近位端と、眼の硝子体液に連結する複数のチャネル出口開口を画成する遠位端と、近位開口からフィルタの中へ延出する複数の閉鎖された入口キャビティと、チャネル出口開口から多孔質構造体の中へ延出する複数の閉鎖された出口キャビティとを含む。この方法は、圧力をモールドに印加し、それによって、粒子が凝集して単一の構成要素を形成することと、その構成要素を焼結して多孔質構造体を形成することとをさらに含む。粒子は、ポリマーバインダを用いずに、圧縮され凝集して構成要素を形成することができ、多孔質構造体は、実質的に機械加工せずに形成することができる。
モールドは、開口した他端を上方に向けて垂直に配置することができ、20マイクロメートル未満の粒径を有する金属粉体をモールドの開口端部を通してキャビティに導入するが、このとき金属粉体をキャビティに実質的に均一に充填するためにモールドを振動することができる。モールドの開口他端に蓋をして、モールドに圧力を加え、それによってキャビティ内の金属粉体にも圧力を加えて金属粉を凝集することで、モールドに対応する形状を有するカップ形状の粉末状金属構造体を形成できる。成形された粉末状金属構造体をモールドから取り除き焼結して、多孔質焼結金属の多孔質構造体を得ることができる。
多孔質構造体と強く嵌合するようにに構成された開口を有する不透過性構造体に圧入することによって、金属性の多孔質構造体をデバイスに組み込むことができる。当業者に知られている溶接などの他の手段を使用して、多孔質構造体をデバイスに組み込むことも可能である。代替あるいは併用して、モールドの一部分が成形後の粉末状金属構造体に残留しデバイスの一部となるモールドを使用して、粉末状金属構造体を形成することができる。この方法は、多孔質構造体とデバイスとの密閉を良好にするのに有利であろう。
焼結多孔質金属構造体や多孔質ガラス構造体などの多孔質体を通る治療薬の放出速度は、チャネル・パラメータを使用した多孔質構造体内の治療薬の拡散により記載されてもよく、有効拡散係数は、リザーバを充填する液体中の治療薬の拡散係数に多孔質体の多孔率およびチャネル・パラメータを乗算したものとなる。すなわち、
放出速度=(DP/F)A(c−c)/L
但し、
=リザーバ内の濃度
=リザーバ外、すなわち硝子体内の濃度
D=リザーバ溶液中の治療薬の拡散係数
P=多孔質構造体の多孔率
F=多孔質構造体のチャネルの蛇行パラメータに対応し得るチャネル・パラメータ
A=多孔質構造体の面積
L=多孔質構造体の厚さ(長さ)
累積放出率=1−c/cR0=1−exp((−DPA/FLV)t)
但し、t=時間、Vr=リザーバ容積
放出速度指数(以下、RRI)は、治療薬の放出を決定するのに使用される。RRIは(PA/FL)で定義されてもよく、ここでRRI値は、特に明記しない限り、mmの単位を有する。ここに記載される治療送達デバイスで使用される多数の多孔質構造体は、RRIが約5.0以下、多くの場合約2.0以下であり、約1.2mm以下であってもよい。
チャネル・パラメータは、多孔質構造体を通って放出される治療薬の通路の伸長率に対応することができる。多孔質構造体は、多数の相互連結チャネルを含んでいてもよく、チャネル・パラメータは、治療薬が放出されたときに多孔質構造体の相互連結チャネルに沿ってリザーバ側から硝子体側に移動する有効長さに対応することができる。チャネル・パラメータに多孔質構造体の厚さ(長さ)を乗算することで、治療薬が相互連結チャネルに沿ってリザーバ側から硝子体側まで移動する有効長さを求めることができる。例えば、チャネル・パラメータ(F)が約1.5の相互連結チャネルは、治療薬が移動する有効長さを約50%増加させ、厚さ1mmの多孔質構造体の場合、治療薬が相互連結チャネルに沿ってリザーバ側から硝子体側まで移動する有効長さは、約1.5mmとなる。チャネル・パラメータ(F)が約2以上の相互連結チャネルは、治療薬が移動する有効長さを約100%増加させ、厚さ1mmの多孔質構造体の場合、治療薬が相互連結チャネルに沿ってリザーバ側から硝子体側まで移動する有効長さは、約2.0mm以上となる。多孔質構造体は、治療薬を放出するための多様な代替通路を提供する多数の相互連結チャネルを含むので、一部のチャネルが閉塞しても、代替の相互連結チャネルが利用可能であり、多孔質構造体を通る有効通路長さは実質的に変化せず、その結果、一部のチャネルが閉塞しても、多孔質構造体を通る拡散速度および治療薬の放出は実質的に維持されることになるる。
リザーバ溶液が水溶液であるか、または水と同様の粘度を有する場合、対象となる温度での水中の治療薬(TA)の拡散係数の値を使用することができる。下記の式を使用して、20℃の水中で測定したウシ血清アルブミンの拡散係数DBSA,20C=6.1e−7cm/sを使用して37℃での拡散係数を推定することが可能である(Molokhia et al., Exp Eye Res 2008)。
TA,37C=DBSA,20C=(η20C/η37C)(MWBSA/MWTA1/3
但し、MWは、BSAまたはテスト化合物の分子量を表し、ηは水の粘度である。以下に、対象となるタンパク質の拡散係数の一覧を示す。
小分子は、フルオレセインと同様の拡散係数を有する(MW=330、D=4.8〜6e−6cm/s、Stay, MS et al., Pharm Res, 2003, 20(1), pp.96-102)。例えば、小分子には、分子量が約435のトリアムシノロンアセトニドなどの糖質コルチコイドが含まれる。
多孔質構造体は、長期間にわたって治療量を放出するように構成された多孔率と、厚さと、チャネル・パラメータと、表面積とを有する。多孔質物質の多孔率は、その物質内を延出するチャネルの空隙部の割合に対応するものでもよい。多孔率は、約3%〜約70%の範囲内の値である。他の実施態様では、多孔率は、約5%〜約10%、約10%〜約25%、あるいは例えば約15%〜約20%範囲内の値である。多孔率は、重量およびマクロな体積から求めることができ、あるいは窒素ガスの吸着により測定することができる。
多孔質構造体は、複数の多孔質構造体を含んでいてもよく、上記の式で使用される面積は、複数の多孔質構造体の合計面積であってもよい。
チャネル・パラメータは、チャネルの蛇行率に対応する近似パラメータを含んでいてもよい。表面パラメータである公知の多孔率、表面積および厚さに対して、チャネルの蛇行率に対応できる曲線近似パラメータFを実験測定値に基づいて求めることができる。所望の徐放性プロファイルを決定するのに、パラメータPA/FLを使用することができ、P、A、FおよびLの値はそれぞれ決定することができる。治療薬の放出速度は、チャネル・パラメータに対する多孔率の比に対応し、多孔質構造体が長期間にわたって治療薬を放出するためには、チャネル・パラメータに対する多孔率の比が約0.5未満であることができる。例えば、多孔質構造体が長期間にわたって治療薬を放出するためには、チャネル・パラメータに対する多孔率の比は、約0.1未満であるか、または例えば約0.2未満である。チャネル・パラメータは、約1以上、例えば約1.2以上の値をであってもよい。例えば、チャネル・パラメータ値は、約1.5以上、たとえ約2以上を含んでいてもよく、約5以上を含んでいてもよい。チャネル・パラメータは、約1.1〜約10の範囲内、例えば約1.2〜約5の範囲内であってもよい。当業者は、ここに記載される教示に基づいて実験を行い、治療薬を所望の放出速度プロファイルで放出するチャネル・パラメータを経験的に決定することができる。
モデルにおける面積は、移動する質量を流束の単位で表すこと、すなわち、単位面積あたりの質量移動速度に由来する。厚さの等しい不透過性スリーブに装着された多孔質ディスクなどの簡単な形状の場合、面積はディスクの1つの面に対応し、厚さLはディスクの厚さである。円錐台の形をした多孔質体などのより複雑な形状の場合、有効面積は、治療薬が多孔質体に入る部分の面積と治療薬が多孔質体から出る部分の面積との中間の値となる。
リザーバ中の濃度の変化を上述の放出速度と関連づけることによって、時間の関数として放出速度を記述できるモデルを導出することができる。このモデルは、治療薬の溶液の濃度がリザーバの中で均一であることを想定している。さらに、レシーバ液すなわち硝子体中の濃度は無視できるものとみなしている(c=0)。微分方程式を解いて整理することによって、リザーバ内の溶液から多孔質構造体を通る治療薬の放出に関して、リザーバ中の濃度を時間tおよびリザーバの容積Vの関数として記述する以下の式が得られる。
=cR0exp((−D PA/FL V)t)
累積放出=1−c/cR0
リザーバが懸濁液を含む場合、リザーバ中の濃度cは、固体と平衡状態にある溶解濃度(すなわち治療薬の溶解度)である。この場合、リザーバ中の濃度は、時間の経過に関して一定であり、放出速度はゼロ次となり、累積放出は、固体がなくなるまで時間とともに直線的に増大する。
多数の眼用治療薬の治療濃度は、治療効果が発揮される硝子体液中の濃度を測定することによって実験的に求めることができる。したがって、放出速度の予測を硝子体液中の濃度の予測に拡大適用することは有用である。治療薬の眼の組織からの消失の記述には、1−コンパートメント・モデルを使用してもよい。
ルセンティス(商標)などの治療薬の現行の硝子体内投与は、ボーラス注入により行われる。硝子体へのボーラス注入は、速度定数k=0.693/半減期、およびcmax=用量/Vとして、単一指数関数としてモデル化できる(但し、Vは硝子体の容積)。一例として、ラニビズマブの半減期は、ウサギおよびサルでは約3日であり(Gaudreault et al.)、ヒトでは9日である(ルセンティス(商標)の添付文書)。硝子体容積は、ウサギおよびサルでは約1.5mLであり、ヒトの眼では4.5mLである。モデルは、サルの眼にルセンティス(商標)0.5mgをボーラス注入した場合の初期濃度が333μg/mLであることを予測している。この濃度は、約1ヵ月後に硝子体中濃度0.1μg/mLまで減衰する。
徐放デバイスでは、硝子体中の濃度は時間とともにゆっくりと変化する。この場合、デバイスからの放出速度(上記の式によって記述される)を眼からの消失速度kcと等しいとする質量バランスから、モデルを導出することができる。式を整理して、硝子体中の濃度に関する以下の式が得られる。
=デバイスからの放出速度/kV
治療薬の溶液を含有するデバイスからの放出速度は時間とともに指数関数的に減少するので、硝子体中の濃度も同じ速度定数で指数関数的に減少する。換言すれば、硝子体中の濃度がDPA/FLVに等しい速度定数で減少することになり、すなわち、多孔質構造体の特性およびリザーバの容積に依存していることになる。
治療薬の懸濁液を含有するデバイスからの放出速度がゼロ次であるので、硝子体中の濃度も時間に依存しないであろう。放出速度は、比率PA/FLを介して多孔質構造体の特性に依存することになるが、薬剤がなくなるときまではリザーバの容積には依存しないことになる。
所望量の治療薬を放出するために、硬質多孔質構造体のチャネルのサイズを多様な方法で設定することが可能である。例えば、分子量が約100ダルトン以上、例えば約50kダルトン以上の分子を含む治療薬を通過させるように、硬質多孔質構造体のチャネルのサイズを設定することが可能である。断面サイズが約10nm以下の分子を含む治療薬を通過させるように、硬質多孔質構造体のチャネルのサイズを設定することが可能である。硬質多孔質構造体のチャネルは、相互連結チャネル同士の間を治療薬が通過するよう構成された相互連結チャネルを含む。硬質多孔質構造体は、硬質材料の粒子からなり、相互連結チャネルは、治療薬が多孔質物質体を通過するように硬質材料の粒子の周りを少なくとも部分的に延出する。硬質材料の粒子は、付着位置で相互に連結することができ、相互連結チャネルが付着位置の周りを少なくとも部分的に延出する。
多孔質構造体およびリザーバは、網膜−脈絡膜の炎症を抑制するために、約0.05μg/mL〜約4μg/mL、例えば0.1μg/mL〜約4μg/mLの範囲内のin situ濃度に対応する糖質コルチコイドの治療量で、約6ヵ月以上の長期間にわたって糖質コルチコイドを放出するように構成してもよい。
多孔質構造体は焼結材料を含む。焼結材料は、平均粒径が約20μm以下の材料粒子を含んでいてもよい。例えば、焼結材料は、平均粒径が約10μm以下、平均粒径が約5μm以下、または平均粒径が約1μm以下の材料粒子を含んでいてもよい。チャネルのサイズは、焼結材料の粒径と、圧縮力、圧縮時間、炉内温度などの処理パラメータとに基づいて、治療量の治療薬を長期間にわたって焼結材料を通過させるように設定される。チャネルのサイズは、バクテリアおよび菌類胞子を含む微生物が焼結材料を通って侵入するのを阻止するように設定することができる。
焼結材料は、材料のチャネル内における気泡を抑制する湿潤性材料を含む。
焼結材料は、金属、セラミック、ガラス、またはプラスチックのうちの少なくとも1つを含む。焼結材料は焼結複合材料でもよく、複合材料は、金属、セラミック、ガラス、またはプラスチックのうちの2つ以上を含む。金属は、Ni、Ti、ニチノール、例えば304、304L、316、または316Lなどの合金を含むステンレス鋼、コバルトクロム、エルジロイ、ハステロイ、c−276合金、またはニッケル200合金のうちの少なくとも1つを含む。焼結材料は、セラミックを含んでいてもよい。焼結材料は、ガラスを含んでいてもよい。プラスチックは、チャネル内の気泡形成を抑制する湿潤性コーティングを含んでいてもよく、プラスチックは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、またはポリアミドのうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。
硬質多孔質構造体は、リザーバに連結されており、治療薬を長期間にわたって放出するよう構成された複数の硬質多孔質構造体を含んでいてもよい。例えば、追加の硬質多孔質構造体が容器に沿って配置されてもよく、例えば、容器の端部が多孔質構造体を含んでいてもよく、追加の多孔質構造体が容器の遠位部分に沿って、例えば容器の管状側壁に沿って配置されてもよい。
治療デバイスは、治療薬のボーラス注入に基づいて、最小阻止濃度を超える治療量の治療薬を長期間にわたって放出するように調整可能である。例えば、リザーバのチャンバの容積は、ボーラス注入の容積に基づいて、多孔質構造体の放出速度に対して設定することができる。例えば、公知の硝子体内注入製剤を、治療薬の製剤として提供することができる。製剤が各ボーラス注入の間隔に相当する眼の治療可能期間を有するので、治療薬はボーラス注入を続けることによって眼を治療することができるであろう。例えば、ボーラス注入は、1ヶ月ごとに注入されることができる。各ボーラス注入は、例えば50μLの製剤の容積を含む。治療薬の各ボーラス注入により、注入と注入の間の期間、硝子体液中の治療薬を治療濃度の範囲に保つことができるが、前記デバイスでも、デバイスから放出される治療薬の硝子体中濃度が対応するボーラス注入の治療濃度の範囲内にあるように、治療量の治療薬を放出するように調整することが可能である。例えば、治療薬は、眼を治療するための最小阻止濃度が例えば約3μg/mL以上であり、治療濃度の範囲は約3μg/mL以上となる。治療デバイスは、1ヶ月分の容積の製剤を、例えば貫通性隔壁を通してデバイスに注入することで眼を治療するように構成可能である。容器のリザーバは、例えば35μLの容積の治療薬を収容するチャンバと、チャンバから硝子体液へ治療薬を放出する機構とを有する。
硝子体液内の治療薬の濃度が治療濃度の範囲内にありかつ最小阻止濃度以上であるように、ボーラス注入に対応する量を各回注入して治療範囲内の硝子体中濃度を有する治療薬で長期間にわたって眼の治療ができるように容器の容積および放出機構を調整することが可能である。長期間とは、対応するボーラス注入の期間の約2倍以上であってもよい。放出機構は、多孔質フリット、焼結多孔質フリット、透過性膜、半透過性膜、毛細管または蛇行チャネル、ナノ構造体、ナノチャネルまたは焼結ナノ粒子のうちの1つ以上を含む。例えば、多孔質フリットは、長期間にわたって治療薬を放出するための多孔率、断面積、および厚さを有することができる。容器リザーバの容積の大きさは、注入された製剤の容積に関して多様な方法で設定可能であり、注入された製剤の容積より大きくても、注入された製剤の容積より小さくても、あるいは注入された製剤の容積と実質的に同じであってもよい。例えば、患者の治療を即時に行うために、リザーバに注入される製剤の少なくとも一部分がリザーバを通過してボーラス注入となるように、容器の容積は製剤の容積以下してもよい。リザーバの容積を増大すると、注入時に多孔質構造体を通って眼に放出される製剤量は、リザーバ内の治療薬の有効成分濃度とともに減少するが、治療量の治療薬を長期間にわたって供給できるように放出速度指数を適宜増加させることができる。例えば、ルセンティス(商標)の1ヶ月分の注入に対応する注入容積で、約5ヵ月間以上、例えば6ヵ月間にわたって治療量を供給すべく、容器のリザーバの容積は、ボーラス注入に対応する容積よりも大きくすることができる。例えば、製剤が市販のルセンティス(商標)50μLであり、リザーバの容積が約100μLであり、リザーバに注入された50μLのルセンティス(商標)で、約3μg/mL以上の硝子体中の治療濃度を6ヵ月にわたって供給するであろう。
チャンバは、実質的に一定の容積であり、放出速度機構は、複数回の注入のうちの各注入で最小阻止濃度を超える治療薬を長期間にわたって放出し続ける実質的に硬質な構造体であってもよい。
注入の第1の部分は、製剤の注入時に放出機構を通過して患者を治療してもよく、製剤の第2の部分は、製剤の注入時にチャンバ内に収容することができる。
図6B−1は、図6Bと同様な多孔質構造体の第1の側面150S1から第2の側面150S2まで延出する相互連結チャネル156を示している。相互連結チャネル156は、第1の側面150S1にある第1の開口158A1、第2の開口158A2、第n番目の開口158ANに延出する。相互連結チャネル156は、第2の側面150S2にある第1の開口158B1、第2の開口158B2、第n番目の開口158BNに延出する。第1の側面にある複数のチャネルの開口のそれぞれは、第2の側面にある複数のチャネルの開口のそれぞれに接続されており、チャネルに沿って進む有効長さが厚さ150Tよりも大きくなっている。チャネル・パラメータは、約1.1〜約10の範囲内であってもよく、有効長さが厚さ150Tの約1.1〜10倍の範囲内になる。例えば、チャネル・パラメータが約1、多孔率が約0.2であれば、有効長さが厚さ150Tの約5倍以上に対応する。
図6B−2は、図6Bおよび図6B−1と同様な多孔質構造体の第1の側面150S1から第2の側面150S2まで延出する相互連結チャネルに沿った、治療薬の複数の通路を示している。複数の通路は、第1の側面から第2の側面まで延出する第1の通路156P1と、第1の側面から第2の側面まで延出する第2の通路156P2と、第1の側面から第2の側面まで延出する第3の通路156P3と、さらに多くの通路とを含む。第1の通路P1、第2の通路P2、および第3の通路P3のそれぞれの有効長さは実質的に同じであるので、第1の側面にある各開口から第2の側面にある相互連結した各開口へ治療薬を放出することができる。実質的に同じ通路長さは、焼結材料粒子および焼結材料の周りに延出するチャネルに関連しているであろう。多孔質構造体は、ランダムに配向して結合した材料粒子、圧縮した材料ビーズ、またはその組み合わせを含んでいてもよい。チャネル・パラメータは、焼結した材料粒子および対応する相互連結チャネルの構造、材料の多孔率、ならびにパーコレーション閾値と関連しているであろう。実施態様に関する研究は、チャネルが高度に相互連結するように、焼結粒子のパーコレーション閾値が多孔質フリット構造体の多孔率より低くてもよいことを示している。焼結材料粒子は、相互連結チャネルを提供することができ、ここに記載されるような所望の多孔率、チャネル・パラメータ、RRIを提供するように、その粒子を選択することが可能である。
チャネル・パラメータおよび第1の側面から第2の側面までの有効長さは、多様な方法で構成可能である。チャネル・パラメータは、1より大きく、有効長さが厚さ150Tの約1.2〜5.0倍の範囲内にあるように約1.2〜約5.0の範囲内であることができるが、チャネル・パラメータは5より大きくてもよく、約1.2〜10範囲内にあってもよい。例えば、有効長さが厚さ150Tの約1.3〜2.0倍となるように、チャネル・パラメータは約1.3〜約2.0であってもよい。例えば、実験では、有効長さが厚さ150Tの約1.4〜1.8倍、例えば厚さの約1.6倍となるように、チャネル・パラメータが約1.4〜約1.8であってもよいことが示された。これらの値は、材料の焼結粒子の周りのチャネルの通路に対応しており、例えば、圧縮した材料ビーズの周りのチャネルの通路に対応していてもよい。
図6B−3は、カバー156Bによる開口の閉塞と、図6Bおよび図6B−1と同様な多孔質構造体の第1の側面から第2の側面まで延出する相互連結チャネルに沿った、治療薬の複数の通路とを示す。複数の通路156PRは、第1の側面から第2の側面まで延出して、側面のうちの1つが部分的に覆われている場合でも流量が維持されるように、そのうちの1つの側面が覆われている第1の側面と第2の側面とを連結している。
図6B−4は、粒子156PBによる開口の閉塞と、図6Bおよび図6B−1と同様な多孔質構造体の第1の側面から第2の側面まで延出する相互連結チャネルに沿った、治療薬の複数の通路とを示す。複数の通路156PRは、第1の側面から第2の側面まで延出し、側面のうちの1つが部分的に覆われている場合でも流量が維持されるように、そのうちの1つの側面が覆われている第1の側面と第2の側面とを連結している。
図6B−5は、図6Bおよび図6B−1と同様な多孔質構造体の第1の側面から第2の側面まで延出する相互連結チャネルに沿った治療薬の複数の通路に対応する有効断面のサイズ150DEおよび面積150EFFを示す。チャネルが第1の側面および第2の側面で閉塞されたとき放出速度が実質的に維持できるように、相互連結チャネルの有効断面積は、第1の側面の開口と第2の側面の開口との間に配置されている多孔質構造体の内部断面積に対応する。
硬質多孔質構造体は、多様な方法で、例えば管状形状、円錐形状、ディスク形状および半球形状に形成・成型することができる。硬質多孔質構造体は、成型された硬質多孔質構造体であってもよい。成型された硬質多孔質構造体は、リザーバに連結され治療薬を長期間にわたって放出するように構成されたディスク体、らせん体、または管体のうちの少なくとも1つであってよい。
図6Cは、米国特許第5,466,233号に記載される強膜用鋲体601内に組み込まれた、図6Bと同様な硬質多孔質構造体を示す。強膜用鋲体は、頭部602と、中心部603と、杭部604とを含む。杭部は、リザーバ605と、上述のような硬質多孔質構造体606とを含んでいてもよい。多孔質構造体は、患者に挿入するように構成された鋭利な先端を有する円すい形構造体の成型物であってもよい。代替あるいは併用して、先端は丸くてもよい。
図6Eは、米国特許第5,972,369号に記載される徐放用薬剤送達デバイスに組み込まれた、図6Bと同様な複数の硬質多孔質構造体を示す。治療デバイスは、治療薬を収容するリザーバ613と、不透過性で非多孔性質の外面614とを備える。リザーバは、遠位端617まで延出する硬質多孔質構造体615に連結されている。硬質多孔質構造体は、遠位端に、治療薬を放出するための露出領域616を備え、不透過性で非多孔性の外面は遠位端まで延出していてもよい。
図6Dは、米国特許公開第2003/0014036A1号に記載される徐放用送達デバイスに組み込まれた、図6Bと同様な硬質多孔質構造体を示す。薬剤送達デバイスは、近位端に入口ポート608と、入口ポートに連結された中空の本体609とを含む。中空本体は、入口ポートに注入された溶液が中空本体からバルーン610まで通過することを可能とする多数の開口612を含む。バルーンは、注入ポートの反対側に配置されている遠位端611を含む。バルーンは、上述のような硬質多孔質構造体607を複数含む。複数の硬質多孔質構造体のそれぞれは、バルーンの内部に露出する第1の表面と、硝子体と接触するように構成される第2の表面とを含む。計算された面積は、上述のように複数の硬質多孔質構造体の合計面積であることができる。
