JP2702953B2 - 薬液含浸セラミックス - Google Patents

薬液含浸セラミックス

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JP2702953B2 JP63020014A JP2001488A JP2702953B2 JP 2702953 B2 JP2702953 B2 JP 2702953B2 JP 63020014 A JP63020014 A JP 63020014A JP 2001488 A JP2001488 A JP 2001488A JP 2702953 B2 JP2702953 B2 JP 2702953B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] この発明は、生体の骨髄炎、悪性腫瘍の患部に埋入し
治療する薬物容器に関する。
[従来の技術] 従来、骨髄炎の患部を治療するには、ビニールチュー
ブを化膿部分に通し、ビニールチューブを通して抗生物
質を送り込み洗浄する方法が採用されているが、一時的
な洗浄に過ぎないために、抗生物質が長期間化膿部全体
に行きわたらず、従って、治癒が不完全となる問題があ
った。
そこで、このような問題を解決するものとして、特開
昭59−101145号に示されているような薬液含浸多孔質セ
ラミックスが提案されている。これは、孔径10〜500μ
mの外部に連通する気孔を少なくとも表面に持ち、リン
酸カルシウム塩,アルミナ,ジルコニア,窒化珪素等の
1種又は2種以上の混合物を主成分とする多孔質セラミ
ックスの気孔内に、薬物を含浸せしめたことを特徴とす
るものである。
このように、多孔質体の中に薬物を含浸せしめたもの
であるから、薬物は長期間にわたって患部に染み出し、
有効に治療効果を上げることができ、また、生体に為害
性のないセラミックスを薬物容器として使用しているの
で生体内に残っても、生体に何らの影響を与えない。
[発明が解決しようとする課題] ところで、上記セラミックスの気孔内に含浸させた薬
液の流出期間および濃度は気孔の孔径を調節することに
より行なうのであるが、上記気孔は、セラミックスの外
部に連通して設けられているので、患部に埋入した直後
は、どうしても薬液の濃度が高くなりがちで、埋入直後
から流出終了まで一定の薬液濃度を維持することは難し
く、また、埋入直後に大部分の薬液が流出してしまうの
で薬液の流出期間も短くなる。
さらに、上記セラミックスが生体内で分解吸収しない
ため、この気孔内の奥の方に含浸させた薬液が全て確実
に患部に流出するとは限らないという問題がある。
また、上記の薬物含浸多孔質セラミックスは、生体に
対して為害性はないが、生体内で分解吸収されないた
め、生体内に異物として残留してしまい、患部が隆起す
る等の問題がある。そのため、骨形成を必要としない部
分では薬液の流出後に患部を切開してセラミックスを取
出す必要がある。このことは、患者に対して肉体的,精
神的,経済的に大きな負担,苦痛をもたらすことにな
る。
そこで、この発明はセラミックスに含浸させた薬液
を、埋入直後から流出終了まで長期間にわたって、ほぼ
一定の濃度を維持して確実に流出でき、薬液が全て流出
した後もセラミックスを生体内より取出す必要のない薬
液含浸セラミックスを提供することを目的とする。
[課題を解決するための手段及び作用] 上記目的を達成するために、本発明の薬液含浸セラミ
ックスにおいては、生体内で分解吸収され得るセラミッ
クスからなり、孔径10〜300μmの気孔を有し薬液を含
浸させる多孔質セラミックスに、生体内で分解吸収され
得るセラミックスからなり、前記多孔質セラミックスを
覆って設けられ、かつ多孔質セラミックスの気孔の孔径
よりも小さい気孔を有する、薬液の流出を制御する表面
層を設けたものである。
このように、薬液を含浸させる多孔質セラミックスの
表面を覆うように、薬液の流出を制御する表面層を設
け、その面積,孔径,膜厚などを調節することで、薬液
が流出する期間および濃度(特に埋入直後の薬液流出)
が制御される。
さらに、多孔質セラミックスおよび表面層が生体内で
分解吸収され得る物質からなるので、薬液をほぼ一定し
た濃度で徐々に流出させるとともに、この薬液含浸セラ
ミックス自体も徐々に分解され、生体内に吸収されて、
セラミックスの奥の方に含浸された薬液も表面までの距
離が短くなり容易に患部に流出され、また、生体内にセ
ラミックスなどの不要な異物が残留することがなくな
る。
また、表面層を、孔径が10μm以下で膜厚300μm以
下に形成すると、薬液の流出を良好に制御できる。
また、表面層も多孔質セラミックスと同一のセラミッ
クス物質とすると、表面層を簡単に形成することができ
る。
