JP2013155388A - フラン構造を含む熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記構造式(1)で表されるフラン構造を有する単位を含み、還元粘度(ηsp/C)が0.48dL/g以上、末端酸価が200μeq/g未満である熱可塑性樹脂と結晶核剤を含む熱可塑性樹脂組成物。農業廃棄物として廃棄されているキシロース、セルロース、グルコース等の植物由来原料から製造可能な2,5−フランジカルボン酸を用いたポリエステルを高分子量化することにより、耐熱性、機械物性に優れた熱可塑性樹脂を製造し、環境問題、地球温暖化問題、食糧問題に貢献する工業的に有用な材料が提供される。
【選択図】なし
Description
本発明でいう熱可塑性樹脂とは、通常、加熱すると塑性変形しやすくなり冷却すると可逆的に硬化する性質を持つ合成樹脂と定義され、本発明においては、より具体的には、次の(a)から(d)のうちの1つ以上の性質を示すものである。
(a)熱分析において融点を表す吸熱ピークを示す
(b)結晶化を示す発熱ピークを示す
(c)融点或いはガラス転移点以上で流動性を示す
(d)樹脂を完全に溶解する溶媒が存在する
また、化学構造的には、分子構造として実質的に直鎖状または分岐構造であり、分子間で化学結合を殆ど有さないことを特徴とする。
本発明の熱可塑性樹脂は、上記特性を有し、且つ樹脂中に下記構造式(1)で表されるフラン構造を有する。
なお、本発明でいう成分とは、本発明の熱可塑性樹脂を製造するための成分を示し、原料と同義である。
フラン置換体に導入される置換基の例としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜18の芳香族基、ハロゲン、炭素数1〜10のアルコキシ基等が挙げられる。
本発明で用いるフラン構造を有する成分としては、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基で置換されたフラン置換体又は無置換のフラン、特に好ましくはフランが挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂を製造する際、これらのフラン構造を有する成分は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して使用しても良い。
上述のフラン構造を有する成分と共重合可能な原料としては、脂肪族及び/又は脂環式ジオール、芳香族ジヒドロキシ化合物、ビスフェノール、脂肪族(脂環式も含む)ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ジアミン、およびこれらの誘導体などが挙げられ、特に脂肪族ジオール、脂肪族(脂環式も含む)ジカルボン酸及びそのエステル、芳香族ジカルボン酸及びそのエステルが好ましく、さらに好ましくは脂肪族ジオールである。
これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して使用しても良い。
これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して使用しても良い。
これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して使用しても良い。
これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して使用しても良い。
これらの中で、特に好ましいのは、使用時の重合速度の増大が顕著で、かつ入手の容易な乳酸及び/又はグリコール酸及びカプロラクトンであり、最も好ましくは乳酸である。これらの形態としては、30〜95重量%の水溶液が、容易に入手することができるため好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂には、上述の共重合成分以外のその他の共重合成分として、3官能以上の官能基を含有する単位を導入しても良い。
3官能以上の官能基を有する構成単位を構成する化合物としては、3官能以上の多価アルコール;3官能以上の多価カルボン酸或いはその無水物、酸塩化物、又はエステル;及び3官能以上のヒドロキシカルボン酸或いはその無水物、酸塩化物、又はエステル;3官能以上のアミン類;からなる群から選ばれた少なくとも1種の3官能以上の多官能化合物が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂中の3官能以上の官能基を有する構成単位の含有割合が上記上限よりも多いと、ポリマーの架橋が過度に進行し、安定にストランドを抜き出せなくなる、成形性が悪化する、各種物性を損なう等の問題が生じ、好ましくない。また、熱可塑性樹脂中の3官能以上の官能基を有する構成単位の含有割合が上記下限より少ないと原料の精製に負荷がかかりすぎ、コストが高くなり、また重合反応の反応性が低下し、好ましくない。
本発明の熱可塑性樹脂の製造に際し、ジイソシアネート、ジフェニルカーボネート、ジオキサゾリン、珪酸エステルなどの鎖延長剤を使用しても良く、特に、ジフェニルカーボネート等のカーボネート化合物を使用する場合は、これらのカーボネート化合物を熱可塑性樹脂の全構成成分に対して20モル%以下、好ましくは10モル%以下添加して、ポリエステルカーボネートを得ることも好ましい。