図6Fは、米国特許第6,719,750号に記載される徐放性の非線形の本体部材618に組み込まれた、図6Bと同様な硬質多孔質構造体を示す。非線形部材は、らせん形状を有していてもよい。非線形部材は、近位端620でキャップ619に連結可能である。非線形部材は、リザーバ622を設けるために、治療薬で充填された管腔621を含んでいてもよい。多孔質構造体623は、治療薬を放出するために非線形部材の遠位端624に配置することが可能である。多孔質構造体は、非線形部材の追加の位置または代替の位置に設置されてもよい。例えば、キャップが強膜に対して配置されたとき硝子体液中に治療薬を放出するように、複数の多孔質構造体が、非線形部材に沿って、キャップと遠位端との間の位置に配置されてもよい。
図6Gは、実施態様による多孔質ナノ構造体を示す。多孔質構造体150は、多孔質構造体の第1の側面150S1から多孔質構造体の第2の側面150S2まで延出する複数の細長いナノチャネル156NCを含んでいてもよい。多孔質構造体150は、その上に孔が形成されている硬質の材料を含んでいてもよく、孔は、直径などの最大幅を含んでいてもよい。ナノチャネルの直径は、例えば幅約10nm〜幅約1000nm、またはそれ以上の寸法幅を含んでいてもよい。チャネルは、材料をエッチングすること、例えば材料をリソグラフィによりエッチングすることで形成されてもよい。チャネル・パラメータFが約1となり、パラメータ面積Aと厚さまたは長さLとが、チャネルの合計断面積と多孔質構造体の厚さまたは長さとに対応するように、チャネルが実質的に直線のチャネルであってもよい。
多孔質構造体150は、例えば焼結ナノ材料で形成された、相互連結ナノチャネルを含んでいてもよい。焼結ナノ材料は、ここに記載されたような複数の相互連結チャネルを形成するように焼結されたナノ粒子を含むことができ、ここに記載されるようなRRIを与えるのに適当な大きさのものから作ることができる。例えば、相互連結ナノチャネルを備える多孔質構造体150は、RRIが約0.001以上、例えばRRIが0.002であるような、ここに記載されるような低いRRI値を与えるように小さな断面積を有してもよい。例えば約5の高いRRIを与えるためには、相互連結チャネルを備える多孔質構造体150の断面積を大きくし、厚みを小さくすることができる。複数の相互連結チャネルを備える多孔質構造体150のRRIは、約0.001〜約5の範囲にある値、例えば約0.002〜約5であり、例えばここに記載された教示に基づいた焼結多孔質材料である。
ここに記載されるようなデバイス100への治療薬の注入は、眼に埋め込む前、あるいは治療デバイスが眼に埋め込まれた状態で行うことができる。
図7は、デバイスから材料を除去し、かつ治療薬702をデバイスに注入する注入器701に連結された治療デバイス100を示す。注入器は、使用済み媒体703を吸引し、注入器を新しい治療薬で補充する。治療薬が治療デバイスに注入される。使用済み媒体は、注入器の中に引き出される。注入器は、ストッパー機構704を含んでいてもよい。
注入器701は、治療薬702の製剤を収容する第1の容器702Cと、使用済み媒体703を受容する第2の容器703Cとを含んでもよい。実施態様に関する研究により、治療デバイスの容器リザーバからの材料を含む使用済み媒体703を除去することによって、例えばタンパク質などの凝集した治療薬からなる粒子などの粒子状物質を治療デバイスから除去することができることが示唆されている。使用済み媒体703がデバイス100の容器リザーバから注入器まで通過するように、針189は、第1の容器に連結されている第1の管腔と、第2の容器に連結されている第2の管腔とを備えた二重管腔針であってもよい。例えばベント弁などのバルブ703Vが、第2の管腔と第2の容器との間に配置可能である。バルブを開弁して治療薬を注入するときは、治療デバイス内の使用済み媒体の少なくとも一部分が製剤により置換されるように、治療デバイス100の容器リザーバからの使用済み媒体703が注入器の第2の容器へ通過する。バルブを閉弁して治療薬を注入するときは、治療薬の一部が治療デバイスのリザーバから眼の中へ通過する。例えば、リザーバ内にある材料が製剤の第1の部分により置換されるように、バルブを開弁して治療薬の製剤の第1の部分を治療デバイス100に注入することができ、その後、第1の部分の少なくとも一部が多孔質構造体を通って眼の中へ通過するように、バルブを閉弁して製剤の第2の部分を治療デバイス100に注入する。代替あるいは併用して、第2の部分を眼に注入するときに、注入製剤の第2の部分の一部が多孔質構造体を通過してもよい。バルブを閉弁して注入される製剤の第2の部分は、患者を即時に治療するために多孔質構造体を通って硝子体液中へ通過する製剤の容積に対応していてもよい。
針189は、例えば以下に示す図7A−2を参照しつつ記載される二重管腔針であってもよい。
図7Aは、デバイスへの材料の注入・除去を行う注入器701に連結された治療デバイス100を示す。注入器は、デバイスの容器に挿入するよう構成された二本針システムを有していてもよい。注入器は、第2の針706(ベント針)を通してデバイスから液体を抽出しながら、同時に第1の針705(注入針)を通して治療薬を注入してもよい。デバイスからの既存の材料の除去を容易にするために、注入針は、ベント針よりも長くかつ/またはより小さな直径を有していてもよい。既存の材料のデバイスから除去を容易にするために、ベント針は真空につながれていてもよい。
図7A−1は、実施態様による、多孔質フリット構造体を通して液体製剤を噴出させることでデバイスのリザーバ130を洗い流すために、針の遠位端をリザーバの近位端に位置決めする停止部189Sを備える注入針189に連結された貫通性隔壁を備えた治療デバイス100を示す図である。例えば、注入針は、針の先端から針の環状部分まで針の軸に沿って約0.5mmだけ延出する傾斜部を有する、一重管腔針であってもよい。停止部から先端までの針の長さと貫通性隔壁の厚さとによって定義され、約0.5mm〜約2mmの範囲内である停止距離189SDだけ針先がリザーバ中に延出するように、停止部のサイズが設定されかつ針の軸に沿って位置決めされる。リザーバは、治療デバイスの長さ軸に沿って、約4mm〜8mmの範囲内で延出することができる。約20μL〜約200μLの範囲内の、例えば約50μLの容積量の製剤液を、遠位端に配置された針先から治療デバイスに注入することができる。液体が多孔質構造体150を通って流出するように、リザーバの容積は治療薬の製剤の注入容積よりも少なくてもよい。例えば、リザーバの容積は、約20μL〜40μLの範囲内でもよく、治療薬の液状製剤の注入容積は、約40μL〜100μL、例えば約50μLであってもよい。
図7A−2は、リザーバ130内の液体を注入された製剤で置換するようにデバイスに材料を注入かつ除去するための注入器701の針189に連結された貫通性隔壁を備える治療デバイスを示す。針は、少なくとも1つの管腔を備えるが、同心性の二重管腔針189DLであってもよく、その遠位端が治療デバイスに治療薬の製剤を注入するための内側管腔に連結されており、近位ベント189Vが製剤注入時に液体を針に受容する。あるいは、ベントが、針の内側管腔の遠位端にある開口に対応していてもよく、外側管腔が、容器リザーバの近位部分に治療薬の製剤を注入するよう近位開口を備えていてもよい。
注入器の実施態様に関する研究によれば、上述のような注入機器および針を使用することで、少なくとも約80%、例えば90%以上の充填効率を得ることが示されている。
ベント189Vは、注入される製剤に対する流れ抵抗を有してもよく、多孔質構造体150も流れ抵抗を有してもよい。治療製剤をリザーバ・チャンバに入れたときにボーラス放出を抑制するために、ベント189Vの流れ抵抗は、多孔質構造体150の流れ抵抗よりも小さくすることができる。あるいは、注入器がここに記載されるようなボーラス注入を行ってもよい。
図7A−3は、可変形可視表示器189DSを示す。可変形可視表示器は、針が適切な深さ189SDに位置したことを可視表示器の変形により指示できるように、支持部、例えば停止部189Sに連結することができる。可視表示器は、シリンジなどの注入器と一緒に使用可能であり、歯組織、手術中の内部組織、眼の結膜などの眼組織などの様々な組織のうちの1つ以上への注入に使用可能である。針189は、例えば25GA以上の針、例えば30GA針などのシリコン針を使用することができる。
可視表示器189DSは、明るい色であって、シリコンなど軟質可変形材料から作成することができ、ショアA硬度が例えば約5〜約30であってもよい。組織に連結されたとき可変形インジケータが視認できるように、停止部189Sは暗色であってもよい。組織に接触する前の可変形インジケータ189DSは、第1の幅189DSW1を有する。
図7A−4は、眼の組織、例えば治療デバイス100の貫通性隔壁を覆って配置された結膜などの軟部組織に連結された可視表示器189DSを示す。組織表面に連結されたときに可変形インジケータが視認可能となるように、可視表示器は変形すると、第1の幅よりも大きい第2の幅189DSW2を有するようになる。そのような連結の可視表示は、医療提供者により正しい圧力が加えらたこと、また針の先端が組織の表面から所望の距離に配置されたことを確認するのに役立つであろう。
図7A−5は、注入前の力または深さのうちの1つ以上が不十分である可能性のある状態で注入器701が連結された治療デバイス100を示す。上記したように、治療デバイスは少なくとも何らかの流れ抵抗を与えることができ、可視表示器189DSは、作業者が注入への反力に対して十分な力を加えたときに指示することができる。また、混合率は、例えば治療デバイスを通るボーラス注入などの注入の精度に関係しており、治療薬の投与量を正確に送達できるように、約1mm以下より高い精度で針の先端を深さ189SDに配置することにより、注入の混合および/または置換量を一定にすることができる。
図7A−6は、注入前の力または深さのうちの1つ以上が不十分である可能性のある状態で注入器701が連結された治療デバイス100を示す図である。
図7A−7A〜図7A−9Bは、リザーバ内の液体の第1の所定量を治療薬製剤の容積で置換し、かつ、液体の第2の容積を多孔質フリット構造体を通して注入するために弁を閉じるようにピストンに連結されたプランジャーへの弁の摺動結合をを示す。図7A−7A、図7A−8A、および図7A−9Aは、第2の管腔189Bがチャンバ702Cの治療薬110をデバイス100の中へ注入するように二重管腔針189Lに連結された注入器701の第1の構成を示す。第2の容器703Cは、デバイス100の液体を置換するために、リザーバ容器のチャンバへ延出してデバイス100から液体を受容する第1の管腔189Aに連結されている。切換弁703Vは、例えば摺動部材などの第1の移動部材と、移動部材に閉塞、例えば被覆される開口からなる第2の部分とを備える。ピストン701Pはプランジャーによりデバイス100の方へ動かされ、切換弁703Vの摺動部材はプランジャーとピストンに連結されている。ピストンが所定量の液体と所定量の製剤を置換するために前進すると、治療薬110はチャンバ702C内に残存し、弁703の摺動部材が弁703Vの開口部材を被覆・閉塞する。弁703が閉弁した状態で、例えばボーラス注入量の治療薬がデバイス100から注出されるように、所定量の治療薬がデバイス100の中に注入される。デバイス100の中に注入された治療薬の製剤の一部は、長期間にわたる放出のためにデバイス100の中に保持される。
弁の移動部材は、例えばボール弁、スリーブ、ガスケット、孔を有するピストン、一方向圧力弁、ソレノイド、サーボなどの多様な部材のうちの1つ以上であってもよい。
図7A−10A〜図7A−10Bは、治療薬のデバイス100への注入時間がデバイス毎および注入毎に実質的に一定であるように、デバイスへの流量を約+/−50%以内、例えば約+/−25%以内に保持するための注入器の第1の構成を示す。例えば、放出速度指数は、約0.5未満、例えば約0.1未満、例えば約0.05未満であるので、実質的に一定の容積の治療デバイスを満たす量を注入するのにかかる時間は、放出速度指数に反比例することになる。
注入器701は、例えばバネを使用して、デバイスへの流量を維持し、最大流量を制限する機構を備える。機構は、機械式機構、電気式機構、空気圧式機構、水圧式機構、またはこれらの組み合わせのうちの1つ以上からなる。機械式機構を示すが、上記のどの機構でも、同様の結果が得られるであろう。
視認可能なインジケータ189DSを使用して、眼に埋め込まれた治療デバイスに注入用深さで注入器が連結されたことを作業者に指示することができる。それを確認後、作業者はプランジャーを押し下げてもよい。
プランジャーは、入れ子式ジョイントとバネを備え、プランジャーが下向きに付勢され停止部に接触するようにジョイントが摺動しあう。プランジャーが下向きに付勢され入れ子式ジョイントの端部同士が同じ位置にくると、バネは圧縮される。治療薬の製剤がバネの力で治療デバイスの中へ注入されるように、圧縮されたバネはピストンを治療デバイスの方へ付勢する。弁703Vは、上記したように閉弁可能である。ボーラス注入に対応する注入の第2の部分は、治療デバイス100の中へ注入されて多孔質構造体150を通過する。
図7B−1は、細長い切開部に嵌合する断面積を有する保持構造体を備える治療デバイス100の側面断面図を示す。細長い切開部に嵌合するサイズに設定された断面は、フランジ122よりも小さく設定された保持構造体120の狭部120Nであってもよい。細長い切開部に嵌合するサイズに設定された幅狭部120Nは、切開部に嵌合するサイズに設定された細長い断面120NEを有してもよい。幅狭部120Nは、第1の断面の直径、すなわち第1の幅と、第2の断面の直径、すなわち第2の幅とを有する断面を備えてもよく、幅狭部120Nが細長い断面形状を有するように第1の断面の直径は第2の断面の直径よりも大きくなっている。
幅狭部120Nの細長い断面120NEの大きさは、多様な方法で、切開部に嵌合するよう設定することができる。細長い断面120NEは、第1の寸法とそれよりも小さい第2の寸法を持ち、その例として拡大スロット、拡大スリット、両凸面状、長円形、卵形体、または楕円形状など多くの形状のうちの1つ以上が挙げられる。拡大スリット形状および拡大スロット形状は、強膜組織が切断・膨張した場合に想定される形状に対応してもよい。両凸面形状は、両凸のレンズの形状に対応してもよい。幅狭部の細長い断面は、第1の軸に沿った第1の曲線と、第1の曲線とは異なる第2の軸に沿った第2の曲線とを含んでいてもよい。
保持構造体の幅狭部120Nと同様にして、容器リザーバは、断面形状を有してもよい。
図7B−2は、図7B−1と同様な治療デバイスの等角図である。
図7B−3は、図7B−1と同様な治療デバイスの上面図である。
図7B−4は、図7B−1と同様な治療デバイスの保持構造体の短い側面に沿った側面断面図である。
図7B−5は、強膜に埋め込まれた図7B−1と同様な治療デバイスの底面図である。
図7B−5Aは、隔壁160の周囲長160Pおよび幅狭部分の周囲長160NPに対応する幅712を有するブレード714を備える切削具710を示す。幅狭部が強膜に配置されたときに切開部を幅狭部で密閉するように、切削具を幅狭部120Nの大きさに合わせることができる。例えば、幅712は、隔壁160の外周160Pの約半分および幅狭部160Nの外周160NPの約半分であってもよい。例えば、外周160Pが約6mmであるように隔壁160の管の外径を約3mmとし、幅狭部の外周160NPは約6mmであるとする。切開部を幅狭部160Pで密閉すべく、切開部が約6mmの外周を有する開口となるように刃710の幅712は約3mmであってもよい。あるいは、隔壁160の外周160Pは、切開部および幅狭部の外周よりもわずかに大きなサイズとしてもよい。
保持構造体は、眼の毛様体扁平部に沿う細長い切開部に嵌合するように、短い幅120NSおよび長い幅120NLを有する幅狭部120Nを備える。保持構造体は、延長部122を備える。保持構造体120Eの延長部は、保持構造体120の幅狭部120Nの短い幅122NSおよび長い幅122NLと位置合わせされた短い幅122Sおよび長い幅122Sを備える。幅狭部120は、強膜を受容する大きさに設定された凹部120Iを備えてもよい。
図7B−6Aおよび図7B−6Bは、それぞれ、非円形断面サイズを備える治療デバイス100の遠位断面図および近位断面図を示す。多孔質構造体150は治療デバイスの遠位端に配置することができ、保持構造体120は治療デバイス100の近位部に配置することができる。隔壁160のより、リザーバ130のサイズを決定される。例えば、隔壁160およびリザーバ130は楕円形状または長円形の断面サイズを有してもよい。隔壁160は、リザーバ130を横切る第1の断面幅と、リザーバ130を横切る第2の断面幅とを含み、第1の幅は楕円形の長い軸(長軸)の長さに、第2の幅は楕円形の短い軸(短軸)の長さに対応してもよい。デバイスがこのように一方向に細長くなっていることによって、視野との干渉を抑制しながらリザーバの薬を増加させることができるが、例えばこれは楕円形の長軸が、実質的に眼の角膜の回りに延出する眼の毛様体扁平部領域の円周に沿って実質的に位置合わせされ、楕円形の短軸が眼の半径方向に位置合わせされており、瞳孔を通る患者の視線に対応する眼の光軸に向かって延出するのが楕円形の短い軸であり、このため視野との干渉を抑制することができるからであろう。ここでは楕円形または長円形の断面を言及しているが、短い辺が眼の瞳孔に向かって延出し、長い辺が眼の毛体様扁平部に沿って延出する長方形など、多様な断面サイズおよび形状を使用することが可能である。
保持構造体120は、上記の断面領域の構造に対応する構造を含んでいてもよい。例えば、延長部122は、第1の幅および第2の幅を有してもよく、第1の幅は第2の幅よりも大きい。延長部は、例えば長方形、長円形、または楕円形など多様な形状であってもよく、大きい幅は、リザーバおよび隔壁の大きい幅に対応可能である。保持構造体120は、上述の通り、治療デバイスへのアクセスポートの周りに延出する凹部120Iを有する幅狭部120Nを含んでいてもよい。凹部120Iおよび延長部122はそれぞれ、楕円形または長円形のプロファイルを有してもよく、楕円形の第1の長い軸(長軸)は第1の方向に延出し、楕円形の第2の短い軸(短軸)は第2の方向に延出する。治療医が目視でデバイス100の向きを決定できるように、長軸は眼の毛様体扁平部の円周に沿って延出するように位置合わせされ、短軸は眼の瞳孔に向かって延出するように位置合わせされる。
図7B−6Cは、細長い断面サイズ120NEを持つ幅狭部分120Nを備える保持構造体を有する治療デバイスの等角図を示す。
図7B−6Dは、図7B−6Cと同様な治療デバイスの遠位端図を示す。
図7B−6E1は、図7B−6Cと同様な治療デバイスの幅狭部分120Nの短い幅120NSの側面図を示す。
図7B−6E2は、図7B−6Cと同様な治療デバイス100の幅狭部分120Nの長い幅120NLの側面図を示す。
図7B−6Fは、図7B−6Cと同様な治療デバイスの近位図を示す。
図7B−6G〜図7B−6Iは、図7B−6C〜図7B−6Fと同様な治療デバイス100の分解組立図である。図7B−6G、図7B−6H、および図7B−6Iの組立図はそれぞれ、保持構造体の幅狭部120Nの細長い部分120NEの等角図および薄部側のプロファイル図を示す。治療デバイス100は、長軸100Aを有する。
例えばセプタムなどの貫通性隔壁184を、アクセスポート180に挿入することができる。貫通性隔壁は、貫通性隔壁がアクセスポート180に挿入可能なようにサイズが設定された弾性体であってもよい。貫通性隔壁は、例えば、シロキサンまたはゴムなど1つ以上の弾性体を含んでいてもよい。貫通性隔壁は、貫通性隔壁をアクセスポートに保持するタブ184Tを備えてもよい。貫通性隔壁184は、アクセスポート180を密閉するようなサイズに設定された、傾斜上部リム184Rを含んでいてもよい。リザーバ容器130のアクセスポート180は、タブ184Tがアクセスポートの環状または細長い内側チャネルに係合したとき、傾斜リムを係合し、貫通性隔壁をアクセスポート180に密閉する傾斜上部面を含んでいてもよい。貫通性隔壁が患者および治療医によって視認できるように、貫通性隔壁184は、不透明材料、例えば灰色の材料、例えばシリコーンを備えていてもよい。
デバイスのリザーバ容器130は、少なくとも保持構造体から硬質多孔質構造体まで延出する硬質の生体適合材料から成っていてもよく、このため、例えば患者が動いても安定した放出速度プロファイルを維持するために、治療薬が硬質多孔質構造体を通って放出されるときにリザーバの容積を実質的に一定に保つことができる。代替あるいは併用して、リザーバ容器130が半透明、例えば透明であるようにリザーバ容器130は光透過性材料であってもよく、これによって、患者に埋め込む前にデバイスに治療薬を装填するとき、例えば医師の診察室で埋め込む前に治療薬の製剤を注入するときに、リザーバ140のチャンバが視認できる。リザーバ140をこのように視認化することは、埋め込む前に治療を施す医師またはアシスタントがリザーバ140を治療薬で適切に充填するために有用である。リザーバ容器は、例えばアクリレート、ポリメチルメタクリレート、シロキサン、金属、チタン・ステンレス鋼、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、またはPTFEなど、多様な生体適合性材料のうちの1つ以上を含んでいてもよい。リザーバ容器の生体適合性材料は、例えばアクリレート、ポリアクリレート、メタアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネートまたはシロキサンのうちの1つ以上など、光透過性材料であってもよい。リザーバ容器130は、フランジ122および細長い幅狭部120NEを含む保持構造体120を形成するように、1片の材料から機械加工するか、または射出成形することができる。フランジ122は、患者を診断するためにフランジの下にある組織を医師が視認できるうように、かつ埋め込み時にデバイス100が見えにくくするように、半透明材料であってもよい。リザーバ容器130は、ここに記載されるようにデバイス100に注入された製剤がリザーバの容積および多孔質構造体150の放出速度に従って放出されるように、軸100Aに沿ってアクセスポート180から多孔質構造体150まで延出するチャネルを有してもよい。多孔質構造体150は、例えば接着剤で治療デバイス100の遠位端に固着することができる。代替あるいは併用して、リザーバ容器130の遠位端は、多孔質構造体150を受容する大きさに設定された内径を有してもよく、リザーバ容器130は、所定サイズのリザーバ140を画成するために遠位端の所定位置に多孔質構造体150を配置するための停止部を含んでもよい。
図7C−1は、治療薬の徐放のために膨張した構成にある、膨張性隔壁材160および支持部160Sを備える膨張式治療デバイス790を示す。膨張した構成では、多量の治療薬、例えば約30μL〜約100μLまで保管することができる。膨張式デバイスは、保持構造体120と膨張式リザーバ140とを有する。支持部160Sは、圧縮用に構成される弾性材料、例えば弾性金属または熱可塑性プラスチックから成ってもよい。あるいは、膨張式支持部は膨張時に湾曲してもよい。膨張式デバイスは、その遠位端に配置されて、膨張式支持部に固着される多孔質構造体150を備える。膨張式デバイスは、例えば貫通性隔壁184を有するアクセスポート180を備えてもよい。膨張した構成において、デバイスは、実質的に患者の視覚的経路OPの大部分からはずれている。
