JP2022144048A - ポリエステル樹脂およびそれを用いた成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】PEFの結晶化速度を向上させる手段を提供することを目的とし、それにより分子量が高く、耐熱性と機械物性に優れたポリエステル樹脂と、それを用いた成形品を提供することを課題とする。【解決手段】2,5-フランジカルボン酸単位とエチレングリコール単位を有するポリエステル樹脂であって、更に、炭素数2~36の脂肪族ジカルボン酸単位を全ジカルボン酸単位に対して0.1~8モル%有する、および/または、炭素数3~20の脂肪族ジオール単位を全ジオール単位に対して0.1~8モル%有する、、ポリエステル樹脂により課題を解決する。【選択図】なし

Description

本発明は、2,5-フランジカルボン酸単位とエチレングリコール単位を有するポリエステル樹脂およびこれを用いた成形品に関する。詳しくは、2,5-フランジカルボン酸単位とエチレングリコール単位を有し、分子量が高く、耐熱性と機械物性に優れたポリエステル樹脂とそれを用いた成形品に関する。
地球環境問題を背景に、石油由来の原料を用いたプラスチックから再生可能資源を由来とするプラスチックへの転換が期待され、ポリ乳酸やポリブチレンサクシネートなどの脂肪族ポリエステルが利用されている。また、再生可能資源からの製造が可能とされる2,5-フランジカルボン酸を原料に用いたポリエステルとして、2,5-フランジカルボン酸とエチレングリコールを原料としたポリエチレンフラノエート(PEF)などのポリエステル樹脂が開発されている。しかしながら、PEFは、結晶化速度が遅く、製造工程や成形工程で問題となる可能性がある。
非特許文献1には、PEFにコハク酸を10~90モル%の範囲で共重合したポリエステルが開示されている。また、特許文献1には、PEFにドデカン二酸などの長鎖ジカルボン酸を20モル%以上共重合し、エラストマー的性質を示すことが開示されている。
中国特許第108727574号
Journal of Applied Polymer Science 2013, DOI:10,1002/APP,39344
本発明は、PEFの結晶化速度を向上させることを目的とする。結晶化速度を向上させることによって、固相重合反応工程における予備結晶化を効率よく進行させることができる。また、延伸配向結晶化が容易になり、強度の高い成形品を取得することができる。そして、耐熱性と強度等の機械物性を兼ね備えたポリエステル樹脂を得ることを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。この結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下を要旨とする。
[1]2,5-フランジカルボン酸単位とエチレングリコール単位を有するポリエステル樹脂であって、更に、炭素数2~36の脂肪族ジカルボン酸単位を全ジカルボン酸単位に対して0.1~8モル%有する、および/または、炭素数3~20の脂肪族ジオール単位を全ジオール単位に対して0.1~8モル%有する、ポリエステル樹脂。
[2][1]に記載のポリエステル樹脂であって、120℃で6時間加熱した後に示差走査熱量計(DSC)によって測定した融点が180℃以上である、ポリエステル樹脂。
[3][1]に記載のポリエステル樹脂であって、120℃で6時間加熱した後に示差走査熱量計(DSC)によって測定した融解熱が5J/g以上である、ポリエステル樹脂。
[4]チタン原子を1~300ppm含有する、[1]~[3]の何れかに記載のポリエステル樹脂。
[5]ゲルマニウム原子及びアンチモン原子の少なくとも何れかの原子を合計で1~500ppm含有する、[1]~[3]の何れかに記載のポリエステル樹脂。
[6]周期表第2族元素を合計で1~300ppm含有する、[1]~[5]の何れかに記載のポリエステル樹脂。
[7]固有粘度(IV)が0.7dL/g以上である、[1]~[6]の何れかに記載のポリエステル樹脂。
[8][1]~[7]の何れかに記載のポリエステル樹脂を含有する、成形品。
[9][1]~[7]の何れかにに記載のポリエステル樹脂を含有する、フィルム。
[10][1]~[7]の何れかに記載のポリエステル樹脂を含有する、容器。
[11][1]~[7]の何れかに記載のポリエステル樹脂を含有する、繊維。
以下に、本発明を実施するための代表的な態様を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の態様に限定されるものではない。
[ポリエステル樹脂]
本発明のポリエステル樹脂は、2,5-フランジカルボン酸単位とエチレングリコール単位を有する。また、本発明のポリエステル樹脂は、更に、炭素数2~36の脂肪族ジカルボン酸単位(以下、「その他の脂肪族ジカルボン酸単位」または単に「脂肪族ジカルボン酸単位」と言う場合がある。)を全ジカルボン酸単位に対して0.1~8モル%有する、および/または、炭素数3~20の脂肪族ジオール単位(以下、「その他の脂肪族ジオール単位」と言う場合がある。)を全ジオール単位に対して0.1~8モル%有する(以下、その他の脂肪族ジカルボン酸単位とその他の脂肪族ジオール単位を合わせて「本発明のその他の必須単位」または単に「その他の必須単位」と言う場合がある。)。
<2,5-フランジカルボン酸単位>
本発明のポリエステル樹脂が有する2,5-フランジカルボン酸単位(以下、「本発明に係る2,5-フランジカルボン酸単位」または単に「2,5-フランジカルボン酸単位」と言う場合がある。)の割合は、特に限定されないが、ポリエステル樹脂の耐熱性に優れることから、全ジカルボン酸単位に対して、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上であり、更に好ましくは80モル%以上であり、特に好ましくは90モル%以上である。また、上限は100モル%である。
2,5-フランジカルボン酸単位は、バイオマス由来の単位であることが環境問題上で好ましい。
<エチレングリコール単位>
本発明のポリエステル樹脂が有するエチレングリコール単位(以下、「本発明に係るエチレングリコール単位」または単に「エチレングリコール単位」と言う場合がある。)の割合は、特に限定されないが、ポリエステル樹脂の耐熱性に優れることから、全ジオール単位に対して、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上であり、さらに好ましくは80モル%以上であり、特に好ましくは90モル%以上である。また、上限は100モル%である。