以下、実施例に基いてこの発明を説明する。
第1図は、この発明の薬液含浸セラミックスの一実施
例を示す断面図である。図に示すように、この薬液含浸
セラミックス1は、外径が約5mmの球形を呈している。
そして、この薬液含浸セラミックス1は、孔径10〜300
μmの外部に連通する気孔2を有する多孔質セラミック
ス3と、この多孔質セラミックス3の表面を覆うように
して設けられた孔径10μm以下の気孔を持つ膜厚100μ
mの表面層4とからなる。この表面層4の一部分には、
多孔質セラミックス3に薬液を含浸させるための薬液注
入口5が設けられている。
そして、上記多孔質セラミックス3および表面層4
は、ともに生体内で分解吸収されるリン酸カルシウムの
内、低温型のβ−TCP(トリカルシウムフォスフェー
ト)により構成されている。リン酸カルシウム(TCP)
には、高温型のα−TCPと低温型のβ−TCPとがあるが、
ここで、低温型のβ−TCPを用いたのは、α−TCPは分解
速度が早く、分解後ハイドロキシアパタイトを生成しや
すく生体に吸収されにくいため。
この薬液含浸セラミックス1は、以下のようにして作
製する。メカノケミカル法にて合成したβ−TCP粉末30g
に気泡を維持するための気泡安定剤としてポリアクリル
酸系界面活性剤15mlと水15mlを加えてよく混合する。次
に気泡を形成するための起泡剤としてノニールフェノー
ル系界面活性剤を3g加えてよく撹拌し、充分泡立たせ
る。そして、この発泡したスラリーを、第2図に示した
ような石膏製、または、パラフィン製の球状の型6に、
その注入口7より流しこむ。40〜50℃で1日以上放置乾
燥後、型から取出し焼成する。このときの焼成は100℃/
hrで昇温し、1100〜1150℃に達したところで1時間保持
するようにして行い、その後、焼成を止めて徐々に冷却
した。
なお、この薬液含浸セラミックス1の形状,孔径,気
孔率,表面層4の膜厚等の制御は、以下のようにして行
う。
.任意形状の薬液含浸セラミックスの作製 第1図に示した球状および第3図に示したような円柱
状をはじめとして様々な形状の薬液含浸セラミックスを
作製するには、第2図に示すような型6の形状を任意の
形状にすることにより作製される。
.気孔率および孔径の制御 気孔率と孔径は、起泡剤,水,気泡安定剤の割合を様
々に変化させて制御する。第1表にこの割合を変化させ
て多孔質セラミックスを作製した例を示す。
第1表に示した組成によれば、気孔率30%で孔径が15
0μm以下のもの(例1)、気孔率50%で孔径200μm以
下のもの(例2)、気孔率70%で孔径300μm以下のも
の(例3)が作製できる。このように、各成分の割合を
変化させることで任意の気孔率,孔径を有した多孔質セ
ラミックスを得ることができる。
.表面の膜厚の制御 型に流し込み乾燥させた後に取出した多孔質セラミッ
クス3には既に、孔径10μm以下の気孔が、ほんの僅か
しか形成されていない膜厚50〜100μmの表面層4が形
成されている。これは、スラリーと型の接触面では、気
泡が消失しやすく、気泡がほとんど形成されないためで
ある。さらに、膜厚を厚くしたい場合には、前記の焼成
条件で多孔質セラミックスを1度焼成した後、β−TPC
の発泡していないスラリーを被覆させ、乾燥させ、乾燥
後、再度、焼成温度1050〜1100℃で1〜2時間焼成して
表面層を形成する。
上記のようにして作製された、外径が5mmで多孔質セ
ラミックス3が50〜200μmの気孔を有し、表面層4の
膜厚が100μmの薬液含浸セラミックス1に抗生物質等
の薬液を含浸させるように、多孔質セラミックス3とし
てのβ−TCPセラミックスに薬液注入口5より抗生物質
を浸み込ませ、さらに、全体を抗生物質中に浸漬させ
た。
そして、この薬液含浸セラミックス1を兎の大腿骨に
埋入し、継続的に屠殺して、大腿骨内の抗生物質濃度を
測定した。
この結果、骨髄内の抗生物質濃度は従来のもののよう
に、埋入直後の濃度が高くなるようなこともなく、埋入
直後から流出終了まで、ほぼ一定した値を示し、1回の
投与において、約3〜4週間持続することを認めた。ま
た、この際周囲の骨形成は極めて良好で、β−TCPセラ
ミックスが分解吸収されることによる骨置換が確実に行
われていることが確認された。
このように、この実施例の薬液含浸セラミックス1に
よれば、表面層4を設け、さらに、この表面層4と多孔
質セラミックス3を生体内で分解吸収されるβ−TCPと
したことにより、埋入直後に大量の薬液が流出すること
を防止し、セラミックス内部に含浸された薬液まですべ
て流出されるので、埋入直後から流出終了まで、ほぼ一
定した薬液濃度を維持することができる。
また、埋入された薬液含浸セラミックスが生体内に異
物として残留されないので、治癒後、患部よりセラミッ