隔壁160の支持部160Sは、膨張した構成では、リザーバの容積を実質的に一定とすることができる。ここに記載したような治療薬の容積を治療デバイスに注入するように膨張したリザーバおよび多孔質構造体150を調整するために、例えば+/−25%の実質的に一定な容積を多孔質構造の放出速度指数と組み合わせることができる。隔壁160は、例えば膜など薄い柔軟な材料であってもよく、実質的に容積が一定のリザーバのチャンバを画成するために、支持部160Sは隔壁160を付勢して膨張した構成とすることができる。
図7C−1Aは、支持部160Sの遠位端部を示す。支持部160Sは、デバイス100の遠位端で多孔質構造体150を支持する環状フランジ160SFまで延出する支柱を含んでいてもよい。
図7C−1Bは、リザーバ・チャンバの膨張した容積が実質的に一定となるように、隔壁160内に配置されている支持部160Sを示す。
図7C−1Cは、リザーバ・チャンバの膨張した容積が実質的に一定となるように、隔壁160の内面に沿って配置された支持部160Sを示す。支持部160は、多様な方法で、例えば、接着剤や樹脂などの結合剤によって、または熱接着によって、隔壁160に結合可能である。支持部160Sを隔壁160の外側に配置することも可能である。
除去のために断面サイズが減少するよう構成された、実質的に一定のリザーバ・チャンバ容積を有する膨張式治療デバイス
治療デバイス100は、除去のために断面で折り畳み可能であって、治療薬の製剤の量を受容するように調整できるように、膨張したとき実質的に一定のリザーバ容積および実質的に一定の放出速度指数を有する膨張式デバイスであってもよい。膨張式デバイスは、強膜に連結される保持構造体と、貫通性隔壁と、可撓性隔壁に連結された可撓性支持部とを備える膨張式治療デバイスであってもよい。可撓性支持部は、第1の長さと第1の断面サイズとを有する第1の細長い幅狭プロファイル構成から、第2の長さと第2の断面サイズを有する第2の幅広プロファイル構成まで、膨張することが可能である。第2の幅広プロファイル構成では、眼に設置された時、実質的に一定の容積を有するチャンバが画成され、ここで第1の長さは第2の長さより長く、第1の断面サイズは第2の断面サイズより小さい。可撓性支持部および可撓性隔壁は、貫通性隔壁を通って細長い構造体を進入させるときに、長さを第2の長さから第1の長さまで増加し、断面サイズを第2のサイズから第1のサイズまで減少させるのに十分な可撓性を有する。
治療デバイスは、支持構造を有する形状を持ち、視覚を妨害せずにチャンバ・リザーバ容積を増加させるために視覚路から離れて配置される伸縮自在な容器を備えてもよい。治療デバイスは、除去のための折り畳み可能な断面を有する。治療デバイスは、治療薬の注入を受容するように調整された実質的に一定の膨張した容積を有してもよい。実質的に一定の容積は、+/−50%内、例えば+/−25%内に固定された容積であってもよい。治療デバイスは、挿入および挿入サイズとして1mm以下の折り畳んだ断面サイズをもつことができるが、2mmまでのサイズでもよい。
治療デバイスは、約1μL〜約100μLの注入を受容するようなサイズの容積を有しても良く(ほとんどの製剤は50μL注入)、例えば膨張した実質的に一定の容積の構成においてチャンバ・リザーバが100μLであってもよい。
膨張式支持枠部は、以下のうちの1つ以上を含むことができる:ニチノール、熱可塑剤などのワイヤーを備える支持枠部;支持部と隔壁とを持つチャンバの形状を規定する膜、バルーン、薄板、または膜のうちの1つ以上を備える可撓性隔壁への連結器;支持枠部は、可撓性隔壁材の内側、外側、または内部に配置することが可能であり、自己膨張型または被駆動型、それらの組み合わせ;小さな挿入切開部のため膨張可能、例えばデバイスの長さが減少し断面サイズが膨張し実質的に一定の容積を有するチャンバを画成する、切開部を通して除去のために折り畳み可能、例えばデバイスの長さが増加し除去のために断面サイズが減少する、1つ以上の支持構成、網目状の支持部(例えば、マンドレルで膨張式デバイスを位置決めするための細長い/薄い形状)。リザーバの膨張容積は、デバイスが実質的に一定の容積の幅広プロファイル構成に膨張したときに眼内圧が実質増加しないように、0.2mL以下に制限することができる。
図7C−1Dは、伸縮可能な断面を持つデバイスの断面幅を減少させるために、デバイスに挿入された除去装置の細長い構造体を示す。除去装置は、案内部および連結構造体を備えることができる。連結構造体は、保持構造体に結合するためのU字型フランジ、歯部、顎部、クランプのうちの1つ以上を備えることができる。案内部は、細長い構造体を貫通性隔壁を通ってかつ軸100Aに沿って停止部を備える遠位部分まで進入させるために、細長い構造体を治療デバイスと整列させるために連結構造体に連結されたチャネル、ループ、孔またはその他の構造のうちの1つ以上を備えることができる。停止部は、支持部160Sに連結された硬質多孔質構造体150または他の構造を備えることができる。
図7C−1Eは、第1の長さL1および第1の幅W1を有する支持部160Sの第1の細長プロファイル構成を示す。
図7C−1Fは、第2の長さL2および第2の幅W2を有する支持部160Sの第2の幅広プロファイル構成を示す。
支持部160Sは、例えばリング構造体である第1の近位環状部分160SAと、例えばリング構造体である第2の遠位環状部分160SBと、その間を軸方向に延出する支柱160SSとを備えることができる。支柱160SSは、第1のリング構造体を有する第1の近位環状部分160SAから、第2のリング構造体へ軸方向に延出していてもよい。第1の近位部分160SAは、貫通性隔壁184を支持し、細長い構造体を受容する大きさとすることができる。治療デバイスを除去するために、細長い構造体が多孔質構造体150を軸100Aに沿って軸方向に付勢して第2の長さL2から第1の長さL1まで長さを増加できるように、第2の遠位環状部分160Bは、例えばフランジによって硬質多孔質構造体150に連結することができる。
支持部160は、例えば形状記憶材料または可撓性金属やプラスチックなどの可撓性材料から構成できるので、近位リング構造体から遠位リング構造体まで延出する支柱160SSは、上記したようにカニューレに設置されたときは圧縮可能であり、その後、実質的に一定の容積を有するリザーバ・チャンバを画成するためにカニューレを通過して眼の中へ配置されたときはチャンバを画成するために分離可能である。デバイス790の長さを増加するように、細長い構造体が、連結構造体に連結された近位端から離間するように硬質多孔質構造体を付勢すると、膨張式治療デバイス790が除去できるようにその断面幅が減少する。
図7C−2は、注入管腔での使用に適した、幅狭プロファイル構成での図7C1と同様な膨張式治療デバイスを示す。
図7C−3は、例えば強膜での保持に適した、膨張したプロファイル構成での図7C1と同様な膨張式治療デバイスを示す。
図7C−4Aおよび図7C−4Bは、展開式保持構造体792を示す。展開式保持構造体792は、膨張式治療デバイス790と、あるいは上述のような実質的に固定したリザーバおよび容器のデバイスと使用可能である。展開式保持構造体792は、多様な圧縮性または膨張性の、あるいは弾性の材料、あるいはその組み合わせを含む。展開式保持構造体792は、例えば弾性材料からなるタブおよびフランジによって、幅狭プロファイル構成から展開構成まで展開する延長部120Eを備える。保持構造体は、上部が近位側に傾斜し、遠位部が遠位側に傾斜しており、展開して強膜の両側に係合するようにしてもよい。前記弾性材料は、熱可塑性材料、弾性金属、形状記憶材料、およびその組み合わせであってもよい。
図7Dは、例えば網膜上またはその近傍の病変部の脈絡膜新生血管などの、網膜26上またはその近傍の標的位置に治療薬を送達するために眼10に配置された多孔質構造体150を備える治療デバイス100を示す。例えば、病変部は、網膜への血液供給と関連する血管組織の血管新生と関係する、網膜の座屈、折れ、屈曲、または脈絡膜からのはく離のうちの1つ以上を含んでもよく、網膜の病変部に対応する新生血管組織が標的とされてもよい。実施態様に関する研究によれば、眼の硝子体液30が、流路799に沿った対流による流れを含んでいてもよいことが示された。対流の流路が、流れのチャネルを形成してもよい。小分子は前記流路にしたがって網膜26の標的位置まで送達されることができるが、硝子体液中の大分子の分子拡散は小分子よりもやや遅いので、例えば抗体フラグメントまたは抗体を備えた大分子を含む治療薬は、実質的に対流の流路によって送達される。
多孔質構造体150が網膜の標的位置に向かって延びる流路に沿って配置されるように、治療デバイスのサイズを設定することができる。硝子体液の流れが治療薬を網膜まで移送するように、治療薬を流路に沿って放出することが可能である。多孔質構造体は、治療デバイスの遠位部に、例えば遠位端に配置され、リザーバ130のサイズは、長期間にわたって送達するように設定される。保持構造体120は、近位に配置することができる。多孔質構造体が標的部位に対応した流路の一部に配置されるように、治療デバイス100のサイズを設定することができる。外科医は、例えば病変部に対応する網膜の標的部位798を特定し、治療薬が標的部位へ放出されるように、治療デバイス100を毛様体扁平部または他の位置に沿って配置することができるであろう。
図7Eは、眼に配置されたとき毛様体または小柱網のうちの1つ以上へ治療薬を送達するよう、デバイスの近位部分に設置された多孔質構造体150を備える治療デバイス100を示す。多孔質構造体が、上述した網膜まで延びる流路から実質的に離れて硝子体中に位置するように、多孔質構造体150は保持構造体120の近傍に配置することができる。標的組織に向かって治療薬を放出するように、多孔質構造体は治療デバイスの片側に位置することができる。多様な治療薬が使用可能であるが、保持構造体を強膜に連結して硝子体液に埋め込まれたとき、毛様体または小柱網のうちの1つ以上に向けて治療薬が放出されるので、治療薬は、プロスタグランジン、または、例えばビマトプロストまたはラタノプロストなどの類似体であってもよい。
図7Fは、水晶体から離れて網膜の方へ治療薬110を放出するように配向された多孔質構造体150備える治療デバイス100を示す。例えば、治療薬110はステロイドを含んでいてもよく、ステロイドは、水晶体から離れて網膜に向かうように多孔質構造体150から放出される。例えば、多孔質構造体は、治療デバイスの軸100Aに対して傾斜させることができる。多孔質構造体150の外側は、網膜の標的部位を治療するために、例えば上述した流路に沿って、水晶体から離れて少なくとも部分的に網膜に向かうよう配向することができる。水晶体に向かう治療薬の放出が隔壁160によって阻止されるように、埋め込み時に隔壁160を多孔質構造体160と眼の水晶体との間に延出させるてもよい。保持構造体120は、上述のように、長い幅と短い幅を含んでいてもよい。保持構造体の長い幅が毛様体平坦部に沿って延出し、短い幅が瞳孔に向かって延出するとき、多孔質構造体150の外側が少なくとも部分的に網膜に向かってかつ流路に沿って配向されるように、多孔質構造体を延長部122の短い幅と長い幅との関連で配向することができる。
図7Gは、装着器具750と、容器780と、この容器内に配置された治療デバイス100とを備えるキット789を示す。治療薬の製剤がデバイス100に注入されるときに多孔質構造体のチャネルが気泡の形成を阻止する液体の水を含んでいるように、容器に配置された治療デバイス100のリザーバは、例えば食塩水などの非治療溶液を含んでいてもよい。キットはさらに、シリンジ188と、針189と、上述のようにリザーバ内の最大停止距離まで針の先端を挿入するための停止部189Sとを含んでもよい。キットには、取扱説明書789Iが含まれていてもよく、治療薬の製剤を含有した容器110Cを含んでいてもよい。
製剤の注入に基づく徐放用治療デバイスの調整
標的治療濃度のプロファイルで送達できるように、デバイスに注入される製剤の容積に基づいて治療デバイス100を調整することができる。注入される容積は、実質的に一定の、例えば意図する所定の標的容積の約+/−30%の範囲内の容積であってもよい。対応するボーラス注入の治療時間よりも実質的に長い時間にわたって治療薬を放出するように、放出速度指数に対してリザーバの容積の大きさを設定することができる。デバイスは、眼における治療薬の半減期に基づいて、治療薬の放出を調整することも可能である。デバイスの容積および放出速度指数は、注入される製剤の容積と眼における治療薬の半減期と基づいて、一緒に調整することのできるパラメータである。治療デバイスを調整するのに適したデバイスのパラメータを決定するために、以下の式を使用することができる。
速度=Vr(dCr/dt)=−D(PA/TL)Cr
但し、速度=デバイスからの治療薬放出速度
Cr=リザーバ中の治療薬濃度
Vr=リザーバ容積
D=拡散定数
PA/TL=RRI
P=多孔率
A=面積
T=蛇行率=F=チャネル・パラメータ
実質的に一定の容積での注入の場合
Cr0=(注入容積)(製剤濃度)/Vr
但し、Cr0=製剤の注入後のリザーバ中の初期濃度
注入容積=50μLの場合
Cr0=(0.05mL)(10mg/mL)/Vr(1000μg/1mg)=500μg/Vr
速度=x(500μg)exp(−xt)
但し、t=時間
x=(D/Vr)(PA/TL)
硝子体での質量バランスを考慮して
Vv(dCv/dt)=デバイスからの速度=kVvCv
但し、Vv=硝子体容積(約4.5mL)
Cv=硝子体中の治療薬濃度
k=硝子体からの薬の速度(硝子体中の薬の半減期の逆数に比例)
ここに記載される実施態様に適切な場合、すなわちCvが実質的に一定のままであり時間とともにゆっくりと変化する(すなわち、dCv/dtが約0)場合、
Cv=(デバイスからの速度)/(kVv)
kVvが実質的に一定であるので、Cvの最大値は、デバイスからの速度を最大にする条件に対応するであろう。デバイスへの注入後任意の時間(例えば180日)に、最大速度を与えるxの値で最大Cv値が得られる。xの最適値は、任意の時間で、
d(速度)/dx=0を満たす。
速度=500(x)exp(−xt)=f(x)g(x)
但し、f(x)=500x,g(x)=exp(−xt)
d(速度)/dx=f’(x)g(x)+f(x)g’(x)=500(1−xt)exp(−xt)
任意の時間tに対して,1−xt=0すなわちxt=1のとき、d(速度)/dx=0となる。
速度は、(D/Vr)(PA/TL)t=1のとき最大となる。
任意の容積では、最適PA/TL=最適RRI=Vr/(Dt)
従って、任意の時間tでの最大Cvは、任意のVrで最適RRI=(PA/FL)のとき与えられる。
また、(Vr)/(RRI)比=(Vr)/(PA/TL)=Dtにより、その時の最適速度が決定されることになる。
上記の式が与える最適化された概算値は、数値シミュレーションと組み合わせて、VrおよびPA/TLの最適値を与えることが可能である。最終的な最適値は、充填効率などの追加のパラメータに依存するであろう。
上記のパラメータは、最適RRIを決定するのに使用されることができ、治療デバイスは、デバイスに注入される製剤の容積に対して、デバイスのリザーバ容積および放出速度指数を最適値の約+/−50%、例えば最適値の約+/−30%の範囲内とするように調整できる。例えば、90日間などの所定の長期間にわたって最小阻止濃度を超える治療濃度を達成するための、多孔質構造体の最適放出速度指数および治療薬の所定量、例えば50μLを受容する大きさに設定された最適リザーバ容積に対して、リザーバの最大容積は、最適容積の約2倍以下に制限することができる。リザーバ容積および多孔質構造体を市販の製剤の注入容積に対してこのように調整することによって、同じ容積の市販の注入製剤を受容するはるかに大きなリザーバ容積と比較して、デバイスからの治療量の放出時間を増加させることができる。ここに記載されるような多数の例では、ある量の製剤を受容し長期間にわたって放出するように共に調整された多孔質フリット構造体およびリザーバ容積を示しているが、リザーバと共に調整される多孔質構造体は、多孔質フリット、透過性膜、半透過性膜、毛細管または蛇行チャネル、ナノ構造体、ナノチャネル、または焼結ナノ粒子のうちの1つ以上であってもよく、当業者は、前記量の製剤を受容し治療量を長期間にわたって放出するように1つ以上の多孔質構造体および容積を調整するために、放出速度の特徴、例えば放出速度指数を決定することが可能である。
一例として、180日目の最適RRIを、約125μLのリザーバ容積に対して決定する。上記の式(Vr/Dt)=最適RRIに基づいて、180日目の最適RRIは、デバイスに注入された製剤容積50μLに対して約0.085である。対応するCvは、180日目のデバイスから放出される薬剤の速度と、硝子体からの薬剤の速度(半減期約9日に対応するkの値)とに基づいて、180日目で約3.19μg/mLとなる。容器のリザーバ容積63μLおよびRRI0.044を有するデバイスも、PA/TLに対するVrの比が最適であるので、180日目の最適Cvを与えるであろう。最適値を決定することは可能であるが、治療デバイスは、最適値に近い、例えば最適値の約+/−50%の範囲内にある多くのリザーバ容積値および多くの放出速度指数値で、標的時間例えば180日目の薬剤の治療量を提供するように調整することが可能である。リザーバの容積は実質的に固定できるけれども、例えばバルーン型リザーバなどの膨張式リザーバを使用すれば、リザーバ容積は、例えば約+/−50%の範囲で変更可能である。
眼の硝子体液中の薬剤の半減期は、治療薬と、例えばヒト、ウサギ、またはサルなど眼の種類とに基づいて決定することができ、つまり、半減期を例えば眼の生物学的種に基づいて決定することができる。少なくともいくつかの動物モデルでは、硝子体液中の治療薬の半減期は、ヒトの眼のものよりも短く、例えば少なくともいくつかの例では約2分の1となる。例えば、治療薬ルセンティス(商標)(ラニビズマブ)の半減期は、ヒトの眼では約9日、ウサギおよびサルの動物モデルでは約2〜4日であろう。小分子の場合、ヒトの眼の硝子体液中の半減期は、約2〜3時間であり、サルおよびウサギの動物モデルでは約1時間であろう。治療デバイスは、ヒトの硝子体液、または動物の硝子体液、あるいはその組み合わせにおける治療薬の半減期に基づいて、製剤の容積を受容するように調整することができる。ここに記載の教示に基づいて、当業者は、ある容積の製剤を受容し治療量を長期間にわたって供給するように、リザーバと多孔質構造体とを一緒に調整するために、眼の種類および治療薬に基づいて、眼中の治療薬の半減期を経験的に決定することができるであろう。
実験
例1
図8は、ルアーロック(商標)チップを有する1mLシリンジと様々な直径の針から作製された規定の直径を有する出口ポートを備えたリザーバを示す。針は、全長8mmに切断し、針ハブからの延出は2mmとした。顕微鏡を使用して、金属のバリを取り除いた。図8−1は、シリンジに取り付けられた針を示し、2.4mg/mLの分子量376Daのフルオレセインナトリウムのリン酸緩衝液(スペクトラム・ケミカルズ社、B−210)溶液が充填された。気泡を取り除き、0.05mLを分注できるようにシリンジを調整した。得られたリザーバの形状を図8−1に示す。第1の膨張した領域は、針ハブの内側とシリンジの先端とで規定される。第2の膨張した領域はシリンジの内側である。リザーバの全容積は0.14mLである。
充填した後、リザーバの外側の余分なフルオレセインはPBSに浸漬することで洗い流した。
図8−2は、室温で1.5mLの緩衝液を含有する4mLバイアル内に設置されたリザーバを示す。ゴムチューブを切断して作成した鍔部をシリンジ胴部の回りに配置し、圧力差を避けるためバイアル中の緩衝液の高さに合うようにリザーバの頂部を位置決めした。蒸発を防ぐために、バイアルの上部はパラフィンで密閉した。一定の期間ごとに、リザーバを、緩衝液を含有する新たなバイアルに移した。出口ポートを通ってリザーバから移動したフルオレセインの量は、バイアル中のフルオレセイン量を可視光(492nm)の吸収により測定することで求めた。
表1C
初期放出速度(0.5〜4日間の平均)は、出口ポート開口の面積に比例する。
バイアル中への累積放出量を図9に示す。1週間の放出量は、2〜20%であった。平均送達速度は0.5〜4.5日の間に収集したデータの傾きから求め、表1Cに示した。図10は、初期放出速度が出口ポートの開口面積にほぼ比例することを示している。
例2
図11は、1mLシリンジのルアーロックチップを切断して作製した多孔質膜を持つリザーバを示す。シリンジの端部は、平滑に傾斜させた。孔径0.2μmのナイロン膜をシリンジの端部に被せ、シリコーンチューブ片で固定した。シリンジの内径は4.54mm、露出膜面積が16mmとなる。ピストンを除去し、約100mLの300mg/mLウシ血清アルブミン(BSA、シグマ社、A7906−100G)加PBSを添加した。ピストンを元に戻し動かして、空気を除きかつ膜を通して少量の液体を押し出した。膜の外側およびシリンジは、水に短時間浸漬して洗い流した。その後、5mLのPBSを含有した15mLバイアルの中にリザーバを設置した。蒸発を防ぐために、バイアルの上部はパラフィンで密閉した。0.5〜1日の一定期間ごとに、リザーバを新たなPBSを含有するバイアルに移した。膜を通過する拡散は、バイアルに累積したBSAの量を可視光(280nm)の吸収を測定して求めた。2つの複製サンプルから求めた送達速度を図11−1に示す。このデータは、100kDa程度の分子量の対象治療薬が孔径0.2μmの多孔質膜を通って容易に移動することを示唆している。
例3
ヒトIgG(ジャクソン・イムノリサーチ社、ChromPure)への結合に関して、クロマトグラフィー担体(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ社)をスクリーニングする実験を行った。カラムを下記の10種類の担体で充填し、pH4.5の20mMアセテート緩衝液で平衡化した。
表2
その後、0.5mL分量の1mg/mL抗体の20mMアセテート緩衝液pH4.5をカラムに重力落下により送流し、回収した溶液をBCA(商標)タンパク質分析キット(ピアス社)を使用して色の変化を定性分析した。試験に供した担体の中で、マクロプレップCM担体、マクロプレップ・ハイS担体、およびマクロプレップ・セラミック・ハイドロキシアパタイト・タイプII40μmがそれぞれIgGを結合した。次に、PBSをカラムに通したところ、3種類のすべての担体からIgGが放出された。
出口ポートの研究予定
眼の動きにより誘発される混合の影響を考察するために、例1〜3の実験を、撹拌しながら繰り返すことができる。更に、それらの実験を体温で行ってもよく、高温では拡散速度が大きいため、送達速度は速くなることが期待される。
BSA(分子量69kDa)の拡散速度は、それぞれ分子量49および150kDaの球状タンパク質であるルセンティス(商標)およびアバスチン(商標)の拡散速度の代表値とみなされるべきである。これら治療薬の個々の送達速度を確かめるために、いくつかの実験を選択して行ってもよいであろう。
本特許の本文に記載された実施態様に類似のデバイスのプロトタイプを、金属(例えば、チタンやステンレス鋼)またはポリマー(例えば、シリコーンやポリウレタン)から作製することができるであろう。規定された面積を持つ出口ポートは、アブレーションやフォトエッチング技術により作成可能である。ポリマーの場合、細いワイヤーを挿入して材料を成型し、ポリマーが硬化した後にワイヤーを除去することによって、出口ポートを作成することもできる。アクセスポートは、シリコーンまたはポリウレタンの膜を使用して作成することができる。針停止部および分流器は、金属または硬質プラスチックから作製することができる。
