JP3995315B2 - 車両の前部車体構造 - Google Patents

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Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の前部車両車体構造、特に前部車体のフレーム構造に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
車両の前部車体のフレーム構造は、車両前端からエンジンルームの側壁に沿って後方へ延びる左右のフロントフレームの後端が、エンジンルームとその後方の車室とを仕切るトーボードの後下がり傾斜部付近において、フロアの下部に接合固着された左右のサイドフレームの前端部分と結合され、衝突時、フロントフレームから入力した衝突荷重がトーボード部にてサイドフレームからフロア等へと伝達，分散されて吸収されるようになっているのが一般的である。
【０００３】
上記の一般的な前部車体のフレーム構造においては、衝突時、フロントフレームから入力した衝突荷重がトーボード部においてサイドフレームへ安定して伝達されにくく、フロントフレームの後端部が固着されているトーボードの下部湾曲面付近が荷重を受けて車室内側に変形突出する、という課題を有している。
【０００４】
そこで、フロントフレームの後端部が接合固着されているトーボードの下部湾曲面付近に車室内側から補強部材を取付け、その補強部材の一端はトーボード中央付近へ他端はサイドフレームへ固着することにより、トーボードの下部湾曲面を強化し、フロントフレームの後端からトーボードへ伝達された荷重を該補強部材によりフロアトンネル部やサイドフレームへと分散させるようにしたもの（実開昭６３−４３８８１号参照）が従来より開発されている。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の考案においては、トーボードの下部湾曲面付近の補強をはかることはできるが、オフセット衝突若しくは斜め衝突に対しては、衝突荷重を十分には分散し切れない、という課題を有している。かといって、衝突荷重の分散を十分行うために、闇雲に補強部品数を増加すると、今度は補強部材の追加により重量が増加し、車両の軽量化がはかれないという課題を生じる。
【０００６】
本発明は上記のような従来の課題を解決することを目的とするものである。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
請求項１に記載の本発明は、トーボードからその後方のフロアパネルにかけて、室外側リンフォースメントと室内側リンフォースメントをトーボードとフロアパネルを挟んで接合固着した車両の前部車体構造において、室外側リンフォースメントは、前端のフロントフレームへの固着部から後方へ行くに従って徐々に幅が広くなる末広がり形状をなし、上記フロントフレームへの固着部から後方へ向けて第１の溝状断面部と第２の溝状断面部と第３の溝状断面部とが放射状に分岐形成され、この室外側リンフォースメントをトーボードとその後方のフロアパネルの室外側の面に接合固着し、該トーボードとフロアパネルの室内側の面に室内側リンフォースメントを接合固着することにより、上記第１の溝状断面部にてフロントフレームとサイドシルとを結合する第１の閉断面部が形成され、第２の溝状断面部にてフロントフレームとサイドフレームとを結合する第２の閉断面部が形成され、第３の溝状断面部にてフロントフレームとフロアのセンタトンネル部の一方の裾部とを結合する第３の閉断面部が形成されることを特徴とする車両の前部車体構造である。また、請求項２に記載の本発明は、請求項１に記載の車両の前部車体構造において、室内側リンフォースメントは、室外側リンフォースメントの第１の溝状断面部と突き合わされて第１の閉断面部を構成する第１の溝状断面部と、室外側リンフォースメントの第２の溝状断面部と突き合わされて第２の閉断面部を構成する第２の溝状断面部とをもった構造に構成されていることを特徴とする車両の前部車体構造である。
【０００８】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【０００９】
図１において、１はエンジンルームの側壁にほぼ沿って前後方向に配設された左右のフロントフレームであり、該フロントフレーム１の後端部はエンジンルームとその後方の車室とを仕切るトーボード２のほぼ垂直部から後下がり傾斜部にかけての湾曲部分に突き合わせ固着される。
【００１０】
フロントフレーム１の後端部が固着されるトーボード２の湾曲部分から該トーボード２の下縁から後方へつながるフロアパネル３にかけて、室外側リンフォースメント８と室内側リンフォースメント９とが接合固着され、上記フロントフレーム１の後端部は室外側リンフォースメント８の前端部分に結合された状態でトーボード２に固着される。
【００１１】
室外側リンフォースメント８は、フロントフレーム１の後端部から後方へ行くに従って徐々に幅が広くなる末広がり形状をなし、前端部にフロントフレーム１の後端部分を下側から包み込むように接合固着するフロントフレーム固着部８ａを有し、該フロントフレーム固着部８ａに固着されたフロントフレーム１の後端部分とホイールハウス部４及びサイドシル５前端のフロントピラー７下端部との結合部とを連結する第１の溝状断面部８１と、該フロントフレーム１の後端部分とフロアパネル３の下面に接合固着されたサイドフレーム６の前端部とを連結する第２の溝状断面部８２と、該フロントフレーム１の後端部分とフロアパネル３の車幅方向ほぼ中央部に形成されたフロアトンネル部３０の一方の裾部の前方部分とを連結する第３の溝状断面部８３との複数の溝状断面部を、フロントフレーム固着部８ａから連続して後方へ向けて放射状に形成した構造となっており、トーボード２及びフロアパネル３の室外側の面に接合固着され、第１の溝状断面部８１はホイールハウス部４及びサイドシル５に固着され、第２の溝状断面部８２はサイドフレーム６の前端部分を下側から包み込むように接合固着され、第３の溝状断面部８３はフロアトンネル部３０の裾部に固着される。
【００１２】
室内側リンフォースメント９は、フロントフレーム１の後端部とホイールハウス部４及びサイドシル５の前端部とを連結する第１の溝状断面部９１と、フロントフレーム１の後端部とサイドフレーム６の前端部とを連結する第２の溝状断面部９２との複数の溝状断面部をフロントフレーム１の後端部から後方へ向けて放射状に形成した上記室外側リンフォースメント８の第３溝状断面部８３を除いた形状とほぼ同じ外形をなし、該室内側リンフォースメント９を車室内側からトーボード２及びフロアパネル３を挟んで上記室外側リンフォースメント８に重ねてスポット溶接等により固着し、第１の溝状断面部９１をホイールハウス部４及びサイドシル５のインナに固着し、第２の溝状断面部９２をフロアパネル３を介してサイドフレーム６に固着して取付けるものである。
【００１３】
上記のように、室外側リンフォースメント８と室内側リンフォースメント９とをトーボード２及びフロアパネル３を挟み込んだ状態で接合固着した構成を採ったことにより、フロントフレーム１の後端部は、第１の溝状断面部８１と９１とによって形成された閉断面部，第２の溝状断面部８２と９２とによって形成された閉断面部，第３の溝状断面部８３とトーボード２及びフロアパネル３とによって形成された閉断面部により、ホイールハウス３及びサイドシル４，サイドフレーム６，センタトンネル部３０等の複数の車体骨部材に放射状にそれぞれ結合されるので、フロントフレーム１の前端部から入力した衝突荷重はホイールハウス３，サイドシル４，サイドフレーム６及びセンタトンネル部３０等の複数の車体骨部材に広がりをもって伝達され、オフセット衝突や斜め衝突等であっても効果的に衝突荷重の伝達，吸収が行なわれる。又、室外側リンフォースメント８及び室内側リンフォースメント９の各溝状断面部の間の平坦面はトーボード２及びフロアパネル３の広範囲の内外面に接合固着されてダブラーとして機能するので、トーボード２及びフロアパネル３の強度，剛性の向上をはかることができると共に、衝突荷重の安定した吸収をはかることができる。
【００１４】
尚、図示実施例では室外側リンフォースメント８を第１，第２及び第３の溝状断面部８１，８２及び８３を有する構造に構成した例を示しているが、第１と第２の溝状断面部８１と８２をもった二股形状に構成してもよい。又、図示実施例では、室内側リンフォースメント９を、室外側リンフォースメント８の第３の溝状断面部８３を除いた形状にほぼ合致する外形とした例を示しているが、室内側リンフォースメント９にも室外側リンフォースメント８の第３の溝状断面部８３に対応する第３の溝状断面部を設けた構成としても良い。
【００１５】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、室外側リンフォースメントと室内側リンフォースメントとをトーボード及びフロアパネルを挟んで接合固着することにより、フロントフレームの後端部から後方へ放射状に複数の閉断面部が形成され、該フロントフレームの後端部とサイドシル，サイドフレーム等の複数の車体骨部材とを該複数の閉断面部にて結合したものであり、これにより、部品数と作業工程の増加を最小限に抑えつつ、トーボード周囲の強度及び剛性の大幅な向上をはかることができ、車両の衝突時、それがオフセット衝突や斜め衝突であっても、衝突荷重がフロントフレームからサイドシル，サイドフレーム等の複数の車体骨部材へと的確に伝達，分散され、トーボードやフロアパネル等の変形を最小限に抑え、乗員へのダメージを減少させることができるもので、コスト低廉なることと相俟って実用上多大の効果をもたらし得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の実施の形態を示すもので、（Ａ）は車室内後部中央付近から車体前方を見た斜視図、（Ｂ）はトーボードの前方下部付近から車体後方を見た斜視図である。
【図２】（Ａ）は図１（Ａ）のＡ−Ａ断面図、（Ｂ）は図１（Ａ）のＢ−Ｂ断面図である。
【符号の説明】
１ フロントフレーム
２ トーボード
３ フロアパネル
４ ホイールハウス部
５ サイドシル
６ サイドフレーム
７ フロントピラー
８ 室外側リンフォースメント
８ａ フロントフレーム固着部
９ 室内側リンフォースメント
３０ センタトンネル部
８１，９１ 第１の溝状断面部
８２，９２ 第２の溝状断面部
８３ 第３の溝状断面部