エチレングリコール単位は、バイオマス由来の単位であることが環境問題上で好ましい。
<脂肪族ジカルボン酸単位>
本発明のポリエステル樹脂が脂肪族ジカルボン酸単位を有する場合、ポリエステル樹脂の耐熱性や機械物性に優れる点から、その炭素数は2~36が好ましく、5~36がより好ましい。また、鎖状のジカルボン酸単位が好ましく、直鎖状のジカルボン酸単位がより
好ましい。具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ドコサン二酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ダイマー酸および1,4-シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位などが挙げられる。脂肪族ジオール単位は、1種類でも、2種類以上でもよい。
脂肪族ジカルボン酸単位は、バイオマス由来の単位であることが環境問題上好ましい。
<その他の脂肪族ジオール単位>
本発明のポリエステル樹脂がエチレングリコール単位以外の脂肪族ジオール単位を有する場合、ポリエステル樹脂の耐熱性や機械物性に優れる点から、その炭素数は3~20が好ましく、3~10がより好ましい。また、鎖状のジオール単位が好ましく、直鎖状のジオール単位がより好ましい。具体的には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、2,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、2-エチルー1,3-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,2-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオールなどの鎖状のジオール;1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、イソソルバイドなどの脂環式ジオールに由来する単位などが挙げられる。脂肪族ジオール単位は、1種類でも、2種類以上でもよい。その他の脂肪族ジオール単位は、バイオマス由来の単位であることが環境問題上好ましい。
<その他の必須単位の割合>
本発明のポリエステル樹脂は、上述のその他の脂肪族ジカルボン酸単位を全ジカルボン酸単位に対して0.1~8モル%有する、および/または、その他の脂肪族ジオール単位を全ジオール単位に対して0.1~8モル%有する。本発明のポリエステル樹脂は、その他の必須単位を少量有することにより、融点の低下を抑制し、結晶性を向上させることができる。また、製造時の結晶化速度が速くすることができるため、固相重合する際の予備結晶化工程における負荷を低減することができ、延伸配向性が向上した成形品を得ることができる。その他の必須単位の割合は、各々、全ジカルボン酸単位または全ジオール単位に対して、0.2モル%以上が好ましく、0.3モル%以上がより好ましい。また、一方で、5モル%以下が好ましく、4モル%以下がより好ましい。
<その他の単位>
本発明のポリエステル樹脂は、2,5-フランジカルボン酸単位、エチレングリコール単位およびその他の必須単位以外の単位(以下、単に「その他の単位」と言う場合がある。)を有していてもよい。
その他の単位としては、2,5-フランジカルボン酸単位以外の芳香族ジカルボン酸単位(以下、「その他の芳香族ジカルボン酸単位」と言う場合がある。)、芳香族ジヒドロキシ化合物由来の単位、ビスフェノール単位、ヒドロキシカルボン酸単位、ジアミン単位、3官能以上の官能基を有する単位などが挙げられる。その他の単位は、これらのうち、1種類でも、2種類以上でもよい。本発明のポリエステル樹脂がその他の単位を有する場合、ポリエステル樹脂の結晶性と耐熱性に優れることから、その割合は、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましい。
その他の芳香族ジカルボン酸単位としては、具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸等に由来する単位が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸単位は、単位中に1個の水酸基とカルボキシル基を有する化合物由来の単位であれば特に限定されない。ヒドロキシカルボン酸単位の具体例としては、乳酸、グリコール酸、2-ヒドロキシ-n-酪酸、2-ヒドロキシカプロン酸、6-ヒドロキシカプロン酸、2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル酪酸、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸、2-ヒドロキシイソカプロン酸、マンデル酸、サリチル酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸及びこれらのエステル、酸塩化物、酸無水物等に由来する単位などが挙げられる。
<3官能以上の官能基を有する単位>
3官能以上の官能基を有する単位は、3官能以上の多価アルコール;3官能以上の多価カルボン酸或いはその無水物、酸塩化物、又はエステル;及び3官能以上のヒドロキシカルボン酸或いはその無水物、酸塩化物、又はエステル;3官能以上のアミン類からなる群から選ばれた少なくとも1種の3官能以上の多官能化合物に由来する単位などが挙げられる。
3官能以上の多価アルコールとしては、具体的には、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等に由来する単位などが挙げられる。3官能以上の多価カルボン酸又はその無水物に由来する単位は、具体的には、トリメシン酸、プロパントリカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、シクロペンタテトラカルボン酸無水物等に由来する単位などが挙げられる。3官能以上のヒドロキシカルボン酸に由来する単位としては、具体的には、リンゴ酸、ヒドロキシグルタル酸、ヒドロキシメチルグルタル酸、酒石酸、クエン酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシテレフタル酸等に由来する単位などが挙げられる。これらのうち、特に入手のし易さから、トリメチロールプロパン、リンゴ酸、酒石酸およびクエン酸に由来する単位が好ましい。