デバイスのプロトタイプは、例1に記載の方法と同様な方法でテストすることができる。薬剤送達速度は、新品のデバイスと補充したデバイスの両方で測定することができる。送達された治療薬の量を時間の関数として定量するために、光吸収や蛍光などの方法が使用可能である。酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を、37℃の製剤中の生物学的治療薬の安定性をモニターするため、また送達された生物活性治療薬濃度を時間の関数として決定するために使用できる。
膜の研究予定
1)補充中の抵抗がそれほど高くなく、細菌や細胞への隔壁となり;2)治療薬の送達速度の制御に貢献でき;および3)生体適合性がある膜を特定するために、一連の候補に対して実験を行うことができる。膜の候補は、孔径が治療薬のサイズに近い0.2μm以下である。透過速度を測定するためにドナー溶液とレシーバ溶液との間に膜を固定する際には、様々な固定具が使用可能である。更に、膜の性能は、例3と同様の方法を使用してデバイスのプロトタイプでテストすることが可能である。
多孔質膜としては、セルロースアセテート、ナイロン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、更に再生セルロース、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデンド(PVDF)が挙げられる。
結合製剤および条件の開発
媒体および条件がバッチ式またはフロースルー式方法でスクリーニングされたら、結合媒体を所定の箇所に載置するか、結合媒体を治療薬と一緒に注入して、デバイスを作製することができる。製剤は所望の賦形剤と一緒に調製することができ、治療薬送達速度を例1と同様の方法でモニターすることができる。
結合に関してテストする他の媒体としては、高容量でタンパク質を結合する親水性ポリマー担体(GEヘルスケア社)に基づいたイオン交換およびバイオアフィニティクロマトグラフィー担体、シリカよりタンパク質を多量に結合するポリビニルアルコールからなるハーバードアパレイタス社の親水性充填材料が挙げられる。他の候補は、当業者には公知であろう。
pHの変化により、抗体の媒体への結合を調整することが可能である。例えば、陽イオン交換媒体の製剤では、酸性pHで抗体が結合することが予測される。pHが中性に近づくと、抗体が媒体から放出されるであろう。有限の期間(例えば、数ヶ月)酸性pHを与えるか製剤をテストすることが可能である。pHが中性になったら、結合媒体から抗体が放出することで放出速度を増加させるので、より一定の放出速度プロファイルが得られる。
結合媒体それ自体が、生理緩衝液がデバイスの中に拡散するまでは支配的な効果を示す緩衝能力を有してもよい。
あるいは、製剤が、最初の数ヶ月の間効果的であるように選択された緩衝能力を有する緩衝液を含有してもよい。時間の経過とともに、製剤の緩衝液がデバイスの外へ拡散し、生理緩衝液がデバイスの中へ拡散して、pHを生理的pH(すなわち、中性)へ変化させる。この変化の速度式は、ポリマー緩衝液を使用することで調節できるが、これは、高い分子量の緩衝液ほどより長い期間デバイスの中に残存することによる。ポリペプチドは分解してアミノ酸となるので、生体適合性ポリマー緩衝液として有利である。緩衝液はそのpKa値の近辺で最も効果的である。以下の表に、対象となるアミノ酸側差のpKa値を示す。
表3
製剤は、一定期間水素イオンを生成するためにPLGAなどのポリエステルまたはポリカプロラクトンやポリ−3−ヒドロキシ酪酸などの他の生分解性ポリマーを含有してもよい。分解が数ヶ月以内に完了して送達の最後の数ヶ月で中性pHに達するのを促進するように、例えばPLGAの組成や分子量を変化させることで分解速度を調節することができる。
pHは電気化学的に変化させることも可能であろう。適切な電極材料としては、白金やステンレス鋼などの不活性または非消耗性材料が挙げられる。加水分解が電極界面でおこり、加水分解生成物として、陽極でヒドロニウムイオンが、陰極で水酸化イオンが発生する。
デバイス長の理論的根拠
少なくともいつくかのデバイス設計では、視覚への障害を最小限とするために、硝子体の中への延出は約6mm以内とする。更に、デバイスを硝子体の中へ延出することは、薬剤を眼球の壁から離れた所に放出できる点で有益であろう。抗体などの巨大分子は、本来、拡散プロセスよりもむしろ対流プロセスによって硝子体から排除される(硝子体液中の制御放出薬剤の対流および拡散輸送のコンピューターシミュレーション、Stay, MS, Xu, J, Randolph, TW; VH Barocas, Pharm Res, 2003, 20(1), pp.96-102参照)。対流は、硝子体中の網膜へ向かう流れとして、毛様体からの眼房水の分泌により生じる圧力によって推進される。網膜の周辺部へより多量の治療薬を送達しやすい眼球と面一のポートを有するデバイスとは異なり、出口ポートが硝子体の中に延出しているので、薬剤は対流により眼の後部および網膜の中心部へ送られるであろう。
例4:1つの開口を有するリザーバの予測放出速度と測定放出速度の比較
23および30ゲージ針を使用して、例1に記載の放出試験を10週間継続して行った。結果は、フィックの拡散の法則に基づいてリザーバ中の濃度変化とリザーバからの放出速度の関係を示すモデルと比較した。この簡単なモデルは、リザーバ中の濃度が均一であり、レシーバ液すなわち硝子体中の濃度が無視できるものとしている。微分方程式を解くことにより、以下に示す、1つの開口を有するリザーバからの治療薬の累積放出率が与えられる:
累積放出率=1−cR/cR0=1−exp((−DA/LV)t)
但し、
cR=リザーバ中濃度
=リザーバの容積
D=拡散係数
A=開口の面積
L=開口の厚さ
t=時間
図12は、10週間の間にバイアルに放出された累積量および予測累積放出量を示す。これらのデータは、モデルデバイスからの放出が、可変近似パラメータを使用しない上記モデルにより予測した傾向と概ね一致していることを示している。
例5:円柱状の焼結多孔質チタンシリンダを通るタンパク質の放出
リザーバは、シリンジおよび焼結多孔質チタンシリンダ(アプライド・ポーラス・テクノロジー社、モット・コーポレーション社、またはチャンド・アイゼンマン・メタラジカル社から入手可能)から作製した。これらは、チタン粒子から作製した直径0.062インチ、厚さ0.039インチの焼結多孔質シリンダである。平均孔径が3〜5マイクロメートル程度であり、多孔率は、0.17である。多孔質シリンダは、バブルポイントの測定によればメディアグレード0.2の特性を有する。多孔質シリンダは、デルリンから加工されたスリーブに圧入した。スリーブの1つの平坦面の全面がリザーバ中の溶液に、もう一方の平坦面がバイアル中のレシーバ溶液に露出しており、1.9平方ミリメートルの面積に対応する。1mLポリプロピレン製シリンジの先端を切断し、シリンジの内径よりわずかに大きい外径を有するポリマースリーブを受容するように加工した。多孔質シリンダ/スリーブを、このように改造したシリンジに圧入した。
300mg/mLのウシ血清アルブミン(BSA、シグマ社、A2153−00G)のリン酸緩衝食塩水(PBS、シグマ社、P3813)溶液を調製した。ピストンを取外し、約200μLをシリンジ胴部へ分注することで、溶液をシリンジに導入した。気泡は叩いて上部に集め、空気を多孔質シリンダを通して圧出した。その後、シリンジの目盛りで示される100μLが保持されるまで、BSA溶液を多孔質シリンダを通して圧出した。圧出したBSA溶液を拭き取り、その後PBS中に浸漬して洗い流した。その後、室温で2mLPBSを含有する4mLバイアルにリザーバを配置した。シリコーンチューブを切断して作成した鍔部をシリンジ胴部の回りに配置し、リザーバの頂部がPBSの高さに等しくなるように位置決めした。シリコーンチューブをバイアルの内側に嵌合し、蒸発を防止するストッパとして機能させた。一定期間ごとに、リザーバはPBSを含有する新たなバイアルに移した。多孔質シリンダを通ってリザーバから移動したBSAの量は、BCA(商標)タンパク質分析キット(ピアス社、23227)を使用してバイアル中のBSAの量を測定することで求めた。
図13は、焼結多孔質チタンディスクを通るBSAの累積放出率の測定結果と、多孔質体を通る放出を表すモデルからの予測を示す。測定データとモデルとの間の最小二乗近似(マイクロソフト・エクセル)により、チャネル・パラメータが1.7と決定された。多孔質シリンダは、リザーバおよびレシーバ溶液への露出面積が等しいので、このチャネル・パラメータから、メディアグレード0.2から作製された多孔質チタンシリンダの蛇行率が1.7であることが示唆される。
図13−1は、図13のBSAの累積放出率を180日間測定した結果を示す。測定データとモデルとの間の最小二乗近似(マイクロソフト・エクセル)により、チャネル・パラメータが1.6と決定された。この値は、0.21mmの放出速度指数に対応する。多孔質シリンダは、リザーバおよびレシーバ溶液への露出面積が等しいので、このチャネル・パラメータは、チャネル・パラメータ有効通路長さ1.6に対応し、メディアグレード0.2から作製された多孔質チタンシリンダの蛇行率が1.6であることが示唆される。
例6:マスクした焼結多孔質チタンシリンダを通るタンパク質の放出
リザーバは、例5に記載されたものと同様のシリンジおよび多孔質焼結チタンシリンダから作製した。多孔質焼結チタンシリンダ(アプライド・ポーラス・テクノロジー社.、モット・コーポレーション、またはチャンド・アイゼンマン・メタラジカル社から入手可能)は、直径0.082インチ、厚さ0.039インチ、メディアグレード0.2であり、チタン粒子から作製された。多孔率は、0.17であり、平均孔径は3〜5マイクロメートル程度である。多孔質シリンダは、バブルポイントの測定によればメディアグレード0.2の特性を有する。多孔質シリンダは、デルリンから加工されたスリーブに圧入した。スリーブの1つの平坦面の全面がリザーバ中の溶液に、もう一方の平坦面がバイアル中のレシーバ溶液に露出しており、3.4平方ミリメートルの面積に対応する。1mLポリカーボネート製シリンジの先端を切断し、シリンジの内径よりわずかに大きい外径を有するポリマースリーブを受け入れるように加工した。多孔質シリンダ/スリーブを、このように改造したシリンジに圧入した。接着剤付きのカプトンフィルムをレシーバ溶液に露出する表面に貼り付けてマスクとし、露出面積を減少させた。第1のケースでは、マスクの直径は0.062インチであり、レシーバ溶液へ露出している面積は1.9平方ミリメートルであった。第2のケースでは、直径が0.027インチ、露出している面積は0.37平方ミリメートルであった。
この試験は、以下の3つの条件で行った:1)例5のマスクしていない多孔質シリンダのリザーバと比較のため、直径0.062インチのマスク、ドナー容積100μL、室温;2)直径0.062インチのマスク、ドナー容積60μL、37℃;および3)直径0.027インチのマスク、ドナー容積60μL、37℃。例5と同様にして、シリンジに300mg/mLウシ血清アルブミン(BSA、シグマ社、A2153−00G)のリン酸緩衝食塩水(シグマ社、P3813)溶液を充填した。更に、0.02重量%のアジ化ナトリウム(シグマ社、438456−5G)を防腐剤として、リザーバに配置するBSA溶液およびレシーバ側バイアルに配置するPBSの両方に添加し、両方の溶液を0.2ミクロンのフィルターでろ過した。このとき、シリンジに分注したBSA溶液の重量を測定し、多孔質シリンダを通して圧出された量は、洗い流して、その洗液中のBSAの量を測定することで求めた。BSA溶液の単位密度を仮定して、分注量は、113+/−2μL(条件1)および66+/−3μL(条件2)であった。洗液中の量を減算して、最終リザーバ容積は103+/−5μL(条件1)および58+/−2μL(条件2)であった。その後、リザーバをヒートブロックで37℃にした1mLPBSを含有する5mLバイアルに配置した。一定時間ごとに、リザーバは、新たなPBSを含有するバイアルに移し、レシーバ溶液中のBSA濃度を、例5に記載の方法を使用して求めた。
図14は、条件1(直径0.062インチのマスク、ドナー容積100μL、室温)におけるマスクした焼結多孔質チタンディスクを通してのBSAタンパクの累積放出率が、同じ露出面積のマスクしていない多孔質シリンダを通しての放出率(例5で得たデータ)よりも速いことを示している。例5で求めたチャネル・パラメータ1.7、20℃でのBSA拡散係数(6.1e−7cm/s)、リザーバ容積100μL、および多孔質シリンダのレシーバ溶液への露出面積(A=1.9mm)または多孔質シリンダのリザーバへの露出面積(A=3.4mm)を使用して予測した結果も示す。マスクした多孔質シリンダのデータは、リザーバへの露出面積が大きいものとよりよく一致している。従って、この多孔質シリンダの寸法では、幅が0.7mmのマスクは、多孔質シリンダの有効面積を減少させるのには十分ではない。
図15は、条件2(直径0.062インチのマスク、ドナー容積60μL、37℃)における、マスクした焼結多孔質チタンシリンダを通るBSAタンパクの累積放出率を示す。同図には、例5で求めたチャネル・パラメータ1.7、37℃でのBSA拡散係数(9.1e−7cm/s)、リザーバ容積58μL、および多孔質シリンダのレシーバ溶液への露出面積(A=1.9mm)または多孔質シリンダのリザーバへの露出面積(A=3.4mm)を使用して予測した結果も示す。この場合も、このマスクした多孔質シリンダのデータが、リザーバへの露出面積がより大きい場合によりよく一致している。2つの異なる温度においてモデルとデータが一致していることは、このモデルが温度の影響を取り込んでいることを裏付けている。
図16は、条件3(直径0.027インチのマスク、ドナー容積60μL、37℃)における、マスクした焼結多孔質チタンシリンダ通るBSAタンパクの累積放出率を示す。同図には、例5で決定されたチャネル・パラメータ1.7、37℃でのBSA拡散係数(9.1e−7cm/s)、リザーバ容積58μL、および多孔質シリンダのレシーバ溶液への露出面積(A=0.37mm)または多孔質シリンダのリザーバへの露出面積(A=3.4mm)を使用して予測した結果も示されている。このマスクは、リザーバへの露出面積とレシーバ溶液への露出面積との間の有効面積に対応する放出速度を達成する。図15および図16の結果を併せて、レシーバ溶液への露出面積をより小さくするマスクを使用することでより遅い放出が達成できることが示される。
図13〜図16は、予想外の結果を示している。多孔質構造体の露出面積を減少するために多孔質フリット構造体の面積をマスクすることで減少した放出速度は、対応する面積の変化よりも少ないものであった。多孔質構造体を通しての放出速度は、リザーバに露出した第1の側面とレシーバ溶液に露出した第2の側面の間に配置された多孔質フリット構造体の相互連結チャネルに実質的に対応しており、多孔質フリット構造体の一部が被覆されていても放出速度が維持されることになる。相互連結チャネルの放出速度は、多孔質フリット構造体の有効面積に実質的に対応し、この有効面積は上記したように多孔質構造体内の相互連結チャネルの有効面積に実質的に対応するであろう。放出速度は、相互連結チャネルに依存しているので、少なくとも一部のチャネルが閉塞、例えば多孔質構造体の一部分が覆われていたり粒子で相互連結チャネルの一部分が詰まっていても、放出速度は維持可能である。
例7:焼結多孔質ステンレス鋼シリンダ(メディアグレード0.1)を通るタンパク質の放出
プロトタイプデバイスは、316Lステンレス鋼粒子から作製された、直径0.155インチ、厚さ0.188インチの円柱形状の焼結多孔質ステンレス鋼シリンダ(アプライド・ポーラス・テクノロジー社、モット・コーポレーションまたはチャンド・アイゼンマン・メタラジカル社から入手可能)とチューブから作製した。バブルポイントの測定によれば、多孔質シリンダはメディアグレード0.1の特性を有する。この試験は、メディアグレード0.1ステンレス鋼の抵抗特性を明らかにするために、面積が12mmの既製の大型多孔質シリンダを使用して行った。
これらのデバイスは、テフロン(登録商標)−FEP熱収縮チューブ(ゼウス社、#37950)とホットエアガンとを使用して、一端を多孔質シリンダの回りに、多端を特注のセプタム(ヌシル社、MED14013シリコーンを直径0.145インチに成型)の回りに収縮させた。リザーバの容積(46+/−2μL)は、空のシステムとPBSを充填したシステムの重量差から求めた。PBSの充填は、システムをPBSに浸漬し、真空に引くことにより行った。その後、システムを250°F、15psiで15分間加熱して滅菌し、圧力釜(デニ社、9760)に配置した微量遠心分離管中のPBSに浸漬した。PBSをBSA溶液で押出すために、2本の30G針をセプタムに挿入した。1本はBSA溶液を注入するために使用し、もう1本は湾曲させて押出されたPBS用排出口として使用した。排出口の針ハブが約4分の3まで満たされるような十分な量のBSA溶液を注入した。例6と同様に、BSAおよびPBSはアジ化ナトリウムを含み、調製濃度はBSA中300mg/mLであった。デバイスは、1mLのPBSを含有する1.5mL微量遠心分離管の中に配置し、ヒートブロックで37℃に保温した。シリコーンチューブ片(管の内側に密着、セプタム用孔付き)を使用して、セプタムの底面がPBSとほぼ同じ高さとなるようにデバイスをPBS中に吊り下げた。最初の遠心分離管中の濃度には、充填工程からのBSAが含まれているので廃棄した。一定期間ごとに、デバイスを新たなPBSを含有する遠心分離管に移し、レシーバ溶液中のBSA濃度は、例5に記載の方法を使用して求めた。
図17は、メディアグレード0.1ステンレス鋼焼結チタンディスクを通してのBSAの累積放出率の測定結果を示す。多孔率Pは、このメーカーからは入手不可であったので、チャネル・パラメータで除算した多孔率の単一パラメータを、モデルの最小二乗近似をデータに適用して求めた。焼結多孔質構造体は円柱状であるので、チャネル・パラメータは蛇行率Tとして解釈でき、P/Tは0.07であった。
例8:焼結多孔質ステンレス鋼シリンダ(メディアグレード0.2)を通るタンパク質の放出
プロトタイプデバイスは、316Lステンレス鋼粒子から作製された、直径0.031インチ、厚さ0.049インチの円柱形状の焼結多孔質ステンレス鋼シリンダ(アプライド・ポーラス・テクノロジー社、モット・コーポレーションまたはチャンド・アイゼンマン・メタラジカル社から入手可能)とチューブから作製した。多孔質シリンダは、バブルポイントの測定によればメディアグレード0.2の特性を有する。この多孔質シリンダは、大直径のメディアグレード0.2の多孔質ステンレス鋼シリンダ(データ示さず)を使用しての以前の研究とここに記載されるようなモデルに基づく予測値から決定された特性を有する特注品である。多孔質シリンダの各面の面積は0.5mmであった。
これらのデバイスは、テフロン(登録商標)−FEP熱収縮チューブ(ゼウス社、外径0.125インチ)とホットエアガンとを使用して、一端を多孔質シリンダの回りで、多端を特注のセプタム(ヌシル社、MED14013シリコーンを直径0.113インチに成型)の回りに収縮させた。リザーバの容積(17+/−1μL)は、空のシステムとPBSを充填したシステムの重量差から測定した。PBSの充填は、システムをPBSに浸漬し、真空に引くことにより行った。乾いたデバイスを微量遠心分離管中のPBSに浸漬し、圧力釜(デニ社、9760)中で250°F、15psiで15分間加熱して滅菌した。PBSをデバイスに充填するために、2本の30G針をセプタムに挿入した。1本はPBSを注入するために使用し、もう1本は湾曲させて排出口として使用した。PBSを充填したデバイスの重さを測った後、2本の新たな針をセプタムに挿入し、排出口の針ハブが約4分の3まで満たされるように十分な量のBSA溶液を注入した。その他の実験の詳細は、例7と同様である。
図18Aは、メディアグレード0.2焼結多孔質ステンレス鋼シリンダ通るBSAの累積放出率の測定結果を示す。チャネル・パラメータで除算された多孔率の単一パラメータは、モデルの最小二乗近似をデータに適用して0.12と求められた。焼結多孔質構造体は円柱形状であるので、チャネル・パラメータは、蛇行率Tに対応できる相互連結チャネルの有効長さと解釈される。製造者が求めた多孔率0.17を使用して、蛇行率に対応できるチャネルの有効長さは1.4と求められた。また、これは、PA/FL比(放出速度指数)0.0475mmに対応する。
図18Bは、メディアグレード0.2焼結多孔質ステンレス鋼シリンダからの180日間のBSAの累積放出率の測定結果を示す。チャネル・パラメータで除算した多孔率の単一パラメータは、モデルの最小二乗近似をデータに適用して0.10と求められた。焼結多孔質構造体は円柱形状であるので、チャネル・パラメータは、蛇行率Tに対応できる相互連結チャネルの有効長さと解釈できるであろう。製造者が求めた多孔率0.17を使用して、蛇行率に対応できるチャネルの有効長さは1.7と求められた。また、これは、PA/FL比(放出速度指数)0.038mmに対応する。
例9:硝子体中のルセンティス(商標)濃度の計算
治療薬の硝子体中濃度は、ここに記載されるような式に基づいて予測可能である。表4は、シミュレーション1、シミュレーション2、シミュレーション3、シミュレーション4、およびシミュレーション5に適用したパラメータの値を示す。半減期および硝子体容積は、サルのモデルに対応する(J. Gaudreault et al., Preclinical Pharmacokinetics of Ranibizumab (rhuFabV2) after a Single Intravitreal Administration, Invest Ophthalmol Vis Sci 2005; 46: 726-733) (Z.Yao et al., Prevention of Laser Photocoagulation Induced Choroidal Neovascularization Lesions by Intravitreal Doses of Ranibizumabin Cynomolgus Monkeys, ARVO2009 abstract D906)。放出速度プロファイルを決定するために、パラメータPA/FLを変化することができる。例えば、Aの値が約1mm、多孔率が約0.1(PA=0.1mm)、長さが約1mm、蛇行性に対応できるチャネル近似パラメータが約2(FL=2mm)であるとき、PA/TLは約0.05mmとなる。当業者は、ここに記載される教示に基づいて、長期間にわたって治療薬を徐放するための面積、多孔率、長さ、チャネル近似パラメータを経験的に決定することが可能である。
表4A
表4Bは、ここに記載されるような式と表4Aに記載したサルの半減期の測定値を使用して計算した、サルの眼へのルセンティス(商標)の0.5mgボーラス注入時の硝子体中濃度を示す。最初のカラムはCmaxの測定値(Gaudreault et al.)を使用し、2番目のカラムは用量および硝子体の容積に基づいて計算したCmax値を使用した。ルセンティス(商標)の平均濃度は約46μg/mLであった。ルセンティス(商標)の最小治療濃度は約0.1μg/mLであり、この値は約100%VGEF抑制(Gaudreault et al.)に対応し得るものである。表4Bは、Cmaxの測定値または計算値のどちらを使用しても、0.5mgルセンティス(商標)のボーラス注入が、約1ヶ月間硝子体中濃度を0.1μg/mL以上に維持することを示している。これは、臨床研究において治療的であることが示された1ヵ月毎の投薬と一致している。
表4B
表4B−1
表4C1、表4C2、表4C3、表4C4、および表4C5は、それぞれシミュレーション1、シミュレーション2、シミュレーション3、シミュレーション4、およびシミュレーション5による硝子体液中のルセンティス(商標)の濃度の計算値を示している。これらの結果は、ルセンティス(商標)の硝子体中濃度が、PA/FL≦0.0225mmおよびリザーバ容積≧10μLの特性の多孔質構造体を有するデバイスから放出されるとき約1年以上にわたって最小治療量以上で維持されていることを示すものである。