クスを取出す必要がなくなる。
次にこの発明による他の実施例について説明する。こ
の実施例の薬液含浸セラミックスは、表面層を前記実施
例のβ−TCPセラミックスに代えてコラーゲンとしたも
のであり、形状等その他の点は前記実施例と同様であ
る。
この薬液含浸セラミックス1に前記実施例と同様にし
て抗生物質を浸み込ませ、さらに、全体を抗生物質中に
浸漬した薬液含浸セラミックスを兎の大腿骨に埋入し、
継続的に屠殺して、大腿骨内の抗生物質濃度を測定し
た。
この結果、前記第1実施例と同様に骨髄内の抗生物質
濃度は一定した値を示し1回の投与において、約4週間
持続することを認めた。その他、前記実施例とほぼ同様
の効果が得られた。
また、このように表面層をコラーゲンとしたことによ
り、埋入時の生体に対する親和性がさらに向上した薬液
含浸セラミックスが得られた。
次にこの発明による第3の実施例について説明する。
この実施例は薬液含浸セラミックスにおいて、多孔質セ
ラミックスをα−TCPを含むβ−TCPセラミックスとした
もので、その他の点は、前記実施例と同様である。この
薬液含浸セラミックス1に前記実施例と同様にして抗生
物質を浸み込ませ、さらに、全体を抗生物質中に浸積し
た薬液含浸セラミックス1を兎の大腿骨に埋入し、継続
的に屠殺して、大腿骨内の抗生物質濃度を測定した。
この結果、骨髄内の抗生物質濃度は前記実施例と同様
に一定した値を示し1回の投与において、約2〜3週間
持続することを認めた。
この実施例では、β−TCPよりも分解速度の早いα−T
CPを含んでいるので、薬液の流出期間は短くなるが、β
−TCPセラミックスだけより成るものに比べて、セラミ
ックスが早く分解し、周囲との骨置換を早めることがで
きるという効果がある。
なお、上記実施例では、多孔質セラミックスの全体を
覆うようにして表面層を設けたが、必ずしも全体を覆う
ようにして設ける必要はなく、埋入後から所定期間、薬
液の流出を制御できれば部分的に覆うようにして設けて
もよい。
その他、この発明の要旨の範囲内で種々の変形,変更
が可能である。
[発明の効果] 以上、説明したように、この発明の薬液含浸セラミッ
クスは、薬液を含浸させる多孔質セラミックスの表面を
覆うように、薬液の流出を制御する表面層を設け、その
面積,膜厚,孔径等を制御することにより、薬液が患部
に流出する期間,濃度等を調節することができる。特に
埋入直後の薬液の流出を制御することにより、埋入直後
から流出終了まで長期間にわたって、ほぼ一定の濃度を
維持して薬液を確実に流出することができる。
また、多孔質セラミックスおよび表面層を生体内で分
解吸収され得る物質で形成したので、薬液含浸セラミッ
クス自体も徐々に分解され、薬液が全て流出した後もセ
ラミックスを生体内より取り出す必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明による一実施例の薬液含浸セラミック
スの一形状を示す断面図、第2図は第1図の実施例の薬
液含浸セラミックスを作製するための型を示す斜視図、
第3図はこの発明による薬液含浸セラミックスの他の形
状を示す断面図。 1……薬液含浸セラミックス,2……気孔 3……多孔質セラミックス,4……表面層 5……薬液注入口,6……型 7……注入口

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】生体内に埋め込まれて内部に含浸している
    薬液を放出する薬液含浸セラミックスであって、 生体内で分解吸収され得るセラミックスからなり、薬液
    を含浸しておく孔径10〜300μmの気孔を有する多孔質
    セラミックスと、 生体内で分解吸収され得るセラミックスからなり、前記
    多孔質セラミックスの少なくとも一部を覆って設けら
    れ、かつ前記多孔質セラミックスの気孔の孔径よりも小
    さい気孔を有する、前記薬液の放出を制御するための表
    面層とから構成されることを特徴とする薬液含浸セラミ
    ックス。
  2. 【請求項2】前記表面層は、孔径10μm以下の気孔を有
    し、膜厚が300μm以下であることを特徴とする請求項
    1記載の薬液含浸セラミックス。
  3. 【請求項3】前記表面層が前記多孔質セラミックスと同
    一の物質からなることを特徴とする請求項1または請求
    項2記載の薬液含浸セラミックス。
  4. 【請求項4】前記多孔質セラミックスは、生体内で分解
    吸収され得るリン酸3カルシウムからなることを特徴と
    する請求項1から請求項3のいずれか1項記載の薬液含
    浸セラミックス。
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