本発明のポリエステル樹脂が、3官能以上の官能基を有する単位を有する場合、その割合は、ポリエステルの溶融粘度が適度で成形性に優れる点では多いことが好ましい。また、一方で、架橋が過度に進行せず、ストランドとして安定して抜き出されやすく、成形性等に優れる点では少ないことが好ましい。そこで、本発明のポリエステル樹脂が有する3官能以上の官能基を有する単位の割合は、本発明のポリエステル樹脂を構成する全構成単位に対して、0.0001モル%以上であることが好ましく、0.001モル%以上であることがより好ましく、0.005モル%以上であることがさらに好ましく、0.01モル%以上であることが特に好ましい。また、上限は5モル%であることが好ましく、4モル%以上であることがより好ましく、3モル%以上であることがさらに好ましい。
<鎖延長剤由来の構造>
本発明のポリエステル樹脂の製造に際し、ジイソシアネート、オキサゾリン、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物等の鎖延長剤を使用してもよい。鎖延長剤を用いる場合、ポリエステル樹脂の成形性や機械物性に優れる点から、ポリエステル樹脂中に鎖延長剤由来の構造が10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがさらに好ましく、2重量%以下であることが特に好ましい。
<バイオマス由来の成分>
本発明のポリエステル樹脂を構成する単位は、バイオマスに由来する単位であることが好ましい。この場合、バイオマス原料由来のアルカリ金属やMg、Caなどの周期表第2族元素がポリエステル樹脂に含まれることがある。ここで、これらの成分は、ポリエステル製造時の重合反応を阻害することがあることから少ないことが好ましい。具体的には、アルカリ金属の量は、30ppm以下であることが好ましく、20ppm以下であること
がより好ましく、10ppm以下であることがさらに好ましい。また、周期表第2族元素の量は、300ppm以下であることが好ましく、200ppm以下であることがより好ましく、100ppm以下であることがさらに好ましく、50ppm以下であることが特に好ましい。
[ポリエステル樹脂の製造方法]
本発明のポリエステル樹脂は、ジカルボン酸単位とジオール単位が上述の本発明のポリエステル樹脂となるように、特定のジカルボン酸と特定のジオールを特定量用いることにより、公知のポリエステル樹脂の製造方法で製造することができる。ここで、ジカルボン酸は、ジカルボン酸エステルを用いてもよい。すなわち、ジカルボン酸またはジカルボン酸エスエルとジオールを用いて、エステル化反応またはエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった溶融重合の一般的な方法で製造することができる。また、溶融重合に続いて、固相重合を行ってもよい。
<2,5-フランジカルボン酸>
2,5-フランジカルボン酸単位となる原料としては、2,5-フランジカルボン酸及びこれらの誘導体を用いることができる。原料コスト、ポリマー製造時の重合速度、留出液の処理のしやすさの点から、2、5-フランジカルボン酸が好ましい。2,5-フランジカルボン酸の誘導体としては、炭素数1~4のアルキルエステルなどが挙げられ、中でもメチルエステル、エチルエステル、n-プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル等が好ましく、メチルエステルがさらに好ましい。
<ジオール>
原料ジオールは、上述のジオール単位となるジオールを用いればよい。
<2,5-フランジカルボン酸以外のジカルボン酸>
2,5-フランジカルボン酸以外のジカルボン酸は、ジカルボン酸の低級アルキルエステルや酸無水物等の誘導体であってもよい。芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、炭素数1~4のアルキルエステルが挙げられ、中でもメチルエステル、エチルエステル、n-プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル等が好ましく、メチルエステルがより好ましい。
なお、原料として、光学異性体が存在する場合には、D体、L体、又はラセミ体のいずれでもよく、原料の形態は固体、液体又は水溶液であってもよい。
<原料仕込みモル比>
本発明のポリエステル樹脂の製造において、ジカルボン酸とジカルボン酸エステルの合計量(以下、両者を合わせて「ジカルボン酸成分」と言う場合がある。)とジオールとの仕込みモル比は、本発明のポリエステルが製造できれば特に限定されない。但し、ポリエステル樹脂製造時に昇華物の発生による配管閉塞が起こり難く、高分子量のポリエステル樹脂を得やすい点では、ジカルボン酸成分1モルに対し、ジオールは0.9モル以上とすることが好ましく、1.0モル以上とすることがより好ましく、1.01モル以上とすることがさらに好ましい。また、一方で、4.0モル以下とすることが好ましく、3.0モル以下とすることがより好ましく、2.5モル以下とすることがさらに好ましい。
<触媒>
本発明のポリエステル樹脂は、好ましくは、触媒の存在下で製造される。触媒を添加するタイミングや量等は適宜調整すればよい。すなわち、触媒は、原料仕込み時に添加しても、製造工程の途中で添加してもよい。また、原料仕込み時と製造工程の途中で各々添加してもよい。
触媒の仕込み方法としては、触媒化合物単体を仕込んでも、水、アルコール、エチレン
グリコールなどのグリコールに溶解または分散させた状態で仕込んでもよい。
触媒は、ポリエステルの製造に用いることのできる任意の触媒を選択することができるが、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、アンチモン、スズ、亜鉛、アルミニウム、コバルト、鉛、マンガン、銅、バリウム、カドミウム等の金属化合物が好適である。中でも、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、アンチモン化合物、スズ化合物、亜鉛化合物又はアルミニウム化合物がより好ましく、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、アンチモン化合物が特に好ましい。そこで、本発明のポリエステル樹脂は、ゲルマニウム、チタン、アンチモンを含有することが好ましい。