シミュレーション5は、例8に記載された実験で使用したデバイスに対応する。このデバイスは、リザーバ容積が17μLでありPA/FL=0.047mmの特性をもつ多孔質構造体を有する。このデバイスにルセンティス(商標)を充填する場合、充填用量は、現在ひと月毎に注入される50μLの3分の1に相当する。硝子体中濃度を予測する計算によれば、ひと月毎の用量の3分の1を充填したデバイスは、約6ヶ月間にわたってルセンティス(商標)治療濃度を維持することができることを示している。最初の1ヶ月に用量の半分が送達され、6ヶ月目に98%以上が送達されるが、治療量は6ヶ月間維持される。
デバイスが治療薬を長期間にわたって放出する能力は、有効デバイス半減期により説明可能である。例8のデバイスでは、ルセンティス(商標)の送達の有効デバイス半減期は29日間である。所望の有効半減期を達成するために、リザーバ容積と適切なPA/FLを有する多孔質構造体とを選択してデバイスを構成することができる。
表4C1
表4C2
表4C3
表4C4
表4C5
Z.Yao et al.(Prevention of Laser PhotocoagμLation Induced Choroidal Neovascularization Lesions by Intravitreal Doses of Ranibizumab in Cynomolgus Monkeys, ARVO2009 abstract D906)は、カニクイザルにおいて、レーザー光凝固治療誘導グレードIV脈絡膜新生血管(CNV)病変を100%予防するルセンティス(商標)の最小有効量を決定するための前臨床試験を行った。このモデルは、AMDと関連していることが既に示されている。テストしたすべての用量でルセンティス(商標)の硝子体内注入がグレードIVCNV病変の発生を完全に抑制した。表4Dは、テストした中でルセンティス(商標)総量が最小であったもの(1、6、11、16、21および26日目に5μgの硝子体内注入)に関して、ここに記載される式と表4Aに示す薬剤動態学的パラメータを使用して予測したルセンティス(商標)の硝子体中濃度を示す。このデータは、治療効果を得るために、0.5mgの1回のボーラス注入で得られる高いCmaxを達成する必要がないことを示している。
図19Aは、この予測されたプロファイルを、例8のデバイスで予測されたプロファイルと比較するものである。このデータは、本発明の実施態様によるデバイスからの放出プロファイルは、少なくとも約6ヶ月治療効果があることを支持している。500μgの1回の注入は、1ヵ月ごとにルセンティス(商標)を50μLボーラス注入することに対応しており、硝子体中のルセンティス(商標)(ラニビズマブ)の治療濃度の範囲は、約100μg/mLから、例えば約1ヶ月目における最小阻害(治療)濃度の約0.1μg/mLまで及ぶ。硝子体液中の治療濃度の範囲の最低値に対応する最小阻止濃度は、ここに記載されるような例に従って当業者により経験的に求めることができる。例えば、5μgずつのルセンティス(商標)の注入を6回続ける低用量試験(loss does study)で、少なくとも約1μg/mLの硝子体中濃度が得られ、注入の治療効果をここに記載するように評価することができる。
表4D
ルセンティス(商標)をからなる治療薬の濃度プロファイルは、ここに記載される教示に基づき、またヒト眼中のルセンティス(商標)の薬剤半減期が9日間であることから、下記のように求められた。市販の製剤ルセンティス(商標)を注入して半減期が9日であることを使用した例では、毎月のボーラス注入に対応する製剤の容積をここに記載されるようなデバイスへ注入することで少なくとも約2ヶ月の治療効果が得られるという予想外の結果が示された。デバイスの容積および多孔質構造体は、所定の容積の製剤を受容し、長期間にわたって徐放するよう調整可能である。さらにデバイスの調整には、眼中の治療薬の半減期、例えばルセンティス(商標)の9日間やここに記載される教示に基づいて決定される治療薬の最小阻止濃度を含むことができる。
図19Bは、1回目の50μLを25μLデバイスへ注入し、90日目に2回目の50μLを注入した場合の、硝子体液中のルセンティス(商標)の濃度を求めた結果を示す。計算結果は、FDAが認可した毎月のボーラス注入の50μL投薬量を使用して約90日間眼の治療ができること、注入を例えば約90日毎に繰り返して眼の治療ができることを示している。ルセンティス(商標)は、デバイスに注入される所定量の市販の製剤でもよい。市販のルセンティス(商標)の製剤のラニビズマブ濃度は10mg/mLであるが、例えば下記で注入したラニビズマブの40mg/mL溶液などを参照して他の濃度を使用することも可能である。ここで所定量とは、毎月のボーラス注入量、例えば50μLに対応する。治療デバイスは、25μLの容積を有する、実質的に一定の容積の容器リザーバを備えることができ、50μLの注入のうちの第1の25μL部分は持続および/または制御放出用にリザーバに収容され、50μLの注入のうちの第2の25μL部分は多孔質構造体を通過して25μLのボーラス注入として硝子体の中へ放出される。デバイスへの注入の充填効率は100%未満であってもよく、リザーバ容積および注入容積はここに記載される教示に従って充填効率に基づいて調整することができる。例えば、充填効率は約90%でもよく、治療デバイスの中へ注入される50μLのうち、第1の部分は容器リザーバのチャンバに収容された約22.5μLであり、第2の部分は、デバイスを通過する約27.5μLである。硝子体液中のルセンティス(商標)の初期濃度は、リザーバのデバイス中への注入直後の約60μg/mLに対応する。硝子体液中のルセンティス(商標)の濃度は、90日目に約3.2μg/mLに減少する。1回目の注入後約90日目の2回目の50μLのルセンティス(商標)の注入により、濃度は約63μg/mLへ増加する。硝子体液中のルセンティス(商標)の濃度は、1回目の注入後180日目および第2の注入後90日目に約3.2μg/mLに減少する。これらの計算は、デバイスの中へ50μL注入することで、ルセンティス(商標)の濃度が最小阻止濃度である1mLあたり約3μg以上に連続して維持されることを示している。追加の注入は、患者を治療するための治療薬を送達するために、例えば90日毎に数年間にわたって行うことができる。
図19Cは、1回目の50μLを32μLデバイスへ注入し、90日以降の時点で2回目の50μLを注入した場合の、硝子体液中のルセンティス(商標)の濃度を求めた結果を示す。計算結果は、FDAが認可した毎月のボーラス注入の50μL投薬量を使用して約90日間眼の治療ができること、および注入を例えば約90日毎に繰り返して眼の治療ができることを示している。ルセンティス(商標)は、デバイスに注入される所定量の市販の製剤でもよい。ここで所定量とは、毎月のボーラス注入量、例えば50μLに対応する。この治療デバイスは、32μLの容積を有する、実質的に一定の容積の容器リザーバを備えることができ、50μLの注入のうちの第1の32μL部分は持続および/または制御放出用にリザーバに収容され、50μLの注入のうちの第2の18μL部分は多孔質構造体を通過して18μLのボーラス注入として硝子体の中へ放出される。デバイスへの注入の充填効率は100%未満であってもよく、リザーバ容積および注入容積はここに記載される教示に従って充填効率に基づいて調整することができる。例えば、充填効率は約90%でもよく、治療デバイスの中へ注入される50μLのルセンティス(商標)のうち、第1の部分は容器リザーバのチャンバに収容された約29μLであり、第2の部分は、デバイスを通過する約21μLである。硝子体液中のルセンティス(商標)の初期濃度は、リザーバのデバイス中への注入直後の約45μg/mLに対応する。硝子体液中のルセンティス(商標)の濃度は、90日目に約4μg/mLに減少する。1回目の注入後約90日目の2回目の50μLのルセンティス(商標)の注入により、濃度は約50μg/mLへ増加する。硝子体液中のルセンティス(商標)の濃度は、1回目の注入後180日目および第2の注入後90日目に約4μg/mLに減少する。これらの計算は、デバイスの中へ50μL注入することで、ルセンティス(商標)の濃度が最小阻止濃度である1mLあたり約4μg以上に連続して維持されることを示している。追加の注入は、患者を治療するための治療薬を送達するために、120日毎に数年間にわたって行うことができる。注入する間隔は、最小阻止濃度、放出速度プロファイル、および治療に携わる医師の裁量によりもっと多くても少なくてもよい。
図19Dは、1回目の50μLを50μLデバイスのへ注入し、90日目に2回目の50μLを注入した場合の、硝子体液中のルセンティス(商標)の濃度を求めた結果を示す。計算結果は、FDAが認可した毎月のボーラス注入の50μL投薬量を使用して、約90日間眼の治療ができること、および注入を例えば約90日毎に繰り返して眼の治療ができることを示している。ルセンティス(商標)は、デバイスに注入される所定量の市販の製剤でもよい。デバイスへの注入の充填効率は100%未満であってもよく、リザーバ容積および注入容積はここに記載される教示に従って充填効率に基づいて調整することができる。例えば、充填効率は約90%でもよく、治療デバイスの中へ注入される50μLのルセンティス(商標)のうち、第1の部分はリザーバ容器のチャンバに収容された約45μLであり、第2の部分は、デバイスを通過する約5μLである。硝子体液中のルセンティス(商標)の初期濃度は、リザーバのデバイス中への注入直後の約11μg/mLに対応する。硝子体液中のルセンティス(商標)の濃度は、90日目に約5.8μg/mLに減少する。1回目の注入後約90日目の2回目の50μLのルセンティス(商標)の注入により、濃度は約17μg/mLへ増加する。硝子体液中のルセンティス(商標)の濃度は、1回目の注入後180日目および第2の注入後90日目に約5.8μg/mLに減少する。これらの計算は、デバイスの中へ50μL注入することで、ルセンティス(商標)の濃度が最小阻止濃度である1mLあたり約5μg以上に連続して維持されることを示している。追加の注入は、患者を治療するための治療薬を送達するために、例えば90日毎に数年間行うことができる。
図19Eは、1回目の50μLを50μLデバイスへ注入し、90日目に2回目の50μLを注入した場合の、硝子体液中のルセンティス(商標)の濃度を求めた結果を示す。計算結果は、FDAが認可した毎月のボーラス注入の50μL投薬量を使用して、約130日間眼の治療ができること、および注入を例えば約120日毎に繰り返して眼の治療ができることを示している。ルセンティス(商標)は、デバイスに注入される所定量の市販の製剤でもよい。デバイスへの注入の充填効率は100%未満であってもよく、リザーバ容積および注入容積はここに記載される教示に従って充填効率に基づいて調整することができる。例えば、充填効率は約90%でもよく、治療デバイスの中へ注入される50μLのルセンティス(商標)のうち、第1の部分は容器リザーバのチャンバに収容された約45μLであり、第2の部分は、デバイスを通過する約5μLである。硝子体液中のルセンティス(商標)の初期濃度は、リザーバのデバイス中への注入直後の約11μg/mLに対応する。硝子体液中のルセンティス(商標)の濃度は、133日目に約4μg/mLに減少する。1回目の注入後約130日目の2回目の50μLのルセンティス(商標)の注入により、濃度は約15μg/mLへ増加する。これらの計算に基づいて、硝子体液中のルセンティス(商標)の濃度は、1回目の注入後266日目および第2の注入後90日目に約4μg/mLに減少する。これらの計算は、デバイスの中へ50μL注入することで、ルセンティス(商標)の濃度が最小阻止濃度である1mLあたり約4μg以上に連続して維持されることを示している。追加の注入は、患者を治療するための治療薬を送達するために、例えば90日毎に数年間にわたって行うことができる。
図19B〜図19Pは市販のルセンティス(商標)の製剤の注入に関するものであるが、治療デバイス100は同様にここに記載されるような治療薬の様々な製剤を放出するように構成することが可能であり、例えば表1Aや、FDA認可製剤のオレンジブックや、欧州共同体などの様々な国、共同体、統治領などの同様の認可薬剤に関する書物などを参照することができる。例えば、ここに記載される教示に基づいて、治療デバイス100のパラメータを経験的に決定し、毎月のボーラス注入に対応する市販の製剤の注入を受容し、かつ少なくとも約2ヶ月の長期間、例えば、少なくとも約3ヶ月、あるは例えば約4ヶ月などの間最小阻止濃度以上の量で注入された治療薬を放出するようにデバイスを調整することが可能である。
図19Fは、50μLルセンティス(商標)を放出速度指数が0.05の50μLデバイスに注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度を求めた結果を示す。硝子体液中のラニビズマブの濃度はおよそ9μg/mLのピーク値に達し、約145日間4μg/mLまたはそれ以上である。濃度は約300日間ずっと約1μg/mLを超える。濃度は、360日目に約0.6μg/mLとなり、最小阻止濃度が約0.5であることに基けば1回の注入で1年までの治療に適しているといえる。最小阻止濃度は、ここに記載される教示に基づいて当業者により経験的に決定することができる。
図19Gは、50μLルセンティス(商標)を放出速度指数が0.05の75μLデバイスに注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度を求めた結果を示す。硝子体液中のラニビズマブの濃度はおよそ6.5μg/mLのピーク値に達し、約140日間4μg/mL以上である。濃度は360日間ずっと約1μg/mL以上である。
図19Hは、50μLルセンティス(商標)を放出速度指数が0.05の100μLデバイスに注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度を求めた結果を示す。硝子体液中のラニビズマブの濃度はおよそ5μg/mLのピーク値に達し、約116日間4μg/mL以上である。濃度は360日より長い間ずっと約1μg/mLを超え、360日目は約1.5μg/mLである。
図19Iは、50μLルセンティス(商標)を放出速度指数が0.05の125μLデバイスに注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度を求めた結果を示す。硝子体液中のラニビズマブの濃度はおよそ4.3μg/mLのピーク値に達し、4μg/mL以上にはならない。濃度は360日より長い間ずっと約1μg/mLを超え、360日目は約1.5μg/mLである。
図19Jは、50μLルセンティス(商標)を放出速度指数が0.05の150μLデバイスに注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度を求めた結果を示す。硝子体液中のラニビズマブの濃度は、およそ3.5μg/mLのピーク値に達し、4μg/mL以上にはならない。濃度は360日より長い間ずっと約1μg/mLを超え、360日目は約1.5μg/mLである。
図19Kは、50μLルセンティス(商標)を放出速度指数が0.1の100μLデバイスに注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度を求めた結果を示す。これらの求めた濃度は、図19Fの求めた濃度とほぼ同等であり、長期間の治療濃度プロファイルを得るために、多孔質構造体の放出速度指数をデバイスの容積とともに調整することができることを示している。例えば、硝子体中の治療薬の濃度を半分とするためにリザーバの容積を2倍とした場合、同様の治療濃度プロファイルを得るために放出速度指数を2倍とすることができる。硝子体液中のラニビズマブの濃度はおよそ9μg/mLのピーク値に達し、約145日間4μg/mL以上である。濃度は約300日間ずっと約1μg/mLを超える。濃度は360日目で約0.6μg/mLである。
図19L〜図19Pは、RRIを約0.065〜約0.105の間で変化させた125μLリザーバのデバイスの放出速度プロファイルの例であり、これらのデバイスは、50μLのルセンティス(商標)の注入を受容し少なくとも約180日間最小阻止濃度を超える徐放を行うように調整されている。プロファイルを求めるために、注入効率を100%、硝子体中の薬剤の半減期を9日間として計算した。
図19Lは、50μLルセンティス(商標)を放出速度指数が0.105の125μLリザーバのデバイスに注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度プロファイルを求めた結果を示す図である。180日目の硝子体中のラニビズマブの濃度は約3.128μg/mLである。
図19Mは、50μLルセンティス(商標)を放出速度指数が0.095の125μLリザーバのデバイスに注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度プロファイルを求めた結果を示す図である。180日目の硝子体中のラニビズマブの濃度は約3.174μg/mLである。
図19Nは、50μLルセンティス(商標)を放出速度指数が0.085の125μLリザーバのデバイスに注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度プロファイルを求めた結果を示す図である。180日目の硝子体中のラニビズマブの濃度は約3.185μg/mLである。
図19Oは、50μLルセンティス(商標)を放出速度指数が0.075の125μLリザーバのデバイスに注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度プロファイルを求めた結果を示す図である。180日目の硝子体中のラニビズマブの濃度は約3.152μg/mLである。
図19Pは、50μLルセンティス(商標)を放出速度指数が0.065の125μLリザーバのデバイスに注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度プロファイルを求めた結果を示す図である。180日目の硝子体中のラニビズマブの濃度は約3.065μg/mLである。
リザーバ容積が125μLでありルセンティス(商標)を50μL注入した場合の180日目のラニビズマブ濃度の最適RRIを、ここに記載されるような式に基づいて計算したところ、約0.085であった。最適値は0.085であるが、上記のグラフは、所定量のルセンティス(商標)製剤で、RRIとリザーバ容積を様々な値、例えば最適値の約+/−30%〜+/−50%内で変化させてリザーバおよび放出速度指数を調整することで、最小阻止濃度3μg/mLを超えるラニビズマブの治療量を与えることが可能であることを示している。
表4Eは、図19K〜図19Pに示すようなラニビズマブ濃度プロファイルを求めるために使用されるパラメータ値を示す。
表4E
図19B〜図19Pに示す例の治療濃度プロファイルは、ヒトの眼の硝子体液中の薬剤の半減期を9日として求めた。治療濃度プロファイルは、眼中の治療薬の半減期に応じて拡大・縮小が可能である。例えば、半減期を18日とすると、これらの例の濃度は、長期間におけるグラフに示す値の約2倍となり、半減期を4.5日とすると、濃度は長期間で示される値の約半分となるであろう。例として、半減期が9日間の代わりに18日間の薬剤は、図19Fおよび図19Kに示すような360日目で約0.6μg/mLではなく、約1.4μg/mLの濃度となる。硝子体中の薬剤半減期に基づく濃度プロファイルの倍率変更は、例えば最小阻止濃度と組み合わせて治療デバイスの容積および徐放構造を調整するために使用することが可能である。上記の例はルセンティス(商標)に対して計算されたものではあるが、ここに記載されるような治療薬および製剤、例えば表1Aを参照してここに記載されるものに対しても、同様の計算を行うことが可能である。
ここに記載される教示に基づいて、当業者は、デバイスへ注入される製剤の容積および最小阻止濃度に基づいて、放出速度指数および治療薬の容積を求めることができる。注入される製剤の容積に基づいたデバイス容積および放出速度指数の調整により得られる結果は、予期しないものであり得る。例えば、臨床的利益のある最小阻止濃度が約4μg/mLの場合、1ヶ月分の注入に対応する1回のボーラス注入により、予想外の3ヶ月以上、例えば4ヶ月の治療効果を得ることができる。また、臨床的利益のある最小阻止濃度が少なくとも約1.5μg/mLの場合、1ヶ月分の注入に対応する1回のボーラス注入により、予想外の12ヶ月以上の治療効果を得ることができる。臨床的利益のある最小阻止濃度は、ここに記載されるような臨床研究に基づいて経験的に求めることができる。
図19F〜図19Kの例では、充填効率を100パーセントと仮定しているが、ここに記載される教示に基づいて当業者は、100%未満の充填効率、例えば上記したような90%の充填効率の放出速度プロファイルを求めることが可能である。そのような充填効率は、例えば図7、図7A、図7A1および図7A2を参照して、ここに記載されるような注入器装置および針により達成可能である。
図19Qは、ラニビズマブの硝子体液中での半減期を約9日間とし、10μLの濃縮ルセンティス(商標)(40mg/mL)を放出速度指数が0.01の10μLデバイスへ注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度を求めた結果を示す。これらのデータは、硝子体中のルセンティス(商標)の半減期が少なくとも約9日間である場合、10μLの濃縮(40mg/mL)ルセンティス(商標)を10μLリザーバのデバイスへ注入することにより、ルセンティス(商標)の濃度を少なくとも約180日間少なくとも約2μg/mLを超えるように維持することが可能であり、最小阻止濃度が約2μg/mL以下である場合、このデバイスが少なくとも約180日間の長期間にわたって治療濃度を供給できることを示している。
図19Rは、ラニビズマブの硝子体液中での半減期を約5日間とし、10μLの濃縮ルセンティス(商標)(40mg/mL)を放出速度指数が0.01の10μLデバイスへ注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度を求めた結果を示す。これらのデータは、硝子体中のルセンティス(商標)の半減期が少なくとも約5日間である場合、10μLの濃縮(40mg/mL)ルセンティス(商標)を10μLリザーバのデバイスへ注入することにより、ルセンティス(商標)の濃度を少なくとも約180日間少なくとも約1μg/mLを超えるように維持することが可能であり、最小阻止濃度が約1μg/mL以下である場合、このデバイスが少なくとも約180日間の長期間にわたって治療濃度を供給できることを示している。
図19Sは、ラニビズマブの硝子体液中での半減期を約9日間とし、10μL標準ルセンティス(商標)(10mg/mL)を放出速度指数が0.01の10μLデバイスへ注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度を求めた結果を示す。これらのデータは、硝子体中のルセンティス(商標)の半減期が少なくとも約9日間である場合、10μLの標準市販(10mg/mL)のルセンティス(商標)を10μLリザーバのデバイスへ注入することにより、ルセンティス(商標)の濃度を少なくとも約180日間少なくとも約0.5μg/mLを超えるように維持することが可能であり、最小阻止濃度が約0.5μg/mL以下である場合、このデバイスが少なくとも約180日間の長期間にわたって治療濃度を供給できることを示している。