この場合、カーボネート化合物としては、具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジアミルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどが例示される。その他、フェノール類、アルコール類のようなヒドロキシ化合物から誘導される、同種、又は異種のヒドロキシ化合物からなるカーボネート化合物も使用可能である。
これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して使用しても良い。
本発明の熱可塑性樹脂の製造方法は、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド等の熱可塑性樹脂の製造に関する公知の方法が採用できる。
また、この際の重合反応は、従来から採用されている適切な条件を設定することができ、特に制限されない。
本発明の熱可塑性樹脂の還元粘度(ηsp/C)は、0.48dL/g以上であるが、好ましくは0.5dL/g以上、より好ましくは0.6dL/g以上、さらに好ましくは0.7dL/g以上、最も好ましくは0.8dL/g以上である。還元粘度の上限は3.0dL/g以下、好ましくは2.5dL/g以下、最も好ましくは2.0dL/g以下である。還元粘度が0.48dL/g未満であると、フィルムや射出成形品を成形することができず、成形できたとしても強度が不足し、使用に耐えない。また、還元粘度が3.0dL/gよりも大きいと成形が困難になり好ましくない。
なお、本発明において、熱可塑性樹脂の還元粘度(ηsp/C)は、フェノール/テトラクロロエタン(1:1重量比)中、熱可塑性樹脂濃度0.5g/dLで、30℃にて測定した溶液粘度から求めたものである。
なお、熱可塑性樹脂の引張弾性率は、熱可塑性樹脂を成形して得られたサンプルフィルムの引張試験における初期弾性率であり、詳しくは、後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
なお、熱可塑性樹脂の引張破断強度は、熱可塑性樹脂を成形して得られたサンプルフィルムの引張試験における破断時の応力であり、詳しくは、後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
本発明の熱可塑性樹脂には、その特性が損なわれない範囲において、各種の添加剤、例えば熱安定剤、酸化防止剤、加水分解防止剤、結晶核剤、難燃剤、帯電防止剤、離型剤、紫外線吸収剤等を添加しても良い。
無機系フィラーとしては、無水シリカ、雲母、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、ケイ藻土、アロフェン、ベントナイト、チタン酸カリウム、ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、カオリン、カオリナイト、ガラス、石灰石、カーボン、ワラステナイト、焼成パーライト、珪酸カルシウム、珪酸ナトリウム等の珪酸塩、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸第二鉄、酸化亜鉛、酸化鉄、リン酸アルミニウム、硫酸バリウム等の塩類等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して使用しても良い。
有機系フィラーを含む熱可塑性樹脂組成物の場合、熱可塑性樹脂組成物中のこれらの有機系フィラーの含有量は、通常0.1〜70重量%であり、好ましくは1〜50重量%である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれる結晶核剤としては、タルク、窒化ホウ素、シリカ、層状ケイ酸塩、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスが好ましく、さらには、タルク、ポリエチレンワックスが好ましい。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して使用しても良い。
本発明の熱可塑性樹脂及び樹脂組成物は、汎用プラスチックに適用される各種成形法により成形に供することが出来る。
その用途としては、射出成形品(例えば、生鮮食品のトレーやファーストフードの容器、野外レジャー製品など)、押出成形品(フィルム、例えば釣り糸、漁網、植生ネット、保水シートなど)、中空成形品(ボトル等)等が挙げられ、更にその他農業用のフィルム、コーティング資材、肥料用コーティング材、ラミネートフィルム、板、延伸シート、モノフィラメント、不織布、フラットヤーン、ステープル、捲縮繊維、筋付きテープ、スプリットヤーン、複合繊維、ブローボトル、発泡体、ショッピングバッグ、ゴミ袋、コンポスト袋、化粧品容器、洗剤容器、漂白剤容器、ロープ、結束材、衛生用カバーストック材、保冷箱、クッション材フィルム、マルチフィラメント、合成紙、医療用として手術糸、縫合糸、人工骨、人工皮膚、マイクロカプセルなどのDDS、創傷被覆材、光学用途、レンズ、液晶材料、導光板などが挙げられる。さらに、トナーバインダー、熱転写用インキバインダー等の情報電子材料、電気製品筐体、インパネ、シート、ピラー等の自動車内装部品、バンパー、フロントグリル、ホイールカバー等の自動車外装構造材料などの自動車部品等に使用できる。より好ましくは包装用資材、例えば、包装用フィルム、袋、トレイ、ボトル、緩衝用発泡体、魚箱等、及び、農業用資材、例えば、マルチングフィルム、トンネルフィルム、ハウスフィルム、日覆い、畦シート、発芽シート、植生マット、育苗床、植木鉢等が挙げられる。
末端酸価(μeq/g)=(A−B)×F×10/W
A(ml):測定滴定量
B(ml):ブランク滴定量
F:0.01N NaOHベンジルアルコール溶液のファクター