チタン化合物は、特に限定されるものではない。チタン化合物としては、テトラアルキルチタネートが好ましく、具体的には、テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラ-t-ブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラベンジルチタネート、これらの混合チタネート等が挙げられる。また、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタン(ジイソプロキシド)アセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、チタンビス(エチルアセトアセテート)ジイソプロポキシド、チタン(トリエタノールアミネート)イソプロポキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、テトラステアリルチタネート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、ブチルチタネートダイマー等も挙げられる。更には、酸化チタンや、チタンと珪素を含む複合酸化物等も挙げられる。
これらの中では、テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、テトラステアリルチタネート、チタンラクテート、ブチルチタネートダイマー、酸化チタン又はチタニア/シリカ複合酸化物が好ましい。さらに、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、テトラステアリルチタネート、チタンラクテート、ブチルチタネートダイマー又はチタニア/シリカ複合酸化物がより好ましい。
触媒として使用されるゲルマニウム化合物としては、特に限定されるものではない。ゲルマニウム化合物としては、酸化ゲルマニウムや塩化ゲルマニウム等の無機ゲルマニウム化合物、テトラアルコキシゲルマニウムなどの有機ゲルマニウム化合物が挙げられる。価格や入手にしやすさなどから、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウムおよびテトラブトキシゲルマニウムなどが好ましく、特に、酸化ゲルマニウムが好ましい。
ゲルマニウム触媒を使用した場合、着色が少ないポリエステル樹脂が得られやすく、本発明のポリエステル樹脂を、光学用途等の着色が少ないことを重視する用途に用いる場合は、ゲルマニウム触媒を使用することが好ましい。この場合、ポリエステル樹脂のYI(イエローインデックス)は、50以下となることが好ましく、40以下となることがより好ましく、30以下となることがさらに好ましい。また、b値は、30以下となることが好ましく、20以下となることがより好ましく、10以下となることがさらに好ましい。
触媒として使用されるアンチモン化合物としては、特に限定されるものではない。アンチモン化合物としては、酢酸アンチモン、酸化アンチモン、グリコール酸アンチモン等が挙げられる。これらのうち、酢酸アンチモン、酸化アンチモンが好ましい。
触媒の使用量は、重合反応速度が速く、製造効率が高い点では多いことが好ましい。また、一方で、触媒のコストがかからず、触媒残渣が発生し難く、着色が少なく、溶融熱安定性や加水分解性に優れたポリエステル樹脂を得やすい点では少ないことが好ましい。
触媒の使用量は、具体的には、製造されるポリエステル樹脂における金属換算量で、好ましくは1ppm以上、より好ましくは3ppm以上、さらに好ましくは5ppm以上である。また、一方で、好ましくは500ppm以下、より好ましくは400ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下である。特に、触媒としてチタン化合物を用いる場合は、少量とすることが好ましく、300ppm以下とすることが好ましく、100ppm以下とすることがより好ましく、50ppm以下とすることがさらに好ましく、30ppm以下とすることが特に好ましい。すなわち、本発明のポリエステル樹脂は、上述の量の金属を含有することが好ましい。
フランジカルボン酸成分に対する触媒の使用量は、モル比で、チタン化合物の場合、3.8×10-6以上が好ましく、1.14×10-5以上がより好ましく、1.9×10-5以上がさらに好ましい。また、一方で、1.14×10-3以下が好ましく、3.8×10-4以下がより好ましく、1.9×10-4以下がさらに好ましく、1.14×10-4以下が特に好ましい。また、ゲルマニウム化合物の場合、2.5×10-6以上が好ましく、7.5×10-6以上がより好ましく、1.25×10-5以上がさらに好ましい。また、一方で、1.25×10-3以下が好ましく、1.00×10-3以下がより好ましく、7.5×10-4以下がさらに好ましい。アンチモン化合物の場合、1.5×10-6以上が好ましく、4.5×10-6以上がより好ましく、7.5×10-6以上がさらに好ましい。また、一方で、7.5×10-4以下が好ましく、6.0×10-4以下がより好ましく、4.5×10-4以下がさらに好ましい。
<周期表第2族元素を有する化合物>
本発明のポリエステル樹脂を製造する際は、ジエチレングリコールの副生を抑制しやすい点では、周期表第2族元素を有する化合物を使用することが好ましい。具体的には、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の化合物が挙げられ、入手のしやすさからマグネシウムおよびカルシウムが好ましい。これらの元素の化合物は、酸化物、塩化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、アルコキシ塩などが挙げられる。これらのうち、カルボン酸塩が好ましく、酢酸塩が特に好ましい。周期表第2族元素を有する化合物を反応槽に仕込む場合、化合物を単体で仕込んでも、水、アルコール、エチレングリコールなどのグリコールに溶解または分散させてから仕込んでもよい。好ましくは、水、エチレングリコールに溶解させて仕込むのがよい。