図19Tは、ラニビズマブの硝子体液中での半減期を約5日間とし、10μL標準ルセンティス(商標)(10mg/mL)を放出速度指数が0.01の10μLデバイスへ注入した場合の、硝子体液中のラニビズマブの濃度を求めた結果を示す。これらのデータは、硝子体中のルセンティス(商標)の半減期が少なくとも約5日間である場合、10μLリザーバのデバイスへ10μLの標準市販(10mg/mL)のルセンティス(商標)を注入することにより、ルセンティス(商標)の濃度を少なくとも約180日間少なくとも約0.25μg/mLを超えるように維持することが可能であり、最小阻止濃度が約0.25μg/mL以下である場合、このデバイスが少なくとも約180日間の長期間にわたって治療濃度を供給できることを示している。
例10:懸濁剤から薬剤を放出するデバイスの目標デバイス特性の計算
トリアムシノロンアセトニドは、ブドウ膜炎や他の眼炎症を伴う疾患の治療に使用されるコルチコステロイドである。コルチコステロイドの局所投与に反応しない患者に、トリアムシノロンアセトニドの懸濁剤4mgを硝子体内注入することが可能である。ここに記載されるような計算は、長期間にわたって治療量を放出するであろうデバイスの特性を求めるために行われた。
市販の薬剤(40mg/mLトリアムシノロンアセトニド)0.4mgを充填したリザーバ容積が10μLのデバイスとする。計算は、0.2M塩化カリウム中37℃で測定したトリアムシノロンアセトニドの溶解度の値19μg/mLと、小分子の拡散係数の代表値の5e−6cm/sを使用して行った。目標放出速度は、公表された臨床データに基づいて1μg/日とする。P/F=0.12および厚さ0.5mmの、例8の特性をもつメディアグレード0.2のステンレス鋼を例とする。これらの値を使用して行った計算によれば、面積5mmの多孔質シリンダを含むデバイスで治療放出速度を達成できることが示唆される。これは、内径2mmおよび多孔質チューブ長さ1mmを有する円柱状のデバイスにより達成できる。あるいは、デバイスの端部を、高さ0.8mm(厚さ0.5mmの多孔質面プラス長さ0.3mm)の多孔質チューブを有する多孔質カップとしてもよい。
硝子体中の小分子の半減期を典型的な値である3時間と仮定すると、これらの計算は、このデバイスにより、定常状態でトリアムシノロンアセトニド硝子体中濃度が0.12μg/mLとなることを示唆している。
例11:リザーバに配置され多孔質フリット構造体を通して放出される治療薬懸濁剤の放出速度プロファイルの計算
図20は、例10と同様なリザーバにおける治療薬懸濁剤の時間放出プロファイルの計算結果を示す。RRIが1.2mmの10μLデバイスに関して、ヒト硝子体中のトリアムシノロンアセトニド濃度を求め示した。計算は、上記に示した懸濁剤用の式に基づいて行った。プロファイルは、数値シミュレーションにより作成した。T=0で即時に一定送達速度の1μg/日となると仮定すると、ヒト眼硝子体中の濃度が1日で定常状態値の99%以内に達する。薬剤放出プロファイルの反対側の端では、シミュレーションは、実質的にすべの固形薬剤が無くなったときの硝子体中濃度を示すが、溶解した薬剤の99%を超える量が1日以内に送達されている。
硝子体中の小分子の半減期の典型的な値が3時間であると仮定すると、これらの計算によれば、このデバイスによりウサギまたはサル(硝子体容積1.5mL)における実質的定常状態のトリアムシノロンアセトニド硝子体中濃度として0.12μg/mL、ヒト眼(硝子体容積4.5mL)におけるものとして0.04μg/mLを達成することが示された。定常状態硝子体中濃度は、リザーバ中の懸濁剤の固形トリアムシノロンアセトニドが無くなるまで維持される。図20に示すように、10μLリザーバ容積および放出速度指数1.2mmのデバイスでは、約400日の間ヒト硝子体中で実質的に一定の薬剤濃度を与えることが可能である。ここに記載される教示に基づいた更なる実験および臨床研究を行うことにより、ヒト患者におけるin situ放出速度プロファイル、さらに目標とする薬剤放出時間にわたる治療効果を与えるように適切に構成された薬剤リザーバ容積および放出速度指数を求めることができる。実質的に一定の薬剤濃度は、有用な治療を可能とし、副作用を低減する。例えばコルチコステロイドやここに記載されるようなその類似体の懸濁剤などの、ここに記載されるような多様な治療薬の多様な懸濁剤に関して、同様の研究を行うことが可能である。
例12:様々なサイズのリザーバに連結された多孔質フリット構造体を通るアバスチン(商標)の放出速度プロファイルの測定および放出速度プロファイルのリザーバサイズへの依存性
図21は、実質的に同様の多孔質フリット構造体、16μLリザーバおよび33μLリザーバを備える治療デバイスの放出速度プロファイルを示す図である。各フリットの放出速度指数は約0.02であった。16μLリザーバを備える2つの治療デバイスおよび33μLリザーバを備える2つの治療デバイスの放出速度を示す。33μLリザーバを備えるデバイスは、16μLリザーバを備えるデバイスの約2倍の速度でアバスチン(商標)を放出した。これらの測定データによれば、放出速度プロファイルは放出速度指数およびリザーバサイズにより決定できるので、長期間にわたって治療薬を放出するように放出速度指数およびリザーバを構成することができることを示している。
第1の研究:16μL容積リザーバを使用して、データを下記のように測定した:25mg/mLアバスチン(商標);フリット#2(0.031x0.049インチ、メディアグレード0.2μm、316L SS、モット・コーポレーション);上記例8と実質的に同様の材料(テフロン(登録商標)熱収縮チューブおよびシリコーンセプタム);37C;データは、2つの複製サンプルのうちの1つが気泡を生じたときに中断する。下記表5Aのデータ参照。
第2の研究:33μL容積リザーバを使用して、データを下記のように測定した:25mg/mLアバスチン(商標);フリット#2(0.031x0.049インチ、メディアグレード0.2μm、316L SS、モット・コーポレーション);固体ビーズから加工し、金属棒で閉塞した;37C;データは、2つの複製サンプルのうちの1つが気泡を生じたときに中断する。
表5A
SSは、予測速度と測定速度の差の2乗の平均であり、%CVは、公知の統計パラメータである変動係数を意味する。
例13:多孔質フリット構造体を通るアバスチン(商標)の測定された放出速度プロファイル
図22Aは、厚さ0.049インチの多孔質フリット構造体によるアバスチン(商標)の累積放出率を示す。実験で使用したものは:25mg/mLアバスチン(商標);フリット#2(0.031x0.049インチ、メディアグレード0.2μm、316L SS、モット・コーポレーション);加工したポリカーボネート代替品、ネジ付き;リザーバ容積37μL;37C。テストした各デバイスのデバイス番号および対応するRRI値を下記の表5Bに示した。測定に基づいて求めたRRIは0.02であり、ここに記載されるような治療薬の放出モデルと一致している。各テストデバイスのRRIの測定値間にいくらかの変動があることに留意すべきであるが、各デバイスのRRIを治療薬の放出率を求めるために使用することが可能であり、多孔質構造体の特性については、患者に配置する前、ここに記載されるようなガス流量によってさらにRRIを求めることが可能である。
表5B
図22B1は、厚さ0.029インチの多孔質フリット構造体によるアバスチン(商標)の累積放出率を示す。実験で使用したものは:25mg/mLアバスチン(商標);フリット#3(0.038x0.029インチ、メディアグレード0.2μm、316L SS、モット・コーポレーション);加工したポリカーボネート代替品、ネジ付き;リザーバ容積37μL;37C。テストした各デバイスのデバイス番号および対応するRRI値を下記の表5Cに示した。測定に基づいて求めたRRIは0.034であり、ここに記載されるような治療薬の放出モデルと一致している。各テストデバイスのRRIの測定値間にいくらかの変動があることに留意すべきであるが、各デバイスのRRIを治療薬の放出率を求めるために使用することが可能であり、多孔質構造体の特性については、患者に配置する前、ここに記載されるようなガス流量によってさらにRRIを求めることが可能である。
表5C
表5Dは、表5Bをさらに続けて、130日までの実験結果を示す。同様に、表5Eは表5Cの続きを示す。両者において、RRIは、各デバイスから得られた速度データの近似により求めた。130日までのデータの解析において、最初のデータ点は近似から除外したが、これは、モデルでは時間ゼロにおいて最大送達速度が発生すると仮定しているが、放出プロファイルの測定では始動時間がしばしばみれれるからである。始動時間は、おそらくフリット中のすべての空気を押出すのにかかる時間と関係しているであろう。フリット中の空気を押出すための様々な技術を使用することで、始動時間を短縮できるかもしれない。
この初期のデータには、デバイスの充填中にネジに付着し実験を始める際に完全に洗い流されなかった過剰のタンパク質に由来する混入物など実験上の問題点と関係するとみられるノイズが含まれている。バイアルからバイアルへデバイスを移す間に、レシーバ液がタンパク質を洗い流すことがあり、そうしないこともあるので、混入はランダムに起こっているようである。より正確なRRIの評価は、低いSS値により指示される、異常値が少ないか全くないデバイスの使用により得ることが可能である。その場合、表5Dおよび表5EのRRI値はそれぞれ0.014および0.030mmとなる。45日までのデータおよび130日までのデータから得られたRRI値が同じであることは、モデルの妥当性を支持している。
表5D
表5E
図22B2は、図22B−1と同様な厚さ0.029インチの多孔質フリット構造体によるアバスチン(商標)の放出速度を示す。放出速度は、測定値および累積放出率から求めることが可能である。データの異常値は、mBCAタンパク質分析でシグナルを与える混入物などの測定誤差に関係するものであろう。
図23Aは、容積20μLのリザーバによるアバスチン(商標)の累積放出率を示す。実験で使用したものは:25mg/mLアバスチン(商標);フリット#6(0.038x0.029インチ、メディアグレード0.2μm、316L SS、モット・コーポレーション);加工したポリカーボネート代替品ネジ付き;37C。測定で求めたRRIは0.05mmであり、ここに記載されるような治療薬の放出のモデルと一致する。
図23A−1は、図23Aと同様な容積20μLのリザーバによる約90日間のアバスチン(商標)の累積放出率を示す。RRI0.053mmは、図23のRRI0.05に実質的に対応し、多孔質構造体を通る治療薬の放出の安定性を実証している。
図23Bは、図23Aと同様な放出速度を示す。この放出速度データは、放出速度が約5μg/日〜約8μg/日であることを示している。初日の初期放出速度は、その後の速度よりもわずかに小さいが、この放出速度は、薬剤放出モデルによる治療効果を与えるに十分高いものである。おそらく多孔質構造体の相互連結チャネルを湿潤することに関連して、放出速度プロファイルが安定するためには約数日の初期期間が必要であるかもしれないが、放出速度プロファイルは、放出速度指数(RRI)0.05に実質的に対応する。ここに記載される教示に基づいて、当業者は、少なくとも約1ヶ月、例えば少なくとも約3ヶ月、6ヶ月以上の長期間にわたる追加データを使用して放出速度プロファイルを求めることにより、長期間にわたる放出速度プロファイルを決定することが可能である。
図23B−1は、図23A−1と同様な放出速度を示す。
図24Aは、メディアグレード0.1の多孔質フリット構造体によるアバスチン(商標)の累積放出率を示す。この実験では使用したものは、25mg/mLアバスチン(商標);フリット#5(0.038x0.029インチ、メディアグレード0.1μm、316L SS、モット・コーポレーション);加工したポリカーボネート代替品ネジ付き;リザーバ容積20μL;37C。測定で求めたRRIは0.03であり、ここに記載されるような治療薬の放出のモデルと一致する。
図24A−1は、図24Aと同様なメディアグレード0.1の多孔質フリット構造体によるアバスチン(商標)の約90日間の累積放出率を示す。放出速度0.038mmは、図24Aの放出速度0.03に実質的に対応し、多孔質構造体を通る治療薬の放出の安定性を実証している。
図24Bは、図24Aと同様な放出速度を示す。この放出速度データは、放出速度が1日当り約2μg〜約6μgであることを示している。初日の初期放出速度は、その後の速度よりもわずかに小さいが、この放出速度は、薬剤放出モデルによる治療効果を与えるに十分高いものである。おそらく多孔質構造体の相互連結チャネルを湿潤することに関係して、放出速度プロファイルが安定するためには約数日の初期期間が必要であるかもしれないが、放出速度プロファイルは、放出速度指数(RRI)0.03に実質的に対応する。ここに記載される教示に基づいて、当業者は、少なくとも約1ヶ月、例えば少なくとも約3ヶ月、6ヶ月以上の長期間にわたる追加データを使用して放出速度プロファイルを決定することにより、長期間にわたる放出速度プロファイルを決定することが可能である。
図24B−1は、図24A−1と同様な放出速度を示す。
例14:治療薬のin vivo最小阻止濃度に基づく治療デバイスのサイズおよび寿命の決定
治療デバイスのサイズ、放出速度プロファイル、およびリザーバ中の期待治療薬濃度を求めるために、数値計算を行った。リザーバ中の濃度は、デバイスの有用寿命、すなわち治療薬のリザーバへの注入の間隔、あるいは他の治療薬の置換に対応するであろう。
表6Aは、治療薬がMIC以上の濃度でデバイスから放出された日数を示す。これらの日数は、デバイスの有効寿命すなわちデバイスへの注入間隔の有効時間と対応する。計算結果は、10mg/mLの薬剤濃度を有する20μLリザーバ容積のRRIおよびMICに基づいた長期間放出の日数を示す。RRIは、0.01〜0.1の範囲であり、MICは0.1〜10の範囲であり、ここに記載されるような実験および臨床研究により求める。モデルでは、硝子体中の治療薬の半減期は、人体データに基づいて9日間と仮定した。Cmaxは、例えばデバイスへの治療薬の配置または注入から数日以内の硝子体液中の治療薬の最大濃度を示している。これらのデータは、デバイスが、0.1、0.5、1、2および4μg/mLのMICに対してそれぞれ約756日間、385日間、224日間、および62日間治療薬の濃度を維持することができることを示している。例えば、治療薬が、MICが約0.5のルセンティス(商標)である場合、デバイスは薬剤治療濃度を1年間維持することができる。また、これらの数値データは、デバイスから放出される治療薬の濃度が現行の臨床ボーラス注入の範囲内であることを示している。例えば、0.01〜0.1のRRIに対して、Cmaxはそれぞれ2.1〜11.9の範囲であり、ルセンティス(商標)などの治療薬の最大放出は患者にとって安全範囲内である。
当業者は、リザーバにおけるルセンティス(商標)などの治療薬の安定性を決めるための実験を行い、リザーバのサイズや注入や除去の間隔を調整できる。治療薬は、治療デバイスでの使用に適した安定性を備えるように選択、配合することが可能である。
表6A
表6Bは、容積20μL、硝子体中T1/2=9日間、リザーバ中薬剤濃度=40mg/mLである治療デバイスにおいて、MICを超える時間(日数)の計算結果を示す。表6Bの実施態様には、表6Aの実施態様と同様の成分が含まれ、40mg/mLの濃度とすることによりMICを超える時間が改良された。例えば、MICを超える時間は、0.1、0.5、1、2、4および7μg/mLのMICに対して、それぞれ1079、706、546、385、225および95となる。例えば、治療薬がMIC約0.5のルセンティス(商標)であれば、デバイスは薬の治療濃度を約2年間維持することができる。また、これらの数値データは、デバイスから放出される治療薬の濃度が現行の臨床ボーラス注入の範囲内であることを示している。例えば、0.01〜0.1のRRIに対して、Cmaxはそれぞれ8.4〜47.6の範囲であり、ルセンティス(商標)などの治療薬の最大放出は患者にとって安全範囲内である。
当業者は、リザーバにおけるルセンティス(商標)などの治療薬の安定性を決めるための実験を行い、リザーバのサイズや注入や除去の間隔を調整できる。治療薬は、治療デバイスでの使用に適した安定性を備えるように選択、配合することが可能である。
表6B
表6Cは、容積50μL、硝子体T1/2=9日間、リザーバ中薬剤濃度=40mg/mLである治療デバイスにおいて、MICを超える時間(日数)の計算結果を示す。表6Bの実施態様には、表6Aの実施態様と同様の成分が含まれ、40mg/mLの濃度とすることによりMICを超える時間が改良された。例えば、MICを超える時間は、0.1、0.5、1、2、4および7μg/mLのMICに対して、それぞれ2706、1737、1347、944、542および218となる。例えば、治療薬は、MIC約0.5を有するルセンティス(商標)であり、デバイスは薬の治療濃度を2年間維持することができる。また、これらの数値データは、デバイスから放出される治療薬の濃度が現行の臨床ボーラス注入の範囲内であることを示している。例えば、0.01〜0.1のRRIに対して、Cmaxはそれぞれ9.1〜64.7の範囲であり、ルセンティス(商標)などの治療薬の最大放出は患者にとって安全範囲内である。
当業者は、リザーバにおけるルセンティス(商標)などの治療薬の安定性を決めるための実験を行い、リザーバのサイズや注入や除去の間隔を調整できる。治療薬は、治療デバイスでの使用に適した安定性を備えるように選択、配合することが可能である。
表6C
表6A〜表6Cに示す例は、ここに記載される教示に基づいて当業者により種々の方法で変更可能である。例えば、50μLリザーバは、治療デバイスの注入後にリザーバが膨張した構成をとるようにしてもよい。所望の長期間の放出を与えるよう、リザーバおよび/または治療薬の量を調整することが可能である。
ここに記載されるような多孔質フリット構造体は様々な治療薬に使用することができ、例えば劣化して粒状となった治療薬の放出を制限することができる。実施態様に関連した研究によって、少なくともいくつかの治療薬は劣化して粒状となり得、劣化した治療薬を含む粒子は患者に望ましくない影響を与えるかもしれないことが示唆されており、ここに記載されるような多孔質フリット構造体は、そのような粒子を少なくとも部分的に選別除去して、劣化した治療薬の潜在的副作用を抑制することが可能である。
表6Dは、容器内の薬剤リザーバの適切な容積を与えるようにここに記載される教示に従って構築された治療デバイスのサイズの例を示すものであり、そのようなデバイスは、ここに記載されるような多様な長さ、幅、および構造を有することができる。例えば、フリット外径(以下、「外径」)は、種々の方法で構成することができ、約1mm、例えば約0.5mmであってもよい。フリットの長さ(厚さ)は約1mmであってもよい。フリットの容積は、例えば約0.785μL、または約0.196μLであってもよい。リザーバの容積は、例えば約0.4μL〜約160μLであってもよい。治療デバイスの容積は、約0.6μL〜約157μLであることができ、例えば内腔を備えるなど種々の方法で配置可能であり、実質的に一定の容積リザーバを有するか、膨張式リザーバを有してもよい。デバイスの断面の幅は、例えば多様な半径などの多様なサイズに対応し、半径は例えば約0.3mm〜約3.5mm範囲であることができる。デバイスの断面幅と対応する直径は、約0.6mm〜約7mmの範囲であることができる。多孔質構造体、容器および保持構造体を含めたデバイスの長さは、多様なサイズであり得、例えば約2mm〜約4mmの範囲であることができる。デバイスは、実質的に一定の直径を備えてもよく、あるいは、膨張可能であることができ、ここに記載したような固定式または展開式保持構造体を有してもよい。
表6D
例15A:多孔質フリット構造体を通る治療薬放出のモデルとしての小放出速度プロファイルの計算および測定
多孔質フリット構造体を通るリザーバからのフルオレセインの放出についての研究を、多孔質フリット構造体を通る小分子薬剤の放出率を求めるために行った。フルオレセインモデルは、ここに記載されるような多孔質フリット構造体およびリザーバが小分子薬剤の送達のために好適に使用できることを示している。フルオレセインデータと併用して、アバスチン(商標)、ルセンティス(商標)、およびBSAの放出プロファイルは、多孔質フリット構造体およびリザーバが多様な分子量やサイズの多様な薬剤、分子、および治療薬の徐放に使用できることを示している。
図25Aは、メディアグレード0.2の多孔質フリット構造体によるフルオレセインの累積放出率を示す。実験で使用したものは:2mg/mLフルオレセインナトリウム;フリット#2(0.031x0.049インチ、メディアグレード0.2μm、316L SS、モット・コーポレーション);加工したポリカーボネート代替品ネジ付き;37C。フルオレセイン試料は、プレートリーダー付きの492nmのUV吸光度により分析した。測定で求めたRRIは0.02であり、ここに記載されるような治療薬の放出モデルと一致する。
図25A−1は、図25Aと同様なメディアグレード0.2の多孔質フリット構造体による約90日間のフルオレセインの累積放出率を示す。最初の4つのデータ点に基づく平均RRIは、0.02mmであった。90日間放出するための平均RRI(第1の点を除いた)は、0.026mmである。これらのデータは、放出速度の安定性および多孔質フリット構造体が小分子送達または大分子送達、あるいはそれらの組み合わせに使用可能であることを示している。
図25Bは、図25Aと同様な放出速度を示す。放出速度データは、放出速度が約1.0μg/日〜約1.8μg/日であることを示している。第1日目の初期放出速度はその後の放出速度よりもわずかに低いが、放出速度は、薬剤放出モデルによる治療効果を与えるに十分に高い数値である。おそらく多孔質構造体の相互連結チャネルの濡れ性に関するものであろうが、放出速度プロファイルが安定するのに約1日の初期期間が必要であるが、放出速度プロファイルは実質的に0.02の放出速度指数(RRI)に対応している。ここに記載される教示に基づいて、当業者は、少なくとも約1ヶ月、例えば少なくとも約3ヶ月、6ヶ月以上の長期間にわたる追加データを使用して放出速度プロファイルを求めることにより、長期間にわたる放出速度プロファイルを決定することが可能である。
図25B−1は、図25A−1と同様な放出速度を示す。
例15B:多孔質フリット構造体を通るルセンティス(商標)の放出速度プロファイルの測定
実験で使用したもの:10mg/mLルセンティス(商標);加工したポリメチルメタクリレート代替品、ネジ付き;リザーバ容積30μL;37C。多孔質フリット構造体はすべて316L SS(モット・コーポレーション)である。示したデータは、気泡成長またはレシーバ容積の低下を示したいくつかのサンプルを除いたすべてのデバイスの測定データである。
表6Eは、以下に示す表とグラフに含まれている48デバイス中の39の結果をを示す。表6Eに示すin vitro研究のデータは、ルセンティス(商標)が多孔質フリット構造体を有するデバイスで送達されることを示している。その直径は、0.031インチ〜0.038インチの範囲であり、長さは0.029〜0.049の範囲である。メディアグレードは0.1〜0.3の範囲、RRIは0.014〜0.090の範囲である。データのばらつきは大変小さく、ヒトのin vivo治療に適していることを示しており、すべてのケースで%CVは10%以下であり、測定した5種類のデバイス構成のうち4つで3%未満となっている。