W(g):サンプル重量
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計及び減圧口を備えた反応容器に、原料として、ジメチル−2,5−フランジカルボン酸20.00重量部、1,4−ブタンジオール22.71重量部、チタンテトラブチレートを予め3.54重量%溶解させた1,4−ブタンジオール溶液0.54重量部、及び酢酸マグネシウム4水和物を予め1.37重量%溶解させた1,4−ブタンジオール溶液0.87重量部を仕込んだ。
得られた熱可塑性樹脂の還元粘度は0.690dL/g、末端酸価は133μeq/gであった。また、この熱可塑性樹脂の熱プレスフィルムの引張弾性率は1139MPa、引張り破断伸びは346%、降伏応力は17MPa、引張り破断強度は39MPaであった。
実施例1と同様に原料及び触媒を仕込んで、重縮合反応を行い、目標の粘度に到達したところで重縮合反応を停止した以外は実施例1と同様に行った。得られた熱可塑性樹脂の還元粘度、末端酸価及び引張試験結果を表1に示す。なお、実施例4において、他の原料と共にタルク(平均粒径3μm)を理論収量の1重量%仕込んで重合反応を行った。
実施例1において重合温度を240℃から250℃に変更にした以外は実施例1と同様に重縮合反応を行った。
得られた熱可塑性樹脂の還元粘度は0.310dL/gで、末端酸価は242μeq/gであった。
このものは、フィルムがもろく、ダンベルを打抜く際にクラックが入り、引張試験のサンプルを作成することができなかった。
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計及び減圧口を備えた反応容器に、原料として、ジメチル−2,5−フランジカルボン酸59.32重量部、エチレングリコール46.39重量部、チタンテトラブチレートを予め3.54重量%溶解させた1,4−ブタンジオール溶液1.17重量部、及び酢酸マグネシウム4水和物を予め1.37重量%溶解させた1,4−ブタンジオール溶液1.88重量部を仕込んだ。
実施例5と同様に原料及び触媒を仕込んで重縮合反応を行い、目標の粘度に到達したところで重縮合反応を停止したこと以外は実施例5と同様に行った。得られた熱可塑性樹脂の還元粘度、末端酸価及び引張試験結果を表1に示す。
実施例5において重合温度を260℃から280℃に変更にした以外は実施例5と同様に重縮合反応を行った。
実施例5において、エチレングリコール46.39重量部に変えて、1,3−プロパンジオールを96.82重量部仕込んだこと以外は実施例5と同様に重縮合反応を行った。得られた熱可塑性樹脂の還元粘度、末端酸価及び引張試験結果を表1に示す。
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計及び減圧口を備えた反応容器に、原料としてジメチル−2,5−フランジカルボン酸7.24重量部、コハク酸6.97重量部、L−乳酸2.02重量部、1,4−ブタンジオール13.29重量部、及びチタンテトラブチレートを予め3.48重量%溶解させた1,4−ブタンジオール溶液0.06重量部を仕込んだ。
容器内容物を攪拌下、容器内に窒素ガスを導入し、減圧置換によって系内を窒素雰囲気にし、185℃で1時間攪拌した。次に、系内を攪拌しながら1時間で220℃に昇温し、引き続き1時間掛けて230℃に昇温すると同時に、1時間30分かけて0.05×103Pa以下になるように減圧し、230℃で加熱減圧状態を保持したまま重合を1時間30分継続した後、重合を終了し、熱可塑性樹脂(フランジカルボン酸/コハク酸/ブタンジオール/乳酸ポリエステル)を得た。
得られた熱可塑性樹脂の還元粘度は1.965dL/g、末端酸価は19μeq/gであった。この熱可塑性樹脂の引張試験結果を表1に示す。
Claims (8)
- 熱可塑性樹脂を構成する、ジオール単位及び/又はジカルボン酸単位中に前記フラン構造を含むことを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- ジオール単位が1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール及びエチレングリコールよりなる群から選ばれる1種類以上よりなるジオール単位であり、ジカルボン酸単位が前記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項3に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂が、誘導体として炭素数1〜4のアルキルエステルを含むフラン構造を有する成分と、脂肪族及び/又は脂環式ジオール、芳香族ジヒドロキシ化合物、ビスフェノール、脂肪族(脂環式も含む)ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ジアミン、及びこれらの誘導体から選ばれる成分を用いて共重合されてなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記結晶核剤の平均粒径が5μm以下、0.1μm以上であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記結晶核剤が、タルク、窒化ホウ素、シリカ、層状ケイ酸塩、ポリエチレンワックス及びポリピレンワックスからなる群から選ばれることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形体。
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