周期表第2族元素の使用量は、ジエチレングリコールの副生を抑制し、耐熱性の高いポリエステル樹脂を得やすい点では多いことが好ましい。また、一方で、溶融重合や固相重合の速度が速く、高分子量のポリエステル樹脂を得やすい点では少ないことが好ましい。そこで、得られるポリエステル樹脂に対して、1ppm以上とすることが好ましく、3ppm以上とすることがより好ましく、5ppm以上とすることがさらに好ましい。また、一方で、300ppm以下とすることが好ましく、200ppm以下とすることがより好ましく、100ppm以下とすることがさらに好ましい。すなわち、本発明のポリエステル樹脂は、上述の量の元素を含有することが好ましい。また、重合時に用いる触媒1モルに対して、3モル以下とすることが好ましく、2モル以下とすることがより好ましく、1モル以下とすることがさらに好ましい。また、一方で、0.1モル以上とすることが好ましく、0.2モル以上とすることがより好ましく、0.3モル以上とすることがさらに好ましい。
<エスエル化反応又はエステル交換反応工程>
ジカルボン酸とジオールとのエステル化反応およびジカルボン酸エステルとジオールと
のエステル交換反応工程における温度、時間、圧力等の条件は、従来公知のポリエステル製造法の範囲を採用できる。反応温度は、通常100℃以上であり、120℃以上が好ましい。また、通常300℃以下であり、290℃以下が好ましく、280℃以下がさらに好ましい。これらの範囲であることで、効率的に反応を進行させることができる。反応雰囲気は、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下とする。反応圧力は、通常、常圧から0.3MPaである。反応時間は、通常1時間以上であり、また、一方で、通常10時間以下、好ましくは8時間以下である。
<重縮合反応工程>
上述の反応に続き、減圧下において、重縮合反応を行うことにより、さらに重合度を向上させる。重縮合反応工程の温度、時間、圧力等の条件は、従来公知のポリエステル製造法の範囲を採用できる。重縮合反応温度は、230℃以上であることが好ましく、より好ましくは235℃以上、さらに好ましくは240℃以上である。また、一方で、300℃以下であることが好ましく、より好ましくは290℃以下、さらに好ましくは280℃以下である。この温度範囲とすることにより、重合速度が十分確保され、且つ熱分解、着色、副反応等が抑制され、重合度の高いポリエスエル樹脂が得られる。
重縮合反応は、任意の温度に到達した時点で減圧を開始し、最終的な圧力は、通常0.01×10Pa以上であり、0.05×10Pa以上が好ましい。また、通常1.4×10Pa以下であり、0.6×10Pa以下が好ましく、0.3×10Pa以下が好ましい。短時間で製造することにより、ポリエステルの熱分解による分子量低下や着色が起こり難く、高特性なポリエステルを製造しやすい点では、減圧度が高いことが好ましい。また、一方で、高真空設備が不要な点では、減圧度が低いことが好ましい。
重縮合反応の反応時間は、通常、1時間以上15時間以下である。好ましくは10時間以下、より好ましくは8時間以下である。反応時間が長いことにより、反応が十分に進み、重合度が高く、機械物性に優れるポリエステル樹脂を得られる。また、一方で、反応時間が短いことにより、ポリエステルの熱分解による低分子量低下を抑制することができ、機械物性に優れるポリエステル樹脂を得られる。
重縮合反応工程を終了した後、通常、溶融状態を保持した状態でストランド状に抜き出す。ストランドを冷却、カッティングすることによりペレットを得ることができる。
<固相重合工程>
本発明のポリエステル樹脂を製造する際は、上述の重縮合反応工程後に、更に固相重合工程を行うことが好ましい。
固相重合の方法は特に限定されないが、例えば、上述の重縮合反応工程で得られたポリエステル樹脂を、不活性ガス雰囲気下又は減圧下において加熱する方法が挙げられる。反応は、ポリエステル樹脂のペレットや粉末を静置した状態で行っても、撹拌状態で行ってもよい。撹拌する場合は、反応容器に撹拌翼を設置して行っても、反応容器を動かすことにより撹拌してもよい。
固相重合の反応温度は、高分子量のポリエステル樹脂が得やすい点では高いことが好ましい。また、一方で、ポリエステル樹脂が溶融状態となり難い点では低いことが好ましい。そこで、反応温度は、170℃以上が好ましく、180℃以上がさらに好ましい。また、一方で、215℃以下が好ましく、210℃以下がさらに好ましい。加熱時間は1時間以上とすることが好ましく、さらに好ましくは3時間以上である。また、一方で、着色が生じ難いことから、50時間以下とすることが好ましく、40時間以下とすることがより好ましく、30時間以下とすることがさらに好ましい。
また、急激に高温にするとポリエステル樹脂の表面が一部融解し、樹脂同士が固着して
塊となり、取り扱い難くなる、固相重合反応が進行し難くなるなどの可能性がある。そのため、100℃程度から加熱を始め、180℃程度まで徐々に温度を上げることにより、ポリエステル樹脂表面を予備結晶化させることが好ましい。予備結晶化中は、適宜樹脂を取り出して冷却した後、わずかに固着したサンプルに刺激を与えてほぐしてから熱処理を継続させると、固着を防止する上で好ましい。本発明のポリエステル樹脂は、少量のその他の必須単位が共重合されることにより、結晶化が進みやすくなっている。そのため、予備結晶化工程におけるペレット同士の固着が発生しにくく、予備結晶化に要する時間を短縮することができると考えられる。
また、ここで、ポリエステル樹脂を製造する際に周期表第2族元素を用いると、結晶化速度を速めることができ、予備結晶化に要する時間を短縮することができる点で好ましい。また、後述するように、結晶核剤を用いる場合も、予備結晶化に要する時間を短縮できる点で好ましい。
<反応装置>
上述の反応を行う反応装置としては、公知の縦型又は横型撹拌槽型反応器を用いることができる。例えば、エステル化反応及び/又はエステル交換反応の工程と重縮合反応工程の2段階の工程を行う場合、1つの反応装置を用いて行っても複数の反応装置を用いて行ってもよい。重縮合反応工程を行う反応器としては、真空ポンプと反応器とを結ぶ減圧用排気管の間に、凝縮器が結合され、この凝縮器により重縮合反応中に生成する揮発成分や未反応モノマーを回収できる装置が好ましい。
また、ポリエステル樹脂を連続式に製造できる反応装置としては、例えば、公知の縦型撹拌重合槽、横型撹拌重合槽、薄膜蒸発式重合槽等を使用することができ、複数基の反応槽を並べて多段式に行うのが一般的である。