いくつかの測定結果は除外されているが、この除外は適切なものであり、in vivoモデルと実質的に異なるin vitroテスト条件に関わることである。5つのデバイスは気泡成長のために除外され(10%)、4つのデバイスは各デバイスの1つの時点でレシーバ容積の問題が発生して除外した(8%)。後者は、密閉が不適当なバイアルからの蒸発やピペット操作によるエラーにより、レシーバ容積が予想値未満であることと関わる実験誤差であり得る。いくつかのケースでは、in vitro実験装置は気泡形成に影響されやすく、この点で、生体の眼が治療デバイスからの酸素を再吸収できるin vivoモデルとは実質的に異なっている。気泡は、レシーバ液が37°Cに加熱されるときに形成され、37°Cでは気体濃度は溶解度よりも大きい。気泡形成を最小限に抑えるために、レシーバ溶液は、デバイスへの挿入前に脱気した。これらのin vitro実験研究は、サンプルの脱気がin vitro分析に有用であることを示唆している。
表6E
図25Cは、直径0.038インチ長さ(厚さ)0.029インチのメディアグレード0.2の多孔質フリット構造体を通る約30日間のルセンティス(商標)の累積放出率を示し、表6Eの第2横列に示す放出速度0.061に対応している。
図25Dは、図25Cと同様なデバイスの放出速度を示す。
図25Eは、RRIが約0.090〜約0.015である30μLデバイスによる約30日間のルセンティス(商標)の累積放出率を示す。
図25Fは、図25Eと同様なデバイスの放出速度を示す。
図25E1および図25F1は、それぞれを図25Eおよび図25Fにおけるルセンティス薬剤放出試験を6ヶ月まで測定したものを示す。最も速い放出RCEを有する2つのデバイスのデータは、治療薬を実質的に使い切った6ヶ月以前に終わっている。
上記の実験の測定データは、ここに記載されるような多孔質構造体およびリザーバの放出速度モデルと一致して、広範囲のフリット直径、厚さ、およびメディアグレードで30日間ルセンティス(商標)を安定して放出することを示している。例えば、メディアグレード、厚さ、直径、およびリザーバ容積は、所定の目標最小阻止濃度を超える濃度で所定期間の徐放を行うように調整可能である。アバスチン(商標)およびフルオレセインのデータと合わせると、これらのデータは、ここに記載されるような放出モデルと一致して、多様な治療薬を長期間にわたって安定して放出できることを示している。
例16:多孔質フリット構造体の走査電子顕微鏡像
図26Aおよび図26Bは、それぞれメディアグレード0.2および0.5メディアグレード多孔質材料の多孔質フリット構造体の破断端縁部の走査電子顕微鏡像を示す。市販のサンプルは、モット・コーポレーションから入手し、316Lステンレス鋼からなるものであった。多孔質構造体および治療薬を放出する材料内の相互連結チャネルを示すために、サンプルを機械的に破損した。顕微鏡画像は、第1表面の開口と第2表面の開口との間に配置された複数の相互連結チャネルを示している。
図27Aおよび図27Bは、図26Aおよび図26Bのサンプルのそれぞれメディアグレードが0.2および0.5の多孔質フリット構造体の表面の走査電子顕微鏡像を示す。画像は、図26Aおよび図26Bと同様な相互連結チャネルに連結された表面上の複数の開口を示している。
例17:治療薬送達デバイスとの使用に適した多孔質フリット構造体を特定するための、多孔質フリット構造体のメカニカルフローテスト
サンプル要素の相対的特性は、フリットを、限定するものではないが圧力減衰およびフローテストなどの多様なメカニカルテストに供することで求められる。これらのテストを、例えばRRIなどの薬剤放出速度情報と組み合わせることで、デバイスの放出プロファイルを求めることができる。これらのテストは、治療デバイスに配置した多孔質構造体に対して行ってもよく、デバイスの多孔質構造体を通る流れを定量し、多孔質構造体の適性を決めることが可能である。同様のテストは、治療デバイスに取り付ける前の多孔質構造体を定量化するために使用することも可能である。例えば品質管理検査として、少なくとも治療デバイスのいつくかでは、部分的に組み立てた治療デバイスに取り付けた多孔質構造体のガス流量により評価することが可能である。いくつかの実施態様では、多孔質構造体が治療薬の放出に適していること、例えば治療デバイスの支持部などデバイスに固着することを確かめるために、リザーバへ治療薬を挿入する前かつ患者への挿入前に、部分的に組み立てた、または実質的に組み立てた治療デバイスをフローテストに供することができる。
これらのテストは、種々の作業流体を利用することが可能であるが、ほとんどの場合は空気や窒素などの容易に入手可能な気体を使用して行われるであろう。今まで、フローテストおよび圧力減衰テストは、他の化学的または薬理学的機能などのテスト結果と相関しているであろう異なるフリット特性を特定するために使用されてきた。
固定
上記の各テスト方法では、供試体をテスト機器へ機械的に接続することが行われ、多くの技法が模索され使用されてきた。これらの固定具には、供試体を確実に固着する手段(熱復元性チューブ、弾性チューブ、比較的硬質な部品への圧入など)と便利で繰り返し可能なテスト機器への付着を可能とする連結手段(ルアー、タケノコ継ぎ手、クイックコネクト継ぎ手など)の両方が含まれる。
テスト機器
所望のテストは、それぞれ市販の機器を使用して設計・実施するか、あるいは容易に入手可能な機器を組み立ててカスタム仕様のテスト構成体を作成することで実施できる。ここでも、これらの2つのアプローチを評価した。実際のシステムは、供試体を接続する手段、制御可能供給源(通常は、制限するものではないが、圧力)、圧力計(または他の圧力測定機器)、およびテスト条件の測定および/または分析のためのデータ収集に使用する1つ以上の変換器(圧力、フローなど)を備えることができる。
例17A。治療薬剤送達デバイスとの使用に適した多孔質構造体を特定するための圧力減衰試験
図28は、ここに記載されるような実施態様による治療デバイスとの使用に適した多孔質フリット構造体を特定するために、多孔質構造体をテストするための圧力減衰テストおよびテスト装置を示す。
圧力減衰試験のひとつの方法は、図28に模式的に示す機器を使用して行われる。初期圧は、シリンジ、圧縮空気、圧縮窒素などの外部ソースによりシステムへ印加する。圧力計は、単に供給源ゲージ圧を表示するか、または供試体全体にわたっての実際の圧力差を表示するように構成することができる。固定した供試体のひとつの側面は通常大気に露出しており、圧力を生成し、この圧力がテストされるフリットの特性により決定される速度で減衰する。瞬間圧力を圧力変換器により測定してシグナル変換し、データ取得モジュール(DAQ)へ供給し、そこからコンピューターへ転送する。その後、圧力降下速度は記録され、他のフリットの性能や合格判定要件/仕様と比較するために使用される。この比較は、任意の時間における圧力をおおまかに比較することで行ってもよく、あるいは出力された圧力減衰曲線を直接比較することで行ってもよい。
テスト例の手順では、圧力計により表示されるように僅かに400mmHg超えるようシステムを加圧する。コンピューターとDAQは、圧力が400mmHg未満に降下したときにデータ収集を始めるように構成されており、約0.109秒毎にデータ点を取り込む。テストはいつでも中断可能であるが、フリットフロー性能(例えば、400mmHgから300mmHgおよび400mmHgから200mmHgへの減衰にかかった時間)を直接比較できるように、圧力減衰データの経過にそった標準的な飛び飛びの点を選択することが適当であろう。
例17B。治療薬剤送達デバイスとの使用に適した多孔質構造体を特定するための圧力減衰試験
図29は、ここに記載されるような実施態様による治療デバイスとの使用に適した多孔質フリット構造体を特定するために、多孔質構造体との使用に適した圧力フローテストおよびテスト装置を示す。
同様の機器一式を使用して、供試体を通る流れの特性を調べることが可能である。このテストでは、供給源の圧力を常時既知の圧力に調節し、作業液体の流れが、質量流量計を通りその後固定された供試フリットを通るようにする。圧力減衰テストと同じく、フリットの特定の特性が、システムを通って流れる作業流体の速度を決定する。更に正確度を高めるために、固定された供試フリットのもう一方の開放端の圧力を調節して、背圧、ひいては供試体の全体にわたる圧力降下を制御してもよい。
フローテストは、方法の即時性という点において、圧力減衰テストに比して有利でありえる。圧力の降下を待つのではなく、サンプルを通る流れはすぐに安定し、多数のサンプルのテストを迅速に行うことを可能とする。
テスト例の手順では、調節圧縮シリンダから、システムへ、30プサイグの一定供給源圧力と1プサイグの一定背圧を供給する。テスト流体は、質量流量計で測定される固有の速度(圧力に依存するが、10〜500sccmの範囲と予想される)で供試フリットを通って流れる。
例17C:気体の流量に基づく治療放出速度の決定
表7は、多孔質構造体を通る酸素や窒素などの気体の流量に基づいて、治療薬の放出、例えばRRIを求めるために使用可能な表を示す。多孔質構造体を通る流量は、気体圧の減衰時間として測定可能であり、ここに記載されるように、例えば多孔質フリット構造体全体にわたっての圧力降下によって多孔質構造体全体にわたっての流量を測定する。流量およびRRIは、材料のメディアグレードに基づいて求めることができ、例えばモット・コーポレーションから入手可能な市販のメディアグレード材料を使用できる。治療薬は、多孔質構造体、あるいは同様のテスト分子を通って測定される。初期測定では、ここに示した多孔質フリット構造体を使用してアバスチン(商標)のRRIを測定した。ここに記載される教示に基づいて、当業者は、気体の流量と治療薬の放出速度の相関性を経験的に決めるための実験を行うことが可能である。
表7
上記の部分的に埋められた表は、収集したフリットのデータの量と性質を示している。
a)フリットのQC受入検査および
b)デバイスのQC最終組立検査
を可能とするために、何らかの非破壊試験(例えば、薬剤放出テストではなく)を使用することが想到される。
当業者は、強制気体流量よりもむしろ拡散に依存する実際の薬剤放出テストと1つ以上の「フロー」テストとの相関を示すことができるであろう。データは、フリットのフローテストが、再現できかつ期待通りであることを示唆している。
予備的なテストでも、フリット単独で行ったテストが、組み立てたデバイスとしてのフリットと実質的に同様であることを示している。
例18:ヒトにおけるルセンティス(商標)のin vivo最小阻止濃度の決定
硝子体内注入により標準用量のルセンティス(商標)(500μg)を直接投与することが滲出型AMDに罹患した患者の症状を軽減する効果があることは既に示されているが、以下の臨床研究は、より低濃度の使用で滲出型AMDを治療できることを示している。ここに記載されるようなデバイスを用いれば、ボーラス注入の1ヶ月分の500μgに対応する量よりもより少ない量を使用して、ヒト患者におけるin vivo最小阻止濃度(以下、「MIC」)でAMDを治療することが可能である。上記表4Dおよび図19Aに応じたヒトのin situ濃度プロファイルを得るために、例えば5μgルセンティス(商標)注入を投与することが可能である。
ルセンティス(商標)治療への陽性の反応を迅速に検出する研究方法を設計した。網膜厚の減少は、ルセンティス(商標)治療への陽性反応の指標であり、薬剤治療の陽性結果を迅速に特定するために使用可能である薬効の目印となる。網膜厚の減少は、その後の視覚の改善に対応する。従って、低用量MIC研究では、MICを決定するために低用量のボーラス投与のルセンティス(商標)に露出する前後の患者の網膜厚の状態を評価した。
OCT(オプティカル・コヒレンス・トモグラフィ)のイメージングを使用して、治療した眼の後面にある黄斑の部位の状態を評価した。OCT技術は、主に研究対象領域に当てた光のある特性(例えば、エコー時間、反射強度)を測定するもので、極少量の反射光の測定を可能とする。これらの細胞は本質的に透過性である特徴を有するので、OCT法を使用して領域の3次元像を生成することが可能である。
滲出型AMDに罹患した患者の解剖領域には、典型的には眼の後面の様々な細胞層の構造組成に異常が見られ、特に、しばしば網膜下液の蓄積を伴う網膜が肥厚した部位が存在する。さらに進行したステージでは、これらの流体が蓄積した部位にはOCTにより容易に評価できる嚢胞様形成がしばしばみられる。
この研究により得られたOCT画像は、対象となる解剖領域の状態に関して様々な評価を行うことを可能とする。OCT像のひとつのタイプは、黄斑の全部位の地形図が含まれる。このタイプの像は、「黄斑3D」と呼ばれる。黄斑3DOCT画像は通常カラー画像として表示され、黄斑3Dの場合、像は、疾患/病変部位の全体地形を示している。これらの黄斑3D画像は、対象となる黄斑の領域を特定するために使用した。
対象となる領域は、OCT像の長さ方向のひとつの走査位置における、網膜の壁の断面の2次元像として分析する。これらの「OCT走査」画像では、対象となるごく限られた領域をより詳細に観察することが可能である。OCT走査位置は、網膜下液の減少などの注入した薬剤の効果を評価する目的で、治療前後の病変部内の特定の部位の厚さと解剖構造を直接比較するために慎重に選択した。
黄斑3D画像およびOCT走査画像は、研究に登録した各患者のルセンティス(商標)治療前後に測定した。OCT画像は、注入の翌日および注入後2〜3日目に測定した。研究に登録した患者のOCT画像は、眼科医により検討され、注入後の観察の1回以上で病変部のサイズが減少したことをOCT走査が示した場合、患者はルセンティス(商標)治療に反応したとみなされた。
図30A−1は、対象となる領域(黒い矢印)を特定するために使用されるOCT黄斑3D−OCT像と治療への反応を決定する例を示す図である。
図30B−1、図30B−2および図30B−3は、それぞれ対象となる領域の断面の注入前、注入後1日、および注入後1週間経過した時に測定した一連のOCTスキャン像を示す図である。
表8は、研究に登録した9人の患者の結果を示す。患者には、硝子体中の初期ルセンティス(商標)濃度が1〜4μg/mLに対応する5〜20μgの用量を投与した。上記の基準に基づいて、9人の患者すべてで陽性反応が特定された。少なくともいくつかのケースでは、5μmの注入で、術後約2〜4日で病変部のサイズの減少が見られ、減少は術後1週間で実質的に弱まったが、これはルセンティス(商標)のin vivo半減期の約9日間と一致している。これらのデータは、徐放デバイスによるMICは、約1μg/mL以下であってもよいことを示している。治療薬が蓄積効果を有することができるので、ここに記載されるような徐放用のMICが、MICの研究に関して記載されるボーラス注入用より低いのかもしれない。徐放デバイス用MICと放出時間にわたる薬剤の蓄積効果とを経験的に求めるために、ここに記載される教示に基づいて、さらなる研究が当業者によって行われることができるであろう。
表XX
図31Aおよび図31Bは、治療デバイスをウサギの眼の毛様体扁平部25へ埋め込む実験を示す。図7A〜図7B−6Fに示すようなデバイスの約4つのプロトタイプをウサギの眼に埋め込んだ。各デバイスの保持構造体は、結膜の下で強膜上に配置される実質的に透明な長円形状のフランジ122を備える。透明なフランジ122により、保持構造体の幅狭部分120Nと強膜切開部との界面が視認できるので、保持構造体の強膜への密閉が評価可能となる。また、各デバイスの保持構造体は、埋め込み型デバイスの位置を暗視野法により可視化するために、実質的に透明な貫通性隔壁184を有するアクセスポート180を備える。保持構造体の幅狭部分120Nは透明なフランジの下に配置され、隔壁160は保持構造体の幅狭部分を画成するための長円形状を有する。
これらの研究は、長円形のフランジおよび長円形の幅狭部分を備える保持構造体が、強膜に形成された切開部を密閉することができ、埋め込み型デバイスの暗視野法による可視化を可能とすることを示した。デバイスは患者の耳側、例えば耳側上方または耳側下方に埋め込むことが可能であり、患者の視覚および外見への影響を最小限に抑制するために、埋め込み体を耳側の眼瞼の下に配置することができる。
図32Aは、2mgのラニビズマブをひと月毎に硝子体液へ直接ボーラス注入した場合と、2.5mgのラニビズマブがデバイスに保管されかつ2mgのラニビズマブが多孔質構造体150を通って眼に注入されるように4.5mgラニビズマブをデバイス100へ注入した場合とを比較した、濃度プロファイルを示す。ここに記載される教示に基づいて、治療薬の多様な濃度を、多様なリザーバ容積および多様なRRIと組み合わせて、2.0mgがデバイスを通して注入され、2.5mgがデバイスの中に保持されるように調整できる。デバイスパラメータは、上記のように、デバイス100の容器のリザーバ・チャンバ容積が実質的に一定の25μL、RRIが約0.02に対応した。モデル化は、上記のように眼の硝子体液の中へ注入器を用いてデバイスへ流し込むことに基づいて行った。硝子体液中のルセンティスの拡散定数および半減期は、硝子体中の半減期を約9日間、硝子体容積を約4.5mLとした上記のものに対応した。
2mgの毎月のボーラス注入は、ジェネンテックによるFDA認可臨床試験中の、上記した40mg/mLラニビズマブの50μL注入に対応する。毎月のボーラス注入では、初期硝子体中濃度が約440μg/mLであり、これは約40μg/mLに減少する。2回目のボーラス注入では、2回目の注入前の硝子体中のラニビズマブとボーラス注入による量の440μgを合わせたものに基づいて、初期硝子体中濃度が約480μg/mLとなる。
4.5mgをデバイスの中へ注入すると、デバイス100を通って注入される2.0mgとデバイス100の容器リザーバに保持される2.5mgに基けば、初期濃度が約440μg/mLとなる。ここに記載される教示に基づいて、治療薬の多様な濃度を、多様なリザーバ容積および多様なRRIと組み合わせて、2.0mgがデバイスを通って注入され、2.5mgがデバイスの中に保持されるように調整できる。眼の硝子体液中のラニビズマブの半減期および初期濃度440μg/mLに基けば、ラニビズマブは治療デバイス100の放出速度よりも多い量で眼から除去されるので、デバイス100を通るボーラス注入で与えられた初期硝子体中濃度の440μg/mLがラニビズマブ濃度プロファイルのピーク濃度に対応することになる。この予想外の結果は、既定の安全ピーク濃度までの治療デバイスへのボーラス注入と、長期間にわたって治療量を放出する場合に既定の安全ピーク濃度を超過しないように治療デバイスの中へ注入することを組み合わせることを可能とする。
図32Bは、2mgのラニビズマブをひと月毎に硝子体液へ直接ボーラス注入した場合と、2.5mgのラニビズマブがデバイスに保管されかつ2mgのラニビズマブが多孔質構造体150を通って眼に注入されるように4.5mgラニビズマブをデバイス100へ複数回注入した場合とを比較した、濃度プロファイルを示す。ここに記載される教示に基づいて、治療薬の多様な濃度を、多様なリザーバ容積および多様なRRIと組み合わせて、2.0mgがデバイスを通って注入され、2.5mgがデバイスの中に保持されるように調整できる。硝子体中へ直接ボーラス注入することは、上記したものに実質的に対応する。時間0におけるデバイス100への1回目の注入は、図32Aに示す注入に実質的に対応する。複数回のうちの2回目の注入では、ピーク濃度の約600μg/mLを与えるラニビズマブを含む治療薬110の量を示している。追加の濃度には、2回目の4.5mgのデバイスへの注入を行ったとき治療デバイス100の中に保管されていた1回目に注入したラニビズマブが含まれており、この保管されていた量が多孔質構造体を通過したと思われる。複数回の注入の3回目は、同様のピーク値を示す。これらの計算では、2回目の注入が1回目の注入と混合しないこと、および100%の充填効率を仮定している。ここに記載される教示に基づいて、当業者は、2回目の注入を行うときに1回目の注入から残っているデバイス100中のラニビズマブからなる治療薬110の量、充填効率、混合率、または該当する場合には置換効率のうちの1つ以上に基づいて、第2の注入量を調整できる。
図32Cは、図32Bと同様な4.5mgのラニビズマブの複数回注入およびひと月毎の2mgのボーラス注入を、0.5mgの認可された市販のルセンティス(商標)のひと月毎のボーラス注入との比較を示す。ここに記載される教示に基づいて、治療薬の多様な濃度を、多様なリザーバ容積および多様なRRIと組み合わせて、2.0mgがデバイスを通って注入され、2.5mgがデバイスの中に保持されるように調整できる。これらのデータは、デバイス100からのラニビズマブの硝子体中濃度プロファイルがボーラス注入の治療濃度域以内に維持できること、および少なくとも約30日間、例えば少なくとも約120日間の徐放を提供できることを示している。
図32Dおよび図32Eは、図32A〜図32Cと同様の量のデバイス100への6ヶ月毎の注入およびボーラス注入を示す図である。ここに記載される教示に基づいて、治療薬の多様な濃度を、多様なリザーバ容積および多様なRRIと組み合わせて、2.0mgがデバイスを通って注入され、2.5mgがデバイスの中に保持されるように調整できる。これらのデータは、デバイス100からのラニビズマブの硝子体中濃度プロファイルがボーラス注入の治療濃度域以内に維持できること、および少なくとも約30日間、例えば少なくとも約180日間の徐放を提供できることを示している。上記のように硝子体中濃度プロファイルを注入のピーク値プロファイル以内に維持するために、治療デバイスへの2回目の注入およびその後の注入において同様の調整をすることが可能である。
図33Aおよび図33A1は、それぞれ結膜と強膜の間に実質的に設置される治療デバイス100の側面断面図および上面図である。デバイス100が埋め込まれたとき、ここに記載されるような治療薬110を注入することができる。治療デバイス100は、ここに記載されるような容器130を備え、その上面にはここに記載されるような、配置の際は結膜に対向する通性隔壁184が設置されている。細長い構造体172が容器130に連結される。細長い構造体172は、容器のチャンバに連結された第1の開口から細長い構造体の遠位端にある第2の開口176へ延出するチャネル174を備える。ここに記載されるような多孔質構造体150が、長期間にわたって治療薬を放出するように細長い構造体172に設置されかつ容器130に連結されており、保持構造体120は、強膜と結膜に結合するために容器から外方に突出する延長部130を備える。容器は、ここに記載されるような、少なくともリザーバの一部を画成する隔壁160を備えることができ、容器は幅、例えば直径を有する。隔壁160は、容器130のチャンバの容積がここに記載されるように実質的に一定の容積であるように、例えば硬質シリコーンや硬質ゴム、またはここに記載されるような他の材料などの硬質材料から作成することができる。代替あるいは併用して、例えばチャンバサイズが減少する場合などには、その容積が減少したチャンバサイズと実質的に同じであるように、隔壁160を軟質材料から作成してもよい。軟質隔壁材を、例えば支持部材などの硬質材と併用してもよい。直径は、ある範囲以内、例えば約1〜約8mmの範囲以内、例えば約2〜6mmの範囲以内のサイズとすることができ、例えば約3mmであることができる。
容器は、細長い構造体172に連結されてもよく、細長い構造体は、硝子体の中へ治療薬を放出するために結膜から硝子体へ延出する長さを有する。長さは、ある範囲以内、例えば約2〜約14mmの範囲以内、例えば約4〜10mmの範囲以内のサイズとすることができ、例えば約7mmであることができる。貫通性隔壁は、容器の近位端に配置されるセプタムからなることができ、このセプタムは、治療薬の注入用針などの鋭利な物体が貫通できる隔壁を含む。多孔質構造体は、長期間にわたって治療薬を放出するサイズの断面積を備えることができる。細長い構造体172は、容器130の中心近くに配置するか、あるいは、中心から外れていてもよい。
ここに記載されるように、細長い構造体172は毛様体扁平部領域で強膜に挿入することができる。