Claims (2)

  1. トーボードからその後方のフロアパネルにかけて、室外側リンフォースメントと室内側リンフォースメントをトーボードとフロアパネルを挟んで接合固着した車両の前部車体構造において、室外側リンフォースメントは、前端のフロントフレームへの固着部から後方へ行くに従って徐々に幅が広くなる末広がり形状をなし、上記フロントフレームへの固着部から後方へ向けて第１の溝状断面部と第２の溝状断面部と第３の溝状断面部とが放射状に分岐形成され、この室外側リンフォースメントをトーボードとその後方のフロアパネルの室外側の面に接合固着し、該トーボードとフロアパネルの室内側の面に室内側リンフォースメントを接合固着することにより、上記第１の溝状断面部にてフロントフレームとサイドシルとを結合する第１の閉断面部が形成され、第２の溝状断面部にてフロントフレームとサイドフレームとを結合する第２の閉断面部が形成され、第３の溝状断面部にてフロントフレームとフロアのセンタトンネル部の一方の裾部とを結合する第３の閉断面部が形成されることを特徴とする車両の前部車体構造。
  2. 請求項１に記載の車両の前部車体構造において、室内側リンフォースメントは、室外側リンフォースメントの第１の溝状断面部と突き合わされて第１の閉断面部を構成する第１の溝状断面部と、室外側リンフォースメントの第２の溝状断面部と突き合わされて第２の閉断面部を構成する第２の溝状断面部とをもった構造に構成されていることを特徴とする車両の前部車体構造。
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