固相重合反応の反応装置としては、公知の反応装置を使用することができる。例えば、攪拌機を備えた予備結晶化槽によって加熱しながら樹脂ペレットの結晶化を促進させ、続いて、乾燥槽、固相重合槽へと送るプロセスを備えた装置などが知られている。固相重合槽では、真空ないし不活性ガスの流通下、攪拌または無攪拌で行われる。
[ポリエステル樹脂の物性]
<固有粘度>
上述の方法により得られる溶融重合後の本発明のポリエステル樹脂の固有粘度IVは、通常0.5dL/g以上である。また、好ましくは、0.6dL/g以上、さらに好ましくは0.7dL/g以上である。固有粘度は、好ましくは2.0dL/g以下、より好ましくは1.5dL/g以下、さらに好ましくは1.2dL/g以下、特に好ましくは1.1dL/g以下、最も好ましくは1.0dL/g以下である。固有粘度は、高強度な射出成形品、フィルム、ボトルなどの成形品を成形しやすく、溶融重合後に固相重合を施す場合の固相重合時間を短くできる点では高いことが好ましい。また、一方で、適度な溶融粘度を有するポリエステルが得られ、抜き出し工程の時間が短縮されるとともにポリエステル樹脂の収量が多くなる点では低いことが好ましい。
上述の通り、溶融重合を行った後、固相重合工程を経ることでさらに固有粘度を高めることができる。また、より様々な固有粘度のポリエステル樹脂を得られる点でも固相重合工程は行われる。
固相重合後の固有粘度IVは、高強度な射出成形品、フィルム、ボトルなどの成形品を効率よく製造しやすい点では、高いことが好ましい。そこで、通常0.8dL/g以上、好ましくは0.9dL/g以上、より好ましくは1.0dL/g以上、さらに好ましくは1.1dL/g以上である。また、一方、固相重合後の固有粘度は、通常3.0dL/g以下、好ましくは2.5dL/g以下、より好ましくは2.0dL/g以下、さらに好ましくは1.8dL/g以下である。
なお、本発明において、ポリエステル樹脂の固有粘度(IV)は、フェノール/テトラクロロエタン(1:1重量比)中で、ポリエステル樹脂の濃度0.5g/dLで、30℃にて測定した溶液粘度から求める。ここで、ハギンス定数は、0.32である。
<カルボン酸末端濃度(AV)>
上述の方法により得られる溶融重合後の本発明のポリエステル樹脂のカルボン酸末端の濃度は、ポリエステル樹脂の耐熱性、耐加水分解性、溶融安定性等が優れ、溶融重合後に固相重合を施す場合の固相重合時間を短縮できることから、通常50eq/t以下であり、好ましくは40eq/t以下、より好ましくは30eq/t以下である。また、一方で、下限値は特に限定されないが0eq/tである。カルボン酸末端の濃度は、滴定により、以下のようにして求めることができる。
ポリエステル樹脂0.3~0.5gを精秤し、ベンジルアルコール25mLを加え、175℃で9分間攪拌し、完全に溶解させる。溶解後、氷浴中で冷却し、エタノール2mLを加え、三菱化学アナリテック(株)製自動滴定装置「GT200」により、0.01NのNaOHベンジルアルコール溶液を用いて滴定を行う(滴定量をA(ml)とする。)。次に、ベンジルアルコールとエタノールのみで同様の測定を行い、ブランク値(B(ml))とし、カルボン酸末端濃度を以下の式から算出する。
カルボン酸末端(μeq/g)=(A-B)×F×10/W
A(ml):測定滴定量
B(ml):ブランク滴定量
F:0.01N NaOHベンジルアルコール溶液のファクター
W(g):サンプル重量
<ヒドロキシル末端(OH)濃度>
上述の方法により得られる溶融重合後の本発明のポリエステル樹脂のヒドロキシル末端の濃度は、通常150eq/t以下であり、好ましくは120eq/t以下であり、より好ましくは100eq/t以下である。また、下限値は、通常20eq/tであり、好ましくは30eq/tであり、より好ましくは40eq/tである。この範囲内にあることにより、溶融重合後に固相重合を行う場合における固相重合速度が速くなり、高分子量のポリエステル樹脂を得やすい。
<ジエチレングリコール(DEG)濃度>
上述の方法により得られる本発明のポリエステル樹脂のジエチレングリコールの濃度は、フランジカルボン酸単位に対して、7モル%以下であることが好ましく、6モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましい。下限値は特に限定されないが0モル%である。
<脱炭酸末端(FR)濃度>
溶融重合法により製造されたポリエステル樹脂には、フランジカルボン酸単位が脱炭酸反応することにより形成された脱炭酸末端が生じている場合がある。脱炭酸末端の濃度は固相重合反応が進みやすい点で低いことが好ましい。脱炭酸末端の濃度は20eq/t以下であることが好ましく、15eq/t以下であることがより好ましく、10eq/t以下であることがさらに好ましく、8eq/t以下であることが特に好ましく、6eq/t以下であることが最も好ましい。
ヒドロキシル末端の濃度、ジエチレングリコールの濃度および脱炭酸末端の濃度は、核磁気共鳴スペクトル法(NMR)によって、以下のようにして求めることができる。
ポリエステル樹脂20mgをヘキサフルオロイソプロパノール-d/クロロホルム-dの混合溶媒(1/2重量比)1gに溶解し、シフト化剤としてピリジン-d60μl
を添加し、透明なサンプル溶液を得る。
Brucker製400MHzNMRを用いてH-NMRを測定する。エチレングリコールのピーク(4.6~4.7ppm付近)、ヒドロキシル末端のピーク(3.97~4.0ppm付近)、脱炭酸末端のピーク(6.55ppm付近)、ジエチレングリコールのピーク(3.88~3.9ppm付近)の積分値より以下の式からヒドロキシル末端の濃度、脱炭酸末端の濃度およびジエチレングリコールの濃度を算出する。
ヒドロキシル末端濃度(eq/t)=2×b/(182×a+226×c)×10
脱炭酸末端濃度(eq/t)=4×c/(182×a+226×c)×10
ジエチレングリコール濃度(モル%)=d/(a+d)×100
a:エチレングリコールピークの積分値
b:ヒドロキシル末端ピークの積分値
c:脱炭酸末端ピークの積分値
d:ジエチレングリコールピークの積分値
[加熱処理後の融点(Tm)、融解熱(ΔH)]
本発明のポリエステル樹脂の結晶化しやすさは、加熱処理後の融解熱により評価することができる。具体的には、後述する実施例の方法で測定した融解熱が大きいほど結晶化速度が向上していることを示し、結晶化しやすいことがわかる。そして、固相重合する際の予備結晶化工程における負荷を軽減することができ、また、延伸配向性が向上した成形品を得ることができる。本発明のポリエステル樹脂は、この評価方法で、融解熱が5J/g以上であることが好ましく、6J/g以上であることがさらに好ましい。なお、融解熱の上限は、通常60J/gである。