隔壁160は、結膜と強膜との間に配置されるような形状プロファイルを有することができる。下面は、強膜に接触する形状とすることができ、凹状の球または円環表面などの凹形状を有してもよい。上面は、結膜に接触する形状とすることができ、凸状の球または円環表面などの凸形状を有してもよい。隔壁160は、埋め込まれた状態を上から見たとき長円、楕円、または円形状であってもよく、細長い構造体172は楕円の中心にあっても、または偏心していてもよい。埋め込まれた状態で、長円形状の長軸が毛様体扁平部の円周に沿って延出するように位置合わせすることができる。
細長い構造体172の断面直径は、デバイス100の侵襲を抑制するサイズとすることができ、その直径は、細長い構造体172が除去された時貫通した強膜が実質的に密閉され、細長い構造体172の除去の際に眼が自然に密閉するように、約1mm以下、例えば約0.5mm以下、例えば約0.25mm以下であってもよい。細長い構造体172は針であって、チャネル174は針の管腔であることができ、例えば30ゲージ針が挙げられる。
多孔質構造体150は、ここに記載されるようにリザーバに連結する第1の側面と硝子体に連結する第2の側面とを備える。第1の側面は、ここに記載されるような第1の面積150を備え、第2の側面は第2の面積を備える。多孔質構造体はここに記載されるような厚さを備える。多孔質構造体は直径を備える。多孔質構造体は放出速度指数を備え、リザーバ140の容積を規定する容器130のチャンバのサイズは、多孔質構造体および容積が治療薬製剤の容積として注入される治療薬の量を受容するように調整されかつ治療量を長期間にわたって放出するよう調整されるように設定される。ここに記載されるような多様な放出速度機構を使用して、放出速度および容積をここに記載されるような治療薬の注入量を与えるように調整することができる。
容器のチャンバにより規定されるリザーバ140の容積は、約5μL〜約2000μLの治療薬、例えば約10μL〜約200μLの治療薬を含むことができるものでよい。
多孔質構造体は、針の貫通を制限するための針停止部を備えることができる。多孔質構造体は、治療薬の徐放のために構成された複数のチャネルを備えることができる。多孔質構造体は、材料の徐放に適した特性を有する硬質焼結材料から構成してもよい。
図33A2は、細長い構造体172が強膜を通過してリザーバ・チャンバを硝子体液に連結させるように、リザーバが結膜と強膜の間にあるように埋め込まれた治療デバイス100を示す。埋め込まれた状態で、多孔質構造体150は硝子体液中に設置されるか、あるいは結膜と強膜と間に設置されるか、あるいは強膜を貫通しているか、あるいはそれらの組み合わせであってもよい。
図33Bは、治療デバイス100の容器130のチャンバへの開口の近傍でチャネル174の中に設置された多孔質構造体150を示す。多孔質構造体は、細長い構造体172の長さに実質的に沿って延出することができる。
図33Cは、放出速度プロファイルを与えるように、容器150のチャンバ内に設置され、かつ細長い構造体172の第1の開口に連結された多孔質構造体150を示す。多孔質構造体は、治療量がここに記載されるように長期間にわたって放出されるように細長い構造体172の開口を覆うことができる。
図33Dは、容器130のチャンバの液体を注入、置換し、治療薬を容器130のリザーバ・チャンバへ注入するように離間している複数の注入ポートを示す。貫通性隔壁184は、隔壁160に形成された第1のアクセスポートに設置された第1の貫通性隔壁と、隔壁160に形成された第2のアクセスポートに設置された第2の貫通性隔壁とを備えてもよく、第1の隔壁は少なくとも約1mm、第2の隔壁から離間していてもよい。
上記したような注入器701は、ここに記載されるように結膜と強膜との間に配置したリザーバに連結するよう構成することができる。注入器701は、二重管腔針189Lに連結され、第2の管腔189Bがチャンバ702Cからデバイス100の中へ治療薬110を注入することが可能であり、第1の管腔と第2の管腔は、第1の管腔を上記したような第1のセプタムの中に配置し、第2の管腔を上記したような第2のセプタムの中に配置するような距離で相互に離間していてもよい。第2の容器703Cは第1の管腔189Aに連結することが可能であり、リザーバ容器のチャンバを結膜と強膜との間に配置した状態でデバイス100の液体を置換するように、第1の管腔189Aはリザーバ容器のチャンバまで延出しかつデバイス100からの液体を受容する。切換弁703Vは、目的量の液体と目的量の治療薬110の製剤を置換し、かつ例えば上記したようにボーラス注入量の治療薬がデバイス100から注出されるようにデバイス100の中に目的量の治療薬を注入する。デバイス100の中に注入された治療薬の製剤の一部は、長期間にわたる放出のためにデバイス100の中に保持することができる。
図34は、容器130の中心から離れて容器130に連結され、容器の端部の近傍に設置された細長い構造体172を示す。
多孔質構造体およびハウジングの材料
ハウジングおよび多孔質構造体の材料は、ラニビズマブなどの治療薬との相互作用が抑制された材料であることができる。
図35は、多孔質フリット構造体の材料を特定するために使用されるルセンティスの製剤の安定性データを示す。これらのデータは、ステンレス鋼、Ti、PMMAおよびシリコーンなどの材料を有する容器に対するルセンティスの経時安定性を示すものである。これらのデータは、イオン交換クロマトグラフィを用いて測定され、SCX−10カラムのMAbパターンを記載する公表された資料に応じて測定できる。データは、ダイオネクスのウェブサイトの資料に応じて測定した:
製造者のダイオネクス社による展開データ
タイトル:モノクロナール抗体変異分析用MAbPacSCX−10カラム
http://www.dionex.com/en-us/webdocs/87008-DS-MAbPac-SCX-10-Column-20Aug2010-LPN2567-03.pdf
表VVは、ここに記載されるような多孔質構造体150に使用できる材料に対するルセンティスの回収および安定性を示す。追加の材料の追加のテストは、例えば1つ以上のセラミック材料などで行うことができる。表VVは、1mg/mLルセンティスのpH7.3(PBS)で35日間の加速安定性テストにおける、デバイス部品に対するルセンティスのイオン交換クロマトグラフィを示す。回収は、安定性テストの間に蒸発した水に対して補正した(8.0%)。データはとても高い再現性を示した。注入回数3回、面積積分+8%RSD以内。
表VV
上記データは、チタン(Ti)、PMMAなどのアクリルポリマー、およびシリコーンなどのシロキサンが、少なくともいくつかのケースでは、ステンレス鋼に比べて安定性が高いことを示している。同様のテストを、例えば1つ以上のセラミック材料などここに記載されるような追加の材料に対して行うことが可能である。
ここに記載される教示に基づいて、当業者は、チタンなどの特定された材料の多孔質構造体150の放出速度指数を経験的に求めるための実験を行うことができる。例えば、ここに記載されるように測定したガスフローデータによれば、ステンレス鋼などの任意の材料、メディアグレードおよび多孔率に関して、流量や減衰時間などのガスフローデータを放出速度指数と関連付けることができるので、材料、ガスフローデータ、メディアグレードおよび多孔率に基づいて多孔質構造体150が特定できることが示された。材料、メディアグレード、および多孔率が公知の焼結多孔質構造体に関するガスフローデータと放出速度指数との相関を、多孔質構造体の放出速度指数を求めるために使用することができる。
複数回の注入により各注入後長期間にわたって徐放を提供するため、多孔質構造体150を例えばラニビズマブなどの治療薬の量と組み合わせることが可能である。
ラニビズマブの量
ここに記載される教示に基づいて、例えば3ヶ月または6ヶ月などの長期間にわたって目標量以上の所望量の治療薬を提供するために、ラニビズマブの多様な量を種々の方法でデバイス100の中に注入することが可能である。デバイス100は例えば結膜下デバイスであってもよく、または実質的に硝子体中のに設置されたリザーバを有するデバイスであってもよい。ここに記載される教示に基づいて、例えば3ヶ月または6ヶ月などの注入後長期間経過時に放出される目標量を使用して治療薬の量を決定することができる。リザーバのサイズは、製剤の濃度および治療薬の量に基づいて決定し、RRIは注入後長期間経過時における放出量および製剤の濃度に基づいて決定できる。
表WWは、治療デバイスのリザーバの中へ注入できる治療薬の量と、リザーバおよび多孔質構造体がその治療薬の量を受容するよう調整されたとき放出される治療薬ラニビズマブの量の例を示す。表WWは、約0.1mg〜約30mgのラニビズマブ治療薬の量を示している。これらの量は、ボーラス注入量を放出するためにリザーバの容量以上の過多注入と組み合わせることが可能であり、例えば表WWの量が治療デバイス100のリザーバ容量に対応する場合には、ここに記載されるように置換と組み合わされることになる。
表WW
上記の表WWは、放出用に治療デバイス100に配置される治療薬の量の例を示すものであり、それらの量はある範囲内の量とすることができる。例えば、それら量は、表WWに示す2つ以上の値の範囲内であってもよく、例えば約6〜約9mgの範囲内のラニビズマブであってもよい。ラニビズマブなどの治療薬の量は、表WWに示す量よりも多くても少なくてもよい。
濃度、リザーバ容器容積、およびラニビズマブの量
ここに記載される教示に基づいて、例えば3ヶ月または6ヶ月などの長期間にわたって目標量以上の所望量の治療薬を提供するために、ラニビズマブの様々な量を種々の方法でデバイス100の中に注入することが可能である。デバイスの多孔質構造体150は、例えば表VVを参照して記載されるような、安定性が改良された焼結多孔質材料から作成することができる。
ラニビズマブは、所望の濃度に混合・希釈できる凍結乾燥した粉体を使用して、治療デバイスへの注入のために用意することが可能である。表Xは、ラニビズマブ製剤の濃度を示す。同様の製剤が、ここに記載されるような多様な治療薬を使用して調製可能である。表Xに示す値のうちの中間の濃度を使用してもよく、また表Xに示す値より大きくても小さくてもよい。欧州でのラニビズマブの承認によれば、最初に使用されたものは凍結乾燥した形態のものであり、この凍結乾燥したラニビズマブはここに記載されるような多様な適切濃度に希釈することが可能である。欧州での承認では、凍結した薬剤を最終薬剤製品を作成するために希釈できることが示されており、つまり、現行の認可された欧州製品の濃度よりも高い薬剤濃度をここに記載される教示に従って得ることができるであろう。(参照 :欧州医薬品庁、審査報告書;インターネットより入手可;<http://www.Ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/EPAR_Scientific_Discussion/human/000715/WC500043550.pdf>, EMEA2007、合計54ページ)
希釈したラニビズマブの濃度は、例えば約10mg/mL〜約600mg/mLの範囲であることができる。そして、濃度は、表Xの第1の値および表Xの第2の値に対応する範囲内、例えば表Xに示すように約230〜約260mg/mLの範囲内であることができる。ここに記載される教示に基づいて、当業者はその値を決定するための実験を行うことができるであろう。
表X
ここに記載される教示に基づいて、多様な量の治療薬を、所望の長期間にわたって所望の目標量を超える量で放出でき、所望の量を与えるために多様な量のルセンティスが使用できる。
表YYは、注入時から表YYに示す時間までずっと連続して目標量を超える放出速度を得ることができるように、90および180日目のラニビズマブの放出量を与える製剤およびRRIの例を示している。これらの量は、ボーラス量を放出するためにリザーバの容量以上の過多注入や、例えばここに記載されるような置換と組み合わせることが可能である。
表YY
図36Aは、リザーバ・チャンバの容積がそれぞれ約10μL〜約50μL、RRIがそれぞれ約0.01〜約0.08での、100mg/mLラニビズマブ製剤の約90日目におけるラニビズマブ放出量を示す;
図36Bは、リザーバ・チャンバの容積ががそれぞれ約10μL〜約50μL、RRIがそれぞれ約0.01〜約0.08での、100mg/mLラニビズマブ製剤の約180日目におけるラニビズマブ放出量を示す;
図36Cは、リザーバ・チャンバの容積ががそれぞれ約10μL〜約50μL、RRIがそれぞれ約0.01〜約0.08での、10mg/mLラニビズマブ製剤の約90日目におけるラニビズマブ放出量を示す;
図36Dは、リザーバ・チャンバの容積ががそれぞれ約10μL〜約50μL、RRIがそれぞれ約0.01〜約0.08での、10mg/mLラニビズマブ製剤の約180日目におけるラニビズマブ放出量を示す;
上記データは、図36Aおよび図36Bを参照して理解されるように、デバイスの容積が小さくなるにつれて、RRIの値が小さいほど最適放出速度を与えるように調整することができることを示しており、例えば1日あたりの目標放出量に調整することができる。また、例えば図36Bおよび図36Dを参照して理解されるように、放出速度は、デバイスの中に充填した濃度に直接比例させることができる。
図37は、40mg/mLおよび100mg/mLのラニビズマブ製剤を治療デバイスに注入した場合に対応する、硝子体液中の濃度プロファイルを示す。これらの濃度プロファイルは、ここに記載されるようなモデル化および計算により求めた。これらの値は、RRI=0.02、デバイス容積=25μL、および補充置換効率100%として求めた。拡散係数などの他のパラメータは、ここに記載される通りである。100mg/mL注入での濃度は約40μg/mL〜約25μg/mL、40mg/mL注入での濃度は約15μg/mL〜約10μg/mLの範囲である。注入される製剤の中間濃度では、40mg/mLと100mg/mLで示した値の中間の値になるであろう。逐次注入することで、例えば1年間などの長期間にわたって治療を施すことが可能となる。
例A:デバイス半減期100日間に対応する治療デバイスおよび多孔質チタンフリット構造体からの40および100mg/mLラニビズマブ(ルセンティスTM)製剤の放出速度プロファイル測定
ラニビズマブのデバイス有効半減期は、100日間であった。本例のデバイスリザーバの容積は25μL、ラニビズマブの拡散係数が1x10−6cm/sに対してRRIは約0.02であった。
薬剤放出試験は、40または100mg/mLのラニビズマブ製剤を使用して行った。ラニビズマブは、その全開示を参照によりここに援用する、米国特許出願第12/554194号、公開第2010/0015157号、名称「抗体製剤」に従って、ヒスチジン、無水トレハロース、およびポリソルベート20中で調製した。
デバイスは、以下の方法により作製した。ベッセルは、2つのサブアセンブリーとここに記載されるような多孔質フリット構造体から作成した。多孔質フリット構造体は、厚さが約0.04インチ、直径が約0.03インチであった。所望のRRI値は、ここに記載されるような製造法および気体フロー測定に基づいて約0.02であった。埋め込み型デバイスはここに記載される教示に従って製造された。
33G針(TSK社)および標準ツベルクリン1cc注射器(BD社)を用いて、デバイスに製剤を充填した。充填の間に多孔質焼結フリット構造体から出てきた余分な液体は、実験用ティシュで拭き取り、かつリン酸緩衝食塩水(PBS、シグマ社)および防腐剤としての0.02%アジ化ナトリウムに浸漬して除去した。各デバイスは、固定器を使用して1.5mL微量遠心分離管の中心に吊り下げた。遠心分離管は0.5mLのレシーバ液、すなわち気泡形成を最小限とするように脱気したPBSで満たした。決められた時間に、デバイスをレシーバ液から取り出し、新たなレシーバ液を含む新たな遠心分離管に配置した。短い時間間隔で収集された最初の時間ポイント群については、レシーバ液中のラニビズマブ濃度は、MicroBCA(商標)タンパク質分析キット(ピアス社)およびマイクロプレートリーダー(モレキュラーデバイス社)を使用して求めた。その後の時間ポイント群については、サンプル濃度は高く、濃度はUV分光光度計(パーキンエルマー社、Lambda35)により求めた。薬剤放出速度は、濃度の測定値、レシーバ液の容積、収集間隔の時間から計算した。薬剤放出速度プロファイルは、各収集間隔の平均経過時間でプロットした。RRIは、モデルの最小二乗近似により求めた。
各製剤は10個のデバイスに充填した。一部のデバイスは3および4ヶ月(それぞれn=3)で中断し、残りの4つは薬剤放出テストを180日間行った。
表Z1は、40および100mg/mLの製剤を受容するデバイスのRRI測定値、対応する最大値、最小値、標準偏差を示す。測定した平均RRIは40および100mg/mLの製剤でともに0.02であり、標準偏差は40および100mg/mLの製剤でそれぞれ0.002および0.001であった。平均RRI値0.02および放出速度は、治療デバイス100が約100日間の治療薬デバイス半減期を提供できることを示している。
表Z1
図37Aは、デバイス中の治療薬の有効半減期が100日間に対応する、RRIが0.02かつ容積が25μLの治療デバイスから180日目までのラニビズマブ製剤の放出を示す。25μLデバイスへの40mg/mL注入は、リザーバ・チャンバへ注入した1mgのラニビズマブに対応し、100mg/mLはデバイスのリザーバ・チャンバへ注入した2.5mgのラニビズマブに対応する。
例B:デバイス半減期250日間に対応する治療デバイスおよび多孔質チタンフリット構造体からの100mg/mLラニビズマブ(ルセンティス(商標))製剤の放出速度プロファイルの測定
デバイスは、例Aを参照して上記のように作製した。チタン多孔質フリット構造体の厚さは0.031インチ、直径は0.031であった。所望するRRIは、ここに記載されるような製造法と気体フローの測定に基づき約0.008であった。治療デバイスのリザーバ容積は約25μLであった。これらのデバイスの有効半減期は約250日間であった。
製剤を5つのデバイスに満たし、すべてを180日間の薬剤放出テストに供した。
表Z2は、100mg/mLの製剤を受容するデバイスのRRI測定値、対応する最大値、最小値、標準偏差を示す。平均RRI値0.08および放出速度は、治療デバイス100が約250日間の治療薬デバイス半減期を提供できることを示している。
表Z2
表Z3Aは、半減期100日の治療デバイスにおける90および180日目のラニビズマブの放出を示す。これらのデータは、例えば図36Aおよび図36Bにそれぞれ示す90日および180日目の放出速度を参照して調整した、ここに記載されるようなリザーバ容積および多孔質構造体の放出速度に対応する。
表Z3A
図37Bは、デバイス中の治療薬の有効半減期が250日間に対応する、RRIが0.008かつ容積が25μLの治療デバイスから180日目までのラニビズマブの放出を示す。
表Z3B
図37Bおよび表Z3Bのデータは、少なくとも約4〜5μg/日の治療量が少なくとも約180日間、例えば90および180日目にそれぞれ5.6μg/日および4.5μg/日放出できることを示している。図37Aに対応するデバイスは4〜6ヶ月目に最大送達速度を与えるように調整されているが、図37Bに対応するデバイスは約1年目に最大送達速度を与えるように調整されている。
例C:デバイス半減期100日間に対応する治療デバイスおよび多孔質チタンフリット構造体からの40および100mg/mLラニビズマブ(ルセンティスTM)製剤の放出速度プロファイルの測定
ステンレス鋼多孔質フリット構造体を有する治療用デバイスおよび製剤は、例AおよびBに従って作製した。デバイスの容積は25μL、RRIは0.02であった。
組み立てた多孔質フリット構造体の圧力減衰試験はここに記載されるように行った。
18個のデバイスに100mg/mL製剤を注入し、別の18個のデバイスに40mg/mL製剤を注入した。しかしながら、一部のデバイスの測定は4ヶ月毎に他の分析のために中断したので、各製剤につき6個のデバイスだけが180日間の放出データを有する。放出速度は16週間測定し、放出量は2週間毎に求めた。これらのデータは、100mg/mLおよび40mg/mL製剤のそれぞれの16週までの治療量の徐放を示す。これらデータは、40および100mg/mL製剤の注入で、速度の測定値がそれぞれ15週目に3.5および8.1μg/日であったことを示している。
図37Cは、40mg/mL製剤および100mg/mL製剤が注入されるデバイス群からのラニビズマブの放出を示す。
図37A〜図37Cのデータは、ラニビズマブを含む治療薬が、例えば図32A〜図32D、図36A〜図36Dおよび表WW、X、YYを参照して、ここに記載される教示に従う治療デバイスから放出されることをを示すものである。
ここに使用したように、同様の符号は同様の構造要素および/または工程を表すものである。
ここに記載されるような任意の構造または構造の組み合わせ、あるいは方法の工程や部分またはそれらの組み合わせは、当業者の知識およびここに記載される教示に基づいて、ここに記載されるような実施態様に従って組み合わせることが可能である。更に、ここに記載されるような任意の構造または構造の組み合わせ、あるいは方法の工程や部分またはそれらの組み合わせは、当業者の知識およびここに記載される教示に基づいて、任意の実施態様から特定して排除することが可能である。
例示的実施形態を一例として明確な理解のためにある程度詳細に説明したが、当業者には、様々な変形、改作および変更がなされることが認識されるであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるべきである。

Claims (12)

  1. 眼用薬剤送達システムであって
    − 補体D因子の阻害剤である治療剤を含む、製剤であって、該治療剤が溶液体積におけるある濃度を有し、および眼の硝子体への該溶液体積の注入時に半減期を有する、該製剤;および
    眼に埋め込まれ、該硝子体内の該治療剤の該半減期を増加させるように構成された徐放デバイスであって、
    不透過性の材料により形成され、かつ該溶液体積を受容するようにサイズ化されたリザーバ容積を有するリザーバ;および
    リザーバに連結され、多孔質材から形成される硬質多孔質構造体であって、該硬質多孔質構造体、ある放出速度および、多孔質材における空隙部の分画に対応する多孔率Pをし、該多孔率Pが約3%〜約70%である、該硬質多孔質構造体
    を含む、該徐放デバイスを含む、前記システム。
  2. 補体因子Dの阻害剤が、FCFD4514Sである、請求項に記載のシステム。
  3. 補体D因子の阻害剤が、補体D因子に介在された補体B因子の開裂をブロックする、請求項1に記載のシステム。
  4. 補体D因子の阻害剤が、加齢黄斑変性または地図状萎縮を治療する、請求項1に記載のシステム。
  5. 製剤が、1つ以上の治療薬を、さらに含む、請求項1に記載のシステム。
  6. 減期が、約1時間から約9日間までの範囲内である、請求項1に記載のシステム。
  7. 減期が、約18日間から約250日間までの範囲内へと増加する、請求項1に記載のシステム。
  8. リザーバ容積が、約10μLから約50μLまでの範囲内である、請求項1に記載のシステム。
  9. 徐放デバイスが眼に埋め込まれながら、リザーバが補充可能である、請求項1に記載のシステム。
  10. 徐放デバイスが眼に埋め込まれながら、リザーバが、洗い流し可能である、請求項1に記載のシステム。
  11. 硬質多孔質構造体が、リザーバの出口近傍の該リザーバの遠位端に連結される、請求項1に記載のシステム。
  12. デバイスから放出される治療剤が、硝子体へと注入された治療剤よりも長期間にわたって、治療標的濃度より上の硝子体における濃度を有する、請求項に記載のシステム。
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