本発明のポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂の耐熱性に優れる点から、加熱処理後の融点が高いことが好ましい。具体的には、後述する実施例の方法で測定した融点が180℃以上であることが好ましく、185℃以上であることがさらに好ましい。なお、融点の上限は、通常220℃である。
[ポリエステル樹脂組成物]
本発明のポリエステル樹脂には、その特性が損なわれない範囲において、熱安定剤、酸化防止剤、加水分解防止剤、結晶核剤、難燃剤、帯電防止剤、離型剤、紫外線吸収剤等の各種の添加剤を添加してもよい。これらの添加剤は、ポリエステルの重合反応前に反応装置に添加してもよいし、重合反応開始から重合反応終了の前に搬送装置等に添加してもよいし、重合反応終了後の生成物の抜出前に添加してもよい。また、抜出後の生成物に添加してもよい。
また、本発明のポリエステル樹脂および本発明のポリエステル樹脂を含む組成物(以下、「本発明のポリエステル樹脂組成物」または単に「ポリエステル樹脂組成物」と言う場合がある。)の成形時には、上述の各種の添加剤の他に、耐衝撃性改質剤、フィラー、結晶核剤、強化剤、増量剤等を添加してもよい。
耐衝撃性改質剤としては、メタブレン(三菱ケミカル社製)、カネエース(カネカ社製)等が挙げられる。
フィラーは、無機系でも有機系でもよい。フィラーは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
無機系フィラーとしては、無水シリカ、雲母、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、ケイ藻土、アロフェン、ベントナイト、チタン酸カリウム、ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、カオリン、カオリナイト、ガラス、石灰石、カーボン、ワラステナイト、焼成パーライト、珪酸カルシウム、珪酸ナトリウム等の珪酸塩、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸第二鉄、酸化亜鉛、酸化鉄、リン酸アルミニウム、硫酸バリウム等の塩類等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
無機系フィラーを含むポリエステル組成物の場合、ポリエステル組成物中における無機系フィラーの含有量は、通常1重量%以上であり、好ましくは3重量%以上であり、さらに好ましくは5重量%以上である。また、通常80重量%以下であり、好ましくは70重量%以下であり、更に好ましくは60重量%以下である。
有機系フィラーとしては、生澱粉、加工澱粉、パルプ、キチン・キトサン質、椰子殻粉末、竹粉末、樹皮粉末、ケナフや藁等の粉末等が挙げられる。また、パルプ等の繊維をナノレベルに解繊したナノファイバーセルロース等も挙げられる。
結晶核剤としては、タルク、窒化ホウ素、シリカ、層状ケイ酸塩、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスが好ましく、窒化ホウ素、タルク、ポリエチレンワックスがより好ましい。結晶核剤は1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
結晶核剤が無機材料の場合、核剤効果としては粒径が小さいほど好ましい。無機の結晶核剤の平均粒径は5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましく、0.5μm以下が特に好ましい。なお、結晶核剤の平均粒径は、0.1μm以上が好ましい。
結晶核剤の量は、結晶化促進効果が発現し、予備結晶化に要する時間を短縮しやすい点では多いことが好ましい。また、一方で、ポリエステル樹脂やポリエステル樹脂組成物の機械物性やしなやかさ等の点では少ないことが好ましい。そこで、結晶核剤の量は、ポリエステル樹脂に対して0.001重量%以上であることが好ましく、0.01重量%以上であることがより好ましく、0.1重量%以上であることがさらに好ましい。また、結晶核剤の量は30重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることがさらに好ましく、1重量%以下であることが特に好ましい。
なお、核剤として用いた以外のフィラーが、例えば、剛性改良のために用いた無機フィラー、熱安定剤として用いた有機安定剤、ポリエステル樹脂の製造工程や成形加工工程で混入した異物等も結晶核剤として作用する場合がある。
本発明のポリエスエル樹脂は、本発明のポリエステル樹脂以外の樹脂(以下、「他の樹脂」と言う場合がある。)とブレンドして用いてもよい。他の樹脂は、特に限定されないが、本発明のポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの汎用の熱可塑性樹脂などが挙げられる。
[ポリエステル樹脂の用途]
本発明のポリエステル樹脂及びポリエステル樹脂組成物は、汎用プラスチックに適用される各種成形法により成形に供することができる。
成形法としては、例えば、圧縮成形(圧縮成形、積層成形、スタンパブル成形)、射出成形、押出成形や共押出成形(インフレ法やTダイ法によるフィルム成形、ラミネート成形、パイプ成形、電線/ケーブル成形、異形材の成形)、中空成形、カレンダー成形、発泡成形(溶融発泡成形、固相発泡成形)、固体成形(一軸延伸成形、二軸延伸成形、ロール圧延成形、延伸配向不織布成形、熱成形(真空成形、圧空成形)、塑性加工、粉末成形(回転成形)、各種不織布成形(乾式法、接着法、絡合法、スパンボンド法等)等が挙げられる。
本発明のポリエステル樹脂およびポリエステル樹脂組成物は、特に射出成形体、押出成形体、発泡成形体、中空成形体への適用が好ましい。具体的な形状としては、電気・電子分野や自動車などの各種部品、フィルム、容器及び繊維への適用が特に好ましい。
また、これらの成形品に、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/磨耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能等の表面機能等の付与を目的として、各種目的に応じた二次加工を施すことも可能である。二次加工の例としては、エンボス加工、塗装、
接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング等)等が挙げられる。
以下に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下における各種物性等の測定方法は次の通りである。
[固有粘度(IV)]
実施例及び比較例で得られたポリエステル樹脂を、フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(1:1重量比)中で、濃度0.5g/dLとした溶液について、30℃で測定した溶液粘度から求めた。ハギンス定数は、0.32である。
[融点(Tm)、融解熱(ΔH)]
実施例及び比較例における溶融重合後のポリエステル樹脂のペレット10gをイナートオーブン(ヤマト科学、410I)中で、120℃で6時間、熱処理した。その後、日立ハイテクサイエンス製の示差走査熱量計「DSC7000x)を用いて融点(Tm)を測定した。昇温速度は、10℃/minとし、最大ピークトップの位置をTm、ピーク面積を融解熱ΔH(J/g)とした。
[実施例1]
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計及び減圧口を備えた反応容器に、原料として、2,5-フランジカルボン酸(V&V PHARMA INDUSTRIS製)80.4重量部、セバシン酸(TCI製)5.5重量部、エチレングリコール(三菱ケミカル製)67.3重量部、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド35質量%水溶液0.03重量部を仕込み、反応容器内を窒素雰囲気にした。
次に、オイルバスに反応容器を投入し、撹拌を開始して210℃まで昇温し、210℃で1時間反応させて留出液を回収した。反応液が透明になったところでチタンテトラブチレートを5重量%溶解させたエチレングリコール溶液0.71重量部(チタンとして生成ポリエステル中に50ppm)を添加した。
続いて1時間30分間かけて260℃まで昇温すると同時に圧力が130Pa程度になるように徐々に減圧した。減圧開始から3時間30分間経過したところで撹拌を停止し、復圧して重縮合反応を終了し、生成物をストランドとして取り出し、冷却後、カッティングして2~3mm角程度のポリエステル樹脂のペレットを得た。このペレットの固有粘度は0.87dl/gであった。
また、ペレットを網かごに入れて、120℃に加熱したオーブン(ヤマト科学製 410I)に入れ、窒素を30L/minで流通させた。120℃に保持して6時間経過したところで取り出し、示差走査熱量測定を行った。結果を表1に示す。
[実施例2]
2,5-フランジカルボン酸を85.2重量部、セバシン酸を0.55重量部、エチレングリコールを68.1重量部とした以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂のペレットを製造した。このペレットの固有粘度は0.77dl/gであった。また、実施例1と同様に示差走査熱量測定を行った。結果を表1に示す。
[実施例3]
2,5-フランジカルボン酸を81.8重量部、エチレングリコールを63.5重量部とし、セバシン酸を用いずに、1,10-デカンジオール(TCI製)を4.6重量部と
した以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂のペレットを製造した。このペレットの固有粘度は0.82dl/gであった。また、実施例1と同様に示差走査熱量測定を行った。結果を表1に示す。
[比較例1]
2,5-フランジカルボン酸を85.7重量部、エチレングリコールを68.2重量部とし、セバシン酸を用いなかった以外は、実施例1と同様にしてポリエチレン-2,5-フランジカルボキシレート(PEF)のペレットを製造した。このペレットの固有粘度は0.75dl/gであった。また、実施例1と同様に示差走査熱量測定を行った。結果を表1に示す。
Figure 2022144048000001
表1の結果より、本発明のポリエステル樹脂が少量の共重合単位を有することにより、結晶化しやすくなっていることが裏付けされた。

Claims (11)

  1. 2,5-フランジカルボン酸単位とエチレングリコール単位を有するポリエステル樹脂であって、更に、炭素数2~36の脂肪族ジカルボン酸単位を全ジカルボン酸単位に対して0.1~8モル%有する、および/または、炭素数3~20の脂肪族ジオール単位を全ジオール単位に対して0.1~8モル%有する、ポリエステル樹脂。
  2. 請求項1に記載のポリエステル樹脂であって、120℃で6時間加熱した後に示差走査熱量計(DSC)によって測定した融点が180℃以上である、ポリエステル樹脂。
  3. 請求項1に記載のポリエステル樹脂であって、120℃で6時間加熱した後に示差走査熱量計(DSC)によって測定した融解熱が5J/g以上である、ポリエステル樹脂。
  4. チタン原子を1~300ppm含有する、請求項1~3の何れか1項に記載のポリエステル樹脂。
  5. ゲルマニウム原子及びアンチモン原子の少なくとも何れかの原子を合計で1~500ppm含有する、請求項1~3の何れか1項に記載のポリエステル樹脂。
  6. 周期表第2族元素を合計で1~300ppm含有する、請求項1~5の何れか1項に記載のポリエステル樹脂。
  7. 固有粘度(IV)が0.7dL/g以上である、請求項1~6の何れか1項に記載のポリエステル樹脂。
  8. 請求項1~7の何れか1項に記載のポリエステル樹脂を含有する、成形品。
  9. 請求項1~7の何れか1項に記載のポリエステル樹脂を含有する、フィルム。
  10. 請求項1~7の何れか1項に記載のポリエステル樹脂を含有する、容器。
  11. 請求項1~7の何れか1項に記載のポリエステル樹脂を含有する、繊維。
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WO2023132368A1 (ja) * 2022-01-06 2023-07-13 東洋紡株式会社 共重合ポリエステル樹脂

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